明 細 書 重合性ビォチン誘導体、 ビォチン高分子化合物及びァビジン刺激応答性高分子化合物 技術分野
本発明は現在盛んに行われている (ィミノ) ピオチン誘導体の固定化法として、 優れた 手法を提供する。 さらにその誘導体を用いて (ィミノ) ピオチン部位が固定化された機能 性高分子の提供に関する。 背景技術
ピオチンとアビジンの高い結合性 (例えば Methods Enzymol.184,5-13. 184, 14-45参 照) を利用した技術が、 ィムノアヅセィ (例えば特開平 4一 3 6 3 6 5 9号公報、 同 6— 1 6 0 3 8 7号公報)、 バイオセンサ一 (例えば特開平 1 0— 2 8 2 0 4 0号公報、 同 9 - 2 9 2 3 9 7号公報、 同 8— 9 4 5 1 0号公報)、 DNA操作 (例えば特開平 4一 2 6 7 8 9 6号公報)、 分離材 (例えば特開平 5— 3 4 0 9 4 5号公報、 同 4一 3 1 1 3 9 7号 公報)、 臨床療法 (例えば J. Nucl Med Commun 1991; 12: 211- 234. Int J. cancer 1990;45:1184-1189 )などに適用されている。
上記各種方法を行うためには、 蛋白 (糖蛋白)、 抗体、 酵素、 発色団、 デキストラン等 にピオチンを固定化することが必要であり、 そのために種々のピオチン固定化試薬が発売 されている (Methods Enzymol.184, 123-138)。 これは、 生体系物質のアミノ基、 硫黄基、 カルボン酸、 アルコール等の反応性の官能基にピオチン固定化試薬を反応させてピオチン を固定化するものである(例えば Molecular Probes Handbook of fluorescent Probes and Research Chemicals Chapter4参照)。 かかる固定化反応にはピオチンの誘導体が用いら れる (例え Molecular Probes Handbook of fluorescent Probes and Research Chemicals Chapter4 ,p87参照)。 また、 この試薬を用いてポリエチレングリコ一ル末端にピオチンを 固定化した例も報告されている(Bioconjugate Chem.l997,8,545~551)。
以上に記載したピオチンの固定化は、 元来ある物質、 たとえば蛋白などの一つの官能基
について一つの反応を行いピオチンを固定化するという概念に基づくものである (例えば 特開平 6— 1 4 8 1 9 0号公報参照)。
上記の通り、 ピオチンの有用性は種々の分野で実証されており、 その工業的応用は新し い機能を発現する製品を導く可能性がある。 しかしながら、 上記ピオチン固定化試薬は高 価であり、 これらを用いたピオチン固定化法では、 その工業的使用は難しい。 また、 水溶 液中あるいは生理的食塩水中で降温操作により凝集する、 上限臨界溶液温度 (U C S T ) を有する感熱性高分子は分離剤、 D D S等に応用が期待され (Macromol.Chem., Rapid Commun.13, 577-581(1992))、 その高分子の出現が待望されている。
一方、 上述したようにピオチン固定化試薬は反応性の官能基に固定化するため、 官能基 の保護が必要な場合があり、 また立体障害が大きい官能基の場合や高分子鎖にピオチン骨 格を固定化する場合などは、 ピオチン固定化の反応自体が困難である。 例えばマクロな高 分子である蛋白などにピオチンを固定化する場合は、 官能基が少なく充分な量のピオチン が固定できず、 しかも蛋白表面に存在する官能基のみにしか固定化されない。 高分子の重 合度が高くなれば同様に従来の固定化法ではピオチンの固定化を思い通りに設計すること は困難になる。
従って、 本発明は、 上記種々の分野に応用可能なピオチン成分を含有し、 更に多官能性、 多重機能性の高分子を合成、 設計可能とすることを目的とする。
更に、 本発明は、 上記ピオチン成分含有高分子を工業的に製造でき、 優れた経済性及び 効率性で合成、 設計することを目的とする。
また、 本発明は、 水溶液中で降温操作により凝集し、 更に生理的食塩水中でも上限臨界 溶液温度 (U C S T ) を有する感熱性高分子、 および水溶液中で昇温操作により凝集し、 水溶液中で下限臨界温度 (L C S T ) を有する感熱性高分子を提供することを目的とする。 発明の開示
本発明の上記目的は、 下記一般式 (I ) で示される重合性ピオチン誘導体を用いること により達成されることが見いだされた。
一般式 (
式 (I ) 中、 R
2は水素原子又はアルキル基を示す。 R
3及び R
4はそれそれ独立に水 素原子、 アルキル基又はァリール基を示す。
Tは酸素原子又は = N H基を表す。
Wは単結合又はカルボニル基、 チォカルボ二ル基もしくは炭素数 1〜 5のアルキレン 基を示す。 Uは単結合又は一 N H—基を示す。 Xは単結合又は炭素数 1〜 8の炭化水素 結合、 酸素原子もしくは一 N H—基を示す。 Yは単結合又はカルボニル基、 チォカルポ ニル基、 一 N H基一、 1, 2—ジォキシエチレン基もしくは 1, 2—ジァミノエチレン 基を示す。 Zは単結合又はカルボニル基、 チォカルボニル基、 炭素数 1〜5のアルキレ ン基、 酸素原子もしくは一 N H—基を示す。 Vは単結合又は炭素数 1 ~ 5のアルキレン 基を示す。 即ち、 本発明においては、 生体機能を有する上記重合性ピオチン誘導体 (以下、 単にビ ォチンモノマ一とも称する) を重合することにより、 容易かつ工業的、 経済的に (イミ ノ) ビォチンを固定化した高分子の合成が可能になる (なお、 以下本明細書において用い る 「ピオチン」 は、 具体的に化合物名として挙げられた場合を除き、 イミノビォチンをも 含めた意味で用いる)。
出発物質のピオチンを固定化したピオチンモノマ一は工業的にも成り立つ経済性と効率 性がある。
また公知のビォチン固定化技術の如き、 高分子中の官能基に反応させてピオチンを固定 化するものではないため、 例えば、 ピオチン固定化試薬に反応する官能基を有するモノマ
—と共重合させてもその官能基を未反応のまま含有する、 ピオチンを固定化した形式の共 重合体を合成することができる。
更に高分子鎖が官能基を包み込み、 ピオチン固定化を従来の技術により行えない場合な どであっても、 高分子の設計を適宜行うことにより、 任意の割合で長鎖の高分子側鎖とし てピオチン骨格を組み込むという高分子設計が可能となる。
例えば、 ピオチンまたはイ ミノビォチン部位を有する、 水溶液で下限溶液臨界温度 (LCST)又は上限溶液臨界温度 (UCST) を有する熱応答性高分子を見出すに至った。 本発 明の重合性ピオチン誘導体を、 アクリルアミ ド及びメ夕クリルアミ ドから選択される少な くとも 1種のモノマ一成分と共重合させて得た高分子は、 水溶液中及び生理的食塩水中で U C S T (上限臨界溶液温度) を有する感熱性高分子化合物であることがわかった。
更に、 LCST を有する熱応答性高分子にピオチンを固定化することにより、 LCST以上 で非常に凝集力の強い熱応答性高分子となることを見出した。
これらの高分子はピオチンを固定化していることから、 種々のアビジン固定化リガンド、 或いはアビジンの 4力所の結合部位を介して、 種々のビォチン化リガンドを簡便に固定化 することができる。 なお、 本明細書における 「アビジン」 は、 ストレブトァビジンを含む 意味で用いる。
さらに、 本発明の熱応答性高分子誘導体は、 水溶液中、 生理的食塩水中、 緩衝溶液中で LCST 以上又は UCST 以下で凝集力の大きなを熱応答性有するため、 各種物質の分離、 固定化酵素、 検量、 制御等に有効に適用する事ができる。 図面の簡単な説明
図 1は、 昇温時と降温時の温度と透過率の関係であり、 アクリルアミ ド /ピオチノ一ル ァク リ レート共重合体 (仕込み比 2 0 ) の水中における U C S T pポリマ一濃度 10mg/ml)を示す。
図 2は、 生理的食塩水中におけるアビジンを認識したコポリマーの透過率変化 (降温 時) であり、 アクリルアミ ド /ピオチノ一ルアタリレート共重合体 (仕込み比 2 0 ) の生 理的食塩水中 (コポリマ一濃度 6mg/ml) におけるアビジン認識能と U C S Tの変化 (降
温時の透過率のみ) を示す。
図 3は、 N—イソプロピルァクリルァミ ドとピオチノ一ルァクリレ一トコポリマ一のァ ビジン添加による L C S T変化 (降温時) を示す。
発明を実施するための最良の形態
更に本発明について詳細に説明する。
上記式 (I ) で示される重合性ピオチン誘導体において、 好ましくは R 2は水素原子又 は炭素数 1 ~ 3のアルキル基を示し、 R 3及び R 4はそれぞれ水素原子、 炭素数 1〜 3のァ ルキル基又はフエ二ル基を示す。 特に好ましくは、 R 2は水素原子又はメチル基を示し、 R 3及び R 4はそれそれ水素原子、 メチル基又はフエ二ル基を示す。 アルキル基及びァリ一 ル基は、 必要に応じて更に置換基を有していてもよい。
式 (I ) において、 一V—Z— Y— X— U— W—で表される結合基としては、 具体的に は、 下記表一 1に記載のものが挙げられる。 表一 1
例 V Z Y X U W
力ルポニル基
灰素数 1 ~ 5酸素原子又は
(1) 又はチ才カル 単結合 単結合 単結合
のアルキル基 一 N H—基
ボニル基
カルボニル基 カルボニル基 灰素数 1 ~ 5酸素原子又は 酸素原子又は
(2) 又はチ才カル 単結合 又はチ才カル のアルキル基 一 N H—基 一 N H—基
ボニル基 ボニル基 カルボニル基 1,2-ジ才キシェチ 力ルポニル基 炭素数 1 ~ 5
(3) 単結合 又はチ才カル レン基又は 1,2-ジ 単結合 又はチ才カル のアルキル基
ポニル基 アミノエチレン基 ポニル基 炭素数 1 ~ 5
(4) 単結合 単結合 単結合 単結合 単結合
のアルキル基 炭素数 1 ~ 5 酸素原子又は
(5) 単結合 単結合 単結合 単結合
のアルキル基 - N H—基 灰素数 1 ~ 5 炭素数 1〜8の 一 N H—
(6) カルボニル基 一 N H—基 カルボニル基 のアルキル基 炭化水素結合
更に好ましくは、 式 (I) で示される重合性ピオチン誘導体として、 下記式 (l a) (I c) で表される重合性ピオチン誘導体が挙げられる。
—般式 (l a)
-般式 (l b)
一般式 (l a) ~ ( I c) 中、 R1は単結合又は炭素数 1〜 4のアルキレン基を示し、 R 5は炭素数 2又は 3のアルキレン基を示す。
X1は酸素原子又は硫黄原子を示し、 X2〜X5はそれそれ独立に、 酸素原子又は一 N H—基を示す。
T、 R2、 R3及び R4はそれそれ上記式 (I) で定義される通りある。
式 (l a) において、 好ましくは、 R1は炭素数 1 ~5のアルキレン基、 より好ましく は炭素数 2〜4のアルキレン基を示し、 R5は炭素数 2又は 3のアルキレン基を示し、 R2 は好ましくは水素原子又はメチル基を示し、 X1は酸素原子又は硫黄原子を示し、 X2及び X 3はそれそれ独立して酸素原子又は一 NH—基を示す。 Tは酸素原子又は =NH基を示 す。
式 (l b) において、 好ましくは、 R1は炭素数 1~5のアルキレン基、 より好ましく は炭素数 2〜 4のアルキレン基を示し、 R 2は好ましくは水素原子又はメチル基を示し、 R 3及び R 4はそれそれ独立に水素原子、 アルキル基又はァリール基を示し、 より好ましく は水素原子を示す。 X4は好ましくは酸素原子又は一 NH—基を示す。 Tは酸素原子又は =NH基を示す。
式 (I c) において、 好ましくは、 R1は炭素数 1〜5のアルキレン基、 より好ましく は炭素数 2~4のアルキレン基を示し、 R2は好ましくは水素原子又はメチル基を示し、 R 3及び R 4はそれそれ独立に水素原子、 アルキル基又はァリール基を示し、 より好ましく は水素原子を示す。 X5は好ましくは酸素原子又は一 NH—基を示す。 Tは酸素原子又は =NH基を示す。
上記一般式 (l a) で示される重合性ピオチン誘導体は、 一般に下記一般式 (a l) で 示されるピオチン又はピオチン誘導体の側鎖カルボキシル水酸基を適当な脱離基に変換後、 下記一般式 (a2) で示されるアクリル誘導体と縮合反応させることにより得ることがで ぎる。
例えば、 下記に示す通り、 下記のピオチン (i ) のカルボキシル基を塩化チォニル Zト ルェン中で 2時間還流した後、 2—ヒドロキシェチルァクリレート (ii) と縮合反応する ことにより 2—ピオチニルェチルァクリレート (A) を得ることができる。
2-ビォチ二ルェチルァクリレー卜(A)
また、 下記に示す通り、 (ィミノ) ピオチン (i' ) と N— (3—ァミノプロピル) メ タクリルアミ ド塩酸塩 (iii) を、 ジフエニルホスフォニルアジド (DPPA)、 トリェチ ルァミン (TEA) 及び N, N—ジメチルホルムアミ ド (DMF) の存在下反応させるこ とにより、 N—ビォチ二ルー N' - (メタ) ァクロィルトリメチレンアミド (B) 又は N —ィミノピオチェル一 N' — (メタ) ァクロィルトリメチレンアミ ド (C) を得ることが できる。
( iii )
N-ビ才チニル- N' -(メタ)ァクロィル卜リメチレンアミに ( B )
N-イミノビォチこル-Νに(メタ)ァク□ィル卜リメチレンアミに(C)
(ここで、 R21は水素原子又はメチル基を示す。 ) 上記一般式 (lb) で示される重合性ピオチン誘導体は、 一般に下記一般式 (b l) で 示されるピオチン誘導体を、 適当なアクリル化剤 (b 2) (メタクリル化剤等も含む。 例 えばアクリル酸、 アクリル酸クロリ ド、 無水アクリル酸、 ァクリロキシスクシンイミ ド等 のアクリル化剤、 メタクリル酸、 メタクリル酸クロリ ド、 無水メタクリル酸、 メタクリロ キシスクシンィミ ド等のメ夕クリル化剤等) と反応させて得ることができる。
ァクリル化剤 (b2)
FT
""Z ヽ X4— H
(b1)
ここで、 式 (b l) のピオチン誘導体は、 式 (a l ) のピオチン又はピオチン誘導体を 適当な還元剤で還元することによりアルコール体 (X
4 =酸素原子) を得ることができ、 更に該アルコール体の水酸基を脱離基機能を有する官能基に変換後、 ァミン誘導体 (X
4 =一 NH—) と置換反応させることにより得ることができる。
その具体的製造方法を以下に示す。
例えば、 下記に示す通り、 市販のピオチン (Merck製)を、 例えばソジゥムボロハイ ド ライ ド、 ジイソブチルアルミニウムハイ ドライド、 THFボラン、 リチウムアルミニウム ハイ ドライ ド (Flaster and Kohn,J.Heterocycl.Chem.(1981), 18(7), 1425-36)) 等の還元剤に て還元してピオチノ一ル (iv) を得、 ピオチノ一ル (iv) をアクリル化剤と反応し、 再結 晶にてピオチノ一ルァクリレート (D) を得ることができる。
ビ才チノ一ルァクリ レー卜(D) また、 上記ピオチノ一ル (iv) を、 メタクリル剤と反応させて、 ピオチノ一ルメタクリ レート (E ) を得ることができる。
ビ才チノール(iv )
ビ才チノ一ルメ夕クリレー卜(E) また、 下記に示す通り、 ピオチノ一ル (iv) の水酸基を脱離機能を有する官能基に変換 後、 ァミン誘導体と置換反応した後ピオチンアミン (V ) を得、 ピオチンアミンもしくは その塩等を縮合剤 (ジェチルリン酸シアニド、 ジフエニルリン酸アジド等) の共存下、 ァ クリル化剤と反応することにより、 ピオチンアミンアクリルアミド (F ) を得ることがで
ぎる。
ビ才チンアミン(V )
0
入
HN NH 0
H"T 、†H NH ビ才チンアミンァクリルアミド(F) 同様に、 ピオチンアミン (V ) もしくはその塩を縮合剤 (ジェチルリン酸シアニド、 ジ フエ二ルリン酸アジド等) の共存下メタクリル化剤と反応することによりピオチンアミン メタクリルアミ ド (G ) を得ることができる。
ビ才チンアミン(V
更に、 下記に示す通り、 ノルビオチンアミン (vi) もしくはその塩を縮合剤 (ジェチル
リン酸シアニド、 ジフヱニルリン酸アジド等) の共存下にてアクリル化剤と反応すること により、 ノルビオチンアミンアクリルアミ ド (H ) が得られる。
ノルビ才チンアミン(vi )
ノルビ才チンアミンァクリルアミ ド(H)
同様に、 ノルビオチンアミン (vi) またはその塩を縮合剤 (ジェチルリン酸シアニド、 ジフエニルリン酸アジド等) の存在下メタクリル酸と反応することにより、 ノルビオチン アミンメタクリルアミ ド (J ) を得る。
ノルビ才チンアミン(vi )
ノルビ才チンアミンメタクリルアミ ド(J) 上記一般式 (I c ) で示される重合性ピオチン誘導体は、 一般に下記一般式 (c 1 ) で
示されるピオチン誘導体を、 THF、 DMSO、 エーテル、 DMF、 時クロロメタン、 ク ロロホルム、 酢酸ェチル、 アセトン、 脂肪族炭化水素、 ベンゼン、 トルエン等の非プロト ン性溶媒中で、 式 (c 2) で示されるイソシァネート化合物と反応させることにより得る ことができる。
具体的には、 例えば、 ビォチノ一ル (iv) を塩化メチレン等の溶媒中でメタクロィルイ ソシァネート (vii) と反応させることにより、 ピオチノ一ルメタクロイルカルパメート (K) を得ることができる。
ビ才チノ一ル(iv ) メタクロイルイソシァネ一卜(vii )
ビ才チノ一ルメタクロイルカルバメート (K) 上記のようにして得られた本発明の新規重合性ピオチン誘導体 (ピオチンモノマ一) は、 ピオチンモノマ一そのもの、 あるいは該ビォチンモノマ一と共重合性を有するモノマーと ともに、 通常の方法に従い、 例えば可溶な溶媒中に適当なラジカル開始剤を用いて重合す ることにより、 ピオチン成分を含有する高分子誘導体 (以下単にピオチン高分子と称する こともある) を得ることができる。 これにより、 有用性の高いピオチンが固定化された高 分子化合物を容易にかつ工業的に得ることができる。 ここで、 「ピオチン成分」 とは、 ァ ビジン (ストレプトアビジンを含む) と高い結合性を有する部分をいい、 具体的には、 下 記式 (II) で示される成分 (ピオチン成分及びイミノビォチン成分を含む) を言う。 一般式 ( I I )
ビ才チン成分
本発明では、 他の任意のモノマー成分と共重合させることにより、 各モノマーの機能を そなえたピオチン高分子の合成、 設計が可能である。 その結果、 多官能性、 多重機能性高 分子の合成が可能になる。 高分子そのものの特性をいかしつつ、 さらにこのピオチンモノ マ一を重合することによりピオチンモノマーの有用性を利用できる相乗効果のあるビォチ ンポリマーの製造が可能になる。
上記重合性ピオチン誘導体と共重合させることのできる共重合成分としては、 重合性の あるものであれば特に限定されず、 ビニル系、 ビニリデン系、 ブタジエン系等の種々の重 合性モノマ一を挙げることができる。 更に具体的には、 アクリルアミ ド、 メタクリルアミ ド、 スチレン、 N—アルキルアクリルアミ ド、 アクリル酸メチルエステル、 酢酸ビニル、 メタクリロニトリルメチルメタクリレート、 イソプレンなどを挙げることができる。 共重 合比は特に限定的ではなく、 必要に応じて任意の割合で共重合させることができる。
反応後得られた高分子誘導体は、 通常の方法に従い精製することが好ましい。 例えばァ ルコール系溶媒に注ぎ沈殿させることにより精製することができる。 本発明のピオチン高分子の具体的設計例、 応用例を以下に述べる。
例えば、 本発明に従うポリマ一を架橋材を用いてゲル化すると、 ゲル内部にまでビォチ ンを固定化したゲルの容易な設計 ·合成が可能となる。 また磁性体にコ一チングしたり、 分離材料として用いたりすることも容易になる。
また、 ピオチンモノマーの特異性を考慮し、 他のモノマーとの共重合による分子設計で 新たな特異性が出現するポリマ一を得ることもできる。
例えば、 P N I P AM (ポリ一 N—アルキルアクリルアミ ド) は L C S T (下限臨界溶 液温度) を示す公知の高分子であるが (J.MacromoLSci.Chem.,ん, 1441(1968))、 例えば N— ィソプロピルァクリルアミ ドとピオチンモノマーを共重合したものは、 L C S T特性を失 うことなく、 分子認識能も有することができる。
L C S T (下限臨界溶液温度) を有するポリマーは、 相転移温度より高温側にて凝集し、 低温側にて溶解する性質を示し、 各種分離剤、 薬物放出制御、 人工筋肉、 センサー、 ァク チユエ一夕一、 細胞培養用担体等に広く利用される。
本発明で用いることのできる水溶液中で LCST を示す高分子のモノマ一成分としては 特に限定はされないが、 具体的には、 ポリ- N-メチル (メタ) アクリルアミ ド、 ポリ- N-ェ チル (メタ) アクリルアミ ド、 ポリ- N-プロピル (メタ) アクリルアミ ド、 ポリ- N-イソプ 口ピル (メタ) アクリルアミ ド、 ポリ- N-ブチル (メタ) アクリルアミ ド、 ポリ- N-アタリ ロイルピロリ ドン、 ポリ- N-ァクリロイルモルホリン、 ポリ- Ν,Ν-ジメチル (メタ) ァクリ ルアミ ド、 ポリ- Ν,Ν-ジェチル (メタ) アクリルアミ ド等のポリ- (メタ) アクリルアミ ド 誘導体、 Ν-ビニルァセトアミ ド、 Ν-ビニルブチルアミ ド、 Ν-ビニルイソブチルアミ ド等 のポリ- Ν-ビニルアミ ド誘導体、 ポリビニルアセテート部分的加水分解物誘導体、 メチル セルロース誘導体、 ポリ-メチルビニルエーテル、 ポリ-ェチルビ二ルェ一テル等のアルキ ルビ二ルェ一テル誘導体などが挙げられる。
一方、 ァクリルアミ ド又はメタクリルアミ ドと本発明のピオチンモノマ一とを共重合さ せて得た高分子は U C S T (上限臨界溶液温度) 特性を水溶液中および生理食塩水中で示 すことが見出された。
U C S Τを有する高分子誘導体 (以下単に U C S Tポリマーと称することもある) は、 上記アクリルアミ ド又はメタクリルアミ ドと本発明のピオチンモノマ一との仕込み比 (モ ル比) は、 前者対後者の仕込み比が 3 ~ 3 0の間であることが好ましい。 U C S Tの測定 方法としては、 得られたポリマーを水又は食塩水中に溶解し、 石英セルに入れ、 その光路 に 5 5 0 n mの光源をあて、 その透過率と温度の関係について調べる方法を採用すること ができる。
この U C S Tポリマ一は、 温度刺激応答性ポリマ一としてその応用範囲には、 上記と同 様の分野において考えられるが、 L C S Tポリマーとは逆に、 高温側にて溶解し、 低温側 にて凝集するものであるため、 L C S Tポリマーとは異なる材料開発の可能性があり、 刺 激応答材料として魅力の有る製品として期待される。
特に、 低温にて凝集する U C S Tポリマ一を含有する被覆膜上での細胞培養用担体にお いては、 U C S Tポリマ一を被覆した担体上に培養された培養細胞とたん体を低温にて分 離することができる (組織培養、 17,9,349-353(1990))。 また、 高温側の溶液中に共存する 薬物と結合したポリマーが、 温度変化を受け、 低温環境に対応した凝集ポリマーに変化す
ることにより、 その薬物をポリマー内部に包含することになる。 つまり、 薬物放出制御が 行われる(Macromolecules 1994,27,947-952)。
本発明では、 上記高分子化合物に、 更に親水性又は疎水性のモノマ一を共重合成分とし て含有させることができる。 これにより、 水溶液中での L C S Tや U C S Tを変化させる ことができる。 ここで、 親水性、 疎水性とは、 高分子の主成分となるモノマーに対する親 水性または疎水性であることを意味する。
具体的には、 上記の通り主成分となるモノマ一との関係であるため一概に言えないが、 親水性モノマ一としてはアクリル酸、 メタクリル酸、 アクリルアミ ド、 メタクリルアミ ド 等を、 疎水性モノマーとしては、 アクリル酸エステル、 メタクリル酸エステル、 塩化ビニ ル、 塩化ビニリデン、 スチレンなどを挙げることが出来る。
本発明の高分子化合物の分子量は特に限定されず、 高分子化合物の UCSTや LCST な どの性質はその分子量にあまり依存しない。 現実的には通常重量平均分子量 500 〜 1000000程度、 さらに好ましくは 1000 ~ 100000程度である。
分離剤を目的とする場合、 好ましい UCST又は LCSTは 0〜 50 °C、 特に好ましくは 0 〜 40 °Cである。
本発明において、 LCST 又は UCST の範囲 (スイッチング範囲) は狭ければ狭いほど 良く、 本発明によれば、 実用的な 5 °C以下のスイッチング範囲の LCST 又は UCST を有 する熱応答性高分子が得られる。
本発明のピオチンモノマーは生体機能を有する高分子材料として有用なモノマ一であり、 その用途は多岐にわたる (例えば、 Chemical Sensors Vol.12 No.l(1996)p.8 〜 11 参 照)。 それはピオチンそのものがアビジンを分子認識するだけではなく、 その他コラーゲ ンなどの蛋白とも結合するというように複数の物質を認識することができる生体機能材料 ということができるからである。 またアビジンを介したサンドィツチ構造を利用してァフ ィニテイク口マトグラフィ一や、 多くの抗体を認識することを利用した免疫化学などの広 範な分野に、 その応用が考えられる。
本発明の熱応答性高分子は (ィミノ) ピオチンを固定化しているため、 共有結合の生成 によりリガンドを固定化する必要はなく、 アビジンービォチンのァフィ二ティ一の利用に
よりリガンドを固定化する事が可能である。
或いはアビジンはピオチンを認識する部位が 4力所あるため、 アビジンの結合部位の一 つをピオチン固定化熱応答性高分子に使用し、 残りのピオチン結合部位を用いて、 任意の ピオチン化抗体、 ピオチン化酵素、 ピオチン化ヒートショックプロテイン等を固定化でき る。
また予めアビジン固定化リガンドを調整すれば、 直接ピオチン固定化熱応答性高分子に リガンドの固定化が可能である。
固定化したリガンドに、 モノクローナル抗体あるいはポリク口一ナル抗体を用いれば、 水溶液中の微生物の分離、 濃縮が非常に容易にできる。 即ち本発明の熱応答性高分子にに アビジン化あるいはピオチン化された特定の微生物に対するモノクローナル抗体あるいは ポリクロ一ナル抗体を結合させ、 溶液中の微生物と十分に接触させ、 溶液の温度を昇温し 微生物とともに熱応答性高分子を凝集させ、 容易にデカンテ一シヨンにより微生物を回収 することができる。 例えば、 これにピオチン化サルモネラ抗体を結合させることにより、 食品けん濁液中のサルモネラ菌だけを簡単に濃縮、 分離することが出来る。 適当な抗体お よび検出試薬と組み合わせることで、 従来より格段に感度のより微生物検査キットゃ診断 薬に適用することが出来る。
更に本発明の熱応答性高分子に任意の核酸のビォチン化された対塩基を結合させること により、 特定の遺伝子の精製、 濃縮、 検出等に用いることができる。
本発明の刺激応答性材料に結合ないし吸着した標的物質は、 例えば、 ①塩濃度を上げる、 ② p Hを変える (酸性又はアルカリ性にする)、 ③阻害剤、 基質等を加える、 ④尿素、 S D Sなどの変性剤を加える、 ⑤有機溶媒、 金属イオンなどを加える、 ⑥温度を変える、 な どの方法により容易に溶出することができる。
本発明の熱応答型分離材料は、 更に具体的には、 細菌、 残留農薬の検出等の如き検査薬、 診断薬への応用、 微生物や細胞培養の生体物等のバイオプロダクトの分離、 酵素や分子シ ャペロン等の固定化による生体反応機能の活性化 ·維持などに特に有効に利用できる。 更に、 本発明のピオチンを固定化したビォチンモノマ一は工業的にも成り立つ経済性と 効率性がある。
実施例
以下実施例において、 本発明を更に具体的に詳述するが、 本発明はこれらの実施例に何 ら限定されるものではない。
実施例 1 〔2—ピオチニルェチルァクリレート (化合物 A) の合成〕
ピオチン (化合物 i、 Merck 製) 500mg、 2-ヒドロキシェチルアタリレート 200mg、 塩化チォニル 20ml及びトルエン 20mlを室温にて混合し、 還流を 2時間行った。 溶媒を 減圧下除去し、 クロ口ホルム一メタノール混合溶媒にてカラムクロマトを行い、 溶媒を除 去して、 2 —ピオチニルェチルァクリレート (化合物 A) lOOm を粉末物質として得た (収率 14%)。
N MR分析で目的化合物 Aを良く指示した (inDMSO)。
NHおよびアクリル基結合 H: 5H, d 5.8〜 6、 6a, 3a, OCH2: 6H, multi, δ 4.1-4.3, 6 α : 1H, multi, δ 3.1、 6 ? : 1H, d , δ 2.8、 CH2 : 8Η , ά 1~1.60 実施例 2 〔Ν—ビォチ二ルー Ν' —メタクロィルトリメチレンアミ ド (化合物 Β) の合 成〕
Ν- (3—ァミノプロピル) メタクリルアミ ド塩酸塩 (化合物 iii) 18 gとピオチン 24 gとトリエチルァミン 30 gを 300 m 1の N, N—ジメチルホルムアミ ド (DMF) に溶 解し、 0°Cに冷却した。 この混合物中にジフエ二ルホスフォニルアジド 28 gを 50 ml の DMFに溶解させた溶液を 1時間かけて滴下した。 滴下終了後、 0°Cで 3時間攪拌し、 更に室温で 12時間攪拌を行った。 反応終了後減圧下、 溶媒を留去し、 残留物をクロロホ ルムーメタノール混合溶媒を展開溶媒に用いてカラムクロマトグラフィーを行ったところ、 目的物である N—ビォチ二ルー N' —メタクロィルトリメチレンアミ ド (化合物 B) 22 gを白色粉末として得た (収率 59%)。
N MR分析で目的化合物 Bを良く指示した (iriDMSO)。
CONH: 2H, br.s, δ 7.9、 NH, NH: 2H, d, δ 6.4、 H2, H3: 2Η, s, δ 5.6, δ 5.3、 3a、 6a: 2H, br.d, δ 4.2、 CH2: 4H, s, δ 3.0、 6 a ,G β : 2H, multi, δ 2.8、 4Η : 1Η, multi, δ 2.6、 COCH2: 2H, br.s, δ 2.1、 CHs: 3H, δ 1.8、 CH2: 8H, δ 1.2〜
実施例 3 〔N—イミノビォチニルー N ' —メタクロィルトリメチレンアミ ド (化合物 C ) の合成〕
実施例 2の N— (3—ァミノプロピル) メタクリルアミ ド塩酸塩 18 gの代わりに N— ( 3 —ァミノプロピル) メタクリルアミ ド臭化水素酸塩 18 gを、 ピオチン 24 gの代わ りにイミノビォチン 24 gをそれそれ用いた以外は実施例 2と全く同様にして、 N -イミ ノビォチニル一 N ' —メタクロィルトリメチレンアミ ド (化合物 C ) の臭化水素酸塩 15 gを得た (収率 42 % )。
N M R分析で目的化合物 Cの臭化水素酸塩を良く指示した (inDMSO)。
NH, NH: 2H, d, δ 8.0 〜 8.2、 CONH: 2Η, br.s, δ 7.9、 =ΝΗ · HBr: 2H, s, δ 7.5, H2, H3: 2Η, s, δ 5.6, δ 5.3、 3a、 6a: 2H, br.d, δ 4.2、 CH2: 4H, s, δ 3.0、 6 cc ,6 β : 2Η, multi, δ 2.8、 4Η: 1Η, multi, δ 2.6、 COCH2: 2H, br.s, δ 2.1、 CH3: 3H, δ 1.8、 CH2: 8H, δ 1.2〜 1.5。 実施例 4 〔ピオチノ一ルァクリレート (化合物 D ) の合成〕
4-1)ピオチン (化合物 i ) からピオチノ一ル (化合物 iv) の合成
リチウムアルミニウムハイ ドライ ド 1.96g ( 51.64mmol) を脱水ェ一テル 250mlに少し ずつ入れて撹拌し、 この中にピオチン (化合物 i ) 1.96g(8.02mmol)をピリジン 50ml に 溶かした熱い溶液を滴下し、 室温にて 30分撹拌した。 その後 30分還流し、 反応を終了 した。 過剰のリチウムアルミニウムハイ ドライドは水等にてつぶし、 ピリジンを減圧下除 去した。 残査に 6N塩酸を入れ、 pHをほぼ 2に合わせた後クロ口ホルムにて抽出し、 溶 媒を除去すると、 白色粉末を得た。 メタノールから再結晶してビォチノ一ル (化合物 iv) 1.6mgを得た (収率 85 % )。
4-2)ビォチノール (化合物 iv) とアクリル化剤の反応によるピオチノ一ルアタリレート (化合物 D ) の合成
反応式 1
ビ才チノール(iv)
ビ才チノ一ルァクリレ一卜(D) ピオチノ一ル (化合物 iv) 230mg (lmmol)、 トリェチルァミン 273mg (3mmol)、 無水 アタリル酸 252mg (2mmol)、 ジメチルァミノピリジン 12.9mg (O.lmmol)及びジクロ口 メタン 5mlを室温にて混合した後還流し、 反応溶液を NaHC03飽和水溶液、 飽和食塩水、 水にて洗い反応を終了した。 溶媒にて抽出し、 クロ口ホルム一メタノール混合溶媒を展開 溶媒としてカラムクロマトを行ったところ、 ビォチノールアタリレート (化合物 D) 170mgを白色粉末として得た (収率 59 % : ビォチンメチルエステルからビォチノールァ クリレートまで収率約 50%)。
NMR分析及び質量分析 (MS) の結果は目的化合物 Dを良く指示した
NMR (in CDCL) Hi, H2, H3: δ 6.4〜66.1、 Η3: 1H, d, δ 5.9、 NH: 1H, s, δ 5.6, δ 5.1、 6a: 1H, multi, δ 4.5、 3a: 1H, tri, δ 4.3、 OCH2: 2H, tri, δ 4.1、 H4: 1H, multi, δ 3.1、 6 a: 1H, quart, δ 2.9、 6 9 : 1H, d, δ 2.6、 CIL: 8H,
MS 質量 =285 実施例 5 〔ピオチノ一ルメ夕クリレート (化合物 E) の合成〕
実施例 4で得たピオチノ一ル (化合物 iv) 550mg (2.3mmol)、 ト リェチルァミン (EtsN) 1.4g (7mmol)、 無水メタクリル酸 1.6g (4.6mmol)、 ジメチルァミノピリジン 60mg (0.5mmol)及びジクロロメタン (溶媒) 4ml を室温にて混合した後還流し、 NaHCOs飽和水溶液にて洗い反応を終了した。 クロ口ホルムにて抽出し、 クロ口ホルム 一メタノール混合溶媒にてカラムクロマトを行ったところ、 ピオチノ一ルメタクリレート (化合物 E) 630mgを白色粉末として得た (収率 40%)。
N MR分析及び質量分析 (MS) の結果は目的化合物 Eを良く指示した。
NMR (inDMSO) NH: 1H, s, δ 6.4、 ΝΗ: 1Η, s, δ 6.3、 H2, H3: 1H, s, δ 6.0 -5.6, 6a: 1H, multi, δ 4.3、 3a, OCH2: 3H, multi, δ 4.1、 6 a: 1H, quart, 0" 3.1、 6 ? : 1H, d, (J 2.8、 CH3: 3H, s, δ 1.9、 CH2: 8H, δ 1~1.6。
MS 質量 =3 00 実施例 6 〔ピオチンアミンアクリルアミ ド (ィ匕合物 F)の合成〕
反応式 2
6-1)ビォチノールトシレート(ィ匕合物 viii)の合成
0°Cにて P-トルエンスルフォニルクロライ ド 2400mg(12.6mmol)を混合したドライピリ
ジン 25ml溶液に実施例 2で得たピオチノ一ル (化合物 iv) lg (4.3mmol)を入れた。 その 後 0 °Cにて 15時間放置した。 反応後、 反応液を水にあけ、 ジクロロメタンにて抽出した 後溶媒を除去し、 ビォチノールトシレート (化合物 viii) 900mgを得た (収率 54 % )。 6-2)ピオチンフタルイミ ド誘導体 (化合物 ix) の合成
上記で得たピオチノ一ルトシレート(化合物 viii)900mg (2.3mmol)を脱水ジメチルホル ムアミ ド (DMF) 14ml に溶かし、 フタルイミ ドカリウム塩 481mg (2.6mmol)をいれて 60 °Cにて 20時間加熱した。 反応終了後、 水をいれるとフタルイミ ド誘導体が析出した。 これをろ過し乾燥して、 ピオチンフタルイミ ド誘導体 (化合物 ix) 570m を得た (収率 68%) o
6-3)ピオチンアミン (化合物 X ) の合成
メタノールにゆつく りヒドラジンモノ水和物 626mg を入れ (0.5M、 MeOH溶液にす る)、 さらに上記で得られたピオチンフタルイミ ド誘導体 (化合物 ix) 570mgをいれた。 チヅソ雰囲気下 40 °Cにて 20 時間反応させたところ、 ピオチンアミン (BiNH2)未精製物
(化合物 X ) 411mgを得た (収率ほぼ 100 % )。
6-4)ピオチンアミンアクリルアミ ド (化合物 F ) の合成
上記ピオチンアミン (化合物 X ) を塩酸により塩酸塩にして得たピオチンアミン塩酸塩 133mg (0.5mmol)とァクリル酸 36 μ. 1 (0.5mmol)をジメチルホルムアミ ド (DMF;溶 媒) 4mlに溶かし、 0 °Cに保ち、 撹拌した。 これにジフエ二ルリン酸アジド(DPPA)165〃 1 (0.6mmol)を滴下し CTCに保った。 さらにトリエチルァミン 208 μ. 1(1.5 mmol)を 1ml の DMFに溶かした溶液を滴下し 0 °Cにて 2 ~ 4時間撹拌した。
その後室温に保ち終夜反応させた。 反応終了後 DMFを飛ばし、 クロ口ホルムにて抽出 し、 1N塩酸と NaHC03、 水にてクロ口ホルム層を洗い、 溶媒を除去した。 残査を THF - n-へキサン混合溶媒に溶かしビォチンアミンアクリルアミ ド (化合物 F ) 40mg (収率 25 % ) を沈澱物として得た。
N M R分析及び質量分析 (M S ) の結果は目的化合物 Fを良く指示した。
N M R (inDMSO) CONH: 1H, s, δ 7.9、 HI , H2, H3: 3H, ,multi, δ 7.5-6.9, ΝΗ, ΝΗ: 1Η, s, δ 6.4, δ 6.3、 6a: 1Η, multi, δ 4.3、 3a: 1H, multi, δ 4.1、
CONHCH2, H4: 3H, multi, 6 3.5-3.0, 6 ひ : 1H, quart, δ 2.8、 6 ?: 1H, d, δ 2.5、 CH 2 : 8H, δ l~1.6o
MS 質量 =284 実施例 7 〔ピオチンアミンメタクリルアミ ド (化合物 G) の合成〕
ピオチンアミン塩酸塩 lOOmg (0.38mmol)とメタクリル酸 38 j l(0.43mmol)を DMF
(溶媒) 5ml に溶かし、 0°Cに保ち撹拌した。 これに DPPA130 Z l(0.5mmol)を滴下し 0 °Cに保った。 さらにトリエチルアミン 156 I (l.lmmol)を 1mlの DMFに溶かした溶液 を滴下し 0 °Cにて 2 ~ 4時間撹拌した。 その後室温に保ち終夜反応させた。 反応終了後 DMF を減圧下除去し、 クロ口ホルムにて溶解し、 1N塩酸と NaHC03、 水にてクロロホ ルム層を洗い、 溶媒を除去した。 これを THF-nへキサン混合溶媒に溶かしピオチンアミ ンメタクリルアミ ド (化合物 G) 40mgを沈澱物として得た (収率 35%)。
NMR分析及び質量分析 (MS) の結果は目的化合物 Gを良く指示した。
CONH: 1H, s, δ 7.9、 Hi, H2, H3: 3H, multi, 7.5-6.9, NH, NH: 1H, s, δ
6.4, δ 6.3、 6a: 1H, multi, 64.3、 3a: 1H, multi, δ 4.1、 CO HCH2、 H4: 3H, multi, δ 3.5-3.0, 6 ひ : 1H, quart, δ 2.8、 6 3 : 1H, d, δ 2.5、 CH2: 6H, δ
MS 質量 =299 実施例 8 〔ノルビオチンアミンアクリルアミ ド (化合物 H)の合成〕
ノルビオチンアミ ン塩酸塩 (Merck 製) 125mg (0.5mmol)とァクリル酸 36 μ. 1 (0.5mmol)を ジメチルホルムアミ ド (DMF;溶媒) 3ml に溶かし、 0°Cに保ち、 撹拌し た。 これにジフエ二ルリン酸アジド (DPPA)165〃 1 (0.6mmol)を滴下し 0°Cに保った。 さ らにトリェチルァミン 208〃 1(1.5 mmol)を 1mlの DMFに溶かした溶液を滴下し 0 °Cに て 2~ 4時間撹拌した。
その後室温に保ち終夜反応させた。 反応終了後 DMFを飛ばし、 クロ口ホルムにて抽出 し、 1N塩酸と NaHC03、 水にてクロ口ホルム層を洗い、 溶媒を除去した。 残査を THF-n
へキサン混合溶媒に溶かしノルビオチンアミンアクリルアミ ド (化合物 H)30mgを沈殿物 として得た (収率 20 %)。
N M R分析は目的化合物 Hを良く指示した (inDMSO)
N M R (inDMSO) CONH: 1H, s, δ 7.8、 腿, ΝΗ: 1H, s, δ 6.4, δ 6.3、 Hi, Η2: 1H, s, δ 5.6, δ 5.3、 6a: 1H, multi, δ 4.3、 3a: 1H, multi, δ 4.1、 CONHCH2> H4: 3H, multi, δ 3.5〜 3.0、 6 α : 1Η, quart, δ 2.8、 6 3 : 1H, d, δ 2.5、 CH3: 3H, δ 1.8、 C¾: 8H, δ 1 ~ 1.6。 実施例 9 〔ノルビオチンアミンメタクリルアミ ド (化合物 J ) の合成〕
ノルビオチンアミン塩酸塩 94mg (0.38mmol)とメタクリル酸 38 l(0.43mmol)を DMF (溶媒) 3ml に溶かし、 0 °Cに保ち、 撹拌した。 これに DPPA130 l(0.5mmol)を滴 下し 0 °Cに保った。 さらにトリエチルアミン 156 1 ( l.lmmol)を 1mlの DMFに溶かし た溶液を滴下し 0 °Cにて 2〜 4時間撹拌した。 その後室温に保ち終夜反応させた。 反応 終了後 DMF を除去し、 クロ口ホルムにて抽出後、 1N塩酸と NaHCCk 水にてクロロホ ルム層を洗い、 溶媒を除去した。 これを THF-n へキサン混合溶媒に溶かしノルビオチン アミンメタクリルアミ ド (化合物 J ) 30mgを沈澱物として得た (収率 30 % )。
N M R分析は目的化合物 Jを良く指示した (inDMSO)
CONH: 1H, s, δ 7.8、 ΝΗ, ΝΗ: 2Η, d, 6.4、 Hi , H2: 1H, s, δ 5.6, δ 5.3、 6a: 1H, multi, δ 4.3、 3a: 1H, multi, δ 4.1、 CONHCIL, H4: 3H, multi, δ 3.5-3.0, 6 a : 1H, quart, δ 2.8、 6 ? : 1H, d, δ 2.5、 CH3: 3H, δ 1.8、 CH2: 6H,
実施例 1 0 〔ピオチノ一ルメタクロイルカルパメート (化合物 ) の合成〕
メタクロィルイソシァネート (化合物 vii) 266mg を塩化メチレン 20ml に溶かし 0 °C に保ち、 ビォチノール 500mg を含む塩化メチレン溶液を徐々に滴下し、 1時間攪拌し、 更に室温で 10時間攪拌した。
反応終了後、 飽和重曹水 30ml を加え、 クロ口ホルムにて抽出した。 クロ口ホルム層を
減圧下溶媒を留去し、 残査をシリカゲルを用いてカラムクロマトを行った。 得られた粗目 的物をィソプロパノールを用いて再結晶を行い、 ビォチノールメタクロイルカルバメート (化合物 ) 120mgを得た (収率 16%)。
N M R分析で目的化合物 Kを良く指示した。
CONHCO: 1H, s, δ 8.4〜 8.5、 ΝΗ: 1H, s, δ 6.2、 Η2, Η3: 1H, s,S 5.8, δ 5.6、 NH: 1H, s, δ 5.5、 6a: 1H, multi, δ 4.5、 3a: 1H, multi, δ 4.3、 OCH2: 2H, tri, δ 4.2、 4H: 1H, multi, δ 3.2、 6 : 1H, quart, δ 2.9、 6 ^ : 1H, d, δ 2.7、 CH3 : 3H, s, δ 1.9、 CH2: 8H, δ 1.2〜 1.7。
尚、 上記 N M Rデータの各プロトン表示は下記の通りである。
ビ才チノ一ルァクリレー卜
ビ才チンアミンァクリルアミド
ノルビ才チンアミンァクリルアミド
ビ才チノールメタクリレー卜
ビ才チンアミンメタクリルアミド
(アミ ドは酸素原子の代わりに Ν Ηに変わる)
実施例 1 1 ~ 1 5 〔アクリルアミ ド /ピオチノ一ルァクリレート共重合体の合成〕
アクリルアミ ド 710mg、 ピオチノ一ルァクリレート (化合物 B ) 142mg、 ジメチルス ルフォキシド 10ml及び 2 , 2 ' ーァゾビス (2, 4—ジメチルバレロニトリル) 8.5mg を混合し、 チッソ雰囲気下脱気した。 その後徐々に温度を昇温し、 攪拌しながら 45 °Cに て反応を 2〜 3時間行った。 最後に 65 °C付近にまで昇温して反応を完結させた。 反応系 に溶媒 (ジメチルスルフォキシド) を数 ml加え、 エタノールに注ぐと沈殿を生じた (収
率 95%以上)。 沈殿は乾燥した後、 水に溶解し透析した。 水を除去してポリマーの精製を 終了した。
上記アクリルアミ ドとピオチノ一ルァクリレートとの仕込み比 (モル比) を種々変え、 開始剤を 2種類 (上記開始剤 2, 2 ' —ァゾビス (2 , 4—ジメチルバレロニトリルの代 わりに、 ァゾビスイソプチロニトリルを使用。 各々の反応温度は異なり分子量も異なる) 使用して重合したポリマーの結果を表一 2に示す。
表一 2 アクリルアミドとビォチノールァクリレー卜の共重合高分子の仕込み比
(モル比).を変化した場合に、 測定溶液の透過率が 5 0 %を示す温度
分子量測定は TOSOの G4000PWを使用した。
生食中:生理的食塩水中にて透過率を測定した場合
水中:蒸留水中にて透過率を測定した場合。
仕込み比:モル比
2,2 ' -ァゾビス (2,4-ジメチルバレロニ卜リル)使用の場合の重合温度は 45°C~65°C
ァゾビスイソプチロニトリル使用の場合の重合温度は 80°C
実施例 11、 12の透過率測定溶液濃度: 6mg ml
実施例 13の水中透過率測定溶液濃度: lOmg/ml
実施例 13の生食中透過率測定溶液濃度: 6mg/ml
実施例 14の透過率測定溶液濃度: 22.4mg ml
実施例 15の透過率測定溶液濃度: 6mg/ml
A A m:アクリルアミド ■ B A : ビ才チノールァクリレー卜
また、 アクリルアミ ド /ピオチノ一ルアタリレート共重合体 (仕込みモル比 2 0 : 1 ) の N M Rデータ (inDMSO) は以下の通りであった。
4ピーク : (5 7.5 ~ 6.5、 s : δ 6.4、 s : δ 4.3、 s : δ 4.1、 s : δ 3.1、 broad: δ 2.8、 broad: δ 2.1、 broad: (5 1.5〜 1.3。
尚、 仕込み比 (モル比) が変化しても下記と同様のピークを示した。 更に、 ピオチノ一 ルァクリレ一卜のホモポリマーの場合は、 5 7.5 ~ 6.5部分のピークが約 1本になり、 そ の他は共重合体と同じところにピークが見られた。 更に、 上記アクリルアミ ド /ピオチノ一ルアタリレート共重合体 (仕込みモル比 2 0 : 1 ) の上限臨界溶液温度 (U C S T ) を図 1〜図 3に示す。
即ち、 図 1は昇温時と降温時の温度と透過率の関係を示す図であり、 上記アクリルアミ ド /ピオチノ一ルアタリレート共重合体 (仕込みモル比 2 0 : 1 ) の水中における U C S T (コポリマ一濃度 1 0 mg / ml) を示す。
図 2は生理的食塩水中におけるアビジンを認識したコポリマーの透過率変化 (降温時) を示す図であり、 ァクリルアミ ド /ピオチノ一ルァクリレート共重合体 (仕込み比 2 0 ) の生理的食塩水中 (コポリマー濃度 6mg/ml) におけるアビジン認識能と U C S Tの変化 (降温時の透過率のみ) を示す。
図 3は、 N—イソプロピルァクリルァミ ドとビォチノールァクリレ一トコポリマ一のァ ビジン添加による L C S T変化 (降温時) を示す図であり、 上記コポリマ一を含有する水 溶液中にアビジンを添加すると、 その透過率変化が少なくなり、 コポリマーが溶け易くな ることが判る。
このように、 本発明のビォチンモノマ一を共重合成分として含有する共重合体は、 温度 刺激応答材料としての特性を有することがわかる。 実施例 1 6 [ピオチン固定化ポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ドの合成]
300 m l容のフラスコ内に N-イソプロピルァクリルアミ ド 0.488 g:、 N-メタクロィル - Ν'-ピオチニルプロピレンジァミン 0.159 gおよび蒸留水 9 4 m 1を添加し室温でよく撹 拌した。 そこに 0.1 gの過硫酸カリウムを添加し、 室温で 6時間撹拌した。 得られた溶液 を一昼夜透析し、 LCST を有するピオチン化ポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ド溶液を
得た。 得られた溶液の下限臨界溶液温度 (LCST)を測定したところ、 31 であった。 この LCSTは生理食塩水中や lOOmMのリン酸緩衝液 (pH7.0)中でもほとんど変化しなかった c さらに LCST 以上に加温したポリマーの凝集能力は非常に高く、 下層に沈殿し、 デカン テ一シヨンによりポリマーを回収することができた。
尚、 LCSTは可視光の透過率を用いて求めた。 実施例 1 7 [水溶液中からのアビジンの分離]
実施例 1 6で得られたポリ -N-ィソプロピルァクリルァミ ド 水溶液 50〃 1、 1.0% ァビジ ン溶液 50 1、 1.0Mリン酸ナトリゥム緩衝液 (pH7.0) 100〃 1、 蒸留水 800 1を試験 中で良く混合した後、 氷水中に置き溶液の温度が LCST 以下にした。 凝集物をデカンテ —シヨンにより回収し、 上清部分 100 // 1を取り出し、 SDS による変性処理後、 SDS-ポ リアクリルアミ ドゲル電気泳動 (SDS-PAGE)により上清からァビジンに対応するパンドが 無くなつていることを確認した。 実施例 1 8 [卵白中からのアビジンの特異的分離]
実施例 1 6で得られた LCST を有するポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ド水溶液 50 M l , 1.0%アビジン溶液 50 1、 1.0M リン酸ナトリゥム緩衝液 (pH7.0)100 1、 蒸留 水 450 1、 2.5%の卵白溶液 400 1を試験中で良く混合した後、 氷水中に置き溶液の 温度が LCST 以上にした。 凝集物をデカンテーシヨンにより回収し、 上清部分 100 1 を取り出し、 SDS による変性処理後、 SDS-PAGE により上清からアビジンに対応するバ ンドのみが無くなつていることを確認した。 実施例 1 9 [[ピオチン固定化ポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ドへのアビジン化酵素の 固定化]
実施例 1 6で得られたポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ド水溶液 100 〃 1、 市販のァ ビジン化ペルォキシダ一ゼ溶液(lmg/ml)1000 μ. 1、 1.0M リ ン酸ナト リゥム緩衝液 (pH7.0)100 〃 1及び蒸留水 700 〃 1を添加し、 良く混合した。 得られた溶液を冷却し、
デカンテ一シヨンにより凝集物を回収し、 上清 1900 〃 1を取り除いた後、 新たに 0.1M リン酸緩衝液 (pH 7.0) 1900〃 1を添加し、 アビジン化ペルォキシダ一ゼを固定化した LCST を示すポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ド水溶液を調製した。 この溶液は LCST 以下では溶解し、 LCST以上では凝集した。 溶液の温度を恒温槽により変化させ、 溶解、 凝集およびデカンテ一シヨンによる回収の操作を行い、 それぞれの上清のペルォキシダ一 ゼの活性を下記に示すペルォキシダ一ゼの活性測定法により測定した。 なお、 デカンテ一 シヨンによる回収後は毎回上清 1900 〃 1を取り除き、 新たに 0.1M リン酸緩衝液 (pH 7.0) 1900 pi 1を添加した。
(ペルォキシダ一ゼ活性測定法)
lOOmM 過酸化水素 100〃 1、 50mM フエノール、 50mM 4-ァミノアンチピリン 100 1、 1.0M リン酸ナトリゥム緩衝液 (pH 7.0)100〃 1、 蒸留水 580 JJL 1を吸光度計のセ ル内で予め混合し、 そこへサンプル 20 1を添加し、 再び良く混合した後、 生成物を 500nmの吸収の増加により測定した。 なお、 反応は 3 0 °Cで行った。
上記の方法により繰り返し凝集、 溶解を行った場合の上清の酵素活性を測定した結果を 下記表— 3に示す。 なお、 酵素活性は最初の溶解時の活性を 100 とした場合の比活性で 示した。
表一 3
この結果よりポリ- N-ィソプロピルァクリルアミ ドに固定化されたアビジン化ペルォキ シダ一ゼはポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ドと共に溶解、 凝集を繰り返しかつ同作業
の繰り返しによっても活性は無くならないことが明らかとなった
( 実施例 2 0 [アビジン化 ポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ドへのピオチン化酵素の固定] まず、 アビジンのピオチン結合サイ ト 3力所が空いている状態のアビジン化 ポリ- N-ィ ソプロピルアクリルアミ ドを得るため、 実施例 1 で得られたポリ- N-イソプロピルァクリ ルアミ ド水溶液 50 1に 1.0%ァビジン溶液 500 1、 1.0M リン酸ナトリゥム緩衝液 (pH7.0) 100〃 1、 蒸留水 350 1を試験中で良く混合した後、 40 °Cの恒温槽中に置き溶 液の温度を LCST 以上にした。 凝集物をデカンテーシヨンにより回収し、 ポリマ一との 結合部位以外のピオチン結合サイ トが空いているアビジン化ポリ- N-ィソプロピルァクリ ルアミ ドを得た。 このポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ド水溶液 100 ju 1 , 市販のピオ チン化ペルォキシダーゼ溶液 (lmg/ml)1000 ju 1、 1.0M リン酸ナト リゥム緩衝液 (pH 7.0) 100 1及び蒸留水 700 1を添加し、 良く混合した。 得られた溶液を冷却し、 デ カンテ一シヨンにより凝集物を回収し、 上清 1900 1を取り除いた後、 新たに 0.1M リ ン酸緩衝液 (pH 7.0) 1900〃 1を添加し、 ピオチン化ペルォキシダ一ゼを固定化したァ ビジン化 ポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ドを調製した。 このポリ- N-イソプロピルァ クリルアミ ドを使って、 実施例 1 9と同様に溶解、 凝集回収を繰り返し、 上清の酵素活性 を測定した結果を下記表一 4に示す。 なお、 酵素活性についても同様に最初の溶解時の活 性を 100とした場合の比活性で示した。
表一 4
ポリ- N-ィソプロピルァ ポリ- N-ィソプロピルァクリ
繰り返し数
クリルアミド水溶液のぺルアミド凝集、回収後の上清
(回)
ル才キシダーゼ活性 ) のペルォキシダーゼ活性 )
1 1 0 0 1
2 1 0 1 1
3 1 0 0 1
5 9 8 0
1 0 9 7 0
2 0 9 5 0
この結果よりアビジンの固定化されたポリ- N-ィソプロピルァクリルアミ ドに結合した ピオチン化ペルォキシダ一ゼはポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ドと共に溶解、 凝集を 繰り返しかつ同作業の繰り返しによっても活性は無くならないことが明らかとなった。 実施例 2 1 [ポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ドへの分子シャペロンの固定化]
市販のピオチン化されたヒ一トショックプロティン HSP70を lOOmMのリン酸ナトリ ゥム緩衝液 (pH 7.0)によく混合させた後、 5 1を取り出し、 変性処理後、 SDS-PAGEに より HSP70 のバンドを確認した。 続いて実施例 2 0で調製した、 ポリマ一との結合部位 以外のピオチン結合サイ トが空いているアビジン化ポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ド 水溶液 50 1を加え、 良く混合したのち、 実施例 1 7と同様に溶液を加熱して本化合物 を凝集後、 デカンテ一シヨンにより回収し、 上清の HSP70 を同様に SDS-PAGE により 確認したところ上清には HSP70 は無く、 ポリ -N-ィソプロピルァクリルァミ ドに固定化 されたアビジンと結合していることが確認された。 実施例 2 2 [微生物の分離濃縮方法]
市販のピオチン化サルモネラ抗体を実施例 1 9と同様にポリ -N-ィソプロピルァクリル アミ ドに固定化した。 固定化したことは SDS-PAGE を用い確認を行った。 続いてこのサ ルモネラ菌が 1個/ m 1になるように調整した菌けん濁液 20 m 1にこのポリ -N-ィソプロ ピルァクリルァミ ド水溶液 1 m 1を添加してよく撹拌後、 実施例 1 6と同様に溶液を加熱 し、 ポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ドを凝集後、 デカンテ一シヨンにより回収し、 上 清を取り除き 1 m 1の溶液とした。 この溶液を予め滅菌し、 50てにインキュベートして いたブレインハートインフユ一ジョン寒天培地 20 m lに添加し、 すばやく混合後、 シャ —レに広げ、 寒天が固まるまで放冷し、 37 で 48時間インキュベートした。 48時間後 のコロニー数を計測した結果を下記表一 5に示した。 また、 これら総ての操作はクリーン ベンチ内にて行った。 また、 対照として、 ポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ドを添加せ ず、 最初に調整した菌けん濁液 1 m 1中の菌数を同様に測定した。
表一 5
この結果より、 サルモネラ菌は本発明のポリ一N—イソプロピルァクリルアミ ドにより濃 縮されていることが明らかである。 実施例 2 3 [ポリ- N-ィソプロピルァクリルアミ ドへの核酸の固定化]
市販のピオチン化ラベルされた DNA断片 500〃 1 (50 ~ lOOObp) に蒸留水 450 1、 実施例 2 0で調製したポリマ一との結合部位以外のピオチン結合サイ トが空いているアビ ジン化ポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ド水溶液 を加え、 良く混合したのち、 実 施例 1 7と同様に溶液を加熱し、 ポリ- N-イソプロピルアクリルアミ ドを凝集後、 デカン テ一シヨンにより回収し、 上清の DNA断片をァがロースゲル電気泳動により確認したと ころ、 いずれの DNA断片もポリ- N-イソプロピルァクリルアミ ドに結合していることが 示唆された。 RNA についても同様の実験を行い、 ポリ- N-イソプロピルアクリルアミドへ の結合を確認した。 産業上の利用可能性
本発明の重合性ビォチン誘導体 (ピオチンモノマ一) は重合性が高く、 本モノマ一を用 いることにより、 種々の分野に適用可能なピオチン成分を含有する高分子誘導体が容易に 製造できる。
特に本発明によれば、 他のモノマーとの共重合により、 各モノマーの機能をそなえた高 分子の合成、 設計が可能であり、 特に、 ピオチン成分のピオチン—アビジン結合性に起因 する有効性を利用しつつ、 他の共重合成分や添加剤を工夫することにより、 広範な範囲に 適用可能な種々の多官能性、 多重機能性の高分子を合成、 設計することが可能となる。 例えば、 ピオチンモノマーとアクリルアミ ドまたはメタクリルアミ ドとの共重合体は、
U C S Tを水溶液中及び生理食塩水中で示すため、 刺激応答材料としても魅力ある製品と なる。 また、 ピオチンモノマーと L C S Tを示す高分子のモノマ一との共重合体は、 L C S T以上で非常に高い凝集力を有するため、 反応を行うときは水溶液中で均一系で反応を 行い、 反応終了後、 昇温操作でリガンド固定化高分子が凝集し、 リガンドの固定化した高 分子を濾過により容易に回収することができる。
これらの本発明の熱応答性高分子を用いることにより、 優れた分離剤、 検査薬、 固定化 酵素、 変性蛋白改質剤等を得ることができる。。
本発明の重合性ビチオン誘導体は、 生体機能を有する高分子材料として有用なモノマ一 であり、 その用途は、 ィムノアツセィ、 バイオセンサ一、 D N A操作、 分離材、 臨床療法 など多岐にわたる。 それは、 ピオチンそのものがアビジンを分子認識するだけでなく、 そ の他多くの抗体やコラーゲンなども認識する生体機能材料であるためであり、 例えばアビ ジンを介したサンドィツチ構造等により種々応用できる。
更に、 本発明の重合性ピオチン誘導体を用いて得られる高分子化合物は、 工業的に製造 可能であり、 優れた経済性及び効率性を有する。