JP3655327B2 - オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、オリゴ糖鎖を有するスチレンおよびポリスチレン等のスチレン誘導体、並びに、該スチレン誘導体の製造方法に関する。詳しくは、主に生医学用材料、例えば肝細胞培養用材料等として使用されるオリゴ糖鎖を有するポリスチレン誘導体、並びに該ポリスチレン誘導体の原料であるスチレン誘導体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞培養技術の進歩により、細胞の増殖・分化・老化・ガン化などの仕組みの研究が進むとともに、ワクチン・ホルモン・インターフェロン等の生理活性物質の生産が容易になってきている。また、肝細胞、血管壁細胞、皮膚繊維芽細胞等の各種細胞の培養研究から、人工肝臓、人工血管、人工皮膚といったバイオ型人工臓器への応用も期待されている。細胞のもつ多岐にわたる機能を生体外で長期的に発現させるために、細胞培養することの意義は大きい。
【0003】
一例として肝細胞を例に挙げる。肝臓は脊椎動物においては体内最大の腺性器官であり、物質代謝とその調節の大部分が行われる代謝中枢部である。肝細胞は本来、数年に及ぶ長い寿命と、肝臓の一部を切除したときには活発に増殖するように潜在的な増殖能をもっている。しかし、生体外で細胞培養を行うと寿命が短くなり、増殖能をほとんど示さず、代謝活性も急速に失われる。細胞を培養するためには細胞が接着するための固体表面が必要である。肝細胞は、通常用いられる表面処理を施したガラスやポリスチレン製の培養皿には接着しにくく、機能を保持したまま接着・増殖できる生医学材料の開発が望まれている。
【0004】
近年、細胞接着や細胞膜情報伝達機構等の分子レベルでの理解が進むにつれて、糖タンパク質や糖脂質として細胞膜表面に存在する糖鎖が細胞の認識機能に重要な役割を演じていることが明らかになってきた。
高分子論文集第42巻、No.11、第719〜724頁(1985年)には、グルコース、マルトース、ラクトース、マルトトリオース等の単糖やオリゴ糖鎖を側鎖にもつポリスチレン類を合成し、これらを塗布した培養皿の上でラット肝細胞の接着実験を行ったことが記載されている。該論文によれば、これらの重合体の中で、特にラクトースを側鎖にもつ、式(9)[化15]
【0005】
【化15】
で表される構造を有するポリスチレンは、血清の有無にかかわらず、肝細胞の接着能を飛躍的に増大させ、ハイブリッド型生医学材料として優れた特性をもつことが記載されている。
【0006】
また、特開平3−47802号公報には、N−アセチルキトオリゴ糖鎖を有する、式(10)[化16]
【0007】
【化16】
(式中、nは1〜10の整数)で表される構造のスチレン誘導体、その重合体およびそれらの構造方法が開示されている。しかし、上記刊行物に記載されたものは、いずれもオリゴ糖またはキトオリゴ糖をもつスチレン誘導体の製造方法として、対応するオリゴ糖またはキトオリゴ糖をラクトン化した後、ビニルベンジルアミンと反応させることが記載されている。
【0008】
しかしながら、該製造方法では、スチレン基とオリゴ糖鎖またはキトオリゴ糖鎖とをつなぐ反応がアミンによるラクトンの開環反応であるため、オリゴ糖またはキトオリゴ糖の特徴的な構造である環構造を少なくとも1つは破壊(開環)してしまうこと、および、オリゴ糖またはキトオリゴ糖を一旦単離する必要があるため工程が煩雑となる、等の欠点があった。オリゴ糖またはキトオリゴ糖の環構造破壊(開環)することなしに保持することが可能になれば生物認識活性がさらに高くなることが期待され、例えばこれを肝細胞の培養等の生医学材料として用いる場合には、材料中に貴重なオリゴ糖鎖を小量導入すれば良いことになり、また単糖類、2糖類等の重合度の低い糖類も利用できる利点があり応用範囲が広くなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、オリゴ糖鎖を有する新規なスチレン誘導体、および該スチレン誘導体の簡便でしかも高収率な製造方法を提供することにある。また、本発明の他の課題は、新規な生医学材料であるオリゴ糖鎖を有する該スチレン誘導体の重合体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題につき鋭意検討を重ねた結果、オリゴ糖の還元性水酸基をアミノ化し、得られたアミノ化物と酸クロリド基を持つスチレン誘導体とを反応させることにより、簡便に、しかも高収率でスチレン骨格にオリゴ糖鎖を導入することができ、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体が得られることを見出し、また、該スチレン誘導体からその重合体および共重合体が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、一般式(1)[化17]
【0012】
【化17】
(式中、R1 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R3 は還元性末端のアノマー炭素を結合炭素とする重合度1〜10のオリゴ糖鎖である)で表される、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体、および、該スチレン誘導体を重合したポリスチレン誘導体である。好ましくは、該オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体が一般式(2)[化18]
【0013】
【化18】
(式中、R1 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R3 は還元性末端のアノマー炭素を結合炭素とする重合度1〜10のオリゴ糖鎖である)で表われる化合物であり、且つ、それを重合したポリスチレン誘導体である。
【0014】
本発明では上記一般式(1)[化17]及び一般式(2)[化18]におけるR3が式(3)[化19]
【0015】
【化19】
または式(4)[化20]
【0016】
【化20】
であるものが好ましく使用される。
【0017】
また、他の発明は、スチレン骨格をもつ化合物にオリゴ糖構造を導入するスチレン誘導体の製造方法であって、オリゴ糖の還元性水酸基をアミノ化した後、該アミノ化物とビニルベンゾイルクロリド誘導体とを反応させることを特徴とする上記一般式(1)[化17]、好ましくは一般式(2)[化18]で表される、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体の製造方法である。
【0018】
本発明におけるオリゴ糖とは、単糖の1種または単糖の複数種がグリコシド結合で結合した低重合体のことであり、単糖も含まれる。また、本発明におけるビニルベンゾイルクロリド誘導体とは、一般式(11)[化21]
【0019】
【化21】
(式中、R1 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい)で表される化合物である。
【0020】
本発明のオリゴ糖鎖を有する、上記一般式(1)[化14]で表されるスチレン誘導体は、保護基を用いることなしにN−グリコシド結合によりオリゴ糖鎖とスチレン骨格とを結合させて得ることに特徴があり、簡便にしかも高収率で製造することができる。
【0021】
本発明は、以下のようにして実施させる。
本発明のオリゴ糖鎖を有する、上記一般式(1)[化17]で表されるスチレン誘導体の原料として用いるオリゴ糖は、還元性水酸基をもつオリゴ糖であれば良く、その重合度は1〜数10まで任意に選ばれるが、反応性その他の見地から10量体までのものが好ましい。
【0022】
これらのオリゴ糖を例示するならば、グルコース、ラクトース、マルトース、マルトトリオース、セロビオース、イソマルトース、メリビオーズ、キトビオース、N,N’−ジアセチルキトビオース、キトトリオース、キシロビオース等、が挙げられる。好ましくはラクトース、キトビオース等である。
【0023】
また、他の原料として用いるビニルベンゾイルクロリド誘導体は公知の方法により合成することができる。例えば、対応するビニル安息香酸誘導体を塩化チオニル、塩化スルフリル等を用いて塩素化することにより得られる。これらのビニルベンゾイルクロリド誘導体としてはp−ビニルベンゾイルクロライド、p−プロペニルベンゾイルクロライド等が例示される。
【0024】
本発明の製造方法では、上記オリゴ糖の還元性水酸基をアミノ化し、得られたアミノ化オリゴ糖を単離することなしに、そこへビニルベンゾイルクロリド誘導体を加えて反応させることにより目的とするオリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体を合成することに特徴がある。
【0025】
オリゴ糖の還元性水酸基のアミノ化反応において、用いるアミノ化剤には公知のものが使用できる。反応性、副反応の防止等を考慮すると炭酸水素アンモニウムが好ましく使用される。アミノ化剤はオリゴ糖のモル数に対して好ましくは50倍モル以上、さらに好ましくは100倍モル以上となるような大過剰に用いることが好ましい。上限については特に制限はないが、経済性等を考慮すると1000倍モル程度までが好ましい。
【0026】
また、使用する反応溶媒は、アミノ化剤を溶解するものであればよいが、好ましくは水または水と水溶性アルコールの混合溶媒が用いられる。反応温度は0〜50℃付近が好ましく、さらに好ましくは20〜40℃付近である。
【0027】
アミノ化オリゴ糖をビニルベンゾイルクロリド誘導体と反応させる際、反応溶媒にはアミノ化オリゴ糖とビニルベンゾイルクロリド誘導体の両者を溶解するものが使用できる。好ましくは、アミノ化オリゴ糖を水とアルコールとの混合溶媒等に溶かしておき、そこへテトラヒドロフラン(以降、THFという)等に溶解したビニルベンゾイルクロリド誘導体を添加する方法が好ましく例示される。
【0028】
また、反応系をpH8〜9程度の弱アルカリ性に保つことが好ましく、このため、系中に例えば炭酸ナトリウム等を添加しておくことが好ましい。反応温度があまり高すぎると、ビニルベンゾイルクロリド誘導体のベンゾイルクロリド基が反応溶媒や糖の水酸基と反応してしまうため好ましくない。かかる点を考慮すると反応温度は−10〜15℃程度が好ましい。さらに好ましくは0〜5℃程度である。ビニルベンゾイルクロリド誘導体とアミノ化オリゴ糖とのモル比は、ビニルベンゾイルクロリド誘導体/アミノ化オリゴ糖が1.1〜10程度が好ましい。
【0029】
本発明により得られる上記一般式(1)[化17]で表される、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体は、オリゴ糖鎖がその環構造を崩すことなくアミド結合を介してスチレン骨格に結合した構造をもつ化合物である。その構造は核磁気共鳴スペクトルや赤外吸収スペクトル等により確認される。
【0030】
また、本発明の一般式(5)[化22]
【0031】
【化22】
好ましくは一般式(6)[化23]
【0032】
【化23】
(一般式(5)及び一般式(6)中、R1 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R3 は還元性末端のアノマー炭素を結合炭素とする重合度1〜10のオリゴ糖鎖である)で表される繰り返し構造単位を有する、オリゴ糖鎖を有するポリスチレン誘導体は、上記のようにして製造された上記一般式(1)[化17]で表される、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体を単独重合するか、または、該スチレン誘導体と他のビニル化合物とを共重合することにより製造される。
【0033】
重合方法は、公知の重合方法を用いることができる。重合溶媒はモノマーである上記一般式(1)[化17]で表される、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体を溶解するもの、および共重合の場合には、コモノマーである他のビニル化合物をも溶解するものであればよく、水、ジメチルスルホキシド等が好ましく例示される。重合触媒には公知のラジカル重合触媒を用いることができる。好ましくは過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(アミジノプロパン)塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。重合温度は、使用する触媒の種類、量等により適宜決定されるが、0〜90℃付近が好ましい。
【0034】
コモノマーとして使用する他のビニル化合物は、スチレンと共重合性を有するビニル化合物であれば使用される。例えば、アクリルアミド等のビニル基を有するアミド化合物類、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、スチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル化合物類、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、塩化ビニル等が挙げられる。また、ブタジエン、イソプレン等も使用される。これらの内、通常生医学材料は親水性が高いと生体親和性が増加すると好ましい。かかる観点から、上記化合物の内、特にビニル基を有するアミド化合物類、アクリルアミドが好ましい。共重合する場合には、同様に生医学材料として使用されることを考慮するとスチレン誘導体に対して0.1〜10倍モル程度のコモノマーを共重合することが好ましい。
【0035】
ポリスチレン誘導体の重合度が低く過ぎると、生医学材料としての強度が低下したり、高分子特有のコンフォメーションに問題が生じて、生物認識作用の発現が望めなくなったりするので好ましくない。また逆に重合度が高いと単量体の純度を上げる必要があったり、重合設備に特別の配慮を要する。かかる点を考慮すると、ポリスチレン誘導体の重合度は30〜5000が好ましい。さらに好ましくは50〜3000、特に好ましくは80〜2000である。
【0036】
【実施例】
次に、実施例を示してさらに具体的に説明する。なお、実施例に示した物性値等は以下のようにして測定した。
(1)赤外吸収スペクトル(IR)
赤外分光光度計(日本分光(株)、形式IR−A−3型)を使用し、臭化カリウム錠剤法にて測定する。
(2)核磁気共鳴スペクトル
核磁気共鳴測定装置(日本電子(株)製、形式:FX−270)を使用し、テトラメチルシランを1%程度含む重水素化ジメチルスルホキシドに試料を溶解(濃度1.5、3または6重量%)して、室温にて 1H−NMR(270MHz)および13C−NMR(67.8MHz)を測定する。
(3)重量平均分子量(Mw)
ゲルバーミエーションクロマトグラフィー(カラム:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体充填、検出器:示差屈折計、エルマ社製、形式:ERC−7520
、データ処理装置:(株)島津製作所製、形式:CR−3A、以降、GPCという)を使用し、溶出液として水を用いて測定する。尚、標準物質にはプルランを使用する。
【0037】
調製例1
〈p−ビニルベンゾイルクロリドの調製〉
100mlの三口丸底フラスコにp−ビニル安息香酸10.5g(0.07ミリモル)をとり、4−t−ブチルピロカテコール15mgを重合禁止剤として加えた。氷水浴中で磁気攪拌しながら滴下ロートから塩化チオニル23ml(0.32モル)を添加すると白色懸濁液となった。フラスコを氷水浴から出して室温で約15分間攪拌した後、40〜50℃に加熱し、約3.5時間磁気攪拌を続けた。減圧蒸留(沸点90℃、1mmHg)により液状のp−ビニルベンゾイルクロリドを得た。収率は87重量%であった。
【0038】
実施例1
300mlのナス型フラスコにラクトース1水和物1.0g(3.0ミリモル)をとり、水50mlを加えて溶解させ、炭酸水素アンモニウムを過飽和(飽和して少量の結晶がフラスコの底に残るまで)となるまで攪拌下で加えた。次いで、フラスコを解放したまま、温水浴中で37℃に保ちながら磁気攪拌を約3日間続けた。その間、炭酸水素アンモニウムの結晶がフラスコの底に残っているように注意しながら少量づつ追加した。炭酸水素アンモニウムの合計の添加量は41.4g(0.52モル)であった。
反応の進行状態は、薄層クロマトグラフィー(以降、TLCという)で追跡した。(TLCの展開溶媒として、酢酸エチル;酢酸:メタノール:水=4:3:3:2(容量比)の混合溶媒を使用した。ラクトースのRf値は0.58、β−ラクトシルアミンのRf値は0.48)。
反応を始めてから3日後にはラクトースのスポットがほとんどなくなった。
過剰の炭酸水素アンモニウムを除去するために、水150mlを加えて希釈した後、減圧エバポレーターで濃縮する操作をアンモニア臭がなくなるまで3回繰り返した。粉末として得られたβ−ラクトシルアミンを精製することなく、次の反応に用いた。
【0039】
β−ラクトシルアミンに水20mlを加えて希釈した。次いで、炭酸ナトリウム2.0gとメタノール20mlを加えて、2時間攪拌して溶解させた。氷水浴により反応温度を0℃に保ちながらp−ビニルベンゾイルクロリドのテトラヒドロフラン溶液10.0ml[p−ビニルベンゾイルクロリドの含有量:2.5ml(18ミリモル)]を滴下し、反応の進行をTLCで追跡した。(展開溶媒:酢酸エチル:酢酸:メタノール:水=4:3:1:1容量比の混合溶媒、β−ラクトシルアミンのRf値;0.36、p−ビニルベンズアミド−β−ラクトースのRf値:0.60)生成物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:(株)トーソー製、中速液体クロマトグラフィー用、商品名:TSKゲル−トヨパール−HW−S40:展開溶媒、メタノール:水=4:1容量比)により分離精製した。さらに、凍結乾燥を行いp−ビニルベンズアミド−β−ラクトースの白色粉末を単離した。収率は53重量%であった。
【0040】
単離したp−ビニルベンズアミド−β−ラクトースのIRスペクトルを測定したところ、780cm-1(芳香族C−H伸縮振動)、1540cm-1(アミドN−H伸縮振動)、1660cm-1(アミドC=O変角振動)、2930cm-1(C−H伸縮振動)、3350cm-1(O−H伸縮振動)が観測された。また、 1H−NMRスペクトル及びC13−NMRスペクトルをそれぞれ測定し、得られた結果を[図1]および[図2]に示した。
【0041】
実施例2
100mlナス型フラスコにN,N’−ジアセチルキトビオース0.2g(0.5ミリモル)をとり、水10mlを加えて溶解させ、炭酸水素アンモニウムを過飽和(飽和して少量の粉末がフラスコの底に残るまで)となるまで攪拌下で加えた。次いで、フラスコを解放したまま、温水浴中で37℃に保ちながら磁気攪拌を約3日間続けた。その間、炭酸水素アンモニウムの粉末がフラスコの底に残っているように注意しながら少量づつ追加した。炭酸水素アンモニウムの合計の添加量は41.4gであった。反応の進行を薄膜クロマトグラフィー(TLC)で追跡した(TLCの展開溶媒は、酢酸エチル:酢酸:メタノール:水=2:2:1:1(容量比)の混合溶媒、N,N’−ジアセチルキトビオースのRf値:0.49、N,N’−ジアセチルキトビオシルアミンのRf値;0.38)。反応を始めてから3日後にはN,N’−ジアセチルキトビオースのスポットがほとんどなくなった。
過剰の炭酸水素アンモニウムを除去するために、水50mlを加えて希釈した後、減圧エバポレーターで濃縮する操作をアンモニア臭がなくなるまで3回繰り返した。粉末として得られたN,N’−ジアセチルキトビオシルアミンを精製することなく、次の反応に用いた。
【0042】
N,N’−ジアセチルキトビオシルアミンに水20mlを加えて希釈した。炭酸ナトリウム0.2gとメタノール4.0mlを加えて、攪拌しながら溶解させた(2時間)。氷水浴により反応温度を0度に保ちながらp−ビニルベンゾイルクロリドのテトラヒドロフラン溶液2.0ml[p−ビニルベンゾイルクロリドの含有量:0.5ml(3.6ミリモル)]を滴下し、反応の進行をTLCで追跡した。(展開溶媒は、酢酸エチル:酢酸:メタノール:水=4:3:1:1容量比の混合溶媒、N,N’−ジアセチルキトビオシルアミンのRf値:0.38、p−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオースのRf値:0.95)。
【0043】
生成物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:(株)トーソー製、中速液体クロマトグラフィー用、商品名:TSKゲル−トヨパール−HW−S40、展開溶媒メタノール:水=4:1容量比の混合溶媒)により分離精製した。さらに凍結乾燥を行いp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオースの白色粉末を単離した。収率は84重量%であった。
得られたp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース 1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルをそれぞれ測定し、得られた結果を[図3]および[図4]に示した。
【0044】
実施例3
p−ビニルベンズアミド−β−ラクトース1.2gおよびアゾビスイソブチロニトリル(以降、AIBNという)3.28mg(1.0モル%)を重合試験管にとり、5mlのジメチルスルホキシドを加えて溶解させた。重合試験管に脱気コックを取付、ドライアイス−メタノール浴を用いて凍結及び脱気操作を3回繰り返した後、真空を保ったまま、封管した。あらかじめ60℃に設定しておいた恒温槽中に重合試験管を設置し、15時間重合反応を行った後、重合試験管を恒温槽から取り出し、流水で冷却して重合反応を停止させた。重合試験管を開封し、反応溶液をメタノール中に注いで沈澱させた。沈澱物を少量の水に溶かし、メタノールで再沈澱させる操作を行った。分子量3500以下の物質を透析するセルロースチューブ(ナカライテスク製)を用いて2日間透析した後、凍結乾燥して白色粉末状のp−ビニルベンズアミド−β−ラクトース単独重合体を得た。得られた重合体の収率は95重量%、重量平均分子量は13万(重合度290)であった。得られたポリマーの 1H−NMRスペクトルを測定し、その結果を[図5]に示した。
【0045】
実施例4
p−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース0.15gおよびAIBN0.82mg(1.0モル%)を重合試験管にとり、1.0mlのジメチルスルホキシドを加えて溶解させた。重合試験管に脱気コックを取付、ドライアイス−メタノール浴を用いて凍結及び脱気操作を3回繰り返した後、真空を保ったまま、封管した。あらかじめ60℃に設定しておいた恒温槽中に重合試験管を設置し、15時間重合反応を行った後、重合試験管を恒温槽から取り出し、流水で冷却して重合反応を停止させた。重合試験管を開封し、反応溶液をメタノール中に注いで沈澱させた。沈澱物を少量の水に溶かし、メタノールで再沈澱させる操作を行った。分子量3500以下の物質を透析するセルロースチューブ(ナカライテスク製)を用いて2日間透析した後、凍結乾燥して白色の粉末状のp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース単独重合体を得た。重合体の収率は100重量%、重量平均分子量は8万(重合度180)であった。得られたポリマーの 1H−NMRスペクトルを測定し、その結果を[図6]に示した。
【0046】
実施例5
p−ビニルベンズアミド−β−ラクトース0.2g、アクリルアミド0.2g、およびAIBN2.60mg(0.5モル%)を重合試験管にとり、10mlのジメチルスルホキシドを加えて溶解させた(オリゴ糖スチレン誘導体/アクリルアミド仕込組成モル比:11/89)。重合試験管に脱気コックを取付、ドライアイス−メタノール浴を用いて凍結及び脱気操作を3回繰り返した後、真空を保ったまま、重合試験管を封管した。あらかじめ60℃に設定しておいた恒温槽中に重合試験管を設置し、15時間重合反応を行った後、重合試験管を恒温槽から取り出し、流水で冷却して重合反応を停止させた。重合試験管を開封し、反応溶液をメタノール中に注いで沈澱させた。沈澱物を少量の水に溶かし、メタノールで再沈澱させる操作を行った。分子量3500以下の物質を透析するセルロースチューブ(ナカライテスク製)を用いて2日間透析した後、凍結乾燥して白色粉末状の共重合体を得た。共重合体の収率は45重量%、重量平均分子量は34万(重合度1550)であった。得られた共重合体の 1H−NMRスペクトルを測定したところ、実施例3で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ラクトース単独重合体のNMRスペクトルで観察された吸収ピークの他に、6.8ppm、2.0ppm、1.5ppm吸収ピークが観察され、これらはそれぞれアクリルアミド単位のアミノ基水素、メチン水素、メチレン水素に帰属された。各モノマー単位のNMRスペクトル吸収ピーク強度比から共重合体モル組成比を求めたところ、オリゴ糖スチレン誘導体単位/アクリルアミド単位:39/61であった。
【0047】
実施例6
p−ビニルベンズアミド−β−ラクトースの代わりにp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオースを用いた以外は、実施例5と同様にして、アクリルアミドとの共重合反応(オリゴ糖スチレン誘導体/アクリルアミド仕込組成モル比:11/89)を行い、白色粉末状の共重合体を得た。共重合体の収率は22重量%、重量平均分子量は22,000(重合度100)であった。
得られた共重合体の 1H−NMRスペクトルを測定したところ、実施例4で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース単独重合体のNMRスペクトルで観察された吸収ピークの他に、7.6ppm、2.0ppm、1.5ppm吸収ピークが観察され、これらはそれぞれアクリルアミド単位のアミノ基水素、メチン水素、メチレン水素に帰属された。各モノマー単位のNMRスペクトル吸収ピークの強度比から共重合体モル組成を求めたところ、オリゴ糖スチレン誘導体単位/アクリルアミド単位:36/64であった。
【0048】
【発明の効果】
本発明により、上記一般式(1)で表される、オリゴ糖鎖を有する新規なスチレン誘導体およびその製造方法、並びに、上記一般式(5)で表される繰り返し構造単位を有する、オリゴ糖鎖を有する新規なポリスチレン誘導体が提供される。
本発明により得られる上記スチレン誘導体等は、オリゴ糖の特徴的な構造である環構造が破壊(開環)されていないオリゴ糖鎖を有する新規なものであり、肝細胞培養用材料等の生医学材料として有用である。また、簡便な反応で製造することができ、しかも高収率で得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ラクトース 1H−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:1.5重量%)
【図2】実施例1で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ラクトース13C−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:3重量%)
【図3】実施例2で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース 1H−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:1.5重量%)
【図4】実施例2で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース13C−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:6重量%)
【図5】実施例3で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ラクトース重合体 1H−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:3重量%)
【図6】実施例4で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース重合体の 1H−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:1.5重量%)
【符号の説明】
a〜1 図1のスペクトルにおける共鳴ピーク
a〜r 図2のスペクトルにおける共鳴ピーク
a〜q 図3のスペクトルにおける共鳴ピーク
a〜w 図4のスペクトルにおける共鳴ピーク
a〜f 図5のスペクトルにおける共鳴ピーク
n 図5に示す重合体の重合度
a〜i 図6のスペクトルにおける共鳴ピーク
n 図6に示す重合体の重合度
【産業上の利用分野】
本発明は、オリゴ糖鎖を有するスチレンおよびポリスチレン等のスチレン誘導体、並びに、該スチレン誘導体の製造方法に関する。詳しくは、主に生医学用材料、例えば肝細胞培養用材料等として使用されるオリゴ糖鎖を有するポリスチレン誘導体、並びに該ポリスチレン誘導体の原料であるスチレン誘導体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞培養技術の進歩により、細胞の増殖・分化・老化・ガン化などの仕組みの研究が進むとともに、ワクチン・ホルモン・インターフェロン等の生理活性物質の生産が容易になってきている。また、肝細胞、血管壁細胞、皮膚繊維芽細胞等の各種細胞の培養研究から、人工肝臓、人工血管、人工皮膚といったバイオ型人工臓器への応用も期待されている。細胞のもつ多岐にわたる機能を生体外で長期的に発現させるために、細胞培養することの意義は大きい。
【0003】
一例として肝細胞を例に挙げる。肝臓は脊椎動物においては体内最大の腺性器官であり、物質代謝とその調節の大部分が行われる代謝中枢部である。肝細胞は本来、数年に及ぶ長い寿命と、肝臓の一部を切除したときには活発に増殖するように潜在的な増殖能をもっている。しかし、生体外で細胞培養を行うと寿命が短くなり、増殖能をほとんど示さず、代謝活性も急速に失われる。細胞を培養するためには細胞が接着するための固体表面が必要である。肝細胞は、通常用いられる表面処理を施したガラスやポリスチレン製の培養皿には接着しにくく、機能を保持したまま接着・増殖できる生医学材料の開発が望まれている。
【0004】
近年、細胞接着や細胞膜情報伝達機構等の分子レベルでの理解が進むにつれて、糖タンパク質や糖脂質として細胞膜表面に存在する糖鎖が細胞の認識機能に重要な役割を演じていることが明らかになってきた。
高分子論文集第42巻、No.11、第719〜724頁(1985年)には、グルコース、マルトース、ラクトース、マルトトリオース等の単糖やオリゴ糖鎖を側鎖にもつポリスチレン類を合成し、これらを塗布した培養皿の上でラット肝細胞の接着実験を行ったことが記載されている。該論文によれば、これらの重合体の中で、特にラクトースを側鎖にもつ、式(9)[化15]
【0005】
【化15】
で表される構造を有するポリスチレンは、血清の有無にかかわらず、肝細胞の接着能を飛躍的に増大させ、ハイブリッド型生医学材料として優れた特性をもつことが記載されている。
【0006】
また、特開平3−47802号公報には、N−アセチルキトオリゴ糖鎖を有する、式(10)[化16]
【0007】
【化16】
(式中、nは1〜10の整数)で表される構造のスチレン誘導体、その重合体およびそれらの構造方法が開示されている。しかし、上記刊行物に記載されたものは、いずれもオリゴ糖またはキトオリゴ糖をもつスチレン誘導体の製造方法として、対応するオリゴ糖またはキトオリゴ糖をラクトン化した後、ビニルベンジルアミンと反応させることが記載されている。
【0008】
しかしながら、該製造方法では、スチレン基とオリゴ糖鎖またはキトオリゴ糖鎖とをつなぐ反応がアミンによるラクトンの開環反応であるため、オリゴ糖またはキトオリゴ糖の特徴的な構造である環構造を少なくとも1つは破壊(開環)してしまうこと、および、オリゴ糖またはキトオリゴ糖を一旦単離する必要があるため工程が煩雑となる、等の欠点があった。オリゴ糖またはキトオリゴ糖の環構造破壊(開環)することなしに保持することが可能になれば生物認識活性がさらに高くなることが期待され、例えばこれを肝細胞の培養等の生医学材料として用いる場合には、材料中に貴重なオリゴ糖鎖を小量導入すれば良いことになり、また単糖類、2糖類等の重合度の低い糖類も利用できる利点があり応用範囲が広くなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、オリゴ糖鎖を有する新規なスチレン誘導体、および該スチレン誘導体の簡便でしかも高収率な製造方法を提供することにある。また、本発明の他の課題は、新規な生医学材料であるオリゴ糖鎖を有する該スチレン誘導体の重合体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題につき鋭意検討を重ねた結果、オリゴ糖の還元性水酸基をアミノ化し、得られたアミノ化物と酸クロリド基を持つスチレン誘導体とを反応させることにより、簡便に、しかも高収率でスチレン骨格にオリゴ糖鎖を導入することができ、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体が得られることを見出し、また、該スチレン誘導体からその重合体および共重合体が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、一般式(1)[化17]
【0012】
【化17】
(式中、R1 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R3 は還元性末端のアノマー炭素を結合炭素とする重合度1〜10のオリゴ糖鎖である)で表される、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体、および、該スチレン誘導体を重合したポリスチレン誘導体である。好ましくは、該オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体が一般式(2)[化18]
【0013】
【化18】
(式中、R1 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R3 は還元性末端のアノマー炭素を結合炭素とする重合度1〜10のオリゴ糖鎖である)で表われる化合物であり、且つ、それを重合したポリスチレン誘導体である。
【0014】
本発明では上記一般式(1)[化17]及び一般式(2)[化18]におけるR3が式(3)[化19]
【0015】
【化19】
または式(4)[化20]
【0016】
【化20】
であるものが好ましく使用される。
【0017】
また、他の発明は、スチレン骨格をもつ化合物にオリゴ糖構造を導入するスチレン誘導体の製造方法であって、オリゴ糖の還元性水酸基をアミノ化した後、該アミノ化物とビニルベンゾイルクロリド誘導体とを反応させることを特徴とする上記一般式(1)[化17]、好ましくは一般式(2)[化18]で表される、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体の製造方法である。
【0018】
本発明におけるオリゴ糖とは、単糖の1種または単糖の複数種がグリコシド結合で結合した低重合体のことであり、単糖も含まれる。また、本発明におけるビニルベンゾイルクロリド誘導体とは、一般式(11)[化21]
【0019】
【化21】
(式中、R1 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい)で表される化合物である。
【0020】
本発明のオリゴ糖鎖を有する、上記一般式(1)[化14]で表されるスチレン誘導体は、保護基を用いることなしにN−グリコシド結合によりオリゴ糖鎖とスチレン骨格とを結合させて得ることに特徴があり、簡便にしかも高収率で製造することができる。
【0021】
本発明は、以下のようにして実施させる。
本発明のオリゴ糖鎖を有する、上記一般式(1)[化17]で表されるスチレン誘導体の原料として用いるオリゴ糖は、還元性水酸基をもつオリゴ糖であれば良く、その重合度は1〜数10まで任意に選ばれるが、反応性その他の見地から10量体までのものが好ましい。
【0022】
これらのオリゴ糖を例示するならば、グルコース、ラクトース、マルトース、マルトトリオース、セロビオース、イソマルトース、メリビオーズ、キトビオース、N,N’−ジアセチルキトビオース、キトトリオース、キシロビオース等、が挙げられる。好ましくはラクトース、キトビオース等である。
【0023】
また、他の原料として用いるビニルベンゾイルクロリド誘導体は公知の方法により合成することができる。例えば、対応するビニル安息香酸誘導体を塩化チオニル、塩化スルフリル等を用いて塩素化することにより得られる。これらのビニルベンゾイルクロリド誘導体としてはp−ビニルベンゾイルクロライド、p−プロペニルベンゾイルクロライド等が例示される。
【0024】
本発明の製造方法では、上記オリゴ糖の還元性水酸基をアミノ化し、得られたアミノ化オリゴ糖を単離することなしに、そこへビニルベンゾイルクロリド誘導体を加えて反応させることにより目的とするオリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体を合成することに特徴がある。
【0025】
オリゴ糖の還元性水酸基のアミノ化反応において、用いるアミノ化剤には公知のものが使用できる。反応性、副反応の防止等を考慮すると炭酸水素アンモニウムが好ましく使用される。アミノ化剤はオリゴ糖のモル数に対して好ましくは50倍モル以上、さらに好ましくは100倍モル以上となるような大過剰に用いることが好ましい。上限については特に制限はないが、経済性等を考慮すると1000倍モル程度までが好ましい。
【0026】
また、使用する反応溶媒は、アミノ化剤を溶解するものであればよいが、好ましくは水または水と水溶性アルコールの混合溶媒が用いられる。反応温度は0〜50℃付近が好ましく、さらに好ましくは20〜40℃付近である。
【0027】
アミノ化オリゴ糖をビニルベンゾイルクロリド誘導体と反応させる際、反応溶媒にはアミノ化オリゴ糖とビニルベンゾイルクロリド誘導体の両者を溶解するものが使用できる。好ましくは、アミノ化オリゴ糖を水とアルコールとの混合溶媒等に溶かしておき、そこへテトラヒドロフラン(以降、THFという)等に溶解したビニルベンゾイルクロリド誘導体を添加する方法が好ましく例示される。
【0028】
また、反応系をpH8〜9程度の弱アルカリ性に保つことが好ましく、このため、系中に例えば炭酸ナトリウム等を添加しておくことが好ましい。反応温度があまり高すぎると、ビニルベンゾイルクロリド誘導体のベンゾイルクロリド基が反応溶媒や糖の水酸基と反応してしまうため好ましくない。かかる点を考慮すると反応温度は−10〜15℃程度が好ましい。さらに好ましくは0〜5℃程度である。ビニルベンゾイルクロリド誘導体とアミノ化オリゴ糖とのモル比は、ビニルベンゾイルクロリド誘導体/アミノ化オリゴ糖が1.1〜10程度が好ましい。
【0029】
本発明により得られる上記一般式(1)[化17]で表される、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体は、オリゴ糖鎖がその環構造を崩すことなくアミド結合を介してスチレン骨格に結合した構造をもつ化合物である。その構造は核磁気共鳴スペクトルや赤外吸収スペクトル等により確認される。
【0030】
また、本発明の一般式(5)[化22]
【0031】
【化22】
好ましくは一般式(6)[化23]
【0032】
【化23】
(一般式(5)及び一般式(6)中、R1 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基の中から選ばれた一価の基であり、互いに同一でも異なってもよい、R3 は還元性末端のアノマー炭素を結合炭素とする重合度1〜10のオリゴ糖鎖である)で表される繰り返し構造単位を有する、オリゴ糖鎖を有するポリスチレン誘導体は、上記のようにして製造された上記一般式(1)[化17]で表される、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体を単独重合するか、または、該スチレン誘導体と他のビニル化合物とを共重合することにより製造される。
【0033】
重合方法は、公知の重合方法を用いることができる。重合溶媒はモノマーである上記一般式(1)[化17]で表される、オリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体を溶解するもの、および共重合の場合には、コモノマーである他のビニル化合物をも溶解するものであればよく、水、ジメチルスルホキシド等が好ましく例示される。重合触媒には公知のラジカル重合触媒を用いることができる。好ましくは過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(アミジノプロパン)塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。重合温度は、使用する触媒の種類、量等により適宜決定されるが、0〜90℃付近が好ましい。
【0034】
コモノマーとして使用する他のビニル化合物は、スチレンと共重合性を有するビニル化合物であれば使用される。例えば、アクリルアミド等のビニル基を有するアミド化合物類、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、スチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル化合物類、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、塩化ビニル等が挙げられる。また、ブタジエン、イソプレン等も使用される。これらの内、通常生医学材料は親水性が高いと生体親和性が増加すると好ましい。かかる観点から、上記化合物の内、特にビニル基を有するアミド化合物類、アクリルアミドが好ましい。共重合する場合には、同様に生医学材料として使用されることを考慮するとスチレン誘導体に対して0.1〜10倍モル程度のコモノマーを共重合することが好ましい。
【0035】
ポリスチレン誘導体の重合度が低く過ぎると、生医学材料としての強度が低下したり、高分子特有のコンフォメーションに問題が生じて、生物認識作用の発現が望めなくなったりするので好ましくない。また逆に重合度が高いと単量体の純度を上げる必要があったり、重合設備に特別の配慮を要する。かかる点を考慮すると、ポリスチレン誘導体の重合度は30〜5000が好ましい。さらに好ましくは50〜3000、特に好ましくは80〜2000である。
【0036】
【実施例】
次に、実施例を示してさらに具体的に説明する。なお、実施例に示した物性値等は以下のようにして測定した。
(1)赤外吸収スペクトル(IR)
赤外分光光度計(日本分光(株)、形式IR−A−3型)を使用し、臭化カリウム錠剤法にて測定する。
(2)核磁気共鳴スペクトル
核磁気共鳴測定装置(日本電子(株)製、形式:FX−270)を使用し、テトラメチルシランを1%程度含む重水素化ジメチルスルホキシドに試料を溶解(濃度1.5、3または6重量%)して、室温にて 1H−NMR(270MHz)および13C−NMR(67.8MHz)を測定する。
(3)重量平均分子量(Mw)
ゲルバーミエーションクロマトグラフィー(カラム:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体充填、検出器:示差屈折計、エルマ社製、形式:ERC−7520
、データ処理装置:(株)島津製作所製、形式:CR−3A、以降、GPCという)を使用し、溶出液として水を用いて測定する。尚、標準物質にはプルランを使用する。
【0037】
調製例1
〈p−ビニルベンゾイルクロリドの調製〉
100mlの三口丸底フラスコにp−ビニル安息香酸10.5g(0.07ミリモル)をとり、4−t−ブチルピロカテコール15mgを重合禁止剤として加えた。氷水浴中で磁気攪拌しながら滴下ロートから塩化チオニル23ml(0.32モル)を添加すると白色懸濁液となった。フラスコを氷水浴から出して室温で約15分間攪拌した後、40〜50℃に加熱し、約3.5時間磁気攪拌を続けた。減圧蒸留(沸点90℃、1mmHg)により液状のp−ビニルベンゾイルクロリドを得た。収率は87重量%であった。
【0038】
実施例1
300mlのナス型フラスコにラクトース1水和物1.0g(3.0ミリモル)をとり、水50mlを加えて溶解させ、炭酸水素アンモニウムを過飽和(飽和して少量の結晶がフラスコの底に残るまで)となるまで攪拌下で加えた。次いで、フラスコを解放したまま、温水浴中で37℃に保ちながら磁気攪拌を約3日間続けた。その間、炭酸水素アンモニウムの結晶がフラスコの底に残っているように注意しながら少量づつ追加した。炭酸水素アンモニウムの合計の添加量は41.4g(0.52モル)であった。
反応の進行状態は、薄層クロマトグラフィー(以降、TLCという)で追跡した。(TLCの展開溶媒として、酢酸エチル;酢酸:メタノール:水=4:3:3:2(容量比)の混合溶媒を使用した。ラクトースのRf値は0.58、β−ラクトシルアミンのRf値は0.48)。
反応を始めてから3日後にはラクトースのスポットがほとんどなくなった。
過剰の炭酸水素アンモニウムを除去するために、水150mlを加えて希釈した後、減圧エバポレーターで濃縮する操作をアンモニア臭がなくなるまで3回繰り返した。粉末として得られたβ−ラクトシルアミンを精製することなく、次の反応に用いた。
【0039】
β−ラクトシルアミンに水20mlを加えて希釈した。次いで、炭酸ナトリウム2.0gとメタノール20mlを加えて、2時間攪拌して溶解させた。氷水浴により反応温度を0℃に保ちながらp−ビニルベンゾイルクロリドのテトラヒドロフラン溶液10.0ml[p−ビニルベンゾイルクロリドの含有量:2.5ml(18ミリモル)]を滴下し、反応の進行をTLCで追跡した。(展開溶媒:酢酸エチル:酢酸:メタノール:水=4:3:1:1容量比の混合溶媒、β−ラクトシルアミンのRf値;0.36、p−ビニルベンズアミド−β−ラクトースのRf値:0.60)生成物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:(株)トーソー製、中速液体クロマトグラフィー用、商品名:TSKゲル−トヨパール−HW−S40:展開溶媒、メタノール:水=4:1容量比)により分離精製した。さらに、凍結乾燥を行いp−ビニルベンズアミド−β−ラクトースの白色粉末を単離した。収率は53重量%であった。
【0040】
単離したp−ビニルベンズアミド−β−ラクトースのIRスペクトルを測定したところ、780cm-1(芳香族C−H伸縮振動)、1540cm-1(アミドN−H伸縮振動)、1660cm-1(アミドC=O変角振動)、2930cm-1(C−H伸縮振動)、3350cm-1(O−H伸縮振動)が観測された。また、 1H−NMRスペクトル及びC13−NMRスペクトルをそれぞれ測定し、得られた結果を[図1]および[図2]に示した。
【0041】
実施例2
100mlナス型フラスコにN,N’−ジアセチルキトビオース0.2g(0.5ミリモル)をとり、水10mlを加えて溶解させ、炭酸水素アンモニウムを過飽和(飽和して少量の粉末がフラスコの底に残るまで)となるまで攪拌下で加えた。次いで、フラスコを解放したまま、温水浴中で37℃に保ちながら磁気攪拌を約3日間続けた。その間、炭酸水素アンモニウムの粉末がフラスコの底に残っているように注意しながら少量づつ追加した。炭酸水素アンモニウムの合計の添加量は41.4gであった。反応の進行を薄膜クロマトグラフィー(TLC)で追跡した(TLCの展開溶媒は、酢酸エチル:酢酸:メタノール:水=2:2:1:1(容量比)の混合溶媒、N,N’−ジアセチルキトビオースのRf値:0.49、N,N’−ジアセチルキトビオシルアミンのRf値;0.38)。反応を始めてから3日後にはN,N’−ジアセチルキトビオースのスポットがほとんどなくなった。
過剰の炭酸水素アンモニウムを除去するために、水50mlを加えて希釈した後、減圧エバポレーターで濃縮する操作をアンモニア臭がなくなるまで3回繰り返した。粉末として得られたN,N’−ジアセチルキトビオシルアミンを精製することなく、次の反応に用いた。
【0042】
N,N’−ジアセチルキトビオシルアミンに水20mlを加えて希釈した。炭酸ナトリウム0.2gとメタノール4.0mlを加えて、攪拌しながら溶解させた(2時間)。氷水浴により反応温度を0度に保ちながらp−ビニルベンゾイルクロリドのテトラヒドロフラン溶液2.0ml[p−ビニルベンゾイルクロリドの含有量:0.5ml(3.6ミリモル)]を滴下し、反応の進行をTLCで追跡した。(展開溶媒は、酢酸エチル:酢酸:メタノール:水=4:3:1:1容量比の混合溶媒、N,N’−ジアセチルキトビオシルアミンのRf値:0.38、p−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオースのRf値:0.95)。
【0043】
生成物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:(株)トーソー製、中速液体クロマトグラフィー用、商品名:TSKゲル−トヨパール−HW−S40、展開溶媒メタノール:水=4:1容量比の混合溶媒)により分離精製した。さらに凍結乾燥を行いp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオースの白色粉末を単離した。収率は84重量%であった。
得られたp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース 1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルをそれぞれ測定し、得られた結果を[図3]および[図4]に示した。
【0044】
実施例3
p−ビニルベンズアミド−β−ラクトース1.2gおよびアゾビスイソブチロニトリル(以降、AIBNという)3.28mg(1.0モル%)を重合試験管にとり、5mlのジメチルスルホキシドを加えて溶解させた。重合試験管に脱気コックを取付、ドライアイス−メタノール浴を用いて凍結及び脱気操作を3回繰り返した後、真空を保ったまま、封管した。あらかじめ60℃に設定しておいた恒温槽中に重合試験管を設置し、15時間重合反応を行った後、重合試験管を恒温槽から取り出し、流水で冷却して重合反応を停止させた。重合試験管を開封し、反応溶液をメタノール中に注いで沈澱させた。沈澱物を少量の水に溶かし、メタノールで再沈澱させる操作を行った。分子量3500以下の物質を透析するセルロースチューブ(ナカライテスク製)を用いて2日間透析した後、凍結乾燥して白色粉末状のp−ビニルベンズアミド−β−ラクトース単独重合体を得た。得られた重合体の収率は95重量%、重量平均分子量は13万(重合度290)であった。得られたポリマーの 1H−NMRスペクトルを測定し、その結果を[図5]に示した。
【0045】
実施例4
p−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース0.15gおよびAIBN0.82mg(1.0モル%)を重合試験管にとり、1.0mlのジメチルスルホキシドを加えて溶解させた。重合試験管に脱気コックを取付、ドライアイス−メタノール浴を用いて凍結及び脱気操作を3回繰り返した後、真空を保ったまま、封管した。あらかじめ60℃に設定しておいた恒温槽中に重合試験管を設置し、15時間重合反応を行った後、重合試験管を恒温槽から取り出し、流水で冷却して重合反応を停止させた。重合試験管を開封し、反応溶液をメタノール中に注いで沈澱させた。沈澱物を少量の水に溶かし、メタノールで再沈澱させる操作を行った。分子量3500以下の物質を透析するセルロースチューブ(ナカライテスク製)を用いて2日間透析した後、凍結乾燥して白色の粉末状のp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース単独重合体を得た。重合体の収率は100重量%、重量平均分子量は8万(重合度180)であった。得られたポリマーの 1H−NMRスペクトルを測定し、その結果を[図6]に示した。
【0046】
実施例5
p−ビニルベンズアミド−β−ラクトース0.2g、アクリルアミド0.2g、およびAIBN2.60mg(0.5モル%)を重合試験管にとり、10mlのジメチルスルホキシドを加えて溶解させた(オリゴ糖スチレン誘導体/アクリルアミド仕込組成モル比:11/89)。重合試験管に脱気コックを取付、ドライアイス−メタノール浴を用いて凍結及び脱気操作を3回繰り返した後、真空を保ったまま、重合試験管を封管した。あらかじめ60℃に設定しておいた恒温槽中に重合試験管を設置し、15時間重合反応を行った後、重合試験管を恒温槽から取り出し、流水で冷却して重合反応を停止させた。重合試験管を開封し、反応溶液をメタノール中に注いで沈澱させた。沈澱物を少量の水に溶かし、メタノールで再沈澱させる操作を行った。分子量3500以下の物質を透析するセルロースチューブ(ナカライテスク製)を用いて2日間透析した後、凍結乾燥して白色粉末状の共重合体を得た。共重合体の収率は45重量%、重量平均分子量は34万(重合度1550)であった。得られた共重合体の 1H−NMRスペクトルを測定したところ、実施例3で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ラクトース単独重合体のNMRスペクトルで観察された吸収ピークの他に、6.8ppm、2.0ppm、1.5ppm吸収ピークが観察され、これらはそれぞれアクリルアミド単位のアミノ基水素、メチン水素、メチレン水素に帰属された。各モノマー単位のNMRスペクトル吸収ピーク強度比から共重合体モル組成比を求めたところ、オリゴ糖スチレン誘導体単位/アクリルアミド単位:39/61であった。
【0047】
実施例6
p−ビニルベンズアミド−β−ラクトースの代わりにp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオースを用いた以外は、実施例5と同様にして、アクリルアミドとの共重合反応(オリゴ糖スチレン誘導体/アクリルアミド仕込組成モル比:11/89)を行い、白色粉末状の共重合体を得た。共重合体の収率は22重量%、重量平均分子量は22,000(重合度100)であった。
得られた共重合体の 1H−NMRスペクトルを測定したところ、実施例4で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース単独重合体のNMRスペクトルで観察された吸収ピークの他に、7.6ppm、2.0ppm、1.5ppm吸収ピークが観察され、これらはそれぞれアクリルアミド単位のアミノ基水素、メチン水素、メチレン水素に帰属された。各モノマー単位のNMRスペクトル吸収ピークの強度比から共重合体モル組成を求めたところ、オリゴ糖スチレン誘導体単位/アクリルアミド単位:36/64であった。
【0048】
【発明の効果】
本発明により、上記一般式(1)で表される、オリゴ糖鎖を有する新規なスチレン誘導体およびその製造方法、並びに、上記一般式(5)で表される繰り返し構造単位を有する、オリゴ糖鎖を有する新規なポリスチレン誘導体が提供される。
本発明により得られる上記スチレン誘導体等は、オリゴ糖の特徴的な構造である環構造が破壊(開環)されていないオリゴ糖鎖を有する新規なものであり、肝細胞培養用材料等の生医学材料として有用である。また、簡便な反応で製造することができ、しかも高収率で得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ラクトース 1H−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:1.5重量%)
【図2】実施例1で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ラクトース13C−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:3重量%)
【図3】実施例2で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース 1H−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:1.5重量%)
【図4】実施例2で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース13C−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:6重量%)
【図5】実施例3で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ラクトース重合体 1H−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:3重量%)
【図6】実施例4で得られたp−ビニルベンズアミド−β−ジアセチルキトビオース重合体の 1H−NMRスペクトルである。(試料溶液濃度:1.5重量%)
【符号の説明】
a〜1 図1のスペクトルにおける共鳴ピーク
a〜r 図2のスペクトルにおける共鳴ピーク
a〜q 図3のスペクトルにおける共鳴ピーク
a〜w 図4のスペクトルにおける共鳴ピーク
a〜f 図5のスペクトルにおける共鳴ピーク
n 図5に示す重合体の重合度
a〜i 図6のスペクトルにおける共鳴ピーク
n 図6に示す重合体の重合度
Claims (18)
- オリゴ糖の還元性水酸基をアミノ化する反応を、アミノ化剤として炭酸水素アンモニウムを用い、0〜50℃において実施することを特徴とする請求項5または請求項6記載のオリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体の製造方法。
- アミノ化剤をオリゴ糖の50〜1000倍モル使用することを特徴とする請求項5または請求項6記載のオリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体の製造方法。
- アミノ化物とビニルベンゾイルクロリド誘導体との反応を、−10〜15℃において実施することを特徴とする請求項5または6記載のオリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体の製造方法。
- ビニルベンゾイルクロリド誘導体に対するアミノ化物のモル比が、1.1〜10であることを特徴とする請求項5または6記載のオリゴ糖鎖を有するスチレン誘導体の製造方法。
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