JP4911285B2 - ブロック共重合体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
これらのブロック共重合体は、例えば異種材料の相溶化剤として用いられ、混合物の性能向上の検討等がなされている。
しかし、多糖類に代表される糖鎖を有する化合物は、成形性や機械的強度に限界がある。そのため、生体特性や環境親和性に優れる糖鎖を有する化合物と、成形性や機械的強度に優れる他の重合体とを複合したいとの要望が出されつつあるが、従来、そのような材料は知られていない。
M. Templin et al, Science, Vol.278, Issue 5344, pp1795-1798(1997) J. Allgaier et al, Macromolecules 30, p1582(1997) J. Babin et al, Faraday Discuss., 128, pp179-192(2005) 永井克孝、糖鎖生物学と糖鎖工学:その目標とスコープ、現代科学、11、pp12-15(1991) 永井克孝、糖鎖からみた生命:デジタル的生命像とアナログ的生命像、バイオサイエンスとインダストリー、53、pp943-944(1995)
前記共役ジエン(共)重合体ブロックBが共役ジエンの(共)重合体のブロック、ただしこの共役ジエンの(共)重合体のブロックは水素添加されていない、であり、
前記ブロック共重合体は、A−BまたはA−B−Aで表される構造を有し、重量平均分子量が2,000〜600,000であり、
前記ブロック共重合体に含有される糖ブロックAの含有量が共役ジエン(共)重合体ブロックBとの合計に対して30〜97重量%であり、
前記ブロック共重合体が、
末端にカルボキシル基を有するブロックAの前駆体および末端にアミノ基を有するブロックBの前駆体を準備し、これらをアミド化反応により結合する工程を含む製造方法によって製造されたものであり、そして
前記末端にアミノ基を有するブロックBの前駆体が、
共役ジエン、または共役ジエンとその他のモノマーとの混合物を、
重合開始剤として、有機アルカリ金属もしくは有機アルカリ土類金属、または二官能性の有機アルカリ金属を用いたアニオンリビング重合により(共)重合して得られた(共)重合体の活性末端にアミノ化剤を反応させる方法によって製造されたものである
ことを特徴とする、前記ブロック共重合体によって達成される。
本発明の上記課題は第二に、糖ブロックAおよび共役ジエン系(共)重合体ブロックBを有するブロック共重合体、
ただし、前記共役ジエン(共)重合体ブロックBは、共役ジエンの(共)重合体のブロック、この共役ジエンの(共)重合体のブロックは水素添加されていない、であり、
前記ブロック共重合体は、A−BまたはA−B−Aで表される構造を有し、重量平均分子量が2,000〜600,000であり、そして
前記ブロック共重合体に含有される糖ブロックAの含有量は、共役ジエン(共)重合体ブロックBとの合計に対して30〜97重量%である、
前記ブロック共重合体の製造方法であって、
末端にカルボキシル基を有するブロックAの前駆体および末端にアミノ基を有するブロックBの前駆体を準備し、これらをアミド化反応により結合する工程を含むことを特徴とする、前記製造方法によって達成される。
本発明のブロック共重合体は、糖ブロックAおよび共役ジエン系(共)重合体ブロックBを有する。
<糖ブロックA>
糖ブロックAは、単糖、オリゴ糖および多糖から選択される少なくとも1種の構造を含む。
上記単糖としては、例えば五炭糖(ペントース)、六炭糖(ヘキソース)等を挙げることができる。五炭糖としては、例えばリボース、デオキシリボース等;六炭糖としては、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等を、それぞれ挙げることができる。
上記多糖類としては、例えばセルロース、デンプン、グリコーゲン、ガラクタン、マンナン、キチン、キトサン、アルギン酸、ポリグルコサミン、プルラン、ヒアルロン酸等を挙げることができる。
糖ブロックAは、上記の糖構造を主鎖に有するブロックであってもよいし、上記の糖構造を側鎖に有する高分子ブロックであってもよい。
N−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミド、
N−p−ビニルベンジル−O−β−2−アセタミンド−2−デオキシ−D−グルコピラノシル−(1−4)−2−アセタミド−2−デオキシ−D−グルコアミド、
N−p−ビニルベンジル−O−α−D−グルコピラノシル−(1−4)−D−グルコサミド、
N−p−ビニルベンジル−O−β−D−グルコピラノシル−(1−4)−D−グルコアミド、
N−p−ビニルベンジル−O−β−D−マンノピラノシル−(1−4)−D−マンナミド、
N−p−ビニルベンジル−O−α−D−ガラクトピラノシル−(1−6)−D−グルコアミド、
N−p−ビニルベンジル−O−α−D−グルコピラノシル−(1−3)−D−グルコアミド、
N−p−ビニルベンジル−O−α−D−グルコピラノシル−(1−4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1−4)−D−グルコアミド、
N−p−ビニルベンジル−O−α−D−グルコピラノシル−(1−4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1−4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1−4)−D−グルコアミド、
N−p−ビニルベンジル−O−α−D−グルコピラノシル−(1−4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1−4)− O−α−D−グルコピラノシル−(1−4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1−4)−D−グルコアミドから選択される少なくとも1種のモノマーの(共)重合体鎖を含有するブロック、ならびに前記モノマーのうちから選択される少なくとも1種とその他のビニルモノマーとの共重合体鎖を含有するブロック等であることができる。
上記に例示したモノマーのうち、N−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミドは、下記式(1)で表される化合物である。
上記において、糖ブロックAの有する水酸基の一部または全部がアシル基で置換されていてもよい。アシル基としては例えばアセチル基等を挙げることができる。
共役ジエン系(共)重合体ブロックBは、共役ジエンの(共)重合体のブロック、ただしこの共役ジエンの(共)重合体のブロックは水素添加されていない、である。
共役ジエン系(共)重合体ブロックBに使用される共役ジエンとしては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができる。重合体ブロックAに使用されることのある他のモノマーとしては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができ、特にスチレンまたはα−メチルスチレンが好ましい。
本発明のブロック共重合体は、A−BまたはA−B−Aで表される構造を有する。
本発明のブロック共重合体に含有される糖ブロックAの含有量は、共役ジエン(共)重合体ブロックBとの合計に対して、30〜97重量%であり、好ましくは40〜90重量%であり、さらに好ましくは50〜85重量%である。この範囲の量とすることにより、糖鎖の機能とジエンポリマーの加工性とのバランスに優れたブロック共重合体とすることができる。
本発明のブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量として2,000〜600,000であり、好ましくは10,000〜300,000である。この範囲の分子量とすることにより、糖鎖の機能とジエンポリマーの加工性とのバランスに優れたブロック共重合体とすることができる。
本発明のブロック共重合体は、末端にカルボキシル基を有するブロックAの前駆体および末端にアミノ基を有するブロックBの前駆体を準備し、これらをアミド化反応により結合する工程を含む方法により製造することができる。
糖ブロックAの前駆体は、前記したような単糖、オリゴ糖および多糖から選択される少なくとも1種の構造を有し、かつ片末端にカルボキシル基を有する。このような糖ブロックAの前駆体は、ブロックAが有すべき糖構造に更に1個の構成単糖がグリコシド結合で連結した原料糖を使用して合成することができる。例えばブロックAが有すべき糖の構造がガラクトース構造であるならば、原料糖としてラクトース等を使用することができ、ブロックAが有すべき糖の構造がマルトテトラオース構造であるならば、原料糖としてマルトペンタオース等を使用することができる。
−糖構造を主鎖に有するブロックA前駆体の製造方法−
糖ブロックAが糖構造を主鎖に有するブロックである場合、その前駆体は、上記のようにして選択された原料糖をラクトン化し、次いでこのラクトンを開環することにより、容易に製造することができる。
ラクトン化した原料糖は、次いで水溶化や、イオン交換樹脂を利用したイオン交換法等により開環することにより、ブロックA前駆体とすることができる。ブロックA前駆体は、所望の糖構造とカルボキシル基とを有し、本発明のブロック共重合体の合成に供される。
糖ブロックAが糖構造を側鎖に有する高分子ブロックである場合も、上記のようにして選択された原料糖から出発する。高分子ブロックAの前駆体は、まずブロックAが有すべき糖構造および重合可能な不飽和結合を有するモノマーを合成し、次いでこれをカルボキシル基を有する開始剤を用いてラジカル(共)重合することにより、合成することができる。
モノマーの合成は、ラクトン化した原料糖と、重合可能な不飽和結合およびアミノ基を有する化合物とを反応させ、好ましくはその後残存する水酸基をアシル化することにより行うことができる。
上記重合可能な不飽和結合およびアミノ基を有する化合物としては、例えばビニルベンジルアミン、アリルアミン等を挙げることができる。
任意的に行うことができる残存水酸基のアシル化反応は、上記反応物を更に適当な酸無水物と反応させる等、常法に従って行うことができる。
上記カルボキシル基を有する開始剤としては、例えば4、4’−アゾビス−(4−シアノ)吉草酸等を挙げることができる。ラジカル重合は、公知の方法に従って実施することができる。
得られた(共)重合体は、側鎖に所望の糖構造を有し、また重合体の片末端にカルボキシル基を有し、本発明のブロック共重合体の合成に供することができる。
ブロックB前駆体は、上記したような共役ジエン(共)重合体の鎖を有し、(共)重合体の片末端または両末端にアミノ基を有するものである。
以下、ブロックB前駆体の製造方法について、ブロックB前駆体がその片末端にアミノ基を有する場合およびその両末端にアミノ基を有する場合に分けて順次説明する。
片末端にアミノ基を有するブロックB前駆体は、所望の共役ジエンおよび任意的にその他のモノマーの混合物を、アミノ基を有するラジカル重合開始剤によって(共)重合する方法、あるいは重合開始剤として有機アルカリ金属または有機アルカリ土類金属を用いたアニオンリビング重合により(共)重合して得られた(共)重合体の活性末端にアミノ化剤を反応させる方法等により、容易に製造することができる。
後者の方法による場合に重合開始剤として使用できるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の具体例としては、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、1,4−ジリチオブタンなどのアルキレンジリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、リチウムナフタレン、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン、n−ブチルマグネシウム、n−ヘキシルマグネシウム、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム等が挙げられる。
両末端にアミノ基を有するブロックB前駆体は、所望の共役ジエンおよび任意的にその他のモノマーの混合物を、二官能性の有機アルカリ金属を重合開始剤としてアニオンリビング(共)重合して得られた(共)重合体の活性末端にアミノ化剤を反応させる方法等により、容易に製造することができる。
ここで使用できる二官能性の有機アルカリ金属重合開始剤としては、例えば芳香族ラジカルアニオン、芳香族ジビニル化合物とその2倍モルの有機アルカリ金属または有機アルカリ土類金属との反応物等を挙げることができる。
前者の芳香族ラジカルアニオンとしては、例えばリチウムナフタレン、ナトリウムナフタレン等を挙げることができる。
後者の場合に使用できる芳香族ジビニル化合物の具体例としては、例えばm−ジビニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ビス(1−フェニルエテニル)ベンゼン等を挙げることができる。また、後者の場合に使用できるアルカリ金属またはアルカリ土類金属およびアミノ化剤は、上記「片末端にアミノ基を有するブロックB前駆体の製造方法」において例示したところと同様である。
本発明のブロック共重合体は、上記したような糖ブロックA前駆体と共役ジエン共重合体ブロックB前駆体とを、アミド化反応により結合することにより製造することができる。上記アミド化反応は、ブロックA前駆体の有するカルボキシル基を酸塩化物、エステル等に変換してからブロックB前駆体と反応させてもいいが、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下ブロックA前駆体とブロックB前駆体とを直接反応させることが好ましい。
ブロックAの水酸基がアシル化されている場合には、次いでこれらの加水分解工程を行ってもよい。この加水分解工程は、公知の方法により行うことができるが、塩基性化合物によるケン化反応を好適に利用することができる。ここで使用することができる塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等を挙げることができる。
《ポリ(N−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミド)ブロックAとポリイソプレンブロックBとを有するA−B−Aブロック共重合体の合成》
(1)ブロックAの前駆体(vAc−PVLA)の合成
(1−1)p−ビニルベンジルフタルイミドの合成
ナスフラスコ中で、p−クロロメチルスチレン1gをジメチルホルムアミド(DMF)3.2mLに溶解し、フタルイミドカリウム1.2gを加えた。これを50℃で4時間加熱し、反応させた。反応終了後、エバポレーターを用いてDMFを留去した後、ベンゼン4.5mLを加えて残存物を溶解した。このベンゼン溶液を、0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液で数回洗浄し、更に水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。残存物をメタノールから再結晶することにより、p−ビニルベンジルフタルイミド1.5gを得た。
セパラブルフラスコ中で、上記(1−1)で合成したp−ビニルベンジルフタルイミドの1gをエタノール2.7mlに溶解した。この混合物に窒素気流下で滴下ロートを用いて、0.36gのヒドラジンモノハイドレート(純度80%)を含有するエタノール溶液0.545mLを、約40分間かけて滴下した。滴下終了後、90分間還流し、反応させた。反応終了後、生成した固体を濾取し、これに1gの水酸化カリウムを含有する水溶液6.5mLを加えて溶解した後、エーテルにて抽出した。エーテル相を2重量%炭酸カリウム水溶液で洗浄し、更に水で数回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、エーテルを留去した。残存物を減圧蒸留することにより、ビニルベンジルアミン0.45gを得た。
4−O−β−D−ガラクトピラノシル−D−グルコピラノース(以下、「ラクトース」ともいう。)12gをメタノール300mLに懸濁し、40℃に加熱した。これに18gのヨウ素を含有するメタノール溶液30mLを滴下し、その後40℃で60分間反応させた。反応終了後、反応混合物に4規定の水酸化カリウムのメタノール溶液を、ヨウ素の着色がなくなるまで添加した。沈殿を濾取し、冷メタノールで数回洗浄し、更にエーテルで洗浄した。得られた固体をごく少量の水に溶解し、プロトン型イオン交換樹脂アンバーライト120B(ローム・アンド・ハース社製)にアプライし、酸性分画を単離した。
得られた水溶液150mLにメタノール200mLおよびエタノール300mLを加えてエバポレーションにより溶媒を留去した。完全に乾固した後、再びメタノール150mLおよびエタノール300mLを加えてエバポレーションにより溶媒を留去した。この操作を数回繰り返すことにより、ラクトースのラクトン化物12gを得た。
ナスフラスコ中で、上記(1−3)で合成したラクトースのラクトン化物1gを、メタノール5.4mLに70℃にて溶解した後、上記(1−2)で合成したp−ビニルベンジルアミンの0.4gを加え、70℃にて120分反応させた。反応終了後、21.7mLのアセトンを加えたところ、沈殿物が生じた。これを4℃で2時間静置した後、沈殿物を濾取し、メタノールから再結晶することにより、N−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミド(VLA、上記式(1)で表される化合物)1.1gを得た。
上記(1−4)で合成したN−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミドの1gを無水酢酸20mLに溶解し、2時間反応させた。反応終了後、反応溶液を冷水10mLに投入し、2時間加水分解した。その後、クロロホルム30mLを加えて抽出し、クロロホルム相を2重量%のクエン酸水溶液、5重量%の炭酸水素ナトリウム水溶液および水の順で洗浄した。最終のクロロホルム相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して、残存物をエタノールから再結晶することにより、N−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミドのアセチル化物(Ac−VLA)0.7gを得た。
上記(1−5)で合成したN−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミドのアセチル化物(Ac−VLA)の0.7gを真空反応管に取り、ジメチルスルホキシド(DMSO)10mLに溶解した後、凍結−脱気−融解を繰り返して溶液中の酸素を除いた。この溶液に、アゾビス−(4−シアノ)吉草酸0.5g(Ac−VLAの10分の1モルに相当する。)を添加して溶解した後、減圧密閉した。これを70℃で一昼夜重合させた。
得られた溶液を大過剰のメタノールに滴下して、重合体を沈殿させた。沈殿物を回収し、DMSO溶媒に溶解して再びメタノールに滴下して重合体を沈殿させる操作を三回繰り返した。沈殿物を乾燥することより、末端に吉草酸残基を有する、N−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミドのアセチル化物のポリマー(vAc−PVLA、ブロックAの前駆体)0.6gを得た。ここで合成したブロックAの前駆体が有する繰り返し単位は、下記式(2)で表される構造単位である。
(2)ブロックB前駆体(2N−PIP)の合成
(2−1)二官能性の有機アルカリ金属の合成
窒素雰囲気下で、攪拌子を入れた300ml三口フラスコに、シクロヘキサン200mLおよび1,3−ビス(1−フェニルエテニル)ベンゼン6.0gを入れ、マグネチックスターラーで攪拌して溶解させた。次いで10.5重量%のsec−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液27.2gを添加し、3時間攪拌することにより、二官能性の有機アルカリ金属重合開始剤の溶液を得た。この溶液中の二官能性の有機アルカリ金属開始剤の濃度は88.3mmol/Lであった。
窒素雰囲気下で、攪拌子を入れた500ml耐圧ビンに、シクロヘキサン200mLおよびテトラヒドロフラン8.1gを入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら、上記で合成した二官能性の有機アルカリ金属重合開始剤の溶液136ml(12mmolの二官能性の有機アルカリ金属重合開始剤を含有する。)を添加し、王冠で密栓した。次いで、イソプレン36.0gを添加して、50℃の恒温水槽で振とうさせながら30分間重合反応を行った後、N−ベンジリデントリメチルシリルアミン5.3gを添加した。引き続き70℃の恒温水槽で振とうさせながら3時間反応を行った後、メタノール2mLを添加して反応を終了させた。
得られた反応混合物を大量のメタノールに投入してポリマーを沈殿させた後、沈殿物をメタノールと塩酸の混合液で洗浄処理し、次いで水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、メタノールで3回洗浄し、更にアセトンで3回洗浄し、60℃で18時間真空乾燥して、両末端にアミノ基を有するポリイソプレン(2N−PIP、ブロックB前駆体)24gを得た。
(3−1)N−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミドのアセチル化物のポリマーからなるブロックAとポリイソプレンブロックBとを有するA−B−Aブロック共重合体(IPAcLA)の合成
上記(1)で合成したvAc−PVLA100mgおよび上記(2)で合成した2N−PIP40mgならびにN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)30mgを、脱水したクロロホルムに溶解し、室温にて一晩撹拌して反応させた。
反応終了後、反応液を飽和食塩水で3回洗浄してDCCを除去した後、クロロホルムをエバポレーターで留去した。残存物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、Bio−Gel P−100(Bio−Rad Laboratories社製。)のカラムにより分子量分画を行った。最も量の多かった分画を使って赤外分光分析および分子量の測定を行った。
FT−IR Spectrophotometer(パーキンエルマー社製)を用いて、vAc−PVLA、2N−PIPおよびIPAcLAの赤外分光分析を行った。これらの赤外チャートを図1ないし3に示す。
vAc−PVLAに特異的な赤外吸収波長は1,220および1,750cm−1であり(図1)、2N−PIPに特異的な赤外吸収波長は883、1,650および2,920cm−1であった(図2)。これらに対し、IPAcLAの赤外分光分析では、上記vAc−PVLAに特異的な吸収および2N−PIPに特異的な吸収のすべてが観測された(図3)。
HLC−8220 GPC(東ソー(株)製)を用いて、vAc−PVLA、2N−PIP、およびIPAcLAにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを行った。結果を表1に示した。
上記(3−1)で合成したIPAcLAの90mgをクロロホルム5mgに溶解し、ナトリウムメトキシド10mgを加え、次いでメタノール10μLを加えてよく撹拌した。1時間後、0.5mLのメタノールを加え、生じた沈殿を12,000rpmで30分間遠心分離した。沈殿物を回収し、乾燥することにより、ポリ(N−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミド)からなるブロックAとポリイソプレンブロックBとを有するA−B−Aブロック共重合体(IPLA)35mgを得た。
FT−IR Spectrophotometerを用いて、IPLAの赤外分光分析を行い、IPAcLAと比較した。IPLAの赤外チャートを図4に示した。
IPAcLA(図3参照)の特性吸収のうち、1,220および1,750cm−1の吸収はアセチル基に由来するものと考えられる。IPAcLAが加水分解されIPLAになると、これらの吸収が消失し代わって3,400cm−1付近に大きな吸収が現れるものと考えられる。
IPLAの赤外分光分析では、2N−PIPに由来する1,450および3,000cm−1の吸収に加え、3,400cm−1付近に大きな吸収が見られ、一方、1,220および1,750cm−1の吸収は消失していた。これらのことから、IPAcLAが加水分解されIPLAが得られたことが確認された。
《ポリ(N−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミド)ブロックAとポリブタジエンブロックBとを有するA−Bブロック共重合体の合成》
(1)ブロックBの前駆体(N−PB)の合成
窒素雰囲気下で、500mL耐圧ビンにシクロヘキサン344ml、テトラヒドロフラン8.1gを入れ、王冠をはめて密閉し、次いで1,3−ブタジエン36.0gを添加した。続いて15重量%のn−ブチルリチウムを含有するシクロヘキサン溶液1.39gを添加して重合を開始させ、30分間室温にて放置した後、N−ベンジリデントリメチルシリルアミン0.7gを添加した。更に70℃の恒温水槽で振とうさせながら3時間、アミノ化反応を行った後、メタノール2mLを添加して、反応を終了させ、ポリマー溶液を得た。
このポリマー溶液につき、ブロックB前駆体(2N−PIP)と同様の精製処理を行うことにより、片末端にアミノ基を有するポリブタジエン(N−PB、ブロックB前駆体)33gを得た。
(2−1)N−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミドのアセチル化物のポリマーからなるブロックAとポリブタジエンブロックBとを有するA−Bブロック共重合体(PBAcLA)の合成
上記(1)で合成したN−PB200mgをクロロホルム20mLに溶解し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液を少量加えて洗浄した。更に水で数回洗浄後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水後、濾過した。
これとは別に、上記実施例1の(1)で合成したvAc−PVLA75mgおよびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の60mgをクロロホルム10mLに溶解し、少し(60分間)反応させた後上記N−PBのクロロホルム溶液を加えて、一晩室温で撹拌して反応させた。
反応終了後、反応液を飽和食塩水で3回洗浄してDCCを除去した後、クロロホルムをエバポレーターで留去した。残存物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解した溶液をエタノール中に投入して沈殿させ、濾別、乾燥してN−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミドのアセチル化物のポリマーからなるブロックAとポリブタジエンブロックBとを有するA−Bブロック共重合体(PBAcLA)を120mg得た。この生成物を用いて、実施例1と同様にして赤外分光分析および分子量の測定を行った。
N−PBおよびPBAcLAの赤外チャートを図5および6に示す。
vAc−PVLAに特異的な赤外吸収波長は、実施例1で測定したとおり1,220および1,750cm−1であり(図1参照)、N−PBに特異的な赤外吸収波長は900、1,650および2,920cm−1であった(図5)。これらに対し、PBAcLAの赤外分光分析では、上記vAc−PVLAに特異的な吸収およびN−PBに特異的な吸収のすべてが観測された(図6)。
(分子量の測定)
N−PBおよびPBAcLAにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを行った。結果を、実施例1で測定したvAc−PVLAの結果とともに表2に示した。
上記(2−1)で合成したPBAcLAの90mgをクロロホルム5mgに溶解し、ナトリウムメトキシド10mgを加え、次いでメタノール10μLを加えてよく撹拌した。1時間後、0.5mLのメタノールを加え、生じた沈殿を12,000rpmで30分間遠心分離した。沈殿物を回収し、乾燥することにより、ポリ(N−p−ビニルベンジル−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコアミド)ブロックAとポリブタジエンブロックBとを有するA−Bブロック共重合体(PBLA)41mgを得た。
FT−IR Spectrophotometerを用いて、PBLAの赤外分光分析を行い、PBAcLA(図6参照)と比較した。PBLAの赤外チャートを図7に示した。
PBLAの赤外分光分析では、N−PBに由来する1,450および3,000cm−1の吸収に加え、3,400cm−1付近に大きな吸収が見られ、一方、1,220および1,750cm−1の吸収は消失していた。これらのことから、PBAcLAが加水分解されPBLAが得られたことが確認された。
《マルトペンタオースに由来するブロックAとポリイソプレンブロックBとを有するA−B−Aブロック共重合体の合成》
(1)ブロックAの前駆体(MPC)の合成
マルトペンタオース((株)林原製)500mgを0.5mLの水に溶解し、これに40℃でメタノール3mLを少しずつ加えた。この溶液に、18gのヨウ素を含有するメタノール溶液800mLを少しずつ加えて、40℃で1時間反応させた。反応終了後、反応混合物に4重量%の水酸化カリウムのメタノール溶液を、反応混合物が乳白色になるまで添加した。この混合物を1時間氷冷した後、沈殿物を濾取し、冷メタノール、冷エーテルの順に洗浄した。
この沈殿物を乾燥後、水1mLに溶解し、メタノール70mLを徐々に加え、4℃で一晩静置した。沈殿物を濾取し、乾燥後、純水7mLで洗いながら溶解して水溶液を得た。この水溶液を、イオン交換樹脂(オルガノ(株)製、IRA−120H+型)のカラムに通してイオン交換することにより、マルトペンタオースのカルボン酸変性物(MPC、ブロックAの前駆体)480mgを得た。ここで合成したブロックAの前駆体は、下記式(3)で表される化合物である。
上記(1)で合成したMPCの50mgをTHF/水混合溶媒(混合比8/2(v/v))8mLに溶解した。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)(WSC)20mgをTHF/水混合溶媒(混合比8/2(v/v))2mLに溶解した溶液を加え、室温で2時間反応させた。
一方、上記実施例1の(2)で合成した2N−PIPの100mgをTHF40mLに溶解した。この溶液に上記MPCとWSCの反応溶液を少しずつ加えて、一晩反応させた。
この生成物につき赤外分光分析を行った。マルトペンタオースの赤外チャートを図8に、生成物の赤外チャートを図9に、それぞれ示した。図9では、マルトペンタオース(図8)とポリイソプレン(図2参照)の双方の特性吸収のすべてを有することが確認され、この生成物はマルトペンタオースに由来するブロックAとポリイソプレンブロックBとを有するA−B−Aブロック共重合体(IPMP)であることが判った。
《マルトペンタオースに由来するブロックAとポリブタジエンブロックBとを有するA−Bブロック共重合体の合成》
上記実施例3の(1)で合成したMPCの50mgをTHF/水混合溶媒(混合比8/2(v/v))8mLに溶解した。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)(WSC)20mgをTHF/水混合溶媒(混合比8/2(v/v))2mLに溶解した溶液を加え、室温で2時間反応させた。
一方、上記実施例2の(1)で合成したN−PBの100mgをTHF40mLに溶解した。この溶液に上記MPCとWSCの反応溶液を少しずつ加えて、一晩反応させた。
反応混合物からTHFおよび水を留去した後、n−ヘキサンを加えて洗浄し、未反応のN−PBを除去した。n−ヘキサン不溶分は更にメタノールで洗浄し
て、メタノール可溶分を除去して、メタノール不溶分94mgを得た。
ここで得られたメタノール可溶分およびメタノール不溶分について赤外分光分析を行った。メタノール可溶分の赤外チャートを図10に、メタノール不溶分の赤外チャートを図11に、それぞれ示す。
図10から、メタノール可溶分は、未反応のMPCとWSCの混合物であることが確認された。
一方、メタノール不溶分の赤外分光分析(図11)は、マルトペンタオースとポリブタジエン両者の特性吸収を有することが判明した。原料のMPCはメタノールに可溶かつn−ヘキサンに不溶であり、また、N−PBはn−ヘキサンに可溶かつメタノールに不溶であることから、メタノール不溶分はマルトペンタオースに由来するブロックAとポリブタジエンブロックBとを有するA−Bブロック共重合体(BPMP)であることが判った。
Claims (5)
- 糖ブロックAおよび共役ジエン系(共)重合体ブロックBを有するブロック共重合体であって、
前記共役ジエン(共)重合体ブロックBが共役ジエンの(共)重合体のブロック、ただしこの共役ジエンの(共)重合体のブロックは水素添加されていない、であり、
前記ブロック共重合体は、A−BまたはA−B−Aで表される構造を有し、重量平均分子量が2,000〜600,000であり、
前記ブロック共重合体に含有される糖ブロックAの含有量が共役ジエン(共)重合体ブロックBとの合計に対して30〜97重量%であり、
前記ブロック共重合体が、
末端にカルボキシル基を有するブロックAの前駆体および末端にアミノ基を有するブロックBの前駆体を準備し、これらをアミド化反応により結合する工程を含む製造方法によって製造されたものであり、そして
前記末端にアミノ基を有するブロックBの前駆体が、
共役ジエン、または共役ジエンとその他のモノマーとの混合物を、
重合開始剤として、有機アルカリ金属もしくは有機アルカリ土類金属、または二官能性の有機アルカリ金属を用いたアニオンリビング重合により(共)重合して得られた(共)重合体の活性末端にアミノ化剤を反応させる方法によって製造されたものである
ことを特徴とする、前記ブロック共重合体。 - 糖ブロックAが、単糖、オリゴ糖および多糖から選択される少なくとも1種の構造を含むものである、請求項1に記載のブロック共重合体。
- 共役ジエン系(共)重合体ブロックBが、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンおよびクロロプレンからなる群から選択される少なくとも1種の共役ジエンの(共)重合体のブロック、ただしこの共役ジエンの(共)重合体のブロックは水素添加されていない、であることを特徴とする、請求項1に記載のブロック共重合体。
- 糖ブロックAおよび共役ジエン系(共)重合体ブロックBを有するブロック共重合体、
ただし、前記共役ジエン(共)重合体ブロックBは、共役ジエンの(共)重合体のブロック、この共役ジエンの(共)重合体のブロックは水素添加されていない、であり、
前記ブロック共重合体は、A−BまたはA−B−Aで表される構造を有し、重量平均分子量が2,000〜600,000であり、そして
前記ブロック共重合体に含有される糖ブロックAの含有量は、共役ジエン(共)重合体ブロックBとの合計に対して30〜97重量%である、
前記ブロック共重合体の製造方法であって、
末端にカルボキシル基を有するブロックAの前駆体および末端にアミノ基を有するブロックBの前駆体を準備し、これらをアミド化反応により結合する工程を含むことを特徴とする、前記製造方法。 - 前記末端にアミノ基を有するブロックBの前駆体が、
共役ジエン、または共役ジエンとその他のモノマーとの混合物を、
重合開始剤、有機アルカリ金属もしくは有機アルカリ土類金属、または二官能性の有機アルカリ金属を用いたアニオンリビング重合により(共)重合して得られた(共)重合体の活性末端にアミノ化剤を反応させる方法
によって製造されたものである、請求項4に記載の製造方法。
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