JPWO2021124860A1 - 熱電変換体、熱電変換モジュール、及び、熱電変換体の製造方法 - Google Patents

熱電変換体、熱電変換モジュール、及び、熱電変換体の製造方法 Download PDF

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Abstract

電気伝導率が高く、熱電変換モジュールに用いた場合に高い熱電変換効率を発現させることができ、製造時に反りが生じにくい熱電変換体、その製造方法、及び、それを用いた熱電変換モジュールを提供する。熱電半導体材料と耐熱性樹脂とを含む組成物の焼成体である熱電変換体であって、前記耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度が480℃以下である、熱電変換体、この熱電変換体を含む熱電変換モジュール、及び、熱電変換体の製造方法。

Description

本発明は、熱電変換体、熱電変換モジュール、及び、熱電変換体の製造方法に関する。
熱電変換を利用したエネルギー変換技術として、熱電発電技術及びペルチェ冷却技術が知られている。熱電発電技術は、ゼーベック効果による熱エネルギーから電気エネルギーへの変換を利用した技術である。この技術は、熱電変換を実現するための熱電変換素子を動作させるのに多大なコストを必要としないので、特にビル、工場等の施設で使用される化石燃料資源等から発生する未利用の廃熱エネルギーを電気エネルギーとして回収できる省エネルギー技術として大きな脚光を浴びている。ペルチェ冷却技術は、熱電発電とは逆に、ペルチェ効果による電気エネルギーから熱エネルギーへの変換を利用する技術である。このペルチェ冷却技術は、例えば、ワインクーラーや携帯可能な小型冷蔵庫に用いられている。このペルチェ冷却技術は、その他にも、コンピュータに用いられるCPUの冷却手段や、精密な温度制御が必要な部品や装置(例えば、光通信の半導体レーザー発振器)の温度制御手段としても用いられる。
熱電変換装置としては、いわゆるπ型の熱電変換装置が知られている。π型の熱電変換装置は、互いに離間するー対の電極を基板上に設け、例えば、―方の電極の上にP型熱電素子を、他方の電極の上にN型熱電素子を、同じく互いに離間して設け、両方の熱電材料の上面を対向する基板の同一の電極に接続して両素子の導通を図ることで構成されている(例えば、特許文献1)。また、いわゆるインプレーン型の熱電変換装置も知られている。インプレーン型の熱電変換装置は、P型熱電素子とN型熱電素子とが基板の面内方向に交互に設けられ、例えば、両熱電素子間の接合部の下部を、電極を介して直列に接続することで構成されている(例えば、特許文献2を参照)。
熱電変換装置に含まれる熱電変換体を、熱電半導体微粒子と耐熱性樹脂とを含む熱電半導体組成物を用いて膜形成し、乾燥し、更に焼成することによって作製することが知られている(例えば、特許文献3)。
特開2010−192764公報 国際公開第2018/179544号 国際公開第2018/110403号
近年、熱電変換装置が普及するにつれて、熱電変換性能の向上の要請が高まっている。そして、熱電半導体微粒子と耐熱性樹脂とを含む熱電半導体組成物を用いて膜形成・乾燥・焼成を経て作製される熱電変換体にも、熱電変換モジュールに用いた場合により高い熱電変換効率を発現させるため、電気伝導率を更に高くすることが求められている。その一方、焼成を含む製造工程において、所期の熱電変換性能が発揮できるようにするため、反りが生じにくい熱電変換体であることが求められる。
本発明は、上記問題を鑑み、電気伝導率が高く、熱電変換モジュールに用いた場合に高い熱電変換効率を発現させることができ、しかも製造時に反りを生じにくい熱電変換体を提供することを課題とする。また、本発明は、高い熱電変換効率を発現し得る熱電変換モジュールを提供することを課題とする。更に、反りの発生を抑制しつつ高い電気伝導率の熱電変換体を製造することができる熱電変換体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、熱電半導体材料と、昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度を有する特定の耐熱性樹脂とを含む組成物を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1]熱電半導体材料と耐熱性樹脂とを含む組成物の焼成体である熱電変換体であって、前記耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度が520℃以下である、熱電変換体。
[2]前記耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度が460℃以上である、上記[1]に記載の熱電変換体。
[3]前記熱電変換体の中央部を含む縦断面において、空隙以外の部分が占める面積の割合で表される充填率が、80%以上、100%未満である、上記[1]又は[2]に記載の熱電変換体。
[4]前記耐熱性樹脂が、ポリアミドイミド樹脂である、上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の熱電変換体。
[5]前記組成物の塗布膜の焼成体である、上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の熱電変換体。
[6]前記組成物は、イオン液体及び無機イオン性化合物のうち少なくとも一方を更に含む、上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の熱電変換体。
[7]交互に配置されたP型熱電素子層及びN型熱電素子層を含み、少なくとも隣り合う一対のP型熱電素子層と、N型熱電素子層とは離間し、一方の主面同士が電気的に接続され、他方の主面同士は電気的に接続されておらず、
前記P型熱電素子層及び前記N型熱電素子層のうち少なくとも一方が、上記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の熱電変換体である、熱電変換モジュール。
[8]上記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の熱電変換体の製造方法であって、
前記組成物を支持体上に塗布し、
前記支持体上に塗布された前記組成物を乾燥して塗布膜を形成し、
前記塗布膜をアニール処理して前記熱電変換体を形成する、熱電変換体の製造方法。
[9]前記塗布膜をプレス処理し、プレス処理された前記塗布膜をアニール処理して前記熱電変換体を形成する、上記[8]に記載の熱電変換体の製造方法。
[10]前記耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度より30℃以上低い温度で前記塗布膜をアニール処理する、上記[8]又は[9]に記載の熱電変換体の製造方法。
本発明に係る熱電変換体は、電気伝導率が高く、熱電変換モジュールに用いた場合に高い熱電変換効率を発現させることができ、製造時に反りが生じにくい熱電変換体とすることができる。また、本発明に係る熱電変換モジュールは、高い熱電変換効率を発現することができる。更に、本発明に係る熱電変換体の製造方法によれば、反りの発生を抑制しつつ高い電気伝導率の熱電変換体を製造することができる。
熱電変換体の中央部を含む縦断面を説明するための断面模式図である。 熱電変換モジュールの一例を示す断面模式図である。 熱電変換モジュールの他の例を示す部分的な断面模式図である。 熱電変換体及び熱電変換モジュールの製造方法の一例を示す模式図である。 熱電変換体の充填率を測定する手順を説明するための断面模式図である。 実施例3の熱電変換体の縦断面の写真である。 参考のために作製した試験片の熱電変換体の縦断面の写真である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある)について説明する。
[熱電変換体]
本発明の実施形態に係る熱電変換体は、熱電半導体材料と耐熱性樹脂とを含む組成物の焼成体であって、上記耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度が520℃以下である。以下、熱電半導体材料と耐熱性樹脂とを含む組成物を熱電半導体組成物という。
上記熱電変換体は、π型の熱電変換モジュールに用いられる、N型の熱電変換層及びP型の熱電変換層の少なくとも一方を構成するチップとして用いられる。また、上記熱電変換体は、インプレーン型の熱電変換モジュールにおける、基材に密着した状態の、N型の熱電変換層及びP型の熱電変換層の少なくとも一方を構成する。
本実施形態の熱電変換体は、原料である熱電半導体組成物に含まれる耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度が520℃以下であり高すぎない。このため、熱電半導体組成物を塗布乾燥して塗布膜を形成し、この塗布膜を焼成する過程で耐熱性樹脂の分解が適度に進行し、熱電変換体の電気伝導率が低下することを回避しつつ、アニール処理中に熱電変換体に反りが発生するのを抑制することができる。
熱電変換体の厚さは、好ましくは50μm以上、より好ましくは75μm以上、更に好ましくは100μm以上であり、また、好ましくは1,200μm以下、より好ましくは1,000μm以下、更に好ましくは800μm以下である。熱電変換体の厚さが上記範囲にあると、良好な熱電変換性能を示す熱電変換体を生産性よく製造しやすい。
なお、熱電変換体の電気伝導率は、後述する実施例3および4の試験片の電気伝導率を測定した方法により測定されるものである。
熱電変換体の中央部を含む縦断面において、空隙以外の部分が占める面積の割合で表される充填率は、良好な熱電変換性能と高い電気伝導率を確保する観点から、好ましくは80%以上、100%未満であり、より好ましくは81%以上、100%未満である。
本明細書において「熱電変換体の中央部を含む縦断面」とは、二次元的に広がる熱電変換体を法線方向から見たときの中央部を通るように厚み方向に切断して得られる断面を意味する。以下、図面を用いて具体的に説明する。
図1は、「熱電変換体の中央部を含む縦断面」を説明するための、熱電変換体の断面模式図であり、図1(a)は、熱電変換体の平面図であり、図1(b)は、熱電変換体の厚さ方向の縦断面である。
図1(a)に示すように、空隙部7を含む熱電変換体6が、幅方向に長さX、奥行き方向に長さYを有する矩形状のものである場合、熱電変換体6の中央部C(つまり、幅方向において一端からX/2、奥行き方向において一端からY/2の位置)を含み、例えば、幅方向に沿って図1(a)のA−A’間で切断したときに得られる、長さX、厚さDからなる断面が「熱電変換体の中央部を含む縦断面」である。なお、熱電変換体は、図1(b)に示す熱電変換体6のように、基材(図1(b)の符号2)上に形成されたものであってもよい。
熱電変換体は、好ましくは、熱電半導体材料と耐熱性樹脂とを含む熱電半導体組成物を、支持体等の未塗布体の表面に塗布して形成した塗布膜の焼成体である。熱電変換体が、熱電半導体組成物の塗布膜の焼成体であることにより、シート状の熱電変換モジュールを容易に製造することができ、柔軟性が向上された熱電変換体も得られ易い。
<熱電半導体組成物>
熱電変換体を作製するために用いる熱電半導体組成物は、少なくとも熱電半導体材料と耐熱性樹脂とを含み、好ましくは、イオン液体及び無機イオン性化合物のうち少なくとも一方を更に含む。
(耐熱性樹脂)
熱電半導体組成物に含まれる耐熱性樹脂は、熱電半導体組成物に所定の粘度を付与して塗布を容易にしたり、塗布後に熱電半導体材料を結着し、熱電半導体材料間のバインダーとして働かせたりする目的で用いられる。
耐熱性樹脂としては、特に制限されるものではないが、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理等により熱電半導体材料を結晶成長させる際に、樹脂としての機械的強度及び熱伝導率等の諸物性が部分的にでも維持される耐熱性樹脂を用いる。
耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度(以下「重量減少温度」ともいう。)は520℃以下であり、好ましくは510℃以下、より好ましくは500℃以下である。昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度が520℃以下であることにより、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理して得られる熱電変換体の電気伝導率を高くすることができる。これには、耐熱性樹脂の重量減少温度が高すぎないために、アニール処理時に耐熱性樹脂の分解がある程度進行し、アニール処理前に比べて熱電半導体材料に対する耐熱性樹脂の存在割合が低下することが関係しているものと推測される。また、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理する際に、熱電変換体に反りが発生するのを抑制することができる。耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度は、反りの発生を抑制しやすくするとともに、熱電変換体の柔軟性を確保する観点から、好ましくは460℃以上、より好ましくは465℃以上、さらに好ましくは470℃以上である。なお、本明細書において、耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度(重量減少温度)とは、以下の条件で耐熱性樹脂の熱重量測定を行って得た温度を意味する。熱重量示差熱分析装置を用い、窒素雰囲気下において、6.8gの耐熱性樹脂の試料を37℃から昇温速度10℃/分で加熱し、400℃における重量を100%として、これに対して重量が95%となった時点の温度を重量減少温度とする。なお、試料が溶液の状態である場合には、熱分析の実施前に250℃で2時間の条件により溶剤を揮発させる。
耐熱性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、エポキシ樹脂、及びこれらの樹脂の化学構造を有する共重合体等が挙げられる。耐熱性樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐熱性がより高く、かつ薄膜中の熱電半導体材料の結晶成長に悪影響を及ぼさないという点から、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、柔軟性に優れるという点からポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂がより好ましく、ポリアミドイミド樹脂がさらに好ましい。また、ポリアミドイミド樹脂は、ポリアミック酸等とは異なり、アニール処理の際に脱水環化反応を伴うものではないことに起因して、アニール処理の際の重量減少が緩やかであり、熱電変換体の反りを防止させやすいため、特に好ましい。
また、耐熱性樹脂は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、熱電変換材料の屈曲性を維持することができる。
耐熱性樹脂の熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜20質量%である。耐熱性樹脂の配合量が、上記範囲内であれば、熱電性能を維持しつつ、高い電気伝導率を持つ熱電変換体が得られ、かつ、製造工程における反りの発生を抑制することがより容易である。
(熱電半導体材料)
P型熱電素子層及びN型熱電素子層に含まれる熱電半導体材料としては、温度差を付与することにより、熱起電力を発生させることができる材料であれば特に制限されず、例えば、P型ビスマステルライド、N型ビスマステルライド等のビスマス−テルル系熱電半導体材料;GeTe、PbTe等のテルライド系熱電半導体材料;アンチモン−テルル系熱電半導体材料;ZnSb、ZnSb、ZnSb等の亜鉛−アンチモン系熱電半導体材料;SiGe等のシリコン−ゲルマニウム系熱電半導体材料;BiSe等のビスマスセレナイド系熱電半導体材料;β―FeSi、CrSi、MnSi1.73、MgSi等のシリサイド系熱電半導体材料;酸化物系熱電半導体材料;FeVAl、FeVAlSi、FeVTiAl等のホイスラー材料、TiS等の硫化物系熱電半導体材料、スクッテルダイト材料等が用いられる。
これらの中でも、高い熱電変換性能が得られ易いという観点から、ビスマス−テルル系熱電半導体材料、テルライド系熱電半導体材料、アンチモン−テルル系熱電半導体材料、又はビスマスセレナイド系熱電半導体材料が好ましい。
また、これらのうち、地政学的な問題から供給が不安定なレアメタルを含まないという観点からは、シリサイド系熱電半導体材料が好ましく、高温環境で熱電変換モジュールを機能させることを容易とすることができるという観点からは、スクッテルダイト材料が好ましい。
また、低温環境での熱電変換性能が高いという観点からは、熱電半導体材料は、P型ビスマステルライド又はN型ビスマステルライド等のビスマス−テルル系熱電半導体材料であることが好ましい。
P型ビスマステルライドは、キャリアが正孔で、ゼーベック係数が正値であり、例えば、BiTeSb2−Xで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Xは、好ましくは0<X≦0.8であり、より好ましくは0.4≦X≦0.6である。Xが0より大きく0.8以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、P型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
また、N型ビスマステルライドは、キャリアが電子で、ゼーベック係数が負値であり、例えば、BiTe3−YSeで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Yは、好ましくは0≦Y≦3(Y=0の時:BiTe)であり、より好ましくは0.1<Y≦2.7である。Yが0以上3以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、N型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
熱電素子層に用いる熱電半導体材料は、所定のサイズを有する微粒子状のものであることが好ましく、例えば、ボールミル等の微粉砕装置を用いるなどして、所定のサイズまで粉砕された熱電半導体微粒子であることが好ましい。
熱電半導体微粒子の熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは、30〜99質量%である。より好ましくは、50〜96質量%であり、更に好ましくは、70〜95質量%である。熱電半導体微粒子の配合量が、上記範囲内であれば、ゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が大きく、また電気伝導率の低下が抑制され、熱伝導率のみが低下するため高い熱電性能を示すとともに、十分な皮膜強度、及び、適度な柔軟性を有する膜が得られ好ましい。
熱電半導体微粒子の平均粒径は、好ましくは、10nm〜200μm、より好ましくは、10nm〜30μm、更に好ましくは、50nm〜10μm、特に好ましくは、1〜6μmである。上記範囲内であれば、均一分散が容易になり、電気伝導率を高くすることができる。
熱電半導体材料を粉砕して熱電半導体微粒子を得る方法は特に限定されず、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、エッジミル、製粉ミル、ハンマーミル、ペレットミル、ウィリーミル、ローラーミル等の公知の微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕すればよい。
なお、本明細書において、熱電半導体微粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析装置(CILAS社製、1064型)にて測定することにより得られ、粒径分布の中央値で表される値である。
また、熱電半導体微粒子は、事前に熱処理されたものであることが好ましい(ここでいう「熱処理」とは本発明でいうアニール処理工程で行う「アニール処理」とは異なる)。熱処理を行うことにより、熱電半導体微粒子は、結晶性が向上し、更に、熱電半導体微粒子の表面酸化膜が除去されるため、熱電変換材料のゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が増大し、熱電性能指数を更に向上させることができる。熱処理は、特に限定されないが、熱電半導体組成物を調製する前に、熱電半導体微粒子に悪影響を及ぼすことがないように、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、同じく水素等の還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行うことが好ましく、不活性ガス及び還元ガスの混合ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。具体的な温度条件は、用いる熱電半導体微粒子に依存するが、通常、微粒子の融点以下の温度で、かつ100〜1,500℃で、数分〜数十時間行うことが好ましい。
(イオン液体)
熱電半導体組成物に含まれ得るイオン液体は、カチオンとアニオンとを組み合わせてなる溶融塩であり、−50℃以上400℃未満のいずれかの温度領域において液体で存在し得る塩をいう。換言すれば、イオン液体は、融点が−50℃以上400℃未満の範囲にあるイオン性化合物である。イオン液体の融点は、好ましくは−25℃以上200℃以下、より好ましくは0℃以上150℃以下である。イオン液体は、蒸気圧が極めて低く不揮発性であること、優れた熱安定性及び電気化学安定性を有していること、粘度が低いこと、かつイオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体材料間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。また、イオン液体は、非プロトン性のイオン構造に基づく高い極性を示し、耐熱性樹脂との相溶性に優れるため、熱電変換材料の電気伝導率を均一にすることができる。
イオン液体は、公知または市販のものが使用できる。例えば、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、イミダゾリウム等の窒素含有環状カチオン化合物及びそれらの誘導体;テトラアルキルアンモニウム系のアミン系カチオン及びそれらの誘導体;ホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、テトラアルキルホスホニウム等のホスフィン系カチオン及びそれらの誘導体;リチウムカチオン及びその誘導体等のカチオン成分と、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、F(HF) 、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
上記のイオン液体の中で、高温安定性、熱電半導体材料及び樹脂との相溶性、熱電半導体材料間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、イオン液体のカチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
カチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体の具体的な例として、4−メチル−ブチルピリジニウムクロライド、3−メチル−ブチルピリジニウムクロライド、4−メチル−ヘキシルピリジニウムクロライド、3−メチル−ヘキシルピリジニウムクロライド、4−メチル−オクチルピリジニウムクロライド、3−メチル−オクチルピリジニウムクロライド、3,4−ジメチル−ブチルピリジニウムクロライド、3,5−ジメチル−ブチルピリジニウムクロライド、4−メチル−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、4−メチル−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。この中で、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロミド、1−ブチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファートが好ましい。
また、カチオン成分が、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体の具体的な例として、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムメチルスルフェート、1、3−ジブチルイミダゾリウムメチルスルフェート等が挙げられる。この中で、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]が好ましい。
上記のイオン液体は、電気伝導度が10−7S/cm以上であることが好ましい。イオン伝導度が上記範囲であれば、導電補助剤として、熱電半導体材料間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。
また、上記のイオン液体は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
また、上記のイオン液体は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
イオン液体の熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1.0〜20質量%である。イオン液体の配合量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下が効果的に抑制され、高い熱電性能を有する膜が得られる。
(無機イオン性化合物)
熱電半導体組成物に含まれ得る無機イオン性化合物は、少なくともカチオンとアニオンから構成される化合物である。無機イオン性化合物は400〜900℃の幅広い温度領域において固体で存在し、イオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体材料間の電気伝導率の低減を抑制することができる。
上記無機イオン性化合物を構成するカチオンとしては、金属カチオンを用いる。
金属カチオンとしては、例えば、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、典型金属カチオン及び遷移金属カチオンが挙げられ、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンがより好ましい。
アルカリ金属カチオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs及びFr等が挙げられる。
アルカリ土類金属カチオンとしては、例えば、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+等が挙げられる。
上記無機イオン性化合物を構成するアニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO 、NO 、ClO、ClO 、ClO 、ClO 、CrO 2−、HSO 、SCN、BF 、PF 等が挙げられる。
熱電素子層に含まれる無機イオン性化合物は、公知または市販のものが使用できる。例えば、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、又はリチウムカチオン等のカチオン成分と、Cl、AlCl 、AlCl 、ClO 等の塩化物イオン、Br等の臭化物イオン、I等のヨウ化物イオン、BF 、PF 等のフッ化物イオン、F(HF) 等のハロゲン化物アニオン、NO 、OH、CN等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
上記の無機イオン性化合物の中で、高温安定性、熱電半導体材料及び樹脂との相溶性、熱電半導体材料間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、無機イオン性化合物のカチオン成分が、カリウム、ナトリウム、及びリチウムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。また、無機イオン性化合物のアニオン成分が、ハロゲン化物アニオンを含むことが好ましく、Cl、Br、及びIから選ばれる少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
カチオン成分が、カリウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、KBr、KI、KCl、KF、KOH、KCO等が挙げられる。この中で、KBr、KIが好ましい。
カチオン成分が、ナトリウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、NaBr、NaI、NaOH、NaF、NaCO等が挙げられる。この中で、NaBr、NaIが好ましい。
カチオン成分が、リチウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、LiF、LiOH、LiNO等が挙げられる。この中で、LiF、LiOHが好ましい。
上記の無機イオン性化合物は、電気伝導率が10−7S/cm以上であることが好ましく、10−6S/cm以上であることがより好ましい。電気伝導率が上記範囲であれば、導電補助剤として、熱電半導体材料間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。
また、上記の無機イオン性化合物は、分解温度が400℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
また、上記の無機イオン性化合物は、熱重量測定(TG)による400℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することが容易である。
無機イオン性化合物の熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1.0〜10質量%である。無機イオン性化合物の配合量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下を効果的に抑制でき、結果として熱電性能が向上した膜が得られる。
なお、無機イオン性化合物とイオン液体とを併用する場合においては、熱電半導体組成物中における、無機イオン性化合物及びイオン液体の含有量の総量は、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1.0〜10質量%である。
(樹脂)
熱電半導体組成物には耐熱性樹脂(後述する高耐熱性樹脂を含む。)以外の樹脂が含まれていてもよい。該樹脂は、熱電半導体材料間のバインダーとして働き、塗布後に熱電半導体材料を結着し、また、塗布等による薄膜の形成を容易にする。
前記樹脂は、後述するアニール処理における熱電半導体組成物の層に対するアニール処理の温度に応じて適宜選択される。前記樹脂の重量減少温度(昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度)は、通常460℃未満である。
前記樹脂としては、特に制限されるものではなく、熱可塑性樹脂や硬化性樹脂を用いることができる。但し、熱電半導体組成物からなる薄膜を前記アニール処理等により熱電半導体材料を結晶成長させる際に、樹脂としての機械的強度及び熱伝導率等の諸物性が損なわれず維持される樹脂が好ましい。
このような樹脂として、熱可塑性樹脂や硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のポリビニル重合体、ポリウレタン、エチルセルロース等を挙げることができる。なお、ポリ(メタ)アクリル酸メチルとはポリアクリル酸メチル又はポリメタクリル酸メチルを意味するものとし、その他、(メタ)は同じ意味である。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。光硬化性樹脂としては、光硬化性アクリル樹脂、光硬化性ウレタン樹脂、光硬化性エポキシ樹脂等が挙げられる。
この中でも、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリビニル重合体、ポリイソブチレン、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又はポリスチレンであり、より好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又はポリスチレンである。ポリビニル重合体としては、水溶性のポリビニル重合体が好ましく、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールが挙げられる。
なお、前記樹脂は、1種のみ用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。
さらに、熱電半導体組成物は、重量減少温度(昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度)が520℃を超える高耐熱性樹脂を含んでいてもよい。このような高耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂およびその前駆体であるポリアミック酸等が挙げられる。熱電半導体組成物が、重量減少温度が520℃以下である耐熱性樹脂と、重量減少温度が520℃を超える高耐熱性樹脂の両方を含むことで、熱電半導体の屈曲性を向上させることができる可能性がある。
(熱電半導体組成物の調製方法)
上記熱電半導体組成物の調製方法には特に制限はなく、超音波ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリッドミキサー等の公知の装置を用いて、熱電半導体材料、耐熱性樹脂、及び、必要に応じて用いられるイオン液体及び無機イオン性化合物の一方又は双方、その他の添加剤、更に溶媒を加えて、混合分散させ、当該熱電半導体組成物を調製すればよい。
熱電半導体組成物を調製する際に、溶媒を用いてもよい。用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アルコール、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン、エチルセロソルブ等の溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。熱電半導体組成物の固形分濃度としては、該組成物が塗工に適した粘度であればよく、特に制限はない。
熱電半導体組成物を用いて熱電変換体を製造する方法については後述する。
[熱電変換モジュール]
本発明の実施形態に係る熱電変換モジュールは、P型熱電素子およびN型熱電素子が交互に配置された熱電変換層を備えている。そして、上記P型熱電素子層及びN型熱電素子層のうち少なくとも一方が上述したいずれかの熱電変換体である。
以下、本発明の実施形態に係る熱電変換モジュールの構成を、図面を用いて説明する。図面は全て模式的なものであり、理解を容易にするため誇張している場合がある。
図2は、本発明の一実施形態に係る熱電変換モジュールの一例を示す断面模式図である。図2に示す熱電変換モジュール1Aは、いわゆるπ型の熱電変換モジュールである。熱電変換モジュール1Aは、第1の基材21及び対向する第2の基材22と、第1の基材21及び第2の基材22との間に位置するP型熱電素子層5及びN型熱電素子層4(以下、両者をまとめて熱電素子層6という場合がある)と、第1の基材21上に設けられた第1の電極3a、第2の基材22上に設けられた第2の電極3bとを含む。そして、隣り合う一対のP型熱電素子層5と、N型熱電素子層4とは離間し、当該隣り合う一対の熱電素子層4、5について、一方の主面同士が電極3bまたは電極3aにより電気的に接続され、他方の主面同士は電気的に接続されていない。π型の熱電変換モジュールでは、一般に、その構造上、シート状の形態のものでも屈曲性を要求される用途に適用されることは少なく、熱電変換素子への負荷が少ないため好ましい。
図3は、本発明の一実施形態に係る熱電変換モジュールの他の例を示す部分的な断面模式図である。図3に示す熱電変換モジュール1Bは、いわゆるインプレーン型の熱電変換モジュールである。熱電変換モジュール1Bは、基材2と、基材2の一方の主面側(電極3側の主面側)に形成されたP型熱電素子層5及びN型熱電素子層4からなる熱電素子層6と、熱電素子層6の基材2とは反対側の面に積層された、第1被覆層81と、第1被覆層81の熱電素子層6とは反対側の面に設けられた第1高熱伝導層91と、基材2の他方の主面上に積層された第2被覆層82と、第2被覆層82の熱電素子層6とは反対側の面に設けられた第2高熱伝導層92と、を含む。
熱電変換モジュール1Aにおいては、熱電素子層の各列において、隣り合う熱電素子層4、5が電極3a又は電極3bの電極部によって電気的に接続されることにより、熱電素子層の各列に沿って、基材21と基材22との間で上下するように通電経路が形成されている。
こうして、基材21及び基材22の間に配置されたP型熱電素子層5及びN型熱電素子層4が、各電極部によって電気的に直列接続され、結果的に、基材21及び基材22の間を上下しながら通電経路が形成されている。
また、熱電変換モジュール1Bについても、隣り合う一対の熱電素子層4、5の接合部に重なるように電極部が配置され、電気的に接合されることにより、通電経路が形成されている。
なお、熱電変換モジュール1A、1Bにおいて、基材21と基材22の主面に沿った熱電素子層4、5の二次元的な配列は、任意の配列パターンを採用することができる。
熱電変換モジュール1Bにおいては、P型熱電素子層5及びN型熱電素子層4を備える基材2の主面側に、更に第1高熱伝導層91が所定の配置パターンで設けられている。
第1高熱伝導層91は、P型熱電素子層5とN型熱電素子層4との接合部を一つおきに覆っている。第2高熱伝導層92も、基材2の主面に垂直な方向から見て、第1高熱伝導層91によって覆われていない熱電素子の接合部に対応する位置に、第2高熱伝導層92が配置されている。結果的に、断続的に配置された高熱伝導層91、92の並び方向の縦断面において、第1高熱伝導層91と第2高熱伝導層92とが、熱電素子層6に対して互い違いに配置されている。なお、基材2の主面に平行な方向において、第1高熱伝導層91の端部と第2高熱伝導層92の端部とが一致してもよいし、重なっていてもよいし、離れていてもよい。
電極部の数、P型半導体層5及びN型半導体層4の数、第1高熱伝導層91及び第2高熱伝導層92の数は適宜変更可能である。また、各電極部の大きさや位置も適宜変更可能である。
なお、熱電変化モジュール1Bにおいて、被覆層上の高熱伝導層が設けられていない領域には何らの層も設けられていないが、例えば、低熱伝導層等の部材を設けてもよい。この場合には、被覆層は高熱伝導層だけでなく、低熱伝導層等の部材の固定材として機能することもできる。熱電変換モジュールの熱電変換性能の向上の観点から、低熱伝導層の熱伝導率は、高熱伝導層の熱伝導率よりも低い。
また、上記実施形態のように、被覆層上の高熱伝導層が設けられていない領域に何らの層も設けられず、被覆層が露出している場合には、低熱伝導層の代わりに大気が存在することになり、大気の熱伝導率は、例えば、0.02W/(m・K)程度と非常に低いために、低熱伝導層を設けた場合と同等以上の熱電変換性能を発揮し得る。
(基材)
熱電変換モジュールに用いられる基材は、電極、熱電素子層、被覆層、高熱伝導層等を支持するものである。以下の説明は、上述した基材2、21、22それぞれに対して独立に当てはまる。
基材としては、熱電素子層の電気伝導率の低下、熱伝導率の増加に影響を及ぼさないプラスチックフィルムを用いることが好ましい。中でも、柔軟性に優れ、後述する熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、基材が熱変形することなく、熱電素子層の性能を維持することができ、耐熱性及び寸法安定性が高いという点から、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアラミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムが好ましい。更に、汎用性が高いという点から、ポリイミドフィルムが特に好ましい。
プラスチックフィルムを用いた基材であるフィルム基板の厚さは、耐熱性及び寸法安定性の観点又はこれらに加えて一定の柔軟性を確保する観点から、1〜1,000μmが好ましく、5〜500μmがより好ましく、10〜500μmが更に好ましく、10〜100μmが更により好ましく、20〜100μmが特に好ましい。
また、上記フィルム基板は、アニール処理温度以上の分解温度を有することが好ましく、例えば分解温度が400℃以上である。
また、基材としてのフィルム基板は、熱重量分析で測定される5%重量減少温度が300℃以上であることが好ましく、400℃以上であることがより好ましい。上記フィルム基板は、JIS K7133(1999)に準拠して200℃で測定した加熱寸法変化率が0.5%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがより好ましい。上記フィルム基板は、JIS K7197(2012)に準拠して測定した平面方向の線膨脹係数が0.1ppm・℃−1〜50ppm・℃−1であり、0.1ppm・℃−1〜30ppm・℃−1であることがより好ましい。
基材としてプラスチックフィルムを用いるとともに、他の層を薄く形成することにより、熱電変換モジュール全体を、薄くてフレキシブルなシート状のものにしやすくなる。
水分の侵入を抑制する観点から、基材の水蒸気透過率が低いことが望ましい。基材の、JIS K7129:2008で規定される40℃×90%RHにおける水蒸気透過率は、好ましくは200g・m−2・day−1以下、より好ましくは150g・m−2・day−1以下、更に好ましくは100g・m−2・day−1以下である。水蒸気透過率がこの範囲にあると、熱電素子層及び電極への水蒸気の侵入が抑制され、熱電素子層の劣化を抑制しやすくなる。
(電極)
電極は、熱電素子層を構成するP型熱電素子層とN型熱電素子層との電気的な接続を行うため、又は熱電素子層と外部との電気的な接続のために設けられる。電極には、各種の電極材料を用いることができる。接続の安定性、熱電性能の観点から、導電性の高い金属材料を用いることが好ましい。好ましい電極材料としては、金、銀、ニッケル、銅、アルミニウム、ロジウム、白金、クロム、パラジウム、ステンレス鋼、モリブデン又はこれらのいずれかの金属を含む合金、これらの金属や合金を積層したもの等が挙げられる。上述した電極3、3a、3bはそれぞれ独立に上記材料を選択することができる。
電極の厚さは、π型の熱電変換モジュールの場合、好ましくは10nm〜200μm、より好ましくは30nm〜150μm、更に好ましくは50nm〜120μmである。また、インプレーン型の熱電変換モジュールの場合、電極の厚さは、好ましくは1μm〜50μm、より好ましくは2.5μm〜30μm、更に好ましくは3μm〜20μmである。電極の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり熱電素子層のトータルの電気抵抗値を低く抑えられる。また、電極として十分な強度が得られる。更に、電極の体積を大きくでき、使用中に電極を構成する金属元素の熱電素子中への拡散が起きても、電極の性能低下を抑制し得る。更にまた、インプレーン型の熱電変換モジュールの場合、電極が熱電素子層中に埋め込まれやすく、熱電変換モジュールの表面の平滑性が保たれ、熱電性能も安定しやすくなる。
(熱電素子層)
熱電素子層は、上述した、少なくとも熱電半導体材料及び耐熱性樹脂を含む熱電半導体組成物の焼成体である熱電変換体からなる。
P型熱電素子層及びN型熱電素子層からなる熱電素子層の厚さには、特に限定はなく、両者が、同じ厚さでも、異なる厚さ(接続部に段差が生じる)でもよい。柔軟性、及び、材料コストの観点から、P型熱電素子及びN型熱電素子の厚さは、0.1〜100μmが好ましく、1〜50μmが更に好ましい。
(高熱伝導層)
図3の熱電変換モジュール1Bのように、インプレーン型の熱電変換モジュールとする場合は、熱電変換層の少なくとも一方の主面に高熱伝導層を設けることが好ましい。高熱伝導層を設けることにより、熱電変換モジュールの内部の熱電素子層に対して、効率よく面方向に十分な温度差を付与させやすくなる。
高熱伝導層としては、熱伝導性に優れており、その熱伝導率が被覆層の熱伝導率よりも大きいものを用いる。高熱伝導層として、熱伝導率が5〜500W/(m・K)のものを用いることが好ましく、15〜420W/(m・K)のものがより好ましく、300〜420W/(m・K)のものが更に好ましい。
高熱伝導層を構成する材料としては、熱伝導率の大きいものであれば、特に制限されないが、好ましくは金属であり、より好ましくは銅、アルミニウム、銀、及びニッケルのいずれか1種であり、更に好ましくは銅、アルミニウム、及び銀のいずれか1種であり、より更に好ましくは銅及びアルミニウムのいずれか1種である。
高熱伝導層は、ストライプ状、格子状、ハニカム状、櫛状、マトリクス状などのパターンで配置される。これによって、熱電変換モジュールの面方向に温度差を生じさせやすくなり、また、P型熱電素子層とN型熱電素子層との境界部分を露出させることで、外部との熱交換が効率的に行われる。結果的に、熱電変換モジュールの起電力性能、発熱性能、吸熱性能を向上させることができる。
上述したように、第1の高熱伝導層を、P型熱電素子層とN型熱電素子層との接合部を一つおきに覆うように熱電素子層の一方の面側に配置し、第2の高熱伝導層を、基材の主面に垂直な方向から見て、第1の高熱伝導層によって覆われていない熱電素子の接合部に対応する位置に配置し、高熱伝導層の並び方向の縦断面において、第1の高熱伝導層と第2の高熱伝導層とが、熱電素子層に対して互い違いに配置することが好ましい。
高熱伝導層の厚さは、柔軟性、放熱性及び寸法安定性の観点から、40〜550μmが好ましく、60〜530μmがより好ましく、80〜510μmが更に好ましい。第1高熱伝導層91と第2高熱伝導層92の2つの高熱伝導層を設ける場合、これらは、同じ材質のものでもよいし、異なる材質のものでもよく、これらは、同じ厚さであってもよく、異なる厚さであってもよい。
(その他の層)
熱電変換モジュールには、必要に応じてその他の層を設けることができる。例えば、少なくとも一方の主面上の熱電素子層を覆うように、単層又は複数層からなる被覆層を配置して熱電素子層を保護するようにしてもよい。
また、被覆層は封止層を含むことができる。被覆層が単層であれば、被覆層自身が封止層を兼ねることができる。被覆層が複数の層からなる場合は、いずれかの層に封止層を含むことができる。被覆層が封止層を含む場合、大気中の水蒸気の透過をより効果的に抑制でき、熱電変換モジュールの性能を長期間にわたり維持しやすくなる。
被覆層は、接着性を有する層(接着層)を含んでいてもよい。本明細書において、「接着性」は、接着性、及び、貼り付ける初期において感圧により接着可能な感圧性の粘着性、のいずれをも含む。感圧性の粘着性以外の接着性としては、感湿接着性、熱溶融による接着性等が挙げられる。接着層は、接着性を有する組成物(以下、「接着性組成物」ということがある)を含むことが好ましい。上記接着性組成物に含まれる好ましい樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。被覆層が接着層を含むことで、高熱伝導層と熱電素子層とを被覆することが容易となる。なお、被覆層が単層の場合は、被覆層自身が封止層を兼ねることができる。
被覆層は補助基材層を含んでいてもよい。補助基材層は、被覆層が封止層または接着層を含む場合に、これらの接着層または封止層を支持するための基材となる。被覆層が、補助基材層を含むことで、被覆層全体の熱伝導率の調整を容易にしたり、熱電変換モジュール全体の強度を高めたりすることができる。また、高熱伝導層が導電性のものである場合に、高熱伝導層と熱電素子層との間に補助基材層が存在することで、高熱伝導層と熱電素子層との短絡を防止することができる。
[熱電変換体及び熱電変換モジュールの製造方法]
図4は、熱電変換体及び熱電変換モジュールの製造方法の一例を示す模式図である。そのうち、図4(a)〜図4(c)は、熱電変換体の製造方法の一例を示す模式図であり、図4(c)〜図4(f)は、π型の熱電変換モジュールである熱電変換モジュール1Aの製造方法の一例を示す模式図である。
以下、理解を容易にするために、これらの図面を用いて、本実施形態に係る、熱電変換体の製造方法、及び、熱電変換モジュールの製造方法について説明するが、本発明がこれらの図面に示される実施形態に限定されるものではない。
<熱電変換体の製造方法>
本発明の実施形態に係る熱電変換体の製造方法は、上述の熱電半導体組成物を支持体上に塗布し、上記支持体上に塗布された熱電半導体組成物を乾燥して塗布膜を形成し、この塗布膜をアニール処理して、熱電半導体材料と耐熱性樹脂とを含む組成物の焼成体である前記熱電変換体を形成する。
好ましくは、乾燥して得られた塗布膜をプレス処理し、更に、プレス処理された塗布膜をアニール処理して熱電変換体を形成する。塗布膜をプレス処理することにより、熱電半導体材料が密に配置されるようになり、電気伝導率の向上に有利になる。
(熱電変換体の製造方法の例)
図2に示す熱電変換モジュール1Aの熱電変換層に用いられる熱電変換体を製造する製造方法の例を以下に説明する。本例の製造方法においては、支持体上にP型及びN型の熱電半導体材料の塗布膜を形成する工程と、塗布膜をアニール処理して熱電変換体を形成する工程とを含む。
図4(a)〜図4(c)は熱電変換体の製造方法の例を示す説明図であり、図4(a)は、支持体52、51上にそれぞれ塗布乾燥して形成された塗布膜5a及び塗布膜4aを、プレス処理する様子を示す図であり、図4(b)は、プレス処理後のP型部分5bとプレス処理後のN型部分4bとを示す図であり、図4(c)はアニール処理を行って得られた熱電変換体5、4を示す図である。
本例においては、まず、図4(a)に示すように、N型の熱電半導体材料を含む熱電半導体組成物を支持体51上に所定の配列パターンで配置し、塗布乾燥して塗布膜4aを形成する。また、P型の熱電半導体材料を含む熱電半導体組成物を支持体52上に所定の配列パターンで配置し、塗布乾燥して塗布膜5aを形成する。
(支持体)
支持体51、52としては、ガラス、シリコン、セラミック、金属、又はプラスチック等が挙げられる。アニール処理を高温度下で行う観点から、ガラス、シリコン、セラミック、金属が好ましく、熱電変換材料との密着性、材料コスト、熱処理後の寸法安定性の観点から、ガラス、シリコン、セラミックを用いることがより好ましい。
支持体の厚さは、プロセス及び寸法安定性の観点から、100〜10,000μmのものが使用できる。
(プレス処理)
塗布乾燥して形成された塗布膜5a及び塗布膜4aは、必要に応じて、それぞれ押圧部材60で押圧してプレス処理が行われる。プレス処理する際には、図4(a)に示すように、塗布膜5a、4aのそれぞれの周囲を囲むように枠部材61を配置した状態で、塗布膜5a、4aを押圧すると、塗布膜5a、4aを意図した形状に保ちやすくなる。
プレス処理は、一態様として、乾燥後の熱電半導体組成物の層を常温まで冷却してから大気圧雰囲気下で行うことが好ましい。また、他の態様として、乾燥後の熱電半導体組成物の層を常温まで冷却せずに乾燥温度を維持し行い、次工程となる後述するアニール処理工程に投入するようにしてもよい。
加圧方法としては、例えば、油圧式プレス、真空プレス機、重り等、物理的加圧手段を用いる方法が挙げられる。加圧量は、熱電変換材料層の粘度、空隙の量等により異なるが、熱電半導体材料を十分密集させるとともに、過剰な押圧力によって塗布膜の形状が崩れたり熱電半導体材料が損傷したりすることを防ぐ観点から、通常0.1〜80MPaであり、好ましくは1.0〜60MPaであり、より好ましくは5〜50MPaであり、さらに好ましくは10〜42MPaである。なお、加圧は、所定の加圧量まで一気に上げて行ってもよいが、熱電変換材料層の形状安定性の維持及び熱電変換材料層内の空隙をより多く減少させ熱電変換材料の充填率を向上させる観点から、適宜調整するが、通常0.1〜50MPa/分、好ましくは0.5〜30MPa/分、さらに好ましくは1.0〜10MPa/分で所定の加圧量まで加圧量を増加させる。
加圧時間は、加圧方法により異なるが、通常5秒〜5時間、好ましくは30秒〜3時間、より好ましくは5分〜2時間、さらに好ましくは10分〜1時間である。
加圧量及び加圧時間がこの範囲であれば、充填率が増大し、アニール処理後の熱電変換体の電気伝導率を向上させやすくなる。
なお、図4に示す例では、P型の熱電半導体材料を含む熱電半導体組成物の塗布膜5a、及び、N型の熱電半導体材料を含む熱電半導体組成物の塗布膜4aの両方をプレス処理しているが、これに限るものではない。例えば、塗布膜5a、4aのうち一方のみをプレス処理するようにしてもよいし、プレス処理が不要な場合はこれを省略することもできる。
次に、プレス処理された、熱電半導体材料を含む熱電半導体組成物の塗布膜のP型部分5bとN型部分4b(プレス処理しない場合は乾燥前の塗布膜5a、4a)をそれぞれアニール処理して、熱電半導体組成物の焼成体である熱電変換体を得る。
(アニール処理)
塗布膜のアニール処理は、アニール処理後に得られる熱電変換体の熱電性能を安定化させるとともに、塗布膜中の熱電半導体材料を結晶成長させて熱電性能を更に向上させる。塗布膜のアニール処理の手順や処理条件に特に限定はないが、通常、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行われる。
塗布膜のアニール処理温度は、好ましくは耐熱性樹脂の重量減少温度(昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度)より30℃以上低い温度、より好ましくは耐熱性樹脂の重量減少温度より35℃以上低い温度とし、また、好ましくは、耐熱性樹脂の重量減少温度より30〜110℃低い温度、より好ましくは耐熱性樹脂の重量減少温度より35〜100℃低い温度とする。具体的には、塗布膜が形成された支持体を好ましくは260℃以上460℃未満、より好ましくは280〜455℃の温度の雰囲気下に、好ましくは数分〜数十時間、より好ましくは数分〜数時間おくことでアニール処理を行う。耐熱性樹脂の重量減少温度より所定の温度以上低い温度で塗布膜をアニール処理することにより、アニール処理中の耐熱性樹脂の分解や消失の速度を緩和し、アニール処理後に得られる熱電変換体の靱性を維持し易くなる。
熱電変換体の製造方法の一態様においては、例えば、後述する図4(d)に示すように、2種類のチップ状の熱電変換体を所定の配列で支持体上に配置すること等を目的として、アニール処理後に熱電変換体を支持体から剥離する工程を有する。この場合、熱電変換体の支持体からの剥離を容易にするために、
後述するように、熱電変換体4、5はアニール処理後に支持体51、52から剥離される。したがって、剥離を容易にするため、支持体51、52の表面に犠牲層を設けてもよい。
(犠牲層)
犠牲層は、支持体と熱電半導体組成物の塗布膜との間に設けられ、塗布膜のアニール処理後に、熱電変換体を支持体から剥離する機能を有する層である。犠牲層は、アニール処理後に消失していても残存していてもよく、結果的に熱電変換体の特性に何ら影響を及ぼすことなく、熱電変換体を剥離できる機能を有していればよい。犠牲層は、これらの機能を兼ね備える樹脂や離型剤からなる層であることが好ましい。
支持体51、52から剥離された熱電変換体4、5は、後述するように、熱電変換モジュールを作製するために、一つの支持体上に所定の順序及び間隔で、P型の熱電変換体とN型の熱電変換体を並べて配置される。
(熱電変換モジュールの製造方法の例)
次に、図4(c)〜図4(f)を参照して、熱電変換モジュール1Aの製造方法の一例を説明する。
図4(c)〜図4(f)は、本実施形態に係る熱電変換モジュールの製造方法の一例を説明する図である。図4(c)は先に説明したとおりである。図4(d)は、支持体53上に、チップ状の熱電変換体を所定の順序及び所定のパターンで配列した状態を示す図である。図4(e)は、熱電変換体4、5の一方の面に、基材21上に形成された電極3aが接するように、基材21を積層した後の状態を示す図である。図4(f)は、支持体53の除去後に露出する熱電変換体4、5の他方の面に、基材22上に形成された電極3bが接するように基材21を積層した後の状態を示す図である。
まず、図4(c)で得られた、それぞれチップ状の熱電変換体4及び熱電変換体5を支持体51、52から取り外し、図4(d)に示すように、支持体53上に所定の配列パターンに従って、交互に配置する。
複数の熱電変換体4及び複数の熱電変換体5を電極上に配置する方法としては、1つ1つのチップ状の熱電変換体を、ロボットアーム等でハンドリングし、顕微鏡等で位置合わせを行うことによって配置する等、公知の方法を用いることができる。
支持体53としては、上述した支持体51、52と同様のものを用いることができる。また、支持体53は、熱電変換体4、5が載置される表面に粘着層を有していてもよい。表面に粘着層を有する支持体を用いることにより、熱電変換体4、5を所期の位置に確実に保持することができる。
次に、表面に所定パターンで形成された第1の電極3aを有する第1の基材21を準備し、図4(e)に示すように、はんだ等の導電性の接合材料を用いて、熱電変換体4及び熱電変換体5の表面に接合する。
第1の基材21に電極を形成する場合、例えば、基材としての樹脂フィルム上に金属層を成膜し、必要に応じ更に金属層を所定のパターンに加工することで電極3aを形成する方法を用いることができる。
詳しくは、樹脂フィルム上に種々のドライプロセスまたはウェットプロセスによりパターンが形成されていない電極層を設けた後、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法、又は、スクリーン印刷法、インクジェット法等により直接電極のパターンを形成する方法等が挙げられる。
電極3aと熱電変換体4、5とを接合する工程は、例えば、次の方法を用いることができる。まず、基材21の電極3a上にはんだ等の接合材料層を設け、また、必要に応じて熱電変換体4、5のそれぞれの一方の面にはんだ等を受理し得る受理層を設け、接合材料層と熱電変換体4、5、又は、受理層とを重ねた後、接合材料層を所定の温度に加熱して所定時間保持する。そして、室温に戻すことにより、熱電変換体4、5を、接合材料層、又は、材料接合層及び受理層を介して電極3aと接合する。
接合材料層1を構成する接合材料としては、はんだ材料、導電性接着剤、焼結接合剤等が挙げられ、それぞれ、はんだ層、導電性接着剤層、焼結接合層として、電極上に形成されることが好ましい。
これらのうち、はんだ材料としては、公知のはんだとして用いられる合金等から選択することができる。はんだ材料を基板上に塗布する方法としては、ステンシル印刷、スクリーン印刷、ディスペンシング法等の公知の方法が挙げられる。加熱温度は用いるはんだ材料、樹脂フィルム等により異なるが、通常、150〜280℃である。加熱は、好ましくは3〜20分間行う。
はんだ層を用いる場合は、熱電変換材料のチップとの密着性向上の観点から、以下説明するようなはんだ受理層を介して接合することが好ましい。
はんだ受理層は、金属材料を含むことが好ましい。金属材料は、金、銀、アルミニウム、ロジウム、白金、クロム、パラジウム、錫、及びこれらのいずれかの金属材料を含む合金から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この中で、より好ましくは、金、銀、アルミニウム、又は、錫及び金の2層構成であり、材料コスト、高熱伝導性、接合安定性の観点から、銀、アルミニウムが更に好ましい。
はんだ受理層は、スクリーン印刷法、ステンシル印刷法、電解めっき法、無電解めっき法や真空成膜法で成膜したはんだ受理層を用いて熱電素子上に設けることが好ましい。
続いて、熱電変換体4及び熱電変換体5を支持体53から分離し、予め準備しておいた表面に所定パターンで形成された第2の電極3bを有する第2の基材22の、第2の電極3bに、熱電変換体4及び熱電変換体5の他方の面を、はんだ等の導電性の接合材料を用いて接合する。こうして、熱電変換モジュール1Aを得る。
基材22の電極3bの形成方法やその材質等は、基材21の電極3aについて説明したのと同様である。また、電極3bと熱電変換体4、5との接合方法や接合材料等は、電極3aについて説明したのと同様である。
上記の熱電変換モジュールの製造方法の例によれば、N型の熱電変換体とP型の熱電変換体とを個別に作製するため、それぞれに適した製造条件を選択できるというメリットがある。例えば、N型及びP型の熱電変換体のうち一方のみにプレス処理を行ったり、両者のプレス条件を変更したりすることができる。
しかしながら、熱電変換モジュール1Aの製造方法は上記の例に限るものではなく、P型とN型の熱電変換体を一つの支持体上で同時に製造する方法であってもよい。また、熱電変化モジュールに用いられる電極付きの基材に対して、当該電極に接するように熱電変換体を形成し、基材から剥離することなく熱電変化モジュールを作製するようにしてもよい。
次に、本発明の具体的な実施例を説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、後述する実施例及び比較例で用いた熱電半導体微粒子の平均粒径および耐熱性樹脂の重量減少温度(昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度)は、以下の手順で、測定した。
[平均粒径]
レーザー回折式粒度分析装置(Malvern社製、マスターサイザー3000)により熱電半導体微粒子の粒度分布測定を行うことにより、熱電半導体微粒子の平均粒径を測定した。
[耐熱性樹脂の重量減少温度]
耐熱性樹脂の重量減少温度は、熱重量測定装置DTG−60(島津製作所社製)を用いて、上述した条件で熱重量測定を行うことにより得た。
(熱電半導体微粒子の作製)
ビスマス−テルル系熱電半導体材料であるp型ビスマステルライドBi0.4Te3.0Sb1.6(高純度化学研究所製、粒径:180μm)を、遊星型ボールミル(フリッチュジャパン社製、Premium line P−7)を使用し、窒素ガス雰囲気下で粉砕することで、平均粒径2.0μmの熱電半導体微粒子T1を作製した。
また、ビスマス−テルル系熱電半導体材料であるn型ビスマステルライドBiTe(高純度化学研究所製、粒径:180μm)を上記と同様に粉砕し、平均粒径2.5μmの熱電半導体微粒子T2を作製した。
(熱電半導体組成物1〜4の調製)
得られたP型ビスマス−テルル系熱電半導体材料の微粒子T1を72.0質量部、耐熱性樹脂としてポリアミドイミド溶液(荒川化学工業株式会社製、製品名:コンポラセン AI301、溶媒:N−メチルピロリドン、固形分濃度:19質量%)15.5質量部、及びイオン液体としてN−ブチルピリジニウムブロミド(1−ブチルピリジニウムブロミド)12.5質量部を混合分散した熱電半導体組成物1を調製した。なお、質量部数は、原材料が溶媒を含む場合には溶媒の質量も含めた量であり、以下において同様である。
また、得られたN型ビスマス−テルル系熱電半導体材料の微粒子T2を75.7質量部、耐熱性樹脂としてポリアミドイミド溶液(荒川化学工業株式会社製、製品名:コンポラセン AI301、溶媒:N−メチルピロリドン、固形分濃度:19質量%)16.3質量部、及びイオン液体としてN−ブチルピリジニウムブロミド(1−ブチルピリジニウムブロミド)8質量部を混合分散した熱電半導体組成物2を調製した。
また、上記のP型ビスマス−テルル系熱電半導体材料の微粒子T1を72質量部、耐熱性樹脂としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸(シグマアルドリッチ社製、ポリ(ピロメリト酸二無水物−co−4,4´−オキシジアニリン)アミド酸溶液、溶媒:N−メチルピロリドン、固形分濃度:18質量%)15.5質量部、及びイオン液体としてN−ブチルピリジニウムブロミド12.5質量部を混合分散した熱電半導体組成物3を調製した。
また、上記のN型ビスマス−テルル系熱電半導体材料の微粒子T2を75.7質量部、耐熱性樹脂としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸(シグマアルドリッチ社製、ポリ(ピロメリト酸二無水物−co−4,4´−オキシジアニリン)アミド酸溶液、溶媒:N−メチルピロリドン、固形分濃度:18質量%)16.3質量部、及びイオン液体としてN−ブチルピリジニウムブロミド8.0質量部を混合分散した熱電半導体組成物4を調製した。
<実施例1>
厚み0.7mmのガラス基板上に、アプリケーターを用いて熱電半導体組成物1を塗布し、120℃で10分間加熱乾燥して、面積が約100cmの塗布膜を形成した。この塗布膜を5×15mmに裁断し、アニール処理温度450℃で30分、アルゴン−水素混合ガス雰囲気下で熱処理し、熱電変換体の試験片を得た。
<実施例2>
熱電半導体組成物2を用い、アニール処理温度を400℃とした以外は実施例1と同様にして、熱電変換体の試験片を作製した。
<実施例3>
塗布膜の形成に当たって、開口がパターン形成されたメタルマスクを用いて熱電半導体組成物2をメタルマスク上に流延し、開口部に充填された熱電半導体組成物以外をスキージで除去し、125℃で10分加熱乾燥する方法を用い、熱電変換体の試験片を作製した。メタルマスクは、作製しようとするチップ状の熱電変換体の形状に合わせて、1.95mm×1.95mmの開口を有し、厚さが340μmのものを用いた。組成物を塗布し、乾燥した後にメタルマスクから乾燥後の塗布膜を取り外し、実施例2と同様の条件でアニール処理を行い、チップ状の熱電変換体の試験片を作製した。
<実施例4>
乾燥後の塗布膜に対して加圧処理を行った以外は実施例3と同様にして、チップ状の熱電変換体の試験片を作製した。加圧処理は、油圧式プレス機を用いて、室温、大気雰囲気下にて、加圧計の表示が30MPaとなる圧力で行った。また、加圧によって塗布膜の形状が崩れるのを防ぐため、目的とするチップ形状に対応した開口を備えた枠体を、塗布膜の周囲を囲むように配置した上で、塗布膜を加圧するようにした。
<比較例1>
熱電半導体組成物3を用いた以外は実施例1と同様にして、熱電変換体の試験片を作製した。
<比較例2>
熱電半導体組成物4を用いた以外は実施例2と同様にして、熱電変換体の試験片を作製した。
[熱電変換体の厚さ]
実施例1〜4及び比較例1、2で製造した熱電変換体の厚さを、TECLOCK社製、定圧測定器で測定して熱電変換体の厚さとした。結果を表1に示す。
[電気伝導率の測定]
実施例1、2及び比較例1、2の試験片の電気伝導率を、アドバンス理工社製熱電特性評価装置ZEM−3を用いて測定した。
また、実施例3、4の試験片については、サイズが小さいことを考慮して、日置電機社製抵抗計RM3545を用いて、4端子測定によって端子間距離1.2mmでの電気抵抗を測定し、計算により電気伝導率を求めた。結果を表1に示す。
[充填率]
実施例3、4の試験片について、研磨装置(リファインテック社製、型名:リファイン・ポリッシャーHV)によって熱電変換材料層の中央部を含む縦断面出しを行った。なお、断面の損傷を防ぐため、研磨装置にはアルミバフを装着した。走査電子顕微鏡(SEM)としてFE−SEM/EDX(FE−SEM:日立ハイテクノロジーズ社製、型名:S−4700)を用い、縦断面の観察を行い、次いで、Image J(画像処理ソフト、ver.1.44P)を用い、熱電変換材料層の縦断面の面積における熱電半導体組成物の面積の占める割合で定義される充填率を算出した。
充填率の測定においては、倍率500倍のSEM画像(縦断面)を用いて、測定範囲を熱電変換材料層とアルミナ基板との境界を基準として幅方向に1280pixel、厚さ方向に220pixelで囲まれる範囲とし、画像として切り出した。切り出した画像を「Brightness/Contrast」からコントラストを最大値にして二値化処理を行い、二値化処理における暗部を空隙部、明部を熱電半導体組成物とみなし「Threshold」にて、熱電半導体組成物の充填率を算出した。なお、アルミバフのアルミ粒子が付着して白化した部分が観察されたため、上記の充填率の算出においては、アルミ粒子により隠された空隙の面積を上記の熱電半導体組成物の面積から減じる補正を行った。具体的には、白化の部分とそれ以外の部分を区別可能となる数値で「Brightness/Contrast」からコントラストを設定し、二値化処理を行い、二値化処理における明部をアルミ粒子により隠された部分とし、これをすべて空隙とみなした。充填率はSEM画像3枚について算出し、それらの平均値とした。
なお、切り出す画像は、縦断面の領域部内で選択されるものであり、例えば、熱電変換体の中央部の縦断面の上部が凹部と凸部を含んでおり、図5に示す熱電変換体2のように、厚さ方向にDmin、及び、Dmaxを取る曲線からなる縦断面を有している場合、熱電変換体の周囲の空隙部(空気層部)が取り込まれることが無いように、縦断面の幅方向にX、厚さ方向にDminを超えることがない領域を選択した。ここで、Dminは縦断面の厚さ方向の厚さの最小値を意味し、Dmaxは縦断面の厚さ方向の厚さの最大値を意味する。
[反り]
得られた試験片の中で最も厚さの大きい実施例3の試験片について、キーエンス社製デジタル顕微鏡VHX−5000を用いて試験片の側面を観察することにより、反りの有無を確認した。図6は、実施例3の写真、図7は、参考のために、熱電半導体組成物4を用いて、実施例3の試験片と同様の製法により作製した試験片の写真である。図7に示された試験片では顕著に反りが生じているのに対し、図6に示された実施例3では反りの発生がほとんど見られないことがわかる。
Figure 2021124860
表1の結果から明らかなように、P型の熱電変換体である実施例1の試験片は、P型の熱電変換体である比較例1の試験片に比べて、高い電気伝導率を示している。また、N型の熱電変換体である実施例2の試験片は、N型の熱電変換体である比較例2の試験片に比べて、高い電気伝導率を示している。これらのことから、重量減少温度が520℃以下の耐熱性樹脂を用いることにより、電気伝導率を向上できることが理解できる。
特に、充填率が80%以上である実施例4の試験片は、電気伝導率の値が更に大きくなっていることが判る。
また、実施例3のチップ状の熱電変換体は、実施例1、2に比べて厚いため、反りの発生という観点からは実施例1、2よりも不利であるにも関わらず、特に反りの発生は見受けられなかった。これに対して、参考のために作製した試験片であるチップ状の熱電変換体には、反りが発生していた。重量減少温度が520℃以下の耐熱性樹脂を用いることにより、熱電変換体を製造する際の反りの発生を抑制することができ、熱電変換体の厚さが大きくなっても反りが生じにくくなることが理解できる。
本発明の熱電変換体は、電気伝導率が高く、熱電変換モジュールに用いた場合に高い熱電変換効率を発現させることができ、製造時に反りが生じにくい熱電変換体とすることができる。このため、高い出力が求められる用途や、面積が限られている場所や狭い場所へ設置することが求められる用途に用いられる熱電変換体、及び、熱電変換モジュールとすることができる。
1A、1B:熱電変換モジュール
2、21、22:基材
3、3a、3b:電極
4:N型熱電素子層(N型の熱電変換体)
4a:N型部分
4b:プレス処理後のN型部分
5:P型熱電素子層(P型の熱電変換体)
5a:P型部分
5b:プレス処理後のP型部分
6:熱電素子層(熱電変換体)
6a:乾燥後の塗布膜
7:空隙部
51、52、53:支持体
60:押圧部材
61:枠部材
81、82:被覆層
91、92:高熱伝導層
C:中央部

Claims (10)

  1. 熱電半導体材料と耐熱性樹脂とを含む組成物の焼成体である熱電変換体であって、前記耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度が520℃以下である、熱電変換体。
  2. 前記耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度が460℃以上である、請求項1に記載の熱電変換体。
  3. 前記熱電変換体の中央部を含む縦断面において、空隙以外の部分が占める面積の割合で表される充填率が、80%以上、100%未満である、請求項1又は2に記載の熱電変換体。
  4. 前記耐熱性樹脂が、ポリアミドイミド樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換体。
  5. 前記組成物の塗布膜の焼成体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電変換体。
  6. 前記組成物は、イオン液体及び無機イオン性化合物のうち少なくとも一方を更に含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱電変換体。
  7. 交互に配置されたP型熱電素子層及びN型熱電素子層を含み、少なくとも隣り合う一対のP型熱電素子層と、N型熱電素子層とは離間し、一方の主面同士が電気的に接続され、他方の主面同士は電気的に接続されておらず、
    前記P型熱電素子層及び前記N型熱電素子層のうち少なくとも一方が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱電変換体である、熱電変換モジュール。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱電変換体の製造方法であって、
    前記組成物を支持体上に塗布し、
    前記支持体上に塗布された前記組成物を乾燥して塗布膜を形成し、
    前記塗布膜をアニール処理して前記熱電変換体を形成する、熱電変換体の製造方法。
  9. 前記塗布膜をプレス処理し、プレス処理された前記塗布膜をアニール処理して前記熱電変換体を形成する、請求項8に記載の熱電変換体の製造方法。
  10. 前記耐熱性樹脂の昇温時における400℃の重量を100%として、さらに5%重量が減少する温度より30℃以上低い温度で前記塗布膜をアニール処理する、請求項8又は9に記載の熱電変換体の製造方法。
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