JPWO2021039947A1 - 無機固体電解質含有組成物、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池、並びに、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池の各製造方法 - Google Patents
無機固体電解質含有組成物、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池、並びに、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池の各製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
このような状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質及び正極の全てが固体からなり、有機電解液を用いた電池の安全性及び信頼性を大きく改善することができる。
例えば、特許文献1には、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質(A)と、主鎖に、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合及びエステル結合のうちの少なくとも1種の結合を有し、かつ、グラフト構造を有するバインダ(B)とを含有し、必要に応じて活物質(D)を含有する固体電解質組成物が記載されている。
特許文献1のように、固体粒子同士の密着性を強化すべく固体粒子に対してバインダの併用が検討されている。しかし、特許文献1には、エステル基の酸素原子に結合する基として、ヒドロキシエチル基、ジメチルアミノエチル基及びジエチルアミノエチル基等の置換基を有する短鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構成成分を含むバインダ構成ポリマーしか具体的に記載されていない。
ところで、バインダを併用する場合、バインダは通常イオン伝導性を有しないため、抵抗が増加して電池性能(イオン伝導度)が大きく低下する。この性能低下は特にバインダの添加量を増大させた場合に顕著となる。
<1>
周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有する無機固体電解質(A)及びバインダ(B)を含有し、上記バインダ(B)を構成するポリマーが、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合及びエステル結合のうちの少なくとも1種の結合を主鎖に有し、かつ、下記一般式(1)で示される部分構造を少なくとも1種有する無機固体電解質含有組成物。
<2>
上記バインダ(B)を構成するポリマーが、カルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1種を有する、<1>に記載の無機固体電解質含有組成物。
<3>
上記バインダ(B)を構成するポリマーが、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合及びイミド結合のうちの少なくとも1種の結合を主鎖に有する、<1>又は<2>に記載の無機固体電解質含有組成物。
上記バインダ(B)を構成するポリマーが、下記一般式(2)で表されるセグメントを主鎖又は側鎖に有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物。
<5>
上記バインダ(B)を構成するポリマーが、上記一般式(2)で表されるセグメントを側鎖に有する、<4>に記載の無機固体電解質含有組成物。
<6>
上記一般式(2)で表されるセグメントの数平均分子量が1,000〜100,000である、<4>又は<5>に記載の無機固体電解質含有組成物。
上記一般式(2)で表されるセグメントが、カルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1種を有する、<4>〜<6>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物。
<8>
活物質(C)を含む、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物。
<9>
上記活物質(C)が負極活物質である、<8>に記載の無機固体電解質含有組成物。
<10>
上記負極活物質が、構成元素にSiを含む、<9>に記載の無機固体電解質含有組成物。
<11>
導電助剤(D)を含む、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物。
<12>
上記無機固体電解質(A)が硫化物系無機固体電解質である、<1>〜<11>のいずれか記載の無機固体電解質含有組成物。
<1>〜<12>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物を用いて形成した層を有する、全固体二次電池用シート。
<14>
正極活物質層と、負極活物質層と、正極活物質層及び負極活物質層の間の固体電解質層とを含む全固体二次電池であって、
上記正極活物質層、上記負極活物質層及び上記固体電解質層の少なくとも1層が、<13>に記載の全固体二次電池用シートで構成された全固体二次電池。
<15>
<1>〜<12>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程を含む、全固体二次電池用シートの製造方法。
<16>
<1>〜<12>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程を含む、全固体二次電池の製造方法。
本発明の説明において、単に「アクリル」又は「(メタ)アクリル」と記載するときは、アクリル及び/又はメタアクリルを意味する。また、単に「アクリロイル」又は「(メタ)アクリロイル」と記載するときは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。
本発明の説明において、化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、この化合物そのものの他、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有する無機固体電解質(A)及びバインダ(B)を含有する。このバインダ(B)は、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合及びエステル結合のうちの少なくとも1種の結合を主鎖に有し、かつ下記一般式(1)で示される部分構造を少なくとも1種有するポリマーで構成されている。
その理由の詳細はまだ明らかではないが、次のように考えられる。すなわち、バインダを構成するポリマーが上記特定の結合を少なくとも1種有し、かつ一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1種含有することにより、バインダ自身の凝集力を高めるとともに、固体粒子との(化学的若しくは物理的な)相互作用が増大して強固な結着力で固体粒子同士を結着させることができる。これは、上記結合による相互作用の発現に加えて、一般式(1)で規定される部分構造がその化学構造のため高極性を示して、固体粒子に対するポリマーの濡れ性が一層向上するためと考えられる。しかし、固体粒子に対する濡れ性を向上させる上記部分構造は、無機固体電解質に対しては濡れ性を過度に向上させることなく、無機固体電解質の全面的な被覆が抑制される程度の適度な濡れ性をポリマーに付与できると考えられる。上記無機固体電解質に対する作用により、無機固体電解質の接触により形成されるイオン伝導パスをポリマーの存在によって遮断することなく維持でき、イオン伝導度の低下(固体粒子の界面抵抗等の上昇)を抑制できる。しかも、末端アルキル基が小さな上記部分構造は、ポリマー中に導入されても、ポリマー自体の強度の過度な低下を抑制できると考えられる。そのため、ポリマーで構成したバインダは、充放電による構成層の膨張収縮に対して高い耐性(ポリマーの破壊防止)を発現して、電池性能の低下を抑制できる。
このようなバインダの作用機能が相俟って、本発明の無機固体電解質含有組成物を用いて形成した構成層を備えた全固体二次電池は、構成層が高結着性及び低抵抗を示して、高い電池性能を実現できる。
そのため、本発明の無機固体電解質含有組成物が活物質を含有する場合においても、構成層は高結着性及び低抵抗に加えて集電体に対しても強固に密着して、高い電池性能を実現できる。
なお、無機固体電解質含有組成物に含まれる成分に符号を付さずに記載することもある。例えば、無機固体電解質(A)を無機固体電解質とも記載する。
無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液、又は、ポリマー中でカチオン及びアニオンが解離若しくは遊離している無機電解質塩(LiPF6、LiBF4、LiFSI、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば特に限定されず電子伝導性を有さないものが一般的である。
上記無機固体電解質は、この種の製品に適用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。例えば、無機固体電解質としては、(i)硫化物系無機固体電解質、(ii)酸化物系無機固体電解質、(iii)ハロゲン化物系無機固体電解質、及び、(iV)水素化物系固体電解質が挙げられる。本発明において、活物質と無機固体電解質との間により良好な界面を形成することができるため、硫化物系無機固体電解質が好ましく用いられる。
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
硫化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10−6S/cm以上であることが好ましく、5×10−6S/cm以上であることがより好ましく、1×10−5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されず、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
硫化物系無機固体電解質として、例えば、下記式(I)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。a1は1〜9が好ましく、1.5〜7.5がより好ましい。b1は0〜3が好ましい。d1は2.5〜10が好ましく、3.0〜8.5がより好ましい。e1は0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(Li2S)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mであらわされる元素の硫化物(例えばSiS2、SnS、GeS2)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10−6S/cm以上であることが好ましく、5×10−6S/cm以上であることがより好ましく、1×10−5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されず、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
また、Li、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(Li3PO4)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD1(D1は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれる少なくとも1種)等が挙げられる。
更に、LiA1ON(A1は、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれる少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
ハロゲン化物系無機固体電解質は、ハロゲン原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
ハロゲン化物系無機固体電解質としては、特に制限されず、例えば、LiCl、LiBr、LiI、ADVANCED MATERIALS,2018,30,1803075に記載のLi3YBr6、Li3YCl6等の化合物が挙げられる。中でも、Li3YBr6、Li3YCl6を好ましい。
水素化物系無機固体電解質は、水素原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
水素化物系無機固体電解質としては、特に制限されず、例えば、LiBH4、Li4(BH4)3I、3LiBH4−LiCl等が挙げられる。
ただし、無機固体電解質含有組成物が後述する活物質を含有する場合、無機固体電解質含有組成物中の無機固体電解質の含有量は、活物質と無機固体電解質との合計含有量が上記範囲であることが好ましい。
本明細書において、固形成分(固形分)とは、窒素雰囲気下170℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発ないし蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒以外の成分を指す。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、下記のポリマーを構成するバインダ(B)を含んでいる。
このポリマーは、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合及びエステル結合のうちの少なくとも1つの結合を含む主鎖を有している。また、このポリマーは好ましくは逐次重合系ポリマーであり、主鎖又は側鎖に下記一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1種有している。
本発明において、ポリマーの主鎖とは、ポリマーを構成する、それ以外のすべての分子鎖が、主鎖に対して枝分れ鎖若しくはペンダントとみなしうる線状分子鎖をいう。典型的には、ポリマーを構成する分子鎖のうち最長鎖が主鎖となる。ただし、ポリマー末端が有する官能基は主鎖に含まれない。また、ポリマーの側鎖とは、主鎖以外の分子鎖をいい、短分子鎖及び長分子鎖を含む。
すなわち、上記ポリマーは、(一般式(1)で表される部分構造として)下記一般式(2)で表されるセグメントを主鎖又は側鎖に有することが好ましく、側鎖に有することがより好ましい。
上記一般式中、[ ]内の構成成分の結合形態は、ランダム及びブロックのいずれでもよく、ブロックが好ましい。
上記アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、t−ブチル、ペンチル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルが挙げられる。
R8として採りうるアリール基は、例えば、一般式(1)中のR1として採りうるアリール基を採用することができる。
n2は、0モル%以上100モル%未満であり、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、60モル%以上が更に好ましい。また、n2は、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、75モル%以下が更に好ましい。
一般式(2)で表されるセグメントは、ポリマーの側鎖に組み込まれる場合、セグメントの端部側の結合部に結合する基(原子)は、特に制限されず、側鎖の端部基であることが好ましく、合成反応条件(クエンチ条件)等に応じて適宜に決定される。
ウレア結合により、式(I−1)で表される構成成分と式(I−4)で表される構成成分とが結合する。
アミド結合により、式(I−2)で表される構成成分と式(I−4)で表される構成成分とが結合する。
イミド結合により、式(I−5)で表される化合物由来の構成成分と式(I−6)で表される化合物由来の構成成分とが結合する。
エステル結合により、式(I−2)で表される構成成分と式(I−3)で表される構成成分とが結合する。
RP1及びRP2としてとりうる上記分子鎖は、特に制限されず、炭化水素鎖、ポリアルキレンオキシド鎖、ポリカーボネート鎖又はポリエステル鎖が好ましく、炭化水素鎖又はポリアルキレンオキシド鎖がより好ましい。
低分子量の炭化水素鎖は、通常の(非重合性の)炭化水素基からなる鎖であり、この炭化水素基としては、例えば、脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基が挙げられ、具体的には、アルキレン基(炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が更に好ましい)、アリーレン基(炭素数は6〜22が好ましく、6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい)、又はこれらの組み合わせからなる基が好ましい。RP2としてとりうる低分子量の炭化水素鎖を形成する炭化水素基としては、アルキレン基がより好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基が更に好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基が特に好ましい。
芳香族の炭化水素基は、フェニレン基又は下記式(M2)で表される炭化水素基が好ましい。
RM2〜RM5は、それぞれ、水素原子又は置換基を示し、水素原子が好ましい。RM2〜RM5としてとりうる置換基としては、特に制限されず、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、−ORM6、―N(RM6)2、−SRM6(RM6は置換基を示し、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を示す。)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)が挙げられる。―N(RM6)2としては、アルキルアミノ基(炭素数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい)又はアリールアミノ基(炭素数は、6〜40が好ましく、6〜20がより好ましい)が挙げられる。
末端反応性基を有する炭化水素ポリマーとしては、例えば、いずれも商品名で、NISSO−PBシリーズ(日本曹達社製)、クレイソールシリーズ(巴工業社製)、PolyVEST−HTシリーズ(エボニック社製)、poly−bdシリーズ(出光興産社製)、poly−ipシリーズ(出光興産社製)、EPOL(出光興産社製)及びポリテールシリーズ(三菱化学社製)等が好適に用いられる。
ポリカーボネート鎖又はポリエステル鎖としては、公知のポリカーボネート又はポリエステルからなる鎖が挙げられる。
ポリアルキレンオキシド鎖、ポリカーボネート鎖又はポリエステル鎖は、それぞれ、末端にアルキル基(炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましい)を有することが好ましい。
上記分子鎖の分子量又は質量平均分子量は、30以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上が更に好ましく、150以上が特に好ましい。上限としては、100,000以下が好ましく、10,000以下がより好ましい。分子鎖の分子量又は質量平均分子量は、ポリマーの主鎖に組み込む前の原料化合物について測定する。
ただし、式(I−3)又は式(I−4)中のRP2が置換基を有する場合、式(I−7)又は式(I−8)で表される構成成分に相当しない置換基、例えば後述する置換基Tから選択される。
下記式(I−7)で表される構成成分は、一般式(1)で表される部分構造又はその(共)重合物を含む構成成分であり、好ましくは一般式(2)で表されるセグメントを含む構成成分である。この構成成分は、ポリマーの主鎖及び側鎖のいずれにも組み込むことができ、主鎖に組み込まれることが好ましい。
下記式(I−8)で表される構成成分は、一般式(1)で表される部分構造又はその(共)重合物を含む構成成分であり、好ましくは一般式(2)で表されるセグメントを含む構成成分である。この構成成分は、通常、ポリマーの主鎖に組み込まれて、上記部分構造の(共)重合体又はセグメントが側鎖中に組み込まれる。
このバインダを構成するポリマーとしては、下記式(I−1)で表される構成成分、式(I−3A)で表される構成成分及び式(I−7)又は(I−8)で表される構成成分を少なくとも有することが好ましい。また、これらの構成成分に加えて式(I−3B)で表される構成成分を有することがより好ましく、式(I−3C)で表される構成成分を有することが更に好ましい。
ポリマーは、RP2が(例えばエーテル基若しくはカルボニル基又はその両方を有しない)脂肪族の炭化水素基である構成成分(例えばブタンジオール由来の構成成分)を含む形態と、含まない形態の両形態をとることができる。
式(I−3A)において、RP2Aは、炭化水素ポリマー鎖を示す。
式(I−3B)において、RP2Bは脂肪族の炭化水素基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは3〜20)を示し、好ましくはエーテル基若しくはカルボニル基又はその両方、より好ましくはカルボキシ基を有している。例えば2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸等のビス(ヒドロキシメチル)酢酸化合物が挙げられる。
式(I−3C)において、RP2Cはポリアルキレンオキシド鎖を示す。
RP2Aとしてとりうる炭化水素ポリマー鎖、RP2Bとしてとりうる脂肪族の炭化水素基及びRP2Cとしてとりうるポリアルキレンオキシド鎖は、それぞれ、上記式(I−3)におけるRP2としてとりうる炭化水素ポリマー鎖、脂肪族の炭化水素基及びポリアルキレンオキシド鎖と同義であり、好ましいものも同じである。
式(I−7)で表される構成成分及び式(I−8)で表される構成成分は上述の通りである。
なお、バインダを構成するポリマー中における上記各式で表される構成成分の含有量は後述する。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2〜20のヘテロ環基で、好ましくは、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5又は6員環のヘテロ環基である。ヘテロ環基には芳香族ヘテロ環基(ヘテロアリール基)及び脂肪族ヘテロ環基を含む。例えば、テトラヒドロピラン環基、テトラヒドロフラン環基、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、ヘテロ環オキシ基(上記ヘテロ環基に−O−基が結合した基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6〜26のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、3−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ(−NH2)、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、好ましくは炭素数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、オクタノイル、ヘキサデカノイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、ベンゾイル、ナフトイル、ニコチノイル等)、アシルオキシ基(アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アルキニルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基を含み、好ましくは炭素数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、オクタノイルオキシ、ヘキサデカノイルオキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ、ニコチノイルオキシ等)、アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素数7〜23のアリーロイルオキシ基、例えば、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、ヘテロ環チオ基(上記ヘテロ環基に−S−基が結合した基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜22のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、アリールシリル基(好ましくは炭素数6〜42のアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素数0〜20のリン酸基、例えば、−OP(=O)(RP)2)、ホスホニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスホニル基、例えば、−P(=O)(RP)2)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスフィニル基、例えば、−P(RP)2)、スルホ基(スルホン酸基)、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。RPは、水素原子又は置換基(好ましくは置換基Tから選択される基)である。
また、これらの置換基Tで挙げた各基は、上記置換基Tが更に置換していてもよい。
バインダを構成するポリマーの構成成分の含有量の合計中の、式(I−3)、式(I−4)又は式(I−6)で表される構成成分の含有量は、特に制限されず、10〜50モル%であることが好ましく、20〜50モル%であることがより好ましく、30〜50モル%であることが更に好ましい。
式(I−3)又は式(I−4)で表される構成成分のうち、RP2が脂肪族の炭化水素基である構成成分の、バインダを構成するポリマー中の含有量は、特に制限されず、例えば、0〜50モル%であることが好ましく、1〜30モル%であることがより好ましく、2〜20モル%であることが更に好ましく、4〜10モル%であることが更に好ましい。
式(I−3)又は式(I−4)で表される構成成分のうち、RP2が分子鎖として上記ポリアルキレンオキシド鎖である構成成分の、バインダを構成するポリマー中の含有量は、特に制限されず、例えば、0〜50モル%であることが好ましく、10〜45モル%であることがより好ましく、20〜40モル%であることが更に好ましい。
バインダを構成するポリマー中の、上記各式で表される構成成分以外の構成成分の含有量は、特に限定されず、20モル%以下であることが好ましい。
上記式(I−3)又は式(I−4)で表される構成成分を導く原料化合物(ジオール化合物又はジアミン化合物)は、それぞれ、特に制限されず、例えば、国際公開第2018/020827号に記載の各化合物及びその具体例が挙げられ、更にジヒドロキシオキサミドも挙げられる。
上記式(I−5)で表されるカルボン酸二無水物、及び上記式(I−6)で表される構成成分を導く原料化合物(ジアミン化合物)は、それぞれ、特に制限されず、例えば、国際公開第2018/020827号及び国際公開第2015/046313号に記載の各化合物及びその具体例が挙げられる。
上述のポリマー(ポリマーからなるバインダ)は、分散媒に対して可溶であってもよく、特にイオン伝導性の点で、分散媒に対して不溶(の粒子)であることが好ましい。
本発明において、分散媒に対して不溶であるとは、ポリマーを30℃の分散媒(使用量はポリマーの質量に対して10倍)に添加し、24時間静置しても、分散媒への溶解量が3質量%以下であることを意味し、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。ここの溶解量は、分散媒に添加したポリマー質量に対する、24時間経過後に分散媒から固液分離して得られるポリマー質量の割合とする。
粒子状バインダの平均粒径は、特に制限されず、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが更に好ましい。下限値は1nm以上であり、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることが更に好ましい。平均粒径は、上記無機固体電解質の平均粒径と同様にして測定できる。
上記ポリマーの質量平均分子量は、特に制限されない。例えば、15000以上が好ましく、30000以上がより好ましく、50000以上が更に好ましい。上限としては、400000以下が実質的であり、200000以下が好ましく、100000以下がより好ましい。
上記ポリマーの水分濃度は、100ppm(質量基準)以下が好ましい。また、このポリマーは、晶析させて乾燥させてもよく、ポリマー分散液をそのまま用いてもよい。
本発明の無機固体電解質含有組成物において、バインダ(B)の質量に対する、無機固体電解質と活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+活物質の質量)/(バインダの質量)]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率は500〜2がより好ましく、100〜5が更に好ましい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有してもよい。
活物質としては、正極活物質及び負極活物質が挙げられ、正極活物質である遷移金属酸化物、又は、負極活物質である金属酸化物が好ましい。
本発明において、活物質(正極活物質及び負極活物質)を含有する無機固体電解質含有組成物を、電極用組成物(正極用組成物及び負極用組成物)ということがある。
本発明の無機固体電解質含有組成物が含有してもよい正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素、又は、硫黄と金属の複合物などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素Ma(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素Mb(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Maの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn2O4(LMO)、LiCoMnO4、Li2FeMn3O8、Li2CuMn3O8、Li2CrMn3O8及びLi2NiMn3O8が挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO4及びLi3Fe2(PO4)3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP2O7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類並びにLi3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、Li2FePO4F等のフッ化リン酸鉄塩、Li2MnPO4F等のフッ化リン酸マンガン塩及びLi2CoPO4F等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4及びLi2CoSiO4等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO、LMO、NCA又はNMCがより好ましい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm2)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
本発明の無機固体電解質含有組成物が含有してもよい負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫等の金属酸化物、酸化ケイ素、金属複合酸化物、リチウム単体及びリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、並びに、Sn、Si、Al及びIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されず、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
Si負極に用いられる負極活物質の具体例として、構成元素にSiを含む負極活物質が挙げられ、具体的にはSi及びSiOx(0<x≦1)が挙げられる。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm2)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
また、正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
更に、正極活物質又は負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、導電助剤を含有してもよい。導電助剤としては、特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェン若しくはフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でもよく、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体など導電性高分子を用いてもよい。またこれらの内1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明において、負極活物質と導電助剤とを併用する場合、電池を充放電した際にLiの挿入と放出が起きず、負極活物質として機能しないものを導電助剤とする。したがって、導電助剤の中でも、電池を充放電した際に負極活物質層中において負極活物質として機能しうるものは、導電助剤ではなく負極活物質に分類する。電池を充放電した際に負極活物質として機能するか否かは、一義的に言うことができず、負極活物質との組み合わせにおいて決定される。
導電助剤の含有量は、無機固体電解質含有組成物中の固形分100質量%に対して、0〜10質量%が好ましく、3〜7質量%がより好ましい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、固形成分を分散させるため分散媒を含有することが好ましい。
分散媒体は、上記の各成分を分散させるものであればよく、例えば、各種の有機溶媒が挙げられる。分散媒の具体例としては下記のものが挙げられる。
上記分散媒は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、リチウム塩を含有してもよい。
リチウム塩としては、特に制限はなく、例えば、特開2015−088486号公報の段落0082〜0085記載のリチウム塩が好ましい。
リチウム塩の含有量は、無機固体電解質含有組成物中の固形分100質量部に対して、0質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。上限としては、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、上述のバインダ(B)の他に、通常用いられるバインダを含有してもよい。
通常用いられるバインダとしては有機ポリマーが挙げられ、例えば、以下に述べる樹脂からなるバインダが好ましく使用される。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンが挙げられる。アクリル樹脂としては、各種の(メタ)アクリルモノマー類、(メタ)アクリルアミドモノマー類、及びこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体(好ましくは、アクリル酸とアクリル酸メチルとの共重合体)が挙げられる。
また、その他のビニル系モノマーとの共重合体(コポリマー)も好適に用いられる。
その他の樹脂としては例えばポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース誘導体樹脂等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、無機固体電解質(A)及びバインダ(B)、必要により、分散媒(E)又は他の成分を、例えば、各種の混合機を用いて、混合することにより、調製することができる。好ましくは、無機固体電解質(A)及びバインダ(B)と、必要により分散媒(E)、他の成分を分散媒に分散させたスラリーとして、調製できる。
無機固体電解質含有組成物のスラリーは、各種の混合機を用いて調製できる。混合装置としては、特に限定されず、例えば、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサ―、ブレードミキサ―、ロールミル、ニーダー及びディスクミルが挙げられる。混合条件は特に制限されず、例えば、ボールミルを用いた場合、150〜700rpm(rotation per minute)で1時間〜24時間混合することが好ましい。
分散媒を含有しない無機固体電解質含有組成物を調製する場合には、上記の無機固体電解質(A)の分散工程と同時に添加及び混合してもよく、別途添加及び混合してもよい。なお、バインダ(B)は、無機固体電解質(A)及び/又は活物質(C)若しくは導電助剤(D)等の成分の分散工程と同時に添加及び混合してもよく、別途添加及び混合してもよい。また、本発明の無機固体電解質含有組成物に添加及び/又は混合する際のバインダ(B)の形態は、バインダ(B)そのものであっても、バインダ(B)の溶液であっても、バインダ(B)の分散液(ポリマーの非水溶媒分散物)であってもよい。中でも、無機固体電解質の分解を抑制し、かつ、活物質と無機固体電解質の粒子表面に点在化してイオン伝導度を担保できる点からは、バインダの分散液が好ましい。
本発明の全固体二次電池用シートは、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質(A)と、バインダ(B)とを含有する層を有する。このバインダ(B)は、特に断りがない限り、本発明の無機固体電解質含有組成物におけるバインダ(B)と同義である。
この全固体二次電池用シートは、固体電解質層又は活物質層を有していれば、他の層を有してもよく、活物質を含有するものは全固体二次電池用電極シートに分類される。他の層としては、例えば、保護層、集電体、導電体層等が挙げられる。
全固体二次電池用固体電解質シートとして、例えば、固体電解質層と、必要により保護層とを基材上に、この順で有するシートが挙げられる。
全固体二次電池用シートの固体電解質層の層厚は、本発明の全固体二次電池において説明する固体電解質層の層厚と同じである。
このシートは、本発明の無機固体電解質含有組成物、好ましくは、無機固体電解質(A)と、バインダ(B)と、分散媒(E)とを含有する無機固体電解質含有組成物を基材上(他の層を介していてもよい)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層を形成することにより、得られる。詳細は後述する。
ここで、本発明の無機固体電解質含有組成物は、上記の方法によって、調製できる。
電極シートを構成する各層の構成及び層厚は、後記の、本発明の全固体二次電池において説明した各層の構成及び層厚と同じである。
電極シートは、本発明の、活物質を含有する無機固体電解質含有組成物を金属箔上に製膜(塗布乾燥)して、金属箔上に活物質層を形成することにより、得られる。詳細は後述する。
本発明の全固体二次電池は、正極と、この正極に対向する負極と、正極及び負極の間の固体電解質層とを有する。正極は、正極集電体上に正極活物質層を有する。負極は、負極集電体上に負極活物質層を有する。
負極活物質層、正極活物質層及び固体電解質層の少なくとも1つの層は、本発明の無機固体電解質含有組成物を用いて形成され、無機固体電解質(A)とバインダ(B)とを含有する。
無機固体電解質含有組成物を用いて形成された活物質層及び/又は固体電解質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、特段の断りをしない限り、無機固体電解質含有組成物の固形分におけるものと同じである。
本発明の全固体二次電池は積層型であってもよく、この積層型全固体二次電池は、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を1ユニットとして、1〜100ユニット有する形態が好ましく、2〜50ユニット有する形態がより好ましい。
本明細書において、正極活物質層(以下、正極層とも称す。)と負極活物質層(以下、負極層とも称す。)を合わせて電極層又は活物質層と称することがある。また、正極活物質及び負極活物質のいずれか、又は両方を合わせて、単に、活物質又は電極活物質と称することがある。
全固体二次電池10においては、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層のいずれかが本発明の無機固体電解質含有組成物を用いて作製されている。この全固体二次電池10は優れた電池性能を示す。
すなわち、固体電解質層3が本発明の無機固体電解質含有組成物を用いて作製されている場合、固体電解質層3は、無機固体電解質(A)とバインダ(B)とを含む。固体電解質層は、通常、正極活物質及び/又は負極活物質を含まない。
正極活物質層4及び/又は負極活物質層2が、活物質を含有する本発明の無機固体電解質含有組成物を用いて作製されている場合、正極活物質層4及び負極活物質層2は、それぞれ、正極活物質又は負極活物質を含み、更に、無機固体電解質(A)とバインダ(B)とを含む。活物質層が無機固体電解質を含有するとイオン伝導度を向上させることができる。
正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2が含有する無機固体電解質(A)及びバインダ(B)は、それぞれ、互いに同種であっても異種であってもよい。
本発明において、全固体二次電池における負極活物質層、正極活物質層及び固体電解質層が、いずれも、上記無機固体電解質含有組成物で作製されることが好ましい態様の1つである。
正極集電体5及び負極集電体1は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの他に、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金及びステンレス鋼がより好ましい。
集電体の厚みは、特に限定されず、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
上記の各層を配置して全固体二次電池の基本構造を作製することができる。用途によってはこのまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためには更に適当な筐体に封入して用いる。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金及びステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
本発明の全固体二次電池用シートは、本発明の無機固体電解質含有組成物(好ましくは分散媒(E)を含有する。)を基材上(導電体層等の他の層を介していてもよい)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層を形成することにより、得られる。
上記態様により、無機固体電解質(A)とバインダ(B)とを(含有する固体電解質層を)基材上に有する全固体二次電池用シートを作製することができる。また、作製した全固体二次電池用シートから基材を剥がし、固体電解質層からなる全固体二次電池用シートを作製することもできる。
その他、塗布等の工程については、下記全固体二次電池の製造に記載の方法を使用することができる。
本発明の全固体二次電池用シート中の分散媒(E)の含有割合は、以下の方法で測定することができる。
全固体二次電池用シートを20mm角で打ち抜き、ガラス瓶中で重テトラヒドロフランに浸漬させる。得られた溶出物をシリンジフィルターでろ過して1H−NMRにより定量操作を行う。1H−NMRピーク面積と溶媒の量の相関性は検量線を作成して求める。
全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートの製造は、常法によって行うことができる。具体的には、全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートは、本発明の無機固体電解質含有組成物等を用いて、上記の各層を形成することにより、製造できる。以下詳述する。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用材料(正極用組成物)として、正極活物質を含有する無機固体電解質含有組成物を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための無機固体電解質含有組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。更に、固体電解質層の上に、負極用材料(負極用組成物)として、負極活物質を含有する無機固体電解質含有組成物を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。必要によりこれを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることができる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、無機固体電解質含有組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。更に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
無機固体電解質含有組成物の塗布方法は、特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布及びバーコート塗布が挙げられる。
このとき、無機固体電解質含有組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下が更に好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒(E)を除去し、固体状態にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性を得ることができる。
また、塗布した無機固体電解質含有組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
加圧は塗布溶媒又は分散媒をあらかじめ乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒が残存している状態で行ってもよい。
各組成物は同時に塗布してもよいし、塗布乾燥プレスを同時及び/又は逐次行ってもよい。別々の基材に塗布した後に、転写により積層してもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。全固体二次電池用シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積又は膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を解放することにより、行うことができる。
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車(電気自動車等)、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
無機固体電解質とは、上述した高分子化合物をイオン伝導媒体とする電解質(高分子電解質)とは区別されるものであり、無機化合物がイオン伝導媒体となるものである。具体例としては、上記のLi−P−S系ガラス、LLT若しくはLLZが挙げられる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがある。上記のイオン輸送材料としての電解質と区別する際には、これを「電解質塩」又は「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては、例えばLiTFSIが挙げられる。
本発明において「組成物」というときには、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集又は偏在が生じていてもよい。
硫化物系無機固体電解質として、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.HamGa,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235及びA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして、Li−P−S系ガラスを合成した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記の硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)に容器をセットし、温度25℃で、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行うことで、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス、LPSと表記することがある。)6.20gを得た。
<バインダポリマーS−1の合成>
200mL3つ口フラスコに、ポリエチレングリコール(富士フイルム和光純薬社製、商品名:ポリエチレングリコール 200)3.72gと、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(東京化成工業社製)0.92g、NISSO−PB GI−1000(商品名、日本曹達社製)4.65g、後記合成した、構成成分A−1を導入するための化合物3.10gとを加え、THF(テトラヒドロフラン)81gに溶解した。この溶液に、ジフェニルメタンジイソシアネート(富士フイルム和光純薬社製)7.76gを加えて60℃で撹拌し、均一に溶解させた。得られた溶液に、ネオスタンU−600(商品名、日東化成社製)640mgを添加して60℃で5時間攪伴し、粘性ポリマー溶液を得た。このポリマー溶液にメタノール(富士フイルム和光純薬社製)0.23gを加えてポリマー末端を封止して、重合反応を停止し、ポリマーS−1の20質量%THF溶液(ポリマー溶液)を得た。
次に、上記で得られたポリマー溶液に対してTHF81gを加えた溶液に、150rpmで撹拌しながら、ジイソブチルケトン222gを10分間かけて滴下し、ポリマーS−1の乳化液を得た。窒素ガスをフローしながらこの乳化液を85℃で120分加熱した。得られた残留物にジイソブチルケトン50gを加えて更に85℃で60分加熱した。この操作を4回繰り返し、THFを除去した。こうして、ポリマーS−1からなるバインダのジイソブチルケトン分散液を得た。
後記するA−1は以下のようにして合成した。
500mLメスシリンダーに、アクリル酸エチル(東京化成工業社製)79.3g、α−チオグリセロール(東京化成工業社製)5.0g、エタノール(富士フイルム和光純薬社製)96.7g、V−601(商品名、富士フイルム和光純薬社製、油溶性アゾ重合開始剤)2.65gを秤量し、室温で攪拌して均一に溶解させた溶液を得た。500mL3口ナスフラスコにエタノール100gを入れて80℃に昇温し、エタノールへ上記溶液を2時間かけて滴下した。滴下完了後の溶液を90℃に昇温して2時間撹拌後、静置して室温に戻した。この溶液をトルエン1000gに流し入れて生成物を沈殿させ、上澄みを除くことで洗浄した。この洗浄作業を3回繰り返した後、回収した沈殿物を70℃で6時間真空乾燥することでA−1を得た。A−1の数平均分子量は1,000であった。
バインダポリマーS−1の合成において、下記表1に記載の原料化合物の組成(原料化合物の種類及び含有率)を採用したこと以外は、バインダポリマーS−1と同様にして、バインダポリマーS−2〜S−20及びT−1〜T−4をそれぞれ合成した。
バインダポリマーS−15はその主鎖にエステル結合を有し、バインダポリマーS−16はその主鎖にウレア結合及びウレタン結合を有し、バインダポリマーS−17はアミド結合及びエステル結合を有し、他のバインダポリマーはその主鎖にウレタン結合を有している。
<構成成分A−2、A−4〜A−A−6、A−9、A−10及びB−1〜B−3を導入するための化合物の合成>
上記A−1の合成において、アクリル酸エチルを後記構成成分A−2、A−4〜A−A−6、A−9、A−10及びB−1〜B−3におけるセグメントに相当する化合物及び使用量(数平均分子量)に変更したこと以外は、A−1の合成と同様にして、A−2、A−4〜A−A−6、A−9、A−10及びB−1〜B−3をそれぞれ合成した。
1Lメスフラスコに、2−ブロモイソ酪酸2−ヒドロキシエチル(アルドリッチ社製)3.0g、臭化銅(I)(アルドリッチ社製)0.5g、トリス(2−ピリジルメチル)アミン(アルドリッチ社製)1.0gおよびアクリル酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)180g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート343gを加え、70℃で攪拌して溶解させた。アゾビスイソブチロニトリル1,5gを加え、70℃で8時間撹拌後、静置して室温に戻した。亜鉛(富士フイルム和光純薬社製)12.5g バレルアルデヒド(東京化成社製)5.0gを加え、室温で12時間撹拌した。得られたポリマー溶液を1200gのトルエンに流し入れ、上澄みを捨て沈殿物を回収した。この沈殿物を恒温槽中120℃で5時間乾燥することで、A−3を得た。
上記A−3の合成において、アクリル酸エチルを後記構成成分A−7におけるセグメントに相当する化合物及び使用量(数平均分子量)に変更したこと以外は、A−3の合成と同様にして、A−7を合成した。
100mLメスフラスコに、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル(東京化成社製)30.0g、2−アミノエタノール(東京化成社製)14.1gを加え、室温で攪拌して混合した。トリエチルアミン0.2gを加え、室温で3時間撹拌することで、A−8を合成した。
構成成分(I)の分子量は、構成成分(I)を導入するための化合物の数平均分子量を意味する。
構成成分M1:式(I−1)又は式(I−2)で表される構成成分
構成成分M2:式(I−3C)で表される構成成分
構成成分M3:式(I−3B)で表される構成成分、又は式(I−3A)で表される構成成分において両末端の酸素原子をNHに変更した構成成分
構成成分M4:式(I−3C)で表される構成成分
構成成分M5:式(I−3A)で表される構成成分
構成成分(I):式(I−7)又は式(I−8)で表される構成成分
表には、上記各構成成分を導入するための化合物を記載している。
H12MDI:ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート
PEG200:ポリエチレングリコール 200(商品名、数平均分子量200、富士フイルム和光純薬社製)
PEG400:ポリエチレングリコール 400(商品名、数平均分子量400、富士フイルム和光純薬社製)
PEG600:ポリエチレングリコール 600(商品名、数平均分子量600、富士フイルム和光純薬社製)
DMBA:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(東京化成工業社製)
DMPA:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸
D−400:ジェファーミンD−400(商品名、ポリオキシプロピレンジアミン、数平均分子量400、ハンツマン社製)
PTMG250:ポリテトラメチレングリコール 250(商品名、数平均分子量250、ALDRICH社製)
NISSO−PB GI1000:商品名、両末端水酸基水素化ポリブタジエン、数平均分子量1400、日本曹達社製
M−1:アジピルクロリド(東京化成工業社製)
下記化合物において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Buはn−ブチル基を示す。下記A−10のC12H25は直鎖ドデシル基である。
<無機固体電解質含有組成物、正極用組成物及び負極用組成物の調製>
上記合成したバインダポリマーを用いて以下のようにして、後記表2に記載する、無機固体電解質含有組成物、正極用組成物及び負極用組成物を調製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記合成したLPSを4.0g、下記表2に記載の組成で各成分を投入した。その際に、分散媒(E)は無機固体電解質含有組成物の固形分濃度が50%になるように調整した。その後に、この容器をフリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)にセットし、温度25℃、回転数150rpmで10分間混合を続けて、無機固体電解質含有組成物K−1〜K−21及びKc11〜Kc14をそれぞれ調製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記合成したLPSを2.7g、表1に示すバインダポリマーの分散液又は溶液、及び分散媒を投入した。その際に、分散媒(E)は正極用組成物又は負極用組成物の固形分濃度が70%になるように調整した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、25℃で、回転数150rpmで10分間攪拌した。その後、表2に示す活物質を投入し、同様にして、遊星ボールミルP−7に容器をセットし、25℃、回転数100rpmで5分間混合を続け、正極用組成物PK−1〜PK−3、負極用組成物NK−1〜NK−17、NKc21〜NKc24をそれぞれ調製した。
以下のようにして、後記表3に記載する固体電解質シート及び電極シートを作製した。
上記で得られた各無機固体電解質含有組成物を厚み20μmのアルミニウム箔上に、アプリケーター(商品名:SA−201ベーカー式アプリケーター、テスター産業社製)により塗布し、80℃で2時間加熱し、乾燥(分散媒を除去)した。その後、ヒートプレス機を用いて、120℃の温度及び600MPaの圧力で10秒間、乾燥させた無機固体電解質含有組成物を加熱及び加圧し、固体電解質シート101〜121及びc11〜c14をそれぞれ作製した。固体電解質層の膜厚は50μmであった。
上記で得られた正極用組成物又は負極用組成物を厚み20μmのアルミニウム箔(正極集電体)又は銅箔(負極集電体)上に、ベーカー式アプリケーター(商品名:SA−201)により塗布し、80℃で2時間加熱し、乾燥(分散媒を除去)した。その後、ヒートプレス機を用いて、乾燥させた正極又は負極用組成物を25℃で加圧(10MPa、1分)し、正極活物質層又は負極活物質層を有する各シートを作製した。
次いで、各シートの活物質層上に、上記で作製した表3に示す無機固体電解質含有組成物(固体電解質シート)を固体電解質層が正極活物質層又は負極活物質層に接するように重ね、プレス機を用いて25℃で50MPa加圧して転写(積層)した後に、25℃で600MPa加圧することで、固体電解質層を備えた正極シート122〜124、負極シート125〜141及びc21〜c24をそれぞれ作製した。各シートの電極活物質層の膜厚は80μmであり、固体電解質層の膜厚は50μmであった。
上記で作製した全固体二次電池用シートについて、以下の試験を行った。以下に試験方法を記載し、結果を下記表3にまとめて記載する。
以下のようにして、イオン伝導度測定用試験体を作製した。
(1)固体電解質シートを用いたイオン伝導度測定用試験体の作製
上記で得られた固体電解質シートを直径14.5mmの円板状に切り出し、この固体電解質シート12を図2に示す2032型コインケース11に入れた。具体的には、直径15mmの円板状に切り出したアルミニウム箔(図2に図示しない)を固体電解質層と接触させ、スペーサーとワッシャー(ともに図2において図示しない)を組み込んで、ステンレス製の2032型コインケース11に入れた。2032型コインケース11をかしめることで、8ニュートン(N)の力で締め付けられた、イオン伝導度測定用試験体13を作製した。
上記で作製した同一のシートNo.を付した2枚の電極シート(電極シートのうち、固体電解質層側のアルミニウム箔は剥離済み)から、それぞれ、直径14.5mmの円板状シートを切り出した。切り出した2枚の円盤状シートの固体電解質層同士を貼り合わせて、積層体(集電体−電極活物質層−固体電解質層−固体電解質層−電極活物質層−集電体からなる積層体)12を作製した。この積層体12をイオン伝導度測定用試料として、スペーサーとワッシャー(図2において図示せず)を組み込んで、ステンレス製の2032型コインケース11に入れた。2032型コインケース11をかしめることで、8ニュートン(N)の力で締め付けられた、図2に示す構成を有するイオン伝導度測定用試験体13を作製した。
式(1):イオン伝導度σ(mS/cm)=
1000×試料層厚(cm)/[抵抗(Ω)×試料面積(cm2)]
式(1)において、試料層厚は、積層体12を2032型コインケース11に入れる前に測定し、2枚の集電体の厚みを差し引いた値(固体電解質シートを用いた場合、固体電解質層の層厚を意味し、電極シートを用いた場合、固体電解質層及び電極活物質層の合計層厚を意味する)である。試料面積は、直径14.5mmの円板状シートの面積である。
本試験におけるイオン伝導度は、評価ランク「D」以上が合格である。
−イオン伝導度の評価ランク−
A:0.60≦σ
B:0.50≦σ<0.60
C:0.40≦σ<0.50
D:0.30≦σ<0.40
E:0.20≦σ<0.30
F: σ<0.20
上記作製した各全固体二次電池用シートから縦20mm×横20mmの試験片を切り出した。この試験片に対し、カッターナイフを用いて1つの辺に平行に1mm間隔で基材(アルミニウム箔又は銅箔)に到達するように11本の切り込みを入れた。また、この切り込みに対して垂直方向に、1mm間隔で基材に到達するように11本の切り込みを入れた。このようにして、試験片にマス目を100個形成した。
縦15mm×横18mmのセロハン(登録商標、ニチバン社)テープを固体電解質層表面に貼り付け、上記100個のマス目を全て覆った。セロハンテープの表面を消しゴムでこすって固体電解質層に押付け付着させた。セロハンテープを付着させてから2分後に、セロハンテープの端を持って固体電解質層に対して垂直上向きに引っ張り、剥がした。セロハンテープを引き剥がした後、目視で観察して、活物質層が集電体から全く剥離していないマス目の数を計数して、集電体に対する活物質層の密着性を評価した。また、固体電解質層の表面を目視で観察して、固体電解質層内で破壊(固体電解質層にヒビ、欠けが発生又は固体電解質層が活物質層から剥離)しているマス目の数を計数して、固体粒子間の密着性を評価した。いずれも評価ランク「A」〜「D」が合格レベルである。
A:80マス以上
B:60マス以上80マス未満
C:40マス以上60マス未満
D:30マス以上40マス未満
E:10マス以上30マス未満
F:10マス未満
A:10マス未満
B:10マス以上20マス未満
C:20マス以上30マス未満
D:30マス以上40マス未満
E:40マス以上50マス未満
F:50マス以上
これに対し、本発明の無機固体電解質含有組成物を用いて作製したシートNo.101〜141は、いずれも、イオン伝導性、及び固体粒子間の結着性、(電極シートについては)更に集電体密着性にも、優れていた。
<全固体二次電池の作製>
以下のようにして、図1に示す層構成を有する全固体二次電池(No.101)を作製した。
上記で得られた全固体二次電池用正極シートNo.122を直径14.5mmの円板状に打ち抜き、スペーサーとワッシャー(図2において図示せず)を組み込んだステンレス製の2032型コインケース11に入れ、次いで、固体電解質層上に直径15mmの円盤状に切り出したリチウム箔を重ねた。その上にさらにステンレス箔を重ねた後、2032型コインケース11をかしめることで、図2に示すNo.101の全固体二次電池13を作製した。
このようにして製造した全固体二次電池は、図1に示す層構成を有する(ただし、リチウム箔が、負極活物質層2及び負極集電体1に相当する)。
負極シートNo.125の固体電解質層上に下記のようにして調製した正極用組成物をベーカー式アプリケーター(商品名:SA−201)により塗布し、80℃で2時間加熱し、乾燥(分散媒を除去)することにより正極活物質層を形成して積層体を得た。この積層体を直径14.5mmの円板状に打ち抜き、スペーサーとワッシャー(図2において図示せず)を組み込んだステンレス製の2032型コインケース11に入れ、正極活物質層上に15mmφに切り出したアルミニウム箔を重ね、全固体二次電池用積層体を作製した。2032型コインケース11をかしめることで、図2に示すNo.122の全固体二次電池13を作製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLPSを2.7g、KYNAR FLEX 2500−20(商品名、PVdF−HFP:ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン共重合体、アルケマ社製)を固形分質量として0.3g、及び酪酸ブチルを22g投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、25℃で、回転数300rpmで60分間攪拌した。その後、正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NMC)7.0gを投入し、同様にして、遊星ボールミルP−7に容器をセットし、25℃、回転数100rpmで5分間混合を続け、正極用組成物を調製した。
上記で作製した全固体二次電池について、以下の試験を行った。以下に試験方法を記載し、結果を下記表4に記載する。
上記のようにして作製した全固体二次電池No.101〜128及びc101〜c104について、その放電容量維持率を測定して、サイクル特性を評価した。
具体的には、各全固体二次電池の放電容量維持率を、充放電評価装置:TOSCAT−3000(商品名、東洋システム社製)により測定した。充電は、電流密度0.1mA/cm2で電池電圧が3.6Vに達するまで行った。放電は、電流密度0.1mA/cm2で電池電圧が2.5Vに達するまで行った。この充電1回と放電1回とを充放電1サイクルとして3サイクル充放電を繰り返して、全固体二次電池を初期化した。初期化後の充放電1サイクル目の放電容量(初期放電容量)を100%としたときに、放電容量維持率(初期放電容量に対する放電容量)が80%に達した際の充放電サイクル数が、下記評価ランクのいずれに含まれるかにより、サイクル特性を評価した。下記評価ランクにおいて、「C」以上が合格である。
−放電容量維持率の評価ランク−
A:500サイクル以上
B:300サイクル以上500サイクル未満
C:200サイクル以上300サイクル未満
D:100サイクル以上200サイクル未満
E: 50サイクル以上100サイクル未満
F: 50サイクル未満
電極シートの製造に用いた無機固体電解質含有組成物及び電極用組成物を、無機固体電解質含有組成物No.及び電極用組成物No.の列に記載している。No.143〜150及びc25〜c28の電極シートは、表3に記載の電極シートと同様にして作製したものである。
これに対し、本発明の無機固体電解質含有組成物を用いて作製した全固体二次電池No.101〜128は、すべてサイクル特性が合格であった。
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 2032型コインケース
12 全固体二次電池用固体電解質シート、積層体又は全固体二次電池用積層体
13 イオン伝導度測定用試験体
Claims (16)
- 前記バインダ(B)を構成するポリマーが、カルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1種を有する、請求項1に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 前記バインダ(B)を構成するポリマーが、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合及びイミド結合のうちの少なくとも1種の結合を主鎖に有する、請求項1又は2に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 前記バインダ(B)を構成するポリマーが、前記一般式(2)で表されるセグメントを側鎖に有する、請求項4に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 前記一般式(2)で表されるセグメントの数平均分子量が1,000〜100,000である、請求項4又は5に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 前記一般式(2)で表されるセグメントが、カルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1種を有する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 活物質(C)を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 前記活物質(C)が負極活物質である、請求項8に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 前記負極活物質が、構成元素にSiを含む、請求項9に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 導電助剤(D)を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 前記無機固体電解質(A)が硫化物系無機固体電解質である、請求項1〜11のいずれか記載の無機固体電解質含有組成物。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物を用いて形成した層を有する、全固体二次電池用シート。
- 正極活物質層と、負極活物質層と、正極活物質層及び負極活物質層の間の固体電解質層とを含む全固体二次電池であって、
前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記固体電解質層の少なくとも1層が、請求項13に記載の全固体二次電池用シートで構成された全固体二次電池。 - 請求項1〜12のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程を含む、全固体二次電池用シートの製造方法。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程を含む、全固体二次電池の製造方法。
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