JPWO2019189295A1 - 水素添加石油樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一般に、ホットメルト接着剤の構成成分は、ベースポリマー、粘着付与樹脂、可塑剤、充填剤および酸化防止剤などに大別され、中でも、粘着付与樹脂は、ホットメルト接着剤の性能に大きく寄与することが知られている。
粘着付与樹脂として用いられる樹脂を大別すると、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、石油樹脂に分類されるが、最近では、紙おむつなどの衛生材料用としての需要から、相溶性や耐熱性、安全性、コストなどに優れた石油樹脂が多く使われている。
石油樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂が良く用いられているが、未水添の樹脂は色相や耐熱性に劣るため、通常、これら石油樹脂を水素添加して用いることが多い。粘着付与樹脂に求められる性質には、粘度、接着性、相溶性、耐熱性、対候性、色相、軟化点、臭気などがあるが、中でも、衛生材料用のホットメルト接着剤として用いる場合には、ベースポリマーとの相溶性と色相が、特に重要となる。
また、水素圧力を大きくすると実装置化における装置コストが増大する原因となるため、低い水素圧力での水素添加の実現も求められている。4MPaG以下の低い水素圧力で水素添加石油樹脂を製造することもこれまでに行われていたが(特許文献5)、特許文献5に開示された低水素圧力・低温度の製法では、水素添加石油樹脂の色相に改善の余地があった。
本発明の課題は、ベースポリマーとの相溶性及び色相の良好な水素添加石油樹脂を、水素圧力4MPaG以下で製造できる方法を提供することにある。
<1> ジシクロペンタジエンとビニル芳香族化合物との重合物を触媒存在下で水素添加する水素添加工程を含む、水素添加石油樹脂の製造方法であって、水素添加工程を以下の(A)〜(C)の条件で行う、方法。
(A)前記触媒の使用量が、前記重合物中の樹脂100質量部に対して0.125〜0.4質量部である
(B)反応圧力:4MPaG以下
(C)反応温度:240℃以上
<2> 前記触媒が、パラジウム系触媒又はニッケル系触媒である、<1>に記載の方法。
<3> ジシクロペンタジエンとビニル芳香族化合物との重合物が、ジシクロペンタジエンとビニル芳香族化合物とを熱重合して得られたものである、<1>又は<2>に記載の方法。
(A)前記触媒の使用量が、前記重合物中の樹脂100質量部に対して0.125〜0.4質量部である
(B)反応圧力:4MPaG以下
(C)反応温度:240℃以上
本発明の水素添加石油樹脂の製造方法としては、ジシクロペンタジエンとビニル芳香族化合物とを熱重合する工程(熱重合工程)、次いで得られた重合物を触媒存在下、上記(A)〜(C)の条件で水素添加する水素添加工程を含む方法が好ましい。必要に応じて、熱重合工程で得られた重合物から軽質分を除去し(軽質分除去工程)、溶媒を添加(溶媒添加工程)してから水素添加工程を行ってもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
熱重合工程は、ジシクロペンタジエンとビニル芳香族化合物とを熱重合する工程である。ビニル芳香族化合物としては、下記式(1)で示されるビニル芳香族化合物が挙げられる。
本発明の水素添加石油樹脂の製造方法においては、熱重合に先立ち、予備反応を行ってもよい。
予備反応としては、例えば、ジシクロペンタジエンと下記式(1)で示されるビニル芳香族化合物とを反応させ、それらの反応生成物であり下記式(2)で示されるフェニルノルボルネン誘導体を含む反応液を得る反応が挙げられる。
R1で示されるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜7のアルキル基がより好ましい。また、アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基等が挙げられる。
また、シクロアルキル基としては、炭素数3〜7のシクロアルキル基が好ましい。例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
また、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
具体的には、予め反応容器にジシクロペンタジエンを所定量仕込み、上記反応温度に加熱した後、当該温度を保持した状態で、ビニル芳香族化合物を含む液体を分割して或いは連続的に滴下して反応させることが好ましい。
240〜300℃で熱重合させることにより、適切な重合速度で反応が進行しやすくなる。重合速度の観点から、より好ましくは250〜280℃である。尚、重合時間は、好ましくは0.5〜4時間、より好ましくは1〜3時間である。
軽質分除去工程は、熱重合工程で得られた重合物から軽質分を除去する工程である。この工程により、熱重合反応物から、未反応の軽質分やオリゴマーの他、重合溶媒(使用時のみ)が除去できる。
軽質分等を除去する方法は特に限定されないが、例えば、単蒸留、フラッシュ蒸留、薄膜蒸留、分子蒸留等が挙げられる。
軽質分等を除去した後の熱重合反応物の軟化点は、通常50〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。また分子量は、Z平均分子量(Mz)が通常1200〜2600、好ましくは1400〜2400、より好ましくは1600〜2200である。
溶媒添加工程は、軽質分等を除去した熱重合反応物を溶媒に溶かし、熱重合反応物と溶媒を含む水素添加原料を得る工程である。
溶媒の使用量は、軽質分除去工程後の熱重合反応物100質量部に対して、0〜900質量部が好ましく、30〜800質量部がより好ましく、40〜700質量部が特に好ましい。
水素添加工程は、ジシクロペンタジエンとビニル芳香族化合物との重合物を触媒存在下、以下の(A)〜(C)の条件で水素添加する工程である。重合物中の二重結合に水素が添加される。
(A)前記触媒の使用量が、前記重合物中の樹脂100質量部に対して0.125〜0.4質量部である
(B)反応圧力:4MPaG以下
(C)反応温度:240℃以上
このような効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、条件(A)によって、芳香族含有率の過度な低下が抑えられてベースポリマーとの相溶性が良好となり、これに条件(C)を組み合わせることによって、水素圧力4MPaG以下でも色相が良好となるものと、本発明者らは推察する。
水素添加工程で用いる触媒の使用量は、重合物中の樹脂100質量部に対して0.125〜0.4質量部である。
触媒使用量は、所望の効果を高める点から、好ましくは0.15〜0.3質量部、より好ましくは0.15〜0.25質量部、特に好ましくは0.15〜0.2質量部である。
なお、触媒として担持触媒を用いた場合、この「触媒の使用量」は、担持された触媒と担体との合計使用量を意味する。
ニッケルや酸化ニッケルを担体に担持する場合、担持量は、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
パラジウムを担体に担持する場合、担持量は、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
水素添加工程の水素圧は、4MPaG以下である。4MPaG超の場合、実装置化における装置コストが増大し、しかも軟化点が適切な範囲になりにくい。
水素圧は、所望の効果を高める点から、好ましくは常圧〜4MPaG、より好ましくは1〜4MPaG、特に好ましくは1〜2MPaGである。
水素添加工程の反応温度は、240℃以上である。反応温度は、所望の効果を高める点から、好ましくは240〜300℃、より好ましくは245〜275℃、特に好ましくは245〜260℃である。
樹脂乾燥工程の手法に特に制限はなく、例えばフラッシュ蒸留装置や薄膜蒸発器等が好適に使用できる。乾燥条件を変更することで、軟化点の範囲を調整することができる。
また、水素添加石油樹脂の軟化点は、通常70〜150℃、好ましくは80〜140℃、より好ましくは80〜130℃、特に好ましくは90〜105℃である。また分子量は、Z平均分子量(Mz)が通常1200〜2600、好ましくは1400〜2400、より好ましくは1600〜2200である。
また、水素添加石油樹脂の芳香族含有率は、好ましくは2.5〜12.5%であり、より好ましくは5〜10%である。
また、トルエンと50/50(質量比)で混合溶解したときの水素添加石油樹脂のハーゼン色数は、好ましくは30以下である。
また、エチレン酢酸ビニル共重合体と50/50(質量比)で混合溶解したときの水素添加石油樹脂の曇点は、好ましくは37.5℃以下であり、より好ましくは35℃以下である。
これら軟化点、Z平均分子量(Mz)、芳香族含有率、ハーゼン色数、曇点は実施例と同様にして測定すればよい。
なお、原料樹脂および水素添加石油樹脂の性状、評価に関わる測定法は、以下の方法に準拠して実施した。
Z平均分子量Mzは、高速GPC装置(東ソー株式会社製、HLC−8320GPC)を用い、ポリスチレン換算値として求めた〔溶離液:テトラヒドロフラン、カラム:東ソー株式会社製G4000HXL、G3000HXL、G2000HXL(2本)を直列に連結して使用、検出器:RI、標準試料:ポリスチレン〕。
JIS K−2207(1991)に従って、環球法で測定した。
水素添加石油樹脂とエチレン酢酸ビニル共重合体(三井デュポン社製、商品名「エバフレックスEVA−210」)とを、50/50(質量比)で混合溶解させ、JIS K−2269「石油製品曇り点試験方法」に準拠して曇点を測定した。曇点が低いほど、水素添加石油樹脂とエチレン酢酸ビニル共重合体(ベースポリマー)の相溶性が高いことを示す。
重溶媒に重クロロホルムを使用し、核磁気共鳴装置(JEOL社製 FT NMR System AL400)を用いた1H−NMRスペクトルの測定結果から算出した。
水素添加石油樹脂を50質量%トルエン溶液とし、比色計(ティントメーター社製、ロビボンド・PFX195)を用いて測定した。測定値が30以下の場合に、色相(ハーゼン色数)は良好であると判断した。
(1)シクロペンタジエン系化合物とビニル芳香族系化合物の熱重合による水素添加原料の製造
内容積5Lの攪拌機付きオートクレーブに、表1で示される組成のジシクロペンタジエン留分X1(ジシクロペンタジエン濃度:74質量%)1800gを仕込み、系内を窒素で置換した。その後500rpmで撹拌しながら、4℃/分の速度で180℃まで昇温した。180℃に保持した状態で、スチレン530.9gと上記と同じ組成のジシクロペンタジエン留分X1 469.1gとの混合液を120分間かけて滴下した。滴下終了後の反応液を1.8℃/分の速度で260℃まで昇温した。その後、260℃で92分間加熱し、重合反応を行った。これにより、重合反応物1を得た。
重合反応物1の一部を分取し、ロータリーエバポレーターを用いて、温度230℃、窒素気流下で10分間処理し、未反応モノマーを除去した。次いで温度230℃、圧力6.7kPaA(Aは絶対圧力であることを示す。以下同様である。)で15分間処理し、低分子量体を一部除去して樹脂P1を得た。樹脂P1の性状を表2に示す。樹脂P1をエチルシクロヘキサンに溶解して樹脂濃度47.2質量%の樹脂溶液を調製した。この溶液を、水素添加原料1と称する。
内容積1Lの攪拌機付きオートクレーブに、上記(1)で得られた水素添加原料1を500g、パラジウム担持アルミナ触媒を0.47g仕込み、系内を水素で置換し温度250℃、水素圧力2.0MPaG(Gはゲージ圧力であることを示す。以下同様である。)、500rpmで撹拌しながら3時間水素添加反応を行った。
水素添加反応後、ロータリーエバポレーターを用いて、温度210℃、窒素気流下で20分間処理し、未反応モノマーを除去した。次いで温度210℃、圧力0kPaAで20分間処理し、低分子量体を一部除去して水素添加石油樹脂を得た。得られた樹脂の性状を表3に示す。
実施例1において、水素添加石油樹脂の製造(2)の水素圧力を1.5MPaGに変更した以外は、実施例1と同様の操作で水素添加石油樹脂を得た。樹脂の性状を表3に示す。
実施例1において、水素添加石油樹脂の製造(2)の水素圧力を3.0MPaGに変更した以外は、実施例1と同様の操作で水素添加石油樹脂を得た。樹脂の性状を表3に示す。
実施例1において、水素添加石油樹脂の製造(2)の水素圧力を4.0MPaGに変更した以外は、実施例1と同様の操作で水素添加石油樹脂を得た。樹脂の性状を表3に示す。
(1)シクロペンタジエン系化合物とビニル芳香族系化合物の熱重合による水素添加原料の製造
内容積5Lの攪拌機付きオートクレーブに、表1で示される組成のジシクロペンタジエン留分X1(ジシクロペンタジエン濃度:74質量%)を864.9g、キシレンを935.1g仕込み、系内を窒素で置換した。その後500rpmで撹拌しながら、4℃/分の速度で260℃まで昇温した。260℃に保持した状態で、スチレン454.9gとキシレン545.1gとの混合液を120分間かけて滴下した。その後、引き続き260℃で180分間加熱し、重合反応を行った。これにより、重合反応物2を得た。
重合反応物2の一部を分取し、ロータリーエバポレーターを用いて、温度230℃、窒素気流下で15分間処理し、未反応モノマーを除去した。次いで温度230℃、圧力6.7kPaAで10分間処理し、低分子量体を一部除去して樹脂P2を得た。樹脂P2の性状を表2に示す。樹脂P2をエチルシクロヘキサンに溶解して樹脂濃度47.2質量%の樹脂溶液を調製した。この溶液を、水素添加原料2と称する。
内容積1Lの攪拌機付きオートクレーブに上記(1)で得られた水素添加原料2を500g、ニッケル担持シリカアルミナ触媒を0.35g仕込み、系内を水素で置換し、温度250℃、水素圧力2.0MPaG、500rpmで撹拌しながら5時間水素添加反応を行った。
水素添加反応後、ロータリーエバポレーターを用いて、温度210℃、窒素気流下で20分間処理し、未反応モノマーを除去した。次いで温度210℃、圧力0kPaAで20分間処理し、低分子量体を一部除去して水素添加石油樹脂を得た。得られた樹脂の性状を表3に示す。
実施例5において、ニッケル担持シリカアルミナ触媒の量を0.47gに変更した以外は、実施例5と同様の操作で水素添加石油樹脂を得た。樹脂の性状を表3に示す。
実施例5において、ニッケル担持シリカアルミナ触媒の量を0.59gに変更した以外は、実施例5と同様の操作で水素添加石油樹脂を得た。樹脂の性状を表3に示す。
実施例5において、ニッケル担持シリカアルミナ触媒の量を1.18gに変更した以外は、実施例5と同様の操作で水素添加石油樹脂を得た。樹脂の性状を表3に示す。
実施例5において、水素添加石油樹脂の製造(2)の反応温度を230℃に変更した以外は、実施例5と同様の操作で水素添加石油樹脂を得た。樹脂の性状を表3に示す。
実施例5において、ニッケル担持シリカアルミナ触媒の量を0.24gに変更した以外は、実施例5と同様の操作で水素添加石油樹脂を得た。樹脂の性状を表3に示す。
Claims (3)
- ジシクロペンタジエンとビニル芳香族化合物との重合物を触媒存在下で水素添加する水素添加工程を含む、水素添加石油樹脂の製造方法であって、水素添加工程を以下の(A)〜(C)の条件で行う、方法。
(A)前記触媒の使用量が、前記重合物中の樹脂100質量部に対して0.125〜0.4質量部である
(B)反応圧力:4MPaG以下
(C)反応温度:240℃以上 - 前記触媒が、パラジウム系触媒又はニッケル系触媒である、請求項1に記載の方法。
- ジシクロペンタジエンとビニル芳香族化合物との重合物が、ジシクロペンタジエンとビニル芳香族化合物とを熱重合して得られたものである、請求項1又は2に記載の方法。
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