JPWO2019155721A1 - 食品包装用ラップフィルム - Google Patents

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Abstract

優れた密着性及びカット性と加工性を併せ持った単層構造や多層構造の食品包装用ラップフィルムを提供する。ポリエチレン系樹脂を主成分として押出成形された単層又は多層のフィルム本体を、巻芯にロール状に巻き付けて収納箱に収納し、収納箱から引き出したフィルム本体がカット刃で切断される食品包装用ラップフィルムであって、フィルム本体の少なくとも表面部は、メルトフローレートが10未満である第一の低密度ポリエチレンと、メルトフローレートが20以上で且つ密度が0.915〜0.926g/cm3である第二の低密度ポリエチレンと、常温で液状の粘着性成分と、を含む。

Description

本発明は、巻芯にロール状に巻き付けて収納箱に収納された単層構造や多層構造のフィルム本体を、収納箱から引き出されカット刃により切断して使用する食品包装用ラップフィルムに関する。
従来、単層構造の食品包装用ラップフィルムとして、高圧重合法によって得られる低密度ポリエチレン(密度0.910〜0.935g/cm3)の中から、密度0.926〜0.935g/cm3、好ましくは0.928〜0.935g/cm3の低密度ポリエチレンを、酸化防止剤および防曇剤を添加することなく、T−ダイからフィルム状に押出し、このフィルム状物を冷却ロールに接触させ、かつエアーナイフにより均一に空気を吹きつけることによりフィルム表面を平滑にしたラップフィルムの製造法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、多層構造の食品包装用ラップフィルムとして、外層及び内層が密度0.92〜0.94g/cm3でMFRが4以上の低密度ポリエチレン95〜50重量部と密度0.91g/cm3以下の超低密度線状ポリエチレン5〜50重量部からなる樹脂組成物からなり、中間層がMFR15以上のポリプロピレン樹脂組成物からなるラップフィルムがある(例えば、特許文献2参照)。
特開昭61−100432号公報 特開平07−148898号公報
しかし乍ら、特許文献1のような低密度ポリエチレンからなる単層構造のラップフィルムは、ポリ塩化ビニルなどからなるフィルムに比べ伸びる性質を持っているため、カット刃によるフィルムの切断が困難でカット性に劣り使用勝手が悪いという問題があった。
さらに密度0.926g/cm3以上の低密度ポリエチレンからなるラップフィルムは、粘着力が不十分であり、アルミニウム製やプラスチック製の容器などに対しては貼り付き難く、密着性に劣って剥がれ易いという問題があった。
また特許文献2のような多層構造のラップフィルムでは、外層及び内層が低密度ポリエチレンと密度0.91g/cm3以下の超低密度線状ポリエチレンからなるため、内層及び外層の粘着性が低くて容器などに接着した際に、現在多く使用されているポリ塩化ビニリデン系樹脂やポリ塩化ビニル系樹脂を主要材料とした家庭用ラップフィルムに比べて、密着性が悪く剥がれ易い。
これにより、食品が入った容器の開口部分に貼り付けたとしても、食品と外気の遮断が不十分であるため、冷蔵保存中や冷凍保存中に食品の水分が蒸発して、食品の乾燥による臭い移りや冷凍焼けが発生したり、酸素が侵入することによる油脂の酸化による変質により、保存中の食品の味や風味を長期に亘って保つことができないという問題があった。
そこで、このような問題を解決するために、内層及び外層の粘着力を高め、巻芯にフィルム本体をロール状に巻き付けて、その内層の表面が対向する外層の表面に重ね合わされた場合には、重なり合う内層の表面と外層の表面が互いに密着してしまい、巻芯からフィルム本体を引き出す際に、内層の表面が対向する外層の表面からスムーズに剥がれず、収納箱からフィルム本体を引き出すことが困難になる。
さらに、カット刃によるフィルム本体の切断が困難でカット性に劣り、使用勝手が悪いという問題があった。
なお、食品包装用ラップフィルムでは、密着性やカット性以外にもT−ダイ成形などによる加工性が重要な条件である。
このような状況下で、優れたカット性及び密着性と加工性を併せ持った単層構造や多層構造の食品包装用ラップフィルムが要望されている。
このような課題を達成するために、本発明に係る食品包装用ラップフィルムは、以下の独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
[請求項1] ポリエチレン系樹脂を主成分として押出成形された単層又は多層のフィルム本体を、巻芯にロール状に巻き付けて収納箱に収納し、前記収納箱から引き出した前記フィルム本体がカット刃で切断される食品包装用ラップフィルムであって、
前記フィルム本体の少なくとも表面部は、メルトフローレートが10未満である第一の低密度ポリエチレンと、メルトフローレートが20以上で且つ密度が0.915〜0.926g/cm3である第二の低密度ポリエチレンと、常温で液状の粘着性成分と、を含むことを特徴とする食品包装用ラップフィルム。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る食品包装用ラップフィルムは、そのフィルム本体が巻芯にロール状に巻き付けられるとともに、この巻き付け状態で収納箱に収納され、収納箱からフィルム本体を所定長さ引き出してカット刃で切断することにより、食品が入った容器の開口部を覆うか、又は食品に直接巻き付けてラップ包装するために用いられるものである。
このフィルム本体は、ポリエチレン系樹脂を主成分として、インフレーション成形やT−ダイ成形などの押出機を用いた押出成形により、所定の厚みの単層構造か、又は多層構造に形成される。フィルム本体が多層構造の場合には、内層、中間層及び外層の三層構造であっても良いし、中間層を多層にして四層以上の層構造にしてもよい。
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係る食品包装用ラップフィルムは、フィルム本体の少なくとも表面部が、主成分となる第一の低密度ポリエチレンと、第二の低密度ポリエチレンと、粘着性成分と、をそれぞれ所定の比率で含んでいる。さらに、その他に第三の低密度ポリエチレンなどを所定の比率で含むことも可能である。
すなわち、フィルム本体が単層構造(単層フィルム)である場合には、フィルム本体の全体が第一の低密度ポリエチレンを主成分としており、フィルム本体が多層構造(多層フィルム)である場合には、フィルム本体の表裏両面に露出する内層及び外層が第一の低密度ポリエチレンを主成分としている。
[第一の低密度ポリエチレンについて]
第一の低密度ポリエチレンとは、メルトフローレート(MFR、JIS K7210−1に準拠し、ポリエチレンの標準条件である試験温度190℃、試験荷重21.18Nで試験)が10未満、好ましくは1〜8のLDPEである。第一の低密度ポリエチレンの密度(比重)は、0.926g/cm3(0.926)以上、詳しくは0.926〜0.935g/cm3(0.926〜0.935)、更に詳しくは0.927〜0.932g/cm3(0.927〜0.932)であることが好ましい。
第一の低密度ポリエチレンとしては、高圧法で製造された長鎖分岐を持つ高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE)が挙げられ、短い側鎖分岐を導入した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE:線状低密度ポリエチレン)は含まれない。
さらに、第一の低密度ポリエチレンとしては、JIS K7127規格に準拠した引張試験で降伏(破断)時の伸びが400%以上のLDPEであることが好ましい。なお、JIS K7127試験条件は、試験片タイプ2、速度500mm/minである。
[第二の低密度ポリエチレンについて]
第二の低密度ポリエチレンとは、MFRが20以上、好ましくは30〜60のLDPEである。第二の低密度ポリエチレンの密度(比重)は、第一の低密度ポリエチレンの密度よりも小さい0.926g/cm3(0.926)以下、詳しくは0.915〜0.926g/cm3(0.915〜0.926)、更に詳しくは0.916〜0.925g/cm3(0.916〜0.925)であることが好ましい。
第二の低密度ポリエチレンとしては、第一の低密度ポリエチレンと同様に、HP−LDPEが挙げられ、LLDPEは含まれない。
さらに、第二の低密度ポリエチレンとしては、JIS K7127規格に準拠した引張試験で降伏(破断)時の伸びが350%以下のLDPEであることが好ましい。
なお、第二の低密度ポリエチレンのようなMFRが20以上のLDPEは、MFRの値が大きいほど溶融時の流動性や加工性は良好とされるものの、引張り強さなどは低下するため、押出機を用いたフィルム成形には使われていない。
そこで、押出機を用いたフィルム成形において、MFRが10未満のLDPEに対しMFRが20以上のLDPEを添加すると、フィルムの強度をカット刃で切れ易い適度なレベルまで低下可能となるとともに、加工性が低下しない適度なレベルまで維持可能なことを見出した。
[粘着性成分について]
粘着性成分とは、常温雰囲気において液状であり、第一の低密度ポリエチレンや第二の低密度ポリエチレンと相溶性のある粘着性調整剤や粘着付与剤などが用いられる。
粘着性調整剤としては、アジピン酸ジオクチル(DOA)の一種であるアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHA)やアジピン酸ジイソデシル(DIDA)などのアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、エポキシ化亜麻仁油やエポキシ化大豆油などのエポキシ化植物油、アセチル化モノグリセライドなどが挙げられる。
粘着付与剤は、タッキファイヤーとも呼ばれる樹脂であり、エラストマーに添加されることで、エラストマーと相溶して粘着機能(タック)を付与させる配合剤である。
粘着付与剤としては、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂)や脂肪族系石油樹脂や芳香族系石油樹脂やC5系石油樹脂などの石油樹脂、テルペン樹脂水素化物(水添テルペン樹脂)などのテルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂(クマロン−インデン樹脂)、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加樹脂中の少なくとも一種の樹脂などが挙げられる。
[その他の成分について]
その他の成分としては、MFRが10未満であるポリエチレンを含むことも可能である。
その他の成分となるMFR10未満のポリエチレンは、比重(密度)が限定されず、前述した第二の低密度ポリエチレンと重複してもよい。
また、その他の成分としては、MFRが10以下、好ましくは1〜8である第三の低密度ポリエチレンを含むことも可能である。
第三の低密度ポリエチレンは、密度が0.926g/cm3(比重が0.926)未満、詳しくは密度が0.924〜0.916g/cm3(比重が0.924〜0.916)のポリエチレンであることが好ましい。
MFR10未満のポリエチレンとしては、HP−LDPEやLLDPEが含まれる。
[配合割合について]
フィルム本体(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)に含まれる各成分の配合量(部数)は、各成分の合計が100重量部(重量%)となるように表している。
フィルム本体(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)の配合量(配合比率)は、各成分の合計100重量%に対して、主成分となる第一の低密度ポリエチレンが50〜96.5重量%、好ましくは50〜90重量%に設定される。第二の低密度ポリエチレンは、3〜45重量%、好ましくは5〜20重量%に設定される。粘着性成分は、0.5〜5重量%、好ましくは1〜4重量%に設定される。その他の成分は、0〜30重量部に設定される。
また、その他の成分として第三の低密度ポリエチレンを含む場合の配合量は、第三の低密度ポリエチレンが5〜30重量%、好ましくは8〜20重量%に設定される。
第三の低密度ポリエチレンの配合に伴って、第一の低密度ポリエチレンの配合量は、50〜91.5重量%、好ましくは55〜86.5重量%に設定することが好ましい。
[多層フィルムの中間層について]
中間層は、フィルム本体のカット性を高めることができ、これに加えてフィルム本体の耐熱温度を高くするため、ポリプロピレンを主成分とする層にし、且つフィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を所定値に設定している。
ポリプロピレン(PP)としては、ホモPP(ホモポリマー)、ランダムPP(ランダムコポリマー)、ブロックPP(ブロックコポリマー)などが挙げられる。これらの中から、主としてフィルム本体のカット性を高めるために、MFR(JIS K7210−1に準拠し、ポリプロピレンの標準条件である試験温度230℃、試験荷重21.18Nで試験)が10〜30、詳しくは15〜25のホモPP又はランダムPPのいずれか一方か若しくは両方を用いることが好ましい。ホモPP及びランダムPPは透明性に優れ、柔軟性の点でランダムPPが更に優れる。
中間層の厚みは、内層と中間層と外層の層比を約3:1:3〜3:2:3に設定して、フィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を約35%以下、詳しくは約30%以下にすることが望ましい。
また、中間層の硬さコントロールや加工性の改良のため、軟化剤として2種以上のα−オレフィン(エチレンを含む)のランダム共重合体、ポリエチレン系熱可塑性エラストマーなどのオレフィン系エラストマーを添加することも可能である。オレフィン系エラストマーには、フィルムの硬さとカット性のバランスを調整する効果があり、より柔らかなフィルムでも良好なカット性を与えることができる。これらの中からランダム共重合体を用いることが好ましい。
中間層に含まれる他の成分としては、粘着付与剤として水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂)や、低密度ポリエチレンなどを含むことも可能である。
中間層に含まれる各成分の配合量(部数)は、各成分の合計が100重量部(重量%)となるように表している。
中間層の配合量(配合比率)は、各成分の合計100重量%に対して、主成分となるMFRが15以上のホモPPが60〜95重量%、好ましくは70〜90重量%に設定される。オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)は、5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%に設定される。水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂)などは、0.5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%に設定される。
[製造方法について]
そして、フィルム本体の製造方法としては、T−ダイを用いた押出機によるT−ダイ成形やサークルダイを用いた押出機によるインフレーション成形などの押出成形で、所定の厚みにフィルム化され、更に冷却することにより製品化される。
なお、フィルム本体の成形時には各樹脂層に必要に応じて各種の添加剤を通常の量で配合させることができる。
さらに、フィルム本体全体の厚さは、柔軟で破れ難くするために約5〜20μmとすることが好ましく、特に8〜15μm程度が最も好ましい。
また、フィルム本体を巻芯に対して巻き付ける際の巻き付け方向としては、巻芯の外表面と対向する内側が内層又は外層となるように配置する。
このような本発明の実施形態に係る食品包装用ラップフィルムによると、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)として、MFR10未満の第一の低密度ポリエチレンと、MFR20以上で且つ密度0.915〜0.926g/cm3の第二の低密度ポリエチレンと、常温で液状の粘着性成分が含まれた材料とを、押出機でフィルム成形(押出成形)する。これにより、フィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)の粘着性が向上する。
さらに第二の低密度ポリエチレンの添加でフィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)が全体的に柔らかくなるものの必要以上に強度が低下しない。このため、フィルム本体がカット刃で全体的に切断し易くなる。
また第一の低密度ポリエチレンに対する第二の低密度ポリエチレンの添加量を調整することにより、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)が必要以上に柔らかくならず、T−ダイ成形やインフレーション成形などの押出成形時における加工性が低下しない。
したがって、優れた密着性及びカット性と加工性を併せ持った単層構造や多層構造の食品包装用ラップフィルムを提供することができる。
その結果、密度が0.926g/cm3以上の高圧重合法低密度ポリエチレンのみで添加剤を含まずに押出成形される単層構造のラップフィルムや、外層及び内層が低密度ポリエチレンと密度0.91g/cm3以下の超低密度線状ポリエチレンからなる多層構造のラップフィルムに比べ、食器として用いられるガラス製や陶器製又はポリカーボネートなどのプラスチック製の容器などに対し、フィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)を確実に貼り付けることができて、密着性が良くなって剥がれ難くなる。このため、容器内の食品と外気を確実に遮断して、食品の水分が蒸発し難くなり、食品の乾燥による臭い移りや冷凍焼けを防ぎ、保存中の食品の味や風味をしっかり長期に亘って保つことができる。
さらに収納箱から引き出されたラップフィルムをカット刃で容易に切断できて使用勝手が向上する。
これに加えて、塩化ビニル樹脂(PVC)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)を主成分とした食品包装用ラップフィルムのように、廃棄物の焼却に伴ってダイオキシンが発生しないため、安全性に優れる。
特に、第二の低密度ポリエチレンの密度は、第一の低密度ポリエチレンの密度よりも小さいことが好ましい。
この場合には、密度が高い第一の低密度ポリエチレンに対して密度が小さい第二の低密度ポリエチレンを添加することにより、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)における低密度ポリエチレンの全体的な密度が低下する。
このため、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)の剛性が、密度に比例して低くなる。
これに伴い、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)が全体的に柔らかくなって、容器などに対する貼り合わせ時に変形し易くなる。
したがって、容器などに対するフィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)の密着性を向上させることができる。
その結果、使用勝手の更なる向上が図れる。
さらに、第二の低密度ポリエチレンの伸び率は、第一の低密度ポリエチレンの伸び率よりも低いことが好ましい。
この場合には、伸び率が高い第一の低密度ポリエチレンに対して伸び率が低い第二の低密度ポリエチレンを添加することにより、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)における伸びる性質がカット刃で切断し易いレベルまで低下する。
したがって、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)におけるカット性を更に向上させることができる。
その結果、使用勝手の更なる向上が図れる。
また、フィルム本体の少なくとも表面部が、その他の成分として、メルトフローレートが10以下で且つ第一の低密度ポリエチレンの密度よりも密度が小さい第三の低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
この場合には、MFR及び密度が高い第一の低密度ポリエチレンに対し、第二の低密度ポリエチレンに加えてMFR及び密度が小さい第三の低密度ポリエチレンを添加することにより、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)における低密度ポリエチレンの全体的なMFRと密度が更に低下する。
このため、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)の剛性が、MFRや密度に比例して更に低くなる。
これに伴い、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)が全体的により柔らかくなって、容器などに対する貼り合わせ時に変形し易くなる。
したがって、容器などに対するフィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)の密着性を更に向上させることができる。
その結果、使用勝手の著しい向上が図れる。
加えて、フィルム本体が単層フィルムである場合には、以下の成分の合計100重量%に対して、MFR10未満の第一の低密度ポリエチレンが50〜96.5重量%と、MFR20以上の第二の低密度ポリエチレンが3〜45重量%と、常温で液状の粘着性成分が0.5〜5重量%と、を含むことが好ましい。
この場合には、第一の低密度ポリエチレンが50〜96.5重量%に対する第二の低密度ポリエチレンの添加量が3重量%未満であると、単層フィルムの強度がカット刃で切れ易いレベルまで低下しない。第二の低密度ポリエチレンの添加量が45重量%を越えると、単層フィルムが必要以上に柔らかくなってインフレーション成形やT−ダイ成形などの押出成形時における加工性が低下する。
このため、第一の低密度ポリエチレンが50〜96.5重量%に対する第二の低密度ポリエチレンの添加量を3〜45重量%にすることで、単層フィルムが全体的に柔らかくなるものの必要以上に強度が低下せず、カット刃で全体的に切断し易くなるとともに、単層フィルムの全体が必要以上に柔らかくならず、T−ダイ成形やインフレーション成形などの押出成形時における加工性が低下しない。
また第一の低密度ポリエチレン及び第二の低密度ポリエチレンに対する粘着性成分の添加量を0.5〜5重量%に添加することで、単層フィルムの表裏両面の粘着性が向上する。
したがって、更に優れたカット性及び加工性と密着性を併せ持った単層構造の食品包装用ラップフィルムを提供することができる。
加えて、フィルム本体が少なくとも内層、中間層及び外層を有する三層以上の多層フィルムである場合には、内層及び外層が、MFR10未満の第一の低密度ポリエチレンと、MFR20以上の第二の低密度ポリエチレンと、常温で液状の粘着性成分と、を含み、中間層は、MFR10〜30のポリプロピレンを主成分とした層で且つ層比がフィルム本体の35%以下であることが好ましい。
この場合には、内層及び外層に対する中間層の層比がフィルム本体の35%を越えると、多層フィルムが全体的に柔軟性が劣り、容器などの表面形状に沿って内層及び外層の表面が変形し難くなるとともに、カット刃で多層フィルムが全体的に切断し易くなる。
このため、内層及び外層に対する中間層の層比を多層フィルムの35%以下にすることにより、多層フィルムが全体的に柔らかくなって、容器などの表面形状に沿った内層及び外層の表面の変形が可能になる。これと同時に多層フィルムが全体的に柔らかくなるものの必要以上に強度が低下せず、カット刃で全体的に切断し易くなる。
したがって、更に優れた密着性及びカット性を併せ持った多層構造の食品包装用ラップフィルムを提供することができる。
以下に、本発明の実施例を説明する。
[実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14]
表1に示す実施例1〜8と表2に示す比較例1〜6は、それらに記載された成分をそれぞれの割合で混合し、単層構造のフィルム本体として単層フィルムの全体の厚みが10μmとなるように押出成形した食品包装用ラップフィルムである。
表3に示す実施例11〜20と表4に示す比較例11〜14は、それらに記載された成分をそれぞれの割合で混合し、多層構造のフィルム本体として内層、中間層及び外層の三層フィルムの全体の厚みが10μmとなるように押出成形した食品包装用ラップフィルムである。
そして、実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14として同じサイズの評価試料をそれぞれ作製した。
[単層フィルムの実施例1〜8及び比較例1〜6について]
実施例1〜8では、第一の低密度ポリエチレンとしてMFRが5.0で密度が0.931g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)か、又はMFRが1.0で密度が0.928g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1b)のいずれかを主成分にしており、共通の構成にしている。第二の低密度ポリエチレンとしては、MFRが35で密度が0.924g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)か、又はMFRが20で密度が0.919g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2b)か、若しくはMFRが60で密度が0.916g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2c)のいずれかを添加しており、共通の構成にしている。
さらに実施例1,3〜8では、第三の低密度ポリエチレンとしてMFRが5.0で密度が0.922g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_3)を添加しており、共通の構成にしている。
また比較例1,3〜5では、HP−LDPE_1aを主成分にしており、共通の構成にしている。比較例2〜6では、HP−LDPE_2aやHP−LDPE_3や、MFRが3.8で密度が0.918g/cm3であるポリエチレン(LLDPE)を添加している。
これに加えて実施例1〜4,6〜8及び比較例1〜6では、粘着性成分としてアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHA)が1.0重量%と、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)が0.5重量%と、エポキシ化大豆油が0.5重量%を添加しており、共通の構成にしている。
実施例1,3〜8では、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が2重量%を添加しており、共通の構成にしている。
実施例1では、HP−LDPE_1aが81重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが5重量%の混合樹脂になっている。
実施例2では、HP−LDPE_1aが88重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。
実施例3では、HP−LDPE_1aが66重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。
実施例4では、HP−LDPE_1aが66重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが20重量%の混合樹脂になっている。
実施例5では、HP−LDPE_1aが81重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが5重量%の混合樹脂になっている。さらに粘着性成分としてアセチル化モノグリセライドが1.5重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が0.5重量%を添加している。
実施例6では、HP−LDPE_1aが76重量%と、HP−LDPE_3が5重量%と、HP−LDPE_2bが10重量%と、その他の成分(ポリエチレン)としてMFRが3.8で密度が0.918g/cm3のLLDPEが5重量%の混合樹脂になっている。
実施例7では、HP−LDPE_1aが81重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2cが5重量%の混合樹脂になっている。
実施例8では、HP−LDPE_1bが66重量%を主成分にし、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。
一方、比較例1では、HP−LDPE_1aが98重量%を主成分にしている。
比較例2では、HP−LDPE_3が98重量%を主成分にしている。
比較例3では、HP−LDPE_1aが68重量%と、HP−LDPE_3が30重量%の混合樹脂になっている。
比較例4では、HP−LDPE_1aが88重量%と、その他の成分としてポリエチレン(LLDPE)が10重量%の混合樹脂になっている。
比較例5では、HP−LDPE_1aが78重量%と、その他の成分としてポリエチレン(LLDPE)が20重量%の混合樹脂になっている。
比較例6では、HP−LDPE_1aが30重量%と、HP−LDPE_3が33重量%と、HP−LDPE_2aが35重量%の混合樹脂になっている。
[多層(三層)フィルムの実施例11〜20及び比較例11〜14について]
実施例11〜20及び比較例11〜14における内層及び外層は、第一の低密度ポリエチレンとしてHP−LDPE_1aか、又はHP−LDPE_1bか、若しくはMFRが2.0で密度が0.928g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1c)のいずれかを主成分にしており、共通の構成にしている。第二の低密度ポリエチレンとしては、HP−LDPE_2aか、又はMFRが35で密度が0.916g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2d)のいずれかを添加しており、共通の構成にしている。粘着性成分としては、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHA)が1.0重量%と、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)が0.5重量%と、エポキシ化大豆油が0.5重量%を添加しており、共通の構成にしている。
実施例11〜20及び比較例14における中間層は、MFRが15以上のPP(ホモPP)を主成分としており、共通の構成にしている。
さらに、実施例11,13〜20及び比較例11,12では、内層と中間層と外層の層比が3:2:3であり、フィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を25%にしており、共通の構成にしている。
詳しく説明すると、実施例11の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが83重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが5重量%の混合樹脂になっている。実施例11の中間層では、MFR15以上のPP(ホモPP)が80重量%と、オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)が20重量%の混合樹脂になっている。
実施例12の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが88重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。実施例12の中間層では、MFR15以上のPP(ホモPP)が90重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が10重量%の混合樹脂になっている。実施例12の内層と中間層と外層の層比は、3:1:3であり、フィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を14.3%にしている。
実施例13の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが68重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。実施例13の中間層では、MFR15以上のPP(ホモPP)が70重量%と、オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)が20重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が10重量%の混合樹脂になっている。
実施例14の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが68重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが20重量%の混合樹脂になっている。実施例14の中間層では、MFR15以上のPP(ホモPP)が80重量%と、オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)が10重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。
実施例15の内層及び外層では、主成分となるMFRが2.0で密度が0.931g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1b)が68重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。実施例15の中間層では、実施例14の中間層と同じ混合樹脂になっている。
実施例16の内層及び外層では、主成分となるMFRが2.0で密度が0.928g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1c)が83重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが5重量%の混合樹脂になっている。実施例15の中間層では、実施例11の中間層と同じ混合樹脂になっている。
実施例17の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが68重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、MFRが35で密度が0.916g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2d)が10重量%の混合樹脂になっている。実施例17の中間層では、実施例13の中間層と同じ混合樹脂になっている。
実施例18の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが67重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が1重量%の混合樹脂になっている。実施例18の中間層では、実施例13の中間層と同じ混合樹脂になっている。
実施例19の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが65重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が3重量%の混合樹脂になっている。実施例19の中間層では、実施例13の中間層と同じ混合樹脂になっている。
実施例20の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが61重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が7重量%の混合樹脂になっている。実施例20の中間層では、実施例13の中間層と同じ混合樹脂になっている。
一方、比較例11〜14の内層及び外層では、実施例11の内層及び外層と同じ混合樹脂になっている。比較例11の中間層では、MFR15未満のPP(ランダムPP)が80重量%と、オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)が20重量%の混合樹脂になっている。
比較例12の中間層では、MFR15未満のPP(ホモPP)が80重量%と、オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)が20重量%の混合樹脂になっている。
比較例13の中間層では、MFR15未満のPP(ホモPP)が90重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が10重量%の混合樹脂になっている。比較例13の内層と中間層と外層の層比は、フィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を14.3%にしている。
比較例14の中間層では、実施例11の中間層と同じ混合樹脂になっている。比較例14の内層と中間層と外層の層比は、3:4:3であり、フィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を40%にしている。
[実施例及び比較例で使用した材料について]
MFRが5.0で密度が0.931g/cm3である第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)の具体例としては、住友化学社製のCE3506が該当する。
MFRが1.0で密度が0.928g/cm3である第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1b)の具体例としては、NUC社製のNUC8230が該当する。
MFRが2.0で密度が0.928g/cm3である第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1c)の具体例としては、住友化学社製のF238−1が該当する。
MFRが35で密度が0.924g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ3524が該当する。
MFRが20で密度が0.919g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2b)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ2522が該当する。
MFRが60で密度が0.916g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2c)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ6016が該当する。
MFRが35で密度が0.916g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2d)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ3519が該当する。
MFRが5.0で密度が0.922g/cm3である第三の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_3)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のF522Nが該当する。
DEHAの具体例としては、ジェイ・プラス社製のDEHAが該当する。
ATBCの具体例としては、ジェイ・プラス社製のATBCが該当する。
エポキシ化亜麻仁油の具体例としては、ADEKA社製のO−180Aが該当する。
MFRが15以上のホモPPの具体例としては、プライムポリマー社製の「プライムポリプロ(登録商標)」Y−2000GV(MFRが20)が該当する。
MFRが15未満のホモPPの具体例としては、日本ポリプロ社製の「ノバテック(登録商標)PP」FY6(MFRが2.5)が該当する。
MFRが15未満のランダムPPの具体例としては、住友化学社製の「ノーブレン(登録商標)」FH331(MFRが3.0で融点が143℃)が該当する。
オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)の具体例としては、住友化学製の「タフセレン(登録商標)」T3732(非結晶性ポリプロピレンを主とする特殊ポリプロピレン系エラストマー)が該当する。
水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)の具体例としては、荒川化学工業社製のアルコンP−125が該当する。
[評価基準]
表1〜表4に示される評価結果(容器との粘着性1、容器との粘着性2、フィルム本体のカット性、フィルム本体の解反性、フィルム本体の加工性、フィルム本体の耐熱温度、総合評価)は、以下の指標に基づくものである。
「容器との粘着性1」は、ガラスや陶器からなる容器などに対するフィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)の粘着力を確認するための試験である。実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14の各評価試料を、容器を構成するガラス製や陶器製の平滑面に接触するように貼り付けて圧着させ、貼り付け直後から所定時間内に剥がす試験を行った。その試験結果を四段階で評価した。
この「容器との粘着性1」の評価結果において、◎:粘着力が非常に強い、○:粘着力が強い、△:粘着力がやや弱い、×:粘着力が弱い、のように評価した。
「容器との粘着性2」は、ポリカーボネートなどのプラスチックからなる容器などに対するフィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)の粘着力を確認するための試験である。実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14の各評価試料を、容器を構成するポリカーボネート製の平滑面に接触するように貼り付けて圧着させ、貼り付け直後から所定時間内に剥がす試験を行った。その試験結果を五段階で評価した。
この「容器との粘着性2」の評価結果において、◎:粘着力が非常に強い、○:粘着力が強い、○△:粘着力が強くないものの許容範囲内、△:粘着力がやや弱い、×:粘着力が弱い、のように評価した。
「フィルム本体のカット性」は、カット刃によるフィルム本体の切れ味を確認するための試験であり、実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14の各評価試料を、巻芯にロール状に巻き付けてカット刃で切断する試験を行った。その試験結果を三段階で評価した。
この「フィルム本体のカット性」の評価結果において、○:カットし易い、△:ややカットし難い、×:カットし難い、のように評価した。
「フィルム本体の解反性」は、巻物からフィルム本体を引き出す時の剥離状況を確認するための試験であり、実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14の各評価試料を、巻芯にロール状に巻き付け、巻芯から引き出して剥がす試験を行った。その試験結果を三段階で評価した。
この「フィルム本体の解反性」の評価結果において、○:スムーズに剥がれる、×:スムーズに剥がれない、△:どちらとも言えない、のように評価したと評価した。
「フィルム本体の加工性」は、T−ダイ成形やインフレーション成形の押出しによるフィルム成形に適しているか否かを確認するための試験であり、実施例1〜7,11〜14,17〜20及び比較例1〜6,11〜14の各評価試料を、T−ダイを用いた押出機でT−ダイ成形する試験を行った。実施例8,15,16の評価試料は、サークルダイを用いた押出機でインフレーション成形する試験を行った。その試験結果を三段階で評価した。
この「フィルム本体の加工性」の評価結果において、◎:フィルム成形に優れている、○:フィルム成形に適している、×:フィルム成形に適していない、のように評価した。
「フィルム本体の耐熱温度」は、東京都消費生活条例ラップ(食品包装用ラップフィルム)品質表示実施要領に準じて測定した。
「総合評価」とは、前述した「容器との粘着性1」「容器との粘着性2」「フィルム本体のカット性」「フィルム本体の解反性」「フィルム本体の加工性」「フィルム本体の耐熱温度」の評価結果に基づいて総合的に四段階で評価した。
この「総合評価」の評価結果において、◎:最良、○:良、△:やや不向き、×:不向き、のように評価した。
Figure 2019155721
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Figure 2019155721
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[評価結果]
単層フィルムの実施例1〜8及び比較例1〜6、並びに多層(三層)フィルムの実施例11〜20及び比較例11〜14をそれぞれ比較すると、単層フィルムの実施例1〜8と多層(三層)フィルムの実施例11〜20は、容器との粘着性1、容器との粘着性2、フィルム本体のカット性、フィルム本体の解反性、フィルム本体の加工性、フィルム本体の耐熱温度、総合評価の全てにおいて良好な評価結果が得られている。
この評価結果から明らかなように、単層フィルムの実施例1〜8と多層(三層)フィルムの実施例11〜20は、優れた密着性及びカット性と加工性を併せ持った食品包装用ラップフィルムであることが実証できた。
耐熱温度の評価結果では、単層フィルムの実施例1〜8の耐熱温度が、すべて110℃であり、市販のポリエチレン(PE)製ラップフィルムと同等であった。これに比べて多層(三層)フィルムの実施例11〜20の耐熱温度は、すべて130℃であり、市販のPE製ラップフィルムの耐熱温度(110℃)よりも高くなった。
しかし、これに対して、単層フィルムの比較例1〜6と多層(三層)フィルムの比較例11〜14は、容器との粘着性1、容器との粘着性2、フィルム本体のカット性、フィルム本体の解反性、フィルム本体の加工性のいずれかで不良な評価結果になっている。
詳しく説明すると、単層フィルムの比較例1は、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)の添加量が96.5重量%を越えるものの、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に対する第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が絶対的に不足するため、容器との粘着性2(ポリカーボネート製の容器)で不良な評価結果になった。
比較例2は、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に代えて第三の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_3)を添加しても、第三の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_3)に対する第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が絶対的に不足するため、フィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。
比較例3は、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に対する第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が絶対的に不足するため、容器との粘着性2とフィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。
比較例4は、第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)に代えてポリエチレン(LLDPE)を添加しても、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に対する第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が絶対的に不足するため、容器との粘着性2とフィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。
比較例5は、第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)に代えてポリエチレン(LLDPE)の添加量を増やしても、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に対する第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が絶対的に不足するため、フィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。
比較例6は、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に対して第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が相対的に過剰となるため、フィルム本体の加工性(T−ダイ成形)で不良な評価結果になった。
なお、前述した比較例1〜6では示さなかったが、フィルム本体(単層フィルムの全体)が、ポリオレフィン(PO)を主成分とした比較例についても、同様に評価を行った。
その試験結果として、ポリオレフィン(PO)を主成分とした比較例は、容器との粘着性1や粘着性2で不良な評価結果になり、容器との密着性に劣ることが分かった。
また多層(三層)フィルムの比較例11は、中間層の主成分となるPP(ランダムPP)のMFRが3.0であり、目標とするMFR10〜30よりも大幅に低いため、多層(三層)フィルムが全体的に硬くなり、フィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。さらに比較例11は、耐熱温度が120℃で他に比べて低かった。
比較例12は、中間層の主成分となるPP(ホモPP)のMFRが2.5であり、目標とするMFR10〜30よりも大幅に低くて硬くなり過ぎるため、比較例11に比べて多層(三層)フィルムが全体的により硬くなり、フィルム本体のカット性で更に不良な評価結果になった。
比較例13は、中間層の主成分となるMFR2.5のPP(ホモPP)を比較例12より多く含むものの、多層(三層)フィルムの全体厚みに対する中間層の割合が14.3%と薄いため、比較例11と同様にフィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。
比較例14は、多層(三層)フィルムの全体厚みに対する中間層の割合が40%であり、35%を越えて厚くなり過ぎるため、柔軟性に劣って容器との粘着性1や粘着性2とフィルム本体のカット性とで不良な評価結果になった。
本発明は、巻芯にロール状に巻き付けて収納箱に収納された単層構造や多層構造のフィルム本体を、収納箱から引き出されカット刃により切断して使用する食品包装用ラップフィルムに関する。
従来、単層構造の食品包装用ラップフィルムとして、高圧重合法によって得られる低密度ポリエチレン(密度0.910〜0.935g/cm3)の中から、密度0.926〜0.935g/cm3、好ましくは0.928〜0.935g/cm3の低密度ポリエチレンを、酸化防止剤および防曇剤を添加することなく、T−ダイからフィルム状に押出し、このフィルム状物を冷却ロールに接触させ、かつエアーナイフにより均一に空気を吹きつけることによりフィルム表面を平滑にしたラップフィルムの製造法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、多層構造の食品包装用ラップフィルムとして、外層及び内層が密度0.92〜0.94g/cm3でMFRが4以上の低密度ポリエチレン95〜50重量部と密度0.91g/cm3以下の超低密度線状ポリエチレン5〜50重量部からなる樹脂組成物からなり、中間層がMFR15以上のポリプロピレン樹脂組成物からなるラップフィルムがある(例えば、特許文献2参照)。
特開昭61−100432号公報 特開平07−148898号公報
しかし乍ら、特許文献1のような低密度ポリエチレンからなる単層構造のラップフィルムは、ポリ塩化ビニルなどからなるフィルムに比べ伸びる性質を持っているため、カット刃によるフィルムの切断が困難でカット性に劣り使用勝手が悪いという問題があった。
さらに密度0.926g/cm3以上の低密度ポリエチレンからなるラップフィルムは、粘着力が不十分であり、アルミニウム製やプラスチック製の容器などに対しては貼り付き難く、密着性に劣って剥がれ易いという問題があった。
また特許文献2のような多層構造のラップフィルムでは、外層及び内層が低密度ポリエチレンと密度0.91g/cm3以下の超低密度線状ポリエチレンからなるため、内層及び外層の粘着性が低くて容器などに接着した際に、現在多く使用されているポリ塩化ビニリデン系樹脂やポリ塩化ビニル系樹脂を主要材料とした家庭用ラップフィルムに比べて、密着性が悪く剥がれ易い。
これにより、食品が入った容器の開口部分に貼り付けたとしても、食品と外気の遮断が不十分であるため、冷蔵保存中や冷凍保存中に食品の水分が蒸発して、食品の乾燥による臭い移りや冷凍焼けが発生したり、酸素が侵入することによる油脂の酸化による変質により、保存中の食品の味や風味を長期に亘って保つことができないという問題があった。
そこで、このような問題を解決するために、内層及び外層の粘着力を高め、巻芯にフィルム本体をロール状に巻き付けて、その内層の表面が対向する外層の表面に重ね合わされた場合には、重なり合う内層の表面と外層の表面が互いに密着してしまい、巻芯からフィルム本体を引き出す際に、内層の表面が対向する外層の表面からスムーズに剥がれず、収納箱からフィルム本体を引き出すことが困難になる。
さらに、カット刃によるフィルム本体の切断が困難でカット性に劣り、使用勝手が悪いという問題があった。
なお、食品包装用ラップフィルムでは、密着性やカット性以外にもT−ダイ成形などによる加工性が重要な条件である。
このような状況下で、優れたカット性及び密着性と加工性を併せ持った単層構造や多層構造の食品包装用ラップフィルムが要望されている。
このような課題を達成するために、本発明に係る食品包装用ラップフィルムは、以下の独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
[請求項1] ポリエチレン系樹脂を主成分として押出成形された単層又は多層のフィルム本体を、巻芯にロール状に巻き付けて収納箱に収納し、前記収納箱から引き出した前記フィルム本体がカット刃で切断される食品包装用ラップフィルムであって、
前記フィルム本体の少なくとも表面部は、メルトフローレートが5〜8且つ密度が0.926〜0.935g/cm 3 ある第一の低密度ポリエチレンと、メルトフローレートが20以上で且つ密度が0.915〜0.926g/cm3である第二の低密度ポリエチレンと、常温で液状の粘着性成分と、を含み、前記第二の低密度ポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレンを除く高圧法低密度ポリエチレンからなることを特徴とする食品包装用ラップフィルム。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る食品包装用ラップフィルムは、そのフィルム本体が巻芯にロール状に巻き付けられるとともに、この巻き付け状態で収納箱に収納され、収納箱からフィルム本体を所定長さ引き出してカット刃で切断することにより、食品が入った容器の開口部を覆うか、又は食品に直接巻き付けてラップ包装するために用いられるものである。
このフィルム本体は、ポリエチレン系樹脂を主成分として、インフレーション成形やT−ダイ成形などの押出機を用いた押出成形により、所定の厚みの単層構造か、又は多層構造に形成される。フィルム本体が多層構造の場合には、内層、中間層及び外層の三層構造であっても良いし、中間層を多層にして四層以上の層構造にしてもよい。
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係る食品包装用ラップフィルムは、フィルム本体の少なくとも表面部が、主成分となる第一の低密度ポリエチレンと、第二の低密度ポリエチレンと、粘着性成分と、をそれぞれ所定の比率で含んでいる。さらに、その他に第三の低密度ポリエチレンなどを所定の比率で含むことも可能である。
すなわち、フィルム本体が単層構造(単層フィルム)である場合には、フィルム本体の全体が第一の低密度ポリエチレンを主成分としており、フィルム本体が多層構造(多層フィルム)である場合には、フィルム本体の表裏両面に露出する内層及び外層が第一の低密度ポリエチレンを主成分としている。
[第一の低密度ポリエチレンについて]
第一の低密度ポリエチレンとは、メルトフローレート(MFR、JIS K7210−1に準拠し、ポリエチレンの標準条件である試験温度190℃、試験荷重21.18Nで試験)が10未満、好ましくは1〜8のLDPEである。第一の低密度ポリエチレンの密度(比重)は、0.926g/cm3(0.926)以上、詳しくは0.926〜0.935g/cm3(0.926〜0.935)、更に詳しくは0.927〜0.932g/cm3(0.927〜0.932)であることが好ましい。
第一の低密度ポリエチレンとしては、高圧法で製造された長鎖分岐を持つ高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE)が挙げられ、短い側鎖分岐を導入した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE:線状低密度ポリエチレン)は含まれない。
さらに、第一の低密度ポリエチレンとしては、JIS K7127規格に準拠した引張試験で降伏(破断)時の伸びが400%以上のLDPEであることが好ましい。なお、JIS K7127試験条件は、試験片タイプ2、速度500mm/minである。
[第二の低密度ポリエチレンについて]
第二の低密度ポリエチレンとは、MFRが20以上、好ましくは30〜60のLDPEである。第二の低密度ポリエチレンの密度(比重)は、第一の低密度ポリエチレンの密度よりも小さい0.926g/cm3(0.926)以下、詳しくは0.915〜0.926g/cm3(0.915〜0.926)、更に詳しくは0.916〜0.925g/cm3(0.916〜0.925)であることが好ましい。
第二の低密度ポリエチレンとしては、第一の低密度ポリエチレンと同様に、HP−LDPEが挙げられ、LLDPEは含まれない。
さらに、第二の低密度ポリエチレンとしては、JIS K7127規格に準拠した引張試験で降伏(破断)時の伸びが350%以下のLDPEであることが好ましい。
なお、第二の低密度ポリエチレンのようなMFRが20以上のLDPEは、MFRの値が大きいほど溶融時の流動性や加工性は良好とされるものの、引張り強さなどは低下するため、押出機を用いたフィルム成形には使われていない。
そこで、押出機を用いたフィルム成形において、MFRが10未満のLDPEに対しMFRが20以上のLDPEを添加すると、フィルムの強度をカット刃で切れ易い適度なレベルまで低下可能となるとともに、加工性が低下しない適度なレベルまで維持可能なことを見出した。
[粘着性成分について]
粘着性成分とは、常温雰囲気において液状であり、第一の低密度ポリエチレンや第二の低密度ポリエチレンと相溶性のある粘着性調整剤や粘着付与剤などが用いられる。
粘着性調整剤としては、アジピン酸ジオクチル(DOA)の一種であるアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHA)やアジピン酸ジイソデシル(DIDA)などのアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、エポキシ化亜麻仁油やエポキシ化大豆油などのエポキシ化植物油、アセチル化モノグリセライドなどが挙げられる。
粘着付与剤は、タッキファイヤーとも呼ばれる樹脂であり、エラストマーに添加されることで、エラストマーと相溶して粘着機能(タック)を付与させる配合剤である。
粘着付与剤としては、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂)や脂肪族系石油樹脂や芳香族系石油樹脂やC5系石油樹脂などの石油樹脂、テルペン樹脂水素化物(水添テルペン樹脂)などのテルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂(クマロン−インデン樹脂)、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加樹脂中の少なくとも一種の樹脂などが挙げられる。
[その他の成分について]
その他の成分としては、MFRが10未満であるポリエチレンを含むことも可能である。
その他の成分となるMFR10未満のポリエチレンは、比重(密度)が限定されず、前述した第二の低密度ポリエチレンと重複してもよい。
また、その他の成分としては、MFRが10以下、好ましくは1〜8である第三の低密度ポリエチレンを含むことも可能である。
第三の低密度ポリエチレンは、密度が0.926g/cm3(比重が0.926)未満、詳しくは密度が0.924〜0.916g/cm3(比重が0.924〜0.916)のポリエチレンであることが好ましい。
MFR10未満のポリエチレンとしては、HP−LDPEやLLDPEが含まれる。
[配合割合について]
フィルム本体(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)に含まれる各成分の配合量(部数)は、各成分の合計が100重量部(重量%)となるように表している。
フィルム本体(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)の配合量(配合比率)は、各成分の合計100重量%に対して、主成分となる第一の低密度ポリエチレンが50〜96.5重量%、好ましくは50〜90重量%に設定される。第二の低密度ポリエチレンは、3〜45重量%、好ましくは5〜20重量%に設定される。粘着性成分は、0.5〜5重量%、好ましくは1〜4重量%に設定される。その他の成分は、0〜30重量部に設定される。
また、その他の成分として第三の低密度ポリエチレンを含む場合の配合量は、第三の低密度ポリエチレンが5〜30重量%、好ましくは8〜20重量%に設定される。
第三の低密度ポリエチレンの配合に伴って、第一の低密度ポリエチレンの配合量は、50〜91.5重量%、好ましくは55〜86.5重量%に設定することが好ましい。
[多層フィルムの中間層について]
中間層は、フィルム本体のカット性を高めることができ、これに加えてフィルム本体の耐熱温度を高くするため、ポリプロピレンを主成分とする層にし、且つフィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を所定値に設定している。
ポリプロピレン(PP)としては、ホモPP(ホモポリマー)、ランダムPP(ランダムコポリマー)、ブロックPP(ブロックコポリマー)などが挙げられる。これらの中から、主としてフィルム本体のカット性を高めるために、MFR(JIS K7210−1に準拠し、ポリプロピレンの標準条件である試験温度230℃、試験荷重21.18Nで試験)が10〜30、詳しくは15〜25のホモPP又はランダムPPのいずれか一方か若しくは両方を用いることが好ましい。ホモPP及びランダムPPは透明性に優れ、柔軟性の点でランダムPPが更に優れる。
中間層の厚みは、内層と中間層と外層の層比を約3:1:3〜3:2:3に設定して、フィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を約35%以下、詳しくは約30%以下にすることが望ましい。
また、中間層の硬さコントロールや加工性の改良のため、軟化剤として2種以上のα−オレフィン(エチレンを含む)のランダム共重合体、ポリエチレン系熱可塑性エラストマーなどのオレフィン系エラストマーを添加することも可能である。オレフィン系エラストマーには、フィルムの硬さとカット性のバランスを調整する効果があり、より柔らかなフィルムでも良好なカット性を与えることができる。これらの中からランダム共重合体を用いることが好ましい。
中間層に含まれる他の成分としては、粘着付与剤として水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂)や、低密度ポリエチレンなどを含むことも可能である。
中間層に含まれる各成分の配合量(部数)は、各成分の合計が100重量部(重量%)となるように表している。
中間層の配合量(配合比率)は、各成分の合計100重量%に対して、主成分となるMFRが15以上のホモPPが60〜95重量%、好ましくは70〜90重量%に設定される。オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)は、5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%に設定される。水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂)などは、0.5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%に設定される。
[製造方法について]
そして、フィルム本体の製造方法としては、T−ダイを用いた押出機によるT−ダイ成形やサークルダイを用いた押出機によるインフレーション成形などの押出成形で、所定の厚みにフィルム化され、更に冷却することにより製品化される。
なお、フィルム本体の成形時には各樹脂層に必要に応じて各種の添加剤を通常の量で配合させることができる。
さらに、フィルム本体全体の厚さは、柔軟で破れ難くするために約5〜20μmとすることが好ましく、特に8〜15μm程度が最も好ましい。
また、フィルム本体を巻芯に対して巻き付ける際の巻き付け方向としては、巻芯の外表面と対向する内側が内層又は外層となるように配置する。
このような本発明の実施形態に係る食品包装用ラップフィルムによると、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)として、MFR10未満の第一の低密度ポリエチレンと、MFR20以上で且つ密度0.915〜0.926g/cm3の第二の低密度ポリエチレンと、常温で液状の粘着性成分が含まれた材料とを、押出機でフィルム成形(押出成形)する。これにより、フィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)の粘着性が向上する。
さらに第二の低密度ポリエチレンの添加でフィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)が全体的に柔らかくなるものの必要以上に強度が低下しない。このため、フィルム本体がカット刃で全体的に切断し易くなる。
また第一の低密度ポリエチレンに対する第二の低密度ポリエチレンの添加量を調整することにより、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)が必要以上に柔らかくならず、T−ダイ成形やインフレーション成形などの押出成形時における加工性が低下しない。
したがって、優れた密着性及びカット性と加工性を併せ持った単層構造や多層構造の食品包装用ラップフィルムを提供することができる。
その結果、密度が0.926g/cm3以上の高圧重合法低密度ポリエチレンのみで添加剤を含まずに押出成形される単層構造のラップフィルムや、外層及び内層が低密度ポリエチレンと密度0.91g/cm3以下の超低密度線状ポリエチレンからなる多層構造のラップフィルムに比べ、食器として用いられるガラス製や陶器製又はポリカーボネートなどのプラスチック製の容器などに対し、フィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)を確実に貼り付けることができて、密着性が良くなって剥がれ難くなる。このため、容器内の食品と外気を確実に遮断して、食品の水分が蒸発し難くなり、食品の乾燥による臭い移りや冷凍焼けを防ぎ、保存中の食品の味や風味をしっかり長期に亘って保つことができる。
さらに収納箱から引き出されたラップフィルムをカット刃で容易に切断できて使用勝手が向上する。
これに加えて、塩化ビニル樹脂(PVC)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)を主成分とした食品包装用ラップフィルムのように、廃棄物の焼却に伴ってダイオキシンが発生しないため、安全性に優れる。
特に、第二の低密度ポリエチレンの密度は、第一の低密度ポリエチレンの密度よりも小さいことが好ましい。
この場合には、密度が高い第一の低密度ポリエチレンに対して密度が小さい第二の低密度ポリエチレンを添加することにより、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)における低密度ポリエチレンの全体的な密度が低下する。
このため、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)の剛性が、密度に比例して低くなる。
これに伴い、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)が全体的に柔らかくなって、容器などに対する貼り合わせ時に変形し易くなる。
したがって、容器などに対するフィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)の密着性を向上させることができる。
その結果、使用勝手の更なる向上が図れる。
さらに、第二の低密度ポリエチレンの引張は、第一の低密度ポリエチレンの引張よりも低いことが好ましい。
この場合には、引張が高い第一の低密度ポリエチレンに対して引張が低い第二の低密度ポリエチレンを添加することにより、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)における伸びる性質がカット刃で切断し易いレベルまで低下する。
したがって、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)におけるカット性を更に向上させることができる。
その結果、使用勝手の更なる向上が図れる。
また、フィルム本体の少なくとも表面部が、その他の成分として、メルトフローレートが10以下で且つ第一の低密度ポリエチレンの密度よりも密度が小さい第三の低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
この場合には、MFR及び密度が高い第一の低密度ポリエチレンに対し、第二の低密度ポリエチレンに加えてMFR及び密度が小さい第三の低密度ポリエチレンを添加することにより、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)における低密度ポリエチレンの全体的なMFRと密度が更に低下する。
このため、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)の剛性が、MFRや密度に比例して更に低くなる。
これに伴い、フィルム本体の少なくとも表面部(単層フィルムの場合は全体、多層フィルムの場合には内層及び外層)が全体的により柔らかくなって、容器などに対する貼り合わせ時に変形し易くなる。
したがって、容器などに対するフィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)の密着性を更に向上させることができる。
その結果、使用勝手の著しい向上が図れる。
加えて、フィルム本体が単層フィルムである場合には、以下の成分の合計100重量%に対して、MFR10未満の第一の低密度ポリエチレンが50〜96.5重量%と、MFR20以上の第二の低密度ポリエチレンが3〜45重量%と、常温で液状の粘着性成分が0.5〜5重量%と、を含むことが好ましい。
この場合には、第一の低密度ポリエチレンが50〜96.5重量%に対する第二の低密度ポリエチレンの添加量が3重量%未満であると、単層フィルムの強度がカット刃で切れ易いレベルまで低下しない。第二の低密度ポリエチレンの添加量が45重量%を越えると、単層フィルムが必要以上に柔らかくなってインフレーション成形やT−ダイ成形などの押出成形時における加工性が低下する。
このため、第一の低密度ポリエチレンが50〜96.5重量%に対する第二の低密度ポリエチレンの添加量を3〜45重量%にすることで、単層フィルムが全体的に柔らかくなるものの必要以上に強度が低下せず、カット刃で全体的に切断し易くなるとともに、単層フィルムの全体が必要以上に柔らかくならず、T−ダイ成形やインフレーション成形などの押出成形時における加工性が低下しない。
また第一の低密度ポリエチレン及び第二の低密度ポリエチレンに対する粘着性成分の添加量を0.5〜5重量%に添加することで、単層フィルムの表裏両面の粘着性が向上する。
したがって、更に優れたカット性及び加工性と密着性を併せ持った単層構造の食品包装用ラップフィルムを提供することができる。
加えて、フィルム本体が少なくとも内層、中間層及び外層を有する三層以上の多層フィルムである場合には、内層及び外層が、MFR10未満の第一の低密度ポリエチレンと、MFR20以上の第二の低密度ポリエチレンと、常温で液状の粘着性成分と、を含み、中間層は、MFR10〜30のポリプロピレンを主成分とした層で且つ層比がフィルム本体の35%以下であることが好ましい。
この場合には、内層及び外層に対する中間層の層比がフィルム本体の35%を越えると、多層フィルムが全体的に柔軟性が劣り、容器などの表面形状に沿って内層及び外層の表面が変形し難くなるとともに、カット刃で多層フィルムが全体的に切断し易くなる。
このため、内層及び外層に対する中間層の層比を多層フィルムの35%以下にすることにより、多層フィルムが全体的に柔らかくなって、容器などの表面形状に沿った内層及び外層の表面の変形が可能になる。これと同時に多層フィルムが全体的に柔らかくなるものの必要以上に強度が低下せず、カット刃で全体的に切断し易くなる。
したがって、更に優れた密着性及びカット性を併せ持った多層構造の食品包装用ラップフィルムを提供することができる。
以下に、本発明の実施例を説明する。
[実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14]
表1に示す実施例1〜8と表2に示す比較例1〜6は、それらに記載された成分をそれぞれの割合で混合し、単層構造のフィルム本体として単層フィルムの全体の厚みが10μmとなるように押出成形した食品包装用ラップフィルムである。
表3に示す実施例11〜20と表4に示す比較例11〜14は、それらに記載された成分をそれぞれの割合で混合し、多層構造のフィルム本体として内層、中間層及び外層の三層フィルムの全体の厚みが10μmとなるように押出成形した食品包装用ラップフィルムである。
そして、実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14として同じサイズの評価試料をそれぞれ作製した。
[単層フィルムの実施例1〜8及び比較例1〜6について]
実施例1〜8では、第一の低密度ポリエチレンとしてMFRが5.0で密度が0.931g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)か、又はMFRが1.0で密度が0.928g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1b)のいずれかを主成分にしており、共通の構成にしている。第二の低密度ポリエチレンとしては、MFRが35で密度が0.924g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)か、又はMFRが20で密度が0.919g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2b)か、若しくはMFRが60で密度が0.916g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2c)のいずれかを添加しており、共通の構成にしている。
さらに実施例1,3〜8では、第三の低密度ポリエチレンとしてMFRが5.0で密度が0.922g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_3)を添加しており、共通の構成にしている。
また比較例1,3〜5では、HP−LDPE_1aを主成分にしており、共通の構成にしている。比較例2〜6では、HP−LDPE_2aやHP−LDPE_3や、MFRが3.8で密度が0.918g/cm3であるポリエチレン(LLDPE)を添加している。
これに加えて実施例1〜4,6〜8及び比較例1〜6では、粘着性成分としてアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHA)が1.0重量%と、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)が0.5重量%と、エポキシ化大豆油が0.5重量%を添加しており、共通の構成にしている。
実施例1,3〜8では、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が2重量%を添加しており、共通の構成にしている。
実施例1では、HP−LDPE_1aが81重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが5重量%の混合樹脂になっている。
実施例2では、HP−LDPE_1aが88重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。
実施例3では、HP−LDPE_1aが66重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。
実施例4では、HP−LDPE_1aが66重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが20重量%の混合樹脂になっている。
実施例5では、HP−LDPE_1aが81重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが5重量%の混合樹脂になっている。さらに粘着性成分としてアセチル化モノグリセライドが1.5重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が0.5重量%を添加している。
実施例6では、HP−LDPE_1aが76重量%と、HP−LDPE_3が5重量%と、HP−LDPE_2bが10重量%と、その他の成分(ポリエチレン)としてMFRが3.8で密度が0.918g/cm3のLLDPEが5重量%の混合樹脂になっている。
実施例7では、HP−LDPE_1aが81重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2cが5重量%の混合樹脂になっている。
実施例8では、HP−LDPE_1bが66重量%を主成分にし、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。
一方、比較例1では、HP−LDPE_1aが98重量%を主成分にしている。
比較例2では、HP−LDPE_3が98重量%を主成分にしている。
比較例3では、HP−LDPE_1aが68重量%と、HP−LDPE_3が30重量%の混合樹脂になっている。
比較例4では、HP−LDPE_1aが88重量%と、その他の成分としてポリエチレン(LLDPE)が10重量%の混合樹脂になっている。
比較例5では、HP−LDPE_1aが78重量%と、その他の成分としてポリエチレン(LLDPE)が20重量%の混合樹脂になっている。
比較例6では、HP−LDPE_1aが30重量%と、HP−LDPE_3が33重量%と、HP−LDPE_2aが35重量%の混合樹脂になっている。
[多層(三層)フィルムの実施例11〜20及び比較例11〜14について]
実施例11〜20及び比較例11〜14における内層及び外層は、第一の低密度ポリエチレンとしてHP−LDPE_1aか、又はHP−LDPE_1bか、若しくはMFRが2.0で密度が0.928g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1c)のいずれかを主成分にしており、共通の構成にしている。第二の低密度ポリエチレンとしては、HP−LDPE_2aか、又はMFRが35で密度が0.916g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2d)のいずれかを添加しており、共通の構成にしている。粘着性成分としては、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHA)が1.0重量%と、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)が0.5重量%と、エポキシ化大豆油が0.5重量%を添加しており、共通の構成にしている。
実施例11〜20及び比較例14における中間層は、MFRが15以上のPP(ホモPP)を主成分としており、共通の構成にしている。
さらに、実施例11,13〜20及び比較例11,12では、内層と中間層と外層の層比が3:2:3であり、フィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を25%にしており、共通の構成にしている。
詳しく説明すると、実施例11の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが83重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが5重量%の混合樹脂になっている。実施例11の中間層では、MFR15以上のPP(ホモPP)が80重量%と、オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)が20重量%の混合樹脂になっている。
実施例12の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが88重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。実施例12の中間層では、MFR15以上のPP(ホモPP)が90重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が10重量%の混合樹脂になっている。実施例12の内層と中間層と外層の層比は、3:1:3であり、フィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を14.3%にしている。
実施例13の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが68重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。実施例13の中間層では、MFR15以上のPP(ホモPP)が70重量%と、オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)が20重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が10重量%の混合樹脂になっている。
実施例14の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが68重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが20重量%の混合樹脂になっている。実施例14の中間層では、MFR15以上のPP(ホモPP)が80重量%と、オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)が10重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。
実施例15の内層及び外層では、主成分となるMFRが2.0で密度が0.931g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1b)が68重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%の混合樹脂になっている。実施例15の中間層では、実施例14の中間層と同じ混合樹脂になっている。
実施例16の内層及び外層では、主成分となるMFRが2.0で密度が0.928g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1c)が83重量%と、HP−LDPE_3が10重量%と、HP−LDPE_2aが5重量%の混合樹脂になっている。実施例15の中間層では、実施例11の中間層と同じ混合樹脂になっている。
実施例17の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが68重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、MFRが35で密度が0.916g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2d)が10重量%の混合樹脂になっている。実施例17の中間層では、実施例13の中間層と同じ混合樹脂になっている。
実施例18の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが67重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が1重量%の混合樹脂になっている。実施例18の中間層では、実施例13の中間層と同じ混合樹脂になっている。
実施例19の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが65重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が3重量%の混合樹脂になっている。実施例19の中間層では、実施例13の中間層と同じ混合樹脂になっている。
実施例20の内層及び外層では、HP−LDPE_1aが61重量%と、HP−LDPE_3が20重量%と、HP−LDPE_2aが10重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が7重量%の混合樹脂になっている。実施例20の中間層では、実施例13の中間層と同じ混合樹脂になっている。
一方、比較例11〜14の内層及び外層では、実施例11の内層及び外層と同じ混合樹脂になっている。比較例11の中間層では、MFR15未満のPP(ランダムPP)が80重量%と、オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)が20重量%の混合樹脂になっている。
比較例12の中間層では、MFR15未満のPP(ホモPP)が80重量%と、オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)が20重量%の混合樹脂になっている。
比較例13の中間層では、MFR15未満のPP(ホモPP)が90重量%と、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が10重量%の混合樹脂になっている。比較例13の内層と中間層と外層の層比は、フィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を14.3%にしている。
比較例14の中間層では、実施例11の中間層と同じ混合樹脂になっている。比較例14の内層と中間層と外層の層比は、3:4:3であり、フィルム本体の全体厚みに対する中間層の割合を40%にしている。
[実施例及び比較例で使用した材料について]
MFRが5.0で密度が0.931g/cm3である第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)の具体例としては、住友化学社製のCE3506が該当する。
MFRが1.0で密度が0.928g/cm3である第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1b)の具体例としては、NUC社製のNUC8230が該当する。
MFRが2.0で密度が0.928g/cm3である第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1c)の具体例としては、住友化学社製のF238−1が該当する。
MFRが35で密度が0.924g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ3524が該当する。
MFRが20で密度が0.919g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2b)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ2522が該当する。
MFRが60で密度が0.916g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2c)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ6016が該当する。
MFRが35で密度が0.916g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2d)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ3519が該当する。
MFRが5.0で密度が0.922g/cm3である第三の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_3)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のF522Nが該当する。
DEHAの具体例としては、ジェイ・プラス社製のDEHAが該当する。
ATBCの具体例としては、ジェイ・プラス社製のATBCが該当する。
エポキシ化亜麻仁油の具体例としては、ADEKA社製のO−180Aが該当する。
MFRが15以上のホモPPの具体例としては、プライムポリマー社製の「プライムポリプロ(登録商標)」Y−2000GV(MFRが20)が該当する。
MFRが15未満のホモPPの具体例としては、日本ポリプロ社製の「ノバテック(登録商標)PP」FY6(MFRが2.5)が該当する。
MFRが15未満のランダムPPの具体例としては、住友化学社製の「ノーブレン(登録商標)」FH331(MFRが3.0で融点が143℃)が該当する。
オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)の具体例としては、住友化学製の「タフセレン(登録商標)」T3732(非結晶性ポリプロピレンを主とする特殊ポリプロピレン系エラストマー)が該当する。
水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)の具体例としては、荒川化学工業社製のアルコンP−125が該当する。
[評価基準]
表1〜表4に示される評価結果(容器との粘着性1、容器との粘着性2、フィルム本体のカット性、フィルム本体の解反性、フィルム本体の加工性、フィルム本体の耐熱温度、総合評価)は、以下の指標に基づくものである。
「容器との粘着性1」は、ガラスや陶器からなる容器などに対するフィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)の粘着力を確認するための試験である。実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14の各評価試料を、容器を構成するガラス製や陶器製の平滑面に接触するように貼り付けて圧着させ、貼り付け直後から所定時間内に剥がす試験を行った。その試験結果を四段階で評価した。
この「容器との粘着性1」の評価結果において、◎:粘着力が非常に強い、○:粘着力が強い、△:粘着力がやや弱い、×:粘着力が弱い、のように評価した。
「容器との粘着性2」は、ポリカーボネートなどのプラスチックからなる容器などに対するフィルム本体の少なくとも表面(単層フィルムの場合は表裏両面、多層フィルムの場合には内層の表面及び外層の表面)の粘着力を確認するための試験である。実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14の各評価試料を、容器を構成するポリカーボネート製の平滑面に接触するように貼り付けて圧着させ、貼り付け直後から所定時間内に剥がす試験を行った。その試験結果を五段階で評価した。
この「容器との粘着性2」の評価結果において、◎:粘着力が非常に強い、○:粘着力が強い、○△:粘着力が強くないものの許容範囲内、△:粘着力がやや弱い、×:粘着力が弱い、のように評価した。
「フィルム本体のカット性」は、カット刃によるフィルム本体の切れ味を確認するための試験であり、実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14の各評価試料を、巻芯にロール状に巻き付けてカット刃で切断する試験を行った。その試験結果を三段階で評価した。
この「フィルム本体のカット性」の評価結果において、○:カットし易い、△:ややカットし難い、×:カットし難い、のように評価した。
「フィルム本体の解反性」は、巻物からフィルム本体を引き出す時の剥離状況を確認するための試験であり、実施例1〜8,11〜20及び比較例1〜6,11〜14の各評価試料を、巻芯にロール状に巻き付け、巻芯から引き出して剥がす試験を行った。その試験結果を三段階で評価した。
この「フィルム本体の解反性」の評価結果において、○:スムーズに剥がれる、×:スムーズに剥がれない、△:どちらとも言えない、のように評価したと評価した。
「フィルム本体の加工性」は、T−ダイ成形やインフレーション成形の押出しによるフィルム成形に適しているか否かを確認するための試験であり、実施例1〜7,11〜14,17〜20及び比較例1〜6,11〜14の各評価試料を、T−ダイを用いた押出機でT−ダイ成形する試験を行った。実施例8,15,16の評価試料は、サークルダイを用いた押出機でインフレーション成形する試験を行った。その試験結果を三段階で評価した。
この「フィルム本体の加工性」の評価結果において、◎:フィルム成形に優れている、○:フィルム成形に適している、×:フィルム成形に適していない、のように評価した。
「フィルム本体の耐熱温度」は、東京都消費生活条例ラップ(食品包装用ラップフィルム)品質表示実施要領に準じて測定した。
「総合評価」とは、前述した「容器との粘着性1」「容器との粘着性2」「フィルム本体のカット性」「フィルム本体の解反性」「フィルム本体の加工性」「フィルム本体の耐熱温度」の評価結果に基づいて総合的に四段階で評価した。
この「総合評価」の評価結果において、◎:最良、○:良、△:やや不向き、×:不向き、のように評価した。
Figure 2019155721


Figure 2019155721



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Figure 2019155721
[評価結果]
単層フィルムの実施例1〜8及び比較例1〜6、並びに多層(三層)フィルムの実施例11〜20及び比較例11〜14をそれぞれ比較すると、単層フィルムの実施例1〜8と多層(三層)フィルムの実施例11〜20は、容器との粘着性1、容器との粘着性2、フィルム本体のカット性、フィルム本体の解反性、フィルム本体の加工性、フィルム本体の耐熱温度、総合評価の全てにおいて良好な評価結果が得られている。
この評価結果から明らかなように、単層フィルムの実施例1〜8と多層(三層)フィルムの実施例11〜20は、優れた密着性及びカット性と加工性を併せ持った食品包装用ラップフィルムであることが実証できた。
耐熱温度の評価結果では、単層フィルムの実施例1〜8の耐熱温度が、すべて110℃であり、市販のポリエチレン(PE)製ラップフィルムと同等であった。これに比べて多層(三層)フィルムの実施例11〜20の耐熱温度は、すべて130℃であり、市販のPE製ラップフィルムの耐熱温度(110℃)よりも高くなった。
しかし、これに対して、単層フィルムの比較例1〜6と多層(三層)フィルムの比較例11〜14は、容器との粘着性1、容器との粘着性2、フィルム本体のカット性、フィルム本体の解反性、フィルム本体の加工性のいずれかで不良な評価結果になっている。
詳しく説明すると、単層フィルムの比較例1は、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)の添加量が96.5重量%を越えるものの、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に対する第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が絶対的に不足するため、容器との粘着性2(ポリカーボネート製の容器)で不良な評価結果になった。
比較例2は、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に代えて第三の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_3)を添加しても、第三の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_3)に対する第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が絶対的に不足するため、フィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。
比較例3は、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に対する第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が絶対的に不足するため、容器との粘着性2とフィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。
比較例4は、第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)に代えてポリエチレン(LLDPE)を添加しても、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に対する第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が絶対的に不足するため、容器との粘着性2とフィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。
比較例5は、第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)に代えてポリエチレン(LLDPE)の添加量を増やしても、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に対する第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が絶対的に不足するため、フィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。
比較例6は、第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)に対して第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の添加量が相対的に過剰となるため、フィルム本体の加工性(T−ダイ成形)で不良な評価結果になった。
なお、前述した比較例1〜6では示さなかったが、フィルム本体(単層フィルムの全体)が、ポリオレフィン(PO)を主成分とした比較例についても、同様に評価を行った。
その試験結果として、ポリオレフィン(PO)を主成分とした比較例は、容器との粘着性1や粘着性2で不良な評価結果になり、容器との密着性に劣ることが分かった。
また多層(三層)フィルムの比較例11は、中間層の主成分となるPP(ランダムPP)のMFRが3.0であり、目標とするMFR10〜30よりも大幅に低いため、多層(三層)フィルムが全体的に硬くなり、フィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。さらに比較例11は、耐熱温度が120℃で他に比べて低かった。
比較例12は、中間層の主成分となるPP(ホモPP)のMFRが2.5であり、目標とするMFR10〜30よりも大幅に低くて硬くなり過ぎるため、比較例11に比べて多層(三層)フィルムが全体的により硬くなり、フィルム本体のカット性で更に不良な評価結果になった。
比較例13は、中間層の主成分となるMFR2.5のPP(ホモPP)を比較例12より多く含むものの、多層(三層)フィルムの全体厚みに対する中間層の割合が14.3%と薄いため、比較例11と同様にフィルム本体のカット性で不良な評価結果になった。
比較例14は、多層(三層)フィルムの全体厚みに対する中間層の割合が40%であり、35%を越えて厚くなり過ぎるため、柔軟性に劣って容器との粘着性1や粘着性2とフィルム本体のカット性とで不良な評価結果になった。
このような課題を達成するために、本発明に係る食品包装用ラップフィルムは、以下の独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
[請求項1] ポリエチレン系樹脂を主成分として押出成形された単層のフィルム本体を、巻芯にロール状に巻き付けて収納箱に収納し、前記収納箱から引き出した前記フィルム本体がカット刃で切断される食品包装用ラップフィルムであって、
前記フィルム本体の少なくとも表面部は、
メルトフローレートが5〜8で且つ密度が0.926〜0.935g/cm3である第一の低密度ポリエチレン、又はメルトフローレートが5〜8で且つ密度が0.916〜0.926g/cm 3 である第三の低密度ポリエチレンと、
メルトフローレートが20以上で且つ密度が0.915〜0.926g/cm3である第二の低密度ポリエチレンと、
常温で液状の粘着性成分と、を含み、
前記第二の低密度ポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレンを除く高圧法低密度ポリエチレンからなり、
前記第三の低密度ポリエチレンを含まない場合の配合量が、以下の成分の合計100重量%に対して、前記第一の低密度ポリエチレンが50〜96.5重量%と、前記第二の低密度ポリエチレンが3〜45重量%と、前記粘着性成分が0.5〜5重量%と、を含み、
前記第三の低密度ポリエチレンを含む場合の配合量が、前記第三の低密度ポリエチレンと前記第二の低密度ポリエチレンと前記粘着性成分との合計が100重量%に対して、前記第三の低密度ポリエチレンが5〜30重量%と、前記第二の低密度ポリエチレンが3〜45重量%と、前記粘着性成分が0.5〜5重量%と、を含むことを特徴とする食品包装用ラップフィルム。
[請求項2] ポリエチレン系樹脂を主成分として押出成形された多層のフィルム本体を、巻芯にロール状に巻き付けて収納箱に収納し、前記収納箱から引き出した前記フィルム本体がカット刃で切断される食品包装用ラップフィルムであって、
前記フィルム本体が少なくとも内層、中間層及び外層を有し、前記内層及び前記外層は、
メルトフローレートが5〜8で且つ密度が0.926〜0.935g/cm 3 である第一の低密度ポリエチレン、又はメルトフローレートが5〜8で且つ密度が0.916〜0.926g/cm 3 である第三の低密度ポリエチレンと、
メルトフローレートが20以上で且つ密度が0.915〜0.926g/cm 3 である第二の低密度ポリエチレンと、
常温で液状の粘着性成分と、を含み、
前記第二の低密度ポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレンを除く高圧法低密度ポリエチレンからなり、
前記中間層は、メルトフローレートが10〜30であるポリプロピレンを主成分とした層で且つ層比が前記フィルム本体の35%以下であることを特徴とする食品包装用ラップフィルム。
[単層フィルムの実施例1〜8及び比較例1〜6について]
実施例1〜8では、第一の低密度ポリエチレンとしてMFRが5.0で密度が0.931g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)か、又はMFRが2.0で密度が0.931cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1b)のいずれかを主成分にしており、共通の構成にしている。第二の低密度ポリエチレンとしては、MFRが35で密度が0.924g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)か、又はMFRが20で密度が0.919g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2b)か、若しくはMFRが60で密度が0.916g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2c)のいずれかを添加しており、共通の構成にしている。
さらに実施例1,3〜8では、第三の低密度ポリエチレンとしてMFRが5.0で密度が0.922g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE_3)を添加しており、共通の構成にしている。
また比較例1,3〜5では、HP−LDPE_1aを主成分にしており、共通の構成にしている。比較例2〜6では、HP−LDPE_2aやHP−LDPE_3や、MFRが3.8で密度が0.918g/cm3であるポリエチレン(LLDPE)を添加している。
これに加えて実施例1〜4,6〜8及び比較例1〜6では、粘着性成分としてアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHA)が1.0重量%と、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)が0.5重量%と、エポキシ化大豆油が0.5重量%を添加しており、共通の構成にしている。
実施例1,3〜8では、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)が2重量%を添加しており、共通の構成にしている。
[実施例及び比較例で使用した材料について]
MFRが5.0で密度が0.931g/cm3である第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1a)の具体例としては、住友化学社製のCE3506が該当する。
MFRが2.0で密度が0.931g/cm3である第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1b)の具体例としては、NUC社製のNUC8230が該当する。
MFRが2.0で密度が0.928g/cm3である第一の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_1c)の具体例としては、住友化学社製のF238−1が該当する。
MFRが35で密度が0.924g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2a)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ3524が該当する。
MFRが20で密度が0.919g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2b)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ2522が該当する。
MFRが60で密度が0.916g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2c)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ6016が該当する。
MFRが35で密度が0.916g/cm3である第二の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_2d)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のJ3519が該当する。
MFRが5.0で密度が0.922g/cm3である第三の低密度ポリエチレン(HP−LDPE_3)の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社製のF522Nが該当する。
DEHAの具体例としては、ジェイ・プラス社製のDEHAが該当する。
ATBCの具体例としては、ジェイ・プラス社製のATBCが該当する。
エポキシ化亜麻仁油の具体例としては、ADEKA社製のO−180Aが該当する。
MFRが15以上のホモPPの具体例としては、プライムポリマー社製の「プライムポリプロ(登録商標)」Y−2000GV(MFRが20)が該当する。
MFRが15未満のホモPPの具体例としては、日本ポリプロ社製の「ノバテック(登録商標)PP」FY6(MFRが2.5)が該当する。
MFRが15未満のランダムPPの具体例としては、住友化学社製の「ノーブレン(登録商標)」FH331(MFRが3.0で融点が143℃)が該当する。
オレフィン系エラストマー(ランダム共重合体)の具体例としては、住友化学製の「タフセレン(登録商標)」T3732(非結晶性ポリプロピレンを主とする特殊ポリプロピレン系エラストマー)が該当する。
水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂:ジグリセリンオレート)の具体例としては、荒川化学工業社製のアルコンP−125が該当する。
Figure 2019155721
Figure 2019155721
このような課題を達成するために、本発明に係る食品包装用ラップフィルムは、以下の独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
[請求項1] ポリエチレン系樹脂を主成分として押出成形された単層のフィルム本体を、巻芯にロール状に巻き付けて収納箱に収納し、前記収納箱から引き出した前記フィルム本体がカット刃で切断される食品包装用ラップフィルムであって、
前記フィルム本体の少なくとも表面部は、
メルトフローレートが5〜8で且つ密度が0.926〜0.935g/cmである第一の低密度ポリエチレン、又はメルトフローレートが5〜8で且つ密度が0.926g/cm 未満で0.916g/cm 以上である第三の低密度ポリエチレンと、
メルトフローレートが20以上で且つ密度が0.915〜0.926g/cmである第二の低密度ポリエチレンと、
常温で液状の粘着性成分と、を含み、
前記第二の低密度ポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレンを除く高圧法低密度ポリエチレンからなり、
前記第三の低密度ポリエチレンを含まない場合の配合量が、以下の成分の合計100重量%に対して、前記第一の低密度ポリエチレンが50〜96.5重量%と、前記第二の低密度ポリエチレンが3〜45重量%と、前記粘着性成分が0.5〜5重量%と、を含み、
前記第三の低密度ポリエチレンを含む場合の配合量が、前記第三の低密度ポリエチレンと前記第二の低密度ポリエチレンと前記粘着性成分との合計が100重量%に対して、前記第三の低密度ポリエチレンが5〜30重量%を含むことを特徴とする食品包装用ラップフィルム。
[請求項2] ポリエチレン系樹脂を主成分として押出成形された多層のフィルム本体を、巻芯にロール状に巻き付けて収納箱に収納し、前記収納箱から引き出した前記フィルム本体がカット刃で切断される食品包装用ラップフィルムであって、
前記フィルム本体が少なくとも内層、中間層及び外層を有し、前記内層及び前記外層は、
メルトフローレートが5〜8で且つ密度が0.926〜0.935g/cmである第一の低密度ポリエチレン、又はメルトフローレートが5〜8で且つ密度が0.926g/cm 未満で0.916g/cm 以上である第三の低密度ポリエチレンと、
メルトフローレートが20以上で且つ密度が0.915〜0.926g/cmである第二の低密度ポリエチレンと、
常温で液状の粘着性成分と、を含み、
前記第二の低密度ポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレンを除く高圧法低密度ポリエチレンからなり、
前記中間層は、メルトフローレートが10〜30であるポリプロピレンを主成分とした層で且つ層比が前記フィルム本体の35%以下であることを特徴とする食品包装用ラップフィルム。

Claims (6)

  1. ポリエチレン系樹脂を主成分として押出成形された単層又は多層のフィルム本体を、巻芯にロール状に巻き付けて収納箱に収納し、前記収納箱から引き出した前記フィルム本体がカット刃で切断される食品包装用ラップフィルムであって、
    前記フィルム本体の少なくとも表面部は、メルトフローレートが10未満である第一の低密度ポリエチレンと、メルトフローレートが20以上で且つ密度が0.915〜0.926g/cm3である第二の低密度ポリエチレンと、常温で液状の粘着性成分と、を含むことを特徴とする食品包装用ラップフィルム。
  2. 前記第二の低密度ポリエチレンの密度は、前記第一の低密度ポリエチレンの密度よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の食品包装用ラップフィルム。
  3. 前記第二の低密度ポリエチレンの伸び率は、前記第一の低密度ポリエチレンの伸び率よりも低いことを特徴とする請求項1又は2記載の食品包装用ラップフィルム。
  4. 前記フィルム本体の少なくとも表面部が、その他の成分として、メルトフローレートが10以下で且つ前記第一の低密度ポリエチレンの密度よりも密度が小さい第三の低密度ポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1、2又は3記載の食品包装用ラップフィルム。
  5. 前記フィルム本体が単層フィルムであり、以下の成分の合計100重量%に対して、前記第一の低密度ポリエチレンが50〜96.5重量%と、前記第二の低密度ポリエチレンが3〜45重量%と、前記粘着性成分が0.5〜5重量%と、を含むことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の食品包装用ラップフィルム。
  6. 前記フィルム本体が少なくとも内層、中間層及び外層を有する多層フィルムであり、前記内層及び前記外層は、前記第一の低密度ポリエチレンと前記第二の低密度ポリエチレンと前記粘着性成分とを含み、前記中間層は、メルトフローレートが10〜30であるポリプロピレンを主成分とした層で且つ層比が前記フィルム本体の35%以下であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の食品包装用ラップフィルム。
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