JPWO2019111750A1 - 焼き菓子用澱粉 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1(特開2013−212104号公報)には、加熱した型を用いて生地を焼成することにより、焼成後の状態で透明であり、しかも焼成後に保管した場合にも透明さを保ち且つ形態を維持できる焼き菓子を製造することができる、焼き菓子用ミックスに関する技術が記載されており、焼き菓子用ミックスにおいて、特定種の馬鈴薯澱粉を特定量含有し、且つ穀粉を実質的に含まない構成とすることが記載されている。
また、本発明によれば、上記本発明における焼き菓子用澱粉を含む、焼き菓子用生地が提供される。
さらに、本発明によれば、上記本発明における焼き菓子用澱粉を含む、焼き菓子が提供される。
たとえば、本発明には、上記本発明における焼き菓子用澱粉の、焼き菓子用ミックス粉、焼き菓子用生地または焼き菓子の製造方法への使用も包含される。
また、本発明には、上記本発明における焼き菓子用ミックス粉の、焼き菓子用生地または焼き菓子の製造方法への使用も包含される。
さらに本発明には上記本発明における焼き菓子用生地の、焼き菓子の製造方法への使用も包含される。
本実施形態において、焼き菓子用澱粉は、1種または2種以上の澱粉により構成される組成物であって、成分(A):アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を20質量%以上100質量%以下含む。
成分(A)のアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉は、具体的には、α化していない澱粉、つまりβ澱粉である。
成分(A)の冷水膨潤度は、2以上3.5未満であることが好ましい。なお成分(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、アセチル化リン酸架橋以外の加工処理が施されていてもよい。
焼き菓子用澱粉中の成分(A)の含有量は、焼き菓子の食感、口どけ、焼成後生地のキメおよび甘さのバランスを好ましいものとする観点から、焼き菓子用澱粉全体に対して20質量%以上であり、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
また、焼き菓子の食感を向上させる観点から、焼き菓子用澱粉中の成分(A)の含有量は、焼き菓子用澱粉全体に対して100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらにより好ましくは70質量%以下、よりいっそう好ましくは60質量%以下である。
成分(B)のリン酸架橋澱粉は、具体的には、α化していない澱粉、つまりβ澱粉である。
成分(B)の冷水膨潤度は、2以上3.5未満であることが好ましい。なお、成分(B)には、本発明の効果を阻害しない範囲でリン酸架橋以外の加工処理を施されていてもよい。ただし、成分(B)には、成分(A)は含まれない。
また、同様の観点から、焼き菓子用澱粉中の成分(B)の含有量は、焼き菓子用澱粉全体に対して好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
また、同様の観点から、上記質量比((B)/((A)+(B)))は、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.75以下、さらにより好ましくは0.7以下である。
次に、成分(C)について説明する。
成分(C)は、たとえばジェットクッカー処理、ドラムドライヤー処理、エクストルーダー処理等のα化処理が施されたα化澱粉である。
成分(C)の冷水膨潤度は、焼き菓子の食感、口どけ、焼成後生地のキメおよび甘さのバランスを好ましいものとする観点から、好ましくは3.5以上であり、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。
また、同様の観点から、成分(C)の冷水膨潤度は、好ましくは40以下であり、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下である。
なお、成分(C)の冷水膨潤度の測定方法については、実施例の項で後述する。
また、成分(C)の原料澱粉は、成分(A)または成分(B)と同じであってもよく、異なってもよい。
また、同様の観点から、焼き菓子用澱粉中の成分(C)の含有量は、焼き菓子用澱粉全体に対して好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
また、同様の観点から、上記質量比((C)/((A)+(B)))は、好ましくは0.08以下であり、より好ましくは0.07以下である。
また、成分(A)を含む焼き菓子用澱粉を用いることにより、グルテンフリー且つグリアジンフリーの焼き菓子において、たとえば、甘味の増強効果を得ることも可能となるため、焼き菓子への砂糖等の甘味成分の配合量を低減することも可能となる。
また、成分(A)を含む焼き菓子用澱粉を用いることにより、たとえば、焼き菓子の口どけを向上させることも可能となる。
本実施形態において、焼き菓子用ミックス粉は、上述した焼き菓子用澱粉を含む組成物である。さらに具体的には、焼き菓子用ミックス粉は、成分(A)を含むミックス粉であり、好ましくは成分(A)と、成分(B)および成分(C)からなる群から選択される1種または2種と、を含むミックス粉である。
成分(A)〜(C)以外の成分として、たとえば、前述した成分(A)〜(C)以外の澱粉、穀粉、砂糖・甘味料等の甘味成分、乳製品、卵粉や卵白粉等の卵類、乳化剤、膨化剤、調味料、香料、抹茶やココアパウダーのような風味粉末、色素、増粘剤、油脂等を含んでもよく、これらのうち粉状のものを含むことが好ましい。さらに、ナッツ類、チョコチップ等の固形物を添加することもできる。
また、焼き菓子用ミックス粉は、好ましくはグルテンフリー且つグリアジンフリーである。
また、同様の観点から、焼き菓子用ミックス粉の焼き菓子用澱粉の含有量は、焼き菓子用ミックス粉全体に対して、100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、さらにより好ましくは60質量%以下である。
本実施形態において、焼き菓子用生地は、上述した焼き菓子用澱粉を含む。さらに具体的には、焼き菓子用生地は、成分(A)を含み、好ましくは成分(A)と、成分(B)および(C)からなる群から選択される1種または2種以上とを含む生地である。
成分(A)〜(C)以外の成分として、たとえば、前述した成分(A)〜(C)以外の澱粉、穀粉、砂糖・はちみつ・甘味料等の甘味成分、乳製品、全卵・卵白・卵黄・卵粉等の卵類、乳化剤、膨化剤、調味料、香料、抹茶やココアパウダーのような風味粉末、色素、増粘剤、油脂、果汁や野菜汁、豆乳、水等を含んでもよい。さらに、ナッツ類、チョコチップ等の固形物を添加することもできる。
また、焼き菓子用生地は、好ましくはグルテンフリー且つグリアジンフリーである。
また、同様の観点から、焼き菓子用生地の焼き菓子用澱粉の含有量は、焼き菓子用生地全体に対して、100質量%以下であり、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、さらにより好ましくは50質量%以下である。
本実施形態において、焼き菓子は、前述した焼き菓子用澱粉を含む。
焼き菓子の具体例として、パウンドケーキ、マドレーヌ、スポンジケーキ、クッキー、バームクーヘン、フィナンシェが挙げられる。焼き菓子の食感、口どけ、焼成後生地のキメおよび甘さのバランスを向上させる観点から、焼き菓子は、好ましくはパウンドケーキ、マドレーヌ、スポンジケーキ、およびクッキーからなる群から選択される1種であり、より好ましくはパウンドケーキ、マドレーヌおよびスポンジケーキからなる群から選択される1種である。
また、焼き菓子は、好ましくはグルテンフリー且つグリアジンフリーである。
本実施形態において得られる焼き菓子は、成分(A)を含む焼き菓子用澱粉を生地に含むものであるため、食感、口どけ、焼成後生地のキメおよび甘さのバランスに優れる。
また、本実施形態において、焼き菓子の口どけを向上させる方法は、たとえば、焼き菓子用澱粉を生地に含んで焼成することを含む。
また、本実施形態において、焼き菓子の甘味を向上させる方法は、たとえば、焼き菓子用澱粉を生地に含んで焼成することを含む。
以下の例において、断りのない場合、「%」とは、「質量%」である。また、断りのない場合、「部」とは、「質量部」である。
原材料として、主に以下のものを使用した。
(澱粉成分)
アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(成分(A)):アクトボディー ATP−25、株式会社J−オイルミルズ製、冷水膨潤度2.2
リン酸架橋タピオカ澱粉(成分(B)):アクトボディー TP−4W、株式会社J−オイルミルズ製、冷水膨潤度2.1
α化アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(成分(C)):ジェルコール GT−α、株式会社J−オイルミルズ製、冷水膨潤度14.1
(加工油脂)
加工油脂1:マイスタージェネータ、株式会社J−オイルミルズ製
加工油脂2:アクロ10、株式会社J−オイルミルズ製
加工油脂3:スプレンダーHG、株式会社J−オイルミルズ製
加工油脂4:スプレンダーL、株式会社J−オイルミルズ製
(その他の成分)
薄力粉:ハート、日本製粉株式会社製
強力粉:イーグル、日本製粉株式会社製
ベーキングパウダー:Fアップ、株式会社アイコク製
砂糖:上白糖、日新製糖株式会社製
粉糖:日新製糖株式会社製
脱脂粉乳:森永乳業株式会社製
「澱粉・関連糖質実験法」、279−280頁、1986年、学会出版センターに記載される方法で冷水膨潤度を測定した。具体的には以下の方法で測定した。
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社、型番MX50)を用いて、125℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)この乾燥物質量換算で試料1g精秤し、遠心管にとり、メチルアルコール1mLで含浸させ、ガラス棒で撹拌しながら、25℃の蒸留水を加え正確に50mLとした。ときどき振盪し、25℃で20分間放置した。25℃で30分間、2860×gで遠心分離し、沈殿層と上澄層に分けた。
(3)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とした。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とした。
(5)BをCで割った値を冷水膨潤度とした。
本例では、パウンドケーキの作製および評価をおこなった。表1に、パウンドケーキの配合および評価結果を示す。なお、表1に記載の各例において、焼き菓子用澱粉は、成分(A)〜(C)の1種以上を含んで構成される。
1.表1に示した原材料のうち、各加工油脂と砂糖を、5コートのボウルに入れ、ビーターを取り付けたホバートミキサーで中速にて8分間ミキシングした。
2.上記1.に全卵を3回に分けて加えた。添加するごとに、中速にて2分間ミキシングし、混合物を得た。
3.一方、表1に示した原材料のうち、各実施例では成分(A)から(C)およびベーキングパウダーを均一に混ぜ合わせ、ミックス粉を作製した。対照例では、薄力粉と、ベーキングパウダーとを均一に混ぜ合わせてミックス粉を得た。これらを、上記2.の混合物に加え、低速で、1分30秒間混ぜ、生地を得た。生地比重は、約0.8となった。
4.パウンド型(S)に、320gの生地を入れて、以下の条件で焼成した。
オーブン:プリンスオーブン:PJS3−222B、株式会社マルゼン
焼成温度:上段180℃/下段180℃
焼成時間:35分間
2名の専門パネラーの合議により、パウンドケーキの食感、口どけ、焼成後生地のキメ、甘さ(甘味の強さ)を評価した。評価基準は以下のようにし、3点以上を合格とした。
(食感)
4:やわらかくしっとりしている
3:やややわらかくしっとりしている
2:やや硬くパサつきがある
1:硬くパサつきがある
(口どけ)
4:非常に口どけが良い
3:口どけが良い
2:あまり口どけが良くない
1:口どけが良くない
(焼成後生地のキメ)
4:キメが細かい
3:キメがやや細かい
2:ややキメが粗い、あるいはややキメが詰まっている
1:キメが粗い、あるいはキメが詰まっている
(甘さ(甘味の強さ))
4:対照例よりも甘さが強い
3:対照例と同程度に甘い
2:対照例より甘さが弱い
1:対照例より非常に甘さが弱い
また、実施例において、砂糖の添加量を対照例と同量とした場合には、対照例よりも甘味が強く感じられた。また、実施例において、砂糖の添加量を対照例よりも減じた場合にも、対照例と同程度の甘味が感じられた。
本例では、マドレーヌの作製および評価をおこなった。表2に、マドレーヌの配合および評価結果を示す。
1.表2に示した原材料のうち、実施例では成分(A)から(C)からなる焼き菓子用澱粉および砂糖をビニール袋に入れ混ぜ合わせ、ミックス粉を作製した。対照例では、薄力粉と砂糖をビニール袋に入れ混ぜ合わせ、ミックス粉を得た。
2.全卵と、上記1.で得られたミックス粉を5コートのボウルに入れ、ビーターを取り付けたホバートミキサーで均一に攪拌した。
3.50℃で加熱溶解した加工油脂1を加え、均一に攪拌した。
4.1時間、25℃で生地を置いた。
5.生地を絞り袋に入れ、菊型のアルミに、約80gの生地を流し込み、以下の条件で焼成した。
オーブン:プリンスオーブン
焼成温度:上段180℃/下段200℃
焼成時間:17分間
得られたマドレーヌの食感、口どけ、焼成後生地のキメおよび甘さについて、それぞれ前述したパウンドケーキの評価方法と同じ評価基準で評価した。
また、実施例で得られたマドレーヌは、対照例よりも砂糖の添加量の少ないものであるが、対照例と同等の甘味が得られた。
本例では、スポンジケーキの作製および評価をおこなった。表3に、スポンジケーキの配合および評価結果を示す。
1.表3に示した原材料のうち、実施例では、成分(A)と(B)とからなる焼き菓子用澱粉、砂糖およびベーキングパウダーを加え良く混ぜ合わせ、ミックス粉を作製した。対照例では、薄力粉、砂糖およびベーキングパウダーをビニール袋に入れ混ぜ合わせてミックス粉を得た。
2.全卵、各加工油脂および上記1.で得られたミックス粉を5コートのボウルに入れ、ビーターを取り付けたホバートミキサーで中速にて5分ミキシングした。
3.ミキシング後の生地を、6号丸型に280gの生地を入れ、以下の条件で焼成した。
オーブン:プリンスオーブン
生地比重:0.45
焼成条件:上段180℃/下段180℃
焼成時間:23分
得られたスポンジケーキの食感、口どけ、焼成後生地のキメおよび甘さについて、それぞれ前述したパウンドケーキの評価方法に準じて評価した。
また、実施例で得られたスポンジケーキは、対照例よりも砂糖の添加量の少ないものであるが、対照例と同等の甘味が得られた。
本例では、クッキーの作製および評価をおこなった。表4に、クッキーの配合および評価結果を示す。
1.表4に示した原材料のうち、加工油脂1から水までをビーターを取り付けたホバートミキサーで低速にてミキシングした。
2.実施例9では成分(A)、対照例では強力粉を、上記1.で得られた混合物に加えた。
3.ホバートミキサーで、低速にてミキシングし、均一に混ざった後、生地を棒状に成型した。
4.冷凍庫に入れ、30分間、冷やし固めた。
5.包丁で、約7mmの厚さにスライスした。
6.天板にベーキングシートを敷き、生地を並べ、以下の条件で焼成した。
オーブン:プリンスオーブン
焼成温度:上段180℃/下段180℃
焼成時間:15分
得られたクッキーの食感、口どけ、焼成後生地のキメおよび甘さについて、それぞれ前述したパウンドケーキの評価方法と同じ評価基準で評価した。
Claims (14)
- 成分(A):アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を20質量%以上100質量%以下含む、焼き菓子用澱粉。
- 成分(B):リン酸架橋澱粉を当該焼き菓子用澱粉全体に対して0質量%超80質量%以下さらに含有する、請求項1に記載の焼き菓子用澱粉。
- 前記成分(B)の原料澱粉が、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉およびワキシーコーンスターチからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項2に記載の焼き菓子用澱粉。
- 当該焼き菓子用澱粉中の前記成分(A)および(B)の合計に対する前記成分(B)の含有量が質量比で0.4以上0.9以下である、請求項2または3に記載の焼き菓子用澱粉。
- 成分(C):α化澱粉をさらに含む、請求項1乃至4いずれか1項に記載の焼き菓子用澱粉。
- 当該焼き菓子用澱粉中の前記成分(A)および(B)の合計に対する前記成分(C)の含有量が質量比で0.04以上0.08以下である、請求項5に記載の焼き菓子用澱粉。
- 請求項1乃至6いずれか1項に記載の焼き菓子用澱粉を含む、焼き菓子用ミックス粉。
- 当該焼き菓子用ミックス粉がグルテンフリー且つグリアジンフリーである、請求項7に記載の焼き菓子用ミックス粉。
- 請求項1乃至6いずれか1項に記載の焼き菓子用澱粉を含む、焼き菓子用生地。
- 当該焼き菓子用生地がグルテンフリー且つグリアジンフリーである、請求項9に記載の焼き菓子用生地。
- 請求項1乃至6いずれか一項に記載の焼き菓子用澱粉を含む、焼き菓子。
- 当該焼き菓子がパウンドケーキ、マドレーヌ、スポンジケーキ、およびクッキーからなる群から選択される1種である、請求項11に記載の焼き菓子。
- 当該焼き菓子がグルテンフリー且つグリアジンフリーである、請求項11または12に記載の焼き菓子。
- 請求項1乃至6いずれか1項に記載の焼き菓子用澱粉を生地に含んで焼成することを含む、焼き菓子の口どけを向上させる方法。
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