以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1〜図3は、本発明に係る細胞収容容器の第1実施形態を示している。本実施形態の細胞収容容器A10は、容器体1と、蓋体2と、軟質容器部材3とを備えている。詳細は後述するが、図1、図3は、容器体1、蓋体2、軟質容器部材3を組み合わせたアセンブリ状態を示す。図2は、細胞収容容器A10の構成部材の分解斜視図である。
本実施形態においては、容器体1は、第1筒状部11および底部12を備え、第1筒状部11の上端(第1方向一方側端)に開口110を有する容器状とされている。第1筒状部11は、概略円筒状とされており、第1筒状部11の上部外周面には雄ネジ111が形成されている。底部12は、第1筒状部11の下端近傍(第1方向他方側端の近傍)につながり、第1筒状部11の内側を塞いでいる。本実施形態において、第1筒状部11の下端の適所には、スリット112が形成されている。また、本実施形態において、第1筒状部11の下端の適所には、延出片113が設けられている。延出片113は、第1筒状部11につながって径方向外方に延びる部分である。延出片113は、第1筒状部11の周方向においてスリット112とは異なる位置に設けられている。
蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを備え、容器体1の開口110を閉塞し容器体1(本実施形態では後述する軟質容器部材3)を密閉するためのものである。
第1蓋部材2Aは、頂板部21および第2筒状部22を有する。頂板部21は、概略円環状とされており、後述する、第2蓋部材2Bのフランジ23を容器体1の第1筒状部11の上端部114(上端開口の周縁部)との間に挟み付ける部分である。頂板部21の径方向内側には、貫通孔211が形成されている。貫通孔211は、頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれている。
第2筒状部22は、頂板部21の周縁から当該頂板部21の厚さ方向(図中下方)に延びており、概略円筒状とされている。第2筒状部22の内周面には、雌ネジ221が形成されており、当該雌ネジ221は、容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に螺合可能である。
容器体1および第1蓋部材2Aは、例えば半透明または透明のプラスチック材料により形成されている。当該プラスチック材料としては、例えばポリスチレンやメチルペンテンのほか、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどの、好適には透明性を有する材料が用いられるが、これらに限定されない。
第2蓋部材2Bは、例えばゴム成形品であり、図3に示すように、フランジ23と、傾斜部24と、中央厚肉部25(突出部)と、薄肉部26と、複数の第4突起27とを有する。
フランジ23は、概略円環状とされており、頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21と重なっている。フランジ23は、適度な厚さを有し、上下方向(第1方向)の荷重に対して適度な弾性復元力を有する。フランジ23の厚さは、例えば1〜3mm程度である。図3に示したアセンブリ状態において、フランジ23は、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)と第1蓋部材2Aにおける頂板部21との間に介在している。
傾斜部24は、フランジ23の内周縁につながって径方向内方に延びている。傾斜部24は、径方向内方に向かうにつれて下方側(第1方向他方側)に変位するように傾斜している。本実施形態において、傾斜部24の厚さは、フランジ23の厚さと同程度とされている。
中央厚肉部25は、傾斜部24の内周縁につながって径方向内方に延びており、概略円環状とされている。中央厚肉部25は、容器体1における第1筒状部11の内側に当該第1筒状部11と間隔を隔てて収まるとともに下方側(第1方向他方側)に突き出ている。中央厚肉部25は、本発明で言う突出部に相当する。本実施形態において、中央厚肉部25の厚さは、フランジ23の厚さと同程度とされている。
薄肉部26は、第2蓋部材2Bの中央に設けられている。薄肉部26は、中央厚肉部25(フランジ23)の径方向内側を塞いでいる。図3によく表れているように、薄肉部26は、他の部位に比べて厚さが薄くされた部分である。薄肉部26は、上下方向視(第1方向視)において、略円形をなしている。薄肉部26の厚さは、例えば0.2〜0.3mm程度である。本実施形態において、この薄肉部26は、ガス透過性を有する。本実施形態においてまた、薄肉部26は、透明である。薄肉部26は、頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれた貫通孔211と重なっている。
本実施形態において、複数の第4突起27は、中央厚肉部25の下面から下方(第1方向他方側)に向かって突出している。図3から理解されるように、これら第4突起27は、上下方向視(第1方向視)において放射状に設けられている。
上記の第2蓋部材2Bは、可撓性、弾力性を有する素材によって構成されている。第2蓋部材2Bを構成する素材としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。詳細は後述するが第2蓋部材2Bと、内容物(例えば培地)との接触を考慮すると、第2蓋部材2Bの素材としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、第2蓋部材2Bの硬さについては、例えばゴム硬度が20度〜40度程度であるのが好ましい。
本実施形態において、第2蓋部材2Bのフランジ23の外径寸法は、自然状態において第1蓋部材2Aの第2筒状部22の内径寸法より僅かに大きくされている。そしてフランジ23が弾性圧縮されながら第2筒状部22に内嵌されることにより、第2蓋部材2Bは、第1蓋部材2Aに保持される。
本実施形態において、軟質容器部材3は、培養細胞や培地を収容するためのものである。軟質容器部材3は、可撓性、弾力性を有する素材によって構成されている。軟質容器部材3を構成する素材としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。詳細は後述するが軟質容器部材3と、内容物(培養細胞や培地)との接触を考慮すると、軟質容器部材3の素材としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、軟質容器部材3の硬さについては、例えばゴム硬度が20度〜40度程度であるのが好ましい。
軟質容器部材3は、例えばゴム成形品であり、図2、図3に示すように、底壁31と、底壁31から起立する筒状の側壁32と、外向フランジ33とを有する。
底壁31は、平面視略円形状とされている。本実施形態において、側壁32は、概略円筒状とされた円筒状側壁部321と、傾斜状側壁部322とを有する。円筒状側壁部321は、底壁31の外周縁から上方(第1方向一方側)に延びている。傾斜状側壁部322は、円筒状側壁部321の上端につながって径方向外方に延びている。傾斜状側壁部322は、径方向外方に向かうにつれて上方側(第1方向一方側)に変位するように傾斜している。図3に示すように、本実施形態において、傾斜状側壁部322と第2蓋部材2Bにおける傾斜部24との間は、略一定の間隔を隔てている。
外向フランジ33は、概略円環状とされており、傾斜状側壁部322(側壁32)の上端縁から径方向外方に延びている。外向フランジ33は、適度な厚さを有し、上下方向(第1方向)の荷重に対して適度な弾性復元力を有する。外向フランジ33の厚さは、例えば1〜3mm程度である。図3に示したアセンブリ状態において、外向フランジ33は、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)と第2蓋部材2Bにおけるフランジ23との間に介在している。
図3に示したアセンブリ状態において、側壁32が容器体1の開口110に挿通されて、側壁32および底壁31が容器体1の第1筒状部11に内挿される。なお、外向フランジ33の下面には、環状突起34が設けられている。環状突起34の外径寸法は、第1筒状部11の内径寸法と同程度または当該内径寸法よりも僅かに大きくされている。この環状突起34は、容器体1の内側に軟質容器部材3をセットする際の位置決めとして機能する。
本実施形態において、底壁31には複数の第1突起35が設けられている。これら第1突起35は、底壁31から上方(第1方向一方側)に向かって突出している。図3から理解されるように、これら第1突起35は、上下方向視(第1方向視)において放射状に設けられている。また、本実施形態において、複数の第1突起35は、第2蓋部材2Bにおける第4突起27に対応する位置に設けられている。
本実施形態において、底壁31の中央には容器部材薄肉部311が設けられている。図4によく表れているように、容器部材薄肉部311は、他の部位に比べて厚さが薄くされた部分である。容器部材薄肉部311は、上下方向視(第1方向視)において、略円形をなしている。容器部材薄肉部311の厚さは、例えば0.2〜0.3mm程度である。この容器部材薄肉部311は、透明である。
次に、細胞収容容器A10の使用方法および作用について説明する。
細胞収容容器A10は、培養細胞あるいは生体組織や培地を容器体1(本実施形態では特に軟質容器部材3)に収容し、培養状態を維持しながら密閉保管し、また輸送(培養状態維持輸送)するのに使用される。容器体1(軟質容器部材3)に収容される培養細胞、生体組織や培地については、特に限定されるものではない。
例えば、再生医療に使用する細胞製剤を懸濁液状であったり、あるいは、支持体に積層した細胞シートの状態で収容することが出来る。凍結されていない細胞懸濁液や細胞シートを輸送する場合、培地が波打つことで細胞が損傷することを防止するため、軟質容器部材3内全体に培地を満たして培地の動きを抑える必要がある。
図4は、軟質容器部材3内を培地M1で満たしたときの、細胞収容容器A10のアセンブリ状態を示している。本実施形態において、蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを含んで構成されている。第2蓋部材2Bは、可撓性を有する材料で形成されており、第1蓋部材2Aに保持されている。そして、第1蓋部材2A(第2筒状部22)の雌ネジ221を容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に締め込むことで、第2蓋部材2Bにおいて厚肉であるフランジ23が、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)と第1蓋部材2Aの頂板部21とによって挟み付けられて、アセンブリ状態が維持される。第2蓋部材2Bは、外周側のフランジ23から中央の薄肉部26に至る一連の膜状である。これにより、軟質容器部材3に収容された内容物(培養細胞や培地)は液封されている。したがって、培養状態維持輸送の際、振動等によって内容物が溢れることはない。なお、容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111および第1蓋部材2A(第2筒状部22)の雌ネジ221は、本発明で言う係止手段を構成する。このように、本実施形態によれば、容器体1、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bの協働によって、軟質容器部材3の内容物を適切に液封することができる。
本実施形態において、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、フランジ23の内側を塞いでいる。また、薄肉部26は、第1蓋部材2Aの頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれた貫通孔211の少なくとも一部と重なっている。このような構成によれば、容器体1(軟質容器部材3)を密閉する際、可撓性を有する薄肉部26は、容器内圧の変化に追従して変位可能である。このため、軟質容器部材3内全体に培地を満たして蓋体2により密閉する際、軟質容器部材3に溢れる程度の培地を受容させて蓋体2を締めると、薄肉部26が内圧変化を吸収して内部容積が僅かに増加するように変位(図4において図中上方に変位)し、軟質容器部材3内に気泡が噛み込むことを抑制することができる。したがって、軟質容器部材3内に空間を残さず、軟質容器部材3内全体を培地で満たすことができるので、培養状態維持輸送の際、振動等による内容物(培地等)の波打ちを無くすことができる。その結果、軟質容器部材3内において培地に浸される細胞や生体組織については、損傷を抑制し、安全に培養状態を維持して輸送することができる。
また、微小重力環境における細胞培養を研究する用途においては、細胞収容容器を上下左右に360°回転させることによって無重力に近い状態を作り出す。ここで、容器内に気泡が残っていると実験結果に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施形態の細胞収容容器A10は、このような用途においても好都合に使用することができる。
本実施形態においてまた、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、ガス透過性を有する。このため、容器体1(軟質容器部材3)の内容物について、当該容器体1(軟質容器部材3)の外部との通気状態が維持される。したがって、本実施形態によれば、密閉保管時ないし輸送時において、容器体1(軟質容器部材3)の内容物について通気状態での培養を行うことができる。
本実施形態においてさらに、薄肉部26は透明である。このような構成によれば、細胞収容容器A10の上部から、透明な薄肉部26を介して容器体1(軟質容器部材3)内の状況を観察することが可能である。
本実施形態において、容器体1と蓋体2(第2蓋部材2B)との間に軟質容器部材3が介装されており、この軟質容器部材3に培養細胞あるいは生体組織と培地が収容される。そして、この軟質容器部材3が可撓性を有することにより、軟質容器部材3の内部に収容される細胞や生体組織が当該軟質容器部材3に直接衝突しても損傷しにくい。したがって、軟質容器部材3を具備する細胞収容容器A10は、培養状態維持輸送に適する。
第2蓋部材2Bは複数の第4突起27を有し、これら第4突起27は、容器体1(軟質容器部材3)の内側において下方(第1方向他方側)に突出している。また、軟質容器部材3の底壁31には複数の第1突起35が設けられており、これら第1突起35は、上方(第1方向一方側)に突出している。このような構成によれば、図4に示すように、第2蓋部材2B側の第4突起27と軟質容器部材3側の第1突起35との間に、支持体4を安定的に載置することができる。図5に示すように、支持体4は、例えばフレーム41および薄膜42を有する。フレーム41はリング状とされており、薄膜42はこのフレーム41の内側を塞ぐように形成されている。薄膜42は、培養細胞(細胞シート)が載置される部分であり、薄膜42上の培養細胞が培地に浸される。したがって、本実施形態によれば、安定的に配置された支持体4を介して細胞シートの培養が適切に行われる。
また、軟質容器部材3を具備する構成によれば、例えば密閉容器に収容される培養細胞や生体組織、あるいは支持体4のサイズ等に応じて密閉容器の内容積を変更する場合、軟質容器部材3のサイズを変更することにより容易に対応可能である。
なお、本実施形態においては、軟質容器部材3の内部に支持体4を安定的に載置するため、第2蓋部材2Bにおける第4突起27および軟質容器部材3における第1突起35を具備する構成としたが、支持体4を考慮しない場合、上記の第4突起27や第1突起35を具備しない構成としてもよい。
本実施形態において、軟質容器部材3における底壁31の中央には、容器部材薄肉部311が設けられている。この容器部材薄肉部311は透明である。容器体1が透明な材料により形成されていれば、細胞収容容器A10の下部から容器体1の底部12および軟質容器部材3の容器部材薄肉部311を介して、軟質容器部材3内の状況を観察することも可能である。
蓋体2(第2蓋部材2B)は中央厚肉部25(突出部)を有しており、中央厚肉部25は、容器体1(軟質容器部材3)の内側において下方(第1方向他方側)に向かって突き出ている。このような構成によれば、軟質容器部材3内における培地等の収容空間が減じられている。したがって、培養状態維持輸送に際し、培地M1の使用量の削減を図ることができる。
細胞収容容器A10を輸送した後、容器体1および蓋体2のネジ係止部を緩めることで容器体1から蓋体2を取り外すことができ、容器体1(軟質容器部材3)の上部を開放することができる。したがって、粘着フィルム等で容器開口を閉塞する場合と異なり、蓋体2を取り外す際、容器体1(軟質容器部材3)の内容物が溢れるといった不都合は防止される。
図6〜図19は、上記の細胞収容容器A10の変形例を示している。なお、図6以降の図面においては、上記実施形態と同一または類似の要素には同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
図6に示した細胞収容容器A11において、第2蓋部材2Bに設けられた第4突起27、および軟質容器部材3に設けられた第1突起35の構成のみが上記の細胞収容容器A10と異なっている。同図から理解されるように、本変形例において、第4突起27および第1突起35は、各々、円環状とされた単一の突起である。本変形例の細胞収容容器A11において、上記の細胞収容容器A10と同様の作用効果を奏する。
図7に示した細胞収容容器A12においては、上記の細胞収容容器A10における軟質容器部材3を具備しておらず、それに伴い容器体1の構成が上記の細胞収容容器A10と異なっている。同図から理解されるように、本変形例において、容器体1の底部12には、複数の第2突起13が設けられている。これら第2突起13は、底部12から上方(第1方向一方側)に向かって突出している。本変形例において、これら第2突起13は、上下方向視(第1方向視)において放射状に設けられている。また、本変形例において、複数の第2突起13は、第2蓋部材2Bにおける第4突起27に対応する位置に設けられている。
本変形例の細胞収容容器A12においては、培養細胞あるいは生体組織や培地を容器体1に収容する。図8は、容器体1内を培地M1で満たしたときの、細胞収容容器A12のアセンブリ状態を示している。本変形例において、蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを含んで構成されている。第2蓋部材2Bは、可撓性を有する材料で形成されており、第1蓋部材2Aに保持されている。そして、第1蓋部材2A(第2筒状部22)の雌ネジ221を容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に締め込むことで、第2蓋部材2Bにおいて厚肉であるフランジ23が、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)と第1蓋部材2Aの頂板部21とによって挟み付けられて、アセンブリ状態が維持される。第2蓋部材2Bは、外周側のフランジ23から中央の薄肉部26に至る一連の膜状である。これにより、容器体1に収容された内容物(培養細胞や培地)は液封されている。したがって、培養状態維持輸送の際、振動等によって内容物が溢れることはない。このように、本変形例の細胞収容容器A12によれば、容器体1、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bの協働によって、容器体1の内容物を適切に液封することができる。
本変形例において、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、フランジ23の内側を塞いでいる。また、薄肉部26は、第1蓋部材2Aの頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれた貫通孔211の少なくとも一部と重なっている。このような構成によれば、容器体1を密閉する際、可撓性を有する薄肉部26は、容器内圧の変化に追従して変位可能である。このため、容器体1内全体に培地を満たして蓋体2により密閉する際、容器体1に溢れる程度の培地を受容させて蓋体2を締めると、薄肉部26が内圧変化を吸収して内部容積が僅かに増加するように変位(図8において図中上方に変位)し、容器体1内に気泡が噛み込むことを抑制することができる。したがって、容器体1内に空間を残さず、容器体1内全体を培地で満たすことができるので、培養状態維持輸送の際、振動等による内容物(培地等)の波打ちを無くすことができる。その結果、容器体1内において培地に浸される細胞や生体組織については、損傷を抑制し、安全に培養状態を維持して輸送することができる。
また、微小重力環境における細胞培養を研究する用途においては、細胞収容容器を上下左右に360°回転させることによって無重力に近い状態を作り出す。ここで、容器内に気泡が残っていると実験結果に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本変形例の細胞収容容器A12は、このような用途においても好都合に使用することができる。
本変形例においてまた、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、ガス透過性を有する。このため、容器体1の内容物について、当該容器体1の外部との通気状態が維持される。したがって、本変形例によれば、密閉保管時ないし輸送時において、容器体1の内容物について通気状態での培養を行うことができる。
本変形例においてさらに、薄肉部26は透明である。このような構成によれば、細胞収容容器A12の上部から、透明な薄肉部26を介して容器体1内の状況を観察することが可能である。
第2蓋部材2Bは複数の第4突起27を有し、これら第4突起27は、容器体1の内側において下方(第1方向他方側)に突出している。また、容器体1の底部12には、複数の第2突起13が設けられており、これら第2突起13は、上方(第1方向一方側)に突出している。このような構成によれば、図8に示すように、第2蓋部材2B側の第4突起27と容器体1側の第2突起13との間に、支持体4を安定的に載置することができる。支持体4は、例えばフレーム41および薄膜42を有する。フレーム41はリング状とされており、薄膜42はこのフレーム41の内側を塞ぐように形成されている。薄膜42は、培養細胞(細胞シート)が載置される部分であり、薄膜42上の培養細胞が培地に浸される。したがって、本変形例によれば、安定的に配置された支持体4を介して細胞シートの培養が適切に行われる。
蓋体2(第2蓋部材2B)は中央厚肉部25(突出部)を有しており、中央厚肉部25は、容器体1の内側において下方(第1方向他方側)に向かって突き出ている。このような構成によれば、容器体1内における培地等の収容空間が減じられている。したがって、培養状態維持輸送に際し、培地M1の使用量の削減を図ることができる。
細胞収容容器A12を輸送した後、容器体1および蓋体2のネジ係止部を緩めることで容器体1から蓋体2を取り外すことができ、容器体1の上部を開放することができる。したがって、粘着フィルム等で容器開口を閉塞する場合と異なり、蓋体2を取り外す際、容器体1の内容物が溢れるといった不都合は防止される。
図9に示した細胞収容容器A13においては、上記の細胞収容容器A10における軟質容器部材3を具備しておらず、その一方、支持部材5を備えている。
支持部材5は、例えば可撓性、弾力性を有する素材によって構成されている。支持部材5を構成する素材としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。支持部材5と、内容物(培地など)との接触を考慮すると、支持部材5の素材としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、支持部材5の硬さについては、例えばゴム硬度が20度〜40度程度であるのが好ましい。
支持部材5は、例えばゴム成形品であり、環状底板51と、環状底板51から起立する複数の第3突起52とを有する。環状底板51は、概略円環状で一定厚さの板部であり、容器体1の底部12に載置される。環状底板51の外径寸法は、第1筒状部11の内径寸法と同程度または当該内径寸法よりも僅かに大きくされている。これにより、第1筒状部11(容器体1)に対する支持部材5の位置決めが図られる。
複数の第3突起52は、環状底板51から上方(第1方向一方側)に向かって突出している。これら第3突起52は、径寸法が異なる2種の同心円の部分円弧形状をなすように設けられる。また、第3突起52は、第2蓋部材2Bにおいて放射状に設けられた第4突起27と径方向寸法が対応しており、上下方向視(第1方向視)において第4突起27と重なる位置に設けられている。
本変形例の細胞収容容器A13においては、培養細胞あるいは生体組織や培地を容器体1に収容する。図10は、容器体1内を培地M1で満たしたときの、細胞収容容器A13のアセンブリ状態を示している。本変形例において、蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを含んで構成されている。第2蓋部材2Bは、可撓性を有する材料で形成されており、第1蓋部材2Aに保持されている。そして、第1蓋部材2A(第2筒状部22)の雌ネジ221を容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に締め込むことで、第2蓋部材2Bにおいて厚肉であるフランジ23が、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)と第1蓋部材2Aの頂板部21とによって挟み付けられて、アセンブリ状態が維持される。第2蓋部材2Bは、外周側のフランジ23から中央の薄肉部26に至る一連の膜状である。これにより、容器体1に収容された内容物(培養細胞や培地)は液封されている。したがって、培養状態維持輸送の際、振動等によって内容物が溢れることはない。このように、本変形例の細胞収容容器A13によれば、容器体1、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bの協働によって、容器体1の内容物を適切に液封することができる。
第2蓋部材2Bは複数の第4突起27を有し、これら第4突起27は、容器体1の内側において下方(第1方向他方側)に突出している。また、容器体1の底部12に載置された支持部材5には、複数の第3突起52が設けられており、これら第3突起52は、上方(第1方向一方側)に突出している。このような構成によれば、図10に示すように、第2蓋部材2B側の第4突起27と支持部材5側の第3突起52との間に、支持体4を安定的に載置することができる。支持体4は、例えばフレーム41および薄膜42を有する。フレーム41はリング状とされており、薄膜42はこのフレーム41の内側を塞ぐように形成されている。薄膜42は、培養細胞(細胞シート)が載置される部分であり、薄膜42上の培養細胞が培地に浸される。したがって、本変形例によれば、安定的に配置された支持体4を介して細胞シートの培養が適切に行われる。
その他にも、本変形例の細胞収容容器A13において、上記の細胞収容容器A12と同様の作用効果を奏する。
図11に示した細胞収容容器A14においては、上記の細胞収容容器A10における軟質容器部材3を具備しておらず、それに伴い蓋体2(第2蓋部材2B)の構成が上記の細胞収容容器A10と異なっている。
本変形例において、第2蓋部材2Bは、フランジ23と、円筒部24’と、中央厚肉部25(突出部)と、薄肉部26とを有する。即ち、細胞収容容器A14は、上記の細胞収容容器A10における傾斜部24に代えて円筒部24'を具備しており、また上記の細胞収容容器A10における第4突起27を具備していない。円筒部24'は、フランジ23の内周縁につながって下方(第1方向他方側)に延びている。円筒部24’の厚さは、フランジ23の厚さと同程度とされている。この円筒部24'の下端に中央厚肉部25がつながっている。
本変形例の細胞収容容器A14においては、培養細胞あるいは生体組織や培地を容器体1に収容する。図11は、細胞収容容器A14のアセンブリ状態を示している。本変形例において、蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを含んで構成されている。第2蓋部材2Bは、可撓性を有する材料で形成されており、第1蓋部材2Aに保持されている。そして、第1蓋部材2A(第2筒状部22)の雌ネジ221を容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に締め込むことで、第2蓋部材2Bにおいて厚肉であるフランジ23が、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)と第1蓋部材2Aの頂板部21とによって挟み付けられて、アセンブリ状態が維持される。第2蓋部材2Bは、外周側のフランジ23から中央の薄肉部26に至る一連の膜状である。これにより、容器体1に収容された内容物(培養細胞や培地)は液封されている。したがって、培養状態維持輸送の際、振動等によって内容物が溢れることはない。このように、本変形例の細胞収容容器A14によれば、容器体1、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bの協働によって、容器体1の内容物を適切に液封することができる。
本変形例において、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、フランジ23の内側を塞いでいる。また、薄肉部26は、第1蓋部材2Aの頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれた貫通孔211の少なくとも一部と重なっている。このような構成によれば、容器体1を密閉する際、可撓性を有する薄肉部26は、容器内圧の変化に追従して変位可能である。このため、容器体1内全体に培地を満たして蓋体2により密閉する際、容器体1に溢れる程度の培地を受容させて蓋体2を締めると、薄肉部26が内圧変化を吸収して内部容積が僅かに増加するように変位(図11において図中上方に変位)し、容器体1内に気泡が噛み込むことを抑制することができる。したがって、容器体1内に空間を残さず、容器体1内全体を培地で満たすことができるので、培養状態維持輸送の際、振動等による内容物(培地等)の波打ちを無くすことができる。その結果、容器体1内において培地に浸される細胞や生体組織については、損傷を抑制し、安全に培養状態を維持して輸送することができる。
また、微小重力環境における細胞培養を研究する用途においては、細胞収容容器を上下左右に360°回転させることによって無重力に近い状態を作り出す。ここで、容器内に気泡が残っていると実験結果に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本変形例の細胞収容容器A14は、このような用途においても好都合に使用することができる。
本変形例においてまた、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、ガス透過性を有する。このため、容器体1の内容物について、当該容器体1の外部との通気状態が維持される。したがって、本変形例によれば、密閉保管時ないし輸送時において、容器体1の内容物について通気状態での培養を行うことができる。
本変形例においてさらに、薄肉部26は透明である。このような構成によれば、細胞収容容器A14の上部から、透明な薄肉部26を介して容器体1内の状況を観察することが可能である。
蓋体2(第2蓋部材2B)は中央厚肉部25(突出部)を有しており、中央厚肉部25は、容器体1の内側において下方(第1方向他方側)に向かって突き出ている。このような構成によれば、容器体1内における培地等の収容空間が減じられている。したがって、培養状態維持輸送に際し、培地の使用量の削減を図ることができる。
細胞収容容器A14を輸送した後、容器体1および蓋体2のネジ係止部を緩めることで容器体1から蓋体2を取り外すことができ、容器体1の上部を開放することができる。したがって、粘着フィルム等で容器開口を閉塞する場合と異なり、蓋体2を取り外す際、容器体1の内容物が溢れるといった不都合は防止される。
図12に示した細胞収容容器A15においては、蓋体2の構成が図11に示した上記の細胞収容容器A14と異なっている。
本変形例において、蓋体2は、2本のポート281,282を有する。本変形例において、ポート281,282は、頂板部21(第1蓋部材2A)の適所に一体的に形成されている。また、ポート281,282は、フランジ23(第2蓋部材2B)に形成されたポート用貫通孔231に嵌挿している。ポート用貫通孔231の内径寸法は、自然状態においてポート281,282の外径寸法よりも僅かに小さくされている。各ポート281,282は、ポート用貫通孔231に圧入されている。これにより、ポート281,282が嵌挿したポート用貫通孔231はシールされている。
ポート281,282は、容器体1の内部に培地等を供給し、あるいは容器体1内の培地を外部に排出するためのものである。ポート281,282は、各々、上端が外部に開放し、かつ下端が容器体1の内側空間において開放する。各ポート281,282の上端には、図示しないチューブが適宜接続される。例えば一方のポート281は、容器体1の内部に例えば培地などを供給するために用いられる。他方のポート282は、容器体1の内部の培地などを排出するために用いられる。
本変形例の細胞収容容器A15においては、培養細胞あるいは生体組織や培地を容器体1に収容する。図13は、容器体1内を培地M1で満たしたときの、細胞収容容器A15のアセンブリ状態を示している。本変形例において、蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを含んで構成されている。第2蓋部材2Bは、可撓性を有する材料で形成されており、第1蓋部材2Aに保持されている。そして、第1蓋部材2A(第2筒状部22)の雌ネジ221を容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に締め込むことで、第2蓋部材2Bにおいて厚肉であるフランジ23が、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)と第1蓋部材2Aの頂板部21とによって挟み付けられて、アセンブリ状態が維持される。第2蓋部材2Bは、外周側のフランジ23から中央の薄肉部26に至る一連の膜状である。これにより、容器体1に収容された内容物(培養細胞や培地)は液封されている。したがって、培養状態維持輸送の際、振動等によって内容物が溢れることはない。このように、本変形例の細胞収容容器A15によれば、容器体1、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bの協働によって、容器体1の内容物を適切に液封することができる。
細胞培養に際し、例えば、容器体1内にポート281を介して培地、細胞懸濁液や所定のガス(例えばCO2ガス等)が供給される。ポート281に接続されたチューブ(図示略)には、例えば培地、細胞懸濁液や所定の雰囲気ガスが充填された容器が接続されており、これら容器からバルブの切り換え等により所望の供給物が適宜選択され、ポート281を介して容器体1内に供給される。細胞培養中においては、例えば自動培養装置の温度調整機能により容器体1の内部が所定の温度に維持される。また、容器体1内の培地はポート282を介して適宜排出されて交換させられる。
本変形例において、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、フランジ23の内側を塞いでいる。また、薄肉部26は、第1蓋部材2Aの頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれた貫通孔211の少なくとも一部と重なっている。このような構成によれば、容器体1を密閉する際、可撓性を有する薄肉部26は、容器内圧の変化に追従して変位可能である。このため、容器体1内全体に培地を満たして蓋体2により密閉する際、容器体1に溢れる程度の培地を受容させて蓋体2を締めると、薄肉部26が内圧変化を吸収して内部容積が僅かに増加するように変位(図13において図中上方に変位)し、容器体1内に気泡が噛み込むことを抑制することができる。したがって、容器体1内に空間を残さず、容器体1内全体を培地で満たすことができるので、培養状態維持輸送の際、振動等による内容物(培地等)の波打ちを無くすことができる。その結果、容器体1内において培地に浸される細胞や生体組織については、損傷を抑制し、安全に培養状態を維持して輸送することができる。
また、微小重力環境における細胞培養を研究する用途においては、細胞収容容器を上下左右に360°回転させることによって無重力に近い状態を作り出す。ここで、容器内に気泡が残っていると実験結果に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本変形例の細胞収容容器A15は、このような用途においても好都合に使用することができる。
本変形例においてまた、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、ガス透過性を有する。このため、容器体1の内容物について、当該容器体1の外部との通気状態が維持される。したがって、本変形例によれば、密閉保管時ないし輸送時において、容器体1の内容物について通気状態での培養を行うことができる。
本変形例においてさらに、薄肉部26は透明である。このような構成によれば、細胞収容容器A15の上部から、透明な薄肉部26を介して容器体1内の状況を観察することが可能である。
蓋体2に設けられたポート281,282は、当該蓋体2の中央部分(中央厚肉部25および薄肉部26)を避けて偏倚した位置に設けられている。このような構成によれば、細胞収容容器A15の上部から、透明な薄肉部26を介して容器体1内の状況を観察する際に、ポート281,282が妨げになることは回避される。
蓋体2(第2蓋部材2B)は中央厚肉部25(突出部)を有しており、中央厚肉部25は、容器体1の内側において下方(第1方向他方側)に向かって突き出ている。このような構成によれば、容器体1内における培地等の収容空間が減じられている。したがって、培養状態維持輸送に際し、培地の使用量の削減を図ることができる。
細胞収容容器A15を輸送した後、容器体1および蓋体2のネジ係止部を緩めることで容器体1から蓋体2を取り外すことができ、容器体1の上部を開放することができる。したがって、粘着フィルム等で容器開口を閉塞する場合と異なり、蓋体2を取り外す際、容器体1の内容物が溢れるといった不都合は防止される。
図14に示した細胞収容容器A16においては、蓋体2に設けられたポート281,282の先端を閉塞可能なキャップ283をさらに備える。ポート281,282の先端部の外周面には雄ネジが形成されている。キャップ283は、例えば概略円筒状に延びる筒状部分284の上端が頂部285によって塞がれた構成とされる。筒状部分284の内周面には雌ネジが形成され、かつ頂部285には例えばゴム製シート状のシール部材286が設けられている。そして、キャップ283の上記雌ネジを各ポート281,282の上記雄ネジに締め込むことで、ポート281,282の先端が閉塞される。
本変形例の細胞収容容器A16において、上記の細胞収容容器A15と同様の作用効果を奏する。
図15に示した細胞収容容器A17においては、蓋体2に設けられたポート281,282の取付構造のみが図12に示した上記の細胞収容容器A15と異なっている。本変形例において、ポート281,282は、フランジ23(第2蓋部材2B)形成されたポート用貫通孔231に嵌挿しており、第2蓋部材2Bに支持されている。また、フランジ23においてポート用貫通孔231の形成領域の周囲には、他の部位よりも厚さが大きくなるように上方に突出する厚肉部232が形成されている。ポート用貫通孔231の内径寸法は、自然状態においてポート281,282の外径寸法よりも僅かに小さくされている。各ポート281,282は、ポート用貫通孔231に圧入されている。これにより、ポート281,282が嵌挿したポート用貫通孔231はシールされている。
本変形例の細胞収容容器A17において、上記の細胞収容容器A15と同様の作用効果を奏する。
図16〜図18に示した細胞収容容器A18においては、上記の細胞収容容器A10と比べて、第1蓋部材2A、第2蓋部材2B、および軟質容器部材3の構成が異なっている。上記の細胞収容容器A10では、第2蓋部材2Bに第4突起27が設けられていたが、細胞収容容器A10において当該第4突起27を具備していない。一方、軟質容器部材3の底壁31には、複数の第1突起35が設けられている。これら第1突起35は、底壁31から上方(第1方向一方側)に向かって突出している。図17、図18から理解されるように、これら第1突起35は、上下方向視(第1方向視)において放射状に設けられている。細胞収容容器A18において、底壁31はその厚さが均一とされており、細胞収容容器A10における容器部材薄肉部311を有さない。そして、各第1突起35は、外周側端が円筒状側壁部321につながるとともに、内周側端が底壁31の中心寄りに位置する。
第2蓋部材2Bにおいて、中央厚肉部25の下面と薄肉部26の下面とが面一状である。本変形例において、第1突起35の先端と、中央厚肉部25の下面ないし薄肉部26の下面との隙間は、比較的狭くされている。
本変形例において、第1蓋部材2Aの頂板部21には、凸状部212が設けられている。図18によく表れているように、凸状部212は、頂板部21の厚さ方向を向く主面21aから上方(第1方向の一方側)に突き出ている。本実施形態において凸状部212は、互いに分離して複数設けられている。これら凸状部212の先端212aがなす平面P1は、頂板部21の主面21aと略平行である。ここで、「略平行」とは、平面P1と主面21aとが平行となるように設計されるが、寸法公差等により多少の平行度のバラつきがある場合も含むものである。また、図16〜図18から理解されるように、本実施形態において、凸状部212は、上下方向視において同心円の円弧状に設けられ、隣接する凸状部212の間が空隙となっている。これにより、凸状部212は、上下方向視(頂板部21の厚さ方向視)において閉じた環状を形成しない。
なお、図18によく表れているように、容器体1の底部12には、その外周縁から下方に突出するスカート部121がつながっている。そして、複数の凸状部212により形成される同心円円弧の外周縁の外径寸法は、スカート部121の内径寸法よりも僅かに小さくされている。このような構成によれば、細胞収容容器A18の凸状部212が、他の細胞収容容器A18のスカート部121に嵌まるようにして当該他の細胞収容容器A18を重ねることができる。したがって、複数の細胞収容容器A18を安定姿勢で積み重ねることができる。
本変形例の細胞収容容器A18においては、培養細胞あるいは生体組織や培地を軟質容器部材3に収容する。図19は、軟質容器部材3内を培地M1で満たしたときの、細胞収容容器A18のアセンブリ状態を示している。本変形例において、蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを含んで構成されている。第2蓋部材2Bは、可撓性を有する材料で形成されており、第1蓋部材2Aに保持されている。そして、第1蓋部材2A(第2筒状部22)の雌ネジ221を容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に締め込むことで、第2蓋部材2Bにおいて厚肉であるフランジ23が、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)と第1蓋部材2Aの頂板部21とによって挟み付けられて、アセンブリ状態が維持される。第2蓋部材2Bは、外周側のフランジ23から中央の薄肉部26に至る一連の膜状である。これにより、軟質容器部材3に収容された内容物(培養細胞や培地)は液封されている。したがって、培養状態維持輸送の際、振動等によって内容物が溢れることはない。このように、本変形例の細胞収容容器A18によれば、容器体1、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bの協働によって、軟質容器部材3の内容物を適切に液封することができる。
本変形例の細胞収容容器A18において、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、フランジ23の内側を塞いでいる。また、薄肉部26は、第1蓋部材2Aの頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれた貫通孔211の少なくとも一部と重なっている。このような構成によれば、容器体1(軟質容器部材3)を密閉する際、可撓性を有する薄肉部26は、容器内圧の変化に追従して変位可能である。このため、軟質容器部材3内全体に培地を満たして蓋体2により密閉する際、軟質容器部材3に溢れる程度の培地を受容させて蓋体2を締めると、薄肉部26が内圧変化を吸収して内部容積が僅かに増加するように変位(図19において図中上方に変位)し、軟質容器部材3内に気泡が噛み込むことを抑制することができる。したがって、軟質容器部材3内に空間を残さず、軟質容器部材3内全体を培地で満たすことができるので、培養状態維持輸送の際、振動等による内容物(培地等)の波打ちを無くすことができる。その結果、軟質容器部材3内において培地に浸される細胞や生体組織については、損傷を抑制し、安全に培養状態を維持して輸送することができる。
また、微小重力環境における細胞培養を研究する用途においては、細胞収容容器を上下左右に360°回転させることによって無重力に近い状態を作り出す。ここで、容器内に気泡が残っていると実験結果に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本変形例の細胞収容容器A18は、このような用途においても好都合に使用することができる。
本変形例の細胞収容容器A18においてまた、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、ガス透過性を有する。このため、容器体1(軟質容器部材3)の内容物について、当該容器体1(軟質容器部材3)の外部との通気状態が維持される。したがって、本変形例によれば、密閉保管時ないし輸送時において、容器体1(軟質容器部材3)の内容物について通気状態での培養を行うことができる。
本変形例においてさらに、薄肉部26は透明である。このような構成によれば、細胞収容容器A18の上部から、透明な薄肉部26を介して容器体1(軟質容器部材3)内の状況を観察することが可能である。
本変形例において、容器体1と蓋体2(第2蓋部材2B)との間に軟質容器部材3が介装されており、この軟質容器部材3に培養細胞あるいは生体組織と培地が収容される。そして、この軟質容器部材3が可撓性を有することにより、軟質容器部材3の内部に収容される細胞や生体組織が当該軟質容器部材3に直接衝突しても損傷しにくい。したがって、軟質容器部材3を具備する細胞収容容器A18は、培養状態維持輸送に適する。
軟質容器部材3の底壁31には複数の第1突起35が設けられており、これら第1突起35は、上方(第1方向一方側)に突出している。このような構成によれば、図19に示すように、第2蓋部材2B側の中央厚肉部25ないし薄肉部26と軟質容器部材3側の第1突起35との間に、支持体4を安定的に載置することができる。支持体4は、例えばフレーム41および薄膜42を有する。フレーム41はリング状とされており、薄膜42はこのフレーム41の内側を塞ぐように形成されている。薄膜42は、培養細胞(細胞シート)が載置される部分であり、薄膜42上の培養細胞が培地に浸される。したがって、本変形例によれば、安定的に配置された支持体4を介して細胞シートの培養が適切に行われる。
また、軟質容器部材3を具備する構成によれば、例えば密閉容器に収容される培養細胞や生体組織、あるいは支持体4のサイズ等に応じて密閉容器の内容積を変更する場合、軟質容器部材3のサイズを変更することにより容易に対応可能である。
蓋体2(第2蓋部材2B)は中央厚肉部25(突出部)を有しており、中央厚肉部25は、容器体1(軟質容器部材3)の内側において下方(第1方向他方側)に向かって突き出ている。このような構成によれば、軟質容器部材3内における培地等の収容空間が減じられている。したがって、培養状態維持輸送に際し、培地M1の使用量の削減を図ることができる。
細胞収容容器A18を輸送した後、容器体1および蓋体2のネジ係止部を緩めることで容器体1から蓋体2を取り外すことができ、容器体1(軟質容器部材3)の上部を開放することができる。したがって、粘着フィルム等で容器開口を閉塞する場合と異なり、蓋体2を取り外す際、容器体1(軟質容器部材3)の内容物が溢れるといった不都合は防止される。
細胞収容容器A18において、第1蓋部材2Aの頂板部21には凸状部212が設けられている。このような構成によれば、別の収納容器の中に当該細胞収容容器A18を収納して輸送する場合に便利である。細胞収容容器A18の輸送時において、たとえば上記収納容器の容器部材と蓋部材により容器体1と蓋体2を上下から挟む。本実施形態において、凸状部212の先端212aがなす平面P1は、頂板部21の主面21aと略平行である。また、凸状部212は、上下方向視(頂板部21の厚さ方向視)において閉じた環状を形成しない。これにより、上記収納容器の内部を所定のガス環境下にする場合、収納容器の蓋部材によって薄肉部26が塞がれることはない。したがって、容器体1(軟質容器部材3)について、その外部(上記収納容器の内部空間)との通気状態を維持しながら、所定のガス環境下での培養状態維持輸送が可能となる。
図20〜図23に示した細胞収容容器A19においては、上記の細胞収容容器A18と比べて、軟質容器部材3の構成が異なっている。具体的には、底壁31に設けられた複数の第1突起35の構成が異なっている。また、細胞収容容器A18における環状突起34に替えて、複数の延出片36が設けられている。
図21〜図23から理解されるように、本変形例において、複数の第1突起35は、底壁31の所定部部位が上方(第1方向一方側)に隆起することにより形成されたものである。これら第1突起35は、各々が大略扇形状に形成されており、上下方向視(第1方向視)において等間隔となるように放射状に設けられている。
本発明でいう第1突起35の態様としては、上記の細胞収容容器A18等のように、全体が平面状の底壁31から部分的に上方につながる構成であってもよいし、本変形例のように底壁31そのものの一部が上方に隆起する構成であってもよい。このことは、上記の第2突起13、第3突起52、第4突起27それぞれについても同様である。
複数の延出片36は、各々が傾斜状側壁部322の外周面から径方向外方に延びている。複数の延出片36は、傾斜状側壁部322の周方向において等間隔に設けられている。複数の延出片36は、容器体1の内側に軟質容器部材3をセットする際、容器体1の第1筒状部11の内周面に接触する。複数の延出片36は、容器体1の内側に軟質容器部材3をセットする際の位置決めとして機能する。
本変形例の細胞収容容器A19においても、第1蓋部材2Aの頂板部21には複数の凸状部212が設けられている。また、容器体1の底部12にはスカート部121が設けられている。これら凸状部212およびスカート部121の構成は、上記の細胞収容容器A18と同様である。凸状部212およびスカート部121を具備する構成によれば、細胞収容容器A19の凸状部212が、他の細胞収容容器A19のスカート部121に嵌まるようにして当該他の細胞収容容器A19を重ねることができる。したがって、複数の細胞収容容器A19を安定姿勢で積み重ねることができる。
本変形例の細胞収容容器A19においては、培養細胞あるいは生体組織や培地を軟質容器部材3に収容する。図24は、軟質容器部材3内を培地M1で満たしたときの、細胞収容容器A19のアセンブリ状態を示している。本変形例において、蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを含んで構成されている。第2蓋部材2Bは、可撓性を有する材料で形成されており、第1蓋部材2Aに保持されている。そして、第1蓋部材2A(第2筒状部22)の雌ネジ221を容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に締め込むことで、第2蓋部材2Bにおいて厚肉であるフランジ23が、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)と第1蓋部材2Aの頂板部21とによって挟み付けられて、アセンブリ状態が維持される。第2蓋部材2Bは、外周側のフランジ23から中央の薄肉部26に至る一連の膜状である。これにより、軟質容器部材3に収容された内容物(培養細胞や培地)は液封されている。したがって、培養状態維持輸送の際、振動等によって内容物が溢れることはない。このように、本変形例の細胞収容容器A19によれば、容器体1、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bの協働によって、軟質容器部材3の内容物を適切に液封することができる。
本変形例の細胞収容容器A19において、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、フランジ23の内側を塞いでいる。また、薄肉部26は、第1蓋部材2Aの頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれた貫通孔211の少なくとも一部と重なっている。このような構成によれば、容器体1(軟質容器部材3)を密閉する際、可撓性を有する薄肉部26は、容器内圧の変化に追従して変位可能である。このため、軟質容器部材3内全体に培地を満たして蓋体2により密閉する際、軟質容器部材3に溢れる程度の培地を受容させて蓋体2を締めると、薄肉部26が内圧変化を吸収して内部容積が僅かに増加するように変位(図24において図中上方に変位)し、軟質容器部材3内に気泡が噛み込むことを抑制することができる。したがって、軟質容器部材3内に空間を残さず、軟質容器部材3内全体を培地で満たすことができるので、培養状態維持輸送の際、振動等による内容物(培地等)の波打ちを無くすことができる。その結果、軟質容器部材3内において培地に浸される細胞や生体組織については、損傷を抑制し、安全に培養状態を維持して輸送することができる。
また、微小重力環境における細胞培養を研究する用途においては、細胞収容容器を上下左右に360°回転させることによって無重力に近い状態を作り出す。ここで、容器内に気泡が残っていると実験結果に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本変形例の細胞収容容器A19は、このような用途においても好都合に使用することができる。
本変形例の細胞収容容器A19においてまた、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、ガス透過性を有する。このため、容器体1(軟質容器部材3)の内容物について、当該容器体1(軟質容器部材3)の外部との通気状態が維持される。したがって、本変形例によれば、密閉保管時ないし輸送時において、容器体1(軟質容器部材3)の内容物について通気状態での培養を行うことができる。
本変形例においてさらに、薄肉部26は透明である。このような構成によれば、細胞収容容器A19の上部から、透明な薄肉部26を介して容器体1(軟質容器部材3)内の状況を観察することが可能である。
本変形例において、容器体1と蓋体2(第2蓋部材2B)との間に軟質容器部材3が介装されており、この軟質容器部材3に培養細胞あるいは生体組織と培地が収容される。そして、この軟質容器部材3が可撓性を有することにより、軟質容器部材3の内部に収容される細胞や生体組織が当該軟質容器部材3に直接衝突しても損傷しにくい。したがって、軟質容器部材3を具備する細胞収容容器A19は、培養状態維持輸送に適する。
軟質容器部材3の底壁31には複数の第1突起35が設けられており、これら第1突起35は、上方(第1方向一方側)に突出している。このような構成によれば、図24に示すように、第2蓋部材2B側の中央厚肉部25ないし薄肉部26と軟質容器部材3側の第1突起35との間に、支持体4を安定的に載置することができる。支持体4は、例えばフレーム41および薄膜42を有する。フレーム41はリング状とされており、薄膜42はこのフレーム41の内側を塞ぐように形成されている。薄膜42は、培養細胞(細胞シート)が載置される部分であり、薄膜42上の培養細胞が培地に浸される。したがって、本変形例によれば、安定的に配置された支持体4を介して細胞シートの培養が適切に行われる。
また、軟質容器部材3を具備する構成によれば、例えば密閉容器に収容される培養細胞や生体組織、あるいは支持体4のサイズ等に応じて密閉容器の内容積を変更する場合、軟質容器部材3のサイズを変更することにより容易に対応可能である。
蓋体2(第2蓋部材2B)は中央厚肉部25(突出部)を有しており、中央厚肉部25は、容器体1(軟質容器部材3)の内側において下方(第1方向他方側)に向かって突き出ている。このような構成によれば、軟質容器部材3内における培地等の収容空間が減じられている。したがって、培養状態維持輸送に際し、培地M1の使用量の削減を図ることができる。
細胞収容容器A19において、軟質容器部材3に設けられた第1突起35は、底壁31の一部が上方に隆起する構成とされている。このような構成によれば、軟質容器部材3内における培地等の収容空間がさらに減じられる。したがって、培養状態維持輸送に際し、培地の使用量についてより一層の削減を図ることができる。
細胞収容容器A19を輸送した後、容器体1および蓋体2のネジ係止部を緩めることで容器体1から蓋体2を取り外すことができ、容器体1(軟質容器部材3)の上部を開放することができる。したがって、粘着フィルム等で容器開口を閉塞する場合と異なり、蓋体2を取り外す際、容器体1(軟質容器部材3)の内容物が溢れるといった不都合は防止される。
細胞収容容器A19において、第1蓋部材2Aの頂板部21には凸状部212が設けられている。このような構成によれば、別の収納容器の中に当該細胞収容容器A19を収納して輸送する場合に便利である。細胞収容容器A19の輸送時において、たとえば上記収納容器の容器部材と蓋部材により容器体1と蓋体2を上下から挟む。本実施形態において、凸状部212の先端212aがなす平面P1は、頂板部21の主面21aと略平行である。また、凸状部212は、上下方向視(頂板部21の厚さ方向視)において閉じた環状を形成しない。これにより、上記収納容器の内部を所定のガス環境下にする場合、収納容器の蓋部材によって薄肉部26が塞がれることはない。したがって、容器体1(軟質容器部材3)について、その外部(上記収納容器の内部空間)との通気状態を維持しながら、所定のガス環境下での培養状態維持輸送が可能となる。
図25、図26は、本発明に係る細胞収容容器の第2実施形態を示している。本実施形態の細胞収容容器A20は、容器体1と、蓋体2とを備えており、いわゆる培養フラスコとして構成されたものである。
本実施形態において、容器体1は、第1筒状部11および容器部14を備えた培養フラスコである。容器部14は、底壁部141と、この底壁部141の周縁から各々が立ち上がる、前壁部142、後壁部143、および一対の側壁部144と、天井壁部145と、を有する。容器部14は、これら要素によって囲まれた所定の内部空間をもつ。前壁部142の中央には、第1筒状部11がつながっている。第1筒状部11は、所定角度で傾斜する軸線Oxが延びる方向に沿って延びている。
第1筒状部11は、容器部14に対して細胞や培地の出し入れを行う部分である。第1筒状部11は、円筒状であり、先端(第1方向一方側端)に開口110を有する。また、第1筒状部11は、先端に向かうほど(前壁部142から遠ざかるほど)上方に変位するように傾斜している。第1筒状部11の外周面には雄ネジ111が形成されている。
容器体1は、例えば半透明または透明のプラスチック材料により形成されている。当該プラスチック材料としては、例えばポリスチレンやメチルペンテンのほか、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどの、好適には透明性を有する材料が用いられるが、これらに限定されない。
蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを備え、容器体1の開口110を閉塞し容器体1を密閉するためのものである。
第1蓋部材2Aは、頂板部21および第2筒状部22を有する。頂板部21は、概略円環状とされており、後述する、第2蓋部材2Bのフランジ23を容器体1の第1筒状部11の先端部115(先端開口の周縁部)との間に挟み付ける部分である。頂板部21の径方向内側には、貫通孔211が形成されている。貫通孔211は、頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれている。
第2筒状部22は、頂板部21の周縁から当該頂板部21の厚さ方向(図中下方)に延びており、概略円筒状とされている。第2筒状部22の内周面には、雌ネジ221が形成されており、当該雌ネジ221は、容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に螺合可能である。
第1蓋部材2Aは、容器体1と同様の材料で形成してもよく、あるいはより摺動性に優れるプラスチック材料で形成してもよい。摺動性に優れるプラスチック材料としては、例えばポリエチレンやポリプロピレンが挙げられる。
第2蓋部材2Bは、例えばゴム成形品であり、フランジ23と、円筒部24’と、中央厚肉部25(突出部)と、薄肉部26とを有する。
フランジ23は、概略円環状とされており、頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21と重なっている。フランジ23は、適度な厚さを有し、軸線Oxが延びる方向(第1方向)の荷重に対して適度な弾性復元力を有する。フランジ23の厚さは、例えば1〜3mm程度である。図26に示したアセンブリ状態において、フランジ23は、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の先端部115)と第1蓋部材2Aにおける頂板部21との間に介在している。
円筒部24'は、フランジ23の内周縁につながって軸線Oxが延びる方向であって容器部14側(第1方向他方側)に延びている。本実施形態において、円筒部24'の厚さは、フランジ23の厚さと同程度とされている。
中央厚肉部25は、円筒部24'の先端縁につながって径方向内方に延びており、概略円環状とされている。中央厚肉部25は、容器体1における第1筒状部11の内側に当該第1筒状部11と間隔を隔てて収まるとともに容器部14側(第1方向他方側)に突き出ている。中央厚肉部25は、本発明で言う突出部に相当する。本実施形態において、中央厚肉部25の厚さは、フランジ23の厚さと同程度とされている。
薄肉部26は、第2蓋部材2Bの中央に設けられている。薄肉部26は、中央厚肉部25(フランジ23)の径方向内側を塞いでいる。図26によく表れているように、薄肉部26は、他の部位に比べて厚さが薄くされた部分である。薄肉部26は、軸線Oxが延びる方向視(第1方向視)において、略円形をなしている。薄肉部26の厚さは、例えば0.2〜0.3mm程度である。本実施形態において、この薄肉部26は、ガス透過性を有する。本実施形態においてまた、薄肉部26は、透明である。薄肉部26は、頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれた貫通孔211と重なっている。
上記の第2蓋部材2Bは、可撓性、弾力性を有する素材によって構成されている。第2蓋部材2Bを構成する素材としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。詳細は後述するが第2蓋部材2Bと、内容物(例えば培地)との接触を考慮すると、第2蓋部材2Bの素材としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、第2蓋部材2Bの硬さについては、例えばゴム硬度が20度〜40度程度であるのが好ましい。
本実施形態において、第2蓋部材2Bのフランジ23の外径寸法は、自然状態において第1蓋部材2Aの第2筒状部22の内径寸法より僅かに大きくされている。そしてフランジ23が弾性圧縮されながら第2筒状部22に内嵌されることにより、第2蓋部材2Bは、第1蓋部材2Aに保持される。
次に、細胞収容容器A20の使用方法および作用について説明する。
細胞収容容器A20は、培養細胞あるいは生体組織や培地を容器体1(本実施形態では特に容器部14)に収容し、培養状態を維持しながら密閉保管し、また輸送(培養状態維持輸送)するのに使用される。容器体1(容器部14)に収容される培養細胞、生体組織や培地については、特に限定されるものではない。
例えば、研究に使うフラスコの培養面(底壁部141の上面)に接着状態で培養した細胞であったり、再生医療に使用する細胞製剤を、懸濁液状で収容することが出来る。凍結されていない接着性細胞や細胞懸濁液を輸送する場合、培地が波打つことで細胞が損傷することを防止するため、容器体1(容器部14)内全体に培地を満たして培地の動きを抑える必要がある。
本実施形態において、蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを含んで構成されている。第2蓋部材2Bは、可撓性を有する材料で形成されており、第1蓋部材2Aに保持されている。そして、第1蓋部材2A(第2筒状部22)の雌ネジ221を容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に締め込むことで、第2蓋部材2Bにおいて厚肉であるフランジ23が、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の先端部115)と第1蓋部材2Aの頂板部21とによって挟み付けられて、アセンブリ状態が維持される。第2蓋部材2Bは、外周側のフランジ23から中央の薄肉部26に至る一連の膜状である。これにより、容器体1に収容された内容物(培養細胞や培地)は液封されている。したがって、培養状態維持輸送の際、振動等によって内容物が溢れることはない。このように、本実施形態の細胞収容容器A20によれば、容器体1、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bの協働によって、容器体1(容器部14)の内容物を適切に液封することができる。
本実施形態において、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、フランジ23の内側を塞いでいる。また、薄肉部26は、第1蓋部材2Aの頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれた貫通孔211の少なくとも一部と重なっている。このような構成によれば、容器体1(容器部14)を密閉する際、可撓性を有する薄肉部26は、容器内圧の変化に追従して変位可能である。このため、容器体1内全体に培地を満たして蓋体2により密閉する際、容器体1に溢れる程度の培地を受容させて蓋体2を締めると、薄肉部26が内圧変化を吸収して内部容積が僅かに増加するように変位(図26において軸線Oxに沿う方向外方に変位)し、容器体1内に気泡が噛み込むことを抑制することができる。したがって、容器体1内に空間を残さず、容器体1内全体を培地で満たすことができるので、培養状態維持輸送の際、振動等による内容物(培地等)の波打ちを無くすことができる。その結果、容器体1内において培地に浸される細胞や生体組織については、損傷を抑制し、安全に培養状態を維持して輸送することができる。
また、微小重力環境における細胞培養を研究する用途においては、細胞収容容器を上下左右に360°回転させることによって無重力に近い状態を作り出す。ここで、容器内に気泡が残っていると実験結果に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施形態の細胞収容容器A20は、このような用途においても好都合に使用することができる。
本実施形態においてまた、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、ガス透過性を有する。このため、容器体1(容器部14)の内容物について、当該容器体1(容器部14)の外部との通気状態が維持される。したがって、本実施形態によれば、密閉保管時ないし輸送時において、容器体1(容器部14)の内容物について通気状態での培養を行うことができる。
蓋体2(第2蓋部材2B)は中央厚肉部25(突出部)を有しており、中央厚肉部25は、容器体1の内側において軸線Oxが延びる方向であって容器部14側(第1方向他方側)に向かって突き出ている。このような構成によれば、容器体1内における培地等の収容空間が減じられている。したがって、培養状態維持輸送に際し、培地の使用量の削減を図ることができる。
図27、図28は、上記の細胞収容容器A20の変形例を示している。図27、図28に示した細胞収容容器A21において、第2蓋部材2Bの構成が上記の細胞収容容器A20と異なっている。具体的には、フランジ23の一部が径方向内方に張り出しており、張出し部233とされている。フランジ23(張出し部233)は、上記のように適度な厚さを有し、また弾性復元力を有する。これにより、フランジ23(張出し部233)は、注射針の突き刺し孔を塞ぐ再シール性を有する。
本変形例の細胞収容容器A21においては、培養状態維持輸送の後に、容器体1の内部の収容空間から注射器(図示略)を用いて、内容物(たとえば培地に浸かった細胞懸濁液)を取り出す。内容物の取り出しは、張出し部233に注射針(図示略)を突き刺して吸い上げることにより行うことができる。これにより、細胞収容容器A21を輸送した後、容器体1から蓋体2を取り外すことなく密閉状態を維持したまま、内容物を取り出すことができる。
その他にも、本変形例の細胞収容容器A21において、上記の細胞収容容器A20と同様の作用効果を奏する。
図29、図30は、本発明に係る細胞収容容器の第3実施形態を示している。本実施形態の細胞収容容器A30は、容器体1と、蓋体2とを備えており、いわゆるヒンジ式の蓋を具備する容器として構成されたものである。
本実施形態においては、容器体1は、第1筒状部11および容器部15を備え、第1筒状部11の上端(第1方向一方側端)に開口110を有する容器状とされている。容器部15は、底壁部151と、この底壁部151の周縁から立ち上がる円筒部152と、を有する。円筒部152の上端には、第1筒状部11がつながっている。第1筒状部11の径寸法は、円筒部152の径寸法よりも大きくされており、第1筒状部11と円筒部152(容器部15)とは、段差部153を介してつながっている。
第1筒状部11は、容器部15に対して細胞や培地の出し入れを行う部分である。第1筒状部11は、概略円筒状とされており、上端(第1方向一方側端)に開口110を有する。
容器体1は、例えば半透明または透明のプラスチック材料により形成されている。当該プラスチック材料としては、例えばポリスチレンやメチルペンテンのほか、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどの、好適には透明性を有する材料が用いられるが、これらに限定されない。
蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを備え、容器体1の開口110を閉塞し容器体1を密閉するためのものである。
第1蓋部材2Aは、頂板部21、第2筒状部22、環状装着部291、連結部292および係止部293を有する。頂板部21は、概略円環状とされており、後述する、第2蓋部材2Bのフランジ23を容器体1の第1筒状部11の上端部114(上端開口の周縁部)との間に挟み付ける部分である。頂板部21は、その内周縁から下方(第1方向他方側)に延びる筒状延出部213を有する。頂板部21(筒状延出部213)の径方向内側には、貫通孔211が形成されている。貫通孔211は、頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれている。
第2筒状部22は、頂板部21の周縁から当該頂板部21の厚さ方向(図中下方)に延びており、概略円筒状とされている。
環状装着部291は、容器体1に外嵌装着される部分である。具体的には、環状装着部291は、容器部15の円筒部152に外嵌されており、段差部153の下方に隣接する状態で係止されている。
連結部292は、環状装着部291と頂板部21とを連結するものである。連結部292の一端は環状装着部291につながり、連結部292の他端は頂板部21につながっている。連結部292には、一端から他端に向かう長手方向に対して直角な方向に沿って屈曲容易部292aが形成されている。屈曲容易部292aは、他の部分と比べて厚みが小であることにより、屈曲しやすくなっている。本実施形態では、屈曲容易部292aは2箇所に設けられている。蓋体2により容器体1の開口110を閉塞する状態において連結部292は屈曲しており(図30参照)、開口110が開放する状態において連結部292は真っ直ぐ延びている(図32参照)。
係止部293は、蓋体2により容器体1の開口110を閉塞する状態を維持するためのものであり、係止突起293aを有する。図30に示すように、連結部292が屈曲し、かつ蓋体2により容器体1の開口110を閉塞する状態において、係止突起293aは環状装着部291に設けられた被係止凹部291aに係合され、蓋体2により容器体1の開口110を閉塞する状態が維持される。
第1蓋部材2Aは、例えば屈曲が容易なヒンジ部を構成可能なプラスチック材料により形成されている。当該プラスチック材料としては、例えばポリプロピレンが挙げられるが、これに限定されない。
第2蓋部材2Bは、例えばゴム成形品であり、フランジ23と、円筒部24’と、中央厚肉部25(突出部)と、薄肉部26とを有する。
フランジ23は、概略円環状とされており、頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21と重なっている。フランジ23は、適度な厚さを有し、上下方向(第1方向)の荷重に対して適度な弾性復元力を有する。フランジ23の厚さは、例えば1〜3mm程度である。図30に示した、容器体1の開口110が閉じた状態において、フランジ23は、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)と第1蓋部材2Aにおける頂板部21との間に介在している。
円筒部24'は、フランジ23の内周縁につながって下方(第1方向他方側)に延びている。本実施形態において、円筒部24'の厚さは、フランジ23の厚さと同程度とされている。
中央厚肉部25は、円筒部24'の先端縁につながって径方向内方に延びており、概略円環状とされている。中央厚肉部25は、容器体1における第1筒状部11の内側に当該第1筒状部11と間隔を隔てて収まるとともに下方側(第1方向他方側)に突き出ている。中央厚肉部25は、本発明で言う突出部に相当する。本実施形態において、中央厚肉部25の厚さは、フランジ23の厚さと同程度とされている。
薄肉部26は、第2蓋部材2Bの中央に設けられている。薄肉部26は、中央厚肉部25(フランジ23)の径方向内側を塞いでいる。図30によく表れているように、薄肉部26は、他の部位に比べて厚さが薄くされた部分である。薄肉部26は、上下方向視(第1方向視)において、略円形をなしている。薄肉部26の厚さは、例えば0.2〜0.3mm程度である。本実施形態において、この薄肉部26は、ガス透過性を有する。本実施形態においてまた、薄肉部26は、透明である。薄肉部26は、頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれた貫通孔211と重なっている。
上記の第2蓋部材2Bは、可撓性、弾力性を有する素材によって構成されている。第2蓋部材2Bを構成する素材としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。詳細は後述するが第2蓋部材2Bと、内容物(例えば培地)との接触を考慮すると、第2蓋部材2Bの素材としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、第2蓋部材2Bの硬さについては、例えばゴム硬度が20度〜40度程度であるのが好ましい。
本実施形態において、第2蓋部材2Bのフランジ23の外径寸法は、自然状態において第1蓋部材2Aの第2筒状部22の内径寸法より僅かに大きくされている。そしてフランジ23が弾性圧縮されながら第2筒状部22に内嵌されることにより、第2蓋部材2Bは、第1蓋部材2Aに保持される。
次に、細胞収容容器A30の使用方法および作用について説明する。
細胞収容容器A30は、培養細胞あるいは生体組織や培地を容器体1に収容し、培養状態を維持しながら密閉保管し、また輸送(培養状態維持輸送)するのに使用される。容器体1(容器部15)に収容される培養細胞、生体組織や培地については、特に限定されるものではない。
例えば、再生医療に使用する細胞製剤を、懸濁液状であったり、あるいは、細胞シートの状態で収容することが出来る。凍結されていない細胞懸濁液や細胞シートを輸送する場合、培地が波打つことで細胞が損傷することを防止するため、容器体1(容器部15)内全体に培地を満たして培地の動きを抑える必要がある。
本実施形態において、蓋体2は、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bを含んで構成されている。第2蓋部材2Bは、可撓性を有する材料で形成されており、第1蓋部材2Aに保持されている。そして、蓋体2により容器体1の開口110を閉塞するとともに、係止突起293a(係止部293)が環状装着部291の被係止凹部291aに係合することで、第2蓋部材2Bにおいて厚肉であるフランジ23が、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の先端部115)と第1蓋部材2Aの頂板部21とによって挟み付けられて、容器体1の開口110の閉塞状態が維持される。第2蓋部材2Bは、外周側のフランジ23から中央の薄肉部26に至る一連の膜状である。これにより、容器体1に収容された内容物(培養細胞や培地)は液封されている。したがって、培養状態維持輸送の際、振動等によって内容物が溢れることはない。なお、第1蓋部材2Aの係止突起293a(係止部293)および被係止凹部291aは、本発明で言う係止手段を構成する。このように、本実施形態の細胞収容容器A30によれば、容器体1、第1蓋部材2Aおよび第2蓋部材2Bの協働によって、容器体1(容器部15)の内容物を適切に液封することができる。
本実施形態において、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、フランジ23の内側を塞いでいる。また、薄肉部26は、第1蓋部材2Aの頂板部21の厚さ方向視において当該頂板部21に囲まれた貫通孔211の少なくとも一部と重なっている。このような構成によれば、容器体1(容器部14)を密閉する際、可撓性を有する薄肉部26は、容器内圧の変化に追従して変位可能である。このため、容器体1内全体に培地を満たして蓋体2により密閉する際、容器体1に溢れる程度の培地を受容させて蓋体2を締めると、薄肉部26が内圧変化を吸収して内部容積が僅かに増加するように変位(図30において図中上方に変位)し、容器体1内に気泡が噛み込むことを抑制することができる。したがって、容器体1内に空間を残さず、容器体1内全体を培地で満たすことができるので、培養状態維持輸送の際、振動等による内容物(培地等)の波打ちを無くすことができる。その結果、容器体1内において培地に浸される細胞や生体組織については、損傷を抑制し、安全に培養状態を維持して輸送することができる。
また、微小重力環境における細胞培養を研究する用途においては、細胞収容容器を上下左右に360°回転させることによって無重力に近い状態を作り出す。ここで、容器内に気泡が残っていると実験結果に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施形態の細胞収容容器A30は、このような用途においても好都合に使用することができる。
本実施形態においてまた、第2蓋部材2Bの薄肉部26は、ガス透過性を有する。このため、容器体1(容器部15)の内容物について、当該容器体1(容器部15)の外部との通気状態が維持される。したがって、本実施形態によれば、密閉保管時ないし輸送時において、容器体1(容器部15)の内容物について通気状態での培養を行うことができる。
本実施形態においてさらに、薄肉部26は透明である。このような構成によれば、細胞収容容器A30の外部から、透明な薄肉部26を介して容器体1(容器部15)内の状況を観察することが可能である。
蓋体2(第2蓋部材2B)は中央厚肉部25(突出部)を有しており、中央厚肉部25は、容器体1の内側において下方(第1方向他方側)に向かって突き出ている。このような構成によれば、容器体1内における培地等の収容空間が減じられている。したがって、培養状態維持輸送に際し、培地の使用量の削減を図ることができる。
細胞収容容器A30を輸送した後、容器体1および蓋体2の係止部293(係止突起293a)の係合を解除することで容器体1から蓋体2を離すことができ、容器体1の開口110を開放することができる。したがって、粘着フィルム等で容器開口を閉塞する場合と異なり、蓋体2を離す際、勢い余って容器体1の内容物が溢れるといった不都合は防止される。
図33、図34は、本発明に係る細胞収容容器の第4実施形態を示している。本実施形態の細胞収容容器A40は、容器体1と、蓋体2とを備えている。
本実施形態においては、容器体1は、第1筒状部11および容器部15を備え、第1筒状部11の上端(第1方向一方側端)に開口110を有する容器状とされている。容器部15は、底壁部151と、この底壁部151の周縁から立ち上がる円筒部152と、を有する。円筒部152の上端には、第1筒状部11がつながっている。第1筒状部11の径寸法は、円筒部152の径寸法よりも大きくされており、第1筒状部11と円筒部152(容器部15)とは、段差部153を介してつながっている。
第1筒状部11は、容器部15に対して細胞や培地の出し入れを行う部分である。第1筒状部11は、概略円筒状とされており、上端(第1方向一方側端)に開口110を有する。
容器体1は、例えば半透明または透明のプラスチック材料により形成されている。当該プラスチック材料としては、例えばポリスチレンやメチルペンテンのほか、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどの、好適には透明性を有する材料が用いられるが、これらに限定されない。
蓋体2は、例えばゴム成形品であり、第2筒状部22と、フランジ23と、厚肉部25'と、薄肉部26と、凸状部234とを備える。蓋体2は、装着することで容器体1を密閉するものである。
フランジ23は、適度な厚さを有し、上下方向(第1方向)の荷重に対して適度な弾性復元力を有する。蓋体2を容器体1に装着した状態において、フランジ23は、当該フランジ23の厚さ方向視において、容器体1における開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)に重なっている。本実施形態において、フランジ23の下面は、開口110の周縁部(第1筒状部11の上端部114)に当接し得る。
第2筒状部22は、容器体1の第1筒状部11に内嵌装着される部分である。第2筒状部22は、フランジ23の内周縁から当該フランジ23の厚さ方向に延びており、概略円筒状とされている。自然状態における第2筒状部22の外径寸法は、第1筒状部11の内径寸法よりも大きくされている。容器体1への蓋体2の装着時には、第1筒状部11に第2筒状部22が圧入されている。この第2筒状部22の圧入により、第1筒状部11と第2筒状部22との相対移動が阻止される。第2筒状部22が第1筒状部11に圧入された構成は、本発明で言う係止手段を担う。本実施形態において、第2筒状部22の厚さは、フランジ23の厚さと同程度とされている。
厚肉部25'は、第2筒状部22の先端縁につながって径方向内方に延びており、概略円環状とされている。本実施形態において、厚肉部25'の厚さは、フランジ23の厚さと同程度とされている。
薄肉部26は、蓋体2の中央に設けられている。薄肉部26は、厚肉部25'(フランジ23)の径方向内側を塞いでいる。図34によく表れているように、薄肉部26は、他の部位に比べて厚さが薄くされた部分である。薄肉部26は、上下方向視(第1方向視)において、略円形をなしている。薄肉部26の厚さは、例えば0.2〜0.3mm程度である。本実施形態において、この薄肉部26は、ガス透過性を有する。本実施形態においてまた、薄肉部26は、透明である。
凸状部234は、フランジ23の厚さ方向を向く主面23aから上方(第1方向の一方側)に突き出ている。本実施形態において凸状部234は、互いに分離して複数設けられている。これら凸状部234の先端234aがなす平面P2は、フランジ23の主面23aと略平行である。ここで、「略平行」とは、平面P2と主面23aとが平行となるように設計されるが、寸法公差等により多少の平行度のバラつきがある場合も含むものである。また、図33、図34から理解されるように、本実施形態において、凸状部234は、上下方向視において同心円の円弧状に設けられ、隣接する凸状部234の間に溝235が形成されている。これにより、凸状部234は、上下方向視(フランジ23の厚さ方向視)において閉じた環状を形成しない。
上記の蓋体2は、可撓性、弾力性を有する素材によって構成されている。蓋体2を構成する素材としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。詳細は後述するが蓋体2と、内容物(例えば培地)との接触を考慮すると、蓋体2の素材としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、蓋体2の硬さについては、例えばゴム硬度が20度〜40度程度であるのが好ましい。
次に、細胞収容容器A40の使用方法および作用について説明する。
細胞収容容器A40は、培養細胞あるいは生体組織や培地を容器体1に収容し、培養状態を維持しながら密閉保管し、また輸送(培養状態維持輸送)するのに使用される。容器体1(容器部15)に収容される培養細胞、生体組織や培地については、特に限定されるものではない。
例えば、再生医療に使用する細胞製剤を、懸濁液状であったり、あるいは、細胞シートの状態で収容することが出来る。凍結されていない細胞懸濁液や細胞シートを輸送する場合、培地が波打つことで細胞が損傷することを防止するため、容器体1(容器部15)内全体に培地を満たして培地の動きを抑える必要がある。
本実施形態において、蓋体2は、可撓性を有する材料で一体形成されている。そして、蓋体2の第2筒状部22を容器体1の開口110を通じて第1筒状部11に挿し込むことで、第2筒状部22が弾性圧縮されつつ第1筒状部11に内嵌されて、容器体1および蓋体2のアセンブリ状態が維持される。蓋体2は、外周側のフランジ23から中央の薄肉部26に至る一連の膜状である。これにより、容器体1に収容された内容物(培養細胞や培地)は液封されている。したがって、培養状態維持輸送の際、振動等によって内容物が溢れることはない。このように、本実施形態の細胞収容容器A40によれば、容器体1および蓋体2の協働によって、容器体1(容器部15)の内容物を適切に液封することができる。
本実施形態において、蓋体2の薄肉部26は、フランジ23および第2筒状部22の内側を塞いでいる。このような構成によれば、容器体1(容器部15)を密閉する際、可撓性を有する薄肉部26は、容器内圧の変化に追従して変位可能である。このため、容器体1内全体に培地を満たして蓋体2により密閉する際、容器体1に溢れる程度の培地を受容させて蓋体2を締めると、薄肉部26が内圧変化を吸収して内部容積が僅かに増加するように変位(図34において図中上方に変位)し、容器体1内に気泡が噛み込むことを抑制することができる。したがって、容器体1内に空間を残さず、容器体1内全体を培地で満たすことができるので、培養状態維持輸送の際、振動等による内容物(培地等)の波打ちを無くすことができる。その結果、容器体1内において培地に浸される細胞や生体組織については、損傷を抑制し、安全に培養状態を維持して輸送することができる。
また、微小重力環境における細胞培養を研究する用途においては、細胞収容容器を上下左右に360°回転させることによって無重力に近い状態を作り出す。ここで、容器内に気泡が残っていると実験結果に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施形態の細胞収容容器A40は、このような用途においても好都合に使用することができる。
本実施形態においてまた、蓋体2の薄肉部26は、ガス透過性を有する。このため、容器体1(容器部15)の内容物について、当該容器体1(容器部15)の外部との通気状態が維持される。したがって、本実施形態によれば、密閉保管時ないし輸送時において、容器体1(容器部15)の内容物について通気状態での培養を行うことができる。
本実施形態においてさらに、薄肉部26は透明である。このような構成によれば、細胞収容容器A40の外部から、透明な薄肉部26を介して容器体1(容器部15)内の状況を観察することが可能である。
蓋体2は厚肉部25’を有しており、厚肉部25’は、容器体1の内側において下方(第1方向他方側)に向かって突き出ている。このような構成によれば、容器体1内における培地等の収容空間が減じられている。したがって、培養状態維持輸送に際し、培地の使用量の削減を図ることができる。
細胞収容容器A40において、フランジ23には凸状部234が設けられている。このような構成によれば、別の収納容器の中に当該細胞収容容器A40を収納して輸送する場合に便利である。細胞収容容器A40の輸送時において、たとえば上記収納容器の容器部材と蓋部材により容器体1と蓋体2を上下から挟む。本実施形態において、凸状部234の先端234aがなす平面P2は、フランジ23の主面23aと略平行である。また、凸状部234は、上下方向視(フランジ23の厚さ方向視)において閉じた環状を形成しない。これにより、上記収納容器の内部を所定のガス環境下にする場合、収納容器の蓋部材によって薄肉部26が塞がれることはない。したがって、容器体1(容器部15)について、その外部(上記収納容器の内部空間)との通気状態を維持しながら、所定のガス環境下での培養状態維持輸送が可能となる。
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。本発明に係る細胞収容容器の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。本発明に係る細胞収容容器としては、上記実施形態で示したタイプのものに限定されず、例えば遠沈管や種々の培養容器などの容器類に適用することが可能である。