JPWO2019031099A1 - フロー電池 - Google Patents

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Abstract

実施形態に係るフロー電池は、電極板である、1または複数の正極板および複数の負極板と、反応室と、電解液と、複数の第1供給孔と、気体供給部とを備える。反応室は、正極板および負極板を収容する。電解液は、反応室の内部に収容され、正極板および負極板に接触する。第1供給孔は、反応室の底面に配置されている。気体供給部は、第1供給孔に気体を供給する。正極板と負極板とは第1方向に交互に配置されており、かつ第1方向の両側の端には負極板が配置されている。並んでいる正極板および負極板を通して平面視した反応室は、一つの正極板および該正極板と隣り合って配置されている一つの負極板とに挟まれた第1領域と、他の領域である第2領域とを含む。第1領域の底面には、それぞれ第1供給孔が配置されており、第2領域の底面には、第1供給孔が配置されていないか、第1領域よりも少ない割合で第1供給孔が配置されている。

Description

開示の実施形態は、フロー電池に関する。
従来、正極と負極との間に、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオン([Zn(OH)2−)を含有する電解液を循環させるフロー電池が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
Y. Ito. et al.: Zinc morphology in zinc-nickel flow assisted batteries and impact on performance, journal of Power Sources, Vol. 196, pp. 2340-2345, 2011
実施形態に係るフロー電池は、電極板である、1または複数の正極板および複数の負極板と、反応室と、電解液と、複数の第1供給孔と、気体供給部とを備える。反応室は、前記正極板および前記負極板を収容する。電解液は、前記反応室の内部に収容され、前記正極板および前記負極板に接触する。第1供給孔は、前記反応室の底面に配置されている。気体供給部は、前記複数の第1供給孔に気体を供給する。前記正極板と前記負極板とは第1方向に交互に配置されており、かつ前記第1方向の両側の端には前記負極板が配置されている。並んでいる前記正極板および前記負極板を通して平面視した前記反応室は、一つの前記正極板および該正極板と隣り合って配置されている一つの前記負極板とに挟まれた第1領域と、前記第1領域、前記正極板と重なる領域、および前記負極板と重なる領域を除いた第2領域とを含む。前記第1領域のうち、前記底面には、それぞれ前記第1供給孔が配置されており、前記第2領域のうち、前記底面には、前記第1供給孔が配置されていないか、前記第1領域よりも少ない割合で前記第1供給孔が配置されている。
図1Aは、実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。 図1Bは、実施形態に係るフロー電池が備えるケースの概略を示す図である。 図1Cは、実施形態に係るフロー電池の反応室を平面視した図である。における電解液の流動について説明する図である。 図2は、実施形態に係るフロー電池における電極間の接続の一例について説明する図である。 図3は、実施形態の変形例1に係るフロー電池の反応室を平面視した図である。 図4は、実施形態の変形例2に係るフロー電池が備える支持枠の概略を示す図である。 図5Aは、実施形態の変形例2に係るフロー電池の概略を示す図である。 図5Bは、実施形態の変形例2に係るフロー電池が備える反応室の概略を示す図である。 図5Cは、実施形態の変形例2に係るフロー電池における電解液の流動について説明する図である。 図5Dは、実施形態の変形例2に係るフロー電池の電極間の接続の一例について説明する図である。 図6は、実施形態の変形例2に係るフロー電池が備えるマニホールドの概略を示す図である。 図7は、実施形態の変形例2に係るフロー電池が備えるマニホールドの概略を示す図である。 図8は、実施形態の変形例3に係るフロー電池が備える反応室の概略を示す図である。 図9は、実施形態の変形例3に係るフロー電池が備える反応室の概略を示す図である。 図10Aは、実施形態の変形例4に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。 図10Bは、実施形態の変形例4に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。 図11は、実施形態の変形例5に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。 図12Aは、実施形態の変形例6に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。 図12Bは、実施形態の変形例6に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。 図13は、実施形態の変形例7に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。 図14Aは、実施形態の変形例8に係るフロー電池が備える反応室の概略を示す図である。 図14Bは、実施形態の変形例8に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本願の開示するフロー電池の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1Aは、実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図1Aに示すフロー電池100は、正極板としての正極2と、負極板としての負極3a、3bと、隔膜4と、電解液5と、粉末16と、反応室10と、流動装置としての気体供給部11と、供給流路12と、第2供給孔17と、マニホールド20と、第1供給孔13a、13bと、回収口14a、14bと、回収流路15とを備える。なお、正極板と負極板を合わせて電極板と言うことがある。
なお、説明を分かりやすくするために、図1Aには、鉛直上向きを正方向とし、鉛直下向きを負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。
電極板は、Y軸方向に順に、負極3a、正極2、負極3bの順に並んでいる。電極板が並んでいる方向を第1方向と言うことがある。また、第1方向に交差して電極板が延在するX軸方向を電極板の幅方向と言うことがある。
正極2は反応室10に収容されている。正極2は、例えば、ニッケル化合物、マンガン化合物またはコバルト化合物を正極活物質として含有する導電性の部材である。ニッケル化合物は、例えば、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト含有水酸化ニッケル等が使用できる。マンガン化合物は、例えば、二酸化マンガン等が使用できる。コバルト化合物は、例えば、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト等が使用できる。また、正極2は、黒鉛、カーボンブラック、導電性樹脂等を含んでもよい。電解液5が分解される酸化還元電位の観点からは、正極2はニッケル化合物を含有してもよい。また、正極2は、ニッケル金属、コバルト金属またはマンガン金属、あるいはそれらの合金であってもよい。
負極3a、3bは、反応室10に収容されている。負極3a、3bは、負極活物質を金属亜鉛または亜鉛化合物として含む。負極3a、3bは、例えば、ステンレスや銅などの金属板や、ステンレスや銅板の表面をニッケルやスズ、亜鉛でメッキ処理したものを使用することができる。また、メッキ処理された表面が一部酸化されたものを負極3a、3bとして使用してもよい。
隔膜4は、正極2を被覆している。隔膜4は、水酸化物イオン伝導性を有しており、電極反応に関与する水酸化物イオンを伝導する。また、隔膜4は、金属亜鉛が通過しないように緻密に構成されてもよい。これにより、成長したデンドライトが隔膜4を貫通することで正極2と負極3a、3bとが導通する不具合をさらに低減することができる。ここで、緻密とは、アルキメデス法で算出して、90%以上の相対密度を有することをいい、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上である。また、隔膜4の厚みは、好ましくは10μm〜1000μmであり、より好ましくは100μm〜500μmである。ただし、隔膜4の相対密度および厚みは、デンドライトの貫通を低減することができるものであれば上記したものに限定されない。
隔膜4は、水酸化物イオンを選択的に透過する一方、例えば、水酸化物イオンよりもイオン半径の大きな[Zn(OH)2−等の金属イオンの透過を低減するように構成されてもよい。このように隔膜4が[Zn(OH)2−等の金属イオンの透過を低減すると、隔膜4の内部および正極2近傍におけるデンドライトの生成が低減されるため、正極2と負極3a、3bとの導通をさらに低減することができる。
隔膜4は、例えば、有機ヒドロゲルのような三次元構造を有するゲル状の陰イオン伝導性材料や固体高分子型陰イオン伝導材料を用いて形成されてもよい。ここで、固体高分子型陰イオン伝導材料は、例えば、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選択される1種以上の元素を含有する、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、硫酸化合物およびリン酸化合物からなる群より選択される1以上の化合物とを含む。
電解液5は、正極2および負極3a、3bに接触するように反応室10の内部に収容されている。電解液5は、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である。電解液5中の亜鉛種は、[Zn(OH)2−として電解液5中に溶存している。電解液5は、例えば、KやOHを含むアルカリ水溶液に酸化亜鉛を飽和させたものを使用することができる。ここで、アルカリ水溶液としては、例えば、6.7moldm−3の水酸化カリウム水溶液を使用することができる。また、1dm−3の水酸化カリウム水溶液に対し、ZnOが飽和するまで添加することにより電解液5を調製することができる。また、1dm−3の水酸化カリウム水溶液に対し、0.5molの割合でZnOを添加し、必要に応じて後述する粉末16を追加することにより電解液5を調製することができる。さらに、酸素発生抑制を目的に、水酸化リチウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属化合物を添加してもよい。
粉末16は、亜鉛を含む。具体的には、粉末16は、例えば粉末状に加工または生成された酸化亜鉛、水酸化亜鉛等である。粉末16は、アルカリ水溶液中には容易に溶解するが、亜鉛種の飽和した電解液5中には溶解せずに沈降し、一部が分散または浮遊した状態で電解液5中に混在する。電解液5が長時間静置されていた場合、ほとんどの粉末16が、電解液5の中で沈降した状態になることもあるが、電解液5に対流等を生じさせれば、沈降していた粉末16の一部は、電解液5に分散または浮遊した状態になる。つまり、粉末16は、電解液5中に移動可能に存在している。なお、ここで移動可能とは、粉末16が、周囲の他の粉末16の間にできた局所的な空間の中のみを移動できることではなく、電解液5の中を別の位置に粉末16が移動することにより、当初の位置以外の電解液5に粉末16が晒されるようになっていることを表す。さらに、移動可能の範疇には、負極3a、3bおよび正極2の両方の近傍まで粉末16が移動できるようになっていることや、第1ケース8内に存在する電解液5の、ほぼどこにでも粉末16が移動できるようになっていることが含まれる。電解液5中に溶存する亜鉛種である[Zn(OH)2−が消費されると、電解液5中に混在する粉末16は、粉末16および電解液5が互いに平衡状態を維持するように電解液5中に溶存する亜鉛種が飽和するまで溶解する。
反応室10およびマニホールド20は、ケース22で構成されている。ケース22は、第2ケース18、第2ケース18の上に配置された第1ケース8、および第1ケース8の上に配置された上板9を含む。反応室10は、第1ケース8と、第1ケース8の上側の開口を塞いでいる上板9とで構成されている。第1ケース8の下側の面を底面8eと呼ぶ。マニホールド20は、第2ケース18と、第2ケース18の上側の開口を塞いでいる第1ケース8の下面8fとで構成されている。反応室10およびマニホールド20は、底面8eから下面8fに貫通している第1供給孔13a、13bで接続されている。
ケース22は、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレンなど、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。第1ケース8、上板9、および第2ケース18は、好ましくは互いに同じ材料で構成されるが、異なる材料で構成されてもよい。
第1ケース8には、正極2、負極3a、3bおよび電解液5が収容されている。また、第1ケース8には、底面8eから下面8fに貫通している第1供給孔13a、13bが設けられている。また、上板9の下面9aと電解液5の液面との間には空間を有しており、気体層7を構成する。
第2ケース18には、供給流路12と接続される第2供給孔17が設けられている。
気体供給部11は、例えば気体を移送可能なポンプ(気体ポンプ)、コンプレッサまたはブロワであり、回収流路15を介して反応室10から回収された気体を、供給流路12、第2供給孔17、およびマニホールド20を介して第1供給孔13a、13bに送り出す。気体供給部11は、気泡6の発生源である気体や電解液5に由来する水蒸気を外部に漏出させることでフロー電池1の発電性能を低減させないよう高い気密性を有するものが好ましい。
第1供給孔13a、13bは、反応室10の下部にそれぞれ設けられている。第1供給孔13a、13bは、一方は供給流路12を介して気体供給部11に接続されており、他方は電解液5を収容した反応室10の内部に開口している。第1供給孔13a、13bは、気体供給部11から送られた気体を電解液5中に供給し、気泡6を発生させる。すなわち、実施形態に係るフロー電池100は、気体供給部11および第1供給孔13a、13bを含む気泡発生装置を備える。
気泡6は、例えば正極2、負極3a、3bおよび電解液5に対して不活性な気体で構成される。このような気体としては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、またはアルゴンガスなどが挙げられる。電解液5に不活性な気体の気泡6を発生させることにより、電解液5の変性を低減することができる。また、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である電解液5の劣化を低減し、電解液5のイオン伝導度を高く維持することができる。なお、気体は空気であってもよい。第1供給孔13aから供給された気体により発生した気泡6は、正極2と負極3aとの間、より具体的には隔膜4と負極3aとの間において、電解液5中を上方に向かって流動する。また、第1供給孔13bから供給された気体により発生した気泡6は、正極2と負極3bとの間、より具体的には隔膜4と負極3bとの間において、電解液5中を上方に向かって流動する。電解液5中を気泡6として流動した気体は、電解液5の液面で消滅し、反応室10における電解液5の上方に気体層7を構成する。
回収口14a、14bは、反応室10の上方にそれぞれ設けられている。回収口14a、14bは、一方は分岐流路15a、15bを含む回収流路15を介して気体供給部11に接続されており、他方は反応室10内の気体層7に開口している。回収口14a、14bは、反応室10から回収された気体を反応室10の外部に排出し、気体供給部11に送り出す。図1Aに示す例では、回収口14a、14bはZ軸方向から見て第1供給孔13a、13bと重なる位置にそれぞれ配置されているが、これに限らず、気体層7に面するように開口していればいかなる位置に配置されていてもよい。また、図1Aに示す例では、回収口14a、14bは2箇所に配置されているが、これに限らず、1または3以上の回収口を配置するように構成されてもよい。
ここで、反応室10における電極反応について、正極活物質として水酸化ニッケルを適用したニッケル亜鉛フロー電池を例に挙げて説明する。充電時における正極および負極での反応式はそれぞれ、以下のとおりである。
正極:Ni(OH) + OH → NiOOH + HO + e
負極:[Zn(OH)2− + 2e → Zn +4OH
反応式から明らかなように、負極3a、3bでは、充電により亜鉛が析出するのに伴い、負極3a、3bの近傍における電解液5中の[Zn(OH)2−の濃度が低下する。そして、[Zn(OH)2−の濃度が低下した電解液5が負極3a、3bの近傍に滞留すると、負極3a、3bに析出した亜鉛がデンドライトとして成長する一因となる。すなわち、充電反応により[Zn(OH)2−の濃度が局所的に低下した電解液5を負極3a、3bの近傍に滞留させることなく速やかに流動させると、デンドライトの成長が低減される。
そこで、実施形態に係るフロー電池100では、反応室10の内部に開口した気泡発生装置の第1供給孔13a、13bから電解液5中に気体を供給して気泡6を発生させる流動装置を備えることとした。気泡6は、負極3aと正極2との間、および正極2と負極3bとの間のそれぞれにおいて反応室10の下方から上方に向かって電解液5中を上昇するように流動する。
また、電極間における上記した気泡6の流動に伴い、電解液5には上昇液流が発生し、負極3aと正極2との間、および正極2と負極3bとの間では反応室10の下方から上方に向かって電解液5が流動する。
そして、電解液5の上昇液流に伴い、反応室10の内壁8cと負極3aとの間、および反応室10の内壁8dと負極3bとの間では下降液流が発生し、電解液5が反応室10の上方から下方に向かって流動する。すなわち、電解液5は、反応室10の内部を図1Aに示すYZ平面に沿うように循環する。
このように実施形態に係るフロー電池100では、[Zn(OH)2−の濃度が局所的に低下した電解液5を速やかに循環させることで電解液5中の[Zn(OH)2−の濃度を均一に保つことができ、デンドライトの成長に伴う負極3a、3bと正極2との導通を低減することができる。
ここで、負極3aと隔膜4との間隔、および、負極3bと隔膜4との間隔は、好ましくは1cm以下となるように設けられる。負極3aまたは3bと隔膜4との間隔を1cm以下とすることにより、電極間のイオン伝導に伴う電圧低下を低減することができる。また、気泡6を負極3a、3bの近傍により確実に流動させることができることから、電解液5中の[Zn(OH)2−の濃度を速やかに均一化することができ、デンドライトの成長に伴う負極3aと正極2、負極3bと正極2との導通を低減することができる。
上記した実施形態では、電解液5は反応室10の内部を図1Aに示すYZ平面に沿うように循環するとして説明したが、気泡6の流動に伴い電解液5に発生する液流が循環する方向は、図1Aに示したものに限らない。この点について、図1B、図1Cを用いて説明する。
図1Bは、実施形態に係るフロー電池100が備えるケース22の概略を示す図であり、図1Cは、実施形態に係るフロー電池100の底面8eを、正極2および負極3a、3bを通して平面視した図である。なお、図1Bでは、図1Aに示す隔膜4および回収口14aに対応する部材の図示は省略している。以下、特に断りのない限り、隔膜4の図示および説明は省略する。
図1Bは、図1Aに示すケース22のI−I断面図である。図1Bに示すように、正極2と負極3aとの間を流動する気泡6を発生させる第1供給孔13aは、3つの開口13a1、13a2、13a3がX軸方向に所定の平均間隔Aで並ぶように配置されている。また、正極2と負極3bとの間を流動する気泡6を発生させる第1供給孔13bについても第1供給孔13aと同様の構成を有している。なお、第1供給孔13a、13bについて特に区別なく説明する場合には、第1供給孔13と記載することがある。
上記したように、気泡6は、負極3aと正極2との間、および正極2と負極3bとの間のそれぞれにおいて反応室10の下方から上方に向かって電解液5中を上昇するように流動する。このような気泡6の流動に伴い、電解液5には上昇液流が発生し、負極3aと正極2との間、および正極2と負極3bとの間では反応室10の下方から上方に向かって電解液5が流動する。そして、電解液5の上昇液流に伴い、反応室10の内壁8aおよび内壁8bの近傍では下降液流が発生し、電解液5が反応室10の上方から下方に向かって流動する。すなわち、電解液5は、反応室10の内部を図1Bに示すZX平面に沿うように循環する。
また、図1Cは、図1Aに示す第1ケース8の内部をZ軸正方向側から平面視した図に相当する。平面視して、正極2と負極3a、3bとの間の領域を第1領域140とする。第1領域140は、電極間領域である。底面8eのうち、平面視で第1領域140、正極2と重なる領域、および負極3a、3bと重なる領域を除いた領域を第2領域130とする。気泡発生装置の第1供給孔13aは、負極3aと正極2との間の領域140aに配置されており、第1供給孔13bは、正極2と負極3bとの間の領域140bに配置されている。
領域140a、140bを含む第1領域140では、第1供給孔13a、13bから電解液5中に供給された気体により発生する気泡6の上方への流動に伴い、電解液5には上昇液流が発生する。一方、正極2および負極3a、3bならびに第1領域140を含む電極領域と第1ケース8の内壁8a、8b、8c、8dとの間の第2領域130では、電解液5には第1領域140における上昇液流に対応した下降液流が発生する。このように、実施形態に係るフロー電池100によれば、電極間に気泡6を流動させることにより、反応室10の全体にわたり電解液5を循環させることができる。このため、負極3a、3bの近傍における[Zn(OH)2−の局所的な濃度低下を低減することができ、負極3a、3bと正極2との導通を低減することができる。
第2領域130には、第1供給孔13が存在しないか、第1領域140よりも少ない面積当たりの個数しか第1供給孔13が存在しないため、上述の様な電解液5の流れができる。
第2供給孔17の流路抵抗は、第1供給孔13の流路抵抗の1/100以下、さらに1/1000にしてもよい。これにより、第2供給孔17の圧力損失は、第1供給孔13の圧力損失の1/100以下、さらに1/1000になる。これにより、気体供給部11からの気体の供給に脈動等があった場合でも、それぞれの第1供給孔13から径のそろった気泡6を発生させることができる。これにより、上昇途中の気泡6の合体が起き難くなり、上昇液流の流れが均一に近づき、流れを安定させることができる。
また、隣り合う2つの第1供給孔13の間のマニホールド20の流路抵抗は、第1供給孔13の流路抵抗の、さらに1/1000にしてもよい。これにより、マニホールド20の圧力損失は、第1供給孔13の圧力損失の1/100以下、さらに1/1000になる。これにより、隣り合う第1供給孔13で発生する泡の径や、単位時間当たりの気体の量に差が少なくなり、上昇液流の流れが均一に近づき、流れを安定させることができる。
フロー電池100は、動作中、特に気体供給部11が気体を供給している間は、マニホールド20は気体で満たされ、電解液5はほとんど存在しない状態になる。気体供給部11が気体を供給していないときにも、第1供給孔13は、電解液5の表面張力により、電解液5がマニホールド20に落ちないように小さい断面積にされる。しかし、長期的な放置、あるいは振動または圧力が加わることで、電解液5の一部がマニホールド20に落ちてしまうこともある。
正極2および負極3a、3bの上端は、マニホールド20の全体を満たすように、第1供給孔13を介して電解液5が落ちてしまった場合でも、電解液5の液面から下になっているのが好ましい。フロー電池100が動作していない状態であっても、気体層7で気体に晒されている部分と、電解液5の中にある部分とでは、電極の状態に差が生じて、フロー電池100の特性に影響がでる可能性がある。また、動作中であれば、電解液5の中にある部分が、活物質の出入り等で膨張収縮等があるのに対して、電極の気体層7で気体に晒されている部分では、そのようことがなく、境界でクラック等が起きる可能性がある。正極2および負極3a、3bの上端が、マニホールド20の全体に、電解液5が落ちてしまった場合でも、電解液5の液面から下になっていれば、このような問題は起きにくい。
またフロー電池100の動作中は、反応室10から気体層7がなくなってしまうと、第1供給孔13から反応室10の内部に気体を入れる圧力が高くなってしまうため、マニホールド20が気体で満たされた場合でも、反応室10には、気体層7が存在するようにする。
フロー電池100の動作中にマニホールド20に電解液5が入っていると、その電解液5は、電池として使用されないので、その分容量が少なくってしまう。そのため、気体供給部11が気体を供給している間には、マニホールド20は、ほぼ気体で満たされる。また、電解液5が存在すると、その分、マニホールド20の流路抵抗などが変わるので、そのような変動は、ない方がよい。
電解液5中に必要以上の気体を供給すると、電解液5の流れが乱れるおそれがあるが、少ないと、十分な流れができない。電解液5の流れを安定させるためには、電解液5の体積1Lあたり一分間に0.1〜10Lの気体を供給するのがよい。このような流量で気体を供給する場合、マニホールド20の高さが高いと、電解液5がマニホールド20に残ることがあるため、マニホールド20の高さは10mm以下、さらに5mm以下であるのがよい。また、電解液5の流路抵抗を小さくするため、マニホールド20の高さは0.5mm以上、さらに1mm以上であるのがよい。
また、距離Bを有する正極2と負極3aとの間に配置される第1供給孔13は、平均間隔Aが、例えば2×B以上10×B以下、すなわちA/Bが2以上10以下となるように設けられる。A/Bは、さらに3以上8以下としてもよい。A/Bが小さくなることにより、第1供給孔13から発生する気泡6の距離が近くなり、また、電解液5に加わる上昇する力が、電極板の幅方向に関して均一に近づき、一様に近い上昇流が得られる。
ここで、正極2と負極3aとの間の距離Bは、例えば、1mm以上10mm以下にされる。また、正極2と負極3bとの間の距離についても、距離Bと同様に規定される。すなわち、距離Bは隣り合う電極間の距離である。
また、第1供給孔13から生成される気泡6の直径(気泡径)は、電極間の距離Bを用いて、例えばB/3以上2×B以下、特にB/2以上1.5×B以下とすることができる。気泡径をB/3以上とすることで、気泡6の1つが電解液5を上昇させる力を大きくできる。また、気泡径を2×B以下とすることで、隣り合う電極間に気泡6が入り易くなる。
上述した気泡径は、電極板のない場所での気泡径であり、別の表現をすれば、気泡6に含まれる気体と同体積の球の直径のことである。電極板の距離Bよりも気泡径の大きい気泡6は、隣り合う電極間に入る際に扁平な形状に変形する。気泡径が距離Bより小さくても、距離Bに近い大きさの気泡径を有する場合には、少し扁平な形状に変形することがある。
また、実施形態に係るフロー電池100の使用において、電解液5の流量は常に一定であるとは限らず、例えば気体供給部11を制御して気体の供給量を変えることで電解液5の流速を変えることが考えられる。また、フロー電池100の充放電に伴って電解液5の粘度が変わるため、気体の供給量を変えることにより、電解液5の流速を所定の範囲内に保つことも考えられる。いずれにしても、ある程度の範囲の気泡径に対して、効率よく電解液5の上昇流が得られるのが望ましい。
気泡6は、上昇する過程で、他の気泡6と一体化することがある。気泡6同士が一体化すると、電解液5の上昇流の均一性が低下するおそれがある。また、一体化した気泡6は、気泡6が2つであった場合と比較して、電解液5に与える力が小さくなるので、上昇流が遅くなる。気泡6の間隔を、気泡径の2倍以上にすることで、気泡6の一体化が起きる割合を低くすることができる。気泡6の間隔は、気泡径の3倍以上としてもよい。
気泡径がB/2の場合、A/B=2であれば、隣り合う気泡6の間隔は概ね1.5×Bとなる。つまり、気泡6の間隔が気泡径の3倍以上となっているので、電解液5中を浮上する気泡6の動きに揺らぎ等があっても、気泡6が一体化する可能性を低くできる。
一方、気泡径が2×Bの場合、気泡6が電極間に入ることで、電極板の幅方向の気泡径は3×B程度となる。例えば、A/B=10であれば、隣り合う気泡6の間隔は7×B程度となる。つまり、気泡6の間隔が気泡径の2倍以上となっているので、気泡6の動きに揺らぎ等があっても、気泡6が一体化する可能性を低くできる。気泡径を1.8×B以下にすれば、気泡6の間隔を、気泡径の3倍以上にすることができる。
また、負極3aの幅方向(X軸方向)の両側の端は、第1領域140において幅方向の一番端に位置する第1供給孔13から所定の距離Cに配置される。より具体的には、負極3aのX軸正方向側の端は、第1領域140においてX軸正方向側の一番端に位置する第1供給孔13から所定の距離CだけX軸正方向側に配置される。同様に、負極3aのX軸負方向側の端は、第1領域140においてX軸負方向側の一番端に位置する第1供給孔13から所定の距離CだけX軸負方向側に配置される。
ここで、距離Cは、第1供給孔13の平均間隔Aを基準として、例えば、A/4以上3×A/4以下、特に3×A/8以上5×A/8以下である。距離Cをこのように規定することにより、電極板の端における電解液5の流れを、他の部分の流れに近づけることができる。
電極板の幅は、電池の容量を大きくするためには広い方が望ましく、そのようにするため、各電極板は、ケース等の壁面近く、あるいは接触するように配置される。そのような場合に、上述のように第1供給孔13を配置すれば、電極板の幅方向の端における電解液5の流れを、他の部分の流れにより近づけることができる。
なお、上記した距離Cは、負極3aの幅方向の両側の端において規定されるとして説明したが、これに限らず、少なくとも幅方向の一方の端にのみ規定されてもよい。また、上記した距離Cは、負極3aを基準にして規定されたが、これに限らず、例えば正極2など、負極3aとは異なる電極板を基準にして規定されてもよい。
フロー電池100では、電解液5中に亜鉛を含む粉末16を混在させることができる。これにより、充電によって電解液5中の[Zn(OH)2−が消費されると、これに追従するように粉末16中の亜鉛が溶解することで[Zn(OH)2−が電解液5中に補給される。このため、電解液5中の[Zn(OH)2−の濃度を飽和状態に保つことができ、デンドライトの成長に伴う負極3a、3bと正極2との導通を低減することができる。
なお、粉末16としては、酸化亜鉛および水酸化亜鉛以外に、金属亜鉛、亜鉛酸カルシウム、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などが挙げられ、酸化亜鉛および水酸化亜鉛が好ましい。
また、負極3a、3bでは、放電によりZnが消費され、[Zn(OH)2−を生成するが、電解液5はすでに飽和状態であるため、電解液5中では、過剰となった[Zn(OH)2−からZnOが析出する。このとき負極3a、3bで消費される亜鉛は、充電時に負極3a、3bの表面に析出した亜鉛である。このため、元来亜鉛種を含有する負極を用いて充放電を繰り返す場合とは異なり、負極3a、3bの表面形状が変化するいわゆるシェイプチェンジが生じない。これにより、実施形態に係るフロー電池100によれば、負極3a、3bの経時劣化を低減することができる。なお、電解液5の状態によっては、過剰となった[Zn(OH)2−から析出するのは、Zn(OH)や、ZnOとZn(OH)とが混合したものになる。
次に、フロー電池100における電極間の接続について説明する。図2は、実施形態に係るフロー電池100の電極間の接続の一例について説明する図である。
図2に示すように、負極3aおよび負極3bは並列接続されている。このように負極を並列に接続することにより、正極および負極の総数が異なる場合であってもフロー電池100の各電極間を適切に接続し、使用することができる。
また、実施形態に係るフロー電池100では、正極2を挟んで互いに向かい合うように配置された負極3a、3bを備える。このように1つの正極2に対して2つの負極3a、3bが対応したフロー電池100では、正極と負極とが1:1で対応するフロー電池と比較して負極1つ当たりの電流密度が低下する。このため、実施形態に係るフロー電池100によれば、負極3a、3bでのデンドライトの生成がさらに低減されるため、負極3a、3bと正極2との導通をさらに低減することができる。
上記した実施形態から、正極2および負極3a、3bの形状を変えて、電解液5の循環の仕方を変えてもよい。図3は、実施形態の変形例1に係るフロー電池の反応室を平面視した図である。図3は、実施形態に係るフロー電池の反応室を平面視した図1Cに相当する図である。図3に示す反応室10は、正極2および負極3a、3bとはX軸方向の寸法が異なる正極202および負極203a、203bを収容した以外は、上記した図1Cに図示した実施形態に係る反応室10と同じである。
正極202および負極203a、203bは、第1ケース8の内壁8a、8bの近くまで伸びている。正極202および負極203a、203bは、第1ケース8の内壁8a、8bに接触、あるいは接合していてもよい。
第1供給孔13は、電極間領域である第1領域240において、Y軸方向に渡って配置されている。このように配置することで、気泡6は第1領域240で上昇液流を起こす。そして、平面視で第1領域240、正極202と重なる領域、および負極203a、203bと重なる領域を除いた第2領域230のうち、正極202および負極203a、203bに対して、正極202および負極203a、203bが並んでいる第1方向、すなわちY軸方向の正および負の端に配置されている第2領域230には下降液流が起きる。電解液5の流れはYZ平面に沿って周回するものになる。第2領域230のうち、X軸方向の正および負の端に位置する領域では、第1領域240から広がってきた泡により上昇液流が形成されるか、ほぼ停滞した状態になる。つまり、電解液5は、ZX平面に沿っては周回しない。このような電解液5の流れの方が、流れが安定する。第2領域230のうち、X軸方向の正および負の端に位置する領域で、上昇液流が形成されるようにすれば、電解液5の流れの安定度を高くできる。
上記した実施形態および変形例1では、1つの正極2または正極202を備えるフロー電池100について説明したが、複数の正極を備えてもよい。また、かかる場合には、複数の電極を配置した支持枠を反応室10に収容させると、電極を容易に交換することができる。以下では、複数の負極および正極を配置した支持枠を備えるフロー電池100について、図4〜図5Dを用いて説明する。
図4は、実施形態の変形例2に係るフロー電池100が備える支持枠の概略を示す図であり、図5Aは、実施形態の変形例2に係るフロー電池100の概略を示す図であり、図5Bは、図5Aに示すフロー電池100が備える反応室10をY軸負方向側から見た図である。また、図5Cは、図5Aに示すフロー電池100が備える反応室10をZ軸正方向側から見た図に相当する。
まず、支持枠について説明する。支持枠25は、板状の枠体25a〜25dで構成される。支持枠25は、正極2A、2B、負極3A、3B、3Cの側面を両側から挟むようにそれぞれ支持する第1枠体25aおよび第2枠体25bと、第1枠体25aおよび第2枠体25bの側面を両側から挟むようにそれぞれ支持する第3枠体25cおよび第4枠体25dとを備える。第1枠体25aおよび第2枠体25bは、第3枠体25cおよび第4枠体25dよりもZ軸方向の長さが短くなるように構成されており、反応室10に収容したときに第1枠体25aおよび第2枠体25bと第1ケース8の底面8eとの間を電解液5が流通できるようになっている。
また、図5Aに示すように、反応室10には、負極3A、正極2A、負極3B、正極2B、負極3Cの順に複数の電極がY軸方向に沿って正負極が交互に配置されている。また、図5Aに示すフロー電池100は、図1Aに示すフロー電池100の回収口14a、14bおよび分岐流路15aに代えて、回収口14を備える。回収口14はZ軸方向から見てマニホールド20と重なるように配置されているが、これに限らず、気体層7に面するように開口していればいかなる位置に配置されていてもよい。また、回収口14は1つであってもよく、2以上の回収口を配置するように構成されてもよい。
ここで、マニホールド20の構成例について、図6を用いて説明する。図6は、実施形態の変形例2に係るフロー電池100が備えるマニホールド20の概略を示す図である。図6に示すマニホールド20は、複数の第1供給孔21を有している。マニホールド20は、反応室10の下部、より具体的には電解液5を収容した第1ケース8の底面8e上に配置され、あるいは反応室10の底部に埋設される。図5Aでは、マニホールド20を反応室10の底部に埋設した状態を示す。マニホールド20を底部に埋設させるように構成すると、フロー電池100を小型化することができる。
マニホールド20は、気体供給部11から供給流路12を介して供給された気体により、第1供給孔21から電解液5中に気泡6を発生させる。第1供給孔21は、発生した気泡6を負極3Aと正極2Aとの間、正極2Aと負極3Bとの間、負極3Bと正極2Bとの間、正極2Bと負極3Cとの間にそれぞれ適切に流動させることができればいかなる配置であってもよい。
マニホールド20は1つに限らず、例えば図7に示すように複数のマニホールド20a〜20dによって構成されてもよい。かかる場合、気泡6を流動させる電極間の幅に応じて第1供給孔21a〜21dの大きさや形状を変更するように構成してもよい。
図5A〜図5Cに戻り、気泡6の流動に伴う電解液5の循環についてさらに説明する。上記したように、マニホールド20からの気体の供給によって発生した気泡6は、電極間を上方に流動する。これに伴い、図5Cにおいて、電極間の電解液5には、正極2A、2Bと負極3A、3B、3Cとの間の領域である第1領域120、詳細には、負極3Aと正極2Aとの間の領域120a、正極2Aと負極3Bとの間の領域120b、負極3Bと正極2Bとの間の領域120c、および正極2Bと負極3Cとの間の領域120dにおいて、電解液5が反応室10の下方から上方に向かって流動する上昇液流が発生する。
第1領域120を反応室10の上方に流動した電解液5は、負極3Aおよび負極3Cをそれぞれ乗り越えるようにして第3枠体25c、第4枠体25dに向かって水平方向に流動する。そして、平面視で第1領域120、正極2A、2Bと重なる領域、負極3A、3B、3Cと重なる領域、および枠体25a〜25dと重なる領域を除いた第2領域110のうち、負極3Aと第3枠体25cとの間の領域110aおよび負極3Cと第4枠体25dとの間の領域110bでは、電解液5には電極間領域である第1領域120における上昇液流に対応した下降液流が発生する。
また、第1領域120を反応室10の上方に流動した電解液5は、第1枠体25aおよび第2枠体25bをそれぞれ乗り越えるようにして第1ケース8の内壁8a、8bに向かって水平方向に流動する。そして、第2領域110のうち、第1枠体25aと第1ケース8の内壁8aとの間の領域110cおよび第2枠体25bと第1ケース8の内壁8bとの間の領域110dでは、電解液5には第1領域120における上昇液流に対応した下降液流が発生する。このように、実施形態の変形例2に係るフロー電池100によれば、電極間に気泡6を流動させることにより、反応室10の全体にわたり電解液5を循環させることができる。このため、負極3A、3B、3Cの近傍における[Zn(OH)2−の局所的な濃度低下を低減することができ、負極3A、3Bと正極2A、負極3B、3Cと正極2Bの導通をそれぞれ低減することができる。
第1方向に2n+1個(nは1以上の整数)の電極板が並んでいる場合、第1方向にn+1番目に配置されている電極板である中央電極板の下端は、他の電極板の下端よりも下に配置されていてもよい。そのようにすれば、YZ平面内に、中央電極板を中央において、中央電極板の右側で右回転の電解液5の周回ができ、中央電極板の左側で左回転の電解液5の周回ができ、それら電解液5の流れがそれぞれ安定する。
負極3A、3Bと正極2A、負極3B、3Cと正極2Bでは、活物質の有無、隔膜4をどちらに付けるかどうか等で厚さに差ある場合がある。そのような場合、中央電極板を厚さの薄い薄型電極板にしてもよい。そのようにすれば、厚さが薄いため上述の右回転および左回転の流れがより安定する。
そのような場合であっても、電極板を乗り越えるような電解液5の流れをスムーズにするためには、電極板の上端の位置は、高さがそろっているほうがよい。
次に、フロー電池100における電極間の接続について説明する。図5Dは、実施形態の変形例2に係るフロー電池100の電極間の接続の一例について説明する図である。
図5Dに示すように、負極3A、負極3Bおよび負極3Cは並列接続されている。また、正極2Aおよび正極2Bは並列接続されている。このように負極および正極をそれぞれ並列に接続することにより、負極および正極の総数がそれぞれ異なるフロー電池100の各電極間を適切に接続し、使用することができる。
なお、上記した実施形態では、合計5枚の電極が負極および正極が交互に配置されるように構成されたが、これに限らず、5枚以上の電極を交互に配置するようにしてもよく、正極および負極をそれぞれ1枚ずつ配置させてもよい。また、上記した実施形態では、両端がともに負極(3A、3C)となるように構成されたが、これに限らず、両端がともに正極となるように構成してもよい。
さらに、一方を正極、他方を負極となるように同枚数の負極および正極をそれぞれ交互に配置してもよい。
図8は、実施形態の変形例3に係るフロー電池100が備える反応室10の概略を示す図である。図8に示す反応室10は、第1枠体25aおよび第2枠体25bがそれぞれ、切り欠き状の下端部51,52を有することを除き、図5Bに示す反応室10と同様の構成を有している。第1枠体25aおよび第2枠体25bがそれぞれ切り欠き状の下端部51,52を有することにより、第1枠体25aおよび第2枠体25bの下端面における第1枠体25aと第2枠体25bとの間隔d4は、第1枠体25aと第2枠体25bとの距離d3よりも広くなる。
かかる構成を有する第1枠体25aおよび第2枠体25bを適用することにより、第1枠体25aおよび第2枠体25bの近傍を流動する気泡6および電解液5が第1枠体25aと第2枠体25bとの間の電極間領域である第1領域120(図5C参照)に流れ込み易くなり、第1領域120の電解液5を速やかに循環させることで、デンドライトの成長に伴う負極と正極との導通を低減することができる。
図9は、実施形態の変形例3に係るフロー電池100が備える反応室10の概略を示す図である。図9に示す反応室10は、負極3A、正極2A、負極3B、正極2Bおよび負極3Cがそれぞれ、切り欠き状の下端部61〜65を有することを除き、図5Aに示すフロー電池100が備える反応室10と同様の構成を有している。負極3A、正極2A、負極3B、正極2Bおよび負極3Cがそれぞれ切り欠き状の下端部61〜65を有することにより、隣り合う正極および負極の下端面における間隔は、隣り合う正極および負極の距離よりも広くなる。
かかる構成を有する負極3A、正極2A、負極3B、正極2Bおよび負極3Cを適用することにより、負極3A、正極2A、負極3B、正極2Bおよび負極3Cの近傍を流動する気泡6および電解液5が第1領域120(図5C参照)に流れ込み易くなり、第1領域120の電解液5を速やかに循環させることで、デンドライトの成長に伴う負極と正極との導通を低減することができる。
上記した実施形態および変形例では、負極3a、3b、負極3A〜3Cは金属板あるいは金属表面を一様にメッキ処理されたものとして説明したが、これに限らない。以下では、この点について、図10A〜図11Bを用いて説明する。
図10Aは、実施形態の変形例4に係るフロー電池100が備える負極3Baの概略を示す図であり、図10Bは、図10Aに示す負極3BaのII−II断面図である。
負極3Baは、例えば、図5Aに示す負極3Bに代えて適用することができる。負極3Baは、正極2AのY軸方向から見て負極3Baの縁部を構成する第1領域R1と、第1領域R1で囲まれた第2領域R2とを含む。また、負極3Baは、金属層70と、金属層70全体を覆う第1被覆層71と、第1被覆層71の一部を第2領域R2に対応するように被覆する第2被覆層72、73とを含む。
金属層70は、例えば、銅やステンレスなどの金属で構成される。また、第1被覆層71は、例えば、ニッケルを含有するめっき層である。そして、第2被覆層72、73は、例えば、金属亜鉛または酸化亜鉛その他の亜鉛化合物を含有するようにめっきまたは塗布された被覆層である。
電解液5に亜鉛を含有するフロー電池100では、充電時の負極における電池反応を円滑に進めるために電極表面を亜鉛メッキ処理することが知られている。一方、例えば平板状の負極3Bでは、例えば縁部や角部において電流が集中し、デンドライトの要因となりうる亜鉛の析出が起こりやすくなる。このため、図10A、図10Bに示す負極3Baでは、縁部または角部である第1領域R1にはあえて亜鉛を含有させないこととした。
このように正極と向かい合う電極表面の第1被覆層71が露出した第1領域R1で囲まれた、第2被覆層72、73を第1被覆層71上に備える第2領域R2を含むように構成された負極3Baを適用することにより、負極3Bの要部である第2領域R2では第2被覆層72、73に亜鉛を含有することで電池反応が円滑に行われる。一方、電流集中によりデンドライトが生じやすい傾向にある第1領域R1では亜鉛を含有しないことで充電時の亜鉛の析出が低減される。したがって、かかる構成を有する負極3Baを備えるフロー電池100によれば、負極と正極との導通を低減することができる。
上記した実施形態では、負極3Baの第1領域R1は第1被覆層71が露出した構成を有するとして説明したが、これに限らない。図11は、実施形態の変形例5に係るフロー電池100が備える負極の概略を示す図である。図11に示す負極3Baは、第1領域R1において第1被覆層71を被覆する樹脂被覆層74、75を有することを除き、図10A、図10Bに示す負極3Baと同じ構成を有している。
樹脂被覆層74、75は、例えばシリコーン樹脂やポリテトラフルオロエチレンなど、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。かかる構成を有する樹脂被覆層74、75を有することにより、図11に示す負極3Baは、第1領域R1の表面が電導性を有さないこととなるため、第1領域R1における充電時の亜鉛の析出がさらに低減される。また、金属層70の表面全体が複数の被覆層で覆われることとなるため、電解液5との接触に伴う負極3Baの劣化が低減される。
また、上記したように、負極3Baの縁部や角部では、充電時の電流集中により亜鉛が析出しやすい。そこで、例えば図12A〜図13に示すように負極3Baの縁部や角部に丸みをつけるように構成してもよい。
図12Aは、実施形態の変形例6に係るフロー電池100が備える負極3Baの概略を示す図であり、図12Bは図12AのIII−III断面図である。
図12A、図12Bに示す負極3Baは、図12Aに示す角部C1、C2、C3、C4を含む合計8箇所の角部と、図12Bに示す稜線L1、L2、L3、L4を含む合計8箇所の稜線がすべてR面取り状となるように構成された第1被覆層71を設けた点で図10A、図10Bに示す負極3Baと相違する。このように負極3Baの角部および稜線をすべてR面取り状とすることで、充電時の電流集中に伴う亜鉛の析出をさらに低減することができる。
また、図12Bに示すように第2領域R2を覆う第2被覆層72、73についても、第1領域R1と第2領域R2との境界部分における段差をなくすように第2被覆層72、73の厚さになだらかな傾斜を設けてもよい。かかる構成によれば、第1領域R1と第2領域R2との境界部分における電流集中に伴う亜鉛の析出をさらに低減することができる。
図13は、実施形態の変形例7に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。図13に示す負極3Baは、図11に示す負極3Baを構成する合計8箇所の角部と、図13に示す稜線L1、L2、L3、L4を含む合計8箇所の稜線がすべてR面取り状となるように構成された樹脂被覆層74、75を設けた点で図11に示す負極3Baと相違する。このように負極3Baの角部および稜線をすべてR面取り状とすることで、充電時の電流集中に伴う亜鉛の析出をさらに低減することができる。
上記した実施形態および変形例では、電極全体が電解液5中に浸漬されて使用される例について説明したが、これに限らず、電極上部が気体層7に露出した状態で使用してもよい。かかる点について、図14A、図14Bを用いて説明する。
図14Aは、実施形態の変形例8に係るフロー電池100が備える反応室10の概略を示す図であり、図14Bは図14AのIV−IV断面図である。図14Aに示す負極3Bbは、図5A〜図5Cに示す負極3A、3B、3Cに代えて適用することができる。
図14A、図14Bに示す負極3Bbは、電解液5の液面5a上に設けられた気体層7に露出する第3領域R3と、第3領域R3に隣接する第4領域R4とを含む。また、負極3Bbは、金属層80と、金属層80全体を覆う第1被覆層81と、第1被覆層81の一部を第4領域R4に対応するように被覆する第2被覆層82とを含む。
金属層80は、例えば、銅やステンレスなどの金属で構成される。また、第1被覆層81は、例えば、ニッケルを含有するめっき層である。そして、第2被覆層82は、例えば、金属亜鉛または酸化亜鉛その他の亜鉛化合物を含有するようにめっきまたは塗布された被覆層である。
電解液5中を流動する気泡6は、電解液5の液面5cで消滅する。このとき生じた飛沫の一部は、気体層7に露出した負極3Bbに付着する。このとき、電解液5の飛沫が付着した負極3Bbに亜鉛が含まれると、酸化亜鉛の結晶が析出しやすくなる。気体層7に露出した負極3Bbにおいて酸化亜鉛が析出すると、電解液5中の亜鉛濃度が不可逆的に低下し、電池性能が低下する。このため、気体層7に露出する第3領域R3に亜鉛を含有する第2被覆層82を設けないこととした。
このように正極と向かい合う電極表面の第1被覆層81が露出した第3領域R3を気体層7に露出させることにより、電解液5に由来する亜鉛の析出が低減される。したがって、かかる構成を有する負極3Bbを備えるフロー電池100によれば、電池性能の低下を低減することができる。
なお、上記した実施形態では、第3領域R3はその全体にわたり気体層7に露出するとして説明したが、これに限らず、第3領域R3の少なくとも一部が気体層7に露出すればよい。
また、上記した実施形態では、負極3Bbは、図5Aに示す負極3Bに代えて適用することができるとして説明したが、これに限らず、例えば負極3A、3Cや、図1A〜図2に示す負極3a、3b、図3に示す負極203a、203bに代えて適用するように構成してもよい。かかる場合、第2領域R2を覆う第2被覆層72、73や第4領域R4を覆う第2被覆層82は正極と向かい合う面にのみ配置されるよう構成してもよい。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態および変形例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記した実施形態では、電解液5中に粉末16が混在されているとして説明したが、これに限らず、粉末16を有しなくてもよい。このとき、電解液5中に溶存する亜鉛成分は、飽和状態であってもよく、飽和状態よりも低い濃度であってもよい。さらに、電解液5は、過飽和状態となるように亜鉛成分を溶存させたものであってもよい。
また、上記した実施形態では、隔膜4は正極を被覆しているとして説明したが、これに限らず、正極と負極との間に配置されていればよい。また、隔膜4は正極の厚み方向の両側を挟むように配置されてもよい。
また、気体供給部11は、常時動作していてもよいが、電力消費を低減する観点から、放電時には充電時よりも気体の供給レートを低下させてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
2、2A、2B 正極
3a、3b、3A、3B、3C 負極
4 隔膜
5 電解液
6 気泡
7 気体層
8 第1ケース
8e 底面
9 上板
10 反応室
11 気体供給部
13 第1供給孔
16 粉末
17 第2供給孔
18 第2ケース
20 マニホールド
100 フロー電池

Claims (11)

  1. 電極板である、1または複数の正極板および複数の負極板と、
    前記正極板および前記負極板を収容する反応室と、
    前記反応室の内部に収容され、前記正極板および前記負極板に接触する電解液と、
    前記反応室の底面に配置されている複数の第1供給孔と、
    前記複数の第1供給孔に気体を供給する気体供給部と
    を備え、
    前記正極板と前記負極板とは第1方向に交互に配置されており、かつ前記第1方向の両側の端には前記負極板が配置されており、
    並んでいる前記正極板および前記負極板を通して平面視した前記反応室は、一つの前記正極板および該正極板と隣り合って配置されている一つの前記負極板とに挟まれた第1領域と、前記第1領域、前記正極板と重なる領域、および前記負極板と重なる領域を除いた第2領域とを含み、
    前記第1領域のうち、前記底面には、それぞれ前記第1供給孔が配置されており、
    前記第2領域のうち、前記底面には、前記第1供給孔が配置されていないか、前記第1領域よりも少ない割合で前記第1供給孔が配置されているフロー電池。
  2. 前記第1領域において、前記第1方向に交差する前記電極板の幅方向に沿って並ぶ前記第1供給孔の平均間隔をA、前記正極板と前記負極板との間の距離をBとしたとき、A/Bが2以上10以下である、請求項1に記載のフロー電池。
  3. 前記正極板および前記負極板の少なくとも一方の前記幅方向の端が、前記第1領域において前記幅方向の一番端に位置する前記第1供給孔からA/4以上3×A/4以下の距離に配置される、請求項2に記載のフロー電池。
  4. 前記第1方向に2n+1個(nは1以上の整数)並んでいる前記電極板のうち、前記第1方向にn+1番目に配置されている前記電極板である中央電極板の下端は、他の前記電極板の下端よりも下に配置されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のフロー電池。
  5. 前記電極板の上端が同じ高さに配置されている請求項4に記載のフロー電池。
  6. 前記第1方向に2n+1個(nは1以上の整数)並んでいる前記電極板のうち、前記第1方向にn+1番目に配置されている前記電極板である中央電極板は、前記正極板および前記負極板のうちの厚さが薄い方である薄型電極板である請求項1〜5のいずれか1つに記載のフロー電池。
  7. 前記薄型電極板が、前記負極板である請求項6に記載のフロー電池。
  8. 前記反応室の下に配置されているマニホールドを備え、
    該マニホールドは、前記複数の第1供給孔を介して前記反応室と接続しており、かつ前記気体供給部と接続されており、
    前記マニホールドが前記電解液で満たされたときに、前記正極板および前記負極板は、前記電解液より外に露出せず、
    前記マニホールドが気体で満たされたときに、前記反応室には、前記電解液で満たされていない気体層が存在する請求項1〜7のいずれか1つに記載のフロー電池。
  9. 前記反応室の下に配置されているマニホールドを備え、
    該マニホールドは、前記複数の第1供給孔を介して前記反応室と接続しており、かつ前記気体供給部と接続されており、
    前記マニホールドに設けられており、前記気体供給部と接続している第2供給孔の流路抵抗は、前記第1供給孔の流路抵抗の1/100以下である請求項1〜8のいずれか1つに記載のフロー電池。
  10. 前記反応室の下に配置されているマニホールドを備え、
    該マニホールドは、前記複数の第1供給孔を介して前記反応室と接続しており、かつ前記気体供給部と接続されており、
    隣り合って配置されている2つの前記第1供給孔の間の前記マニホールドの流路抵抗は、前記第1供給孔の流路抵抗の1/100以下である請求項1〜9のいずれか1つに記載のフロー電池。
  11. 前記反応室の下に配置されているマニホールドを備え、
    該マニホールドは、前記複数の第1供給孔を介して前記反応室と接続しており、かつ前記気体供給部と接続されており、
    前記マニホールドの高さが、10mm以下である請求項1〜10のいずれか1つに記載のフロー電池。
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