JP2018170231A - フロー電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】エネルギ密度を向上することができるフロー電池を提供する。【解決手段】実施形態に係るフロー電池は、セルスタックと、反応室と、電解液と、発生部と、供給部とを備える。セルスタックは、スペーサを介して正極および負極を交互に積層した積層体と、積層体を保持するように積層体の外周を囲む枠体とを有する。反応室は、セルスタックを収容する。電解液は、反応室の内部に収容され、正極および負極に接触する。発生部は、電解液に気泡を発生させる。供給部は、発生部に気体を供給する。【選択図】図4
Description
開示の実施形態は、フロー電池に関する。
従来、正極と負極との間に、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオン([Zn(OH)4]2−)を含有する電解液を循環させるフロー電池が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
Y. Ito. et al.: Zinc morphology in zinc-nickel flow assisted batteries and impact on performance, Journal of Power Sources, Vol. 196, pp. 2340-2345, 2011
ところで、フロー電池においては、エネルギ密度の向上が要求されている。
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、エネルギ密度を向上することができるフロー電池を提供することを目的とする。
実施形態の一態様に係るフロー電池は、セルスタックと、反応室と、電解液と、発生部と、供給部とを備える。セルスタックは、スペーサを介して正極および負極を交互に積層した積層体と、該積層体を保持するように前記積層体の外周を囲む枠体とを有する。反応室は、前記セルスタックを収容する。電解液は、前記反応室の内部に収容され、前記正極および前記負極に接触する。発生部は、前記電解液に気泡を発生させる。供給部は、前記発生部に気体を供給する。
実施形態の一態様のフロー電池によれば、エネルギ密度を向上することができる。
以下、添付図面を参照して、本願の開示するフロー電池の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態に係るフロー電池の概略を示す斜視図であり、図2は、実施形態に係るフロー電池の平面図である。図1、図2に示すフロー電池100は、収納容器50と、マニホールド60と、供給部P1〜P4とを備える。なお、図1、図2では、例えば後述するセルスタックや電解液など、収納容器50に収容される各部材の図示を省略している。また、図1では、供給部P1〜P4および供給部P1〜P4に接続される各配管についても図示を省略している。
なお、説明を分かりやすくするために、図1、図2には、鉛直上向きを正方向とし、鉛直下向きを負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。
収納容器50は、平面視して長手方向がX軸方向に沿うように延び、短手方向であるY軸方向に沿って所定間隔で並ぶ複数の反応部31〜38を含む。反応部31〜38にはそれぞれ、後述するセルスタックおよび電解液が個別に収容される。なお、収納容器50が有する反応部31〜38の数は一例にすぎず、要求される出力性能等に応じて変更することができる。
また、収納容器50の上部には、反応部31〜38の内部に連通する負極タブ引出口31a〜38a、正極タブ引出口31b〜38bが設けられている。これらの説明については後述する。
マニホールド60は、第1マニホールド61〜第4マニホールド64を含む。第1マニホールド61は、反応部31,32と隣接するように配置されており、第2マニホールド62は、反応部33,34と隣接するように配置されている。また、第3マニホールド63は、反応部35,36と隣接するように配置されており、第4マニホールド64は、反応部37,38と隣接するように配置されている。
また、供給部P1〜P4はそれぞれ、例えば気体を移送可能なポンプ(気体ポンプ)、コンプレッサまたはブロワである。供給部P1〜P4は、気体や電解液に由来する水蒸気を外部に漏出させることでフロー電池100の発電性能を低減させないよう高い気密性を有するものが好ましい。
供給部P1〜P4は、配管41〜44を介して反応部31〜38から回収された気体を、配管45〜48を介してマニホールド60(第1マニホールド61〜第4マニホールド64)に供給する。
ここで、マニホールド60(第1マニホールド61〜第4マニホールド64)の流路構造について説明する。以下では、マニホールド60(第1マニホールド61〜第4マニホールド64)を代表して第1マニホールド61を例に挙げて説明し、第2マニホールド62〜第4マニホールド64については説明を省略する。第1マニホールド61は、貯留部65と分岐流路66,67とを有し、反応部31,32に気体を供給する流路の一部を構成する。
貯留部65は、外部から供給された気体を一時的に蓄える。分岐流路66は、貯留部65と反応部31とを、分岐流路67は、貯留部65と反応部32とを、それぞれ連通するように構成されている。配管45を介して貯留部65に蓄えられた気体は、分岐流路66,67を経由して反応部31,32にそれぞれ分配されるように供給される。
このように第1マニホールド61を設けて隣り合う反応部31,32に気体を供給する配管を共通化すると、第1マニホールド61の貯留部65がバッファタンクとしての機能を兼ねることとなる。このため、反応部31,32に対する気体の供給圧力を均一にすることができる。
なお、実施形態に係るフロー電池100では、マニホールド60(第1マニホールド61〜第4マニホールド64)が反応部31〜38の側面に配置されたが、これに限らず、反応部31〜38の上方または下方に配置されてもよい。また、第1マニホールド61は2つの反応部31,32に気体を分配するように構成されたが、3つ以上の反応部に気体を分配するように構成してもよい。
また、マニホールド60(第1マニホールド61〜第4マニホールド64)と反応部31〜38とは離れていてもよいが、好ましくは近接するように配置される。マニホールド60(第1マニホールド61〜第4マニホールド64)と反応部31〜38とが近接するように配置されると、マニホールド60(第1マニホールド61〜第4マニホールド64)と反応部31〜38とを接続する配管が不要となり、フロー電池100が小型化することでエネルギ密度が向上する。
次に、反応部31〜38の内部構造について、図3、図4を用いて説明する。以下では、反応部31〜38を代表して反応部31を例に挙げて説明し、反応部32〜38については説明を省略する。図3は、図2に示す反応部31のA−A断面図であり、図4は、図3のB−B断面図である。
図3、図4に示すように、反応部31は、発生部20と反応室30とを有する。
発生部20は、反応部31の下部、具体的には反応室30の下方に配置されている。発生部20は、一方は第1マニホールド61を介して供給部P1に接続されており、他方は電解液5を収容した反応室30の内部に開口している。発生部20は、供給部P1から送られた気体を電解液5中に供給し、気泡6を発生させる。
発生部20は、X軸方向およびY軸方向に沿って並ぶ複数の開口20aを有している。開口20aは、発生部20の天面を兼ねる反応室30の底面30eに設けられる。
発生部20は、供給部P1から供給された気体を開口20aから吐出することにより、電解液5中に気泡6を発生させる。開口20aは、例えば0.05mm以上0.1mm以下の直径を有する。また、X軸方向に沿った開口20aの間隔(ピッチ)は、例えば、2.5mm以上10mm以下である。ただし、開口20aは、発生した気泡6を互いに向かい合う正極と負極との間にそれぞれ適切に流動させることができるように配置されるものであれば、大きさや間隔に制限はない。
次に、反応室30について説明する。反応室30は、反応部31の上部、具体的には発生部20の上方に配置されている。反応室30には、セルスタック10と電解液5とが収容されている。セルスタック10は、積層体1と枠体25,26とを備える。
積層体1は、正極と負極とが交互に配置された積層構造を有している。具体的には、積層体1は、負極3Aと、正極2Aと、負極3Bと、正極2Bと、負極3Cとが予め定められた間隔でY軸方向に沿って順に並ぶように配置されている。また、積層体1は、隣り合う正極と負極との間、すなわち負極3Aと正極2Aとの間、正極2Aと負極3Bとの間、負極3Bと正極2Bとの間、正極2Bと負極3Cとの間にそれぞれ設けられたスペーサ11,12を含む。スペーサ11,12によって隣り合う正極と負極との間隔をそれぞれ保持することにより、正極と負極との間における電解液5および気泡6を流通する経路が確保される。
また、積層体1は、正極2Aの積層方向、すなわちY軸方向の両側を挟むように配置された隔膜13,14をさらに含む。ここで、正極2Aおよび隔膜13,14の詳細な構成について、図5A、図5Bを用いて説明する。以下では、正極2A,2Bを代表して正極2Aを例に挙げて説明し、正極2Bについては説明を省略する。
図5Aは、実施形態に係るフロー電池100が備える正極2Aを示す図であり、図5Bは、図5AのC−C断面図である。
図5A、図5Bに示すように、正極2Aは、正極材2Aaと、支持枠2Abとを備える。支持枠2Abは、正極材2Aaの周縁部を囲むように配置され、Y軸方向の両端が連通するように開口している。隔膜13,14は、支持枠2Abの開口部分を塞ぐように正極材2Aaを挟んで互いに向かい合い、例えばエポキシ樹脂系等の耐電解液性を有する接着材料により支持枠2Abに固定されている。
正極材2Aaは、例えば、ニッケル化合物またはマンガン化合物を正極活物質として含有する導電性の部材である。ニッケル化合物は、例えば、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト含有水酸化ニッケル等が好ましい。マンガン化合物は、例えば、二酸化マンガン等が好ましい。また、正極材2Aaは、コバルト化合物、黒鉛、カーボンブラック、導電性樹脂等を含んでもよい。電解液5が分解される酸化還元電位の観点からは、正極材2Aaはニッケル化合物を含有することが好ましい。
また、正極材2Aaは、上記した正極活物質や導電体その他の添加剤を複数の粒状体として含む。具体的には、正極材2Aaは、例えば、予め定められた割合で配合された粒状の活物質および導電体を、保形性に寄与するバインダとともに含有するペースト状の正極材料を発泡ニッケルなどの導電性を有する発泡金属へ圧入し、所望の形状に成形し、乾燥させたものである。
支持枠2Abは、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニルなど、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。支持枠2Abは、好ましくは収納容器50と同じ材料で構成されるが、異なる材料で構成されてもよい。
また、隔膜13,14は、正極材2Aaを負極3A,3Bからそれぞれ分離すると共に、電解液5に含まれるイオンの移動を許容する材料で構成される。
隔膜13,14の材料としては、例えば、隔膜13,14が水酸化物イオン伝導性を有するように、陰イオン伝導性材料が挙げられる。陰イオン伝導性材料としては、例えば、有機ヒドロゲルのような三次元構造を有するゲル状の陰イオン伝導性材料、または固体高分子型陰イオン伝導性材料などが挙げられる。固体高分子型陰イオン伝導性材料は、例えば、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族より選択された少なくとも一種類の元素を含有する、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、硫酸化合物およびリン酸化合物からなる群より選択された少なくとも一つの化合物とを含む。
隔膜13,14は、好ましくは、水酸化物イオンよりも大きいイオン半径を備えた[Zn(OH)4]2−等の金属イオン錯体の透過を抑制するように緻密な材料で構成されると共に所定の厚さを有する。緻密な材料としては、例えば、アルキメデス法で算出された90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上の相対密度を有する材料が挙げられる。所定の厚さは、例えば、10μm〜1000μm、より好ましくは50μm〜500μmである。
この場合には、充電の際に、負極3A,3Bにおいて析出する亜鉛がデンドライト(針状結晶)として成長し、隔膜13,14を貫通することを低減することができる。その結果、互いに向かい合う負極と正極との間の導通を低減することができる。
図3に戻り、正極2A(正極材2Aa)は、正極タブ引出口31bから反応室30の外部に引き出された板状または棒状のタブ2A1と電気的に接続されている。同様に、正極2Bは、後述するタブ2B1と電気的に接続されている。
図3、図4に戻り、負極3A,3B,3Cは、反応室30に収容されている。負極3A,3B,3Cは、例えば負極活物質を金属亜鉛または亜鉛化合物として含む。負極3A,3B,3Cは、例えば、ステンレスや銅などの基材を、耐電解液性を有するニッケルやスズ、亜鉛でメッキ処理したものを使用することができる。また、メッキ処理された表面が一部酸化されたものを負極3A,3B,3Cとして使用してもよい。また、負極3A,3B,3Cは、例えばカーボンペーパーやカーボンフェルトといった炭素系電極材料を用いてもよい。
また、負極3Aは、負極タブ引出口31aから反応室30の外部に引き出された板状または棒状のタブ3A1と電気的に接続されている。同様に、負極3B,3Cは、後述するタブ3B1、3C1とそれぞれ電気的に接続されている。
枠体25,26は、Y軸方向に沿って積層された積層体1の外周をYZ平面に沿うように囲むことにより、スペーサを挟んで正極と負極とが交互に積層された積層体1の積層構造を保持する部材である。
枠体25,26は、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニルなど、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。枠体25,26は、好ましくは収納容器50と同じ材料で構成されるが、異なる材料で構成されてもよい。
また、図3に示すように、枠体25は、反応室30の内壁30cとは離れて配置されている。同様に、枠体26は、反応室30の内壁30dとは離れて配置されている。このように枠体25,26を配置することにより、枠体25,26がセルスタック10から脱落してしまう不具合を低減することができる。また、枠体25,26は、開口20aを塞がないように開口20aの間に配置される。ここで、枠体25,26のX軸方向の幅w1は、例えば0.1mm以上20mm以下、より好ましくは2.5mm以上5mm以下である。幅w1をこの範囲とすることで、枠体25,26の強度低下を抑制し、枠体25,26が開口20aを塞ぐことがなく、気泡6の流動を安定化できる。
なお、枠体25,26は、内壁30c,30dとそれぞれ当接するように配置されてもよい。このように配置された枠体25,26を有するセルスタック10では、反応室30におけるX軸方向の位置決めが容易となる。
また、図4に示すように、Y軸負方向側に位置する枠体25の外周面25aは、反応室30の内壁30aに当接するように配置されている。同様に、Y軸正方向側に位置する枠体25の外周面25bは、反応室30の内壁30bに当接するように配置されている。このように枠体25,26を有するセルスタック10を反応室30に配置することにより、反応室30におけるY軸方向の位置決めが容易となる。また、枠体25,26のかかる配置により、負極3Aと内壁30aとの間、負極3Cと内壁30bとの間、底面30eと積層体1の下端1eとの間に、電解液5が自由に流動可能な隙間ができる。
ここで、枠体25,26のY軸方向の厚みt1は、例えば、0.5mm以上10mm以下、より好ましくは1mm以上3mm以下である。厚みt1を0.5mm以上に設定することで、電解液5の流動を阻害することがなく、枠体25,26の強度低下をなくすことができる。また、厚みt1を10mm以下に設定することで、反応室30の容積に対して積層体1の占める割合を大きくすることができ、エネルギ密度の低下を抑制することができる。また、積層体1と内壁30a,30bとの隙間を狭くすることができ、電解液5の流動を速めることができる。
また、枠体25,26は、反応室30の底面30eと積層体1の下端1eとの間隔h1が、例えば、0.5mm以上20mm以下、より好ましくは1mm以上10mm以下となるように形成される。電解液5は後述するように反応室30内を流れるため、間隔h1が0.5mm以上であると、積層体1と底面30eとの隙間を広くすることができ、電解液5の流動がスムーズに行われる。間隔h1が20mm以下であると、反応室30の容積に対して積層体1の占める割合を大きくすることができ、エネルギ密度を高くすることができる。なお、枠体25,26と底面30eとの間には、空間Sを形成するための脚部25fを設けてもよい。脚部25fを設けることにより、積層体1と底面30eとの間における電解液5の流動がより円滑になる。
なお、枠体25,26は、内壁30a,30bと当接していなくてもよく、例えばY軸方向の位置決めが容易となる程度に例えば1mm程度離間して近接していてもよい。
電解液5は、正極2A,2Bおよび負極3A,3B,3Cに接触するように反応室30の内部に収容されている。電解液5は、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である。電解液5中の亜鉛種は、[Zn(OH)4]2−として溶存している。電解液5は、例えば、K+やOH−を含むアルカリ水溶液に酸化亜鉛を飽和させたものを使用することができる。ここで、アルカリ水溶液としては、例えば、6.7moldm−3の水酸化カリウム水溶液を使用することができる。また、例えば、6.7moldm−3の水酸化カリウム水溶液に対し、ZnOが飽和するまで添加することにより電解液5を調製することができる。
気泡6は、例えば正極2A,2B、負極3A,3B,3Cおよび電解液5に対して不活性な気体で構成される。このような気体としては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、またはアルゴンガスなどが挙げられる。電解液5に不活性な気体の気泡6を発生させることにより、電解液5の変性を低減することができる。また、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である電解液5の劣化を低減し、電解液5のイオン伝導度を高く維持することができる。なお、気体は空気であってもよい。
開口20aから電解液5中に供給された気体により発生した気泡6は、所定の間隔で配置された電極間、すなわち、負極3Aと正極2Aとの間、正極2Aと負極3Bとの間、負極3Bと正極2Bとの間、正極2Bと負極3Cとの間において、それぞれ電解液5中を上方に向かって流動する。電解液5中を気泡6として流動した気体は、電解液5の液面で消滅し、反応室30における電解液5の上方に気体層7を構成する。
ここで、反応室30における電極反応について、正極活物質として水酸化ニッケルを適用したニッケル亜鉛フロー電池を例に挙げて説明する。充電時における正極および負極での反応式はそれぞれ、以下のとおりである。
正極:Ni(OH)2 + OH− → NiOOH + H2O + e−
負極:[Zn(OH)4]2− + 2e− → Zn +4OH−
負極:[Zn(OH)4]2− + 2e− → Zn +4OH−
反応式から明らかなように、負極3A,3B,3Cでは、充電により亜鉛が析出するのに伴い、負極3A,3B,3Cの近傍における電解液5中の[Zn(OH)4]2−の濃度が低下する。そして、[Zn(OH)4]2−の濃度が低下した電解液5が負極3A,3B,3Cの近傍に滞留すると、負極3A,3B,3Cに析出した亜鉛がデンドライトとして成長する一因となる。すなわち、充電反応により[Zn(OH)4]2−の濃度が局所的に低下した電解液5を負極3A,3B,3Cの近傍に滞留させることなく速やかに流動させると、デンドライトの成長が低減される。
そこで、実施形態に係るフロー電池100では、反応室30の内部に開口した発生部20の開口20aから電解液5中に気体を供給して気泡6を発生させることとした。気泡6は、負極3Aと正極2Aとの間、正極2Aと負極3Bとの間、負極3Bと正極2Bとの間、正極2Bと負極3Cとの間のそれぞれにおいて反応室30の下方から上方に向かって電解液5中を上昇するように流動する。
また、電極間における上記した気泡6の流動に伴い、電解液5には上昇液流が発生し、負極3Aと正極2Aとの間、正極2Aと負極3Bとの間、負極3Bと正極2Bとの間、正極2Bと負極3Cとの間では反応室30の底面30eから上方に向かって電解液5が流動する。そして、電解液5の上昇液流に伴い、主に内壁30a、30bと積層体1との間で下降液流が発生し、電解液5が反応室30の上方から下方に向かって流動する。図4に、電解液5の主な流れを矢印で記載した。
このように実施形態に係るフロー電池100では、[Zn(OH)4]2−の濃度が局所的に低下した電解液5を速やかに循環させることで電解液5中の[Zn(OH)4]2−の濃度を均一に保つことができ、デンドライトの成長に伴う負極と正極との導通を低減することができる。
ここで、負極3Aと隔膜13との間隔、および、負極3Bと隔膜14との間隔は、好ましくは1cm以下となるように設けられる。負極と隔膜との間隔を1cm以下とすることにより、電極間のイオン伝導に伴う電圧低下を低減することができる。また、気泡6を負極3A,3B,3Cの近傍により確実に流動させることができることから、電解液5中の[Zn(OH)4]2−の濃度を速やかに均一化することができ、デンドライトの成長に伴う負極と正極との導通を低減することができる。なお、正極2Bを覆う隔膜と負極3B,3Cとの間隔についても、同様に設定することができる。
なお、図3、図4に示す反応室30では、電解液5の上面、すなわち電解液5と気体層7との境界は枠体25,26の上面よりも高くなるように構成されたが、これに限らず、例えば、電解液5の上面が積層体1の上端と枠体25,26の上面との間に位置するようにしてもよい。
次に、フロー電池100における電極間およびセルスタック間の接続について説明する。図6は、実施形態に係るフロー電池100の電極間の接続の一例について説明する図であり、図7は、実施形態に係るフロー電池100におけるセルスタック間の接続の一例について説明する図である。
図6に示すように、負極3A,3Bおよび3Cは、負極タブ引出口31aから引き出されたタブ3A1,3B1,3C1を介して、負極板3を用いて並列接続されている。また、正極2Aおよび2Bは、正極タブ引出口31bから引き出されたタブ2A1,2B1を介して、正極板2を用いて並列接続されている。このように負極および正極をそれぞれ並列に接続することにより、正極および負極の総数が異なる場合であってもフロー電池100の各電極間を適切に接続し、使用することができる。
また、図7に示すように、セルスタック10の正極板2とセルスタック101の負極板3とは接続部材51を介して電気的に接続されている。また、セルスタック101の正極板2とセルスタック102の負極板3とは接続部材52を介して電気的に接続されている。また、セルスタック102の正極板2とセルスタック103の負極板3とは接続部材53を介して電気的に接続されている。また、セルスタック103の正極板2とセルスタック104の負極板3とは接続部材54を介して電気的に接続されている。また、セルスタック104の正極板2とセルスタック105の負極板3とは接続部材55を介して電気的に接続されている。また、セルスタック105の正極板2とセルスタック106の負極板3とは接続部材56を介して電気的に接続されている。また、セルスタック106の正極板2とセルスタック107の負極板3とは接続部材57を介して電気的に接続されている。
このように、互いに隣り合うセルスタックの正極板2と負極板3とを接続部材を用いて接続することにより、セルスタック10,101〜107は直列接続される。なお、図7に示すように、正極板2と負極板3の配置は、Y軸方向に正極板2と負極板3とが互い違いに配置されるように構成すると、接続部材51〜57のサイズを小さくすることができ、充放電性能の低下を低減することができる。
なお、上記した実施形態では、合計5枚の電極が負極および正極が交互に配置されるように構成されたが、これに限らず、3枚または6枚以上の電極を交互に配置するようにしてもよく、正極および負極をそれぞれ1枚ずつ配置させてもよい。また、上記した実施形態では、両端がともに負極(3A,3C)となるように構成されたが、これに限らず、両端がともに正極となるように構成してもよい。
さらに、一方を正極、他方を負極となるように同枚数の負極および正極をそれぞれ交互に配置してもよい。かかる場合、電極間の接続は並列であってもよく、直列であってもよい。
次に、発生部20が備える開口20aの変形例について説明する。図8は、実施形態の変形例に係るフロー電池100が備える発生部20の概略を示す断面図である。
図8に示すように、発生部20は、反応室30に向かって突出する複数の突出部19を有する。これらの突出部19はそれぞれ、上方に開口する開口20bを有している。突出部19の高さh2は、積層体1の下端1eよりも上方に位置するように設定される。このため、開口20bから吐出された気体による気泡6を電極間により確実に誘導することができる。また、粉末状に加工または生成された酸化亜鉛を混在させた電解液5を適用した場合には、酸化亜鉛による開口20bの目詰まりを低減することができる。突出部19の高さh2は、例えば、1mm以上10mm以下とすることができる。
また、突出部19は、好ましくは上端側を頂点とする円錐筒形状を有している。このように構成された突出部19では、電解液5の流動に対する抵抗を受けにくく、例えば破損などの不具合を受けにくい。また、例えば電解液5の流れを阻害する不具合を低減することができる。
開口20bは、例えば10μm以上200μm以下の直径を有する。開口20bの直径をこのように規定することにより、開口20bから発生部20に電解液5が進入する不具合を低減することができる。また、開口20bから吐出される気体に対し、気泡6を発生させるのに適した圧力損失を与えることができる。
また、X軸方向に沿った開口20bの間隔(ピッチ)は、例えば、1mm以上10mm以下である。ただし、開口20bは、発生した気泡6を互いに向かい合う正極と負極との間にそれぞれ適切に流動させることができるように配置されるものであれば、大きさや間隔に制限はない。
なお、上記した実施形態では、供給部P1〜P4は、常時動作していてもよいが、電力消費を低減する観点から、電解液5中の電解質濃度に偏りが生じやすい充放電時にのみ動作させることが好ましく、デンドライトが生じやすい充電時にのみ動作させるのがより好ましい。また、電解液5中の[Zn(OH)4]2−の消費レートに応じて発生部20から供給される気体の供給速度を変更するように構成してもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
1 積層体
2 正極板
2A,2B 正極
3 負極板
3A,3B,3C 負極
5 電解液
6 気泡
7 気体層
10,101〜107 セルスタック
11,12 スペーサ
13,14 隔膜
20 発生部
20a,20b 開口
25、26 枠体
30 反応室
31〜38 反応部
50 収納容器
60 マニホールド
100 フロー電池
P1〜P4 供給部
2 正極板
2A,2B 正極
3 負極板
3A,3B,3C 負極
5 電解液
6 気泡
7 気体層
10,101〜107 セルスタック
11,12 スペーサ
13,14 隔膜
20 発生部
20a,20b 開口
25、26 枠体
30 反応室
31〜38 反応部
50 収納容器
60 マニホールド
100 フロー電池
P1〜P4 供給部
Claims (1)
- スペーサを介して正極および負極を交互に積層した積層体と、該積層体を保持するように前記積層体の外周を囲む枠体とを有するセルスタックと、
前記セルスタックを収容する反応室と、
前記反応室の内部に収容され、前記正極および前記負極に接触する電解液と、
前記電解液に気泡を発生させる発生部と、
前記発生部に気体を供給する供給部と
を備えることを特徴とするフロー電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017068679A JP2018170231A (ja) | 2017-03-30 | 2017-03-30 | フロー電池 |
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- 2017-03-30 JP JP2017068679A patent/JP2018170231A/ja active Pending
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