JPWO2019017452A1 - 非エンベロープ型rnaウイルスの有無を検出する方法 - Google Patents

非エンベロープ型rnaウイルスの有無を検出する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は生体排出検体に由来する試料中の、非エンベロープ型RNAウイルスの有無を検出する方法に関する。本発明によれば、核酸増幅反応に先立ち核酸を分離精製するための時間・コストを削減することができるだけではなく、試料ロスやキャリーオーバーの危険性を低減することもできる。特に糞便を試料とする多数の検体を処理するような検査において、本発明によるかかる効果は顕著となる。

Description

本発明は、RNAウイルスの検出方法に関する。本発明は、生命科学研究、臨床診断や食品衛生検査、環境検査等にも利用できる。
核酸増幅法は数コピーの標的核酸を検出可能なレベル、すなわち数億コピー以上に増幅する技術であり、生命科学研究分野のみならず、遺伝子診断、臨床検査といった医療分野、あるいは、食品や環境中の微生物検査等においても、広く用いられている。
核酸増幅法を利用した検査の対象となる検体は、目的に応じて様々である。感染症原因菌の検出であれば、原因菌が存在しうる検体すなわち、尿、喀痰、糞便、血液、鼻腔液、膣分泌液などである。食品衛生検査であれば食品、あるいは食品取扱者から採取された糞便や尿、環境衛生検査であれば土壌や河川水、雨水、海水などの環境水、製造設備等の拭き取り物などである。特に特徴的な症状が発生するまでの潜伏期間がある微生物が原因の食中毒については被害拡大防止のために迅速な検査法が求められており、その場合の検体としては糞便、製造設備等の拭き取り物などになる。
ところが検体によっては核酸以外の物質も多量に含んでおり、特に酵素を利用した核酸増幅反応を効率的に行うには通常は検体中の核酸の分離精製が必要とされている。前記核酸の分離精製には様々な手法があるが、基本的には核酸と他の物質を固体相と液体相に分けて固液分離する工程から構成される。例えばエタノール沈殿で核酸を固体相とし遠心分離で分離する方法、固相(例えばビーズ)上の核酸に標的核酸をハイブリダイズし、遠心分離や磁性化体で分離する方法がある。しかし、検体中の成分の分離をともなうこれらの精製法は、操作が煩雑で、かつ時間を要し、操作中に分解やコンタミネーションを生じる危険性がある。また、検体中の核酸含量が少ない場合には、増幅反応に必要な量を回収することができない場合もある。さらに核酸増幅法に要する時間は長くても数時間ほどであるが、このサンプル核酸調製に時間を要すると結果を得るまでの迅速性が失われることにもなる。したがって、検体を、別の容器への分離操作をともなう精製工程を経ることなく反応液へ持込み、標的核酸を増幅する方法が求められていた。
このような方法として、例えば、特許文献1では糞便の懸濁上清液にアルカリ含有液を添加し加熱処理したサンプルを反応液に直接添加し核酸増幅反応を実施する方法が開示されている。また特許文献2では糞便の懸濁上清液に対しペクチナーゼ処理を行い加熱処理したサンプルを反応液に直接添加し核酸増幅反応を実施する方法が開示されている。
特許文献1、2及び非特許文献1、2の実施例では検体中のRNAを検出するため核酸増幅法としてRT−PCRが実施されている。しかし上記方法のRNAサンプル調製ではいずれも加熱処理が行われている。また特許文献2には、加熱処理によるRNAの加水分解の危険性が記載されているものの、加熱処理の必要性が記載されている。このように従来の方法では、いずれの方法においても核酸抽出及び反応阻害物失活のために、加熱工程は必須と考えられてきた。
WO2007/052765 特開2015−119656
東洋紡株式会社製 製品CodeNo,FIK−253 取扱説明書 株式会社島津製作所製 製品CodeNo,PN 241−09500−91 取扱説明書
本発明の目的は、試料からの核酸精製が特に不要な核酸増幅反応による標的核酸の検出を可能にすることである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特に加熱処理工程を必要とせず、また試料中の核酸を別の容器への分離をともなう精製を行わずに増幅反応に供することができる方法を見出し、本発明を完成した。
代表的な本願発明は以下の通りである。
[1] 排出検体に由来する試料中の、非エンベロープ型RNAウイルスの有無を検出する方法であって、
(a)RNAウイルスを含有する可能性のある試料を含むアルカリ性の混合液を調製する工程、
(b)工程(a)で得られた混合液を加熱せず放置する工程、及び
(c)工程(b)の放置後の混合液をcDNA合成反応に供する工程、
を包含する、RNAウイルスの検出方法。
[2] 工程(a)が、RNAウイルスを含有する可能性のある試料に強アルカリ性の水酸化物を含む溶液を添加することにより、アルカリ性の混合液を調製する工程である、前記[1]記載の方法。
[3] 工程(a)が、RNAウイルスを含有する可能性のある試料をキレート剤を含む溶液で懸濁した後に、強アルカリ性の水酸化物を含む溶液を添加することにより、アルカリ性の混合液を調製する工程である、前記[1]記載の方法。
[4] 強アルカリ性の水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及び水酸化カルシウムからなる群より選択される1種以上である、前記[2]又は[3]記載の方法。
[5] 工程(a)におけるアルカリ性の混合液が水酸化ナトリウムを含有し、該水酸化ナトリウムの濃度が20〜70mMである、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6] 工程(d)として、工程(c)で得られたcDNAを鋳型とする核酸増幅の工程をさらに含むことを特徴とする、前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7] 工程(d)における核酸増幅が、PCRにより実施されることを特徴とする、前記[6]記載の方法。
[8] 工程(c)と工程(d)が、同一の反応液内で行われることを特徴とする、前記[6]又は[7]記載の方法。
[9] 工程(b)が、室温での放置により実施されることを特徴する、前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10] 工程(b)が、30℃以下での放置により実施されることを特徴する、前記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11] 生体排出検体が糞便であることを特徴とする、前記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の方法。
[12] 工程(a)におけるRNAウイルスを含有する可能性のある試料が、糞便懸濁液上清であることを特徴とする、前記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法。
[13] 糞便懸濁液上清が、糞便を滅菌水、生理食塩水又はPBSに懸濁して、調製されたことを特徴とする、前記[12]記載の方法。
[14] アルカリ性の混合液を、中和可能な物質と接触させることを特徴とする、前記[1]〜[13]のいずれか1項に記載の方法。
[15] 中和可能な物質が、工程(c)におけるcDNA合成反応を実施する反応液中に含まれることを特徴とする、前記[14]記載の方法。
[16] 生体排出検体に由来する試料中の、非エンベロープ型RNAウイルスの有無を検出する方法であって、
(a)RNAウイルスを含有する可能性のある試料を含むアルカリ性の混合液を調製する工程、及び
(b’)工程(a)で得られた混合液を加熱することなくcDNA合成反応に供する工程、
を包含する、RNAウイルスの検出方法。
[17] 工程(a)が、RNAウイルスを含有する可能性のある試料をキレート剤を含む溶液で懸濁した後に、強アルカリ性の水酸化物を含む溶液を添加することにより、アルカリ性の混合液を調製する工程である、前記[16]記載の方法。
[18] 前記[1]又は[16]記載の方法のためのキットであって、
(i)強アルカリ性の水酸化物を含む溶液、
(ii)逆転写酵素、
(iii)逆転写反応用試薬、
(iv)耐熱性DNAポリメラーゼ、及び
(v)DNAポリメラーゼ連鎖反応用試薬、を含むキット。
[19] さらに、(vi)キレート剤を含む溶液、を含む前記[18]記載のキット。
本発明によって、核酸増幅反応に先立ち核酸を分離精製するための時間・コストを削減することができる。さらに核酸を分離精製する際に生じる可能性のあるリスク、すなわち試料ロスやキャリーオーバーの危険性を低減することができる。特に糞便を試料とする多数の検体を処理するような検査において、その効果は顕著となる。
前処理濃度とRT−PCRの結果を示す図である。なお、図1〜図5において、グラフの縦軸はCt値である。 前処理時間とRT−PCRの結果を示す図である。 前処理温度とRT−PCRの結果を示す図である。 前処理時にキレート剤を添加した場合のRT−PCRの結果を示す図である。 前処理温度とキレート剤を添加した場合のRT−PCRの結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説する。
本発明の検出方法は、アルカリ性とした試料を加熱せずに放置する、例えば室温処理した後に反応液へ直接添加する工程を包含する。
本発明の検出方法を適用する試料としては、RNAウイルスを含有する可能性のある試料であれば特に限定はないが、生体排出検体に由来する試料が挙げられる。前記生体排出検体には糞便、尿、吐瀉物、鼻汁、鼻汁塗沫、唾液、唾液塗沫等が含まれ、さらにこれらの生体排出検体を水(滅菌水等)、生理食塩水、(PBS等の)緩衝液、有機溶媒、液体培地、またはゲル培地(例えばキャリブレア培地)に懸濁したもの、前記の懸濁液から調製した上清など、何らかの処理をしたものも含まれる。前記生体としては、ヒト、ペット、家畜、野性動物、昆虫、その他あらゆる動物が挙げられる。
なお糞便は腸内細菌、腸管上皮細胞、食物由来物質などから構成されており、本発明の検体として好適である。また、生体排出検体は環境から採取されたものであってもよい。環境には、ノロウイルス等のRNAウイルスが存在する可能性がある、ありとあらゆる場所が含まれるが、自然環境に限定されるものではない。特に製造施設や調理施設のような施設自体や、当該施設の備品等、RNAウイルスが存在しうるあらゆる物の表面が例示される。これら環境からの検体の採取には、拭き取り操作や、その他の公知方法などが使用される。
また、本発明の方法に適用される、RNAウイルスを含有する可能性のある試料は、生体排出検体そのものでもよいし、生体排出検体よりウイルスの濃縮、分離やその他の操作を行って調製された試料でもよい。濃縮、分離やその他の操作としては、単糖添加、多糖添加、ウイルス吸着物質添加、ウイルス吸着菌添加、遠心分離、希釈、沈殿、濾過、攪拌、超音波破砕・分散などの処理が挙げられる。例えば、沈殿操作の例としてはエタノール、イソプロパノールなどのアルコール類を用いて行うことができる。
分離操作を行った試料としては、例えば糞便の場合は水(滅菌水等)、生理食塩水、緩衝液等に懸濁し、遠心分離によって固形物を除いた上清が挙げられる。
本発明の検出方法で検出対象とするRNAウイルスは、非エンベロープ型RNAウイルスが挙げられる。非エンベロープ型RNAウイルスとしては、例えばカリシウイルス科に属するウイルス(ノロウイルス(NoV)、サポウイルス(SV)、ネコカリシウイルス(FCV)等)やA群ロタウイルス(RotaA)、エコーウイルス(E)、エンテロウイルス(EV)等が挙げられる。なお、上記に挙げたネコカリシウイルス(FCV)は、容易に培養できないヒトノロウイルス(HuNoV)に代わって、消毒剤や洗浄剤の評価等に広く用いられている代替ウイルスである。
本発明において強アルカリとは、強塩基(strong base)とも言い、塩基解離定数の大きい塩基を指し、狭義には水溶液中において電離度が1に近く水酸化物イオンを定量的に生成し、塩基解離定数がpK < 0 (K > 1 ) 程度のものを言う。水溶性でかつ水溶液中において強塩基であるものは特に強アルカリである。例えば、pHが11以上、好ましくは12以上、さらに好ましくは13以上である。
本発明に用いられる強アルカリ性の水酸化物は特に限定されないが、1族元素の水酸化物あるいは2族元素の水酸化物、あるいはそれらの混合物が例示される。あるいは、テトラアルキルアンモニウムの水酸化物であってもよい。特に限定はされないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムあるいはセシウムの水酸化物、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムあるいはラジウムの水酸化物、ユーロピウム、タリウムの水酸化物などが例示される。好ましくは、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、もしくは、水酸化カルシウム(Ca(OH))、またはそれらの組合せを含む。さらに好ましくは、NaOHである。
本発明のRNAウイルスの検出方法は、試料を例えば強アルカリ性の水酸化物を含む溶液と接触させる工程を包含する。前記の工程により、熱処理を行うことなく、試料中のRNAウイルスに含有されている核酸が検出可能な状態となる。
工程(a)は、RNAウイルスを含有する可能性のある試料を含むアルカリ性の混合液を調製する工程である。
アルカリ性の混合液を調製するための具体的な方法としては、例えば、RNAウイルスを含有する可能性のある試料に、強アルカリ性の水酸化物を含む溶液を添加する方法が挙げられる。この場合の強アルカリ性の水酸化物溶液中の水酸化物の濃度は、試料との混合比により適宜調整すればよいが、混合後の「アルカリ性の混合液」における水酸化物の終濃度として、好ましくは10mM〜100mM、より好ましくは20mM〜70mM、更に好ましくは30mM〜60mM、更に好ましくは30〜40mMである。強アルカリ性の水酸化物を複数種使用する場合、各水酸化物の濃度の合計が上記範囲を満たすことが好ましい。
例えば、工程(a)におけるアルカリ性の混合液が水酸化ナトリウムを含有する場合、該水酸化ナトリウムの濃度は好ましくは20〜70mMであり、より好ましくは30〜40mMである。
試料と強アルカリ性水酸化物溶液の混合比も特に限定されないが、試料と強アルカリ性水酸化物溶液の混合比は、好ましくは1:9〜1:3、更に好ましくは1:6〜1:4、特に好ましくは1:5である。
なお、特に断りのない限り、本明細書において「溶液」とは「水溶液」のことを意味する。
本発明の方法では、さらに強アルカリ性の水酸化物との接触の際にRNA分解の防止手段を加えてもよい。RNA分解防止手段としては特に限定されないが、リボヌクレアーゼ(RNase)活性の阻害手段が挙げられ、例えば、RNase inhibitorやRNaseの活性化に必要な金属イオンのキレート剤が挙げられる。RNase inhibitorの具体例としては、Recombinant RNase Inhibitor(タカラバイオ株式会社製2313A)が挙げられる。キレート剤やRNase inhibitorは、水溶液や公知の緩衝液の溶液として、添加することができる。
当該キレート剤としては、目的の金属イオンを中心に多座配位するものが好ましく、例えば六座配位するものが好適に使用でき、アミノカルボン酸系やホスホン酸系が挙げられる。アミノカルボン酸系のキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)等がある。また、ホスホン酸系のキレート剤としては、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、メチレンホスホン酸(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)等がある。その他、クエン酸、シュウ酸、フィチン酸、グルコン酸等、リボヌクレアーゼ活性を阻害する、あらゆるキレート剤が、本発明に使用可能である。また、複数のキレート剤を組み合わせて使用してもよい。
RNase inhibitorを使用する際の濃度は、リボヌクレアーゼ活性を阻害するために適用される公知の濃度を採用することができる。
キレート剤を使用する際の濃度は、試料中のリボヌクレアーゼ活性の阻害、もしくは試料中のRNAの検出に有効な濃度であれば特に限定はない。例えば、アルカリ性の混合液中、キレート剤の終濃度は好ましくは1mM以上、より好ましくは2mM以上、更に好ましくは3mM以上、更に好ましくは4mM以上である。一方、費用対効果の観点から、アルカリ性の混合液中、キレート剤の終濃度は好ましくは20mM以下、より好ましくは15mM以下、更に好ましくは10mM以下である。複数種のキレート剤を用いることも可能であり、その場合、各キレート剤の濃度の合計が上記上限値又は下限値を満たすことが好ましい。
例えば10%(w/v)の糞便を含む糞便懸濁液を強アルカリ性の水酸化物とEGTAで処理する場合、アルカリ性の混合液中のEGTAの終濃度は2mM〜50mM、好ましくは4mM〜40mM、より好ましくは6mM〜30mM、更に好ましくは、8mM〜20mM、特に好ましくは、9〜15mMである。EGTAのアルカリ性の混合液中の濃度は糞便懸濁液の濃度によって適宜調整してもよい。例えば、糞便懸濁液の濃度が20%(w/v)の場合はEGTAの終濃度を上記濃度の倍の濃度とすることが望ましい。
また、またキレート剤として、EDTAを上記の糞便懸濁液の処理に用いる場合は、試料を含むアルカリ性の混合液中のEDTAの終濃度は、1mM〜45mM、好ましくは、2mM〜35mM、より好ましくは、3mM〜25mM、更に好ましくは、4mM〜15mMである。EDTAのアルカリ性の混合液中の濃度は糞便懸濁液の濃度によって適宜調整してもよい。糞便懸濁液の濃度が20%(w/v)の場合はEDTAの終濃度を上記濃度の倍の濃度とすることが望ましい。
前記の強アルカリ性の水酸化物、及び所望によりリボヌクレアーゼ活性の阻害手段を含有する溶液(本明細書において、「前処理液」ともいう)を予め調製しておくことにより、本発明のRNAウイルスの検出方法における「RNAウイルスを含有する可能性のある試料」の処理、言い換えればウイルスゲノムRNAの相補的DNA(cDNA)合成の前処理を簡便に実施することができる。前処理液中の強アルカリ性の水酸化物やリボヌクレアーゼ活性の阻害手段の濃度は、当該前処理液と試料との混合比等を考慮して決定すればよい。
本発明の方法に適用する、「RNAウイルスを含有する可能性のある試料」の形状はとくに限定されないが、糞便のように固形であったり、粘性を伴ったりする生体排出試料の場合は、あらかじめ作製した生体排出検体の懸濁液を試料として取り扱うことが好適である。懸濁液としては、20%(w/v)以下の生体排出検体を含むものが好ましい。より好ましくは、1%(w/v)〜20%(w/v)、更に好ましくは、1%(w/v)〜10%(w/v)である。さらに、前記の懸濁液、例えば糞便懸濁液の上清を試料としてもよい。
また本発明では、単独検体からなる試料または単独検体から調製された試料のほか、X種(Xは2以上の整数を示す)の検体の混合物から調製した試料でもよい。例えば、検体が糞便の場合、X種の検体とは、X種の個体からの糞便である場合や、同一個体が排泄したX種の便である場合もある。Xについては、特に限定されないが、例えば、三菌種(腸管出血性大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌)の検査の場合では、50検体を混合することが食品検査業界において、一般的になっているので、参考に出来る。しかし、検出目的がノロウイルスの場合はウイルスの流行時期があり、過剰な数の検体を混合すると返ってコストや試験回数を増やすことになる。このため、過去の陽性率を参考するなど、混合する検体の数を適宜調整することが好ましい。例えば40検体以下、好ましくは、30検体以下、より好ましくは、20検体以下、更に好ましくは、10検体以下、特に好ましくは、5検体以下の検体が混合されたもの、もしくは当該混合検体から調製された試料が本発明方法に供される。
試料と前処理液の混合には、攪拌、スピンダウン、転倒混和、ピペッティングなどが用いられるが、その方法及び使用容器等を限定するものではない。
前処理液は、反応性改善などを目的として添加される公知の物質を含有していてもよい。添加する物質としては、ウシ血清アルブミン(BSA)のようなタンパク質、Tween−20などの界面活性剤、ベタイン、酸性高分子等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
アルカリ性の混合液において、還元剤は含まれていても含まれていなくてもよい。
従って、工程(a)の好ましい態様の一つは、RNAウイルスを含有する可能性のある試料をキレート剤を含む溶液で懸濁した後に、強アルカリ性の水酸化物を含む溶液を添加することにより、アルカリ性の混合液を調製する工程である。
工程(b)は、工程(a)で得られた混合液を加熱せず放置する工程であり、「前処理」ともいう。
試料と前処理液を混合して得られるアルカリ性の混合液は、従来技術とは異なり、加熱せずに放置しても十分精度の高い結果を得ることができる。
本発明においては、アルカリ性溶液のみ、あるいは前述のキレート剤とアルカリ性溶液の組み合わせのいずれにおいても、室温で実施することが可能である。従って、工程(b)の好ましい態様の一つは、工程(b)を室温での放置により実施することである。ここで、室温とは作業員が作業しやすい環境温度を言う。混合液を放置する温度としては、好ましくは、30℃以下、より好ましくは、25℃以下である。処理時間、即ち放置時間は、特に限定はなく、アルカリ性混合液を入れた後、直ちにRT−PCRに供してもよく、2〜60分間保持してからRT−PCRに供してもよく、検体数に応じて適宜調整することができる。保持時間による反応に大差はない。
また冷却ブロック、クラッシュアイス等を用いて、低温で作業を行うことは、放置工程の温度条件を同一にできることから、試験の再現性を高めることに有効である。また、混合液を冷蔵庫や冷蔵室で放置することで、工程(b)を実施してもよい。ゆえに、本工程における好ましい温度範囲は0℃〜30℃程度になる。本工程における温度範囲は、より好ましくは、0℃〜25℃、更に好ましくは、0℃〜20℃、更に好ましくは0℃〜15℃、更に好ましくは0℃〜10℃、更に好ましくは0℃〜5℃である。処理時間としては、特に限定はなく、アルカリ性混合液を入れた後、直ちにRT−PCRに供してもよく、2〜60分間保持してからRT−PCRに供してもよく、検体数に応じて適宜調整することができる。また、試料を含むアルカリ性の混合液がキレート剤を含む場合、前記冷却を行わなくとも十分精度の高い結果を得ることができる。
前述のように、工程(b)における放置時間が0の場合、即ち、アルカリ性混合液を入れた後、直ちにcDNA合成反応に供する場合、工程(b)と工程(c)とが統合されることになる。かかる態様、即ち、(a)RNAウイルスを含有する可能性のある試料を含むアルカリ性の混合液を調製する工程、及び(b’)工程(a)で得られた混合液を加熱することなくcDNA合成反応に供する工程、を包含する、RNAウイルスの検出方法も本発明の方法に包含される。この場合、工程(a)で得られた混合液に、後述の逆転写酵素等の成分を添加することで工程(c)の実施が可能となる。
工程(a)及び工程(b’)を包含する前記方法の好ましい態様の一つは、工程(a)が、RNAウイルスを含有する可能性のある試料をキレート剤を含む溶液で懸濁した後に、強アルカリ性の水酸化物を含む溶液を添加することにより、アルカリ性の混合液を調製する工程である。
工程(c)は工程(b)の放置後の混合液をcDNA合成反応に供する工程である。
以上のように工程(b)で処理された試料を含むアルカリ性の混合液(本明細書において、「前処理後の試料」とも記載する)を逆転写反応に供して、当該混合液に含有されるRNAに相補的なDNA(cDNA)を合成することができる。なお、本発明の好適な態様では、前処理後の試料を含む逆転写反応液を作成する前に、当該前処理後の試料から特定の成分を除去する操作や加熱処理を行う必要はない。
本発明の方法において、前処理後の試料を逆転写に用いる際の当該試料の添加割合に限定はなく、適切に逆転写が実施できる割合であれば良い。例えば逆転写反応液中に1〜30%(v/v)範囲内で前処理後の試料が添加される。例えば容量25μLの反応液でOne−Step RT−PCRを実施する場合、前処理後の試料は0.5〜6μL添加される。
逆転写反応の反応液組成の一例としては、検出すべきRNAに相補的な配列を有する逆転写プライマー、塩類、デオキシリボヌクレオチド類(dNTP)、逆転写酵素、及び緩衝液を含むものが挙げられる。該塩類は、MgClやKClなどが用いられるが、逆転写酵素活性には二価金属イオン(一般的にはMg2+イオン)が必須である。塩類の終濃度の調整や他の塩類への変更は適宜行ってもよい。アルカリ性の混合液にキレート剤が含まれる場合は、該キレート剤で消費される金属イオンを逆転写反応液に補充してもよい。例えば二価金属イオンと1対1のモル比で結合するEDTAの場合、逆転写反応液に持ち込まれるEDTAの量を考慮してMg2+イオンを逆転写反応液に追加すればよい。さらに、逆転写反応に共存させることが可能な他の成分を添加してもよい。
本工程で使用される逆転写酵素としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。逆転写酵素の具体例としては、Thermus thermophilus由来のTth DNAポリメラーゼ;Moloney murine leukemia virus(MMLV)等のマウスのレトロウイルス由来の逆転写酵素;並びにRous associated virus(RAV)及びAvian myeloblastosis virus(AMV)等のトリのレトロウイルス由来の逆転写酵素等が挙げられる。
前処理後の試料が酵素反応液(例えば逆転写反応液)へ添加される場合、前記酵素反応液の緩衝能が有効な範囲の量であれば、当該試料を直接酵素反応液に添加することができる。酵素反応液のpHがアルカリ側に移行し、酵素活性が低下することが懸念される場合には、中和可能な物質との接触による強アルカリ性水酸化物の中和ステップ、即ち、アルカリ性の混合液を中和可能な物質と接触させることを含んでいてもよい。前処理後の試料を中和可能な物質と接触させて中和してもよいが、酵素反応液にあらかじめ中和可能な物質を添加しておくのが手順の簡略化の点でより好ましい。
ここで使用される中和可能な物質としては、酵素反応を阻害しない酸性の物質であれば特に制限されず、例えば、有機酸や無機酸を問わず使用することができる。中和可能な物質の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、乳酸、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。中和可能な物質との接触後の混合液のpHの範囲としては、好ましくは6.0〜8.0であり、より好ましくは6.5〜7.5である。
逆転写反応液は、反応性改善などを目的として添加される公知の物質を含有していてもよい。添加する物質としては、ウシ血清アルブミン(BSA)のようなタンパク質、Tween−20などの界面活性剤、ベタイン、酸性高分子等が例示されるが、これらに限定されるものではない。またdNTPは通常、dATP、dGTP、dCTP、dTTPの4種が用いられるが、PCR増幅物が他の核酸増幅反応の鋳型となる汚染を防止する目的でさらにdUTPを反応液に添加してもよい。この反応で得られた核酸増幅物には、dUTPが取り込まれることになり、ウラシル含有DNAの分解活性を有するUracil−N−glycosyrase(UNG)を核酸増幅反応前に作用させることで、前記核酸増幅物を分解することができる。こうして、先に実施された反応で得られた増幅物が後の反応に混入しておこる汚染を防止することができる。
工程(d)は、工程(c)で得られたcDNAを鋳型とする核酸増幅の工程である。
本発明の方法において、得られたcDNAを鋳型とした核酸増幅を利用すると、微量のウイルスゲノムRNAを検出することができる。従って、本発明において、かかる工程(d)をさらに含むことがより好ましい。
工程(d)で用いられる核酸増幅法は特に限定はないが、逆転写反応(RT)によりRNAの相補的DNA(cDNA)の合成を行い、該cDNAを増幅する方法、例えばRT−LAMP法やRT−PCR法を用いることができる。なお逆転写反応とDNA増幅反応を独立した反応液で行うTwo−Step法もあるが、本発明においては、作業の簡略化の面では逆転写反応とDNA増幅反応がひとつの反応液組成、即ち、同一の反応液で可能なOne−Step法が好ましい。即ち、One−Step法においては、工程(c)と工程(d)が同一の反応液内で進行することが一つの特徴である。
本発明の方法において、前処理後の試料又は工程(c)を経て得られた溶液を核酸増幅に用いる際の当該試料の添加割合に限定はなく、適切に核酸合成が実施できる割合であれば良い。例えば反応液中に1〜30%(v/v)範囲内で前処理後の試料又は工程(c)を経て得られた溶液が添加される。例えば容量25μLの反応液でOne−Step RT−PCRを実施する場合、前処理後の試料又は工程(c)を経て得られた溶液は0.5〜6μL添加される。
PCRの反応組成の一例としては、一方のプライマーが、他方のプライマーのDNA伸長生成物に互いに相補的である2種一組のPCR用プライマー対、塩類、デオキシリボヌクレオチド類、耐熱性DNAポリメラーゼ及び緩衝液を含むものが挙げられる。上記の塩類は、MgClやKClなどが用いられるが、DNAポリメラーゼ活性には二価金属イオン(一般的にはMg2+イオン)が必須である。塩類の終濃度の調整や他の塩類への変更は適宜行ってもよい。キレート剤を添加した前処理液によるアルカリ処理工程を行う場合は、該キレート剤で消費される、金属イオンを補充してもよい。例えば二価金属イオンと1対1のモル比で結合するEDTAの場合、PCR反応液に持ち込まれるEDTAの量を考慮してMg2+イオンの量を調整すればよい。さらにPCRに共存させることが可能な他の成分を添加してもよい。
前記2種一組のPCR用プライマー対としては、検出対象のウイルスが有する塩基配列に相補的なオリゴヌクレオチドが好ましい。具体的には、ネコカリシウイルス(FCV)を検出しようとする場合、一例として、配列表の配列番号:1に記載の塩基配列及び配列番号:2に記載の塩基配列を2種一組のPCR用プライマー対として用いることができる。あるいは、ノロウイルス(NoV)を検出しようとする場合、一例として、配列表の配列番号:4に記載の塩基配列及び配列番号:5に記載の塩基配列を2種一組のPCR用プライマー対として、又は配列表の配列番号:7に記載の塩基配列及び配列番号:8に記載の塩基配列を2種一組のPCR用プライマー対として用いることができる。これらの配列番号に規定された塩基配列において、1又は複数個(好ましくは2〜5個)の塩基が欠失、置換又は付加されたものもプライマーとして使用することができる。
前記耐熱性DNAポリメラーゼは、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ファミリーA(PolI型)に属するTaq DNAポリメラーゼやTth DNAポリメラーゼ、ファミリーB(α型)に属するKOD DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、Pwo DNAポリメラーゼ、Ultima DNAポリメラーゼ、PrimeSTAR(登録商標) DNAポリメラーゼのシリーズ(HS、GXL、Max)などが挙げられる。これらのうち2以上を組み合わせて用いても良い。
核酸増幅反応液は、反応性改善などを目的として添加される公知の物質を含有していてもよい。添加する物質としては、ウシ血清アルブミン(BSA)のようなタンパク質、Tween−20などの界面活性剤、ベタイン、酸性高分子等が例示されるが、これらに限定されるものではない。またdNTPは通常、dATP、dGTP、dCTP、dTTPの4種が用いられるが、PCR増幅物が他の核酸増幅反応の鋳型となる汚染を防止する目的でさらにdUTPを反応液に添加してもよい。この反応で得られた核酸増幅物には、dUTPが取り込まれることになり、ウラシル含有DNAの分解活性を有するUracil−N−glycosyrase(UNG)を核酸増幅反応前に作用させることで、前記核酸増幅物を分解することができる。こうして、先に実施された反応で得られた増幅物が後の反応に混入しておこる汚染を防止することができる。
本発明の方法の好ましい態様である「工程(c)と工程(d)が同一の反応液内で行われる態様」としては、RT−PCR法が挙げられる。RT−PCR法ではcDNA合成用プライマーはPCR用プライマー対の一方のプライマーを兼ねることもできる。Multiplex RT−PCRと呼ばれる、1反応で複数種の増幅物を得られるように複数のcDNA合成用プライマーやPCR用プライマー対が含まれる反応の場合もある。
RT−PCR法では、増幅物を検出するためのプローブを使用してもよい。例えば、ネコカリシウイルス(FCV)を検出しようとする場合、一例として、配列表の配列番号:1に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを使用することができる。あるいは、ノロウイルス(NoV)を検出しようとする場合、一例として、配列表の配列番号:6に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドや、配列表の配列番号:9に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。これらの配列番号に規定された塩基配列において、1又は複数個(好ましくは2〜5個)の塩基が欠失、置換又は付加されたものもプローブとして使用することができる。かかるプローブを、公知の、蛍光物質及び/又は蛍光抑制物質でラベルして用いても良い。
RT−PCR法を採用する場合、前処理後の試料と逆転写酵素等とを用いてRT−PCR用反応液を調製し、公知のサーマルサイクラーを利用して工程(c)と工程(d)とを同一の反応液内で進行させる。RT−PCR用反応液は、前述の各種成分、例えば、前処理後の試料、緩衝液、逆転写酵素、PCR酵素、二価金属塩、dNTPs、還元剤、適切なプライマー、適切なプローブ、滅菌水等を適宜取捨選択し、組み合わせて調製される。
試料に含まれていたRNAより得られたcDNAや、該cDNAを鋳型として増幅生成されたDNA断片は、電気泳動法、融解曲線法、各種プローブ法(Qプローブ、スコーピオンプローブ、ハイブリプローブなど)で検出、識別することができる。また、温度昇降機能と蛍光測定機能を備えた機器であれば、TaqMan(登録商標)プローブ、インターカレーティング色素などを用いることにより、反応中に増幅生成したDNA断片をリアルタイムに検出識別することができる。ここで、検出対象の非エンベロープ型RNAウイルスの種類に応じた、逆転写反応用又は核酸増幅反応用のプライマー及び/又はプローブを使用することにより、検出対象の非エンベロープ型RNAウイルスを特異的に検出することができる。
本発明は、前述の非エンベロープ型RNAウイルスの有無を検出する方法のためのキットを提供する。本発明のキットは、RNAウイルスの検出に供される試料を処理するための、前記の強アルカリ性の水酸化物をコンポーネントとして含有することを一つの特徴とする。前記の強アルカリ性の水酸化物は、溶液として、好ましくは水溶液として(例えば前記の前処理液として)キットに含有される。強アルカリ性の水酸化物の濃度は、試料に添加した際に、前記の、本発明の方法に好適な終濃度となるように調整されていればよく、特に限定はない。
強アルカリ性の水酸化物を含む溶液に加えて、リボヌクレアーゼ活性の阻害手段(例えばキレート剤及び/又はRNase inhibitor)を含む溶液を含むキットであってもよい。リボヌクレアーゼ活性の阻害手段を含む溶液は、キットを構成する独立したコンポーネントであってもよく、強アルカリ性の水酸化物を含む溶液にリボヌクレアーゼ活性の阻害手段が含まれたコンポーネントであってもよい。さらに、本発明のキットは、試料や各種試薬を希釈もしくは懸濁するための溶液を含んでいてもよい。
本発明のキットとしては、さらに、目的のRNAウイルス由来のRNAを検出するための試薬を含むものが好適である。前記の試薬としては、目的のRNAウイルス由来のRNAを鋳型としてcDNAを合成する逆転写反応のための試薬(例えば逆転写酵素及び逆転写反応用試薬)、前記cDNA若しくはその一部を増幅する核酸増幅反応のための試薬(例えば耐熱性DNAポリメラーゼ及びDNAポリメラーゼ連鎖反応用試薬)が例示される。好ましくは、増幅された核酸断片を検出するための試薬も例示される。これら試薬は前記本発明の方法について記載した前述の試薬類の他、公知のRNA検出技術に使用されているものを利用することができる。
本発明のキットには、目的のRNAウイルスを特異的に検出するためのプライマーやプローブが含まれていることがより好ましい。これらのプライマーやプローブは、当該RNAウイルスのゲノムRNAの配列に基づいて合成することができる。
本発明のキットの好ましい一例としては、試料の前処理液(例えば、強アルカリ性の水酸化物、及び所望によりキレート剤及び/又はRNase inhibitorを含有する溶液)とOne−Step RT−PCR反応液を調製するためのコンポーネント(例えば、適切な濃度で調製された反応緩衝液、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、dNTP混合物、プライマー、プローブ等)とを含むものが例示される。例えば、前記の各コンポーネントのいくつかが混合された状態で含まれているキットは、反応液を簡便に調製することができる。
以下実施例をもって本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1. アルカリ処理時の塩基性物質濃度の検討
American Type Culture Collection (ATCC)より購入したVR−782,Feline calicivirus,F−9 (Caliciviridae)、ネコカリシウイルス(FCV)を20倍になるよう生理食塩水で希釈してウイルス懸濁液を作成した。FCVが検出できるよう、別途FCV Primer/Probe Mixを作成した。該懸濁液1μLに対し6.25、12.5、25、100mMのNaOH溶液を4μLずつ添加し、NaOHの終濃度5mM、10mM、20mM、40mM、80mMのアルカリ性の混合液を調製した。該混合液を室温(27℃)にて5分間放置後、前処理後の試料とした。
この前処理後の試料と、TaKaRaノロウイルスGI/GII検出キット(高速検出用)(タカラバイオ株式会社製RR296A)の構成品を用いて、下記の組成のRT−PCR用反応液を調製し、この反応液を速やかに下記の反応条件でRT−PCRに供しし、操作マニュアルに従ってCt値による定量を実施した。一つの濃度のNaOH溶液あたり実験を2回行い、Ct値の平均値を結果に示した。Ct値は特定の蛍光値に達したサイクル数であり、増幅産物の量比を示している。すなわちCt値が小さいほど、増幅量が多いということを示す。なお、核酸増幅装置には製品CodeNo,TP−990 ThermalCycler Dice(登録商標)RealTime SystemIII(タカラバイオ株式会社製)を用いた。
(FCV Primer/Probe Mix)
2μM FCV検出プライマー CCATTGGTGCTAATAGGGAAAGG(配列番号1)
2μM FCV検出プライマー CCACCACGAGCACCAGTTT(配列番号2)
2μM FCV検出プローブ FAM−TGCGCATCAGCACGCTTCCC−BHQ1(配列番号3)
(RT−PCR用反応液)
5.0μL 前処理後の試料
12.0μL PCR Buffer(NV)4
2.5μL FCV Primer/Probe Mix
1.5μL Enzyme Mix(NV)4
4.0μL 滅菌水
(反応条件)
前記反応液25μLを以下の温度サイクルで反応した。
42℃ 5min、
95℃ 30sec、
95℃ 5sec−54℃ 30sec 45サイクル(FAM、ROX、Cy5蛍光検出)
結果を表1に示した。いずれの条件でも増幅物は検出されたものの、特に終濃度40mMのNaOHを共存させた際にもっとも低いCt値を示し、良好な結果を得ることが出来た。
Figure 2019017452
実施例2. 室温放置時間の検討
実施例1で調製したFCV懸濁液1μLに対し、50mMのNaOH溶液を4μL添加し、NaOHの終濃度40mMのアルカリ性の混合液5μLを調製し室温(27℃)に放置した。該混合液を前処理後の試料とした。
この前処理後の試料を用いて実施例1と同様の組成物のRT−PCR用反応液を調製し、実施例1と同様の反応条件でRT−PCRに供し、Ct値を求めた。なお、室温放置時間の検討として以下1〜6番までの試験を実施した。
試験番号1はNaOHを添加後、直ちにPCR Buffer(NV)4等を添加・混合してRT−PCR用反応液を調製した。試験番号2はNaOHを添加後、1分室温に放置し、同様にRT−PCR用反応液を調製した。試験番号3はNaOHを添加後、2分室温に放置し、同様にRT−PCR用反応液を調製した。試験番号4はNaOHを添加後、5分室温に放置し、同様にRT−PCR用反応液を調製した。試験番号5はNaOHを添加後、30分室温に放置し、同様にRT−PCR用反応液を調製した。試験番号6はNaOHを添加後、60分室温に放置し、同様にRT−PCR用反応液を調製した。実施例1と同条件で、各RT−PCR用反応液をただちにRT−PCRに供し、Ct値を求めた。一つの試験番号あたり実験を2回行い、Ct値の平均値を結果に示した。
結果を表2に示した。試験1〜6について、室温での放置時間を長くしてもCt値の増加は認められなかった。
Figure 2019017452
実施例3. 環境温度による反応性の確認
実施例1で調製したFCV懸濁液1μLに対し、42mMのNaOH溶液5μLを添加し、NaOHの終濃度35mMのアルカリ性の混合液を調製した。該混合液を氷上、室温(27℃)、37℃、50℃でそれぞれ10分放置後、前処理後の試料とした。
この前処理後の試料と、TaKaRaノロウイルスGI/GII検出キット(高速検出用)(タカラバイオ株式会社製RR296A)の構成品を用いて、実施例1と同様の組成のRT−PCR用反応液を調製し、この反応液を実施例1と同条件で、ただちにRT−PCRに供し、Ct値を求めた。一つの温度条件あたり実験を2回行い、Ct値の平均値を結果に示した。
結果を表3に示した。氷上、室温で特に良好な結果を示した。なお氷上、室温、37℃、50℃ともに極端なCt値の増加は認められなかった。
Figure 2019017452
実施例4. 糞便検体を用いたウイルスRNAの検出
ノロウイルス陽性の糞便検体を5〜10%(w/v)となるようPBSに懸濁した後、15,000rpmにて5分間遠心処理を行った。該上清1μLに対し、12、24、42、66、96mMのNaOH溶液を5μLずつ添加し、NaOHの終濃度10、20、35、55、80mMのアルカリ性の混合液を調製した。該混合液を室温(27℃)にて5min放置後、前処理後の試料とした。なお、ノロウイルスが検出できるよう、別途NV Primer/Probe Mixを作成した。
この前処理後の試料と、TaKaRaノロウイルスGI/GII検出キット(高速検出用)(タカラバイオ株式会社製RR296A)の構成品を用いて、下記の組成のRT−PCR用反応液を調製し、下記の反応条件でRT−PCRに供し、Ct値を求めた。
試験用の検体として、ノロウイルスGII陽性検体#8(GII)、#27(GII)、#28(GII)、ノロウイルスGI陽性検体#360(GI)の4検体を用意し、結果に示した。なお、核酸増幅には製品CodeNo,TP−990 ThermalCycler Dice(登録商標)RealTime SystemIIIを用いた。
(NV Primer/Probe Mix)
4μM NV検出プライマー CGYTGGATGCGNTTYCATGA(配列番号4)
4μM NV検出プライマー CTTAGACGCCATCATCATTYAC(配列番号5)
2μM NV検出プローブ FAM−AGATYGCGATCYCCTGTCCA−BHQ1(配列番号6)
4μM NV検出プライマー CARGARBCNATGTTYAGRTGGATGAG(配列番号7)
4μM NV検出プライマー TCGACGCCATCTTCATTCACA(配列番号8)
2μM NV検出プローブ ROX−TGGGAGGGSGATCGCRATCT−BHQ2(配列番号9)
上記配列番号:4〜6で示されるプライマーとプローブの組み合わせによって、ノロウイルスGIを検出することができ、上記配列番号:7〜9で示されるプライマーとプローブの組み合わせによって、ノロウイルスGIIを検出することができる。
なお、上記配列番号:4及び配列番号:7における「N」とは、その塩基がアデニン、グアニン、シトシン又はチミンであることを示す記号である。
(RT−PCR用反応液)
6.0μL 前処理後の試料
12.0μL PCR Buffer(NV)4
2.5μL NV Primer/Probe Mix4
1.5μL Enzyme Mix(NV)4
3.0μL 滅菌水
(反応条件)
前記反応液25μLを以下の温度サイクルで反応した。なお、最初の5サイクルは蛍光検出を行っていないため、結果は5サイクルを足したCt値を表記した。
42℃ 5min、
95℃ 30sec、
95℃ 5sec−56℃ 40sec 5サイクル
90℃ 5sec−56℃ 40sec 35サイクル(FAM、ROX、Cy5蛍光検出)
結果を図1に示す。NaOHの終濃度10、20、35、55、80mMの前処理後の試料、すべてにおいて増幅物の検出が認められ、終濃度20〜55mMが好適であることが見出された。
実施例5. 糞便検体を用いた室温放置時間の検討
実施例4と同様に調製したノロウイルス陽性懸濁液の上清1μLに対し、42mMのNaOH溶液5μLを添加し、アルカリ性の混合液を調製した。該混合液を室温(27℃)にそれぞれ、2、5、10、20、30分放置後、前処理後の試料とした。
この前処理後の試料と、TaKaRaノロウイルスGI/GII検出キット(高速検出用)(タカラバイオ株式会社製RR296A)の構成品を用いて、実施例4と同様の組成のRT−PCR用反応液を調製し、実施例4と同様の反応条件でRT−PCRに供し、Ct値を求めた。
試験用の検体として、ノロウイルスGI陽性検体#362(GI)、ノロウイルスGII陽性検体#8(GII)、#27(GII)、#336(GII)の4検体を用意し、結果に示した。
結果を図2に示す。2、5、10、20、30分放置後の前処理後の試料、すべてにおいて増幅が認められ2、5分がもっとも好適であることが見出された。また2〜30minでCt値に大差は認められなかった。
実施例6. 糞便検体を用いた環境温度による反応性の確認
実施例4と同様に調製したノロウイルス陽性懸濁液の上清1μLに対し、42mMのNaOH溶液5μLを添加し、NaOHの終濃度35mMのアルカリ性の混合液を調製した。該混合液を氷上で、2、5、10、20、30分放置後、前処理後の試料とした。
この前処理後の試料と、TaKaRaノロウイルスGI/GII検出キット(高速検出用)(タカラバイオ株式会社製RR296A)の構成品を用いて、実施例4と同様の組成のRT−PCR用反応液を調製し、実施例4と同様の反応条件でRT−PCRに供し、Ct値を求めた。
試験用の検体として、ノロウイルスGI陽性検体#360(GI)、ノロウイルスGII陽性検体#8(GII)、#27(GII)、#91(GII)、#360(GII)の5検体を用意し、結果に示した。
結果を図3に示す。2、5、10、20、30分放置後の前処理後の試料、すべてにおいて、増幅が認められ、放置時間によるCtの変化は認められなかった。
実施例7. 室温で前処理する方法と室温で前処理する方法にキレート剤を添加する場合の反応性を確認
実施例4と同様に調製した、ノロウイルス陽性懸濁液の上清1μLに対し、42mMのNaOH溶液5μLを添加(NaOHの終濃度は35mM)して、アルカリ性の混合液(最終容量6μL)を調製した。一方で、ノロウイルス陽性懸濁液の上清1μLに対し、60mMのEGTA 1μL(終濃度10mM)を添加して撹拌して懸濁液を得、次いでこれに52.5mMのNaOH溶液4μLを添加(NaOHの終濃度35mM)して、アルカリ性の混合液(最終容量6μL)を調製した。これらのアルカリ性の混合液を室温(27℃)で30分放置した後、前処理後の試料とした。
この前処理後の試料の全量と、TaKaRaノロウイルスGI/GII検出キット(高速検出用)(タカラバイオ株式会社製RR296A)の構成品を用いて、実施例4と同様の組成のRT−PCR用反応液を調製し、実施例4と同様の反応条件でRT−PCRに供し、Ct値を求めた。
また、工程(b)である前処理工程に、キレート剤を添加することにより、RT−PCR反応液中のMg2+イオンに作用し、RT−PCRに影響することが考えられたので、あらかじめ、反応阻害がないことを確認している、上記のキットに同梱されている、ノロウイルスGI、GIIのポジティブコントロール及び、インターナルコントロールを用いて、RT−PCR反応液中のMg2+イオンの添加量を検討した。その結果、今回のRT−PCR反応条件では、1mMのMg2+イオンを添加すれば反応が改善することが分かった。よって本実施例及び以後の実施例において、キレート剤を使用する場合には、RT−PCR反応液に1mMのMg2+イオンを添加することにした。その他の反応条件は実施例4と同様である。
また、試験用の検体として、ノロウイルスGII陽性検体#28、#288、#173、#289、#91、#248、#220、#139、#87、#251の10検体を用意し、結果に示した。なお、核酸増幅には製品CodeNo,TP−990 ThermalCycler Dice(登録商標)RealTime SystemIIIを用いた。
結果を図4に示す。図中、白棒グラフは室温でEGTAを含むアルカリ性の混合液を用いて前処理を行い、その後のRT−PCR反応でMg2+イオン補充をした結果である。黒棒グラフは室温でEGTAを含まないアルカリ性の混合液を用いて前処理を行った結果である。本実験で使用した上記の10検体すべてで、キレート剤の添加によってCt値の低下が見られた。このように、EGTAを前処理工程に加えて常温処理した場合、反応改善の効果を示すことがわかった。
実施例8. 氷上で前処理する方法と、室温で前処理する方法にキレート剤を添加した場合の反応性を確認
実施例4と同様に調製したノロウイルス陽性懸濁液の上清1μLに対し、氷上で42mMのNaOH水溶液を5μL添加(終濃度35mM)し、アルカリ性の混合液(最終容量6μL)を調製した。該混合液は氷上で30分放置した。
一方、室温(27℃)でノロウイルス陽性懸濁液の上清1μLに対し、30mMのEDTAを1μL(終濃度5mM)を添加して撹拌して懸濁液を得、次いでこれに52.5mMのNaOH溶液4μLを添加(終濃度35mM)してアルカリ性の混合液(最終容量6μL)を調製し、該混合液を室温(27℃)で30分放置した。
このように調製し、それぞれの温度条件で30分の放置を終えた前処理後の試料の全量と、TaKaRaノロウイルスGI/GII検出キット(高速検出用)(タカラバイオ株式会社製RR296A)の構成品を用いて、実施例4と同様の組成のRT−PCR用反応液を調製し、実施例4と同様の反応条件でRT−PCRに供し、Ct値を求めた。
なお、EDTAを含む前処理後の試料でRT−PCR反応液を調製する際には、実施例7と同様にあらかじめMg2+イオンの添加量を検討し、RT−PCR反応液に1mMのMg2+イオンを添加した。その他の反応条件は実施例4と同様である。
また、試験用の検体として、ノロウイルスGII陽性検体#91、ノロウイルスGI/GIIの共感染モデルとして#360の2種類のサンプルを用意した。一つのサンプルあたり実験を2回行って、平均のCt値を求めた。なお、核酸増幅には製品CodeNo,TP−990 ThermalCycler Dice(登録商標)RealTime SystemIIIを用いた。
結果を図5に示す。図中、白棒グラフは氷上で工程(b)を実施した結果である。黒棒グラフは室温でEDTAの存在下で工程(b)を実施し、その後のRT−PCR反応液中にMg2+イオン補充をした結果である。氷上処理方法と室温処理方法にキレート剤を添加した場合、RT−PCRの結果は、同等の反応性を示した。
実施例9 キレート剤添加のタイミング
ノロウイルス陽性の糞便検体を10%(w/v)糞便懸濁液となるように、100mM EGTA2ナトリウム溶液で懸濁した。この時、EGTA濃度は終濃度で60mMである。次に前記糞便懸濁液1μLにNaOH溶液5μLを添加した。この時、NaOH濃度は、終濃度で35mMである。当該アルカリ性の混合液6μLを直ちにRT−PCRに供した場合のCt値と室温(27℃)又は氷上で5分間、15分間又は30分間それぞれ保持した後にRT−PCRに供した場合のCt値とを比較した。
RT−PCR用反応液は、実施例4のものと同じである。なお本実施例においても、実施例8と同様に、RT−PCR溶液にMg2+イオンを追加して、Mg2+イオン濃度が1mMプラスになるようにした。
試験用の検体として実検体、即ち、被験者より採取されたノロウイルスGIの糞便検体18−016及び18−017、GII陽性検体18−077及び18−078の4種類の検体を使用した。
反応条件は、以下の設定で行った。サーマルサイクラーは、実施例4と同じである。
42℃ 5min
95℃ 30sec(1サイクル)
95℃ 5sec−56℃ 40sec (5サイクル)
90℃ 5sec−56℃ 40sec (35サイクル)
(FAM、ROX、Cy5蛍光検出)
アルカリ性の混合液調製後ただちにRT−PCRに供した場合のCt値を基準として、室温又は氷上で5分間、15分間又は30分間それぞれ保持した後のRT−PCRのCt値を比較したところ、保持温度及び保持時間にかかわらず、いずれも基準のCt値とほぼ同一のCt値であることが確認できた。このことから、糞便検体をまずキレート剤を含む溶液で懸濁した後、アルカリ処理する場合であっても、室温又は氷上保持の時間にかかわらず目的の非エンベロープウイルスを効率よく検出できた。
本発明は、食品衛生検査、環境検査、臨床診断等に用いられる。
SEQ ID No:1 ; PCR Forward Primer FCVgp2−F.
SEQ ID No:2 ; PCR Reverse Primer FCVgp2−R.
SEQ ID No:3 ; Probe FCVGP2−P. 5’−end is labeled FAM and 3’−end is labeled BHQ1.
SEQ ID No:4 ; PCR Forward Primer COG1F.
SEQ ID No:5 ; PCR Reverse Primer COG1R.
SEQ ID No:6 ; Probe RING1−TP(a). 5’−end is labeled FAM and 3’−end is labeled BHQ1.
SEQ ID No:7 ; PCR Forward Primer COG2F.
SEQ ID No:8 ; PCR Reverse Primer COG2R.
SEQ ID No:9 ; Probe RING2AL−TP. 5’end is labeled ROX and 3’−end is labeled BHQ2.

Claims (19)

  1. 排出検体に由来する試料中の、非エンベロープ型RNAウイルスの有無を検出する方法であって、
    (a)RNAウイルスを含有する可能性のある試料を含むアルカリ性の混合液を調製する工程、
    (b)工程(a)で得られた混合液を加熱せず放置する工程、及び
    (c)工程(b)の放置後の混合液をcDNA合成反応に供する工程、
    を包含する、RNAウイルスの検出方法。
  2. 工程(a)が、RNAウイルスを含有する可能性のある試料に強アルカリ性の水酸化物を含む溶液を添加することにより、アルカリ性の混合液を調製する工程である、請求項1記載の方法。
  3. 工程(a)が、RNAウイルスを含有する可能性のある試料をキレート剤を含む溶液で懸濁した後に、強アルカリ性の水酸化物を含む溶液を添加することにより、アルカリ性の混合液を調製する工程である、請求項1記載の方法。
  4. 強アルカリ性の水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及び水酸化カルシウムからなる群より選択される1種以上である、請求項2又は3記載の方法。
  5. 工程(a)におけるアルカリ性の混合液が水酸化ナトリウムを含有し、該水酸化ナトリウムの濃度が20〜70mMである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 工程(d)として、工程(c)で得られたcDNAを鋳型とする核酸増幅の工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 工程(d)における核酸増幅が、PCRにより実施されることを特徴とする、請求項6記載の方法。
  8. 工程(c)と工程(d)が、同一の反応液内で行われることを特徴とする、請求項6又は7記載の方法。
  9. 工程(b)が、室温での放置により実施されることを特徴する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 工程(b)が、30℃以下での放置により実施されることを特徴する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 生体排出検体が糞便であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 工程(a)におけるRNAウイルスを含有する可能性のある試料が、糞便懸濁液上清であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 糞便懸濁液上清が、糞便を滅菌水、生理食塩水又はPBSに懸濁して、調製されたことを特徴とする、請求項12記載の方法。
  14. アルカリ性の混合液を、中和可能な物質と接触させることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 中和可能な物質が、工程(c)におけるcDNA合成反応を実施する反応液中に含まれることを特徴とする、請求項14記載の方法。
  16. 生体排出検体に由来する試料中の、非エンベロープ型RNAウイルスの有無を検出する方法であって、
    (a)RNAウイルスを含有する可能性のある試料を含むアルカリ性の混合液を調製する工程、及び
    (b’)工程(a)で得られた混合液を加熱することなくcDNA合成反応に供する工程、
    を包含する、RNAウイルスの検出方法。
  17. 工程(a)が、RNAウイルスを含有する可能性のある試料をキレート剤を含む溶液で懸濁した後に、強アルカリ性の水酸化物を含む溶液を添加することにより、アルカリ性の混合液を調製する工程である、請求項16記載の方法。
  18. 請求項1又は16記載の方法のためのキットであって、
    (i)強アルカリ性の水酸化物を含む溶液、
    (ii)逆転写酵素、
    (iii)逆転写反応用試薬、
    (iv)耐熱性DNAポリメラーゼ、及び
    (v)DNAポリメラーゼ連鎖反応用試薬、を含むキット。
  19. さらに、(vi)キレート剤を含む溶液、を含む請求項18記載のキット。
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