JP2016019495A - 核酸増幅法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2以上の標的核酸を増幅する方法であって、RT−PCRに必要な組成のすべてを含む反応液に試料を添加し、適当範囲での条件設定のもと、マルチプレックス−ワンステップRT−PCRを行う。
【選択図】なし
Description
代表的な核酸増幅法はPCR(polymerase chain reaction)である。PCRは、(1)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの解離)、(2)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって、試料中の標的核酸を増幅する方法である。
代表的な本願発明は以下の通りである。
(項1)
2以上の標的核酸を増幅する方法であって、
(a) 試料中のRNAをcDNAに逆転写するために必要な組成、および該cDNAの少なくとも一部の配列部分を増幅するために必要な組成のすべてを含む反応液に試料を添加する工程
(b) 20℃から65℃の温度で1分以上インキュベートする逆転写反応工程
(c) 90℃から100℃の間で選ばれる熱変性温度と、50℃から75℃の間で選ばれるアニーリング兼伸長反応温度との間で変化する1または複数サイクルの熱サイクリング反応を行う工程
(d) 上記工程(c)に続き、90℃から100℃の間で選ばれる熱変性温度と、前回サイクルのアニーリング兼伸長反応温度と同等かまたは0.2℃以上低い第二のアニーリング兼伸長反応温度との間で変化する1または複数サイクルの熱サイクリング反応を行う工程
(e) 工程(d)を少なくとも20回以上繰りかえし、工程(c)の1回目の熱サイクルのアニーリング兼伸長反応温度よりも少なくとも3℃低くなるようなアニーリング兼伸長反応温度で最終サイクルを行う工程
を含む、ワンステップRT−PCRによる核酸増幅法である。
(項2)
前記核酸増幅法において、アニーリングと伸長を同時に行わない方法であってもよい。
すなわち本発明は、2以上の標的核酸を増幅する方法であって、
(a) 試料中のRNAをcDNAに逆転写するために必要な組成、および該cDNAの少なくとも一部の配列部分を増幅するために必要な組成のすべてを含む反応液に試料を添加する工程
(b) 20℃から65℃の温度で1分以上インキュベートする逆転写反応工程
(c) 90℃から100℃の間で選ばれる熱変性温度と、45℃から75℃の間で選ばれるアニーリング温度と、50℃から80℃の間で選ばれる伸長反応温度(ここで、アニーリング温度は伸長反応温度を超えない。)との間で変化する2サイクル以上の熱サイクリング反応を行う工程(ここで、n回目のサイクルのアニーリング温度はn−1回目のアニーリング温度と同等かまたは0.2℃以上低いアニーリング温度である。)
(d) 工程(c)を少なくとも20サイクル以上繰りかえし、最終サイクルのアニーリング温度が1回目の熱サイクルのアニーリング温度よりも少なくとも3℃低くなるような最終サイクルを行う工程
を含む、ワンステップRT−PCRによる核酸増幅法である。
(項3)試料が核酸抽出の工程を経ることなく得られた試料である、項1または2に記載の核酸増幅法。
(項4)工程(b)からPCRの最終サイクルまでが3時間以内に終了する、項1から3のいずれかに記載の核酸増幅法。
(項5)工程(a)の反応液に蛍光インターカーレーターを含む、項1から4のいずれかに記載の核酸増幅法。
(項6)蛍光融解曲線法により標的RNAの増幅を検出する、項5に記載の核酸増幅法。
(項7)工程(a)の反応液に内部標準として増幅される核酸およびそれを増幅するためのプライマーを含む、項1から6のいずれかに記載の核酸増幅法。
(項8)標的RNAがRNAウイルスのゲノムRNAの全部または一部である、項1から7のいずれかに記載の核酸増幅法。
(項9)RNAウイルスが腸管病原性ウイルスである、項8に記載の核酸増幅法。
(項10)腸管病原性ウイルスがノロウイルス、サポウイルス、ロタウイルスから選ばれる、項9に記載の核酸増幅法。
(項11)項1〜10のいずれかに記載の核酸増幅法を実施するための反応液を含むキット。
本発明の実施形態のひとつは、2以上の標的核酸を増幅する方法であって、
(a) 試料中のRNAをcDNAに逆転写するために必要な組成、および、該cDNAの少なくとも一部の配列部分を増幅するために必要な組成のすべてを含む反応液に試料を添加する工程
(b) 20℃から65℃の温度で1分以上インキュベートする逆転写反応工程
(c) 90℃から100℃の間で選ばれる熱変性温度と、50℃から75℃の間で選ばれるアニーリング兼伸長反応温度との間で変化する1または複数サイクルの熱サイクリング反応を行う工程
(d) 上記工程(c)に続き、90℃から100℃の間で選ばれる熱変性温度と、前回サイクルのアニーリング兼伸長反応温度と同等かまたは0.2℃以上低い第二のアニーリング兼伸長反応温度との間で変化する1または複数サイクルの熱サイクリング反応を行う工程
(e) 工程(d)を少なくとも20回以上繰りかえし、工程(c)の1回目の熱サイクルのアニーリング兼伸長反応温度よりも少なくとも3℃低くなるようなアニーリング兼伸長反応温度で最終サイクルを行う工程
を含む、ワンステップRT−PCRによる核酸増幅法(タッチダウン熱サイクルによるワンステップRT−PCR法)である。
すなわち本発明は、2以上の標的核酸を増幅する方法であって、
(a) 試料中のRNAをcDNAに逆転写するために必要な組成、および該cDNAの少なくとも一部の配列部分を増幅するために必要な組成のすべてを含む反応液に試料を添加する工程
(b) 20℃から65℃の温度で1分以上インキュベートする逆転写反応工程
(c) 90℃から100℃の間で選ばれる熱変性温度と、45℃から75℃の間で選ばれるアニーリング温度と、50℃から80℃の間で選ばれる伸長反応温度(ここで、アニーリング温度は伸長反応温度を超えない。)との間で変化する2サイクル以上の熱サイクリング反応を行う工程(ここで、n回目のサイクルのアニーリング温度はn−1回目のアニーリング温度と同等かまたは0.2℃以上低いアニーリング温度である。)
(d) 工程(c)を少なくとも20サイクル以上繰りかえし、最終サイクルのアニーリング温度が1回目の熱サイクルのアニーリング温度よりも少なくとも3℃低くなるような最終サイクルを行う工程
を含む、ワンステップRT−PCRによる核酸増幅法(タッチダウン熱サイクルによるワンステップRT−PCR法)である。
例えば、実験生物、培養細胞、ヒトや動物などの臨床検査に供される検体(たとえば尿、糞便、全血、血漿、唾液、口腔内擦過物、鼻腔液、鼻腔ぬぐい液、膣ぬぐい液、尿道擦過物など)、衛生管理に供される検体(たとえば吐しゃ物、ふき取りサンプル、食品材料など)、また環境測定に供される検体(たとえば河川水、海水、土壌、空気からの捕集物など)、などが挙げられるがこれらに限定されない。
これらの検査は多くの検体を短時間に処理する必要があり、そのためワンステップRT−PCRは非常に有効な手法である。一方で、これらのRNAウイルスゲノムは多数の型が存在するため、それぞれの型に対しプライマー対を設計し、これら複数のプライマー対を同一反応組成内に投入するマルチプレックスPCRが有効な手法である。本発明によれば、これまで実用化に多くの労力を必要としていたワンステップRT−PCRとマルチプレックスPCRを組み合わせたマルチプレックス−ワンステップRT−PCRが簡便に実現される。
前記核酸抽出には、シリカなどの核酸吸着体に核酸を吸着させ他の物質と分離回収する方法、フェノールなどの有機溶媒と接触させ核酸を水相に回収することで他の物質と分離する方法、エタノールなどのアルコール類を添加し核酸を不溶化し不溶物を回収することによって他の物質と分離する方法、などが挙げられるがこれらに限定されない。
前記物理化学的な前処理には、加熱処理、アルカリ性液へ浸漬しその後で中和する方法、物理的に破砕・粉砕する方法、酵素処理(たとえば、タンパク質分解酵素、多糖類分解酵素などによる処理)、あるいはこれらを2つ以上組合せた処理、などが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の核酸増幅法における反応液には、これらに加え、有機溶媒、有機酸、界面活性剤、アミノ酸、糖、DNA結合タンパク質、などが添加剤として含まれることもある。
ウイルス由来の酵素はその活性至適温度は下限は30℃付近、上限は45℃付近であるが、その範囲外であっても酵素が実用上十分な活性を示す温度であれば、逆転写反応温度を適宜設定することができる。例えば、用いるプライマーにあわせて下限は20℃、上限は55℃の範囲で使用することが好ましい。ランダムプライマーを用いる場合は下限は20℃、上限は30℃、dTプライマーを用いる場合は下限は25℃、上限は42℃、特異的プライマーを用いる場合は下限は37℃、上限は55℃がそれぞれ好ましい。
耐熱性DNAポリメラーゼの逆転写活性を利用するような場合は、酵素活性の至適温度が50℃以上になるので、下限は50℃、上限は65℃が好ましい。この場合、そのアニーリング温度から特異的プライマーの使用が望ましく、ランダムプライマーやdTプライマーは不適当である。
本発明の核酸増幅法におけるPCRは耐熱性DNAポリメラーゼで触媒されることが好ましい。耐熱性DNAポリメラーゼは現在、Taq、Tth、KOD、Pfu、Bstなど種々のものが入手可能であるがこれらに限定されない。これらはホットスタート機能を組み込まれたものであればなお好ましい。ホットスタート法は非特異反応を抑制するのに有効であり、本発明の目的を達するためには、ポジティブに作用する。
例えば、前記逆転写反応で得られた2以上の標的核酸に対応する2以上のcDNAを、前記cDNAに対応する2以上のプライマーペアを含む反応液中で増幅させる。
本発明において、2以上の標的核酸には、内部標準核酸も含まれる。例えば、内部標準核酸は、標的RNAが含まれる可能性のある材料に予め添加され、そのようにして得られた試料が本発明の核酸増幅法に供される。または、内部標準は反応液に予め含ませておいても良い。
このように、本発明におけるマルチプレックスPCRには、標的となる核酸が1種類、内部標準核酸が1種類、合計2種類の核酸を標的とする場合も包含される。
本発明の核酸増幅法においては、変性は二本鎖DNAを解離させるのに十分な温度であれば特に限定されず、好ましい熱変性温度の下限は90℃、上限は100℃である。アニーリングは解離したDNAにプライマーをアニーリングするステップで、その際の温度(アニーリング温度)は特に限定されないが、好ましいアニーリング温度の下限は45℃であり、さらに好ましくは50℃である。
一方好ましい上限は75℃であり、さらに好ましくは70℃である。伸長はDNAポリメラーゼで相補鎖を合成するステップで、その際の温度(伸長温度)は特に限定されないが、好ましい伸長温度の下限は50℃であり、上限は80℃である。
前記サイクルにおいて、アニーリング温度は伸長反応温度を超えない。
下記に示す工程(c)を少なくとも20サイクル以上繰りかえし、最終サイクルのアニーリング温度が1回目の熱サイクルのアニーリング温度よりも少なくとも3℃低くなるような最終サイクルを行う。
工程(c):前記熱変性温度と、前記アニーリング温度と、前記伸長反応温度との間で変化する2サイクル以上の熱サイクリング反応を行う(ここで、n回目のサイクルのアニーリング温度はn−1回目のアニーリング温度と同等かまたは0.2℃以上低いアニーリング温度である。)。
このPCRサイクルの例では、以下に例示するタッチダウン熱サイクルを採用する。
工程(c):90℃から100℃の間で選ばれる熱変性温度と、50℃から75℃の間で選ばれるアニーリング兼伸長反応温度との間で変化する1または複数サイクルの熱サイクリング反応を行う。
工程(d):上記工程(c)に続き、90℃から100℃の間で選ばれる熱変性温度と、前回サイクルのアニーリング兼伸長反応温度と同等かまたは0.2℃以上低い第二のアニーリング兼伸長反応温度との間で変化する1または複数サイクルの熱サイクリング反応を行う。
工程(e):工程(d)を少なくとも20回以上繰りかえし、工程(c)の1回目の熱サイクルのアニーリング兼伸長反応温度よりも少なくとも3℃低くなるようなアニーリング伸長反応温度で最終サイクルを行う。
タッチダウン熱サイクルとは、初期のサイクル反応ではアニーリング温度を比較的高く設定して行い、サイクルが進行するに従ってアニーリング温度を徐々に下げていく方法である。また、アニーリングと伸長反応を同一の温度で行う場合においては、アニーリング兼伸長温度を徐々に下げていく方法である。
本明細書の0041〜0043段落において、「アニーリング温度」とは「アニーリング兼伸長反応温度」も含むものとする。
前記キットは、1つの組成物に上記で説明した核酸増幅法を実施するために必要なすべての物質を含むものであっても良いし、2種類以上の複数の組成物を組合せたものであって、使用時に適宜混合することで核酸増幅法を実施するための反応液を調製できるよう構成されているものであっても良い。その際に各組成物の構成は溶液であっても固形物(粉末、凍結乾燥品など)であっても良い。固形物の場合は使用時に精製水または予め調製された別の溶液組成物に溶解して調製できるよう構成されていれば良い。
(1)ノロウイルスゲノムRNA
RNAポリメラーゼにより人工的に合成したRNA断片を用いた。GIタイプとGIIタイプのそれぞれを用いた。
(2)糞便サンプル
ノロウイスル陰性であることが確認されている糞便サンプルを10%(w/v)となるように蒸留水に懸濁した。これを8,000gで3分間遠心分離して得られた上清を糞便サンプルとして以下の検討に用いた。
(3)タンパク質変性処理
グリシン 10mM、EGTA 5mMを含む水溶液(前処理液)を調製した。
前処理液4 μlと(2)で処理した糞便液1 μlとを混合し、85℃で1分間インキュベートした。
(4)逆転写反応
5X buffer(東洋紡)4μl、
各1.0mM dATP, dGTP, dCTP, dTTP、
0.3μM COG1Fプライマー(GI検出用)、
0.3μM COG2Fプライマー(GII検出用)、
ReverTra Ace(東洋紡)10unit、
人工合成したノロウイルス遺伝子RNA断片250コピー
を含む反応液20μlを50℃5分間インキュベートし、cDNAを合成した。
(5)PCR
10Xbuffer(東洋紡) 5ul、
各0.2mM dATP, dGTP, dCTP, dTTP、
0.3μM COG1Fプライマー(GI検出用)、
0.3μM COG1Rプライマー(GI検出用)、
0.3μM COG2Fプライマー(GII検出用)、
0.3μM COG2Rプライマー(GII検出用)、
0.3μM 内部標準Fプライマー、
0.3μM 内部標準Rプライマー、
(前記6種3組のプライマーのセットは融解曲線解析により、内部標準は85℃、ノロウイルスG2陽性は80℃、ノロウイルスG1陽性は77℃にピークを与える。)
0.01% SYBRGREEN(ライフテクノロジー)、
rTaq DNA polymerase(東洋紡)5 unit、
anti Taq high(東洋紡)1μl、
上記(4)の逆転写反応で作製したcDNA合成反応液2μl、
内部標準プラスミドpBR322 50コピー
を含む反応液50μlを以下の温度サイクルで反応した。
95℃ 5分、
94℃ 10秒−54℃ 45秒 45サイクル、
(6)融解曲線解析
反応終了後、直ちに70℃ 0.5℃/秒 90℃融解曲線解析に供した。すなわち、70℃から 0.5℃/秒 で90℃まで上昇させた。
(7)結果
図1にその結果を示す。使用したプライマーセットは、ノロウイルスG1タイプが存在すると76℃付近にピークを与えること、ノロウイルスG2タイプが存在すると80℃付近にピークを与えること、内部標準は85℃付近にピークを与えることがわかっている。
逆転写反応とPCRをそれぞれ至適の条件で行うツーステップRT−PCRであれば、マルチプレックスPCRにおいても通常のサイクルでノロウイルスRNAを検出できた。
(1)ノロウイルスゲノムRNA
RNAポリメラーゼにより人工的に合成したRNA断片を用いた。GIタイプとGIIタイプのそれぞれを用いた。
(2)糞便サンプル
ノロウイスル陰性であることが確認されている糞便サンプルを10%(w/v)となるように蒸留水に懸濁した。これを8,000g 3分間遠心分離して得られた上清を糞便サンプルとして以下の検討に用いた。
(3)タンパク質変性処理
グリシン 10mM、EGTA 5mMを含む水溶液(前処理液)を調製した。
前処理液4 μlと(2)で処理した糞便液1 μlとを混合し、85℃で1分間インキュベートした。
(4)ワンステップRT−PCR
75mM トリス硫酸(pH7.5)、
3.75mM 硫酸マグネシウム、
0.25mg/ml ウシ血清アルブミン、
各0.2mM dATP, dGTP, dCTP, dTTP 、
0.3μM COG1Fプライマー(GI検出用)、
0.3μM COG1Rプライマー(GI検出用)、
0.3μM COG2Fプライマー(GII検出用)、
0.3μM COG2Rプライマー(GII検出用)、
0.3μM 内部標準Fプライマー、
0.3μM 内部標準Rプライマー、
(前記6種3組のプライマーのセットは融解曲線解析により、内部標準は85℃、ノロウイルスG2陽性は80℃、ノロウイルスG1陽性は77℃にピークを与える。)
0.01% SYBRGREEN(ライフテクノロジー)、
rTaq DNA polymerase(東洋紡)10 unit、
anti Taq high(東洋紡) 10 unit、
RevertraAce(東洋紡) 2.5unit、
人工合成したノロウイルス遺伝子RNA断片250コピーを含む反応液45μl
を、上記(3)でタンパク質変性処理を行った液5μlに添加した。
これを以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 5分、
95℃ 5分、
94℃ 10秒−54℃ 45秒 45サイクル、
(5)融解曲線解析
反応終了後、直ちに70℃ 0.5℃/秒 90℃融解曲線解析に供した。
すなわち、70℃から 0.5℃/秒 で90℃まで上昇させた。
(6)結果
図2 にその結果を示す。逆転写反応とPCRを同一の反応液中で連続し行うワンステップRT−PCRの場合、マルチプレックスPCRでは通常のサイクルでは非特異増幅が多くノロウイルスRNAを検出できなかった。
(1)ノロウイルスゲノムRNA
RNAポリメラーゼにより人工的に合成したRNA断片を用いた。GIタイプとGIIタイプのそれぞれを用いた。
(2)糞便サンプル
ノロウイスル陰性であることが確認されている糞便サンプルを10%(w/v)となるように蒸留水に懸濁した。これを8,000g 3分間遠心分離して得られた上清を糞便サンプルとして以下の検討に用いた。
(3)タンパク質変性処理
グリシン 10mM、EGTA 5mMを含む水溶液(前処理液)を調製した。前処理液4 μlと(2)で処理した糞便液1 μlとを混合し、85℃で1分間インキュベートした。
(4)ワンステップRT−PCR
75mM トリス硫酸(pH7.5)、
3.75mM 硫酸マグネシウム、
0.25mg/ml ウシ血清アルブミン、
各0.2mM dATP, dGTP, dCTP, dTTP 、
0.3μM COG1Fプライマー(GI検出用)、
0.3μM COG1Rプライマー(GI検出用)、
0.3μM COG2Fプライマー(GII検出用)、
0.3μM COG2Rプライマー(GII検出用)、
0.3μM 内部標準Fプライマー、
0.3μM 内部標準Rプライマー、
(前記6種3組のプライマーのセットは融解曲線解析により、内部標準は85℃、ノロウイルスG2陽性は80℃、ノロウイルスG1陽性は77℃にピークを与える。)
0.01% SYBRGREEN(ライフテクノロジー)、
rTaq DNA polymerase(東洋紡)10 unit、
anti Taq high(東洋紡) 10 unit、
RevertraAce(東洋紡) 2.5unit、
人工合成したノロウイルス遺伝子RNA断片250コピーを含む反応液45μl
を、上記(3)でタンパク質変性処理を行った液5μlに添加した。
これを以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 5分、
95℃ 5分、
94℃ 10秒−58℃ 45秒 5サイクル、
94℃ 10秒−56℃ 45秒 10サイクル、
94℃ 10秒−54℃ 45秒 15サイクル、
94℃ 10秒−52℃ 45秒 20サイクル
(5)融解曲線解析
反応終了後、直ちに70℃ 0.5℃/秒 90℃融解曲線解析に供した。すなわち、70℃から 0.5℃/秒 で90℃まで上昇させた。
(6)結果
図3にその結果を示す。逆転写反応とPCRを同一の反応液中で連続し行うワンステップRT−PCRの場合、タッチダウンサイクルを用いれば、マルチプレックスPCRでも非特異増幅を抑制しノロウイルスRNAを検出できた。
Claims (11)
- 2以上の標的核酸を増幅する方法であって、
(a) 試料中のRNAをcDNAに逆転写するために必要な組成、および該cDNAの少なくとも一部の配列部分を増幅するために必要な組成のすべてを含む反応液に試料を添加する工程
(b) 20℃から65℃の温度で1分以上インキュベートする逆転写反応工程
(c) 90℃から100℃の間で選ばれる熱変性温度と、50℃から75℃の間で選ばれるアニーリング兼伸長反応温度との間で変化する1または複数サイクルの熱サイクリング反応を行う工程
(d) 上記工程(c)に続き、90℃から100℃の間で選ばれる熱変性温度と、前回サイクルのアニーリング兼伸長反応温度と同等かまたは0.2℃以上低い第二のアニーリング兼伸長反応温度との間で変化する1または複数サイクルの熱サイクリング反応を行う工程
(e) 工程(d)を少なくとも20回以上繰りかえし、工程(c)の1回目の熱サイクルのアニーリング兼伸長反応温度よりも少なくとも3℃低くなるようなアニーリング兼伸長反応温度で最終サイクルを行う工程
を含む、ワンステップRT−PCRによる核酸増幅法。 - 2以上の標的核酸を増幅する方法であって、
(a) 試料中のRNAをcDNAに逆転写するために必要な組成、および該cDNAの少なくとも一部の配列部分を増幅するために必要な組成のすべてを含む反応液に試料を添加する工程
(b) 20℃から65℃の温度で1分以上インキュベートする逆転写反応工程
(c) 90℃から100℃の間で選ばれる熱変性温度と、45℃から75℃の間で選ばれるアニーリング温度と、50℃から80℃の間で選ばれる伸長反応温度(ここで、アニーリング温度は伸長反応温度を超えない。)との間で変化する2サイクル以上の熱サイクリング反応を行う工程(ここで、n回目のサイクルのアニーリング温度はn−1回目のアニーリング温度と同等かまたは0.2℃以上低いアニーリング温度である。)
(d) 工程(c)を少なくとも20サイクル以上繰りかえし、最終サイクルのアニーリング温度が1回目の熱サイクルのアニーリング温度よりも少なくとも3℃低くなるような最終サイクルを行う工程
を含む、ワンステップRT−PCRによる核酸増幅法。 - 試料が核酸抽出の工程を経ることなく得られた試料である、請求項1または2に記載の核酸増幅法。
- 工程(b)からPCRの最終サイクルまでが3時間以内に終了する、請求項1から3のいずれかに記載の核酸増幅法。
- 工程(a)の反応液に蛍光インターカーレーターを含む、請求項1から4のいずれかに記載の核酸増幅法。
- 蛍光融解曲線法により標的RNAの増幅を検出する、請求項5に記載の核酸増幅法。
- 工程(a)の反応液に内部標準として増幅される核酸およびそれを増幅するためのプライマーを含む、請求項1から6のいずれかに記載の核酸増幅法。
- 標的RNAがRNAウイルスのゲノムRNAの全部または一部である、請求項1から7のいずれかに記載の核酸増幅法。
- RNAウイルスが腸管病原性ウイルスである、請求項8に記載の核酸増幅法。
- 腸管病原性ウイルスがノロウイルス、サポウイルス、ロタウイルスから選ばれる、請求項9に記載の核酸増幅法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の核酸増幅法を実施するための反応液を含むキット。
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