JP6728657B2 - 核酸増幅法 - Google Patents

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Description

本発明は、従来と比較して、反応時間を大幅に短縮することができる核酸増幅法に関する。
核酸増幅法は数コピーの標的核酸を可視化レベル、すなわち数億コピー以上に増幅する技術である。代表的な核酸増幅法はPCR(Polymerase Chain Reaction)である。PCRは、(1)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの解離)、(2)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって、試料中の標的核酸を増幅する方法である。
PCR技術を用いた検査は遺伝子診断、臨床診断といった法医学分野、あるいは、食品や環境中の微生物検査等において、広く利用されている。PCR増幅産物の検出には、電気泳動をすることなく、簡便に微量核酸の検出が可能なリアルタイムPCR法が広く利用されている。現在、遺伝子診断や衛生検査など、特に多サンプルの処理が必要な産業用途ではPCR解析に要する時間の短縮が強く望まれている。
反応時間の短縮を達成するため、様々なPCR機器が開発ならびに改良されている。現在では、温度昇降速度が格段に早いPCR機器が登場し、PCR反応に要する時間が大幅に短縮されている。PCR反応時間の短縮は機器の問題ではなく、PCRの反応自体に制約されることとなっている。例えば、温度昇降速度の速度を上げることにより、非特異的反応や、プライマーダイマ―の増加などが起こりやすくなるといった制約が存在する。そのためPCRの反応特異性高く維持したまま、標的核酸のみを高感度に検出するためにはPCR反応サイクルを最適化することが依然として必要不可欠である。
上記事情を背景として、本発明では、検査の正確性を担保するために検出感度や特異性を保ちながら、より短時間で解析を終えるためのPCRにおける熱サイクル条件による核酸増幅方法を得ることを課題とする。
PCRは熱変性・アニーリング及び伸長反応の各温度ステップを繰り返すことによって進行する。PCRの熱サイクル時間を決める要因として、各ステップ温度、各ステップの保持時間、各ステップ間の温度昇降速度が挙げられる。本発明では、サイクル内で最も高温ステップである熱変性ステップの温度に着目した。各ステップ間での温度変化のうち、熱変性ステップからアニーリングステップへの温度変化と前サイクルの伸長反応ステップから次サイクルの熱変性ステップへの温度変化は特に大きい。そのため、PCRサイクルの最大温度である熱変性温度を下げることが熱サイクル時間の短縮に大きく寄与する。
しかし、熱変性温度を下げることで二本鎖DNAから一本鎖DNAへの乖離不足やプライマー伸長生成物の乖離不足による、特異性の低下と検出感度の低下を招くことがある。また、さらにマルチプレックスPCRで行うと、投入するプライマーの種類が増加すること、プライマー伸長生成物の乖離温度が異なることから検出感度の低下が起こりやすくなるという側面がある。
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意研究の結果、PCRにおける熱サイクルにおける熱変性温度を段階的に下げていくことによって、特異性と検出感度を維持したまま反応時間を短縮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の概要は以下の通りである。
〔項1〕PCRにより核酸を増幅する工程において、異なる熱変性温度を含む2種類以上の熱サイクルを有し、かつ、核酸増幅工程における後の熱サイクルの熱変性温度が、先の熱サイクルの熱変性温度と同じ温度であるか又は低い温度であることを特徴とする核酸増幅方法。
〔項2〕以下の工程(a)及び(b)を含み、かつ、工程(a)及び(b)を併せた熱サイクル数が30回から50回であることを特徴とする項1に記載の核酸増幅方法。
(a)90℃から100℃の間の変性温度を含む熱サイクルを少なくとも5回以上繰り返す工程
(b)工程(a)続く熱サイクルであって、工程(a)の熱変性温度より2℃から10℃低い熱変性温度を含む熱サイクルを5回以上繰り返す工程
〔項3〕以下の工程(c)をさらに含み、かつ、工程(a)、(b)及び(c)を併せた熱サイクル数が30回から50回であることを特徴とする項2に記載の核酸増幅方法。
(c)工程(b)に続く熱サイクルであって、工程(b)の熱変性温度より1℃以上低い熱変性温度を含む熱サイクルを5回以上繰り返す工程
〔項4〕最も高い熱変性温度と最も低い熱変性温度との差が5℃から10℃となる熱サイクルを有することを特徴とする項1から3のいずれかに記載の核酸増幅方法。
〔項5〕核酸増幅方法がマルチプレックスPCRである項1から4のいずれかに記載の核酸増幅法。
〔項6〕核酸増幅の試料が生体由来である項1から5のいずれかに記載の核酸増幅法。
〔項7〕核酸増幅の試料が核酸抽出を行うことなく得られた試料である項6に記載の核酸増幅法。
〔項8〕試料が便検体である項6又は7に記載の核酸増幅法。
〔項9〕サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌、赤痢菌からなる群より選択される少なくとも1つの細菌が保有する遺伝子を標的核酸とする項1から8のいずれかに記載の核酸増幅法。
本発明の熱サイクル条件を適用することにより、高い検出感度を維持したまま、PCRに要する全反応時間を、従来よりも大幅に短縮させることを実現することができた。
PCR反応時間の短縮は、一日に処理可能な検体数を増やすことに直結する。例えば、検査センターなどでの勤務時間を8時間であると仮定した場合、PCRに120分間必要であると、1日に4回のPCR解析の実施が可能である。しかし、PCR解析に必要な時間が90分であると5回、80分であると6回、70分であると7回の実施が可能となる。1台のサーマルサイクラ―における1回のPCR解析あたり、おおよそ96サンプルの解析が可能なため、PCR解析時間の短縮には解析数の増加に大きな効果がある。すなわち、1日に解析可能な回数がn回増えることで、処理可能な検体数としては(96×n)個増えることになる。
また、例えば検便検査では50検体を1プールとして解析を行うため、実質的には(96×50×n)個、すなわち(4800×n)個も処理可能な検体数が増えることになる。また、複数台のサーマルサイクラ―を保有している検査センターでは、さらに効率化に顕著な効果ができる。例えば、3台のサーマルサイクラ―を保有している場合、(96×3×n)個、すなわち(288×n)個の処理数が増分となり、50検体をプールした場合に、実質的には(4800×3×n)個、すなわち(14400×n)個も処理可能な検体数が増えることになる。
特にマルチプレックスPCR法では、本発明の効果はさらに顕著である。複数のプライマーを反応系に添加するマルチプレックスPCR法ではプライマーダイマ―が形成されやすく、非特異的増幅も起こりやすい。また、熱変性温度を低下させることでプライマーダイマ―の形成と非特異的増幅が増加しやすいという問題もある。しかしながら、本発明のように、熱変性温度を段階的に低下させることで、プライマーダイマ―の形成と非特異的増幅を抑制することができるので、短時間での高感度なマルチプレックスPCR法による高速検出を可能とした。
サルモネラ菌遺伝子、腸内出血性大腸菌遺伝子、赤痢菌遺伝子をターゲットとしたマルチプレックスPCRの結果を示す写真である。各ゲノムDNAを10コピー添加したものを鋳型として添加し増幅を実施し、増幅産物を融解曲線解析により解析した。内部標準は72℃、サルモネラ菌陽性は77℃、腸管出血性大腸菌陽性は80℃、赤痢菌陽性は84℃にピークを与える。PCR反応条件は通常サイクル(94℃ 20秒、94℃ 2秒−55℃ 5秒−68℃ 5秒 40サイクル、融解曲線解析 0.5℃/Step)で実施した。 陰性検体である糞便検体50個をプールした検体の熱処理後の遠心上清液を糞便サンプルとし、糞便サンプルに各ゲノムDNAを10コピー添加したものを鋳型として使用した。通常サイクルによるマルチプレックスPCR増幅を実施し、各増幅産物を融解曲線解析により解析した。 サルモネラ菌遺伝子、腸内出血性大腸菌遺伝子、赤痢菌遺伝子をターゲットとしたマルチプレックスPCRの結果を示す写真である。各ゲノムDNAを10コピー添加したものを鋳型として添加し増幅を実施し、各増幅産物を融解曲線解析により解析した。PCR反応条件は本発明である熱変性を段階的に下げるサイクル(94℃ 20秒、94℃ 2秒−55℃ 5秒−68℃ 5秒 5サイクル、87℃ 2秒−55℃ 5秒−68℃ 5秒 35サイクル、融解曲線解析 0.5℃/Step)にて実施した。 糞便サンプルに各ゲノムDNAを10コピー添加したものを鋳型として使用した。本発明である熱変性を段階的に下げるサイクルによるマルチプレックスPCR増幅を実施し、各増幅産物を融解曲線解析により解析した。 サルモネラ菌遺伝子、腸内出血性大腸菌遺伝子、赤痢菌遺伝子をターゲットとしたマルチプレックスPCRの結果を示す写真である。各ゲノムDNAを10コピー添加したものを鋳型として添加し増幅を実施した。各増幅産物を融解曲線解析により解析した。PCR反応条件は低温熱変性サイクル(87℃ 2秒−55℃ 5秒−68℃ 5秒 40サイクル、融解曲線解析 0.5℃/Step)にて実施した。 検体として水を添加した。低温熱変性サイクルによるマルチプレックスPCR増幅を実施し、各増幅産物を融解曲線解析により解析した。 本発明における熱サイクルのパターンの一例を示す図である。
PCRは熱変性、アニーリング及び伸長の工程からなるサイクルで構成される。以下に例を挙げて説明する。
本発明の核酸増幅法は、PCRにより核酸を増幅する工程において、異なる熱変性温度を含む2種類以上の熱サイクルを有し、かつ、核酸増幅工程における後の熱サイクルの熱変性温度が、先の熱サイクルの熱変性温度と同じ温度であるか又は低い温度であることを特徴とするものである。例えば、図7に示すような熱サイクルが挙げられる。同じ熱変性温度を有するサイクルを複数回、好ましくは5回以上繰り返した後、それよりも低い熱変性温度を有するサイクルを複数回、好ましくは5回以上繰り返すことが好ましい。すべての熱サイクル数としては、20回から60回が好ましく、より好ましくは30回から50回,さらに好ましくは35回から45回である。
本発明の核酸増幅法においては、最初のサイクルの熱変性における温度(以下、「熱変性温度」という。)は二本鎖DNAを解離させるのに十分な温度であれば特に限定されず、好ましい熱変性温度の下限は80℃、より好ましくは85℃、さらに好ましくは90℃である。また、好ましい上限温度については100℃であり、より好ましくは98℃である。その保持時間は特に限定されないが、好ましくは1〜20秒間、さらに好ましくは1〜5秒間である。最終サイクルの熱変性温度は特に限定されないが、好ましくは(Tm―2℃)であり、ここでいうTmとは、PCRの増幅産物であるプライマー伸長生成物の乖離温度である。
アニーリングは解離したDNAにプライマーをアニーリングするステップで、その際の温度(以下、「アニーリング温度」という。)は特に限定されないが、好ましいアニーリング温度の下限は45℃であり、さらに好ましくは50℃である。一方、好ましい上限は75℃であり、さらに好ましくは70℃、特に好ましくは65℃である。その保持時間は特に限定されないが、好ましくは1〜20秒間、さらに好ましくは1〜10秒間、特に好ましくは1〜5秒間である。また、アニーリング温度はすべてのサイクルで同一温度であっても良いし、異なっていても良い。
伸長はDNAポリメラーゼにより相補鎖を合成するステップで、その際の温度(以下、「伸長温度」という。)は特に限定されないが、好ましい伸長温度の下限は50℃であり、より好ましくは60℃、さらに好ましくは65℃である。好ましい上限温度については80℃であり、より好ましくは75℃である。その保持時間は特に限定されないが、好ましくは1〜20秒間、さらに好ましくは1〜10秒間、特に好ましくは1〜5秒間である。また、伸長温度はすべてのサイクルで同一温度であっても良いし、異なっていても良い。アニーリング温度は伸長反応温度と同一温度であってもよいが、伸長反応温度よりも高く設定することはしない。
本発明におけるPCRの熱サイクルについて、さらに詳述する。
本発明における熱サイクルは、初期のサイクル反応では熱変性温度を比較的高く設定して行い、サイクルが進行するにしたがって、熱変性温度を段階的に下げていくことを特徴とする方法である。
熱変性温度を下げるパターンの一つは、数サイクルごとにブロックを分けて順次下げていく方法である。例えば、1から5サイクル目の熱変性温度をT℃、5から10サイクル目の熱変性温度T−2℃、10から15サイクル目の熱変性温度T−4℃、とする方法である。この場合の温度の下がり幅は1℃以上である必要があり、2℃以上が好ましい。ブロックごとのサイクル数は任意である。最も低い熱変性温度と最も高い熱変性温度との差が少なくとも5℃以上あることが好ましく、7℃以上であることがより好ましい。全熱サイクル数としては20回から60回が好ましく、より好ましくは30回から50回,さらに好ましくは35回から45回である。
また他のパターンとしては、全熱サイクルを2つのブロックに分ける方法である。例えば、1から5サイクル目の第1ブロックの熱変性をT℃で行い、6サイクル目以降の第2のブロックの熱変性をT−5℃で行う方法である。このときブロックごとのサイクル数は任意である。この場合のブロック間の温度の下がり幅は5℃以上が好ましく、7℃以上であることがより好ましい。全サイクル数としては20回から60回が好ましく、より好ましくは30回から50回,さらに好ましくは35回から45回である。
最も高い熱変性温度を有する熱サイクルだけで全サイクルを行ったときと比較し、本発明である熱変性温度を段階的に下げる熱サイクル条件にてPCR反応を実施した時に、PCRに要する時間が5分以上短くなることが好ましい。より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上短くなることである。
より具体的には、以下の工程(a)及び(b)を含み、かつ、工程(a)及び(b)を併せた熱サイクル数が30回から50回、より好ましくは35回から45回である核酸増幅方法が例示される。
(a)90℃から100℃、より好ましくは94℃から98℃の間の変性温度を含む熱サイクルを少なくとも5回以上繰り返す工程
(b)工程(a)続く熱サイクルであって、工程(a)の熱変性温度より2℃から10℃、
より好ましくは3℃から7℃低い熱変性温度を含む熱サイクルを5回以上繰り返す工程
上記工程(b)の後に、以下の工程(c)を、さらに含み、かつ、工程(a)、(b)及び(c)を併せた熱サイクル数が30回から50回、より好ましくは35回から45回である核酸増幅方法であってもよい。
(c)工程(b)に続く熱サイクルであって、工程(b)の熱変性温度より1℃以上、好ましくは2℃以上、より好ましくは3℃以上低い熱変性温度を含む熱サイクルを5回以上繰り返す工程
また、工程(c)の後に、工程(c)の熱変性温度より1℃以上低い熱変性温度を含む熱サイクルを5回以上繰り返してもよい。
さらには、最も高い熱変性温度と最も低い熱変性温度との差が5℃から10℃、より好ましくは7℃から10℃となる熱サイクルを有することが好ましい。
本発明の核酸増幅法が適用される試料は、標的DNAが含まれる可能性のある材料であればその由来は特に限定されないが、例えば、患者サンプル(例えば、尿、糞便、全血、血漿、唾液、口腔内擦過物、鼻腔液、鼻腔ぬぐい液、膣ぬぐい液、尿道擦過物など)、食品サンプルや環境サンプル(例えば、吐しゃ物、ふき取りサンプル、河川水、海水、土壌、空気からの補集物など)などが挙げられるが、これらに限定されない。より好ましくは、便検体を使用することである。例えば、検便検体を使用することができる。便検体の採取方法等は特に限定されないが、例えば、便の一部を掻き取ることによって得ることができる。検便検体は、検便のために採取されたものを用いることができる。
本発明に適用される便検体は特に限定されない。例えば、哺乳類の便から採取された便検体が挙げられる。また、本発明が適用される便検体は、保存などの目的で、DNAの破壊が抑えられていることを前提に、希釈・濾過・その他物理化学的処理が施されたものであってもよい。
前記試料は、採取したものを核酸抽出の工程を経ることなくそのまま用いても良いし、核酸抽出および物理化学的な前処理のうち少なくともいずれかを施したものであっても良い。簡便性・迅速性の観点から、DNAの分離精製を行っていない便検体を使用することが特に好ましい。例えば、便検体をそのまま懸濁させた溶液を熱処理後、遠心分離後、上清をテンプレートとする方法が挙げられる。PCRに用いる便検体の添加割合は、適切にPCRを行われる範囲であればよく、特に限定されない。例えば1〜20容量%の範囲で適宜調整することができる。
本発明の核酸増幅法においては、前記試料に含まれるDNAの少なくとも一部の配列部分をPCRによって増幅する。本発明の核酸増幅法におけるPCRは、耐熱性DNAポリメラーゼで触媒されることが好ましい。耐熱性DNAポリメラーゼとしては、Taq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼなど種々のものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
前記PCRにおけるプライマーは、標的DNAに特異的なプライマーが使用される。複数のDNA領域を同時かつ迅速に検出するためにマルチプレックスPCRを行うことが好ましい。例えば、2以上の標的核酸に対応するDNAを、対応する2以上のプライマーペアを含む反応液中で増幅させる。また、フォワード又はリバースのいずれかのプライマーを共通とすることもできる。
本発明の核酸増幅法における反応液には、PCRを行うために必須な組成が含まれていれば、その組成は特に限定されない。すなわち、反応液には、DNAの少なくとも一部の配列部分を増幅するために必要な組成を含んでいれば良い。すなわち、反応液に含まれるものの一例としては、耐熱性DNAポリメラーゼ、PCRプライマー、dNTP、2価イオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなど)、1価イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)及び緩衝液(例えば、トリス塩酸バッファー、リン酸バッファーなど)を含む反応液が挙げられる。
本発明の核酸増幅法における反応液には、これらに加え、有機溶媒(例えば、エタノール、メタノール、アセトンなど)、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、安息香酸など)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、TritonX-100など)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、トリプトファンなど)、糖(例えば、グルコース、キシロース、ガラクトースなど)、DNA結合タンパク質などが添加剤として含まれることもある。
本発明の核酸増幅法における反応液には、上記のほかに、キャリーオーバー汚染を防止するための組成として、ウラシルグリコシダーゼ、dUTPが含まれていてもよい。ウラシルグリコシダーゼはDNA配列中に存在するウラシルを特異的に切り出し、DNAの分解を起こす酵素である。反応液にdUTPが含まれる組成でPCRを行い得られるDNA断片はウラシルを含んでおり、ウラシルグリコシダーゼで分解される。一方、天然のDNAはウラシルを含まないため、分解されない。これを利用したキャリーオーバー汚染を防止する方法が知られている。
本発明において用いられる反応液には、PCRの反応内部標準となる鋳型とプライマーを含んでいても良い。材料から核酸を分離精製せずに反応液に添加した場合、脂質、多糖類、タンパク質などPCRを阻害する物質も同時に添加される場合がある。これらによりPCRが阻害された場合、真に標的となる核酸が含まれなかった場合との区別ができない。これを回避するため、反応が正常に進行すれば標的核酸がなくても増幅産物が得られる内部標準核酸とそのプライマーを反応液に添加する方法が知られている。本発明においてもこの方法を適用しうる。
本発明において、2以上の標的核酸には内部標準核酸も含まれうる。例えば、内部標準核酸は、標的DNAが含まれる可能性のある材料に予め添加され、そのようにして得られた試料が本発明の核酸増幅法に供される。または、内部標準は反応液に予め含ませておいても良い。このように、本発明におけるマルチプレックスPCRには、標的となる核酸が1種類、内部標準核酸が1種類、合計2種類の核酸を標的とする場合も包含される。
本発明の核酸増幅法における反応液には、上記のほかにキャリーオーバー汚染を防止するための組成として、ウラシルグリコシダーゼ、dUTPが含まれていてもよい。ウラシルグリコシダーゼはDNA配列中に存在するウラシルを特異的に切り出し、DNAの分解を起こす酵素である。反応液にdUTPが含まれる組成でPCRを行い得られるDNA断片はウラシルを含んでおり、ウラシルグリコシダーゼで分解される。一方、天然のDNAはウラシルを含まないため、分解されない。これを利用したキャリーオーバー汚染を防止する方法が知られている。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。以下の実施例の記載は、本発明を特に限定するものではない。
実施例1.通常サイクルにおけるゲノムDNAと糞便検体からの腸内細菌遺伝子の検出
サルモネラ菌遺伝子、腸管出血性大腸菌(EHEC)、赤痢菌のゲノムDNAをそれぞれ用いた。また陰性検体である糞便検体を10%程度となるように水で懸濁し、50個をプールした。プールした検体を95℃、5分間熱処理、遠心分離後の上清液を糞便サンプルとして以下の検討に用いた。
本実施例ではPCR反応液を20μL系にて調製した。この20μLの反応液にサルモネラ菌、腸管出血性大腸菌、赤痢菌のゲノムDNA10コピーを鋳型として2μL添加し増幅を実施した。また、上記糞便サンプルにゲノムDNAを10コピー添加したものを鋳型として2μL添加し増幅を実施した。
マルチプレックスPCR用の試薬組成として、腸内細菌遺伝子検出キット-高速蛍光検出-(東洋紡製)を使用した。内部標準は72℃、サルモネラ菌陽性は77℃、腸管出血性大腸菌陽性は80℃、赤痢菌陽性は84℃にピークを与える。
調製したサンプルをThermal Cycler Dice(登録商標)II(タカラバイオ製)にて通常サイクル(94℃ 20秒、94℃ 2秒−55℃ 5秒−68℃ 5秒 40サイクル、融解曲線解析 0.5℃/Step)で解析を実施した。
ゲノムDNAのみの増幅結果を図1に、糞便サンプルにゲノムDNAを添加した増幅結果を図2にそれぞれ示す。サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌、赤痢菌の検出が可能であり、ゲノムDNAをそれぞれ分離検出することができた。融解曲線解析まで含めた解析時間は1時間30分であった。
実施例2.本発明サイクルによるゲノムDNAと糞便検体からの腸内細菌遺伝子の検出
実施例1と同じ検体、PCR反応組成を用い、本発明の特徴である熱変性を段階的に下げるサイクルにて検出を行った。反応サイクルは本発明の熱変性温度を段階的に下げるサイクル(94℃ 20秒、94℃ 2秒−55℃ 5秒−68℃ 5秒 5サイクル、87℃ 2秒−55℃ 5秒−68℃ 5秒 35サイクル、融解曲線解析 0.5℃/Step)にて解析を実施した。
ゲノムDNAのみの増幅結果を図3に、糞便サンプルにゲノムDNAを添加した増幅結果を図4にそれぞれ示す。サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌、赤痢菌の検出が可能であり、ゲノムDNAをそれぞれ分離検出することができた。融解曲線解析まで含めた解析時間は1時間10分であり、高い検出感度と特異性を維持したまま、実施例1と比較して、反応時間を大きく短縮することができた。例えば、実施例1の条件により6回の解析を行おうとすると9時間を要することになるが、実施例2の条件であると7時間で6回の解析が可能となり、解析効率が大幅に改善されるものである。
実施例3.低温熱変性サイクルによるゲノムDNAと糞便検体からの腸内細菌遺伝子の検出
実施例1と同じPCR組成を用い、低温熱変性サイクルにて検出を行った。検体は、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌、赤痢菌のゲノムDNAと、検体の代わりに水を用いたものを対象として行った。反応サイクルは87℃ 20秒、94℃ 2秒−55℃ 5秒−68℃ 5秒 40サイクル、融解曲線解析 0.5℃/Stepにて解析を実施した。
ゲノムDNAのみの増幅結果を図5に、ゲノムDNAの代わりに水を用いた増幅結果を図6にそれぞれ示す。サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌、赤痢菌の検出が可能であり、ゲノムDNAをそれぞれ分離検出することができたが、水をテンプレートとした系にてプライマーダイマ―と思われるピークが多数検出された。融解曲線解析まで含めた解析時間は1時間5分であった。しかしながら、熱変性温度を低温にて実施するだけでは高い特異性を維持することはできず、熱変性温度を段階的に下げていく本発明のような熱サイクルが高い検出感度と特異性を維持したまま、反応時間を短縮するために必要であることが確認された。
本発明は、遺伝子診断、臨床診断といった法医学分野、あるいは、食品や環境中の微生物検査等において、特に多数のサンプルを迅速に検査することが求められている分野において非常に有用である。

Claims (10)

  1. PCRにより核酸を増幅する工程において、異なる熱変性温度を含む種類以上の熱サイクルを有し、かつ、核酸増幅工程における後の熱サイクルの熱変性温度が、先の熱サイクルの熱変性温度と同じ温度であるか又は低い温度であることを特徴とする核酸増幅方法。
  2. 少なくとも以下の工程(a)及び(b)を含み、かつ、工程(a)及び(b)を併せた熱サイクル数が30回から50回であることを特徴とする請求項1に記載の核酸増幅方法。
    (a)90℃から100℃の間の変性温度を含む熱サイクルを少なくとも5回以上繰り返す工程
    (b)工程(a)続く熱サイクルであって、工程(a)の熱変性温度より2℃から10℃低い熱変性温度を含む熱サイクルを5回以上繰り返す工程
  3. 以下の工程(c)をさらに含み、かつ、工程(a)、(b)及び(c)を併せた熱サイクル数が30回から50回であることを特徴とする請求項2に記載の核酸増幅方法。
    (c)工程(b)に続く熱サイクルであって、工程(b)の熱変性温度より1℃以上低い熱変性温度を含む熱サイクルを5回以上繰り返す工程
  4. 最も高い熱変性温度と最も低い熱変性温度との差が5℃から10℃となる熱サイクルを有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の核酸増幅方法。
  5. 全熱サイクル数が35回から45回であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の核酸増幅方法。
  6. 核酸増幅方法がマルチプレックスPCRである請求項1からのいずれかに記載の核酸増幅法。
  7. 核酸増幅の試料が生体由来である請求項1からのいずれかに記載の核酸増幅法。
  8. 核酸増幅の試料が核酸抽出を行うことなく得られた試料である請求項に記載の核酸増幅法。
  9. 試料が便検体である請求項又はに記載の核酸増幅法。
  10. サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌、赤痢菌からなる群より選択される少なくとも1つの細菌が保有する遺伝子を標的核酸とする請求項1からのいずれかに記載の核酸増幅法。
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