以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る多層基板101の平面図である。図2(A)は図1におけるA−A断面図であり、図2(B)は図1におけるB−B断面図である。図3は多層基板101の分解平面図である。図2(A)および図2(B)において、各部の厚みは誇張して図示している。このことは、以降の各実施形態における断面図についても同様である。また、図3では、構造を分かりやすくするため、コイル導体31A,31B,32A,32Bをハッチングで示している。
多層基板101は、積層体10Aと、ドライバーIC1と、磁気センサ2A,2Bと、積層体10Aに形成されるコイル3A,3B(後に詳述する)と、を備える。ドライバーIC1および磁気センサ2A,2Bは積層体10Aに実装されている。
ドライバーIC1は、コイルの給電を制御することにより、可動体に取り付けられた磁石(後に詳述する)の可動を行うものである。ドライバーIC1は、図1に示すように、複数の実装電極MP1,MP2,MP3,MP4,MP5,MP6,MP7,MP8,MP9,MP10,MP11,MP12を有する。複数の実装電極MP1〜MP12は、ドライバーIC1の実装面(図2(A)および図2(B)におけるドライバーIC1の下面)に形成される矩形の電極である。
磁気センサ2A,2Bは、主に外部からの磁界をセンシングする素子であり、可動体に取り付けられた磁石(後に詳述する。)の移動量を検出する。磁気センサ2A,2Bは、例えばホール効果を利用したホール素子である。
積層体10Aは、長手方向がX軸方向に一致する略直方体であり、互いに対向する第1主面VS1および第2主面VS2を有する。積層体10Aの第1主面VS1には、4つの外部電極P1,P2,P3,P4が形成されている。多層基板101では、この第1主面VS1が実装面である。
積層体10Aは、樹脂材料(熱可塑性樹脂)からなる複数の絶縁基材層11a,12a,13aの順に積層されて形成される。複数の絶縁基材層11a,12a,13aは、それぞれ長手方向がX軸に一致する矩形の平板である。複数の絶縁基材層11a,12a,13aは、例えば液晶ポリマーを主材料とするシートである。
絶縁基材層11aの表面には、導体21A,21B,22A,22Bが形成される。導体21Aは、絶縁基材層11aの第1角(図3における絶縁基材層11aの左下角)付近に配置されるL字形の導体である。導体21Bは、絶縁基材層11aの第2角(図3における絶縁基材層11aの右下角)付近に配置されるL字形の導体である。導体22Aは、絶縁基材層11aの第3角(図3における絶縁基材層11aの左上角)付近に配置されるL字形の導体である。導体22Bは、絶縁基材層11aの第4角(図3における絶縁基材層11aの右上角)付近に配置されるL字形の導体である。導体21A,21B,22A,22Bは、例えばCu箔等の導体パターンである。
また、絶縁基材層11aの裏面には、外部電極P1,P2,P3,P4が形成されている。外部電極P1,P2,P3,P4は、絶縁基材層11aの中央付近に配置された矩形の導体である。外部電極P1,P2,P3,P4は、例えばCu箔等の導体パターンである。
さらに、絶縁基材層11aには、層間接続導体V1,V2,V3,V4が形成されている。
絶縁基材層12aの表面には、コイル導体31A,31B、接続導体61A,61B,63A,63Bおよび導体41,42,43,44,51A,51B,52A,52Bが形成されている。コイル導体31Aは、絶縁基材層12aの中央よりも第1辺(図3における絶縁基材層12aの左辺)寄りの位置に配置された約1.5ターンの矩形スパイラル状の導体である。コイル導体31Bは、絶縁基材層12aの中央よりも第2辺(図3における絶縁基材層12aの右辺)寄りの位置に配置された約1.5ターンの矩形スパイラル状の導体である。接続導体61A,61Bは、絶縁基材層12aの第3辺(図3における絶縁基材層12aの下辺)付近に配置され、X軸方向に延伸する線状の導体である。接続導体63A,63Bは、絶縁基材層12aの第4辺(図3における絶縁基材層12aの上辺)付近に配置され、X軸方向に延伸する線状の導体である。導体41,42,43,44,51A,51B,52A,52Bは、絶縁基材層12aの中央付近に配置された矩形の導体である。コイル導体31A,31B、接続導体61A,61B,63A,63Bおよび導体41,42,43,44,51A,51B,52A,52Bは、例えばCu箔等の導体パターンである。
また、絶縁基材層12aには、層間接続導体V21A,V21B,V22A,V22B,V41,V42,V43,V44および開口AP3A,AP3Bが形成されている。開口AP3Aは、磁気センサ2Aの平面形状に合わせた貫通孔である。開口AP3Bは、磁気センサ2Bの平面形状に合わせた貫通孔である。開口AP3A,AP3Bは、例えばレーザー加工等によって形成される。あるいは、開口AP3A,AP3Bは、パンチング等によって型抜きして形成してもよい。
絶縁基材層13aの表面には、コイル導体32A,32Bおよび接続導体62A,62Bが形成されている。コイル導体32Aは、絶縁基材層13aの中央よりも第1辺(図3における絶縁基材層13aの左辺)寄りの位置に配置された約2ターンの矩形スパイラル状の導体である。コイル導体32Bは、絶縁基材層13aの中央よりも第2辺(図3における絶縁基材層13aの右辺)寄りの位置に配置された約2ターンの矩形スパイラル状の導体である。接続導体62A,62Bは、Y軸方向に延伸する線状の導体である。コイル導体32A,32Bおよび接続導体62A,62Bは、例えばCu箔等の導体パターンである。
また、絶縁基材層13aには、層間接続導体V31A,V31B,V32A,V32Bおよび開口AP1,AP2A,AP2Bが形成されている。開口AP1は、ドライバーIC1の平面形状に合わせた貫通孔である。開口AP2Aは、磁気センサ2Aの平面形状に合わせた貫通孔である。開口AP2Bは、磁気センサ2Bの平面形状に合わせた貫通孔である。開口AP1,AP2A,AP2Bは、例えばレーザー加工等によって形成される。あるいは、開口AP1,AP2A,AP2Bは、パンチング等によって型抜きして形成してもよい。
本実施形態では、図2(A)および図2(B)に示すように、ドライバーIC1の一部が積層体10Aに埋設されており、ドライバーIC1の実装面(図2(A)におけるドライバーIC1の下面)が、絶縁基材層12aの表面(図2(A)における絶縁基材層12aの上面)に対向している。ドライバーIC1の複数の実装電極(図1に示す実装電極MP1〜MP12)は、導電性接合材4を介して、絶縁基材層12aの表面に形成された導体(図3に示す接続電極CP1A,CP1B,CP2A,CP2Bおよび導体41,42,43,44,51A,51B,52A,52B)にそれぞれ接続される。導電性接合材4は、例えばはんだ等である。
図2(A)、図2(B)および図3等に示すように、コイル導体31Aの一端は、層間接続導体V31Aを介して、コイル導体32Aの一端に接続される。このように、複数の絶縁基材層12a,13aにそれぞれ形成されるコイル導体31A,32A,33Aを含んで約3.5ターンのコイル3Aが構成される。コイル3Aは、図2(B)に示すように、複数の絶縁基材層11a,12a,13aの積層方向(Z軸方向)に沿った巻回軸AX1Aを有する。
コイル3Aの第1端E1Aおよび第2端E2Aは、ドライバーIC1の実装電極にそれぞれ導通している。具体的には、コイル3Aの第1端E1A(コイル導体31Aの他端)は、接続導体61Aの一端に接続される。接続導体61Aの他端(接続電極CP1A)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図1に示す実装電極MP5)に接続される。また、コイル3Aの第2端E2A(コイル導体33Aの他端)は、接続導体62Aの一端に接続され、接続導体62Aの他端は、層間接続導体V32Aを介して接続導体63Aの一端に接続される。接続導体63Aの他端(接続電極CP2A)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図1における実装電極MP6)に接続される。図2(A)等に示すように、導電性接合材4を介するコイル3Aの第1端E1Aと実装電極(MP5)との間の接続箇所は、一箇所である。
また、図2(A)、図2(B)および図3等に示すように、コイル導体31Bの一端は、層間接続導体V31Bを介して、コイル導体32Bの一端に接続される。このように、複数の絶縁基材層12a,13aにそれぞれ形成されるコイル導体31B,32B,33Bを含んで約3.5ターンのコイル3Bが構成される。図2(B)に示すように、コイル3BはZ軸方向に沿った巻回軸AX1Bを有する。
また、コイル3Bの第1端E1Bおよび第2端E2Bは、ドライバーIC1の実装電極にそれぞれ導通している。具体的には、コイル3Bの第1端E1B(コイル導体31Bの他端)は、接続導体61Bの一端に接続される。接続導体61Bの他端(接続電極CP1B)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図1に示す実装電極MP7)に接続される。また、コイル3Bの第2端E2B(コイル導体33Bの他端)は、接続導体62Aの一端に接続され、接続導体62Bの他端は、層間接続導体V32Bを介して、接続導体63Bの一端に接続される。接続導体63Bの他端(接続電極CP2B)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図1における実装電極MP8)に接続される。図2(A)等に示すように、導電性接合材4を介するコイル3Bの第1端E1Bと実装電極(MP7)との間の接続箇所は、一箇所である。
なお、本実施形態では、コイル3Aの巻回軸AX1A、コイル3Bの巻回軸AX1Bが、Z軸方向に一致する例を示したが、コイル3Aの巻回軸AX1A(またはコイル3Bの巻回軸AX1B)とZ軸方向とが厳密に一致する構成に限定されるものではない。本明細書において「複数の絶縁基材層の積層方向に沿った巻回軸」とは、例えば、コイル3Aの巻回軸AX1A(または、コイル3Bの巻回軸AX1B)がZ軸方向に対して−30°から+30°の範囲である場合を含む。
磁気センサ2Aは、ドライバーIC1に接続される。具体的には、磁気センサ2Aは、実装面(図2(A)における磁気センサ2Aの下面)に端子を有しており、この磁気センサ2Aの端子が、導電性接合材4を介して、導体21A,22Aの一端にそれぞれ接続される。導体21Aの他端は、導体51A、層間接続導体V21Aおよび導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図1における実装電極MP9)に接続される。また、導体22Aの他端は、導体52A、層間接続導体V22Aおよび導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図1における実装電極MP10)に接続される。
また、磁気センサ2Bは、ドライバーIC1に接続される。具体的には、磁気センサ2Bは、実装面(図2(A)における磁気センサ2Bの下面)に端子を有しており、この磁気センサ2Bの端子が、導電性接合材4を介して、導体21B,22Bの一端にそれぞれ接続される。導体21Bの他端は、導体51B、層間接続導体V21Bおよび導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図1における実装電極MP11)に接続される。また、導体22Bの他端は、導体52B、層間接続導体V22Bおよび導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図1における実装電極MP12)に接続される。
なお、本明細書では、磁気センサが有する端子を2つで記載しているが、3つまたは4つであってもよい。
また、外部電極P1,P2,P3,P4は、それぞれドライバーIC1の実装電極に接続されている。具体的には、外部電極P1は、層間接続導体V1,V41を介して導体41に接続され、この導体41が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極(図1に示す実装電極MP1)に接続される。外部電極P2は、層間接続導体V2,V42を介して導体42に接続され、この導体42が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極(図1に示す実装電極MP2)に接続される。外部電極P3は、層間接続導体V3,V43を介して導体43に接続され、この導体43が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極(図1に示す実装電極MP3)に接続される。外部電極P4は、層間接続導体V4,V44を介して導体44に接続され、この導体44が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極(図1における実装電極MP4)に接続される。
多層基板101は、例えば次のように用いられる。図4は、多層基板101の使用状態を示す断面図である。
図4に示す磁石5A,5Bは、可動体(不図示)に取り付けられている。コイル3A,3Bに所定の電流を流すと、コイル3A,3Bから放射される磁界によって、磁石5A,5Bは積層方向(Z軸方向)の直交方向(Y軸方向)に変位する(図4における白抜き矢印参照。)。磁気センサ2A,2Bは、磁石5A,5Bが変位したときの磁界の変化をセンシングする。
本実施形態に係る多層基板101によれば、次のような効果を奏する。
(a)多層基板101では、図2(A)に示すように、コイル3A,3Bが積層体10Aに形成され、導電性接合材4を介するコイル3Aの第1端E1A(コイル導体31Aの他端)と実装電極(MP5)との接続箇所は、一箇所である。また、導電性接合材4を介するコイル3Bの第1端E1B(コイル導体31Bの他端)と実装電極(MP7)との接続箇所は、一箇所である。この構成により、導電性接合材4を介するコイルの第1端と実装電極との接続箇所が二箇所以上ある場合(例えば、導電性接合材を介して、ドライバーICとチップ部品であるコイルとをそれぞれ基板等に実装する場合)に比べ、ドライバーIC1とコイル3A,3Bとの位置関係はずれ難くなる。したがって、この構成により、コイルに対するドライバーIC1の位置関係のずれに起因する、発生磁界のばらつきを抑制できる。
(b)また、多層基板101では、積層体10Aを形成する複数の絶縁基材層11a,12a,13aが、樹脂材料からなる。図1および図2(B)に示すように、ドライバーIC1の少なくとも一部は、コイル形成領域CE1A(コイル3Aの形成領域)とコイル形成領域CE1B(コイル3Bの形成領域)との間に配置されている。一般的にコイル等の導体は、樹脂材料からなる絶縁基材層よりも相対的に剛性が高い。すなわち、多層基板101では、ドライバーIC1が、樹脂材料からなる絶縁基材層よりも相対的に剛性の高い部材で挟まれる(囲まれる)ため、積層体10Aに外力が加わった場合でもドライバーIC1とコイルとの位置関係のずれは抑制される。
(c)多層基板101では、複数の絶縁基材層11a,12a,13aが熱可塑性樹脂の樹脂材料からなる。また、ドライバーIC1は、複数の絶縁基材層11a,12a,13aによって形成されるキャビティ(後に詳述する。)内に収納されるが、この構成により、積層体10Aを形成する際の加熱加圧時に、流動した絶縁基材層の一部がキャビティ内に流入する。そのため、上記キャビティ内の隙間の発生が抑制され、一部が積層体10Aの内部に埋設されるドライバーIC1の固定不良は生じ難い。したがって、ドライバーIC1と積層体10A内の導体との電気的な接続信頼性は高まる。
また、この構成によれば、後に詳述するように、積層した複数の絶縁基材層11a,12a,13aを一括プレスすることにより、多層基板101(積層体10A)を容易に形成できるため、製造工程の工数が削減され、コストを低く抑えることができる。
なお、多層基板101では、ドライバーIC1の一部および磁気センサ2A,2Bの一部が、積層体10Aの内部に埋設される例を示したが、この構成に限定されるものではない。ドライバーIC1および磁気センサ2A,2Bは、積層体10Aを形成した後に実装してもよい。例えば、剛性の低いパッケージで形成される磁気センサが積層体10Aの内部に埋設されている場合には、積層体10Aに外力が加わることで生じる応力が伝わりやすくなり、磁気センサの特性が変化する虞がある。そのため、応力が伝わり難いように、ドライバーICまたは磁気センサを積層体に埋設しない方が良い場合もある。
本実施形態に係る多層基板101は、例えば次のような工程で製造される。図5は多層基板101の製造工程を順に示す断面図である。なお、図5では、説明の都合上ワンチップ(個片)での製造工程で説明するが、実装の多層基板の製造工程は集合基板状態で行われる。
図5中の(1)に示すように、まず複数の絶縁基材層11a,12a,13aを準備する。絶縁基材層11a,12a,13a、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の熱可塑性樹脂シートである。
その後、絶縁基材層11a,12a,13aに、コイル導体31A,31B,32A,32B等、接続導体、外部電極P2,P4等および導体21A,21B,42,44等を形成する。
具体的には、集合基板状態の絶縁基材層11aの両主面に、金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その後、その金属箔をフォトリソグラフィでパターンニングすることで、外部電極P2,P4等および導体21A,21B等を形成する。また、集合基板状態の絶縁基材層12aの一方主面に、金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その後、その金属箔をフォトリソグラフィでパターンニングすることで、コイル導体31A,31B等、接続導体および導体42,44等を形成する。また、集合基板状態の絶縁基材層13aの一方主面に、金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その後、その金属箔をフォトリソグラフィでパターンニングすることで、コイル導体32A,32Bおよび接続導体を形成する。
次に、絶縁基材層12aに、ドライバーIC1、磁気センサ2A,2Bを実装する。具体的には、ドライバーIC1は実装面(図5におけるドライバーIC1の下面)に複数の実装電極を有しており、これら複数の実装電極を、導電性接合材4を介して、絶縁基材層12aの表面に形成された導体(図3に示す接続電極CP1A,CP1B,CP2A,CP2Bおよび導体41,42,43,44,51A,51B,52A,52B)に接続する。また、磁気センサ2A,2Bは実装面(図5における磁気センサ2A,2Bの下面)に端子を有しており、これら端子を、導電性接合材4を介して、絶縁基材層12aの表面に形成された導体に接続する。なお、導電性接合材4は、後の加熱加圧時に溶融して接続不良を起こす虞があるため、加熱加圧時の温度よりも融点(溶融温度)が高い材料であることが好ましい。
ドライバーIC1は、コイルの給電を制御することにより、可動体に取り付けられた磁石の可動を行うものである。磁気センサ2A,2Bは、例えばホール効果を利用したホール素子である。
なお、複数の絶縁基材層11a,12a,13aには、層間接続導体V2,V4,V31A,V31B,V42,V44等が形成される。層間接続導体は、絶縁基材層11a,12a,13aにレーザー等で貫通孔を設けた後、Cu,Ag,Sn,Ni,Mo等のうち1以上もしくはそれらの合金を含む導電性ペーストを配設(充填)し、後の加熱加圧で硬化(固化)させることによって設けられる。そのため、層間接続導体は、後の加熱加圧時の温度よりも融点(溶融温度)が低い材料とする。
また、絶縁基材層12a,13aには、開口AP1,AP2A,AP2B,AP3A,AP3Bを形成する。開口AP1はドライバーIC1の平面形状に合わせた貫通孔である。開口AP2A,AP3Aは磁気センサ2Aの平面形状に合わせた貫通孔である。開口AP2B,AP3Bは磁気センサ2Bの平面形状に合わせた貫通孔である。開口AP1,AP2A,AP2B,AP3A,AP3Bは、例えばレーザー加工等によって形成される。あるいは、開口AP1,AP2A,AP2B,AP3A,AP3Bは、パンチング等によって型抜きして形成してもよい。
次に、図5中の(2)(3)に示すように、絶縁基材層11a,12a,13aの順に積層する。このとき、積層した複数の絶縁基材層11a,12a,13aの内部にドライバーIC1の形状に沿ったキャビティが構成され、このキャビティ内にドライバーIC1が収納される。また、積層した複数の絶縁基材層11a,12a,13aの内部に、磁気センサ2A,2Bの形状に沿ったキャビティが構成され、このキャビティ内に磁気センサ2A,2Bが収納される。
複数の絶縁基材層11a,12a,13aを積層した後に、積層した絶縁基材層11a,12a,13aを加熱加圧することにより、集合基板状態の積層体10Aを形成する。積層体10Aの形成時(加熱加圧時)に、絶縁基材層12a,13aの一部は、上記キャビティ内に流入し、ドライバーIC1の一部、磁気センサ2A,2Bの一部は、熱可塑性樹脂によって覆われる。
最後に、集合基板から個々の個片に分離して、多層基板101を得る。
上記製造方法により、コイルに対するドライバーIC1の位置関係のずれに起因する、発生磁界のばらつきを抑制した多層基板を容易に製造できる。
また、上記製造方法によれば、積層した複数の絶縁基材層11a,12a,13aを一括プレスすることにより、多層基板101(積層体10A)を容易に形成できるため、製造工程の工数が削減され、コストを低く抑えることができる。
なお、上記製造方法では、加熱加圧する前の絶縁基材層12aに、ドライバーIC1および磁気センサ2A,2Bを実装したが、この製造方法に限定されるものではない。ドライバーIC1および磁気センサ2A,2Bは、積層体10Aを形成した後に実装してもよい。
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、ドライバーICの実装電極を、はんだ以外の導電性接合材を介して、絶縁基材層に形成される導体に接続した多層基板の例を示す。
図6は、第2の実施形態に係る多層基板102の平面図である。図7(A)は図6におけるC−C断面図であり、図7(B)は図6におけるD−D断面図である。図8は、多層基板101の分解平面図である。また、図8では、構造を分かりやすくするため、コイル導体31A,31B,32A,32Bをハッチングで示している。
多層基板102は、積層体10Bと、ドライバーIC1と、磁気センサ2A,2Bと、積層体10Bに形成されるコイル3A,コイル3B(後に詳述する)と、を備える。
多層基板102は、積層体10Bの積層数、および複数の絶縁基材層に形成される導体の構成が、第1の実施形態に係る多層基板101と異なる。その他の構成については、多層基板101と実質的に同じである。
以下、第1の実施形態に係る多層基板101と異なる部分について説明する。
積層体10Aは、樹脂材料(熱可塑性樹脂)からなる複数の絶縁基材層11b,12b,13b,14bの順に積層されて形成される。複数の絶縁基材層11b,12b,13b,14bは、第1の実施形態で説明した絶縁基材層11a,12a,13aと同じく、例えば液晶ポリマーを主材料とするシートである。
絶縁基材層11bの裏面には、外部電極P1,P2,P3,P4および導体21A,21B,22A,22Bが形成される。外部電極P1,P2,P3,P4および導体21A,21B,22A,22Bの構成は、第1の実施形態で説明したものと実質的に同じである。
また、絶縁基材層11bには、層間接続導体V1,V2,V3,V4,V11A,V11B,V12A,V12B,V13A,V13B,V14A,V14Bが形成されている。
絶縁基材層12bの裏面には、コイル導体31A,31B、接続導体61A,61B,63A,63Bおよび導体41,42,43,44,51A,51B,52A,52Bが形成されている。コイル導体31A,31B、接続導体61A,61B,63A,63Bおよび導体41,42,43,44,51A,51B,52A,52Bの構成は、第1の実施形態で説明したものと実質的に同じである。
また、絶縁基材層12bには、層間接続導体V21A,V21B,V22A,V22B,V31A,V31B,V32A,V32B,V33A,V33B,V34A,V34B,V41,V42,V43,V44および開口AP3A,AP3Bが形成されている。開口AP3A,AP3Bの構成は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
絶縁基材層13bの裏面には、コイル導体32A,32Bおよび接続導体62A,62Bが形成されている。コイル導体32A,32Bおよび接続導体62A,62Bの構成は、第1の実施形態で説明したものと実質的に同じである。
また、絶縁基材層13bには、開口AP1,AP2A,AP2Bが形成されている。開口AP1,AP2A,AP2Bの構成は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
本実施形態では、図7(A)および図7(B)に示すように、ドライバーIC1の一部は積層体10Bに埋設されており、ドライバーIC1の実装面(図7(A)におけるドライバーIC1の下面)が、絶縁基材層12bの表面(図7(A)における絶縁基材層12bの上面)に対向している。ドライバーIC1の複数の実装電極(図6に示す実装電極MP1〜MP12)は、層間接続導体V21A,V21B,V22A,V22B,V31A,V31B,V34A,V34B,V41,V42,V43,V44を介して、絶縁基材層12bの裏面に形成された導体(図8に示す接続導体61A,61B,63A,63Bおよび導体41,42,43,44,51A,51B,52A,52B)にそれぞれ接続される。
図7(A)、図7(B)および図8等に示すように、コイル導体31Aの一端は、層間接続導体V32Aを介して、コイル導体32Aの一端に接続される。このように、複数の絶縁基材層12b,13bにそれぞれ形成されるコイル導体31A,32A,33Aを含んで約3.5ターンのコイル3Aが構成される。
コイル3Aの第1端E1Aおよび第2端E2Aは、ドライバーIC1の実装電極にそれぞれ導通している。具体的には、コイル3Aの第1端E1A(コイル導体31Aの他端)は、接続導体61Aの一端に接続される。接続導体61Aの他端(接続電極CP1A)は、層間接続導体V31Aを介して、ドライバーIC1の実装電極(図6に示す実装電極MP5)に接続される。また、コイル3Aの第2端E2A(コイル導体33Aの他端)は、接続導体62Aの一端に接続され、接続導体62Aの他端(接続電極CP2A)は、層間接続導体V33Aを介して接続導体63Aの一端に接続される。接続導体63Aの他端は、層間接続導体V34Aを介して、ドライバーIC1の実装電極(図6における実装電極MP6)に接続される。
また、図7(A)、図7(B)および図8等に示すように、コイル導体31Bの一端は、層間接続導体V32Bを介して、コイル導体32Bの一端に接続される。このように、複数の絶縁基材層12b,13bにそれぞれ形成されるコイル導体31B,32B,33Bを含んで約3.5ターンのコイル3Bが構成される。
また、コイル3Bの第1端E1Bおよび第2端E2Bは、ドライバーIC1の実装電極にそれぞれ導通している。具体的には、コイル3Bの第1端E1B(コイル導体31Bの他端)は、接続導体61Bの一端に接続される。接続導体61Bの他端(接続電極CP1B)は、層間接続導体V31Bを介して、ドライバーIC1の実装電極(図1に示す実装電極MP7)に接続される。また、コイル3Bの第2端E2B(コイル導体33Bの他端)は、接続導体62Bの一端に接続され、接続導体62Bの他端は、層間接続導体V33Bを介して接続導体63Bの一端に接続される。接続導体63Bの他端(接続電極CP2B)は、層間接続導体V34Bを介して、ドライバーIC1の実装電極(図1における実装電極MP8)に接続される。
層間接続導体V31A,V31B,V34A,V34Bは、後に詳述するように、絶縁基材層12bを貫通する孔内に充填される導電性接合材である。図7(A)等に示すように、層間接続導体(導電性接合材)を介するコイル3Aの第1端E1Aと実装電極MP5との間の接続箇所は、一箇所である。また、層間接続導体(導電性接合材)を介するコイル3Bの第1端E1Bと実装電極MP4との間の接続箇所は、一箇所である。
磁気センサ2Aの端子は、ドライバーIC1に接続される。具体的には、磁気センサ2Aの端子が、層間接続導体V11A,V13Aを介して、導体21A,22Aの一端にそれぞれ接続される。導体21Aの他端は、導体51Aおよび層間接続導体V12A,V21Aを介して、ドライバーIC1の実装電極(図6における実装電極MP9)に接続される。また、導体22Aの他端は、導体52Aおよび層間接続導体V14A,V22Aを介して、ドライバーIC1の実装電極(図6における実装電極MP10)に接続される。
また、磁気センサ2Bの端子は、ドライバーIC1に接続される。具体的には、磁気センサ2Bの端子が、層間接続導体V11B,V13Bを介して、導体21B,22Bの一端にそれぞれ接続される。導体21Bの他端は、導体51Bおよび層間接続導体V12B,V21Bを介して、ドライバーIC1の実装電極(図6における実装電極MP11)に接続される。また、導体22Bの他端は、導体52Bおよび層間接続導体V14B,V22Bを介して、ドライバーIC1の実装電極(図6における実装電極MP12)に接続される。
また、外部電極P1,P2,P3,P4は、それぞれドライバーIC1の実装電極に接続されている。具体的には、外部電極P1は、導体41および層間接続導体V1,V41を介して、ドライバーIC1の実装電極(図6に示す実装電極MP1)に接続される。外部電極P2は、導体42および層間接続導体V2,V42を介して、ドライバーIC1の実装電極(図6に示す実装電極MP2)に接続される。外部電極P3は、導体43および層間接続導体V3,V43を介して、ドライバーIC1の実装電極(図6に示す実装電極MP3)に接続される。外部電極P4は、導体44および層間接続導体V4,V44を介して、ドライバーIC1の実装電極(図6における実装電極MP4)に接続される。
本実施形態に係る多層基板102は、例えば次のような工程で製造される。図9は多層基板102の製造工程を順に示す断面図である。なお、図9では、説明の都合上ワンチップ(個片)での製造工程で説明するが、実装の多層基板の製造工程は集合基板状態で行われる。
図9中の(1)に示すように、まず複数の絶縁基材層11b,12b,13b,14bを準備する。絶縁基材層11b,12b,13b,14bは、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の熱可塑性樹脂シートである。
その後、絶縁基材層11b,12b,13bに、コイル導体31A,31B,32A,32B等、外部電極P2,P4等および導体21A,21B,42,44等を形成する。
具体的には、集合基板状態の絶縁基材層11bの他方主面に、金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その後、その金属箔をフォトリソグラフィでパターンニングすることで、外部電極P2,P4等および導体21A,21B等を形成する。また、集合基板状態の絶縁基材層12bの他方主面に、金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その後、その金属箔をフォトリソグラフィでパターンニングすることで、コイル導体31A,31B等、接続導体および導体42,44等を形成する。また、集合基板状態の絶縁基材層13bの他方主面に、金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その後、その金属箔をフォトリソグラフィでパターンニングすることで、コイル導体32A,32B、接続導体を形成する。
なお、複数の絶縁基材層11b,12bには、層間接続導体V2,V4,V11A,V11B,V32A,V32B,V42,V44等が形成される。層間接続導体は、絶縁基材層11b,12bにレーザー等で貫通孔を設けた後、Cu,Ag,Sn,Ni,Mo等のうち1以上もしくはそれらの合金を含む導電性ペーストを配設(充填)し、後の加熱加圧で硬化(固化)させることによって設けられる。そのため、層間接続導体は、後の加熱加圧時の温度よりも融点(溶融温度)が低い材料とする。
また、絶縁基材層12b,13bには、開口AP1,AP2A,AP2B,AP3A,AP3Bを形成する。開口AP1はドライバーIC1の平面形状に合わせた貫通孔である。開口AP2A,AP3Aは磁気センサ2Aの平面形状に合わせた貫通孔である。開口AP2B,AP3Bは磁気センサ2Bの平面形状に合わせた貫通孔である。
次に、図9中の(2)に示すように、絶縁基材層11b,12b,13b,14bの順に積層する。このとき、絶縁基材層13bに形成された開口AP1と複数の絶縁基材層12b,14bとによって、積層した複数の絶縁基材層11b,12b,13b,14bの内部にドライバーIC1の形状に沿ったキャビティが構成され、このキャビティ内にドライバーIC1が収納される。また、絶縁基材層12b,13bに形成された開口AP2B,AP3Bと複数の絶縁基材層11b,14bによって、積層した複数の絶縁基材層11b,12b,13b,14bの内部に、磁気センサ2A,2Bの形状に沿ったキャビティが構成され、このキャビティ内に磁気センサ2A,2Bが収納される。
その後、図9中の(2)(3)に示すように、積層した絶縁基材層11b,12b,13b,14bを加熱加圧(一括プレス)することにより、集合基板状態の積層体10Bを形成する。積層体10Bの形成時(加熱加圧時)に、絶縁基材層12b,13b,14bの一部は、上記キャビティ内に流入し、ドライバーIC1全体、磁気センサ2A,2B全体は熱可塑性樹脂によって覆われる。
最後に、集合基板から個々の個片に分離して、図9中の(3)に示す多層基板102を得る。なお、積層体10Bの第2主面VS2には、導体21A,21B等の導体を被覆する保護膜(例えば、ソルダーレジスト膜やカバーレイフィルム等)を形成してもよい。
本実施形態に係る多層基板102によれば、第1の実施形態で述べた効果以外に、次のような効果を奏する。
(a)多層基板102では、ドライバーIC1全体が熱可塑性樹脂によって覆われている。そのため、ドライバーIC1の一部が熱可塑性樹脂で覆われる構成に比べて、ドライバーIC1を収納するキャビティ内の隙間の発生はさらに抑制される。したがって、この構成により、ドライバーIC1と積層体10B内の導体との電気的な接続信頼性がさらに高まる。
(b)また、多層基板102では、磁気センサ2A,2B全体が熱可塑性樹脂によって覆われている。そのため、磁気センサ2A,2Bの一部が熱可塑性樹脂で覆われる構成に比べて、磁気センサ2A,2Bを収納するキャビティ内の隙間の発生はさらに抑制される。したがって、この構成により、磁気センサ2A,2Bと積層体10B内の導体との電気的な接続信頼性がさらに高まる。
(c)多層基板102では、はんだ等の導電性接合材を介して、ドライバーIC1、磁気センサ2A,2Bを接続する必要がない。したがって、上記製造方法によれば、第1の実施形態で説明した製造方法と比べて、製造工程の工数がさらに削減され、コストをより低く抑えることができる。
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、コイルの構成が第1の実施形態とは異なる例を示す。
図10(A)は第3の実施形態に係る多層基板103の平面図であり、図10(B)は図10(A)におけるE−E断面図である。図11は、多層基板103の分解平面図である。
多層基板103は、積層体10Cと、ドライバーIC1と、磁気センサ2A,2Bと、積層体10Bに形成される複数のコイル3B,コイル3B(後に詳述する)と、を備える。
多層基板102は、コイル3A,3Bの構成が、第1の実施形態に係る多層基板101と異なる。その他の構成については、多層基板101と実質的に同じである。
以下、第1の実施形態に係る多層基板101と異なる部分について説明する。
積層体10Cは、樹脂材料(熱可塑性樹脂)からなる複数の絶縁基材層11c,12c,13cの順に積層されて形成される。複数の絶縁基材層11c,12c,13cの構成は、第1の実施形態で説明した絶縁基材層11a,12a,13aと同じである。
絶縁基材層11cの表面には、導体21A,21B,22A,22Bが形成される。絶縁基材層11cの裏面には、外部電極P1,P2,P3,P4が形成される。導体21A,21B,22A,22Bおよび外部電極P1,P2,P3,P4の構成は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
また、絶縁基材層11cには、層間接続導体V1,V2,V3,V4が形成されている。
絶縁基材層12cの表面には、コイル導体30A,30B(コイル3A,3B)、接続導体61A,61B,62A,62Bおよび導体41,42,43,44,51A,51B,52A,52Bが形成されている。コイル導体30A,30Bは、絶縁基材層12cの長手方向に沿ってミアンダライン状に形成された導体である。コイル導体30Aは、絶縁基材層12cの中央より第1辺(図11における絶縁基材層12cの左辺)寄りの位置に配置されている。コイル導体30Bは、絶縁基材層12cの中央より第2辺(図11における絶縁基材層12cの右辺)寄りの位置に配置されている。接続導体61A,61Bは、絶縁基材層12cの第3辺(図11における絶縁基材層12cの下辺)付近に配置され、X軸方向に延伸する線状の導体である。接続導体62A,62Bは、絶縁基材層12cの第4辺(図11における絶縁基材層12cの上辺)付近に配置され、概略的にX軸方向に延伸する線状の導体である。導体41,42,43,44,51A,51B,52A,52Bの構成は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
また、絶縁基材層12cには、層間接続導体V21A,V21B,V22A,V22B,V41,V42,V43,V44および開口AP3A,AP3Bが形成されている。開口AP3A,AP3Bの構成は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
絶縁基材層13cには、開口AP1,AP2A,AP2Bが形成されている。開口AP1,AP2A,AP2Bの構成は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
本実施形態では、図10(B)に示すように、ドライバーIC1の一部が積層体10Cに埋設されており、ドライバーIC1の実装面(図10(B)におけるドライバーIC1の下面)が、絶縁基材層12cの表面(図10(B)における絶縁基材層12cの上面)に対向している。ドライバーIC1の複数の実装電極(図10に示す実装電極MP1〜MP12)は、導電性接合材4を介して、絶縁基材層12cの表面に形成された導体(図11に示す接続電極CP1A,CP1B,CP2A,CP2Bおよび導体41,42,43,44,51A,51B,52A,52B)にそれぞれ接続される。
コイル3A(コイル導体30A)の第1端E1Aおよび第2端E2Aは、ドライバーIC1の実装電極にそれぞれ導通している。具体的には、コイル3Aの第1端E1A(コイル導体30Aの一端)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図10(A)に示す実装電極MP5)に接続される。また、コイル3Aの第2端E2A(コイル導体30Aの他端)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図10における実装電極MP6)に接続される。図10(B)および図11に示すように、導電性接合材4を介するコイル3Aの第1端E1Aと実装電極(MP5)との間の接続箇所は、一箇所である。また、導電性接合材4を介するコイル3Aの第2端E2Aと実装電極(MP6)との間の接続箇所は、一箇所である。
また、コイル3B(コイル導体30B)の第1端E1Bおよび第2端E2Bは、ドライバーIC1の実装電極にそれぞれ導通している。具体的には、コイル3Bの第1端E1B(コイル導体30Bの一端)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図10(A)に示す実装電極MP7)に接続される。また、コイル3Bの第2端E2B(コイル導体30Bの他端)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図10(B)における実装電極MP8)に接続される。図10(B)および図11に示すように、導電性接合材4を介するコイル3Bの第1端E1Bと実装電極(MP7)との間の接続箇所は、一箇所である。また、導電性接合材4を介するコイル3Bの第2端E2Bと実装電極(MP8)との間の接続箇所は、一箇所である。
本実施形態に係る多層基板103によれば、第1の実施形態で述べた効果以外に、次のような効果を奏する。(a)多層基板103では、導電性接合材4を介するコイル3Aの第2端E2A(コイル導体30Aの他端)と実装電極(MP6)との接続箇所が、一箇所である。また、導電性接合材4を介するコイル3Bの第2端E2B(コイル導体30Bの他端)と実装電極(MP8)との接続箇所が、一箇所である。この構成では、導電性接合材を介するコイルの第1端と実装電極との接続箇所、および導電性接合材を介するコイルの第2端と実装電極との接続箇所が、いずれも一箇所となる。そのため、コイル3A,3Bに対するドライバーIC1の位置関係のずれがさらに抑制される。
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、コイルの構成が以上の示した各実施形態とは異なる例を示す。
図12(A)は第4の実施形態に係る多層基板104の斜視図であり、図12(B)は多層基板104の分解斜視図である。図13(A)は多層基板104の平面図であり、図13(B)は図13(B)におけるF−F断面図である。図14は、多層基板104の分解平面図である。なお、図14では、構造を分かりやすくするため、第1コイル部LP1(コイル導体31A,32A)をハッチングで示しており、第2コイル部LP2(コイル導体31B,32B)をクロスハッチングで示している。
多層基板104は、積層体10Dと、ドライバーIC1と、磁気センサ2A,2Bと、積層体10Dに形成されるコイル3(後に詳述する)と、を備える。
多層基板104は、コイル3の構成が、第1の実施形態に係る多層基板101と異なる。また、多層基板104は、ドライバーIC1、磁気センサ2A,2Bが、積層体10Dの第2主面VS2に実装されている点で、多層基板101と異なる。その他の構成については、多層基板101と実質的に同じである。
以下、第1の実施形態に係る多層基板101と異なる部分について説明する。
積層体10Dは、樹脂材料(熱可塑性樹脂)からなる複数の絶縁基材層11d,12dおよび保護層6の順に積層されて形成される。複数の絶縁基材層11d,12dの構成は、第1の実施形態で説明した絶縁基材層11a,12a,13aと同じである。保護層6は、例えばソルダーレジスト膜やカバーレイフィルム等である。
絶縁基材層11dの表面には、コイル導体32A,32Bおよび接続導体62が形成される。コイル導体32Aは、絶縁基材層11dの中央よりも第1辺(図14における絶縁基材層11dの左辺)寄りの位置に配置された約2ターンの矩形スパイラル状の導体である。コイル導体32Bは、絶縁基材層11dの中央よりも第2辺(図14における絶縁基材層11dの右辺)寄りの位置に配置された約2ターンの矩形スパイラル状の導体である。コイル導体32Aおよびコイル導体32Bの巻回方向は逆である。接続導体62は、線状の導体である。図14に示すように、コイル導体32Aの一端は、接続導体62を介して、コイル導体32Bの一端に接続されている。コイル導体32A,32Bおよび接続導体62は、例えばCu箔等の導体パターンである。
絶縁基材層11dの裏面には、外部電極P1,P2,P3,P4が形成されている。外部電極P1,P2,P3,P4は、絶縁基材層11dの第1角(図14における絶縁基材層11dの左下角)付近に配置される矩形の導体である。
また、絶縁基材層11dには、層間接続導体V1,V2,V3,V4が形成されている。
絶縁基材層12dの表面には、コイル導体31A,31B、接続導体61,63および導体41,42,43,44,21A,21B,22A,22Bが形成されている。コイル導体31Aは、絶縁基材層12dの中央より第1辺(図14における絶縁基材層12dの左辺)寄りの位置に配置された約1.5ターンの矩形スパイラル状の導体である。コイル導体31Bは、絶縁基材層12dの中央より第2辺(図14における絶縁基材層12dの右辺)寄りの位置に配置された約1.5ターンの矩形スパイラル状の導体である。接続導体61,63は、線状の導体である。導体21A,22Aは、絶縁基材層12dの第1角(図14における絶縁基材層12dの左下角)付近に配置されるL字形の導体である。導体21A,22Aは、概略的に並走している。導体21B,22Bは、絶縁基材層12dの第2角(図14における絶縁基材層12dの右下角)付近に配置されるL字形の導体である。導体21B,22Bは、概略的に並走している。導体41,42,43,44は、絶縁基材層12dの第1角付近に配置される矩形の導体である。コイル導体31A,31Bおよび導体21A,21B,22A,22B,41,42,43,44は、例えばCu箔等の導体パターンである。
本実施形態では、この接続導体61が本発明における「第1接続導体」に相当する。
保護層6は、絶縁基材層12dの表面(第2主面VS2側の面)の略全面に形成され、絶縁基材層12dの表面に形成される導体を被覆する樹脂膜である。
保護層6は、接続導体61の一端(接続電極CP1)、接続導体63の一端(接続電極CP2)、導体21Aの一端(電極部71A)、導体22Aの一端(電極部81A)、導体21Bの一端(電極部71B)、導体22Bの一端(電極部81B)、および導体41,42,43,44に応じた位置に複数の開口部OP1を有する。そのため、絶縁基材層12dの上面に保護層6が形成されることにより、接続電極CP1,CP2、電極部71A,71B,81A,81Bおよび導体41,42,43,44が第1主面VS1から露出する。
また、保護層6は、導体21Aの他端(電極部72A)および導体22Aの他端(電極部82A)に応じた位置に複数の開口部OP2を有し、導体21Bの他端(電極部72B)および導体22Bの他端(電極部82B)に応じた位置に複数の開口部OP3を有する。そのため、絶縁基材層12dの上面に保護層6が形成されることにより、電極部72A,72B,82A,82Bが第1主面VS1から露出する。
本実施形態では、図12(A)、図12(B)および図13(B)に示すように、ドライバーIC1が積層体10Dの第2主面VS2に実装されている。ドライバーIC1の複数の実装電極(図13(A)に示す実装電極MP1〜MP10)は、導電性接合材4を介して、第2主面VS2から露出する導体(図14に示す接続電極CP1,CP2および電極部71A,71B,81A,81Bおよび導体41,42,43,44)にそれぞれ接続される。
図14等に示すように、コイル導体31Aの一端は、層間接続導体V31Aを介して、コイル導体32Aの他端に接続される。本実施形態では、複数の絶縁基材層11d,12dにそれぞれ形成されるコイル導体31A,32Aを含んで約3.5ターンの第1コイル部LP1が構成される。また、コイル導体31Bの一端は、層間接続導体V31Bを介して、コイル導体32Bの他端に接続される。本実施形態では、複数の絶縁基材層11d,12dにそれぞれ形成されるコイル導体31B,32Bを含んで約3.5ターンの第2コイル部LP2が構成される。第1コイル部LP1の一端(コイル導体32Aの一端)は、接続導体62を介して、第2コイル部LP2の一端(コイル導体32Bの一端)に接続されている。このように、本実施形態では、第1コイル部LP1と第2コイル部LP2とが直列に接続されている。
図13(B)等に示すように、本実施形態では、第1コイル部LP1、第2コイル部LP2および接続導体62によってコイル3が構成される。
図14に示すように、コイル3の第1端E1(コイル導体31Aの他端)は、接続導体61の一端に接続される。接続導体61の他端(接続電極CP1)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図13(A)に示す実装電極MP5)に接続される。すなわち、接続導体61は、コイル3の第1端E1と接続電極CP1との間を接続している。
本実施形態では、この接続電極CP1が本発明における「第1接続電極」に相当し、接続導体61が本発明における「第1接続導体」に相当する。
また、コイル3の第2端E2(コイル導体31Bの他端)は、接続導体63の一端に接続される。接続導体63の他端(接続電極CP2)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図13(A)に示す実装電極MP6)に接続される。すなわち、接続導体63は、コイル3の第2端E2と接続電極CP2との間を接続している。
本実施形態では、接続電極CP2が本発明における「第2接続電極」に相当し、接続導体63が本発明における「第2接続導体」に相当する。
図14に示すように、接続導体61(第1接続導体)および接続導体63(第2接続導体)は、電流の向きが逆向きになるように並走する並走部分CMLを有する。
磁気センサ2Aの端子は、ドライバーIC1に接続される。具体的には、磁気センサ2Aの端子は、導電性接合材4を介して導体21A,22Aの一端にそれぞれ接続される。導体21Aの他端は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図13(A)における実装電極MP7)に接続される。また、導体22Aの他端は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図13(A)における実装電極MP8)に接続される。
また、磁気センサ2Bの端子は、ドライバーIC1に接続される。具体的には、磁気センサ2Bの端子は、導電性接合材4を介して、導体21B,22Bの一端にそれぞれ接続される。導体21Bの他端は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図13(A)における実装電極MP9)に接続される。また、導体22Bの他端は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極(図13(A)における実装電極MP10)に接続される。
また、外部電極P1,P2,P3,P4は、それぞれドライバーIC1の実装電極に接続されている。具体的には、外部電極P1は、層間接続導体V1,V41を介して導体41に接続され、この導体41が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極(図13(A)に示す実装電極MP1)に接続される。外部電極P2は、層間接続導体V2,V42を介して導体42に接続され、この導体42が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極(図13(A)に示す実装電極MP2)に接続される。外部電極P3は、層間接続導体V3,V43を介して導体43に接続され、この導体43が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極(図13(A)に示す実装電極MP3)に接続される。外部電極P4は、層間接続導体V4,V44を介して導体44に接続され、この導体44が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極(図13(A)における実装電極MP4)に接続される。
多層基板104は、例えば次のように用いられる。図15は、多層基板104の使用状態を示す断面図である。
図15に示す磁石5A,5Bは、可動体7に取り付けられている。コイル(図13(B)におけるコイル3A,3Bを参照)に所定の電流を流すと、コイルから放射される磁界によって、磁石5A,5Bは積層方向(Z軸方向)の直交方向(Y軸方向)に変位する(図15における白抜き矢印参照。)。磁気センサ2A,2Bは、磁石5A,5Bが変位したときの磁界の変化をセンシングする。
本実施形態に係る多層基板104によれば、第1の実施形態で述べた効果以外に、次のような効果を奏する。
(a)多層基板104では、接続導体61(第1接続導体)および接続導体63(第2接続導体)が、電流の向きが逆向きになるように並走する並走部分CMLを有する。この構成では、上記並走部分CMLにおいて、磁石と相互に作用するコイル3の磁界の形成に実質的に寄与しない接続導体(接続導体61,63)から生じる磁束が打ち消される。したがって、コイル以外の部分(第1接続導体および第2接続導体)からの不要輻射を抑制できる。
なお、本実施形態では、接続導体63が、コイル導体31Aの−Y方向側で並走するため、接続導体63とコイル導体31Aとの近接部ACでは同じ方向に電流が流れる。そのため、コイル導体との近接部において、コイル3(第1コイル部LP1)のインダクタンスの低下を抑制できる。仮に、接続導体63が、コイル導体31Aの+Y方向および−X方向側で近接する場合には、接続導体63とコイル導体31Aとの近接部では逆方向に電流が流れるため、接続導体63とコイル導体との近接部において、コイルのインダクタンスが低下してしまう。
本実施形態に係る多層基板104は、例えば次のような工程で製造される。図16は多層基板104の製造工程を順に示す断面図である。なお、図16では、説明の都合上ワンチップ(個片)での製造工程で説明するが、実装の多層基板の製造工程は集合基板状態で行われる。
図16中の(1)に示すように、まず複数の絶縁基材層11d,12dを準備する。絶縁基材層11d,12dの構成は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
その後、絶縁基材層11d,12dに、コイル導体31A,31B,32A,32B、接続導体62,63等、導体21A,21B,22A,22B等および外部電極を形成する。
具体的には、集合基板状態の絶縁基材層11dの両主面に、金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その後、その金属箔をフォトリソグラフィでパターンニングすることで、外部電極、コイル導体32A,32Bおよび接続導体62を形成する。また、集合基板状態の絶縁基材層12dの一方主面に、金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その後、その金属箔をフォトリソグラフィでパターンニングすることで、コイル導体31A,31B、接続導体63等および導体21A,21B,22A,22B等を形成する。
なお、複数の絶縁基材層11d,12dには、層間接続導体V31A,V31B等が形成される。層間接続導体は、絶縁基材層11d,12dにレーザー等で貫通孔を設けた後、Cu,Ag,Sn,Ni,Mo等のうち1以上もしくはそれらの合金を含む導電性ペーストを配設(充填)し、後の加熱加圧で硬化(固化)させることによって設けられる。そのため、層間接続導体は、後の加熱加圧時の温度よりも融点(溶融温度)が低い材料とする。
次に、図16中の(1)(2)に示すように、絶縁基材層11d,12dの順に積層し、積層した絶縁基材層11d,12dを加熱加圧(一括プレス)することにより、集合基板状態の積層体10DPを形成する。
その後、図16中の(3)に示すように、積層体10DPの一方主面(図16中の(3)に示す積層体10Dの上面)側に保護層6を形成する。保護層6は、例えばソルダーレジスト膜やカバーレイフィルム等である。
保護層6は、絶縁基材層12dの表面に形成された導体の一部(図14に示す接続電極CP1,CP2、電極部71A,71B,72A,72B,81A,81B,82A,82Bおよび導体41,42,43,44)に応じた位置に開口部を有する。そのため、絶縁基材層12dの上面に保護層6が形成されることにより、上記導体の一部が、第2主面VS2から露出する。
次に、図16中の(4)に示すように、ドライバーIC(不図示)および磁気センサ2A,2Bを積層体10Dの第2主面VS2に実装する。具体的には、ドライバーICが有する複数の実装電極を、導電性接合材を介して、第2主面VS2から露出する導体(図14に示す接続電極CP1,CP2、電極部71A,71B,81A,81Bおよび導体41,42,43,44)に接続する。また、磁気センサ2A,2Bを、導電性接合材4を介して、第2主面VS2から露出する導体(図14に示す電極部72A,72B,82A,82B)に接続する。導電性接合材4は例えばはんだ等である。
最後に、集合基板から個々の個片に分離して、多層基板104を得る。
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、複数の磁気センサの配置に特徴を有する多層基板の例を示す。
図17(A)は第5の実施形態に係る多層基板105の平面図であり、図17(B)は図17(A)におけるG−G断面図である。図18は、多層基板105の分解平面図である。また、図18では、構造を分かりやすくするため、コイル導体31,32をハッチングで示している。
多層基板105は、積層体10Eと、ドライバーIC1と、磁気センサ2A,2Bと、積層体10Dに形成されるコイル3(後に詳述する)と、を備える。
多層基板105は、コイルが単一である点で、第1の実施形態に係る多層基板101と異なる。また、多層基板105は、ドライバーIC1、磁気センサ2A,2Bが、積層体10Dの第2主面VS2に実装されている点で、多層基板101と異なる。その他の構成については、多層基板101と実質的に同じである。
以下、第1の実施形態に係る多層基板101と異なる部分について説明する。
本実施形態に係る磁気センサ2A,2Bは、ドライバーIC1からの磁界を受けて発生する電圧の極性が互いに逆である。なお、本実施形態では、この磁気センサ2Aが本発明における「第1磁気センサ」に相当し、磁気センサ2Bが本発明における「第2磁気センサ」に相当する。
積層体10Eは、樹脂材料(熱可塑性樹脂)からなる複数の絶縁基材層11e,12eおよび保護層6の順に積層されて形成される。複数の絶縁基材層11e,12eの構成は、第1の実施形態で説明した絶縁基材層11a,12aと同じである。保護層6は、例えばソルダーレジスト膜やカバーレイフィルム等である。
絶縁基材層11eの表面には、コイル導体32が形成される。コイル導体32は、絶縁基材層11eの中央付近に配置された約2.5ターンの矩形スパイラル状の導体である。
絶縁基材層11eの裏面には、外部電極P1,P2,P3,P4が形成される。外部電極P1,P2,P3,P4は、絶縁基材層11eの第3辺(図18における絶縁基材層11eの下辺)中央付近に配置される矩形の導体である。
また、絶縁基材層11eには、層間接続導体V1,V2,V3,V4が形成される。
絶縁基材層12eの表面には、コイル導体31、接続導体61,62および導体21A,21B,22A,22B,41,42,43,44が形成されている。コイル導体31は、絶縁基材層12eの中央付近に配置された約2ターンの矩形スパイラル状の導体である。接続導体61,62は、絶縁基材層12eの中央付近に配置され、Y軸方向に延伸する線状の導体である。導体21A,22Aは、絶縁基材層12eの第1角(図18における絶縁基材層12eの左下角)付近に配置されるL字形の導体である。導体21B,22Bは、絶縁基材層12eの第2角(図18における絶縁基材層12eの右下角)付近に配置されるL字形の導体である。導体41,42,43,44は、絶縁基材層12eの第3辺(図18における絶縁基材層12eの下辺)付近に配置される矩形の導体である。
また、絶縁基材層12eには、層間接続導体V31,V32,V41,V42,V43,V44が形成される。
保護層6は、絶縁基材層12eの表面(第2主面VS2側の面)の略全面に形成され、絶縁基材層12eの表面に形成される導体を被覆する樹脂膜である。
保護層6は、接続導体61の一端(接続電極CP1)、接続導体62の一端(接続電極CP2)、導体21Aの一端(電極部71A)、導体22Aの一端(電極部81A)、導体21Bの一端(電極部71B)、導体22Bの一端(電極部81B)、および導体41,42,43,44に応じた位置に複数の開口部OP1を有する。そのため、絶縁基材層12eの上面に保護層6が形成されることにより、接続電極CP1,CP2、電極部71A,71B,81A,81Bおよび導体41,42,43,44が第2主面VS2から露出する。
また、保護層6は、導体21Aの他端(電極部72A)および導体22Aの他端(電極部82A)に応じた位置に複数の開口部OP2を有する。そのため、絶縁基材層12eの上面に保護層6が形成されるもことにより、電極部72A,82Aが第2主面VS2から露出する。
さらに、保護層6は、導体21Bの他端(電極部72B)および導体22Bの他端(電極部82B)に応じた位置に複数の開口部OP3を有する。そのため、絶縁基材層12eの上面に保護層6が形成されることにより、電極部72B,82Bが第2主面VS2から露出する。
本実施形態では、図17(B)等に示すように、ドライバーIC1が、積層体10Eの第2主面VS2に実装されている。ドライバーIC1の複数の実装電極(図17(A)に示す実装電極MP1〜MP10)は、導電性接合材4を介して、第2主面VS2に露出する導体(図18に示す接続電極CP1,CP2、電極部71A,71B,81A,81Bおよび導体41,42,43,44)にそれぞれ接続される。
また、本実施形態では、図17(B)等に示すように、磁気センサ2A,2Bが、積層体10Eの第2主面VS2に実装されている。磁気センサ2A,2Bの端子は、導電性接合材4を介して、第2主面VS2に露出する導体(図18に示す電極部72A,72B,82A,82B)にそれぞれ接続される。
図18等に示すように、コイル導体31の一端は、層間接続導体V31を介して、コイル導体32の一端に接続される。このように、複数の絶縁基材層11e,12eにそれぞれ形成されるコイル導体31,32,33を含んで約4.5ターンのコイル3が構成される。図17(A)に示すように、コイル3はZ軸方向に沿った巻回軸AX1Bを有する。
コイル3の第1端E1(コイル導体31の他端)は、接続導体61の他端に接続される。接続導体61の一端(接続電極CP1)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極に接続される。また、コイル3の第2端E2(コイル導体33の他端)は、層間接続導体V32を介して、接続導体62の他端に接続される。接続導体62の一端は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極に接続される。
また、外部電極P1,P2,P3,P4は、ドライバーIC1の複数の実装電極にそれぞれ接続される。具体的には、外部電極P1が、層間接続導体V1,V41を介して導体41に接続され、この導体41が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極に接続される。また、外部電極P2は、層間接続導体V2,V42を介して導体42に接続され、この導体42が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極に接続される。外部電極P3は、層間接続導体V3,V43を介して導体43に接続され、この導体43が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極に接続される。また、外部電極P4は、層間接続導体V4,V44を介して導体44に接続され、この導体44が、導電性接合材4を介してドライバーIC1の実装電極に接続される。
磁気センサ2Aの端子は、ドライバーIC1に接続される。具体的には、磁気センサ2Aの端子が、導電性接合材4を介して導体21A,22Aの他端(電極部72A,82A)にそれぞれ接続される。導体21A,22Aの一端(電極部71A,81A)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極にそれぞれ接続される。
また、磁気センサ2Bの端子は、ドライバーIC1に接続される。具体的には、磁気センサ2Bの端子は、導電性接合材4を介して、導体21B,22Bの他端(電極部72B,82B)にそれぞれ接続される。導体21B,22Bの一端(電極部71B,81B)は、導電性接合材4を介して、ドライバーIC1の実装電極にそれぞれ接続される。
図17(A)に示すように、磁気センサ2A,2B(第1磁気センサおよび第2磁気センサ)は、ドライバーIC1の中心DCPに対して対称となる位置に配置されている。具体的には、磁気センサ2A,2Bは、ドライバーIC1の中心DCPを通るY軸CYL回りに180°回転対称に配置されている。
また、図17(A)および図18に示すように、ドライバーIC1と磁気センサ2A(第1磁気センサ)との間の配線(導体21A,22A)、およびドライバーIC1と磁気センサ2B(第2磁気センサ)との間の配線(導体21B,22B)は、ドライバーIC1の中心DCPに対して対称である。具体的には、ドライバーIC1と磁気センサ2Aとの間の配線(導体21A,22A)、およびドライバーIC1と磁気センサ2Bとの間の配線(導体21B,22B)は、ドライバーIC1の中心DCPを通るY軸CYL回りに180°回転対称に配置されている。
さらに、磁気センサ2A,2B(第1磁気センサおよび第2磁気センサ)は、コイル3の巻回軸AXに対して対称となる位置に配置されている。具体的には、磁気センサ2A,2Bは、コイル3の巻回軸AX回りに180°回転対称に配置されている。
多層基板105は、例えば次のように用いられる。図19は、多層基板105の使用状態を示す断面図である。
図19に示す磁石5は、可動体7に取り付けられている。コイル(図17(B)におけるコイル3を参照)に所定の電流を流すと、コイルから放射される磁界によって、磁石5は積層方向(Z軸方向)の直交方向(Y軸方向)に変位する(図19における白抜き矢印参照。)。磁気センサ2A,2Bは、磁石5が変位したときの磁界の変化をセンシングする。
本実施形態に係る多層基板105によれば、第1の実施形態で述べた効果以外に、次のような効果を奏する。
(a)多層基板105では、磁気センサ2A,2Bが、ドライバーIC1からの磁界を受けて発生する電圧の極性が互いに逆である。また、多層基板105では、磁気センサ2A,2B(第1磁気センサおよび第2磁気センサ)が、ドライバーIC1の中心DCPに対して対称となる位置に配置されている。この構成により、ドライバーIC1等から発生する磁界にノイズが重畳されても、磁気センサ2A,2Bに対するドライバーIC1等から発生する磁界の影響を略均等(同程度)にできる。そのため、磁気センサ2A,2Bからの信号を加算することでノイズ成分がキャンセリングされ、磁気センサ2A,2Bによる磁石の位置検出精度を高めることができる。
なお、本実施形態では、磁気センサ2A,2Bが、ドライバーIC1からの磁界を受けて発生する電圧の極性が互いに逆である例を示したが、これに限定されるものではない。ドライバーICからの磁界を受けて「第1磁気センサ」および「第2磁気センサ」に発生する電圧の極性は、必ずしも互いに逆になっている必要はない。
(b)また、多層基板105では、ドライバーIC1と磁気センサ2A(第1磁気センサ)との間の配線(導体21A,22A)、およびドライバーIC1と磁気センサ2B(第2磁気センサ)との間の配線(導体21B,22B)は、ドライバーIC1の中心DCPに対して対称である。この構成により、ドライバーIC1等から発生する磁界にノイズが重畳されても、ドライバーIC1と磁気センサ2A,2Bとの間の配線に対する、ドライバーIC1等から発生する磁界の影響を略均等(同程度)にできる。そのため、磁気センサ2A,2Bからの信号を加算することでノイズ成分がキャンセリングされ、結果的に磁気センサ2A,2Bによる磁石の位置検出精度を高めることができる。
(c)さらに、多層基板105では、磁気センサ2A,2B(第1磁気センサおよび第2磁気センサ)が、コイル3の巻回軸AXに対して対称となる位置に配置されている。この構成により、コイル3から放射される磁界にノイズが重畳されても、磁気センサ2A,2Bに対するコイル3から発生する磁界の影響を略均等(同程度)にできる。そのため、磁気センサ2A,2Bからの信号を加算することでノイズ成分がキャンセリングされ、磁気センサ2A,2Bによる磁石の位置検出精度を高めることができる。
本実施形態に係る多層基板105は、例えば次のような工程で製造される。図20は多層基板105の製造工程を順に示す断面図である。なお、図20では、説明の都合上ワンチップ(個片)での製造工程で説明するが、実装の多層基板の製造工程は集合基板状態で行われる。
図20中の(1)に示すように、まず複数の絶縁基材層11e,12eを準備する。絶縁基材層11e,12eの構成は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
その後、絶縁基材層11e,12eに、コイル導体31,32,33、導体21A,21B,22A,22B,41,42,43,44および外部電極P1,P2,P3,P4を形成する。
具体的には、集合基板状態の絶縁基材層11eの両主面に、金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その後、その金属箔をフォトリソグラフィでパターンニングすることで、コイル導体32および外部電極P1,P2,P3,P4を形成する。また、集合基板状態の絶縁基材層12eの一方主面に、金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その後、その金属箔をフォトリソグラフィでパターンニングすることで、コイル導体31,33および導体21A,21B,22A,22B,41,42,43,44を形成する。
なお、複数の絶縁基材層11e,12eには、層間接続導体V1,V2,V3,V4,V31,V32,V41,V42,V43,V44が形成される。層間接続導体は、絶縁基材層11e,12eにレーザー等で貫通孔を設けた後、Cu,Ag,Sn,Ni,Mo等のうち1以上もしくはそれらの合金を含む導電性ペーストを配設(充填)し、後の加熱加圧で硬化(固化)させることによって設けられる。そのため、層間接続導体は、後の加熱加圧時の温度よりも融点(溶融温度)が低い材料とする。
次に、図20中の(1)(2)に示すように、絶縁基材層11e,12eの順に積層し、積層した絶縁基材層11e,12eを加熱加圧(一括プレス)することにより、集合基板状態の積層体10EPを形成する。
その後、図20中の(3)に示すように、積層体10EPの一方主面(図20中の(3)に示す積層体10Eの上面)側に保護層6を形成する。保護層6は、例えばソルダーレジスト膜やカバーレイフィルム等である。
保護層6は、絶縁基材層12eの表面に形成された導体の一部(図18に示す接続導体61の一端(接続電極CP1)、接続導体62の一端(接続電極CP2)、導体21Aの一端および他端(電極部71A,72A)、導体22Aの一端および他端(電極部81A,82A)、導体21Bの一端および他端(電極部71B,72B)、導体22Aの一端および他端(電極部81A,82A)、導体22Bの一端および他端(電極部81B,82B)および導体41,42,43,44)に応じた位置に開口部を有する。そのため、絶縁基材層12eの上面に保護層6が形成されることにより、上記導体の一部が、積層体10Eの第2主面VS2から露出する。
次に、図20中の(4)に示すように、ドライバーIC(不図示)および磁気センサ2A,2Bを積層体10Eの第2主面VS2に実装する。具体的には、ドライバーICが有する複数の実装電極を、導電性接合材を介して、第2主面VS2から露出する導体の一部(図18に示す接続電極CP1,CP2、電極部71A,71B,81A,81B、導体41,42,43,44)に接続する。また、磁気センサ2A,2Bを、導電性接合材4を介して、第2主面VS2から露出する導体(図18に示す電極部72A,72B,82A,82B)に接続する。導電性接合材4は例えばはんだ等である。
最後に、集合基板から個々の個片に分離して、多層基板105を得る。
また、本実施形態では、磁気センサ2A,2B(第1磁気センサおよび第2磁気センサ)が、ドライバーIC1の中心DCPを通るY軸CYL回りに180°回転対称に配置されている例を示したが、この構成に限定されるものではない。本発明における「第1磁気センサおよび第2磁気センサは、ドライバーICの中心に対して対称である」とは、例えば、磁気センサ2A,2Bが、ドライバーCI1の中心DCPを通るY軸CYL回りに180°以外の角度(例えば、120°)で回転対称に配置されているものを含む。さらに、磁気センサ2A,2Bが、ドライバーIC1の中心DCPに対して点対称に配置されているものも含む。
本実施形態では、ドライバーIC1と磁気センサ2A(第1磁気センサ)との間の配線(導体21A,22A)、およびドライバーIC1と磁気センサ2B(第2磁気センサ)との間の配線(導体21B,22B)が、ドライバーIC1の中心DCPを通るY軸CYL回りに180°回転対称である例を示したが、この構成に限定されるものではない。本発明における「ドライバーICと第1磁気センサとの間の配線、およびドライバーICと第2磁気センサとの間の配線は、ドライバーICの中心に対して対称である」とは、例えば、ドライバーIC1と第1磁気センサとの間の配線、およびドライバーIC1と第2磁気センサとの間の配線が、ドライバーIC1の中心DCPを通るY軸CYL回りに180°以外の角度(例えば120°)で回転対称に配置されているものを含む。さらに、ドライバーIC1と第1磁気センサとの間の配線、およびドライバーIC1と第2磁気センサとの間の配線が、ドライバーIC1の中心DCPに対して点対称に配置されているものも含む。
《その他の実施形態》
以上に示した各実施形態では、積層体が略直方体である例を示したが、この構成に限定されるものではない。積層体の形状は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能であり、例えば立方体、多角柱、円柱、楕円柱等であってもよく、積層体の平面形状がL字形、クランク形、T字形、Y字形等であってもよい。
また、以上に示した各実施形態では、2つから4つの絶縁基材層を積層して形成される積層体を備える多層基板について示したが、この構成に限定されるものではない。積層体を形成する絶縁基材層の層数は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。なお、第4・第5の実施形態で示した保護層6は、本発明において必須の構成ではない。
以上に示した各実施形態では、積層体が、熱可塑性樹脂からなる複数の絶縁基材層を積層して形成される例を示したが、この構成に限定されるものではない。積層体は、例えば熱硬化性樹脂からなる複数の絶縁基材層を積層して形成される構成であってもよい。
また、本発明におけるコイルの形状・個数・巻回数については、以上に示した各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。コイルは、例えば平面ループ状、平面スパイラル状、およびヘリカル状であってもよい。また、コイルの個数も1つまたは2つに限定されず、3つ以上であってもよい。コイルは、1つの絶縁基材層に形成されるコイル導体を含んで構成されていてもよく、3つ以上の絶縁基材層に形成される複数のコイル導体を含んで構成されていてもよい。
以上に示した各実施形態では、平面形状が矩形である4つの外部電極P1,P2,P3,P4,が、積層体の第1主面VS1に形成された例を示したが、この構成に限定されるものではない。外部電極の形状・個数・位置は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。外部電極の個数は、多層基板が有する回路構成によって適宜変更可能である。なお、以上に示した各実施形態では、ドライバーIC1、コイル、磁気センサを備える多層基板について示したが、これ以外の電子部品(例えば、チップインダクタやチップキャパシタ)等が多層基板に実装されていてもよい。
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。