JPWO2018159791A1 - ホスト基含有重合性単量体、高分子材料及びその製造方法、並びに、包接化合物及びその製造方法 - Google Patents

ホスト基含有重合性単量体、高分子材料及びその製造方法、並びに、包接化合物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

材料設計の自由度が高く、靭性及び強度に優れる高分子材料を製造するための原料として使用できるホスト基含有重合性単量体、並びに該ホスト基含有重合性単量体を使用して製造される高分子材料及びその製造方法を提供する。本発明のホスト基含有重合性単量体は、ホスト基含有重合性単量体であって、前記ホスト基は、シクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基である。前記シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンが有する少なくとも1個の水酸基の水素原子が炭化水素基、アシル基及び−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換された構造を有する。

Description

本発明は、ホスト基含有重合性単量体、高分子材料及びその製造方法、並びに、包接化合物及びその製造方法に関する。
に関する。
近年、ホスト−ゲスト相互作用に代表される非共有結合的相互作用を巧みに利用して、様々な機能性を付与した超分子材料の開発が盛んに行われている。例えば、特許文献1には、ホスト−ゲスト相互作用の可逆性を活かした自己修復材料が開示されている。このような自己修復材料は、材料全体を切断したとしても、切断面を再接触することにより元の材料強度に近い状態にまで回復することが可能であり、新規な機能性の高分子材料として大いに期待されている。
国際公開第2015/030079号
最近では、高分子材料自体に様々な機能性を付与することが求められているところ、例えば、靭性及び強度等の機械的特性をさらに向上させる高分子材料の開発が強く求められている。
この点、例えば、従来のホスト−ゲスト相互作用を利用した高分子材料では、高分子材料に含まれる重合体の組成を変化させることに対する制約があったことから、機械的特性を顕著に向上させることは難しい技術とされていた。従来のホスト−ゲスト相互作用を利用した高分子材料は、比較的水溶性の高い単量体の重合体が主成分となるため、機械特性を改良するにあたって、材料設計の自由度が低いという制限があったからである。ホスト−ゲスト相互作用を利用した高分子材料において、例えば、従来は使用できなかった疎水性を有する化合物を構成成分とすることができれば、従来の高分子材料には備わっていない機械特性が発現されることから、そのような新規な材料の開発が望まれていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、材料設計の自由度が高く、靭性及び強度に優れる高分子材料を製造するための原料として使用できるホスト基含有重合性単量体、並びに該ホスト基含有重合性単量体を使用して製造される高分子材料及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記ホスト基含有重合性単量体を含む包接化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するホスト基を重合性単量体に導入することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の発明を包含する。
項1.
ホスト基含有重合性単量体であって、
前記ホスト基は、シクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、
前記シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンが有する少なくとも1個の水酸基の水素原子が炭化水素基、アシル基及び−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換された構造を有する、ホスト基含有重合性単量体。
項2
前記アシル基は、アセチル基である、項1に記載のホスト基含有重合性単量体。
項3
前記炭化水素基の炭素数が1〜4個である、項1又は2に記載のホスト基含有重合性単量体。
項4
下記の一般式(h1)
Figure 2018159791
(式(h1)中、Raは水素原子またはメチル基を示し、Rは前記ホスト基を示し、Rはヒドロキシル基、チオール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいチオアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個の置換基を有していてもよいアミノ基、1個の置換基を有していてもよいアミド基、アルデヒド基及びカルボキシル基からなる群より選択される1価の基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基を示す。)
で表される、項1〜3のいずれか1項に記載のホスト基含有重合性単量体。
項5
下記の一般式(h2)
Figure 2018159791
(式(h2)中、Raは水素原子またはメチル基を示し、Rは前記ホスト基を示し、Rはヒドロキシル基、チオール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいチオアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個の置換基を有していてもよいアミノ基、1個の置換基を有していてもよいアミド基、アルデヒド基及びカルボキシル基からなる群より選択される1価の基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基を示す。)
で表される、項1〜3のいずれか1項に記載のホスト基含有重合性単量体。
項6
下記一般式(h40)
40−R (h40)
(式(h40)中、R40はNH又はOHを示し、Rは前記ホスト基を示す。)
で表される、項1又は2に記載のホスト基含有重合性単量体。
項7
項1〜6のいずれか1項に記載のホスト基含有重合性単量体を含む重合性単量体混合物の重合体を含む、高分子材料。
項8
前記重合性単量体混合物は、前記ホスト基含有重合性単量体のホスト基を貫通できるサイズの重合性単量体を含有する、項7に記載の高分子材料。
項9
前記ホスト基とホスト−ゲスト相互作用可能なゲスト基を有する重合体をさらに含む、項7に記載の高分子材料。
項10−1
項1〜6のいずれか1項に記載のホスト基含有重合性単量体と、ゲスト基を有する重合性単量体との包接化合物。
項10−2
前記ホスト基含有重合性単量体がホスト基含有ビニル系単量体であり、前記ゲスト基を有する重合性単量体がゲスト基含有ビニル系単量体である、項10−1に記載の包接化合物。
項10−3
前記ホスト基含有重合性単量体がホスト基含有非ビニル系単量体であり、前記ゲスト基を有する重合性単量体がゲスト基含有非ビニル系単量体であり、該ゲスト基含有非ビニル系単量体が特に縮合反応可能な官能基を有する化合物である、項10−1に記載の包接化合物。
項11
項6に記載のホスト基含有重合性単量体と、縮合反応可能な官能基を有する化合物との包接化合物。
項12
項10又は11に記載の包接化合物を含有する重合性単量体の重合体を含む、高分子材料。
項13
項1〜6のいずれか1項に記載のホスト基含有重合性単量体を含む重合性単量体混合物の重合反応により重合体を得る工程を備える、高分子材料の製造方法。
項14
前記重合反応は、溶媒の不存在下で行う、項13に記載の高分子材料の製造方法。
項15
項10に記載の包接化合物を製造する方法において、
前記ホスト基含有重合性単量体と、前記ゲスト基を有する重合性単量体とを混合して、包接化合物を得る工程を備える、包接化合物の製造方法。
本発明に係るホスト基含有重合性単量体は、高分子材料を製造するための原料として使用でき、得られる高分子材料は、靭性及び強度が特に優れる。本発明に係るホスト基含有重合性単量体を使用することで、従来のホスト−ゲスト相互作用を利用した高分子材料では導入することが困難であった構成単位を高分子材料に導入することができることから、材料設計の自由度を高くすることができる。
本発明に係る高分子材料は、前記ホスト基含有重合性単量体を用いて製造される重合体を含むことから、靭性及び強度に優れる。
本発明に係る高分子材料の製造方法は、前記高分子材料を製造する方法として適しており、簡易なプロセスで高分子材料を製造することができる。
ホスト−ゲスト相互作用の様子を示す模式図である。 実施例1及び比較例1−3の高分子材料の破断応力の結果を示すグラフである。 比較例4の高分子材料の破断応力の結果を示すグラフである。 実施例2及び比較例1の高分子材料の破断応力の結果を示すグラフである。 実施例3及び比較例5の高分子材料の破断応力の結果を示すグラフである。 実施例4及び比較例6の高分子材料の破断応力の結果を示すグラフである。 実施例5の高分子材料の破断応力の結果を示すグラフである。 実施例6の高分子材料の破断応力の結果を示すグラフである。 実施例7の高分子材料の破断応力の結果を示すグラフである。 実施例1−7で用いたゲスト基含有重合性単量体(2−エチル−2−アダマンチルアクリレート、アダマンチルアクリルアミド、ADOM−A)の構造を示す。 (a)及び(b)はそれぞれ、製造例1の生成物のマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。 (a)及び(b)はそれぞれ、製造例2の生成物のマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。 (a)及び(b)はそれぞれ、製造例3の生成物のマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。 (a)及び(b)はそれぞれ、製造例4の生成物のマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。 (a)及び(b)はそれぞれ、製造例5の生成物のマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。 (a)及び(b)はそれぞれ、実施例11で使用した6−モノデオキシトリメチル−シクロデキストリン及び6−モノデオキシ−モノアミノ−トリメチル−シクロデキストリンのマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。 製造例8の生成物のマススペクトルの結果を示す。 実施例11及び比較例7の高分子材料の破断応力の結果を示すグラフである。 (a)及び(b)はそれぞれ、製造例11で得た6−モノヒドロキシ−トリメチル−シクロデキストリンのマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。 自己修復性評価における切断前の試験片および接触後の試験片の破断応力の結果を示すグラフである。 自己修復性評価における切断前の試験片および接触後の試験片の破断応力及び破断歪の測定結果を示す。 製造例9の生成物のマススペクトルの結果を示す。 製造例10の生成物のマススペクトルの結果を示す。 実施例12及び比較例8の高分子材料の破断応力の結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
1.重合性単量体
本発明のホスト基を含有する重合性単量体は、前記ホスト基が、シクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基である。さらに、前記シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンが有する少なくとも1個の水酸基の水素原子が炭化水素基、アシル基及び−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換された構造を有する。前記シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンが有する少なくとも1個以上の水酸基の水素原子が炭化水素基のみで置換されていてもよいし、あるいは、アシル基のみで置換されていてもよい。
本発明のホスト基含有重合性単量体は、高分子材料に含まれる重合体を得るための原料となり得る。ホスト基含有重合性単量体を使用して得られる重合体は、例えば、可逆性を有するホスト−ゲスト相互作用によって、分子どうしが架橋された構造を有し得る。もしくは、ホスト基含有重合性単量体を使用して得られる重合体は、例えば、後記する可動性架橋重合体となり得る。後記するように可動性架橋重合体は、重合体側鎖のホスト基(シクロデキストリン構造を有する環状分子)の環内を、他の重合体の主鎖が貫通することで形成される構造を有する重合体が例示される。
シクロデキストリン誘導体は、α−シクロデキストリン誘導体、β−シクロデキストリン誘導体及びγ−シクロデキストリン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。本明細書でいうシクロデキストリン誘導体とは、シクロデキストリン分子が他の有機基で置換された構造を有する分子をいう。なお、念のための注記に過ぎないが、本明細書でのシクロデキストリンなる表記は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種を意味する。
ホスト基は、前述の通り、シクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基である。除される水素原子又は水酸基は、シクロデキストリン誘導体のどの部位であってもよい。ホスト基を形成しやすいという観点からは、ホスト基は、シクロデキストリン誘導体から1個の水酸基が除された1価の基であることが好ましい。
ホスト基を形成するためのシクロデキストリン誘導体は、前述の通り、シクロデキストリンが有する少なくとも1個の水酸基が炭化水素基、アシル基及び−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換された構造を有する。この構造を有することで、本発明のホスト基含有重合性単量体は、例えば、親水性の重合性単量体及び疎水性の重合性単量体のいずれに対しても高い親和性を示すことができ、ホスト基含有重合性単量体は、種々の重合性単量体との共重合が可能となる。なお、本明細書において、「炭化水素基、アシル基及び−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基」を便宜上、「炭化水素基等」と表記することがある。
特に、本発明のホスト基含有重合性単量体は、疎水性の重合性単量体に対して高い溶解性を示すことから、従来難しいとされていたホスト基含有重合性単量体と疎水性の重合性単量体との共重合が、幅広い組成割合で可能となり、目的とする高分子材料の設計の自由度を高くすることが可能となる。
ここで、シクロデキストリン1分子が有する水酸基の全個数をNとした場合、α−シクロデキストリンはN=18、β−シクロデキストリンはN=21、γ−シクロデキストリンはN=24である。
仮に、ホスト基がシクロデキストリン誘導体から1個の「水酸基」が除された1価の基である場合は、シクロデキストリン誘導体は、1分子あたり最大N−1個の水酸基の水素原子が炭化水素基等で置換され得る。他方、ホスト基がシクロデキストリン誘導体から1個の「水素原子」が除された1価の基である場合は、シクロデキストリン誘導体は、1分子あたり最大N個の水酸基の水素原子が炭化水素基等で置換され得る。
前記ホスト基は、前記シクロデキストリン誘導体1分子中に存在する全水酸基数のうちの70%以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換された構造を有することが好ましい。この場合、ホスト基含有重合性単量体は、疎水性の重合性単量体に対してより高い親和性を示すことができる。前記ホスト基は、前記シクロデキストリン誘導体1分子中に存在する全水酸基数のうちの80%以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることがより好ましく、全水酸基数のうちの90%以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることが特に好ましい。
前記ホスト基は、α−シクロデキストリン誘導体1分子中に存在する全水酸基のうちの13個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換された構造を有することが好ましい。この場合、ホスト基含有重合性単量体は、疎水性の重合性単量体に対してより高い親和性を示すことができる。前記ホスト基は、α−シクロデキストリン誘導体1分子中に存在する全水酸基のうちの15個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることがより好ましく、全水酸基のうちの17個の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることが特に好ましい。
前記ホスト基は、β−シクロデキストリン誘導体1分子中に存在する全水酸基のうちの13個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換された構造を有することが好ましい。この場合、ホスト基含有重合性単量体は、疎水性の重合性単量体に対してより高い親和性を示すことができる。前記ホスト基は、β−シクロデキストリン誘導体1分子中に存在する全水酸基のうちの17個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることがより好ましく、全水酸基のうちの19個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることが特に好ましい。
前記ホスト基は、γ−シクロデキストリン誘導体1分子中に存在する全水酸基のうちの17個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換された構造を有することが好ましい。この場合、ホスト基含有重合性単量体は、疎水性の重合性単量体に対してより高い親和性を示すことができる。前記ホスト基は、γ−シクロデキストリン誘導体1分子中に存在する全水酸基のうちの19個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることがより好ましく、全水酸基のうちの22個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることが特に好ましい。
炭化水素基の種類は特に限定されない。前記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基を挙げることができる。
前記炭化水素基の炭素数の数は特に限定されない。ホスト基含有重合性単量体が親水性及び疎水性の重合性単量体の両方に対してより高い親和性示し、かつ、ホスト−ゲスト相互作用が形成されやすいという観点から、炭化水素基の炭素数は1〜4個であることが好ましい。
炭素数が1〜4個である炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を挙げることができる。炭化水素基がプロピル基及びブチル基である場合は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。
炭化水素基は、本発明の効果が阻害されない限りは、置換基を有していてもよい。
アシル基は、アセチル基、プロピオニル、ホルミル基等を例示することができる。アシル基は、さらに置換基を有することもできる。ホスト基含有重合性単量体が親水性及び疎水性の重合性単量体の両方に対してより高い親和性示し、かつ、ホスト−ゲスト相互作用を形成しやすく、また、靭性及び強度に優れる靭性及び強度に優れる高分子材料を得やすいという観点から、アシル基は、アセチル基であることが好ましい。
−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)は、メチルカルバメート基又はエチルカルバメート基である。ホスト基含有重合性単量体が親水性及び疎水性の重合性単量体の両方に対してより高い親和性示し、かつ、ホスト−ゲスト相互作用が形成されやすいという観点から、―CONHRは、エチルカルバメート基あることが好ましい。
本発明のホスト基含有重合性単量体は、前記ホスト基を有し、かつ、重合性の化合物である限りは、その構造は特に限定されない。なお、本明細書でいう「重合性」とは、例えば、ラジカル重合、イオン重合、重縮合(縮合重合、縮重合)、付加縮合、リビング重合、リビングラジカル重合、その他、従来から知られている各種重合をする性質を有していることをいう。
ホスト基含有重合性単量体は、合成の容易さ及び靭性及び強度に優れる靭性及び強度に優れる高分子材料を得やすいという観点から、ラジカル重合又は重縮合(縮合重合、縮重合)が可能である化合物であることが好ましい。
ホスト基含有重合性単量体としては、ホスト基を有し、かつ、重合性を示す官能基を有している限りは、特にその種類は限定されない。重合性を示す官能基の具体例としては、アルケニル基、ビニル基等の他、−OH、−SH、−NH、−COOH、−SOH、−POH、イソシアネート基、エポキシ基(グリシジル基)等が挙げられる。これらの重合性を示す官能基は、シクロデキストリン誘導体において、シクロデキストリンが有する1個以上の水酸基の水素原子に置換されることで、シクロデキストリン誘導体に導入され得る。これにより、重合性を示す官能基を有するホスト基含有重合性単量体が形成される。
ホスト基含有重合性単量体は、より詳細には、「ホスト基含有ビニル系単量体」及び「ホスト基含有非ビニル系単量体」に分類することができる。以下、順に説明する。
(ホスト基含有ビニル系単量体)
ホスト基含有重合性単量体がホスト基含有ビニル系単量体である場合、該ホスト基含有ビニル系単量体は、前記ホスト基に加えて、ラジカル重合性を有する官能基を有するビニル化合物である。
ラジカル重合性を有する官能基は、炭素−炭素二重結合を含む基を挙げることができ、具体的には、アクリロイル基(CH=CH(CO)−)、メタクリロイル基(CH=CCH(CO)−)、その他、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。これらの炭素−炭素二重結合を含む基は、ラジカル重合性が阻害されない程度であればさらに置換基を有していてもよい。
ホスト基含有重合性単量体の具体例としては、前記ホスト基が結合したビニル系の重合性単量体を挙げることができる。
例えば、ホスト基含有ビニル系単量体は、下記の一般式(h1)
Figure 2018159791
(式(h1)中、Raは水素原子またはメチル基を表し、Rは前記ホスト基を表し、Rはヒドロキシル基、チオール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいチオアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個の置換基を有していてもよいアミノ基、1個の置換基を有していてもよいアミド基、アルデヒド基及びカルボキシル基からなる群より選択される1価の基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基を表す。)
で表される化合物を挙げることができる。
あるいは、ホスト基含有重合性単量体は、下記の一般式(h2)
Figure 2018159791
(式(h2)中、Ra、R及びRはそれぞれ式(h1)のRa、R及びRと同義である。)
で表される化合物を挙げることができる。
さらには、ホスト基含有重合性単量体は、下記の一般式(h3)
Figure 2018159791
(式(h3)中、Ra、R及びRはそれぞれ式(h1)のRa、R及びRと同義である。nは1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5の整数である。Rbは、水素又は炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基)を示す。
なお、式(h1)、(h2)及び(h3)で表されるホスト基含有重合性単量体におけるホスト基Rは、シクロデキストリン誘導体から1個の水酸基が除された1価の基である場合の例である。
また、ホスト基含有重合性単量体は、式(h1)、式(h2)及び式(h3)で表される化合物のうちの1種単独とすることができ、あるいは2種以上を含むことができる。この場合、式(h1)、式(h2)及び式(h3)のRaは互いに同一又は異なる場合がある。同様に、式(h1)、式(h2)及び式(h3)のR、並びに式(h1)、式(h2)及び式(h3)のRは各々互いに同一又は異なる場合がある。
式(h1)〜(h3)で定義される置換基は、特に限定されない。例えば、置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、スルホン基、シアノ基等を挙げることができる。
(h1)〜(h3)において、Rが1個の置換基を有していてもよいアミノ基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基であれば、アミノ基の窒素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
(h1)〜(h3)において、Rが1個の置換基を有していてもよいアミド基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基であれば、アミド基の炭素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
(h1)〜(h3)において、Rがアルデヒド基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基であれば、アルデヒド基の炭素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
(h1)〜(h3)において、Rがカルボキシル基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基である場合、カルボキシル基の炭素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
(h1)〜(h3)で表されるホスト基含有重合性単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体(すなわち、Rが−COO−)、(メタ)アクリルアミド誘導体(すなわち、Rが−CONH−又は−CONR−であり、Rは前記置換基と同義である)であることが好ましい。この場合、重合反応が進みやすく、また、得られる高分子材料の靭性及び強度もより高くなり得る。なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルのいずれかを示す。
前記−CONR−のRとしては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
式(h1)で表されるホスト基含有重合性単量体の具体例として、下記(h1−1)〜(h1−6)を挙げることができる。
Figure 2018159791
式(h1−1)、(h1−2)及び(h1−3)で表される化合物は、式(h1)において、Rが−CONR−(R=メチル基)であって、それぞれ、α−シクロデキストリン誘導体、β−シクロデキストリン誘導体、γ−シクロデキストリン誘導体から一個の水酸基が除されたホスト基を有している。また、いずれも、シクロデキストリン誘導体におけるN−1個の水酸基の水素原子がメチル基で置換されている。なお、これら(h1−1)、(h1−2)及び(h1−3)で表される化合物では、後記するシクロデキストリン誘導体における水酸基の水素原子のメチル置換と同じ反応により、各化合物中のアミド部位の窒素原子のメチル置換を行うことができる。つまり、一段階の反応で、シクロデキストリン部位のメチル化及びアミド部位のメチル化を行うことでき、式(h1−1)、(h1−2)及び(h1−3)で表される化合物を容易に得ることができるという利点がある。後記式(h2−1)、(h2−2)及び(h2−3)も同様である。
式(h1−4)、(h1−5)及び(h1−6)で表される化合物は、式(h1)において、Rが−CONH−であって、それぞれ、α−シクロデキストリン誘導体、β−シクロデキストリン誘導体、γ−シクロデキストリン誘導体から一個の水酸基が除されたホスト基を有している。また、いずれも、シクロデキストリン誘導体におけるN−1個の水酸基の水素原子がメチル基で置換されている。
さらに、式(h1)で表されるホスト基含有重合性単量体の具体例として、下記(h1−7)〜(h1−9)を挙げることができる。
Figure 2018159791
式(h1−7)、(h1−8)及び(h1−9)で表される化合物は、式(h1)においてRが−CONH−であって、それぞれ、α−シクロデキストリン誘導体、β−シクロデキストリン誘導体、γ−シクロデキストリン誘導体から一個の水酸基が除されたホスト基を有している。また、いずれも、シクロデキストリン誘導体におけるN−1個の水酸基の水素原子がアセチル基(各式において「Ac」と表示)で置換されている。
さらに、式(h1)で表されるホスト基含有重合性単量体の具体例として、下記式(h1−10)を挙げることができる。
Figure 2018159791
式(h1−10)において、少なくとも1個のXは水素原子であり、また、少なくとも1個のXは−CONHC(エチルカルバメート基)である。nは5,6又は7である。
式(h1−10)で表される化合物は、式(h1)においてRが−CONH−であって、シクロデキストリン誘導体から1個の水酸基が除されたホスト基を有している。また、シクロデキストリン誘導体におけるN−1個の水酸基の水素原子が前記Xで置換されている。
式(h2)で表されるホスト基含有重合性単量体の具体例として、下記(h2−1)〜(h2−9)を挙げることができる。
Figure 2018159791
式(h2−1)、(h2−2)及び(h2−3)で表される化合物は、式(h2)においてRが−CONR−(R=メチル基)であって、それぞれ、α−シクロデキストリン誘導体、β−シクロデキストリン誘導体、γ−シクロデキストリン誘導体から一個の水酸基が除されたホスト基を有している。また、いずれも、シクロデキストリン誘導体におけるN−1個の水酸基の水素原子がメチル基で置換されている。
式(h2−4)、(h2−5)及び(h2−6)で表される化合物は、式(h2)においてRが−CONH−であって、それぞれ、α−シクロデキストリン誘導体、β−シクロデキストリン誘導体、γ−シクロデキストリン誘導体から一個の水酸基が除されたホスト基を有している。また、いずれも、シクロデキストリン誘導体におけるN−1個の水酸基の水素原子がメチル基で置換されている。
式(h2−7)、(h2−8)及び(h2−9)で表される化合物は、式(h2)においてRが−COO−であって、それぞれ、α−シクロデキストリン誘導体、β−シクロデキストリン誘導体、γ−シクロデキストリン誘導体から一個の水酸基が除されたホスト基を有している。また、いずれも、シクロデキストリン誘導体におけるN−1個の水酸基の水素原子がメチル基で置換されている。
式(h3)で表されるホスト基含有重合性単量体の具体例として、下記(h3−1)〜(h3−6)を挙げることができる。
Figure 2018159791
式(h3−1)、(h3−2)及び(h3−3)で表される化合物は、式(h3)においてRが−COO−、n=2及びRbが水素原子であって、それぞれ、α−シクロデキストリン誘導体、β−シクロデキストリン誘導体、γ−シクロデキストリン誘導体から一個の水酸基が除されたホスト基を有している。また、いずれも、シクロデキストリン誘導体におけるN−1個の水酸基の水素原子がアセチル基(Ac)で置換されている。式(h3−1)、(h3−2)及び(h3−3)において、Rbの位置の水素原子は、メチル基で置き換えられてもよい。
上記(h1−1)〜(h1−9)、(h2−1)〜(h2−9)及び(h3−1)〜(h3−3)で表されるホスト基含有重合性単量体はいずれもアクリル系であるが、メタ位の水素がメチル基に置き換えられた構造、すなわちメタクリル系であっても本発明の効果は阻害されない。
(ホスト基含有非ビニル系単量体)
ホスト基含有重合性単量体がホスト基含有非ビニル系単量体である場合、該ホスト基含有非ビニル系単量体は、前記ホスト基に加えて、ラジカル重合性以外の官能基、例えば、重縮合(縮合重合及び縮重合を含む)を有する官能基を有する化合物である。
ホスト基含有非ビニル系単量体としてのホスト基含有重合性単量体は、例えば、下記式(h50)で表される化合物を挙げることができる。
50−R (h50)
(式(h50)において、R50は、NH2、COOH、COCl、SH、OH、NCO及びエポキシ基からなる群より選ばれる1種の基を示し、Rは前記ホスト基を示す。また、式(h50)において、R50がエポキシ基である場合は、下記一般式(h51)
Figure 2018159791
で表される基である。
ホスト基含有非ビニル系単量体としてのホスト基含有重合性単量体は、
下記一般式(h40)
40−R (h40)
(式(h40)中、R40はNH又はOHを示し、Rは前記ホスト基を示す)
で表される化合物であることが好ましい。この場合、例えば、ホスト基含有重合性単量体の合成が容易であり、また、靭性及び強度に優れる高分子材料を得やすい。
式(h40)で表される化合物の具体例としては、下記式(m1)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2018159791
式(m1)において、Rは、前記R40に等しい、つまり、NH又はOHを示し、Rは前記炭化水素基等を示し、nは5、6又は7である。
なお、式(m1)において、R(炭化水素基等)のすべてがメチル基、アセチル基、メチルカルバメート基及びエチルカルバメート基からなる群より選ばれる1種である場合もある。式(m1)において、炭化水素基等はすべてメチル基であることが好ましい。
式(h40)で表される化合物としては、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−トリメチル−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノカルボキシ−トリメチル−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−トリメチル−シクロデキストリン−6−モノカルボニルクロリド、6−モノデオキシ−6−モノチオ−トリメチル−シクロデキストリン、6−モノヒドロキシ−トリメチル−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノイソシアネート−トリメチル−シクロデキストリン、6−モノグリシジル−トリメチル−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−トリアセチル−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノカルボキシ−トリアセチル−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−トリアセチル−シクロデキストリン−6−モノカルボニルクロリド、6−モノデオキシ−6−モノチオ−トリアセチル−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノヒドロキシ−トリアセチル−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノイソシアネート−トリアセチル−シクロデキストリン、6−モノグリシジル−トリアセチル−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−トリエチルカルバメート−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノカルボキシ-トリエチルカルバメート−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−トリエチルカルバメート−シクロデキストリン−6−モノカルボニルクロリド、6−モノデオキシ−6−モノチオ−トリエチルカルバメート−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノヒドロキシ-トリエチルカルバメート−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノイソシアネート-トリエチルカルバメート−シクロデキストリン、6−モノグリシジル−トリエチルカルバメート−シクロデキストリン等を挙げることができる。
(ホスト基含有ビニル系単量体の製造方法)
本発明のホスト基含有重合性単量体の製造方法は特に限定されない。例えば、前述のホスト基含有ビニル系単量体である場合、ホスト基を有していない重合性単量体と、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体とを反応することでホスト基含有重合性単量体を得ることができる。ホスト基を有していない重合性単量体は、前記ホスト基含有ビニル系単量体以外のビニル化合物であり、以下では、「ビニル化合物A」と表記する。
ビニル化合物Aと、シクロデキストリンとを反応してホスト基含有重合性単量体を得る場合、ビニル化合物Aをシクロデキストリンで置換することでシクロデキストリン置換重合性単量体(以下、「CD置換重合性単量体」という)を製造し、このCD置換重合性単量体のシクロデキストリンに存在する水酸基の水素原子を、炭化水素基等に置換する。
シクロデキストリンに存在する水酸基の水素原子を、炭化水素基等に置換する方法は、例えば、公知のアルキル化反応を広く採用することができる。例えば、炭化水素基への置換は、水素化ナトリウムの存在下でハロゲン化アルキルを、前記CD置換重合性単量体に反応させる方法等により行うことができる。この場合、ハロゲン化アルキルとCD置換重合性単量体の溶液を水素化ナトリウムの懸濁液に滴下する方法を採用することができる。あるいは、ハロゲン化アルキル、前記CD置換重合性単量体及び水素化ナトリウムを一括で混合する方法を採用することもできる。ハロゲン化アルキルとしては、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル等が例示される。
一方、シクロデキストリンに存在する水酸基の水素原子を、アセチル基等のアシル基に置換する方法は、例えば、公知のアシル化反応を広く採用することができる。例えば、アセチル基への置換は、水素化ナトリウムの存在下でハロゲン化アセチルを、前記CD置換重合性単量体に反応させる方法等により行うことができる。この場合、ハロゲン化アセチルと前記CD置換重合性単量体の溶液を水素化ナトリウムの懸濁液に滴下する方法を採用することができる。あるいは、ハロゲン化アセチル、前記CD置換重合性単量体及び水素化ナトリウムを一括で混合する方法を採用することもできる。ハロゲン化アセチルとしては、臭化アセチル、ヨウ化アセチル等が例示される。
シクロデキストリンに存在する水酸基の水素原子を、アセチル基に置換する方法の他例として、無水酢酸又は酢酸イソプロピルの存在下、ピリジン等の酸をトラップすることが可能な溶媒を使用して、前記CD置換重合性単量体をアセチル化する方法が挙げられる。
シクロデキストリンに存在する水酸基の水素原子を、−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)に置換する方法は、例えば、公知のアルキルカルバメート化反応を広く採用することができる。例えば、前記CD置換重合性単量体をアルキルイソシアネートの存在下、有機溶媒(例えば、DMSO)中で反応することで、ホスト基に存在する水酸基の水素原子を、−CONHRに置換できる。アルキルイソシアネートとしては、メチルイソシアネート、エチルイソシアネートを例示できる。
ビニル化合物Aと、シクロデキストリン誘導体とを反応してホスト基含有重合性単量体を得る場合は、シクロデキストリン誘導体としては、シクロデキストリンの少なくとも1個以上の水酸基の水素原子が炭化水素基等で置換された化合物を使用することができる。このシクロデキストリン誘導体は、例えばシクロデキストリンを水素化ナトリウムの存在下、前記ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アセチル又はアルキルイソシアネートと反応させる方法等で得ることができる。
前記のビニル化合物Aとしては、下記一般式(5)、(6)又は(9)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2018159791
Figure 2018159791
Figure 2018159791
(式(5)、(6)及び(9)中、Raは水素原子またはメチル基を示し、Rは上記一般式(h1)のRと同義である。また、式(9)中、Rbは及びnは、上記一般式(h3)のRbは及びnと同義である。)
ビニル化合物Aとして、式(5)で表される化合物を使用する場合、得られるホスト基含有重合性単量体は、前記式(h1)で表わされる化合物である。ビニル化合物Aとして、式(6)で表される化合物を使用する場合、得られるホスト基含有重合性単量体は、前記式(h2)で表わされる化合物である。ビニル化合物Aとして、式(9)で表される化合物を使用する場合、得られるホスト基含有重合性単量体は、前記式(h3)で表わされる化合物である。
ビニル化合物Aを用いて、ホスト基含有重合性単量体を製造する方法の具体例としては、ビニル化合物Aと、少なくとも1以上の水酸基の水素原子が炭化水素基等で置換されたシクロデキストリン誘導体とを、必要に応じて酸触媒の存在下、溶媒中にて脱水縮合する工程を備える方法を挙げることができる。
また、ビニル化合物Aを用いて、ホスト基含有重合性単量体を製造する方法の具体例としては、ビニル化合物Aと、シクロデキストリンとを、必要に応じて酸触媒の存在下、溶媒中にて脱水縮合する工程を備える方法を挙げることができる。この方法では、前記脱水縮合で得られた生成物に含まれる1個以上の水酸基の水素原子をさらに炭化水素基等で置換する工程を経ることで、目的のホスト基含有重合性単量体を得ることができる。炭化水素基等で置換する方法は、前述した方法と同様とすることができる。
上記脱水縮合は、例えば、酸触媒の存在下で行うことができる。酸触媒は特に限定されず、公知の触媒を広く使用でき、例えば、p−トルエンスルホン酸、塩化アルミニウム、塩酸等が挙げられる。酸触媒の使用量は、例えば、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体に対して通常20mol%以下、好ましくは10mol%以下とすることができ、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体に対して通常0.001mol%以上、好ましくは0.01mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上とすることができる。
当該反応における溶媒も特に限定されず、例えば、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。特に、上記酸の濃度の調整が容易になる上に、反応を制御しやすいという観点から、溶媒はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンであることが好ましく、ジメチルホルムアミドであることが特に好ましい。脱水縮合の反応温度及び反応時間も限定されず、適宜の条件で行うことができる。反応をより速やかに進めるという観点から、反応温度は25〜90℃、反応時間は1分〜3時間であることが好ましい。反応時間は5分〜1時間であることがさらに好ましい。上記反応の後は、公知の精製手段等により精製を行うことができる。
(ホスト基含有非ビニル系単量体の製造方法)
ホスト基含有重合性単量体が、前述のホスト基含有非ビニル系単量体である場合、この製造方法は特に限定されず、公知の製造方法を広く採用することができる。
例えば、ホスト基含有重合性単量体が、式(h40)で表される化合物において、R40がNHである場合、アジド(N)を有するシクロデキストリン誘導体に、トリフェニルホスフィン及びアンモニア水を加えてホスト基含有非ビニル系単量体を得る工程、を備える製造方法によって、目的の式(h40)で表される化合物を得ることができる。反応条件は、特に限定されず、公知のアミノ化反応と同様の条件を採用することができる。この工程では、必要に応じて各種溶媒を使用することができる。溶媒としては、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。目的物を得た後は、必要に応じて、適宜の方法で精製することができる。
アジド(N)を有するシクロデキストリン誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、アジド(N)を有するシクロデキストリン(例えば、6−デオキシ−6−モノアジド−β−シクロデキストリン)に、水素化ナトリウム及びヨウ化メチルを添加することで、アジド(N)を有するシクロデキストリン誘導体を得ることができる。この反応では、必要に応じて各種溶媒を使用することができる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。反応後は、必要に応じて、クエンチ処理を行うことができ、さらに、適宜の方法で精製することができる。
また、ホスト基含有重合性単量体が、例えば、式(h40)で表される化合物において、R40がOHである場合、その製造方法は特に限定されない。例えば、ホスト基含有ビニル系単量体を出発原料とし、これを加水分解することで得ることができる。加水分解は、例えば、トリフルオロ酢酸等の強酸を用いることができ、例えば、各種有機溶媒を使用することができる。ホスト基含有ビニル系単量体としては、例えば、上述の(h1−1)〜(h1−6)等を挙げることができる。有機溶媒としては、アセトン等を挙げることができる。
ホスト基含有重合性単量体が、式(h40)で表される化合物において、R40がOHである場合の他の製造方法は、Tos−R(Tosはトシル基、Rは前記ホスト基)を塩基処理する方法を挙げることができる。この場合、塩基としては、Mgを懸濁したMeOH等を使用することができる。Mgを懸濁したMeOHにおいて、Mgの量はMeOHに対して、1〜20重量%とすることができる。塩基処理の条件は特に限定されず、公知の塩基処理と同様の条件を採用することができる。塩基処理の他の方法としては、1〜20重量%のNaOH又はKOH水溶液を還流する操作を採用することもできる。ここで使用するTos−Rは、各種方法で製造することができる。例えば、トシル化されたシクロデキストリンを、上述した炭化水素基等に置換する方法、アセチル基に置換する方法、及び、−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)に置換する方法のいずれかの方法によって、Tos−Rを得ることができる。
以上の製造方法により、本発明のホスト基含有重合性単量体を得ることができる。得られるホスト基含有重合性単量体の態様は、前述と同様である。
なお、ホスト基含有重合性単量体の製造方法は上記に限定されず、その他、公知の方法で製造することもできる。例えば、上述した脱水縮合を利用する方法では、1段階の反応によって、ホスト基含有重合性単量体を製造することができるという利点がある。
(ホスト基含有重合性単量体以外の単量体)
本発明のホスト基含有重合性単量体は、単独又は他の重合性単量体と組み合わせて重合反応をすることができる。この重合反応により重合体が形成され、後記高分子材料を得ることができる。以下、ホスト基含有重合性単量体と、他の重合性単量体とを含む重合性単量体を、「重合性単量体混合物」と表記する。
他の重合性単量体としては、例えば、ゲスト基含有重合性単量体(すなわち、ゲスト基を有する重合性単量体)を挙げることができる。また、その他、他の重合性単量体として、ホスト基含有重合性単量体及びゲスト基含有重合性単量体以外であって、これらと共重合可能な重合性単量体(以下、「第3の重合性単量体」と表記する)を挙げることができる。さらに、他の重合性単量体として、ホスト基含有重合性単量体、ゲスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体以外であって、縮合反応(例えば、重縮合又は縮合重合)可能な単量体(以下、「縮合系単量体」と表記する)を挙げることができる。
(ゲスト基含有重合性単量体)
ゲスト基含有重合性単量体は、重合性単量体がゲスト基で置換された化合物である。
ゲスト基としては、前記ホスト基とホスト−ゲスト相互作用をすることができる基である限りはその種類は限定されない。
ゲスト基としては、炭素数3〜30の直鎖又は分岐状の炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基及び有機金属錯体等が挙げられ、これらは一以上の置換基を有していてもよい。より具体的なゲスト基としては、炭素数4〜18の鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。炭素数4〜18の鎖状のアルキル基は直鎖及び分岐のいずれでもよい。環状のアルキル基は、かご型の構造であってもよい。置換基としては、前述の置換基と同様であり、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、保護されていてもよい水酸基等を挙げることができる。
ゲスト基は、その他、例えば、アルコール誘導体;アリール化合物;カルボン酸誘導体;アミノ誘導体;環状アルキル基又はフェニル基を有するアゾベンゼン誘導体;桂皮酸誘導体;芳香族化合物及びそのアルコール誘導体;アミン誘導体;フェロセン誘導体;アゾベンゼン;ナフタレン誘導体;アントラセン誘導体;ピレン誘導体:ペリレン誘導体;フラーレン等の炭素原子で構成されるクラスター類;ダンシル化合物の群から選ばれる少なくとも1種が例示されるゲスト分子から一個の原子(例えば、水素原子)が除されて形成される1価の基を挙げることもできる。
ゲスト基のさらなる具体例としては、t−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、イソボルニル基、アダマンチル基及びこれらに前記置換基が結合した基を挙げることができる。
ゲスト基含有重合性単量体の具体例としては、前記ゲスト基が結合したビニル系の重合性単量体(以下、「ゲスト基含有ビニル系単量体」と表記することがある)を挙げることができる。
例えば、ゲスト基含有ビニル系単量体は、下記の一般式(g1)
Figure 2018159791
(式(g1)中、Raは水素原子またはメチル基を示し、Rは前記ゲスト基を示し、Rは式(h1)のRと同義である。)
で表される化合物を挙げることができる。
式(g1)で表される重合性単量体の中でも、(メタ)アクリル酸エステル又はその誘導体(すなわち、Rが−COO−)、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体(すなわち、Rが−CONH−又は−CONR−であり、Rは前記置換基と同義である)であることが好ましい。この場合、重合反応が進みやすく、また、得られる高分子材料の靭性及び強度もより高くなり得る。
ゲスト基含有ビニル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアダマンチル、1−(メタ)アクリルアミドアダマンタン、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、N−ドデシル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸t−ブチル、1−アクリルアミドアダマンタン、N−(1−アダマンチル)(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−1−ナフチルメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、イソステアリルアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ゲスト基含有ビニル系単量体は、公知の方法で製造することができる。また、ゲスト基含有重合性単量体は、市販品を使用することもできる。
(第3の重合性単量体)
前記第3の重合性単量体は、前記ホスト基含有重合性単量体及びゲスト基含有重合性単量体と共重合可能な各種の化合物を挙げることができる。例えば、第3の重合性単量体としては、公知である各種のビニル系重合性単量体を挙げることができる。
ビニル系重合性単量体の具体例としては、下記一般式(a1)
Figure 2018159791
(式(a1)中、Raは水素原子またはメチル基、Rはハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、1個の置換基を有していてもよいアミノ基又はその塩、1個の置換基を有していてもよいカルボキシル基又はその塩、1個以上の置換基を有していてもよいアミド基又はその塩、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基を示す)
で表される化合物を挙げることができる。
式(a1)中、Rが1個の置換基を有するカルボキシル基である場合、カルボキシル基の水素原子が炭化水素基、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基)、メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールのユニット数は1〜20、好ましくは1〜10、特に好ましくは、2〜5)、エトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールのユニット数は1〜20、好ましくは1〜10、特に好ましくは、2〜5)等で置換されたカルボキシル基(すなわち、エステル)が挙げられる。
式(a1)中、Rが1個以上の置換基を有するアミド基、すなわち、第2級アミド又は第3級アミドである場合、第1級アミドの1個の水素原子又は2個の水素原子が互いに独立に炭化水素基又はヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基)で置換されたアミド基が挙げられる。
式(a1)中、Rが、1個の置換基を有するカルボキシル基;1個以上の置換基を有するアミド基;アミノ基;アミド基;カルボキシル基;であることが好ましい。この場合、高分子ゲルを構成する架橋重合体の構造が安定となり、高分子ゲルの物性が向上しやすい。
中でも、式(a1)中、Rが、水素原子が炭素数1〜10のアルキル基で置換されたカルボキシル基、1個以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基で置換されたアミド基であることが好ましい。この場合、第3の重合性単量体は比較的疎水性が高く、ホスト基重合性単量体との共重合が進行しやすい。より好ましくは、置換基である前記アルキル基の炭素数2〜8、特に好ましくは2〜6であり、この場合、得られる高分子材料の靭性及び強度も向上しやすい。このアルキル基は直鎖及び分岐のいずれであってもよい。
式(a1)で表される単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、アリルアミン、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングルコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、スチレン等が挙げられる。これらは1種単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
前記第3の重合性単量体の具体例としては、前記一般式(a1)で表される化合物以外に、例えば、ジエン化合物を挙げることができる。ジエン化合物の具体例としては、イソプレン、1,3−ブタジエンを挙げることができる。
重合性単量体混合物がゲスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の少なくともいずれか一方を含む場合、ホスト基含有重合性単量体は、前記ホスト基含有ビニル系単量体を使用する。重合性単量体混合物は、前記ホスト基含有ビニル系単量体と、ゲスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の少なくともいずれか一方を含む場合は、この重合性単量体混合物は、ラジカル重合により、ビニル系高分子化合物を形成し得る。重合性単量体混合物は、前記ホスト基含有ビニル系単量体、ゲスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の少なくともいずれか一方のみで構成されていてもよい。前記ホスト基含有ビニル系単量体、ゲスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の混合割合は、後記「単量体A1」と同様とすることができる。
(縮合系単量体)
縮合系単量体は、ホスト基含有重合性単量体、ゲスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体以外であって、縮合反応(例えば、重縮合又は縮合重合)可能な単量体である。縮合系単量体の種類は特に限定されず、縮合反応(重縮合及び縮合重合を含む)可能な公知の単量体を広く採用することができる。
後記する可動性架橋重合体を形成できるという観点から、縮合系単量体は、2個以上のアミノ基を有する化合物、2個以上の水酸基を有する化合物、2個以上のカルボキシ基を有する化合物、2個以上のエポキシ基を有する化合物、2個以上のイソシアネート基を有する化合物を挙げることができる。これらは1種単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
2個以上のアミノ基を有する化合物としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン等が挙げられる。これらは1種単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
2個以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ビスフェノールA等が挙げられる。これらは1種単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
2個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、例えば、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸等が挙げられる。これらは1種単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
2個以上のエポキシ基を有する化合物としては、例えば、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルを挙げることができ、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ1−メチルエチレングリコールジグリシジルエーテルである。ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルの数平均分子量Mnは、100〜100000とすることができる。これらは1種単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)等が挙げられる。これらは1種単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
その他、縮合系単量体としては、塩化カルボニル、ジフェニルカーボネート等が例示される。
重合性単量体混合物が縮合系単量体を含む場合、ホスト基含有重合性単量体は、前記ホスト基含有非ビニル系単量体、例えば、式(h50)で表される化合物を使用する。重合性単量体混合物が前記ホスト基含有非ビニル系単量体と縮合系単量体とを含む場合、この重合性単量体混合物は、縮合反応(重縮合及び縮合重合を含む)により、縮合系高分子化合物を形成し得る。重合性単量体混合物は、前記ホスト基含有非ビニル系単量体と、縮合系単量体のみで構成されていてもよい。記ホスト基含有非ビニル系単量体と、縮合系単量体との混合割合は、後記「単量体A2」と同様とすることができる。
前記縮合系高分子化合物は、例えば、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂等が主成分となり得る。
2.包接化合物
本発明のホスト基含有重合性単量体は、ホスト基を有することから、包接化合物を形成することができる。例えば、ホスト基含有重合性単量体と、ゲスト基を有する重合性単量体との包接化合物が挙げられる。具体的には、包接化合物は、前記ホスト基含有ビニル系単量体と、後記ゲスト基含有ビニル系単量体とが包接されてなる包接化合物1、又は、前記ホスト基含有非ビニル系単量体と、後記縮合反応可能な官能基を有する化合物とが包接されてなる包接化合物2を挙げることができる。包接化合物2では、前記ホスト基含有非ビニル系単量体は、例えば、式(h50)で表される化合物である。包接化合物とは、ホスト基含有重合性単量体のホスト基の環内に、他の化合物が包接されてなる包接錯体であり、特に、本明細書では、包接錯体は、重合性を示すことから、「包接モノマー」と表記することもできる。
包接化合物1で使用できるゲスト基を有する重合性単量体は、前記ゲスト基含有ビニル系単量体と同一である。
包接化合物2を形成できるゲスト基含有非ビニル系単量体としては、特に、縮合反応可能な官能基を有する化合物を挙げることができる。
縮合反応可能な官能基を有する化合物としては、1又は2個のアミノ基を有する化合物、1又は2個の水酸基を有する化合物、1又は2個のカルボキシ基を有する化合物、1又は2個のエポキシ基を有する化合物、1又は2個のイソシアネート基を有する化合物、1又は2個のチオール基を有する化合物、1又は2個のカルボン酸塩化物を有する化合物を挙げることができる。
1又は2個のアミノ基を有する化合物としては、例えば、1−アダマンタンアミン、ベンジルアミン、tert−ブチルアミン、ブチルアミン、1−アミノピレン、アミノフェロセン、4−アミノアゾベンゼン、4−アミノスチルベン、シクロヘキシルアミン、ヘキシルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−キシリレンジアミン、ジアミノフェロセン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノスチルベン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,6−ジアミノシクロヘキサン、α、ω−ジアミノポリエチレングルコール、α、ω−ジアミノポリプロピレングルコール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン1,1−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、2、2−ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2、2−ビス(4-アミノフェニル)ブタン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルメタン、2、2−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、ビス(4−アミノフェニル)−2、2−ジクロロエチレン、1、1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,3−ビス(2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、1,4−ビス(2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、5,5’−(1−メチルエチリデン)-ビス[1,1’−(ビスフェニル)−2−アミン]プロパン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
1又は2個の水酸基を有する化合物としては、例えば、1−ヒドロキシアダマンタン、ベンジルアルコール、tert−ブチルアルコール、ブチルアルコール、1−ヒドロキシピレン、1−ヒドロキシメチルフェロセン、4−ヒドロキシアゾベンゼン、4−ヒドロキシスチルベン、シクロヘキサノール、ヘキサノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ベンゼンジメタノール、1,1’−ジヒドロキシメチルフェロセン、4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼン、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、1,4−シクロヘキノール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングルコール、ポリプロピレングルコール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2、2−ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2、2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2、2−ジクロロエチレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、5,5’−(1−メチルエチリデン)-ビス[1,1’−(ビスフェニル)−2−ヒドロキシ]プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビスフェノールA等を挙げることができる。
1又は2個のカルボキシ基を有する化合物としては、例えば、1−カルボキシアダマンタン、安息香酸、ピバル酸、ブタン酸、1−カルボキシピレン、1−カルボキシフェロセン、4−カルボキシアゾベンゼン、4−カルボキシスチルベン、シクロヘキサン酸、ヘキサン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、1,4−ベンゼンジカルボン酸、1,4−フェニレン二酢酸、1,1’−ジカルボキシフェロセン、4,4’−ジカルボキシアゾベンゼン、4,4’−ジカルボキシスチルベン、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、α、ω−ジカルボキシポリエチレングルコール、α、ω−ジカルボキシポリプロピレングルコール、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-カルボキシフェニル)−1−フェニルエタン、2、2−ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2、2−ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4−カルボキシフェニル)ジフェニルメタン、2、2−ビス(3−メチル−4−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4−カルボキシフェニル)−2、2−ジクロロエチレン、1、1−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−カルボキシ3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,3−ビス(2−(4−カルボキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、1,4−ビス(2−(4−カルボキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、5,5’−(1−メチルエチリデン)−ビス[1,1’−(ビスフェニル)−2−カルボキシ]プロパン、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
1又は2個のカルボン酸塩化物を有する化合物としては、例えば、1−アダマンタンカルボニルクロリド、テレフタロイルクロリド、トリメチルアセチルクロリド、ブチリルクロリド、1−ピレンカルボニルクロリド、1−フェロセンカルボニルクロリド、4−アゾベンゼンカルボニルクロリド、4−スチルベンカルボニルクロリド、シクロヘキサンカルボニルクロリド、ヘキシルクロリド、4,4’−ジフェニルメタンジカルボニルクロリド、1,4−ベンゼンジカルボンニルクロリド、1,4−フェニレンジカルボニルクロリド、1,1’−フェロセンジカルボニルクロリド、4,4’−アゾベンゼンジカルボニルクロリド、4,4’−スチルベンカルボニルクロリド、1,4−シクロヘキサンジカルボニルクロリド、1,6−ヘキサンジカルボニルクロリド、α、ω−ポリエチレングルコールジカルボニルクロリド、α、ω−ポリプロピレングルコールジカルボニルクロリド、2,2-ビス(4−フェニルカルボニルクロリド)プロパン、1,1−ビス(4−フェニルカルボニルクロリド)−1−フェニルエタン、2、2−ビス(4−フェニルカルボニルクロリド)ヘキサフルオロプロパン、2、2−ビス(4−フェニルカルボニルクロリド)ブタン、ビス(4−フェニルカルボニルクロリド)ジフェニルメタン、2、2−ビス(3−メチル−4−フェニルカルボニルクロリド)プロパン、ビス(4−フェニルカルボニルクロリド)−2、2−ジクロロエチレン、1、1−ビス(4−フェニルカルボニルクロリド)エタン、2,2−ビス(3−イソプロピルフェニル−4−カルボニルクロリド)プロパン、1,3−ビス(2−(4−フェニルカルボニルクロリド)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−フェニルカルボニルクロリド)スルホン、1,4−ビス(2−(4−フェニルカルボニルクロリド)−2−プロピル)ベンゼン、5,5’−(1−メチルエチリデン)−ビス[1,1’−(ビスフェニル)−2−カルボニルクロリド]プロパン、1,1−ビス(4−フェニルカルボニルクロリド)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−フェニルカルボニルクロリド)シクロヘキサン等を挙げることができる。
1又は2個のエポキシ基を有する化合物としては、例えば、アダマンタンオキシド、スチレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1−エポキシピレン、エポキシフェロセン、4−エポキシアゾベンゼン、4−エポキシスチルベン、シクロヘキシルオキシド、1,2−エポキシヘキサン、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、p−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルオキイシフェロセン、4,4’−ジグリシジルオキシアゾベンゼン、4,4’−ジグリシジルオキシフェロセン、1,4−ジグリシジルオキシシクロヘキサン、1,6−ジグリシジルオキシシクロヘキサン、α、ω−ジグリシジルオキシポリエチレングルコール、α、ω−ジグリシジルオキシポリプロピレングルコール、1,1-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)−1−フェニルエタン、2、2−ビス(4-グリシジルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2、2−ビス(4-グリシジルオキシフェニル)ブタン、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)ジフェニルメタン、2、2−ビス(3−メチル−4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)−2、2−ジクロロエチレン、1、1−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−グリシジルオキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,3−ビス(2−(4−グリシジルオキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)スルホン、1,4−ビス(2−(4−グリシジルオキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、5,5’−(1−メチルエチリデン)−ビス[1,1’−(ビスフェニル)−2−グリシジルオキシ]プロパン、1,1−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
1又は2個のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、1−アダマンタンイソシアネート、ベンジルイソシアネート、フェニルイソシアネート、tert−ブチルイソシアネート、ブチルイソシアネート、1−ピレンイソシアネート、フェロセンイソシアネート、アゾベンゼン−4−イソシアネート、スチルベン−4−イソシアネート、シクロヘキサンイソシアネート、ヘキサンイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートフェニルメタン、p−ベンゼンジイソシアネート、フェロセン−1,1’−ジイソシアネート、アゾベンゼン−4,4’−ジイソシアネート、スチルベン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,6−ジイソシアネート、ポリエチレングルコールジイソシアネート、ポリプロピレングルコールジイソシアネート、2,2−ビス(4−フェニルイソシアネート)プロパン、1,1−ビス(4−フェニルイソシアネート)−1−フェニルエタン、2、2−ビス(4-フェニルイソシアネート)ヘキサフルオロプロパン、2、2−ビス(4−フェニルイソシアネート)ブタン、ビス(4−フェニルイソシアネート)ジフェニルメタン、2、2−ビス(3−メチル−4−フェニルイソシアネート)プロパン、ビス(4−フェニルイソシアネート)−2、2−ジクロロエチレン、1、1−ビス(4−フェニルイソシアネート)エタン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−フェニルイソシアネート)プロパン、1,3−ビス(2−(4−フェニルイソシアネート−)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−フェニルイソシアネート−)スルホン、1,4−ビス(2−(4−フェニルイソシアネート−)−2−プロピル)ベンゼン、5,5’−(1−メチルエチリデン)-ビス[1,1’−(ビスフェニル)−2−イソシアネート]プロパン、1,1−ビス(4−フェニルイソシアネート−)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−フェニルイソシアネート−)シクロヘキサン等を挙げることができる。
1又は2個のチオール基を有する化合物としては、例えば、1−アダマンタンチオール、ベンジルチオール、tert−メルカプタン、ブタンチオール、1−チオールピレン、フェロセンチオール、4−チオアゾベンゼン、4−チオスチルベン、シクロヘキシルチオール、ヘキサンチオール、4,4’−ジチオフェニルメタン、p−ベンゼンジチオール、1,1’−ジチオフェロセン、4,4’−ジチオアゾベンゼン、4,4’−ジチオスチルベン、1,4−ジチオシクロヘキサン、1,6−ジチオシクロヘキサン、α、ω−ジチオポリエチレングルコール、α、ω−ジチオポリプロピレングルコール、1,1−ビス(4−チオフェニル)−1−フェニルエタン、2、2−ビス(4−チオフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2、2−ビス(4−チオフェニル)ブタン、ビス(4−チオフェニル)ジフェニルメタン、2、2−ビス(3−メチル−4−チオフェニル)プロパン、ビス(4−チオフェニル)−2、2−ジクロロエチレン、1、1−ビス(4−チオフェニル)エタン、2,2−ビス(4−チオ3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,3−ビス(2−(4−チオフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−チオフェニル)スルホン、1,4−ビス(2−(4−チオフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、5,5’−(1−メチルエチリデン)-ビス[1,1’−(ビスフェニル)−2−チオール]プロパン、1,1−ビス(4−チオフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−チオフェニル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
包接化合物2の形成に好ましい縮合反応可能な官能基を有する化合物としては、1−アダマンタンアミン、1−ヒドロキシアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
前記包接化合物2を構成する重合性を示す官能基を有する化合物における官能基は、アミノ基、水酸基、エポキシ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基、カルボン酸塩化物であることが好ましい。
前記包接化合物2の例として、下記式(h4−1)又は(h4−2)で示される構造を挙げることができる。
Figure 2018159791
式(h4−1)及び(h4−2)で表される包接化合物2において、Rは例えば、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−トリメチル−シクロデキストリン由来の基である。6−モノデオキシ−6−モノアミノ−トリメチル−シクロデキストリンは、ホスト基とアミノ基との結合に形成される分子とみることができる。NH−Rにおけるアミノ基は、重合性を示す官能基の役割も果たし得る。一方、ホスト基環内に包接されている化合物は、式(h4−1)では4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、式(h4−2)では1−アダマンタンアミンである。
包接化合物1において、ゲスト基含有ビニル単量体は、ホスト基含有ビニル単量体のホスト基を貫通できるサイズであることが好ましい。また、包接化合物2において、縮合反応可能な官能基を有する化合物は、ホスト基含有非ビニル単量体のホスト基を貫通できるサイズであることが好ましい。ホスト基を貫通とは、ホスト基の環内を貫通することを意味する。この場合、包接化合物1の重合体及び包接化合物2の重合体は、後記する可動性架橋重合体が形成されやすい。
ホスト基を貫通できるサイズであるゲスト基含有重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、イソプレン、1,3−ブタジエン、(メタ)アクリル酸、アリルアミン、スチレン、無水マレイン酸等を挙げることができる。
ホスト基を貫通できるサイズの縮合反応可能な官能基を有する化合物としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、α、ω−ジアミノポリエチレングルコール、α、ω−ジアミノポリプロピレングルコール等を挙げることができる。
包接化合物は、後記する高分子材料に含まれる重合体を形成するための原料として好適に使用することができる。
包接化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、包接化合物1は、前記ホスト基含有ビニル系単量体と、前記ゲスト基含有ビニル単量体とを混合して、包接化合物を得る工程を備える方法によって製造することができる。具体的には後記する「包接化合物形成工程」を挙げることができる。包接化合物2の製造方法も特に限定されず、公知の包接化合物の製造方法を広く採用することができる、前記ホスト基含有非ビニル系単量体と、前記縮合反応可能な官能基を有する化合物とを混合して、包接化合物2を得る工程を備える方法によって製造することができる。
3.高分子材料
本発明の高分子材料は、前記ホスト基含有重合性単量体の重合体を含むことができる。さらには、本発明の高分子材料は、前記ホスト基含有重合性単量体を含む重合性単量体混合物の重合体を含むことも好ましい。より具体的には、高分子材料は、重合性単量体混合物の重合反応により得られる重合体を含むことも好ましい。ここでいう重合性単量体混合物は、前記重合性単量体混合物と同様の構成である。高分子材料に含まれる重合体は、ホスト基含有重合性単量体に由来するホスト基を有する。重合体は、前記ホスト基含有重合性単量体単独の重合体であってもよいし、前記重合性単量体混合物の重合体であってもよい。
ホスト基含有重合性単量体又は前記重合性単量体混合物の重合反応は、公知の方法で行うことができる。
重合反応の原料としては、ホスト基含有重合性単量体単独又は前記重合性単量体混合物を使用する。ホスト基含有重合性単量体単独で重合反応を行う場合、ホスト基含有重合性単量体は、前記ホスト基含有ビニル系単量体を使用する。以下、重合反応の原料として使用するホスト基含有ビニル系単量体単独又は前記重合性単量体混合物を「単量体A」と表記する。また、単量体Aを使用する重合反応を「重合反応A」と表記することがある。
さらに、単量体Aがホスト基含有ビニル系単量体単独、又は、ホスト基含有ビニル系単量体と、前記ゲスト基含有重合性単量体及び前記第3の重合性単量体の少なくともいずれか一方と、を含む場合を「単量体A1」と表記する。また、単量体A1を使用する重合反応を「重合反応A1」と表記することがある。
また、単量体Aがホスト基含有非ビニル系単量体と、縮合系単量体とを含む場合を「単量体A2」と表記する。また、単量体A2を使用する重合反応を「重合反応A2」と表記することがある。単量体A2のホスト基含有非ビニル系単量体は、例えば、式(h50)で表される化合物である。
なお、念のための注記に過ぎないが、単量体A1がゲスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の一方または両方を含む場合、式(h1)又は(h2)のRaと、式(g1)のRaと、式(a1)のRaは、これらの二以上が同一であってもよいし、あるいは、これらのすべてが互いに異なっていてもよい。
(重合反応A1)
単量体A1は、ホスト基含有ビニル単量体、ゲスト基含有ビニル単量体及び第3の重合性単量体を含む場合、これらの全量に対し、ホスト基含有ビニル単量体を0.25〜50モル%、ゲスト基含有ビニル単量体を0.25〜50モル%、第3の重合性単量体を0〜99.5モル%とすることができる。好ましくは、ホスト基含有ビニル単量体を0.25〜20モル%、ゲスト基含有ビニル単量体を0.25〜20モル%、第3の重合性単量体を40〜99.5モル%とすることができる。より好ましくは、ホスト基含有ビニル単量体を0.25〜5モル%、ゲスト基含有ビニル単量体を0.25〜5モル%、第3の重合性単量体を90〜99.5モル%とすることができる。特に好ましくは、ホスト基含有ビニル単量体、ゲスト基含有ビニル単量体及び第3の重合性単量体の全量に対し、ホスト基含有重合性単量体を1〜3モル%、ゲスト基含有重合性単量体を1〜3モル%、第3の重合性単量体を94〜97モル%とすることができる。
単量体A1は、ホスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体を含み、ゲスト基含有重合性単量体を含まない場合、ホスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の全量に対し、ホスト基含有重合性単量体を0.25〜50モル%、第3の重合性単量体を50〜99.75モル%とすることができる。好ましくは、ホスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の全量に対し、ホスト基含有重合性単量体を0.5〜20モル%、第3の重合性単量体を80〜99.5モル%とすることができる。より好ましくは、ホスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の全量に対し、ホスト基含有重合性単量体を0.75〜10モル%、第3の重合性単量体を90〜99.25モル%とすることができる。特に好ましくは、ホスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の全量に対し、ホスト基含有重合性単量体を1〜5モル%、第3の重合性単量体を95〜99モル%とすることができる。
単量体A1に含まれるホスト基含有ビニル単量体は、従来のホスト基含有ビニル単量体に比べると、ゲスト基含有ビニル単量体との親和性及び第3の重合性単量体の中でも疎水性である第3の重合性単量体との親和性が非常に高い。そのため、従来、ホスト基含有ビニル単量体及びゲスト基含有ビニル単量体の割合を高くすることは、親和性の観点から困難であったが、本発明のホスト基含有重合性単量体を使用する場合は、ホスト基含有ビニル単量体及びゲスト基含有ビニル単量体の配合割合を高くすることができる。
従って、本発明のホスト基含有重合性単量体を使用することで、ゲスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の選択の幅及び配合割合の幅が広がり、重合体を設計するにあたっての自由度が高い。
なお、本明細書でいう「疎水性である第3の重合性単量体」は、限定的な解釈を望むものではないが、例えば、メタクリル酸n−ブチルは疎水性である第3の重合性単量体に該当する。そして、メタクリル酸n−ブチルよりも水溶性が低い重合性単量体は、「疎水性である第3の重合性単量体」ということができる。
単量体A1は、ホスト基含有ビニル単量体、ゲスト基含有ビニル単量体及び第3の重合性単量体を所定量配合することで調製することができる。
単量体A1がホスト基含有ビニル単量体及びゲスト基含有ビニル単量体を含む場合、ホスト基含有ビニル単量体及びゲスト基含有ビニル単量体の包接化合物1を形成することもできる。
例えば、ホスト基含有ビニル単量体及びゲスト基含有ビニル単量体を含む単量体A1を超音波処理及び/又は加熱処理を行う工程により、ホスト基含有ビニル単量体及びゲスト基含有ビニル単量体の包接化合物1が形成され得る。以下、包接化合物1を形成するための前記工程を「包接化合物形成工程」ということがある。
この包接化合物1は、ホスト基とゲスト基とのホスト−ゲスト相互作用が起こることで形成される。このような包接化合物1が形成されると、単量体A1がより均一な溶液となり得るので、重合反応A1が進行しやすく、また、得られる重合体は、ホスト−ゲスト相互作用が形成されやすくなり、結果として、得られる高分子材料の靭性及び強度が向上しやすい。
包接化合物形成工程における超音波処理は特に限定されず、例えば、公知の方法で行うことができる。
包接化合物形成工程における加熱処理の条件も特に限定されない。例えば、加熱温度は、20〜100℃、好ましくは50〜80℃である。また、加熱時間は、1分〜12時間、好ましくは15分〜1時間である。加熱手段も特に限定されず、例えば、ホットスターラーを用いる方法、恒温槽を用いる方法等が挙げられる。加熱と共に又は加熱に替えて前記超音波処理を施すこともできる。
包接化合物形成工程において、包接化合物が形成されたか否かについては、例えば、単量体Aの状態を目視することで判定することができる。具体的には、包接化合物が形成されていなければ、単量体Aは懸濁した状態あるいは静置すると相分離した状態であるが、包接化合物が形成されると、ジェル状又はクリーム状等の粘性を有する状態となり得る。また、包接化合物が形成されると、単量体A1は透明となり得る。
ホスト基含有ビニル単量体は、ホスト基が炭化水素基等を有していることから、ゲスト基ビニル単量体との親和性が高いため、従来のホスト基含有ビニル単量体に比べると、より包接化合物1が形成されやすい。その結果、単量体A1が包接化合物1を形成する場合、単量体A1はより均一な溶液となりやすく、高分子材料の靭性及び強度が顕著に向上しやすい。
包接化合物形成工程により包接化合物1が形成された単量体A1を重合反応A1の原料として使用する場合であって、単量体A1がさらに第3の重合性単量体を含む場合、第3の重合性単量体は包接化合物1が形成された後に単量体A1に加えてもよいし、あるいは、包接化合物1が形成される前に単量体A1に加えてもよい。後記する重合開始剤、溶媒等も包接化合物1の形成前の添加及び形成後の添加いずれであってもよい。
重合反応A1では、単量体A1の他、重合開始剤を使用することができる。重合開始剤の種類は特に限定されず、公知の重合開始剤を使用できる。
単量体A1がビニル系化合物等のラジカル重合性である場合、重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム(以下、APSと称することもある)、アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと称することもある)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド(以下、VA−044と称することもある)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)シリーズ等)等が挙げられる。ラジカル重合性の重合開始剤の濃度は、例えば、重合性単量体Aの総量に対し、0.5〜5モル%とすることができる。
上記重合反応A1を行うにあたり、必要に応じて、その他の添加剤を添加してもよい。その他の添加剤としては、重合促進剤、架橋剤等が例示される。上記重合促進剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等である。重合促進剤の濃度は、例えば、単量体A1の総量に対し、0.5〜5モル%とすることができる。
重合反応A1は、溶媒を使用してもよいし、溶媒を使用する場合は、溶媒の種類は特に限定されない。溶媒の使用量も特に限定されない。
あるいは、重合反応A1は、溶媒の不存在下で行うこともできる。単量体A1は、ホスト基含有ビニル単量体を含み、特にホスト基が炭化水基等を有していることから、親水性及び疎水性の重合性単量体のいずれの単量体に対しても高い親和性を示す。そのため、重合反応Aでは、溶媒を使用せずとも単量体A1が均一な溶液となり得る。
従って、製造プロセスをより簡便にすることができ、得られる重合体が優れた靭性及び強度を有しやすいという観点から、重合反応A1は、溶媒の不存在下にて行うことが好ましい。
中でも、ホスト基含有ビニル単量体は、特に疎水性の重合性単量体との親和性に優れることから、単量体A1におけるゲスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体が疎水性である場合、特に、溶媒の不存在下で重合反応A1を行いやすい。
溶媒の不存在下での重合反応A1により得られる重合体は、溶媒による可塑効果等の影響がないことから、より靭性及び強度に優れる。
重合反応A1の条件は、単量体A1の重合性や単量体Aの構成成分、重合開始剤の種類及び半減期温度等に応じて適宜の条件で行うことができる。例えば、単量体A1がラジカル重合性である場合、重合反応A1の温度は、0〜100℃とすることができ、好ましくは20〜25℃で行える。
重合反応A1は、紫外線等を照射する光重合によっても行うことができ、特に、溶媒の不存在下でのラジカル重合反応では、好適に光重合を採用することができる。光重合には光重合開始剤を用いることができる。光重合では、波長200〜400nmのUV光を照射することにより重合反応を行うことができる。
重合反応A1の時間は特に限定されず、1分〜24時間とすることができ、好ましくは、1時間〜24時間とすることができる。
以上のような重合反応A1により、単量体A1の重合体を得ることができる。以下、上記単量体A1の重合反応A1により得られた重合体を「重合体A1」と表記する。
(重合体A1)
重合体A1は、単量体A1がホスト基含有ビニル単量体と、前記第3の重合性単量体とを含み、ゲスト基含有ビニル単量体を含まない場合、重合体A1は、ホスト基含有ビニル単量体と、前記第3の重合性単量体とが重合してなる共重合体(「重合体A1−1」という)である。重合性単量体混合物がホスト基含有ビニル単量体と、ゲスト基含有ビニル単量体とを含み、前記第3の重合性単量体を含まない場合、重合体A1は、ホスト基含有ビニル単量体と、ゲスト基含有ビニル単量体とが重合してなる共重合体(「重合体A1−2」という)である。重合性単量体混合物がホスト基含有ビニル単量体と、ゲスト基含有ビニル単量体と、前記第3の重合性単量体とを含む場合、重合体Aは、ホスト基含有ビニル単量体と、ゲスト基含有ビニル単量体と、前記第3の重合性単量体とが重合してなる共重合体(「重合体A1−3」という)である。重合体A1が共重合体である場合は、重合体A1−1、重合体A1−2及び重合体A1−3のいずれの態様であってもよい。
重合体A1が重合体A1−1である場合、ホスト基含有ビニル単量体及び前記第3の重合性単量体の種類によっては、重合体A1−1は可動性架橋重合体となり得る。ここでいう可動性架橋重合体とは、重合体中の架橋点が移動可能に形成されていることを意味する。例えば、重合体側鎖に結合しているホスト基(シクロデキストリン構造)の環内を、他の重合体の主鎖が貫通した構造を有し、かつ、その主鎖がホスト基の環を通してスライドできるように形成されている重合体を、可動性架橋重合体ということができる。高分子材料が可動性架橋重合体である場合、より優れた靭性を有することができる。
例えば、単量体A1が、前記ホスト基含有ビニル単量体のホスト基を貫通できるサイズの第3の重合性単量体を含有する場合、該重合性単量体混合物の重合体は、可動性架橋重合体を形成しやすい。第3の重合性単量体が、ホスト基(シクロデキストリン構造)の環内を貫通しながら重合が進行するからである。
単量体A1が、ホスト基含有ビニル単量体として前記包接モノマーで構成され、かつ、第3の重合性単量体が前記縮合系単量体で構成される場合も、該重合性単量体混合物の重合体は可動性架橋重合体を形成し得る。
重合体A1−1が可動性架橋重合体を形成しているか否かについては、例えば、該重合体A1の膨潤試験の結果から判定することができる。例えば、重合体A1−1を、化学架橋剤を使用せずに調製し、得られた重合体A1−1を溶媒に加えた場合において、溶解せずに膨潤現象が見られた場合を可動性架橋重合体が形成されていると判断でき、溶解した場合を可動性架橋重合体が形成されていないと判断できる。
可動性架橋重合体は、重合体が架橋構造を形成していることに加えて、架橋点が移動可能に形成されていることから、ホスト基環内を高分子鎖がスライドできるように形成されている。これにより、可動性架橋重合体に応力が加わったとしても、その応力を緩和させる作用が発揮される。結果として、可動性架橋重合体は優れた靭性及び強度を有することができ、破壊エネルギーに優れた材料になり得る。この観点から、高分子材料は、前記ホスト基含有ビニル単量体のホスト基を貫通できるサイズの重合性単量体を含有する単量体A1の重合体を含むことが好ましい。
高分子材料は、重合体A1中に含まれる前記ホスト基とホスト−ゲスト相互作用可能なゲスト基を有する重合体をさらに含むことができる。ゲスト基を有する重合体は、前記重合体A1とは別の重合体であってもよい。あるいは、ゲスト基を有する重合体は、重合体A1と同じであってもよい。この場合は、重合体A1がホスト基およびゲスト基の両方を有し、例えば、ゲスト基含有ビニル単量体を含む単量体A1の重合反応より得られた重合体A1−2又は重合体A1−3である。重合体A1−3において、前記ホスト基含有ビニル単量体のホスト基を貫通できるサイズの第3の重合性単量体を使用した場合は、重合体A1−3も前述の可動性架橋重合体を形成する場合がある。
重合体A1がゲスト基を含まない場合は、例えば、別途、ゲスト基を有する重合体を製造して、これを重合体A1と混合することにより、ホスト基及びゲスト基を有する高分子材料を得ることができる。この場合のゲスト基を有する重合体は公知の方法で製造でき、例えば、前記ゲスト基含有ビニル単量体を含む単量体を使用して製造できる。ゲスト基を含まない重合体Aとゲスト基を含む重合体を混合する方法も特に限定されず、例えば、溶媒中で両者を混合させる方法が挙げられる。
高分子材料がホスト基とゲスト基を有する重合体、あるいは、ホスト基を有する重合体及びとゲスト基を有する重合体の両方の重合体を含む場合、ホスト−ゲスト相互作用が形成されるので、重合体どうしが架橋され得る。これにより、高分子材料は優れた靭性及び強度を有し得る。
ホスト基及びゲスト基の組み合わせとしては、ホスト基がα−シクロデキストリン誘導体由来である場合、ゲスト基はオクチル基及びドデシル基の群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ホスト基がβ−シクロデキストリン誘導体由来である場合、ゲスト基はアダマンチル基及びイソボルニル基の群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ホスト基がγ−シクロデキストリン誘導体由来である場合、ゲスト基はオクチル基、ドデシル基、シクロドデシル基及びアダマンチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
高分子材料が、前記包接化合物1を含有する単量体A1の重合体を含むこともできる。この重合体もホスト−ゲスト相互作用による架橋が形成され得る。特に、ホスト−ゲスト相互作用した包接化合物の状態で重合されて得られる重合体であることから、重合体中にホスト−ゲスト相互作用がより多く形成されており、高分子材料はより優れた靭性及び強度を有し得る。
ここで、高分子材料に含まれる重合体A1が、前記式(h1)で表される重合性単量体を含む単量体A1の重合体である場合は、ホスト基が、−O−CH−(以下、「リンカー」と称することがある)を介してRに結合している。具体的にホスト基は、上記リンカーの酸素原子に結合しており、Rの一端は、上記リンカーの炭素原子に結合している。このリンカーを介してホスト基Rが側鎖に結合していることで、リンカーがない場合に比べてホスト基の自由度が高いため、ホスト基とゲスト基とのホスト−ゲスト相互作用がより生じやすい。その結果、架橋重合体が容易に形成され、高分子材料の構造も安定化しやすく、靭性及び強度が顕著に向上し得る。
その理由の一つは、上述したホスト基がリンカーを介して結合していることによる自由度の高さにある。つまり、ホスト基の自由度が高いことで、ホスト−ゲスト相互作用の解離が起こりにくく、これによって、高分子材料の靭性が高くなって優れた強度を有する高分子材料となり得る。図1により詳述する。
図1は、重合体A1のホスト−ゲスト相互作用の一例の様子を示す模式図である。この図に示すように、リンカーを介して重合体側鎖に結合しているホスト基(α−シクロデキストリン誘導体から一つの水酸基を除した基)は、リンカーの存在により重合体の主鎖から離れており、しかも、リンカーの存在によって回転自由度も高い。その結果、重合体の架橋点に応力がかけられても、ゲスト基(ドデシル基)がホスト基から抜けにくくなり、これにより、高い靭性が発揮される。
(重合反応A2)
一方、単量体A2では、ホスト基含有非ビニル系単量体は、前記包接化合物2を形成していることが好ましい。つまり、単量体A2は、前記包接化合物2を含むことが好ましい。
包接化合物2の製造方法は特に限定されず、公知の包接化合物の製造方法を広く採用することができる。例えば、ホスト基含有非ビニル系単量体と、縮合反応可能な官能基を有する化合物との混合比は、例えば、モル比で、ホスト基含有非ビニル系単量体:縮合反応可能な官能基を有する化合物=10:1〜1:10とすることができ、好ましくは3:1〜1:3とすることができ、より好ましくは、2:1〜1:2とすることができる。ホスト基含有非ビニル系単量体:縮合反応可能な官能基を有する化合物は1:1(モル比)とすることもできる。
単量体A2において、包接化合物2と、縮合系単量体との含有割合は特に限定されず、例えば、包接化合物2及び縮合系単量体の全量に対して、包接化合物2を0.1〜20モル%、縮合系単量体を80〜99.9モル%とすることができ、包接化合物2を0.1〜5モル%、縮合系単量体を95〜99.9モル%とすることが好ましい。
縮合系単量体は、1種単独で使用することができ、2種以上を併用することができる。縮合系単量体は、2種以上を併用することができる。例えば、縮合系単量体は、2個以上のエポキシ基を有する化合物と2個以上の水酸基を有する化合物との組み合わせを挙げることができる。
重合反応A2では、単量体A2の他、重合開始剤を使用することができる。重合開始剤の種類は特に限定されず、公知の重合開始剤を使用できる。重合開始剤(重合触媒)としては、公知の縮合重合等で使用されるものを広く使用でき、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルジドデシルアミン、N−ドデシルモルホリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−エチルモルホリン、ジメチルエタノールアミンが例示される。重合開始剤(重合触媒)は、ジブチル錫ジアセテート等の有機金属を使用することもできる。重合触媒の使用量は、例えば、単量体Aの総量に対し、0.5〜5重量%とすることができる。
重合反応A2は、溶媒を使用してもよいし、溶媒を使用する場合は、溶媒の種類は特に限定されない。溶媒の使用量も特に限定されない。あるいは、重合反応A2は、溶媒の不存在下で行うこともできる。
重合反応A2の反応温度は、0〜500℃とすることができ、例えば、得られる高分子材料がエポキシ樹脂の場合は180〜210℃、ポリウレタン樹脂の場合は40〜70℃が好ましい。
重合反応A2の時間は特に限定されず、1分〜24時間とすることができ、好ましくは、1時間〜24時間とすることができる。
以上のような重合反応A2により、単量体A2の重合体を得ることができる。以下、上記単量体A2の重合反応A2により得られた重合体を「重合体A2」と表記することがある。
(重合体A2)
重合体A2は、例えば、前記包接化合物2を含む単量体A2の重合体である例えば、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂等である。
特に、重合体A2は、前記ホスト基含有重合性単量体のホスト基を貫通できるサイズの重合性単量体を含有する単量体A2の重合体であることが好ましい。この場合、前述の可動性架橋重合体が形成されやすく、優れた靭性及び強度を有することができ、破壊エネルギーに優れた高分子材料が得られやすい。可動性架橋重合体が形成される理由は、重合体A1と同じ理由による。
(高分子材料)
高分子材料は、重合体A1のみ又は重合体A2のみで形成することができる。また、本発明の効果が阻害されない限りは、高分子材料は、重合体A1又は重合体A2以外の重合体を含むことができる。その他、本発明の効果が阻害されない限りは、高分子材料は、重合体A1及び重合体A2以外の他の材料が組み合わさった複合材料として形成することもできる。
高分子材料は、前記重合反応A1又はA2により重合体を得る工程を備える方法で製造することができる。この高分子材料の製造方法では、前述のように溶媒を使用せずとも行うことができる。高分子材料の製造プロセスをより簡便にすることができ、靭性及び強度に優れる高分子材料が製造されやすいという観点から、溶媒の不存在下で行うことが好ましい。
なお、重合体A1がゲスト基を有していない場合は、前述のように、別途、製造したゲスト基含有重合体を、ゲスト基を有していない重合体と混合して重合体の混合物を形成することで、高分子材料を製造することができる。
高分子材料の形状は特に限定されない。例えば、高分子材料は、膜状、フィルム状、シート状、粒子状、板状、ブロック状、ペレット状、粉末状等の各種の形態を取り得る。
高分子材料は、優れた靭性及び強度を有し、しかも、簡便なプロセスで製造することができる。そのため、高分子材料は、各種の用途に使用することができる。例えば、高分子材料は、自動車用途、電子部品用途、建築部材用途、食品容器用途、輸送容器用途等の各種の部材に好適に使用することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(製造例1;N−Me−TMγCDAAmMeの製造)
下記式(7−1)で表される化合物0.95mmolをシュレンク管に秤量し、窒素置換した。
Figure 2018159791
なお、式(7−1)で表される化合物は、以下のように製造した。200mLガラス製丸底フラスコにγシクロデキストリン5g(3.9mmol)、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド700mg(6.9mmol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物95mg(0.6mmol)を秤量し、これらを25mLのN,N−ジメチルホルムアミドに加えて反応液を調製した。反応液をオイルバスで90℃に加熱し、1時間にわたって加熱撹拌することで反応液を得た。次いで、該反応液を放冷し、激しく撹拌しているアセトン45mLに注ぎこんだ。生じた沈殿をろ別した後、10mLのアセトンで三回洗浄し常温で一時間減圧乾燥することで反応物を得た。反応物を蒸留水100mLに溶解し、多孔質ポリスチレン樹脂(三菱化学ダイヤイオンHP−20)を充填したカラム(見かけ密度600g/L)に通じ、30分間吸着させた。なお、前記カラムを使用する代わりに、分取型高圧液体クロマトグラフィーを用いて分離精製を行う場合もあった。その後溶液成分を除去し、カラムに新たに10%メタノール(もしくはアセトニトリル)水溶液50mLを3回通じ、ポリスチレン樹脂を洗浄することで未反応βシクロデキストリンを除去した。続いてカラムに25%メタノール水溶液500mLを二回通ずることで、目的物であるアクリルアミドメチルγシクロデキストリン(以下、「γCDAAmMe」と表記)を溶出させた。溶媒を減圧除去することで、白色粉末である式(7−1)で表される化合物809mgを得た。収率は約15%であった。
式(7−1)で表される化合物が秤量されたシュレンク管に、脱水N,N−ジメチルホルムアミド30mLを加え、氷冷下で撹拌し、さらにそこへ水素化ナトリウム85.5mmol、ヨウ化メチル85.5mmolを加え、48時間撹拌した。その後、そのシュレンク管に水10mLを加えてクエンチした。得られて溶液をエバポレーターで減圧乾燥後、飽和塩化ナトリウム水溶液(チオ硫酸ナトリウム五水和物200mgを含む)50mLに溶解し、50mLのトルエンで3回抽出した。抽出したトルエン層をエバポレーターで乾固した。得られた固形分をメタノール50mLに溶解し、ヘキサン50mLで洗浄し、メタノール層をエバポレーターで乾固することで目的物である前記式(h1−3)で表されるホスト基含有重合性単量体を得た。このホスト基含有重合性単量体をN−Me−TMγCDAAmMeと表記した。
図11(a)及び(b)はそれぞれ、N−Me−TMγCDAAmMeのマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。これらの結果から、目的のN−Me−TMγCDAAmMeが生成していることを確認した。N−Me−TMγCDAAmMeにおけるシクロデキストリン誘導体1分子中に存在していた全水酸基数のうちの100%がメチル基に置換されていることを確認した。
(製造例2;N−Me−TMβCDAAmの製造)
式(7−1)で表される化合物の代わりに下記式(7−2)で表される化合物に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法を行い、前記式(h2−2)で表されるホスト基含有重合性単量体を得た。このホスト基含有重合性単量体をN−Me−TMβCDAAmと表記した。
Figure 2018159791
図12(a)及び(b)はそれぞれ、N−Me−TMβCDAAmのマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。これらの結果から、目的のN−Me−TMβCDAAmが生成していることを確認した。N−Me−TMβCDAAmにおけるシクロデキストリン誘導体1分子中に存在していた全水酸基数のうちの100%がメチル基に置換されていることを確認した。
(製造例3;N−Me−TMαCDAAmMeの製造)
式(7−1)で表される化合物の代わりに下記式(7−3)で表される化合物に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法を行い、前記式(h1−1)で表されるホスト基含有重合性単量体を得た。このホスト基含有重合性単量体をN−Me−TMαCDAAmMeと表記した。なお、式(7−3)で表される化合物は、式(7−1)で表される化合物の製造において、γシクロデキストリンをαシクロデキストリンに変更したこと以外は同様の方法で製造した。
Figure 2018159791
図13(a)及び(b)はそれぞれ、N−Me−TMαCDAAmMeのマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。これらの結果から、目的のN−Me−TMαCDAAmMeが生成していることを確認した。N−Me−TMαCDAAmMeにおけるシクロデキストリン誘導体1分子中に存在していた全水酸基数のうちの100%がメチル基に置換されていることを確認した。
(製造例4;N−Me−TMβCDAAmMeの製造)
式(7−1)で表される化合物の代わりに下記式(7−4)で表される化合物に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法を行い、前記式(h1−2)で表されるホスト基含有重合性単量体を得た。このホスト基含有重合性単量体をN−Me−TMβCDAAmと表記した。なお、式(7−4)で表される化合物は、式(7−1)で表される化合物の製造において、γシクロデキストリンをβシクロデキストリンに変更したこと以外は同様の方法で製造した。
Figure 2018159791
図14(a)及び(b)はそれぞれ、N−Me−TMβCDAAmMeのマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。これらの結果から、目的のN−Me−TMβCDAAmMeが生成していることを確認した。N−Me−TMβCDAAmMeにおけるシクロデキストリン誘導体1分子中に存在していた全水酸基数のうちの100%がメチル基に置換されていることを確認した。
(製造例5;N−H−TMγCDAAmMeの製造)
下記式(7−5)で表される化合物0.95mmolをシュレンク管に秤量し、窒素置換した。次いで、そのシュレンク管に脱水N,N−ジメチルホルムアミド30mLを加え、氷冷下で撹拌し、さらにそこへ水素化ナトリウム85.5mmol、ヨウ化メチル85.5mmolを加え、48時間撹拌した。その後、そのシュレンク管に水10mLを加えてクエンチした。得られて溶液をエバポレーターで減圧乾燥後、飽和塩化ナトリウム水溶液(チオ硫酸ナトリウム五水和物200mgを含む)50mLに溶解し、50mLのトルエンで3回抽出した。抽出したトルエン層をエバポレーターで乾固した。得られた固形分をメタノール50mLに溶解し、ヘキサン50mLで洗浄し、メタノール層をエバポレーターで乾固した。得られた固形分を20mLの水に溶解し、そこにトリフルオロ酢酸1.4mmolを加え、1時間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで減圧乾燥後、飽和塩化ナトリウム水溶液50mLに溶解し、50mLのトルエンで3回抽出した。抽出したトルエン層をエバポレーターで乾固した。得られた固形分をN,N−ジメチルホルムアミド10mLに溶解し、そこへN−ヒドロキシメチルアクリルアミド2.9mmol、p−トルエンスルホン酸一水和物0.095mmolを加え、90度で4時間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで減圧乾燥後、飽和塩化ナトリウム水溶液50mLに溶解し、50mLのトルエンで3回抽出した。抽出したトルエン層をエバポレーターで乾固することで目的物である前次式(h1−6)で表されるホスト基含有重合性単量体を得た。このホスト基含有性短慮謡をN−H−TMγCDAAmMeと表記した。
Figure 2018159791
図15(a)及び(b)はそれぞれ、N−H−TMγCDAAmMeのマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。これらの結果から、目的のN−H−TMγCDAAmMeが生成していることを確認した。N−H−TMγCDAAmMeにおけるシクロデキストリン誘導体1分子中に存在していた全水酸基数のうちの100%がメチル基に置換されていることを確認した。
(製造例6;N−H−TAcγCDAAmMeの製造)
γCDAAmMe20gをピリジン300mLに溶解し、無水酢酸170.133gを加え、55℃で12時間以上撹拌した。その後、メタノール50mLを加えクエンチし、内容量が200mLになるまでエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮液を、水2000mLに滴下し、沈殿を回収した。沈殿をアセトン200mLに溶解し、水2000mLに滴下し、生成した沈殿物を回収し、これを減圧乾燥することにより目的物であるN−H―TAcγAAmMeを単離した。マススペクトル及び、NMRスペクトルの結果から、目的のN−H―TAcγAAmMeが生成していることを確認した。N−H―TAcγAAmMeにおけるシクロデキストリン誘導体1分子中に存在していた全水酸基数のうちの100%がアセチル基に置換されていることを確認し、前記式(h1−9)で表されるホスト基含有重合性単量体であることを確認した。
(製造例7;N−H−TAcβCDAAmMeの製造)
製造例6において、γCDAAmMeの代わりにβCDAAmMeを使用したこと以外は、製造例6と同様の方法を行い、前記式(h1−8)で表されるホスト基含有重合性単量体を得た。このホスト基含有重合性単量体をN−H−TAcβCDAAmMeと表記した。N−H−TAcβCDAAmMeのマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果から、目的のN−H−TAcβCDAAmMeが生成していることを確認した。N−H−TAcβCDAAmMeにおけるシクロデキストリン誘導体1分子中に存在していた全水酸基数のうちの100%がアセチル基に置換されていることを確認した。
(製造例8)
γCDAAmMe150mgをシュレンク管に秤量し、窒素置換した。このシュレンク管にDMSOを2mL、エチルイソシアネートを1062mg加え、48時間撹拌することにより、生成物を得た。
図17にその生成物のマススペクトルの結果を示す。この結果から、γCDAAmMeの水酸基のうち2〜5個がエチルカルバメートに置換されていることを確認した。
(製造例9)
下記式(9−1)で表される2−アクリレートエチルカルバメート修飾全メチル化γCD(TM−γCDAEC)を合成した。
Figure 2018159791
まず、前記式(7−1)で表される化合物0.95mmolをシュレンク管に秤量し、窒素置換した。次いで、そのシュレンク管に脱水N,N−ジメチルホルムアミド30mLを加え、氷冷下で撹拌し、さらにそこへ水素化ナトリウム85.5mmol、ヨウ化メチル85.5mmolを加え、48時間撹拌した。その後、そのシュレンク管に水10mLを加えてクエンチした。得られた溶液をエバポレーターで減圧乾燥後、飽和塩化ナトリウム水溶液(チオ硫酸ナトリウム五水和物200mgを含む)50mLに溶解し、50mLのトルエンで3回抽出した。抽出したトルエン層をエバポレーターで乾固した。得られた固形分をメタノール50mLに溶解し、ヘキサン50mLで洗浄し、メタノール層をエバポレーターで乾固した。得られた固形分を20mLの水に溶解し、そこにトリフルオロ酢酸1.4mmolを加え、1時間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで減圧乾燥後、飽和塩化ナトリウム水溶液50mLに溶解し、50mLのトルエンで3回抽出した。抽出したトルエン層をエバポレーターで乾固した。これにより、6−モノヒドロシ−トリメチルシクロデキストリン(以下、「OHγCDOMe)」と表記)を得た。
得られたOHγCDOMe(500mg、0.31mmol、1eq.)をシュレンク管へ入れ、窒素置換した。次いで、シュレンク管に2−アクリレートエチルカルバメート(77.6mg、0.62mmol、2eq.)を乾燥クロロホルム(4mL)へ加えた溶液をシリンジで加えた。その後、シュレンク管にジラウリル酸ジブチルすず(1滴)をクロロホルム(2mL)に加えた溶液をシリンジで加え、60℃で終夜攪拌した。その後、さらに2−アクリレートエチルカルバメート(155.7mg、1.24mmol、4eq.)を乾燥クロロホルム(2mL)へ加えた溶液をシリンジで加え、60℃で1日攪拌した。これにより、TM−γCDAECを得た。
図22に示すTM−γCDAECのマススペクトルの結果から、目的のTM−γCDAECが生成していることを確認した。
(製造例10)
下記式(9−2)で表される2−メタクリレートエチルカルバメート修飾全メチル化γCD(TM−γCDMEC)を合成した。
Figure 2018159791
製造例9で得た固形分1(500mg、0.31mmol、1eq.)をシュレンク管へ入れ、窒素置換した。次いで、シュレンク管に2−メタクリレートエチルカルバメート(288.6mg、1.86mmol、6eq.)を乾燥クロロホルム(4mL)へ加えた溶液をシリンジで加えた。その後、シュレンク管にジラウリル酸ジブチルすず(1滴)をクロロホルム(2mL)に加えた溶液をシリンジで加え、60℃で終夜攪拌した。その後、さらに2−メタクリレートエチルカルバメート(865.8mg、5.58mmol、18eq.)を乾燥クロロホルム(2mL)へ加えた溶液をシリンジで加え、60℃で1日攪拌した。これにより、TM−γCDMECを得た。
図23に示すTM−γCDMECのマススペクトルの結果から、目的のTM−γCDMECが生成していることを確認した。
(製造例11)
製造例4で得たN−Me−TMβCDAAmMeを20mLの水と10mLのアセトンに溶解し、そこにトリフルオロ酢酸2.0mmolを加え、1時間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで減圧乾燥後、飽和塩化ナトリウム水溶液50mLに溶解し、50mLのトルエンで3回抽出した。抽出したトルエン層をエバポレーターで乾固した。これにより、OHβCDOMeを得た。
図19(a)及び(b)は、前記OHβCDOMeのマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。これらの結果から、目的のOHβCDOMeが生成していることを確認した。OHβCDOMeは、ホスト分子の原料1分子中に存在していた全水酸基数のうちの100%がメチル基に置換されていることがわかった。
(実施例1)
下記の式(8)のスキームに従って、高分子材料を製造した。なお、スキーム中、−r−は繰り返し構成単位がランダムに配列した、いわゆるランダム共重合体であることを示し、以降において同様である。
Figure 2018159791
製造例1で得られたホスト基含有重合性単量体であるN−Me−TMγCDAAmMeをxmol%と、ゲスト基含有重合性単量体である2−エチル−2−アダマンチルアクリレート(図10参照)ymol%と、n−ブチルアクリレートを100−x−ymol%とを混合して単量体A1を調製した。この単量体A1に1時間の超音波処理を行った。次いで、重合開始剤として、IRUGACURE184を単量体A1に対して、1mol%加えた。この単量体A1に紫外線(λ=365nm)を照射して、重合反応Aを行った。この重合反応Aは、ダンベル試験片状に切り抜いたブチルゴムシート上に単量体A1を流し込み、上部から紫外光を照射し、その後、真空オーブンで一晩乾燥させる方法を採用した。この重合反応Aで得られた重合体Aを「BA−γCD−AdEtA(x,y)」と表記した。このx、yは前記同様であり、重合体A中のホスト基含有重合性単量体由来の構成単位及びゲスト基含有重合性単量体由来の構成単位の量(mol%)を示す。この実施例1では、x=y=0.5とした。
(実施例2)
N−Me−TMγCDAAmMeの代わりに製造例2で得られたホスト基含有重合性単量体であるN−Me−TMβCDAAmを使用したこと以外は実施例1と同様の方法で重合体Aを得た。このように得られた重合体Aを「BA−βCD−AdEtA(x,y)」と表記した。このx、yは前記同様であり、重合体A中のホスト基含有重合性単量体由来の構成単位及びゲスト基含有重合性単量体由来の構成単位の量(mol%)を示す。この実施例2では、x=y=0.5とした。
(実施例3)
n−ブチルアクリレートの代わりにエチルアクリレートに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で重合体Aを得た。このように得られた重合体Aを「EA−γCD−AdEtA(x,y)」と表記した。このx、yは前記同様であり、重合体A中のホスト基含有重合性単量体由来の構成単位及びゲスト基含有重合性単量体由来の構成単位の量(mol%)を示す。この実施例3では、x=y=1とした。
(実施例4)
n−ブチルアクリレートの代わりにメチルアクリレートに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で重合体Aを得た。このように得られた重合体Aを「MA−γCD−AdEtA(x,y)」と表記した。このx、yは前記同様であり、重合体A中のホスト基含有重合性単量体由来の構成単位及びゲスト基含有重合性単量体由来の構成単位の量(mol%)を示す。この実施例4では、x=y=1とした。
(実施例5)
N−Me−TMγCDAAmMeの代わりに製造例4で得られたホスト基含有重合性単量体であるN−Me−TMβCDAAmMeを使用したこと以外は実施例1と同様の方法で重合体Aを得た。このように得られた重合体Aを「BA−βCDAAmMe−AdEtA(x,y)」と表記した。このx、yは前記同様であり、重合体A中のホスト基含有重合性単量体由来の構成単位及びゲスト基含有重合性単量体由来の構成単位の量(mol%)を示す。この実施例5では、x=y=0.5とした。
(実施例6)
ゲスト基含有重合性単量体として2−エチル−2−アダマンチルアクリレートの代わりにアダマンチルアクリルアミド(図10参照)を用いたこと以外は、実施例5と同様の方法で重合体Aを得た。このように得られた重合体Aを「BA−βCDAAmMe−AdAAm(x,y)」と表記した。このx、yは前記同様であり、重合体A中のホスト基含有重合性単量体由来の構成単位及びゲスト基含有重合性単量体由来の構成単位の量(mol%)を示す。この実施例6では、x=y=0.5とした。
(実施例7)
ゲスト基含有重合性単量体として2−エチル−2−アダマンチルアクリレートの代わりにADOM−A(図10参照)を用いたこと以外は、実施例5と同様の方法で重合体Aを得た。このように得られた重合体Aを「BA−βCDAAmMe−ADOM(x,y)」と表記した。このx、yは前記同様であり、重合体A中のホスト基含有重合性単量体由来の構成単位及びゲスト基含有重合性単量体由来の構成単位の量(mol%)を示す。この実施例7では、x=y=0.5とした。
(実施例8)
製造例6で得られたホスト基含有重合性単量体であるN−H−TAcγCDAAmMeを1mol%と、第3の重合性単量体であるメチルアクリレート99mol%とを混合して単量体A1を調製した。この単量体A1に1時間の超音波処理を行った。次いで、重合開始剤として、IRUGACURE184を単量体Aに対して、1mol%加えた。この単量体A1に紫外線(λ=365nm)を照射して、重合反応A1を行った。この重合反応Aは、ダンベル試験片状に切り抜いたブチルゴムシート上に単量体A1を流し込み、上部から紫外光を照射し、その後、真空オーブンで一晩乾燥させる方法を採用した。この重合反応Aで得られた重合体Aを「MA−TAcγCDAAmMe(1)」と表記した。
(実施例9)
製造例7で得られたホスト基含有重合性単量体であるN−H−TAcβCDAAmMeを1mol%と、第3の重合性単量体であるメチルアクリレート99mol%とを混合して単量体A1を調製した。この単量体A1に1時間の超音波処理を行った。次いで、重合開始剤として、IRUGACURE184を単量体Aに対して、1mol%加えた。この単量体Aに紫外線(λ=365nm)を照射して、重合反応A1を行った。この重合反応A1は、ダンベル試験片状に切り抜いたブチルゴムシート上に単量体A1を流し込み、上部から紫外光を照射し、その後、真空オーブンで一晩乾燥させる方法を採用した。この重合反応A1で得られた重合体Aを「MA−TAcβCDAAmMe(1)」と表記した。
(実施例10)
製造例6で得られたホスト基含有重合性単量体であるN−H−TAcγCDAAmMeをxmol%と、第3の重合性単量体であるエチルアクリレート10−xmol%とを混合して単量体A1を調製した。この単量体Aに1時間の超音波処理を行った。次いで、重合開始剤として、IRUGACURE184を単量体A1に対して、1mol%加えた。この単量体A1に紫外線(λ=365nm)を照射して、重合反応A1を行った。この重合反応A1は、ダンベル試験片状に切り抜いたブチルゴムシート上に単量体A1を流し込み、上部から紫外光を照射し、その後、真空オーブンで一晩乾燥させる方法を採用した。この重合反応A1で得られた重合体Aを「EA−TAcγCDAAmMe(x)」と表記した。実施例10では、x=0.5、1及び2(mol%)とした。
(比較例1)
100−xmol%のn−ブチルアクリレートと、xmol%の1,4−ブタンジオールジアクリレートからなる単量体を調製し、この単量体に対してIRUGACURE184を1mol%加えた。この重合体に紫外線(λ=365nm)を照射して、重合反応を行った。その後、真空オーブンで一晩乾燥させることで、重合体ブランクを得た。このように得られた重合体ブランクを「BA(x)」と表記した。このxは重合体ブランク中のn−ブチルアクリレート由来の構成単位の量(mol%)を示す。この比較例1では、x=0.5とした。
(比較例2)
x=0としたこと以外は、比較例1と同様の方法で重合体ブランクを得た。
(比較例3)
x=100、y=0としたこと以外は、実施例1と同様の方法で重合体を得た。この重合体はホスト基含有単量体の重合体のみで形成されていた。
(比較例4)
アクリルアミドβシクロデキストリン(βCDAAm)24.4mg(20μmol)と、アダマンタンアクリルアミド(Ad−AAm)4.8mg(20μmol)をそれぞれ2mol/kGの濃度になるように混合し、超音波を照射しながら80℃にて30分間撹拌した。もしくは80℃にてスターラーチップを用いて攪拌を行った。この時、反応混合物は透明な溶液に変化した。混合物にアクリルアミド(AAm)198mg、重合開始剤である過硫酸アンモニウム(全ての重合性単量体の総mol数に対して1mol%)、およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(全てのモノマーの総mol数に対して1mol%)をこの順に加え、室温で30分間放置することにより重合反応を進行させてゲル化を進行させた。これにより、重合体βCDAAm−Ad gel(x,y)を得た。なお、x,yはそれぞれ、重合体中のβCDAAm由来の構成単位と、Ad−AAm由来の構成単位のmol%を示す。重合体としては、x=1,y=1と、x=2,y=2と、x=3,y=3と、x=4,y=4と、x=5,y=5との5種類を作製した。
(比較例5)
n−ブチルアクリレートの代わりにエチルアクリレートを用いた以外は、比較例2と同様の方法で重合体ブランクを得た。
(比較例6)
n−ブチルアクリレートの代わりにメチルアクリレートを用いた以外は、比較例2と同様の方法で重合体ブランクを得た。
(引張り試験)
各実施例及び比較例で得られた重合体で形成される高分子材料(厚み1mm)について、「ストローク−試験力曲線」試験(島津製作所社製「AUTOGRAPH」(型番:AGX−plus)を行い、高分子材料の破断点を観測した。また、この破断点を終点として、終点までの最大応力を高分子材料の破断応力とした。この引張り試験は、高分子材料の下端を固定し上端を引張り速度0.1〜1mm/minで稼動させるアップ方式で実施した。また、その際のストローク、すなわち、高分子ゲルを引っ張った際の最大長さを、引張り前の高分子ゲル長さで除した値を延伸率(歪率といってもよい)として算出した。
なお、「ストローク−試験力曲線」(応力−歪曲線)試験において、破断応力及び破断歪(単に歪ともいう)の一方又は両方が高い値を示す材料は、高分子材料の靭性及び強度が優れると判断できる。特に、破断応力及び歪の両方が高い値を示す材料は、破壊エネルギーが優れる材料であると判断できる。
図2には、実施例1及び比較例1−3の破断応力曲線を示している。
図3には、比較例4の5種類の重合体の破断応力曲線を示している。
図2から、実施例1の高分子材料は、元の長さの1200%程度まで伸長し、しかも、破断時の応力が400kPaまで達することがわかる。比較例1のような化学架橋された重合体と比べても、優れた靭性及び強度を有するといえる。
さらに、図3に示した炭化水素基(メチル基)置換されていないホスト基を有する比較例4の重合体と比べても、実施例1の高分子材料は、優れた靭性及び強度を有するといえる。
図4には、実施例2及び比較例1の破断応力曲線を示している。実施例1同様、実施例2の高分子材料も優れた靭性及び強度を有していることがわかった。
図5には、実施例3及び比較例5の破断応力曲線を示している。
図6には、実施例4及び比較例6の破断応力曲線を示している。
図7には、実施例5の破断応力曲線を示している。
図8には、実施例6の破断応力曲線を示している。
図9には、実施例7の破断応力曲線を示している。
実施例8(MA−TAcγCDAAmMe(1))で得られた高分子材料の破断応力は9821kPaであり、実施例9(MA−TAcβCDAAmMe(1))で得られた高分子材料の破断応力は11366kPaであり、比較例6等の材料に比べて優れた破断応力を有していることがわかる。
これらの結果から、実施例3〜9のいずれの高分子材料も優れた靭性及び強度を有するといえる。
実施例10で得られた高分子材料を25℃にてアセトンに浸し、膨潤試験を行ったところ、膨潤率は2000%を超えることがわかった。実施例10で得られた高分子材料はアセトンに膨潤していることから、化学架橋剤を使用していないにもかかわらず架橋構造を有していることがわかった。従って、実施例10で得られた高分子材料は、エチルアクリレートの重合体が、ホスト基の環内を貫通して形成されてなる可動性架橋重合体を形成していると推察される。
なお、膨潤率は、下記式
膨潤率(%)=(膨潤後の重量/膨潤前の重量)×100
に基づいて算出した。
(実施例11)
下記式(11)のスキームに従って、高分子材料を製造した。
Figure 2018159791
まず、下記式(11−1)のスキームに従って、重合性官能基であるアミノ基を有するホスト分子を製造した。
Figure 2018159791
原料のホスト分子の原料として、6−デオキシ−6−モノアジド−β−シクロデキストリン6.9mmolをナスフラスコに加え、さらに、脱水N,N−ジメチルホルムアミド500mLを加え、氷冷下で撹拌し、さらにそこへ水素化ナトリウム150mmol、ヨウ化メチル150mmolを加え、12時間撹拌した。その後、そのナスフラスコにメタノール20mLを加え、更に水20mLを加えてクエンチした。得られた溶液をエバポレーターで減圧乾燥後、ジクロロメタン100mLを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mL、チオ硫酸ナトリウム五水和物を2.5g含む50mL水溶液、飽和食塩水50mLで洗浄した。
洗浄後のジクロロメタン層に硫酸マグネシウムを10g加え、室温で撹拌した後にろ過し、そのろ液をエバポレーターで乾固した。得られた固形物をテトラヒドロフラン100mLに溶解し、トリフェニルホスフィン15mmolと28%アンモニア水30mLを加えて、室温にて12時間撹拌した。次いで、エバポレーターで減圧乾燥後、得られた乾燥物をジクロロメタン100mLに溶解し、水100mL、飽和食塩水100mLで洗浄した。
洗浄後のジクロロメタン層に硫酸マグネシウムを10g加え、室温で撹拌した後にろ過し、そのろ液をエバポレーターで乾固した。得られた固形物をシリカカラムクロマトグラフィー(溶出液組成ジクロロメタン:メタノール=9:1)により精製した。このホスト基含有重合性単量体をNHβCDOMeと表記した。
図16(a)及び(b)はそれぞれ、NHβCDOMeのマススペクトル及び、NMRスペクトルの結果を示す。これらの結果から、目的のNHβCDOMeが生成していることを確認した。NHβCDOMeは、ホスト分子の原料1分子中に存在していた全水酸基数のうちの100%がメチル基に置換されていることがわかった。
このNHβCDOMeと、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンとを1:1のモル比で水中にて90℃で混合して溶解させ、得られた溶液を25℃に冷却後、ろ過をした。得られたろ液を凍結乾燥することで、包接化合物2を得た。
次いで、包接化合物2と、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(Mn=500)及び1,3−プロパンジオールをそれぞれ、1mol%、98mol%及び1mol%となるように混合し、重合性単量体混合物(単量体A2)を得た。得られた重合性単量体混合物に重合開始剤としてN,N−ジメチルベンジルアミンを重合性単量体混合物の総量に対して1重量%となるように添加した後、重合性単量体混合物を200℃で12時間重合することで、重合体A2を得た。
(比較例7)
包接化合物2を4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンに変更し、1,3−プロパンジオールを2−アミノ−1,3−プロパンジオールに変更したこと以外は実施例11と同様の方法で重合体を得た。
図18には、実施例11及び比較例7で得られた高分子材料の破断応力曲線を示している。包接化合物2を使用して得た実施例11の高分子材料は、包接化合物2を使用せずに得た比較例7の高分子材料よりも優れた靭性及び強度を有していることがわかった。なお、実施例11の高分子材料の破壊エネルギーは6.2kJ/m、比較例7の高分子材料の破壊エネルギーは2.1kJ/mであった。なお、ここでいう高分子材料の破壊エネルギーは、応力−歪曲線の面積から算出した値をいう。
(実施例12)
製造例9−2で得られた6−モノヒドロシ−トリメチルシクロデキストリン(OHβCDOMe)を準備した。OHβCDOMeと、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンとを1:1のモル比で水中にて90℃で混合して溶解させ、得られた溶液を25℃に冷却後、ろ過をした。得られたろ液を凍結乾燥することで、包接化合物2(OHβCDOMe−BPhOH)を得た。
下記式(12−1)に示すスキームのように、包接化合物2(OHβCDOMe−BPhOH)(5mol%)と、テトラエチレングリコール(45mol%)を混合し、60℃にて12時間減圧乾燥した後に、ヘキサメチレンジイソシアナート(50mol%)を加えて重合性単量体混合物(単量体A2)を得た。この単量体A2を60℃で窒素雰囲気下にて12時間重合することで重合体A2を得た。
Figure 2018159791
(比較例8)
下記式(12−2)に示すスキームのように、包接化合物2(OHβCDOMe−BPhOH)をトリエタノールアミンに変更したこと以外は実施例12と同様の方法で重合体を得た。
Figure 2018159791
図24は、実施例12及び比較例8の高分子材料の破断応力の結果を示している。実施例12及び比較例8で得られた高分子材料の引っ張り試験を行ったところ、実施例12の高分子材料の歪は9.8%、比較例8の高分子材料の歪は8.1%であった。従って、包接化合物2を使用して得た実施例12の高分子材料は、包接化合物2を使用せずに得た比較例8の高分子材料よりも優れた靭性を有していることがわかった。この結果は、実施例12で得られた高分子材料は、前記(12−1)式に模式的に示すように、可動性架橋重合体を形成していることを示している。
(実施例13)
N−Me−TMγCDAAmMeの代わりに製造例6で得たN−H−TAcγCDAAmMeに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で重合体Aを得た。このように得られた重合体Aを「BA−TAcγCDAAmMe−AdEtA(x,y)」と表記した。このx、yは前記同様であり、重合体A中のホスト基含有重合性単量体由来の構成単位及びゲスト基含有重合性単量体由来の構成単位の量(mol%)を示す。この実施例では、x=y=0.5、x=y=1、x=y=2とした。
(実施例14)
n−ブチルアクリレートの代わりにエチルアクリレートに変更したこと以外は、実施例13と同様の方法で重合体Aを得た。このように得られた重合体Aを「EA−TAcγCDAAmMe−AdEtA(x,y)」と表記した。このx、yは前記同様であり、重合体A中のホスト基含有重合性単量体由来の構成単位及びゲスト基含有重合性単量体由来の構成単位の量(mol%)を示す。この実施例ではx=y=0.5、x=y=1、x=y=2とした。
(実施例15)
n−ブチルアクリレートの代わりにメチルアクリレートに変更したこと以外は、実施例15と同様の方法で重合体Aを得た。このように得られた重合体Aを「MA−TAcγCDAAmMe−AdEtA(x,y)」と表記した。このx、yは前記同様であり、重合体A中のホスト基含有重合性単量体由来の構成単位及びゲスト基含有重合性単量体由来の構成単位の量(mol%)を示す。この実施例ではx=y=0.5、x=y=1、x=y=2とした。
実施例14で得られたEA−TAcγCDAAmMe−AdEtA(0.5,0.5)の破断応力は562kPa,歪は742%、EA−TAcγCDAAmMe−AdEtA(1,1)の破断応力は796kPa,歪は596% 、EA−TAcγCDAAmMe−AdEtA(2,2)の破断応力は5080kPa,歪は351%であり、いずれも靭性及び強度に優れる材料であった。実施例13,15の重合体(高分子材料)も同様、靭性及び強度に優れる材料であると思われる。
(自己修復性評価)
製造例6で得られたホスト基含有重合性単量体であるN−H−TAcγCDAAmMeを1mol%と、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート1mol%と、第3の重合性単量体であるエチルアクリレート98mol%とを混合して単量体A1を調製した。この単量体A1に1時間の超音波処理を行った。次いで、重合開始剤として、IRUGACURE184を単量体A1に対して、1mol%加えた。この単量体A1に紫外線(λ=365nm)を照射して、重合反応A1を行った。この重合反応A1は、ダンベル試験片状に切り抜いたブチルゴムシート上に単量体A1を流し込み、上部から紫外光を照射し、その後、真空オーブンで一晩乾燥させる方法を採用した。この重合反応A1で得られた重合体Aを「EA−TAcγCDAAmMe−AdEtA(1,1)」と表記した。
EA−TAcγCDAAmMe−AdEtA(1,1)の試験片の中央部を切断して2つに分けた後、両者を常温(25℃)および80℃のそれぞれの温度で24時間接触させた。
切断前の試験片および接触後の試験片の応力歪曲線を図20に、破断応力及び破断歪の測定結果を図21に示す。常温での接触では、破断応力が切断前に比べて68%回復し、80℃での接触では破断応力が切断前に比べて107%回復した。よって、EA−TAcγCDAAmMe−AdEtA(1,1)は優れた自己修復性を有していることがわかった。

Claims (15)

  1. ホスト基含有重合性単量体であって、
    前記ホスト基は、シクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、
    前記シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンが有する少なくとも1個の水酸基の水素原子が炭化水素基、アシル基及び−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換された構造を有する、ホスト基含有重合性単量体。
  2. 前記アシル基は、アセチル基である、請求項1に記載のホスト基含有重合性単量体。
  3. 前記炭化水素基の炭素数が1〜4個である、請求項1又は2に記載のホスト基含有重合性単量体。
  4. 下記の一般式(h1)
    Figure 2018159791
    (式(h1)中、Raは水素原子またはメチル基を示し、Rは前記ホスト基を示し、Rはヒドロキシル基、チオール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいチオアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個の置換基を有していてもよいアミノ基、1個の置換基を有していてもよいアミド基、アルデヒド基及びカルボキシル基からなる群より選択される1価の基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基を示す。)
    で表される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のホスト基含有重合性単量体。
  5. 下記の一般式(h2)
    Figure 2018159791
    (式(h2)中、Raは水素原子またはメチル基を示し、Rは前記ホスト基を示し、Rはヒドロキシル基、チオール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいチオアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個の置換基を有していてもよいアミノ基、1個の置換基を有していてもよいアミド基、アルデヒド基及びカルボキシル基からなる群より選択される1価の基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基を示す。)
    で表される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のホスト基含有重合性単量体。
  6. 下記一般式(h40)
    40−R (h40)
    (式(h40)中、R40はNH又はOHを示し、Rは前記ホスト基を示す。)
    で表される、請求項1又は2に記載のホスト基含有重合性単量体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のホスト基含有重合性単量体を含む重合性単量体混合物の重合体を含む、高分子材料。
  8. 前記重合性単量体混合物は、前記ホスト基含有重合性単量体のホスト基を貫通できるサイズの重合性単量体を含有する、請求項7に記載の高分子材料。
  9. 前記ホスト基とホスト−ゲスト相互作用可能なゲスト基を有する重合体をさらに含む、請求項7に記載の高分子材料。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のホスト基含有重合性単量体と、ゲスト基を有する重合性単量体との包接化合物。
  11. 請求項6に記載のホスト基含有重合性単量体と、縮合反応可能な官能基を有する化合物との包接化合物。
  12. 請求項10又は11に記載の包接化合物を含有する重合性単量体の重合体を含む、高分子材料。
  13. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のホスト基含有重合性単量体を含む重合性単量体混合物の重合反応により重合体を得る工程を備える、高分子材料の製造方法。
  14. 前記重合反応は、溶媒の不存在下で行う、請求項13に記載の高分子材料の製造方法。
  15. 請求項10に記載の包接化合物を製造する方法において、
    前記ホスト基含有重合性単量体と、前記ゲスト基を有する重合性単量体とを混合して、包接化合物を得る工程を備える、包接化合物の製造方法。
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