JP5676282B2 - 摺動部材および摺動部品 - Google Patents
摺動部材および摺動部品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5676282B2 JP5676282B2 JP2011001967A JP2011001967A JP5676282B2 JP 5676282 B2 JP5676282 B2 JP 5676282B2 JP 2011001967 A JP2011001967 A JP 2011001967A JP 2011001967 A JP2011001967 A JP 2011001967A JP 5676282 B2 JP5676282 B2 JP 5676282B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- sliding
- group
- polyrotaxane
- sliding member
- friction
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Lubricants (AREA)
Description
本実施形態に係る摺動部材において用いられる架橋ポリロタキサンの概略分子構造を図1に示す。架橋ポリロタキサンは、環状分子構造を有する環状分子12の開口部に、直鎖状分子構造を有する直鎖状分子10を串刺し状に包接させたポリロタキサンにおいて、環状分子12が直鎖状分子10から脱離できないように直鎖状分子10の両末端部分に封鎖基14を付与し、そのポリロタキサン化合物の環状分子12の部分に架橋分子あるいは架橋剤を付与することで、複数のポリロタキサン化合物を架橋基18で結合させた高分子化合物(以下、架橋ポリロタキサンと略記する場合がある。)である。環状分子12は、修飾基16を有していてもよい。
本実施形態において、「ポリロタキサン」または「ポリロタキサン分子」とは、環状分子12の開口部が直鎖状分子10によって串刺し状に貫かれ、環状分子12が直鎖状分子10を包接してなる擬ポリロタキサンの両末端(直鎖状分子10の両末端)に、環状分子12が脱離しないように封鎖基14を配置した分子をいう。
ポリロタキサンにおける環状分子としては、上述の如き直鎖状分子に包接されて滑車効果を奏するものである限り、特に限定されるものではなく、種々の環状物質を挙げることができる。なお、環状分子としては、水酸基を有するものが多い。また、環状分子は実質的に環状であれば十分であって、「C」字状のように、必ずしも完全な閉環である必要はない。
本実施形態のポリロタキサンにおいて、環状分子であるシクロデキストリンの一部またはすべての水酸基の水素原子が、下記式(I−1)〜式(I−3)で表される置換基から選択される少なくとも1種の修飾基によって置換されてもよい。
(式中のR11,R12,およびR13はそれぞれ独立して、炭素数1〜12の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、または、前記R11〜R13は、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子、(R14O)3−Si−からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよく、R14はそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキルまたは分岐アルキル基である。なお、R14のそれぞれは同じものであっても異なるものであってもよい。)
直鎖状分子は、実質的に直鎖であればよく、回転子である環状分子が回動可能で滑車効果を発揮できるように包接できる限り、分岐鎖を有していてもよい。また、環状分子の大きさにも影響を受けるが、その長さについても、環状分子が滑車効果を発揮できる限り特に限定されない。
封鎖基としては、直鎖状分子の両末端に配置されて、環状分子が直鎖状分子によって串刺し状に貫通された状態を保持できる基でさえあれば、どのような基であっても差し支えない。このような基としては、「嵩高さ」を有する基等を挙げることができる。なお、ここで「基」とは、分子基および高分子基を含む種々の基を意味する。
ポリロタキサンの環状分子と他のポリロタキサンあるいはポリマとが、架橋剤による化学結合によって結合されていることが好ましい。架橋剤として、特に限定されないが、環状分子上の水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基と反応できる架橋剤であればよい。例えば、アルコキシシラン類、イソシアネート類、オキセタン類、オキシラン類、酸無水物類、イミダゾール類等が挙げられる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型、イソシアヌレート型、アダクト型、トリレン−2、4−ジイソシアネート、ジイソシアン酸イソホロン、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジビニルスルホンまたは1、1’−カルボニルジイミダゾール等が挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、環状分子の修飾基である前記アルコキシシリル基を有する基を架橋させてもよい。これらのうち、材料作製時の溶媒やポリロタキサンとの相溶性等の点から、架橋が、イソシアネート化合物、グリシジルエーテル化合物、アルコキシシラン化合物、イミダゾール化合物の群から選択される少なくとも1種の架橋剤により行われていることが好ましい。
ここで、本実施形態で用いられる架橋ポリロタキサンは、例えば以下の工程によって処理することにより得られる。
(1)環状分子と直鎖状分子とを混合し、環状分子の開口部を直鎖状分子で串刺し状に貫通して直鎖状分子に環状分子を包接させる
(2)得られた擬ポリロタキサンの両末端(直鎖状分子の両末端)を封鎖基で封鎖して、環状分子が串刺し状態から脱離しない分子構造とする
(3)必要に応じて、得られたポリロタキサンの環状分子の水酸基を化学修飾基で修飾する
(4)得られたポリロタキサンを架橋して、架橋ポリロタキサンを得る
本実施形態の架橋ポリロタキサンを用いた摺動部材としては、架橋ポリロタキサンに、必要に応じて樹脂成分、固体潤滑剤、添加剤、顔料、触媒、離型、充填材または溶媒等、およびこれらを任意に組み合わせたものを、常法に基づいて配合し、混合して、例えば、成形体等の形態にしたものである。また、2種以上の樹脂成分を混合使用してもよい。
架橋ポリロタキサンを、実質的に溶媒成分を含まないものとすることによって、後述するマルテンス硬さを3N/mm2以上とすることができる。
本実施形態における架橋ポリロタキサンは、摺動部材に適用したときに耐摩耗性を確保する等の点から、ISO14577に準じて測定されるマルテンス硬さ(HM)で3N/mm2以上を有する化合物であることが好ましく、10N/mm2以上を有する化合物であることがより好ましく、80N/mm2以上を有する化合物であることが特に好ましい。マルテンス硬さ(HM)3N/mm2以上となるよう架橋ポリロタキサンの架橋度を調整することにより、摩擦によって生じるせん断力に対して十分な材料強度を付与することができ、良好な耐摩耗性が確保できる。
本実施形態に係る摺動部材と組み合わせて用いられる潤滑剤としては例えば、パラフィン系、オレフィン系等の炭化水素系油を主体とするエンジン油や変速機油、機械加工用潤滑油および作動油等が挙げられる。さらには、エステル系油を主体としたジェットエンジン用油あるいは精密機械部品の軸受油、グリコール系油を主体としたブレーキシステム用フルード、エーテル系油を主体とした冷凍機油や真空ポンプ用油、シリコーン系油あるいはフッ素系油を主体とした高温用潤滑油等が挙げられる。また、水系やエマルジョン系の切削加工用潤滑剤や加工用潤滑剤等、アルコール系溶剤を主体とした電子部品接点用潤滑剤等も挙げられる。
本実施形態に係る摺動部材は、油系または水系の潤滑剤を用いて摺動される機械部品に好適に適用される。例えば、本実施形態に係る摺動部材が摺動面の一部に設けられた、潤滑剤が存在する使用条件において用いられるすべり軸受、オイルシール、すべりガイド、ガイドレール、内燃機関用のピストン、ピストンリング、シリンダ、スライダ、ワッシャ、動弁系部品、摩擦式動力伝達装置(クラッチ)ならびにベルト式無段変速機の動力伝達ベルトに用いられる積層リングおよびエレメント等の摺動部品が挙げられる。
環状分子構造を有するα−シクロデキストリン分子の開口部に、直鎖状分子構造を有するポリエチレングリコールを串刺し状に包接させたポリロタキサンにおいて、α−シクロデキストリンがポリエチレングリコール分子から脱離できないようにポリエチレングリコール分子の両末端部分に封鎖基を付与したポリロタキサン化合物を作製した。そのポリロタキサン化合物の環状分子部分に架橋分子あるいは架橋剤を付与することで、複数のポリロタキサン化合物を結合させた高分子化合物(架橋ポリロタキサン)を作製した。
[合成例1]
直鎖状分子ポリエチレングリコール(重量平均分子量35,000)、封鎖基アダマンチル基から構成されるアダマンタンポリロタキサンを、国際公開第05/080469号パンフレットに記載される方法と同様にして以下のように調製した。
PEG(重量平均分子量35,000)10g、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)100mg、および臭化ナトリウム1gを水100mLに溶解した。得られた溶液に市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度約5%)5mLを添加し、室温(22℃程度)で撹拌しながら反応させた。反応が進行すると添加直後から系のpHは急激に減少するが、なるべくpH:10〜11を保つように1N NaOHを添加して調製した。pHの低下は概ね3分以内に見られなくなったが、さらに10分間撹拌した。エタノールを最大5mLまでの範囲で添加して反応を終了させた。塩化メチレン50mLでの抽出を3回繰り返して無機塩以外の成分を抽出した後、エバポレータで塩化メチレンを留去した。温エタノール250mLに溶解させた後、−4℃の冷凍庫に一晩おいて、PEG−カルボン酸、すなわちPEGの両末端をカルボン酸(−COOH)に置換したものを析出させた。析出したPEG−カルボン酸を遠心分離で回収した。この温エタノール溶解−析出−遠心分離のサイクルを数回繰り返し、最後に真空乾燥で乾燥させて、PEG−カルボン酸を得た。収率95%以上、カルボキシル化率95%以上であった。
上記で調製したPEG−カルボン酸3gおよびα−CD12gをそれぞれ別々に用意した70℃の温水50mLに溶解させた後、両者を混合し、その後、冷蔵庫(4℃)中で一晩静置した。クリーム状に析出した包接錯体を凍結乾燥し、回収した。収率90%以上(収量約14g)であった。
室温(22℃程度)でジメチルホルムアミド(DMF)50mLにアダマンタンアミン0.13gを溶解し、上記で得られた包接錯体14gに添加した後、速やかによく振り混ぜた。続いて、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート)0.38gをDMF25mLに溶解したものに添加し、同様によく振り混ぜた。さらに、ジイソプロピルエチルアミン0.14mLをDMF25mLに溶解したものに添加し、同様によく振り混ぜた。得られた混合物を冷蔵庫中で一晩静置した。その後、DMF/メタノール=1:1混合溶液100mLを加えてよく混ぜ、遠心分離して上澄みを捨てた。このDMF/メタノール混合溶液による洗浄を2回繰り返した後、さらにメタノール100mLを用いた洗浄を同様の遠心分離により2回繰り返した。得られた沈澱を真空乾燥した後、ジメチルスルホキシド(DMSO)50mLに溶解し、得られた透明な溶液を水700mL中に滴下して、ポリロタキサンを析出させた。析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥または凍結乾燥させた。このDMSO溶解−水中で析出−回収−乾燥のサイクルを2回繰り返し、最終的に精製ポリロタキサンを得た。添加した包接錯体をベースにした収率約68%(包接錯体14gからの収量は9.6g)であった。
合成例1のポリロタキサンをさらにヒドロキシプロピル化した化合物も、国際公開第05/080469号パンフレットに記載される方法と同様に以下のように調製した。
合成例2で作製したポリロタキサン10gをジメチルアセトアミド100mLに溶解し、撹拌しながら、n−ブチルイソシアネート(東京化成製)4.3g、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(東京化成製)1.2gをゆっくり滴下し、6時間反応させた。反応溶液をヘキサンに注ぎ、沈降物を回収し、数回ヘキサンで洗浄した後、ヘキサンを留去し、メタノール30mLに溶解した。1H−NMR分析により、ブチルカルバモイル基の修飾率は45%で、3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル基の修飾率が5%であって、GPC分析により、重量平均分子量Mwは210,000、分子量分布Mw/Mnは2.1であった。得られた修飾ポリロタキサン溶液(約25wt%メタノール溶液)をPR−3とする。
合成例2で作製したポリロタキサン(PR−2)3gをジメチルアセトアミド30mLに溶解し、撹拌しながらトリエチルアミン3.0mL、無水酢酸を1.4mL滴下し、5h反応させた。その後、溶液をヘキサン360mLに滴下し、沈降物を透析チューブ(分画分子量12,000)にて、24時間、水道水流水下で透析した。さらに、精製水中3時間で2回行った。凍結乾燥を行い、得られた生成物は、GPC分析により、重量平均分子量Mwは160,000、分子量分布Mw/Mnは1.3であった。1H−NMRより、全水酸基数に対するアセチル化率は48%であった。得られた修飾ポリロタキサンをPR−4とする。
合成例4で使用したトリエチルアミン3.0mLおよび無水酢酸1.4mLの代わりに、トリエチルアミン1.2mL、無水酢酸を0.56mLに代えた以外、合成例4と同様の操作で、ポリロタキサンを作製した。得られた生成物は、GPC分析により、重量平均分子量Mwは140,000、分子量分布Mw/Mnは1.3であった。1H−NMRより、全水酸基数に対するアセチル化率は20%であった。得られた修飾ポリロタキサンをPR−5とする。
合成例1で作製されたポリロタキサン(PR−1)10gを脱水ジメチルホルムアミド(DMF)の4%塩化リチウム溶液200mLに溶解した。得られた溶液に4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)1.7gを溶解した後、トリエチルアミン4.3mL、無水酢酸2.6mLを順番に加え、室温(22℃程度)で5時間反応させた。反応溶液を透析チューブ(分画分子量12,000)にて、24時間水道水流水下で透析した。さらに、精製水中3時間で2回行った。濾過後、凍結乾燥を行い、α−CDの−OH基を一部アセチル基で置換した生成物を得た。1H−NMRより、全水酸基数に対するアセチル化率は20%であった。GPC分析により、重量平均分子量Mwは100,000、分子量分布Mw/Mnは1.4であった。得られた修飾ポリロタキサンをPR−6とする。
[参考例1]
合成例1のPR−1 1.0gを4mLの1.0N−NaOH水溶液に溶解し、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(東京化成製)0.12mLを添加して均一に撹拌した。この溶液を50×50×0.5mm厚のモールドに注入し、室温(22℃程度)で20時間反応させた後、モールドから取り出して、中性になるまで純水で溶媒置換し、サンプルWater−Bを得た。
合成例2のPR−2 1.2gを3mLの1.0N−NaOH水溶液に溶解し、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(東京化成製)0.12mLを添加して均一に撹拌した。この溶液を70×70×1.0mm厚のモールドに注入し、室温(22℃程度)で20時間反応させた後、モールドからゲルを取り出して、中性になるまで純水で溶媒置換した。続いて、ゲルをポリエチレングリコール(PEG)(重量平均分子量300)に浸して、溶媒を水からPEGに交換した。この作業を3回行い、水がPEGに置換したサンプルPEG−Bを得た。
実施例1のゲル(Water−B)を2日間室温(22℃程度)に放置した後、60℃で3時間真空乾燥し、サンプルWater−C フィルムの作製を試みたところ、乾燥フィルムに亀裂が生じ、摺動材料として適したサンプルが作製できなかった。
合成例3のPR−3メタノール溶液を直径40mm、深さ2mmの試験プレート(鉄製型)に流し込み、1日室温(22℃程度)に放置してから、引き続き常圧50℃で1h、常圧70℃で1h、約6.7x10−3MPaの減圧条件で80℃に2h加熱乾燥し、型上に平滑な薄膜を得た。得られたサンプルをFilm1とする。
合成例4で作製したPR−4 0.8gをメチルエチルケトン2.0mLとジメチルスルホキシド0.8mLの混合溶媒に溶解した後、ヘキサメチレンジイソシアネート0.21g(東京化成製)添加して均一に撹拌し、直径40mm、深さ2mmの試験プレート(鉄製型)に流し込み、4h室温(22℃程度)に放置してから、引き続き常圧50℃で1h、常圧80℃で1h、約6.7x10−3MPaの減圧条件で80℃に2h加熱乾燥し、型上に平滑な薄膜を得た。得られたサンプルをFilm2とする。
合成例4で作製したPR−4 0.88gをジメチルホルムアルデヒド5.0mLに溶解し、ジラウリン酸ジブチルすず(IV)を8.8μL加え、よく撹拌した。デュラネートTPA−100(イソシアネート型硬化剤、旭化成製)を0.074g、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE−9007、信越化学製)0.044gを加えて撹拌したのち、直径40mm、深さ2mmの試験プレート(鉄製型)に流し込み、60℃で2h静置し、架橋させた。その後、約6.7x10−3MPaの減圧条件で80℃に2h加熱乾燥し、溶媒を除去した。得られたサンプルをFilm4とする。
合成例5で作製したPR−5 1.0gをジメチルホルムアルデヒド5.6mLに溶解し、ジラウリン酸ジブチルすず(IV)を5.0μL加えよく撹拌した。デュラネートTPA−100(イソシアネート型硬化剤、旭化成製)を0.29g、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE−9007、信越化学製)0.15gを加えて撹拌したのち、直径40mm、深さ2mmの試験プレート(鉄製型)に流し込み、40℃で6h静置し、架橋させた後、約6.7x10−3MPaの減圧条件で80℃に2h加熱乾燥し、溶媒を除去した。得られたサンプルをFilm5とする。
比較のために、ウレタンゲルとして、エクシールコーポレーション社のハイパーゲルシート 3030を後述する摩擦摩耗特性評価に供した。このウレタンゲルの硬さはデュロメータA硬さで13であり、この値を他の材料について測定したデュロメータA硬さとマルテンス硬さとの関係から概算すると、マルテンス硬さは1.9N/mm2程度となる。
また、エンジンピストンスカートの低摩擦コート材として用いられている複合樹脂材を厚さ10μmでアルミプレートに被覆したプレート試験片も作製し、摩擦摩耗試験に供した。この複合樹脂材はポリアミドイミド樹脂に固体潤滑剤として二硫化モリブデン粉末を分散させたものである。微小硬さ試験機を用いて測定したマルテンス硬さHMは284N/mm2であり、押し込みヤング率は6.4GPaである。
[連続接触条件での評価]
図2に示すプレートオンリング摩擦試験によって、溶媒含有タイプの試作架橋ポリロタキサンである表1の(1)Water−Bおよび(2)PEG−Bについて、連続接触すべり条件における摩擦摩耗特性を評価した。また、比較のために比較例2のウレタンゲルも試験に供した。相手材としては、ビッカース硬さHV740に焼入れ、焼き戻しを施したSUJ−2鋼材製のリング試験片を用いた。摩擦面の見掛け接触面積は200mm2である。本試験片を#600のエメリー紙で研磨して使用した。潤滑剤としては、(1)Water−B(参考例1)の評価では水を用い、(2)PEG−B(参考例2)および比較用のウレタンゲル(比較例2)には重量平均分子量300のポリエチレングリコールを用いた。潤滑剤温度は室温にて、なりゆきとした(22℃程度)。
図3に示すプレートオンバー摩擦試験によって、エンジン油潤滑下での断続接触すべり条件における供試材の摩擦摩耗特性を評価した。この評価条件は、例えば、内燃エンジンのシリンダーライナ表面が相手材のピストンリングと摺動する場合のような断続的接触条件を模擬したものである。相手材としては、ビッカース硬さHV740に焼入れ、焼き戻しを施したSUJ−2鋼材製のバー試験片を用いた。その先端曲率半径は15mmであり、表面粗さは、0.8μmRzjisである。潤滑油としては、SM規格、粘度グレード5W−30の市販ガソリンエンジン油を用いた。潤滑油温度は、前述したプレートオンリング摩擦試験と同様に室温(22℃程度)にてなりゆきとした。
[連続接触条件における摩擦摩耗特性]
溶媒含有タイプの試作架橋ポリロタキサンについて、面圧0.24MPa(=荷重49N)での連続接触条件における摩擦係数を評価した結果を図4に示す。供試架橋ポリロタキサンは、いずれのすべり条件においても、比較に用いたウレタンゲルに比べて摩擦係数が小さく、優れた低摩擦特性を示すことが分かる。ただし、面圧0.24MPa条件での試験直後に表面の観察を行ったところ、Water−BおよびPEG−Bの両者とも、亀裂が発生していたため、面圧0.49MPa(=98N)以上の試験は中断した。
プレートオンバー試験によって評価した、断続接触条件におけるFilm5およびポリアミドイミド系樹脂複合材の摩擦特性を図9に示す。本プレートオンバー摩擦試験では、その接触形態が線接触形態となり、荷重588Nとした本評価条件での最大ヘルツ圧は鋼材試験片を用いた場合での換算値で272MPaとなる。このような高面圧条件においても、従来材のポリアミドイミド系樹脂複合材に比べて、Film5は優れた低摩擦特性を示すことが分かった。
Claims (6)
- 少なくとも相手部材と摺動する摺動面が、環状分子と、前記環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、前記直鎖状分子の両末端に配置され、前記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有するポリロタキサンにおける前記環状分子の架橋によって構成される架橋ポリロタキサンを含み、
前記環状分子がα−シクロデキストリンであり、前記環状分子の一部またはすべての水酸基の水素原子が、ヒドロキシプロピル基、ブチルカルバモイル基、アセチル基、3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル基からなる群から選択される少なくとも1種の修飾基によって置換されており、
前記架橋ポリロタキサンは、7×10 −3 MPa以下の減圧条件にて80℃で1hの乾燥処理を施した場合の重量変化が0.5wt%以下であることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1に記載の摺動部材であって、
前記直鎖状分子が、ポリエチレングリコールであることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1または2に記載の摺動部材であって、
前記架橋が、イソシアネート化合物、グリシジルエーテル化合物、アルコキシシラン化合物、イミダゾール化合物の群から選択される少なくとも1種の架橋剤により行われていることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の摺動部材であって、
前記架橋ポリロタキサンのマルテンス硬さHMが、3N/mm2以上であることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の摺動部材が、面圧0.1MPa以上となる荷重の負荷とその開放とが繰り返される断続的な接触状態にある摺動面の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする摺動部品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の摺動部材が摺動面の少なくとも一部に設けられ、潤滑剤が存在する使用条件で用いられる、すべり軸受、オイルシール、すべりガイド、ガイドレール、内燃機関用のピストン、ピストンリング、シリンダ、スライダ、ワッシャ、動弁系部品、摩擦式動力伝達装置(クラッチ)ならびにベルト式無段変速機の動力伝達ベルトに用いられる積層リングおよびエレメントのいずれか1つであることを特徴とする摺動部品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011001967A JP5676282B2 (ja) | 2011-01-07 | 2011-01-07 | 摺動部材および摺動部品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011001967A JP5676282B2 (ja) | 2011-01-07 | 2011-01-07 | 摺動部材および摺動部品 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2012144591A JP2012144591A (ja) | 2012-08-02 |
JP5676282B2 true JP5676282B2 (ja) | 2015-02-25 |
Family
ID=46788502
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2011001967A Active JP5676282B2 (ja) | 2011-01-07 | 2011-01-07 | 摺動部材および摺動部品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5676282B2 (ja) |
Families Citing this family (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR102115062B1 (ko) | 2013-01-21 | 2020-05-25 | 스미또모 세이까 가부시키가이샤 | 연질 재료용 조성물 및 연질 재료 |
ES2688493T3 (es) | 2013-10-31 | 2018-11-02 | Sumitomo Seika Chemicals Co., Ltd. | Composición que contiene polirotaxano |
JP6120817B2 (ja) * | 2014-09-11 | 2017-04-26 | ミネベアミツミ株式会社 | 紫外線硬化性樹脂組成物、その硬化物及び摺動部材 |
WO2017188376A1 (ja) * | 2016-04-27 | 2017-11-02 | 国立大学法人大阪大学 | ポリロタキサンの製造方法 |
JP2019131622A (ja) * | 2016-05-09 | 2019-08-08 | 国立大学法人 東京大学 | アルコキシシラン類及びポリロタキサンを有してなるゾル及びゲル |
US20230192931A1 (en) * | 2017-03-02 | 2023-06-22 | Osaka University | Host-group-containing polymerizable monomer, polymer material, method for producing same, and clathrate compound and method for producing same |
EP3845567A4 (en) * | 2018-08-27 | 2022-05-04 | ASM Inc. | POLYROTAXANE, THERMALLY CURABLE COMPOSITION WITH SAID POLYROTAXANE, THERMALLY CURED CROSSLINKED ARTICLE, METHOD OF MAKING POLYROTAXANE AND METHOD OF MAKING A THERMALLY CURED CROSSLINKED ARTICLE |
CN112662450A (zh) * | 2020-12-22 | 2021-04-16 | 邵敏 | 一种高耐磨润滑油及其制备方法 |
CN116024033B (zh) * | 2022-12-28 | 2023-08-01 | 浙江渤威能源科技有限公司 | 电驱系统润滑油的制备工艺 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1734066B1 (en) * | 2004-03-31 | 2020-06-24 | The University of Tokyo | Polymeric material having polyrotaxane and process for producing the same |
EP1900776A1 (en) * | 2005-04-25 | 2008-03-19 | The University of Tokyo | Gel composition and method for producing same |
-
2011
- 2011-01-07 JP JP2011001967A patent/JP5676282B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2012144591A (ja) | 2012-08-02 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5676282B2 (ja) | 摺動部材および摺動部品 | |
JP5701853B2 (ja) | 架橋ポリロタキサンを有する材料、及びその製造方法 | |
JP5436988B2 (ja) | 摺動部材 | |
US20150175787A1 (en) | Tribologically Modified Ultrahigh Molecular Weight Polyethylene | |
Yu et al. | Regulating microstructures of interpenetrating polyurethane-epoxy networks towards high-performance water-lubricated bearing materials | |
CN110214237B (zh) | 用于制动衬块摩擦材料的树脂组合物和由该树脂组合物制成的制动衬块摩擦材料 | |
Zhao et al. | Friction and wear behavior of the polyurethane composites reinforced with potassium titanate whiskers under dry sliding and water lubrication | |
Liu et al. | Mechanism of superlubricity conversion with polyalkylene glycol aqueous solutions | |
FR3030536A1 (fr) | Organopolysiloxanes et leur procede de preparation | |
CA2955996C (en) | Self-lubricating polymer composition | |
CN111763327B (zh) | 两亲性瓶刷型聚合物及其制备方法和应用 | |
US9796942B2 (en) | Bearing material | |
CN111675799B (zh) | 一种改性聚氨酯弹性体及其制备方法和应用 | |
Honarkar et al. | Synthesis and characterization of polyhedral oligomeric silsesquioxane-based waterborne polyurethane nanocomposites | |
JP2020504200A (ja) | 低摩擦重合性組成物 | |
Bermúdez et al. | Friction and multiple scratch behavior of polymer+ monomer liquid crystal systems | |
KR101417279B1 (ko) | 실리콘 고무 와이퍼 블레이드용 윤활 코팅 조성물 | |
JP4168207B2 (ja) | ワイパーブレードゴム補修用塗料組成物 | |
CN104812877B (zh) | 节能、暂时性剪切致稀硅氧烷润滑剂的使用方法 | |
US20190002787A1 (en) | Hyper-branched macromolecular architectures and methods of use | |
CN110662826A (zh) | 润滑脂组合物以及用其涂覆的滑动构件 | |
US5703163A (en) | Loop polymers | |
KR102202060B1 (ko) | 저마찰 수지 복합체 | |
JPH01204950A (ja) | ポリアセタール樹脂組成物 | |
CN115873650B (zh) | 两端羟基功能化遥爪型聚合物超分子油凝胶及其作为润滑油的应用 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20130218 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20140122 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20140218 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20140418 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20141216 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20141225 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5676282 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |