JP4168207B2 - ワイパーブレードゴム補修用塗料組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はワイパーブレードゴム表面に塗布することで、ワイパーブレードゴムが経時劣化した際に発生したクラックによる拭き取り性の欠落を補修すると共に、ガラス面との摺動抵抗の減少によってガラスに対する鳴き、びびりを抑える塗料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ワイパーブレードゴムは、太陽からの紫外線、赤外線、大気中のオゾンの影響、または砂、泥、ほこりからの影響を受け、どうしてもワイパーブレードゴムは経時劣化してしまう。これらの条件下で劣化したワイパーブレードゴムは、元々摺動抵抗の減少を目的に処理されているハロゲン処理や二硫化モリブデン皮膜といった表面処理層の摩耗により摺動抵抗の増大、クラックの発生による拭き取り性の欠落が発生し、結果的にワイパーブレードゴムの鳴きやびびり、視界不良につながる。従来、こういった問題を解決するために、潤滑剤として二硫化モリブデン、バインダーとしてセルロース、溶剤が酢酸エチルといった配合の塗料組成物があるが、一時的にガラスに対する鳴き、びびりを抑えることができるが耐久性がなく、問題の解決に至っているとはいえない。ましてや、経時劣化しクラックの発生したワイパーブレードゴムを補修するための塗料組成物は未だ例がない。
【0003】
また、ワイパーブレードゴムは摺動抵抗の減少を目的に二硫化モリブデンやグラファイトを含有した塗料組成物を製造段階で処理している場合があるが、これらは各種ポリオールとポリイソシアネートの反応により硬化するという二液硬化型バインダーを使用しており、且つ溶解力の強い有機溶剤が使用され、作業性の悪さや安全衛生上の問題等、解決すべき問題点を多く残している。
【0004】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、このような従来技術の欠点を解決するものであり、ワイパーブレードゴムの経時劣化により発生したクラックを補修することにより拭き取り性を向上させること、及びワイパーブレードゴムにガラスに対する摺動性を付与することを目的とし、且つ作業性の向上、低公害溶剤の使用を目的とする。
【0005】
本発明者等は、このような目的を達成するために種々の方法を検討した結果、本発明に到達したものである。
本発明は、ラッカー型アクリル樹脂、フルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体のいずれかから選ばれた柔軟性に優れた一液常温乾燥型樹脂をバインダーとして、石油系脂肪族溶剤による前記バインダーの溶解物に、シロキサン結合を有するオルガノポリシロキサン重合体でゴム弾性を有する平均粒径が20μm以下の球状の微粉末であるシリコーンゴムパウダーと、ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデン、グラファ イト、窒化ホウ素からなる群から1種類以上選ばれた固体潤滑剤とが添加されていることを特徴とするワイパーブレードゴム補修用塗料組成物である。
【0006】
即ち、低公害溶剤である石油系脂肪族溶剤可溶の柔軟性に優れた一液常温乾燥型樹脂バインダー(以下、単に樹脂という)にシリコーンゴムパウダーを添加してなる塗料組成物をワイパーブレードゴム表面に塗布することにより、ワイパーブレードゴムの経時劣化のため発生したクラックの補修、それによる拭き取り性の向上及びワイパーブレードゴムへの摺動性の付与を可能としうることを見いだしたものである。
【0007】
本発明で用いられるシリコーンゴムパウダーとは、シロキサン結合を有するオルガノポリシロキサン重合体であり、−70℃〜250℃の広い範囲でゴム弾性を有するものの球状の微粉末である。また、このシリコーンゴムパウダーの平均粒径は20μm以下が好ましく、1〜5μmが特に好ましい。
【0008】
前記したシリコーンゴムパウダーの配合割合は、単独で用いる場合、樹脂100重量部に対し、20〜130重量部であるのが好ましい。20重量部未満であれば摺動性及びクラックの補修効果が得られないことがあり、130重量部を超えるとワイパーブレードゴムとの密着性が低下したり、摺動耐久性が低下することがある。また、固体潤滑剤と併用する場合、樹脂100重量部に対し10〜120重量部が好ましい。10重量部未満であれば摺動性及びクラックの補修効果が得られないことがあり、120重量部を超えるとワイパーブレードゴムとの密着性が低下したり、摺動耐久性が低下することがある。
【0009】
本発明で用いられる固体潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素からなる群から一種以上が選ばれ、中でもポリテトラフルオロエチレンが特に好ましい。
【0010】
前記したポリテトラフルオロエチレンは、従来公知の方法で重合することにより容易に製造することができ、摩擦係数が極めて低いという特徴についてはよく知られている。また、平均粒径は20μm以下が好ましく、0.5μm〜5μmが特に好ましい。配合割合は、樹脂100重量部に対し10〜200重量部が好ましく、10重量部未満であれば満足な摺動性が得られず、200重量部を超えるとワイパーブレードゴムとの密着性が低下したり、摺動耐久性が低下することがある。
【0011】
前記の二硫化モリブデン、窒化ホウ素、グラファイトは、それぞれ六方晶系の結晶構造を有し、その層状構造の層間の弱い結合力のために層間で剪断が起こり低摩擦特性を示すと考えられている。
【0012】
前記の二硫化モリブデンの平均粒径は、10μm以下が好ましく、0.5μm〜5μmが特に好ましい。配合割合は樹脂100重量部に対し20〜200重量部が好ましい。20重量部未満であれば満足な摺動性が得られず、200重量部を超えるとワイパーブレードゴムとの密着性が低下したり、摺動耐久性が低下することがある。
【0013】
前記のグラファイトの平均粒径は、40μm以下が好ましく、2〜15μmが特に好ましい。配合割合は樹脂100重量部に対し、10〜200重量部が好ましい。10重量部未満であれば満足な摺動性が得られず、200重量部を超えるとワイパーブレードゴムとの密着性が低下したり、摺動耐久性が低下することがある。
【0014】
前記の窒化ホウ素の平均粒径は、15μm以下が好ましく、1〜8μmが特に好ましい。配合割合は樹脂100重量部に対し10〜150重量部が好ましい。10重量部未満であれば満足な摺動性が得られず、150重量部を超えるとワイパーブレードゴムとの密着性が低下したり、摺動耐久性が低下することがある。
【0015】
本発明で用いられる樹脂としては、一液常温乾燥型で石油系脂肪族溶剤に可溶であるラッカー型アクリル樹脂、フルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体等があげられ、中でもワイパーブレードゴムに必要とされる性能である耐摩耗性、耐候性、耐水性、柔軟性及び強靭性、耐熱性、密着性、耐ウォッシャー液性などが優れているフルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体が好ましい。
【0016】
本発明で用いられるラッカー型アクリル樹脂は、一液常温乾燥型であり、アクリル酸及びメタアクリル酸誘導体、スチレンなどを主成分として共重合させて得られる熱可塑性樹脂である。また、分子量は10000〜100000である。
【0017】
本発明で用いられるフルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体は、一液常温乾燥型であり、主とする基本骨格がフルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルとの交互共重合体であるものである。分子量は10000〜40000である。また、一般的にフルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体には水酸基が含有されていることが多いが、本願発明において水酸基の有無については問わない。但し、水酸基を多少でも有したフルオロオレフィンとアルキルビニルエーテル共重合体は固体潤滑剤の分散性が良い。
【0018】
本発明の塗料組成物は、樹脂を石油系脂肪族溶剤で溶解し、その溶液中に、シロキサン結合を有するオルガノポリシロキサン重合体で、ゴム弾性を有する球状の微粉末であるシリコーンゴムパウダー及び固体潤滑剤を混合し、分散させることにより製造する。
【0019】
本発明の塗料組成物を使用する場合には、本塗料組成物をスプレー塗布、ディッピング、刷毛塗り等の塗布方法により塗布後、石油系脂肪族溶剤を揮発させ乾燥させる。乾燥後の塗膜は3〜30μmが好ましく、5〜10μmが特に好ましい。塗膜は厚くなればなるほど母材であるワイパーブレードゴムへの追従性が悪くなり、塗膜自身のクラックの発生を招き、拭き取り性が低下することがある。
【0020】
本発明の塗料組成物の被塗物であるワイパーブレードゴムの材質としては、天然ゴム、エチレン−プロピレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0021】
【実施例、比較例】
実施例2〜37
樹脂を溶剤で溶解し、その溶液中にシリコーンゴムパウダー及び固体潤滑剤A〜Dを混合し、分散させることにより表1〜3の塗料組成物を製造した。
【0022】
実施例及び比較例に用いた諸原料の概略を示すと以下のとおりである。
・樹脂A:フルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体、フルオロエチレンアルキルビニルエーテル交互共重合体、分子量約30000
・樹脂E:ラッカー型アクリル樹脂、酸価=1〜3、分子量約30000
・シリコーンゴムパウダー:直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つシリコーンゴムの球状微粉末、平均粒径5μm、粒度分布1〜20μm
・固体潤滑剤A:ポリテトラフルオロエチレン、平均粒径3〜5μm、粒度分布1〜20μm
・固体潤滑剤B:二硫化モリブデン、平均粒径0.5〜1.2μm
・固体潤滑剤C:グラファイト、平均粒径9.5〜10.5μm、粒度分布1.5〜40μm
・固体潤滑剤D:窒化ホウ素、平均粒径1〜2μm
・溶剤:ミネラルスピリット、成分 C9〜C12パラフィン 60〜70%、C9〜C10アルキルベンゼン 20〜30%
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
実施例の塗料組成物について以下の方法で拭き取り性能評価及び摩擦試験を行う。結果は表4〜表8に示す。
拭き取り性能評価
1.試験片の作製
(1)準備するもの
・自動車用ワイパーブレードゴム(市販品ホンダ自動車用長さ;500mm、材質;天然ゴム(ハロゲン処理品))
・泥水(配合内容JISダスト1種:JISダスト2種:水=1:3:12)
(2)作製手順
自動車用ワイパーブレードゴムを自動車に取り付け、ワイパーブレードゴムの摺動部分のガラスに初期及び摺動回数1000回毎に泥水50ccを滴下し、10000回摺動させ、ワイパーブレードゴムを劣化させる。ついで、実施例及び比較例の塗料組成物をスプレーで膜厚10μmコーティングし、25℃で6時間放置する。
2.試験方法
JISD5710の4.2の拭き性能、7.2の拭き性能試験の項にのっとり、試験を行う。
評価項目は、円滑作動の可否、著しいびびり及び異状音の有無、拭き性能(水滴の拭き残しライン(初期及び50万回耐久後))の数とする。
尚円滑作動の可否については可=○、否=×とし、びびりの有無については有=〇、無=×とし、異状音の有無については有=○、無=×とし、拭き性能は、JISD57104.2項の備考1〜3に基づいてMゾーン(ワイパーブレードが往復して出来るふき面積のうち、ワイパーブレードゴムの中心点から両端への1/4ずつの部分のふき面積)とSゾーン(Mゾーン以外のふき範囲)におけるヘアライン(幅0.5mm以下のごく細い筋状のふき残し)、ヘビアライン(幅1mm以下の細い筋状のふき残し)及びワイドライン(幅1〜20mm程度までの帯状のふき残し)の数を〔Mゾーンの本数/Sゾーンの本数〕として数字で示した。
摩擦試験
1.試験片の作製天然ゴムシート(硬さJISA60厚さ2mm)にハロゲン処理を施し、実施例及び比較例の塗料組成物をスプレーで膜厚10μmをコーティングし、25℃で6時間放置する。
2.試験方法往復動試験機により、滑り速度6000mm/分、荷重100g、滑り距離(ストローク)100mmの条件で、相手材1/4インチガラス球に対する初期及び10万回耐久後の摩擦係数を測定する。
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
【表7】
【0031】
【表8】
【0032】
比較例1
本塗料組成物のコーティング無しで、試験した。試験結果は表9の通りである。
【0033】
【表9】
【0034】
比較例2〜6実施例の塗料組成物の配合比を変えて表10の塗料組成物を製造した。試験結果は表11の通りである。
【0035】
【表10】
【0036】
【表11】
【0037】
【発明の効果】
本発明の柔軟性に優れた石油系脂肪族溶剤可溶の一液常温乾燥型樹脂にシロキサン結合を有するオルガノポリシロキサン重合体で、ゴム弾性を有する球状の微粉末であるシリコーンゴムパウダーを添加する、あるいはシロキサン結合を有するオルガノポリシロキサン重合体で、ゴム弾性を有する球状の微粉末であるシリコーンゴムパウダー及び固体潤滑剤を添加してなる塗料組成物は、ワイパーブレードゴムに塗布することによりワイパーブレードゴムの経時劣化のため発生したクラックの補修、それによる拭き取り性の向上及びワイパーブレードゴムへの摺動性の付与に効果がある。また、樹脂が一液常温乾燥型樹脂であるので作業性に優れており、且つ溶媒として石油系脂肪族溶剤を含有することで一般の有機溶剤を含有することに比較して安全性がある。
Claims (1)
- ラッカー型アクリル樹脂、フルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体のいずれかから選ばれた柔軟性に優れた一液常温乾燥型樹脂をバインダーとして、
石油系脂肪族溶剤による前記バインダーの溶解物に、シロキサン結合を有するオルガノポリシロキサン重合体でゴム弾性を有する平均粒径が20μm以下の球状の微粉末であるシリコーンゴムパウダーと、ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素からなる群から1種類以上選ばれた固体潤滑剤とが添加されていることを特徴とするワイパーブレードゴム補修用塗料組成物。
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