JPWO2018012052A1 - ロール表面の付着物除去方法および熱可塑性樹脂シート状物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)熱可塑性樹脂シート状物の製造に用いられるロールの表面にUVランプからの紫外線を照射してロール表面の付着物を除去する方法において、前記UVランプとして、低圧UVランプであり、かつ、照射光から220nm以下の波長の紫外線を消失させてオゾンを発生させない特定波長の紫外線を照射するオゾンレス低圧UVランプを用いることを特徴とする、ロール表面の付着物除去方法である。ここで、上記オゾンレス低圧UVランプから照射される特定波長の紫外線から、220nm以下の波長の紫外線が実質的に消失されていればよく、実質的にとは、基本的にと言うことで、オゾンガスを発生させる220nm以下の波長の紫外線が、好ましいオゾンレスの状態を形成できるようにランプからの照射光から意図的に消失されていればよい。また、上記オゾンレス低圧UVランプから照射される特定波長の紫外線には、波長220nm以下以外の長波長の光が多少とも含まれていてもよい。なお、上記熱可塑性樹脂シート状物とは、未延伸、一軸延伸、二軸延伸の熱可塑性樹脂フィルムをはじめ、より厚い熱可塑性樹脂シートまで含む概念である。
(13)(1)〜(12)のいずれかに記載の方法により表面の付着物が除去されたロールを用いることを特徴とする、熱可塑性樹脂シート状物の製造方法、についても提供する。
次に本発明で使用した物性および特性の測定法について以下に述べる。
25℃で、o−クロロフェノールを溶媒として次式より求めた。
[η]= lm[ηsp/c]
比粘度ηspは、相対粘度ηrから1を引いたものである。cは、濃度である。単位は
dl/gで表わす。
セイコー電子工業(現在セイコーインスツル社)製DSC RDC220型を用い、ポリエステルを5mg秤量し、窒素ガス雰囲気下20℃/分の速度で昇温して300℃になった時点でクエンチし、再度20℃/分の速度で300℃まで昇温しながらベースラインがシフトする温度をガラス転移点(Tg)、冷結晶化発熱ピーク温度(Tcc)、吸熱ピーク温度を融点(Tm)として測定した。300℃に到達した後、さらに20℃/分の速度で降温させ、溶融結晶化発熱ピーク温度(Tmc)を測定した。
浜松ホトニクス社製UV−METER C6080−02を用い、波長254nmの照射強度を測定した。
ロール上のオリゴマー汚れは、製膜開始前に縦延伸ロールを十分に清掃し、製膜開始から72時間後の汚れ状態をそれぞれ目視で観察し、製膜前と変わらずきれいなものを「◎」、汚れがほとんど見られないものを「○」、ごく薄く汚れ(白く濁った程度)が確認できるが使用を続けて問題ないものを「△」、汚れがかなり厚く付着し、掃除または交換が必要なものを「×」と評価した。
紫外線照射前後で表面状態を観察し、着色、腐食、表面荒れなどの表面変化のないものを〇、ダメージの有るものを×とした。
フィルムの製膜に相応しい温度に設定されている温度より、紫外線照射により2℃以上上昇する場合を×とし、そのような温度上昇のない場合を「○」とした。
熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)(固有粘度[η]=0.61、ガラス転移温度Tgは70℃、冷結晶化温度Tccは128℃、融点Tmは265℃、溶融結晶化発熱ピーク温度Tmcは215℃、添加剤として平均粒径0.25μmの酸化珪素粒子を0.1wt%含有)を用いた。該PET樹脂の含水率が20ppm以下になるように乾燥した後、押出機に供給して280℃で溶融して3t/hの吐出量で押出し、10μmカットの金属繊維燒結フィルターを通過させて濾過し、口金に導入して溶融フィルムを吐出し、この溶融フィルムに0.06mm径のワイヤー状の電極から負の静電荷を印加させながら冷却ロール上に密着させ冷却、固化させた。該押出フィルムをクロムメッキロールを用いて予熱温度72℃で予備加熱し、その後セラミックロールにてさらに加熱して、長手方向延伸機で延伸温度95℃で3.5倍延伸した後、ガラス転移温度Tg以下に冷却した。続いて該長手方向延伸フィルムの幅方向両端をクリップで把持しながらテンターに導き、延伸温度90℃に加熱された熱風雰囲気中で幅方向に3.8倍延伸後、225℃で熱固定して、厚さ25μmのフィルムを製膜した。
実施例1と同様の条件で製膜した。ただし、このとき照射強度は50mW/cm2 になるように調節した。得られた結果を表1に示す。
実施例1と同様の条件で製膜した。ただし、このときの照射強度は180mW/cm2 になるように調節した。得られた結果を表1に示す。
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプをチャンバーで囲い、同チャンバーの四方に設置された集光鏡の角度と、ロールと紫外線ランプの距離を調節して、照射強度120mW/cm2 になるように紫外線を集光した。得られた結果を表1に示す。集光鏡による集光で照射強度を調整可能なことを確認した。但し同時に、とくに集光しなくても、照射強度を好ましい範囲に調整できれば、目標とするロール表面の付着物除去効果が得られることも確認した。
長さ1010mmの長い1本のオゾンレス低圧UVランプをU字型に6回折り曲げて、1本のランプ長さを約160mmにして、ロールに照射するランプを見掛け上6本有るようにしたランプでロールに照射した。得られた結果を表1に示す。ランプの形状を変えても同様の優れたロール表面の付着物除去効果が得られることを確認した。
実施例1と同様の条件で製膜した。ただし、このとき照射強度は10mW/cm2 になるように調節した。得られた結果を表1に示す。照射強度を低下させたことによりロール表面の付着物除去効果が若干低下したので、照射強度としては15mW/cm2 程度以上が望ましいことが判った。
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプを、254nmの波長の紫外線とともに、オゾンが発生する185nmの波長の紫外線を照射する通常の低圧水銀ランプに代え、実施例1と同様の条件で紫外線を照射して製膜した。ランプからの紫外線によりオゾンが発生したので、被処理ロールのクロムメッキ処理ロールに黒い斑点が出たり、一部腐食のような欠点が見つかったりして、該予熱ロールにダメージが発生しており、フィルムに傷が発生したので、継続して生産はできなかった。さらに、このオゾンガスは人体にも悪影響を与えるので、強制的にランプ周りの空気を排出させたが、完璧な排出は難しく、オゾン臭がしていた。このテストの結果を表1に示した。
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプの電源を切った以外は実施例1と同じようにしてフィルムを製膜したが、予熱ロールに経時でオリゴマーが付着して得られたフィルム表面にスクラッチ傷や、異物が付着していた。
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプを高圧水銀ランプに代えて1kW(使用電力1000W)の照射を行った他は、実施例1と全く同じようにして製膜したところ、ロールのクリーン化が遅いばかり、ロール表面温度が経時と共に上昇して行き、フィルムが部分的にロールに粘着しフィルム表面欠点となった。さらに、このランプで用いる電力も、実施例1の110Wに比べ1000Wと大きく、またランプ寿命も実施例1の約6000時間に比べ約1000時間と短く、しかもランプ価格も高く、ランニングコストが高く付くと言う欠点もあった。
1.試験の概要
310nm以下の波長の紫外線はPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに対する透過率はゼロである。これらの紫外線はPETに100%吸収される。PETのオリゴマーは、PETとほぼ同じ組成比のベンゼン核とカルボニル基からなる類似の分子構造のモノマーで構成されていることが判っている。したがって、PETのオリゴマーも310nm以下の波長の紫外線を効率良く吸収すると思われる。試験に用いたオゾンレス低圧UVランプから発生する紫外線は、実質的に、さらに短波長の254nmの波長の紫外線のみであることから、PETオリゴマーに対して極めて吸収されやすく、PETオリゴマーの分解力が高いことが推測される。これを確認するために、このオゾンレス低圧UV照射によるPETオリゴマーの分解除去実験を行った。画像処理ソフト“ImageJ”を使用して、デジタルカメラ写真から試料表面のオリゴマー残量をGray Valueとして測定する方法で、オゾンレス低圧UVランプのオリゴマー除去能力を調べた。
A:TD(横)延伸ライン部:
図1に概略構成を示すPET二軸延伸フィルム製造ラインのTD(横)延伸ライン3部分からオリゴマーを採取(概略組成は図に示すようにテレフタル酸(TPA):20%、モノ−2−ヒドロキシエチルテレフタル酸(MHT):30%、環状化合物(環化と略して表記)、特に環状3量体:10%、残りはそれ以外の物質である。)
B:MD(縦)延伸ライン部(図1に符号2で表示):
採取が難しいため、市販試薬テレフタル酸を代用し、TPA:70%、環状化合物(環化)、特に環状3量体:30%に調製して使用
C:キャスティング装置部:
A−PET(非晶[Amorphous]−PET)シート製造ラインの冷却ロール1(キャスティングロール)[図1]上部のTダイス4周辺からオリゴマーを採集(TPA:20%、MHT:15%、BHT(ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタル酸):5%、環状化合物(環化)、特に環状3量体:7%、残りはそれ以外の物質である。)
AT:黒灰色アルミナチタニヤ(Al2O3/40%TiO2)プラズマ溶射膜
Ra:0.08μm以下の研磨仕上げ面
HCr 0.2S:ハードクロムめっき、表面粗度0.2S以下の鏡面研磨面
HCr As Plating:ハードクロムめっき、めっき後のままの磨き無し表面
WCNiCr:タングステンカーバイド系(WC/20%Ni/7%Cr)高速フレーム溶射(HVOF)膜、Ra:0.08μm以下の研磨仕上げ面
オリゴマーの付着量はわずかであるため、重量減量は天秤の測定誤差範囲となり重量減ではオリゴマー分解量は判断できない。オリゴマー塗布膜表面は基材よりGray Value(白色度)が高いので、目視だとオリゴマーの残留状態は容易に判断できるが、定量的な表現ができない。そこで、画像処理ソフト“ImageJ”で試験片のデジタルカメラ写真をグレイに変換後に、オリゴマー付着部のピクセル単位のGray Valueを測定し、オリゴマー汚れの残留量の指標とした。
(1)PETオリゴマー塗布液:オリゴマー0.8gを100ccエタノールに添加し、攪拌混合。
試薬TPA の塗布液:試薬TPA(テレフタル酸)1gを100ccN,Nジメチルホルムアミドに溶解。この溶解液をさらにトルエンと1:1 混合。
(2)オリゴマーの塗布:塗布液を浸みこませた二つ折り15W×50Lウエスで1〜2回塗り。
(3)試験片のセットと照射距離:シリコンラバーヒーター上に設置、照射距離65mm。
(4)試験片の温度調整:試験片の表面に温調用熱電対をセット。
(5)ブロアーを作動させた状態で試験を行なった。
(6)規定時間ごとに、オリゴマーの分解状況をデジタルカメラで撮影。
図3(A)に示す照射試験機10を用いた。図3(A)に示すように、ガイドレール11とラボジャッキ・ハンドル12により位置、高さが調整可能なステージ13上に試験片14をセットし、ダクト口15から排気しながら、端子台16、ランプ端子台17を介して給電されるオゾンレス低圧UVランプ18からの特定波長の紫外線を、反射板19による反射も利用しつつ、試験片14に照射した。図3(B)に示すように、この試験用オゾンレス低圧UVランプ装置20としては、実質発光長φ16×1100L(mm)のオゾンレス低圧UVランプ18を5回折り曲げて160×160(mm)の面状ヒーターに加工したものを用いた。
ランプ電力:110W
UV照度:15mW/cm2(照射距離60〜65mm)
ランプ冷却:ブロアーによる強制空冷
下記の条件で試験した。試験結果を表2および図6に示す。さらに、Gray Value測定のためにデジタルカメラで撮影した映像の代表例を図7、図8に示す。
オリゴマーの種類:A
基材(試験片):(1)HCr 0.2S
(2)WCNiCr
(3)AT
(4)HCr As Plating
基材温度:71〜75℃
Gray Value の測定枠形状:10×10mm
オリゴマーの種類:A
基材 :HCr As Plating
UV照射距離 :65mm
Gray Value の測定枠形状:10×10mm
測定値は測定枠内部の平均値とした。結果を表3および図9に示す。
下記の条件で試験した。試験結果を図10および図11に示す。
オリゴマーの種類 :B
基材(試験片):HCr As Plating
UV照射距離 :65mm
基材温度 :71〜75℃
Gray Value の測定枠形状:30mm×50mm
測定値は、測定枠の基準線に平行で、30mm幅の線に沿った値の平均値とした。
下記の条件で試験した。試験結果を図12〜図14および表4に示す。
オリゴマーの種類:C(A−PETシートオリゴマー)
基材(試験片):HCr 0.2S
基材温度 :30〜35℃
Gray Value の測定枠形状:25mm×37mm
測定値は、測定枠の基準線に平行で、25mm幅の線に沿った値の平均値とした。
2 MD(縦)延伸ライン
3 TD(横)延伸ライン
4 Tダイス
10 照射試験機
11 ガイドレール
12 ラボジャッキ・ハンドル
13 ステージ
14 試験片
15 ダクト口
16 端子台
17 ランプ端子台
18 オゾンレス低圧UVランプ
19 反射板
20 試験用オゾンレス低圧UVランプ装置
温と共にブリードアウトするので、加熱ロール表面に上記低分子化合物が転写したり、粘着したりしてロール表面に付着する。これらのロール表面に付着した有機物等が経時で大きく突起状に成長し、この突起が加熱されるフィルム表面にスクラッチ傷等を付けて問題となるばかりか、さらに該付着物がフィルム表面に転写移行して、その付着物がフィルム表面で異物欠点となったり、さらに他のロールとの間でスクラッチ擦り傷の原因になったりする。そこで今まではこのように汚れたロールを清掃するために、一旦製膜を止めてロール表面を拭き取ることにより付着物の除去を行ってきた。しかし、この作業は効率が悪く、生産性の大幅な低減につながっていた。
[0004]
この問題を解消するため、インラインでロール清浄する方法としては色々と提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2には拭き取り布をロールに接触させて拭き取る方法や、特許文献3には洗浄液をつけて拭き取る方法などが開示されている。しかしこれらの方法では、フィルム表面の有機付着物を多少とも低減させることはできるが、完全に除くことができず、さらに一旦拭き取った有機物が再度ロール表面上に落下する問題もあり、ロール表面上に蓄積する汚れ防止に対して十分とは言えなかった。
[0005]
また、特許文献4や特許文献5、特許文献6、特許文献8には、低圧(水銀)UV(UV:紫外線)ランプによる紫外線照射によってロール表面の付着物を非接触で化学分解して洗浄する方法が開示されている。しかしこの方法は、オゾン発生領域である220nm以下の波長185nmと、254nmなどの波長を含んだ低圧水銀ランプによる紫外線の照射によって、紫外線による光分解作用と、波長185nmの紫外線によって発生するオゾンによる酸化作用とで、ロール表面の付着有機物を非接触で除去する方法である。すなわち、185nm以下の紫外線でオゾンを発生させ、そのオゾンの酸化力で有機物を分解させ、また、波長254nmの紫外線は、オゾン(O3)を分解して活性酸素(O)を生じさせ、オゾンの酸化作用を強化するとされている方法であり、オゾンの発生とそのオゾンの酸化作用の強化を必須の構成とする方法である。特に特許文献5には、オゾンガスを発生させることで有機物分解能力
特許文献6:特開昭63−266825号公報
特許文献7:特開2015−33812号公報
特許文献8:特開平8−11186号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0009]
そこで本発明の課題は、上述した従来技術における種々の問題点に鑑み、熱可塑性樹脂シート状物の製造中にインラインでロール上の有機物などの付着物をオゾンレスの大気中で実質的にオゾンを発生させないオゾンレス低圧UV光のみを照射することで、ロールに非接触でオリゴマーなどの分解効率がよく、しかもオゾン排気装置やロール冷却装置などの付属部品が不要で、しかもUVランプの設置場所や取扱い性にも優れ、照射するロール材質に限定はなく、ランニングコストも安くオリゴマーなどを除去できる方法を提供することにあり、さらに得られたシート状物の表面にロール付着物に起因する欠点のない、高品質な熱可塑性樹脂シート状物を優れた生産性をもって製造することを可能とする熱可塑性樹脂シート状物の製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0010]
本発明者らは前述した問題点に鑑み、鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)熱可塑性樹脂シート状物の製造に用いられるロールの表面にオゾンレスの大気中でUVランプからの紫外線を照射してロール表面の付着物を除去する方法であって、前記UVランプとして、低圧UVランプであり、かつ、照射光から220nm以下の波長の紫外線を消失させてオゾンを発生させない特定波長の紫外線を照射するオゾンレス低圧UVランプを用いることを特徴とする、ロール表面の付着物除去方法である。ここで、オゾンレスの大気中で上記オゾンレス低圧UVランプからの紫外線がロールの表面に照射されるが、上記オゾンレス低圧UVランプから照射される特定波長の紫外線から、220nm以下の波長の紫外線が実質的に消失されていればよく、実質的にとは、基本的にと言うことで、オゾンガスを発生させる220nm以下の波長の紫外線が、好ましいオゾンレスの状態を形成できるようにランプからの照射光から意図的に消失されていればよい。
また、上記オゾンレス低圧UVランプから照射される特定波長の紫外線には、波長220nm以下以外の長波長の光が多少とも含まれていてもよい。なお、上記熱可塑性樹脂シート状物とは、未延伸、一軸延伸、二軸延伸の熱可塑性樹脂フィルムをはじめ、より厚い熱可塑性樹脂シートまで含む概念である。
[0011]
(2)前記特定波長の紫外線が、220nmを超え310nm以下の範囲内の、中でも220nmを超え308nm以下の範囲内の波長の紫外線を含んでいる、(1)に記載のロール表面の付着物除去方法。波長が220nmを超える紫外線は、基本的にオゾンガスを発生させないが、あまり長波長の紫外線は、有機物の光分解に寄与しないばかりか、ランプの出力を大きくする必要が生じたり、ロール表面温度の望ましくない上昇を招いたりする別の問題が発生するので、長波長側の上限を適切に抑えておくことが好ましい。このような好ましい範囲内の波長の紫外線を照射可能なオゾンレス低圧UVランプとしては、次に述べるようなオゾンレス低圧水銀ランプが最適であるが、エキシマランプを用いることも可能である。上記308nmは、オゾンレス低圧UVランプとしてエキシマランプを用いた場合の波長を示している。
[0012]
(3)前記特定波長の紫外線が、実質的に254nmの波長の紫外線のみを含んでいる、(2)に記載のロール表面の付着物除去方法。すなわち、低圧UVランプとして低圧水銀ランプを用いる場合、照射光の強度のピークは波長185nmと254nmに現れるが、これを本発明におけるオゾンレス低圧UVランプとして用いるオゾンレス低圧水銀ランプとするために、照射光から波長185nmの紫外線を消失させ、実質的に254nmの波長の紫外線のみを含んでいる特定波長の紫外線とすることを意図したものである。波長185nmの紫外線の消失によって、確実にオゾンの発生を規制でき、254nmの波長の紫外線のみとすることにより、オゾンレスの状態にて(つまり、オゾンレスの大気中で)有機物等からなるロール付着物の除去にとって最も有効な紫外線照射の条件を生成できることになる。このようなオゾンレス低圧水銀ランプを、本発明における最も有効なオゾンレス低圧UVランプとして用いることができる。
[0013]
(4)前記オゾンレス低圧UVランプの管に、220nm以下の波長の紫外線の透過を規制可能に調製された石英ガラスを用いる、(1)〜(3)のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。220nm以下の波長の紫外線の透過を規制可能に調製された石英ガラスとしては、例えば、特殊な酸化金属をドープした石英ガラスや、溶融石英ガラスに重金属等を加えた石英ガラスが挙げられる。オゾンレス低圧UVランプの管にこのような調製された石英ガラスを用いることで、オゾンを発生させる220nm以下の波長の紫外線の透過を防止でき、ロール表面近傍でのオゾンの発生を回避できる。この状態で、上述の220nmを超え308nm以下の範囲内の波長の紫外線、好ましくは上記254nmの波長の紫外線を照射することにより、オゾンレスの状態で(つまり、オゾンレスの大気中で)効率よくロール付着物を除去できる。
[0014]
(5)前記オゾンレス低圧UVランプからの照射光を、回転される前記ロールの面長方向(ロールの幅方向とも言う。)に沿って延びるように集光させる、(1)〜(4)のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。すなわち、回転されるロールの表面から付着物を効率よくかつ効果的に除去するために、ロール幅方向に対して直線状に延びる領域に所定の紫外線を集光させて照射するのである。オゾンレス低圧UVランプの管形状としては、ロール幅方向に対して長く延びる直線形状のものであってもよく、U字管やV字管のような折り返し形状に形成することも可能である。照射強度や照射領域を考慮して適切に設定すればよい。
[0015]
(6)前記ロールの表面に照射する254nmの波長の紫外線の強度を、15mW/cm2以上に制御する、(1)〜(5)のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。ロールの表面に照射する特定波長の紫外線の強度は、目標とするロール表面の付着物除去性能が得られるように適宜制御されればよいが、上述の254nmの波長の紫外線を基準に取ると、その強度を15mW/cm2以上に制御することが好ましく、より好ましくは20mW/cm2以上である。
[0016]
(7)前記オゾンレス低圧UVランプの紫外線照射部を、回転される前記ロ
発明を実施するための形態
[0027]
以下に、本発明に係るロール表面の付着物除去方法および熱可塑性樹脂シート状物の製造方法について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、熱可塑性樹脂シート状物が熱可塑性樹脂フィルムである場合を例にとって説明する。
[0028]
本発明に係るロール表面の付着物除去方法では、有機物で汚染されたロールに、オゾンレスの大気中で、実質的にオゾンを発生させない特定の波長を持つオゾンレス低圧UV線を照射したときに非常に有効であり、その効果は熱可塑性樹脂フィルムの生産中に汚染されたロール表面を、オゾンにより人体や被処理ロール面に悪影響を与えずに、付着有機物を効率よく分解ガス化して除去でき、かつ取扱い性に優れ、しかもランニングコストの安いロール表面上の有機物除去方法を提供するものである。なお、人体に有害な被害を与えないほどの0.05ppm以下のオゾン発生なら通常許容されるが、この程度であってもオゾン発生は好ましくはないので、本発明で言うオゾンレスとは、オゾン発生が皆無の状態を目指している。
[0029]
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの製造に用いられるロールの表面に、オゾンレスの大気中で、実質的に220nm以下の波長を含まない特定波長のオゾンレス低圧UVランプからの紫外線を照射することとし、さらに好ましくは、上記特定波長の紫外線が実質的に220nmを超え308nm以下の波長を含む特定の紫外線を照射することを特徴とするロール表面の付着物除去方法に関するものである。
[0030]
用いるオゾンレス低圧UVランプから照射される紫外線については、220nm以下の低波長の紫外線を実質的に消失させて上記の如く実質的に220nmを超え308nm以下の波長を含む特定の紫外線を照射するが、このオソンが発生させる185nmなどの低波長光を出射される照射光から消失させるには、例えば、ランプ管を溶融石英ガラスに重金属をまぜた石英ガラスから構成し、上記低波長の紫外線を吸収させる手法が好適であり、それによって、実質的に254nmの波長の紫外線のみ照射するオゾンレス低圧U
に、オゾンレスの大気中で、このオゾンレス低圧UV照射によるPETオリゴマーの分解除去実験を行った。画像処理ソフト“ImageJ”を使用して、デジタルカメラ写真から試料表面のオリゴマー残量をGray Valueとして測定する方法で、オゾンレス低圧UVランプのオリゴマー除去能力を調べた。
[0083]
2.オリゴマーの種類
A:TD(横)延伸ライン部:
図1に概略構成を示すPET二軸延伸フィルム製造ラインのTD(横)延伸ライン3部分からオリゴマーを採取(概略組成は図に示すようにテレフタル酸(TPA):20%、モノ−2−ヒドロキシエチルテレフタル酸(MHT):30%、環状化合物(環化と略して表記)、特に環状3量体:10%、残りはそれ以外の物質である。)
B:MD(縦)延伸ライン部(図1に符号2で表示):
採取が難しいため、市販試薬テレフタル酸を代用し、TPA:70%、環状化合物(環化)、特に環状3量体:30%に調製して使用
C:キャスティング装置部:
A−PET(非晶[Amorphous]−PET)シート製造ラインの冷却ロール1(キャスティングロール)[図1]上部のTダイス4周辺からオリゴマーを採集(TPA:20%、MHT:15%、BHT(ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタル酸):5%、環状化合物(環化)、特に環状3量体:7%、残りはそれ以外の物質である。)
[0084]
3.ロールを想定した試料の表面処理の種類
AT:黒灰色アルミナチタニヤ(Al2O3/40%TiO2)プラズマ溶射膜
Ra:0.08μm以下の研磨仕上げ面
HCr 0.2S:ハードクロムめっき、表面粗度0.2S以下の鏡面研磨面
HCr As Plating:ハードクロムめっき、めっき後のままの磨き無し表面
WCNiCr:タングステンカーバイド系(WC/20%Ni/7%Cr)
まとめると、表4に示すようになり、それをグラフにすると、図14に示すようになる。
[0099]
[表4]
[0100]
上述の一連の試験結果からも分かるように、本発明により、オゾンレスの大気中で、オゾンレス低圧UVランプを用いてオゾンを発生させない特定波長の紫外線のみを照射することによって、優れたオリゴマー除去性能が得られることが確認できた。
[0101]
すなわち、本発明は、オゾンレスの大気中で、オゾンレス低圧UVランプを用いてオゾンを発生させない特定波長の紫外線のみを照射することにより、オゾン発生に伴う問題を生じることなく、例えば上記のようにPETのオリゴマー等の低分子量化合物の付着物を、残存しないように或いは残存したとしてもその残存量を極力小さく抑えるように分解ガス化して、実際に効率よく除去することが可能な方法であり、その本発明による除去効果が、上述の一連の試験によって実証された。
産業上の利用可能性
[0102]
本発明に係るロール表面の付着物除去方法は、ロール表面の汚れが問題となるあらゆる熱可塑性樹脂シート状物の製造に適用できる。
符号の説明
[0103]
1 冷却ロール
2 MD(縦)延伸ライン
3 TD(横)延伸ライン
4 Tダイス
10 照射試験機
11 ガイドレール
Claims (14)
- 熱可塑性樹脂シート状物の製造に用いられるロールの表面にUVランプからの紫外線を照射してロール表面の付着物を除去する方法において、前記UVランプとして、低圧UVランプであり、かつ、照射光から220nm以下の波長の紫外線を消失させてオゾンを発生させない特定波長の紫外線を照射するオゾンレス低圧UVランプを用いることを特徴とする、ロール表面の付着物除去方法。
- 前記特定波長の紫外線が、220nmを超え310nm以下の範囲内の波長の紫外線を含んでいる、請求項1に記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記特定波長の紫外線が、実質的に254nmの波長の紫外線のみを含んでいる、請求項2に記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記オゾンレス低圧UVランプの管に、220nm以下の波長の紫外線の透過を規制可能に調製された石英ガラスを用いる、請求項1〜3のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記オゾンレス低圧UVランプからの照射光を、回転される前記ロールの面長方向に沿って延びるように集光させる、請求項1〜4のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記ロールの表面に照射する254nmの波長の紫外線の強度を、15mW/cm2以上に制御する、請求項1〜5のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記オゾンレス低圧UVランプの紫外線照射部を、回転される前記ロールの面長方向に沿って往復動させる、請求項1〜6のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記ロールの表面の材質が、少なくともステンレスを含む金属、硬質クロムメッキ、セラミック溶射膜、炭化タングステン系超硬合金の溶射膜からなる群から選ばれた材質からなる、請求項1〜7のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記ロールの表面温度が熱可塑性樹脂シート状物を形成する樹脂のガラス転移点温度よりも20℃低い温度以上に加熱されている、請求項1〜8のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- ロール表面の付着物が、熱可塑性樹脂のモノマー、オリゴマ−、トリマー、ダイマー、環状化合物などの低分子量物、分解物、熱可塑性樹脂からのブリードアウト物、あるいは熱可塑性樹脂への添加物である、請求項1〜9のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- ロール表面の付着物に、テレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタル酸、モノヒドロキシエチルテレフタル酸、環状化合物のうち、少なくとも一種が含まれている、請求項10に記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記熱可塑性樹脂シート状物が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネートのいずれかよりなる、請求項1〜11のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の方法により表面の付着物が除去されたロールを用いることを特徴とする、熱可塑性樹脂シート状物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂を溶融押出後に二軸延伸する、請求項13に記載の熱可塑性樹脂シート状物の製造方法。
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