JP6242550B1 - ロール表面の付着物除去方法および熱可塑性樹脂シート状物の製造方法 - Google Patents
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(1)熱可塑性樹脂シート状物の製造に用いられるロールの表面にオゾンレスの大気中でUVランプからの紫外線を照射してロール表面の付着物を除去する方法であって、前記UVランプとして、低圧UVランプであり、かつ、照射光から220nm以下の波長の紫外線を消失させてオゾンを発生させない特定波長の紫外線を照射するオゾンレス低圧UVランプを用いることを特徴とする、ロール表面の付着物除去方法である。ここで、オゾンレスの大気中で上記オゾンレス低圧UVランプからの紫外線がロールの表面に照射されるが、上記オゾンレス低圧UVランプから照射される特定波長の紫外線から、220nm以下の波長の紫外線が実質的に消失されていればよく、実質的にとは、基本的にと言うことで、オゾンガスを発生させる220nm以下の波長の紫外線が、好ましいオゾンレスの状態を形成できるようにランプからの照射光から意図的に消失されていればよい。また、上記オゾンレス低圧UVランプから照射される特定波長の紫外線には、波長220nm以下以外の長波長の光が多少とも含まれていてもよい。なお、上記熱可塑性樹脂シート状物とは、未延伸、一軸延伸、二軸延伸の熱可塑性樹脂フィルムをはじめ、より厚い熱可塑性樹脂シートまで含む概念である。
(13)(1)〜(12)のいずれかに記載の方法により表面の付着物が除去されたロールを用いることを特徴とする、熱可塑性樹脂シート状物の製造方法、についても提供する。
次に本発明で使用した物性および特性の測定法について以下に述べる。
25℃で、o−クロロフェノールを溶媒として次式より求めた。
[η]= lm[ηsp/c]
比粘度ηspは、相対粘度ηrから1を引いたものである。cは、濃度である。単位は
dl/gで表わす。
セイコー電子工業(現在セイコーインスツル社)製DSC RDC220型を用い、ポリエステルを5mg秤量し、窒素ガス雰囲気下20℃/分の速度で昇温して300℃になった時点でクエンチし、再度20℃/分の速度で300℃まで昇温しながらベースラインがシフトする温度をガラス転移点(Tg)、冷結晶化発熱ピーク温度(Tcc)、吸熱ピーク温度を融点(Tm)として測定した。300℃に到達した後、さらに20℃/分の速度で降温させ、溶融結晶化発熱ピーク温度(Tmc)を測定した。
浜松ホトニクス社製UV−METER C6080−02を用い、波長254nmの照射強度を測定した。
ロール上のオリゴマー汚れは、製膜開始前に縦延伸ロールを十分に清掃し、製膜開始から72時間後の汚れ状態をそれぞれ目視で観察し、製膜前と変わらずきれいなものを「◎」、汚れがほとんど見られないものを「○」、ごく薄く汚れ(白く濁った程度)が確認できるが使用を続けて問題ないものを「△」、汚れがかなり厚く付着し、掃除または交換が必要なものを「×」と評価した。
紫外線照射前後で表面状態を観察し、着色、腐食、表面荒れなどの表面変化のないものを〇、ダメージの有るものを×とした。
フィルムの製膜に相応しい温度に設定されている温度より、紫外線照射により2℃以上上昇する場合を×とし、そのような温度上昇のない場合を「○」とした。
熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)(固有粘度[η]=0.61、ガラス転移温度Tgは70℃、冷結晶化温度Tccは128℃、融点Tmは265℃、溶融結晶化発熱ピーク温度Tmcは215℃、添加剤として平均粒径0.25μmの酸化珪素粒子を0.1wt%含有)を用いた。該PET樹脂の含水率が20ppm以下になるように乾燥した後、押出機に供給して280℃で溶融して3t/hの吐出量で押出し、10μmカットの金属繊維燒結フィルターを通過させて濾過し、口金に導入して溶融フィルムを吐出し、この溶融フィルムに0.06mm径のワイヤー状の電極から負の静電荷を印加させながら冷却ロール上に密着させ冷却、固化させた。該押出フィルムをクロムメッキロールを用いて予熱温度72℃で予備加熱し、その後セラミックロールにてさらに加熱して、長手方向延伸機で延伸温度95℃で3.5倍延伸した後、ガラス転移温度Tg以下に冷却した。続いて該長手方向延伸フィルムの幅方向両端をクリップで把持しながらテンターに導き、延伸温度90℃に加熱された熱風雰囲気中で幅方向に3.8倍延伸後、225℃で熱固定して、厚さ25μmのフィルムを製膜した。
実施例1と同様の条件で製膜した。ただし、このとき照射強度は50mW/cm2 になるように調節した。得られた結果を表1に示す。
実施例1と同様の条件で製膜した。ただし、このときの照射強度は180mW/cm2 になるように調節した。得られた結果を表1に示す。
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプをチャンバーで囲い、同チャンバーの四方に設置された集光鏡の角度と、ロールと紫外線ランプの距離を調節して、照射強度120mW/cm2 になるように紫外線を集光した。得られた結果を表1に示す。集光鏡による集光で照射強度を調整可能なことを確認した。但し同時に、とくに集光しなくても、照射強度を好ましい範囲に調整できれば、目標とするロール表面の付着物除去効果が得られることも確認した。
長さ1010mmの長い1本のオゾンレス低圧UVランプをU字型に6回折り曲げて、1本のランプ長さを約160mmにして、ロールに照射するランプを見掛け上6本有るようにしたランプでロールに照射した。得られた結果を表1に示す。ランプの形状を変えても同様の優れたロール表面の付着物除去効果が得られることを確認した。
実施例1と同様の条件で製膜した。ただし、このとき照射強度は10mW/cm2 になるように調節した。得られた結果を表1に示す。照射強度を低下させたことによりロール表面の付着物除去効果が若干低下したので、照射強度としては15mW/cm2 程度以上が望ましいことが判った。
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプを、254nmの波長の紫外線とともに、オゾンが発生する185nmの波長の紫外線を照射する通常の低圧水銀ランプに代え、実施例1と同様の条件で紫外線を照射して製膜した。ランプからの紫外線によりオゾンが発生したので、被処理ロールのクロムメッキ処理ロールに黒い斑点が出たり、一部腐食のような欠点が見つかったりして、該予熱ロールにダメージが発生しており、フィルムに傷が発生したので、継続して生産はできなかった。さらに、このオゾンガスは人体にも悪影響を与えるので、強制的にランプ周りの空気を排出させたが、完璧な排出は難しく、オゾン臭がしていた。このテストの結果を表1に示した。
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプの電源を切った以外は実施例1と同じようにしてフィルムを製膜したが、予熱ロールに経時でオリゴマーが付着して得られたフィルム表面にスクラッチ傷や、異物が付着していた。
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプを高圧水銀ランプに代えて1kW(使用電力1000W)の照射を行った他は、実施例1と全く同じようにして製膜したところ、ロールのクリーン化が遅いばかり、ロール表面温度が経時と共に上昇して行き、フィルムが部分的にロールに粘着しフィルム表面欠点となった。さらに、このランプで用いる電力も、実施例1の110Wに比べ1000Wと大きく、またランプ寿命も実施例1の約6000時間に比べ約1000時間と短く、しかもランプ価格も高く、ランニングコストが高く付くと言う欠点もあった。
1.試験の概要
310nm以下の波長の紫外線はPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに対する透過率はゼロである。これらの紫外線はPETに100%吸収される。PETのオリゴマーは、PETとほぼ同じ組成比のベンゼン核とカルボニル基からなる類似の分子構造のモノマーで構成されていることが判っている。したがって、PETのオリゴマーも310nm以下の波長の紫外線を効率良く吸収すると思われる。試験に用いたオゾンレス低圧UVランプから発生する紫外線は、実質的に、さらに短波長の254nmの波長の紫外線のみであることから、PETオリゴマーに対して極めて吸収されやすく、PETオリゴマーの分解力が高いことが推測される。これを確認するために、オゾンレスの大気中で、このオゾンレス低圧UV照射によるPETオリゴマーの分解除去実験を行った。画像処理ソフト“ImageJ”を使用して、デジタルカメラ写真から試料表面のオリゴマー残量をGray Valueとして測定する方法で、オゾンレス低圧UVランプのオリゴマー除去能力を調べた。
A:TD(横)延伸ライン部:
図1に概略構成を示すPET二軸延伸フィルム製造ラインのTD(横)延伸ライン3部分からオリゴマーを採取(概略組成は図に示すようにテレフタル酸(TPA):20%、モノ−2−ヒドロキシエチルテレフタル酸(MHT):30%、環状化合物(環化と略して表記)、特に環状3量体:10%、残りはそれ以外の物質である。)
B:MD(縦)延伸ライン部(図1に符号2で表示):
採取が難しいため、市販試薬テレフタル酸を代用し、TPA:70%、環状化合物(環化)、特に環状3量体:30%に調製して使用
C:キャスティング装置部:
A−PET(非晶[Amorphous]−PET)シート製造ラインの冷却ロール1(キャスティングロール)[図1]上部のTダイス4周辺からオリゴマーを採集(TPA:20%、MHT:15%、BHT(ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタル酸):5%、環状化合物(環化)、特に環状3量体:7%、残りはそれ以外の物質である。)
AT:黒灰色アルミナチタニヤ(Al2O3/40%TiO2)プラズマ溶射膜
Ra:0.08μm以下の研磨仕上げ面
HCr 0.2S:ハードクロムめっき、表面粗度0.2S以下の鏡面研磨面
HCr As Plating:ハードクロムめっき、めっき後のままの磨き無し表面
WCNiCr:タングステンカーバイド系(WC/20%Ni/7%Cr)高速フレーム溶射(HVOF)膜、Ra:0.08μm以下の研磨仕上げ面
オリゴマーの付着量はわずかであるため、重量減量は天秤の測定誤差範囲となり重量減ではオリゴマー分解量は判断できない。オリゴマー塗布膜表面は基材よりGray Value(白色度)が高いので、目視だとオリゴマーの残留状態は容易に判断できるが、定量的な表現ができない。そこで、画像処理ソフト“ImageJ”で試験片のデジタルカメラ写真をグレイに変換後に、オリゴマー付着部のピクセル単位のGray Valueを測定し、オリゴマー汚れの残留量の指標とした。
(1)PETオリゴマー塗布液:オリゴマー0.8gを100ccエタノールに添加し、攪拌混合。
試薬TPA の塗布液:試薬TPA(テレフタル酸)1gを100ccN,Nジメチルホルムアミドに溶解。この溶解液をさらにトルエンと1:1 混合。
(2)オリゴマーの塗布:塗布液を浸みこませた二つ折り15W×50Lウエスで1〜2回塗り。
(3)試験片のセットと照射距離:シリコンラバーヒーター上に設置、照射距離65mm。
(4)試験片の温度調整:試験片の表面に温調用熱電対をセット。
(5)ブロアーを作動させた状態で試験を行なった。
(6)規定時間ごとに、オリゴマーの分解状況をデジタルカメラで撮影。
図3(A)に示す照射試験機10を用いた。図3(A)に示すように、ガイドレール11とラボジャッキ・ハンドル12により位置、高さが調整可能なステージ13上に試験片14をセットし、ダクト口15から排気しながら、端子台16、ランプ端子台17を介して給電されるオゾンレス低圧UVランプ18からの特定波長の紫外線を、反射板19による反射も利用しつつ、試験片14に照射した。図3(B)に示すように、この試験用オゾンレス低圧UVランプ装置20としては、実質発光長φ16×1100L(mm)のオゾンレス低圧UVランプ18を5回折り曲げて160×160(mm)の面状ヒーターに加工したものを用いた。
ランプ電力:110W
UV照度:15mW/cm2(照射距離60〜65mm)
ランプ冷却:ブロアーによる強制空冷
下記の条件で試験した。試験結果を表2および図6に示す。さらに、Gray Value測定のためにデジタルカメラで撮影した映像の代表例を図7、図8に示す。
オリゴマーの種類:A
基材(試験片):(1)HCr 0.2S
(2)WCNiCr
(3)AT
(4)HCr As Plating
基材温度:71〜75℃
Gray Value の測定枠形状:10×10mm
オリゴマーの種類:A
基材 :HCr As Plating
UV照射距離 :65mm
Gray Value の測定枠形状:10×10mm
測定値は測定枠内部の平均値とした。結果を表3および図9に示す。
下記の条件で試験した。試験結果を図10および図11に示す。
オリゴマーの種類 :B
基材(試験片):HCr As Plating
UV照射距離 :65mm
基材温度 :71〜75℃
Gray Value の測定枠形状:30mm×50mm
測定値は、測定枠の基準線に平行で、30mm幅の線に沿った値の平均値とした。
下記の条件で試験した。試験結果を図12〜図14および表4に示す。
オリゴマーの種類:C(A−PETシートオリゴマー)
基材(試験片):HCr 0.2S
基材温度 :30〜35℃
Gray Value の測定枠形状:25mm×37mm
測定値は、測定枠の基準線に平行で、25mm幅の線に沿った値の平均値とした。
2 MD(縦)延伸ライン
3 TD(横)延伸ライン
4 Tダイス
10 照射試験機
11 ガイドレール
12 ラボジャッキ・ハンドル
13 ステージ
14 試験片
15 ダクト口
16 端子台
17 ランプ端子台
18 オゾンレス低圧UVランプ
19 反射板
20 試験用オゾンレス低圧UVランプ装置
Claims (14)
- 熱可塑性樹脂シート状物の製造に用いられるロールの表面にオゾンレスの大気中でUVランプからの紫外線を照射してロール表面の付着物を除去する方法であって、前記UVランプとして、低圧UVランプであり、かつ、照射光から220nm以下の波長の紫外線を消失させてオゾンを発生させない特定波長の紫外線を照射するオゾンレス低圧UVランプを用いることを特徴とする、ロール表面の付着物除去方法。
- 前記特定波長の紫外線が、220nmを超え310nm以下の範囲内の波長の紫外線を含んでいる、請求項1に記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記特定波長の紫外線が、実質的に254nmの波長の紫外線のみを含んでいる、請求項2に記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記オゾンレス低圧UVランプの管に、220nm以下の波長の紫外線の透過を規制可能に調製された石英ガラスを用いる、請求項1〜3のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記オゾンレス低圧UVランプからの照射光を、回転される前記ロールの面長方向に沿って延びるように集光させる、請求項1〜4のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記ロールの表面に照射する254nmの波長の紫外線の強度を、15mW/cm2以上に制御する、請求項1〜5のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記オゾンレス低圧UVランプの紫外線照射部を、回転される前記ロールの面長方向に沿って往復動させる、請求項1〜6のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記ロールの表面の材質が、少なくともステンレスを含む金属、硬質クロムメッキ、セラミック溶射膜、炭化タングステン系超硬合金の溶射膜からなる群から選ばれた材質からなる、請求項1〜7のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記ロールの表面温度が熱可塑性樹脂シート状物を形成する樹脂のガラス転移点温度よりも20℃低い温度以上に加熱されている、請求項1〜8のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- ロール表面の付着物が、熱可塑性樹脂のモノマー、オリゴマ−、トリマー、ダイマー、環状化合物の低分子量物、分解物、熱可塑性樹脂からのブリードアウト物、あるいは熱可塑性樹脂への添加物である、請求項1〜9のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- ロール表面の付着物に、テレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタル酸、モノヒドロキシエチルテレフタル酸、環状化合物のうち、少なくとも一種が含まれている、請求項10に記載のロール表面の付着物除去方法。
- 前記熱可塑性樹脂シート状物が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネートのいずれかよりなる、請求項1〜11のいずれかに記載のロール表面の付着物除去方法。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の方法により表面の付着物が除去されたロールを用いることを特徴とする、熱可塑性樹脂シート状物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂を溶融押出後に二軸延伸する、請求項13に記載の熱可塑性樹脂シート状物の製造方法。
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