JPWO2017159552A1 - 多官能チオール化合物の製造方法、多官能チオール化合物、硬化性組成物および硬化性組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
多官能チオール化合物の広く用いられている製造方法として、特許文献1には、多価アルコールと「アルコールと縮合可能な基(例えば、カルボン酸)を持つチオール(以下、縮合基含有チオール)」の縮合で製造する方法が記載されている。
一方で、特許文献2では保護基の導入と脱保護を行う段階的な合成スキームが知られている。例えば、特許文献2には、2価以上のアルコールに対してエステル結合を介してハロゲン原子を末端に有する基を導入した後、末端のハロゲン原子をチオウレア保護基で保護した中間体化合物を合成し、チオウレア保護基を有する中間体化合物に対して塩基性加水分解を行って脱保護を行う方法が記載されている。
[1] 下記一般式(11)で表される化合物と、下記一般式(12)で表される化合物とを反応させて、下記一般式(13)で表される多官能チオール化合物を合成する多官能チオール化合物合成工程を含む、多官能チオール化合物の製造方法;
[2] 下記一般式(14)で表される化合物と、チオカルボン酸およびチオカルボン酸塩の少なくとも一方とを反応させて、一般式(11)で表される化合物を合成する中間体合成工程を含む[1]に記載の多官能チオール化合物の製造方法;
[3] 2価以上のアルコールを含む原料を用いて一般式(14)で表される化合物を合成する水酸基変換工程を含む[1]または[2]に記載の多官能チオール化合物の製造方法。
[4] 多官能チオール化合物合成工程で、強酸および弱酸の塩の組み合わせ、あるいは、弱酸を用いる[1]〜[3]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物の製造方法。
[5] 多官能チオール化合物合成工程を、非プロトン性の高極性溶媒の存在下で行う[1]〜[4]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物の製造方法。
[6] 多官能チオール化合物合成工程の反応温度が3〜40℃である[1]〜[5]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物の製造方法。
[7] R1がアルキレン基、または、アルキレン基とエーテル性酸素原子の組み合わせからなる基を表す[1]〜[6]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物の製造方法。
[8] M1が−O−C(=O)−を表す[1]〜[7]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物の製造方法。
[9] 多官能チオール化合物が2級チオールまたは3級チオールである[1]〜[8]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物の製造方法。
[10] 多官能チオール化合物が1級チオールである[1]〜[8]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物の製造方法。
[11] 下記一般式(1)で表される多官能チオール化合物であって、
多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量が90%以上である、多官能チオール化合物;
[12] 多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物が95%以上である[11]に記載の多官能チオール化合物。
[13] R1がアルキレン基、または、アルキレン基とエーテル性酸素原子の組み合わせからなる基を表す[11]または[12]に記載の多官能チオール化合物。
[14] M1が−O−C(=O)−を表す[11]〜[13]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物。
[15] mが2〜15の整数を表す[11]〜[14]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物。
[16] L1が下記(L−1)〜(L−18)で表される構造から選択される[11]〜[15]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物;
[17] 多官能チオール化合物が2級チオールまたは3級チオールである[11]〜[16]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物。
[18] 多官能チオール化合物が1級チオールである[11]〜[16]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物。
[19] [11]〜[18]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物と、硬化性化合物とを含有する硬化性組成物。
[20] さらに重合開始剤を含有する[19]に記載の硬化性組成物。
[21] さらに有彩色着色剤または黒色顔料を含有する[20]に記載の硬化性組成物。
[22] [1]〜[10]のいずれか一つに記載の多官能チオール化合物の製造方法により多官能チオール化合物を製造する工程と、
多官能チオール化合物と硬化性化合物とを混合する工程を含む、硬化性組成物の製造方法。
本明細書における基(原子団)の表記に於いて、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、全固形分とは、着色組成物の全成分から溶剤または溶媒を除いた成分の総質量をいう。
本発明の多官能チオール化合物の製造方法は、下記一般式(11)で表される化合物と、下記一般式(12)で表される化合物とを反応させて、下記一般式(13)で表される多官能チオール化合物を合成する多官能チオール化合物合成工程を含む。
このような構成により、本発明の多官能チオール化合物の製造方法は、純度が高い多官能チオール化合物を提供できる。純度が高い多官能チオール化合物を得られる理由は、一般式(11)で表される化合物の脱保護が容易なチオカルボン酸保護基を、塩基性の低い一般式(12)で表される化合物で脱保護することでメルカプト基となる選択性が非常に高くできるためと推測される。
本明細書中、「多官能チオール化合物の純度が高い」とは、一般式(1)または一般式(13)で表される多官能チオール化合物のうち、水酸基を含まない多官能チオール化合物の含有量が高いことを意味する。多官能チオール化合物の純度は、HPLCを用いた純度測定において適切な検出波長における面積比から算出される(単位は「%」である。便宜上、「面積%」とも言う)。
水酸基を有さない多官能チオール化合物とは、一般式(1)または一般式(13)におけるn=0の多官能チオール化合物を意味する。
以下、本発明の多官能チオール化合物の製造方法の好ましい態様を説明する。
多官能チオール化合物合成工程では、一般式(11)で表される化合物と、一般式(12)で表される化合物とを反応させて、一般式(13)で表される多官能チオール化合物を合成する。
下記一般式(13)で表される多官能チオール化合物の好ましい態様を説明する。
一般式(13)
L1が表す有機連結基は、1個から100個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から200個までの水素原子、および0個から20個までの硫黄原子からなる基であることが好ましく、無置換でも置換基を有していてもよい。
L1は、上記の好ましい範囲において、炭素原子と水素原子からなる態様、炭素原子と水素原子と酸素原子からなる態様、または、これらの態様においてさらに−NH−および−S−の少なくとも一方が炭素原子と炭素原子の間に1つ以上含まれている態様であることが好ましい。L1は、上記の好ましい範囲において、炭素原子と水素原子からなる態様、または、炭素原子と水素原子と酸素原子からなる態様であることがより好ましい。
本発明では、L1が下記(L−1)〜(L−18)で表される構造から選択されることが好ましい。
(L−1)〜(L−18)で表される構造中、R31〜R41はそれぞれ独立にアルキル基を表し、炭素数3〜10の分岐アルキル基であることが好ましく、t−ブチル基であることがより好ましい。R31〜R41はそれぞれ同じ基でも異なる基でもよいが、同じ基であることが好ましい。
(L−1)〜(L−18)で表される構造中、R42は、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表し、水素原子、メチル基、エチル基またはメトキシ基であることが好ましく、エチル基であることがより好ましい。
(L−1)〜(L−18)で表される構造中、R43およびR44は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、エチル基であることが特に好ましい。
sは、0〜9の整数を表し、1〜5の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、1であることがより特に好ましい。
(L−1)〜(L−18)で表される構造は、M1との結合部位*の数が2〜15個であることが好ましい。M1との結合部位*の数の下限値は3以上であることが硬化性組成物に含有させた場合に露光感度が良好となる観点からより好ましく、4以上であることが特に好ましく、5以上であることがより特に好ましい。M1との結合部位*の数の上限値は、10以下であることがより好ましく、8以下であることが特に好ましい。
一般式(13)中、m個のM1はそれぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。m個のM1はいずれも同じであることが好ましい。
R1が表すアルキレン基は、直鎖、分岐または環状のアルキレン基のいずれであってもよく、直鎖または分岐のアルキレン基であることが好ましく、直鎖のアルキレン基またはメチル基を分岐基として有する分岐アルキレン基であることがより好ましい。アルキレン基と酸素原子の組み合わせからなる基は、直鎖、分岐または環状のアルキレン基と酸素原子の組み合わせからなる基のいずれであってもよく、直鎖または分岐のアルキレン基と酸素原子の組み合わせからなる基であることが好ましく、直鎖のアルキレン基またはメチル基を分岐基として有する分岐アルキレン基と酸素原子の組み合わせからなる基であることがより好ましい。
R1が表すアルキレン基は置換基を有していてもよいが、置換基を有さない方が好ましい。R1が表すアルキレン基が置換基を有する場合の置換基の例としては、上述のL1が有していてもよい置換基が挙げられる。
R1が直鎖アルキレン基の場合、炭素数の下限値は、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、6以上としてもよい。R1が直鎖アルキレン基の場合、炭素数の上限値は、50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下がさらに好ましく、20以下が特に好ましく、12以下であってもよく、10以下であってもよく、8以下とすることもできる。
R1が分岐アルキレン基の場合、炭素数の下限値は、6以上とすることができ、7以上であってもよく、8以上であってもよい。炭素数の上限値は、50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下がさらに好ましく、20以下が特に好ましく、12以下であってもよく、10以下とすることもできる。R1が分岐アルキレン基の場合、R1のうちSHに連結する炭素原子がアルキル基を分岐基(分岐鎖、側鎖とも言われる)として有することが、2級チオールおよび3級チオールを製造する観点から好ましい。R1のうち、SHに連結する炭素原子がアルキル基を分岐基として有する場合、分岐基が有するアルキル基の炭素数の下限値は1以上であることが好ましい。R1のうち、SHに連結する炭素原子がアルキル基を分岐基として有する場合、分岐基が有するアルキル基の炭素数の上限値は10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、4以下であることが特に好ましい。
R1が環状アルキレン基の場合、通常、上記直鎖または分岐アルキレン基と環状アルキレン基の組み合わせからなる基となる。環状アルキレン基の環を構成する炭素数は3〜8が好ましく、6がより好ましい。
R1が直鎖アルキレン基と酸素原子の組み合わせからなる基の場合、炭素数の下限値は、3以上とすることができ、4以上が好ましく、5以上がより好ましい。上限値は、50以下が好ましく、40以下がより好ましく、27以下がさらに好ましく、20以下が特に好ましく、10以下とすることもでき、8以下とすることもでき、6以下とすることもできる。R1が直鎖アルキレン基と酸素原子の組み合わせからなる基の場合の好ましい実施形態として、エチレンオキシ基を含み、SHとM1を隔てる原子数5〜20の基が例示され、エチレンオキシ基が2〜5個繰り返していることが好ましい。
R1が分岐アルキレン基と酸素原子の組み合わせからなる基の場合、炭素数の下限値は、4以上とすることができ、5以上とすることもでき、6以上とすることもできる。上限値は、50以下が好ましく、40以下がより好ましく、28以下がさらに好ましく、20以下が特に好ましく、10以下とすることもでき、8以下とすることもできる。
R1が分岐アルキレン基と酸素原子の組み合わせからなる基の場合の好ましい実施形態として、イソプロピレンオキシ鎖を含み、SHとM1を隔てる原子数5〜20の基が例示され、イソプロピレンオキシ鎖が2〜5個繰り返している構造を含む態様が例示される。R1が分岐アルキレン基と酸素原子の組み合わせからなる基の場合、R1のうちSHに連結する炭素原子がアルキル基を分岐基として有することが、2級チオールおよび3級チオールを製造する観点から好ましい。
R1が環状アルキレン基と酸素原子の組み合わせからなる基の場合、通常、上記直鎖または分岐アルキレン基と酸素原子の組み合わせからなる基と環状アルキレン基の組み合わせからなる基となる。
本発明におけるR1は、多官能チオール化合物が1級チオールである場合は特に、炭素数2〜20の直鎖アルキレン基、エチレンオキシ基を含む炭素数5〜20のアルキレン基、または、イソプロピレンオキシ鎖を含む炭素数5〜20のアルキレン基を表すことが好ましく、炭素数2〜20の直鎖アルキレン基またはエチレンオキシ基を含む炭素数5〜20のアルキレン基がより好ましく、炭素数2〜20の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
本発明におけるR1は、多官能チオール化合物が2級チオールまたは3級チオールである場合は特に、炭素数2〜20の分岐アルキレン基、エチレンオキシ基を含む炭素数5〜20の分岐アルキレン基、または、イソプロピレンオキシ鎖を含む炭素数5〜20の分岐アルキレン基を表すことが好ましく、炭素数2〜20の分岐アルキレン基またはエチレンオキシ基を含む炭素数5〜20の分岐アルキレン基がより好ましく、炭素数2〜20の分岐アルキレン基が特に好ましい。
なお、SHとM1は、R1によって原子数5以上隔てられていることが耐熱性の観点から好ましい。SHとM1が、R1によって原子数5以上隔てられているとは、SHとM1の間を最短でつなぐ原子数をいう。これらの原子は、炭素原子または、炭素原子と酸素原子からなり、合計数が5原子以上である。
一般式(13)中、m個のR1はそれぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。m個のR1はいずれも同じであることが好ましい。
L2が表す2価の連結基としては特に制限はない。L2が表す2価の連結基は、−M1−R1−で表される基を挙げることができる。すなわち、単結合、あるいは、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NH−、−O−S(=O)−、−O−S(=O)−O−、−O−S(=O)2−、−O−S(=O)2−O−、−O−、−S−、−N(R2)−、−C(=O)−および−CH=N−から選択される基と、炭素数1以上の2価の連結基とが結合した基を挙げることができる。
一般式(13)中、n個のL2はそれぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。n個のL2はいずれも同じであることが好ましい。
一般式(13)で表される多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量が90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、94%以上であることが特に好ましく、95%以上であることがより特に好ましい。本発明の多官能チオール化合物の製造方法は、多官能チオール合成工程で得られた多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量を90%以上にすることができ、92%以上にすることができることがより好ましく、94%以上にすることができることが特に好ましい。
一般式(13)で表される多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量の上限は、100%が好ましいが、99%以下でも十分実用レベルであり、98%以下であってもよい。
本発明の多官能チオール化合物の製造方法の好ましい態様の一例では、得られる多官能チオール化合物が1級チオールであることが好ましい。
本発明の多官能チオール化合物の製造方法の好ましい態様の他の一例では、得られる多官能チオール化合物が2級チオールまたは3級チオールであることが好ましい。本発明の多官能チオール化合物の製造方法を用いると、2級チオールおよび3級チオールも、1級チオールと全く同じ製造方法で、反応時間の遅延もなく、高純度で得られる。特に、3級チオールの合成は文献上、低収率であった(Tetrahedron Lett., 34 (6), 939−942 (1993))。本発明の多官能チオール化合物の製造方法を用いると、チオールの級数に関係なく高純度のチオールを製造できる。
下記一般式(11)で表される化合物の好ましい態様を説明する。
一般式(11)
一般式(11)で表される化合物は新規化合物である。
一般式(11)で表される化合物は、一般式(13)で表される多官能チオール化合物の中間体であることが好ましく、一般式(1)で表される多官能チオール化合物の中間体であることがより好ましい。
一般式(11)で表される化合物中、R11の表す炭素数1以上の1価の基は、チオカルボン酸またはチオカルボン酸塩によって導入される基であることが好ましく、チオカルボン酸塩によって導入される基であることがより好ましい。ここで、チオカルボン酸またはチオカルボン酸塩によって導入される基とは、チオカルボン酸またはチオカルボン酸塩が下記一般式(15)で表される場合における、R11Bによって導入される基を意味する。
一般式(15)
R11A−S−C(=O)−R11B
(R11Aは水素原子またはチオカルボン酸塩を形成できる1価の基を表し、R11Bは置換または無置換のアルキル基を表す。)
例えばR11がチオ酢酸によって導入される基である場合、R11はメチル基である。R11は、置換または無置換のアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましい。R11が置換または無置換のアルキル基である場合の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
下記一般式(12)で表される化合物の好ましい態様を説明する。
一般式(12)
HN(R13)−Z12
一般式(12)中、Z12は−OR14または−N(R15)(R16)を表し、R13〜R16はそれぞれ独立に水素原子または1価の基を表す。
一般式(12)中、R13〜R16はそれぞれ独立に水素原子または1価の基を表し、水素原子であることが好ましい。R13〜R16が表す1価の基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
一般式(12)で表される化合物は、Z12が−OR14を表す場合はヒドロキシアミン誘導体であることが好ましい。一般式(12)で表される化合物は、Z12が−N(R15)(R16)を表す場合はヒドラジン誘導体であることが好ましい。
ただし、一般式(12)で表される化合物は、多官能チオール化合物合成工程において、任意の酸と塩を形成した状態で反応系に用いられてもよい。一般式(12)で表される化合物と塩を形成できる任意の酸としては特に制限はなく、弱酸でも強酸でもよい。一方、一般式(12)で表される化合物は、多官能チオール化合物合成工程において、塩を形成していない状態で反応系に用いられてもよい。
一般式(12)で表される化合物はヒドロキシアミン(共役酸のpKa=5.9)またはヒドラジン(共役酸のpKa=8.0)であることが好ましい。本明細書中、一般式(12)で表される化合物の共役酸のpKaは、文献値、又は、富士通株式会社製のpKa解析ソフト(ACD/pKa DB ver.8.0)により算出した値を用いることができる。
多官能チオール化合物合成工程に用いられる一般式(12)で表される化合物は、一般式(11)で表される化合物に対して35〜100質量%用いることが好ましく、35〜80質量%用いることがより好ましく、35〜60質量%用いることが特に好ましい。
本発明では、多官能チオール化合物合成工程で、強酸および弱酸の塩の組み合わせ、あるいは、弱酸を用いることが好ましい。強酸および弱酸の塩の組み合わせ、あるいは、弱酸を用いると、中性に近い弱酸性条件で多官能チオール化合物合成工程を行いやすくなり、多官能チオール化合物合成工程の副反応を抑制して純度が高い多官能チオール化合物を得やすい。
強酸および弱酸の塩の組み合わせに用いられる強酸としては、塩酸、スルホン酸および硫酸等を挙げることができ、塩酸が好ましい。
強酸および弱酸の塩の組み合わせ、あるいは、弱酸に用いられる弱酸としては、酢酸および安息香酸を挙げることができ、酢酸が好ましい。
多官能チオール化合物合成工程に用いられる酸は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(12)で表される化合物がヒドラジンである場合、多官能チオール化合物合成工程で、塩酸および酢酸ナトリウムの組み合わせを用いることが、ヒドラジン塩酸塩および酢酸ナトリウムの組み合わせにより弱酸性条件で多官能チオール化合物合成工程を行える観点から好ましい。
多官能チオール化合物合成工程は反応液のpHが3〜6の条件下で行われることが好ましく、4〜6の条件下で行われることがより好ましく、5〜6の条件下で行われることが特に好ましい。
本発明では、多官能チオール化合物合成工程を、非プロトン性の高極性溶媒の存在下で行うことが、反応が促進される観点、選択性を高める観点、および一般式(12)で表される化合物やチオカルボン酸またはチオカルボン酸塩を溶解させやすい観点から、好ましい。非プロトン性の高極性溶媒としては、特に制限は無い。非プロトン性の高極性溶媒の例としてはジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピペリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどのアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO);スルホラン;γ−ブチルラクトンおよびヘキサメチルリン酸トリアミド等があげられ、アミド系溶媒が溶解性の観点で好ましく、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。多官能チオール化合物合成工程に用いられる溶媒は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(反応温度)
本発明では、多官能チオール化合物合成工程の反応温度が3〜40℃であることが、純度が高い多官能チオール化合物を得やすい観点から好ましく、5〜30℃であることがより好ましく、15〜20℃であることが特に好ましい。多官能チオール化合物合成工程の反応温度が好ましい範囲の下限値以上であると、多官能チオール化合物合成工程の反応が十分な速度で進行しやすい。多官能チオール化合物合成工程の反応温度が好ましい範囲の上限値以下であると、純度が高い多官能チオール化合物を得やすい。
多官能チオール化合物合成工程の反応時間は3〜24時間であることが好ましく、3〜18時間であることがより好ましく、3〜12時間であることが特に好ましい。
多官能チオール化合物合成工程は窒素雰囲気下で行うことが、チオールの酸化反応の抑制の観点から好ましい。
多官能チオール化合物合成工程は撹拌しながら行うことが、温度管理の観点から好ましい。
多官能チオール化合物合成工程の反応終了後は、分液操作をして反応液から有機層を分取することが好ましい。分取した有機層は洗浄し、脱水してから、ろ別することが好ましい。ろ別したろ液は、濃縮することが好ましく、減圧濃縮することがより好ましい。
本発明の多官能チオール化合物の製造方法は、下記一般式(14)で表される化合物と、チオカルボン酸およびチオカルボン酸塩の少なくとも一方とを反応させて、一般式(11)で表される化合物を合成する中間体合成工程を含むことが好ましい。
中間体合成工程は、多官能チオール化合物合成工程の前工程として行われることが好ましい。
下記一般式(14)で表される化合物の好ましい態様を説明する。
一般式(14)中、Yはハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を表す。Yが表すハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子がさらに好ましい。Yが表すアルキルスルホニルオキシ基としては、メタンスルホニルオキシ基およびトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などが例示される。Yが表すアリールスルホニルオキシ基としては、パラトルエンスルホニルオキシ基およびベンゼンスルホニルオキシ基などが例示される。
一般式(14)で表される化合物の例としては、WO2015/151988号の[0365]〜[0366]に記載の中間体21を挙げることができる。一般式(14)で表される化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
中間体合成工程に用いられるチオカルボン酸およびチオカルボン酸塩の好ましい態様は、多官能チオール化合物合成工程において、R11の表す炭素数1以上の1価の基を導入するために用いられるチオカルボン酸またはチオカルボン酸塩の好ましい態様と同様である。
中間体合成工程に用いられるチオカルボン酸およびチオカルボン酸塩は、下記一般式(15)で表されることが好ましい。
一般式(15)
R11A−S−C(=O)−R11B
(R11Aは水素原子またはチオカルボン酸塩を形成できる1価の基を表し、R11Bは置換または無置換のアルキル基を表す。)
R11Aは水素原子またはアルカリ金属であることが好ましく、アルカリ金属であることがより好ましく、ナトリウムまたはカリウムであることが特に好ましく、カリウムであることがより特に好ましい。R11Bの好ましい範囲はR11の好ましい範囲と同様である。
チオカルボン酸またはチオカルボン酸塩の好ましい例としては、チオ酢酸、チオ酢酸ナトリウム、チオ酢酸カリウム、チオプロピオン酸、チオプロピオン酸ナトリウム、チオプロピオン酸カリウム、チオ酪酸、チオ酪酸ナトリウム、チオ酪酸カリウム、チオ吉草酸、チオ吉草酸ナトリウムおよびチオ吉草酸カリウムを挙げることができる。中間体合成工程に用いられるチオカルボン酸およびチオカルボン酸塩は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中間体合成工程に用いられるチオカルボン酸およびチオカルボン酸塩は、一般式(14)で表される化合物に対して30〜100質量%用いることが好ましく、30〜80質量%用いることがより好ましく、40〜70質量%用いることが特に好ましい。
中間体合成工程を、非プロトン性の高極性溶媒の存在下で行うことが、反応が促進される観点、選択性を高める観点、およびチオカルボン酸またはチオカルボン酸塩を溶解させやすい観点から、好ましい。中間体合成工程に用いられる溶媒の好ましい例は、多官能チオール化合物合成工程に用いられる溶媒の好ましい例と同様である。中間体合成工程に用いられる溶媒は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中間体合成工程の反応温度が20〜70℃であることが、反応速度の観点から好ましく、30〜70℃であることがより好ましく、40〜60℃であることが特に好ましい。
中間体合成工程の反応時間は3〜12時間であることが好ましく、3〜10時間であることがより好ましく、3〜8時間であることが特に好ましい。
中間体合成工程の反応終了後は、分液操作をして反応液から有機層を分取することが好ましい。分取した有機層は洗浄し、脱水してから、ろ別することが好ましい。ろ別したろ液は、濃縮することが好ましく、減圧濃縮することがより好ましい。
本発明の多官能チオール化合物の製造方法は、2価以上のアルコールを含む原料を用いて一般式(14)で表される化合物を合成する水酸基変換工程を含むことが好ましい。
水酸基変換工程は公知の方法で行うことができる。水酸基変換工程の例としては、WO2015/151988号の[0365]〜[0366]に記載の中間体21を得る工程を挙げることができる。
水酸基変換工程に用いられる2価以上のアルコールは、m+n価の有機連結基であるL1を有することが好ましく、L1、mおよびnの好ましい範囲は一般式(13)におけるL1、mおよびnの好ましい範囲と同様である。多価アルコールは、上述の(L−1)〜(L−18)で表される構造において、*の部分にOH基が結合した多価アルコールが例示される。好ましい範囲も、上記(L−1)〜(L−18)で表される構造の説明と同様である。
2価以上のアルコールの例としては、ジペンタエリスリトールを挙げることができる。2価以上のアルコールとしては市販品を用いてもよい。市販品の例としては、ジペンタエリスリトール(DPE、パーストープ社製)を挙げることができる。
水酸基変換工程では、さらに2価以上のアルコールに反応させることで一般式(14)におけるM1およびR1で表される基を形成できる試薬を用いることが好ましい。この試薬は、一般式(16)で表される化合物であることがより好ましい。
一般式(16)
M2−R1−Y
一般式(16)中、R1は炭素数1以上の2価の連結基を表し、Yはハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を表し、M2は2価以上のアルコールの1個の水酸基と反応してM1を形成できる基を表す。
一般式(16)中、R1の好ましい範囲は一般式(13)におけるR1の好ましい範囲と同様である。
一般式(16)中、Yの好ましい範囲は一般式(14)におけるYの好ましい範囲と同様である。
一般式(16)中、M2は特に制限はなく、例えば、Cl−C(=O)−、Cl−C(=O)−O−、O=C=N−、Cl−S(=O)−、Cl−S(=O)2−、Cl−S(=O)−O−およびCl−S(=O)2−O−などを挙げることができる。
一般式(16)で表される化合物の例としては、6−ブロモヘキサン酸クロリドを挙げることができる。
2価以上のアルコールに反応させることで一般式(14)におけるM1およびR1で表される基を形成できる試薬は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
2価以上のアルコールに反応させることで一般式(14)におけるM1およびR1で表される基を形成できる試薬は、2価以上のアルコールに対して200〜2000質量%用いることが好ましく、200〜1800質量%用いることがより好ましく、200〜1500質量%用いることが特に好ましい。
水酸基変換工程の反応温度が−20〜40℃であることが、一般式(16)の安定性と変換効率の観点から好ましく、−5〜40℃であることがより好ましく、0〜40℃であることが特に好ましい。
水酸基変換工程は窒素雰囲気下で行うことが、M2およびYの水に起因する分解反応抑制の観点から好ましい。
水酸基変換工程は撹拌しながら行うことが、温度制御の観点から好ましい。
水酸基変換工程の反応時間は1〜24時間であることが好ましく、1〜18時間であることがより好ましく、1〜12時間であることが特に好ましい。
水酸基変換工程の反応終了後は、分液操作をして反応液から有機層を分取することが好ましい。分取した有機層は洗浄し、脱水してから、ろ別することが好ましい。ろ別したろ液は、濃縮することが好ましく、減圧濃縮することがより好ましい。
本発明の多官能チオール化合物は、下記一般式(1)で表される多官能チオール化合物であって、
多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量が90質量%以上である。
多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量が90%以上であると、硬化性組成物の連鎖移動剤用途における感度が高まり、スターポリマーの中心骨格や着色組成物用途における分子量分布の制御や低分子量成分由来の不純物管理が容易になる。
一般式(1)で表される多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量は90%以上であり、92%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。一般式(1)で表される多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量の上限は、100%が好ましいが、99%以下でも十分実用レベルであり、98%以下であってもよい。
本発明の好ましい態様の一例では、多官能チオール化合物が1級チオールであることが好ましい。
本発明の好ましい態様の一例では、多官能チオール化合物が2級チオールまたは3級チオールであることが好ましい。2級チオールおよび3級チオールは、1級チオールに比べて立体因子が大きいため、モノマーとの熱的な反応性が下がり、熱安定性(レジスト液の経時安定性)が優れる。また、詳細は不明だが、光硬化性と両立(熱反応に比べて光硬化性の下がりが少ない)する。
本発明の多官能チオール化合物の好ましい具体例は下記一般式(1−A)で表される化合物である。本発明は下記一般式(1−A)で表される化合物に限定されるものでは無い。
上記の一般式(1)で表される多官能チオール化合物の中でも、2級チオールおよび3級チオールとしては、(S−112)〜(S−117)、(S−129)〜(S−134)、(S−139)〜(S−142)、(S−151)〜(S−164)、(S−174)、(S−182)、(S−187)および(S−201)〜(S−206)が好ましく、(S−112)、(S−117)、(S−139)、(S−141)、(S−151)、(S−154)、(S−156)、(S−159)、(S−161)、(S−163)、(S−174)、(S−182)、(S−201)および(S−204)がより好ましく、(S−151)、(S−154)、(S−156)、(S−159)、(S−161)、(S−163)、(S−174)、(S−182)、(S−201)および(S−204)が特に好ましい。
多官能チオール化合物の用途としては特に制限はない。多官能チオール化合物の用途としては、後述する硬化性組成物としての利用、スターポリマーの原料およびインクジェット用途などを挙げることができる。
本発明の多官能チオール化合物は、多官能チオールをコア骨格にしたスターポリマー(高分子デンドリマーまたはハイパーブランチポリマー)の合成の原料として好ましく用いることができる。一般に、スターポリマーは、従来の線状ポリマーに比べて粘度が非常に低いことから、塗料やコーテイング剤などに好ましく用いることができる。また、レジスト組成物や、レンズ等の様々な用途にも好ましく用いることができる。更に、水溶性を付与したスターポリマーは、例えば、医療(薬物輸送やその他の生体材料)用途への展開が研究されている。本発明によれば、純度の高い多官能チオール化合物を得ることができるので、本発明の多官能チオール化合物を用いることで、分子量や粘度等を制御しやすく、所望の物性(例えば高い強度)を有する樹脂や樹脂膜を製造しやすい。
スターポリマーの製造に用いられる溶剤としては、用いる原料化合物の溶解性および/または生成するポリマーの溶解性に応じて任意に選択できる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メトキシプロピルアセテート、乳酸エチル、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムおよびトルエンが挙げられる。これらの溶剤は、二種類以上を混合して使用してもよい。
また、重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル)および2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシドなどの過酸化物;過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などが挙げられる。
多官能チオール化合物は、インクジェット用インク組成物に用いられる多官能化合物を合成する際の原料として好ましく用いることができる。具体的には、重合開始剤、色材、増感色素および紫外線吸収剤等を、本発明の多官能チオール化合物に連結することにより、それぞれの素材の多官能化合物を得ることができる。インクジェット用インク組成物においては、含まれる成分の外部への溶出量(マイグレーション)の低減が求められている。本発明の多官能チオール化合物は高純度であり、官能基数の少ないチオール化合物や、不要な官能基を有するチオール化合物の副生成物の量が少なく、従来の方法で得られる多官能チオール化合物を用いた場合に比べて、マイグレーションの原因となる低分子量成分の生成量を抑制することができる。
次に、本発明の硬化性組成物について説明する。本発明の硬化性組成物は、本発明の多官能チオール化合物と、硬化性化合物とを含有する。
多官能チオール化合物の含有量は、硬化性化合物に対して、0.05〜50質量%が好ましく、0.5〜25質量%がより好ましい。
硬化性組成物は、一態様として、主としてラジカル重合反応により硬化するラジカル重合性組成物であることができる。ラジカル重合性組成物は、本発明の多官能チオール化合物および硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含み、好ましくはさらに重合開始剤(例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤)を含む。
多官能チオール化合物は、ラジカル重合反応における連鎖移動剤として用いることができる。本発明の多官能チオール化合物は、官能基数の少ないチオール化合物や、水酸基等の不要な官能基を有するチオール化合物の含有量が少ないため、少量で良好な硬化性が得られる。
ラジカル重合性化合物としては、熱、光、ラジカルの作用により重合可能な化合物であればよく、特に限定はない。ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する基などのラジカル重合性基を1個以上有する化合物が好ましく、ラジカル重合性基を2個以上有する化合物がより好ましく、ラジカル重合性基を3個以上有することがさらに好ましい。ラジカル重合性基の個数の上限は、たとえば、15個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、スチリル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
カプロラクトン構造を有するラジカル重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60およびDPCA−120等が挙げられる。
市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ(株)製)、UA−7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA−40H(日本化薬(株)製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600およびAI−600(共栄社化学(株)製)などが挙げられる。
硬化性組成物は、ラジカル重合性化合物を、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、さらにエポキシ基を有する化合物を含有することができる。エポキシ基を有する化合物としては、上述した化合物が挙げられる。
硬化性組成物は、エポキシ基を有する化合物を、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。また、分子内にエポキシ基とエチレン性不飽和結合を有する基をともに有する化合物を含んでいてもよい。
ラジカル重合性組成物は、さらに重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては、ラジカル重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択することができる。重合開始剤としては、光重合開始剤および熱重合開始剤を挙げることができるが、特にパターン形成が必要である用途においては光重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有するものが好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。また、光重合開始剤は、約300nm〜800nm(330nm〜500nmがより好ましい)の範囲内に少なくとも約50のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種類含有していることが好ましい。
ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、IRGACURE 184、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE 2959,IRGACURE 127(商品名:いずれもBASF(株)製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE 907、IRGACURE 369およびIRGACURE 379(商品名:いずれもBASF(株)製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤として、365nm又は405nm等の波長光源に吸収極大波長がマッチングされた特開2009−191179号公報に記載の化合物も用いることができる。また、アシルホスフィン系開始剤としては市販品であるIRGACURE 819およびIRGACURE TPO(商品名:いずれもBASF(株)製)を用いることができる。
市販品ではIRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02、IRGACURE OXE03、IRGACURE OXE04(以上、BASF(株)製)、アデカアークルズNCI−831、NCI−930およびアデカオプトマーN−1919(特開2012−14052号公報の光重合開始剤2)(以上、(株)ADEKA製)も好適に用いられる。
硬化性組成物は、一態様として、架橋反応により硬化する硬化性組成物であることもできる。架橋反応により硬化する硬化性組成物は、本発明の多官能チオール化合物および硬化性化合物として求電子性の硬化剤を含み、多官能チオール化合物は求電子性の硬化剤の硬化を促進する。
求電子性の硬化剤としては、例えば、環状エーテル基(エポキシ基またはオキセタン基)を有する化合物およびイソシアネート基を有する化合物などが挙げられる。
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂および脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ基を有する化合物の市販品としては、jER152、jER806、jER825(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON N−660、EPICLON N−740(以上、DIC(株)製)、ADEKA RESIN EP−4000S、ADEKA RESIN EP−4080S(以上、(株)ADEKA製)およびセロキサイド2021P((株)ダイセル製)が挙げられる。
また、OXT−221(東亞合成(株)製)等のオキセタン基を有する化合物も用いることができる。
イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートおよび3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)ジイソシアネートおよび1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等のジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット化反応生成物;ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト反応生成物などが挙げられる。
本発明の硬化性組成物は、樹脂を含有していてもよい。樹脂は、例えば、顔料などの粒子を硬化性組成物中で分散させる用途や、バインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外を目的で樹脂を使用することもできる。
硬化性組成物の樹脂としては、本発明の多官能チオール化合物を原料として用いた樹脂を用いることもできる。
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下がより好ましく、500,000以下が特に好ましい。下限は、3,000以上がより好ましく、5,000以上が特に好ましい。また、エポキシ樹脂の場合、エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100以上が好ましく、200〜2,000,000がより好ましい。上限は、1,000,000以下がより好ましく、500,000以下が特に好ましい。下限は、100以上が好ましく、200以上がより好ましい。
本発明の硬化性組成物を用いてパターン形成する場合は、樹脂としてアルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。本発明の硬化性組成物が、アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、現像性およびパターン形成性が向上する。
特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。アルカリ可溶性樹脂の具体例としては、特開平7−140654号公報、特開2013−29760号公報、特開2012−208494号公報の段落番号0558〜0571、特開2012−32767号公報の段落番号0029〜0063、特開2012−208474号公報の段落番号0088〜0098、特開2012−137531号公報の段落番号0022〜0032、特開2013−024934号公報の段落番号0132〜0143、特開2011−242752号公報の段落番号0092〜0098および特開2012−032770号公報の段落番号0030〜0072に記載の化合物が挙げられる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の硬化性組成物は、樹脂として分散剤を含有することができる。特に、顔料などの粒子を用いた場合、分散剤を含むことが好ましい。分散剤としては、酸性分散剤(酸性樹脂)および塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。分散剤は、酸性分散剤を少なくとも含むことが好ましく、酸性分散剤のみであることがより好ましい。分散剤が、酸性分散剤を含むことにより、顔料の分散性が向上する傾向にある。なお、分散剤が酸性分散剤のみである場合、例えば、分散剤の全質量中における、酸性分散剤の含有量が99質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上とすることもできる。
また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%以上を占める樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミンが好ましい。
酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40〜105mgKOH/gが好ましく、50〜105mgKOH/gがより好ましく、60〜105mgKOH/gがさらに好ましい。
本発明の硬化性組成物は有彩色着色剤を含有することができる。有彩色着色剤は、波長400nm以上650nm未満の範囲に吸収を有する有彩色着色剤が好ましい。本発明において、有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。
カラーインデックス(Colour Index Generic Name;C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)。
これら有機顔料は、単独若しくは2種類以上を組合せて用いることができる。
また、黄色顔料として、特開2013−54339号公報の段落0011〜0034に記載のキノフタロン顔料、特開2014−26228号公報の段落0013〜0058に記載のキノフタロン顔料などを用いることもできる。
これら有機顔料は、単独若しくは色純度を上げるため2種類以上を組合せて用いることができる。
また、本発明の硬化性組成物は、例えば黒色顔料のみを含有させる場合などに、有彩色着色剤を実質的に含有しない態様とすることもできる。なお、有彩色着色剤を実質的に含有しない場合、例えば、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
本発明の硬化性組成物は、黒色顔料を含有することができる。
黒色顔料としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。カーボンブラック、チタンブラック(酸窒化チタンなど)、グラファイトおよび酸窒化バナジウム等が挙げられ、カーボンブラック、チタンブラックおよび酸窒化バナジウムが好ましく、チタンブラックが特に好ましい。チタンブラックとは、チタン原子を含有する黒色粒子である。好ましくは低次酸化チタンや酸窒化チタン等である。チタンブラック粒子は、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。酸化珪素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は、酸化ジルコニウムで被覆することが可能であり、また、特開2007−302836号公報に表されるような撥水性物質での処理も可能である。
また、本発明の硬化性組成物は、例えば有彩色着色剤のみを含有させる場合などに、黒色顔料を実質的に含有しない態様とすることもできる。なお、黒色顔料を実質的に含有しない場合、例えば、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
硬化性組成物は、有彩色着色剤や黒色顔料以外のその他の無機粒子を含んでいてもよい。その他の無機粒子としては、白色顔料を挙げることができる。
白色顔料としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子および硫化亜鉛などが挙げられる。白色顔料は、チタン原子を有する粒子が好ましく、酸化チタンがより好ましい。また、酸化チタンは、二酸化チタン(TiO2)の純度が70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。酸化チタン中、TinO2n−1(nは2〜4の数を表す。)で表される低次酸化チタンおよび酸窒化チタン等の含有量は30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
中空粒子としては、中空ポリマー粒子が例示できる。また、中空ポリマー粒子としては、粒子内部が空洞となっている樹脂粒子が挙げられ、特開2009−35672号公報に記載されているものが例示できる。また、中空粒子は、上市されており、例えば、SX866(A)(JSR(株)製)等が例示できる。
本発明の硬化性組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤は、有機溶剤が好ましい。有機溶剤は、各成分の溶解性や硬化性組成物の塗布性を満足すれば特に制限はない。
本発明の硬化性組成物は、塗布性をより向上させる観点から、各種類の界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤などの各種類の界面活性剤を使用できる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
エチレン性不飽和結合を有する基を側鎖に有する含フッ素重合体をフッ素系界面活性剤として用いることもできる。具体例としては、特開2010−164965号公報の段落番号0050〜0090および段落番号0289〜0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS−101、RS−102、RS−718KおよびF−475等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.001〜2.0質量%が好ましく、0.005〜1.0質量%がより好ましい。
本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を含有することも好ましい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、パラメトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−パラクレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)およびN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜5質量%が好ましい。本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、各種類の添加物、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加物としては、特開2004−295116号公報の段落番号0155〜0156に記載の添加物を挙げることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011−90147号公報の段落番号0042に記載の化合物)およびチオエーテル化合物などを用いることができる。市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−50F、AO−60、AO−60G、AO−80、AO−330など)が挙げられる。酸化防止剤は2種類以上を混合して使用してもよい。紫外線吸収剤としては、アミノジエン系、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系およびトリアジン系等の紫外線吸収剤を用いることができ、具体例としては特開2013−68814号に記載の化合物が挙げられる。ベンゾトリアゾール系としてはミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。本発明の硬化性組成物においては、特開2004−295116号公報の段落番号0078に記載の増感剤および光安定剤、ならびに同公報の段落番号0081に記載の熱重合防止剤を含有することができる。
硬化性組成物は、画素形成用として好適に用いることができる。また、硬化性に優れた硬化膜を製造することができるので、有機光電変換膜を有する固体撮像素子などに好ましく用いることができる。
本発明の硬化性組成物を用いて、硬化膜を製造してもよい。
硬化膜の製造方法について説明する。硬化膜の製造方法は、上述した本発明の硬化性組成物を用いて基材上に硬化性組成物層を形成する工程と、硬化性組成物層をパターン状に露光する工程と、未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含むことが好ましい。
以下、各工程について詳細を述べる。
硬化性組成物層を形成する工程では、本発明の硬化性組成物を用いて、基材上に硬化性組成物層を形成することが好ましい。
本発明の硬化性組成物の製造方法は、本発明の多官能チオール化合物の製造方法により多官能チオール化合物を製造する工程と、
多官能チオール化合物と硬化性化合物とを混合する工程を含む。
本発明の硬化性組成物の製造方法は、上述した本発明の多官能チオール化合物の製造工程と、前述の製造工程で得られた多官能チオール化合物と、硬化性化合物とを混合する工程を含むことが好ましい。また、硬化性化合物に加えて、前述の硬化性組成物の成分を混合することも好ましい。
2価以上のアルコールを含む原料としてジペンタエリスリトールを用い、一般式(14)で表される化合物である中間体S−71−1を、以下の手順で合成した。
ジペンタエリスリトール(DPE、パーストープ社製)5部およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)80部を三口フラスコに加え、窒素雰囲気下、20℃の水浴中で攪拌した。6−ブロモヘキサノイルクロリド[東京化成工業(株)製]31部を温度が30℃を超えないように滴下した後、室温で2時間攪拌した。反応液を1mol/L塩酸350部に少しずつ加えて反応を停止した。その後、反応液に酢酸エチル500部を加えて、分液操作を行った。続いて、有機層を飽和重曹水250部、水250部、飽和食塩水150部で洗浄した。得られた有機層に硫酸ナトリウムを加えた後、ろ別し、ろ液を減圧濃縮することで中間体S−71−1を24部得た(収率93質量%)。
一般式(14)で表される化合物である中間体S−71−1と、チオカルボン酸塩であるチオ酢酸カリウムとを反応させて、一般式(11)で表される化合物である中間体S−71−2を、以下の手順で合成した。
中間体S−71−1の4.3部、DMAc43部およびテトラブチルアンモニウムブロミド2.2部を三口フラスコに加え、空気雰囲気下、水浴中で攪拌した。これにチオ酢酸カリウム2.63部を4回に分割して添加し、50℃で4時間反応させた。次に、反応液に酢酸エチル129部、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液65部および水65部を加えて、分液操作を行って有機層を分取した。続いて、有機層を1mol/L塩酸129部、飽和食塩水129部2回で分液操作を行って有機層を分取し、洗浄した。その後、有機層に硫酸ナトリウムを加えた後、ろ別した。その後、ろ液を減圧濃縮することで中間体S−71−2を4.2部得た(収率100質量%)。
一般式(11)で表される化合物である中間体S−71−2と、一般式(12)で表される化合物であるヒドラジン塩酸塩(共役酸のpKa=8.0)とを、非プロトン性の高極性溶媒であるDMAcの存在下で反応させて、一般式(1)または一般式(13)で表される多官能チオール化合物S−71を、以下の手順で合成した。なお、ヒドラジン塩酸塩由来の強酸である塩酸と、弱酸の塩である酢酸ナトリウムの組み合わせにより、弱酸性条件(pH=5〜6)下で多官能チオール化合物合成工程の反応は行われた。
中間体S−71−2の2.2部およびDMAc22部を三口フラスコに加え、窒素雰囲気下、15℃で攪拌した。これにヒドラジン塩酸塩0.85部および酢酸ナトリウム2.0部を添加し、反応温度15℃で4時間反応させた。次に酢酸エチル66部を加え、1mol/L塩酸66部2回、次いで飽和食塩水66部2回で分液操作を行って有機層を分取し、洗浄した。その後、有機層に硫酸マグネシウムを加えた後、ろ別した。その後、ろ液を減圧濃縮することで多官能チオール化合物S−71を1.73部得た(収率98質量%)。
以下の測定方法にしたがって、得られた多官能チオール化合物S−71を測定サンプルとし、純度を測定した。実施例1で得られた多官能チオール化合物S−71のHPLCの結果のグラフを図1に示した。なお、図1〜図3におけるグラフの横軸は保持時間(単位は分)を表し、縦軸は検出強度を表す。
図1より、得られた多官能チオール化合物S−71中に含まれる一般式(1)で表される多官能チオール化合物のうち、水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量は95%(純度95%)であった。なお、得られた多官能チオール化合物S−71中に含まれる一般式(1)で表される多官能チオール化合物のうち、n=1以上である多官能チオール化合物のほとんどはL2が単結合であった。得られた結果を下記表に記載した。
測定サンプル25mgをテトラヒドロフラン2.5gに溶解させ、下記溶出および分離条件でHPLCを用いた測定を行った。
<<溶出および分離条件>>
カラム:島津製作所製Shim−pack CLC−ODS、サイズ6.0mmID(IDは内径)×15cm。
移動相A:テトラヒドロフラン。
移動相B:0.1質量%リン酸+0.1質量%トリエチルアミン水溶液。
条件:0分の時に移動相A60質量%および移動相B40質量%、分離開始から30分の時に移動相A90質量%および移動相B10質量%に変化させるグラジエント濃度勾配で、測定サンプルを溶出した。
流速:1.0mL/分。
カラム温度:40℃。
検出波長:210nm。
その後、一般式(1)で表される多官能チオール化合物のうち、n=0である水酸基を有さない多官能チオール化合物のピークと、n≧1である多官能チオール化合物のピークの帰属を、以下の方法で決定した。
各ピークに相当する溶出画分を分取し、以下のマススペクトル測定条件にてマススペクトルを測定した。最も強く検出されたm/z(mは原子質量単位uで表したイオンの質量を表し、zはイオンの電荷数を表す)をpositiveモードとnegativeモードのそれぞれに対して測定し、質量分析解析を実施した。
<<マススペクトル測定条件>>
・装置:APPLIED BIOSYSTEMS(登録商標) QSTAR pulseri(ライフテクノロジー社製)
・イオン化法:Electrospray ionization(ESI)、positiveモードおよびnegativeモード
・キャピラリ電圧:3.5kV
・脱溶媒ガス:300℃
・イオン源温度:120℃
・検出法:TOF−MS
・検出範囲:120〜2100
<<同定結果>>
各ピークの保持時間を図1に示す。保持時間22.4分に分子量1034.41のS−71(面積%:95%)を観測した。
実施例1の多官能チオール化合物の製造方法において、材料を変更した以外は実施例1と同様の合成スキームにしたがって多官能チオール化合物S−2、S−38、S−70、S−75、S−78、S−79、S−82、S−85、S−88、S−91、S−95、S−112、S−117、S−139、S−141、S−151、S−154、S−156、S−159、S−161、S−163、S−174、S−182、S−201およびS−204の合成を行った。
得られたそれぞれの多官能チオール化合物の純度を、実施例1と同様にして測定した。その結果、得られたそれぞれの多官能チオール化合物中に含まれる一般式(1)で表される多官能チオール化合物のうち、水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量はいずれも90%以上であった。得られた結果を下記表に記載した。
得られた多官能チオール化合物T−1の純度を、実施例1と同様にして測定した。比較例1で得られた多官能チオール化合物T−1のHPLCの結果のグラフを図2に示した。図2より、得られた多官能チオール化合物T−1中に含まれる一般式(1)で表される多官能チオール化合物のうち、水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量は58%(純度58%)であった。得られた結果を下記表に記載した。
各ピークの保持時間を図2に示す。保持時間24.1分に分子量783.05のS−70(面積%:58%)のピークを観測した。
WO2015/151988号の[0365]および[0366]に記載された、本発明の範囲外の多官能チオール化合物の製造方法を用いて、以下の合成スキームにしたがって多官能チオール化合物T−2の合成を行った。T−2は、S−71の製造を意図して、従来法で製造したものである。
中間体S−71−1の20部、チオウレア9.5部、エタノール200部およびヨウ化カリウム17.6部を三口フラスコに加え、窒素雰囲気下、加熱還流で18時間反応させた。その後、反応液に20質量%炭酸カリウム水溶液81部を加え、70℃で3時間反応させた後、冷却した。次に、反応液に1mol/L塩酸150部とクロロホルム300部とを加えて、分液操作を行った。続いて、有機層を飽和食塩水150部2回で洗浄した。その後、有機層に硫酸ナトリウムを加えた後、ろ別した。その後、ろ液を減圧濃縮することで多官能チオール化合物T−2を14.7部得た(収率93質量%)。
得られた多官能チオール化合物T−2の純度を、移動相A:メタノール;
移動相B:0.1質量%酢酸アンモニウム水溶液;
条件:0分の時に移動相A30質量%および移動相B70質量%、分離開始から30分の時に移動相A100質量%に変化させるグラジエント濃度勾配;
で実施例1と同様にして測定した。比較例2で得られた多官能チオール化合物T−2のHPLCの結果のグラフを図3に示した。図3より、得られた多官能チオール化合物T−2中に含まれる一般式(1)で表される多官能チオール化合物のうち、水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量は24.4%(純度24.4%)であった。得られた結果を下記表に記載した。
各ピークの保持時間を図3に示す。保持時間31.4分に分子量1034.41のS−71(面積%:24.4%)のピークを観測した。
以上より、本発明の多官能チオール化合物の製造方法によれば、純度が高い多官能チオール化合物を得られることが分かった。
一方、本発明の範囲外の多官能チオール化合物の製造方法では、得られる多官能チオール化合物の純度が低いことがわかった。
実施例1の多官能チオール化合物の製造方法において、多官能チオール化合物合成工程における一般式(12)で表される化合物、弱酸の塩、反応温度および反応時間を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例13〜15の多官能チオール化合物の製造方法を行った。得られた結果を下記表に記載した。
下記表中の酢酸Naは酢酸ナトリウムを表わす。
実施例1と14の比較より、反応温度が好ましい範囲の下限値以上であると、反応性が著しく高まることがわかった。
実施例1と15の比較より、反応温度が好ましい範囲の上限値以下であると、選択性が高まり、純度も高まることがわかった。
なお、実施例1では反応系で塩酸塩と酢酸ナトリウムが中和されてヒドラジンと酢酸が発生し、反応系にはヒドラジン、酢酸および過剰の酢酸ナトリウムが存在すると推測される。
<硬化性組成物の調製>
実施例101〜126、比較例101および102の硬化性組成物として、以下の組成D−1の硬化性組成物を調製した。
<組成D−1>
樹脂:ベンジルメタクリレート/アクリル酸共重合体(組成比:ベンジルメ
タクリレート/アクリル酸共重合体=80/20(質量%)、重量平均分子
量:25000) 12.0部
硬化性化合物(ラジカル重合性化合物):ジペンタエリスリトールヘキサア
クリレート 17.0部
溶剤:PGMEA 10部
溶剤:3−エトキシプロピオン酸エチル 8部
重合開始剤:光重合開始剤であるIRGACURE OXE02
0.775部
多官能チオール化合物:下記表に記載の多官能チオール化合物
0.200部
重合禁止剤:パラメトキシフェノール 0.01部
各実施例および比較例の硬化性組成物の露光感度について、下記のようにして評価した。評価結果をまとめて下記表に示す。
各実施例および比較例の硬化性組成物を、ガラス基材上にスピンコート後、乾燥して厚さ1.0μmの塗膜を形成した。スピンコート条件は、300rpm(revolutions per minite)で5秒間の後、800rpmで20秒間とし、乾燥条件は100℃で80秒間とした。次に、得られた塗膜を、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)により、10mJ/cm2〜1600mJ/cm2の様々な露光量で全面露光した。
露光感度の評価は、露光工程において光が照射された領域の粘着性がなくなった時の最小の露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど感度が良好であることを示す。
各実施例および比較例の硬化性組成物を100mlのブルーム瓶に密封し、60℃の恒温槽で48時間保管した。
その後、フレッシュ露光感度と同様の方法で露光感度の評価を行った。
純度が低く、多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量が本発明の範囲外である比較例の多官能チオール化合物は、硬化性組成物に含有させた場合に露光感度が劣ることが分かる。
<硬化性組成物の調製>
実施例201〜226、比較例201および202の硬化性組成物として、以下の組成D−2の有彩色着色剤を含有する硬化性組成物を調製した。具体的には、下記の組成D−2中の各成分を混合して溶解または分散し、0.45μmのナイロンフィルタでろ過して、硬化性組成物を調製した。
<組成D−2>
有機溶剤1(シクロヘキサノン) 17.12部
アルカリ可溶性樹脂1(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸(47/53
[質量比])、30質量%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、
Mw=11,000) 1.23部
アルカリ可溶性樹脂2(アクリキュアーRD−F8(日本触媒製))
0.23部
硬化性化合物(ラジカル重合性化合物、新中村化学工業(株)製、NKエス
テルA−DPH−12E) 1.96部
重合禁止剤(パラメトキシフェノール) 0.0007部
重合開始剤:光重合開始剤であるIRGACURE OXE02
0.975部
多官能チオール化合物:下記表に記載の多官能チオール化合物 0.35部
フッ素系界面活性剤(DIC製、商品名:メガファックF−475、1質量
%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液) 2.50部
有彩色着色剤1:染料溶液1(下記の方法で調製した染料溶液)
24.57部
有彩色着色剤2:顔料分散液P1(下記の方法で調製したC.I.Pigm
ent Blue 15:6分散液、固形分濃度12.8質量%)
51.40部
以下の手順で顔料分散液P1を調製した。
C.I.Pigment Blue15:6(青色顔料;以下、「PB15:6」とも称する)を19.4質量部(平均一次粒径55nm)、顔料分散剤BY−161(BYK製)を2.95質量部、アルカリ可溶性樹脂1(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸(47/53[質量比])、30質量%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、Mw=11,000)を固形分換算で2.95質量部(溶液9.93質量部)およびプロピレングリコールモノメチルエーテル165.3質量部からなる混合液を、ビーズミル(beads mill)(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合し、分散した。その後、さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/分として分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、顔料分散液P1である、C.I.Pigment Blue15:6分散液を得た。得られた顔料分散液P1について、顔料の平均一次粒径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社(Nikkiso Co.,ltd.製)))により測定したところ、24nmであった。
各実施例および比較例の硬化性組成物の露光感度と、ガラス基材上に各実施例および比較例の硬化性組成物を用いてパターンを形成した場合に得られるパターンの密着性について、下記の方法で評価した。評価結果をまとめて下記表に示す。
各実施例および比較例の硬化性組成物を、ガラス基材上にスピンコート塗布後、乾燥して厚さ1.0μmの塗膜を形成した。スピンコート条件は、300rpmで5秒間の後、800rpmで20秒間とし、乾燥条件は100℃で80秒間とした。次に、得られた塗膜を、線幅2.0μmのテスト用のフォトマスクを用い、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)により、10mJ/cm2〜2000mJ/cm2の様々な露光量で露光した。次に、60質量%CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)現像液を使用して、露光後の塗膜を、25℃、60秒間の条件で現像した。その後、流水で20秒間リンスした後、エアー乾燥した。
露光感度の評価は、露光工程において光が照射された領域の現像後のパターン線幅が1μm以上となる最小の露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど、硬化性組成物の感度は良好である。
各実施例および比較例の硬化性組成物を100mlのブルーム瓶に密封し、60℃の恒温槽で48時間保管した。
その後、フレッシュ露光感度と同様の方法で露光感度の評価を行った。
ガラス基材とパターンとの間の密着性は、フレッシュ露光感度の評価で得られたパターンにパターン欠損が発生しているか否かを観察し、下記基準に基づいて評価した。
−評価基準−
A:パターン欠損が全く観察されなかった。
B:パターン欠損がパターン1.0μm四方あたり1〜3個。
C:パターン欠損がパターン1.0μm四方あたり3個を超え、10個以下。
D:パターン欠損がパターン1.0μm四方あたり10個を超える。
さらに、本発明の多官能チオール化合物は、多官能チオール化合物を含有させた硬化性組成物を用いてパターンを形成した場合に、ガラス基材とパターンとの間の密着性が良好となることが分かり、光透過率が特に低い底部でも問題なく硬化が進行したことが分かる。
純度が低く、多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量が本発明の範囲外である比較例の多官能チオール化合物は、硬化性組成物に含有させた場合に露光感度が劣ることが分かる。また、比較例の多官能チオール化合物は、多官能チオール化合物を含有させた硬化性組成物を用いてパターンを形成した場合に、ガラス基材とパターンとの間の密着性が悪く、その理由は光透過率が特に低い底部での硬化性組成物の硬化率が低いためと推測される。
<チタンブラック分散液Aの調製>
下記組成d−1の混合液に対して、二本ロールにて高粘度分散処理を施し、分散物を得た。この際の分散物の粘度は40,000mPa・sであった。
チタンブラック(平均一次粒径75nm、三菱マテリアル(株)製13M−
C) 35質量部
PGMEA 65質量部
黒色顔料を有する実施例301〜326、比較例301および302の硬化性組成物として、以下の組成d−3の硬化性組成物を調製した。具体的には、下記組成d−3の混合液を攪拌機で混合して、硬化性組成物を調製した。
<<組成d−3>>
樹脂:ベンジルメタクリレート/アクリル酸共重合体(組成比:ベンジルメ
タクリレート/アクリル酸共重合体=80/20(質量%)、重量平均分子
量:25000) 2.0部
硬化性化合物(ラジカル重合性化合物):ジペンタエリスリトールヘキサア
クリレート 3.0部
黒色顔料:チタンブラック分散液A 24.0部
溶剤:PGMEA 10部
溶剤:3−エトキシプロピオン酸エチル 8部
重合開始剤:光重合開始剤であるIRGACURE OXE02
0.775部
多官能チオール化合物:下記表に記載の多官能チオール化合物
0.200部
重合禁止剤:パラメトキシフェノール 0.01部
各実施例および比較例の硬化性組成物の露光感度と、ガラス基材上に各実施例および比較例の硬化性組成物を用いてパターンを形成した場合に得られるパターンの密着性について、下記の方法で評価した。評価結果をまとめて下記表に示す。
各実施例および比較例の硬化性組成物を、ガラス基材上にスピンコート後、乾燥して厚さ1.0μmの塗膜を形成した。スピンコート条件は、300rpmで5秒間の後、800rpmで20秒間とし、乾燥条件は100℃で80秒間とした。次に、得られた塗膜を、線幅2.0μmのテスト用のフォトマスクを用い、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)により、10mJ/cm2〜2000mJ/cm2の様々な露光量で露光した。次に、60質量%CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)現像液を使用して、露光後の塗膜を、25℃、60秒間の条件で現像した。その後、流水で20秒間リンスした後、エアー乾燥しパターニングを完了した。
露光感度の評価は、露光工程において光が照射された領域の現像後のパターン線幅が、1μm以上となる最小の露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど、硬化性組成物の感度は良好である。
各実施例および比較例の硬化性組成物を100mlのブルーム瓶に密封し、60℃の恒温槽で48時間保管した。
その後、フレッシュ露光感度と同様の方法で露光感度の評価を行った。
ガラス基材とパターンとの間の密着性は、フレッシュ露光感度の評価で得られたパターンにパターン欠損が発生しているか否かを観察し、下記基準に基づいて評価した。
−評価基準−
A:パターン欠損が全く観察されなかった。
B:パターン欠損がパターン1.0μm四方あたり1〜3個。
C:パターン欠損がパターン1.0μm四方あたり3個を超え、10個以下。
D:パターン欠損がパターン1.0μm四方あたり10個を超える。
さらに、本発明の多官能チオール化合物は、多官能チオール化合物を含有させた硬化性組成物を用いてパターンを形成した場合に、ガラス基材とパターンとの間の密着性が良好となることが分かり、光透過率が特に低い底部でも問題なく硬化が進行したことが分かる。
純度が低く、多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量が本発明の範囲外である比較例の多官能チオール化合物は、硬化性組成物に含有させた場合に露光感度が劣ることが分かる。また、比較例の多官能チオール化合物は、多官能チオール化合物を含有させた硬化性組成物を用いてパターンを形成した場合に、ガラス基材とパターンとの間の密着性が悪く、その理由は光透過率が特に低い底部での硬化性組成物の硬化率が低いためと推測される。
<スターポリマーの合成>
高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)である。
三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:69.18gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME−100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂(株)製):52.90g、メチルメタクリレート:35.17g、メタクリル酸:6.05g、S−71:0.917g、V−601(2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、和光純薬工業(株)製):0.809gおよび1−メトキシ−2−プロパノール:70.10gから成る混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、更に2時間反応を続けた。2時間反応をした後、V−601:0.081gおよび1−メトキシ−2−プロパノール:3.32gから成る混合溶液を加え、90℃に昇温して2.5時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
上記の反応溶液に1−メトキシ−2−プロパノール:97.73g、4−ヒドロキシテトラメチルピペリジンN−オキシド:0.23g、グリシジルメタクリレート:6.49gおよびベタイン:0.90gを加えてよく攪拌した後、92℃にて24時間加熱した。24時間後、室温まで反応溶液を冷却した。その後、1−メトキシ−2−プロパノール:78.84gを加えて希釈した。こうして得られたスターポリマーP−1の、GPCで測定したポリスチレン換算値の重量平均分子量は6.3万であった。数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwから求めた分散度Mw/Mnは1.8であった。
実施例401のスターポリマーP−1の合成において、S−71をT−1に変更した以外は同様の手法にて、スターポリマーP−2を合成した。こうして得られたスターポリマーP−2のGPCで測定したポリスチレン換算値の重量平均分子量は6.5万であった。数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwから求めた分散度Mw/Mnは2.0であった。
実施例401と比較例402の比較から、本発明の多官能チオール化合物であるS−71の方が、比較例1で合成した多官能チオール化合物であるT−1よりも低分子量成分が少なく、純度が高いため、分散度の小さいスターポリマーが得られたと考えられる。
Claims (22)
- 下記一般式(11)で表される化合物と、下記一般式(12)で表される化合物とを反応させて、下記一般式(13)で表される多官能チオール化合物を合成する多官能チオール化合物合成工程を含む、多官能チオール化合物の製造方法;
- 下記一般式(14)で表される化合物と、チオカルボン酸およびチオカルボン酸塩の少なくとも一方とを反応させて、前記一般式(11)で表される化合物を合成する中間体合成工程を含む、請求項1に記載の多官能チオール化合物の製造方法;
- 2価以上のアルコールを含む原料を用いて前記一般式(14)で表される化合物を合成する水酸基変換工程を含む、請求項1または2に記載の多官能チオール化合物の製造方法。
- 前記多官能チオール化合物合成工程で、強酸および弱酸の塩の組み合わせ、あるいは、弱酸を用いる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物の製造方法。
- 前記多官能チオール化合物合成工程を、非プロトン性の高極性溶媒の存在下で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物の製造方法。
- 前記多官能チオール化合物合成工程の反応温度が3〜40℃である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物の製造方法。
- R1がアルキレン基、または、アルキレン基とエーテル性酸素原子の組み合わせからなる基を表す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物の製造方法。
- M1が−O−C(=O)−を表す、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物の製造方法。
- 前記多官能チオール化合物が2級チオールまたは3級チオールである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物の製造方法。
- 前記多官能チオール化合物が1級チオールである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物の製造方法。
- 下記一般式(1)で表される多官能チオール化合物であって、
前記多官能チオール化合物のうち水酸基を有さない多官能チオール化合物の含有量が90%以上である、多官能チオール化合物;
- 前記多官能チオール化合物のうち前記水酸基を有さない多官能チオール化合物が95%以上である、請求項11に記載の多官能チオール化合物。
- R1がアルキレン基、または、アルキレン基とエーテル性酸素原子の組み合わせからなる基を表す、請求項11または12に記載の多官能チオール化合物。
- M1が−O−C(=O)−を表す、請求項11〜13のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物。
- mが2〜15の整数を表す、請求項11〜14のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物。
- 前記多官能チオール化合物が2級チオールまたは3級チオールである、請求項11〜16のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物。
- 前記多官能チオール化合物が1級チオールである、請求項11〜16のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物。
- 請求項11〜18のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物と、硬化性化合物とを含有する、硬化性組成物。
- さらに重合開始剤を含有する、請求項19に記載の硬化性組成物。
- さらに有彩色着色剤または黒色顔料を含有する、請求項20に記載の硬化性組成物。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載の多官能チオール化合物の製造方法により多官能チオール化合物を製造する工程と、
前記多官能チオール化合物と硬化性化合物とを混合する工程を含む、硬化性組成物の製造方法。
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