JPWO2018034082A1 - 組成物、硬化膜、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子および赤外線センサ - Google Patents

組成物、硬化膜、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子および赤外線センサ Download PDF

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Abstract

パターン形成性および耐溶剤性に優れた硬化膜を形成可能な組成物、ならびに前述の組成物を用いた硬化膜、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子および赤外線センサを提供する。近赤外線透過黒色色材と、硬化性化合物と、溶剤とを含む組成物であって、近赤外線透過黒色色材は、架橋性基を有する染料化合物、および、染料化合物由来の構造を有する色素多量体から選ばれる少なくとも1種を含有し、組成物の波長400〜700nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1100〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上である。

Description

本発明は、赤外線透過フィルタなどの形成に用いることができる組成物に関する。また、組成物を用いた硬化膜、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子および赤外線センサにも関する。
固体撮像素子は、様々な用途で光センサとして活用されている。例えば、赤外線は可視光線に比べて波長が長いので散乱しにくく、距離計測や、3次元計測などにも活用可能である。また、赤外線は人間、動物などの目に見えないので、夜間に被写体を赤外線光源で照らしても被写体に気付かれることなく、夜行性の野生動物を撮影する用途、防犯のため相手を刺激せずに撮影する用途にも使用可能である。このように、赤外線に感知する光センサ(赤外線センサ)は、様々な用途に展開が可能であり、赤外線センサに用いることができる膜の開発が望まれている。
特許文献1には、近赤外線透過黒色色材を含有するカラーフィルタ組成物が記載されている。また、特許文献1の段落番号0019には、近赤外線透過黒色色材は顔料であることが好ましい旨の記載がある。
特開2014−130173号公報
近年において、パターンサイズのさらなる微細化が望まれている。染料タイプの近赤外線透過黒色色材を用いた組成物は、顔料タイプの近赤外線透過黒色色材を用いた組成物に比べて、解像性を向上させることができる。また、組成物の調製に際し、染料タイプの近赤外線透過黒色色材は分散などの手間を省略できるという利点がある。しかしながら、染料タイプの近赤外線透過黒色色材を含む組成物を用いた硬化膜は、顔料タイプの近赤外線透過黒色色材を含む組成物を用いた硬化膜に比べて耐溶剤性が低下しやすい傾向にあった。
よって、本発明の目的は、パターン形成性および耐溶剤性に優れた硬化膜を形成可能な組成物を提供することにある。また、前述の組成物を用いた硬化膜、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子および赤外線センサを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、近赤外線透過黒色色材として、架橋性基を有する染料化合物、および/または、架橋性基を有する染料化合物由来の構造を有する色素多量体を用いることで、パターン形成性および耐溶剤性に優れた硬化膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下を提供する。
<1> 近赤外線透過黒色色材と、硬化性化合物と、溶剤とを含む組成物であって、
近赤外線透過黒色色材は、架橋性基を有する染料化合物、および、染料化合物由来の構造を有する色素多量体から選ばれる少なくとも1種を含有し、
組成物の波長400〜700nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1100〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上である、組成物。
<2> 染料化合物が有する架橋性基は、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基およびアルコキシシリル基から選ばれる少なくとも1種である、<1>に記載の組成物。
<3> 架橋性基を有する染料化合物は、キサンテン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物およびビスベンゾフラノン化合物から選ばれる少なくとも1種である、<1>または<2>に記載の組成物。
<4> 色素多量体は、2価以上の連結基に染料化合物由来の構造が2以上結合してなる、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の組成物。
<5> 色素多量体は、染料化合物由来の構造を有する繰り返し単位を有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の組成物。
<6> 更に、有彩色着色剤を含む、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の組成物。
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の組成物を硬化してなる硬化膜。
<8> <7>に記載の硬化膜を有する赤外線透過フィルタ。
<9> <7>に記載の硬化膜を有する固体撮像素子。
<10> <7>に記載の硬化膜を有する赤外線センサ。
本発明によれば、パターン形成性および耐溶剤性に優れた硬化膜を形成可能な組成物を提供できる。また、前述の組成物を用いた硬化膜、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子および赤外線センサを提供できる。
本発明の赤外線センサの一実施形態の構成を示す概略断面図である。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全体から溶剤を除いた成分の合計質量をいう。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基を包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)を包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も含む。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC−8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel Super AWM―H(東ソー(株)製、6.0mmID(内径)×15.0cm)を用い、溶離液として10mmol/L リチウムブロミドNMP(N−メチルピロリジノン)溶液を用いることによって求めることができる。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
<組成物>
本発明の組成物は、近赤外線透過黒色色材と、硬化性化合物と、溶剤とを含む組成物であって、
近赤外線透過黒色色材は、架橋性基を有する染料化合物、および、架橋性基を有する染料化合物由来の構造を有する色素多量体から選ばれる少なくとも1種を含有し、
組成物の波長400〜700nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1100〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上であることを特徴とする。
本発明の組成物は、近赤外線透過黒色色材として、架橋性基を有する染料化合物、および/または、架橋性基を有する染料化合物由来の構造を有する色素多量体を用いることで、耐溶剤性に優れた硬化膜を形成できる。また、この組成物は、波長400〜700nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1100〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上であるので、可視光を遮光し、特定の波長領域の赤外線を透過する硬化膜を形成できる。このため、本発明の組成物を用いることで、耐溶剤性に優れた赤外線透過フィルタ等を形成することができる。
また、赤外線センサ等のデバイスの製造プロセスにおいて、赤外線透過フィルタ上にカラーフィルタや保護膜などを積層することがある。赤外線透過フィルタの耐溶剤性が劣ると、赤外線透過フィルタ上にこれらの膜を積層した際に、赤外線透過フィルタから近赤外線透過黒色色材などが溶出して赤外線透過フィルタの分光特性が変動することがある。これに対し、本発明の組成物によれば、耐溶剤性に優れた硬化膜を形成できるので、本発明の組成物を用いて形成した硬化膜上にカラーフィルタや保護膜などを形成した場合であっても、硬化膜から近赤外線透過黒色色材が溶出することなどを抑制できる。
また、本発明の組成物は、近赤外線透過黒色色材として、架橋性基を有する染料化合物、および/または、染料化合物由来の構造を有する色素多量体を用いるので、パターン形成性が良好であり、より微細なパターンを形成することができる。
また、近赤外線透過黒色色材は、i線(365nm)などの透過性が低いため、パターンサイズが高解像になるに従いパターンの矩形性が低下したり、パターンはがれが生じる場合があるが、近赤外線透過黒色色材として、架橋性基(好ましくはエチレン性不飽和結合を有する基)を有する染料化合物を用いることで、少ない露光量でも膜の下部まで硬化させることができ、高解像のパターンであっても、矩形性および密着性などに優れたパターンを形成することができる。
本発明の組成物において、上記吸光度の条件は、どのような手段によって達成されても良い。例えば、近赤外線透過黒色色材の種類およびその含有量を調整したり、更に、有彩色着色剤および/または赤外線吸収剤を含有させるとともに、これらの種類及び含有量を調整することにより、上記吸光度の条件を好適に達成できる。なお、赤外線吸収剤は、透過させる光(赤外線)をより長波長側に限定する役割を有している。
本発明の組成物が有する分光特性について、上述したA/Bの値は、7以上が好ましく、7.5以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、15以上が更により好ましく、30以上が特に好ましい。
ある波長λにおける吸光度Aλは、以下の式(1)により定義される。
Aλ=−log(Tλ/100) ・・・(1)
Aλは、波長λにおける吸光度であり、Tλは、波長λにおける透過率(%)である。
吸光度の値は、溶液の状態で測定した値であってもよく、組成物を用いて製膜した膜での値であってもよい。膜の状態で吸光度を測定する場合は、ガラス基板上にスピンコート等の方法により、乾燥後の膜の厚さが所定の厚さとなるように組成物を塗布し、ホットプレートを用いて100℃、120秒間乾燥して調製した膜を用いて測定することが好ましい。膜の厚さは、膜を有する基板について、触針式表面形状測定器(ULVAC社製 DEKTAK150)を用いて測定することができる。
吸光度は、従来公知の分光光度計を用いて測定できる。吸光度の測定条件は特に限定はないが、波長400〜700nmの範囲における吸光度の最小値Aが、0.1〜3.0になるように調整した条件で、波長1100〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bを測定することが好ましい。このような条件で吸光度を測定することで、測定誤差をより小さくできる。波長400〜700nmの範囲における吸光度の最小値Aが、0.1〜3.0になるように調整する方法としては、特に限定はない。例えば、組成物の状態で吸光度を測定する場合は、試料セルの光路長を調整する方法が挙げられる。また、膜の状態で吸光度を測定する場合は、膜厚を調整する方法などが挙げられる。
本発明の組成物により形成される膜の分光特性、膜厚等の測定方法の具体例を以下に示す。
本発明の組成物を、ガラス基板上にスピンコート等の方法により、乾燥後の膜の厚さが所定の厚さとなるように塗布し、ホットプレートを用いて100℃、120秒間乾燥する。膜の厚さは、膜を有する乾燥後の基板を、触針式表面形状測定器(ULVAC社製 DEKTAK150)を用いて測定する。この膜を有する乾燥後の基板を、紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 U−4100)を用いて、波長300〜1300nmの範囲において透過率を測定する。
本発明の組成物は、赤外線を透過することから、赤外線透過性組成物とも言える。以下に、本発明の組成物を構成し得る各成分について説明する。
<<近赤外線透過黒色色材>>
本発明の組成物は近赤外線透過黒色色材を含有する。本発明における近赤外線透過黒色色材は、架橋性基を有する染料化合物、および、架橋性基を有する染料化合物由来の構造を有する色素多量体から選ばれる少なくとも1種を含有する。
近赤外線透過黒色色材は、紫色から赤色の波長域の光を吸収する材料であることが好ましい。近赤外線透過黒色色材は、波長400〜700nmの範囲の光を遮光する色材であることが好ましい。近赤外線透過黒色色材は、波長400〜700nmの範囲における吸光度の最小値A1と、波長900〜1300nmの範囲における吸光度の最小値B1との比であるA1/B1が4.5以上であることが好ましい。近赤外線透過黒色色材は、波長800〜1300nmの範囲の光の少なくとも一部を透過させる色材であることが好ましい。
(架橋性基を有する染料化合物)
架橋性基を有する染料化合物(架橋性染料ともいう)は、キサンテン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物およびビスベンゾフラノン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、キサンテン化合物がより好ましい。
架橋性染料は、23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対して1g以上溶解する化合物であることが好ましく、3g以上溶解する化合物であることがより好ましい。
架橋性染料が有する架橋性基の種類としては、特に限定はない。熱、光、ラジカルなどの作用により架橋反応が生じうる基が挙げられる。架橋性基の具体例としては、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基、アルコキシシリル基及びメチロール基などが挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。アルコキシシリル基としては、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が挙げられる。アルコキシシリル基におけるアルコキシ基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が更に好ましい。架橋性基としては、エポキシ基およびアルコキシシリル基が好ましく、エポキシ基がより好ましい。この態様によれば、膜の上部(表面側)および下部(支持体側)で架橋率に差が無く、膜全体をほぼ均等に架橋することができる。また、パターン形成性が良好で、得られるパターン形状が良好である。さらには、パターン剥を効果的に抑制できる。
架橋性染料は、架橋性基を1分子中に1〜4個有することが好ましく、1〜3個有することがより好ましく、1〜2個有することがさらに好ましい。この態様によれば、溶剤に対する耐性が向上するという効果が期待できる。
架橋性染料は、モノマータイプの化合物であることが好ましい。架橋性染料は、色素骨格を1分子中に1個有する化合物であることが好ましい。また、架橋性染料の分子量は300〜3000が好ましく、500〜1500がより好ましい。なお、架橋性染料の分子量の値は構造式から算出した値である。
架橋性染料の具体例としては、下記化合物が挙げられる。また、架橋性染料は市販品を用いることもできる。例えば、K01(和光純薬工業(株)製、キサンテン化合物)、R56(和光純薬工業(株)製、キサンテン化合物)などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基である。
(色素多量体)
近赤外線透過黒色色材として用いる色素多量体は、架橋性基を有する染料化合物由来の構造を有する色素多量体(以下、色素多量体Aともいう)である。
色素多量体Aは、23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対して1g以上溶解することが好ましく、3g以上溶解することがより好ましい。
色素多量体Aは、1分子中に上述した架橋性染料由来の構造を2以上有することが好ましく、3以上有することがより好ましい。上限は、特に限定されないが、100以下とすることもできる。
色素多量体Aは、2価以上の連結基に染料化合物(架橋性染料)由来の構造が2以上結合してなる構造を有する化合物であることが好ましい。2価以上の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NR−(Rは水素原子または、炭素数1〜20のアルキル基を表す)、または、これらの組み合わせからなる基が挙げられる。
また、色素多量体Aは、染料化合物(架橋性染料)由来の繰り返し単位を有する化合物(ポリマー)であることが好ましい。色素多量体Aは、式(A)で表される繰り返し単位を含むポリマーであることが好ましい。色素多量体Aは、式(A)で表される繰り返し単位の割合が、色素多量体Aを構成する全繰り返し単位の10〜100質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が一層好ましい。上限は、95質量%以下がより好ましい。

式(A)中、X1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表す。DyeIは色素構造を表す。
式(A)中、X1は繰り返し単位の主鎖を表す。繰り返し単位の主鎖は、架橋性染料が有する架橋性基の種類により異なる。例えば、架橋性染料が、架橋性基としてエチレン性不飽和結合を有する化合物の場合、X1としては、下記(XX−1)〜(XX−24)で表される構造が挙げられ、(XX−1)または(XX−24)で表される構造が好ましい。
式中、*は、L1との連結手を表す。Meはメチル基を表す。また、(XX−18)および(XX−19)中のRは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基を表す。
1は単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、炭素数1〜30のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基、ヘテロ環連結基、−CH=CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−COO−、−NR−、−CONR−、−OCO−、−SO−、−SO2−およびこれらを2個以上連結して形成される連結基が挙げられる。ここで、Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましい。上限は、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。下限は、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。アリーレン基の炭素数は、6〜20がより好ましく、6〜12がさらに好ましい。ヘテロ環連結基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロ環連結基が有するヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子および硫黄原子が好ましい。ヘテロ環連結基が有するヘテロ原子の数は、1〜3個が好ましい。
DyeIが表す色素構造は、架橋性染料由来の色素構造である。例えば、キサンテン色素構造、ペリレン色素構造、アゾ色素構造およびビスベンゾフラノン色素構造が挙げられる。
式(A)で表される繰り返し単位は、下記の式(A−1)〜(A−3)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
式(A−1)において、R1Aは水素原子またはアルキル基を表し、L1Aは単結合または2価の連結基を表し、Dyelは色素構造を表す。式(A−2)において、L2Aは単結合または2価の連結基を表し、Dyelは色素構造を表す。式(A−3)において、R3Aはアルキル基またはアリール基を表し、L3Aは単結合または2価の連結基を表し、aは0または1を表し、Dyelは色素構造を表す。
式(A−1)〜(A−3)におけるL1A〜L3Aが表す2価の連結基は、式(A)におけるL1が表す2価の連結基と同義であり、好ましい範囲も同様である。式(A−1)〜(A−3)におけるDyelが表す色素構造は、式(A)におけるDyelが表す色素構造と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(A−1)におけるR1Aが表すアルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1が更に好ましい。R1Aは、水素原子またはメチル基が好ましい。
式(A−3)におけるアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。また、アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、直鎖が好ましい。式(A−3)におけるアリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
色素多量体Aは、式(A)で表される繰り返し単位の他に、他の繰り返し単位を含んでいてもよい。他の繰り返し単位は、架橋性基、酸基等の官能基を含んでいてもよい。また、他の繰り返し単位は、官能基を含んでいなくてもよい。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基、アルコキシシリル基及びメチロール基などが挙げられる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基などが挙げられる。
色素多量体Aが架橋性基を有する繰り返し単位を含む場合、架橋性基を有する繰り返し単位の割合は、色素多量体Aを構成する全繰り返し単位の0質量%超50質量%以下であることが好ましい。下限は、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。上限は、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
色素多量体Aが酸基を有する繰り返し単位を含む場合、酸基を有する繰り返し単位の割合は、色素多量体Aを構成する全繰り返し単位の0質量%超50質量%以下であることが好ましい。下限は、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。上限は、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
本発明の組成物において、近赤外線透過黒色色材の含有量は、組成物の全固形分の1〜60質量%であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。上限は50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
本発明の組成物が近赤外線透過黒色色材として架橋性染料を含有する場合、架橋性染料の含有量は、組成物の全固形分の1〜60質量%であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。上限は50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。また、近赤外線透過黒色色材の全質量中における架橋性染料の含有量は、10〜100質量%が好ましく、25〜100質量%がより好ましく、50〜100質量%がさらに好ましい。架橋性染料は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。架橋性染料を2種以上を併用する場合は合計量が上記範囲であることが好ましい。
本発明の組成物が近赤外線透過黒色色材として色素多量体Aを含有する場合、色素多量体Aの含有量は、組成物の全固形分の1〜60質量%であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。上限は50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。また、近赤外線透過黒色色材の全質量中における色素多量体Aの含有量は、10〜100質量%が好ましく、25〜100質量%がより好ましく、50〜100質量%がさらに好ましい。色素多量体Aは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。色素多量体Aを2種以上を併用する場合は合計量が上記範囲であることが好ましい。
本発明の組成物は近赤外線透過黒色色材として架橋性染料と色素多量体Aとを併用することも好ましい。両者を併用する場合、架橋性染料の含有量が、色素多量体A100質量部に対して、10〜90質量部であることが好ましく、25〜75質量部であることがより好ましく、40〜60質量部であることが更に好ましい。
(他の近赤外線透過黒色色材)
本発明の組成物は、近赤外線透過黒色色材として、上述した架橋性染料および上述した色素多量体A以外の近赤外線透過黒色色材(以下、他の近赤外線透過黒色色材ともいう)を含有してもよい。他の近赤外線透過黒色色材は、顔料タイプの近赤外線透過黒色色材や、染料タイプの近赤外線透過黒色色材であって、架橋性基を有さない染料化合物が挙げられる。他の近赤外線透過黒色色材としては、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ系化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。
ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010−534726号公報、特表2012−515233号公報、特表2012−515234号公報などに記載のものが挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。
ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。
アゾメチン化合物としては、特開平1−170601号公報、特開平2−34664号公報などに記載のものが挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
アゾ系化合物は、特に限定されないが、下記式(A−1)で表される化合物等を好適に挙げることができる。
ビスベンゾフラノン化合物は、下記一般式で表される化合物およびこれらの混合物であることが好ましい。

式中、R1およびR2はそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表し、R3およびR4はそれぞれ独立して置換基を表し、aおよびbはそれぞれ独立して0〜4の整数を表す。aが2以上の場合、複数のR3は、同一であってもよく、異なってもよく、複数のR3は結合して環を形成していてもよい。bが2以上の場合、複数のR4は、同一であってもよく、異なってもよく、複数のR4は結合して環を形成していてもよい。
ビスベンゾフラノン化合物の詳細については、特表2010−534726号公報の段落番号0014〜0037の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の組成物が他の近赤外線透過黒色色材を含有する場合、他の近赤外線透過黒色色材の含有量は、組成物の全固形分の1〜60質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。また、近赤外線透過黒色色材の全量中における他の近赤外線透過黒色色材の含有量は、5〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
また、本発明の組成物は、他の近赤外線透過黒色色材を実質的に含有しないこともできる。他の近赤外線透過黒色色材を実質的に含有しない場合とは、近赤外線透過黒色色材中における他の近赤外線透過黒色色材の含有量が3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが更に好ましい。
<<赤外線吸収剤>>
本発明の組成物は、赤外線吸収剤を含有することができる。赤外線透過フィルタにおいて、赤外線吸収剤は、透過する光(近赤外線)をより長波長側に限定する役割を有している。
本発明において、赤外線吸収剤としては、赤外領域(好ましくは、波長700nmを超え1300nm以下)の波長領域に極大吸収波長を有する化合物を好ましく用いることができる。赤外線吸収剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。
赤外線吸収剤としては、例えば、ピロロピロール化合物、銅化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジイミニウム化合物、遷移金属酸化物、スクアリリウム化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、ジチオール金属錯体化合物、クロコニウム化合物等が挙げられる。ピロロピロール化合物としては、例えば、特開2009−263614号公報の段落番号0016〜0058に記載の化合物、特開2011−68731号公報の段落番号0037〜0052に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。スクアリリウム化合物としては、例えば、特開2011−208101号公報の段落番号0044〜0049に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。シアニン化合物としては、例えば、特開2009−108267号公報の段落番号0044〜0045に記載の化合物、特開2002−194040号公報の段落番号0026〜0030に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ジイミニウム化合物としては、例えば、特表2008−528706号公報に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。フタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006−343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013−195480号公報の段落番号0013〜0029に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ナフタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジイミニウム化合物、スクアリリウム化合物及びクロコニウム化合物は、特開2010−111750号公報の段落番号0010〜0081に記載の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン系化合物は、例えば、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明では、赤外線吸収剤として、特開平07−164729号公報の段落番号0004〜0016に記載の化合物や、特開2002−146254号公報の段落番号0027〜0062に記載の化合物、特開2011−164583号公報の段落番号0034〜0067に記載のCuおよび/またはPを含む酸化物の結晶子からなり数平均凝集粒子径が5〜200nmである近赤外線吸収粒子を使用してもよい。これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、FD−25(山田化学工業(株)製)、IRA842(ナフタロシアニン化合物、Exiton社製)なども使用できる。
赤外線吸収剤として、無機微粒子を用いることもできる。無機微粒子は、赤外線遮蔽性がより優れる点で、金属酸化物微粒子または金属微粒子が好ましい。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)粒子、酸化アンチモンスズ(ATO)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、Alドープ酸化亜鉛(AlドープZnO)粒子、フッ素ドープ二酸化スズ(FドープSnO2)粒子、ニオブドープ二酸化チタン(NbドープTiO2)粒子などが挙げられる。金属微粒子としては、例えば、銀(Ag)粒子、金(Au)粒子、銅(Cu)粒子、ニッケル(Ni)粒子など挙げられる。また、無機微粒子としては酸化タングステン系化合物が使用できる。酸化タングステン系化合物は、セシウム酸化タングステンであることが好ましい。酸化タングステン系化合物の詳細については、特開2016−006476号公報の段落番号0080を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。無機微粒子の形状は特に制限されず、球状、非球状を問わず、シート状、ワイヤー状、チューブ状であってもよい。
本発明の組成物が赤外線吸収剤を含有する場合、赤外線吸収剤の含有量は、組成物の全固形分の1〜60質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。また、赤外線吸収剤の含有量は、近赤外線透過黒色色材100質量部に対し、10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましく、30〜80質量部が更に好ましい。赤外線吸収剤は1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。赤外線吸収剤を2種以上併用する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
<<有彩色着色剤>>
本発明の組成物は、有彩色着色剤を含有することが好ましい。なお、本明細書において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、極大吸収波長が400〜650nmの範囲に有する着色剤が好ましい。
有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。染料であることが好ましい。また、有彩色着色剤は、架橋性基を有する化合物であることが好ましい。
顔料は、有機顔料であることが好ましく、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)。
これら有機顔料は、単独若しくは種々組み合わせて用いることができる。
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。
有彩色着色剤として色素多量体を用いてもよい。色素多量体は、溶剤に溶解して用いられる染料であることが好ましいが、粒子を形成していてもよい。色素多量体が粒子である場合は、色素多量体を溶剤などに分散して用いられる。粒子状態の色素多量体は、例えば乳化重合によって得ることができ、例えば、特開2015−214682号公報に記載されている化合物および製造方法が具体例として挙げられる。また、色素多量体は、特開2011−213925号公報、特開2013−041097号公報、特開2015−028144号公報、特開2015−030742号公報等に記載されている化合物を用いることもできる。
架橋性基を有する有彩色着色剤としては、下記化合物が挙げられる。この化合物は、赤色染料である。
本発明の組成物は、有彩色着色剤としては赤色着色剤、青色着色剤および紫色着色剤から選ばれる少なくとも1種の着色剤を含有することが好ましく、赤色着色剤および/または青色着色剤を含有することがより好ましい。この態様によれば、可視領域の遮光性をより効果的に高めることができる。
本発明の組成物が、有彩色着色剤を含有する場合、有彩色着色剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分中0.1〜60質量%とすることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。上限は、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
有彩色着色剤の含有量は、近赤外線透過黒色色材の100質量部に対し、1〜100質量部が好ましく、30〜100質量部がより好ましい。また、有彩色着色剤の含有量は、上述した架橋性染料と上述した色素多量体Aとの合計100質量部に対し、1〜100質量部が好ましく、30〜100質量部がより好ましい。
有彩色着色剤は1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。有彩色着色剤を2種以上併用する場合、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
<<硬化性化合物>>
本発明の組成物は、硬化性化合物を含有する。硬化性化合物としては、重合性化合物、樹脂等が挙げられる。樹脂は、非架橋性の樹脂(架橋性基を有さない樹脂)であってもよく、架橋性の樹脂(架橋性基を有する樹脂)であってもよい。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基、アルコキシシリル基などが挙げられる。本発明では、硬化性化合物として、重合性化合物(好ましくはラジカル重合性化合物)と樹脂とを併用することが好ましい。また、樹脂は、後述するアルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。なお、本発明において、硬化性化合物は、近赤外線透過黒色色材以外の成分である。
本発明の組成物において、硬化性化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、15質量%以上が特に好ましい。上限は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。
<<<重合性化合物>>>
重合性化合物は、モノマー、ポリマーのいずれの形態であってもよいが、モノマーが好ましい。モノマータイプの重合性化合物は、分子量が100〜3000であることが好ましい。上限は、2000以下が好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上が好ましく、250以上が更に好ましい。また、重合性化合物は、分子量分布を実質的に有さない化合物であることも好ましい。ここで、分子量分布を実質的に有さないとは、化合物の分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が、1.0〜1.5であることが好ましく、1.0〜1.3がより好ましい。重合性化合物は、ラジカルの作用により重合可能な化合物が好ましい。すなわち、重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する基を1個以上有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物がより好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基を3個以上有する化合物が更に好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基の個数の上限は、たとえば、15個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、スチリル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。重合性化合物は、3〜15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3〜6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
重合性化合物の例としては、特開2013−253224号公報の段落番号0033〜0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。上記化合物としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、NKエステルATM−35E;新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては、KAYARAD D−330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、KAYARAD D−320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D−310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A−DPH−12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。また、特開2013−253224号公報の段落番号0034〜0038の重合性化合物の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2012−208494号公報の段落番号0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0585)に記載の重合性モノマー等が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としては M−460;東亞合成(株)製)が好ましい。ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、A−TMMT)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)も好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。例えば、RP−1040(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
重合性化合物は、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。酸基を有する重合性化合物は、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を付加した重合性化合物がより好ましく、上述のエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールのうちの少なくとも一方である化合物が更に好ましい。市販品としては、アロニックス M−510、M−520(東亞合成(株)製)、CBX−0、CBX−1(新中村化学工業(株)製)などが挙げられる。酸基を有する重合性化合物の酸価は、0.1〜40mgKOH/gが好ましい。下限は5mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、30mgKOH/g以下がより好ましい。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像溶解特性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。さらには、硬化性に優れる。
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物も好ましい態様である。
カプロラクトン構造を有する化合物としては、分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸及びε−カプロラクトンをエステル化することにより得られる、ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。カプロラクトン構造を有する化合物は、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0153〜0170の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR−494、日本化薬(株)製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA−60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA−330などが挙げられる。
重合性化合物は、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性(メタ)アクリレートも好ましい。市販品としては、アロニックス M−315、M−313(東亞合成(株)製)、NKエステル A−9300(新中村化学工業(株)製)、SR368(サートマー社製)などが挙げられる。チタニルフタロシアニン顔料と組み合わせて用いる重合性化合物としては、耐熱性の観点からSP値(Solubility Parameter)が高いほうが好ましい。SP値の高い重合性化合物としてはアロニックスM−315、M−313(東亞合成(株)製)が挙げられる。
重合性化合物としては、特公昭48−41708号公報、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造又はスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによって、非常に感光スピードに優れた組成物を得ることができる。
市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、UA−7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA−40H(日本化薬(株)製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社化学(株)製)などが挙げられる。
組成物中における重合性化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1〜50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。重合性化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<<樹脂>>>
本発明の組成物は、硬化性化合物として樹脂を含有することができる。樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂などが挙げられる。樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下がより好ましく、500,000以下が更に好ましい。下限は、3,000以上がより好ましく、5,000以上が更に好ましい。樹脂の含有量は、組成物の全固形分の10〜80質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。組成物は、樹脂を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。樹脂を2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明の組成物は、樹脂としてアルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、現像性およびパターン形成性が向上する。
アルカリ可溶性樹脂の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)が5,000〜100,000であることが好ましい。数平均分子量(Mn)は、1,000〜20,000であることが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ溶解を促進する基を有する樹脂の中から適宜選択することができる。アルカリ溶解を促進する基(以下、酸基ともいう)としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシ基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
アルカリ可溶性樹脂としては、耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、側鎖にカルボキシ基を有するポリマーが好ましい。具体例としては、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシ基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有するポリマーに酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。他のモノマーは、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を用いることもできる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
膜の架橋効率を向上させるために、重合性基を有するアルカリ可溶性樹脂を使用してもよい。重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。重合性基を有したアルカリ可溶性樹脂は、重合性基を側鎖に含有したアルカリ可溶性樹脂等が有用である。重合性基を含有するアルカリ可溶性樹脂としては、ダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、Photomer6173(COOH含有 polyurethane acrylic oligomer.Diamond Shamrock Co.,Ltd.製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、サイクロマーPシリーズ(例えば、ACA230AA)、プラクセル CF200シリーズ(いずれも(株)ダイセル製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー株式会社製)、アクリキュア−RD−F8(日本触媒社製)などが挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂は、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
アルカリ可溶性樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分を重合してなるポリマーを含むことも好ましい。
式(ED1)中、R1およびR2はそれぞれ独立して水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。

式(ED2)中、Rは水素原子または炭素数1〜30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010−168539号公報の記載を参酌できる。
式(ED1)中、R1およびR2で表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、tert−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、tert−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシ基で置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。
エーテルダイマーの具体例としては、特開2013−29760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
アルカリ可溶性樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。

式(X)において、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数2〜10のアルキレン基を表し、R3は水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは1〜15の整数を表す。
式(X)において、R2のアルキレン基の炭素数は2〜3が好ましい。R3のアルキル基の炭素数は1〜20であるが、より好ましくは1〜10であり、R3のアルキル基はベンゼン環を含んでもよい。R3で表されるベンゼン環を含むアルキル基としては、ベンジル基、2−フェニル(イソ)プロピル基等を挙げることができる。
アルカリ可溶性樹脂の具体例としては、以下が挙げられる。下記樹脂中、主鎖に付記した数値はモル比である。
アルカリ可溶性樹脂は、特開2012−208494号公報の段落番号0558〜0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の0685〜0700)の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。さらに、特開2012−32767号公報の段落番号0029〜0063に記載の共重合体(B)および実施例で用いられているアルカリ可溶性樹脂、特開2012−208474号公報の段落番号0088〜0098に記載のバインダー樹脂および実施例で用いられているバインダー樹脂、特開2012−137531号公報の段落番号0022〜0032に記載のバインダー樹脂および実施例で用いられているバインダー樹脂、特開2013−024934号公報の段落番号0132〜0143に記載のバインダー樹脂および実施例で用いられているバインダー樹脂、特開2011−242752号公報の段落番号0092〜0098に記載のバインダー樹脂および実施例で用いられているバインダー樹脂、特開2012−032770号公報の段落番号0030〜0072に記載のバインダー樹脂を用いることもできる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、30〜500mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上がより好ましく、70mgKOH/g以上が更に好ましい。上限は、400mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下が更に好ましく、150mgKOH/g以下が更により好ましく、120mgKOH/g以下が特に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1〜20質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、2質量%以上が更により好ましく、3質量%以上が特に好ましい。上限は、12質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。本発明の組成物は、アルカリ可溶性樹脂を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
(その他の樹脂)
本発明の組成物は、上述したアルカリ可溶性樹脂以外(その他の樹脂ともいう)を含有することができる。その他の樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。環状オレフィン樹脂としては、耐熱性向上の観点からノルボルネン樹脂が好ましく用いることができる。ノルボルネン樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製のARTONシリーズ(例えば、ARTON F4520)などが挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体としては、市場から入手可能な製品では、マープルーフG−0150M、G−0105SA、G−0130SP、G−0250SP、G−1005S、G−1005SA、G−1010S、G−2050M、G−01100、G−01758(日油(株)製)等が挙げられる。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、310〜3300g/eqが好ましく、310〜1700g/eqがより好ましく、310〜1000g/eqが更に好ましい。エポキシ樹脂は1種又は2種以上を混合して用いても良い。
エポキシ樹脂は、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、以下のエポキシ樹脂が挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、JER827、JER828、JER834、JER1001、JER1002、JER1003、JER1055、JER1007、JER1009、JER1010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、JER806、JER807、JER4004、JER4005、JER4007、JER4010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC(株)製)、LCE−21、RE−602S(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂として、JER152、JER154、JER157S70、JER157S65(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON N−740、EPICLON N−770、EPICLON N−775(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−690、EPICLON N−695(以上、DIC(株)製)、EOCN−1020(日本化薬(株)製)等が挙げられる。脂肪族系エポキシ樹脂として、ADEKA RESIN EP−4080S、同EP−4085S、同EP−4088S(以上、(株)ADEKA製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、(株)ダイセル製)、デナコール EX−212L、EX−214L、EX−216L、EX−321L、EX−850L(以上、ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。その他にも、ADEKA RESIN EP−4000S、同EP−4003S、同EP−4010S、同EP−4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC−2000、NC−3000、NC−7300、XD−1000、EPPN−501、EPPN−502(以上、(株)ADEKA製)、JER1031S(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
エポキシ樹脂の含有量は、組成物の全固形分に対して、1〜30質量%が好ましい。下限は、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましい。上限は、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。本発明の組成物は、エポキシ樹脂を、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、組成物がエポキシ樹脂と重合性化合物とを含む場合、重合性化合物と、エポキシ樹脂との質量比は、重合性化合物:エポキシ樹脂=100:1〜100:400が好ましく、100:1〜100:100がより好ましい。
<<<多官能チオール化合物>>>
本発明の組成物は、重合性化合物の反応を促進させることなどを目的として、分子内に2個以上のメルカプト基を有する多官能チオール化合物を含んでいてもよい。多官能チオール化合物は、2級のアルカンチオール類であることが好ましく、特に下記一般式(T1)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
一般式(T1)

(式(T1)中、nは2〜4の整数を表し、Lは2〜4価の連結基を表す。)
多官能チオール化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して0.3〜8.9質量%が好ましく、0.8〜6.4質量%がより好ましい。多官能チオール化合物は安定性、臭気、解像性、現像性、密着性等の改良を目的として添加してもよい。
<<光重合開始剤>>
本発明の組成物は、硬化性化合物として重合性化合物を用いる場合、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられる。トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報に記載の化合物、独国特許3337024号明細書に記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報に記載の化合物、特開平5−281728号公報に記載の化合物、特開平5−34920号公報に記載の化合物、米国特許第4212976号明細書に記載の化合物などが挙げられる。
光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3−アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。特に、本発明の組成物を固体撮像素子に使用する場合には、微細なパターンをシャープな形状で形成する必要があるために、硬化性とともに未露光部に残渣がなく現像されることが重要である。このような観点からは、光重合開始剤としてはオキシム化合物を使用することが特に好ましい。特に、固体撮像素子において微細なパターンを形成する場合、硬化用露光にステッパー露光機を用いるが、この露光機はハロゲンにより損傷される場合があり、光重合開始剤の添加量も低く抑える必要があるため、これらの点を考慮すれば、光重合開始剤としては、オキシム化合物を用いるのが特に好ましい。光重合開始剤の具体例としては、特開2013−29760号公報の段落番号0265〜0268を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
光重合開始剤としては、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、及び、アシルホスフィン化合物も好適に用いることができる。例えば、特開平10−291969号公報に記載のα−アミノケトン化合物、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィン化合物も用いることができる。α−ヒドロキシケトン化合物としては、IRGACURE−184、DAROCUR−1173、IRGACURE−500、IRGACURE−2959、IRGACURE−127(以上、BASF社製)を用いることができる。α−アミノケトン化合物としては、IRGACURE−907、IRGACURE−369、IRGACURE−379、及び、IRGACURE−379EG(以上、BASF社製)を用いることができる。α−アミノケトン化合物は、特開2009−191179号公報に記載の化合物を用いることができる。アシルホスフィン化合物としては、市販品であるIRGACURE−819やDAROCUR−TPO(以上、BASF社製)を用いることができる。
光重合開始剤は、オキシム化合物を用いることが好ましい。オキシム化合物の具体例としては、特開2001−233842号公報、特開2000−80068号公報、特開2006−342166号公報、特開2016−21012号公報に記載の化合物などが挙げられる。本発明において好適に用いることのできるオキシム化合物としては、例えば、3−ベンゾイルオキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156−162)、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202−232)、特開2000−66385号公報、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報、特開2006−342166号公報に記載の化合物等も挙げられる。
市販品ではIRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02、IRGACURE−OXE03、IRGACURE−OXE04(以上、BASF社製)も好適に用いられる。TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)、アデカアークルズNCI−930((株)ADEKA製)、アデカオプトマーN−1919((株)ADEKA製、特開2012−14052号公報に記載の光重合開始剤2)も用いることができる。
上記以外のオキシム化合物として、カルバゾール環のN位にオキシムが連結した特表2009−519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号公報に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010−15025号公報及び米国特許公開2009−292039号公報に記載の化合物、国際公開WO2009/131189号公報に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物、405nmに吸収極大を有しg線光源に対して良好な感度を有する特開2009−221114号公報に記載の化合物などを用いてもよい。
オキシム化合物は、下記式(OX−1)で表される化合物が好ましい。なお、オキシムのN−O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であっても、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
式(OX−1)中、RおよびBは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。式(OX−1)の詳細については、特開2013−029760号公報の段落番号0276〜0304の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報に記載の化合物、特表2014−500852号公報に記載の化合物24、36〜40、特開2013−164471号公報に記載の化合物(C−3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム開始剤を用いることもできる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013−114249号公報の段落番号0031〜0047、特開2014−137466号公報の段落番号0008〜0012及び0070〜0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007〜0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製))が挙げられる。
光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014−137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載されている化合物OE−01〜OE−75が挙げられる。
オキシム化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。

オキシム化合物は、350nm〜500nmの波長領域に吸収極大を有する化合物が好ましく、360nm〜480nmの波長領域に吸収極大を有する化合物がより好ましい。オキシム化合物は、365nm及び405nmの吸光度が高い化合物が好ましい。
オキシム化合物の365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000〜300,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましく、5,000〜200,000であることが更に好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary−5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
光重合開始剤は、オキシム化合物とα−アミノケトン化合物とを含むことも好ましい。両者を併用することで、現像性が向上し、矩形性に優れたパターンを形成しやすい。オキシム化合物とα−アミノケトン化合物とを併用する場合、オキシム化合物100質量部に対して、α−アミノケトン化合物が50〜600質量部が好ましく、150〜400質量部がより好ましい。
光重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本発明の組成物は、光重合開始剤を、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<溶剤>>
本発明の組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はないが、組成物の塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。具体例としては、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。有機溶剤の詳細は、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0223の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合があり、例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下が好ましく、10質量ppm以下がより好ましく、1質量ppm以下が更に好ましい。
有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機溶剤を2種以上組み合わせて用いる場合、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液が好ましい。
金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラクロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
溶剤は、異性体(同じ原子数で異なる構造の化合物)が含まれていてもよい。異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
溶剤の含有量は、組成物の全量に対し、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、25〜75質量%であることが更に好ましい。
<<重合禁止剤>>
本発明の組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、パラメトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−パラクレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。中でも、パラメトキシフェノールが好ましい。
重合禁止剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01〜5質量%が好ましい。
<<シランカップリング剤>>
本発明の組成物は、更に、シランカップリング剤を含有することができる。なお、本発明におけるシランカップリング剤は、上述した近赤外線透過黒色色材とは異なる成分である。
本明細書において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。加水分解性基以外の官能基は、樹脂との間で相互作用もしくは結合を形成して親和性を示す基が好ましい。例えば、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。
シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、パラスチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。上記以外にアルコキシオリゴマーを用いることができる。下記化合物を用いることもできる。
市販品としては、信越シリコーン社製のKBM−13、KBM−22、KBM−103、KBE−13、KBE−22、KBE−103、KBM−3033、KBE−3033、KBM−3063、KBM−3066、KBM−3086、KBE−3063、KBE−3083、KBM−3103、KBM−3066、KBM−7103、SZ−31、KPN−3504、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−9659、KBE−585、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007、X−40−1053、X−41−1059A、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1818、X−41−1810、X−40−2651、X−40−2655A、KR−513、KC−89S,KR−500、X−40−9225、X−40−9246、X−40−9250、KR−401N、X−40−9227、X−40−9247、KR−510、KR−9218、KR−213、X−40−2308、X−40−9238などが挙げられる。シランカップリング剤として、特開2009−288703号公報の段落番号0018〜0036に記載の化合物、特開2009−242604号公報の段落番号0056〜0066に記載の化合物、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0229〜0236に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
シランカップリング剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
<<<界面活性剤>>>
本発明の組成物は、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。界面活性剤は、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0238〜0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上し、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。フッ素系界面活性剤を含有する組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合、被塗布面と塗布液との界面張力が低下して、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行うことができる。
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3〜40質量%が好適であり、5〜30質量%がより好ましく、7〜25質量%が更に好ましい。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
フッ素系界面活性剤として具体的には、特開2014−41318号公報の段落番号0060〜0064(対応する国際公開2014/17669号公報の段落番号0060〜0064)等に記載の界面活性剤、特開2011−132503号公報の段落番号0117〜0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−1068、同SC−381、同SC−383、同S−393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造で、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS−21が挙げられ、これらを用いることができる。
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011−89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。

上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010−164965号公報の段落番号0050〜0090および段落番号0289〜0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS−101、RS−102、RS−718K、RS−72−K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015−117327号公報の段落番号0015〜0158に記載の化合物を用いることもできる。
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW−101、NCW−1001、NCW−1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD−6112、D−6112−W、D−6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.001〜2.0質量%が好ましく、0.005〜1.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。2種類以上用いる場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<その他成分>>
本発明の組成物は、熱重合開始剤、熱重合成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、低分子量有機カルボン酸などの現像性向上剤、その他充填剤、酸化防止剤、凝集防止剤などの各種添加物を含有することができる。紫外線吸収剤は、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、トリアジン化合物等の紫外線吸収剤を用いることができ、具体例としては特開2013−68814号に記載の化合物が挙げられる。ベンゾトリアゾール化合物としてはミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011−90147号公報の段落番号0042に記載の化合物)、チオエーテル化合物などを用いることができる。市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−50F、AO−60、AO−60G、AO−80、AO−330など)が挙げられる。
用いる原料等により組成物中に金属元素が含まれることがあるが、欠陥発生抑制等の観点で、組成物中の第2族元素(カルシウム、マグネシウム等)の含有量は50質量ppm以下であることが好ましく、0.01〜10質量ppmがより好ましい。組成物中の無機金属塩の総量は100質量ppm以下であることが好ましく、0.5〜50質量ppmがより好ましい。
<組成物の調製方法>
本発明の組成物は、前述の成分を混合して調製できる。
組成物の調製に際しては、各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解または分散した後に逐次配合してもよい。配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。例えば、全成分を同時に溶剤に溶解または分散して組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物として調製してもよい。
本発明の組成物が顔料などの粒子を含む場合は、粒子を分散させるプロセスを含むことが好ましい。粒子を分散させるプロセスにおいて、粒子の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。サンドミル(ビーズミル)における粒子の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。粒子を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015−157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。粒子を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015−194521号公報、特開2012−046629号公報の記載を参酌できる。
組成物の調製にあたり、異物の除去又は欠陥の低減などの目的で、組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン−6、ナイロン−6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.01〜7.0μm程度が適しており、0.01〜3.0μm程度が好ましく、0.05〜0.5μm程度がより好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物を確実に除去できる。ファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。具体的には、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジが挙げられる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。
上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社(DFA4201NXEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、第1のフィルタと同様の素材等で形成されたものを使用することができる。
第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
組成物の全固形分(固形分濃度)は、適用方法により変更されるが、例えば、1〜50質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上がより好ましい。上限は30質量%以下がより好ましい。
本発明の組成物は、乾燥後の膜厚が1μm、2μm、3μm、4μmまたは5μmの膜を製膜した際に、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜700nmの範囲における最大値が20%以下であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1100〜1300nmの範囲における最小値が70%以上である分光特性を満たしていることが好ましい。波長400〜700nmの範囲における最大値は、15%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましい。波長1100〜1300nmの範囲における最小値は、75%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。
本発明の組成物は、以下の(1)〜(3)のいずれかの分光特性を満たしていることがより好ましい。
(1)乾燥後の膜厚が1μm、2μm、3μm、4μmまたは5μmの膜を製膜した際に、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜750nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長900〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。
(2):乾燥後の膜厚が1μm、2μm、3μm、4μmまたは5μmの膜を製膜した際に、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜830nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。
(3):乾燥後の膜厚が1μm、2μm、3μm、4μmまたは5μmの膜を製膜した際に、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜950nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1100〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。
<パターン形成方法>
次に、本発明の組成物を用いたパターン形成方法について説明する。パターン形成方法は、本発明の組成物を用いて支持体上に組成物層を形成する工程と、フォトリソグラフィ法またはドライエッチング法により、組成物層に対してパターンを形成する工程と、を含むことが好ましい。
フォトリソグラフィ法でのパターン形成は、本発明の組成物を用いて支持体上に組成物層を形成する工程と、組成物層をパターン状に露光する工程と、未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含むことが好ましい。
ドライエッチング法でのパターン形成は、本発明の組成物を用いて支持体上に組成物層を形成し、硬化して硬化物層を形成する工程と、硬化物層上にフォトレジスト層を形成する工程と、露光および現像することによりフォトレジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程と、レジストパターンをエッチングマスクとして硬化物層をドライエッチングしてパターンを形成する工程とを含むことが好ましい。以下、各工程について説明する。
<<組成物層を形成する工程>>
組成物層を形成する工程では、本発明の組成物を用いて、支持体上に組成物層を形成する。
支持体への組成物の適用方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009−145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット−特許に見る無限の可能性−、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された特許公報に記載の方法(特に115ページ〜133ページ)や、特開2003−262716号公報、特開2003−185831号公報、特開2003−261827号公報、特開2012−126830号公報、特開2006−169325号公報などに記載の方法が挙げられる。
支持体上に形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスによりパターンを形成する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10〜3000秒が好ましく、40〜2500秒がより好ましく、80〜2200秒が更に好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
<<露光工程>>
次に、組成物層を、パターン状に露光する(露光工程)。例えば、組成物層に対し、ステッパー等の露光装置を用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等の紫外線が好ましく(特に好ましくはi線)用いられる。照射量(露光量)は、例えば、0.03〜2.5J/cm2が好ましく、0.05〜1.0J/cm2がより好ましく、0.08〜0.5J/cm2が更に好ましい。
露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(好ましくは15体積%以下、より好ましくは5体積%以下、更に好ましくは実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(好ましくは22体積%以上、より好ましくは30体積%以上、更に好ましくは50体積%以上)で露光してもよい。露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2〜100000W/m2(好ましくは5000W/m2以上、より好ましくは15000W/m2以上、更に好ましくは35000W/m2以上)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
<<現像工程>>
次に、未露光部を現像除去してパターンを形成する。未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが支持体上に残る。
現像液としては、下地の固体撮像素子や回路などにダメージを与えないアルカリ現像液が望ましい。
現像液の温度は、例えば、20〜30℃が好ましい。現像時間は、20〜180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、更に新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。現像液は、これらのアルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましく使用される。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。現像液には、界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例としては、上述した組成物で説明した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
現像工程後、乾燥を施した後に、加熱処理(ポストベーク)又は後露光により硬化する硬化工程を行ってもよい。
ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。ポストベークでの加熱温度は、例えば100〜240℃が好ましく、200〜240℃がより好ましい。発光光源として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いた場合や、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合、加熱温度は150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましく、90℃以下が特に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができる。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、又は高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
後露光は、g線、h線、i線、KrFやArFなどのエキシマレーザ、電子線、X線等により行うことができるが、既存の高圧水銀灯で20〜50℃程度の低温で行うことが好ましい。照射時間は、10秒〜180秒が好ましく、30秒〜60秒がより好ましい。後露光と後加熱とを併用する場合、後露光を先に実施することが好ましい。
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、支持体上に形成した組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、得られた硬化物層を、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとしてエッチングガスを用いて行うことができる。フォトレジスト層の形成においては、更にプリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジストの形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013−064993号公報の段落番号0010〜0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
以上説明した各工程を行うことにより、本発明の特定の分光特性を有する画素のパターンを形成できる。本発明の特定の分光特性を有する画素だけで赤外線透過フィルタを構成してもよいし、本発明の特定の分光特性を有する画素と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒、無色等の他の画素とを組み合わせて赤外線透過フィルタを構成してもよい。本発明の特定の分光特性を有する画素と、他の色の画素とを組み合わせて赤外線透過フィルタを構成する場合は、本発明の特定の分光特性を有する画素のパターンを先に形成してもよく、上述の他の画素のパターンを形成した後に、本発明の特定の分光特性を有する画素のパターンを形成してもよい。
<硬化膜>
次に、本発明における硬化膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の組成物を硬化して形成されるものである。本発明の硬化膜は、赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。
本発明の硬化膜は、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜700nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1100〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であることが好ましい。この態様によれば、波長400〜700nmの範囲の光を遮光して、可視光線由来のノイズが少ない状態で赤外線を透過可能な膜とすることができる。
本発明の硬化膜は、以下の(1)〜(3)のいずれかの分光特性を有することが好ましい。本明細書において、硬化膜の分光特性は、紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 U−4100)を用いて、波長300〜1300nmの範囲において透過率を測定した値を表す。
(1):膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜750nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長900〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。この態様によれば、波長400〜750nmの範囲の光を遮光して、可視光線由来のノイズが少ない状態で波長900nm以上の赤外線を透過可能な膜とすることができる。
(2):膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜830nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。この態様によれば、波長400〜830nmの範囲の光を遮光して、可視光線由来のノイズが少ない状態で波長1000nm以上の赤外線を透過可能な膜とすることができる。
(3):膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜950nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1100〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。この態様によれば、波長400〜950nmの範囲の光を遮光して、可視光線由来のノイズが少ない状態で波長1100nm以上の赤外線を透過可能な膜とすることができる。
上記(1)の分光特性を有する硬化膜は、近赤外線透過黒色色材を含む本発明の組成物を用いて形成できる。更に有彩色着色剤を含有させることで、上記(1)の分光を好ましい範囲に調整しやすい。
上記(2)の分光特性を有する硬化膜は、近赤外線透過黒色色材の他にさらに赤外線吸収剤を含む本発明の組成物を用いて形成できる。赤外線吸収剤は、波長800nm以上900nm未満の範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましい。また、更に有彩色着色剤を含有させることで、上記(2)の分光を好ましい範囲に調整しやすい。
上記(3)の分光特性を有する硬化膜は、近赤外線透過黒色色材の他にさらに赤外線吸収剤を含む本発明の組成物を用いて形成できる。赤外線吸収剤は、波長900nm以上1000nm未満の範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましい。また、更に有彩色着色剤および/または波長800nm以上900nm未満の範囲に極大吸収波長を有する化合物を含有させることで、上記(3)の分光を好ましい範囲に調整しやすい。
本発明の硬化膜の膜厚は、特に限定はないが、0.1〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。
<赤外線透過フィルタ>
次に、本発明の赤外線透過フィルタについて説明する。本発明の赤外線透過フィルタは、本発明の硬化膜を有する。
本発明の赤外線透過フィルタは、支持体に積層して用いることが好ましい。支持体としては、例えば、シリコン、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスなどの材質で構成された基板が挙げられる。支持体には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。支持体には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。支持体には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
本発明の赤外線透過フィルタは、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、上述の組成物で説明した有彩色着色剤が挙げられる。着色組成物は、樹脂、重合性化合物、光重合開始剤、界面活性剤、溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤などを更に含有することができる。これらの詳細については、上述の組成物で説明した材料が挙げられ、それらを用いることができる。
本発明の赤外線透過フィルタは、本発明の膜または積層体の画素と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒および無色から選ばれる画素とを有する態様も好ましい。
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、本発明の硬化膜を有する。本発明の固体撮像素子の構成は、本発明の硬化膜体を有し、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
支持体上に、固体撮像素子(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明の硬化膜を有する構成である。さらに、デバイス保護膜上であって、本発明の硬化膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明の硬化膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、本発明の硬化膜を有する。本発明の赤外線センサの構成は、本発明の硬化膜を有し、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。
以下、本発明の赤外線センサの一実施形態について、図1を用いて説明する。
図1に示す赤外線センサ100において、符号110は、固体撮像素子である。
固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、赤外線カットフィルタ111とカラーフィルタ112を有する。
赤外線カットフィルタ111は、可視光線領域の光(例えば、波長400〜700nmの光)を透過させ、赤外領域の光(例えば、波長800〜1300nmの光の少なくとも一部、好ましくは波長900〜1200nmの光の少なくとも一部、更に好ましくは波長900〜1000nmの光の少なくとも一部)を遮蔽するフィルタである。
カラーフィルタ112は、可視光線領域における特定波長の光を透過及び吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。
赤外線透過フィルタ113と固体撮像素子110との間には赤外線カットフィルタ111が形成されていない領域114が設けられている。領域114には、赤外線透過フィルタ113を透過した波長の光が透過可能な樹脂層(例えば、透明樹脂層など)が配置されている。
赤外線透過フィルタ113は、可視光線遮蔽性を有し、かつ、特定波長の赤外線を透過させるフィルタであって、本発明の硬化膜で構成されている。
カラーフィルタ112および赤外線透過フィルタ113の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
図1に示す実施形態では、領域114に樹脂層が配置されているが、領域114に赤外線透過フィルタ113を形成してもよい。すなわち、固体撮像素子110上に、赤外線透過フィルタ113を形成してもよい。
図1に示す実施形態では、カラーフィルタ112の膜厚と、赤外線透過フィルタ113の膜厚が同一であるが、両者の膜厚は異なっていてもよい。
図1に示す実施形態では、カラーフィルタ112が、赤外線カットフィルタ111よりも入射光hν側に設けられているが、赤外線カットフィルタ111と、カラーフィルタ112との順序を入れ替えて、赤外線カットフィルタ111を、カラーフィルタ112よりも入射光hν側に設けてもよい。
図1に示す実施形態では、赤外線カットフィルタ111とカラーフィルタ112は隣接して積層しているが、両フィルタは必ずしも隣接している必要はなく、間に他の層が設けられていても良い。
この赤外線センサによれば、画像情報をリアルタイムに取り込むことができるため、動きを検知する対象を認識したモーションセンシングなどが可能である。更には、距離情報を取得できるため、3D情報を含んだ画像の撮影等も可能である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
<組成物の調製>
(組成物1;実施例1)
樹脂A1を9.0質量部と、色材D1を2.0質量部と、重合性化合物としてKAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)を1.5質量部と、光重合開始剤を1.5質量部と、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を86.0質量部とを混合し、撹拌した後、孔径0.5μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、組成物1を得た。
(組成物2;実施例2)
色材D1のかわりに色材D2を用いた以外は組成物1と同様にして、組成物2を得た。
(組成物3;実施例3)
色材D1のかわりに色材D3を用いた以外は組成物1と同様にして、組成物3を得た。
(組成物4;実施例4)
樹脂A2を9.0質量部と、色材D4を2.0質量部と、重合性化合物としてKAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)を1.5質量部と、光重合開始剤を1.5質量部と、溶剤としてPGMEAを86.0質量部とを混合し、撹拌した後、孔径0.5μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(社)製)でろ過して、組成物4を得た。
(組成物5;実施例5)
樹脂A2を9.0質量部と、色材D5を0.5質量部と、色材D3を1.5質量部と、重合性化合物としてKAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)を1.5質量部と、光重合開始剤を1.5質量部と、溶剤としてPGMEAを86.0質量部とを混合し、撹拌した後、孔径0.5μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、組成物5を得た。
(組成物6;実施例6)
樹脂A1を8.0質量部と、樹脂A3を1.0質量部と、色材D1を2.0質量部と、重合性化合物としてKAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)を1.5質量部と、光重合開始剤を1.5質量部と、PGMEAを70.0質量部と、塩化メチレンを16.0質量部とを混合し、撹拌した後、孔径0.5μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、組成物6を得た。
(組成物7;実施例7)
樹脂A1を8.0質量部と、樹脂A4を1.0質量部と、色材D3を2.0質量部と、色材D7を0.2質量部と、重合性化合物としてKAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)を1.5質量部と、光重合開始剤を1.5質量部と、PGMEAを86.0質量部とを混合し、撹拌した後、孔径0.5μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、組成物7を得た。
(組成物8;比較例1)
色材D1のかわりに色材D6を用いた以外は組成物1と同様にして、組成物8を得た。
(組成物9;比較例2)
色材D6の含有量を0.5質量部に変更した以外は組成物8と同様にして、組成物9を得た。
(組成物10;比較例3)
黒色顔料(BASF社製 Irgaphor Black S0100CF)を600.0gと、アクリル樹脂A(メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体(質量比30/40/30、Mw=10,000、酸価=110mgKOH/g))のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート35質量%溶液を321.4gと、分散剤(BYK21116;ビックケミー社製)を93.8gと、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)を1984.8gとをタンクに加え、ホモミキサー(特殊機化製)で1時間撹拌し、予備分散液1を得た。その後、直径0.10mmのジルコニアビーズ(東レ製)を70%充填した遠心分離セパレーターを具備した、ウルトラアペックスミル(寿工業製)に予備分散液1を供給し、回転速度8m/sで2時間分散を行い、固形分濃度25質量%、顔料/樹脂(質量比)=80/20の黒色顔料分散液1を得た。
PGMEA29.52gに、光重合開始剤としてアデカアークルズ(登録商標)NCI−831を0.38g添加し、固形分が溶解するまで撹拌した。さらに、アクリル樹脂AのPGMEA35質量%溶液を16.03g、重合性化合物としてKAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)を3.38g、界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤BYK333のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)10質量%溶液を0.24g添加し、室温にて1時間撹拌し、感光性レジストを得た。この感光性レジストに黒色顔料分散液1を10.46g添加することで組成物10を調製した。
色材D1〜D7:下記構造の化合物。D1、D3、D4は、架橋性基を有する染料化合物からなる近赤外線透過黒色色材である。D2は、D1を重合してなる色素多量体である(式中のnは5、Mw=3000)。D5は、架橋性基を有する染料化合物からなる赤色着色剤である。D6は、架橋性基を有さない染料化合物からなる近赤外線透過黒色色材である。色材D1〜D7は、23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対して3g以上溶解する化合物である。

樹脂A1:下記構造の樹脂(Mw=40,000)。主鎖に付記した数値はモル比である。
樹脂A2:下記構造の樹脂(Mw=14,000)。主鎖に付記した数値はモル比である。
樹脂A3:ARTON F4520(JSR(株)製)、ノルボルネン樹脂)
樹脂A4:マープルーフG−0150M(日油(株)製、メタクリル酸グリシジル骨格ランダムポリマー)

光重合開始剤:下記構造の化合物
[吸光度測定]
各組成物を、ポストベーク後の膜厚が1.1μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて100℃、120秒間加熱して乾燥した。乾燥後、さらに、ホットプレートを用いて220℃、300秒間加熱(ポストベーク)して硬化膜を形成した。硬化膜を形成したガラス基板を、紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 U−4100)を用いて、波長300〜1300nmの範囲の透過率、波長400〜700nmの範囲における吸光度の最小値A、波長1100〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bを測定した。各組成物の分光特性A/Bの値を下記表に示す。
[パターン形成]
各組成物を、ポストベーク後の膜厚が1.1μmとなるようにシリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレートを用いて100℃、120秒間加熱して乾燥した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、1.1μm四方の正方形ピクセルパターンが形成されるフォトマスクを用いて50から750mJ/cm2まで50mJ/cm2ずつ上昇させて、上記正方形ピクセルパターンを解像する最適露光量を決定し、この最適露光量にて露光を行った。その後、露光された塗布膜が形成されているシリコンウェハをスピン・シャワー現像機(DW−30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、CD−2060(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行い、シリコンウェハ上にパターンを形成した。パターンが形成されたシリコンウェハを純水でリンス処理を行い、その後スピン乾燥した。次いで、220℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、パターンを有するシリコンウェハ(赤外線透過フィルタ)を得た。
<耐溶剤性評価>
赤外線透過フィルタをPGMEAに300秒浸漬し、PGMEAに浸漬前後の波長400〜700nmの光の透過率(単位%)を測定し、下記式により透過率の変化を求めた。なお、透過率の変化は、PGMEAに浸漬前後の透過率の変化が最も大きい波長における透過率にて評価した。
透過率の変化=|(PGMEAに浸漬した後の透過率(%)−PGMEAに浸漬する前の透過率(%))|
耐溶剤性を以下の基準に従い評価した。
3:浸漬前後の透過率の変化が3%未満
2:浸漬前後の透過率の変化が3%以上5%未満
1:浸漬前後の透過率の変化が5%以上
<パターン解像性(パターン形成性)>
得られたパターン形状を以下の基準に従い評価した。
3:明瞭な正方形形状を認識できる。
2:正方形形状を認識できる
1:形状が崩れている
<分光認識>
得られた赤外線透過フィルタを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。得られた固体撮像素子にて低照度の環境下(0.001Lux)で発光波長940nmの近赤外LED(発光ダイオード)光源を照射し、画像の取り込みを行い、画像性能を比較評価した。
分光認識を以下の基準に従い評価した。
3:良好 画像上で被写体をはっきり認識できる。
2:やや良好 画像上で被写体を認識できる。
1:不十分 画像上で被写体を認識できない。
上記表に示す通り、実施例は、パターン解像性および耐溶剤性に優れていた。また、実施例の組成物を用いて形成した赤外線透過フィルタは、分光認識が良好であった。これに対し、比較例は耐溶剤性またはパターン解像性の少なくとも一方が劣っていた。
実施例1において、色材D1のかわりに、ペリレン化合物、アゾ化合物またはビスベンゾフラノン化合物の色素骨格の架橋性染料を用いても同様の効果が得られる。
100:赤外線センサ、110:固体撮像素子、111:赤外線カットフィルタ、112:カラ−フィルタ、113:赤外線透過フィルタ、114:領域(樹脂層)、115:マイクロレンズ、116:平坦化層、hν:入射光

Claims (10)

  1. 近赤外線透過黒色色材と、硬化性化合物と、溶剤とを含む組成物であって、
    前記近赤外線透過黒色色材は、架橋性基を有する染料化合物、および、前記染料化合物由来の構造を有する色素多量体から選ばれる少なくとも1種を含有し、
    前記組成物の波長400〜700nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1100〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上である、組成物。
  2. 前記染料化合物が有する架橋性基は、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基およびアルコキシシリル基から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記架橋性基を有する染料化合物は、キサンテン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物およびビスベンゾフラノン化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 前記色素多量体は、2価以上の連結基に前記染料化合物由来の構造が2以上結合してなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記色素多量体は、前記染料化合物由来の構造を有する繰り返し単位を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 更に、有彩色着色剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を硬化してなる硬化膜。
  8. 請求項7に記載の硬化膜を有する赤外線透過フィルタ。
  9. 請求項7に記載の硬化膜を有する固体撮像素子。
  10. 請求項7に記載の硬化膜を有する赤外線センサ。
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