JPWO2017043585A1 - リン酸カルシウム微粒子と繊維との複合体、および、その製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、リン酸カルシウム粒子と繊維との複合体を製造する技術を提供することである。本発明によって、リン酸カルシウム粒子と繊維との複合体が提供される。また、本発明によれば、さらにチタンが定着しているリン酸カルシウム・繊維複合体を得ることができる。

Description

本発明は、リン酸カルシウム微粒子と繊維との複合体およびその製造方法に関する。特に本発明は、平均一次粒子径が5μm以下のリン酸カルシウム微粒子が繊維表面に付着した複合体およびその製造方法に関する。
一般に、炭酸カルシウムは、天然の石灰石や風化貝殻などを原料として物理的に粉砕分級して製造する「天然炭酸カルシウム」と、石灰石を原料として化学的に反応させて製造する「合成炭酸カルシウム」(軽質炭酸カルシウム)とに大きく分けられる。そして、合成炭酸カルシウムの合成法としては、炭酸ガス法、石灰・ソーダ法、ソーダ法が知られており、石灰・ソーダ法およびソーダ法は特殊な用途に一部利用されるものの、工業的な炭酸カルシウムの合成は炭酸ガス法によって行われるのが一般的である。
炭酸ガス法による炭酸カルシウムの合成は、生石灰と炭酸ガスとを反応させることにより行われ、一般に、生石灰CaOに水を加えて消石灰Ca(OH)を得る消和工程と、消石灰に炭酸ガスCOを吹き込んで炭酸カルシウムCaCOを得る炭酸化工程とを有する。今日では、炭酸カルシウムの合成工程、特に炭酸化工程の反応条件を制御することによって、生成物である炭酸カルシウムの粒子形状や粒子径などをコントロールする技術が種々提案されている。
また、パルプなどの繊維上に炭酸カルシウムを析出させる技術についても種々提案されている。特許文献1は、結晶質の炭酸カルシウムが繊維上に機械的に結合した複合体が記載されている。また、特許文献2には、パルプ懸濁液中で炭酸ガス法により炭酸カルシウムを析出させることによって、パルプと炭酸カルシウムの複合体を製造する技術が記載されている。特許文献3には、紙と板紙用として多量の填料を繊維に加えて古紙繊維の白色度と清浄度を向上させる方法であって、古紙パルプのスラリーを気体−液体接触装置に送って、流れに逆らってアルカリ塩のスラリーを流れの方向にパルプを接解領域において接解させると共に適当な反応性ガスを送り沈降性填料と混ぜることによって繊維表面に填料を付着させる技術が記載されている。
さらに、特許文献4・5には、繊維ウェブ(湿紙)を形成させる工程において炭酸カルシウムを析出させることによって、炭酸カルシウムが効率的に取り込まれた繊維ウェブを製造する技術が開示されている。
一方、カルシウムの無機塩として、リン酸カルシウムが知られている。リン酸カルシウムは、カルシウムイオンとリン酸イオンまたは二リン酸イオンからなる塩であり、骨の約70%はリン酸カルシウムの一種であるヒドロキシアパタイトからできている。また、リン酸カルシウムは、肥料の製造や、食品添加物としてチーズなどの食品の製造にも用いられる。さらに、リン酸カルシウムは、歯の再石灰化を促すとして歯磨き粉やサプリメントとしても広く用いられている。このリン酸カルシウムは吸着機能が高いため、繊維と複合化できれば、フィルターなどの機能性のある基材として用いることが可能になると考えられる。リン酸カルシウムと繊維とを複合体化する技術としては、特許文献6に、予めセルロース繊維を100℃以上の高温条件下でリン酸エステル化してから、カルシウムイオン等を含む溶液に10日程度、さらにリン酸イオン等を含む溶液に10日程度浸漬させる技術が開示されている。
また、チタンは、光触媒能を有する物質として広く用いられている。しかし、紙に内添しようとすると歩留が悪く、また、長期間光の下に曝すとチタンの触媒能によってパルプ繊維が分解されてしまうなどの問題があった。これらの問題を解決するために、特許文献7には、炭酸カルシウムとチタンを高分子ポリマーで予め凝集させたものを填料として利用することが開示されている。また、特許文献8には、炭酸カルシウムを合成する際にチタンを添加し、炭酸カルシウムとチタンの複合体を合成する方法が開示されている。
特開平06−158585号公報 米国特許第5679220号 米国特許第5665205号 特表2013−521417号公報 米国特許公開第2011/0000633号 特開平08―260348号公報 特開2004−18336号公報 特開2003−062469号公報
本発明の課題は、リン酸カルシウム微粒子と繊維との複合体、および、それらの効率的な製造技術を提供することである。さらには、その複合体にチタンを担持させた複合体、およびそれらの効率的な製造技術を提供することである。
一般にリン酸カルシウムは、種々の用途に広く用いられているが、それを繊維と複合体化することによって、ユニークな特性が生じることが期待される。特に、リン酸カルシウムなどの無機粒子は、その一次粒径が数μm未満まで小さくなると、凝集力が強く分散状態で乾燥させることが難しくなり、また、濃縮も困難になる。そのため、リン酸カルシウム微粒子を繊維と複合体化することによって、そのハンドリングが容易になり、種々の用途への活用がしやすくなると期待される。
本発明者は、繊維の存在下でリン酸とカルシウム源を反応させることで、リン酸カルシウムと繊維との複合体が得られることを見出した。特に、予め繊維と炭酸カルシウム微粒子の複合体を合成すると一次粒子径の小さい炭酸カルシウム微粒子が繊維と安定した複合体を形成するため、この複合体をリン酸と反応させることによって、粒径が小さいリン酸カルシウムと繊維との複合体が効率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。さらには、リン酸を添加する前に反応溶液にチタンを添加しておくことで、チタンが担持されたリン酸カルシウムと繊維の複合体を効率よく得られることを見出した。
また本発明の好ましい態様によれば、キャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成することによって特に一次粒子径の小さい炭酸カルシウムと繊維との複合体を効率的に製造でき、その炭酸カルシウムにリン酸を反応させてリン酸カルシウム・繊維の複合体を得ることができる。本発明によって得られる複合体は、繊維に付着しているリン酸カルシウム微粒子の形状が極めて均一であり、繊維にユニークな特性を付与することが可能である。更に、繊維に付着していることから、脱水、乾燥してハンドリングが容易な形態にすることができる。
すなわち、本発明は、これに制限されるものでないが、以下の発明を包含する。
(1) 平均一次粒子径が5μm以下のリン酸カルシウム粒子と繊維との複合体。
(2) リン酸カルシウム粒子の平均一次粒子径が1μm以下である、(1)に記載の複合体。
(3) 前記繊維がパルプ繊維である、(1)または(2)に記載の複合体。
(4) 前記リン酸カルシウム粒子と前記繊維との重量比が5:95〜95:5である、(1)〜(3)のいずれかに記載の複合体。
(5) さらにチタンが定着している、(1)〜(4)のいずれかに記載の複合体。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の複合体を含んでなるシート。
(7) 繊維を含む溶液においてカルシウム源とリン酸源を反応させることによって、平均一次粒子径が5μm以下のリン酸カルシウム粒子と繊維との複合体を製造する方法。
(8) 繊維を含む溶液において炭酸カルシウムを合成して、平均一次粒子径が5μm未満の炭酸カルシウム粒子と繊維との複合体を得る工程;この複合体とリン酸を反応させてリン酸カルシウムと繊維との複合体を得る工程;を含む、(7)に記載の方法。
(9) キャビテーション気泡の存在下で、繊維を含む溶液において炭酸カルシウムを合成する、(8)に記載の方法。
(10) 炭酸カルシウム粒子の平均一次粒子径が1μm以下である、(8)または(9)に記載の方法。
(11) キャビテーション気泡の存在下で、消石灰の水性懸濁液と二酸化炭素を含む気体とを反応させて炭酸カルシウムを合成する、(8)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12) 反応容器内に液体を噴射することによってキャビテーション気泡を発生させる、(8)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13) 前記繊維が、パルプ繊維を含む、(8)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14) 消石灰の水性懸濁液を反応容器内に噴射することによってキャビテーション気泡を発生させる、(8)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15) 消石灰の水性懸濁液として、前記反応容器から循環させた反応液を用いる、(8)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16) チタンの存在下でリン酸を反応させて、チタンが定着したリン酸カルシウム・繊維複合体を得る工程を含む、(8)〜(15)のいずれかに記載の方法。
(17) (1)〜(5)のいずれかに記載の複合体を含んでなる製品。
(18) 前記製品がシートの形態である、(17)に記載の製品。
本発明によれば、平均一次粒子径が5μm以下であるリン酸カルシウム・繊維複合体を効率良く製造することができる。特に好ましい態様において、繊維の存在下でキャビテーション気泡を用いて炭酸カルシウムを合成することによって、繊維に定着する無機微粒子の粒子径を小さくすることができる。
また、本発明においては、炭酸カルシウムとリン酸を反応させる際にチタンを存在させることによって、複合体に二酸化チタンなどのチタンを定着させることができる。
さらに、好ましい態様において本発明によれば、製品(物品)への歩留りが高く、吸着、消臭効果が高いリン酸カルシウム・繊維複合体を得ることができる。また、本発明によって得られた複合体をシート化すると、高灰分のシートを容易に得ることができる。
なお、繊維を含む溶液においてキャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成することによって繊維上に細かな無機微粒子を効率的に定着させられる理由の詳細は明らかでなく、本発明は以下の推測に拘束されるものではないが、以下のように考えられる。すなわち、加圧条件下におけるキャビテーションの発生によって炭酸ガスの溶解・微分散の効率が向上し、更にキャビテーションにより生じる微細な気泡によって反応が活性化された結果、炭酸カルシウム微粒子が効率よく製造され、さらに、繊維が炭酸カルシウムの担体として機能するため繊維表面に炭酸カルシウム微粒子が析出し、ユニークな特性を備えた複合体が得られたものと推測される。また、繊維表面に吸着および内部に浸透したカルシウムイオンと炭酸ガスが結びつくことで、強固に繊維に担持された複合体を得ることができたものと考えられる。そして、このような炭酸カルシウム・繊維複合体からリン酸カルシウム・繊維複合体を製造することによって、優れた品質のリン酸カルシウム・繊維複合体を得ることができる。
図1は、本発明の実施例で用いた反応装置を示す概略図である。 図2は、実験1で得られた炭酸カルシウム・繊維複合体(サンプルA)の電子顕微鏡写真である(倍率:2000倍)。 図3は、実験2で合成したリン酸カルシウム・繊維複合体(サンプル1)の電子顕微鏡写真である(倍率:左3000倍、右50000倍)。 図4は、実験2で合成したリン酸カルシウム・繊維複合体(サンプル2)の電子顕微鏡写真である(倍率:左10000倍、右50000倍)。 図5は、実験2で合成したリン酸カルシウム・繊維複合体(サンプル3)の電子顕微鏡写真である(倍率:左10000倍、右50000倍)。 図6は、実験2で合成したリン酸カルシウム・繊維複合体(サンプル4)の電子顕微鏡写真である(倍率:左10000倍、右50000倍)。 図7は、実験3のシート#1(歩留剤あり)の分析結果である(倍率3000倍、右:電子顕微鏡写真、左:元素マッピング画像)。 図8は、実験3のシート#2−1(歩留剤あり)の分析結果である(倍率3000倍、右:電子顕微鏡写真、左:元素マッピング画像)。 図9は、実験3のシート#2−2(歩留剤なし)の分析結果である(倍率3000倍、右:電子顕微鏡写真、左:元素マッピング画像)。 図10は、実験3のシート#3(歩留剤あり)の分析結果である(倍率3000倍、右:電子顕微鏡写真、左:元素マッピング画像)。 図11は、実験3のシート#4−1(歩留剤あり)の分析結果である(倍率3000倍、右:電子顕微鏡写真、左:元素マッピング画像)。 図12は、実験3のシート#4−2(歩留剤なし)の分析結果である(倍率3000倍、右:電子顕微鏡写真、左:元素マッピング画像)。
リン酸カルシウム・繊維複合体
本発明は、平均一次粒子径が5μm以下であるリン酸カルシウムと繊維の複合体およびその製造方法に関する。本発明のリン酸カルシウム・繊維複合体は、1つの態様において、例えば、炭酸カルシウム・繊維複合体をリン酸と反応させることによって得ることができる。また別の態様において、繊維、リン酸、カルシウム源を反応させることによって、リン酸カルシウムと繊維の複合体を合成することもできる。
1つの態様の本発明においては、反応生成物である複合体が懸濁液として得られるため、必要に応じて、貯蔵タンクに貯蔵したり、濃縮、脱水、粉砕、分級、熟成、分散などの処理を行うことができる。これらは公知の工程によることができ、用途やエネルギー効率などを考慮して適宜決定すればよい。例えば濃縮・脱水処理は、遠心脱水機、沈降濃縮機などを用いて行われる。この遠心脱水機の例としては、デカンター、スクリューデカンターなどが挙げられる。濾過機や脱水機を用いる場合についてもその種類に特に制限はなく、一般的なものを使用することができるが、例えば、フィルタープレス、ドラムフィルター、ベルトプレス、チューブプレス等の加圧型脱水機、オリバーフィルター等の真空ドラム脱水機などを好適に用いて炭酸カルシウムケーキとすることができる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。分級の方法としては、メッシュ等の篩、アウトワード型もしくはインワード型のスリットもしくは丸穴スクリーン、振動スクリーン、重量異物クリーナー、軽量異物クリーナー、リバースクリーナー、篩分け試験機等が挙げられる。分散の方法としては、高速ディスパーザー、低速ニーダーなどが挙げられる。
本発明によって得られた複合体は、完全に脱水せずに懸濁液の状態で填料や顔料に配合することもできるが、乾燥して粉体とすることもできる。この場合の乾燥機についても特に制限はないが、例えば、気流乾燥機、バンド乾燥機、噴霧乾燥機などを好適に使用することができる。
本発明は、リン酸カルシウムと繊維の複合体に関するが、好ましい態様において、繊維表面の15%以上がリン酸カルシウムによって被覆されている。好ましい態様において本発明の複合体は、リン酸カルシウムによる繊維の被覆率(面積率)が25%以上であり、より好ましくは40%以上であるが、本発明によれば被覆率が60%以上や80%以上の複合体を製造することも可能である。
本発明によって得られるリン酸カルシウムは、炭酸カルシウムとリン酸を原料に用いた一般的な方法で得られる物に比べて粒子径が小さくなるという特徴がある。通常の方法で得られるリン酸カルシウムの粒子径は基本的に10μm以上であり、特開2016―69243に記載の比較例2に係るリン酸カルシウムの粒子径は8μm程度である。通常の方法に比べて粒子径が小さくなる理由としては、原料として用いる炭酸カルシウムの粒子径が小さいことや、繊維の存在下で反応を行うため、シェアが大きくかかることが考えられる。
粒子径が小さいリン酸カルシウムを得たことによる効果の一つとして、生成物の比表面積が大きくなることが挙げられる。比表面積が大きくなると吸着能も向上するため、吸着剤や消臭剤用途などに用いる際には好ましい。さらには、粒子径が小さい方が、リン酸カルシウムが繊維により定着しやすくなるといった利点も挙げられる。
また、本発明によってリン酸カルシウムと繊維を複合体化しておくと、単にリン酸カルシウムを繊維と混合した場合と比較して、リン酸カルシウムが製品に歩留り易く、凝集せずに均一に分散した製品を得ることができる。
本発明によって得られる複合体は、公知の方法によって改質することが可能である。例えば、ある態様においては、その表面を疎水化し、樹脂などとの混和性を高めたりすることが可能である。例えば、本発明のリン酸カルシウム・繊維複合体にはチタンを含ませることもできる。二酸化チタンなどのチタンは光触媒能などの種々の活性を有することが知られており、このようなチタンを複合体に定着させることによって種々の活性を有する複合粒子を得ることができる。1つの態様において、リン酸と炭酸カルシウムを反応させる際にチタンを存在させることによって、複合体にチタンなどの異種材料を取り込ませることができる。
本発明に係る複合体を用いて、適宜、成形物(体)を製造することも可能である。例えば、本発明によって得られた複合体をシート化すると、高灰分のシートを容易に得ることができる。シート製造に用いる抄紙機(抄造機)としては、例えば長網抄紙機、丸網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの機器の抄紙方式を組合せた公知の抄造機などが挙げられる。抄紙機におけるプレス線圧、後段でカレンダー処理を行う場合のカレンダー線圧は、いずれも操業性や複合体シートの性能に支障を来さない範囲内で定めることができる。また、形成されたシートに対して含浸や塗布により澱粉や各種ポリマー、顔料およびそれらの混合物を付与しても良い。
シート化の際には湿潤および/または乾燥紙力剤(紙力増強剤)を添加することができる。これにより、複合体シートの強度を向上させることができる。紙力剤としては例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂、植物性ガム、ラテックス、ポリエチレンイミン、グリオキサール、ガム、マンノガラクタンポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール等の樹脂;上記樹脂から選ばれる2種以上からなる複合ポリマー又は共重合ポリマー;澱粉及び加工澱粉;カルボキシメチルセルロース、グアーガム、尿素樹脂等が挙げられる。紙力剤の添加量は特に限定されない。
また、填料の繊維への定着を促したり、填料や繊維の歩留を向上させるために、高分子ポリマーや無機物を添加することもできる。例えば凝結剤として、ポリエチレンイミンおよび第三級および/または四級アンモニウム基を含む改質ポリエチレンイミン、ポリアルキレンイミン、ジシアンジアミドポリマー、ポリアミン、ポリアミン/エピクロヒドリン重合体、並びにジアルキルジアリル第四級アンモニウムモノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド及びジアルキルアミノアルキルメタクリルアミドとアクリルアミドの重合体、モノアミン類とエピハロヒドリンからなる重合体、ポリビニルアミン及びビニルアミン部を持つ重合体やこれらの混合物などのカチオン性のポリマーに加え、前記ポリマーの分子内にカルボキシル基やスルホン基などのアニオン基を共重合したカチオンリッチな両イオン性ポリマー、カチオン性ポリマーとアニオン性または両イオン性ポリマーとの混合物などを用いることができる。また歩留剤として、カチオン性またはアニオン性、両性ポリアクリルアミド系物質を用いることができる。また、これらに加えて少なくとも一種以上のカチオンやアニオン性のポリマーを併用する、いわゆるデュアルポリマーと呼ばれる歩留りシステムを適用することもでき、少なくとも一種類以上のアニオン性のベントナイトやコロイダルシリカ、ポリ珪酸、ポリ珪酸もしくはポリ珪酸塩ミクロゲルおよびこれらのアルミニウム改質物などの無機微粒子や、アクリルアミドが架橋重合したいわゆるマイクロポリマーといわれる粒径100μm以下の有機系の微粒子を一種以上併用する多成分歩留りシステムであってもよい。特に単独または組合せで使用するポリアクリルアミド系物質が、極限粘度法による重量平均分子量が200万ダルトン以上である場合、良好な歩留りを得ることができ、好ましくは、500万ダルトン以上であり、更に好ましくは1000万ダルトン以上3000万ダルトン未満の上記アクリルアミド系物質である場合に非常に高い歩留りを得ることが出来る。このポリアクリルアミド系物質の形態はエマルジョン型でも溶液型であっても構わない。この具体的な組成としては、該物質中にアクリルアミドモノマーユニットを構造単位として含むものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸エステルの4級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合物、あるいはアクリルアミドとアクリル酸エステルを共重合させた後、4級化したアンモニウム塩が挙げられる。該カチオン性ポリアクリルアミド系物質のカチオン電荷密度は特には限定されない。
その他、目的に応じて、濾水性向上剤、内添サイズ剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカなどの無機粒子(いわゆる填料)等が挙げられる。各添加材の使用量は特に限定されない。
シート化以外の成形法を用いることも可能であり、例えば、パルプモールドと呼ばれるように鋳型に原料を流し込んで吸引脱水・乾燥させる方法や、樹脂や金属などの成形物の表面に塗り広げて乾燥後、基材から剥離する方法などによって、種々の形状を有する成形物を得ることができる。また、樹脂を混ぜてプラスチック様に成形することもできるし、シリカやアルミナ等の鉱物を添加し、焼成することでセラミック様に成形することもできる。以上に示した配合・乾燥・成形において、1種類の複合体のみを用いることもできるし、2種類以上の複合体を混合して用いることもできる。2種類以上の複合体を用いる場合は、予めそれらを混合したものを用いることもできるし、それぞれを配合・乾燥・成形したものを後から混合することもできる。
また、複合体の成形物に後からポリマーなどの各種有機物や顔料などの各種無機物を付与しても良い。
本発明に係る複合体を構成するリン酸カルシウムの平均一次粒子径が5μm以下であるが、平均一次粒子径を1μm以下や200nm以下とすることもできる。
炭酸カルシウム・繊維複合体
上述したように、本発明のリン酸カルシウム・繊維複合体は、例えば、炭酸カルシウム・繊維複合体とリン酸を反応させることによって製造することができる。
炭酸カルシウム・繊維複合体は、繊維を含有する溶液において炭酸カルシウムを合成することによって効率的に製造することができる。特に好ましい態様においては、キャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成することによって、平均粒子径の小さい炭酸カルシウムと繊維との複合体を効率的に製造することができる。
好ましい態様において、複合体を構成する炭酸カルシウム微粒子の平均一次粒子径は5μm未満であるが、平均一次粒子径が1μm以下や500nm以下の炭酸カルシウム、さらには平均一次粒子径が200nm以下や100nm以下の炭酸カルシウムを用いることができる。また、炭酸カルシウム微粒子の平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。
また、本発明において炭酸カルシウムは、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、熟成工程によって用途に応じた二次粒子を生成させることができるし、粉砕によって凝集塊を細かくすることもできる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
本発明によって得られた複合体は、種々の形状で用いることができ、例えば、粉体、ペレット、モールド、水性懸濁液、ペースト、シート、その他の形状にして用いることができる。また、複合体を主成分として他の材料と共にモールドや粒子・ペレットなどの成形体にすることもできる。乾燥して紛体にする場合の乾燥機についても特に制限はないが、例えば、気流乾燥機、バンド乾燥機、噴霧乾燥機などを好適に使用することができる。
本発明によって得られた複合体は、種々の用途に用いることができ、例えば、紙、繊維、セルロース系複合材料、フィルター材料、塗料、プラスチックやその他の樹脂、ゴム、エラストマー、セラミック、ガラス、タイヤ、建築材料(アスファルト、アスベスト、セメント、ボード、コンクリート、れんが、タイル、合板、繊維板など)、各種担体(触媒担体、医薬担体、農薬担体、微生物担体など)、吸着剤(不純物除去、消臭、除湿など)、しわ防止剤、粘土、研磨材、改質剤、補修材、断熱材、防湿材、撥水材、耐水材、遮光材、シーラント、シールド材、防虫剤、接着剤、インキ、化粧料、医用材料、ペースト材料、フィルター材料、難燃材料、衛生用品(使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁者用パッド、母乳パッドなど)等のあらゆる用途に広く使用することができる。また、前記用途における各種充填剤、コーティング剤などに用いることができる。このうち、吸着剤(不純物除去、消臭、除湿など)、フィルター材料、および衛生用品(使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁者用パッド、母乳パッド)が好ましい。
本発明の複合体は、製紙用途に適用してもよく、例えば、印刷用紙、新聞紙、インクジェット用紙、PPC用紙、クラフト紙、上質紙、コート紙、微塗工紙、包装紙、薄葉紙、色上質紙、キャストコート紙、ノンカーボン紙、ラベル用紙、感熱紙、各種ファンシーペーパー、水溶紙、剥離紙、工程紙、壁紙用原紙、不燃紙、難燃紙、積層板原紙、バッテリー用セパレータ、クッション紙、トレーシングペーパー、含浸紙、ODP用紙、建材用紙、化粧材用紙、封筒用紙、テープ用紙、熱交換用紙、化繊紙、減菌紙、耐水紙、耐油紙、耐熱紙、光触媒紙、化粧紙(脂取り紙など)、各種衛生紙(トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ワイパー、おむつ、生理用品等)、たばこ用紙、板紙(ライナー、中芯原紙、白板紙など)、紙皿原紙、カップ原紙、ベーキング用紙、研磨紙、合成紙などが挙げられる。すなわち、本発明によれば、一次粒子径の小さいリン酸カルシウムを繊維に単に配合した場合と異なり、リン酸カルシウムがシートに歩留り易いだけでなく、リン酸カルシウムが凝集せずに均一に分散したシートを得ることができる。この時、リン酸カルシウムは繊維の外表面・ルーメンの内側に定着するだけでなく、ミクロフィブリルの内側にも生成することが電子顕微鏡観察の結果から明らかとなっている。
また、本発明によって得られる複合体を使用する際には、一般に無機填料及び有機填料と呼ばれる粒子や、各種繊維を併用することができる。例えば、無機填料として、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー(カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン)、タルク、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、二酸化チタン、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合体、シリカ/二酸化チタン複合体)、白土、ベントナイト、珪藻土、硫酸カルシウム、ゼオライト、脱墨工程から得られる灰分を再生して利用する無機填料および再生する過程でシリカや炭酸カルシウムと複合体を形成した無機填料などが挙げられる。炭酸カルシウム−シリカ複合物としては、炭酸カルシウムおよび/または軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物以外に、ホワイトカーボンのような非晶質シリカを併用しても良い。有機填料としては、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子、アクリルアミド複合体、木材由来の物質(微細繊維、ミクロフィブリル繊維、粉体ケナフ)、変性不溶化デンプン、未糊化デンプンなどが挙げられる。繊維としては、セルロースなどの天然繊維はもちろん、石油などの原料から人工的に合成される合成繊維、さらには、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)、さらには無機繊維などを制限なく使用することができる。天然繊維としては上記の他にウールや絹糸やコラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維やアルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。セルロース系の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、バクテリアセルロース、ホヤなどの動物由来セルロース、藻類などが例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹及びこれらの混合材が例示される。木材原料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、楮(こうぞ)、みつまた等が例示される。木材パルプ及び非木材パルプは、未叩解及び叩解のいずれでもよい。合成繊維としてはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、アセテートなどが挙げられ、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維などが挙げられる。以上について、これらは単独でも2種類以上の組み合わせで用いても構わない。
本発明の複合体を構成するリン酸カルシウムの平均粒子径や形状等は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。さらに、炭酸カルシウムやリン酸カルシウムを合成する際の条件を調整することによって、種々の大きさや形状を有する微粒子を繊維と複合体化することができる。
キャビテーション気泡
本発明に係る複合体の製法においては、1つの態様において、キャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムを合成することができる。本発明においてキャビテーションとは、流体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象であり、空洞現象とも言われる。キャビテーションによって生じる気泡(キャビテーション気泡)は、流体の中で圧力がごく短時間だけ飽和蒸気圧より低くなったとき、液体中に存在する100ミクロン以下のごく微小な「気泡核」を核として生じる。
本発明においては、反応容器内にキャビテーション気泡が存在する条件下で反応を行ってもよいし、キャビテーション気泡を生じさせないような条件で反応を行ってもよい。いずれの場合においても、反応容器は、密閉状態を維持することができる圧力容器であることが好ましいが、開放系の反応容器を用いてもなんら問題はない。なお、本発明における圧力容器とは0.005MPa以上の圧力をかけることのできる容器のことである。キャビテーション気泡を生じさせないような条件の場合、圧力容器内の圧力は、静圧で0.005MPa以上0.9MPa以下であることが好ましい。
本発明においてキャビテーション気泡は、公知の方法によって反応容器内に発生させることができる。例えば、流体を高圧で噴射することによってキャビテーション気泡を発生させること、流体内で高速で攪拌することによってキャビテーションを発生させること、流体内で爆発を生じさせることによってキャビテーションを発生させること、超音波振動子によってキャビテーションを発生させること(バイブトラリー・キャビテーション)などが考えられる。
特に本発明においては、キャビテーション気泡の発生と制御が容易なため、流体を高圧で噴射することによってキャビテーション気泡を発生させることが好ましい。この態様では、ポンプなどを用いて噴射液体を圧縮し高速でノズルなどを介して噴射することによって、ノズル近傍での極めて高いせん断力と急激な減圧による液体自体の膨張と同時にキャビテーション気泡が発生する。流体噴流による方法は、キャビテーション気泡の発生効率が高く、より強力な崩壊衝撃力を持つキャビテーション気泡を発生させることができる。本発明においては、炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムを合成する際に制御されたキャビテーション気泡を存在させるものであって、流体機械に自然発生的に生じる制御不能の害悪をもたらすキャビテーション気泡と明らかに異なる。
本発明においては、原料などの反応溶液をそのまま噴射液体として用いてキャビテーションを発生させることもできるし、反応容器内に何らかの流体を噴射してキャビテーション気泡を発生させることもできる。液体噴流が噴流をなす流体は、流動状態であれば液体、気体、粉体やパルプ等の固体の何れでもよく、またそれらの混合物であってもよい。更に必要であれば上記の流体に、新たな流体として、炭酸ガスなど、別の流体を加えることができる。上記流体と新たな流体は、均一に混合して噴射してもよいが、別個に噴射してもよい。
液体噴流とは、液体または液体の中に固体粒子や気体が分散あるいは混在する流体の噴流であり、パルプや無機物粒子のスラリーや気泡を含む液体噴流のことをいう。ここで云う気体は、キャビテーションによる気泡を含んでいてもよい。
キャビテーションは液体が加速され、局所的な圧力がその液体の蒸気圧より低くなったときに発生するため、流速及び圧力が特に重要となる。このことから、キャビテーション状態を表わす基本的な無次元数、キャビテーション数(Cavitation Number)σは次の数式1のように定義される(加藤洋治編「新版キャビテーション・基礎と最近の進歩」、槇書店、1999年)。
ここで、キャビテーション数が大きいということは、その流れ場がキャビテーションを発生し難い状態にあるということを示す。特にキャビテーション噴流のようなノズルあるいはオリフィス管を通してキャビテーションを発生させる場合は、ノズル上流側圧力p1、ノズル下流側圧力p2、試料水の飽和蒸気圧pvから、キャビテーション数σは下記式(2)のように書きかえることができ、キャビテーション噴流では、p1、p2、pv間の圧力差が大きく、p1≫p2≫pvとなることから、キャビテーション数σはさらに以下の数式2のように近似することができる(H. Soyama, J. Soc. Mat. Sci. Japan, 47(4), 381, 1998)。
本発明におけるキャビテーションの条件は、上述したキャビテーション数σが0.001以上0.5以下であることが望ましく、0.003以上0.2以下であることが好ましく、0.01以上0.1以下であることが特に好ましい。キャビテーション数σが0.001未満である場合、キャビテーション気泡が崩壊する時の周囲との圧力差が低いため効果が小さくなり、0.5より大である場合は、流れの圧力差が低くキャビテーションが発生し難くなる。
また、ノズルまたはオリフィス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させる際には、噴射液の圧力(上流側圧力)は0.01MPa以上30MPa以下であることが望ましく、0.7MPa以上20MPa以下であることが好ましく、2MPa以上15MPa以下がより好ましい。上流側圧力が0.01MPa未満では下流側圧力との間で圧力差を生じ難く作用効果は小さい。また、30MPaより高い場合、特殊なポンプ及び圧力容器を必要とし、消費エネルギーが大きくなることからコスト的に不利である。一方、容器内の圧力(下流側圧力)は静圧で0.005MPa以上0.9MPa以下が好ましい。また、容器内の圧力と噴射液の圧力との比は0.001〜0.5の範囲が好ましい。
噴射液の噴流の速度は1m/秒以上200m/秒以下の範囲であることが望ましく、20m/秒以上100m/秒以下の範囲であることが好ましい。噴流の速度が1m/秒未満である場合、圧力低下が低く、キャビテーションが発生し難いため、その効果は弱い。一方、200m/秒より大きい場合、高圧を要し特別な装置が必要であり、コスト的に不利である。
本発明におけるキャビテーション発生場所は、炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムを合成する反応容器内に発生させればよい。また、ワンパスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環することもできる。さらに複数の発生手段を用いて並列で、あるいは順列で処理することができる。
キャビテーションを発生させるための液体の噴射は、大気開放の容器の中でなされても良いが、キャビテーションをコントロールするために圧力容器の中でなされるのが好ましい。
液体噴射によってキャビテーションを発生させる場合、反応溶液である消石灰の水性懸濁液の固形分濃度は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下がより好ましい。このような濃度であると、キャビテーション気泡を反応系に均一に作用させやすくなるためである。また、反応溶液である消石灰の水性懸濁液は、反応効率の点から、固形分濃度が0.1重量%以上であることが好ましい。
本発明において、反応液のpHは、反応開始時は塩基性側であるが炭酸化反応が進行するにしたがって中性に変化する。したがって、反応液のpHをモニターすることによって反応を制御することができる。
本発明では、液体の噴射圧力を高めることで、噴射液の流速が増大し、これに伴って圧力が低下し、より強力なキャビテーションが発生させることができる。また、反応容器内の圧力を加圧することで、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力が高くなり、気泡と周囲の圧力差が大きくなるため気泡は激しく崩壊し衝撃力を大きくすることができる。更には導入する炭酸ガスの溶解と分散を促進することができる。反応温度は0℃以上90℃以下であることが好ましく、特に10℃以上60℃以下であることが好ましい。一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水性溶液の場合、50℃前後が好適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲であれば高い効果が得られる。
本発明においては、界面活性剤を添加することでキャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。使用する界面活性剤としては、公知または新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの単一成分からなるものでも、2種以上の成分の混合物でも良い。添加量は噴射液及び/または被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。
微粒子と繊維との複合体の合成
本発明の一つの態様において、繊維を含む溶液中で炭酸カルシウムを合成する場合、炭酸カルシウムの合成方法は、公知の方法によることができる。例えば、炭酸ガス法、可溶性塩反応法、石灰・ソーダ法、ソーダ法などによって炭酸カルシウムを合成することができ、好ましい態様において、炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを合成する。
一般に、炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを製造する場合、カルシウム源として石灰(ライム)が使用され、生石灰CaOに水を加えて消石灰Ca(OH)を得る消和工程と、消石灰に炭酸ガスCOを吹き込んで炭酸カルシウムCaCOを得る炭酸化工程とによって炭酸カルシウムが合成される。この際、生石灰に水を加えて調製した消石灰の懸濁液をスクリーンに通して、懸濁液中に含まれる低溶解性の石灰粒を除去してもよい。また、消石灰を直接カルシウム源としてもよい。本発明において炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを合成する場合、炭酸ガスを反応系内に導入して炭酸化反応を行えばよい。
一般に、炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを製造する際の反応容器(炭酸化反応機:カーボネーター)として、ガス吹き込み型カーボネーターと機械攪拌型カーボネーターが知られている。ガス吹き込み型カーボネーターでは、消石灰懸濁液(石灰乳)を入れた炭酸化反応槽に炭酸ガスを吹き込み、消石灰と炭酸ガスとを反応させるが、単純に炭酸ガスを吹き込むだけでは気泡の大きさを均一かつ微細に制御することが難しく、反応効率の点からは制限がある。一方、機械攪拌型カーボネーターでは、カーボネーター内部に攪拌機を設け、その攪拌機の近くに炭酸ガスを導入することによって、炭酸ガスを細かな気泡とし、消石灰と炭酸ガスとの反応効率を向上させている(『セメント・セッコウ・石灰ハンドブック』技報堂出版、1995年、495頁)。
しかし、機械攪拌型カーボネーターのように、炭酸化反応槽内部に設けた攪拌機で攪拌を行う場合、反応液の濃度が高かったり炭酸化反応が進むと反応液の抵抗が大きく十分な攪拌が困難になるため炭酸化反応を的確に制御することが難しかったり、十分な攪拌を行うには攪拌機に相当な負荷がかかりエネルギー的に不利となることがあった。また、ガスの吹込口がカーボネーターの下部にあり、攪拌をよくするために攪拌機の羽根がカーボネーターの底部の近くに設置されている。溶解性が低いライムスクリーン残渣は沈降が速いために、常に底部に滞留しており、ガス吹込口を塞いだり、攪拌機のバランスを崩したりする。さらに、従来の方法では、カーボネーターに加えて、攪拌機や、カーボネーターに炭酸ガスを導入するための設備が必要であり、設備面でもコストがかかるものであった。そして、機械攪拌型カーボネーターでは、攪拌機の近くに供給した炭酸ガスを攪拌機によって細かくすることによって消石灰と炭酸ガスとの反応効率を向上させるものの、反応液の濃度が高い場合などは十分に炭酸ガスを微細化できず、炭酸化反応の面でも、生成する炭酸カルシウムの形態等を正確に制御することが難しいことがあった。本発明の好ましい態様においては、キャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成することによって、効率的に炭酸化反応を進行させ、均一な炭酸カルシウム微粒子を製造することが可能になる。特に噴流キャビテーションを用いることで、羽根などの機械的な攪拌機なしに、十分な攪拌を行うことができる。本発明においては、従来からの公知の反応容器を用いることができ、もちろん、上述したようなガス吹き込み型カーボネーターや機械攪拌型カーボネーターを問題なく使用することができ、これらの容器にノズルなどを用いた噴流キャビテーションを組合せても良い。
炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを合成する場合、消石灰の水性懸濁液の固形分濃度は、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%程度である。固形分濃度が低いと反応効率が低く、製造コストが高くなり、固形分濃度が高すぎると流動性が悪くなり、反応効率が落ちる。本発明の好ましい態様においては、キャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成するため、固形分濃度の高い懸濁液(スラリー)を用いても、反応液と炭酸ガスを好適に混合することができる。
消石灰を含む水性懸濁液としては、炭酸カルシウム合成に一般に用いられるものを使用でき、例えば、消石灰を水に混合して調製したり、生石灰(酸化カルシウム)を水で消和(消化)して調製することができる。消和する際の条件は特に制限されないが、例えば、CaOの濃度は0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、温度は20〜100℃、好ましくは30〜100℃とすることができる。また、消和反応槽(スレーカー)での平均滞留時間も特に制限されないが、例えば、5分〜5時間とすることができ、2時間以内とすることが好ましい。当然であるが、スレーカーはバッチ式であっても連続式であってもよい。なお、本発明においては炭酸化反応槽(カーボネーター)と消和反応槽(スレーカー)とを別々にしてもよく、また、1つの反応槽を炭酸化反応槽および消和反応槽として用いてもよい。
本発明においては、懸濁液の調製などに水を使用するが、この水としては、通常の水道水、工業用水、地下水、井戸水などを用いることができる他、イオン交換水や蒸留水、超純水、工業廃水、炭酸化工程で得られた炭酸カルシウムスラリーを分離・脱水する際に得られる水を好適に用いることできる。
また本発明においては、炭酸化反応槽の反応液を循環させて水酸化カルシウムを含む液体として使用することができる。このように反応液を循環させて、反応液と炭酸ガスとの接触を増やすことにより、反応効率を上げ、所望の炭酸カルシウムを得ることが容易になる。
本発明においては、二酸化炭素(炭酸ガス)を含む気体が反応容器に吹き込まれ、反応液と混合される。本発明によれば、ファン、ブロワなどの気体供給装置がなくとも炭酸ガスを反応液に供給することができる。特にキャビテーション気泡を用いる場合は、キャビテーション気泡によって炭酸ガスが微細化されるため炭酸化反応を効率よく行うことができる。
本発明において、二酸化炭素を含む気体の二酸化炭素濃度に特に制限はないが、二酸化炭素濃度が高い方が好ましい。また、反応容器に導入する炭酸ガスの量に制限はなく適宜選択することができるが、例えば、消石灰1kgあたり100〜10000L/時の流量の炭酸ガスを用いると好ましい。
本発明の二酸化炭素を含む気体は、実質的に純粋な二酸化炭素ガスでもよく、他のガスとの混合物であってもよい。例えば、二酸化炭素ガスの他に、空気、窒素などの不活性ガスを含む気体を、二酸化炭素を含む気体として用いることができる。また、二酸化炭素を含む気体としては、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)の他、製紙工場の焼却炉、石炭ボイラー、重油ボイラーなどから排出される排ガスを二酸化炭素含有気体として好適に用いることができる。その他にも、石灰焼成工程から発生する二酸化炭素を用いて炭酸化反応を行うこともできる。
本発明の複合体を製造する際には、さらに公知の各種助剤を添加することができる。例えば、キレート剤を炭酸化反応に添加することができ、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などのポリヒドロキシカルボン酸、シュウ酸などのジカルボン酸、グルコン酸などの糖酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのアルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸などのポリリン酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸およびこれらのアルカリ金属塩、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリルなどのケトン類、ショ糖などの糖類、ソルビトールなどのポリオールが挙げられる。また、表面処理剤としてパルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、アビエチン酸等の樹脂酸、それらの塩やエステルおよびエーテル、アルコール系活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系やアミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩、アミノカルボン酸、ホスホン酸、多価カルボン酸、縮合リン酸などを添加することができる。また、必要に応じ分散剤を用いることもできる。この分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アクリル酸−マレイン酸共重合体アンモニウム塩、メタクリル酸−ナフトキシポリエチレングリコールアクリレート共重合体、メタクリル酸−ポリエチレングリコールモノメタクリレート共重合体アンモニウム塩、ポリエチレングリコールモノアクリレートなどがある。これらを単独または複数組み合わせて使用することができる。また、添加のタイミングは炭酸化反応の前でも後でも良い。このような添加剤は、消石灰に対して、好ましくは0.001〜20%、より好ましくは0.1〜10%の量で添加することができる。
繊維
本発明においては、リン酸カルシウムと繊維とを複合体化する。複合体を構成する繊維は特に制限されないが、例えば、セルロースなどの天然繊維はもちろん、石油などの原料から人工的に合成される合成繊維、さらには、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)、さらには無機繊維などを制限なく使用することができる。天然繊維としては上記の他にウールや絹糸やコラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維やアルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。セルロース系の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、バクテリアセルロース、ホヤなどの動物由来セルロース、藻類などが例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹及びこれらの混合材が例示される。
木材原料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、楮(こうぞ)、みつまた等が例示される。
パルプ繊維は、未叩解及び叩解のいずれでもよく、複合体シートの物性に応じて選択すればよいが、叩解を行う方が好ましい。これにより、シート強度の向上並びに炭酸カルシウムの定着促進が期待できる。
合成繊維としてはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、アセテートなどが挙げられ、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維などが挙げられる。
また、これらセルロース原料はさらに処理を施すことで粉末セルロース、酸化セルロースなどの化学変性セルロース、およびセルロースナノファイバー:CNF(ミクロフィブリル化セルロース:MFC、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、カルボキシメチル化CNF、機械粉砕CNFなど)として使用することもできる。本発明で用いる粉末セルロースとしては、例えば、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製・乾燥し、粉砕・篩い分けするといった方法により製造される棒軸状である一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、KCフロック(日本製紙製)、セオラス(旭化成ケミカルズ製)、アビセル(FMC社製)などの市販品を用いてもよい。粉末セルロースにおけるセルロースの重合度は好ましくは100〜1500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は好ましくは70〜90%であり、レーザー回折式粒度分布測定装置による体積平均粒子径は好ましくは1μm以上100μm以下である。本発明で用いる酸化セルロースは、例えばN−オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することで得ることができる。セルロースナノファイバーとしては、上記セルロース原料を解繊する方法が用いられる。解繊方法としては、例えばセルロースや酸化セルロース等の化学変性セルロースの水懸濁液等を、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸または多軸混練機、ビーズミル等による機械的な磨砕、ないし叩解することにより解繊する方法を使用することができる。上記方法を1種または複数種類組み合わせてセルロースナノファイバーを製造してもよい。製造したセルロースナノファイバーの繊維径は電子顕微鏡観察などで確認することができ、例えば5nm〜1000nm、好ましくは5nm〜500nm、より好ましくは5nm〜300nmの範囲にある。このセルロースナノファイバーを製造する際、セルロースを解繊及び/又は微細化する前及び/又は後に、任意の化合物をさらに添加してセルロースナノファイバーと反応させ、水酸基が修飾されたものにすることもできる。修飾する官能基としては、アセチル基、エステル基、エーテル基、ケトン基、ホルミル基、ベンゾイル基、アセタール、ヘミアセタール、オキシム、イソニトリル、アレン、チオール基、ウレア基、シアノ基、ニトロ基、アゾ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アミド基、イミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、オキシル基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの置換基の中の水素が水酸基、カルボキシ基等の官能基で置換されても構わない。また、アルキル基の一部が不飽和結合になっていても構わない。これらの官能基を導入するために使用する化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸由来の基を有する化合物、カルボン酸由来の基を有する化合物、硫酸由来の基を有する化合物、スルホン酸由来の基を有する化合物、アルキル基を有する化合物、アミン由来の基を有する化合物等が挙げられる。リン酸基を有する化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸のリチウム塩であるリン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウムが挙げられる。更にリン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられる。更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウムが挙げられる。更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましいが、特に限定されない。カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸などトリカルボン酸化合物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。上記カルボン酸由来の基を有する化合物のうち、工業的に適用しやすく、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましいが、特に限定されない。また、化学的に結合させなくても、修飾する化合物がセルロースナノファイバーに物理的に吸着する形でセルロースナノファイバーを修飾してもよい。物理的に吸着する化合物としては界面活性剤等が挙げられ、アニオン性、カチオン性、ノニオン性いずれを用いてもよい。セルロースを解繊及び/又は粉砕する前に上記の修飾を行った場合、解繊及び/又は粉砕後にこれらの官能基を脱離させ、元の水酸基に戻すこともできる。以上のような修飾を施すことで、セルロースナノファイバーの解繊を促進したり、セルロースナノファイバーを使用する際に種々の物質と混合しやすくしたりすることができる。
以上に示した繊維は単独で用いても良いし、複数を混合しても良い。中でも、木材パルプを含むか、若しくは、木材パルプと非木材パルプ及び/又は合成繊維との組み合わせを含むことが好ましく、木材パルプのみであることがより好ましい。
好ましい態様において、本発明の複合体を構成する繊維はパルプ繊維である。また、例えば、製紙工場の排水から回収された繊維状物質を本発明の炭酸化反応に供給してもよい。このような物質を反応槽に供給することにより、種々の複合粒子を合成することができ、また、形状的にも繊維状粒子などを合成することができる。
本発明においては、繊維の他にも、炭酸化反応には直接的に関与しないが、生成物である炭酸カルシウムに取り込まれて複合粒子を生成するような物質を用いることができる。本発明にいては、パルプ繊維を始めとする繊維を使用するが、それ以外にも無機粒子、有機粒子、ポリマーなどを含む溶液中で炭酸カルシウムを合成することによって、さらにこれらの物質が取り込まれた複合粒子を製造することが可能である。
反応条件
本発明において炭酸化反応の条件は、特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、炭酸化反応の温度は0〜90℃とすることができ、10〜70℃とすることが好ましい。反応温度は、反応液の温度を温度調節装置によって制御することができ、温度が低いと反応効率が低下しコストが高くなる一方、90℃を超えると粗大な炭酸カルシウム粒子が多くなる傾向がある。
また、本発明において炭酸化反応はバッチ反応とすることもでき、連続反応とすることもできる。一般に、炭酸化反応後の残存物を排出する便利さから、バッチ反応工程を行うことが好ましい。反応のスケールは特に制限されないが、100L以下のスケールで反応させてもよいし、100L超のスケールで反応させてもよい。反応容器の大きさは、例えば、10L〜100L程度とすることもできるし、100L〜1000L程度としてもよい。
さらに、炭酸化反応は、反応懸濁液のpHをモニターすることにより制御することができ、反応液のpHプロファイルに応じて、例えばpH9未満、好ましくはpH8未満、より好ましくはpH7のあたりに到達するまで炭酸化反応を行うことができる。
一方、反応液の電導度をモニターすることにより炭酸化反応を制御することも出来る。電導度が1mS/cm以下に低下するまで炭酸化反応を行うことが好ましい。
さらにまた、炭酸化反応は、反応時間によって制御することができ、具体的には、反応物が反応槽に滞留する時間を調整して制御することができる。その他、本発明においては、炭酸化反応槽の反応液を攪拌したり、炭酸化反応を多段反応とすることによって反応を制御することもできる。
本発明におけるリン酸化反応条件としては、系の反応温度、リン酸の投入時間、リン酸の添加率、攪拌条件、両者混合後の攪拌放置(熟成)時間、反応系の濃度等を変更することで、所望の形状や大きさのリン酸カルシウムを合成することができる。反応温度については、20〜80℃の範囲で反応させるのが好ましく、30〜60℃がさらに好ましい。
リン酸の投入時間については、一般には炭酸カルシウムの水スラリーにリン酸を投入する方法がよいが、この場合、リン酸を一気に投入するのでなく、10〜60分以上かけて投入する方法が好ましい。一気に投入すると、粒子が凝集したり空孔がいびつとなったりし易い。反応のスケールや用いる原料濃度によっても異なるが、例えば、0.01〜5000g/minの速度で添加することができる。
リン酸の添加率については、炭酸カルシウムの固形分に対して10〜100%とすることが好ましく、特に20〜60%とすることが好ましい。
撹拌条件については、ある一定以上の強い攪拌力で攪拌することが望ましい。攪拌力が弱いと粒子全体に均一な空孔状態が出来ない傾向がある。例えば、100〜5000rpmで撹拌することができる。
熟成時間については、両者を混合後、好ましくは10分以上、より好ましくは30分間以上攪拌しながら熟成するのが望ましい。
反応時の濃度については、炭酸カルシウムは生産効率も考慮すると炭酸カルシウム懸濁液の濃度は10質量%以下が好ましく、5質量%がさらに好ましい。リン酸及び/または水溶性リン酸塩の濃度は40〜60質量%が好ましい。
用いる水溶性リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、等が挙げられる。
本発明によって得られるリン酸カルシウムは、炭酸カルシウムとリン酸を原料に用いた一般的な方法で得られる物に比べて粒子径が小さくなるという特徴があり、一次粒子径が5μm以下であり、好ましくは、2.5μm以下であり、1μm以下とすることもできる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実験1:炭酸カルシウム微粒子とパルプ繊維との複合体の合成
水酸化カルシウム(消石灰:Ca(OH)、1250g)と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、カナダ標準濾水度CSF:460mL、1250g)を含む水性懸濁液100Lを準備した。この水性懸濁液を、500L容のキャビテーション装置に入れ、反応容器中に炭酸ガスを吹き込んで炭酸ガス法によって炭酸カルシウム微粒子と繊維との複合体を合成した。反応温度は約25℃、炭酸ガスは市販の液化ガスを供給源とし、炭酸ガスの吹き込み量は12L/minであり、反応液のpHが約7になった段階で反応を停止した(反応前のpHは約12.8)。
複合体の合成においては、図1に示すように反応溶液を循環させて反応容器内に噴射することよって、反応容器内にキャビテーション気泡を発生させた。具体的には、ノズル(ノズル径:1.5mm)を介して高圧で反応溶液を噴射してキャビテーション気泡を発生させ、噴流速度は約70m/sであり、入口圧力(上流圧)は7MPa、出口圧力(下流圧)は0.3MPaだった。
得られた生成物(サンプルA)を電子顕微鏡で観察したところ、一次粒径が60〜90nmの炭酸カルシウムがパルプ繊維表面を覆っている複合体が生じていることを確認できた(図2)。複合体においては、パルプ繊維上に炭酸カルシウムが自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、56%であった。ここで、複合体の灰分は、複合体を525℃で約2時間加熱した後、残った灰の重量と元の固形分との比率から算出した(JIS P 8251:2003)。
実験2:リン酸カルシウムとパルプ繊維との複合体の合成
(1)サンプル1(図3):サンプルA(595mL、濃度4.2%)にリン酸(東ソー社製、濃度10%、57g)を添加して攪拌し、リン酸カルシウムとパルプの複合体を得た。具体的には、サンプルAを40℃のウォーターバス中でスリーワンモータにて850rpmで撹拌し、そこにリン酸をペリスターポンプで0.5g/分の速度で添加して、滴下終了後、さらに30分間撹拌を続けて熟成を行った。
(2)サンプル2(図4):サンプルA(595mL、濃度4.2%)に、二酸化チタン(堺化学工業社製、SSP−25、1.4g)およびリン酸(東ソー社製、濃度10%、57g)を添加して攪拌し、チタンが組み込まれたリン酸カルシウムとパルプの複合体を得た。サンプルAに二酸化チタンをあらかじめ添加しておいた以外は、サンプル1と同様にして反応を行った。
(3)サンプル3(図5):リン酸の濃度を60%、リン酸の添加量9.5gとした以外は、上記(1)と同様に複合体を合成した。
(4)サンプル4(図6):リン酸の濃度を60%、リン酸の添加量9.5gとした以外は、上記(2)と同様に複合体を合成した。
上記のようにして得られた複合体をエタノールで3回洗浄した後、電子顕微鏡で観察した。結果を図3〜6に示すが、いずれの複合体も、1次粒子径0.5〜2.5μm程度のリン酸カルシウムが繊維に定着していることが確認された。サンプル1および2は0.2〜1μm程度、サンプル3は0.5〜2μm程度、サンプル4は0.5〜2.5μm程度のリン酸カルシウムが繊維に定着していた。
実験3:複合体シートの製造と評価
<複合体シートの製造>
実験1および実験2で製造した複合体(サンプルA、サンプル1〜4)を、以下の手順によりシート化した(坪量:約60g/m)。
歩留剤を添加する場合は、カチオン性歩留剤(ND300、ハイモ社製)を100ppm、アニオン性歩留剤(FA230、ハイモ社製)を100ppm添加し、500rpmにて撹拌して懸濁液を調成した。得られた懸濁液からJIS P 8222に基づいて坪量が約60g/mの複合体シートを製造した。歩留剤を添加しない場合は、複合体のスラリーを用いて坪量が約60g/mの複合体シートを製造した(シート♯2−2、♯4−2)。
<複合体シートの評価>
得られたシートをSEM−EDSで分析した結果を図7〜12に示す。SEM-EDS測定を行った結果、チタンを添加したサンプルは、シート上にチタンが分布して定着していることが明らかとなった(元素マッピング画像の青色部分がチタンである)。
また、下記の表に示すように、仕込み比から計算した元素のモル比(サンプル1・3:Pが29%、Caが71%/サンプル2・4:Pが25%、Caが62%、Tiが13%)と、サンプル表面のSEM−EDSから定量した元素のモル比は、歩留剤の添加有無に関わらず、おおよそ一致した。一般に、チタンを紙に内添する場合にチタンの歩留りを高くすることは難しいとされるが、本発明のような複合体を用いることで薬品を用いなくても効率よくチタンをシートに含ませることができた。
また、表2に、得られたシートの下記の方法にて測定した物性を評価した結果を示す。リン酸に変換する前の微粒子軽質炭酸カルシウム複合体のシート(♯5)と比較して、リン酸カルシウム複合体のシートは不透明度が向上していた。また、リン酸カルシウム複合体のシートは、嵩高で曲げこわさも高かった。
・坪量:JIS P 8124:1998
・厚さ:JIS P 8118:1998
・密度:厚さ、坪量の測定値より算出
・灰分:JIS P 8251:2003
・白色度:JIS P 8212:1998
・不透明度:JIS P 8149:2000
・比散乱係数:TAPPI T425(ISO 9416)に規定される式により算出した。
・透気抵抗度:JIS P 8117:2009
・平滑度:JIS P 8155:2010
・L&W曲げこわさ:ISO 2493に準じて、L&W Bending Tester(Lorentzen&Wettre社製)で、曲げ角度が15度の曲げこわさを測定した。
・裂断長:JIS P 8113:2006
・BET比表面積:マイクロメリティックス・ジェミニ2360(島津製作所製)を用いて窒素吸着法により算出した。

Claims (18)

  1. 平均一次粒子径が5μm以下のリン酸カルシウム粒子と繊維との複合体。
  2. リン酸カルシウム粒子の平均一次粒子径が1μm以下である、請求項1に記載の複合体。
  3. 前記繊維がパルプ繊維である、請求項1または2に記載の複合体。
  4. 前記リン酸カルシウム粒子と前記繊維との重量比が5:95〜95:5である、請求項1〜3のいずれかに記載の複合体。
  5. さらにチタンが定着している、請求項1〜4のいずれかに記載の複合体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の複合体を含んでなるシート。
  7. 繊維を含む溶液においてカルシウム源とリン酸源を反応させることによって、平均一次粒子径が5μm以下のリン酸カルシウム粒子と繊維との複合体を製造する方法。
  8. 繊維を含む溶液において炭酸カルシウムを合成して、平均一次粒子径が5μm未満の炭酸カルシウム粒子と繊維との複合体を得る工程、
    この複合体とリン酸を反応させてリン酸カルシウムと繊維との複合体を得る工程、
    を含む、請求項7に記載の方法。
  9. キャビテーション気泡の存在下で、繊維を含む溶液において炭酸カルシウムを合成する、請求項8に記載の方法。
  10. 炭酸カルシウム粒子の平均一次粒子径が1μm以下である、請求項8または9に記載の方法。
  11. キャビテーション気泡の存在下で、消石灰の水性懸濁液と二酸化炭素を含む気体とを反応させて炭酸カルシウムを合成する、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 反応容器内に液体を噴射することによってキャビテーション気泡を発生させる、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 前記繊維が、パルプ繊維を含む、請求項8〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 消石灰の水性懸濁液を反応容器内に噴射することによってキャビテーション気泡を発生させる、請求項8〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 消石灰の水性懸濁液として、前記反応容器から循環させた反応液を用いる、請求項8〜14のいずれかに記載の方法。
  16. チタンの存在下でリン酸を反応させて、チタンが定着したリン酸カルシウム・繊維複合体を得る工程を含む、請求項8〜15のいずれかに記載の方法。
  17. 請求項1〜5のいずれかに記載の複合体を含んでなる製品。
  18. 前記製品がシートの形態である、請求項17に記載の製品。
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