JPWO2016199766A1 - 食材への物質含浸方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】食材に短時間で大量の物質を含浸することができる新規な方法の提供。【解決手段】本発明による食材への物質含浸方法は、減圧下で食材内の水の相転移現象を利用して含浸駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に物質を含浸する方法であって、食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させて、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を引き起こし、続いて、含浸物質に接触した食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を引き起こし、含浸駆動力を発生させて、食材内に物質を含浸することを特徴とする。

Description

本発明は、減圧下での水の相転移現象を利用して含浸駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に効率的に物質を含浸する方法、及びその方法によって製造される物質含有食材に関する。
超高齢社会を背景として、高齢者用食品の需要が高まっている。これまでの高齢者用食品として主流であった刻み食や流動食、成型食に加えて、近年では、形状保持軟化食品が注目を集めている。形状保持軟化食品は、見た目が自然で、食べ応えのある大きさであるにもかかわらず、その色や形、味や香りが楽しめ、食材の素材感を残したまま軟らかい。
形状保持軟化食品の製造方法として、食材に食品用分解酵素を含浸し、食材内の組織接着物質を分解して軟らかく調製する方法が用いられ、食品工場での利用も進んでいる。通常、食材への酵素の含浸には、浸漬処理ではなく減圧含浸処理が利用される。減圧含浸処理は短時間に分解酵素を食材中心部まで導入できるため、厚みある形状保持食材においても食材内部の組織接着物質を偏りなく分解でき、食材をムラなく均一に軟化できる特長がある。通常の食品加工では煮込みに代表される加熱処理が比較的短時間での物質浸透手段として利用されるが、酵素は加熱により変性して失活するため利用できない。加圧含浸処理でも酵素を含浸することは可能であるが、装置コスト等の面から減圧処理が優れている。酵素含浸後、食材内での酵素分解の程度を制御すれば、食材の形状を保持したまま、健常者にとっても軟らかく食べやすい食材から、高齢者・要介護者用の舌や歯茎で容易に潰せる非常に軟らかい食材まで、様々な軟らかさに調整することができる。
発明者らは、これまでに、凍結食材を酵素液中で解凍して減圧し、減圧下に5〜60分間保持して酵素を食材内に急速に含浸する方法を発明した(特許文献1)。凍結含浸法とよばれ、食材を凍結解凍して細胞間隙を緩和する前処理と、素材内細胞間隙の空気及び水分と食材外の酵素とを急速置換する減圧圧力処理が必須工程となっている。酵素を含浸した後、酵素反応、加熱酵素失活、包装工程などを経て形状保持軟化食品が製造される。減圧処理して物質を食材に含浸する方法として真空含浸法は古くから知られているが、食材中心部まで物質を含浸するには、凍結乾燥などを用いて食材を多孔質化し、十分な空隙を形成して導入する必要がある(特許文献2)。多孔質でない食材を真空含浸した場合、物質の含浸は食材表面に留まる。凍結含浸法では、凍結処理を行って、氷結晶生成による組織構造変化を促し、解凍により組織内に空隙を発生させることで、その後の減圧処理による食材内空気と酵素液との飛躍的な置換効率の向上につながる。その結果、酵素などの高分子物質をも中心部まで速やかに含浸することができる。
現在では食材の組織を緩和する方法として、凍結解凍の他に、誘電加熱(特許文献3)、飽和水蒸気加熱(特許文献4)、過熱水蒸気処理(特許文献5)、テンダライズ処理(特許文献6)などが代替処理として考案されている。このような方法によって、食材組織の構造変化によって生じた空隙の空気と酵素の効率的な置換が実施されている。また、含浸処理操作も様々な工夫がされ、減圧処理を複数回繰り返して含浸効率を高める方法が提案されている(特許文献7、非特許文献1)。さらには減圧保持状態での食材内からの空気の排出を十分に促すため、減圧装置に超音波処理機能を付加して物理的振動を与える方法や、マイクロ波加熱して加温する方法、減圧処理の後に加圧処理を追加する方法なども考案されている(特許文献8〜12)。これらの方法を組み合わせて食材内に酵素を含浸し、形状保持軟化食品の製造が行われている。
これら食材組織を緩和させる前処理と減圧処理とを組み合わせた減圧含浸方法は、いずれも非特許文献2で明らかにされている凍結含浸原理と同様の仕組みにより、食材への物質含浸が達成される。すなわち、組織緩和した食材を減圧処理すると、組織緩和で生じた食材内の空気が、ボイル・シャルルの法則に則って膨張する。膨張空気は組織間の水分を食材外に押し出し、組織間隙は膨張空気で満たされる。その後、減圧状態から常圧に復圧することにより、組織間隙の膨張空気の収縮に追従して酵素液が組織間隙に含浸される。
特開2003−284522号公報 特開2004−194549号公報 特開2008−187908号公報 特開2010−115164号公報 特開2011−160763号公報 特開2011−092216号公報 特開2012−055191号公報 特開2001−238612号公報 特開2002−354988号公報 特開2003−174850号公報 特開2003−339328号公報 特開2014−094342号公報
凍結減圧酵素含浸による植物組織の軟化及び単細胞化、日本食品科学工学会誌、51、395−400(2004) Effects of freezing conditions on enzyme impregnation into food materials by freeze-thaw infusion、Food Sci. Technol. Res.、16(5)、 359-364 (2010)
本発明者らは、超高齢社会における形状保持軟化食品の急速な需要拡大に対応するため、形状保持軟化食品の工業的な大量生産方法について検討した。その結果、既存の減圧圧力処理を使用した食材内空気の膨張と収縮現象を利用する減圧含浸方法では、2つの問題点があることを発見した。
(1)減圧処理にかかる時間が長く、大量生産ラインでは含浸工程が律速工程となる。
減圧処理に伴う食材内空気の膨張は、ボイル・シャルルの法則に則って圧力低下に反比例して起こるが、食材組織の構造やその柔軟性の影響を受け、組織間隙内に膨張空気が十分に満たされるまでに時間を要する。食材の形状が大きくなればなるほどその傾向は大きく、その結果、5分以上の減圧保持時間を設定したり、減圧操作のポンピングにより食材構造に柔軟性を付与して空気の膨張を促進したりする必要がある。組織間隙内を膨張空気で十分に満たすことなく常圧へ復圧すると、膨張空気収縮を駆動力とする外液導入効果が小さく、その結果、食材内への物質含浸にムラが発生する。
(2)食材に含浸される酵素量が食材内の基質量に対して少ないため、続く酵素反応工程において、長時間の酵素反応時間を要する。
減圧膨張した食材内空気の収縮作用を駆動力とする減圧含浸方法では含浸量が少なく、食材を介護食の軟らかさにまで軟化するには、長時間かけてゆっくりと反応させるか、高濃度の酵素液を使用する必要がある。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、低分子物質、高分子物質、及び粘性物質等の物質を食材に短時間で大量に含浸することができる新規な方法を提供することにある。より好ましくは、食材への酵素導入時間の短縮と、酵素導入量の増加を同時に達成できる新たな含浸方法を提供することにある。
発明者らは、物質含浸方法について鋭意検討した結果、圧力変化に伴う食材内の水の相転移現象と、発生する水蒸気の体積膨張・収縮現象とを利用して強力な物質含浸駆動力を発生させることにより、上記2つの課題を同時に解決できる有用性の高い物質含浸方法が実現できるとの知見を得た。すなわち、食材内部への物質含浸において、従来法である圧力処理による食材内「空気」の体積変化を利用するのではなく、食材内「水」の体積変化を物質含浸駆動力として利用することにより、課題解決が図られるとの知見を得た。より詳しくは、食材の組織を緩和する前処理工程を施した食材を、加温した状態で減圧処理し、減圧下で(1)食材内の水を相転移(気化)させて体積を増加させる工程、(2)生じた水蒸気を食材内で膨張させる工程、(3)食材内の膨張水蒸気を収縮させる工程、(4)食材内の水蒸気を凝縮させる工程、を順次または同時に実施する物質含浸方法である。この食材内の水の相転移現象を利用することにより、従来法よりも食材内の組織間隙に膨張気体が満たされるまでの時間が飛躍的に短縮され、かつ食材内への強力な物質含浸駆動力の発現により、物質含浸量が顕著に増加するとの知見を得た。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]減圧下での食材内の水の相転移現象を利用して含浸駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に物質を含浸する方法であって、
食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させて、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を引き起こし、
続いて、含浸物質に接触した食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を引き起こし、含浸駆動力を発生させて、食材内に物質を含浸することを特徴とする、食材への物質含浸方法。
[2]食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させる工程において、食材にかかる圧力P(kPa)を、気化熱に伴い低下する食材温度T’(K)を用いて下記数式(I)(アントワン式)で計算した水蒸気圧P’(kPa)に対して下回るように制御(P<P’)しながら、食材内の水を沸騰させる、[1]に記載の食材への物質含浸方法。
Figure 2016199766
[3]食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させる工程において、食材にかかる圧力P(kPa)及び減圧処理時間t(s)を、食材温度T’(K)でのアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)並びに沸騰開始時間t=t(s)及び沸騰終了時間t=t(s)を用いて下記数式(II)で計算した圧力差総和値S(kPa・s)が115kPa・s以上となるように制御する、[2]に記載の食材への物質含浸方法。
Figure 2016199766
(式中、S:圧力差の総和値(kPa・s )、t:減圧処理時間(s)、
P(t):減圧処理時間t(s)における、食材にかかる圧力P(kPa)、
P’(t):減圧処理時間t(s)における、食材温度T’(K)でのアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)、
:P=P’となり、食材内の水の沸騰が開始するまでの減圧開始からの時間(s)、
:P=P’となり、食材内の水の沸騰が終了するまでの減圧開始からの時間(s))
[4]食材を減圧処理し、食材内の水を沸騰させる工程において、10kPa以上の圧力において食材内の水の沸騰を開始させる、[1]〜[3]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[5]食材の組織間隙を水蒸気で満たしたあと、食材を昇圧処理する工程において、食材にかかる圧力P(kPa)が、気化熱に伴い低下する食材温度T’(K)を用いてアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)に対して上回る(P>P’)までの圧力区間において、1kPa/秒以下の速度で昇圧させ、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を引き起こし、物質の含浸駆動力を発生させる、[1]〜[4]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[6]下記のI〜Vの工程:
I. 食材の組織を緩和する前処理工程、
II. 前処理した食材を加温する工程、
III. 加温した状態の食材に、含浸する物質を接触させる工程、
IV. 食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
V. 食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、
を上記順序で含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[7]下記のI〜Vの工程:
I. 食材の組織を緩和する前処理工程、
II. 前処理した食材を加温する工程、
III. 加温した状態の食材を減圧処理して、減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
IV. 減圧下の食材に、含浸する物質を接触させる工程、
V. 食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、
を上記順序で含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[8]下記のI〜Vの工程:
I. 食材の組織を緩和する前処理工程、
II. 前処理した食材に含浸する物質を接触させる工程、
III. 含浸する物質を接触させた食材を加温する工程、
IV. 減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
V. 食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、
を上記順序で含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[9]下記のI〜Vの工程:
I. 食材に含浸する物質を接触させる工程、
II. 食材の組織を緩和する前処理工程、
III. 含浸する物質を接触させた食材を加温する工程、
IV. 食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
V. 食材を昇圧処理し、水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材内の食材の組織内に物質を含浸する工程、
を上記順序で含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[10]食材を加熱して前処理工程と加温処理工程を同時に実施する、[6]、[7]、又は[9]に記載の食材への物質含浸方法。
[11]前処理工程として、冷凍、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、焼成加熱、ジュール加熱、テンダライズ(筋切り)、タンブリング、圧延、脱水、乾燥、酸処理、アルカリ処理、及び酵素処理からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、[6]〜[10]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[12]加温工程において、食材の中心温度を50℃以上100℃以下に昇温させる、[6]〜[11]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[13]加温工程の加温方法として、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、焼成加熱、及びジュール加熱からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、[6]〜[12]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[14]含浸する物質として、タンパク質、油脂、酵素、多糖類、増粘剤、乳化剤、及び澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の高分子物質を用いる、[1]〜[13]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[15]0℃以上50℃以下の温度で食材に含浸する物質を接触させる、[1]〜[14]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[16]食材を食品用軟包材又は硬質容器に入れた状態で実施する、[1]〜[15]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[17][1]〜[16]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法によって製造された、物質含浸食材。
[18][17]に記載の物質含浸食材を用いた、加工食品。
[19][1]〜[16]に記載の食材への物質含浸方法を実施する、減圧含浸装置。
本発明の物質含浸法は、食材内の水の相転移現象を利用した含浸法であり、物質含浸駆動力は圧力変化に伴う水の沸騰に伴う体積増加と体積膨張、水蒸気の体積収縮及び凝縮による体積減少の、一連の水の体積変化で発生する。従来の食材内に含有される空気の膨張及び収縮による物質含浸駆動力よりも大きい。そのため、同一形状の食材においては、飛躍的な含浸時間の短縮と含浸物質量の顕著な増加が見られる。更には粘性物質の含浸も可能となる。
例えば、食材中心部まで酵素を含浸して形状保持軟化食品を製造する製造工程において、従来、数分から数十分かかった酵素含浸工程が、数秒から数十秒に短縮できる。そのため、バッチ処理で行っていた酵素含浸処理が、連続式の真空包装機等を利用し、食材への物質含浸と袋詰め包装処理とを同時に行うことができ、連続工程による大量生産が可能となる。さらに食材内への酵素含浸量が増加するため、組織間隙物質の分解時間が短縮されるため、酵素分解工程の短時間化も達成できる。また、粘性物質の含浸も可能となるため、形状保持軟化食品の製造においては、酵素とともに増粘剤等の粘性物質の同時含浸が可能で、型崩れ防止や離水抑制機能を付与した形状保持軟化食品の製造も可能となる。
含浸可能な物質は高分子物質、粘性物質に限らず、低分子物質も可能であり、鉄分やミネラル、加熱分解を受けやすいビタミン類等の栄養成分を高含有する形状保持栄養強化食品の製造や、医療用造影剤を高含有する形状保持造影検査食品の製造もできる。あるいは呈味性や香気成分、色素等を高含有する新規食品も製造できる。
実施例1における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 比較例1における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 比較例2における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 実施例2における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 実施例3における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 比較例4における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 比較例5における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 比較例6における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 実施例4における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 比較例7における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 実施例5における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 実施例6における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 比較例8における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 比較例9における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。 実施例7における庫内圧力と沸騰圧力の変化を示した図である。
本発明は、外観で認識可能な形状を保持した食材内への物質含浸方法を提供するものであり、食材内の水の相転移現象と、発生する水蒸気の体積膨張・収縮現象とを利用する物質含浸方法である。
(1)食材調製
本発明に用いられる外観で認識可能な形状を保持した食材とは、外観から食材そのものが何の食材であるかを十分認識できる形状を保持した食材とすることができる。食材の元の組織構造をもった形状保持食材とすることができ、ミキサーなどですり潰し、食材組織が崩壊した流動食やペースト食等は対象としない。通常の食事で食する形状ある食材を利用でき、食材をそのまま利用することもできるし、切断して利用することもできる。切断して調製する場合は、例えば、銀杏切り、輪切り、半月切り、短冊切り、スライス切り、乱切りなどで調製された食材とすることができる。
このような食材の種類としては動植物性食材のいずれであってもよく、生の状態の食材や、煮る、焼く、蒸す、揚げるなどの加熱や調理した食材も用いることかができる。具体的には、大根、人参、牛蒡、筍、生姜、キャベツ、白菜、アスパラガス、葱、玉葱、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、カリフラワー、胡瓜、茄子、隠元などの野菜類、ジャガイモ、さつまいも、里芋、カボチャなどの芋類、大豆、小豆、金時豆、黒豆、エンドウ豆、ひよこ豆などの豆類、米、小麦、粟などの穀類、みかん、りんご、もも、サクランボ、梨、パイナップル、バナナ、梅、苺、栗などの果実類、椎茸、シメジ、エノキ、ナメコ、松茸、エリンギなどのきのこ類、鯛、鮪、鯵、鯖、鰯、鱈、鰤、鮭、赤魚、ホッケ、イカ、タコ、ホタテ、アサリ、ハマグリなどの魚介類、鶏肉、豚肉、牛肉、馬肉、羊肉、猪肉などの肉類、コンブ、海苔、ヒジキなどの藻類などの食材を例示することができる。更に上記食材を加工した加工食品であってもよい。加工食品としては、肉団子、ハンバーグ、焼売などの畜肉練製品、卵焼き、オムレツ、ゆで卵などの卵製品、蒲鉾、竹輪などの水産練製品、漬物、惣菜、麺類、各種菓子など、いずれの加工食品であってもよい。また、肉じゃが、筑前煮などの惣菜でもよい。これら加工食品は、再成型によって本発明の組織構造を持った外観で認識可能な形状保持食材とすることができる。
(2)食材の組織緩和処理
食材には、物質の含浸処理に先立って組織を緩和する前処理を施すことができる。組織を緩和することにより、後述する減圧処理による食材内水分の相転移に伴う水体積増減が可能となり、食材内に強力な物質含浸駆動力が発生する。前処理により、食材の中心部まで物質を効率的に含浸することができる。組織緩和の前処理方法としては、冷凍、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、テンダライズ(筋切り)、圧延、脱水、乾燥、酸処理、アルカリ処理、酵素処理などが挙げられ、これら群から選ばれる1または2以上を組合せて処理することができる。ここで組織間隙とは、例えば、植物性食材であれば細胞と細胞が接着している細胞間隙、動物性食材であれば筋繊維タンパク質や筋原繊維タンパク質、結合繊維タンパク質などのタンパク質繊維間隙や、脂肪細胞間隙などとすることができる。
冷凍や解凍処理は食材内の水分の氷結晶生成及び融解現象により組織を緩和できる。冷凍には、一般的な冷凍装置が使用でき、−18℃などの緩慢冷凍温度帯から、−40℃などの急速冷凍温度帯も利用できる。急速冷凍では氷結晶が成長しにくく、食材によっては十分な組織緩和効果が得られない場合もあるが、加熱などの他の組織緩和方法と組み合わせることにより利用することができる。
解凍方法は、自然解凍、流水中解凍、冷蔵庫解凍や、加熱解凍、誘電加熱解凍などを用いることができる。ただし、食材からのドリップを最小限にとどめる方法が品質の面から好ましく、食材に応じて適宜選択する。
加熱処理を利用した組織緩和方法は、加熱分解による軟化によって、組織を緩和できる。とりわけ誘電加熱と過熱水蒸気加熱では、加熱による軟化とともに、食材表面の乾燥により空隙が生成されることから、相乗的に組織緩和に効果的である。肉類のように動物性食材の場合には、タンパク質を例えば65℃以上に加熱して熱変性させて収縮させることにより、組織間に空隙を設けて緩和させることができる。また一方では、例えば65℃以下の低温で加熱することにより、組織の柔軟性を残すことで組織をより緩和させることもできる。
テンダライズ、タンブリング、圧延処理は、食材の物理的破壊により組織を緩和できる。特に肉類や魚介類などの食材に用いられ、テンダライズによる筋切りにより組織の柔軟性を高めることによって組織緩和できる。テンダライザーとして、突き刺し型、ロール回転型のいずれも利用することができ、刃の密度やピッチ幅は、形状が崩壊しないように食材の大きさや厚みによって適宜選択するとよい。タンブリング処理では、食材の形状が崩壊しないように回転数を設定して処理することができる。タンブリング処理では食材への味付けなどを同時に行うこともでき、真空タンブリングを利用することもできる。圧延処理では、ミートハンマーなどを利用して食材を処理することにより組織を一部破壊して柔軟化し、組織を緩和させることができる。
脱水は、食材内の一部水分を取り除くことにより、組織内に空隙ができることから組織緩和できる。脱水方法として、遠心分離機のような装置を用いてもよく、吸水紙などの吸水作用をもつ素材に接触させて脱水しても良い。また食塩などの塩類を利用して浸透圧効果で脱水してもよい。
乾燥は食材の水分減少により空隙を生成させることで組織を緩和することができる。乾燥方法は熱風や冷風などの送風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、マイクロ波乾燥などが利用できる。本発明では食材内の水の相転移を利用するため、過度に乾燥させることなく、食材内の一部水分を乾燥させたのち、保管して食材内の水分分布を均質化させると食材内に空隙が増えて組織が緩和される。
酸、アルカリ処理は食材組織を変性させることにより組織緩和できる。酸処理としてはクエン酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸などの食品添加物が使用でき、アルカリ処理としては、炭酸塩、リン酸塩、クエン酸塩などの食品添加物が使用できる。酵素処理は食材表面の組織を分解することにより、食材組織を緩和する。肉類や魚類などの動物性食材では予めプロテアーゼ酵素液に浸漬し、野菜や果実類の植物性食材では予めペクチナーゼやセルラーゼ酵素液に浸漬し、食材表面を分解することにより組織が緩和される。
(3)食材の加温処理
好ましくは組織を緩和させる前処理を行った後、後述(5)のとおり食材を減圧下において物質を含浸する。含浸前にあらかじめ食材を加温することにより、減圧処理において容易に食材内の水を沸騰させ、食材内に水蒸気を発生させることができる。加温温度としては、食材温度を50℃以上に加温することが好ましく、さらに60℃以上に加温するとより好ましい。食材の加温方法としては、煮る、焼く、蒸す、揚げるなど、食材の調理、加工に用いられる方法であればいずれの方法も用いることができる。また加熱方法として、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、焼成加熱、ジュール加熱が例示でき、伝導、輻射、対流によるいずれの加熱原理を用いても良い。
(4)含浸物質
食材に含浸する物質は、低分子物質、高分子物質、及び粘性物質のいずれからも選択が可能で、1種または2種以上を組合せて含浸することもできる。具体的には、一般的に食品の調理や加工に使用されるタンパク質、油脂、酵素、多糖類、増粘剤、乳化剤、澱粉などの高分子物質及び粘性物質とともに、ビタミン類や、鉄、カルシウム、亜鉛、ヨウ素等のミネラル類、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸などの各種アミノ酸、あるいは医療用検査食に使用されるヨード造影剤(イオパミドールなど),バリウム造影剤(硫酸バリウムなど)等の医療用造影剤などの低分子物質も含浸できる。
例えば、形状保持軟化食品の製造目的には酵素を含浸し、さらに離水抑制機能を付与する場合は増粘剤や加工澱粉を含浸する。また、ミネラルやビタミン類などの栄養強化食品とする場合には、それら物質を含浸する。また食材の調味も同時に行う場合には、調味料やアミノ酸等を含浸する。新食感食品、機能性食品、造影検査用食品の製造においても同様に、適宜、含浸物質を選択して作製することができる。
酵素としては、例えば、プロテアーゼ、ペプチダーゼなどタンパク質をアミノ酸及びペプタイドに分解する酵素、アミラーゼ、グルカナーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ、ヘミセルラーゼ、β−グルコシダーゼ、マンナーゼ、キシラナーゼ、アルギン酸リアーゼ、キトサナーゼ、イヌリナーゼ、キチナーゼなどデンプン、セルロース、イヌリン、グルコマンナン、キシラン、アルギン酸、フコイダンなどの多糖類をオリゴ糖に分解する酵素、リパーゼなど脂肪を分解する酵素、パンクレアチン、ペプシンなど食材の消化・分解作用のある酵素などを例示することができる。これらは1種または相互に作用を阻害しない範囲で2種以上を組み合わせて使用することもできる。
油脂としてはサラダ油、コーン油、大豆油、ゴマ油、菜種油、米油、綿実油、パーム油、豚油、牛脂、乳脂など一般的に食品として用いられる油脂を例示することができる。油脂は単独で使用しても良いし、乳化油脂として用いることもできる。あるいは乳化剤のみを含浸しても良い。乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルや、レシチン、カゼインナトリウムなど、食品加工に用いられる乳化剤を利用できる。
増粘剤及び澱粉としては、例えば、小麦デンプン、米デンプン、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、サツマイモデンプン、カードラン、寒天、ゼラチン、ペクチン、CMC、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガムなどを例示することができる。デンプンは加工デンプンとして利用することもできる。澱粉は未糊化状態あるいは糊化状態のいずれでも使用することができる。
含浸物質を2種以上組合せて使用する場合には、複数の物質が相互に阻害しない範囲で使用する。含浸物質は、食材に液体でも粉体でもどちらの状態でも供給でき、食材に塗布する、噴霧する、浸漬するなどの方法で接触させることができる。含浸物質を溶媒に溶解して接触する場合には、含浸物質の性質に合わせて、pHを調整することもできる。酵素などのタンパク質を含浸する場合には、タンパク質が変性しないようにリン酸やクエン酸、あるいはその塩類等を用いて、pH3〜10の範囲で調整するとよい。食材と含浸物質の接触は、含浸のための減圧処理前に接触させる方法、減圧下で接触させる方法のいずれも用いることができる。
(5)圧力装置
食材を減圧処理して物質を含浸するには減圧装置を用いる。減圧装置としては、例えば、真空ポンプを備えた真空缶、真空包装機、真空冷却機などの汎用の減圧装置が利用できる。本発明の食材内の水の相転移現象による物質含浸方法が実施できる減圧装置であれば、いずれの減圧装置も利用できる。減圧装置は、好ましくは減圧・復圧速度を任意に設定できる装置を具備するものであり、減圧下で含浸物質を供給する場合には、減圧下で含浸物質を供給する機構を具備し、あるいは減圧下で食材を加温等、温度制御できてもよい。食材の減圧処理は、容器に入れた状態で密閉可能な減圧庫内に設置して実施でき、また食材を入れた硬質容器、軟包材等の容器内で減圧処理して実施することもできる。硬質容器としては、例えば、缶、瓶、陶器、磁器、及び樹脂成形容器等を用いることができる。軟質容器としては、例えば、フレキシブルパウチ及びフィルム成形容器等を用いることができる。
(6)物質含浸方法
本発明の物質含浸方法は、(i)食材に含浸物質を接触させる工程、(ii)食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、(iii)食材を昇圧処理し、水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、を実施することを特徴とする。発生する含浸駆動力は、既存の減圧含浸法である食材内の空気の圧力変化に伴う体積膨張及び収縮現象を用いた物質含浸駆動力よりも著しく大きい。さらに組織緩和した食材を用いることで、その食材の柔軟性を利用でき、食材内の水の体積変化が確実に起こり、物質の速やかな含浸と十分な含浸量を確保できる。
(i)食材に含浸物質を接触させる工程
食材に物質を含浸するには、後述する工程(iii)を実施する以前に物質を食材に接触させる。具体的には(a)加温した食材に物質を接触させたあと減圧工程を実施する方法、(b)減圧工程を開始したあと後述の工程(iii)を実施するまでに接触させる方法、(c)食材に物質を接触させたあと、加温した後、減圧工程を実施する方法、(d)食材の組織緩和工程以前に物質を接触させる方法、などが実施できる。
本発明では、加温した食材に含浸物質を接触させた場合、接触方法によっては物質が熱の影響を受ける可能性がある。例えば酵素や栄養強化タンパク質、ビタミン類、色素などは熱により変性したり、栄養素が分解したり、変色する場合がある。したがって、接触工程(a)〜(d)のいずれを実施するかは、含浸物質の種類や食材の特性、接触させる際の含浸物質と食材の使用量割合、接触方法などを考慮して適宜選択する。含浸物質と食材の接触は、塗布、噴霧、浸漬の方法が用いられ、含浸物質は粉末状でも水などの溶媒に溶解させた溶液状態でも、あるいは溶媒に分散させた状態でも、乳化剤で乳化させた状態でも用いることができる。液体状で接触させる場合は、接触後に食材を液体から取り出してその後の処理を実施しても良く、液体に浸漬したままその後の処理を実施しても良い。
(ii)食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させる工程
本工程は次のとおり実施することができる。大気圧下では水は100℃で沸騰するが、減圧下では100℃以下で沸騰し水蒸気となる。物質が液体から気体となる相転移が起こる温度と圧力の関係は一意に決まっており、水においては例えば下記数式(I)(アントワン式)により求めることができる。
Figure 2016199766
加温した食材を減圧下に置くと、理論値では食材温度(食材の中心温度)60℃(333K)の食材では約20kPa、70℃(343K)では約31kPa、80℃(353K)では約47kPa下で沸騰する。食材内の水の体積は、沸騰して気化することにより著しく増加する。沸騰温度によって体積増加量は異なるものの、理論上1、000倍以上に体積を増加させることができる。そのため、組織緩和した食材において、組織間隙の水分は体積が著しく増加しながら、組織緩和した食材内の組織間隙を速やかに水蒸気で満たすことができる。なお、事前に組織緩和していない食材では、組織構造の抵抗により水分の沸騰に伴う体積増加が起こりにくく、組織間隙が水蒸気で十分に満たされない場合がある。この場合、食材表面や一部の組織構造が変化しやすい部位のみ水蒸気で満たされ、含浸駆動力が発揮されるため、一部位のみ物質が含浸され、食材全体にわたって物質導入されないことがある。
この食材内の水の沸騰は、組織間隙全体が水蒸気で満たされるまでの間、継続して発生させる必要がある。食材内の水は、その食材温度の水蒸気圧に達すると急激に沸騰するものの、食材の温度は気化熱により低下する。そのため、食材温度の水蒸気圧に到達後、その圧力で定圧維持する、あるいはさらに減圧してもその圧力低下速度が遅い場合には、食材内で水の沸騰は継続して起こらず、結果、食材内の一部の水のみの沸騰にとどまる。食材内の組織間隙にある水を沸騰させ食材組織間隙全体に渡って水蒸気で満たすためには、気化熱による食材温度の低下に合わせて、食材にかかる圧力を更に減じ、食材内の水分が継続して沸騰するよう、圧力を制御することが求められる。あるいは減圧下の食材を外部から伝熱ヒーターや電子レンジなどにより加温し、食材温度の低下を抑制して、継続して食材内の水分を沸騰させる必要がある。
食材にかかる圧力が、食材温度の水蒸気圧に到達後にさらに圧力を制御して食材内の水を継続して沸騰させる方法においては、具体的には、水の気化熱に伴う食材の温度低下に合わせて、蒸気圧曲線のアントワン式で計算した水蒸気圧(食材内の水が沸騰する圧力)以下になるように、食材にかかる圧力(例えば減圧槽の庫内圧力)を制御すればよい。すなわち、減圧下で食材が沸騰する圧力に達した後、食材にかかる圧力P(kPa)を、気化熱に伴い低下する食材温度T’(K)において上記アントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)に対してP<P’となるように制御して、食材内の水の沸騰状態を維持すればよい。
この圧力制御においては、減圧処理開始時のP>P’状態から、減圧処理時間tにおいてP=P’となり、食材内の水の沸騰が始まる。その後はP<P’となり食材内の水の沸騰状態が継続する。品温が下がるか、あるいは食材にかかる圧力を上昇させることにより、tにおいてP=P’となり、食材内での水の沸騰は終了してP>P’となる。この沸騰開始時間tから沸騰終了時間tまでのP<P’となる圧力区間において、PとP’との圧力差の総和が大きいほど食材内の水は全体にわたって確実に沸騰し、後述する(iii)において強力な物質含浸駆動力が得られる。P’とPの圧力差の総和は、時間tからtまでの各圧力値の積分値の差から求めることができる。
すなわち、x軸を減圧処理時間t、y軸を圧力pとした時間と圧力のグラフにおいて、食材にかかる圧力P及び食材温度T’でのアントワン式で計算した水蒸気圧P’の減圧処理時間tに対する圧力変化の関数としてそれぞれp=P(t)、p=P’(t)とすると、t=tからt=tまでのPとP’の圧力変化曲線で囲まれた面積が圧力差の総和であり、下記数式(II)で計算することができる。
Figure 2016199766
(式中、S:圧力差総和値(kPa・s )、t:減圧処理時間(s)、
P(t):減圧処理時間tにおける、食材にかかる圧力P(kPa)、
P’(t):減圧処理時間tにおける、食材温度T’でのアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)、
:P=P’となり、食材内の水の沸騰が開始するまでの減圧開始からの時間(s)、
:P=P’となり、食材内の水の沸騰が終了するまでの減圧開始からの時間(s))
本願の特徴である急速かつ大量な物質含浸を実施するには、圧力差総和値Sが、好ましくは115kPa・s以上、より好ましくは120kPa・s以上5000kPa・s以下、さらに好ましくは130kPa・s以上3000kPa・s以下、さらにより好ましくは150kPa・s以上1000kPa・s以下、最も好ましくは170kPa・s以上850kPa・s以下となるように設計するとよい。この圧力差総和値Sは、食材中心温度の変化から食材中心部の水の水蒸気圧を計算し、食材にかかる圧力との差から求めている。そのため、圧力差総和値Sが上記条件を満足すれば、食材中心で本願の物質含浸処理が十分に実施されており、しかるに、食材の大きさにかかわらず、その食材に物質が十分に含浸される。
圧力差総和値の上記の条件を満足させる一つの方法として、減圧過程での沸騰開始圧力を10kPa以上となるよう設定し、続いて圧力をP<P’になるように制御する方法が挙げられる。10kPa以上で沸騰させ、引き続き減圧処理することにより、P<P’の沸騰状態を継続でき、更に生じた水蒸気を膨張させて組織間隙を速やかに水蒸気で満たすことができる。この水蒸気膨張は、ボイル・シャルルの法則により、圧力の低下に反比例して起こる。沸騰圧力から圧力を減ずれば減ずるほど膨張率は高まるため、沸騰開始圧力が高いほど好ましい。
例えば、食材をあらかじめ50℃以上、より好ましくは60℃以上に加温した食材を用いて急速に減圧処理することにより、沸騰開始圧力を10kPa以上に設定することができる。ここで急速な減圧処理の平均減圧速度(大気圧から設定した圧力まで到達するのにかかる時間から、「(設定圧力−大気圧)/時間」、で求められる平均減圧速度)は、絶対値で、例えば、0.7kPa/s以上、好ましくは1.0〜101kPa/s、より好ましくは1.5〜101kPa/sとすることができる。80℃に加温した食材を急速に減圧すると、食材内の水は約40kPaで沸騰し、相転移により急激に体積が増加して(理論値で約1,500倍)組織間隙に満たされ、食材内部からの水蒸気排出が見られる。さらに1kPaまで連続して減圧すると、ボイル・シャルルの法則により、気化した水蒸気が急激に体積膨張し(理論値で約40倍)、組織間隙がより速やかに水蒸気で満たされる。実際の食材内では食材組織構造により理論値(約60,000倍)どおりの体積増加や膨張は得られないものの、水体積の沸騰に伴う増加と水蒸気の膨張、及びその収縮と凝縮により発生する物質含浸駆動力は、これまでの食材内空気の膨張及び収縮を含浸駆動力よりも著しく大きい。従来の減圧含浸処理では、大気圧から1kPaへの減圧により、組織間隙の空気が約100倍に膨張して組織間隙を空気で満たす。食材内の空気の膨張よりも水の相転移に伴う体積増加率の方が著しく大きく、速やかに組織間隙を気体で満たすことができる。
この工程(ii)において、含浸物質を液体で接触させ、特に溶液に浸漬した状態で実施する場合には、含浸物質溶液の温度を制御することが好ましい。含浸物質溶液が食材温度と同じ場合、食材内の水分の沸騰とほぼ同時に含浸物質溶液も沸騰する。食材外が水蒸気で満たされるため、食材を更なる減圧下に置き、圧力を低下するように制御して上記のP<P’を満たすことは難しい場合がある。また食材と溶液の沸騰によって含浸溶液の吹きこぼれや食材同士の衝突による形状崩壊などの問題が発生したり、あるいは減圧装置の真空ポンプに水蒸気が混入するなどの問題も発生したりする場合がある。確実に減圧庫内の圧力を制御し、食材の沸騰状態を継続し、さらに水蒸気を膨張させて組織間隙を水蒸気で満たす工程を実施するには、食材内の水の相転移の際に同時に沸騰しないように、加温食材と含浸物質溶液の温度差を設けることが好ましく、その差は10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上とすることが好ましい。溶液温度は、最終的に食材にかける設定圧力に置いて沸騰しないように、設定圧力での沸騰温度以下に設定すると、溶液の沸騰が起こりにくく確実に含浸できる。
ここで、60℃に加温した食材を4℃に冷却した十分量の溶液に浸漬して本工程(ii)を実施した場合、食材表面は溶液によって冷却され沸騰する圧力は低くなるが、形状ある食材の中心部温度は溶液温度の影響を受けにくく確実に沸騰する。食材中心部で沸騰した水は体積を増加させ食材の組織間隙を押し広げて食材外に水蒸気として排出されるから、結果、食材内の細胞間隙全体が水蒸気で満たされる。また、例えば酵素を含浸物質として酵素液を食材に含浸する場合、加温した食材内に酵素液を含浸すると、食材内で酵素が失活する恐れも懸念されるが、食材は相転移現象による気化熱によって温度が直ちに低下するから、次工程(iii)で酵素が導入されても酵素の失活は無視できる。
なお、減圧処理による食材内の水の沸騰と水蒸気膨張を確実に実施するために、含浸物質を溶解した液に接触させずに減圧処理を開始し、組織間隙が水蒸気で満たす本工程と次工程(iii)が実施されるまでの間に、減圧下で含浸物質溶液を接触させることもできる。その際にも減圧下に投入した溶液が沸騰しないよう、温度調整することが好ましい。食材の組織間隙が水蒸気で満たされたかどうかは、例えば食材からの水蒸気の発生がおさまったか、あるいは組織緩和した柔軟性のある食材が、減圧前の食材よりも体積膨張しているか、によって判断することができる。
(iii)食材を昇圧処理し、水蒸気を収縮、凝縮させ、含浸駆動力を発生させて、物質を含浸する工程
本工程では、組織間隙を水蒸気で満たしたあと、含浸物質に接触した食材を昇圧処理し、水蒸気を収縮、あるいは凝縮を行い、食材内への物質含浸駆動力を得て食材に接触させた物質を速やかに含浸することができる。食材に塗布、噴霧した物質は食材表面あるいは食材表層部に染み込んで水分に溶解あるいは分散した状態となっており、含浸駆動力の働きにより、組織間隙に含浸される。また物質を含有する溶液に食材を浸漬して行う場合は、その溶液が直接含浸される。あらかじめ実施する組織緩和処理の状態によっては、組織間隙のみならず食材組織内(細胞内、繊維内)にも物質が含浸される。
食材内への物質含浸は、組織間隙に満たされた水蒸気の状態変化によって行われる。組織間隙を水蒸気で満たしたあと、復圧工程に移行し、圧力を昇圧することによって組織間隙の水蒸気を収縮させ、また水蒸気を相転移(凝縮)させて体積減少させることにより、食材組織間隙の内圧と外圧の著しい圧力差を生じさせ、組織間隙に物質を含浸させる。
食材の復圧は、食材の組織間隙を水蒸気で満たしたあと昇圧することにより行う。昇圧を開始し、食材にかかる圧力P(kPa)が、食材温度T’(K)を用いてアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)に対して上回る(P>P’)までの圧力区間においては、1kPa/秒以下で緩慢に昇圧させ、食材内の水蒸気の体積収縮と凝縮による体積減少を行うことで、強力な物質の含浸駆動力を発生させ含浸することができる。
従来の食材内の空気の膨張及び収縮現象を使用した減圧含浸法では、食材内の組織間隙が膨張空気で満たされたあと、常圧まで完全に復圧することにより物質が含浸される。含浸駆動力が小さいため、常圧復帰までの昇圧速度は急速でも緩慢でも含浸できる。一方、本発明の物質含浸駆動力は大きく、常圧まで完全に復圧せずとも、わずかな昇圧により食材内部まで物質を含浸できる。このことは、急激に昇圧すると物質が含浸される以前に組織間隙が潰れ、十分に食材中心部まで物質が含浸できない場合があり、また、食材の縮みや形状崩壊にもつながる。そのためP>P’となるまでの圧力区間においては、昇圧速度を緩慢に設定して昇圧することが望ましい。この緩慢な昇圧区間以降の大気圧までの復圧工程は、その昇圧速度を必ずしも設定する必要はないが、例えば、1.0〜101kPa/秒、あるいは10〜101kPa/秒で急速に昇圧させることができる。また、物質量をより大量に含浸したり、含浸物質に粘性があり、復圧工程で食材の形状変化が見られる場合には、緩慢昇圧区間のあとに、さらに昇圧速度を設定した圧力区間を一つあるいは複数設定して大気圧まで段階的に復圧しても良い。例えばP=P’となる圧力が5kPaであった場合に、さらに10kPaまで、あるいは20kPaまでを第2緩慢昇圧区間と設定することもでき、第2緩慢昇圧区間として、その平均昇圧速度を20kPa/秒以下、好ましくは0.01〜15kPa/秒と設定することもできる。また、食材によっては、緩慢昇圧区間終了後、再減圧及び再昇圧して、従来の食材内空気の膨張と収縮現象を利用した圧力操作を短時間に繰り返して、より含浸効果を高めることもできる。すなわち、食材内の水分の沸騰及び膨張、水蒸気の収縮及び凝縮による含浸駆動力と、食材内の空気の膨張及び収縮による含浸駆動力とを併用することで、より含浸効果を高めることもできる。食材内の水分の沸騰及び膨張、水蒸気の収縮及び凝縮による含浸駆動力を発生させる工程と、食材内の空気の膨張及び収縮による含浸駆動力を発生させる工程とは、それぞれ複数回行ってもよく、適宜設定することができる。
なお、設定した圧力まで減圧したあと、気化熱や含浸物質、器材等の外部接触物により食材温度が低下して、食材温度における水蒸気圧が設定圧力と等しくなるまで復圧工程を実施せず圧力保持する方法も可能である。その場合、5分や10分などの一定時間を圧力保持区間とするのではなく、食材温度における水蒸気圧と保持圧力とが等しくなる時点までを圧力保持区間とし、その後は急速に常圧まで復圧する復圧工程を実施することができ、物質含浸にかかる減圧処理時間を効率的に設計することもできる。しかしながら、含浸工程全体をより短時間に効率的に実施するには、P>P’とするために減圧後に直ちに1kPa/s以下の緩慢昇圧を実施する方が好適である。
以上の(i)から(iii)の工程を実施することにより、強力な物質含浸駆動力を得て物質を食材全体にわたって含浸することができる。本課題の酵素の含浸も実施でき、続く酵素失活反応等の工程を連続的に行うことで、形状保持軟化食品を大量生産できる。
(7)物質含浸食材及び食品
本発明の方法によれば、食材内に、速やかにかつ大量に物質を含浸できる。物質を含浸した食材あるいは食品は、更に加工処理して加工食品とすることができる。例えば、加熱、冷凍、乾燥などを行い、日持ちのよい加工食品を製造することもできるし、含浸食品を加工原料として、新たな加工食品を製造することもできる。
(8)減圧含浸装置
上記の物質含浸条件を実施できる圧力、温度プログラム等を実装した減圧処理装置とすることで、短時間で大量の物質を含浸する効率的な物質含浸装置を製造することができる。
本発明の物質含浸方法について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(1)食材内の水の相転移現象を利用したニンジンへの酵素含浸
食材内の水の相転移現象を利用する本発明の物質含浸方法を用いて、ニンジンに酵素を含浸し、形状保持した介護食用の軟化ニンジンを作製した。酵素反応後のニンジンの物性を測定し、ニンジンの軟化度から酵素の含浸効果を確認した。
a)方法
[実施例1]
<試料調製>
市販のニンジン(生)の皮を剥き、1cm幅に輪切りにしたあと、直径4cm、厚さ1cmの円柱形に型抜きし、さらに4分割して銀杏切とした。
<組織緩和処理>
スチームコンベクションオーブン((株)マルゼン、SSC−04MSC型)で95℃、20分加熱した。加熱後に室温で粗熱を取ったあと、−20℃に設定した冷凍庫(ホシザキ電機(株)、HRF−120XFT型)で16時間以上冷凍した。
<酵素液調製>
ペクチン分解酵素(微生物由来酵素、ヤクルト薬品工業(株))を0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.5)に0.5%(w/v)濃度で溶解した。作製した酵素液は真空パックし、氷水中で冷却して5℃以下で用いた。
<加温処理>
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍した。その後、80℃に設定した恒温水槽に10分間浸漬して加温した。
<含浸処理>
ニンジンを冷却した酵素液(4℃)に浸漬し、直ちに1kPaまで減圧処理(減圧速度−8.7kPa/s)した。1kPaに到達後、直ちに復圧を開始し、5kPaまで0.084kPa/sで昇圧し、その後、大気圧まで一気に復圧した(昇圧速度24.0kPa/s)。
なお、含浸に用いる減圧装置、圧力変化速度計算、食材温度測定、食材内の水の沸騰圧力計算、含浸駆動力を発生させる圧力差総和値Sの計算は以下のとおりとした。
○減圧装置
減圧装置は(株)古川製作所製の小型真空包装機「FVCII−LAB」を使用した。本真空包装機は、610mm×445mm×80mmの真空ボックスを備え、ボックス内には真空包装袋をシールするシーラーも備える。本真空包装機は、真空ボックス内で直接食材を減圧処理する方法、及び真空包装袋に入れた食材を減圧処理して真空包装する方法を実施できる。真空ポンプと真空ボックスとの接続途中にバルブを設けて庫内の減圧速度を任意に調整でき、また圧力開放バルブを設けて減圧から大気圧までの昇圧速度も任意に調整できる。さらに、圧力状態の維持や、初期昇圧速度の設定、圧力の再減圧、再復圧等の反復圧力処理等も、数値入力により実施できる。実施時のパラメータ設定値や真空度等のデータは、オムロン製簡易データ収集ソフト「代官山32」を用いてデータを収集して解析した。
○圧力変化速度計算
減圧速度及び昇圧速度とは、任意に定める圧力変化(圧力A(kPa)→圧力B(kPa))に要した時間をS(秒)とすると、圧力変化速度Vは、V(kPa/s)=(B−A)/Sで求められる見かけの速度として表した。大気圧は101kPaとして計算に用いることとし、例えば大気圧から1kPaまで減圧するのに10.8秒を要した場合には、減圧速度は圧力変化値−100(kPa)を10.8(秒)で除して、−9.3kPa/sとあらわすことができる。減圧工程においてはマイナス値として表し、値が小さいほど1秒間あたりの減ずる圧力差が大きいことを意味し、昇圧工程においてはプラス値として表し、値が大きいほど1秒間に加わる圧力差が大きいことを意味する。
○食材温度測定
食材の温度とは食材の中心温度(芯温)を示す。ニードル型温度センサ(アズワン(株)、H9631−02型)を接続した温度ロガー(アズワン(株)、TL3663型)を使用し、センサを食材中心部まで差し込んで2秒間隔で計測した。
○食材内の水の沸騰圧力計算
食材内の水が相転移によって沸騰し水蒸気となるのに必要な圧力を「沸騰圧力」と定義し、減圧工程中の食材の沸騰圧力を、アントワン式を用いて食材温度から計算した。
〇含浸駆動力を発生させる圧力差総和値の計算
圧力差総和値S(kPa・s)は、x軸を減圧処理時間t、y軸を圧力pとした時間と圧力のグラフにおいて、食材にかかる圧力P及び食材温度T’でのアントワン式で計算した水蒸気圧P’の減圧処理時間tに対する圧力変化の関数としてそれぞれp=P(t)、p=P’(t)とすると、沸騰開始t=tから沸騰終了t=tまでのPとP’の圧力変化曲線で囲まれた面積であり、下記数式(II)で計算することができる。
Figure 2016199766
(式中、S:圧力差総和値(kPa・s )、t:減圧処理時間(s)、
P(t):減圧処理時間tにおける、食材にかかる圧力P(kPa)、
P’(t):減圧処理時間tにおける、食材温度T’でのアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)、
:P=P’となり、食材内の水の沸騰が開始するまでの減圧開始からの時間(s)、
:P=P’となり、食材内の水の沸騰が終了するまでの減圧開始からの時間(s))
<酵素反応及び酵素失活処理>
酵素液を含浸後、ニンジンを酵素液から取り出して、50℃に設定した恒温機内に静置し、80分酵素反応(実質、50℃±2℃に到達して60分)してニンジン内部を分解した。続いて95℃で10分加熱してニンジン内の酵素を完全に失活した。
<物性測定>
ニンジンを室温(25℃)まで冷却したあと、テンシプレッサー((有)タケトモ電機製)で硬さを測定した。硬さは、直径3mmのプランジャーを速度10mm/sで70%貫入して得られる最大応力(N/m)とし、5個以上の平均値で求めた。
[比較例1]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、80℃での加温処理を行わず、20℃のまま酵素液に浸漬して含浸処理した。それ以外は実施例1と同様に処理した。
[比較例2]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、80℃で10分加温処理した。その後、20℃の水に浸漬して20℃まで冷却したあとは、実施例1と同様に処理した。
[比較例3]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、80℃での加温処理を行わず、かつ、酵素液のかわりに0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.5)を含浸処理した。それ以外は実施例1と同様に処理した。比較例1を酵素処理していないコントロールとした。
b)結果
実施例1、比較例1〜3の処理条件及び物性値を表1に示した。実施例1はコントロールの比較例3と比較して非常に軟らかく、5×10N/m以下に調整されており、歯茎で滑らかに潰せるほど軟らかく、形状保持軟化介護食として十分な品質であった。一方、比較例1や2では、コントロールと比較して軟化しているものの、実施例1ほどの軟化度は得られず、かつ食材の中心部には軟化が不十分な部位が見られた。
Figure 2016199766
実施例1、比較例1及び2における含浸処理時の庫内圧力と沸騰圧力の変化をそれぞれ図1〜3に示した。庫内圧力は設定どおりに変化し、減圧開始により急激に圧力は低下し、設定した1kPa到達まで約10秒で到達した。その後、直ちに5kPaまで緩慢に昇圧し、続いて大気圧まで急速に昇圧して復圧した。約60秒で含浸工程が完了した。含浸工程において、実施例1と比較例1及び2では、食材温度履歴が異なるため、食材内の水が沸騰するために必要な沸騰圧力の履歴が異なった。
実施例1の80℃に加温したニンジンでは、減圧過程で食材の沸騰圧力を庫内圧力が下回り、急激に食材内の水の沸騰が見られた。沸騰後は水の気化潜熱により食材温度が下がるため、沸騰圧力も同様に急激に低下した。ただ、庫内が設定圧力の1kPaに到達してもなお、庫内圧力が沸騰圧力を下回っており、その間、沸騰状態が継続した。庫内圧力を1kPaから5kPaまで昇圧する間に庫内圧力が沸騰圧力を上回り、沸騰状態は終了した。5kPaに到達後に急速に大気圧まで復圧しても、組織間隙に酵素液が十分浸透しているため、食材の潰れ等の変形や崩壊は見られず、組織間隙に十分な酵素液が含浸され、結果、歯茎でつぶせるほどの軟らかいニンジンが作製できた。
一方、比較例1の20℃の低温状態から減圧処理した場合、食材内の水分が沸騰する現象は観察されなかった。庫内圧力と沸騰圧力の関係では、実施例1と同様に庫内圧力が沸騰圧力を下回る状態になるが、もともと食材温度が低いため沸騰圧力は3kPa以下と低く、食材内部からの目に見える沸騰現象は起こらなかった。生じた水蒸気が組織間隙を体積膨張するための圧力差も少なく、継続的な沸騰現象が起こらないと考えられた。
比較例2においても比較例1と同じ現象であった。含浸処理前に一度80℃加温した効果により、硬さは比較例1よりも軟らかいが、実施例1のような酵素分解による著しい軟化効果は得られず、比較例1と同様に食材内での軟化ムラが見られた。比較例1及び2のニンジンを、冷蔵庫で16時間長時間反応させた場合、均一に軟化することから、食材内の酵素分布に濃度勾配ができ、短時間での軟化に必要な酵素量が含浸されていないと考えられた。一方、本発明では、食材温度を高く設定するため、食材内の水の十分な沸騰と、水蒸気の膨張現象が起きた後、水蒸気の収縮と凝縮に伴って強力な含浸駆動力が発生する。そのため、食材内に急速かつ大量に酵素が含浸されるため、短時間の反応時間によっても確実に軟化することができる。
ここで含浸駆動力を発生させる圧力差総和値Sは、実施例1では368kPa・sと大きく、比較例1では7kPa・s、比較例2では28kPa・sと著しく小さかった。比較例1及び2では、十分な含浸駆動力が得られるだけの水の沸騰が起こらなかったと考えられた。
(2)沸騰開始圧力設定
本発明では、食材内の水の相転移による水蒸気発生とその膨張が必須であり、加温状態の食材を用いて含浸処理することで実施できる。加温温度を変えて実施し、本発明で必要な沸騰開始圧力値を検証した。
a)方法
[実施例2]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、加温温度を70℃とした以外は、実施例1と同様に処理してニンジンを軟化させた。
[実施例3]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、加温温度を60℃とした以外は、実施例1と同様に処理してニンジンを軟化させた。
[比較例4]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、加温温度を50℃とした以外は、実施例1と同様に処理してニンジンを軟化させた。
[比較例5]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、加温温度を40℃とした以外は、実施例1と同様に処理してニンジンを軟化させた。
[比較例6]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、加温温度を30℃とした以外は、実施例1と同様に処理してニンジンを軟化させた。
b)結果
表2に各試料の処理条件および硬さを示した。70℃では実施例1と同様に5×10N/m以下に調整され、十分に介護食として利用できる軟らかさに軟化した。60℃では70℃や実施例1の80℃よりは物性値が高いものの、食材全体が軟らかく、容易に噛めて歯茎でつぶせる軟らかさであった。一方、50℃以下では軟化度が不十分であった。短時間の反応時間で食材全体が軟化可能なだけの酵素量が十分に含浸できなかったものと考えられた。
Figure 2016199766
実施例2及び3並びに比較例4〜6における沸騰圧力と庫内圧力の変化をそれぞれ図4〜8に示した。食材温度が高くなるほど沸騰圧力は高く、庫内圧力が比較的高い圧力で沸騰圧力を下回った。50℃以下においても減圧処理中に庫内圧力が沸騰圧力を下回ったが、継続した食材での沸騰現象は観察されなかった。このことは、食材内部で沸騰現象は起こるものの、継続して沸騰し、食材外部にまで水蒸気が排出されるほど激しく沸騰する条件下になかったと考えられた。沸騰圧力からの圧力変化が少ないため、生じた水蒸気の膨張が十分に起こらず、組織間隙を膨張水蒸気で満たせなかったと考えられた。すなわち、比較例4、5、及び6でニンジンが十分に軟化しなかったのは、本発明の特徴である水の沸騰と水蒸気膨張、水蒸気収縮と凝縮による水の体積変化が十分に起こらず、十分な物質含浸駆動力が得られなかった結果であり、短時間の酵素反応で十分に軟化させることができる酵素量を含浸できなかったものと考えられた。
実施例2及び3並びに比較例4、5、及び6のそれぞれの沸騰開始圧力はそれぞれ27kPa、18kPa、10kPa、7.0kPa、3.8kPaであった。このことから、本発明の効果を十分に得るためには、食材を加温して減圧する工程において、少なくとも10kPa以上の圧力でP<P’状態になるよう設定し、さらに減圧処理することにより、沸騰状態の継続と水蒸気の膨張とを起こすことが重要と言える。
ここで含浸駆動力を発生させる圧力差総和値Sは、実施例2では368kPa・s、実施例3では185kPa・s、比較例4では94kPa・s、比較例5では104kPa・s、比較例6では37kPa・sであった。十分に食材内の水を沸騰させ含浸駆動力を得るには,圧力差総和値が115kPa・s以上となるように設定することができ、その実施方法の一つとして沸騰開始圧力を10kPa以上とすることもできる。
(3)減圧速度設定
食材内の水分を相転移させて水蒸気を発生させ、更に水蒸気の膨張現象を得るために、減圧工程において庫内圧力が沸騰圧力を下回る(P<P’)必要がある。減圧速度との関係を検証した。
a)方法
[実施例4]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、80℃に設定した恒温水槽に10分間浸漬して加温した。大気圧から設定圧力1kPaまでの減圧速度を−1.94kPa/秒とした以外は、実施例1と同様に酵素液を含浸し軟化ニンジンを作製した。
[比較例7]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、80℃に設定した恒温水槽に10分間浸漬して加温した。大気圧から設定圧力1kPaまでの減圧速度を−0.66kPa/秒とした以外は、実施例1と同様に酵素液を含浸し軟化ニンジンを作製した。
b)結果
実施例4及び比較例7での処理条件および硬さを表3に示した。また、実施例4及び比較例7における沸騰圧力及び庫内圧力の圧力変化をそれぞれ図9及び10に示した。実施例4では十分に軟化したが、比較例7では食材内部の軟化度が不十分であった。実施例4においては減圧工程中に沸騰圧力を庫内温度が下回り、食材内の水分が沸騰して水蒸気が発生し食材外まで排出されたが、比較例7の条件では、減圧速度が穏やかであるため、庫内圧力が沸騰圧力を下回る(P<P’)圧力が10kPaよりも低く、沸騰による水蒸気の食材外への排出現象は見られなかった。食材内水分の相転移による芯温の急激低下が見られないことからも、食材温度が低下するほどの気化熱が生じず、また、食材内での水蒸気膨張もほとんど起こらなかったものと考えられる。以上から、減圧速度は任意に設定できるが、庫内圧力P<沸騰圧力P’となる圧力が少なくとも10kPa以上で起こり、沸騰状態を継続できる減圧処理が重要である。好ましくは、減圧速度を−0.7kPa以下/sの急速減圧とすることもできる。
ここで含浸駆動力を発生させる圧力差総和値Sは、実施例4では174kPa・s、比較例7では114kPa・sであった。十分に食材内の水を沸騰させ含浸駆動力を得るには,圧力総和値が115kPa・s以上となるように設定することができ、その実施方法の一つとして減圧速度を−0.7kPa以下/sの急速減圧とすることもできる。
Figure 2016199766
(4)復圧処理条件の設定
食材内の水を沸騰させ、さらに水蒸気を膨張させたあと、復圧工程での昇圧で水蒸気の収縮、凝縮を行い、酵素液を食材内へ含浸する。復圧処理条件について検証した。
a)方法
[実施例5]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、80℃に設定した恒温水槽に10分間浸漬して加温した。減圧して1kPaに到達後、すぐに復圧工程へと移行し、1kPaから5kPaまでの速度を0.043kPa/秒とした。1kPaから5kPaまでの昇圧速度を変更した以外は実施例1と同様に実施した。
[実施例6]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、80℃に設定した恒温水槽に10分間浸漬して加温した。減圧して1kPaに到達後、すぐに復圧工程へと移行し、1kPaから5kPaまでの速度を0.175kPa/秒とした。1kPaから5kPaまでの昇圧速度を変更した以外は実施例1と同様に実施した。
[比較例8]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、80℃に設定した恒温水槽に10分間浸漬して加温した。減圧して1kPaに到達後、すぐに復圧工程へと移行し、1kPaから5kPaまでの速度を0.54kPa/秒とした。1kPaから5kPaまでの昇圧速度を変更した以外は実施例1と同様に実施した。
[比較例9]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、80℃に設定した恒温水槽に10分間浸漬して加温した。減圧して1kPaに到達後、すぐに復圧工程へと移行し、大気圧に急速に復圧して1kPaから5kPaまでの昇圧を13.75kPa/sとした以外は実施例1と同様に実施した。
[実施例7]
冷凍ニンジンを20℃の水に30分浸漬して解凍したあと、80℃に設定した恒温水槽に10分間浸漬して加温した。減圧して1kPaに到達後、すぐに復圧工程へと移行し、1kPaから10kPaまでの速度を0.083kPa/秒とした。初期の緩慢昇圧区間を1kPaから10kPaに変更し、かつ、昇圧速度を変更した以外は実施例1と同様に実施した。
b)結果
各実施例及び比較例の処理条件および硬さを表4に示した。また、実施例5〜7並びに比較例8及び9における庫内圧力及び沸騰圧力の変化をそれぞれ図11〜15に示した。庫内圧力が1kPaに到達した時点では庫内圧力は沸騰圧力を下回っており、食材内の水分は沸騰状態にあるが、1kPaから5kPaまでの徐々に昇圧することにより、食材内部の膨張水蒸気の収縮が起こり、また酵素液に直接触れている食材表層部は先に温度低下することから、水蒸気の凝縮も起こる。沸騰圧力を庫内圧力が再び上回ることにより、食材中心部においても完全に沸騰はおさまり、水蒸気の収縮と凝縮により、外液が含浸される。実施例5及び実施例6のように、沸騰圧力を庫内圧力が上回ったあと、大気圧に復圧することで、酵素液は十分に含浸され、ニンジンは軟化した。一方、沸騰圧力を庫内圧力が上回る以前に急速な昇圧処理を開始して、大気圧へ復圧した比較例8においては、食材中心部は水蒸気の収縮や凝縮工程にいたっておらず、酵素液が十分に含浸されず、軟化度が不足する結果となった。また、組織間隙に酵素が含浸する以前に急激に大気圧がかかるため、素材が圧縮され変形した。比較例9においても沸騰圧力を庫内圧力が上回る以前に急速な昇圧処理を開始して、大気圧へ復圧したことから、十分に含浸できなかったと考えられる。
Figure 2016199766
ここで、十分な含浸効果が得られなかった比較例8と比較例9において、1kPaから5kPaまでの昇圧速度ではなく、1kPaから庫内圧力が沸騰圧力を上回る(P>P’)までの昇圧速度を求めたところ、比較例8では1.02kPa/s、比較例9では21.5kPa/sであった。このことから、P>P’を満たす昇圧区間では、好ましくは1.0kPa以下/sの緩慢昇圧とすることもできる。
以上から、減圧工程中で沸騰圧力を庫内圧力が下回るよう減圧し、十分に相転移した水蒸気を膨張させるだけ圧力を低下させたあと、復圧工程へと移行し、再び沸騰圧力が庫内圧力を上回るまで穏やかに昇圧させることで酵素液を十分に含浸でき、その後は急速に大気圧まで復圧することで、十分量の酵素液を短時間に含浸することができる。
ここで含浸駆動力を発生させる圧力差総和値Sは、実施例5では669kPa・s、実施例6では131kPa・s、比較例8では410kPa・s、比較例9では267kPa・sであった。いずれの実施例及び比較例においても、圧力差総和値が115kPa・s以上となった。しかし、比較例8及び9では、十分な圧力差総和値であっても、含浸効果が得られなかった。これは、いずれも沸騰圧力P’を庫内圧力Pが上回る以前に急速な昇圧処理を開始したためと考えられた。
なお、実施例7から、1kPaに到達後、5kPaより高い10kPaまで穏やかに昇圧し、沸騰圧力を庫内圧力が上回ったあとも、なお穏やかに昇圧させることで、より十分量の酵素が含浸でき軟らかく調製することができることから、昇圧区間を長く設定することはより優れた含浸効果を生むと言える。圧力差総和値は367kPa・sであった。昇圧区間は含浸処理現場での処理効率に合わせて適宜調整できる。
(5)含浸駆動力を発生させる圧力差総和値の条件
食材内の水の相転移現象を利用した本願の物質含浸方法においては、最終的に昇圧工程での水蒸気の凝縮と収縮現象により、急速かつ大量の物質を食材内に含浸できる。この時、減圧処理中の圧力差総和値が大きいほど、強力な物質含浸駆動力を得られる。
(1)〜(4)の結果より、強力な物質含浸駆動力を得るためには、圧力差総和値Sは、好ましくは115kPa・s以上、より好ましくは130kPa・s以上となるように圧力条件を設定するとよい。さらに、沸騰開始圧力や減圧速度、昇圧速度条件を設定することにより、確実に急速かつ大量の物質含浸処理を達成できる。
(6)粘性物質の含浸
粘性ある物質の含浸について検証した。キサンタンガムで粘度を調整した2種類の粘性酵素液を、本願の含浸法及び従来含浸法を用いてニンジンに含浸し、軟化度を比較した。
a)方法
[実施例8]
粘性酵素液を調製した。ペクチン分解酵素(微生物由来酵素、ヤクルト薬品工業(株))を0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.5)に1.0%(w/v)濃度で溶解した。また、キサンタンガム(三菱商事フードテック(株))を0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.5)に0.2%(w/v)濃度で溶解した。酵素液とキサンタンガム溶液とを1:1で混合し、最終酵素濃度0.5%(w/v)最終キサンタンガム濃度0.1%(w/v)の粘性酵素液を作製した。粘性酵素液は真空パックし、氷水中で冷却して5℃以下で用いた。
冷凍ニンジンを沸騰水中に直接投入し、5分間煮沸して解凍及び加温処理を行った。直ちに冷却した粘性酵素液に浸漬して含浸処理を行った。含浸処理以降の工程は実施例1と同様に行った。
なお、粘性酵素液の粘度は、含浸直後にB型粘度計(東機産業(株)、VISCOMETER TV−10)で測定した。温度13℃での粘度は0.1%(w/v)粘性酵素液は14mPas、0.25%(w/v)粘性酵素液は170mPasであった。
[実施例9]
キサンタンガム(三菱商事フードテック(株))を0.5%(w/v)濃度に変更し、1.0%(w/v)濃度の酵素液とキサンタンガム溶液とを1:1で混合し、最終酵素濃度0.5%(w/v)最終キサンタンガム濃度0.25%(w/v)の粘性酵素液を含浸した以外は実施例8と同様に実施した。
[比較例10]
冷凍ニンジンを沸騰水中に直接投入し、5分間煮沸して解凍及び加温処理を行った。室温に静置して20℃まで冷却した。冷却したニンジンを用いて、実施例8と同じ最終酵素濃度0.5%(w/v)最終キサンタンガム濃度0.1%(w/v)の粘性酵素液を含浸した。1kPaまで減圧したあと、1kPaで5分間保持したあと、急速に大気圧に復圧し、従来の空気膨張を利用した含浸法を実施した。含浸後の酵素反応工程以降は、実施例8と同様に行った。
[比較例11]
冷凍ニンジンを沸騰水中に直接投入し、5分間煮沸して解凍及び加温処理を行った。室温に静置して20℃まで冷却した。冷却したニンジンを用いて、実施例9と同じ最終酵素濃度0.5%(w/v)最終キサンタンガム濃度0.25%(w/v)の粘性酵素液を含浸した。1kPaまで減圧したあと、1kPaで5分間保持したあと、急速に大気圧に復圧し、従来の空気膨張を利用した含浸法を実施した。含浸後の酵素反応工程以降は、実施例8と同様に行った。
[比較例12]
粘性酵素液の代わりに0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.5)を含浸した以外は実施例8と同様に実施した。酵素未処理のコントロールとした。
b)結果
各実施例及び比較例の硬さを表5に示した。本発明の含浸法を実施した場合、粘度の違いによって軟化度は異なるものの、0.1%(w/v)及び0.25%(w/v)粘性酵素液のいずれにおいても5×10N/m以下に調整され、形状を保持したまま歯茎で潰せるほど軟化した。粘性物質が含浸されたため、口腔内では食塊をまとめやすかった。一方、従来の含浸法では、いずれの濃度においても5×10N/m以下には調整できず、中心部も硬い芯が残った状態となった。したがって、従来の含浸法では含浸が困難であった粘性物質も、本願の含浸法では含浸できることが確認された。従来の空気膨張による含浸駆動力と比較して、本願の水蒸気膨張による含浸駆動力は著しく大きく、粘性物質の含浸が可能であった。
Figure 2016199766
(7)軟化食材の作製
本発明の含浸法を用いて軟化食材を調製した。
a)方法
[実施例10]
市販のゴボウ(生)を1cm厚の輪切りにし、30分煮沸して室温に冷ました後、−20℃の冷凍庫(ホシザキ電機(株)、HRF−120XFT型)で16時間以上冷凍した。20℃の水中に30分浸漬して解凍し、10分煮沸加温したあと、実施例1と同様に軟化酵素を含浸して軟化食材を得た。
[比較例13]
実施例10において、軟化酵素の代わりに0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.5)を含浸したゴボウを作製した。
[実施例11]
市販のジャガイモ(生)を1cm厚の輪切りにし、スチームコンベクションオーブン((株)マルゼン、SSC−04MSC型)で95℃、15分蒸煮後、−20℃の冷蔵庫(ホシザキ電機(株)、HRF−120XFT型)で16時間以上冷凍した。20℃の水中に30分浸漬して解凍し、5分煮沸加温したあと、実施例1と同様に軟化酵素を含浸して軟化食材を得た。
[比較例14]
実施例11において、軟化酵素の代わりに0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.5)を含浸したジャガイモを作製した。
[実施例12]
市販のダイコン(生)を1cm厚、直径4cmの円柱状に成型し、スチームコンベクションオーブン((株)マルゼン、SSC−04MSC型)で95℃、30分蒸煮後、室温まで冷却した。電子レンジ(National、NE−SV30HA)で600W、1分加熱した加温ダイコン(中心温度97℃)を用いて、そのまま実施例1と同様に軟化酵素を含浸して軟化食材を得た。
[比較例15]
実施例12において、軟化酵素の代わりに0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.5)を含浸したダイコンを作製した。
[実施例13]
市販の国産鶏モモ肉を1cm幅で切断後、切断面を上面にしてテンダライズ処理した。沸騰水中で5分煮沸したあと、直ちに4℃に冷却した酵素液(0.1%(w/v)植物由来プロテアーゼ、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に浸漬して含浸処理した。含浸工程以降は実施例1と同様に処理し、最後の酵素の失活は80℃で20分、スチームコンベクションオーブンで加熱した。
[比較例16]
実施例13において、軟化酵素の代わりに0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を含浸した鶏モモ肉を作製した。
b)結果
いずれの食材も形状を保持したまま中心部まで軟化した。それぞれの硬さを表6に示した。緩衝液を含浸した各コントロールと比較して、3分の1以下に軟化し、いずれも容易に噛める、歯茎で潰せるなどの介護食品として十分な軟らかさに調整できた。本発明の新規含浸方法は様々な食材に適用できることが確認された。
Figure 2016199766
(8)調味食材の作製
本発明の含浸方法を用いて調味食材を作製した。
a)方法
[実施例14]
塩豚肉を作製した。市販の米国産豚ヒレ肉(生)を1cm幅に切断後、切断面を上面にして筋切り機(ジャカード製)を用いてテンダライズ処理した。事前に調製した調味液(0.1%(w/v)植物由来プロテアーゼ、1.0%(w/v)食塩水)に3分間浸漬して食材表層部に塗布・浸透させた後、スチームコンベクションオーブン((株)マルゼン、SSC−04MSC型)で70℃、5分加熱して食材中心温度を60℃以上に加温した。実施例1と同様の減圧装置を使用して、直ちに1kPaまで減圧処理(減圧速度−7.6kPa/s)し、1kPaに到達後、5kPaまで0.096kPa/sで昇圧し、続いて大気圧まで復圧した(昇圧速度24.6kPa/s)。豚ヒレ肉表面の灰汁を流水で軽く洗い流した後、冷蔵庫(4℃)で10分冷蔵して酵素処理した。スチームコンベクションオーブンで80℃、15分加熱して、塩豚肉を作製した。
[実施例15]
実施例14と同様に、市販の米国産豚ヒレ肉(生)を1cm幅に切断した。事前に調製した調味液(0.1%(w/v)植物由来プロテアーゼ、1.0%(w/v)食塩水)に3分間浸漬して食材表層部に塗布・浸透させた。続いて切断面を上面にして筋切り機(ジャカード製)を用いてテンダライズ処理した。すなわち、実施例14の工程において、テンダライズ工程に先立って調味液浸漬工程を実施した。その他は実施例14と同様に、調味液浸漬、テンダライズ処理に続いて食材を加温し、含浸処理、表面洗浄、冷蔵保管、加熱処理を実施して、塩豚肉を作製した。
[比較例17]
実施例14において、調味液の代わりに水を用いた以外は同じ工程を実施し、調味なしの加熱済み豚肉を作製した。
[実施例16]
ダイコンの煮物を作製した。市販のダイコン(生)を1cm厚、直径4cmの円柱状に切断し、スチームコンベクションオーブン((株)マルゼン、SSC−04MSC型)で95℃、30分蒸煮した後、室温まで冷却した。その後、−20℃に設定した冷凍庫(ホシザキ電機(株)、HRF−120XFT型)で16時間以上冷凍した。
冷凍ダイコンを流水中で解凍した後、電子レンジ(National、NE−SV30HA)で700W、1分間加熱して、加温ダイコン(中心温度100℃)を準備した。
加温ダイコンに、調味液(キッコーマン(株)製、白だし、濃縮タイプを5倍希釈したもの)を含浸した。含浸処理は次のとおり実施した。加温ダイコンを調味液(4℃)に浸漬し、実施例1と同様の減圧装置を使用して、直ちに4.0kPaまで減圧処理(減圧速度−8.3kPa/s)した。すぐに復圧を開始し、10kPaまで0.16kPa/sで昇圧し、大気圧まで復圧した(昇圧速度24.5kPa/s)。最後に、スチームコンベクションオーブン((株)マルゼン、SSC−04MSC型)で90℃、10分加熱して煮物風調味ダイコンを作製した。
[実施例17]
実施例16と同様にして、加温ダイコン(中心温度100℃)を準備した。
加温ダイコンに、事前に準備した4℃に冷却した調味液(キッコーマン(株)製、白だし、濃縮タイプを5倍希釈したもの)を含浸した。含浸処理は次のとおり実施した。加温ダイコンを調味液(4℃)に浸漬し、実施例1と同様の減圧装置を使用して、直ちに4.0kPaまで減圧処理(減圧速度−8.0kPa/s)した。すぐに復圧を開始し、10kPaまで0.14kPa/sで昇圧した。続いて、4.0kPaまで再減圧処理(減圧速度−3.5kPa/s)した後、大気圧まで復圧した(昇圧速度24.8kPa/s)。すなわち、2回の減圧及び昇圧工程を実施することにより、本願の食材内の水分の沸騰及び膨張、水蒸気の収縮及び凝縮による含浸駆動力と、食材内の空気の膨張及び収縮による含浸駆動力とを併用した方法によって、食材に調味料を含浸した。最後に、スチームコンベクションオーブン((株)マルゼン、SSC−04MSC型)で90℃、10分加熱して煮物風調味ダイコンを作製した。
[実施例18]
実施例16と同様にして、加温ダイコン(中心温度99℃)を準備した。
加温ダイコンに、事前に準備した4℃に冷却した調味液(キッコーマン(株)製、白だし、濃縮タイプを5倍希釈したもの)を含浸した。含浸処理は次のとおり実施した。加温ダイコンを、実施例1と同様の減圧装置を使用して、4.0kPaまで減圧処理(減圧速度−7.1kPa/s)した。減圧状態を20秒間保持し、その間に減圧装置外部から4℃に冷却した調味料を減圧装置内外の圧力差により供給して食材に調味液を接触させた。減圧保持後、10kPaまで0.13kPa/sで昇圧し、続いて4.0kPaまで再減圧処理(減圧速度−3.3kPa/s)し、大気圧まで復圧した(昇圧速度24.9kPa/s)。最後にスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン、SSC−04MSC型)で90℃、10分加熱して煮物風調味ダイコンを作製した。
b)結果
実施例14、15とも、塩味が豚肉中心部までしみ込み、また酵素処理効果により、多汁性に富んだ軟らかく食べやすい塩豚肉が得られた。一方、調味及び酵素処理を行っていない比較例17の加熱豚肉は、硬く食べにくかった。実施例1と同様にテンシプレッサー((有)タケトモ電機製)で硬さを測定したところ、比較例17では7.6×10N/mであったのに対して、実施例14、15の塩豚肉は、それぞれ4.4×10N/m、4.6×10N/mであり、3分の2以下の軟らかさに調整された美味しい塩豚肉であった。
実施例16、17、18のいずれにおいても、長時間の煮込み工程を実施することなく調味料がしみ込んだ煮物風調味ダイコンが得られた。実施例16においては、本願の食材内水分の沸騰及び膨張、水蒸気の収縮及び凝縮による含浸駆動力を利用した方法により、煮物風調味ダイコンが得られた。さらに、実施例17においては、食材内の水分の沸騰及び膨張、水蒸気の収縮及び凝縮による含浸駆動力と、食材内の空気の膨張及び収縮による含浸駆動力とを併用した方法によって、より濃厚に調味された煮物風調味ダイコンが得られた。また実施例18のとおり、減圧下において含浸物質を供給し接触させる方法においても、調味液をダイコン中心部まで含浸でき、煮物風調味ダイコンが得られた。
Figure 2016199766

Claims (19)

  1. 減圧下で食材内の水の相転移現象を利用して含浸駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に物質を含浸する方法であって、
    食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させて、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を引き起こし、
    続いて、含浸物質に接触した食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を引き起こし、含浸駆動力を発生させて、食材内に物質を含浸することを特徴とする、食材への物質含浸方法。
  2. 食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させる工程において、食材にかかる圧力P(kPa)を、気化熱に伴い低下する食材温度T’(K)を用いて下記数式(I)(アントワン式)で計算した水蒸気圧P’(kPa)に対して下回るように制御(P<P’)しながら、食材内の水を沸騰させる、請求項1に記載の食材への物質含浸方法。
    Figure 2016199766
  3. 食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させる工程において、食材にかかる圧力P(kPa)及び減圧処理時間t(s)を、食材温度T’(K)でのアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)並びに沸騰開始時間t=t(s)及び沸騰終了時間t=t(s)を用いて下記数式(II)で計算した圧力差総和値S(kPa・s)が115kPa・s以上となるように制御する、請求項2に記載の食材への物質含浸方法。
    Figure 2016199766
    (式中、S:圧力差総和値(kPa・s )、t:減圧処理時間(s)、
    P(t):減圧処理時間tにおける、食材にかかる圧力P(kPa)、
    P’(t):減圧処理時間tにおける、食材温度T’でのアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)、
    :P=P’となり、食材内の水の沸騰が開始するまでの減圧開始からの時間(s)、
    :P=P’となり、食材内の水の沸騰が終了するまでの減圧開始からの時間(s))
  4. 食材を減圧処理し、食材内の水を沸騰させる工程において、10kPa以上の圧力において食材内の水の沸騰を開始させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  5. 食材の組織間隙を水蒸気で満たしたあと、食材を昇圧処理する工程において、食材にかかる圧力P(kPa)が、気化熱に伴い低下する食材温度T’(℃)を用いてアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)に対して上回る(P>P’)までの圧力区間において、1kPa/秒以下の速度で昇圧させ、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮による体積減少を引き起こし、物質の含浸駆動力を発生させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  6. 下記のI〜Vの工程:
    I. 食材の組織を緩和する前処理工程、
    II. 前処理した食材を加温する工程、
    III. 加温した状態の食材に、含浸する物質を接触させる工程、
    IV. 食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
    V. 食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、
    を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  7. 下記のI〜Vの工程:
    I. 食材の組織を緩和する前処理工程、
    II. 前処理した食材を加温する工程、
    III. 加温した状態の食材を減圧処理して、減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
    IV. 減圧下の食材に、含浸する物質を接触させる工程、
    V. 食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、
    を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  8. 下記のI〜Vの工程:
    I. 食材の組織を緩和する前処理工程、
    II. 前処理した食材に含浸する物質を接触させる工程、
    III. 含浸する物質を接触させた食材を加温する工程、
    IV. 減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
    V. 食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、
    を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  9. 下記のI〜Vの工程:
    I. 食材に含浸する物質を接触させる工程、
    II. 食材の組織を緩和する前処理工程、
    III. 含浸する物質を接触させた食材を加温する工程、
    IV. 食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
    V. 食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、
    を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  10. 食材を加熱して前処理工程と加温処理工程を同時に実施する、請求項6、7、又は9に記載の食材への物質含浸方法。
  11. 前処理工程として、冷凍、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、焼成加熱、ジュール加熱、テンダライズ(筋切り)、タンブリング、圧延、脱水、乾燥、酸処理、アルカリ処理、及び酵素処理からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、請求項6〜10のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  12. 加温工程において、食材の中心温度を50℃以上100℃以下に昇温させる、請求項6〜11のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  13. 加温工程の加温方法として、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、焼成加熱、及びジュール加熱からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、請求項6〜12のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  14. 含浸する物質として、タンパク質、油脂、酵素、多糖類、増粘剤、乳化剤、及び澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の高分子物質を用いる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  15. 0℃以上50℃以下の温度で食材に含浸する物質を接触させる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  16. 食材を食品用軟包材又は硬質容器に入れた状態で実施する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  17. 請求項1〜16のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法によって製造された、物質含浸食材。
  18. 請求項17に記載の物質含浸食材を用いた、加工食品。
  19. 請求項1〜16のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法を実施する、減圧含浸装置。
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