JPWO2016056366A1 - 酸性蛋白質飲料 - Google Patents
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Abstract
Description
また、例えば大豆蛋白質はアミノ酸組成のバランスが良く、またコレステロール低下作用に代表されるような生理機能も有しており、栄養補給や生理機能を期待した栄養・健康訴求食品にも使用されている。
したがって、酸性かつ液状の飲料において蛋白質を高配合することができ、且つそれを長期に分散安定化させる技術が求められている。
そこで本発明の目的は、蛋白質を比較的多量に配合する場合であっても、長期に渡って沈殿が生じにくく、蛋白質の液中での分散が安定に維持される酸性の液状飲料を提供することにある。
(1)蛋白質を含有する原料の少なくとも一つが、下記a)〜c)の要件を満たす粉末状蛋白素材であって、蛋白質含量が1重量%以上であり、かつ大豆多糖類又は/及びエンドウ多糖類を蛋白質の分散安定剤として含み、液状であってかつpH3〜5であることを特徴とする、酸性蛋白質飲料、
a)該粉末状蛋白素材が蛋白質加水分解物であり、該加水分解度が0.22Mトリクロロ酢酸(TCA)可溶率として10〜35%、
b)該粉末状蛋白素材の窒素溶解指数(NSI)が10〜80、
c)該粉末状蛋白素材の希酸NSIが10〜70、
(2)該酸性蛋白質飲料の蛋白質含量が、1〜20重量%である、前記(1)記載の酸性蛋白質飲料、
(3)該粉末状蛋白素材の乾物あたりの蛋白質含量が40重量%以上である、前記(1)又は(2)記載の酸性蛋白質飲料、
(4)該粉末状蛋白素材の乾物あたりの不溶性食物繊維の含量が2重量%以下である、前記(1)〜(3)の何れか1項記載の酸性蛋白質飲料、
(5)該粉末状蛋白素材の5重量%分散液を、分光光度計により600nmで測定したときの透過率が1%T以下である、前記(1)〜(4)の何れか1項記載の酸性蛋白質飲料、
(6)該粉末状蛋白素材が大豆、エンドウ、緑豆及び乳から選ばれる1以上の由来である、前記(1)〜(5)の何れか1項記載の酸性蛋白質飲料、
(7)該飲料を700×Gで20分間の条件にて遠心分離したときの遠心沈殿率が5重量%以下である、前記(1)〜(6)の何れか1項記載の酸性蛋白質飲料、
(8)該飲料中に分散された粒子の平均粒子径が5μm以下である、前記(1)〜(7)の何れか1項記載の酸性蛋白質飲料、
(9)該飲料の粘度が50mPa/s以下である、前記(1)〜(8)の何れか1項記載の酸性蛋白質飲料、
(10)該飲料が経腸栄養剤である、前記(1)〜(9)の何れか1項記載の酸性蛋白質飲料、
(11)該飲料が密封容器に充填され密封されている、前記(1)〜(10)の何れか1項記載の酸性蛋白質飲料、
(12)該粉末状蛋白素材が大豆、エンドウ及び緑豆から選ばれる1以上の由来であり、該飲料を700×Gで20分間の条件にて遠心分離したときの遠心沈殿率が5重量%以下である、前記(1)〜(5)の何れか記載の酸性蛋白質飲料、
(13)該飲料中に分散された粒子の平均粒子径が5μm以下である、前記(12)記載の酸性蛋白質飲料、
(14)該飲料の粘度が50mPa/s以下である、前記(13)記載の酸性蛋白質飲料、
(15)該飲料が経腸栄養剤であり、かつ該飲料が密封容器に充填され密封されている、前記(14)記載の酸性蛋白質飲料。
a)該粉末状蛋白素材が蛋白質加水分解物であり、該加水分解度が0.22Mトリクロロ酢酸(TCA)可溶率として10〜35%、
b)該粉末状蛋白素材の窒素溶解指数(NSI)が10〜80、
c)該粉末状蛋白素材の希酸NSIが10〜70、
の3要件を満たす粉末状蛋白素材であって、蛋白質含量が1重量%以上であり、かつ大豆多糖類又は/及びエンドウ多糖類を蛋白質の分散安定剤として含み、液状であってかつpH3〜5であることを特徴とするものである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の対象である液状かつ酸性の蛋白質飲料(以下、「本飲料」と称する。)は、液状態で製品化されて消費者に飲用されるものである。最近ではRTD飲料(Ready-To-Drink)と呼ばれる飲料や、経腸栄養剤も概念的に包含されるものとする。
本飲料は、栄養成分として少なくとも蛋白質を含有する酸性蛋白質飲料であり、蛋白質含量は飲料全体の重量あたり1重量%以上である。さらに蛋白質の含有量が高い方が本発明の効果を有効に発揮することができ好ましく、1.5重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、2.5重量%以上がさらに好ましい。またその上限は20重量%以下、15重量%以下、あるいは10重量%以下とすることができる。大豆蛋白質や乳蛋白質などの多くの蛋白質は等電点がpH4.5近辺に存在するため、本飲料のような液状かつ酸性の環境では、蛋白質の溶解性が急激に低下するため、蛋白質が保存中に沈殿が生じやすくなる。すなわち蛋白質の分散安定性が悪くなる。そして沈殿の程度は長期保存されるほど多くなる。一方、本発明ではこのような問題が解決されている。
本飲料に用いられる特定の粉末状蛋白素材は、蛋白質を主成分とし、各種加工食品や飲料に使用される食品素材である。例えば大豆由来の蛋白質の場合、脱脂大豆や丸大豆等の大豆原料からさらに大豆蛋白質を濃縮加工して調製されるものであり、一般には分離大豆蛋白質や粉末豆乳、あるいはそれらを種々加工したものなどが概念的に包含されるものである。また乳由来の蛋白質ではカゼインや濃縮乳蛋白(MPC)等を用いることができる。
該粉末状蛋白素材は、乾物あたりの蛋白質含量が少なくとも40重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上であるのが適当である。
一方、液状飲料へ使用されることから、保存中の不溶物の沈殿を防止するために不溶性食物繊維の含量はなるべく低い方が好ましく、乾物あたりでは2重量%以下であるのが好ましく、1重量%以下であるのがより好ましい。
a)該粉末状蛋白素材が蛋白質加水分解物であり、該加水分解度が0.22Mトリクロロ酢酸(TCA)可溶率として10〜35%、
b)該粉末状蛋白素材の窒素溶解指数(NSI)が10〜80、
c)該粉末状蛋白素材の希酸NSIが10〜70。
かかるa)〜c)の要件を全て満たす特定の粉末状蛋白素材が配合されることにより含有される蛋白質が、本飲料中において後述する特定の多糖類と共存していることが重要である。そしてこの組合せが相乗的に作用することで、蛋白質の分散安定性に極めて不利な液状かつpH3〜5の酸性という環境下において長期に保存されても、沈殿量が極めて少なく、ざらつきを感じにくく、外観が均一で良好であり、低粘度で風味良好な液状かつ酸性の蛋白質飲料を得ることができる。
以下、これらの要件についてより具体的に説明する。
本飲料で用いられる粉末状蛋白素材は、一定の分解度まで酵素分解された蛋白質加水分解物であることが重要である。蛋白質の分解度は、0.22M トリクロロ酢酸可溶率(TCA可溶率)を指標として表すことができる。この数値は粉末状蛋白素材を蛋白質含量として1.0重量%となるように水に分散させ十分撹拌した分散液について、全蛋白質に対する0.22M トリクロロ酢酸(TCA)に溶解する蛋白質の割合をケルダール法により測定したものである。蛋白質の分解が進行するにつれて、TCA可溶率は上昇する。
本飲料に用いられる粉末状蛋白素材は、この0.22M TCA可溶率が10〜35%の範囲にあることが重要である。特に下限については11%以上が好ましく、12%以上がより好ましく、13%以上がさらに好ましい。また下限については30%以下が好ましく、28%以下がさらに好ましい。
本飲料に用いられる粉末状蛋白素材は、水への溶解性の指標として、NSI(Nitrogen Solubility Index:窒素溶解指数)が10〜80であるのが重要であり、特に15〜75が好ましく、20〜70がさらに好ましい。
ここで、NSIが低すぎると、蛋白質の溶解性が低すぎて沈殿が多くなり、ざらつきも強く感じるようになる。この点で、粉末状蛋白素材の製造時にカルシウムやマグネシウム等の2価金属を添加して蛋白質と2価金属を反応させ、NSIを低下させたような粉末状蛋白素材は、ざらつきが強くなる傾向にあるため、このようなミネラル反応を生じさせていない粉末状蛋白素材を用いるのがより好ましく、上記ア)の酵素分解によってNSIを低下させた粉末状蛋白素材を用いるのが好ましい。
なお、NSIは所定の方法に基づき、全窒素量に占める水溶性窒素(粗蛋白)の比率(重量%)で表すものとし、本発明においては後述の方法に準じて測定された値とする。
本飲料に用いられる粉末状蛋白素材は、酸性領域において蛋白質が高溶解性である、国際公開WO2002/67690号に記載の酸性可溶大豆蛋白や乳清蛋白質などのような「酸性可溶蛋白」ではなく、むしろ中程度以下のものであることが特徴である。酸性領域での溶解性は、「希酸NSI」(NSIは、窒素溶解指数の略称)を指標として表すことができ、希酸NSIの値が高いほど酸性領域での溶解性が高いことの指標となる。なお希酸NSIは後述の方法に準じて測定するものとする。
該素材の希酸NSIが酸性可溶蛋白のように高すぎると、酸性領域での蛋白質の溶解性は高いが、ミネラル類との反応により凝集が生じ、加熱により凝固してしまう場合がある。また該素材の希酸NSIが低すぎると、蛋白質の溶解性が低すぎて沈殿が多くなり、ざらつきも強く感じるようになる。
なお透過率(%T)は、蛋白質を含んだ分散液の透明性の尺度であり、次のようにして定義する。つまり、蛋白質粉末を蛋白質分が5重量%になるように水に分散させ十分撹拌した分散液を、分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製:U−3210形自記分光光度計)にて1cmセルを使用し600nmでの透過率(%T)を測定する。
一方、「フジプロ(R)F」等の加水分解していない一般的な粉末状大豆蛋白素材はTCA可溶率が10%未満、NSIが90以上である。また「プロリーナ(R)SU」はTCA可溶率が35%を超えるものである。また酸性可溶性の粉末状大豆蛋白として知られている「ソヤサワー(R)」は酸性領域における蛋白質の溶解性が極めて高く、NSIが90以上でかつ希酸NSIも90%以上であり、透過率も80%T以上の透明性の高いものである。このため、これらの製品は本飲料に用いられる上記要件を満たした粉末状蛋白素材には該当しないものである。
本飲料は、上述した蛋白質と共に特定の多糖類(以下、「本多糖類」と称する場合がある。)を含有するものであり、特定の多糖類として、大豆多糖類又は/及びエンドウ多糖類を蛋白質の分散安定剤として用いることが重要である。該多糖類は蛋白質を液状かつ酸性の本飲料中で分散安定化させる効果がすでに知られているが、上述の特定の粉末状蛋白素材との組合せによる相乗効果が顕著であることが本発明で見出されたものである。
大豆多糖類やエンドウ多糖類はラムノース、フコース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、グルコース及びウロン酸等の糖類から構成される水溶性多糖類であって、一般には以下の条件で分析されるゲルろ過HPLC法で平均分子量が100万以下のものである。これらは大豆やエンドウの不溶性食物繊維(オカラ)を含む原料から公知の方法により水で抽出し、必要により精製して調製されたものを用いることができる。大豆多糖類は市販品を使用することができ、例えば「ソヤファイブ(R)」シリーズ(不二製油(株)製)や「SM」シリーズ(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)などを用いることができる。またエンドウ多糖類は、例えば国際公開WO2012/176852号や国際公開WO2014/103833号に記載の方法で得られるものを用いることができる。
ゲルろ過HPLCは、標準プルラン(昭和電工(株))を標準物質として、分析カラム「TSKgel G5000PWXL」(東ソー(株)製、カラムサイズ:7.8mmI.D.×30cm、充填剤基材:メタクリレートポリマー、充填剤粒子径:10μm、排除限界分子量:250万)を用いる。平均絶対分子量(MM)は、カラム通液後にトルエンでキャリブレーションしたマルチアングルレーザーライトスキャッタリング(MALLS)により求める。溶離液は例えば50mM酢酸ナトリウム水溶液(pH5.0)を用い、カラムの流速は1.0mL/分とし、検出器はRI検出器及びMALLS検出器を用いる。ただし、分析値に大きな誤差が生じない範囲で各分析条件を適宜変更してもよい。
本飲料は特定の粉末状蛋白素材から導入された蛋白質粒子が本多糖類との相乗作用で均質化され微細化されているためか、酸性で液状の条件下で長期に保存されても蛋白質の沈殿が生じにくく、食感のざらつきも感じにくいものである。本飲料中に分散された粒子の平均粒子径は少なくとも5μm以下とすることができ、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、最も好ましくは1μm以下とすることができる。
本飲料は長期保存中の沈澱量が低く、極めて蛋白質の分散安定性に優れたものである。そのような分散安定性の指標としては、飲料を遠心分離して発生する沈殿中の蛋白質量の、全液中の蛋白質量に対する割合を示す「遠心沈殿率」を用いることができる。
具体的には測定サンプル液を一定量遠沈管に分取し、遠心分離器で700G、20分間の条件にて遠心分離後、上澄みを廃棄した後の沈殿量(g)を測定する。この沈殿量のサンプル液量(g)に対する割合(重量%)を「遠心沈殿率」とする。これによって蛋白質の液中での長期の分散安定性を簡便に確認することができる。本飲料では遠心沈殿率は5重量%以下とすることができ、好ましくは3重量%以下とすることができる。
本飲料は酸性のpHで低粘度であっても蛋白質が沈殿しにくく分散安定性が高い品質を維持することができる。飲料の粘度は嗜好に合わせて増粘剤等の添加により適宜調整することができるため、特に限定されるものではないが、すっきりとした飲み口を嗜好する場合には、より低粘度であるのが好ましく、またその方が本発明の効果をより享受することができる。該粘度は50mPa・s以下とすることができ、好ましくは20mPa・s以下とすることができ、より好ましくは10mPa・s以下とすることができる。またさらに5mPa・s以下にもすることもできる。なお粘度は20℃の室温にてB型粘度計で測定するものとする。
本飲料には上述の原料の他に、当業者の製品設計に合わせて種々の原料を配合することができ、その種類や添加量は特に限定されるものではない。
例えば、各種の果汁(柑橘類、ブドウ等)、糖類(ショ糖、果糖ブドウ糖液糖、デキストリン等)、甘味料(スクラロース、アスパルテーム等)、油脂(菜種油、大豆油、EPA、DHA等)、乳化剤(レシチン、脂肪酸エステル等)、pH調整剤(クエン酸、フマル酸、酒石酸、リン酸等)、ミネラル(カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩等)、ビタミン(A,B,C,D,E,P,K等)、キレート剤(クエン酸ナトリウム、重合リン酸塩等)香料、生理機能素材(イソフラボン、サポニン、乳酸菌末、ペプチド類、グルコサミン等)等を適宜配合することができる。
本飲料の製造工程においてpH調整剤を添加し、pHを3〜5に調整するタイミングは、粉末状蛋白素材と本多糖類を添加した後が好ましい。
本発明における分析値は以下の測定方法に従うものとする。
<NSIの測定方法>
試料3gに60mlの水を加え、37℃で1時間プロペラ攪拌した後、1400×gにて10分間遠心分離し、上澄み液(I)を採取する。次に、残った沈殿に再度水100mlを加え、再度37℃で1時間プロペラ撹拌した後、遠心分離し、上澄み液(II)を採取する。(I)液および(II)液を合わせ、その混合液に水を加えて250mlとする。これを濾紙(NO.5)にて濾過した後、濾液中の窒素含量をケルダール法にて測定する。同時に試料中の窒素量をケルダール法にて測定し、濾液として回収された窒素量(水溶性窒素)の試料中の全窒素量に対する割合を重量%として表したものをNSIとする。
試料2.0gに100mlの0.1重量%クエン酸水溶液を加え、40℃にて60分攪拌抽出し、1400×gにて10分間遠心分離し、上清1を得る。残った沈殿に再度100mlの0.1重量%クエン酸水溶液を加え、40℃にて60分攪拌抽出し、1400×gにて10分間遠心分離し、上清2を得る。上清1および上清2を合わせ、さらに0.1重量%クエン酸水溶液を加えて250mlとする。No.5Aろ紙にてろ過したのち、ろ液の窒素含量をケルダール法にて測定する。同時に試料中の窒素含量をケルダール法にて測定し、ろ液として回収された窒素(水溶性窒素)の試料中の全窒素に対する割合を重量%として表したものを希酸NSIとする。
50mMリン酸緩衝液(1%(重量/体積)SDS、1.2%(重量/体積)NaCl、pH7.0)を用いて希釈調整した蛋白質分解物の分散液を、10分間超音波処理を行った後、0.2μmフィルターを用いて濾過する。得られた濾液を0.4ml/minの流速、室温20℃で、「TSK gel G3000SWXLカラム」を「TSK gel G2000SWXLカラム」(何れも東ソー(株)製、カラムサイズ:内径7.8mm×長さ30cm)と直列につないで連続で通し、上記リン酸緩衝液を用いて蛋白質分解物を溶出する。蛋白質分解物の検出はUV検出器を用い、220nmの吸光度を測定して行う。これにより、各画分に分離精製された蛋白分解物の重量平均分子量を、GPCソフトウェア(東ソー(株)製)を使用して得られたチャートから算出する。
335,000(Thyrogloblin、和光純薬工業(株)製)
150,000(γ-globlin、和光純薬工業(株)製)
67,000(Albumin(BSA)、SIGMA社製)
43,000(Peroxidase、和光純薬工業(株)製)
18,000(Myoglobin、SIGMA社製)
12,384(Cytochrome-C、SIGMA社製)
5,734(Insulin、SIGMA社製)
307(Glutathione、和光純薬工業(株)製)
137(p-アミノ安息香酸、和光純薬工業(株)製)
未分解品タイプの粉末状大豆蛋白素材「フジプロ(R)F」(蛋白質含量:乾物あたり90.8%)を用意し、加水分解タイプの粉末状大豆蛋白素材として市販品A〜Hを用意した。この市販品A〜Hは不二製油(株)に問い合わせれば入手することができる。
これらの0.22M TCA可溶率(分解度)、NSI、希酸NSIの分析値を下記表1に示した。
しかし、T9の希酸NSIが高く酸性での溶解性に優れた市販品Hを用いた場合を除き、T1〜T8の何れの場合も単独では凝集が発生してしまい、酸性の蛋白質分散液を調製するには至らず、酸性蛋白飲料への適性は不良であった。
T9の市販品Hを用いた蛋白質分散液は酸性でも透明な液状となっており、これを加熱しても凝集は発生しなかったが、渋味が感じられて風味の点で酸性蛋白飲料に使用するには改良の余地があった。
試験例1の各粉末状蛋白素材と大豆多糖類とを蛋白質濃度が5%、大豆多糖類濃度が1%となるように混合し、加水してよく分散させ、分散液を得た。この混合液のpHを50%クエン酸溶液で4.0に調整した後、ホモゲナイザーで20MPaで均質化し、93℃まで加熱して殺菌を行い、冷却することにより、酸性の蛋白質分散液を得た。
得られた各分散液について20℃にて24時間静置保存後に各分散液の物性を測定した。粘度はB型回転粘度計(東機産業(株)製)で、メジアン径を「SALD−2000」((株)島津製作所製)で測定した。また各分散液を一定量遠沈管に分取したサンプル量(g)を分母とし、分取したサンプルを遠心分離器で700×G、20分間の条件にて遠心後、上澄みを廃棄した後の沈殿量(g)を分子として、蛋白質の分散安定性の指標である「遠心沈澱率」を算出した。
また各分散液について、10人のパネラーに依頼し、ざらつき、苦味、渋味(収斂味)に関して下記表2の基準で官能評価を行い、各パネラーが与えた評価の平均値を算出した。そして、平均値が1.5点未満を評価「A」、1.5点以上2.5点未満を評価「B」、2.5点以上3.5点未満を評価「C」、3.5点以上4点以下を評価「D」とした。
T13〜T16の通り、粉末状大豆蛋白素材C〜Fを選択して大豆多糖類と組み合わせて用いた飲料は、加熱後も低粘度で遠心沈殿率が5%以下と少なく、ざらつき、粘性、苦味、渋味が少ない傾向であり、総合的に酸性蛋白質飲料としての適性を有していた。特に苦味と渋味が少ないT13〜T15の粉末状大豆蛋白素材C〜Eを用いた飲料が好ましかった。
一方、T10の通り、粉末状大豆蛋白素材として「フジプロ(R)F」(未分解/NSI90)を用いた飲料は遠心沈殿率とざらつきの点で不適であった。
またT11、T12の粉末状大豆蛋白素材A,Bを用いた飲料は、分解物であるがNSIが高すぎたためか、遠心沈殿率の点で蛋白質の分散安定性が悪く、ざらつきの点で食感が悪く不適であった。
逆にT17の粉末状大豆蛋白素材Gを用いた飲料は、分解度が50%と高すぎたためか、加熱後メジアン径,遠心沈殿率,苦味及び渋味の点で不適であった。また粉末状大豆蛋白素材Hを用いた飲料は、NSIと希酸NSIが高すぎるためか、加熱後粘度がかなり高くなり、また渋味の点でも不適であった。
このように、T13〜T16の粉末状大豆蛋白素材C〜F以外の粉末状蛋白素材を用いた例では、蛋白質の分散安定剤である大豆多糖類と組み合わせても酸性蛋白飲料としての適性がなかった。
以上より、大豆多糖類と組み合わせて使用する粉末状蛋白素材としては、特定の範囲の分解度、NSI及び希酸NSIを有するものを選択することが、酸性蛋白飲料に適していた。
粉末状大豆蛋白素材Dを使用し、大豆多糖類の代わりにHMペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)を使用する以外は、試験例2と同様にして酸性の蛋白質分散液を調製し、物性測定と官能評価を行った。結果を表4に示した。
T19,T20の通り、粉末状大豆蛋白素材DにHMペクチンやCMC−Naを組み合わせても、酸性蛋白飲料として不適な点が確認された。T19では得られる酸性蛋白飲料粘度が著しく上昇し、非常に粘性の強い飲み口であり、すっきりとした飲み口とはならなかった。T20では加熱後メジアン径が大きく、ざらつきが生じ、更に遠心沈澱量が多いため蛋白質の分散安定性が低く、製品の外観を損なうなどの点で不適であった。
大豆多糖類50gを水950gに加え、80℃で20分間撹拌溶解後、20℃まで冷却し、5%大豆多糖類溶液を得た。次いで常温水560gに5%大豆多糖類溶液200gを撹拌混合後、表1の分解度が23%の粉末状大豆蛋白素材E28gを混合し均一に分散させた。次いで、グラニュー糖90gと果糖ブドウ糖液糖70gを混合し各原料が均一に分散するまで撹拌した。その後、50%クエン酸溶液でpHを4.0に調整した後、水で全量を1000gとし、150kg/cm2にて均質化を施した。均質化された分散液を90℃、20分間の条件にて殺菌し、容器に充填後、冷却し、蛋白質2.5%を含有する酸性蛋白質飲料を得た。実施例1の飲料配合を表5にまとめた。
大豆多糖類100gを水900gに加え、80℃で20分間撹拌溶解後、20℃まで冷却し、10%大豆多糖類溶液を得た。次いで常温水500gを撹拌中に10%大豆多糖類溶液100gを撹拌混合した。次いで表1の分解度が23%の粉末状大豆蛋白素材E55gとグラニュー糖76g、デキストリン80gを粉粉混合し、大豆多糖類を含む常温水に混合し各原料が均一に分散するまで撹拌した。その後、50%クエン酸溶液でpHを4.0に調整した後、別途表5の配合で調製したミネラル溶液100gを加え、十分撹拌した。次いで菜種油25gを投入し、ホモミキサーで7000rpmにて10分間予備乳化を行い、最終的に水で全量を1000gとした後、1段目450kg/cm2、2段目50kg/cm2にて均質化を施した。均質化された分散液を90℃,20分間の条件にて殺菌し、容器に密封充填後、冷却し、蛋白質5%を含有する酸性経腸栄養剤を得た。実施例2の飲料配合を表6にまとめた。
実施例1の配合において、50%クエン酸溶液をpH3.4(実施例3)及びpH4.5(実施例4)にそれぞれ調整する以外は、実施例1と同様にして酸性蛋白飲料を得た。これらの飲料は、いずれも実施例1と同様に良好な食感と蛋白質の良好な分散安定性を有していた。
Claims (15)
- 蛋白質を含有する原料の少なくとも一つが、下記a)〜c)の要件を満たす粉末状蛋白素材であって、蛋白質含量が1重量%以上であり、かつ大豆多糖類又は/及びエンドウ多糖類を蛋白質の分散安定剤として含み、液状であってかつpH3〜5であることを特徴とする、酸性蛋白質飲料。
a)該粉末状蛋白素材が蛋白質加水分解物であり、該加水分解度が0.22Mトリクロロ酢酸(TCA)可溶率として10〜35%、
b)該粉末状蛋白素材の窒素溶解指数(NSI)が10〜80、
c)該粉末状蛋白素材の希酸NSIが10〜70。 - 該酸性蛋白質飲料の蛋白質含量が、1〜20重量%である、請求項1記載の酸性蛋白質飲料。
- 該粉末状蛋白素材の乾物あたりの蛋白質含量が40重量%以上である、請求項2記載の酸性蛋白質飲料。
- 該粉末状蛋白素材の乾物あたりの不溶性食物繊維の含量が2重量%以下である、請求項3記載の酸性蛋白質飲料。
- 該粉末状蛋白素材の5重量%分散液を、分光光度計により600nmで測定したときの透過率が1%T以下である、請求項4記載の酸性蛋白質飲料。
- 該粉末状蛋白素材が大豆、エンドウ、緑豆及び乳から選ばれる1以上の由来である、請求項5記載の酸性蛋白質飲料。
- 該飲料を700×Gで20分間の条件にて遠心分離したときの遠心沈殿率が5重量%以下である、請求項1記載の酸性蛋白質飲料。
- 該飲料中に分散された粒子の平均粒子径が5μm以下である、請求項1記載の酸性蛋白質飲料。
- 該飲料の粘度が50mPa/s以下である、請求項1記載の酸性蛋白質飲料。
- 該飲料が経腸栄養剤である、請求項1記載の酸性蛋白質飲料。
- 該飲料が密封容器に充填され密封されている、請求項1記載の酸性蛋白質飲料。
- 該粉末状蛋白素材が大豆、エンドウ及び緑豆から選ばれる1以上の由来であり、該飲料を700×Gで20分間の条件にて遠心分離したときの遠心沈殿率が5重量%以下である、請求項5記載の酸性蛋白質飲料。
- 該飲料中に分散された粒子の平均粒子径が5μm以下である、請求項12記載の酸性蛋白質飲料。
- 該飲料の粘度が50mPa/s以下である、請求項13記載の酸性蛋白質飲料。
- 該飲料が経腸栄養剤であり、かつ該飲料が密封容器に充填され密封されている、請求項14記載の酸性蛋白質飲料。
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