JPWO2016009801A6 - ガスバリア性フィルムおよび電子デバイス - Google Patents

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Abstract

高いガスバリア性と優れたガスバリア性の面内均一性とを有するガスバリア性フィルムを提供する。また、高温高湿環境での耐久性に優れた電子デバイスを提供する。基材上に、アンカーコート層、前記アンカーコート層に接しており真空成膜法により形成されるガスバリア層をこの順に有するガスバリア性フィルムであって、前記アンカーコート層は、ポリシラザンを含有する層にエネルギーを印加した改質処理を行って得られる層であり、かつ、前記アンカーコート層の厚さをA(nm)とし、前記アンカーコート層全体のケイ素原子に対する窒素原子の原子比(N/Si)をBとした時に、A×B≦60である、ガスバリア性フィルム。

Description

本発明は、ガスバリア性フィルムおよび電子デバイスに関する。
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜を含む複数の層を積層して形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。
包装用途以外にも、フレキシブル性を有する太陽電池素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子等のフレキシブル電子デバイスへの展開が要望され、多くの検討がなされている。しかし、有機ELデバイスの封止に用いるガスバリア性フィルムには高いバリア性とフレキシブル性とが求められている。特に、ガスバリア性フィルムを基板として用いるボトムエミッションタイプの有機ELデバイスは、ガラスレベルの非常に高いガスバリア性が必要とされるとともに、ガスバリア性の面内均一性(スポット状にバリア性が低い部分がない)が求められている。
従来、このようなガスバリア性フィルムが有するガスバリア層は、プラズマCVD法で成膜されてきた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、高いプラズマ励起電力を使用したプラズマCVD法でガスバリア層を成膜した場合、成膜時に基材表面にエネルギー的な負荷がかかることや、ガスバリア層のダメージが発生しやすいことが判明し、このようなガスバリア性フィルムを有機ELデバイスの基板として用いると、多くのダークスポットを生じることから、基材やガスバリア層へのダメージを改善することが求められていた。
このようなガスバリア性フィルムの基材やガスバリア層へのダメージを改善すべく、最近、真空成膜法により形成したガスバリア層の下部にアンダーコート層を設けることが検討されている。例えば、特許文献2には、シランカップリング剤を主成分とした塗布液から塗布、乾燥によって形成した、無機成分比率の高いアンダーコート層が開示されている。
特許文献3には、蒸着バリア層のアンダーコート層として、ポリシラザン(PHPS)にジアルコキシシランを添加し、混合した塗布液から塗布、乾燥によって形成した、無機成分を主体としたアンダーコート層が開示されている。
さらに、特許文献4には、真空成膜法により形成したガスバリア層の下部に、ポリシラザンを含有する塗布液から塗布、乾燥によって形成したポリシラザン膜にエネルギー線を照射して少なくとも一部を改質することにより、表面にガスバリア性を付与した無機膜を設けることが開示されている。
国際公開第2006/033233号 特開2012−232504号公報 特開2012−254579号公報 国際公開第2011/007543号
しかしながら、特許文献2または3に記載の技術においては、アンダーコート層にアルコキシ基またはSi−OHが残存する。このため、アンダーコート層上部にプラズマCVD法等の方法でガスバリア層を成膜した場合、強いエネルギーがアンダーコート層に加わり、アルコールや水が生成し、ガスバリア層にスポット状に欠陥が形成されてしまう。よって、ガスバリア性の面内均一性を確保できないという問題があった。
さらに、特許文献4に記載の技術では、無機膜上部にプラズマCVD法によりガスバリア層を形成した場合、未改質のポリシラザンからアンモニアや水素などのアウトガスが生成してしまう。これにより、無機膜およびその上のガスバリア層は大きく変形し、ガスバリア層に欠陥が形成される。よって、有機ELデバイスの基盤として用いられるレベルの高いガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを得ることはできないという問題があった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、高いガスバリア性とガスバリア性の面内均一性とを有する、ガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、高温高湿環境での耐久性に優れた電子デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、基材上に、ポリシラザンを含有する層にエネルギーを印加し改質処理して得られるアンカーコート層、該アンカーコート層に接しており真空成膜法により形成されるガスバリア層をこの順に有し、アンカーコート層の厚さと、アンカーコート層全体のケイ素原子に対する窒素原子の原子比との積が特定の値以下であるガスバリア性フィルムにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記課題は、基材上に、アンカーコート層、および前記アンカーコート層に接しており真空成膜法により形成されるガスバリア層をこの順に有するガスバリア性フィルムであって、前記アンカーコート層は、ポリシラザンを含有する層にエネルギーを印加し改質処理して得られる層であり、かつ、前記アンカーコート層の厚さをA(nm)とし、前記アンカーコート層全体のケイ素原子に対する窒素原子の原子比(N/Si)をBとした時に、A×B≦60であるガスバリア性フィルムによって達成される。
本発明に係るガスバリア層の好ましい形態であるCVD層の形成に用いられる真空プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。 本発明に係るガスバリア層の好ましい形態であるCVD層の形成に用いられる他の製造装置の一例を示す模式図である。
本発明は、基材上に、アンカーコート層、および前記アンカーコート層に接しており真空成膜法により形成されるガスバリア層をこの順に有するガスバリア性フィルムであって、前記アンカーコート層は、ポリシラザンを含有する層にエネルギーを印加し改質処理して得られるものであり、かつ、前記アンカーコート層の厚さをA(nm)とし、前記アンカーコート層全体のケイ素原子に対する窒素原子の原子比(N/Si、以下単にN/Si比率とも称する)をBとした時に、A×B≦60であるガスバリア性フィルムである。
本発明のガスバリア性フィルムは、高いガスバリア性と優れたガスバリア性の面内均一性とを有する。また、本発明のガスバリア性フィルムを有する電子デバイスは、高温高湿環境での耐久性に優れる。
本発明のガスバリア性フィルムは、アンカーコート層の厚さをA(nm)とし、アンカーコート層全体のN/Si比率をBとした時に、A×B≦60であることを特徴とする。このような構成を有するガスバリア性フィルムは、高いガスバリア性とガスバリア性の面内均一性とを有する。ここで、本発明の構成による上記作用効果の発揮のメカニズムは以下のように推測される。なお、本発明は下記に限定されるものではない。
すなわち、本発明に係るガスバリア性フィルムのアンカーコート層が満たすべき条件A×Bは、アンカーコート層に含まれる窒素の量を間接的に示すものであり、値が大きいほどアンカーコート層に含まれる窒素の量が多いことを示す。この値を制御することによってアウトガスの発生量を抑制することができる。よって、ガスバリア層の成膜過程で欠陥が生成することを抑制し、高いガスバリア性とガスバリア性の面内均一性とを有するガスバリア性フィルムを得ることができる。
具体的には、フレキシブルかつガスバリア性が高い、つまり膜厚方向に炭素濃度が高い組成分布の領域を有し、かつ高密度なガスバリア層をアンカーコート層上に成膜するためには、従来の条件とは異なり、真空下で高いエネルギーを印加する必要がある。ここで、アンカーコート層は、ポリシラザンを含有する層に真空紫外光などのエネルギーを印加して改質処理を行うことにより形成される。このため、表面付近に比べて真空紫外光などのエネルギーが届きにくいアンカーコート層の基材側は、表面に比べて窒素や水素を多く含む未改質領域が残りやすい。このような未改質のポリシラザンが残存するアンカーコート層上に、上記のような真空下でかつ高エネルギーを印加してガスバリア層を成膜すると、アンカーコート層に含まれる未改質のポリシラザンの改質が急激に進行し、アンモニアや水素などから成るアウトガスが発生する。このアウトガスは、アンカーコート層に含まれる窒素の量が多いほど、発生する量が多くなる。
アンカーコート層の表面の改質が既に十分に進行している場合、高いガスバリア性を有するため、発生したアウトガスの抜け道は基材側にしかない。しかし、真空下であるため、アウトガスは抜けにくく、基材とアンカーコート層との間にアウトガスの気泡ができ、ガスバリア層やアンカーコート層に欠陥が発生する。その結果、ガスバリア性フィルムのガスバリア性が低下し、またスポット状に、ガスバリア性が低い部分が発生してしまう。
よって、A×Bの値を所定の値以下とすることにより、すなわち、アンカーコート層に含まれる窒素の量を低減させることにより、アンカーコート層と基材との間に生成するアウトガスの量が少なくなり、気泡の生成を抑制することができる。
したがって、本発明のガスバリア性フィルムは、高いガスバリア性とガスバリア性の面内均一性とを有する。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[基材]
本発明のガスバリア性フィルムに用いられる基材としては、例えば、シリコン等の金属基板、ガラス基板、セラミックス基板、プラスチックフィルム等が挙げられるが、好ましくはプラスチックフィルムが用いられる。用いられるプラスチックフィルムは、バリア層、クリアハードコート層等を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
その他、基材の種類、基材の製造方法等については、特開2013−226758号公報の段落「0125」〜「0136」に開示されている技術を適宜採用することができる。
[アンカーコート層]
アンカーコート層は、ポリシラザン化合物を含む塗布液を基材上に塗布し、得られたポリシラザンを含有する層にエネルギーを印加し改質処理して得られる層である。また、本発明に係るアンカーコート層は、アンカーコート層の厚さをA(nm)とし、アンカーコート層全体のN/Si比率をBとしたときに、A×B≦60である。該アンカーコート層は、単層でもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。
A×B>60である場合、アンカーコート層上に真空成膜法によりガスバリア層を成膜した際に、急激なアウトガスの発生に伴う気泡の発生により、ガスバリア性フィルムに欠陥が発生し、ガスバリア性とガスバリア性の面内均一性とが低下してしまう。
また、A×Bの下限値は、0以上であってもよいが、ガスバリア性向上などの観点から3以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。また、A×Bの上限値は、上述のアウトガス発生の観点から60以下であるが、50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。
該アンカーコート層は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。また、該アンカーコート層が2層以上の積層構造である場合、各アンカーコート層は同じ組成であってもよいし異なる組成であってもよい。
アンカーコート層の厚さ(A)の上限値としては、後述のようにポリシラザンを含有する層にエネルギーを印加して改質処理する際に、エネルギーを基材側のポリシラザンまで届かせて改質を十分に進行させるという観点から、1000nm以下となることが好ましく、より好ましくは、500nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下であり、さらにより好ましくは150nm未満であり、特に好ましくは120nm以下である。
また、アンカーコート層の厚さの下限値としては、真空成膜時のプラズマ照射などによって基材がダメージを受けることを防ぐ観点や気泡の発生を抑制する観点から、5nm以上であることが好ましく、より好ましくは30nm以上であり、さらに好ましくは40nm以上である。アンカーコート層の厚さは、層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することで測定することができる。
また、アンカーコート層のN/Si比率(B)は、0.01〜0.40であることが好ましく、0.05〜0.30であることがより好ましく、0.1〜0.25であることがさらに好ましい。この範囲であれば、上述のアンカーコート層として好ましい機能を有しつつ、A×Bの値を好ましい範囲とすることができる。
なお、アンカーコート層が2層以上ある場合は、各層について、A×B≦60を満たすようにする。
アンカーコート層のN/Si比率を調整する方法としては、特に限定されないが、例として、(1)ポリシラザンを含有する層の改質処理時にN/Si比率を低減させる方法、(2)ポリシラザンを含有する層の改質処理後にエイジングを行う方法、(3)ポリシラザンを含有する層の改質処理後の追加エキシマ改質処理を行う方法、(4)ポリシラザンにアルミニウム化合物を添加した層を改質する方法、などが挙げられる。アンカーコート層の成膜工程において上記のような方法を適用することによって、A×B≦60を満たすアンカーコート層を効率よく得ることができ、高いガスバリア性とガスバリア性の面内均一性とを有するガスバリア性フィルムを効率よく得ることができる。以下、これらの方法を簡単に説明する。
(1)ポリシラザンを含有する層の改質処理時にN/Si比率を低減させる方法
ポリシラザンを含有する層の改質処理時にN/Si比率を低減させる方法としては、ポリシラザンを含有する層の膜厚を10〜130nm程度の薄層とする方法が挙げられる。
ポリシラザンを含有する層の厚さを薄くしていくと、改質処理の際に、基材側にもエキシマ光などのエネルギーが到達するようになり、特に110〜150nmの範囲では、エネルギーが基材表面にも有意に到達するため改質が大きく進行する。このメカニズムは明確ではないが、ポリシラザン層は波長172nmのエキシマ光を用いた場合、このエキシマ光の吸収率が高く、例えば120nmの厚さで90%程度吸収することが知られている。この領域ではN/Si比率を改質前の0.8から大きく低減させることができる。これはエキシマ光が基材表面に到達することにより、基材表面が含有する水分が離脱し、これを酸素源としてポリシラザンの窒素が酸素に置き換わって改質が進んだものと考えられる。
このことから、ポリシラザンを含有する層の厚さを薄くするとともに、基材表面の組成を変化させることで、より改質を進めることもできる。例えば、ポリシラザンを含有する層と基材との間に、結晶水を持つ無機微粒子を含有する層を形成する等である。このようにすることにより、改質処理の際にポリシラザンの改質に寄与する水が基材側からより多く供給されるようになり、改質を促進することができる。
結晶水を持つ無機微粒子としては、特に限定されないが、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛などが挙げられる。これらのうち好ましくは酸化珪素であり、より好ましくはコロイダルシリカである。このような無機微粒子は、基材表面に設けることができるクリアハードコート層の塗布液に含まれていてもよい。このような塗布液としては、市販品を使用することができ、例えば、JSR株式会社製のOPSTAR(登録商標)シリーズ(シリカ微粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる化合物を含む塗布液)を使用することができる。
この態様におけるポリシラザンを含有する層の膜厚は、改質処理の際に基材側から供給される水分で好ましいN/Si比率にまで酸化を進行させるという観点から、好ましくは40〜130nm、より好ましくは60〜120nmである。
(2)ポリシラザンを含有する層の改質処理後にエイジングを行う方法
ポリシラザンを含有する層の改質処理後にエイジング(加温、加湿)を行うことによって、アンカーコート層のN/Si比率を調整することができる。エイジングの条件としては、40〜90℃で、相対湿度40〜100%RHで、1時間〜10日間のエイジングを行うことが好ましい。
また、エイジングを行う際にポリシラザンを含有する層に触媒を添加することによって、後述のエネルギー印加の際に改質を促進させることができる。例えば、ポリシラザンに対してアミン触媒を1〜5質量%含有させることができる。この態様におけるポリシラザン層の膜厚は、同様に好ましいN/Si比率にまで酸化を進行させるという観点から、好ましくは40〜500nm、より好ましくは60〜400nmである。
(3)ポリシラザンを含有する層の改質処理後に追加の改質処理を行う方法
改質処理の照射エネルギー量を一回の改質処理として印加するよりも、複数回に分割して改質処理を行うことで、N/Si比率を大きく低減させることができるため好ましい。改質処理の回数としては、2〜10回が好ましい。例えば、2回改質処理を行う場合、改質処理の間隔は6時間以上であることが好ましく、12時間以上であることがより好ましい。2回改質処理を行う場合の間隔の上限は特に制限されないが、工程コスト面や上述のエイジング効果との関係から、7日以内であることが好ましい。この態様におけるポリシラザンを含有する層の膜厚は、同様に好ましいN/Si比率にまで酸化を進行させるという観点から、好ましくは40〜500nm、より好ましくは60〜400nmである。
(4)ポリシラザンにアルミニウム化合物を添加した層を改質処理する方法
ポリシラザンにアルミニウム化合物を添加した層を改質処理することにより、ポリシラザンの改質が著しく進行し、N/Si比率をほぼ0とすることができるとともに、ガスバリア性を有するアンカーコート層を得ることができる。
上記アルミニウム化合物の例としては、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリn−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリn−ブトキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシド、アルミニウムトリtert−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジn−ブチレート、アルミニウムジエチルアセトアセテートモノn−ブチレート、アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ビス(エチルアセトアセテート)(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー等が挙げられる。これらは単独でも、または2種以上混合しても用いることができる。
アルミニウム化合物の含有量は、Al/Si元素比率として、0.01〜0.2とすることが好ましい。また、この態様におけるポリシラザンにアルミニウムを添加した層の膜厚は、ポリシラザンの改質を十分に進行させる観点から、好ましくは40〜500nm、より好ましくは60〜400nmである。
このようなアンカーコート層全体のN/Si比率は、下記のようなXPS(光電子分光法)分析を用いた方法で測定して求めることができる。
本発明におけるXPS分析は下記の条件で行ったものであるが、装置や測定条件が変わっても本発明の主旨に即した測定方法であれば問題なく適用できるものである。
本発明の主旨に即した測定方法とは、主に厚さ方向の解像度であり、測定点1点あたりのエッチング深さ(下記のスパッタイオンとデプスプロファイルの条件に相当)は1〜15nmであることが好ましく、1〜10nmであることがより好ましい。下記条件においては、測定点1点あたりのエッチング深さ(エッチングレート)はSiO換算で約2.8nmに相当する。
《XPS分析条件》
・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・測定領域:Si2p、C1s、N1s、O1s
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:一定時間スパッタ後、測定を繰り返す。1回の測定は、SiO 換算で約2.8nmとなるようにスパッタ時間を調整する
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いた。
次に、アンカーコート層の成膜方法を説明する。
<塗膜形成法>
本発明に係るアンカーコート層は、成膜性、クラック等の欠陥が少ないことからポリシラザンを含有する塗布液を塗布して形成される塗膜に、さらにエネルギーを印加して形成する方法(塗膜形成法)により形成される。以下、塗膜形成法を説明する。
ポリシラザンとしては、パーヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン等が挙げられるが、残留有機物の少ないことから好ましくはパーヒドロポリシラザンである。
ポリシラザンとは、ケイ素−窒素結合を有するポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO、Si、および両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
具体的には、ポリシラザンは、好ましくは下記の構造を有する。
上記一般式(I)において、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R、RおよびRは、それぞれ、同じであってもあるいは異なってもよい。ここで、アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基が挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。また、アリール基としては、炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。より具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などの縮合多環炭化水素基が挙げられる。(トリアルコキシシリル)アルキル基としては、炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換されたシリル基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基が挙げられる。より具体的には、3−(トリエトキシシリル)プロピル基、3−(トリメトキシシリル)プロピル基などが挙げられる。上記R〜Rに場合によって存在する置換基は、特に制限はないが、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、メルカプト基(−SH)、シアノ基(−CN)、スルホ基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、ニトロ基(−NO)などがある。なお、場合によって存在する置換基は、置換するR〜Rと同じとなることはない。例えば、R〜Rがアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。これらのうち、好ましくは、R、RおよびRは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ビニル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基または3−(トリメトキシシリルプロピル)基である。
また、上記一般式(I)において、nは、整数であり、一般式(I)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
上記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、好ましい態様の一つは、R 、RおよびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンである。このようなポリシラザンから形成されるアンカーコート層は高い緻密性を有する。
または、ポリシラザンとしては、下記一般式(II)で表される構造を有する。
上記一般式(II)において、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’およびR6’は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1’、R2’、R 、R4’、R5’およびR6’は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記における、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(I)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(II)において、n’およびpは、整数であり、一般式(II)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n’およびpは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(II)のポリシラザンのうち、R1’、R3’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’およびR5’が各々メチル基を表す化合物;R1’、R3’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’が各々メチル基を表し、R5’がビニル基を表す化合物;R1’、R3’、R4’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’およびR5’が各々メチル基を表す化合物が好ましい。
または、ポリシラザンとしては、下記一般式(III)で表される構造を有する。
上記一般式(III)において、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”およびR9”は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”およびR9”は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記における、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(I)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(III)において、n”、p”およびqは、整数であり、一般式(III)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n”、p”およびqは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(III)のポリシラザンのうち、R1”、R3”およびR6”が各々水素原子を表し、R2”、R4”、R5”およびR8”が各々メチル基を表し、R9”が(トリエトキシシリル)プロピル基を表し、R7”がアルキル基または水素原子を表す化合物が好ましい。
一方、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地である基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。このため、用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンとを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体または固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
ポリシラザンは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままアンカーコート層形成用塗布液として使用してもよく、市販品を複数混合して使用してもよい。また、市販品を適当な溶剤で希釈して使用してもよい。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120−10、NN120−20、NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL120−20、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
ポリシラザンを用いる場合、エネルギー印加前のアンカーコート層中におけるポリシラザンの含有率としては、アンカーコート層の全重量を100質量%としたとき、100質量%でありうる。また、アンカーコート層がポリシラザン以外のものを含む場合には、アンカーコート層中におけるポリシラザンの含有率は、10質量%以上99質量%以下であることが好ましく、40質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、特に好ましくは70質量%以上95質量%以下である。
(アンカーコート層形成用塗布液)
アンカーコート層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ポリシラザンを溶解できるものであれば特に制限されないが、ポリシラザンと容易に反応してしまう水および反応性基(例えば、ヒドロキシル基、あるいはアミン基等)を含まず、ポリシラザンに対して不活性の有機溶剤が好ましく、非プロトン性の有機溶剤がより好ましい。具体的には、溶剤としては、非プロトン性溶剤;例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターペン等の、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒;塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類:例えば、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、モノ−およびポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)などを挙げることができる。上記溶剤は、ケイ素化合物の溶解度や溶剤の蒸発速度等の目的にあわせて選択され、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
アンカーコート層形成用塗布液におけるポリシラザンの濃度は、特に制限されず、アンカーコート層の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。
アンカーコート層形成用塗布液は、改質を促進するために、触媒を含有することが好ましい。本発明に適用可能な触媒としては、塩基性触媒が好ましく、特に、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等のアミン触媒、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N−複素環式化合物が挙げられる。これらのうち、アミン触媒を用いることが好ましい。この際添加する触媒の濃度としては、ケイ素化合物を基準としたとき、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%の範囲である。触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、および膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けることができる。
アンカーコート層形成用塗布液には、必要に応じて下記に挙げる添加剤を用いることができる。例えば、セルロースエーテル類、セルロースエステル類;例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート等、天然樹脂;例えば、ゴム、ロジン樹脂等、合成樹脂;例えば、重合樹脂等、縮合樹脂;例えば、アミノプラスト、特に尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルもしくは変性ポリエステル、エポキシド、ポリイソシアネートもしくはブロック化ポリイソシアネート、ポリシロキサン等である。
(ポリシラザンを含有する層の形成方法)
ポリシラザンを含有する層は、上記のアンカーコート層形成用塗布液を基材上に塗布することによって形成することができる。塗布方法としては、従来公知の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布厚さは、上記のアンカーコート層の厚さに応じて適宜選択することができる。
塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥させることによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。この際、塗膜に含有される有機溶媒は、すべてを乾燥させてもよいが、一部残存させていてもよい。一部の有機溶媒を残存させる場合であっても、好適なアンカーコート層が得られうる。なお、残存する溶媒は後に除去されうる。
塗膜の乾燥温度は、適用する基材によっても異なるが、50〜200℃であることが好ましい。例えば、ガラス転位温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレート基材を基材として用いる場合には、乾燥温度は、熱による基材の変形等を考慮して150℃以下に設定することが好ましい。
<エネルギーの印加>
続いて、上記のようにして形成されたポリシラザンを含有する層に対して、エネルギーを印加し、ポリシラザンの改質処理を行い、アンカーコート層への改質を行う。
ポリシラザンを含有する層に対して、エネルギーを印加する方法としては、公知の方法を適宜選択して適用することができる。改質処理としては、具体的には、プラズマ処理、紫外線照射処理、加熱処理が挙げられる。ただし、加熱処理による改質の場合、450℃以上の高温が必要であるため、プラスチック等のフレキシブル基板においては、適応が難しい。このため、熱処理は他の改質処理と組み合わせて行うことが好ましい。
したがって、改質処理としては、プラスチック基板への適応という観点から、より低温で、転化反応が可能なプラズマ処理や紫外線照射処理による転化反応が好ましい。
以下、好ましい改質処理方法であるプラズマ処理、紫外線照射処理について説明する。
(プラズマ処理)
本発明において、改質処理として用いることのできるプラズマ処理は、公知の方法を用いることができるが、好ましくは大気圧プラズマ処理等を挙げることが出来る。大気圧近傍でのプラズマCVD処理を行う大気圧プラズマCVD法は、真空下のプラズマCVD法に比べ、減圧にする必要がなく生産性が高いだけでなく、プラズマ密度が高密度であるために成膜速度が速く、さらには通常のCVD法の条件に比較して、大気圧下という高圧力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、極めて均質の膜が得られる。
大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガスまたは長周期型周期表の第18族原子を含むガス、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
(紫外線照射処理)
改質処理の方法の1つとして、紫外線照射による処理が好ましい。紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化ケイ素膜または酸窒化ケイ素膜を形成することが可能である。
この紫外線照射により、基材が加熱され、セラミックス化(シリカ転化)に寄与するO とHOや、紫外線吸収剤、ポリシラザン自身が励起、活性化されるため、ポリシラザンのセラミックス化が促進され、また得られるアンカーコート層が一層緻密になる。紫外線照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
紫外線照射処理においては、常用されているいずれの紫外線発生装置を使用することも可能である。
なお、本発明でいう紫外線とは、一般には、10〜400nmの波長を有する電磁波をいうが、後述する真空紫外線(10〜200nm)処理以外の紫外線照射処理の場合は、好ましくは210〜375nmの紫外線を用いる。
紫外線の照射は、照射されるアンカーコート層を担持している基材がダメージを受けない範囲で、照射強度や照射時間を設定することが好ましい。
基材としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、例えば、2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基材表面の強度が20〜300mW/cm、好ましくは50〜200mW/cmになるように基材−紫外線照射ランプ間の距離を設定し、0.1秒〜10分間の照射を行うことができる。
一般に、紫外線照射処理時の基材温度が150℃以上になると、プラスチックフィルム等の場合には、基材が変形したり、その強度が劣化したりする等、基材の特性が損なわれることになる。しかしながら、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムの場合には、より高温での改質処理が可能である。したがって、この紫外線照射時の基材温度としては、一般的な上限はなく、基材の種類によって当業者が適宜設定することができる。また、紫外線照射雰囲気に特に制限はなく、空気中で実施すればよい。
このような紫外線の発生手段としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機株式会社製、株式会社エム・ディ・コム製など)、UV光レーザー、等が挙げられるが、特に限定されない。また、発生させた紫外線をポリシラザンを含有する層に照射する際には、効率向上と均一な照射を達成する観点から、発生源からの紫外線を反射板で反射させてからポリシラザンを含有する層に当てることが好ましい。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する基材の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、ポリシラザンを含有する層を表面に有する積層体を上記のような紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス株式会社製の紫外線焼成炉を使用することができる。また、ポリシラザンを含有する層を表面に有する積層体が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。紫外線照射に要する時間は、使用する基材やポリシラザンを含有する層の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分であり、好ましくは0.5秒〜3分である。
(真空紫外線照射処理:エキシマ照射処理)
本発明において、アンカーコート層の最も好ましい改質処理方法は、真空紫外線照射による処理(エキシマ照射処理)である。真空紫外線照射による処理は、ポリシラザン化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温(約200℃以下)で、酸化ケイ素膜の形成を行う方法である。
本発明においての放射線源は、100〜180nmの波長の光を発生させるものであれば良いが、好適には約172nmに最大放射を有するエキシマラジエータ(例えば、Xeエキシマランプ)、約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプ、並びに230nm以下の波長成分を有する中圧および高圧水銀蒸気ランプ、および約222nmに最大放射を有するエキシマランプである。
紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度および水蒸気濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、10〜20,000体積ppm(0.001〜2体積%)とすることが好ましく、50〜10,000体積ppm(0.005〜1体積%)とすることがより好ましい。また、転化プロセスの間の水蒸気濃度は、好ましくは1000〜4000体積ppmの範囲である。
真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
真空紫外線照射工程において、ポリシラザンを含有する層が受ける塗膜面での該真空紫外線の照度は1mW/cm〜10W/cmであると好ましく、30mW/cm〜200mW/cmであることがより好ましく、50mW/cm〜160mW/cmであるとさらに好ましい。1mW/cm未満では、改質効率が大きく低下する懸念があり、10W/cmを超えると、塗膜にアブレーションを生じたり、基材にダメージを与えたりする懸念が出てくる。
塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量(照射量)は、100mJ/cm〜50J/cmであることが好ましく、200mJ/cm〜20J/cmであることがより好ましく、500mJ/cm〜10J/cmであることがさらに好ましい。100mJ/cm以上であれば、改質が不十分となることを避けることができる、50J/cm以下であれば過剰改質によるクラック発生や、基材の熱変形を防ぐことができる。
また、真空紫外線の照射は、複数回に分けて照射してもよい。その場合、照射エネルギーの合計量が上記範囲内となるように照射するのが好ましい。
また、用いられる真空紫外光は、CO、COおよびCHの少なくとも一種を含むガスで形成されたプラズマにより発生させてもよい。さらに、CO、COおよびCHの少なくとも一種を含むガス(以下、炭素含有ガスとも称する)は、炭素含有ガスを単独で使用してもよいが、希ガスまたはHを主ガスとして、炭素含有ガスを少量添加することが好ましい。プラズマの生成方式としては容量結合プラズマなどが挙げられる。
[ガスバリア層]
本発明に係るガスバリア性フィルムは、上記アンカーコート層の上部に、前記アンカーコート層に接しており、真空成膜法により形成されるガスバリア層を有する。
ガスバリア層の好ましい形成方法である真空成膜法としては、物理気相成膜法(PVD法)と化学気相成膜法(CVD法)がある。
<気相成膜法>
物理気相成長法(Physical Vapor Deposition、PVD法)は、気相中で物質の表面に物理的手法により、目的とする物質、例えば、炭素膜等の薄膜を堆積する方法であり、例えば、スパッタ法(DCスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームスパッタ法、およびマグネトロンスパッタ法等)、真空蒸着法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD法)は、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基材表面または気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマなどを発生させる方法などがあり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、真空プラズマCVD法など公知のCVD方式等が挙げられる。特に限定されるものではないが、成膜速度や処理面積、得られるガスバリア層のフレキシビリティやガスバリア性の観点から、真空プラズマCVD法を適用することが好ましい。
例えば、ケイ素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、ケイ素酸化物が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
なお、以下では、成膜装置として、真空プラズマCVD法によって薄膜を形成する、対向ロール型のロール・トゥ・ロール成膜装置を使用して、ガスバリア層を製造する場合を例示して説明する。
図1および図2は、成膜装置の一例を示す概略構成図である。図2に例示した成膜装置101は、図1に例示した成膜装置100をタンデムに2台接合した構成を基本としている。ここでは、図2に例示した成膜装置を例にしてガスバリア層を形成する場合を説明するが、図2に記載の成膜装置に関する説明は、図1に記載の成膜装置に関する説明に対しても適宜参酌される。
図2に示す通り、成膜装置101は、送り出しロール10と、搬送ロール11〜14と、第1、第2、第3および第4成膜ロール15、16、15’、16’と、巻取りロール17と、ガス供給管18、18’と、プラズマ発生用電源19、19’と、磁場発生装置20、21、20’、21’と、真空チャンバ30と、真空ポンプ40、40’と、制御部41と、を有する。
送り出しロール10、搬送ロール11〜14、第1、第2、第3および第4成膜ロール15、16、15’、16’、および巻取りロール17は、真空チャンバ30に収容されている。
送り出しロール10は、予め巻き取られた状態で設置されている基材1aを搬送ロール11に向けて送り出す。送り出しロール10は、紙面に対して垂直方向に延在した円筒状のロールであり、図示しない駆動モーターにより反時計回りに回転(図2の矢印を参照)することにより、送り出しロール10に巻回された基材1aを搬送ロール11に向けて送り出す。
搬送ロール11〜14は、送り出しロール10と略平行な回転軸を中心に回転可能に構成された円筒状のロールである。搬送ロール11は、基材1aに適当な張力を付与しつつ、基材1aを送り出しロール10から成膜ロール15に搬送するためのロールである。搬送ロール12、13は、成膜ロール15で成膜された基材1bに適当な張力を付与しつつ、基材1bを成膜ロール15から成膜ロール16に搬送するためのロールである。搬送ロール12’、13’は、成膜ロール15’で成膜された基材1eに適当な張力を付与しつつ、基材1eを成膜ロール15’から成膜ロール16’に搬送するためのロールである。さらに、搬送ロール14は、成膜ロール16’で成膜された基材1cに適当な張力を付与しつつ、基材1cを成膜ロール16から巻取りロール17に搬送するためのロールである。
第1成膜ロール15および第2成膜ロール16は、送り出しロール10と略平行な回転軸を有し、互いに所定距離だけ離間して対向配置された成膜ロール対である。また、第3成膜ロール15’および第4成膜ロール16’も同様に、送り出しロール10と略平行な回転軸を有し、互いに所定距離だけ離間して対向配置された成膜ロール対である。成膜ロール16は、基材1bを成膜し、成膜された基材1dに適当な張力を付与しつつ、基材1dを成膜ロール15’へ搬送する。成膜ロール16’は、基材1eを成膜し、成膜された基材1cに適当な張力を付与しつつ、基材1cを搬送ロール14へ搬送する。
図2に示す例では、第1成膜ロール15と第2成膜ロール16との離間距離は、点Aと点Bとを結ぶ距離であり、第3成膜ロール15’と第2成膜ロール16’との離間距離は、点A’と点B’とを結ぶ距離である。第1〜第4成膜ロール15、16、15’、16’は、導電性材料で形成された放電電極であり、第1成膜ロール15と第2成膜ロール16、第3成膜ロール15’と第4成膜ロール16’とは、それぞれは互いに絶縁されている。なお、第1〜第4成膜ロール15、16、15’、16’の材質や構成は、電極として所望の機能を達成できるように適宜選択することができる。
さらに、第1〜第4成膜ロール15、16、15’、16’は、それぞれ独立に調温してもよい。第1〜第4成膜ロール15、16、15’、16’の温度は、特に制限されるものではないが、例えば−30〜100℃であるが、基材1aのガラス転移温度を超えて過度に高温に設定すると、基材が熱によって変形等を生じるおそれがある。
第1〜第4成膜ロール15、16、15’、16’の内部には、磁場発生装置20、21、20’および21’が、各々設置されている。第1成膜ロール15と第2成膜ロール16とにはプラズマ発生用電源19により、第3成膜ロール15’と第4成膜ロール16’とにはプラズマ発生用電源19’により、プラズマ発生用の高周波電圧が印加される。それにより、第1成膜ロール15と第2成膜ロール16との間の成膜部S、または第3成膜ロール15’と第4成膜ロール16’との間の成膜部S’に電場が形成され、ガス供給管18または18’から供給される成膜ガスの放電プラズマが発生する。プラズマ発生用電源19が印加する電圧と、プラズマ発生用電源19’が印加する電圧とは、同一であってもよいが、異なっていてもよい。プラズマ発生用電源19または19’の電源周波数は任意に設定できるが、本構成の装置としては、例えば60〜100kHzであり、印加される電力は、有効成膜幅1mに対して、例えば1〜10kWである。
巻取りロール17は、送り出しロール10と略平行な回転軸を有し、基材1cを巻き取り、ロール状にして収容する。巻取りロール17は、図示しない駆動モーターにより反時計回りに回転(図2の矢印を参照)することにより、基材1cを巻き取る。
送り出しロール10から送り出された基材1aは、送り出しロール10と巻き取りロール17との間で、搬送ロール11〜14、第1〜第4成膜ロール15、16、15’、16’に巻き掛けられることにより適当な張力を保ちつつ、これらの各ロールの回転により搬送される。なお、基材1a、1b、1c、1d、1e(以下、基材1a、1b、1c、1d、1eを「基材1a〜1e」とも総称する。)の搬送方向は矢印で示されている。基材1a〜1eの搬送速度(ラインスピード)(たとえば、図2の点Cや点C’における搬送速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバ30内の圧力などに応じて適宜調整されうる。搬送速度は、送り出しロール10および巻取りロール17の駆動モーターの回転速度を制御部41によって制御することにより調整される。搬送速度を遅くすると、形成される領域の厚さが厚くなる。
また、この成膜装置を用いる場合、基材1a〜1eの搬送方向を図2の矢印で示す方向(以下、順方向と称する)とは反対方向(以下、逆方向と称する)に設定してガスバリア性フィルムの成膜工程を実行することもできる。具体的には、制御部41は、巻取りロール17によって基材1cが巻き取られた状態において、送り出しロール10および巻き取りロール17の駆動モーターの回転方向を上述の場合とは逆方向に回転するように制御する。このように制御すると、巻取りロール17から送り出された基材1cは、送り出しロール10と巻き取りロール17との間で、搬送ロール11〜14、第1〜第4成膜ロール15、16、15’、16’に巻き掛けられることにより適当な張力を保ちつつ、これらの各ロールの回転により逆方向に搬送される。
成膜装置101を用いてガスバリア層を形成する場合は、基材1aを順方向および逆方向に搬送して成膜部Sまたは成膜部S’を往復させることにより、ガスバリア層の形成(成膜)工程を複数回繰り返すこともできる。
ガス供給管18、18’は、真空チャンバ30内にプラズマCVDの原料ガスなどの成膜ガスを供給する。ガス供給管18は、成膜部Sの上方に第1成膜ロール15および第2成膜ロール16の回転軸と同じ方向に延在する管状の形状を有しており、複数箇所に設けられた開口部から成膜部Sに成膜ガスを供給する。ガス供給管18’も同様に、成膜部S’の上方に第3成膜ロール15’および第4成膜ロール16’の回転軸と同じ方向に延在する管状の形状を有しており、複数箇所に設けられた開口部から成膜部S’に成膜ガスを供給する。ガス供給管18から供給される成膜ガスとガス供給管18’から供給される成膜ガスとは同一でもよいが、異なっていてもよい。さらに、これらのガス供給管から供給される供給ガス圧についても、同一でもよいが異なっていてもよい。
原料ガスには、ケイ素化合物を使用することができる。ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。これ以外にも、特開2008−056967号公報の段落「0075」に記載の化合物を使用することもできる。これらのケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い易さや得られるガスバリア性フィルムの高いガスバリア性などの観点から、ガスバリア層の形成においては、HMDSOを使用することが好ましい。なお、これらのケイ素化合物は、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。また、原料ガスには、ケイ素化合物の他にモノシランが含有されてもよい。
成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスが使用されてもよい。反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物などのケイ素化合物となるガスが選択される。薄膜として酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素ガス、オゾンガスを使用することができる。なお、これらの反応ガスは、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
成膜ガスとしては、原料ガスを真空チャンバ30内に供給するために、さらにキャリアガスが使用されてもよい。また、成膜ガスとして、プラズマを発生させるために、さらに放電用ガスが使用されてもよい。キャリアガスおよび放電ガスとしては、例えば、アルゴンなどの希ガス、および水素や窒素が使用される。
磁場発生装置20、21は、第1成膜ロール15と第2成膜ロール16との間の成膜部Sに磁場を形成する部材であり、磁場発生装置20’、21’も同様に、第3成膜ロール15’と第4成膜ロール16’との間の成膜部S’に磁場を形成する部材である。これらの磁場発生装置20、20’、21、21’は、第1〜第4成膜ロール15、16、15’、16’の回転に追随せず、所定位置に格納されている。
真空チャンバ30は、送り出しロール10、搬送ロール11〜14、第1〜第4成膜ロール15、16、15’、16’、および巻取りロール17を密封して減圧された状態を維持する。真空チャンバ30内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類などに応じて適宜調整することができる。成膜部SまたはS’の圧力は、0.1〜50Paであることが好ましい。
真空ポンプ40、40’は、制御部41に通信可能に接続されており、制御部41の指令に従って真空チャンバ30内の圧力を適宜調整する。
制御部41は、成膜装置101の各構成要素を制御する。制御部41は、送り出しロール10および巻取りロール17の駆動モーターに接続されており、これらの駆動モーターの回転数を制御することにより、基材1aの搬送速度を調整する。また、駆動モーターの回転方向を制御することにより、基材1aの搬送方向を変更する。また、制御部41は、図示しない成膜ガスの供給機構と通信可能に接続されており、成膜ガスの各々の成分ガスの供給量を制御する。また、制御部41は、プラズマ発生用電源19、19’と通信可能に接続されており、プラズマ発生用電源19の出力電圧および出力周波数を制御する。さらに、制御部41は、真空ポンプ40、40’に通信可能に接続されており、真空チャンバ30内を所定の減圧雰囲気に維持するように真空ポンプ40を制御する。
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)を備える。HDDには、成膜装置101の各構成要素を制御して、ガスバリア性フィルムの製造方法を実現する手順を記述したソフトウェアプログラムが格納されている。そして、成膜装置101の電源が投入されると、上記ソフトウェアプログラムが上記RAMにロードされ上記CPUによって逐次的に実行される。また、上記ROMには、上記CPUが上記ソフトウェアプログラムを実行する際に使用する各種データおよびパラメーターが記憶されている。
該ガスバリア層は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。該ガスバリア層が2層以上の積層構造である場合、各ガスバリア層は同じ組成であってもよいし異なる組成であってもよい。
本発明に係る真空成膜法により形成されるガスバリア層は、ガスバリア層の厚さ方向に高密度で、かつ炭素濃度が高い組成分布の領域を有することが好ましい。すなわち、ガスバリア層は、組成がSiCで表される組成分布の領域であって、xが0.8〜1.2である領域を厚さ方向に有することが好ましい。xは0.9〜1.1であることがより好ましい。このような組成を有する領域を有することにより、ガスバリア性をより向上させることができる。
ガスバリア層の厚さ方向の組成分布の測定および領域の厚さの測定は、上記アンカーコート層全体のN/Si比率の測定と同様の条件を採用したXPS分析により行うことができる。
組成がSiCで表される組成分布の領域であって、xが0.8〜1.2である領域の厚さの下限は、用途により異なるため、特に限定されるものではないが、ガスバリア性向上の観点から、1nm以上であることが好ましく、より好ましくは30nm以上であり、さらに好ましくは50nm以上であり、さらにより好ましくは90nm以上である。また、上限についても、用途により異なるため、特に限定されないが、光学特性を確保する観点から300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下である。
組成がSiCで表される組成分布の領域であって、xが0.8〜1.2である領域の厚さは、例えば、製膜原料と酸素の供給量とその比率、製膜時の搬送速度、製膜回数等を適宜組み合わせることにより制御することができる。
ガスバリア層の成膜は、上記(2)ポリシラザンを含有する層の改質処理後にエイジングを行う方法や(3)ポリシラザンを含有する層の改質処理後に追加の改質処理を行う方法等で示されるアンカーコート層のN/Si比率の組成調整処理を行わなかった試料については、アンカーコート層を形成後、1〜2日間のうちに行うことが好ましい。一方、アンカーコート層の組成調整処理を行った試料については、N/Si比率の調整後の1〜2日間のうちに行うことが好ましい。
ガスバリア層の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、特に制限されないが、5〜1000nmであることが好ましく、20〜500nmであることがより好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましい。この範囲であれば、生産性とガスバリア性との両立という利点が得られる。ガスバリア層の厚さは、TEM観察により測定することができる。
また、他の一実施形態においては、上記ガスバリア層の基材側とは反対側の面上に、ポリシラザンを含有する層にエネルギーを印加し改質処理して得られる層をさらに設けることが好ましい。
ガスバリア層上にさらに設けられる上記ポリシラザンを含有する層の形成および改質処理は、上記アンカーコート層の形成と同様の方法で行うことができる。例えば、使用するポリシラザンの種類としては、残留有機物の少ないことから好ましくはパーヒドロポリシラザンであり。改質処理の際のエネルギーの印加は、比較的低温で改質処理を行うことができるなどの観点から真空紫外光照射によってエネルギーを印加することが好ましい。
ガスバリア層上にさらに設けられるポリシラザンを含有する層を改質処理して得られる層の厚さについても、上記アンカーコート層の厚さとして好ましい範囲内にあることが好ましい。
このようなポリシラザンを含有する層を改質処理して得られる層をガスバリア層上にさらに設けることは、ガスバリア性やガスバリア性の面内均一性、あるいは高温高湿環境での電子デバイスの耐久性をさらに向上させることができるため好ましい。
[種々の機能を有する層]
本発明のガスバリア性フィルムにおいては、種々の機能を有する層を設けることができる。
(クリアハードコート層)
本発明のガスバリア性フィルムにおいては、基材上には、クリアハードコート層が設けられていてもよい。
クリアハードコート層は、基材とアンカーコート層との密着性向上、高温高湿下での基材およびアンカーコート層の膨張・収縮の差から生じる内部応力の緩和、アンカーコート層を設ける基材の平坦化、基材からのモノマー、オリゴマー等の低分子量成分のブリードアウト防止等の機能を付与しうる。また、クリアハードコート層の表面にわずかに粗さを付与することなどによってアンチブロック機能を付与することもできる。アンチブロック機能とは、両面に平滑なクリアハードコート層を形成した基材を巻き取った際に生じる貼り付き(=ブロッキングという)を回避する機能をいう。
クリアハードコート層は、基材とアンカーコート層との間に設けられていてもよく、基材のガスバリア層を有する面とは反対側の面に設けられていてもよい。本発明に係るガスバリア性フィルムにおいては、ブリードアウト防止等の観点から基材のガスバリア層を有する面とは反対側の面に設けられていることが好ましく、より好ましくはアンチブロック機能を有するクリアハードコート層である。
このようなクリアハードコート層は、基本的には感光性材料、または、熱硬化性材料を硬化させて作製される。
クリアハードコート層の具体的な構成材料、形成方法、膜厚等は、特開2013−226758号公報の段落「0141」〜「0152」に開示される材料、方法等が適宜採用される。
(ブリードアウト防止層)
本発明のガスバリア性フィルムは、上記基材の上記アンカーコート層を設けた面とは反対側の面にブリードアウト防止層を有してもよい。
ブリードアウト防止層は、フィルムを加熱した際に、フィルム中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、基材のアンカーコート層を設けた面とは反対側の面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば基本的に上記のクリアハードコート層と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層の構成材料、形成方法、膜厚等は、特開2013−52561号公報の段落「0249」〜「0262」に開示される材料、方法等が適宜採用される。
[電子デバイス本体]
本発明のガスバリア性フィルムは、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく適用できる。すなわち、本発明は、本発明のガスバリア性フィルムと、該ガスバリア性フィルム上に形成される電子デバイス本体と、を含む電子デバイスを提供する。
本発明の電子デバイスに用いられる電子デバイス本体の例としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子デバイス本体は有機EL素子または太陽電池が好ましく、有機EL素子がより好ましい。本発明に係るガスバリア性フィルム上に有機EL素子を形成することによって、高温高湿環境での耐久性に優れ、ダークスポット発生の少ない有機ELパネルを得ることができる。
以下、具体的な電子デバイス本体の一例として有機EL素子およびこれを用いた有機ELパネルについて説明する。
下記では有機EL素子の層構成の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極
(陽極)
有機EL素子における陽極(透明電極)としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜として形成し、その薄膜をフォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましい。また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。また、陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
(陰極)
有機EL素子における陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が陰極として好適である。
陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。また、陰極の膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば、発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極の説明で挙げた上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
(注入層:電子注入層、正孔注入層)
注入層には電子注入層と正孔注入層があり、電子注入層と正孔注入層を必要に応じて設け、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させる。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、特開平9−260062号公報、特開平8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、特開平9−17574号公報、特開平10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
(発光層)
有機EL素子における発光層は、電極(陰極、陽極)または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子および正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
有機EL素子の発光層には、以下に示すドーパント化合物(発光ドーパント)とホスト化合物(発光ホスト)が含有されることが好ましい。これにより、より一層発光効率を高くすることができる。
(発光ドーパント)
発光ドーパントは、大きく分けて蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
リン光性ドーパントの代表例としては、好ましくは元素の周期表で第8族、第9族、第10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。発光ドーパントは複数種の化合物を混合して用いてもよい。
(発光ホスト)
発光ホスト(単にホストとも言う)とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物(単に、ドーパントとも言う)」という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。さらに発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。
発光ホストとしては構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、またはカルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す)等が挙げられる。中でも、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等が好ましく用いられる。
そして、発光層は上記化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により成膜して形成することができる。発光層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。この発光層はドーパント化合物やホスト化合物が1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、あるいは同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよい。
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する電子輸送材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよい。
(有機EL素子の作製方法)
有機EL素子の作製方法について説明する。
ここでは有機EL素子の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製方法について説明する。
まず、ガスバリア性フィルム上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング、プラズマCVD等の方法により形成させ、陽極を作製する。
次に、その上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の有機化合物薄膜を形成させる。この有機化合物薄膜の成膜方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法が特に好ましい。さらに層毎に異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。
この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して陽極、正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。また、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた有機EL素子を備える多色の表示装置(有機ELパネル)に、直流電圧を印加する場合には、陽極をプラス、陰極をマイナスの極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
<ガスバリア性フィルムの製造>
〔樹脂基材〕
基材1:両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U48))のガスバリア層を形成する面とは反対の面に、厚さ0.5μmのアンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成して基材1とした。すなわち、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
基材2:基材1のガスバリア層を形成する側の面に厚さ2μmのクリアハードコート層を以下のようにして形成した。JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
〔アンカーコート層の形成〕
アンカーコート層の形成は、下記に示すような塗布液を塗布し塗膜を形成した後、真空紫外線照射による改質を行って形成した。
塗布液は、以下のように調製した。
塗布液1:パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N',N'−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
塗布液2:上記塗布液1を調製する際にポリシラザンにAl/Si比が0.05となるようにアルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(ALCH)を添加し、室温(25℃)で6時間撹拌して塗布液を調製した。
塗布液3:市販のポリシロキサン系コーティング剤:グラスカ(JSR株式会社製)を用いた。
得られた塗布液を、上記基材1のアンチブロック機能を有するクリアハードコート層が形成された面とは反対側の面、または基材2のクリアハードコート層上に、乾燥後の厚さが下記表1に示すような厚さとなるようにダイコート法で塗布し、大気中で下記表1に示す温度(露点5℃)で2分間乾燥した。次いで、乾燥して得られた塗膜に対して、窒素雰囲気下において波長172nmのXeエキシマランプを用い、下記表1に示す条件で、真空紫外線照射処理(改質処理)を施してアンカーコート層を形成した。
試料によっては、塗膜に対して下記表2に示すアンカーコート層の組成調整処理を行った。
ポリシラザンを含有する層は、下記の条件により改質処理した。
・改質処理装置
(株)エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
・改質処理条件
エキシマ光強度 :130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 :2mm
ステージ加熱温度 :80℃
照射装置内の酸素濃度:0.3体積%
エキシマ光照射時のステージ搬送速度:10mm/秒
エキシマ光照射時のステージ搬送回数:3往復
このようなアンカーコート層の厚さ方向の組成分布(N/Si比率)は、下記のようなXPS(光電子分光法)分析を用いた方法で測定して求めた。
(XPS分析条件)
・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・測定領域:Si2p、C1s、N1s、O1s
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:1分間スパッタ後、測定を繰り返す
※SiO換算のエッチングレートで厚さ約2.8nmに相当
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いた。
このようにして、アンカーコート層における膜厚方向の組成分布のプロファイルを得た。アンカーコート層の膜厚は、層の断面をTEMで観察して求めた。
〔ガスバリア層の形成〕
上記アンカーコート層上に、ガスバリア層を真空プラズマCVD法により成膜した。
図2に記載の対向する成膜ロールからなる成膜部を有する装置を2台つなげたタイプ(第1成膜部、第2成膜部を有する)のロール・トゥ・ロール型CVD成膜装置を用いた。有効成膜幅を1000mmとし、成膜条件は、搬送速度、第一成膜部、第二成膜部それぞれの原料ガス(HMDSO)の供給量、酸素ガスの供給量、真空度、印加電力、電源の周波数、成膜回数(装置のパス数)で調整した。1パス目に対して、2パス目は基材を巻き戻す方向に搬送しているが、パス方向が異なる場合でも、最初に通過する成膜部を第一成膜部、次に通過する成膜部を第二成膜部とした。
その他の条件として、電源周波数は84kHz、成膜ロールの温度はすべて30℃とした。膜厚は断面TEM観察で求めた。
ガスバリア層の形成は、アンカーコート層の組成調整処理を行わなかった試料については、アンカーコート層を塗布後、1〜2日間のうちに行った。上記M1、M2、M3で表されるアンカーコート層の組成調整処理を行った試料については、組成調整処理後の1〜2日間のうちに行った。
ガスバリア層としては、組成がSiCで表される組成分布の領域であって、xが0.8〜1.2である領域の厚さが異なる、CVD1〜3の3種類のうちいずれか1層を成膜した。表3に、各ガスバリア層の成膜条件、並びにガスバリア層の厚さ、および、SiC で表され、xが0.8〜1.2となる領域の厚さを示した。
このようなガスバリア層の厚さ方向の組成分布および組成がSiCで表される組成分布の領域であって、xが0.8〜1.2である領域の厚さは、上記アンカーコート層の厚さ方向の組成分布の測定と同様の条件で、XPSにより測定した。
上記条件を組み合わせてガスバリア性フィルムを作製した。比較例1〜7および実施例1〜11のガスバリア性フィルムについては、後述の「ガスバリア層の欠陥数の評価」を行った。比較例8〜12および実施例12〜18については、ガスバリア性フィルム上に有機EL素子を作製し、後述の「有機ELデバイスのダークスポット(DS)評価」を実施した。
(比較例1)
樹脂基材2のクリアハードコート層を形成した面上に、上記表2のガスバリア層CVD2を成膜し、ガスバリア性フィルム(試料No.1)を作製した。
(比較例2)
樹脂基材1のガスバリア層を形成する側の表面に上記表1のU1の条件でアンカーコート層を成膜し、さらにその上に上記表2のガスバリア層CVD2を成膜し、ガスバリア性フィルム(試料No.2)を作製した。
(比較例3)
樹脂基材2を使用し、アンカーコート層の成膜を上記表1のU2の条件で行ったこと以外は、比較例2と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.3)を作製した。
(比較例4)
アンカーコート層の成膜を上記表1のU3の条件で行ったこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.4)を作製した。
(比較例5)
アンカーコート層の成膜を上記表1のU8の条件で行ったこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.5)を作製した。
(比較例6)
アンカーコート層の成膜を上記表1のU9の条件で行ったこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.6)を作製した。
(実施例1)
ポリシラザンを含有する層の改質処理の際にアンカーコート層の組成調整処理M2を実施したこと以外は、比較例2と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.7)を作製した。
(実施例2)
ポリシラザンを含有する層の改質処理の際にアンカーコート層の組成調整処理M1を実施したこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.8)を作製した。
(実施例3)
アンカーコート層の成膜を上記表1のU4の条件で行ったこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.9)を作製した。
(実施例4)
アンカーコート層の成膜を上記表1のU5の条件で行ったこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.10)を作製した。
(実施例5)
アンカーコート層の成膜を上記表1のU6の条件で行ったこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.11)を作製した。
(実施例6)
アンカーコート層の成膜において、上記表1のU7の条件で行ったこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.12)を作製した。
(実施例7)
ガスバリア層をCVD1に変更したこと以外は、実施例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.13)を作製した。
(実施例8)
ガスバリア層をCVD3に変更したこと以外は、実施例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.14)を作製した。
(比較例7)
ガスバリア層をCVD1に変更したこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.15)を作製した。
(実施例9)
アンカーコート層の成膜を上記表1のU10の条件で行ったこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.16)を作製した。
(実施例10)
ガスバリア層の上に、上記表1のU2の条件でポリシラザンを含有する層をさらに形成し改質処理を実施したこと以外は、実施例4と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.17)を作製した。
(実施例11)
上記比較例3において、ポリシラザンを含有する層の改質処理の際にアンカーコート層の組成調整処理M3を実施したこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.18)を作製した。
(比較例8)
上記比較例3と同じ条件でガスバリア性フィルム(試料No.19)を作製した。
(比較例9)
ガスバリア層の上に、上記表1のU2の条件でポリシラザンを含有する層をさらに形成し改質処理を実施したこと以外は、比較例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.20)を作製した。
(比較例10)
アンカーコート層の成膜を上記表1のU3の条件で行ったこと以外は、比較例9と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.21)を作製した。
(実施例12)
ガスバリア層の上に上記表1のU2の条件でポリシラザンを含有する層をさらに形成し改質処理を実施したこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.22)を作製した。
(比較例11)
ガスバリア層の上に上記表1のU2の条件でポリシラザンを含有する層をさらに形成し改質処理を実施したこと以外は、比較例5と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.23)を作製した。
(実施例13)
ガスバリア層の上に上記表1のU2の条件でポリシラザンを含有する層をさらに形成し改質処理を実施したこと以外は、実施例3と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.24)を作製した。
(実施例14)
ガスバリア層の上に上記表1のU2の条件でポリシラザンを含有する層をさらに形成し改質処理を実施したこと以外は、実施例4と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.25)を作製した。
(実施例15)
ガスバリア層の上に上記表1のU2の条件でポリシラザンを含有する層をさらに形成し改質処理を実施したこと以外は、実施例5と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.26)を作製した。
(実施例16)
ガスバリア層の上に上記表1のU2の条件でポリシラザンを含有する層をさらに形成し改質処理を実施したこと以外は、実施例6と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.27)を作製した。
(実施例17)
ガスバリア層の上に上記表1のU2の条件でポリシラザンを含有する層をさらに形成し改質処理を実施したこと以外は、実施例7と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.28)を作製した。
(比較例12)
ガスバリア層の上に上記表1のU2の条件でポリシラザンを含有する層をさらに形成し改質処理を実施したこと以外は、比較例7と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.29)を作製した。
(実施例18)
ポリシラザンを含有する層の改質処理の際に組成調整処理M2を実施したこと以外は、比較例7と同様にしてガスバリア性フィルム(試料No.30)を作製した。
《評価方法》
<真空成膜によるガスバリア層の欠陥数の評価>
上記で作製したガスバリア性フィルム試料1〜18について、Ca蒸着面積・50mmの評価素子を作製した。85℃85%RHの条件下で、6時間保存した際に生じた円換算直径で100μm以上のCa腐食点の数を求めた。
以上により測定された各ガスバリア性フィルムをCa腐食点の数によって評価し、以下のようにランク付けした。なお、Ca腐食点の数が19以下(△評価以上)であれば、高いガスバリア性および優れたガスバリア性の面内均一性を有していることを意味し、実使用上問題なく、合格品である。
(ランク評価)
◎:2以下
○:3〜5
△:6〜19
×:20〜39
××:40以上。
以上の評価結果を表4にまとめた。
上記表4から、実施例のガスバリア性フィルムは、アンカーコート層を有さない試料1、A×B>60である試料2〜5、および試料15、ポリシロキサンを改質してアンカーコート層を成膜した試料6に比して、高いガスバリア性と優れたガスバリア性の面内均一性とを有することがわかった。
<有機ELデバイスのダークスポット(DS)評価>
上記で作製したガスバリア性フィルム試料19〜30を用い、下記に示すような方法で、発光領域の面積が5cm×5cmとなるように、ボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
(下地層、第1電極の形成)
ガスバリア性フィルムを、市販の真空蒸着装置の基材ホルダーに固定し、化合物118をタングステン製の抵抗加熱ボートに入れ、これら基材ホルダーと加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽内に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、真空蒸着装置の第2真空槽内に取り付けた。
次に、真空蒸着装置の第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、化合物118の入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で第1電極の下地層を厚さ10nmで設けた。
次に、下地層まで形成した基材を真空のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10 −4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で厚さ8nmの銀からなる第1電極を形成した。
(有機機能層〜第2電極)
引き続き、市販の真空蒸着装置を用い、真空度1×10−4Paまで減圧した後、基材を移動させながら化合物HT−1を、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、20nmの正孔輸送層(HTL)を設けた。
次に、化合物A−3(青色発光ドーパント)、化合物A−1(緑色発光ドーパント)、化合物A−2(赤色発光ドーパント)および化合物H−1(ホスト化合物)を、化合物A−3が膜厚に対し線形に35重量%から5重量%になるように場所により蒸着速度を変化させ、化合物A−1と化合物A−2は膜厚に依存することなく各々0.2重量%の濃度になるように、蒸着速度0.0002nm/秒で、化合物H−1は64.6重量%から94.6重量%になるように場所により蒸着速度を変化させて、厚さ70nmになるよう共蒸着し発光層を形成した。
その後、化合物ET−1を膜厚30nmに蒸着して電子輸送層を形成し、更にフッ化カリウム(KF)を厚さ2nmで形成した。更に、アルミニウム110nmを蒸着して第2電極を形成した。
なお、上記化合物118、化合物HT−1、化合物A−1〜3、化合物H−1、および化合物ET−1は、以下に示す化合物である。
(固体封止)
次に、封止部材として厚さ25μmのアルミ箔を使用し、このアルミ箔の片面に封止樹脂層として熱硬化型のシート状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ20μmで貼合した封止部材を用いて、第2電極までを作製した試料に重ね合わせた。このとき、第1電極及び第2電極の引き出し電極の端部が外に出るように、封止部材の接着剤形成面と、素子の有機機能層面とを連続的に重ね合わせた。
次いで、試料を減圧装置内に配置し、90℃で0.1MPaの減圧条件下で、重ね合わせた基材と封止部材とに押圧をかけて5分間保持した。続いて、試料を大気圧環境に戻し、さらに120℃で30分間加熱して接着剤を硬化させた。
上記封止工程は、大気圧下、含水率1ppm以下の窒素雰囲気下で、JIS B 9920:2002に準拠し、測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppm以下の大気圧で行った。なお、陽極、陰極からの引き出し配線等の形成に関する記載は省略してある。
(ダークスポット(DS)の評価)
上記のようにして得られた有機EL素子を85℃、85%RHの環境下で100時間通電を行い、発行させて写真を撮り、写真画像からダークスポットのサイズと個数を計測、円換算直径で300μm以上のダークスポットの数を求めた。ダークスポットの数は、発行面積100cmの換算値とし、以下のようにランク付けした。なお、ダークスポットの数が19以下(△評価以上)であれば、高温高湿環境での耐久性に優れた電子デバイスであることを意味し、用いられているガスバリア性フィルムが高いガスバリア性および優れたガスバリア性の面内均一性を有していることを意味する。また、ダークスポットの数が19以下(△評価以上)であれば、実使用上問題なく、合格品である。
(ランク評価)
◎:2以下
○:3〜5
△:6〜19
×:20〜39
××:40。
以上の評価結果を表5にまとめた。
上記表5から、アンカーコート層がA×B≦60を満たす実施例のガスバリア性フィルムを有する有機EL素子試料22、24〜28は、高温高湿環境におけるダークスポット評価において良好な結果を示した。一方、アンカーコート層がA×B≦60を満たさないガスバリア性フィルムを使用した有機EL素子試料においては、ガスバリア層上にさらにポリシラザンの改質層を設けたり(試料20、21)、組成がSiCで表される組成分布の領域であって、xが0.8〜1.2であるガスバリア層の領域の厚みを厚くしたり(試料29)しても、高温高湿環境において顕著なダークスポットの発生がみられ、耐久性に劣ることが分かった。
本出願は、2014年7月14日に出願された日本特許出願番号第2014−144294号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として組み入れられている。
S 成膜空間、
1、1a 基材、
1b、1c、1d、1e 成膜された基材、
10 送り出しロール、
11、12、13、14 搬送ロール、
15、15’ 第1成膜ロール、
16、16’ 第2成膜ロール、
17 巻取りロール、
18、18’ ガス供給管、
19、19’ プラズマ発生用電源、
20、20’、21、21’ 磁場発生装置、
30 真空チャンバ、
40、40’ 真空ポンプ、
41 制御部。

Claims (7)

  1. 基材上に、アンカーコート層、前記アンカーコート層に接しており真空成膜法により形成されるガスバリア層をこの順に有するガスバリア性フィルムであって、
    前記アンカーコート層は、ポリシラザンを含有する層にエネルギーを印加して改質処理を行って得られる層であり、かつ、前記アンカーコート層の厚さをA(nm)とし、前記アンカーコート層全体のケイ素原子に対する窒素原子の原子比(N/Si)をBとした時に、A×B≦60である、ガスバリア性フィルム。
  2. 前記ガスバリア層は、真空プラズマCVD法で成膜されたガスバリア層である、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記ガスバリア層は、組成がSiCで表される組成分布の領域であって、
    xが0.8〜1.2である領域を厚さ方向に有する、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記エネルギーの印加は、真空紫外光を照射することにより行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記ガスバリア層の基材側とは反対側の面上に、さらに、ポリシラザンを含有する層にエネルギーを印加して改質処理を行って得られる層を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  6. 前記エネルギーの印加は、真空紫外光を照射することにより行われる、請求項5に記載のガスバリア性フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムと、
    前記ガスバリア性フィルム上に形成される電子デバイス本体と、
    を含む、電子デバイス。
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