本発明は、基材上にガスバリア層を有するガスバリア性フィルムにおいて、前記ガスバリア層が、所定の組成比・厚さである領域(A)、領域(C)及び領域(D)を、基材側から厚さ方向にこの順で、それぞれ少なくとも1領域ずつ有し、且つ、450nmにおける吸収率が15%未満である、ガスバリア性フィルムに関する。このような構成を有するガスバリア性フィルムは、高いガスバリア性、良好な光学特性(透過性)、及び高温高湿環境での耐久性を有する。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[基材]
本発明のガスバリア性フィルムに用いられる基材としては、例えば、ガラス基板、セラミックス基板、プラスチックフィルム等が挙げられるが、好ましくはプラスチックフィルムが用いられる。用いられるプラスチックフィルムは、ガスバリア層、ハードコート層等を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、特許文献1の段落「0081」〜「0084」、国際公開第2013/002026号の段落「0044」〜「0047」に記載のものが挙げられる。
基材として用いることができるより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃、例えば株式会社きもと製KBフィルム(登録商標)125GSABR)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコ
ポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はガラス転移温度(Tg)を示す)。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、有機ELデバイス等の電子デバイスとして利用されることから、プラスチックフィルムは透明であることが好ましい。ここでいう基材が透明とは、可視光(400〜700nm)の光透過率が80%以上であることを示す。
本発明に係るガスバリア性フィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるため特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していてもよい。機能層については、上述したもののほか、例えば特開2006−289627号公報の段落番号「0036」〜「0038」に記載されているものを採用できる。
基材は、表面の平滑性が高いものが好ましい。表面の平滑性としては、平均表面粗さ(Ra)が2nm以下であるものが好ましい。下限は特にないが、実用上、0.01nm以上である。必要に応じて、基材の両面、少なくともガスバリア層を設ける側を研摩し、平滑性を向上させておいてもよい。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。本発明で用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。これらの基材の製造方法については、国際公開第2013/002026号の段落「0051」〜「0055」の記載された事項を適宜採用することができる。
基材のガスバリア層を設ける側には、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、またはプラズマ処理等を行うことが好ましく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行うことがより好ましい。
[ガスバリア層]
本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア層は、上記基材の上部に形成される層であり、以下の条件を満たす領域(A)、領域(C)及び領域(D)を、基材側から厚さ方向にこの順で、それぞれ少なくとも1領域ずつ有する;
領域(A):SiOlCm(0.70≦l≦1.25、0.88≦m≦1.40)、領域の厚さが20nm以上、200nm以下、
領域(C):SiOwNx(0.20<w≦0.55、0.66≦x≦0.75)、領域の厚さが50nm以上、1000nm以下、
領域(D):SiOyNz(0.55<y≦2.00、0.25<z<0.66)、領域の厚さが8nm以上、200nm以下である。
一実施形態では、本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア層は、領域(A)、領域(C)及び領域(D)に加えて、以下の条件を満たす領域(B)を、前記領域(A)と前記領域(C)との間に、少なくとも1領域有する;
領域(B):SiOnCo(1.40≦n<2.00、0.10≦o≦0.70)、領域の厚さが0nmを超えて、1000nm以下。
すなわち、本発明の一実施形態では、基材上にガスバリア層を有するガスバリア性フィルムにおいて、前記ガスバリア層が、領域(A)、領域(B)、領域(C)及び領域(D);ただし、前記領域(A)、前記領域(B)、前記領域(C)または前記領域(D)はそれぞれ以下の条件を満たす、
領域(A):SiOlCm(0.70≦l≦1.25、0.88≦m≦1.40)、領域の厚さが20nm以上、200nm以下、
領域(B):SiOnCo(1.40≦n<2.00、0.10≦o≦0.70)、領域の厚さが0nmを超えて、1000nm以下、
領域(C):SiOwNx(0.20<w≦0.55、0.66≦x≦0.75)、領域の厚さが50nm以上、1000nm以下、
領域(D):SiOyNz(0.55<y≦2.00、0.25<z<0.66)、領域の厚さが8nm以上、200nm以下である、
を、基材側から厚さ方向にこの順で、それぞれ少なくとも1領域ずつ有し、且つ、450nmにおける吸収率が15%未満である、ガスバリア性フィルムが提供される。
本発明において、ガスバリア層は、基材の片面にのみ形成されても良いし、両面に形成されても良い。
本発明において、領域(A)はSiOlCm(0.70≦l≦1.25、0.88≦m≦1.40)の組成比を有するガスバリア領域を、領域(B)はSiOnCo(1.40≦n<2.00、0.10≦o≦0.70)の組成比を有するガスバリア領域を、領域(C)はSiOwNx(0.20<w≦0.55、0.66≦x≦0.75)の組成比を有するガスバリア領域を、領域(D)はSiOyNz(0.55<y≦2.00、0.25<z<0.66)の組成比を有するガスバリア領域を指す。
ガスバリア層が有する領域(A)または領域(B)は、構成元素がケイ素(Si)、酸素(O)、炭素(C)からなり、領域(C)または領域(D)は、構成元素がケイ素(Si)、酸素(O)、窒素(N)からなる。
本明細書においては、領域(A)または領域(B)に含まれる全元素のうち、後述するXPS分析で求められる水素を除いた原子組成%(at%)で、ケイ素(Si)、酸素(O)、及び炭素(C)の合計が90at%以上であれば、構成元素がケイ素(Si)、酸素(O)、炭素(C)からなるという要件を満たす。領域(A)または領域(B)に含まれる全元素のうち、ケイ素(Si)、酸素(O)、及び炭素(C)の上限は、100at%である。ガスバリア層形成時の原料や基材・雰囲気等から取り込まれる少量の窒素等、上記のケイ素・酸素・炭素以外の元素は、領域(A)または領域(B)に含まれる全元素のうち、各々5at%未満であることが望ましく、各々2at%未満であることが望ましい。
さらに、領域(C)または領域(D)に含まれる全元素のうち、後述するXPS分析で求められる水素を除いた原子組成%(at%)で、ケイ素(Si)、酸素(O)、及び窒素(N)の合計が90at%以上であれば、構成元素がケイ素(Si)、酸素(O)、窒素(N)からなるという要件を満たす。領域(C)または領域(D)に含まれる全元素のうち、ケイ素(Si)、酸素(O)、及び窒素(N)の上限は、100at%である。ガスバリア層形成時の原料や基材・雰囲気等から取り込まれる少量の炭素等、上記のケイ素・酸素・窒素以外の元素は、領域(C)または領域(D)に含まれる全元素のうち、各々5at%未満であることが望ましく、各々2at%未満であることが望ましい。
本明細書においては、ガスバリア層及び/または該ガスバリア層に含まれる各領域の形成を、「成膜」とも称する。
ガスバリア層の組成比や厚さは、当業者であれば任意の方法で調整することができる。例えばCVD法によりガスバリア層を形成する場合は、形成(成膜)時のケイ素化合物(例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDSO:hexamethyldisiloxane))と酸素との供給比、供給ガス圧(原料ガスや酸素ガスの供給量)、印加電力、ラインスピード(搬送速度)等を調整すればよい。また、塗膜形成法によりガスバリア層を形成する場合は、ケイ素化合物を含む塗布液の厚さ、塗布後の乾燥の程度、印加するエネルギーの程度(例えば、真空紫外線を照射してエネルギーを印加する場合は、プラズマ密度、照射時間)、エネルギー印加時の雰囲気等を調整すればよい。より具体的には、ポリシラザン等のケイ素化合物を含む塗膜の真空紫外線照射時に、雰囲気の酸素濃度を調整することで、酸素源の取り込み量を調整し、領域の組成比や厚さを調整する方法が挙げられる。
本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア層は、領域(A)、領域(C)及び領域(D)をそれぞれ少なくとも1領域ずつ有していればよいが、作業効率の観点から、好ましくはそれぞれ10領域以下ずつであり、より好ましくは6領域以下ずつである。ガスバリア層が領域(B)を含む場合は、領域(B)についても、10領域以下が好ましく、6領域以下がより好ましい。
領域(A)、領域(C)及び領域(D)のうち1以上の領域を、複数有するガスバリア層の場合、少なくとも一つの領域(A)、少なくとも一つの領域(C)及び少なくとも一つの領域(D)を、基材側から厚さ方向に、ガスバリア層がこの順で有していればよい。
また、領域(A)、領域(B)、領域(C)及び領域(D)のうち1以上の領域を、複数有するガスバリア層の場合、少なくとも一つの領域(A)、少なくとも一つの領域(B)、少なくとも一つの領域(C)及び少なくとも一つの領域(D)を、基材側から厚さ方向に、ガスバリア層がこの順で有していればよい。すなわち、領域(A)よりも基材側に領域(B)が存在すること、また、領域(C)よりも基材側に領域(D)が存在することを妨げるものではない。
領域(A)及び(B)にはC(炭素)が含まれ、領域(C)及び(D)にはN(窒素)が含まれることから、領域(A)・(B)と、領域(C)・(D)とは、成膜時に用いる原料が異なる場合がある。従って、領域(A)または(B)が複数存在するガスバリア層であっても、その全ての領域(A)及び(B)が形成された後に、領域(C)及び(D)が形成されることが、作業効率の観点から好ましい。この場合、全ての領域(A)及び(B)が、領域(C)及び(D)より基材側に存在する態様となる。
以下に基材と、ガスバリア層の好ましい並びを示すが、本発明はこれらに限定されない。
(1)基材/領域(A)/領域(C)/領域(D)
(2)基材/領域(A)/領域(B)/領域(C)/領域(D)
(3)基材/領域(A)/領域(B)/領域(A)/領域(B)/領域(C)/領域(D)
(4)基材/領域(A)/領域(B)/領域(A)/領域(B)/領域(A)/領域(B)/領域(A)/領域(B)/領域(C)/領域(D)
(5)基材/領域(A)/領域(C)/領域(D)/領域(C)/領域(D)
(6)基材/領域(A)/領域(B)/領域(A)/領域(B)/領域(C)/領域(D)/領域(C)/領域(D)
なお、本発明に係るガスバリア性フィルムにおいては、後述するガスバリア層以外の層
を有してもよい。
Si/O/Cを構成元素とする領域(A)及び任意に含まれる領域(B)に加えて、Si/O/Nを構成元素とする領域(C)及び領域(D)をガスバリア層がさらに有することにより、有機ELデバイスの基板に要求されるバリア性を、ガスバリア性フィルムが備えることになる。さらには、ガスバリア層が領域(C)及び領域(D)を有することで、ガスバリア性フィルムの450nmにおける透過性が高まるという効果もある。本発明の技術的範囲を制限するものではないが、このメカニズムは、領域(C)、領域(D)の屈折率に起因するのではないかと考えている。
一方、Si/O/Nを構成元素とする領域(C)及び領域(D)に加えて、Si/O/Cを構成元素とする領域(A)及び任意に領域(B)をガスバリア層が基材側に有することにより、基材に直接領域(C)を形成した場合と比べて、領域(C)より基材側に位置する領域と領域(C)との密着性が高くなる。
このようなガスバリア層の厚さ方向の組成分布は、下記のようなXPS(光電子分光法)分析を用いた方法で測定して求めることができる。以下、XPS分析について説明する。
本発明のガスバリア層のエッチングレートは領域によって異なる。本発明においては、SiO2換算のエッチングレートを元にして一旦求めておき、XPS分析と同一試料の断面TEM画像をもとに、形成したガスバリア層の各領域間の界面を特定して一領域当たりの厚さを求める。TEM画像をもとに求めた一領域当たりの厚さを、XPS分析から求めた厚さ方向の組成分布と比較しながら、厚さ方向の組成分布における各領域を特定する。XPS分析から求めた各領域の厚さと、断面TEM画像から求めた各領域の厚さが一致するように、XPS分析から求めた各ガスバリア層の厚さに対して係数をかけることで厚さ方向の補正を行う。
本発明におけるXPS分析は下記の条件で行ったものであるが、装置や測定条件が変わっても本発明の主旨に即した測定方法であれば問題なく適用できるものである。
本発明の主旨に即した測定方法とは、主に厚さ方向の解像度であり、測定点1点あたりのエッチング深さ(下記のスパッタイオンとデプスプロファイルの条件に相当)は1〜15nmであることが好ましく、1〜10nmであることがより好ましい。
また、本発明におけるガスバリア層の表層の組成は、下記条件でガスバリア層表面を1分間スパッタ後に測定して得られるものである。
《XPS分析条件》
・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・測定領域:Si2p、C1s、N1s、O1s
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:一定時間スパッタ後、測定を繰り返す。1回の測定は、SiO2換算で、約2.8nmの厚さ分となるようにスパッタ時間を調整する
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いる。
このようにして、ガスバリア層の膜厚方向の組成分布のプロファイルの一次データを得る。
また、各試料の断面をTEMで撮影し、積層構成の各膜厚を求める。上記で求めた膜厚方向の組成分布のプロファイルをTEM画像から求めた実膜厚データを用いて補正し、ガスバリア層の膜厚方向の組成分布を得る。これを元に、領域(A)、領域(B)、領域(C)、領域(D)の厚さを求める。
TEM画像により一領域当たりの厚さを求める方法は、ガスバリア性フィルムを、以下のFIB加工装置により薄片を作製した後、定法に従い断面TEM観察を行えばよい。このようにして、各領域の厚さを算出できる。FIB加工及びTEM観察に用いることができる一例を以下に示す。
《FIB加工》
・装置:SII製SMI2050
・加工イオン:(Ga 30kV)
・試料厚み:100nm〜200nm
《TEM観察》
・装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)。
本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア層は、SiOlCm(0.70≦l≦1.25、0.88≦m≦1.40)の条件を満たす領域(A)の厚さが20nm以上且つ200nm以下、SiOwNx(0.20<w≦0.55、0.66≦x≦0.75)の条件を満たす領域(C)の厚さが50nm以上且つ1000nm以下、SiOyNz(0.55<y≦2.00、0.25<z<0.66)の条件を満たす領域(D)の厚さが8nm以上且つ200nm以下の範囲であればよい。また、ガスバリア層が領域(B)を有する場合は、SiOlCm(0.70≦l≦1.25、0.88≦m≦1.40)の条件を満たす領域(A)の厚さが20nm以上且つ200nm以下、SiOnCo(1.40≦n<2.00、0.10≦o≦0.70)の条件を満たす領域(B)の厚さが0nmを超えて1000nm以下、SiOwNx(0.20<w≦0.55、0.66≦x≦0.75)の条件を満たす領域(C)の厚さが50nm以上且つ1000nm以下、SiOyNz(0.55<y≦2.00、0.25<z<0.66)の条件を満たす領域(D)の厚さが8nm以上且つ200nm以下の範囲であればよい。
なお、青色光の透過性の観点から、領域(A)、領域(C)及び領域(D)、並びに任意で含まれる領域(B)のいずれか1つ以上の領域が、ガスバリア層内に複数存在する場合、その各領域の合計の厚さを上記の範囲内とする。
また、領域(A)と領域(C)とは、接触していても良いが、領域(A)と領域(C)との間に、どちらの組成も満たさない領域が存在することは妨げられない。すなわち、領域(A)と(C)とは接触していなくともよい。同様に、領域(C)と領域(D)とは接触していても良いが、接触していなくともよい。ガスバリア層が領域(B)を有する場合も同様に、領域(A)と領域(B)との間、または領域(B)と領域(C)との間に、どちらの組成も満たさない領域が存在することは妨げられない。
上記条件を満たす領域(A)、領域(C)及び領域(D)、並びに任意で領域(B)を、基材側から厚さ方向にこの順で、それぞれ少なくとも1領域ずつ有するガスバリア層は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。ガスバリア層の層数の上限は特に限定されないが、透明性や生産性の観点から、通常10以下である。すなわち、ガスバリア層は、基材上に、1〜10層、より好ましくは1〜6層積層されることが好ましい。また、本発明に係るガスバリア性フィルムには、上記条件を満たす領域(A)、領域(B)
、領域(C)及び領域(D)を含むガスバリア層が、1層含まれることが、光学特性の観点から特に好ましい。なお、ガスバリア性フィルムを構成する層として、ガスバリア性を有する他の層が存在してもよい。
ガスバリア層が2層以上の積層構造である場合、各ガスバリア層は同じ組成であってもよいし異なる組成であってもよい。また、ガスバリア層が2層以上の積層構造である場合、ガスバリア層は後述する真空成膜法により形成される層のみからなってもよいし、塗膜形成法により形成される層のみからなってもよいし、真空成膜法により形成される層と塗膜形成法により形成される層との組み合わせであってもよい。
ガスバリア層の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、100〜1500nm程度であることが好ましく、200〜1000nmであることがより好ましい。この範囲であれば、ガスバリア性と屈曲時のクラック耐性とのバランスが良好となる。100nm以上とすることで、ガスバリア性が確保され、1500nm以下とすることで屈曲時にクラックが発生する可能性が低くなる。
(領域(A)または領域(B)の形成方法)
領域(A)または領域(B)の形成方法は、特に制限されないが、物理気相成長法(PVD法)、化学気相成長法(CVD法)などの真空成膜法や、塗膜形成法を採用することができ、領域(A)及び任意に含まれる領域(B)が、CVD法で形成されることが特に好ましい。
以下、真空成膜法について説明するが、該方法は、領域(A)または領域(B)の形成に限らず、領域(C)や領域(D)の形成についても適用できる。
(真空成膜法)
物理気相成長法(Physical Vapor Deposition、PVD法)は、気相中で物質の表面に物理的手法により、目的とする物質、例えば、炭素膜等の薄膜を堆積する方法であり、例えば、スパッタ法(DCスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームスパッタ法、およびマグネトロンスパッタ法等)、真空蒸着法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
スパッタ法は、真空チャンバ内にターゲットを設置し、高電圧をかけてイオン化した希ガス元素(通常はアルゴン)をターゲットに衝突させて、ターゲット表面の原子をはじき出し、基材に付着させる方法である。このとき、チャンバ内に窒素ガスや酸素ガスを流すことにより、アルゴンガスによってターゲットからはじき出された元素と、窒素や酸素とを反応させて層を形成する、反応性スパッタ法を用いてもよい。
化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD法)は、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基材表面または気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマなどを発生させる方法などがあり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、真空プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法など公知のCVD方式等が挙げられる。特に限定されるものではないが、製膜速度や処理面積の観点から、真空プラズマCVD法または大気圧プラズマCVD法等のプラズマCVD法を適用することが好ましい。
例えば、HMDSO等を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、有機ケイ素酸化物が生成するため、領域(A)や領域(B)の形成に好適に用いられる。また、シラザン等を原料化合物として用いれば、酸窒化ケイ素が生成するため、領域(C)や領域(D)の形成に好適に用いられる。
なお、以下では、成膜装置として、プラズマCVD法によって薄膜を作成する、対向ロール型のロール・トゥ・ロール真空成膜装置を使用した、ロール・トゥ・ロール方式でガスバリア層を製造する場合を例示して説明する。
図1及び図2は、成膜装置の一例を示す概略構成図である。図2に例示した成膜装置101は、図1に例示した成膜装置100をタンデムに2台接合した構成を基本としている。ここでは、図2に例示した成膜装置を例にしてガスバリア層を形成する場合を説明するが、図2に記載の成膜装置に関する説明は、図1に記載の成膜装置に関する説明に対しても適宜参酌される。
図2に示すとおり、成膜装置101は、送り出しロール10と、搬送ロール11〜14と、第1、第2、第3及び第4成膜ロール15,16,15’,16’と、巻取りロール17と、ガス供給管18,18’と、プラズマ発生用電源19,19’と、磁場発生装置20,21,20’,21’と、真空チャンバ30と、真空ポンプ40,40’と、制御部41と、を有する。
本発明において、領域(A)及び領域(B)は、CVD法によりロール・トゥ・ロール方式で形成されることが好ましく、領域(A)が形成された基材を巻き取ることなく領域(B)が形成されることがより好ましい。図2に例示する成膜装置101には、送り出しロール10と巻き取りロール17との間に成膜部が2つ(成膜部S及びS’)ある。図2に例示するような成膜部を2つ以上備える成膜装置を用いることで、成膜部Sにおいて領域(A)が形成された基材を、巻き取りロール17で巻き取ることなく、成膜部S’において領域(B)を形成することができる。
送り出しロール10、搬送ロール11〜14、第1、第2、第3及び第4成膜ロール15,16,15’,16’、および巻取りロール17は、真空チャンバ30に収容されている。
送り出しロール10は、予め巻き取られた状態で設置されている基材1aを搬送ロール11に向けて送り出す。送り出しロール10は、紙面に対して垂直方向に延在した円筒状のロールであり、図示しない駆動モーターにより反時計回りに回転(図2の矢印を参照)することにより、送り出しロール10に巻回された基材1aを搬送ロール11に向けて送り出す。
搬送ロール11〜14は、送り出しロール10と略平行な回転軸を中心に回転可能に構成された円筒状のロールである。搬送ロール11は、基材1aに適当な張力を付与しつつ、基材1aを送り出しロール10から成膜ロール15に搬送するためのロールである。搬送ロール12,13は、成膜ロール15で成膜された基材1bに適当な張力を付与しつつ、基材1bを成膜ロール15から成膜ロール16に搬送するためのロールである。搬送ロール12’,13’は、成膜ロール15’で成膜された基材1eに適当な張力を付与しつつ、基材1eを成膜ロール15’から成膜ロール16’に搬送するためのロールである。さらに、搬送ロール14は、成膜ロール16’で成膜された基材1cに適当な張力を付与しつつ、基材1cを成膜ロール16から巻取りロール17に搬送するためのロールである。
第1成膜ロール15および第2成膜ロール16は、送り出しロール10と略平行な回転軸を有し、互いに所定距離だけ離間して対向配置された成膜ロール対である。また、第3成膜ロール15’および第4成膜ロール16’も同様に、送り出しロール10と略平行な回転軸を有し、互いに所定距離だけ離間して対向配置された成膜ロール対である。成膜ロ
ール16は、基材1bを成膜し、成膜された基材1dに適当な張力を付与しつつ、基材1dを成膜ロール15’へ搬送する。成膜ロール16’は、基材1eを成膜し、成膜された基材1cに適当な張力を付与しつつ、基材1cを搬送ロール14へ搬送する。
図2に示す例では、第1成膜ロール15と第2成膜ロール16との離間距離は、点Aと点Bとを結ぶ距離であり、第3成膜ロール15’と第2成膜ロール16’との離間距離は、点A’と点B’とを結ぶ距離である。第1〜第4成膜ロール15,16,15’,16’は、導電性材料で形成された放電電極であり、第1成膜ロール15と第2成膜ロール16、第3成膜ロール15’と第4成膜ロール16’とは、それぞれは互いに絶縁されている。なお、第1〜第4成膜ロール15,16,15’,16’の材質や構成は、電極として所望の機能を達成できるように適宜選択することができる。
さらに、第1〜第4成膜ロール15,16,15’,16’は、それぞれ独立に調温してもよい。第1〜第4成膜ロール15,16,15’,16’の温度は、特に制限されるものではないが、例えば−30〜100℃であるが、基材1aのガラス転移温度を超えて過度に高温に設定すると、基材が熱によって変形等を生じるおそれがある。
第1〜第4成膜ロール15,16,15’,16’の内部には、磁場発生装置20、21、20’および21’が、各々設置されている。第1成膜ロール15と第2成膜ロール16とにはプラズマ発生用電源19により、第3成膜ロール15’と第4成膜ロール16’とにはプラズマ発生用電源19’により、プラズマ発生用の高周波電圧が印加される。それにより、第1成膜ロール15と第2成膜ロール16との間の成膜部S、または第3成膜ロール15’と第4成膜ロール16’との間の成膜部S’に電場が形成され、ガス供給管18または18’から供給される成膜ガスの放電プラズマが発生する。プラズマ発生用電源19が印加する電圧と、プラズマ発生用電源19’が印加する電圧とは、同一であっても良いが、異なっていても良い。プラズマ発生用電源19または19’の電源周波数は任意に設定できるが、本構成の装置としては、例えば60〜100kHzであり、印加される電力は、有効成膜幅1mに対して、例えば1〜10kWである。
巻取りロール17は、送り出しロール10と略平行な回転軸を有し、基材1cを巻き取り、ロール状にして収容する。巻取りロール17は、図示しない駆動モーターにより反時計回りに回転(図2の矢印を参照)することにより、基材1cを巻き取る。
送り出しロール10から送り出された基材1aは、送り出しロール10と巻き取りロール17との間で、搬送ロール11〜14、第1〜第4成膜ロール15,16,15’,16’に巻き掛けられることにより適当な張力を保ちつつ、これらの各ロールの回転により搬送される。なお、基材1a,1b,1c,1d,1e(以下、基材1a,1b,1c,1d,1eを「基材1a〜1e」とも総称する。)の搬送方向は矢印で示されている。基材1a〜1eの搬送速度(ラインスピード)(たとえば、図2の点Cや点C’における搬送速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバ30内の圧力などに応じて適宜調整されうる。搬送速度は、送り出しロール10および巻取りロール17の駆動モーターの回転速度を制御部41によって制御することにより調整される。搬送速度を遅くすると、形成される領域の厚さが厚くなる。
また、この成膜装置を用いる場合、基材1a〜1eの搬送方向を図2の矢印で示す方向(以下、順方向と称する)とは反対方向(以下、逆方向と称する)に設定してガスバリア性フィルムの成膜工程を実行することもできる。具体的には、制御部41は、巻取りロール17によって基材1cが巻き取られた状態において、送り出しロール10および巻き取りロール17の駆動モーターの回転方向を上述の場合とは逆方向に回転するように制御する。このように制御すると、巻取りロール17から送り出された基材1cは、送り出しロ
ール10と巻き取りロール17との間で、搬送ロール11〜14、第1〜第4成膜ロール15,16,15’,16’に巻き掛けられることにより適当な張力を保ちつつ、これらの各ロールの回転により逆方向に搬送される。
搬送方向を順方向にする場合、成膜部Sで領域(A)を形成された基材1dが、搬送方向を変えることなく成膜部S’にて領域(B)が形成される。これにより、領域(A)が形成された基材を、巻き取りロール17で巻き取ることなく、領域(B)が形成される。
例えば成膜装置100において、領域(A)が形成された基材1bを、巻き取りロール17によって一旦巻き取ってから領域(B)が形成される場合と比べて、領域(A)が形成された基材を巻き取ることなく領域(B)が形成される場合、バリア性が高くなる。本発明の技術的範囲を制限するものではないが、このメカニズムは、領域(A)が形成された基材を巻き取ることなく領域(B)が形成されると、領域(A)と領域(B)との界面近傍における高バリア性領域が、形成されやすいためであると考えている。
成膜装置101を用いて領域(A)または領域(B)を形成する場合は、基材1aを順方向および逆方向に搬送して成膜部Sまたは成膜部S’を往復させることにより、領域(A)または領域(B)の形成(成膜)工程を複数回繰り返すこともできる。その結果、基材1a上には、複数の領域(A)または領域(B)が形成される。
ガス供給管18,18’は、真空チャンバ30内にプラズマCVDの原料ガスなどの成膜ガスを供給する。ガス供給管18は、成膜部Sの上方に第1成膜ロール15および第2成膜ロール16の回転軸と同じ方向に延在する管状の形状を有しており、複数箇所に設けられた開口部から成膜部Sに成膜ガスを供給する。ガス供給管18’も同様に、成膜部S’の上方に第3成膜ロール15’および第4成膜ロール16’の回転軸と同じ方向に延在する管状の形状を有しており、複数箇所に設けられた開口部から成膜部S’に成膜ガスを供給する。ガス供給管18から供給される成膜ガスとガス供給管18’から供給される成膜ガスとは同一でもよいが、異なっていても良い。更に、これらのガス供給管から供給される供給ガス圧についても、同一でもよいが異なっていても良い。
原料ガスには、ケイ素化合物を使用することができる。ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。これ以外にも、特開2008−056967号明細書の段落「0075」に記載の化合物を使用することもできる。これらのケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い易さや得られるガスバリア性フィルムの高いガスバリア性などの観点から、領域(A)または領域(B)の形成においては、HMDSOを使用することが好ましい。さらに、領域(C)または領域(D)をCVD法により形成する場合は、上記シラザン類を原料化合物として用いることが好ましい。なお、これらのケイ素化合物は、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。また、原料ガスには、ケイ素化合物の他にモノシランが含有されてもよい。ガスバリア層における各領域(領域(A)〜(D))の形成に用いられる原料ガスは同一でもよいが、異なっていても良い。
成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスが使用されてもよい。反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物などのケイ素化合物となるガスが選択される。薄膜として酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素ガス、オゾンガスを使用することができる。なお、これらの反応ガスは、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
領域(A)、領域(B)、領域(C)または領域(D)の組成比を調整する手段の一つとして、形成(成膜)時における原料ガスと反応ガスとの供給比を調整するという手段がある。
成膜ガスとしては、原料ガスを真空チャンバ30内に供給するために、さらにキャリアガスが使用されてもよい。また、成膜ガスとして、プラズマを発生させるために、さらに放電用ガスが使用されてもよい。キャリアガスおよび放電ガスとしては、例えば、アルゴンなどの希ガス、および水素や窒素が使用される。
磁場発生装置20,21は、第1成膜ロール15と第2成膜ロール16との間の成膜部Sに磁場を形成する部材であり、磁場発生装置20’,21’も同様に、第3成膜ロール15’と第4成膜ロール16’との間の成膜部S’に磁場を形成する部材である。これらの磁場発生装置20,20’,21,21’は、第1〜第4成膜ロール15,16,15’,16’の回転に追随せず、所定位置に格納されている。
真空チャンバ30は、送り出しロール10、搬送ロール11〜14、第1〜第4成膜ロール15,16,15’,16’、および巻取りロール17を密封して減圧された状態を維持する。真空チャンバ30内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類などに応じて適宜調整することができる。成膜部SまたはS’の圧力は、0.1〜50Paであることが好ましい。
真空ポンプ40,40’は、制御部41に通信可能に接続されており、制御部41の指令に従って真空チャンバ30内の圧力を適宜調整する。
制御部41は、成膜装置101の各構成要素を制御する。制御部41は、送り出しロール10および巻取りロール17の駆動モーターに接続されており、これらの駆動モーターの回転数を制御することにより、基材1aの搬送速度を調整する。また、駆動モーターの回転方向を制御することにより、基材1aの搬送方向を変更する。また、制御部41は、図示しない成膜ガスの供給機構と通信可能に接続されており、成膜ガスの各々の成分ガスの供給量を制御する。また、制御部41は、プラズマ発生用電源19,19’と通信可能に接続されており、プラズマ発生用電源19の出力電圧および出力周波数を制御する。さらに、制御部41は、真空ポンプ40,40’に通信可能に接続されており、真空チャンバ30内を所定の減圧雰囲気に維持するように真空ポンプ40を制御する。
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)を備える。HDDには、成膜装置101の各構成要素を制御して、ガスバリア性フィルムの製造方法を実現する手順を記述したソフトウェアプログラムが格納されている。そして、成膜装置101の電源が投入されると、上記ソフトウェアプログラムが上記RAMにロードされ上記CPUによって逐次的に実行される。また、上記ROMには、上記CPUが上記ソフトウェアプログラムを実行する際に使用する各種データおよびパラメーターが記憶されている。
(領域(A))
本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア層は以下の条件を満たす領域(A)を有する。
領域(A)は、組成比がSiOlCm(0.70≦l≦1.25、0.88≦m≦1.40)となる領域を指し、本発明においては領域(A)の厚さが20nm以上、200nm以下となるようにガスバリア層を形成する。
領域(A)は、領域(B)に比べ、その組成比において酸素(O)が少ない。領域(A)をガスバリア層に備えることでガスバリア性フィルムのバリア性が高まるものの、組成比において炭素(C)の多いガスバリア層を含むガスバリア性フィルムは、着色が強くなる傾向にある。しかしながら、Si/O/C組成比において炭素(C)を上記範囲内とすることで、ガスバリア性フィルムの着色を抑え、短波長側(例えば、青色発光にかかわる450nm)の透過性が過度に低くなることを防ぐことができる。本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア層において、領域(A)は、85℃、85%といった高温高湿環境下でのSi/O/C組成比の変化が小さく、形成(成膜)時のバリア性を長期間にわたって維持できるという耐久性を有する。
領域(A)の厚さ(あるガスバリア層において、領域(A)が2つ以上含まれる場合は、該ガスバリア層に含まれる全ての領域(A)の厚さの和である総厚)は20nm以上であれば良いが、好ましくは25nm以上であり、より好ましくは30nm以上である。領域(A)の厚さを20nm以上とすることで、バリア性を高めることができる。また、領域(A)の厚さは200nm以下であれば良いが、好ましくは150nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。領域(A)の厚さを200nm以下とすることで、ガスバリア性フィルムの着色を極力抑え、450nmにおける吸収率が15%以上になることを防ぐことができる。本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア層は、領域(A)を複数有していても良いが、この場合は領域(A)合計の厚さを200nm以下にすることが、450nmにおける透過性の観点から必要である。
領域(A)におけるSi/O/C組成比や厚さは、当業者であれば任意の方法で調整することができる。例えばCVD法をはじめとする真空成膜法により領域(A)を形成する場合は、形成(成膜)時のケイ素化合物(例えばHMDSO)と酸素との供給比、供給ガス圧、印加電力、ラインスピード等を調整すればよい。真空成膜法の場合、形成(成膜)時のケイ素化合物と酸素との供給比において、酸素の供給比を下げれば、酸素比率の低い組成である領域を形成することができる。領域(A)を形成する場合は、ケイ素化合物と酸素との供給比は1:1〜1:4(流量比)であることが好ましく、1:1.5〜1:3(流量比)であることがより好ましく、1:1.5〜1:2.5(流量比)であることが更に好ましい。
また、供給ガス圧を高く、印加電力を弱く、ラインスピードを遅くすると、領域の厚さが厚くなるため、当業者であればこれらのパラメーターを調節し、目的とする領域(A)の厚さに調整できる。
領域(A)を形成する場合は、有効成膜幅1mに対して、供給ガス圧(原料ガスと、酸素ガス等の反応ガスとの総圧)が100〜2000(sccm)であることが好ましく、200〜1000(sccm)であることがより好ましい。印加電力は1〜10(kW)であることが好ましく、2〜8(kW)であることがより好ましい。ラインスピードは1〜30(m/分)であることが好ましく、2〜20(m/分)であることがより好ましい。
(領域(B))
本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア層は、任意に、以下の条件を満たす領域(B)を、最も基材側に存在する領域(A)よりも厚さ方向に基材から離れた側に有してもよい。
領域(B)は、組成比がSiOnCo(1.40≦n<2.00、0.10≦o≦0.70)となる領域を指し、本発明においては領域(B)の厚さが0nmを超えて、100
0nm以下となるようにガスバリア層を形成することができる。
領域(B)は、組成比において領域(A)よりも炭素(C)が少ない。従って、ガスバリア層が領域(B)を有することで、バリア性と光学特性(例えば、450nmの吸収率)とを、より高いレベルで両立させたガスバリア性フィルムが提供され得る。
基材側から厚さ方向に領域(A)及び領域(B)を形成することで、ガスバリア性フィルムのバリア性が向上する。一方で、基材側から厚さ方向に領域(B)及び領域(A)をこの順で形成すると、ガスバリア性フィルムのバリア性向上という効果を得ることができない。本発明の技術的範囲を制限するものではないが、このメカニズムは、基材側から厚さ方向に領域(A)及び領域(B)を形成することで、領域(A)と領域(B)との界面近傍にバリア性が高い領域が形成されるためであると考えている。
領域(B)の厚さ(あるガスバリア層において、領域(B)が2つ以上含まれる場合は、該ガスバリア層に含まれる全ての領域(B)の厚さの和である総厚)は0nmを超えていれば良いが、好ましくは30nm以上であり、より好ましくは50nm以上である。また、領域(B)の厚さは1000nm以下であれば良いが、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは200nm以下である。領域(B)の厚さを1000nm以下とすることで、ガスバリア層にクラックが生じることを防ぐことができ、生産性が低下することなくガスバリア性フィルムを製造できる。ガスバリア層は、領域(B)を複数有していても良いが、この場合は、クラックの発生防止の観点から領域(B)合計の厚さを1000nm以下とする。
領域(B)におけるSi/O/C組成比や厚さは、当業者であれば任意の方法で調整することができる。例えばCVD法をはじめとする真空成膜法により領域(B)を形成する場合は、形成(成膜)時のケイ素化合物(例えばHMDSO)と酸素との供給比、供給ガス圧、印加電力、ラインスピード等を調整すればよい。真空成膜法の場合、形成(成膜)時のケイ素化合物と酸素との供給比において、酸素の供給比を上げれば、酸素比率の高い組成である領域を形成することができる。領域(B)を形成する場合は、ケイ素化合物と酸素との供給比は1:3〜1:20(流量比)であることが好ましく、1:4〜1:20(流量比)であることがよりに好ましく、1:5〜1:20(流量比)であることが更に好ましく、1:8〜1:15(流量比)であることが特に好ましい。
また、供給ガス圧を高く、印加電力を弱く、ラインスピードを遅くすると、領域の厚さが厚くなるため、当業者であればこれらのパラメーターを調節し、目的とする領域(B)の厚さに調整できる。
領域(B)を形成する場合は、有効成膜幅1mに対して、供給ガス圧(原料ガスと、酸素ガス等の反応ガスとの総圧)が200〜5000(sccm)であることが好ましく、400〜4000(sccm)であることがより好ましい。印加電力は1〜10(kW)であることが好ましく、2〜8(kW)であることがより好ましい。ラインスピードは1〜30(m/分)であることが好ましく、2〜20(m/分)であることがより好ましい。
(領域(C)または領域(D)の形成方法)
領域(C)または領域(D)の形成方法は、特に制限されないが、物理気相成長法(PVD法)、化学気相成長法(CVD法)などの真空成膜法や、塗膜形成法を採用することができ、塗膜形成法で形成することがより好ましい。領域(C)または領域(D)は、ポリシラザンを含有する塗布液を領域(A)または領域(B)の上に塗布し、エネルギーの印加により形成されることが更に好ましい。
以下、塗膜形成法について説明するが、該方法は、領域(C)または領域(D)の形成に限らず、領域(A)や領域(B)の形成についても適用できる。
(塗膜形成法)
塗膜形成法は、ケイ素化合物を含有する塗布液を基材に塗布し、エネルギーを印加してガスバリア層を形成する方法である。該エネルギーの印加により、ガスバリア層はガスバリア性を発現する。
(ケイ素化合物)
前記ケイ素化合物としては、ケイ素化合物を含有する塗布液の調製が可能であれば特に限定はされない。
具体的には、例えば、パーヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、シルセスキオキサン、HMDSO、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(3−アセトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることができるが、これ以外にも特許文献3の段落「0093」〜「0094」に記載のケイ素化合物も使用できる。これらケイ素化合物は、単独でもまたは2種以上組み合わせて用いることもできる。
中でも、成膜性、クラック等の欠陥が少ないこと、残留有機物の少なさの点で、パーヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン等のポリシラザン;シルセスキオキサン等のポリシロキサン等が好ましい。ガスバリア性能が高く、屈曲時および高温高湿条件下であってもバリア性能が維持されることから、領域(C)または領域(D)を塗膜形成法によって形成する場合は、ポリシラザンがより好ましく、パーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
ポリシラザンとは、ケイ素−窒素結合を有するポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO2、Si3N4、および両方の中間固溶体SiOaNb等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
具体的には、ポリシラザンは、好ましくは下記の構造を有する。
上記一般式(I)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1、R2およびR3は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。ここで、アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基が挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロ
ペンチル基、シクロヘキシル基などがある。また、アリール基としては、炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。より具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などの縮合多環炭化水素基が挙げられる。(トリアルコキシシリル)アルキル基としては、炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換されたシリル基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基が挙げられる。より具体的には、3−(トリエトキシシリル)プロピル基、3−(トリメトキシシリル)プロピル基などが挙げられる。上記R1〜R3に場合によって存在する置換基は、特に制限はないが、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基などがある。なお、場合によって存在する置換基は、置換するR1〜R3と同じとなることはない。例えば、R1〜R3がアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。これらのうち、好ましくは、R1、R2およびR3は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ビニル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基または3−(トリメトキシシリルプロピル)基である。
また、上記一般式(I)において、nは、整数であり、一般式(I)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
領域(C)または領域(D)を塗膜形成法によって形成する場合は、上記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、好ましい態様の一つは、R1、R2およびR3のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンである。
または、ポリシラザンとしては、下記一般式(II)で表される構造を有する。
上記一般式(II)において、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’およびR6’は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’およびR6’は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記における、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(I)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(II)において、n’およびpは、整数であり、一般式(II)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n’およびpは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(II)のポリシラザンのうち、R1’、R3’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’およびR5’が各々メチル基を表す化合物;R1’、R3’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’が各々メチル基を表し、R5’がビニル基を表す化合物;R1’、R3’、R4’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’
およびR5’が各々メチル基を表す化合物が好ましい。
一方、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンを用いて領域(A)や領域(B)を形成した場合、メチル基等のアルキル基を有することにより基材側の領域との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。このため、用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体または固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
ポリシラザンは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままガスバリア層形成用塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120−10、NN120−20、NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL120−20、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
本発明で使用できるポリシラザンの別の例としては、以下に制限されないが、例えば、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等の、低温でセラミック化するポリシラザンが挙げられる。
(ガスバリア層形成用塗布液)
ガスバリア層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ケイ素化合物を溶解できるものであれば特に制限されないが、ケイ素化合物と容易に反応してしまう水および反応性基(例えば、ヒドロキシル基、あるいはアミン基等)を含まず、ケイ素化合物に対して不活性の有機溶剤が好ましく、非プロトン性の有機溶剤がより好ましい。具体的には、溶剤としては、非プロトン性溶剤;例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒;塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジブチルエーテル、モノ−およびポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類;などを挙げることができる。上記溶剤は、ケイ素化合物の溶解度や溶剤の蒸発速度等の目的にあわせて選択され、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
ガスバリア層形成用塗布液におけるケイ素化合物の濃度は、特に制限されず、領域の厚さや塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。
ガスバリア層形成用塗布液は、改質を促進するために、触媒を含有することが好ましい。本発明に適用可能な触媒としては、塩基性触媒が好ましく、特に、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等のアミン触媒、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N−複素環式化合物が挙げられる。これらのうち、アミン触媒を用いることが好ましい。この際添加する触媒の濃度としては、ケイ素化合物を基準としたとき、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜7重量%の範囲である。触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、および膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けることができる。
ガスバリア層形成用塗布液には、必要に応じて下記に挙げる添加剤を用いることができる。例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート等のセルロースエーテル類、セルロースエステル類;ゴム、ロジン樹脂、尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、変性ポリエステル、エポキシド、ポリイソシアネート、ポリシロキサン等の天然または合成樹脂;である。
(ガスバリア層形成用塗布液を塗布する方法)
ガスバリア層形成用塗布液を塗布する方法としては、従来公知の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布厚さは、好ましい厚さや目的に応じて適切に設定され得る。
塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。この際、塗膜に含有される有機溶媒は、すべてを乾燥させてもよいが、一部残存させていてもよい。一部の有機溶媒を残存させる場合であっても、好適なガスバリア層が得られうる。なお、残存する溶媒は後に除去されうる。
塗膜の乾燥温度は、適用する基材によっても異なるが、50〜200℃であることが好ましい。例えば、ガラス転位温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレート基材を基材として用いる場合には、乾燥温度は、熱による基材の変形等を考慮して150℃以下に設定することが好ましい。上記温度は、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することによって設定されうる。乾燥時間は短時間に設定することが好ましく、例えば、乾燥温度が150℃である場合には30分以内に設定することが好ましい。また、乾燥雰囲気は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、真空雰囲気下、酸素濃度をコントロールした減圧雰囲気下等のいずれの条件であってもよい。
ガスバリア層形成用塗布液を塗布して得られた塗膜は、エネルギーの印加前またはエネルギーの印加中に水分を除去する工程を含んでいてもよい。水分を除去する方法としては、低湿度環境を維持して除湿する形態が好ましい。低湿度環境における露点温度は、好ましくは4℃以下(温度25℃/湿度25%)で、より好ましくは−5℃(温度25℃/湿度10%)以下であり、維持される時間はガスバリア層の膜厚によって適宜設定する。ガスバリア層の膜厚が1.0μm以下の条件においては、露点温度は−5℃以下で、維持される時間は1分以上であることが好ましい。なお、露点温度の下限は特に制限されないが、通常、−50℃以上であり、−40℃以上であることが好ましい。改質処理前、あるいは改質処理中に水分を除去することによって、シラノールに転化したガスバリア層の脱水
反応を促進する。
(エネルギーの印加)
続いて、上記のようにして形成された塗膜に対して、エネルギーを印加し、領域(A)または領域(B)の場合は有機ケイ素への、領域(C)または領域(D)の場合は酸窒化ケイ素への転化反応を行い、反応を行った領域をガスバリア性が発現しうる薄膜へ改質させる。
ケイ素化合物の転化反応は、公知の方法を適宜選択して適用することができる。本明細書においては、ケイ素化合物の酸窒化ケイ素等への転化反応を起こさせる処理を、「改質処理」と称する。改質処理としては、具体的には、プラズマ処理、紫外線照射処理(特に、真空紫外線照射処理)、加熱処理が挙げられる。ただし、加熱処理による改質の場合、ケイ素化合物の置換反応による酸窒化ケイ素層の形成には450℃以上の高温が必要であるため、プラスチック等のフレキシブル基板においては、適応が難しい。このため、熱処理は他の改質処理と組み合わせて行うことが好ましい。
したがって、改質処理としては、プラスチック基板への適応という観点から、より低温で、転化反応が可能なプラズマ処理や紫外線照射処理による転化反応が好ましい。
プラズマ処理、または紫外線照射処理(真空紫外線照射処理)によって改質処理を行う場合、プラズマや紫外線(真空紫外線)に曝される面側で、ケイ素化合物の酸窒化ケイ素等への転化反応が進行しやすい。従って、印加するエネルギーを弱く、塗膜の膜厚を厚くすると、塗膜の深部(プラズマや紫外線に曝される面とは逆の面側)では転化反応が進行しにくい場合がある。一方、改質処理を行う際に雰囲気の酸素濃度を高くすると、プラズマや紫外線に曝される面側において、ケイ素化合物の酸窒化ケイ素等への転化反応が、より進行しやすくなる。従って、例えばポリシラザンをケイ素化合物として用いた場合、印加するエネルギーを弱く、塗膜の膜厚を厚くすると、転化反応が進行しにくい塗膜の深部では、組成比において酸素(O)が少ない領域(C)が形成され、転化反応が進行しやすい面側(プラズマや紫外線に曝される面側)においては、組成比において酸素(O)が多い領域(D)が形成されうる。さらに、エネルギー印加時に雰囲気の酸素濃度を高くすることで、領域(D)の厚さを厚くし、領域(C)の厚さを薄くすることもできる。当業者であれば、印加するエネルギー、塗膜の膜厚、雰囲気の酸素濃度等を適宜調整し、任意の厚さで領域(C)や領域(D)を形成し得る。
以下、好ましい改質処理方法であるプラズマ処理、紫外線照射処理について説明する。
(プラズマ処理)
本発明において、改質処理として用いることのできるプラズマ処理は、公知の方法を用いることができるが、好ましくは大気圧プラズマ処理等があげられる。大気圧近傍でのプラズマ処理を行う大気圧プラズマ法は、真空下のプラズマ法に比べ、減圧にする必要がなく生産性が高いだけでなく、プラズマ密度が高密度であるために成膜速度が速く、大気圧下という高圧力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、均質の膜が得られる。
大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガスまたは長周期型周期表の第18族原子を含むガス、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
(紫外線照射処理)
改質処理の方法の1つとして、紫外線照射による処理が好ましい。紫外線(紫外光と同
義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸窒化ケイ素膜等を形成することが可能である。
この紫外線照射により、基材が加熱され、セラミックス化(シリカ転化)に寄与するO2とH2Oや、紫外線吸収剤、ポリシラザン自身が励起、活性化されるため、ポリシラザンが励起し、ポリシラザンのセラミックス化が促進され、また得られるガスバリア層が一層緻密になる。紫外線照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
紫外線照射処理においては、常用されているいずれの紫外線発生装置を使用することも可能である。
なお、本発明でいう紫外線とは、一般には、10〜400nmの波長を有する電磁波をいうが、後述する真空紫外線(10〜200nm)処理以外の紫外線照射処理の場合は、好ましくは210〜375nmの紫外線を用いる。
紫外線の照射は、照射されるガスバリア層を担持している基材がダメージを受けない範囲で、照射強度や照射時間を設定することが好ましい。
基材としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、例えば、2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基材表面の強度が20〜300mW/cm2、好ましくは50〜200mW/cm2になるように基材−紫外線照射ランプ間の距離を設定し、0.1秒〜10分間の照射を行うことができる。
一般に、紫外線照射処理時の基材温度が150℃以上になると、プラスチックフィルム等の場合には、基材が変形したり、その強度が劣化したりする等、基材の特性が損なわれることになる。しかしながら、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムの場合には、より高温での改質処理が可能である。したがって、この紫外線照射時の基材温度としては、一般的な上限はなく、基材の種類によって当業者が適宜設定することができる。
このような紫外線の発生手段としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機株式会社製、株式会社エム・ディ・コム製など)、UV光レーザー、等が挙げられるが、特に限定されない。また、発生させた紫外線をガスバリア層に照射する際には、効率向上と均一な照射を達成する観点から、発生源からの紫外線を反射板で反射させてからガスバリア層に当てることが好ましい。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する基材の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、ガスバリア層を表面に有する積層体を上記のような紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス株式会社製の紫外線焼成炉を使用することができる。また、ガスバリア層を表面に有する積層体が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。紫外線照射に要する時間は、使用する基材やガスバリア層の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分であり、好ましくは0.5秒〜3分である。
(真空紫外線照射処理:エキシマ光照射処理)
本発明において、最も好ましい改質処理方法は、真空紫外線照射による処理(エキシマ
光照射処理)である。ポリシラザンを含有する塗布液を領域(A)または領域(B)の上に塗布し、真空紫外線を照射することによりエネルギーが印加されて領域(C)及び領域(D)が形成されることが、本発明においては好ましい。
真空紫外線照射による処理は、ポリシラザン化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温(約200℃以下)で、酸化ケイ素膜の形成を行う方法である。なお、エキシマ光照射処理を行う際は、上述したように熱処理を併用することが好ましく、その際の熱処理条件の詳細は上述したとおりである。
本発明においての放射線源は、100〜180nmの波長の光を発生させるものであれば良いが、好適には約172nmに最大放射を有するエキシマラジエータ(例えば、Xeエキシマランプ)、約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプ、並びに230nm以下の波長成分を有する中圧および高圧水銀蒸気ランプ、および約222nmに最大放射を有するエキシマランプである。
真空紫外線照射は、1回のみ行ってもあるいは2回以上行ってもよいが、1〜5回が好ましく、1〜3回がより好ましく、1回が更に好ましい。
このうち、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン塗膜の改質を実現できる。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で、すなわち短い波長でエネルギーを照射するため、改質対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、管理された酸素濃度および水蒸気濃度の雰囲気下で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、0.001〜2体積%(10〜20,000体積ppm)とすることが好ましく、0.005〜1体積%(50〜10,000体積ppm)とすることがより好ましい。また、転化プロセスの間の水蒸気濃度は、好ましくは0.001〜0.4体積%(10〜4,000体積ppm)の範囲である。
真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
真空紫外線照射工程において、ポリシラザン塗膜が受ける塗膜面での該真空紫外線の照度のピーク値は10mW/cm2〜1W/cm2であることが好ましく、40mW/cm
2〜300mW/cm2であることがより好ましく、60mW/cm2〜200mW/cm2であることがさらに好ましい。10mW/cm2未満では、改質効率が大きく低下する懸念があり、1W/cm2を超えると、塗膜にアブレーションを生じたり、基材にダメージを与えたりする懸念が出てくる。
塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量(照射量)は、100mJ/cm2〜20J/cm2であることが好ましく、500mJ/cm2〜10J/cm2であることがより好ましく、1J/cm2〜8J/cm2であることがさらに好ましい。100mJ/cm2未満では、改質が不十分となる懸念があり、20J/cm2を超えると過剰改質によるクラック発生や、基材の熱変形の懸念が出てくる。
また、用いられる真空紫外線は、CO、CO2およびCH4の少なくとも一種を含むガスで形成されたプラズマにより発生させてもよい。
ケイ素化合物を含有する塗布液を領域(A)または領域(B)の上に塗布し、真空紫外線を照射することによりエネルギーの印加を行い、ガスバリア層を形成する場合、ガスバリア層が基材側からの酸素供給を遮断することがあるため、各領域の膜厚を厚くすることが難しい場合がある。この場合は、塗膜の形成とエネルギーの印加とを複数回繰り返すことにより、各領域を複数形成すればよい。
他の真空紫外線照射条件は、特に制限されない。例えば、真空紫外線照射温度(ステージ温度や基材到達温度)は、150℃以下程度であることが好ましく、60〜120℃であることがより好ましい。また、真空紫外線照射時間は、0.1〜20分程度であることが好ましく、0.5〜10分であることがより好ましい。
(領域(C))
本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア層は以下の条件を満たす領域(C)を、領域(A)及び任意に含まれる領域(B)よりも厚さ方向に基材から離れた側に、少なくとも一つ有する。
領域(C)は、組成比がSiOwNx(0.20<w≦0.55、0.66≦x≦0.75)となる領域を指し、本発明においては領域(C)の厚さが50nm以上、1000nm以下となるようにガスバリア層を形成する。
領域(C)は、領域(D)に比べ、その組成比において酸素(O)が少ない。領域(C)はバリア性も有するが、ガスバリア層に侵入してきた水蒸気と反応することで水蒸気を捕捉する、いわゆるデシカントとしても機能する。本発明の技術的範囲を制限するものではないが、このメカニズムは、領域(C)にはその組成比において窒素が多く、酸素が少ないことに起因するものと考えている。例えば、基材側から領域(A)/領域(B)/領域(C)を有するガスバリア層の場合、基材側で発生する水蒸気は、まず領域(A)/領域(B)においてその大部分がバリアされる。しかしながら、領域(A)/領域(B)から極わずかに水蒸気が侵入する場合もある。ガスバリア層に侵入した水蒸気が領域(C)と反応すると、水蒸気由来の酸素や水素が、領域(C)に豊富に存在する窒素と置き換わり、該窒素が外界に抜けることで、水分を捕捉するものと考えられる。
領域(C)の厚さ(あるガスバリア層において、領域(C)が2つ以上含まれる場合は、該ガスバリア層に含まれる全ての領域(C)の厚さの和である総厚)は50nm以上であれば良いが、好ましくは100nm以上であり、より好ましくは200nm以上である。領域(C)の厚さを50nm以上とすることで、デシカントとして水蒸気と反応する化合物量を多くし、捕捉できる水蒸気量が多くなり、結果としてデバイスに要求される耐用
年数を超えて領域(C)のデシカント機能が維持され、バリア性の低下を抑えることができる。また、領域(C)の厚さは1000nm以下であれば良いが、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは300nm以下である。領域(C)の厚さを1000nm以下とすることで、素材に係るコストを抑えるとともに、ガスバリア層にクラックが生ずるのを防ぐことができる。
領域(C)におけるSi/O/N組成比や厚さは、当業者であれば任意の方法で調整することができる。例えば塗膜形成法により領域(C)を形成する場合は、ケイ素化合物を含む塗布液の厚さ、塗布後の乾燥の程度、印加するエネルギー量(例えば、真空紫外線を照射してエネルギーを印加する場合は、照度、プラズマ密度、照射時間等を調整する。)、エネルギー印加時の雰囲気(特に酸素濃度)等を調整すればよい。塗膜形成法の場合、印加するエネルギー量を小さくすれば、ガスバリア層の組成比において酸素を少なくすることができる。また、ケイ素化合物を含む塗布液の厚さを厚くすると、領域の厚さが厚くなるため、当業者であれば目的とする領域の厚さに合わせて塗膜の厚さを調整できる。
塗膜形成法により領域(C)を形成する場合は、乾燥後の塗布液(塗膜)の厚さを70〜1000nm、好ましくは80〜600nmとする。また、印加するエネルギー量は500mJ/cm2〜10J/cm2、好ましくは1J/cm2〜8J/cm2とする。さらに、エネルギー印加時に雰囲気の酸素濃度を0.001〜2体積%、好ましくは0.005〜1体積%とする。
(領域(D))
本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア層は以下の条件を満たす領域(D)を、最も基材側に存在する領域(A)、任意に含まれる領域(B)及び領域(C)よりも厚さ方向に基材から離れた側に、少なくとも一つ有する。
領域(D)は、組成比がSiOyNz(0.55<y≦2.00、0.25<z<0.66)となる領域を指し、本発明においては領域(D)の厚さが8nm以上、200nm以下となるようにガスバリア層を形成する。
領域(D)は、領域(C)に比べ、その組成比において酸素(O)が多い。領域(D)は非常に高いガスバリア性を有する。領域(D)は、領域(C)と比べて水蒸気との反応性が低く、高温高湿下においても組成変化が少ないため、長期間にわたり非常に高いガスバリア性を維持することができる。例えば、基材側から領域(A)/領域(B)/領域(C)/領域(D)を有するガスバリア層の場合、基材側で発生する水蒸気は、領域(A)/領域(B)においてバリアされ、領域(C)で捕捉されるが、領域(C)において捕捉しきれなかった水蒸気が領域(D)においてバリアされる。これによって、有機ELデバイスにダークスポットが生じることを抑制できる。
領域(D)の厚さ(あるガスバリア層において、領域(D)が2つ以上含まれる場合は、該ガスバリア層に含まれる全ての領域(D)の厚さの和である総厚)は8nm以上であれば良いが、好ましくは20nm以上であり、より好ましくは40nm以上である。領域(D)の厚さを8nm以上とすることで、電子デバイスに要求される高いバリア性を備えることとなる。また、領域(D)の厚さは200nm以下であれば良いが、好ましくは150nm以下であり、より好ましくは50nm以下である。領域(D)の厚さが200nmを超えると、領域の厚さに対するバリア性の向上が飽和してくるため、領域(D)の厚さを200nm以下とすることで、コストメリットの高いガスバリア性フィルムを得ることができる。さらに、領域(D)の厚さが20nm〜150nmの範囲では、過剰なコストをかけずに、デバイスとして要求される耐用年数にわたってダークスポットの発生を抑制し、かつ、派生したダークスポットの成長を抑制することができる。
領域(D)におけるSi/O/N組成比や厚さは、当業者であれば任意の方法で調整することができる。例えば塗膜形成法により領域(D)を形成する場合は、ケイ素化合物を含む塗布液の厚さ、塗布後の乾燥の程度、印加するエネルギー量(例えば、真空紫外線を照射してエネルギーを印加する場合は、照度、プラズマ密度、照射時間等を調整する。)、エネルギー印加時の雰囲気(特に酸素濃度)等を調整すればよい。塗膜形成法の場合、印加するエネルギー量を大きくすれば、ガスバリア層の組成比において酸素を多くすることができる。また、ケイ素化合物を含む塗布液の厚さを厚くすると、領域の厚さが厚くなるため、当業者であれば目的とする領域の厚さに合わせて塗膜の厚さを調整できる。
塗膜形成法により領域(D)を形成する場合は、乾燥後の塗布液(塗膜)の厚さを5〜1000nm、好ましくは10〜600nmとする。また、印加するエネルギー量は500mJ/cm2〜10J/cm2、好ましくは1J/cm2〜8J/cm2とする。エネルギー印加時に雰囲気の酸素濃度を0.02〜2体積%、好ましくは0.05〜1体積%とする。
[吸収率]
本発明に係るガスバリア性フィルムは、450nmにおける吸収率が15%未満であることを特徴とする。450nmにおける吸収率が低い(すなわち、透過性が高い)本発明に係るガスバリア性フィルムを表示デバイスに用いることにより、光源から使用者まで可視光が届く過程において、青色光にかかわる450nm付近の光のガスバリア性フィルムによる吸収を極力抑えることができる。
領域(A)や領域(B)の厚さを薄くすると、450nmにおける吸収率が低くなる。特に、領域(A)は組成比において炭素が多く、450nmにおける吸収率を上げる傾向にある。一方、領域(A)や領域(B)の厚さを薄くすると、ガスバリア性が低下する傾向にある。従って、領域(A)や領域(B)の厚さは、450nmにおける吸収率と、ガスバリア性フィルムのガスバリア性とのバランスを考慮して設定される。
領域(A)及び任意に形成される領域(B)よりも厚さ方向に基材から離れた側に、領域(C)及び領域(D)を少なくとも一つずつ有することで、ガスバリア性フィルムの450nmにおける吸収率を低くすることができる。本発明に係るガスバリア性フィルムにおいては、450nmの吸収率が15%未満であれば良いが、好ましくは10%未満であり、より好ましくは8%未満である。450nmの吸収率の下限は特に制限はないが、例えば実質的に0%以上である。
ガスバリア性フィルムの450nmにおける吸収率は、分光光度計や分光測色計により測定する。450nmにおける吸収率は、分光測色計(例えば、CM−3600d、コニカミノルタ社製)を用い、450nmでの透過率A(%)と反射率B(%)を測定し、下記の式1を用いて求めればよい。
また、本発明に係るガスバリア性フィルムは、450nmにおける吸収率が低いことを特徴とするが、可視光領域(400〜700nm)の透過率が80%以上であることが好ましく、83%以上であることがより好ましい。可視光領域(400〜700nm)の透過率が80%以上であることにより、可視光領域全体について光学特性が優れたガスバリア性フィルムが提供される。可視光領域の全光線透過率は、JIS K7375:2008に準じて測定する。
[ガスバリア層以外の層]
本発明のガスバリア性フィルムは、例えば、基材とガスバリア層との間、ガスバリア層の上、またはガスバリア層が形成されていない基材の他方の面に、ガスバリア層以外の層を有していても良い。ガスバリア層以外の層としては、特に制限されず、従来のガスバリア性フィルムに使用される部材が同様にしてあるいは適宜修飾して使用できる。具体的には、平滑層、アンカーコート層、オーバーコート層、ブリードアウト防止層、保護層、吸湿層や帯電防止層の機能化層などが挙げられる。以下、ガスバリア層以外の層として、アンカーコート層、平滑層、ブリードアウト防止層、オーバーコート層について説明するが、これらの層に限定されるものではない。
(アンカーコート層)
本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア層を形成する側の基材の表面には、ガスバリア層との密着性の向上を目的として、アンカーコート層を形成してもよい。
アンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。
上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5.0g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。アンカーコート層は、物理蒸着法または化学蒸着法といった気相法により形成することもできる。また、アンカーコート層の厚さは、特に制限されないが、0.5〜10μm程度が好ましい。
アンカーコート層については、特開2013−232320号公報の段落「0105」〜「0111」に記載された事項も適宜参酌され、採用されうる。
(平滑層)
本発明のガスバリア性フィルムにおいては、基材とガスバリア層との間に、平滑層を有してもよい。本発明に用いられる平滑層は突起等が存在する基材の粗面を平坦化するために設けられる。このような平滑層は、基本的には感光性材料、または、熱硬化性材料を硬化させて作製される。
平滑層の感光性材料としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。
熱硬化性材料として具体的には、クラリアント社製のトゥットプロムシリーズ(有機ポリシラザン)、セラミックコート株式会社製のSP COAT耐熱クリアー塗料、株式会社アデカ製のナノハイブリッドシリコーン、DIC株式会社製のユニディック(登録商標)V−8000シリーズ、EPICLON(登録商標) EXA−4710(超高耐熱性エポキシ樹脂)、信越化学工業株式会社製の各種シリコン樹脂、日東紡株式会社製の無機
・有機ナノコンポジット材料SSGコート、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。この中でも特に耐熱性を有するエポキシ樹脂ベースの材料であることが好ましい。
平滑層の形成方法は、特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上及び膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
平滑層の厚さとしては、フィルムの耐熱性を向上させ、フィルムの光学特性のバランス調整を容易にする観点から、1〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、2μm〜7μmの範囲にすることが好ましい。
平滑層の平滑性は、JIS B 0601:2001で規定される表面粗さで表現される値で、十点平均粗さRzが、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。この範囲であれば、バリア層を塗布形式で塗布した場合であっても、ワイヤーバー、ワイヤレスバー等の塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合であっても塗布性が損なわれることが少なく、また、塗布後の凹凸を平滑化することも容易である。
平滑層については、特開2013−232320号公報の段落「0112」〜「0121」に記載された事項も適宜参酌され、採用されうる。
(ブリードアウト防止層)
本発明のガスバリア性フィルムは、上記平滑層を設けた面とは反対側の基材面にブリードアウト防止層を有してもよい。
ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、平滑層を有するフィルム中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層に、ハードコート剤として含ませることが可能な重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物または分子中に一個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
その他の添加剤として、マット剤を含有してもよい。マット剤としては平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種または2種以上を併せて使用することができる。マット剤は、ハードコート剤の固形分100重量部に対して2〜20重量部、好ましくは4〜18重量部、より好ましくは6〜16重量部の割合で混合される。
また、ブリードアウト防止層は、ハードコート剤およびマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、および必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を基材表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。
なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
ブリードアウト防止層の厚さとしては、1〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、2μm〜7μmの範囲にすることが好ましい。
ブリードアウト防止層については、例えば特開2011−104829号公報の段落「0137」〜「0152」に記載された事項も適宜参酌される。
(オーバーコート層)
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア層上に、さらにオーバーコート層を設けてもよい。オーバーコート層については、特開2013−232320号公報の段落「0131」〜「0151」に記載された事項が適宜参酌され、採用されうる。
[電子デバイス]
本発明のガスバリア性フィルムは、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく用いることができる。すなわち、本発明は、本発明のガスバリア性フィルムを用いた電子デバイスをも提供する。
前記電子デバイスの例としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(有機ELデバイス)、液晶表示デバイス(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等の電子デバイスを挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、有機ELデバイスまたは太陽電池に好ましく用いられ、有機EL素子に特に好ましく用いられる。具体的な電子デバイスの一例としては、例えば特開2013−232320号公報の段落「0157」〜「0228」に記載された電子デバイスが挙げられる。
本発明のガスバリア性フィルムは、また、デバイスの膜封止に用いることができる。すなわち、デバイス自体を支持体として、その表面に本発明のガスバリア性フィルムを設ける方法である。ガスバリア性フィルムを設ける前にデバイスを保護層で覆ってもよい。
本発明のガスバリア性フィルムは、デバイスの基板や固体封止法による封止のためのフィルムとしても用いることができる。固体封止法とはデバイスの上に保護層を形成した後、接着剤層、ガスバリア性フィルムを重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
以下に有機ELデバイスの層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極
(陽極)
有機ELデバイスにおける陽極(透明電極)としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチタンオキサイド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜として形成し、その薄膜をフォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましい。陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
(陰極)
有機ELデバイスにおける陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。陰極の膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
また、陰極の説明で挙げた上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有するデバイスを作製することができる。
(注入層:電子注入層、正孔注入層)
注入層には電子注入層と正孔注入層があり、電子注入層と正孔注入層を必要に応じて設け、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させる。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
陽極バッファー層(正孔注入層)の具体例としては、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電
性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層(電子注入層)の具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
(発光層)
有機ELデバイスにおける発光層は、電極(陰極、陽極)または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
有機ELデバイスの発光層には、以下に示すドーパント化合物(発光ドーパント)とホスト化合物(発光ホスト)が含有されることが好ましい。
(発光ドーパント)
発光ドーパントは、大きく分けて蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。リン光性ドーパントの代表例としては、好ましくは元素の周期表で第8族、第9族、第10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。発光ドーパントは複数種の化合物を混合して用いてもよい。
(発光ホスト)
発光ホスト(単にホストとも言う)とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物(単に、ドーパントとも言う)」という。例えば、発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。
発光ホストとしては構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、またはカルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
そして、発光層は上記化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により成膜して形成することができる。発光層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。この発光層はドーパント化合物やホスト化合物が1種または2種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。これ以外にも、特開2013−232320号公報の段落「0162」に開示の化合物を、正孔輸送材料として採用することもできる。
正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する電子輸送材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
(有機ELデバイスの作製方法)
有機ELデバイスの作製方法について説明する。
ここでは有機ELデバイスの一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機ELデバイスの作製方法について説明する。
まず、ガスバリア性フィルム上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング、プラズマCVD等の方法により形成させ、陽極を作製する。
次に、その上に有機ELデバイス材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の有機化合物薄膜を形成させる。この有機化合物薄膜の成膜方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等がある。さらに層毎に異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより所望の有機ELデバイスが得られる。
この有機ELデバイスの作製は、一回の真空引きで一貫して陽極、正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うなどすれば、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。また、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することもできる。
このようにして得られた有機ELデバイスを備える多色の表示装置(有機ELパネル)に、直流電圧を印加する場合には、陽極をプラス、陰極をマイナスの極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「重量部」あるいは「重量%」を表す。
(製造例)
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造例について、以下に示す。
1.CVD法による各領域の形成条件
領域(A)または領域(B)の形成は、CVD法により行った。
CVD法による領域(A)または領域(B)の形成には、図2に示す、成膜部を2つ(第1成膜部、第2成膜部)備えたロール・トゥ・ロール真空成膜装置(CVD成膜装置)を用いた。有効成膜幅は1000mmとした。
成膜条件は、搬送速度;第1成膜部(図2における成膜部S)若しくは第2成膜部(図2における成膜部S’)における原料ガス(HMDSO)の供給量(sccm)、酸素ガスの供給量(sccm)、真空度(Pa)、印加電力(kW)、プラズマ発生用電源19
,19’の周波数(kHz);及び/または成膜回数(成膜装置のパス数)で調整した。
基材としては、両面ハードコート(表面側は平滑面、裏面側はアンチブロック機能の粗面)付きPETフィルム(厚み:125μm、株式会社きもと製、商品名:KBフィルム(登録商標)125GSABR)を用いた。
ガスバリア層の形成は、基材の平滑面上に行った。
CVD法による成膜は、成膜有効幅1000mm換算として、表1の条件で行った。その他の条件として、電源周波数は84kHz、成膜ロールの温度はすべて30℃とした。
なお、順方向に基材を搬送する場合は、図2において、送り出しロール10に巻き取られた状態で設置された基材1aが送り出され、基材1bが成膜部Sにて成膜され、基材1eが成膜部S’にて成膜され、基材1cが巻取りロール17により巻き取られるまでを1回のパスとした。逆方向に基材を搬送する場合は、図2において、巻取りロール17に巻き取られた基材1cが送り出され、基材1eが成膜部S’にて成膜され、基材1bが成膜部Sにて成膜され、基材1aが送り出しロール10により巻き取られるまでを1回のパスとした。成膜装置を2回以上パスさせる場合、1パス目(順方向)に対して、2パス目は基材を巻き戻す方向(逆方向)に搬送し、3パス目は1パス目と同じ方向(順方向)に搬送した。
表1においては、基材の搬送方向にかかわらず、それぞれのパスにおいて最初に通過する成膜部を第1成膜部、次に通過する成膜部を第2成膜部として示している。すなわち、図2において、1パス目または3パス目では成膜部Sが第1成膜部、成膜部S’が第2成膜部に、また、2パス目では成膜部S’が第1成膜部、成膜部Sが第2成膜部に該当する。
2.塗膜形成法による各領域の形成条件
領域(C)または領域(D)の形成は、以下の塗膜形成法により行った。
パーヒドロポリシラザンを20重量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N’,N’−
テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH)、(アミン触媒の含量:5重量%))を含むパーヒドロポリシラザン20重量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(重量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで適宜希釈し、各塗布液を調製した。
CVD法により領域(A)及び/若しくは領域(B)を形成した基材、または、成膜を行っていない上述の基材をシート状に切り出して準備した。塗膜形成法による各領域の形成は、CVD法により形成した領域(A)及び/若しくは領域(B)の上面、または、基材の平滑面上に行った。
乾燥後の膜厚が表2に示す厚さになるよう、スピンコートにより塗布液を塗布し、80℃で2分間乾燥した。次いで、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを用い、表2に示す酸素濃度、および照射エネルギーの条件で、真空紫外線照射処理を施してガスバリア層とした。乾燥膜厚は断面TEM観察により測定した。表2において、「照射処理時酸素濃度」はエキシマランプ照射時の雰囲気の酸素濃度を、「照射エネルギー」は真空紫外線の塗膜面における照射エネルギーを示す。
なお、ガスバリア層の形成に際して、表2中の成膜条件を複数採用する場合は、ある成膜条件における乾燥塗膜の形成及びエネルギー照射後に、他の成膜条件における乾燥塗膜の形成及びエネルギー照射を行った。
3.ガスバリア性フィルムの構成
CVD法と塗膜形成法とを表3のように組み合わせて、ガスバリア性フィルム試料No.1〜14を作製した。
得られた各ガスバリア性フィルムにおけるガスバリア層の膜厚方向の組成分布のプロファイルの一次データを、上述のXPS分析により得た。また、各試料の断面をTEMで撮影し、積層構成の各膜厚を求めた。上記で求めた膜厚方向の組成分布のプロファイルをTEM画像から求めた実膜厚データを用いて補正し、ガスバリア層の膜厚方向の組成分布を得た。これを元に、領域(A)、領域(B)、領域(C)、領域(D)の厚さを求めた。
(ガスバリア性フィルムの評価方法)
表3に示す製造条件で得られたガスバリア性フィルム、及び該ガスバリア性フィルムを
用いた電子デバイスについて、以下の項目を評価した。
(1)水蒸気透過性
得られたガスバリア性フィルムの水蒸気透過率(Water Vapor Transmission Rate、以下、「WVTR」と称する。)を、透湿度測定装置(AQUATRAN model1、MOCON社製、米国)を用い、38℃および相対湿度100%の雰囲気で測定した。結果を表3の「水蒸気透過性」の欄に示す。
(2)光学特性: 450nmにおける吸収率(%)
分光測色計(CM−3600d、コニカミノルタ社製)を用い、ガスバリア性フィルムの450nmでの吸収率を求めた。450nmにおける吸収率は、分光測色計(例えば、CM−3600d、コニカミノルタ社製)を用い、450nmでの透過率A(%)と反射率B(%)とを測定し、下記の式1を用いて求めた。
結果を表3の「450nm吸収率」の欄に示す。
(3)有機ELデバイスのダークスポット(DS)評価
得られたガスバリア性フィルムを用い、下記に示すような方法で、発光領域の面積が5cm×5cmとなるように、ボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
(下地層、第1電極の形成)
ガスバリア性フィルムを、市販の真空蒸着装置の基材ホルダーに固定し、下記の化合物118をタングステン製の抵抗加熱ボートに入れ、これら基材ホルダーと加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽内に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、真空蒸着装置の第2真空槽内に取り付けた。
次に、真空蒸着装置の第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、化合物118の入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で第1電極の下地層を厚さ10nmで設けた。
次に、下地層まで形成した基材を真空のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で厚さ8nmの銀からなる第1電極を形成した。
(有機機能層〜第2電極)
引き続き、市販の真空蒸着装置を用い、真空度1×10−4Paまで減圧した後、基材を移動させながら化合物HT−1を、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、20nmの正孔輸送層(HTL)を設けた。
次に、化合物A−3(青色発光ドーパント)、化合物A−1(緑色発光ドーパント)、化合物A−2(赤色発光ドーパント)および化合物H−1(ホスト化合物)を、化合物A−3が膜厚に対し線形に35重量%から5重量%になるように場所により蒸着速度を変化させ、化合物A−1と化合物A−2は膜厚に依存することなく各々0.2重量%の濃度になるように、蒸着速度0.0002nm/秒で、化合物H−1は64.6重量%から94.6重量%になるように場所により蒸着速度を変化させて、厚さ70nmになるよう共蒸着し発光層を形成した。
その後、化合物ET−1を膜厚30nmに蒸着して電子輸送層を形成し、更にフッ化カリウム(KF)を厚さ2nmで形成した。更に、アルミニウム110nmを蒸着して第2電極を形成した。
なお、上記化合物118、化合物HT−1、化合物A−1〜3、化合物H−1、及び化合物ET−1は、以下に示す化合物である。
(固体封止)
次に、封止部材として厚さ25μmのアルミ箔を使用し、このアルミ箔の片面に封止樹脂層として熱硬化型のシート状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ20μmで貼合した封止
部材を用いて、第2電極までを作製した試料に重ね合わせた。このとき、第1電極及び第2電極の引き出し電極の端部が外に出るように、封止部材の接着剤形成面と、素子の有機機能層面とを連続的に重ね合わせた。
次いで、試料を減圧装置内に配置し、90℃で0.1MPaの減圧条件下で、重ね合わせた基材と封止部材とに押圧をかけて5分間保持した。続いて、試料を大気圧環境に戻し、さらに120℃で30分間加熱して接着剤を硬化させた。
上記封止工程は、大気圧下、含水率1ppm以下の窒素雰囲気下で、JIS B9920:2002に準拠し、測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppm以下の大気圧で行った。なお、陽極、陰極からの引き出し配線等の形成に関する記載は省略してある。
(ダークスポット(DS)の評価)
上記のようにして得られた有機EL素子を85℃、85%RHの環境下で500時間通電を行い、ダークスポットの発生の状況を、全発光面積に対する非発光領域の面積を百分率で算出した。なお、DSの測定は50時間ごとに行い、500時間以前にDSが100%になるか、デバイスが非発光となった場合は、その時間を記載した。測定結果を表3の「ダークスポット評価」の欄に示す。
以下に、各試料におけるガスバリア層の並びを示す:
試料No.1:(基材)/領域(B)、
試料No.2:(基材)/領域(A)、
試料No.3、5:(基材)/領域(A)/領域(C)/領域(D)、
試料No.4、6、11:(基材)/領域(A)/領域(B)/領域(C)/領域(D)、
試料No.7:(基材)/領域(A)/領域(B)/領域(A)/領域(B)/領域(C)/領域(D)、
試料No.8:(基材)/領域(B)/領域(C)/領域(D)、
試料No.9:(基材)/領域(C)/領域(D)、
試料No.10:(基材)/領域(A)/領域(B)/領域(C)、
試料No.12:(基材)/領域(A)/領域(B)/領域(A)/領域(B)/領域(A)/領域(B)/領域(C)/領域(D)、
試料No.13:(基材)/領域(A)/領域(B)/領域(A)/領域(B)/領域(C)/領域(D)/領域(C)/領域(D)、
試料No.14:(基材)/領域(A)/領域(B)/領域(C)/領域(D)/領域(C)/領域(D)/領域(C)/領域(D)。
例えば、表3中、試料No.6においては、成膜条件No.a6を採用してCVD成膜装置を1回パスし、領域(A)及び領域(B)をそれぞれ1領域ずつ形成している。一方、試料No.12においては、成膜条件No.a6を採用してCVD成膜装置を1回パスして領域(A)及び領域(B)を形成した後、さらに2回パスし、領域(A)または領域(B)がそれぞれ3領域ずつ形成されていることを意味する。
また、表3中、試料No.2においては、成膜条件No.a3を採用してCVD成膜装置を1回パスし、領域(A)を1領域形成している。一方、試料No.11においては、成膜条件No.a3を採用してCVD成膜装置を2回パスして領域(A)を形成した後、成膜条件No.a9を採用し、領域(A)を形成する(厚くする)とともに領域(B)を形成していることを意味する。
表3中、試料No.13においては、成膜条件No.b4を採用して領域(C)及び領域(D)を形成した後、再度成膜条件No.b4を採用して領域(C)及び領域(D)を形成し、さらに成膜条件No.b2を採用して領域(D)を形成(厚く)している。
表3に示すように、本発明のガスバリア性フィルムは、450nmの透過性が高く(すなわち、450nmの吸収率が低く)、有機ELデバイスの青色光の発光を阻害せず、かつ、非常に良好なバリア性を有している。
試料No.4と試料No.11との比較から、領域(A)の厚さを過度に厚くすると、450nmの透過性が低くなることが分かる。
また、試料No.2と試料No.3との比較から、領域(C)と領域(D)とをガスバリア層が有することにより、ガスバリア性を高めつつ、低い450nmの吸収率を実現できることが分かる。
試料No.4と試料No.10との比較から、ガスバリア層が領域(D)を有することにより、ガスバリア性と450nmの透過性とを高いレベルで両立できることが分かる。
表3中、成膜条件No.a4、No.a6、No.a7、またはNo.a9を採用した、試料No.4、試料No.6、試料No.7、試料No.10〜14においては、領域(A)が形成された基材を巻き取ることなく領域(B)が形成されている。このうち、本願実施例に該当する試料No.4、試料No.6、試料No.7、試料No.11、試料No.12または試料No.13においては、ガスバリア性と450nmの透過性とを高
いレベルで両立できることが分かる。