JP2015147952A - ガスバリア性フィルムの製造方法、ガスバリア性フィルム、電子デバイス、および、有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

ガスバリア性フィルムの製造方法、ガスバリア性フィルム、電子デバイス、および、有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Abstract

【課題】ロール状にしても巻きぐせによるカールが小さいガスバリア性フィルムを製造するガスバリア性フィルム製造方法、および、これにより製造されたガスバリア性フィルム、このガスバリア性フィルムを備える電子デバイス、このガスバリア性フィルムを備える有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。【解決手段】ガスバリア性フィルム1の製造方法は、基材2上にクリアハードコート層3を形成するクリアハードコート層形成工程と、この基材2を熱処理する熱処理工程と、第1ガスバリア層4を形成する第1ガスバリア層形成工程と、第2ガスバリア層5を形成する第2ガスバリア層形成工程と、を含み、前記熱処理は、基材2のガラス転移温度をTgとしたときに、Tg<T≰(Tg+55℃)を満たす温度Tの状態から、前記温度Tよりも20〜60℃低い温度になるまで、10〜65分かけて冷却することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリア性フィルムの製造方法、ガスバリア性フィルム、このガスバリア性フィルムを備える電子デバイス、および、このガスバリア性フィルムを備える有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜(ガスバリア層)を形成したガスバリア性フィルムが、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(有機ELともいう)等の基板として使用されている。
このようなガスバリア性フィルムにおいては、これまで、可撓性基材を用いたOLED(Organic light-emitting diode)パネルなどの電子デバイスや、食品、医薬品等の包装材料用として高いバリア性を得るために、基材上に無機バリア層と、塗布バリア層とを有するハイブリッドバリアが検討されてきた(例えば、特許文献1、2参照)。
特開平11−151774号公報 特開2009−248558号公報
しかしながら、従来の技術においては、以下の問題がある。
ガスバリア性フィルムに用いる基材は、取り扱いの簡便さや省スペースなどの観点から、一般的にはロール状に巻かれた状態で保管される。また、ガスバリア性フィルムの製造においては、ロール状に巻いた基材をロールから引き出してバリア層を形成し、再びロールに巻き取る、ロールトゥロール方式で行われることが多い。さらに、ガスバリア性フィルムの製造途中や、ガスバリア性フィルムを製造した後において、製造途中の部材や製造後のガスバリア性フィルムは、一旦、ロール状に巻いて保管される場合も多い。これらのことから、製造したガスバリア性フィルムには、巻きぐせが生じてしまう。特に、ガスバリア性フィルムをロール状に巻いて保管した場合、ガスバリア性フィルムの巻きぐせが顕著となる。
そして、ガスバリア性フィルムの巻きぐせが大きいと、ガスバリア性フィルムを、例えば電子デバイスである有機EL素子に用いる場合、素子自体がカールし、素子を重ねる際に寸法が不一致となるという問題や、素子の品質や性能が低下するという問題がある。
これらの問題に対し、巻きぐせを矯正するデカール処理を行うことが考えられる。しかしながら、デカール処理は、シート状の基板を逆巻きにして圧力をかける処理であるため、基材や、ガスバリア層、素子などを痛めるという問題がある。そのため、ガスバリア性フィルムやこれを用いた電子デバイスなどの性能が劣化するという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ロール状にしても巻きぐせによるカールが小さいガスバリア性フィルムを製造するガスバリア性フィルムの製造方法、および、ロール状にしても巻きぐせによるカールが小さいガスバリア性フィルム、このガスバリア性フィルムを備える電子デバイス、このガスバリア性フィルムを備える有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(1)基材の少なくとも一方の面に、クリアハードコート層を形成するクリアハードコート層形成工程と、前記クリアハードコート層が形成された基材を熱処理する熱処理工程と、前記熱処理工程の後に、前記クリアハードコート層上に第1ガスバリア層を形成する第1ガスバリア層形成工程と、前記第1ガスバリア層形成工程の後に、前記第1ガスバリア層上に第2ガスバリア層を形成する第2ガスバリア層形成工程と、を含み、前記熱処理は、前記基材のガラス転移温度をTgとしたときに、Tg<T≦(Tg+55℃)を満たす温度Tの状態から、前記温度Tよりも20〜60℃低い温度になるまで、10〜65分かけて冷却することで行うことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
(2)前記熱処理は、前記クリアハードコート層が形成された基材を搬送しながら行うことを特徴とする前記(1)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(3)前記搬送しながら行う熱処理は、搬送装置の熱処理ゾーンを通過させることにより行い、熱処理開始時の温度Tが前記熱処理ゾーンの入口温度であり、熱処理終了時の温度が前記熱処理ゾーンの出口温度であることを特徴とする前記(2)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(4)前記第1ガスバリア層を、化学気相成長法により形成することを特徴とする前記(1)から前記(3)のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(5)前記化学気相成長法が、放電プラズマ化学気相成長法であることを特徴とする前記(4)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(6)前記放電プラズマ化学気相成長法が、一対の成膜ローラー上に前記クリアハードコート層が形成された基材を配置し、前記一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることにより前記第1ガスバリア層を形成する放電プラズマ化学気相成長法であることを特徴とする前記(5)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(7)前記第2ガスバリア層を、珪素化合物を含有する溶液を塗布することにより形成することを特徴とする前記(1)から前記(6)のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(8)基材と、この基材の少なくとも一方の面に設けられたクリアハードコート層と、このクリアハードコート層上に設けられた第1ガスバリア層と、この第1ガスバリア層上に設けられた第2ガスバリア層と、を有するガスバリア性フィルムであって、前記ガスバリア性フィルムは、76.2mm径のコアに巻きつけた状態で55℃、20%RHで4時間保持した後に前記コアから解放したときの立ち上がりカールの絶対値が20mm以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
(9)前記(8)に記載のガスバリア性フィルムを備えることを特徴とする電子デバイス。
(10)前記(8)に記載のガスバリア性フィルムを備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法によれば、ロール状にしても巻きぐせによるカールが小さいガスバリア性フィルムを製造することができる。
本発明のガスバリア性フィルムによれば、巻きぐせによるカールが小さいため、このガスバリア性フィルムを用いた製品の品質や性能が向上する。
本発明の電子デバイスおよび有機エレクトロルミネッセンス素子によれは、本発明のガスバリア性フィルムを備えるため、品質や性能が良好なものとなる。
本発明のガスバリア性フィルムの構成の一例を示す概略断面図である。 本発明のガスバリア性フィルムにおける第1ガスバリア層の形成に好適な放電プラズマ処理装置の一例を示す模式図である。 本発明のガスバリア性フィルムを備えた有機EL素子の構成の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
まず、本発明のガスバリア性フィルムについて説明する。
≪ガスバリア性フィルム≫
図1に示すように、本発明に係るガスバリア性フィルム1は、基材2と、この基材2の少なくとも一方の面に設けられたクリアハードコート層3と、このクリアハードコート層3上に設けられた第1ガスバリア層4と、この第1ガスバリア層4上に設けられた第2ガスバリア層5と、を有する。ここで、第1ガスバリア層4と、第2ガスバリア層5とで、ガスバリア層ユニット(ガスバリア層10)を形成している。
そして、ガスバリア性フィルム1は、76.2mm(3インチ)径のコアに巻きつけた状態で55℃、20%RHで4時間保持した後に前記コアから解放したときの立ち上がりカールの絶対値を20mm以下としたものである。なお、クリアハードコート層3は、基材2の少なくとも一方の面に設けられていればよい。すなわち、クリアハードコート層3は、基材2の一方の面のみに形成されていてもよく、基材2の両面に形成されていてもよい。両面とは、基材2の表面および裏面を意味する。
以下、各構成について説明する。
<基材>
本発明のガスバリア性フィルム1で用いられる基材2としては、ガスバリア性を有するガスバリア層10を保持することができる有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、さらには前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。
コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等が好ましく用いられる。また、光学的透明性、耐熱性、クリアハードコート層3との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いられる。基材2の厚さは5〜500μm程度が好ましく、さらに好ましくは25〜250μmである。
また、本発明に用いる基材2は、透明であることが好ましい。基材2が透明であり、基材2上に形成する層も透明であることにより、透明なガスバリア性フィルム1とすることが可能となるため、有機EL素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材2は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に用いる基材2は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材2を製造することができる。また、未延伸の基材2を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、基材2の流れ(縦軸)方向、または基材2の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材2を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材2の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、本発明に用いる基材2においては、第1ガスバリア層4を形成する前にコロナ処理を行ってもよい。
<クリアハードコート層>
クリアハードコート層3は、基材2と第1ガスバリア層4との密着性を向上させるものである。クリアハードコート層3を形成する材料としては、例えば、硬化型樹脂が挙げられる。クリアハードコート層3は、例えば、硬化型樹脂を含むクリアハードコート層形成用塗布液を塗布することで形成することができる。
硬化型樹脂およびクリアハードコート層3の形成方法については後述するガスバリア性フィルム1の製造方法で説明する。
<ガスバリア層>
ガスバリア層10は第1ガスバリア層4と第2ガスバリア層5とからなるハイブリッド皮膜である。
ガスバリア層10は、JIS−K−7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が0.01g/(m・24時間)以下であることが好ましい。また、JIS−K−7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24時間・atm)以下、水蒸気透過度が1×10−5g/(m・24時間)以下であることが好ましい。
[第1ガスバリア層]
第1ガスバリア層4を形成する材料としては、基材2やこのガスバリア性フィルム1を具備する有機EL素子の性能劣化をもたらす水分や酸素等素子の浸入を抑制する機能を有する材料を用いることが好ましい。例えば、第1ガスバリア層4を形成する材料としては、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。第1ガスバリア層4は、例えば、化学気相成長法によって形成することができる。
第1ガスバリア層4の形成方法については、後述するガスバリア性フィルム1の製造方法で説明する。
[第2ガスバリア層]
第2ガスバリア層5を形成する材料としては、例えば、珪素化合物が挙げられる。第2ガスバリア層5は、例えば、珪素化合物を含有する溶液を塗布することで形成することができる。
珪素化合物および第2ガスバリア層5の形成方法については後述するガスバリア性フィルム1の製造方法で説明する。
<ガスバリア性フィルムの立ち上がりカールの絶対値:20mm以下>
本発明のガスバリア性フィルム1は、76.2mm(3インチ)径のコアに巻きつけた状態で55℃、20%RHで4時間保持した後に前記コアから解放したときの立ち上がりカールの絶対値を20mm以下とする。
立ち上がりカールの絶対値は、具体的には以下のようにして測定する。
まず、ガスバリア性フィルム1を、幅3cm、長さ20cmに切り出し、3インチ径のコアに巻きつける。コアに接触する面は、ガスバリア層10側の面でも、基材2側の面でも、どちらでもよい。このガスバリア性フィルム1を巻きつけたコアを、55℃、20%RHの環境下におき、4時間保持する。その後、ガスバリア性フィルム1をコアから解放し、水平な面に置いたときに観測される立ち上がりカールを測定する。立ち上がりカールとは、カールが凸となった面を下にして置いたときに、ガスバリア性フィルム1の四隅が立ち上がる高さのことである。四隅の立ち上がる高さが異なる場合は、最大の高さとする。
なお、55℃、20%RHで4時間という条件は、通常ガスバリア性フィルム1が保存される温度条件に換算して、ガスバリア性フィルム1の有効期限の期間に相当すると言われている。
立ち上がりカールの絶対値が20mmを超えると、ガスバリア性フィルム1を用いた電子デバイスなどの製品の品質や性能が低下する。例えば、ガスバリア性フィルム1を有機EL素子に用いた場合、素子自体にカールが生じ、素子を重ねる際に寸法が不一致となったり、素子の品質や性能が低下したりする。したがって、立ち上がりカールの絶対値は20mm以下とする。なお、ガスバリア性フィルム1の品質をより向上させるため、立ち上がりカールの絶対値は、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。なお、立ち上がりカールの絶対値の下限については特に規定はないが、立ち上がりカールの絶対値はより小さいほど好ましく、0であることが好ましい。
立ち上がりカールの絶対値は、後述するように、クリアハードコート層3が形成された基材2を所定条件で熱処理することにより制御する。
≪ガスバリア性フィルムの製造方法≫
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、クリアハードコート層形成工程と、熱処理工程と、第1ガスバリア層形成工程と、第2ガスバリア層形成工程と、を含む。
以下、図1を参照して各工程について説明する。
[クリアハードコート層形成工程]
クリアハードコート層形成工程は、基材2の少なくとも一方の面に、クリアハードコート層3を形成する工程である。
クリアハードコート層3の形成方法としては、特に制限はないが、硬化型樹脂を含むクリアハードコート層形成用塗布液を用い、湿式塗布方式で塗布、乾燥して形成する方法が好ましい。
具体的には、クリアハードコート層3は、クリアハードコート層形成用塗布液を用いて、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の湿式塗布方法で塗設することができる。
クリアハードコート層形成用塗布液の塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。また、層厚としては、0.1〜30μm、好ましくは1〜10μmである。
本発明におけるクリアハードコート層3の形成に使用される硬化型樹脂としては、熱硬化型樹脂や活性エネルギー線硬化型樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化型樹脂を好ましく用いることができる。以下、硬化型樹脂について説明する。
(熱硬化型樹脂)
熱硬化型樹脂としては特に制限はなく、具体的には、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等の種々の熱硬化性樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、平均して1分子当り2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(具体的には、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(活性エネルギー線硬化型樹脂)
本発明において好適に用いることができる活性エネルギー線硬化型樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて、活性エネルギー線硬化型樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化型樹脂が好ましい。
〈紫外線硬化型樹脂〉
以下、本発明におけるクリアハードコート層3の形成に好適な紫外線硬化型樹脂について説明する。
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号に記載の樹脂を用いることができる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載の樹脂を用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
また、本発明では、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂を用いることが好ましいが、他の樹脂であってもよい。紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂としては、例えば、多官能アクリレート樹脂等が挙げられる。ここで、多官能アクリレート樹脂とは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
多官能アクリレート樹脂のモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートが挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独又は2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
本発明において適用可能な紫外線硬化型樹脂の市販品としては、例えば、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、DIC(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(以上、中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(以上、三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(以上、昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用できる。
〈光重合開始剤〉
また、紫外線硬化型樹脂の硬化促進のために、光重合開始剤を紫外線硬化型樹脂に対して2〜30質量%の範囲内で含有することが好ましい。光重合開始剤としては、光照射によりカチオン重合を開始させるルイス酸を放出するオニウム塩の複塩の一群が特に好ましい。
この様なオニウム塩としては、特に、芳香族オニウム塩をカチオン重合開始剤として使用するのが特に有効であり、中でも特開昭50−151996号、同50−158680号等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号、同52−30899号、同59−55420号、同55−125105号等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号、同56−149402号、同57−192429号等に記載のオキソスルホニウム塩、特公昭49−17040号等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号等に記載のチオピリリウム塩等が好ましい。また、アルミニウム錯体や光分解性ケイ素化合物系重合開始剤等を挙げることができる。上記カチオン重合開始剤と、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントンなどの光増感剤を併用することができる。
〈各種添加剤〉
また、クリアハードコート層3には、耐傷性、滑り性や屈折率を調整するために無機化合物又は有機化合物の微粒子を含んでもよい。
クリアハードコート層3に使用される無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
また、有機粒子としては、ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、又はポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物を加えることができる。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)、フッ素含有アクリル樹脂微粒子が挙げられる。フッ素含有アクリル樹脂微粒子としては、例えば日本ペイント製:FS−701等の市販品が挙げられる。また、アクリル粒子として、例えば日本ペイント製:S−4000,アクリル−スチレン粒子として、例えば日本ペイント製:S−1200、MG−251等が挙げられる。
また、クリアハードコート層3の耐熱性を高めるために、光硬化反応を抑制しないような酸化防止剤を選んで用いることができる。
クリアハードコート層3の形成に用いるクリアハードコート層形成用塗布液には、溶媒が含まれていてもよく、必要に応じて適宜含有し、希釈されたものであってもよい。クリアハードコート層形成用塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル等)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、又はこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)又はプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
更にクリアハードコート層3には、シリコーン系界面活性剤又はポリオキシエーテル化合物を含有させることができる。また、クリアハードコート層3にはフッ素−シロキサングラフトポリマーを含有させてもよい。
クリアハードコート層形成用塗布液としては、例えば、ポリウレタンアクリレート及びアクリル酸エステルを主成分とした紫外線硬化型樹脂含有塗布液を用いることができる。
〈硬化処理〉
そして、このようにしてクリアハードコート層3を形成した後、硬化処理を施し、最終的にクリアハードコート層3を硬化する。クリアハードコート層3の硬化処理方法は、熱エネルギーを付与することで、あるいは、活性エネルギー線、好ましくは紫外線を照射することで行う。
例えば、クリアハードコート層3(未硬化)が熱硬化型樹脂で形成されている場合には、硬化手段として加熱ヒーター等を用いて熱エネルギーを付与して硬化する。あるいは、クリアハードコート層3(未硬化)が活性エネルギー線(例えば、紫外線)硬化型樹脂で形成されているが場合には、硬化手段として紫外線照射装置等を用いて紫外線等を照射して硬化する。
紫外線硬化型樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化したクリアハードコート層3を形成するために用いる光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性エネルギー線の照射量は、例えば、1〜1200mJ/cmの範囲内とすることができ、好ましくは5〜100mJ/cm2の範囲内であり、より好ましくは20〜80mJ/cm2の範囲内である。
[熱処理工程]
熱処理工程は、前記クリアハードコート層3が形成された基材2を所定条件で熱処理する工程である。
クリアハードコート層3が形成された基材2を、第1ガスバリア層4を形成する前に所定条件で熱処理することで、製造されるガスバリア性フィルム1の立ち上がりカールの絶対値が20mm以下となる。これにより、バリア性が高く、巻きぐせの少ない良好な品質のガスバリア性フィルム1を得ることができる。
また、熱処理工程により、熱処理後の部材が一旦、ロール状に巻いて保管された場合でも、この部材の巻きぐせを低減することができる。そのため、その後の工程で部材を安定して搬送でき、また、ガスバリア層を作製する工程で、安定して塗布液を塗布できる。よって、本発明のガスバリア性フィルム1の製造方法は、ガスバリア性フィルム1の製造が行いやすく、作業性に優れたものとなる。
本発明のガスバリア性フィルム1の製造方法における熱処理は、基材2にクリアハードコート層3が形成された後、第1ガスバリア層4を形成する前に所定条件で熱処理することに特徴を有するものである。
よって、これまでに知られているような、基材2あるいはガスバリア性フィルム1を基材2のTg以下の温度範囲で、ロール状態で行うアニール処理とは異なるものである。
また、従来のガスバリア性フィルム1の製造においては、基材2上にバリア層を設ける際に、その成膜方法(例えば、熱処理やCVD)によっては、基材2に所定の熱が加わる。しかしながら、この基材2に加わる熱は、バリア層を形成するための熱であり、この熱による基材2の熱処理は、バリア層の形成と同じタイミングで行われるものである。すなわち、基材2の熱処理とバリア層の形成が一体として同じ工程で行われるものである。
これに対し、本発明での熱処理は、バリア層の形成とは全く異なるタイミングで行われるものであり、基材2に熱処理を施した後、この熱処理とは全く別工程として、第1ガスバリア層4を形成することに技術的特徴を有するものである。
また、例えば、クリアハードコート層3を設ける前の基材2に熱処理を行うと、基材2が損傷しやすく、また、ガスバリア層を設けた後のガスバリア性フィルム1に熱処理を行うと、ガスバリア層が損傷しやすい。そのため、ガスバリア性フィルム1の性能およびこれを用いた電子デバイスなどの性能が劣化してしまう問題がある。
本発明においては、これらの熱処理とは異なり、所定のタイミング、すなわち、基材2にクリアハードコート層3を設けた後、第1ガスバリア層4を設ける前に、所定条件の熱処理を行うことで、立ち上がりカールの絶対値が20mm以下のガスバリア性フィルム1を製造することができる。
熱処理は、基材2のガラス転移温度をTgとしたときに、Tg<T≦(Tg+55℃)を満たす温度Tの状態から、前記温度Tよりも20〜60℃低い温度になるまで、10〜65分かけて冷却することで行う。
なお、ここでのガラス転移温度は、熱機械的分析(Thermomechanical Analysis:TMA)により測定したものである。
ここで、「温度Tの状態」とは、クリアハードコート層3が形成された基材2(以下、適宜、CHC基材2という)が温度Tとなった状態を意味する。ここでは、「温度Tの状態」とは、例えば後記するように、搬送装置における、CHC基材2を温度Tに設定した熱処理ゾーンの入口に投入した状態とすることができる。
また、「前記温度Tよりも20〜60℃低い温度になるまで冷却する」とは、CHC基材2が、熱処理当初の「Tg<T≦(Tg+55℃)」を満たす温度T(例えば155℃)よりも20〜60℃低い温度(例えば135〜95℃)の状態にすることを意味する。ここでは、「冷却する」とは、例えば後記するように、搬送装置における、CHC基材2が所定温度に設定した熱処理ゾーンの出口に到達した状態とすることができる。また、「冷却する」とは、冷却途中で温度が上昇せずに所望の温度にすることをいう。冷却は、一定の下降速度で徐々に温度が下がることが好ましいが、冷却途中で下降速度が変化してもよく、冷却途中で一定の温度で推移する範囲があってもよい。
所望の温度までの冷却は、自然冷却でもよいし、後記する搬送熱処理を行う場合は、搬送装置でのCHC基材2の搬送により行えばよい。
冷却した状態の温度は、熱処理当初(熱処理開始時)の温度Tよりも、20〜60℃低い温度とする。この温度範囲としたのは、熱処理の冷却温度の基準を規定するため、すなわち、熱処理での温度範囲を規定するためである。また、熱処理時間(冷却時間)の基準を明確にするためである。さらには、この温度範囲であれば、熱処理条件を制御しやすくなる。なお、冷却温度や熱処理時間の基準を規定しやすくしたり、熱処理条件を制御しやすくしたりする観点から、温度Tよりも低くする温度は、好ましくは23℃以上である。また、冷却温度や熱処理時間の基準を規定しやすくしたり、熱処理条件を制御しやすくしたりする観点から、好ましくは45℃以下、より好ましくは25℃以下である。
熱処理工程において、温度Tが基材2のTg以下では、製造されるガスバリア性フィルム1の立ち上がりカールの絶対値が20mmを超えてしまう。一方、温度TがTg+55℃を超えると、基材の変質、基材成分の析出がみられる。したがって、温度Tは、「Tg<T≦(Tg+55℃)」とする。なお、ガスバリア性フィルム1の巻き癖をより生じにくくする観点から、温度Tは、好ましくはTg+20℃以上、より好ましくはTg+30℃以上である。また、基材の変質、基材成分の析出を抑制する観点から、温度Tは、好ましくはTg+50℃以下、より好ましくはTg+45℃以下である。
また、熱処理時間が10分未満では、製造されるガスバリア性フィルム1の立ち上がりカールの絶対値が20mmを超えてしまう。一方、熱処理時間が65分を超えると、CHC基材2の平面性や透明性の劣化がみられ、電子デバイス用のガスバリア性フィルムとしては不適となり、製造上、非効率となるので好ましくない。したがって、熱処理時間は、10〜65分とする。なお、ガスバリア性フィルム1の巻き癖をより生じにくくする観点から、熱処理時間は、好ましくは20分以上、より好ましくは25分以上である。また、CHC基材2の平面性や透明性の劣化をより抑制する観点から、熱処理時間は、好ましくは62分以下、より好ましくは60分以下、さらに好ましくは50分以下である。
また、冷却速度は、0.3〜3℃/分とすることが好ましい。この冷却速度であれば、熱処理条件を制御しやすく、また、ガスバリア性フィルム1の立ち上がりカールの絶対値をより制御しやすくなる。また、熱処理条件を制御しやすくする観点から、冷却速度は一定とすることが好ましい。
そして、熱処理後のCHC基材2は、常温(20〜25℃)まで冷却する(熱処理後の冷却工程)。常温までの冷却は自然冷却でもよいし、送風などの冷却手段を用いてもよい。
この時の冷却は、熱処理の影響を受けないようにするため、また、CHC基材2の平面性を保つため、常温まで下げるのに「−5℃/秒」以上の速度で冷却するのが好ましい。
熱処理は、CHC基材2を搬送しながら行うことが好ましい。熱処理を搬送しながら行うことで、熱処理を簡便に行うことができ、また、熱処理条件を制御しやすくなる。
また、搬送しながら行う熱処理は、後記するように、搬送装置の熱処理ゾーンを通過させることにより行うことができる。そして、基材2のガラス転移温度をTgとしたときに、Tg<T≦(Tg+55℃)を満たす熱処理開始時の温度Tを前記熱処理ゾーンの入口温度とすることができる。また、熱処理開始時の温度Tよりも20〜60℃低い熱処理終了時(冷却終了時)の温度を前記熱処理ゾーンの出口温度とすることができる。すなわち、熱処理工程は、CHC基材2が搬送装置の熱処理ゾーンを通過する工程とすることができる。なお、熱処理ゾーンを通過した後のCHC基材2の冷却は、本発明での熱処理工程には含まれない。
以下、熱処理工程での熱処理方法の一例について、具体的に説明する。
ここでは、CHC基材2を、所定の張力下で搬送しながら熱処理(冷却)する方法について説明する(搬送熱処理)。
本発明の熱処理において、搬送しながら熱処理する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
搬送については、CHC基材2の両端をピンやクリップで把持しての搬送、複数のロール群によるロール搬送や空気をCHC基材2に吹き付けて浮揚させるエアー搬送などによりCHC基材2を連続的に搬送させる方法が挙げられる。そして、熱処理については、この搬送の際、複数のスリットから加熱空気をCHC基材2面の片面あるいは両面に吹き付ける方法、赤外線ヒーターなどによる輻射熱を利用する方法、加熱した複数のロールと接触させる方法などを単独または複数組み合わせて熱処理する方法が挙げられる。
熱処理に必要な時間は、10〜65分である。熱処理時間は、CHC基材2の搬送速度を変えたり、熱処理ゾーンの長さを変えたりすることでコントロールできる。
ここでいう、熱処理ゾーンとは、設定温度の異なる複数の熱処理式オーブン、もしくは複数のヒーターを搬送方向に沿って有する搬送装置のことであり、その搬送入口部分の温度が一番高く、搬送方向に沿って次のオーブンもしくはヒーターの温度が、手前のそれらの温度と同じもしくはそれらより低くなるように設定されている熱処理のできる搬送装置である。
本発明における熱処理ゾーンの温度については、入口部分の温度は、基材2のTgを超え、基材2のTg+55℃以下の範囲に設定し、出口部分の温度は入口部分に温度より20〜60℃低くなるように設定する。熱処理ゾーン内の入口部分温度および出口部分温度は上記に示した温度範囲内であれば、特に限定されるものではない。
また、本実施形態の熱処理は搬送しながら行うことを特徴とするため、熱処理時間に比例して、搬送距離が長くなり、設備上問題が生じやすい。そこで、熱処理を主として行う搬送には、アキュームできるようにダンサーロールが数本組み合わせた設備を用い、適宜搬送張力を調整して行う方法が好ましい。搬送張力は5kg/m〜60kg/m範囲で調節して行うことが好ましい。より好ましくは、搬送張力は、5kg/m〜30kg/mであることがより好ましい。なお、ここでの搬送張力は、CHC基材2に加えた力をCHC基材2の断面積(幅×厚み)で割ったものである。
搬送張力の調整方法としては、送り出し軸及び巻き取り軸のトルクをコントロールすることにより行うことができる。この搬送張力が5kg/m以上であれば、巻きじわがより発生しにくく、またCHC基材2の平面性がより良好となる。また、搬送張力が60kg/m以下であれば、平面性や巻きぐせ改良の効果がより向上し、またCHC基材2の断裂がより起こりにくい。
本発明の熱処理時の搬送張力の変化は、振動的に変化させても、段階的に変化させても、また傾斜的に変化させても良い。好ましくは段階的および傾斜的に変化させる方法であり、さらに好ましくは傾斜的に変化させる方法である。
搬送熱処理の張力の調整は、巻き取りロール及び/または送り出しロールのトルクを調整することで容易に達成できる。また工程内にダンサーロールを設置し、これに加える荷重を調整することでも達成できる。熱処理時及び/または熱処理後の冷却時に張力を変化させる場合、これらの工程前後および/または工程内にダンサーロールを設置し、それらの荷重を調整することで所望の張力状態を作製できる。また振動的に搬送張力を変化させるには熱処理ロール間を小さくすることが有効である。
以上のようにして熱処理されたCHC基材2は常温まで冷却され巻き取られる。このようにして熱処理され常温まで冷却して巻き取られたCHC基材2は、次工程に送られるまでの間保管される際、巻き癖がつきにくいようにできるだけ大きなコアにまかれて保管されることが望ましく、好ましくは外径が200mm以上、より好ましくは300mm以上、さらに好ましくは400mm以上のコアに巻かれて保管されることである。
以上のように、CHC基材2の搬送熱処理において、熱処理ゾーンの入口の温度をTとし、熱処理ゾーンの出口の温度をTよりも低くすることで、Tg<T≦(Tg+55℃)を満たす温度Tの状態から、前記温度Tよりも20〜60℃低い温度になるまで、10〜65分かけて冷却することができる。このように、本願発明は、熱処理工程の熱処理において、徐冷を行うことに特徴を有するものである。
[第1ガスバリア層形成工程]
第1ガスバリア層形成工程は、前記熱処理工程の後に、前記クリアハードコート層3上に第1ガスバリア層4を形成する工程である。
第1ガスバリア層4の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法等のドライプロセスにより形成方法や、湿式塗布方式を用いた形成方法を用いることができる。
湿式塗布方式による第1ガスバリア層4の形成方法としては、パーヒドロキシポリシラザン(PHPS)等のポリシラザン化合物を含有する塗布液を、クリアハードコート層3が形成された基材2上に湿式塗布方式を用いて塗設した後、真空紫外線(エキシマ光)を照射して、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等の無機膜に改質処理を行って第1ガスバリア層4を形成する方法である。
上記のようなエキシマ光を用いた湿式塗布方式のガスバリア層の形成方法の詳細については、例えば、特開2012−024933号公報、特開2012−121149号公報、特開2013−022799号公報、特開2013−039786号公報、特開2013−052561号公報、特開2013−086445号公報等の記載を参考にすることができる。なお、後記する第2ガスバリア層5の形成方法と同様にして形成することもできる。
本発明では、高品位のガスバリア層を安定して形成することができる観点から、化学気相成長法(CVD法)により第1ガスバリア層4を形成する方法が好ましく、更に好ましくは、第1ガスバリア層4を所望の組成で形成でき、かつ層内の元素分布を精緻に制御することが可能となる観点から、化学気相成長法として、放電プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)であることが好ましい。
更には、形成する第1ガスバリア層4の層厚方向で、含有する元素分布のプロファイルを任意のパターンで形成することができる観点から、放電プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)として、樹脂基材2の一方の面上に、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、後述の図2に示すような構成からなる磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により、ガスバリア層を形成する方法が、特に好ましい。
ププラズマ化学気相成長法により形成される第1ガスバリア層4としては、例えば、図2に示すような放電プラズマ処理装置を用い、一方の面にクリアハードコート層3が形成された基材2を一対の成膜ローラー上に配置し、この一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させるプラズマ化学気相成長法で形成された層であることがより好ましい。プラズマ化学気相成長法は、ペニング放電プラズマ方式のプラズマ化学気相成長法であってもよい。また、一対の成膜ローラー間に放電する際には、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。
プラズマ化学気相成長法において、プラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましい。
また、第1ガスバリア層4の形成方法として、対向ローラー方式によるプラズマ化学気相成長法を用いることが好ましい。本発明において、対向ローラー方式によるプラズマ化学気相成長法とは、一対の成膜ローラーを用い、この一対の成膜ローラーのそれぞれにクリアハードコート層3が形成された基材2を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることにより、第1ガスバリア層4の形成を行うことをいう。
このようにして、一対の成膜ローラー上にクリアハードコート層3を有する基材2を配置して、この成膜ローラー間に放電することにより、一方の成膜ローラー上に存在する基材2上に成膜することができる。同時に、もう一方の成膜ローラー上の基材2上にも成膜することが可能である。このため、成膜レートを倍にでき、効率良く薄膜を製造できる。更に、一対の成膜ローラー上のそれぞれの基材2上に、同じ構造の膜を形成できる。
また、上記プラズマ化学気相成長法には有機ケイ素化合物と酸素とを含む成膜ガスを用いることが好ましい。成膜ガス中の酸素の含有量は、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
ガスバリア層は、連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。
(第1ガスバリア層の製造装置)
第1ガスバリア層4は、上述のように生産性の観点からロール・ツー・ロール方式でクリアハードコート層3を有する基材2上に形成されることが好ましい。プラズマ化学気相成長法により第1ガスバリア層4を製造することができる装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ、成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましい。
例えば、図2に示す磁場を印加したローラー間に放電空間を形成することができる放電プラズマ処理装置を用いると、プラズマ化学気相成長法を利用しながらロール・ツー・ロール方式で連続的に製造することも可能となる観点から好ましい。
以下、図2を参照しながら、第1ガスバリア層4の製造方法について説明する。
図2は、本発明に係る第1ガスバリア層4の形成に好適な放電プラズマ処理装置の一例を示す模式図である。
図2に示す放電プラズマ処理装置30は、磁場を印加したローラー間に放電空間を形成することができる放電プラズマ処理装置であり、送り出しローラー11と、搬送ローラー21、22、23、24と、成膜ローラー31及び32と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、成膜ローラー31及び32の内部に設置された磁場発生装置61及び62と、巻取りローラー71とを備えている。また、放電プラズマ処理装置30においては、少なくとも成膜ローラー31及び32と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、磁場発生装置61及び62とが図示しない真空チャンバー内に配置されている。更に、放電プラズマ処理装置30において、真空チャンバーは、図示しない真空ポンプに接続されており、当該真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を調整することが可能となっている。
放電プラズマ処理装置30においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31と成膜ローラー32)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源51に接続されている。
このため、放電プラズマ処理装置30においては、プラズマ発生用電源51から電力を供給することにより、成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の空間に放電することが可能であり、成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、成膜ローラー31と成膜ローラー32を電極として利用する場合には、電極としても利用可能なように成膜ローラー31と成膜ローラー32との材質や設計を変更すればよい。
また、放電プラズマ処理装置30においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び32)は、中心軸が同一平面上においてほぼ平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び32)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できる。このため、炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。そして、放電プラズマ処理装置30によれば、CVD法により基材2が有するクリアハードコート層3上にガスバリア層を形成することが可能であり、成膜ローラー31上において基材2が有するクリアハードコート層3上に膜成分を堆積させつつ、更に成膜ローラー32上においても基材2が有するクリアハードコート層3上に膜成分を堆積させることもできるため、基材2が有するクリアハードコート層3上に第1ガスバリア層4を効率良く形成することができる。
また、成膜ローラー31及び成膜ローラー32の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないように固定された磁場発生装置61及び62がそれぞれ設けられている。
更に、成膜ローラー31及び成膜ローラー32としては、公知のローラーを用いることができる。成膜ローラー31及び32としては、より効率良く薄膜を形成するという観点から、同一の直径のローラーを使うことが好ましい。また、成膜ローラー31及び32の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、5〜100cmの範囲とすることが好ましい。
また、放電プラズマ処理装置30においては、基材2が有するクリアハードコート層3表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31と成膜ローラー32)上に、基材2が配置されている。このように基材2を配置することにより、成膜ローラー31と成膜ローラー32との間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー間に存在する基材2が有するクリアハードコート層3のそれぞれの表面に、同時にガスバリア層を成膜することが可能となる。すなわち、放電プラズマ処理装置30によれば、CVD法により、成膜ローラー31上にて基材2が有するクリアハードコート層3の表面上に膜成分を堆積させ、更に成膜ローラー32上にて膜成分を堆積させることができるため、基材2が有するクリアハードコート層3の表面上に第1ガスバリア層4を効率良く形成することが可能となる。
また、放電プラズマ処理装置30に用いる送り出しローラー11と、搬送ローラー21、22、23及び24としては、公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー71としても、第1ガスバリア層4を形成した基材2を巻き取ることが可能であれば良く、特に制限されず、公知のローラーを用いることができる。
また、ガス供給管41としては原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能な配管を用いることができる。更に、プラズマ発生用電源51としては、公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。プラズマ発生用電源51は、これに接続された成膜ローラー31及び32に電力を供給して、成膜ローラー31及び32を放電のための対向電極としての利用を可能にする。プラズマ発生用電源51としては、より効率良くプラズマCVDを実施することが可能となることから、成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能な交流電源等を利用することが好ましい。また、より効率良くプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を0.1〜10kWとすることができ、且つ、交流の周波数を0.05〜500kHzとすることが可能なプラズマ発生用電源51を用いることがより好ましい。また、磁場発生装置61及び62としては、公知の磁場発生装置を用いることができる。
上述のように、図2に示す放電プラズマ処理装置30を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバー内の圧力、成膜ローラーの直径、及び、フィルムの搬送速度を調整することにより、第1ガスバリア層4を製造することができる。すなわち、図2に示す放電プラズマ処理装置30を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び32)間に放電することにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー31上の基材2が有するクリアハードコート層3表面上及び成膜ローラー32上の基材2が有するクリアハードコート層3上に、第1ガスバリア層4がプラズマCVD法により形成される。なお、成膜に際しては、基材2が送り出しローラー11や成膜ローラー31等により、それぞれ搬送されることにより、ロール・ツー・ロール方式の連続的な成膜プロセスにより、基材2が有するクリアハードコート層3上にガスバリア層が形成される。
(原料ガス)
第1ガスバリア層4の形成に用いる成膜ガスに含有させる原料ガスとしては、形成する第1ガスバリア層4の材質に応じて適宜選択して使用することができる。原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物を用いることができる。
有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、成膜での取り扱い性及び得られる第1ガスバリア層4の配光性等の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを用いることが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、成膜ガスには、原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素ガス、オゾンガスを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素ガス、アンモニアガスを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば、酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
成膜ガスとしては、原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じてキャリアガスを用いてもよい。更に、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて放電用ガスを用いてもよい。キャリアガス及び放電用ガスとしては、公知のガスを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス、水素ガスを用いることができる。
成膜ガスが、原料ガスと反応ガスとを含有する場合には、原料ガスと反応ガスとの比率を、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎてしまうと、第1ガスバリア層4の配光性が十分に得られなくなってしまう。また、成膜ガスが有機ケイ素化合物と酸素とを含有する場合には、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
以下、一例として、原料ガスにヘキサメチルジシロキサン(有機ケイ素化合物:HMDSO:(CHSiO)、反応ガスに酸素(O)を用いる場合について説明する。
原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン、反応ガスとして酸素を含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させて、ケイ素−酸素系の薄膜を作製する場合、成膜ガスにより下記の反応式に示す反応が起こり、二酸化ケイ素が生成される。
(CHSiO+12O→6CO+9HO+2SiO
上記反応において、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。このため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して、酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまう。このため、原料のガス流量比を、理論比である完全反応の原料比以下の流量に制御して、非完全反応を遂行させる。つまり、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少ない量にする必要がある。
なお、実際のプラズマCVDチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素は、ガス供給部から成膜領域へ供給されるため、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできない。つまり、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給したときに、初めて反応が完結すると考えられる。例えば、CVDにより完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある。
このため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)であることが好ましい。このような比でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がガスバリア層中に取り込まれ、所望の第1ガスバリア層4を形成することが可能となる。
なお、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)が少な過ぎると、酸化されなかった炭素原子や水素原子が第1ガスバリア層4中に過剰に取り込まれるため、第1ガスバリア層4の透明性が低下する。このため、有機EL素子のように、透明性が必要とされるフレキシブル基板には利用できなくなってしまう。このような観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
(真空度)
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5〜100Paの範囲内とすることが好ましい。
(成膜ローラー)
上述のプラズマCVD法において、成膜ローラー31及び32の間に放電するために、プラズマ発生用電源51に接続された電極ドラムに印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができる。例えば、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。印加電力が0.1kW以上であれば、パーティクルの発生を抑制することができる。他方、印加電力が10kW以下であれば、成膜時に発生する熱量を抑制でき、成膜時の基材2表面の温度の上昇を防止でき、基材2が、過度の熱による皺の発生等を防止することができる。
なお、電極ドラムは、通常、成膜ローラー31及び32に設置されている。
基材2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲内とすることがより好ましい。ライン速度が0.25m/min以上であれば、基材2に熱に起因する皺の発生を防止でき、他方、100m/min以下であれば、形成する第1ガスバリア層4の厚さを所望の範囲内とすることが容易になる。
第1ガスバリア層4は、ケイ素、酸素及び炭素を含む無機膜から形成され、熱拡散性に優れる特性を有する。特に、炭素を含むことにより、ケイ素と酸素のみからなる無機膜よりも熱導電率が向上すると考えられる。第1ガスバリア層4は、層厚方向に炭素含有率の分布を有することから、組成の異なる複数の層が積層された構成に類似する特性を有することが推測される。つまり、第1ガスバリア層4中の炭素含有率の多い領域において優れた熱拡散性が得られ、第1ガスバリア層4の面方向への熱拡散性が向上する。このため、第1ガスバリア層4の熱拡散性を向上させることができる。
したがって、例えば、本発明のガスバリア性フィルム1を用いた有機EL素子において、封止樹脂層に熱硬化性樹脂が用いられ、硬化処理として長時間の高温処理を行った場合、有機EL素子にかかる熱を第1ガスバリア層4が放散することにより、基材2への熱ダメージを緩和することができる。
[第2ガスバリア層形成工程]
第2ガスバリア層形成工程は、前記第1ガスバリア層形成工程の後に、前記第1ガスバリア層4上に第2ガスバリア層5を形成する工程である。
第2ガスバリア層5の形成方法については特に限定はなく、例えば、第1ガスバリア層4上に珪素化合物を含有する塗布液を積層塗布することにより形成することができる。
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚さは、乾燥後の厚さが好ましくは1nm〜100μm程度、さらに好ましくは10nm〜10μm程度、最も好ましくは10nm〜1μm程度となるように設定され得る。
(珪素化合物)
第2ガスバリア層5の形成に用いる珪素化合物としては、珪素化合物を含有する塗布液の調製が可能であれば特に限定はされないが、ポリシラザン化合物、ポリシロキサン等が好ましい。
本発明に係る珪素化合物としては、例えば、パーヒドロポリシラザン、シルセスキオキサン、テトラメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン、トリメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジビニルシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、アリールトリメトキシシラン、エトキシジメチルビニルシラン、アリールアミノトリメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリビニルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、メチルトリアセトキシシラン、アリールオキシジメチルビニルシラン、ジエチルビニルシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、テトラビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、ジアリールジメトキシシラン、ブチルジメトキシビニルシラン、トリメチル−3−ビニルチオプロピルシラン、フェニルトリメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルイソペンチロキシビニルシラン、2−アリールオキシエチルチオメトキシトリメチルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アリールアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ジメチルエチキシフェニルシラン、ベンゾイロキシトリメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、ジメチル−p−トリルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ジエチルメチルフェニルシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、デシルメチルジメトキシシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、オクチロキシトリメチルシラン、フェニルトリビニルシラン、テトラアリールオキシシラン、ドデシルトリメチルシラン、ジアリールメチルフェニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、ジアセトキシジフェニルシラン、ジベンジルジメチルシラン、ジアリールジフェニルシラン、オクタデシルトリメチルシラン、メチルオクタデシルジメチルシラン、ドコシルメチルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アセトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることができる。
シルセスキオキサンとしては、Mayaterials製Q8シリーズのOctakis(tetramethylammonium)pentacyclo−octasiloxane−octakis(yloxide)hydrate;Octa(tetramethylammonium)silsesquioxane、Octakis(dimethylsiloxy)octasilsesquioxane、Octa[[3−[(3−ethyl−3−oxetanyl)methoxy]propyl]dimethylsiloxy]octasilsesquioxane;Octaallyloxetane silsesquioxane、Octa[(3−Propylglycidylether)dimethylsiloxy]silsesquioxane;Octakis[[3−(2,3−epoxypropoxy)propyl]dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octakis[[2−(3,4−epoxycyclohexyl)ethyl]dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octakis[2−(vinyl)dimethylsiloxy]silsesquioxane;Octakis(dimethylvinylsiloxy)octasilsesquioxane、Octakis[(3−hydroxypropyl)dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octa[(methacryloylpropyl)dimethylsilyloxy]silsesquioxane、Octakis[(3−methacryloxypropyl)dimethylsiloxy]octasilsesquioxane及び有機基を含まない水素化シルセスキオキサン等が挙げられる。
珪素化合物の中でも無機珪素化合物が好ましく、特に中でも常温で固体である、珪素化合物が好ましく、パーヒドロポリシラザン、水素化シルセスキオキサン等がより好ましく用いられる。
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
基材2を損なわないように塗布するためには、比較的低温でセラミック化してシリカに変性する化合物がよく、例えば、特開平8−112879号公報に記載の下記一般式(1)で表される単位からなる主骨格を有する化合物が好ましい。
Figure 2015147952
上記一般式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。
本発明では、得られる第2ガスバリア層5としての緻密性の観点からは、R、R、及びRの全てが水素原子である前記パーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地である基材2との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体または固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの他の例としては、上記一般式(1)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザンに、ケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報参照)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報参照)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報参照)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報参照)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報参照)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報参照)等が挙げられる。
ポリシラザンを含有する塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応するようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。従って、具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒や、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。詳しくは、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの有機溶媒は、ポリシラザンの溶解度や有機溶媒の蒸発速度等の特性にあわせて選択し、複数の有機溶媒を混合してもよい。
ポリシラザン含有の塗布液中におけるポリシラザン濃度は、目的とする第2ガスバリア層5の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度であることが好ましい。
ポリシラザン含有の塗布液中には、酸化珪素化合物への転化を促進するため、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製のアクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
(第2ガスバリア層の有機溶媒、水分除去操作)
本発明におけるポリシラザン含有の塗布液により形成された第2ガスバリア層5は、改質処理前または改質処理中に水分が除去されていることが好ましい。そのために、第2ガスバリア層5中の有機溶媒の除去を目的とする第一工程と、それに続く第2ガスバリア層5中の水分の除去を目的とする第二工程とに分かれていることが好ましい。
第一工程においては、主に有機溶媒を取り除くため、乾燥条件を熱処理等の方法で適宜決めることができ、このときに水分が除去される条件にあってもよい。熱処理温度は迅速処理の観点から高い温度であることが好ましいが、基材2に対する熱ダメージを考慮し、温度と処理時間を適宜決定することが好ましい。例えば、基材2として、ガラス転位温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレート基材を用いる場合には、熱処理温度は200℃以下を設定することができる。処理時間は溶媒が除去され、かつ基材2への熱ダメージが少なくなるように短時間に設定することが好ましく、熱処理温度が200℃以下であれば30分以内に設定することができる。
第二工程は、第2ガスバリア層5中の水分を取り除くための工程で、水分を除去する方法としては低湿度環境に維持して除湿する形態が好ましい。低湿度環境における湿度は温度により変化するので、温度と湿度の関係は露点温度の規定により好ましい形態が示される。好ましい露点温度は4℃以下(温度25℃/湿度25%)で、より好ましい露点温度は−8℃(温度25℃/湿度10%)以下、さらに好ましい露点温度は−31℃(温度25℃/湿度1%)以下であり、維持される時間は第2ガスバリア層5の膜厚によって適宜設定することが好ましい。第2ガスバリア層5の膜厚が1.0μm以下の条件においては、露点温度は−8℃以下で、維持される時間は5分以上であることが好ましい。また、水分を取り除きやすくするため、減圧乾燥してもよい。減圧乾燥における圧力は常圧〜0.1MPaを選ぶことができる。
第一工程の条件に対する第二工程の好ましい条件としては、例えば、第一工程において温度60〜150℃、処理時間1分〜30分間で溶媒を除去したときには、第二工程の露点は4℃以下で、処理時間は5分〜120分により水分を除去する条件を選ぶことができる。第一工程と第二工程の区分は露点の変化で区別することができ、工程環境の露点の差が10℃以上変わることで区分ができる。
本発明における第2ガスバリア層5は、第二工程により水分が取り除かれた後も、その状態を維持しながら改質処理を施すことが好ましい。
(第2ガスバリア層の含水量)
本発明における第2ガスバリア層5の含水率は、以下に示す分析方法に従って測定することができる。
ヘッドスペース−ガスクロマトグラフ/質量分析法
装置:HP6890GC/HP5973MSD
オーブン:40℃(2min)、その後、10℃/minの速度で150℃まで昇温
カラム:DB−624(0.25mmid×30m)
注入口:230℃
検出器:SIM m/z=18
HS条件:190℃・30min
本発明における第2ガスバリア層5中の含水率は、上記の分析方法により得られる含水量から、第2ガスバリア層5の体積で除した値として定義され、第二工程により水分が取り除かれた状態においては、好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましい含水率は、0.01%以下(検出限界以下)である。
本発明においては、改質処理前、あるいは改質処理中に水分を除去することが、シラノールに転化した第2ガスバリア層5の脱水反応を促進する観点から好ましい形態である。
〔第2ガスバリア層の改質処理〕
本発明における改質処理とは、珪素化合物の酸化ケイ素または酸化窒化珪素への転化反応をいう。
本発明における改質処理は、第2ガスバリア層5の転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができる。珪素化合物の置換反応による酸化ケイ素膜または酸化窒化珪素層の形成には450℃以上の高温が必要であり、プラスチック等のフレキシブル基板においては、適応が難しい。
従って、本発明のガスバリア性フィルム1を作製するに際しては、プラスチック基板への適応という観点から、より低温で、転化反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。
(プラズマ処理)
本発明において、改質処理として用いることのできるプラズマ処理は、公知の方法を用いることができるが、好ましくは大気圧プラズマ処理等をあげることが出来る。
(熱処理)
珪素化合物を含有する塗膜を加熱処理することで、前記改質処理を行うことが出来る。
加熱処理としては、例えば、ヒートブロック等の発熱体に基板を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターの様な赤外領域の光を用いた方法等が上げられるが特に限定はされない。また、珪素化合物を含有する塗膜の平滑性を維持できる方法を適宜選択してよい。
加熱処理時の塗膜の温度としては、50℃〜250℃の範囲に適宜調整することが好ましく、更に好ましくは100℃〜250℃の範囲である。
また、加熱時間としては、1秒〜10時間の範囲が好ましく、更に好ましくは、10秒〜1時間の範囲が好ましい。
(紫外線照射処理)
本発明において、改質処理の方法の1つとして、紫外線照射による処理も好ましい。紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化ケイ素膜または酸化窒化珪素膜を形成することが可能である。
この紫外線照射により、基材2が加熱され、セラミックス化(シリカ転化)に寄与するOとHOや、紫外線吸収剤、ポリシラザン自身が励起、活性化されるため、ポリシラザンが励起し、ポリシラザンのセラミックス化が促進され、また得られるセラミックス膜が一層緻密になる。紫外線照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
本発明に係る方法では、常用されているいずれの紫外線発生装置を使用することが可能である。
なお、本発明でいう紫外線とは、一般には、10〜400nmの波長を有する電磁波をいうが、後述する真空紫外線(10〜200nm)処理以外の紫外線照射処理の場合は、好ましくは210〜350nmの紫外線を用いる。
紫外線の照射は、照射される第2ガスバリア層5を担持している基材2がダメージを受けない範囲で、照射強度や照射時間を設定することが好ましい。
基材2としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、例えば、2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基材2表面の強度が20〜300mW/cm、好ましくは50〜200mW/cmになるように基材2−紫外線照射ランプ間の距離を設定し、0.1秒〜10分間の照射を行うことができる。
一般に、紫外線照射処理時の基材2温度が150℃以上になると、プラスチックフィルム等の場合には、基材2が変形したり、その強度が劣化したりする等、基材2の特性が損なわれることになる。しかしながら、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムや、金属等の基板の場合には、より高温での改質処理が可能である。従って、この紫外線照射時の基材2温度としては、一般的な上限はなく、基材2の種類によって当業者が適宜設定することができる。また、紫外線照射雰囲気に特に制限はなく、空気中で実施すればよい。
このような紫外線の発生手段としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機(株)製)、UV光レーザー、等が挙げられるが、特に限定されない。また、発生させた紫外線を第2ガスバリア層5に照射する際には、効率向上と均一な照射を達成する観点から、発生源からの紫外線を反射板で反射させてから第2ガスバリア層5に当てることが望ましい。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する基材2の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、第2ガスバリア層5を表面に有する基材2を上記のような紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス(株)製の紫外線焼成炉を使用することができる。また、第2ガスバリア層5を表面に有する基材2が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。紫外線照射に要する時間は、使用する基材2や第2ガスバリア層5の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分であり、好ましくは0.5秒〜3分である。
(真空紫外線照射処理:エキシマ照射処理)
本発明において、最も好ましい改質処理方法は、真空紫外線照射による処理(エキシマ照射処理)である。真空紫外線照射による処理は、ポリシラザン化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光のエネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、酸化珪素膜の形成を行う方法である。
これに必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
Xe、Kr、Ar、Ne等の希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には
e+Xe→e+Xe
Xe+Xe+Xe→Xe +Xe
となり、励起されたエキシマ分子であるXe が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。
エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには、誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは、両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電である。この放電は、micro dischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。誘電体バリア放電は、このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため肉眼でも分る光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外には無電極電界放電でも可能である。これは、容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は、基本的には誘電体バリア放電と同じでよいが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキがない長寿命のランプが得られる。
誘電体バリア放電の場合は、micro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。このため細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾン等により損傷しやすい。
これを防ぐためにはランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素等の不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。従って仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には、外部電極を網状にする必要はない。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には、通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は、構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。従って、非常に安価な光源を提供できる。
二重円筒型ランプは、内外管の両端を接続して閉じる加工をしているため、細管ランプに比べ取り扱いや輸送で破損しやすい。細管ランプの管の外径は6〜12mm程度で、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は、誘電体バリア放電でも無電極電界放電のいずれでも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であってもよいが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン膜の改質を実現できる。従って、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板等への照射を可能としている。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で単一波長のエネルギーを照射するため、照射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を有する。このため、熱の影響を受けやすいとされるポリエチレンテレフタレート等のフレシキブルフィルム材料に適している。
以上説明した本発明のガスバリア性フィルムは、電子デバイス等のパッケージ、太陽電池や有機EL素子、液晶等のプラスチック基板といったディスプレイ材料に用いることができる。
次に、本発明のガスバリア性フィルムを備える電子デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。
≪有機エレクトロルミネッセンス素子≫
本発明の有機EL素子は、本発明のガスバリア性フィルムを備えるものである。
有機EL素子の構成としては特に規定されるものでなないが、一例として以下の構成とすることができる。
図3は、本発明のガスバリア性フィルムを具備した有機EL素子の構成の一例を示す概略構成図である。
図3に示すように、有機EL素子101は、主には、ガスバリア性フィルム1、第1電極116、有機機能層117、第2電極118、封止樹脂層119、及び、封止部材120から構成されている。本発明のガスバリア性フィルム1は、基材2上に、クリアハードコート層3、第1ガスバリア層4、第2ガスバリア層5がこの順に積層されて構成されている。なお、第1ガスバリア層4と、第2ガスバリア層5とで、ガスバリア層10を形成している。
図3に示す有機EL素子101は、アノードとなる第1電極116上に、発光層を備える有機機能層117、及びカソードとなる第2電極118が積層され、更に、ガスバリア性フィルム1と封止樹脂層119及び封止部材120とにより固体封止された構成である。このうち、アノードとして用いられている第1電極116が、透光性の電極として構成されている。このような構成において、第1電極116と第2電極118とで有機機能層117が挟持されている部分のみが、有機EL素子101における発光領域となる。そして、図3に示す例では、有機EL素子101は、発生させた光(以下、発光光hと記す)を、少なくともガスバリア性フィルム1側から取り出すボトムエミッション型として構成されている(図中の実線矢印参照)。
有機EL素子101は、ガスバリア性フィルム1の一方の面上に、第1電極116、有機機能層117及び第2電極118を覆う封止樹脂層119を介して、封止部材120が貼り合わされることにより、固体封止されている。固体封止型の有機EL素子101は、封止部材120の貼合面、又は、ガスバリア性フィルム1のガスバリア層10及び第2電極118の複数箇所に未硬化の樹脂材料が塗布され、当該樹脂材料を挟んでガスバリア性フィルム1と封止部材120とが互いに加熱圧着されて一体化されている。
なお、有機EL素子101は、ボトムエミッション型に限られず、例えば、第2電極118側から光を取り出すトップエミッション型の構成や、両面から光を取り出す両面発光型の構成としてもよい(図中の破線矢印参照)。有機EL素子101がトップエミッション型であれば、第2電極118に透明な材料を用いて、発光光hを第2電極118側から取り出す構成とする。また、有機EL素子101が両面発光型であれば、第2電極118に透明な材料を用い、発光光hを両面から取り出す構成とする。
〔有機EL素子の構成要素〕
以下に、既に説明したガスバリア性フィルム1を除く、第1電極116、第2電極118、有機機能層117、封止樹脂層119及び封止部材120について詳細な構成を説明する。なお、本発明の有機EL素子101において、透光性とは波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。
(第1電極)
図3に示す有機EL素子101では、第1電極116が実質的なアノードとなる。有機EL素子101は、第1電極116を透過して基材2側から光を取り出す、ボトミエミッション型の素子である。このため、第1電極116は、透光性の導電層により形成される必要がある。
第1電極116は、例えば、銀又は銀を主成分とした合金を用いて構成された層である。第1電極116を構成する銀(Ag)を主成分とした合金としては、例えば、銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)、銀インジウム(AgIn)等が挙げられる。なお、第1電極において主成分とは、電極中の含有量が98質量%以上であることをいう。
第1電極116は、銀又は銀を主成分とした合金の層が、複数積層されて構成されていてもよい。
このような第1電極116の形成方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法等)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。中でも蒸着法が好ましく適用される。
更に、この第1電極116は、厚さが4〜12nmの範囲にあることが好ましい。厚さが12nm以下であれば、光の吸収成分及び反射成分が低く抑えられ、光透過率を確保できるため好ましい。また、厚さが4nm以上であることにより、電極として十分な導電性を確保できるため好ましい。
なお、第1電極116は、上部が保護膜で覆われていても良く、別の導電性層が積層されていてもよい。この場合、有機EL素子101の光透過性を損なうことのないように、保護膜及び導電性層が光透過性を有することが好ましい。
また、第1電極116の下部、すなわち、第2ガスバリア層5と第1電極116の間にも、必要に応じた層を設けた構成としてもよい。例えば、第1電極116の特性向上や、形成を容易にするための下地層等を有してもよい。
また、第1電極116は、上記銀を主成分とする以外の構成としてもよい。例えば、他の金属や合金、ITO、酸化亜鉛、酸化スズ等の各種の透明導電性物質薄膜を用いてもよい。
また、有機EL素子101が、第2電極118側から発光光hを取り出すトップエミッション型である場合には、第1電極116は透光性を有していなくてもよい。
(第2電極)
第2電極118は、有機機能層117に電子を供給するためのカソードとして機能する電極層であり、金属、合金、有機又は無機の導電性化合物、及びこれらの混合物が、構成材料として用いられる。具体的には、金、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO、SnO等の酸化物半導体等が挙げられる。
第2電極118は、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により形成することができる。また、第2電極118としてのシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましく、厚さは通常5〜5000nm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、有機EL素子101が、第2電極118側から発光光hを取り出すトップエミッション型又は両面発光型である場合には、上述した導電性材料のうち光透過性の良好な導電性材料を選択して第2電極118を構成する。
(有機機能層)
有機機能層117は、アノードである第1電極116の上部に、正孔注入層117a/正孔輸送層117b/発光層117c/電子輸送層117d/電子注入層117eをこの順に積層した構成を例示できる。ただし、このうち少なくとも有機材料を用いて構成された発光層117cを有することが必要である。正孔注入層117a及び正孔輸送層117bは、正孔輸送性と正孔注入性とを有する単一層の正孔輸送/注入層として設けられてもよい。電子輸送層117d及び電子注入層117eは、電子輸送性と電子注入性とを有する単一層の電子輸送/注入層として設けられてもよい。また、これらの有機機能層117のうち、例えば、電子注入層117eは無機材料で構成されている場合もある。
また、有機機能層117は、これらの層の他にも、例えば、正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて必要箇所に積層されていてよい。更に、発光層117cは、各波長領域の発光光を発生させる各色発光層を有し、これらの各色発光層を、非発光性の中間層を介して積層させて発光層ユニットとして形成されていてもよい。中間層は、正孔阻止層、電子阻止層として機能してもよい。
〈発光層〉
発光層117cは、発光材料として、例えば、リン光発光化合物が含有されている。
この発光層117cは、電極又は電子輸送層117dから注入された電子と、正孔輸送層117bから注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層117cの層内であっても、発光層117cと隣接する層との界面であってもよい。
このような発光層117cとしては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。この場合、各発光層117c間には非発光性の中間層(図示略)を有していることが好ましい。
発光層117cの層厚の総和は1〜100nmの範囲内にあることが好ましく、更に好ましくは、より低い電圧で駆動することができることから1〜30nmの範囲内である。なお、発光層117cの層厚の総和とは、発光層117c間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む層厚である。
発光層117cが複数の層からなる場合、個々の発光層の層厚としては、1〜50nmの範囲内に調整することが好ましく、1〜20nmの範囲内に調整することがより好ましい。積層された複数の発光層が、青、緑、赤のそれぞれの発光色に対応する場合、青、緑、赤の各発光層の層厚の関係については、特に制限はない。
以上のような発光層117cは、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜形成方法により形成することができる。
また発光層117cは、複数の発光材料を含有しても良く、またリン光発光材料と蛍光発光材料(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう。)を同一発光層117c中に混合して用いてもよい。
発光層117cの構成として、ホスト化合物(発光ホストともいう。)、発光材料(発光ドーパント化合物、ゲスト材料ともいう。)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
(1)ホスト化合物
発光層117cに含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。更に、リン光量子収率が0.01未満である化合物が好ましい。また、ホスト化合物は、発光層117cに含有される化合物の中で、層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いても良く、又は複数種用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子101を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でも良く、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、発光の長波長化を防ぎ、かつ高Tg(ガラス転移温度)を有する化合物が好ましい。ここでいうガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
(2)発光材料
有機EL素子101に用いることのできる発光材料としては、リン光発光性化合物(リン光性化合物、リン光発光材料ともいう。)及び蛍光発光性化合物が挙げられる。
リン光発光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物である。具体的には室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本例においてリン光発光性化合物を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光発光性化合物の発光の原理としては2種挙げられる。一つは、キャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光発光性化合物に移動させることでリン光発光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型である。もう一つは、リン光発光性化合物がキャリアトラップとなり、リン光発光性化合物上でキャリアの再結合が起こりリン光発光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光発光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件となる。
リン光発光性化合物は、一般的な有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物である。更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
有機EL素子101においては、少なくとも一つの発光層117cに2種以上のリン光発光性化合物を含有していても良く、発光層117cにおけるリン光発光性化合物の濃度比が発光層117cの層厚方向で変化していてもよい。
リン光発光性化合物は好ましくは発光層117cの総量に対し0.1体積%以上30体積%未満である。
また、発光層117cに用いられる蛍光発光材料としては、例えば、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
〈注入層〉
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と発光層117cの間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層117aと電子注入層117eとがある。
注入層は、必要に応じて設けることができる。正孔注入層117aであれば、アノードと発光層117c又は正孔輸送層117bの間、電子注入層117eであればカソードと発光層117c又は電子輸送層117dとの間に配置される。
正孔注入層117aは、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン層、酸化バナジウムに代表される酸化物層、アモルファスカーボン層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子層等が挙げられる。
電子注入層117eは、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属層、フッ化カリウムに代表されるアルカリ金属ハライド層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物層、酸化モリブデンに代表される酸化物層等が挙げられる。電子注入層17eはごく薄い層であることが望ましく、素材にもよるがその厚さは0.001〜10μmの範囲が好ましい。
〈正孔輸送層〉
正孔輸送層117bは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層117a、電子阻止層も正孔輸送層117bに含まれる。正孔輸送層117bは単層又は複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(略称:TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(略称:NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが三つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(略称:MTDATA)等が挙げられる。
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、正孔輸送層117bには、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.,Applied Physics Letters,80(2002),p.139に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料を用いることもできる。正孔輸送材料としては高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層117bは、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
正孔輸送層117bの層厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。この正孔輸送層117bは、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
また、正孔輸送層117bの材料に不純物をドープしてp性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
このように、正孔輸送層117bのp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
〈電子輸送層〉
電子輸送層117dは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層117e、正孔阻止層(図示略)も電子輸送層117dに含まれる。電子輸送層117dは単層構造又は複数層の積層構造として設けることができる。
単層構造の電子輸送層117d、及び積層構造の電子輸送層117dにおいて発光層117cに隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、カソードより注入された電子を発光層117cに伝達する機能を有していればよい。このような材料としては従来公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層117dの材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(略称:Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層117dの材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されていても、電子輸送層117dの材料として好ましく用いることができる。また、発光層117cの材料としても例示されるジスチリルピラジン誘導体も電子輸送層117dの材料として用いることができ、正孔注入層117a、正孔輸送層117bと同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送層117dの材料として用いることができる。
電子輸送層117dは、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層117dの層厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。電子輸送層117dは上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
また、電子輸送層117dに不純物をドープし、n性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。更に電子輸送層117dには、カリウムやカリウム化合物などを含有させることが好ましい。カリウム化合物としては、例えば、フッ化カリウム等を用いることができる。このように電子輸送層117dのn性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができる。
〈阻止層〉
阻止層は、上述のように有機化合物薄膜の基本構成層の他に、必要に応じて設けられる。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層117dの機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層117dの構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層117cに隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層117bの機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、上記した正孔輸送層117bの構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。
阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmであり、更に好ましくは5〜30nmの範囲内である。
(封止部材)
封止部材120は、有機EL素子101を覆うものであって、板状(フィルム状)の封止部材120が封止樹脂層119によって、ガスバリア性フィルム1の基材2側に固定される。この封止部材120は、少なくとも有機機能層117を覆う状態で設けられ、有機EL素子101及び第2電極118の端子部分(図示略)を露出させる状態で設けられている。また、封止部材120に電極を設け、この電極と第2電極118の端子部分とを導通させるように構成されていてもよい。
板状(フィルム状)の封止部材120としては、具体的には、ガラス基板、ポリマー基板が挙げられ、これらの基板材料を更に薄型のフィルム状にして用いてもよい。ガラス基板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
中でも、素子を薄型化できるということから、封止部材120として薄型のフィルム状にしたポリマー基板を好ましく使用することができる。
更には、フィルム状としたポリマー基板は、JIS−K−7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、JIS−K−7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下であることが好ましい。
また、以上のような基板材料は、凹板状に加工して封止部材120として用いてもよい。この場合、上述した基板部材に対してサンドブラスト加工、化学エッチング加工等の加工が施され、凹状が形成される。
また、これに限らず、金属材料を用いてもよい。金属材料としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブデン、シリコーン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金が挙げられる。このような金属材料は、薄型のフィルム状にして封止部材120として用いることにより、有機EL素子101が設けられた発光パネル全体を薄型化できる。
《封止樹脂層》
封止部材120をガスバリア性フィルム1側に固定するための封止樹脂層119は、封止部材120とガスバリア性フィルム1とで挟持された、第1電極116、有機機能層117及び第2電極118の封止に用いられる。封止樹脂層119は、例えば、アクリル酸系オリゴマー又はメタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化性又は熱硬化性の接着剤、エポキシ系等の熱硬化性又は化学硬化性(二液混合)の接着剤、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、カチオン硬化タイプの紫外線硬化性エポキシ樹脂による接着剤が挙げられる。
製造プロセスの簡易性の観点から、封止樹脂層119を、熱硬化性接着剤で形成することが好ましい。また、封止樹脂層119の形態としては、シート状に加工された熱硬化性接着剤を用いることが好ましい。シート状の熱硬化性接着剤を用いる場合には、常温(25℃程度)では非流動性を示し、かつ、加熱すると50〜130℃の範囲内の温度で流動性を発現するような接着剤(シール材)を用いる。
熱硬化性接着剤としては、任意の接着剤を使用することができる。封止樹脂層119と隣接する封止部材120や、ガスバリア性フィルム1等との密着性向上の観点から、好適な熱硬化性接着剤を適宜選択する。例えば、熱硬化性接着剤としては、分子の末端又は側鎖にエチレン性二重結合を有する化合物と熱重合開始剤とを主成分とする樹脂等を用いることができる。より具体的には、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等からなる熱硬化性接着剤を使用することができる。また、有機EL素子101の製造工程で用いる貼合装置及び硬化処理装置に応じて、溶融タイプの熱硬化性接着剤を使用してもよい。
また、接着剤として、上記した接着剤を2種以上混合したものを用いてもよいし、熱硬化性及び紫外線硬化性をともに備えた接着剤を用いてもよい。
《有機エレクトロルミネッセンス素子の用途》
有機EL素子101は、上述したように面発光体であるため各種の発光光源として用いることができる。例えば、家庭用照明や車内照明などの照明装置、時計や液晶用のバックライト、看板広告用照明、信号機の光源、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられる。また、これらの発光光源に限定されず、その他の光源としても用いることができる。
特に、カラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
また、有機EL素子101は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。この場合、近年の照明装置及びディスプレイの大型化に伴い、有機EL素子101を設けた発光パネル同士を平面的に接合する、いわゆるタイリングによって発光面を大面積化してもよい。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもよい。また、異なる発光色を有する有機EL素子10を2種以上使用することにより、カラー又はフルカラー表示装置を作製することが可能である。
《有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法》
本発明の有機EL素子の製造方法の一例として、図3に示す有機EL素子101の製造方法を説明する。
まず、前述の方法で作製した本発明のガスバリア性フィルム1の第2ガスバリア層5上に、第1電極116を形成する。第1電極116は、透明な導電性材料から形成する。例えば、銀を主成分とする3〜15nm程度の厚さの電極や、100nm程度のITO等の透明導電性物質を形成する。第1電極116の形成方法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、スパッタ法、印刷法等を用いることができるが、均質な層が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法が特に好ましい。また、第1電極116の形成前後には、必要に応じて補助電極のパターン形成を行う。
次に、この上に、正孔注入層117a、正孔輸送層117b、発光層117c、電子輸送層117d、電子注入層117eの順に形成し、有機機能層117を形成する。これらの各層の形成方法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、スパッタ法、印刷法等を用いることができるが、均質な層が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法又はスピンコート法が特に好ましい。更に、層毎に異なる形成方法を用いてもよい。これらの各層の形成に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般に化合物を収蔵したボート加熱温度50〜450℃、真空度1×10−6〜1×10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、厚さ0.1〜5μmの範囲で、各条件を適宜選択することが望ましい。
次に、カソードとなる第2電極118を、蒸着法やスパッタ法等の適宜の形成方法によって形成する。この際、有機機能層117によって第1電極116に対して絶縁状態を保ちつつ、有機機能層117の上方からガスバリア性フィルム1の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。
次に、ガスバリア性フィルム1上に設けられた第1電極116、有機機能層117及び第2電極118の固体封止を行う。まず、封止部材120の片面に封止樹脂層119を形成する。そして、第1電極116と第2電極118の引き出し配線の端部が、封止樹脂層119の外に出るように、封止部材120の封止樹脂層119形成面を、第1電極116、有機機能層117及び第2電極118を介して、ガスバリア性フィルム1上に重ね合わせる。ガスバリア性フィルム1と封止部材120とを重ね合わせた後、ガスバリア性フィルム1と封止部材120とに圧力をかける。更に、封止樹脂層119を硬化させるために、封止樹脂層119を加熱する。このとき、ガスバリア層10と封止樹脂層119との接着性に問題がないように、封止樹脂層119を十分に硬化する。
以上により、基材2上にクリアハードコート層3、第1ガスバリア層4及び第2ガスバリア層5を備えたガスバリア性フィルム1を備える、固体封止された有機EL素子101が得られる。このような有機EL素子101の作製においては、一回の真空引きで一貫して第1電極116から第2電極118まで作製するのが好ましいが、途中で真空雰囲気から取り出して異なる形成法を用いてもよい。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
〔ガスバリア性フィルムNo.1〜9の作製〕
(フィルム基材の準備)
フィルム基材として、透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム社製 KE86W 125μm、表1には、PETと略記)を準備した。
準備したフィルムをセイコーインスツルメンツ社製熱機械的分析装置TMA/SS6100にてガラス転移点測定を行い、Tg値130℃を得た。
(クリアハードコート層の形成)
次いで、上記PETフィルム上に、ポリウレタンアクリレート及びアクリル酸エステルを主成分とした紫外線硬化型樹脂含有塗布液(日本合成化学社製 紫光UV−1700B)を、湿式コーターを用いて、ドライ膜厚4μmになるように塗布、80℃で1分間の乾燥を行い高圧水銀ランプを使用して、1.0J/cmの条件で硬化した。
(熱処理)
上記クリアハードコート層を形成したPETフィルムについて、続けて複数のロール群からなるフィルム搬送装置(ゾーン長100m)を有する熱処理式オーブン中を搬送させながら熱処理を行った。このときオーブン内の入口温度、出口温度、熱処理時間を表1のように変化させた。ここでいう熱処理時間とは、ライン搬送速度を変化させたときの熱処理式オーブンを通過する時間とした。
(ガスバリア層の形成)
[第1ガスバリア層の形成]
以上の方法で作成された上記クリアハードコート層を形成したPETフィルムを、図2に示す磁場を印加したローラー間に放電空間を形成することができる放電プラズマCVD処理装置(以下、プラズマCVDと称す。)を用い、上記クリアハードコート層を有するPETフィルムを装着し、下記製膜条件(プラズマCVD条件)にてクリアハードコート層上に第1ガスバリア層を厚さ300nmで形成した。
〈成膜条件〉
原料ガス(HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O)の供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:1.2kW
プラズマ発生用電源の周波数:80kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
[第2ガスバリア層の形成]
〈ポリシラザンを用いた湿式塗布法〉
上記第1ガスバリア層上に、下記方法で塗布型の第2ガスバリア層を形成した。
ポリシラザン含有塗布液として、パーヒドロポリシラザン(PHPS;アクアミカ NN120−10、無触媒タイプ、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液を調製した。
調製したポリシラザン含有塗布液を、ワイヤレスバーにて、乾燥後の平均層厚が300nmとなるように第1ガスバリア層上に塗布し、温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分間処理して乾燥させた。更に、温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行った。
塗布膜を形成したフィルム基材について、下記紫外線装置を用いて、下記の条件でエキシマ光照射処理を行い、第1ガスバリア層上に、塗布型の第2ガスバリア層を形成した。
紫外線照射装置:株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ光照射装置
MODEL:MECL−M−1−200
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
エキシマランプ光強度:130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:1.0%
エキシマランプ照射時間:5秒
〔ガスバリア性フィルムNo.10の作製〕
ガスバリア性フィルムNo.1〜9の作製において、クリアハードコート層の形成後、熱処理を行わず、ガスバリア層の形成に進んだ以外は同様にしてガスバリア性フィルムNo.10を得た。
《有機EL素子の作製》
次いで、上記作製したガスバリア性フィルムNo.1〜10を用い、下記の方法に従って、有機EL素子No.1〜10を作製した。
各ガスバリア性フィルムを、市販の真空蒸着装置の基材ホルダーに固定し、下記化合物No.10をタングステン製の抵抗加熱ボートに入れ、これらガスバリア性フィルムホルダーと加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽内に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、真空蒸着装置の第2真空槽内に取り付けた。
真空蒸着装置の第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、化合物No.10の入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で第1電極の下地層を、層厚10nmで設けた。下地層を形成したガスバリア性フィルムを真空のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で厚さ8nmの銀からなる第1電極を形成した。
次に、市販の真空蒸着装置を用い、真空度1×10−4Paまで減圧した後、ガスバリア性フィルムを移動させながら、形成した第1電極上に、下記化合物HT−1を、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、20nmの正孔輸送層(HTL)を設けた。
次に、下記化合物A−3(青色発光ドーパント)、下記化合物A−1(緑色発光ドーパント)、下記化合物A−2(赤色発光ドーパント)及び下記化合物H−1(ホスト化合物)を用い、化合物A−3は、層厚方向に対して線形で含有率が35%から5%の傾斜濃度となるように蒸着速度を変化させ、化合物A−1と化合物A−2は層厚に依存することなく各々0.2質量%の一定濃度になるように、蒸着速度0.0002nm/秒で、化合物H−1は、層厚方向で、含有率が64.6%から94.6%の傾斜濃度となるように蒸着速度を変化させて、層厚70nmの共蒸着した発光層を形成した。
その後、下記化合物ET−1を、発光層上に蒸着して、層厚30nmの電子輸送層を形成し、更にフッ化カリウム(KF)を蒸着して層厚2nmの電子注入層を形成した。更に、アルミニウムを蒸着して層厚110nmの第2電極を形成した。
なお、上記各有機機能層の形成に用いた化合物No.10、化合物HT−1、化合物A−1〜3、化合物H−1、及び、化合物ET−1は、以下に示す化合物である。
Figure 2015147952
次に、封止部材として厚さ25μmのアルミ箔を使用し、このアルミ箔の片面に封止樹脂層として熱硬化型のシート状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ20μmで貼合した封止部材を用いて、第2電極まで作製した樹脂基材に重ね合わせた。このとき、第1電極及び第2電極の引き出し配線の端部が外に出るように、封止部材の接着剤形成面と、素子の有機機能層面とを連続的に重ね合わせた。
次に、ガスバリア性フィルムを含む試料を減圧装置内に配置し、90℃、0.1MPaの減圧条件下で、重ね合わせた試料と封止部材とに圧力をかけた状態で5分間保持した。続いて、ガスバリア性フィルムを含む試料を大気圧環境に戻し、更に120℃で30分間加熱して接着剤を硬化させた。
上記封止工程は、大気圧下、含水率1ppm以下の窒素雰囲気下で、JIS B 9920に準拠し、測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppm以下の大気圧で行った。
以上の工程により、有機EL素子No.1〜10を作製した。なお、発光領域の面積は5cm×5cmとなるようにした。
《ガスバリア性フィルム及び有機EL素子の評価》
〔ガスバリア性フィルムの評価〕
(フィルムカールの評価)
上記作製した各ガスバリア性フィルムについて3インチ径のコアに巻き付けた状態で55℃、20%RHで4時間保持した後、前記コアから解放した時の立ち上がりカールの数値を測定した。
立ち上がりカールが20mm以下のものを良好とした。
〔有機EL素子の評価〕
上記有機EL素子No.1〜10について、1mA/cmの電流を印加して発光させた。次いで、印加直後と、50℃、80%RHの環境下で発光時間として、300時間及び500時間で連続発光させた後の発光状態について、100倍の光学顕微鏡(株式会社モリテックス製 MS−804、レンズMP−ZE25−200)で、有機EL素子の一部分を拡大して撮影した。次いで、撮影画像を2mm四方に切り抜き、それぞれの画像について、ダークスポット発生の有無を観察した。観察結果より、発光面積に対するダークスポットの発生面積比率を求め、下記の基準に従って、ダークスポット耐性を評価した。
5:500時間発光後の試料でも、ダークスポットの発生は全く認められない
4:300時間発光後の試料でも、ダークスポットの発生は全く認められないが、500時間発光後の試料で、僅かにダークスポットの発生が認められる(発生面積0.1%以上、3.0%未満)
3:300時間発光後の試料で、僅かにダークスポットの発生が認められる(発生面積0.1%以上、3.0%未満)
2:300時間発光後の試料で、明らかなダークスポットの発生が認められる(発生面積3.0%以上、6.0%未満)
1:300時間発光後の試料で、多数のダークスポットの発生が認められる(発生面積6.0%以上)
上記の評価で3以上のものを良好とした。
以上により得られた結果を、表1に示す。
Figure 2015147952
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する方法により製造されたガスバリア性フィルムNo.4〜9は、立ち上がりカールの数値が20mm以下であった。また、このガスバリア性フィルムNo.4〜9を用いた有機EL素子No.4〜9は、ダークスポットの評価(DS評価)において良好な結果が得られた。すなわち、高温高湿環境における膜剥離等に起因するダークスポットの発生が抑制されており、良好な品質であることがわかる。
一方、ガスバリア性フィルムNo.1は、熱処理時間が短いため、立ち上がりカールの数値が規定を外れた。また、有機EL素子No.1においてDS評価が悪かった。
ガスバリア性フィルムNo.2は、熱処理温度が低いため、立ち上がりカールの数値が規定を外れた。また、有機EL素子No.2においてDS評価が悪かった。
ガスバリア性フィルムNo.3は、熱処理温度が低く、また熱処理時間が短いため、立ち上がりカールの数値が規定を外れた。また、有機EL素子No.3においてDS評価が悪かった。
ガスバリア性フィルムNo.10は、熱処理を行っていないため、立ち上がりカールの数値が規定を外れた。また、有機EL素子No.10においてDS評価が悪かった。
以上、本発明について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することが可能であることはいうまでもない。
例えば、本発明のガスバリア性フィルム1については、前記した実施形態では、第1ガスバリア層4と第2ガスバリア層5との2層でガスバリア層10を形成したものとしたが、ガスバリア層10はさらに層数を増やしたものであってもよい。すなわち、本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア層は、第1ガスバリア層4と、この第1ガスバリア層4上に設けられた第2ガスバリア層5とからなるガスバリア層ユニット(ガスバリア層10)が複数積層された構造であってもよい。
また、本発明のガスバリア性フィルム1には、上記説明した各構成層の他に、本発明の目的効果を損なわない範囲で、他の機能性層を設けてもよい。
例えば、ブリードアウト防止層、平滑層を設けることもできる。これらの層の詳細については、例えば、国際公開第2012/014653号等の記載を参考にすることができる。
また、ガスバリア性フィルム1の裏面側(ガスバリア層がない側)に耐熱ラミネート部材を設けてもよい。
本発明のガスバリア性フィルム1の製造方法については、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に他の工程を含めてもよい。例えば、基材2を洗浄する基材洗浄工程や、ごみ等の不要物を除去する不要物除去工程等を含めてもよい。
また、本発明のガスバリア性フィルム1の製造方法として、冷却温度や熱処理時間の基準を規定しやすくしたり、熱処理条件を制御しやすくしたりする観点から、熱処理工程の熱処理は、Tg<T≦(Tg+55℃)を満たす温度Tの範囲で行うものとしてもよい。すなわち、熱処理開始時の温度Tと、熱処理終了時の温度が、共に、Tg<T≦(Tg+55℃)を満たす温度Tの範囲にあるものとしてもよい。
1 ガスバリア性フィルム
2 基材
3 クリアハードコート層
4 第1ガスバリア層
5 第2ガスバリア層
10 ガスバリア層(ガスバリア層ユニット)
11 送り出しローラー
21、22、23、24 搬送ローラー
30 放電プラズマ処理装置
31、32 成膜ローラー
41 ガス供給管
51 プラズマ発生用電源
61、62 磁場発生装置
71 巻取りローラー
101 有機EL素子
116 第1電極
117 有機機能層
117a 正孔注入層
117b 正孔輸送層
117c 発光層
117d 電子輸送層
117e 電子注入層
118 第2電極
119 封止樹脂層
120 封止部材
h 発光光

Claims (10)

  1. 基材の少なくとも一方の面に、クリアハードコート層を形成するクリアハードコート層形成工程と、
    前記クリアハードコート層が形成された基材を熱処理する熱処理工程と、
    前記熱処理工程の後に、前記クリアハードコート層上に第1ガスバリア層を形成する第1ガスバリア層形成工程と、
    前記第1ガスバリア層形成工程の後に、前記第1ガスバリア層上に第2ガスバリア層を形成する第2ガスバリア層形成工程と、を含み、
    前記熱処理は、前記基材のガラス転移温度をTgとしたときに、Tg<T≦(Tg+55℃)を満たす温度Tの状態から、前記温度Tよりも20〜60℃低い温度になるまで、10〜65分かけて冷却することで行うことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
  2. 前記熱処理は、前記クリアハードコート層が形成された基材を搬送しながら行うことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  3. 前記搬送しながら行う熱処理は、搬送装置の熱処理ゾーンを通過させることにより行い、
    熱処理開始時の温度Tが前記熱処理ゾーンの入口温度であり、熱処理終了時の温度が前記熱処理ゾーンの出口温度であることを特徴とする請求項2に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  4. 前記第1ガスバリア層を、化学気相成長法により形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  5. 前記化学気相成長法が、放電プラズマ化学気相成長法であることを特徴とする請求項4に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  6. 前記放電プラズマ化学気相成長法が、一対の成膜ローラー上に前記クリアハードコート層が形成された基材を配置し、前記一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることにより前記第1ガスバリア層を形成する放電プラズマ化学気相成長法であることを特徴とする請求項5に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  7. 前記第2ガスバリア層を、珪素化合物を含有する溶液を塗布することにより形成することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  8. 基材と、この基材の少なくとも一方の面に設けられたクリアハードコート層と、このクリアハードコート層上に設けられた第1ガスバリア層と、この第1ガスバリア層上に設けられた第2ガスバリア層と、を有するガスバリア性フィルムであって、
    前記ガスバリア性フィルムは、76.2mm径のコアに巻きつけた状態で55℃、20%RHで4時間保持した後に前記コアから解放したときの立ち上がりカールの絶対値が20mm以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  9. 請求項8に記載のガスバリア性フィルムを備えることを特徴とする電子デバイス。
  10. 請求項8に記載のガスバリア性フィルムを備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
JP2014019762A 2014-02-04 2014-02-04 ガスバリア性フィルムの製造方法、ガスバリア性フィルム、電子デバイス、および、有機エレクトロルミネッセンス素子 Pending JP2015147952A (ja)

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