JPWO2015137195A1 - 導電積層体、導電積層体の製造方法、タッチパネルおよびタッチスイッチ - Google Patents

導電積層体、導電積層体の製造方法、タッチパネルおよびタッチスイッチ Download PDF

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渡邊  修
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一善 太田
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Abstract

基材上にアンダーコート層(X)と導電層(Y)とを基材側からこの順で有し、かつ以下の(i)〜(iii)を満たす導電積層体。(i)アンダーコート層(X)が有機バインダー(A)及び粒子(B)を含む(ii)アンダーコート層(X)に含まれる粒子(B)の含有量が、アンダーコート層全体100質量%に対して15質量%以上95質量%以下である(iii)導電層(Y)がカーボンナノチューブ(C)およびカーボンナノチューブ分散剤(D)を含む透明導電性に加えてレーザーエッチング性、耐湿度依存性に優れる導電積層体を提供する。

Description

本発明は、導電積層体、導電積層体の製造方法、タッチパネルおよびタッチスイッチに関する。より詳細には、透明導電性に優れる導電積層体および導電積層体の製造方法に関する。
導電積層体は、フラットパネルディスプレイやタッチパネルなどの電子表示機器に多く利用されている。導電積層体に用いられる導電材料は錫ドープ酸化インジウム(以下、ITOと略す)に代表され、ITOの需要量および使用量は増え続けている。しかし、インジウムはレアメタルであることからインジウムを代替する新規な導電材料が求められている。あるいは、ITOを用いた導電積層体に特有の短所、たとえば折り曲げに弱い、真空成膜であるために低コスト化が困難であるなどの短所を補う新規な導電材料が求められている。そのような新規な導電材料として、カーボンナノチューブ(以下、CNTと略す)、グラフェン、フラーレンが連なったウィスカーなどのナノカーボン材料の他、導電性ポリマー、金属ナノ粒子、金属ナノワイヤーなどの開発が盛んに行われている。これら新規な導電材料は、折り曲げに強く、大気圧下で塗布できるタイプの材料である。これら新規な導電材料の開発への期待は大きい。
CNTは実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層CNT、多層に巻いたものを多層CNT、中でも特に2層に巻いたものを2層CNTという。CNTは、それ自体が優れた真性の導電性を有し、導電材料として使用されることが期待されている。
CNTを用いた導電積層体を作製するために、CNTを均一に分散液中に分散させる必要がある。一般的には分散性に優れたイオン性分散剤を用いる。
しかし、イオン性分散剤は一般的に絶縁性物質である。CNTを用いた導電積層体の導電性を低下させるという問題がある。したがって、透明導電性に優れた導電積層体を作製しようとすると、イオン性分散剤を導電層より取り除く必要があると考えられる。
別の要求特性として、デバイス形成の際にはパターンニングにより導電ネットワークの絶縁を取る必要がある。パターンニングの際に、無機物等割れやすい材料を用いると、構造破壊に伴いパターンニングの細線が広がり、視認しやすくなってしまう。このことは骨見え(visible pattern)と呼ばれ、一般的に知られている。
例えば、特許文献1には、様々なフィルム上にカーボンナノチューブ分散液を塗布し、導電性フィルムを得る導電性フィルムの製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、カーボンナノチューブ分散液をフィルム上に塗布後、余剰なイオン性分散剤を水によるリンスで除去することで、高導電性の導電性フィルムを得る製造方法が記載されている。
また、特許文献3には、カーボンナノチューブ透明導電積層体の抵抗値安定化を図るために、カーボンナノチューブ層の下に、シリカ微粒子とポリシリケートからなる親水性のアンダーコート層を設け、透明導電性および抵抗値安定性を向上させた例が記載されている。
さらに、特許文献4には、支持体の上に微粒子と樹脂バインダーを含有する多孔質層を設け、その上に導電性のパターンを形成することで、導電パターンの密着性が高く、かつ優れた導電性と耐熱保存性を有する導電性部材が得られた導電性パターン形成基材が記載されている。
特表2004−526838号公報 特開2009−149516号公報 国際公開第2012/057321号パンフレット 特開2014−67952号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、導電層に含まれるイオン性分散剤を取り除く層構成になっていない。よって、高導電性の導電性フィルムを得ることができない。
特許文献2に記載の技術においては、導電層に含まれる余剰なイオン性分散剤を水によるリンスで除去することで、高導電性の導電性フィルムを得ている。しかし、フィルム上でのリンス処理は汎用ウェットコーティング量産機への生産適用が困難である。
特許文献3に記載の技術においては、親水性アンダーコート層を用いることでイオン性分散剤を取り除いている。その結果、導電性および抵抗値安定性は向上した。しかし、無機バインダーを用いてアンダーコート層を形成しているため、レーザーエッチング方式によるパターンニングの際にアンダーコート層が割れて、パターニングの細線が線太りし、骨見えが起こるという課題がある。
特許文献4に記載の技術においては、導電層を構成する導電材料としてCNTおよびイオン性分散剤は含まれていない。透明導電性および抵抗値安定性についても具体的な言及がない。
本発明は、前記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その課題は、透明導電性および耐湿度依存性に優れ、パターニングした際に骨見えの発生しにくい導電積層体を提供することである。
本発明は以下の導電積層体を提供する。
基材上にアンダーコート層(X)と導電層(Y)とを基材側からこの順で有し、かつ以下の(i)〜(iii)を満たす導電積層体。
(i)アンダーコート層(X)が有機バインダー(A)及び粒子(B)を含む
(ii)アンダーコート層(X)に含まれる粒子(B)の含有量が、アンダーコート層全体100質量%に対して15質量%以上95質量%以下である
(iii)導電層(Y)がカーボンナノチューブ(C)およびカーボンナノチューブ分散剤(D)を含む
本発明によれば、透明導電性および耐湿度依存性に優れ、パターニングした際に骨見えの発生しにくい導電積層体を提供することができる。
本発明におけるカーボンナノチューブの合成方法を説明する概略図である。
本発明の導電積層体は、基材上にアンダーコート層(X)と導電層(Y)とを基材側からこの順で有し、かつ以下の(i)〜(iii)を満たす導電積層体である。
(i)アンダーコート層(X)が有機バインダー(A)および粒子(B)を含む
(ii)アンダーコート層(X)に含まれる粒子(B)の含有量が、アンダーコート層全体100質量%に対して15質量%以上95質量%以下である
(iii)導電層(Y)がカーボンナノチューブ(C)およびカーボンナノチューブ分散剤(D)を含む。
本発明の導電積層体は、かかる構成を有することにより、導電積層体を用いる電子デバイスに用いた場合、デバイスの導電性を向上させることができる。また、デバイスの置かれた環境の湿度が変化しても透明導電性を安定させることができる。さらに、導電積層体を用いたタッチパネルやタッチスイッチに用いた場合、レーザーエッチング性が向上し、骨見えの発生しにくいタッチパネルやタッチスイッチを提供することができる。
本発明の導電積層体の製造方法は、基材上に、ぬれ張力が76〜105mN/mであるアンダーコート層(X)を設けるアンダーコート層(X)形成工程と、カーボンナノチューブ(C)およびカーボンナノチューブ分散剤(D)を含む分散液をアンダーコート層(X)上に設け導電層(Y)を形成する導電層(Y)形成工程とを有する。
本発明のタッチパネルは、本発明の導電積層体または本発明の導電積層体の製造方法によって得られた導電積層体を用いたタッチパネルである。
本発明のタッチスイッチは、本発明の導電積層体または本発明の導電積層体の製造方法によって得られた導電積層体を用いたタッチスイッチである。
[基材]
本発明の導電積層体は、基材を有する。本発明に用いられる基材の素材としては、樹脂、ガラスなどを挙げることができる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略する)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロースなどを用いることができる。ガラスとしては、ソーダガラス、白板ガラス、無アルカリガラスなどを用いることができる。また、これらの複数の基材を組み合わせて用いることもできる。例えば、樹脂とガラスとを組み合わせた基材、2種以上の樹脂を積層した基材などの複合基材であってもよい。樹脂フィルムにハードコートを設けたようなものであってもよい。基材の種類は前記基材に限定されることはなく、用途に応じて耐久性やコスト等から最適なものを選ぶことができる。基材の厚みは特に限定されるものではないが、タッチパネル、タッチスイッチ、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどのディスプレイ関連の電極に用いる場合、10μm〜1,000μmの範囲にあることが好ましい。
[アンダーコート層(X)]
本発明の導電積層体は前記基材上にアンダーコート層(X)を有する。本発明の導電積層体は、(i)アンダーコート層(X)が、有機バインダー(A)および粒子(B)を含む。
(1)アンダーコート層(X)
アンダーコート層(X)はISO8296(2003)で規定されている、ぬれ張力が76mN/m以上105mN/m以下であることが好ましい。ぬれ張力を76mN/m以上とすることで、アンダーコート層(X)上にCNT分散液を塗布した際に、塗布はじきを生じにくくし、CNT分散液を均一に塗布することが可能となるため好ましい。またアンダーコート層(X)のぬれ張力が105mN/m以下であると、塗布時の塗液の塗れ広がりによる塗布ムラや、乾燥時の風の影響を受けた塗布ムラを生じにくくし、CNT分散液を均一に塗布することが可能となるため好ましい。塗布ムラの観点から、ぬれ張力は76mN/m以上105mN/m以下であることが好ましく、76mN/m以上90mN/m以下であることがより好ましい。
アンダーコート層(X)のぬれ張力は、アンダーコート層(X)を形成する塗料組成物中の有機バインダー(A)に含まれる親水性官能基の共重合量を多くしたり、アンダーコート層(X)の厚みを厚くしたりすることにより大きくすることができる。よって、アンダーコート層(X)のぬれ張力は、有機バインダー(A)に含まれる親水性官能基の共重合量、親水性官能基の種類、後述するアンダーコート層(X)の厚みによって、適宜調整することができる。
アンダーコート層(X)の厚みは導電積層体としたときにカール等の現象が発生しにくい範囲であれば特に限定されない。また、アンダーコート層表面のぬれ性が前記の好ましいぬれ張力の範囲に入っていることが好ましく、その厚みは有機バインダーの種類、官能基の種類、官能基の含有量、添加する粒子量によって変わる。従って、8nm〜3μmの範囲にあることが好ましい。光学干渉による反射防止効果が有効に得られる厚みであれば、光線透過率が向上するため好ましい。このため、後述するオーバーコート層の厚みと合わせた厚みが20nm〜600nmの範囲にあることがより好ましい。さらには、後述する耐湿度依存性の観点から、厚みを大きくするとイオン性分散剤をアンダーコート層内に取り込む効果が増大するため、300nm〜600nmの範囲にあることが好ましい。
アンダーコート層(X)の中心面平均粗さSRaは2〜15nmであることが好ましい。SRaを2nm以上にすると、アンダーコート層表面の凹凸が大きくなり、イオン性分散剤を含んだCNT分散液を塗布した際、アンダーコート層(X)にイオン性分散剤を取り込み易くなり、CNT層からのイオン性分散剤の除去が効果的に行われるため好ましい。また、SRaを15nm以下にすることで導電積層体の光学特性を良くすることができるため好ましい。15nmより大きくなると、CNT層、オーバーコート層との界面における光の散乱が増大し、ヘイズが高くなる場合がある。従って、本発明においては、アンダーコート層(X)のSRaを2nm以上15nm以下にすることが好ましく、より好ましくは5nm以上15nm以下である。本発明におけるアンダーコート層(X)のSRaは、三次元表面粗さ測定機を用いて測定することができる。アンダーコート層(X)の中心面平均粗さSRaは下記粒子(B)によって制御することができる。
(2)有機バインダー(A)
アンダーコート層(X)がバインダーを含むことにより、アンダーコート層(X)にイオン性分散剤をより吸着することができるため好ましい。バインダーとしては有機バインダー、無機バインダー等が挙げられるが、イオン性分散剤をより吸着できる点や、パターニング時のアンダーコート層の割れにくさの点から、有機バインダー(A)を用いることが好ましい。
アンダーコート層(X)に含まれる有機バインダー(A)は、有機化合物を含むことが好ましい。有機化合物は、炭素原子が骨格として組み立てられている化合物であり、共有結合を有し2種類以上の原子からなる分子が最小単位となる化合物である。有機化合物としては、例えばフェノール、シリコン、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、オレフィン、ビニル、アクリル、セルロースなどが好ましい。
有機バインダー(A)は、基材への塗布性の観点より親水性官能基を有する有機バインダーを含むことが好ましい。また、有機バインダー(A)は、基材への塗布性の観点より親水性官能基を有するポリエステル樹脂および/または親水性官能基を有するアクリル樹脂を含むことがより好ましい。すなわち、有機バインダー(A)が親水性官能基を有するポリエステル樹脂または親水性官能基を有するアクリル樹脂のいずれかを含んでもよい。また、親水性官能基を有するポリエステル樹脂および親水性官能基を有するアクリル樹脂の両方を含んでもよい。
親水性官能基を有するポリエステル樹脂とは、ポリエステル樹脂の親水性を高め、水系溶媒へ溶解、または分散させるために、ポリエステル樹脂の末端や側鎖に、親水性官能基を有するポリエステル樹脂を指す。親水性官能基としては、スルホン酸塩基やカルボン酸塩基などが挙げられる。
ポリエステル樹脂に親水性官能基を含有させるためには、スルホン酸塩基を有するジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体ならびにスルホン酸塩基を有するジオールおよびそのエステル形成性誘導体(スルホン酸塩基を含む化合物)や、カルボン酸塩基を3つ以上有する多価カルボン酸およびそのエステル形成性誘導体(3価以上の多価カルボン酸塩基を含む化合物)などをポリエステルの原料として用いることができる。
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
3価以上の多価カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
ポリエステルを構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸を挙げることができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、およびそれらのエステル形成性誘導体などを挙げることができる。
ポリエステルのグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、などを用いることができる。
親水性官能基であるスルホン酸塩基や3価以上の多価カルボン酸塩基を含む化合物は、親水性官能基を含有するポリエステル樹脂を構成するポリエステルの原料成分全体を100モル%としたとき、1〜25モル%であることが好ましい。親水性官能基であるスルホン酸塩基や3価以上の多価カルボン酸塩基を含む化合物を1モル%以上とすることで、親水性官能基を含有するポリエステル樹脂に親水性を付与することができるだけでなく、水系溶媒へ溶解、または分散が可能となるため好ましい。水性官能基であるスルホン酸塩基や3価以上の多価カルボン酸塩基を含む化合物を25モル%以下とすることで、安定的に親水性官能基を含有するポリエステル樹脂を共重合により製造することができるため好ましい。
親水性官能基を有するポリエステル樹脂は、例えば次のように製造することができる。例えばジカルボン酸成分とグリコール成分、スルホン酸塩基や3価以上の多価カルボン酸塩基を含む化合物をエステル化反応あるいはエステル交換反応させる第一段階の工程の後、重縮合反応させることによって製造する方法、ジカルボン酸成分とグリコール成分をエステル化反応あるいはエステル交換反応させる第一段階の工程の後、スルホン酸塩基や3価以上の多価カルボン酸塩基を含む化合物を加えて、第一段階の反応生成物と重縮合反応させる第二段階の工程とによって製造する方法などにより製造することができる。この際、反応触媒として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることができる。
上記の製造方法により得られた親水性官能基を有するポリエステル樹脂は、溶媒に分散または溶解させて塗料組成物とすることが好ましい。水系溶媒へ分散または溶解させる手段としては、ポリエステル樹脂を、撹拌しながらアンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、各種アミン類等のアルカリ性化合物の水溶液に溶解もしくは分散させる方法が挙げられる。この場合、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ等の水溶性有機溶媒を併用してもよい。
また、有機バインダー(A)は、基材への塗布性の観点より親水性官能基を有するアクリル樹脂を含むことが好ましい。親水性官能基を有するアクリル樹脂としては、親水性官能基を有するアクリル系単量体に由来する繰返し構成単位を含むものであればよい。親水性官能基を有するアクリル樹脂としては、該親水性官能基を有するアクリル系単量体に由来する繰返し構成単位と、親水性基を有さないアクリル系単量体に由来する繰返し構成単位とからなるものが好ましい。このような親水性官能基を有するアクリル樹脂を用いることにより、透明性に優れ、CNT分散液を塗布した際に、塗布はじきを生じにくくすることができるため好ましい。
親水性官能基を有するアクリル系単量体としては、水と相互作用が強い極性の原子団である親水性基、即ち、水中で陽イオンとして解離するカチオン性基を有する公知のアクリル系単量体、水中で陰イオンとして解離するアニオン性基を有する公知のアクリル系単量体、或いは水中で解離しない非イオン性基を有する公知のアクリル系単量体が挙げられる。
上記カチオン性基を有するアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びその塩、(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。上記アニオン性基を有するアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル及びその塩、ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート及びその塩等が挙げられる。上記非イオン性基を有するアクリル系単量体としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。尚、ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味するものとする。
また、親水性官能基を有さないアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜8の直鎖状及び分岐状)エステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
また、前記有機バインダーは親水性官能基を有するポリエステル樹脂および親水性官能基を有するアクリル樹脂の両方を含むことがイオン性分散剤除去の点からより好ましい。
アンダーコート層(X)に含まれる親水性官能基を有するアクリル樹脂の含有量(以下、Dとする)に対する親水性官能基を有するポリエステル樹脂の含有量(以下、Cとする)の質量比率(C/D)としては1/9以上8/2以下であることが好ましい。(C/D)が1/9未満であると、アンダーコート層全体が硬くなってしまい、割れやすくなってしまう場合がある。また、(C/D)が8/2を超えると、親水性官能基を有するポリエステル樹脂自体はほとんど硬化しないため、膜が柔らかくなりすぎてしまう場合がある。従って、(C/D)は1/9以上8/2以下であることが好ましい。より好ましくは2/8以上5/5以下である。アンダーコート層全体を100質量%としたときの親水性官能基を有するポリエステル樹脂の含有量は20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。アンダーコート層全体を100質量%としたときの親水性官能基を有するアクリル樹脂の含有量は50質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
親水性官能基を有する有機バインダー(A)は、例えば乳化剤により、均一に分散されてエマルジョンの状態になっていても構わない。
また、有機バインダー(A)は架橋剤を含むことが好ましい。アンダーコート層(X)の塗膜を強固にし、耐湿熱性、基材との密着性等を向上させるために、架橋剤としてエポキシ化合物および/またはオキサゾリン化合物を使用することが好ましい。エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物のいずれか一方のみを使用してもよいし、両者をともに使用してもよい。
エポキシ化合物としては、例えば、分子内にエポキシ基を含む化合物、そのプレポリマーおよび硬化物が挙げられる。例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられる。ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等である。
ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物である。特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができる。これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限ない。例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類等が挙げられる。アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類等が挙げられる。酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類等が挙げられる。塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類等が挙げられる。スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー類等を挙げることができる。これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
本発明において、バインダーに対する架橋剤の仕込み量は、バインダーを100質量部としたとき、5〜80質量部が好ましく、より好ましくは10〜30質量部、さらに好ましくは10〜20質量部である。5質量部未満の場合は、アンダーコート層がもろくなり、湿気や熱に十分に耐えられない場合があり、80質量部を超える場合は、相対的に親水性官能基を含む樹脂成分が少なくなり、CNT分散液が塗布できにくくなったり、基材との密着性が安定しなくなったりする場合がある。
(3)粒子(B)
アンダーコート層(X)は粒子(B)を含むことが好ましい。粒子(B)を含むことで、アンダーコート層の表面凹凸が大きくなり、イオン性分散剤のアンダーコート層(X)への取り込みが効果的となり、耐湿度依存性が向上するため好ましい。また、アンチブロッキング性もアンダーコート層(X)に付与することができるため好ましい。すなわち、導電積層体をロールツーロール(Roll to Roll)で製造する際、アンダーコート層形成後にアンダーコート層が形成された基材を巻き取る必要が生じる場合がある。その際、アンダーコート層に粒子(B)を含むことで、アンダーコート層がブロッキングしにくくなるため好ましい。従って、粒子(B)の含有量はアンダーコート層全体を100質量%とした場合、本発明の導電積層体は、(ii)アンダーコート層(X)に含まれる粒子(B)の含有量が、アンダーコート層全体に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。粒子(B)の含有量が15質量%未満となると、アンダーコート層表面の凹凸が不足し、耐湿度依存性が発揮できない場合がある。一方、粒子(B)の含有量が95質量%を超えると、有機バインダー(A)に対して粒子(B)が過剰となり、粒子(B)の脱落が起こる場合がある。
また、粒子(B)の含有量が50質量%を超えると後述するオーバーコート層を塗布した際にオーバーコート層の溶剤によってはアンダーコート表面が一部侵食されて浮き出た粒子が脱落して凝集し、ヘイズ上昇を引き起こす場合があるため、そして、粒子(B)の含有量が20質量%以上であれば表面凹凸を付けることで耐湿度依存性が安定的に発揮しやすくなるため、より好ましい範囲としては20〜50質量%である。耐湿度依存性を安定的に発揮し、かつヘイズ上昇を安定的に抑えるという点から25〜35質量%がさらに好ましい範囲である。
粒子(B)の粒径の好ましい範囲としては5nm〜500nmである。5nm未満となると、粒子を均一に分散することが難しくなり、逆に凝集してしまってアンダーコート層内でのみかけ上の粒子の大きさが大きくなる場合がある。また、500nmを超えると、ヘイズが上昇し、導電積層体を表示体に用いた場合に白く濁ってしまう場合がある。より好ましくは、15nm〜100nm、さらに好ましくは15nm〜40nmである。なお、ここでいう粒径とは動的光散乱法により測定された平均粒径をいう。
粒子(B)は、有機粒子であっても無機粒子であっても、その両方を用いても構わない。すなわち、粒子(B)が無機粒子および/または有機粒子であることが好ましい。
有機粒子としては、例えばアクリル酸類、スチレン樹脂、熱硬化樹脂、シリコーンおよびイミド化合物等を構成成分とする粒子が挙げられる。ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)も好ましく用いられる。特に、親水性官能基を有するポリエステル樹脂への分散性、汎用性の観点から、スチレン/アクリル粒子が好ましい。液中で安定的に分散しているスチレン/アクリル粒子としては、日本合成化学化学工業(株)製“モビニール”(登録商標)972などが好ましく用いられる。
無機粒子としては、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、セリア、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、各種金属酸化物からなる粒子が好ましい。特に、有機バインダーへの分散性や、粒子の硬度、耐熱性、耐アルカリ接着性の点から無機コロイド粒子が好ましく、コロイダルシリカが最も好ましい。さらには、コロイダルシリカ間の静電反発により溶媒中で分散安定しているコロイダルシリカであることが好ましい。
コロイダルシリカ間の静電反発により溶媒中で分散安定しているコロイダルシリカは、コロイダルシリカ表面に−SiOH基や−OHイオンが存在し、負に帯電した状態で電気二重層が形成されている。コロイダルシリカ間の静電反発により溶媒中で分散安定しているコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)社製の“スノーテックス”(登録商標)シリーズや日揮触媒化成(株)社製の“カタロイド”シリーズなどが好ましく用いられる。
粒子(B)の形状は、特に限定されない。例えば、1次粒子の形状が球形(回転楕円体形、幾何学的な形状(立方体・ロッド状・板状・繊維状・テトラポッド形・三角柱形)を含む)の粒子が挙げられる。また、2次粒子の形状として、鎖状形(同形粒子がランダムに2次元的につながった数珠状の粒子)、パールネックレス状形(同形粒子がランダムに3次元的につながった数珠状の粒子)などが挙げられる。表面凹凸付与の観点より、球形、鎖状形、パールネックレス状形が好ましい。また、必要に応じてこれらの粒子を混合し併用することができる。
粒子の形状が球形とは、粒子が立体的な球状の粒子であることをいう。球形の無機粒子としては、日産化学工業(株)社製の“スノーテックス”“ナノユース”、“セルナックス”(登録商標)シリーズや日揮触媒化成(株)社製の“カタロイド”シリーズや日本触媒(株)社製の“シーホスター”(登録商標)シリーズなどが好ましく用いられる。球形の有機粒子としては、アイカ工業(株)社製の“ガンツパール”シリーズや東洋紡(株)社製の“タフチック”(登録商標)シリーズや日本触媒(株)社製の“エポスター”(登録商標)シリーズなどが好ましく用いられる。
粒子の形状が鎖状形とは、同形粒子(1次粒子)がランダムに2次元的につながった数珠状の粒子(2次粒子)であり、1次粒子が押しつぶされた細長い形状を有する形状であることをいう。鎖状形の無機粒子としては、日産化学工業(株)社製の“スノーテックス”(登録商標)シリーズや日揮触媒化成(株)社製の“カタロイド”シリーズなどが好ましく用いられる。鎖状形の有機粒子としては、東洋紡(株)社製の“タフチック”(登録商標)シリーズなどが好ましく用いられる。
粒子の形状がパールネックレス状形とは、同形粒子(1次粒子)がランダムに3次元的につながった数珠状の粒子(2次粒子)であり、3次元の各方向に分岐した構造を有する粒子であり、1個のパールネックレス状形の粒子に着目すると、この粒子は数珠の球に相当する球状粒子(1次粒子)と糸に相当する粒子(1次粒子)とから構成されることをいう。パールネックレス状形の無機粒子としては、日産化学工業(株)社製の“スノーテックス”(登録商標)シリーズなどが好ましく用いられる。パールネックレス状形の有機粒子としては、東洋紡(株)社製の“タフチック”(登録商標)シリーズなどが好ましく用いられる。
(4)アンダーコート層の形成方法
前述した有機バインダー(A)、粒子(B)、並びに必要に応じて、添加剤や溶媒を含有する塗料組成物を基材上へ塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥させることによって、基材上にアンダーコート層(X)を形成することができる。
また、塗料組成物の溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一なアンダーコート層(X)を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
ここで、水系溶媒とは水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合されているものを指す。
塗料組成物の基材上への塗布方法はインラインコート法、オフコート法のどちらでも用いることができる。
インラインコート法とは、基材の製造工程内で塗布を行う方法である。具体的には、基材を構成する熱可塑性樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後、急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)熱可塑性樹脂フィルム(Aフィルム)、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)熱可塑性樹脂フィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)熱可塑性樹脂フィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
オフコート法とは、既知のウェットコーティング方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。また、ドライコーティング方法を用いてもよい。乾式コーティング方法としては、スパッタリング、蒸着などの物理気相成長や化学気相成長などが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。好ましい塗布方法は、ウェットコーティングであるグラビアコーティング、バーコーティング、スロットダイコーティングである。
[導電層(Y)]
本発明の導電積層体は、前記基材上に前記アンダーコート層(X)と導電層(Y)とを基材側からこの順で有する。導電層(Y)はカーボンナノチューブ(C)およびカーボンナノチューブ分散剤(D)を含む。導電層(Y)は例えば、タッチパネル、タッチスイッチ、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどのディスプレイ関連の電極として機能する層である。
(5)カーボンナノチューブ(C)
本発明において用いられるカーボンナノチューブ(以下、CNT)(C)は、実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであれば特に限定されず、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層CNT、多層に巻いた多層CNTいずれも適用できるが、中でもグラファイトの1枚面を2層に巻いた2層CNTが100本中に50本以上含まれているCNTであると、導電性ならびに塗布用分散液中でのCNTの分散性が極めて高くなることから好ましい。さらに好ましくは100本中75本以上が2層CNT、最も好ましくは100本中80本以上が2層CNTである。なお、2層CNTが100本中に50本含まれていることを、2層CNTの割合が50%と表示することもある。また、2層CNTは酸処理などによって表面が官能基化された場合でも導電性などの本来の機能が損なわれ難い点からも好ましい。
CNTは、例えば次のように製造される。マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒を、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させ、該反応器内にメタンを鉛直方向に供給し、メタンと前記触媒を500〜1,200℃で接触させ、CNTを製造した後、CNTを酸化処理することにより、単層〜5層のCNTを含有するCNTを得ることができる。CNTは、製造した後、酸化処理を施すことにより単層〜5層の割合を、特に2層〜5層の割合を増加させることができる。
酸化処理は例えば、硝酸処理する方法により行われる。硝酸はCNTに対するドーパントとしても作用するため、好ましい。ドーパントとは、CNTに余剰の電子を与える、または電子を奪ってホールを形成する作用をなすものであり、自由に動くことのできるキャリアを生じさせることにより、CNTの導電性を向上させるものである。硝酸処理に当たっての条件は本発明のCNTが得られる限り、特に限定されないが、通常、140℃のオイルバス中で行われる。硝酸処理の時間は特に限定されないが、5時間〜50時間の範囲であることが好ましい。
(6)カーボンナノチューブ分散剤(D)
本発明においてカーボンナノチューブ分散剤(以下、CNT分散剤)(D)としては、界面活性剤、各種分散剤(水溶性分散剤等)等を用いることができるが、分散性が高いイオン性分散剤を含むことが好ましい。イオン性分散剤としてはアニオン性分散剤やカチオン性分散剤、両性分散剤がある。CNT分散能が高く、分散性を保持できるものであればどの種類も用いることができるが、分散性、および分散保持性に優れることから、アニオン性分散剤が好ましい。なかでも、カルボキシメチルセルロースおよびその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸の塩が、CNT分散液においてCNTを効率的に分散することができるため好ましい。特に、イオン性分散剤がカルボキシメチルセルロースであることが好ましい。なかでも、CNT分散剤全体を100質量%としたとき、60質量%以上を占めることが好ましい。
本発明において、カルボキシメチルセルロース塩、ポリスチレンスルホン酸塩を用いる場合、塩を構成するカチオン性の物質としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のカチオン、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のカチオン、アンモニウムイオン、あるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、エチルアミン、ブチルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等の有機アミンのオニウムイオン、または、これらのポリエチレンオキシド付加物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
CNT分散液を調製する方法としては、原料として使用するCNTの表面改質および/またはCNT分散剤の選択により行われる。
CNT分散液を調整するためのCNT表面改質処理の方法は特に限定されないが、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの物理処理、酸処理やアルカリ処理などの化学的処理により、カルボキシル基、ヒドロキシル基等のアニオン性基をCNT側壁に導入することが好ましい。
CNT分散液を調整するためのCNT分散剤としては、CNT分散能が高く、分散性を保持できるものであればどの種類も用いることができる。中でも、分散剤として、上記記載のアニオン性分散剤が最も好ましい。アニオン性分散剤を使用した場合、CNT分散液のpHが5.5〜11であると、CNT表面を修飾しているカルボン酸など酸性官能基や、CNTの周りに位置している分散剤に含まれるカルボン酸などの酸性官能基の電離度が向上し、その結果、CNT、あるいはCNT周りの分散剤がマイナスの電位を帯びる。以上より、CNT分散液を調製する方法として、静電反発を利用するために、アニオン性のイオン性分散剤を選択することが最も好ましい。
また、前項に示した、CNTの表面改質を組み合わせることで、アニオン性分散剤に限らず、カチオン性分散剤および両性分散剤も用いることができる。
本発明では、アンダーコート層とCNT間との静電相互作用を利用するために、CNT分散液中に存在するアニオン性を有するCNTが、CNT分散液と比較してカチオン性を有するアンダーコート層の表面に引き寄せられ、静電吸着により高分散状態が実現できたと考えられる。よって、同様に、CNT分散液中に存在するカチオン性を有するCNTが、CNT分散液と比較してアニオン性を有するアンダーコート層の表面に引き寄せられ、静電吸着により高分散状態を実現することも可能である。
CNT分散剤の重量平均分子量は100以上が好ましい。重量平均分子量が100以上であればCNTとの相互作用がより効果的に生じ、CNTの分散がより良好となるためである。CNTの長さにもよるが、重量平均分子量が大きいほどCNT分散剤がCNTと相互作用し分散性が向上するため好ましい。例えば、ポリマーの場合であれば、ポリマー鎖が長くなるとポリマーがCNTにからみつき、非常に安定な分散が可能となる。しかし、重量平均分子量が大きすぎると逆に分散性が低下する場合があるので、重量平均分子量は好ましくは1,000万以下であり、さらに好ましくは、100万以下である。最も好ましい重量平均分子量の範囲は1万〜50万である。
CNT分散液のpHは、アレニウスの定義による酸性物質や塩基性物質をCNT分散液に添加することで調整できる。酸性物質は、例えば、プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸や、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。さらに、有機カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、ショウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。有機スルホン酸としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、ピレンスルホン酸などが挙げられる。この中でも好ましいのは、塗布乾燥時に揮発する揮発酸であり、例えば塩酸、硝酸などである。
塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどが挙げられる。この中でも好ましいのは、塗布乾燥時に揮発する揮発塩基であり、例えばアンモニアである。
CNT分散液のpH調整は、pHを測定しながら、上記酸性物質および/または塩基性物質を所望のpHとなるまで添加することで行う。pH測定法としては、リトマス試験紙などのpH試験紙を用いる方法、水素電極法、キンヒドロン電極法、アンチモン電極法、ガラス電極法などが挙げられるが、この中でもガラス電極法が簡便であり、必要な精度を得られるため好ましい。また、酸性物質、あるいは、塩基性物質を過剰に添加して所望のpH値を超えてしまった場合には、逆の特性を持つ物質を添加してpHを調整すればよい。かかる調整に適用する酸性物質としては硝酸が、塩基性物質としてはアンモニアが好ましい。
本発明において用いられるCNT分散液の調製に用いる分散媒は、廃液の処理が容易である等の観点から、水が好ましい。
本発明において用いるCNT分散液の調製方法は、特に限定されないが、例えば次のような手順で行うことができる。分散時の処理時間が短縮できることから、一旦、分散媒中にCNTを0.003〜0.15質量%の濃度範囲で含まれる分散液を調製した後、希釈することで、所定の濃度とすることが好ましい。本発明において、CNTに対する分散媒の質量比(すなわち、CNTの質量を1としたときの分散媒の質量)は10以下であることが好ましい。かかる好ましい範囲であると、均一に分散させることが容易である一方、導電性低下の影響が少ない。CNTに対する分散媒の質量比は0.5〜9であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、2〜3であることが特に好ましい。
CNT分散液の調製時の分散手段としては、CNTと分散剤を分散媒中で塗液製造に慣用の混合分散機(例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)を用いて混合することが挙げられる。また、これら複数の混合分散機を組み合わせて段階的に分散を行ってもよい。中でも、振動ボールミルで予備的に分散を行った後、超音波装置を用いて分散する方法が、得られる塗布用分散液中のCNTの分散性が良好であることから好ましい。
[透明導電性]
透明導電性とは透明性と導電性を兼ね備えていることを示す。透明性の指標として、カーボンナノチューブ層光吸収率(以下、単に「光吸収率」と記載することもある)が挙げられる。カーボンナノチューブ層光吸収率は、波長550nmにおける次式で表される指標である。導電性の指標としては表面抵抗値が用いられ、表面抵抗値が低い方が導電性は高い。
カーボンナノチューブ層光吸収率(550nm)=100−全光透過率(550nm)−相対反射率(550nm)。
本発明の導電積層体は、光吸収率および表面抵抗値が以下の(a)〜(h)のいずれかを満たすことが好ましい。
(a)光吸収率が1%以上、2%未満、表面抵抗値が500Ω/□以上、2,000Ω/□以下
(b)光吸収率が2%以上、3%未満、表面抵抗値が200Ω/□以上、1,500Ω/□以下
(c)光吸収率が3%以上、4%未満、表面抵抗値が100Ω/□以上、500Ω/□以下
(d)光吸収率が4%以上、5%未満、表面抵抗値が80Ω/□以上、400Ω/□以下
(e)光吸収率が5%以上、7%未満、表面抵抗値が60Ω/□以上、300Ω/□以下
(f)光吸収率が7%以上、9%未満、表面抵抗値が50Ω/□以上、200Ω/□以下
(g)光吸収率が9%以上、11%未満、表面抵抗値が40Ω/□以上、150Ω/□以下
(h)光吸収率が11%以上、20%未満、表面抵抗値が30Ω/□以上、100Ω/□以下。
なお、透明性の指標として代表的なものは、光吸収率であり、導電層を1層含んだ透明導電積層体の光吸収率が実用的な意味がある。
また、導電性の指標として代表的なものは、導電積層体の表面抵抗値であり、導電層を1層含んだ導電積層体の表面抵抗値が実用的な意味がある。
かかる導電性(表面抵抗値)、及び、透明性(カーボンナノチューブ層光吸収率)は、カーボンナノチューブ塗布量により調整することができる。しかしながら、カーボンナノチューブ塗布量が少ないと、導電性は低くなる一方、透明性は高くなり、塗布量が多いと導電性は高くなる一方、透明性は低くなる。すなわち、両者はトレードオフの関係にあり、両者を共に満たすことは困難である。かかる関係があるため、透明導電性を比較するためには、どちらかの指標を固定化してその上でもう一方の指標を比較する必要がある。
より好ましくは光吸収率および表面抵抗値が以下の(a1)〜(h1)のいずれかを満たすことである。
(a1)光吸収率が1%以上、2%未満、表面抵抗値が500Ω/□以上、1,500Ω/□以下
(b1)光吸収率が2%以上、3%未満、表面抵抗値が200Ω/□以上、1,200Ω/□以下
(c1)光吸収率が3%以上、4%未満、表面抵抗値が100Ω/□以上、450Ω/□以下
(d1)光吸収率が4%以上、5%未満、表面抵抗値が80Ω/□以上、350Ω/□以下
(e1)光吸収率が5%以上、7%未満、表面抵抗値が60Ω/□以上、250Ω/□以下
(f1)光吸収率が7%以上、9%未満、表面抵抗値が50Ω/□以上、150Ω/□以下
(g1)光吸収率が9%以上、11%未満、表面抵抗値が40Ω/□以上、120Ω/□以下
(h1)光吸収率が11%以上、20%未満、表面抵抗値が30Ω/□以上、80Ω/□以下。
さらに好ましくは光吸収率と表面抵抗値が以下の(a2)〜(h2)のいずれかを満たすことである。
(a2)光吸収率が1%以上、2%未満、表面抵抗値が500Ω/□以上、1,200Ω/□以下
(b2)光吸収率が2%以上、3%未満、表面抵抗値が200Ω/□以上、1,000Ω/□以下
(c2)光吸収率が3%以上、4%未満、表面抵抗値が100Ω/□以上、400Ω/□以下
(d2)光吸収率が4%以上、5%未満、表面抵抗値が80Ω/□以上、300Ω/□以下
(e2)光吸収率が5%以上、7%未満、表面抵抗値が60Ω/□以上、200Ω/□以下
(f2)光吸収率が7%以上、9%未満、表面抵抗値が50Ω/□以上、130Ω/□以下
(g2)光吸収率が9%以上、11%未満、表面抵抗値が40Ω/□以上、100Ω/□以下
(h2)光吸収率が11%以上、20%未満、表面抵抗値が30Ω/□以上、70Ω/□以下。
[耐湿度依存性]
本発明の導電積層体は、25℃、相対湿度30%〜90%における表面抵抗値変化率が20%以下であることが好ましい。ここで相対湿度30%〜90%における表面抵抗値変化率とは、実施例の項で詳細を説明するが、相対湿度30%で20分、50%で20分、90%で30分、30%で20分の順で保持し、抵抗値の経時変化を測定したときに、測定した抵抗値の最小値をm、最大値をMとしたとき、以下の式(1)で求められる表面抵抗値変化率のことである。
表面抵抗値変化率=(M−m)/m ×100 ・・・・・(1)。
表面抵抗値変化率を20%以下とすることでタッチパネルとした際の誤操作を防止できる点で好ましい。より好ましくは表面抵抗値変化率が15%以下、さらに好ましくは10%以下である。
[導電積層体の製造方法]
本発明の導電積層体を製造する方法としては、基材上に、ぬれ張力が76〜105mN/mであるアンダーコート層(X)を設けるアンダーコート層(X)形成工程と、カーボンナノチューブ(C)およびカーボンナノチューブ分散剤(D)を含む分散液をアンダーコート層(X)上に設け導電層(Y)を形成する導電層(Y)形成工程とを有する導電積層体の製造方法が好ましい。以下で各工程を説明する。
[アンダーコート層(X)形成工程]
前述した[アンダーコート層(X)]の項で説明したとおり、有機バインダー(A)、粒子(B)、並びに必要に応じて、添加剤や溶媒を含有する塗料組成物を基材上へ塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥させることによって、基材上にぬれ張力が76〜105mN/mであるアンダーコート層(X)を形成することができる。
[導電層(Y)形成工程]
本発明の導電積層体において、導電層(Y)はCNT分散液をアンダーコート層の上に塗布する塗布工程と、その後分散媒を除去する乾燥工程を経て形成される。塗布工程では、前記方法により得たCNT分散液を、基材上に設けたアンダーコート層の上に塗布するとき、親水性の部位を持ちCNTを取り巻くCNT分散剤が、親水性を有するアンダーコート層の表面に引き寄せられると考えられる。
また、その後分散媒を乾燥させてCNTをアンダーコート層上に固定して導電層(Y)を形成するが、分散媒がアンダーコート層の上に残存しており、CNT分散剤(D)が導電層(Y)からアンダーコート層の表面へ移動可能な状態である間は、塗布時と同様、CNT分散剤が親水基を有するアンダーコート層の表面に引き寄せられ、吸着されると考えられる。
このように、アンダーコート層(X)に分散剤が引き寄せられることで、導電層(Y)のCNT分散剤量が低下しているものと考えられる。かかるアンダーコート層(X)へのCNT分散剤が引き寄せられる現象は、ぬれ張力が76〜105mN/mである親水性のアンダーコート層を用いることにより、より好ましく進行する。また、CNT分散液を塗布厚み1μm〜50μmの範囲で塗布し、分散媒が導電層(Y)中から乾燥によって除去される時間が0.1秒〜100秒の範囲であれば、かかるメカニズムによる分散剤の吸着をより効果的に生じさせることができるため好ましい。
また、CNT分散液を基材上に塗布後乾燥させて作製する導電積層体においては、塗布後の乾燥時の分散液の濃度上昇や、CNT分散液と基材との間に生じる静電反発力により、CNTのバンドル化が起こる場合がある。ところが、分散液中においてCNTをマイナスに帯電させるとともに、かかるCNT分散液を、アンダーコート層上に塗布して乾燥させることにより、CNT分散液中に分散したCNTがアンダーコート層に静電吸着され、基材上での乾燥時に起こっていたCNTのバンドル化を抑制することができるため好ましい。これにより、透明導電性に優れた導電積層体を得ることができる。
本発明の導電積層体において、分散液を基材上に塗布する方法は特に限定されない。既知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。最も好ましい塗布方法は、グラビアコーティング、バーコーティング、スロットダイコーティングである。
CNT分散液を基材上に塗布する際の塗布厚みは、CNT分散液の濃度にも依存するため、望む表面抵抗値が得られるように適宜調整すればよい。本発明におけるCNT塗布量は、導電性を必要とする種々の用途を達成するために、容易に調整可能である。例えば、塗布量が0.1mg/m〜30mg/mであれば、以下で示すオーバーコート層形成後の光吸収率を20%以下とすることができるため好ましい。
[オーバーコート層]
本発明の導電積層体は導電層(Y)の上にオーバーコート層を有することが好ましい。なお、オーバーコート層は透明性を向上させるために透明被膜からなることが好ましい。オーバーコート層を有することにより、さらに透明導電性や耐熱性安定性、耐湿熱安定性を向上できるため好ましい。
オーバーコート層の材料としては有機材料、無機材料ともに用いることができるが、抵抗値安定性の観点から無機材料が好ましい。無機材料としては、シリカ、酸化錫、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物が挙げられるが、抵抗値安定性の観点からシリカが好ましい。
本発明の導電積層体において、オーバーコート層を導電層(Y)の上に設ける方法は特に限定されない。既知のウェットコーティング方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、バーコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷、または他の種類の印刷などが利用できる。また、乾式コーティング方法を用いてもよい。乾式コーティング方法としては、スパッタリング、蒸着などの物理気相成長や化学気相成長などが利用できる。またオーバーコート層を導電層の上に設ける操作は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の方法を組み合わせてもよい。好ましい方法は、ウェットコーティングであるグラビアコーティング、バーコーティング、スロットダイコーティングである。
ウェットコーティングを用いてシリカ層を形成する方法として、有機シラン化合物を用いることが好ましく、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシランなどの有機シラン化合物を加水分解して作製したシリカゾルを溶媒に溶解したものを塗布液として、前記ウェットコーティングを行い、溶媒乾燥時に、シラノール基同士の脱水縮合を生じさせ、シリカ薄膜を形成させる方法が挙げられる。
オーバーコート層の厚みは、塗布液中のシリカゾル濃度および塗布時の塗布厚みを調整することで制御する。オーバーコート層の厚みとしては、10nm以上200nm以下とすることがより好ましい。オーバーコート層の厚みが10nmより薄いとCNTの導電性を向上させている硝酸などのドーパントの飛散を抑えられず耐熱性が低下する場合がある。オーバーコート層の厚みが200nmより厚いとCNTが有るところと無いところの反射光量の差が大きくなり骨見えする場合がある。
[用途]
本発明の導電積層体は、例えば、タッチパネル、タッチスイッチ、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどのディスプレイ関連の電極として好ましく用いることができる。
すなわち、本発明の導電積層体または本発明の製造方法によって得られた導電積層体は透明導電性に優れるため、タッチパネルやタッチスイッチ等が好適な用途として挙げられる。
以下、本発明の導電積層体および本発明の導電積層体の製造方法を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<各種評価方法>
(1)導電積層体の光吸収率
5cm×10cmにサンプリングした導電積層体を(株)島津製作所製の紫外可視赤外分光光度計UV−3150を用いて測定した。導電積層体の導電層が形成された側から垂直に光を入射させ、550nmの全光透過率と相対反射率を測定して下式により光吸収率を算出することで、導電積層体の光吸収率を求めた。
光吸収率(550nm)=100−全光透過率(550nm)−相対反射率(550nm)。
(2)導電積層体の表面抵抗値
5cm×10cmにサンプリングした導電積層体のCNT層側の中央部にプローブを密着させて、4端子法により室温下で抵抗値を測定した。使用した装置は、ダイアインスツルメンツ(株)製の抵抗率計MCP−T360型、使用したプローブはダイアインスツルメンツ(株)製の4探針プローブMCP−TPO3Pである。
(3)ぬれ張力測定
アンダーコート層のぬれ張力の測定はISO8296(2003) Plastics− Film and sheeting−Determination of wetting tensionで規定されている方法に従った。
表面張力の異なる、各種のぬれ張力試験用混合液を用意した。後述するアンダーコート層を形成した後、室温23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、アンダーコート層表面にぬれ張力試験用混合液を、綿棒又はブラシを用いて速やかに広げた。ぬれ張力の有無の判定は、ぬれ張力試験用混合液の液膜を観察し、2秒後の液膜の状態で行った。2秒後の液膜が破れを生じないで塗布された状態を保っているものは、ぬれている、すなわちその表面張力のぬれ張力を有することになる。2秒後の液膜が破れを生じ、塗布された状態を保っていないものは、ぬれていないことになる。ぬれている場合は、さらに、次に表面張力の高いぬれ張力試験用混合液に進み、また逆に、ぬれていない場合は、次の表面張力の低い混合液に進む。この操作を繰り返して、最も高いぬれ張力の値を定めた。なお、ぬれ張力試験用混合液として、Arcotest社製テストインクを用いた。
(4)タッチパネルの骨見え
骨見え評価をするため、まずはパターンを有する導電積層体の作成を行った。導電積層体を波長1,064nm、1パルス時間15ns、1パルスエネルギー25μJ、パルス周波数200Hz、操作速度2,000mm/sの条件で、パターン幅を調整するためにレーザーのスポット径を25μmに設定してレーザーエッチングした。
次に、上記、パターンを有する導電積層体を用いてタッチパネルの作成を実施した。透明粘着フィルム((株)巴川製紙所製TI14A、厚み25μm)を用いて、1枚の導電積層体の導電層がある表面と、1枚のハードコートフィルム(東レフィルム加工(株)製“タフトップ”(登録商標)THS、厚み50μm)のハードコートがない表面を向かい合せてラミネート加工した。
上記のとおり、タッチパネルを作成し、タッチパネルの真上に50cmの距離で三波長蛍光管を設置した。次にタッチパネルに対し、観察者が30cmの距離に立ち、タッチパネルと三波長蛍光管間で結んだ線と、タッチパネルと観察者を結んだ線のなす角が45度になるように観察を行った。5人の観察者のうち5人全員が骨見えが見えない場合はS、4人が骨見えが見えず、1人が骨見えが見える場合はA、1人以上3人以下が骨見えが見えず、2人以上が骨見えが見える場合はB、5人全員が骨見えが見える場合はCとした。
(5)中心面平均粗さSRa
三次元表面粗さ測定機(小坂研究所社製)を用いて、以下の条件で各層表面について測定した。
システム:三次元表面粗さ解析システム「i−Face model TDA31」
X軸測定長さ/ピッチ:500μm/1.0μm
Y軸測定長さ/ピッチ:400μm/5.0μm
測定速度:0.1mm/s
測定環境:温度23℃、相対湿度65%RH、大気中。
(6)耐湿度依存性
25℃、相対湿度30%〜90%における表面抵抗値変化率、すなわち耐湿度依存性の評価は以下のようにして実施した。抵抗値は5cm×10cmにサンプリングした導電積層体の端部5mm幅に太陽インキ株式会社製導電ペースト“ECM” (登録商標)−100AFを80μmの厚みになるように塗布し、90℃で60分加熱乾固させ、その乾固した導電ペースト部に株式会社カスタム製デジタルテスタCDM−17Dを用いて測定した。上記サンプルをエスペック株式会社製SH−221小型環境試験機内に入れ、相対湿度30%で20分、50%で20分、90%で30分、30%で20分の順で保持し、抵抗値の経時変化を測定した。各相対湿度・温度で所定時間保持した後に測定した各抵抗値のうち最小値をm、最大値をMとした時、下記の式(1)に従って表面抵抗値変化率を求めた。
表面抵抗値変化率=(M−m)/m ×100 ・・・・・(1)。
<基材>
各実施例及び比較例に使用した基材を以下に示す。
(1)基材A
・ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”(登録商標)U48)
・厚み50μm。
(2)基材B
・ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学(株)製 “ユーピロン”(登録商標)FE−2000)
・厚み100μm。
(3)基材C
実質的に粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸PETフィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸PETフィルムとした。
<バインダー>
各実施例および比較例に用いた各バインダーを以下に示す。
(1)有機バインダー(A):
親水性官能基を有するポリエステル樹脂を含む有機バインダー(高松油脂(株)製 A640−GEX 固形分濃度20質量%、水溶媒)を水及びイソプロピルアルコール(以下、IPAと記載)で希釈し、水とIPAとの比率が質量比で7:3、樹脂の固形分濃度が5質量%になるようにした。
(2)有機バインダー(B):
親水性官能基を有するアクリル樹脂を含む有機バインダー(三井化学(株)製 “ノストラ”(登録商標)DBH 固形分濃度40質量%、メタノール 1−メトキシ−2プロパノール(以下、PGMEと記載)溶媒)をメタノール及びPGMEで希釈し、メタノールとPGMEとの比率が質量比で5:5、樹脂の固形分濃度が20質量%になるようにした。
(3)有機バインダー(C)
親水性官能基を有するポリエステル樹脂と親水性官能基を有するアクリル樹脂を含む有機バインダー(高松油脂(株)製 A645−GEX 固形分濃度20質量%、水溶媒)を水及びIPAで希釈し、水とIPAとの比率が質量比で7:3、樹脂の固形分濃度が5質量%になるようにした。
(4)有機バインダー(D)
親水性官能基を有するポリエステル樹脂と親水性官能基を有するアクリル樹脂を含む有機バインダー(高松油脂(株)製 A647−GEX 固形分濃度20質量%、水溶媒)を水及びIPAで希釈し、水とIPAとの比率が質量比で7:3、樹脂の固形分濃度が5質量%になるようにした。
(5)無機バインダー(E)
直径約30nmの親水シリカ微粒子とポリシリケートを含む無機バインダー(司化研(株)製 メガアクア親水DMコート DM30−26G−N1 固形分濃度5質量%、IPA溶媒)をIPAで希釈し、樹脂の固形分濃度が0.4質量%になるようにした。
(6)無機バインダー(F)
エチルシリケートを含む無機バインダー(コルコート(株)製 “コルコート”(登録商標)N103X 固形分濃度2質量%、IPA溶媒)をIPAで希釈し、樹脂の固形分濃度が1質量%になるようにした。
(7)有機バインダー(G)
親水性官能基を有さないポリエステル樹脂を含む有機バインダー(高松油脂(株)製 ペスレジンS−180 固形分濃度20質量%、水溶媒)を水及びIPAとで希釈し、水とIPAとの比率が質量比で7:3、樹脂の固形分濃度が5質量%になるようにした。
(8)有機バインダー(H):テレフタル酸50質量部、イソフタル酸50質量部、エチレングリコール50質量部、ネオペンチルグリコール30質量部を重合触媒である三酸化アンチモン0.3質量部と酢酸亜鉛0.3質量部とともに窒素パージした反応器に仕込み、水を除去しながら常圧下で190〜220℃で12時間重合反応を行い、ポリエステルグリコールを得た。次に、得られたポリエステルグリコールに5−ナトリウムスルホイソフタル酸を5質量部、溶媒としてキシレンを反応器に仕込み、0.2mmHgの減圧下、260℃にてキシレンを留去しつつ、3時間重合させ、親水性官能基を有するポリエステル樹脂(B)を得た。このポリエステル樹脂(B)を、アンモニア水およびブチルセルロースを含む水に溶解させた。
<架橋剤>
(1)架橋剤A
オキサゾリン基含有ポリマー(日本触媒(株)製 “エポクロス”(登録商標)WS−700)。
(2)架橋剤B
オキサゾリン基含有ポリマー(日本触媒(株)製 “エポクロス”(登録商標)WS−500)。
(3)架橋剤C
オキサゾリン基含有ポリマー(日本触媒(株)製 “エポクロス”(登録商標)WS−300)。
<粒子>
(1)粒子A
粒径10nm〜15nm コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製 “スノーテックス”(登録商標) ST−O、球形)。
(2)粒子B
粒径40nm〜50nm コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製 “スノーテックス”(登録商標) ST−OL、球形)。
(3)粒子C
粒径150nm スチレン/アクリル粒子(日本合成化学化学工業(株)製 “モビニール”(登録商標) 972、球形)。
(4)粒子D
粒径10〜15nm コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製 “オルガノシリカゾル” PGM−ST、球形)。
(5)粒子E
粒径4nm〜6nm コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製 “スノーテックス”(登録商標) ST−OXS、球形)。
(6)粒子F
粒径40nm〜100nm コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製 “スノーテックス”(登録商標) ST−OUP、鎖状形)。
(7)粒子G
粒径70nm〜110nm コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製 “スノーテックス”(登録商標) ST−PS−SO、パールネックレス状形)。
(8)粒子H:コロイダルシリカ“スノーテックス”(登録商標)OL(平均1次粒径45nm、日産化学工業(株)製)表面に、以下(i)〜(iv)の手法で、水酸基を導入したアクリル樹脂をシリカ粒子表面に修飾した。
(i)無機酸化物とアクリル樹脂とをあらかじめ混合した混合物を溶媒中に添加して分散する方法。
(ii)溶媒中に無機酸化物とアクリル樹脂とを順に添加して分散する方法。
(iii)別々の溶媒中にそれぞれ無機酸化物とアクリル樹脂とをあらかじめ分散し、得られたそれぞれの分散体を混合する方法。
(iv)溶媒中に無機酸化物を分散した後、得られた分散体にアクリル樹脂を添加する方法。
<CNT分散液>
各実施例および比較例に用いたCNT分散液の製造方法を以下に示す。
(1)触媒調製例:マグネシアへの触媒金属塩の担持
クエン酸アンモニウム鉄(和光純薬工業(株)製)2.46gをメタノール(関東化学(株)製)500mLに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷化学工業(株)製 MJ−30)を100.0g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理し、懸濁液を減圧下、40℃で濃縮乾固した。得られた粉末を120℃で加熱乾燥してメタノールを除去し、酸化マグネシウム粉末に金属塩が担持された触媒体を得た。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、20〜32メッシュ(0.5〜0.85mm)の範囲の粒径のものを回収した。得られた触媒体に含まれる鉄含有量は0.38質量%であった。また、かさ密度は、0.61g/mLであった。前記の操作を繰り返し、以下の実験に供した。
(2)CNT集合体製造例:CNT集合体の合成
図1に示した装置を用いてCNTの合成を行った。反応器503は内径75mm、長さは1,100mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板502を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管508、上部には廃ガス管506を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器として3台の電気炉501を具備する。また反応管内の温度を検知するために熱電対505を具備する。
触媒調製例で調製した固体触媒体132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層504を形成した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラー507を用いて窒素ガスを16.5L/分で供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラー507を用いてメタンガスを0.78L/分で60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際の固体触媒体の質量をメタンの流量で割った接触時間(W/F)は、169分・g/L、メタンを含むガスの線速が6.55cm/秒であった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/分通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とCNTを含有するCNT含有組成物を取り出した。
(3)CNT集合体の精製および酸化処理
CNT集合体製造例で得られた触媒体とCNTを含有するCNT含有組成物を130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2,000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままCNT含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のCNT含有組成物全体の質量は102.7gであった(CNT含有組成物濃度:3.12質量%)。
得られたウェット状態のCNT含有組成物の乾燥質量分に対して、約300倍の質量の濃硝酸(和光純薬工業(株)製、1級、Assay60〜61質量%)を添加した。その後、約140℃のオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、CNT含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のCNT集合体を得た。このとき水を含んだウェット状態のCNT組成物全体の質量は3.351gあった(CNT含有組成物濃度:5.29質量%)。
(4)CNT分散液の調製
得られたウェット状態のCNT集合体(乾燥質量換算で25mg)、6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、セロゲン7A(重量平均分子量:20万))水溶液1.04g、イオン交換水0.8g、ジルコニアビーズ(東レ(株)社製、“トレセラム”(登録商標)、ビーズサイズ:0.8mm)13.3gを容器に加え、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)製)を用いてpH10に調整した。(分散剤/CNT質量比=2.5)この容器を振動ボールミル((株)入江商会社製、VS−1、振動数:1,800cpm(60Hz))を用いて2時間振盪させ、CNTペーストを調製した。
次にこのCNTペーストをCNTの濃度が0.15質量%となるようにイオン交換水で希釈し、その希釈液10gに対して再度28質量%アンモニア水溶液でpH10に調整した。その水溶液を超音波ホモジナイザー(家田貿易(株)製、VCX−130)の出力を20Wとし、1.5分間(0.6kW・分/g)、氷冷下分散処理した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機((株)トミー精工、MX−300)にて10,000G、15分遠心処理し、CNT分散液9gを得た。その後、水を添加して終濃度でCNT集合体の濃度が0.03質量%となるように調製してCNT分散液とした。
(実施例1〜40、比較例1〜3)
有機バインダーA〜D、G及び無機バインダーE、Fと粒子A〜Gを、表に示す配合比で混合し塗料を調整した。作成した塗料を材質がステンレス(sus)のシム(シム厚み50μm)を装着したスリットダイコート(塗工幅550mm)を使用して搬送速度10m/分で基材の片面に塗布、乾燥し、アンダーコート層を積層した。なお、有機バインダーBを用いた場合のみ、窒素雰囲気下で照射量95.1mJ/cmで紫外線照射を実施して硬化させた。また、有機バインダーGを用いた場合は、アンダーコート層のぬれ性不足により、CNT分散液のコーティングができないため、基材表面をE値100W・sの条件でコロナ処理を施した。
次に、CNT分散液を材質がステンレス(sus)のシム(シム厚み50μm)を装着したスリットダイコート(塗工幅550mm)を使用してアンダーコート層の上に塗布、100℃で1分間乾燥し導電成分を積層形成した。さらに導電層が積層されている側に前記無機バインダーFを材質がステンレス(sus)のシム(シム厚み50μm)を装着したスリットダイコート(塗工幅550mm)を使用して10m/分の塗工速度で表に示す条件で塗布、125℃で1分間乾燥し、積層形成した。
(実施例41〜52)
有機バインダーHと粒子B、Hを、表に示す配合比で混合し塗料を調整した。作成した塗料を空気中でコロナ放電処理を施した基材C(一軸延伸フィルム)のコロナ放電処理面にバーコートを用いて塗布した。塗布した一軸延伸フィルムの幅方向両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導き、雰囲気温度75℃とした後、引き続いてラジエーションヒーターを用いて雰囲気温度を110℃とし、次いで雰囲気温度を90℃として、コーティング用組成物を乾燥させ、組成物層を形成せしめた。引き続き連続的に120℃の加熱ゾーン(延伸ゾーン)で幅方向に3.5倍延伸し、続いて230℃の熱処理ゾーン(熱固定ゾーン)で20秒間熱処理を施し、結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいてPETフィルムの厚みは50μmであった。この方法で作製したアンダーコート層の厚みは約40nmであった。
(比較例4〜5)
CNT分散液を材質がステンレス(sus)のシム(シム厚み50μm)を装着したスリットダイコート(塗工幅550mm)を使用して基材A、Bの上に塗布、100℃で1分間乾燥し導電成分を積層形成した。基材のぬれ性不足により、CNT分散液のコーティングができないため、基材表面にコロナ処理を施した。さらに導電層が積層されている側に前記無機バインダーFを材質がステンレス(sus)のシム(シム厚み50μm)を装着したスリットダイコート(塗工幅550mm)を使用して10m/分の塗工速度、表に示す条件で塗布、125℃で1分間乾燥し、積層形成した。
評価結果および詳細な製造条件については表1〜6に記載する。バインダーの含有量[質量%]とは、アンダーコート層全体を100質量%としたときのバインダーの含有量[質量%]である。粒子の含有量[質量%]とは、アンダーコート層全体を100質量%としたときの粒子の含有量[質量%]である。仕込み量[質量部]とは、バインダーの成分を100質量部としたときの架橋剤の仕込み量[質量部]である。
Figure 2015137195
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透明導電性に優れた本発明の導電積層体は、例えば、タッチパネル、タッチスイッチ、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどのディスプレイ関連の電極として好ましく用いることができる。
501:電気炉
502:石英焼結板
503:反応器
504:触媒層
505:熱電対
506:廃ガス管
507:マスフローコントローラー
508:ガス導入管
509:炭化水素
510:不活性ガス

Claims (13)

  1. 基材上にアンダーコート層(X)と導電層(Y)とを基材側からこの順で有し、かつ以下の(i)〜(iii)を満たすことを特徴とする導電積層体。
    (i)アンダーコート層(X)が有機バインダー(A)および粒子(B)を含む
    (ii)アンダーコート層(X)に含まれる粒子(B)の含有量が、アンダーコート層(X)全体100質量%に対して15質量%以上95質量%以下である
    (iii)導電層(Y)がカーボンナノチューブ(C)およびカーボンナノチューブ分散剤(D)を含む
  2. 前記導電層(Y)の光吸収率および表面抵抗値が以下の(a)〜(h)のいずれかを満たすことを特徴とする請求項1に記載の導電積層体。
    (a)光吸収率が1%以上、2%未満、表面抵抗値が500Ω/□以上、2,000Ω/□以下
    (b)光吸収率が2%以上、3%未満、表面抵抗値が200Ω/□以上、1,500Ω/□以下
    (c)光吸収率が3%以上、4%未満、表面抵抗値が100Ω/□以上、500Ω/□以下
    (d)光吸収率が4%以上、5%未満、表面抵抗値が80Ω/□以上、400Ω/□以下
    (e)光吸収率が5%以上、7%未満、表面抵抗値が60Ω/□以上、300Ω/□以下
    (f)光吸収率が7%以上、9%未満、表面抵抗値が50Ω/□以上、200Ω/□以下
    (g)光吸収率が9%以上、11%未満、表面抵抗値が40Ω/□以上、150Ω/□以下
    (h)光吸収率が11%以上、20%未満、表面抵抗値が30Ω/□以上、100Ω/□以下
  3. 前記粒子(B)が無機粒子および/または有機粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電積層体。
  4. 前記粒子(B)の形状が球形、鎖状形およびパールネックレス状形からなる群より選ばれる少なくとも1つの形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電積層体。
  5. 前記有機バインダー(A)が親水性官能基を有するポリエステル樹脂および/または親水性官能基を有するアクリル樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電積層体。
  6. 前記カーボンナノチューブ分散剤(D)がイオン性分散剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電積層体。
  7. 前記イオン性分散剤がカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項6に記載の導電積層体。
  8. 前記導電層(Y)上にオーバーコート層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の導電積層体。
  9. 25℃、相対湿度30%〜90%における表面抵抗値変化率が20%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の導電積層体。
  10. 基材上に、ぬれ張力が76〜105mN/mであるアンダーコート層(X)を設けるアンダーコート層(X)形成工程と、カーボンナノチューブ(C)およびカーボンナノチューブ分散剤(D)を含む分散液をアンダーコート層(X)上に設け導電層(Y)を形成する導電層(Y)形成工程とを有することを特徴とする導電積層体の製造方法。
  11. 前記アンダーコート層(X)の中心面平均粗さSRaが2〜15nmであることを特徴とする請求項10に記載の導電積層体の製造方法。
  12. 請求項1〜8のいずれかに記載の導電積層体または請求項10もしくは11に記載の導電積層体の製造方法によって得られた導電積層体を用いたタッチパネル。
  13. 請求項1〜8のいずれかに記載の導電積層体または請求項10もしくは11に記載の導電積層体の製造方法によって得られた導電積層体を用いたタッチスイッチ。
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