JPWO2015107991A1 - 産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙 - Google Patents
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Abstract
本発明は、オフセット印刷などの従来の印刷機に対する印刷適性を有しつつ、産業用インクジェット印刷機の印刷速度に対応する印刷適性を有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙を提供することを課題とする。本発明の一つの態様は、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面上に、バインダー、カチオン性化合物、および、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムを、少なくとも含有する塗工層とを有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙である。
Description
本発明は、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙に関する。
インクジェット記録方式の技術が急速に進歩し、多数枚の印刷物を製造するための産業用または商業用の印刷機にインクジェット記録方式が採用された、産業用インクジェット印刷機が各種の文献に開示されている(例えば、特許文献1および2、非特許文献1および2参照)。これら産業用インクジェット印刷機は、例えば、大日本スクリーン製造社のTruepressJet、コダック社のProsperおよびVERSAMARK、富士フイルム社のJetPressなどの名称で販売されている。
このような産業用インクジェット印刷機は、印刷諸条件に依存するものの、所謂SOHO向けインクジェットプリンターや大判プロッターに比べてカラー印刷速度が10倍〜数十倍と速く、印刷速度が15m/分以上であり、より高速なタイプでは印刷速度は60m/分を超える。
産業用インクジェット印刷機は、可変情報を取り扱うことができるためにオンデマンド印刷に適応することができる。印刷業者は、固定情報をグラビア印刷機やオフセット印刷機など従来の印刷機で印刷し、可変情報を産業用インクジェット印刷機で印刷する形態を採用する場合が多い。すなわち、一枚の印刷用紙に対して、オフセット印刷機など従来の印刷機による印刷と、産業用インクジェット印刷機による印刷との両方が行われることがある。
しかしながら、従来のオフセット印刷用塗工紙などの印刷用塗工紙は産業用インクジェット印刷機に対する適性が不十分であり、インク定着性不足またはインク吸収容量不足によって商品として十分な画質が得られない。従来のインクジェットプリンター専用紙はオフセット印刷機など従来の印刷機に対する適性が不十分であり、塗工層強度不足からブランケットパイリングなど印刷不良が発生して商品として十分な画質が得られない。また、従来のインクジェットプリンター専用紙は産業用インクジェット印刷機のような印刷速度を想定していないために、インク吸収速度不足または適度なインク滴拡散の不足が発生する場合がある。そして、それぞれの要因によって画像の汚れまたはベタ印刷領域の白抜けが認められ、商品として十分な画質を有する印刷物が得られない場合がある。
なお、印刷前にインク定着剤を記録紙に供給する形式のインクジェット用記録紙において、シート状基材の少なくとも片面に無機顔料とバインダーを主体とした塗工層を設けた記録紙であり、表面近傍の塗工層の熱重量測定にて求めた無機分/有機分の比がいずれも97/3〜70/30の範囲にあり、全塗工層の無機分全体を100質量部とした時、無機分として重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリンのいずれかもしくはこれらの顔料を二成分以上混合したものが95質量部を超えて含まれており、顔料全体の平均粒子径が0.02μm〜2.00μmであるインクジェット用記録紙が公知である(例えば、特許文献3参照)。
さらに、オフセット印刷適性に優れ、且つ水性顔料インクを用いた高速インクジェットプリンターによる印刷適性も備えたハイブリッド印刷に適したグロス系印刷用顔料塗被紙として、内側顔料塗被層と最表顔料塗被層を有し、最表顔料塗被層が、顔料として平均短径0.8μm以下である軽質炭酸カルシウムと、バインダーとしてスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、若しくはスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスおよびカゼイン、若しくはスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスおよびスチレンアクリル共重合体ラテックスとを含有し、最表顔料塗被層に水溶性多価金属塩の水溶液を塗布し、乾燥されたグロス系印刷用顔料塗被紙が公知である(例えば、特許文献4〜7参照)。
徳増路子著「B2判印刷本紙対応インクジェット印刷機」(「印刷雑誌」、印刷学会出版部発行、2010年8月号(Vol.93)、21頁〜24頁)
宮城安利著「オフセット品質のインクジェット印刷機」(「印刷雑誌」、印刷学会出版部発行、2010年8月号(Vol.93)、25頁〜29頁)
特許文献3に記載されるが如くのインクジェット用記録紙は、印刷前にインク定着剤を記録紙に供給する形式ではない、更に印刷速度の速い産業用インクジェット印刷機と、オフセット印刷機などの従来の印刷機との両方において必ずしも印刷適性が十分とはいえない。
特許文献4〜7に記載されるが如くのグロス系印刷用顔料塗被紙は、オフセット印刷機に対する印刷適性を有するものの、実際の産業用インクジェット印刷機に対して十分に検討されていないため、産業用インクジェット印刷機に対する印刷適性においてさらなる向上が求められる。
さらに、産業用インクジェット印刷機で印刷された印刷物は、画質的に問題がなくとも、印刷物を手で擦るとインクが剥がれるという耐擦過性に劣る場合がある。耐擦過性に劣ると印刷物は商品として使用できない。耐擦過性は、印刷後の印刷物の取扱性に影響するために印刷速度の増大と比例して重要性が増す。
上記の問題から、現時点では産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙が十分に確立されていない。特に、産業用インクジェット印刷機とオフセット印刷機などの従来の印刷機との両方に印刷適性を有する印刷用塗工紙が求められている。さらに、産業用インクジェット印刷機を用いて、画質に拘らないチラシ類に比べて優れた画質を求める小冊子類、カタログ類またはパンフレット類などの商品として十分な画質を有する印刷物を製造できる産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙が求められている。
本発明の目的は、オフセット印刷などの従来の印刷機に対する印刷適性を有しつつ、産業用インクジェット印刷機の印刷速度に対応する印刷適性を有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙を提供することである。
本発明の目的は、下記に示す構成の本発明の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙によって達成される。
<1>支持体と、該支持体の少なくとも一方の面上に、バインダー、カチオン性化合物、および、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムを、少なくとも含有する塗工層とを有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
<2>前記塗工層が1層で構成されている、<1>に記載の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
<3>前記重質炭酸カルシウムの塗工層中の含有量が、塗工層中の総顔料100質量部に対して60質量部以上である、<1>または<2>に記載の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
<3>前記重質炭酸カルシウムの塗工層中の含有量が、塗工層中の総顔料100質量部に対して60質量部以上である、<1>または<2>に記載の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
<4>支持体と、支持体の少なくとも一方の面に顔料およびバインダーを主成分とする2層以上の塗工層とを有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙であって、前記支持体を基準として最も外側に設けられる最外層における顔料の少なくとも1種が、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムであり、該重質炭酸カルシウムの最外層中の含有量が最外層中の総顔料100質量部に対して60質量部以上であり、前記最外層がカチオン性化合物を含有する、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
<5>前記塗工層がカチオン性化合物としてカチオン性樹脂および水溶性多価陽イオン塩を含有し、該カチオン性樹脂がアルキルアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物またはジアリルアミン−アクリルアミド共重合体であり、前記水溶性多価陽イオン塩がカルシウム塩である、<1>〜<3>のいずれかに記載の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
<6>前記最外層が前記カチオン性化合物としてカチオン性樹脂および水溶性多価陽イオン塩を含有し、該カチオン性樹脂がアルキルアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物またはジアリルアミン−アクリルアミド共重合体であり、前記水溶性多価陽イオン塩がカルシウム塩である、<4>に記載の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
<7>ホウ酸化合物及びホウ酸塩化合物を含まない支持体と、該支持体の少なくとも一方の面上に、バインダー、カチオン性化合物、および、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムを、少なくとも含有する塗工層とを有する、<1>〜<3>および<5>のいずれかに記載の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
<8>ホウ酸化合物及びホウ酸塩化合物を含まない支持体と、支持体の少なくとも一方の面に顔料およびバインダーを主成分とする2層以上の塗工層とを有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙であって、前記支持体を基準として最も外側に設けられる最外層における顔料の少なくとも1種が、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムであり、該重質炭酸カルシウムの最外層中の含有量が最外層中の総顔料100質量部に対して60質量部以上であり、前記最外層がカチオン性化合物を含有する、<4>又は<6>に記載の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
本発明により、オフセット印刷などの従来の印刷機に対する印刷適性を有しつつ、産業用インクジェット印刷機の印刷速度に対応する印刷適性を有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙を提供することができる。これは、商品として十分な画質を有する印刷物を製造できる産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において、「商品として十分な画質」とは、印刷後に、塗工層の剥離、画像の欠落、インク定着不良による印刷物の画像の汚れ、およびインク吸収速度やインク吸収容量の不足による印刷物の画像の汚れや滲みが発生していないことを指す。さらに、「商品として十分な画質」とは、産業用インクジェット印刷機では被印刷体に着弾したインク滴のドット拡散不良によって印刷物の印刷部分に白抜けが発生していないこと、および耐擦過性に優れ、印刷物を手で擦ってもインクが剥がれにくいこと、オフセット印刷機ではブランケットパイリングなどの印刷不良が発生しないことを含む。
産業用インクジェット印刷機には、用紙搬送の違いによって連続紙タイプとカット紙タイプがある。また搭載するインク種には、色材が染料である水性染料インクと色材が顔料である水性顔料インクがある。本発明において、産業用インクジェット印刷機の用紙搬送およびインクの種類についてはいずれでも構わない。
印刷する画像に可変情報と固定情報が存在する場合は、固定情報の一部または全部をグラビア印刷機、オフセット印刷機、活版印刷機、フレキソ印刷機、熱転写印刷機またはトナー印刷機など従来の印刷機を用いて印刷することが好ましい。特に、製造コストと印刷品質の点でオフセット印刷機が好ましい。従来の印刷機での印刷は、産業用インクジェット印刷機を用いて印刷する前であっても後であっても構わない。
前記グラビア印刷機は、画像が彫り込まれたロール状の版胴を介してインクを被印刷体に転写する凹版印刷方式の印刷機である。前記オフセット印刷機は、インクを一度ブランケットに移してから被印刷体に再び転移する間接印刷方式の印刷機である。前記活版印刷機は、凸版に付与されたインクを被印刷体に押しつけるように圧をかけて印刷する凸版印刷方式の印刷機である。前記フレキソ印刷機は、柔軟な弾性のある樹脂版を使用する凸版印刷方式の印刷機である。前記熱転写印刷機は、各色のインクリボンを用いる印刷機であって、熱によってインクリボンから色材を被印刷体に転写する方式の印刷機である。前記トナー印刷機は、帯電ドラムに付着したトナーを、静電気を利用して被印刷体に転写させる電子写真方式の印刷機である。
本発明において、産業用インクジェット印刷機の印刷速度は、60m/分以上である。これ未満の印刷速度であっても産業用インクジェット印刷が可能であるが、本発明の効果が顕著に認められる印刷速度は60m/分以上である。また、産業用という観点から印刷物の生産性が重視され、その生産性の要求から印刷速度は60m/分以上であることが望まれる。なお、印刷用塗工紙がカット紙タイプの場合は、印刷速度は、毎分当たりの印刷される用紙サイズから算出する。
続いて、本発明の構成について説明する。本発明の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙は、大きく以下に示す発明の態様1の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙及び発明の態様2の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙に分かれる。
<発明の態様1>
支持体と、該支持体の少なくとも一方の面上に、バインダー、カチオン性化合物、および、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムを、少なくとも含有する塗工層とを有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
支持体と、該支持体の少なくとも一方の面上に、バインダー、カチオン性化合物、および、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムを、少なくとも含有する塗工層とを有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
<発明の態様2>
支持体と、支持体の少なくとも一方の面に顔料およびバインダーを主成分とする2層以上の塗工層とを有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙であって、前記支持体を基準として最も外側に設けられる最外層における顔料の少なくとも1種が、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムであり、該重質炭酸カルシウムの最外層中の含有量が最外層中の総顔料100質量部に対して60質量部以上であり、前記最外層がカチオン性化合物を含有する、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
支持体と、支持体の少なくとも一方の面に顔料およびバインダーを主成分とする2層以上の塗工層とを有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙であって、前記支持体を基準として最も外側に設けられる最外層における顔料の少なくとも1種が、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムであり、該重質炭酸カルシウムの最外層中の含有量が最外層中の総顔料100質量部に対して60質量部以上であり、前記最外層がカチオン性化合物を含有する、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
発明の態様1において、塗工層が1層で構成されている場合には、製造コストの点で有利である。また、発明の態様2において、顔料およびバインダーを主成分とするとは、各々の塗工層における顔料とバインダーとが占める割合が各々の塗工層の乾燥固形分に対して最も高い状態をいう。
発明の態様1及び2において、本発明の効果を阻害しない範囲で、支持体と塗工層との接着性を改善するために塗工層と支持体との間に下引き層を設けてもよい。また耐傷性を向上させるために塗工層(塗工層が複数層の場合には最外層)の上に保護層を設けてもよい。
また、特に発明の態様2において塗工層が2層以上であることで、支持体に接する下層によってインク吸収速度やインク吸収容量を向上させることができ、支持体を基準として最も外側に設けられる最外層によって光沢感や面質を向上させることができ、好ましい。そのような構成は特に、光沢系の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙に好適である。塗工層は、2層以上であればよく層数に制限はないが、製造コストや製造安定性の点から2層が好ましい。なお、発明の態様2において、支持体に接する塗工層を下層といい、支持体を基準として最も外側に設けられる塗工層を最外層という。発明の態様1が塗工層を2層以上有する場合も同様とする。
本発明の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙が3層以上の塗工層を有する場合において、下層と最外層との間に存在する塗工層は、例えば顔料およびバインダーを主成分とする塗工層あるいは樹脂成分を主成分とする塗工層などであり、その構成は特に限定されない。
そして、発明の態様1の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙は、塗工層が上記の通り粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムを含む。塗工層が2層以上である場合には、最外層が前記重質炭酸カルシウム(並びにバインダー及びカチオン性化合物)を含むことが、本発明の効果の発揮に重要である。下方の塗工層は、必ずしも前記重質炭酸カルシウムやカチオン性化合物を含まなくてもよい。
また、発明の態様2の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙は、最外層が前記と同様の重質炭酸カルシウムを所定量含んでいる。
本発明において、重質炭酸カルシウムの平均粒子径が前記範囲に該当しない場合、産業用インクジェット印刷機に対する印刷適性が得られず、印刷物において、商品として十分な画質を達成することができない。さらに、重質炭酸カルシウムの平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下であっても、粒度分布曲線における最大ピークの半値幅が前記条件を満足しない場合、印刷速度が150m/分以上になるような特に高速領域における産業用インクジェット印刷機に対する良好な印刷適性が得られず、印刷物において、商品として十分な画質を達成することができない。印刷速度は、印刷業者にとって印刷単価に係わる事項であり、重要である。
本発明において、平均粒子径は、単粒子の場合は単粒子の平均粒子径であり、二次粒子など凝集粒子を形成する場合は凝集粒子の平均粒子径である。そして、重質炭酸カルシウムの平均粒子径および粒度分布曲線における最大ピークの半値幅を、塗工紙となった状態から求めることができる。その方法としては、例えば、エネルギー分散型X線分光器などの元素分析機能付走査型電子顕微鏡を用いて印刷用塗工紙表面の電子顕微鏡写真を撮影し、撮影された粒子を面積が近似する球形と見なして粒子径を計算し、撮影画像内に存在する100個の粒子について粒子径を測定することによって、平均粒子径を算出する方法が挙げられる。縦軸が頻度(%)で横軸が粒子径(μm)である粒度分布曲線は、100個の粒子から測定された粒子径データから粒子画像解析ソフトウェアを用いて得ることができる。得られた粒度分布曲線から、半値幅を、最大ピークのピーク高さの1/2高さにおける幅として求めることができる。なお、本発明の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙が2層以上の塗工層を有する場合に、最外層以外の塗工層の平均粒子径は、それを求めようとする塗工層の上の層を除去することによって測定することができる。
平均粒子径および最大ピークの半値幅は、レーザー回折・散乱法または動的光散乱法を利用する測定により求めることもできる。その場合、粒度分布とは、レーザー回折・散乱式粒度分析計で測定した体積を基準とした粒度分布である。平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法あるいは動的光散乱法を用いた体積を基準とした粒度分布測定に基づく平均粒子径である。平均粒子径は、単粒子の場合は単粒子の平均粒子径であり、二次粒子など凝集粒子を形成する場合は凝集粒子の平均粒子径である。平均粒子径および粒度分布曲線における最大ピークの半値幅は、得られた粒度分布から算出することができる。例えば、粒度分布、平均粒子径、および粒度分布曲線における最大ピークの半値幅は、日機装社製レーザー回折・散乱式粒度分布測定器Microtrac MT3300EXIIを用いて粒度分布を測定し、算出することができる。
なお、最大ピークとは、粒度分布曲線において1つまたはそれ以上のピークのうちの最も頻度の頂点が高いピークを意味する。最大ピークの半値幅が小さいと、粒度分布曲線は、シャープな最大ピークを有することとなる。
図1に、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下であり、少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下である重質炭酸カルシウムの粒度分布曲線を例示する。図2に、塗工紙分野で従来公知の重質炭酸カルシウム(最大ピークの半値幅が0.25μmを超えている)の粒度分布曲線を例示する。
重質炭酸カルシウムは、天然の石灰石を粉砕することにより製造される。従って、平均粒子径は同程度であっても、粒度分布は同じではない。一般的には、重質炭酸カルシウムは、シャープなピークを有さないかあるいは広がりをもったピークを有する粒度分布曲線を示す(図2参照)。本発明に使用される重質炭酸カルシウムは、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下であるような微粒子であること、加えて、シャープな最大ピークを有する点で従来公知の重質炭酸カルシウムと区別される。
なお、重質炭酸カルシウムは、粒子径1.5μm超の粒子を含有しないことが好ましい。この理由は、産業用インクジェット印刷における印刷物の画像の汚れ発生を、さらに抑制することができるからである。
発明の態様1においては、塗工層中の重質炭酸カルシウムの含有量は、塗工層中の総顔料100質量部に対して60質量部以上であることが好ましい。好ましい理由は、塗工層中の重質炭酸カルシウムが塗工層中の総顔料100質量部に対して60質量部以上であると、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙が産業用インクジェット印刷機に対するより良好な印刷適性を得ることができるからである。
また、発明の態様2においては、最外層中の重質炭酸カルシウムの含有量は、最外層中の総顔料100質量部に対して60質量部以上である。最外層中の重質炭酸カルシウムの含有量が最外層中の総顔料100質量部に対して60質量部未満であると、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙は、産業用インクジェット印刷機に対する良好な印刷適性を得ることができない。
本発明に使用される、所定の平均粒子径及び最大ピークの半値幅を有する重質炭酸カルシウムは、例えば、次に示す方法で製造することができる。先ず、天然石灰石を乾式粉砕し得られた粉体を、水または分散剤を添加した水溶液に分散させて重質炭酸カルシウムの予備分散スラリーを調製する。このようにして調製した予備分散スラリーを、さらに、ビーズミル等を用い湿式粉砕する。ここで、天然石灰石を直ちに湿式粉砕することもできる。しかし、生産性の点から、湿式粉砕に先立って予め乾式粉砕することが好ましい。乾式粉砕では、石灰石の粒子径が40mm以下、好ましくは平均粒子径が2μm以上2mm以下の程度になるように粉砕しておくのがよい。湿式粉砕では、途中段階で整粒を行い、粒子径を整えることが好ましい。整粒は、市販の整粒機によって実施することができる。
次に、上記粉砕した石灰石の表面に有機分散剤による処理を施すのがよい。これは種々の方法で行うことができるが、乾式粉砕した石灰石を有機分散剤の存在下で湿式粉砕することにより行う方法が好ましい。具体的には、石灰石/水性媒体(好ましくは水)の質量比が30/70以上85/15以下、好ましくは60/40以上80/20以下の範囲となるように石灰石に水性媒体を加え、ここに有機分散剤を加える。有機分散剤の例としては、官能基としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩またはリン酸エステル塩を有する低分子または高分子の水溶性アニオン系界面活性剤、若しくはポリエチレングリコール型または多価アルコール型非イオン界面活性剤を挙げることができる。これらの中でも、水溶性アニオン系界面活性剤で、ポリアクリル酸を有するポリアクリル酸系有機分散剤が特に好ましい。これら有機分散剤は、サンノプコ社、東亞合成社、花王社等から市販されており、本発明に用いることができる。使用する有機分散剤の量は特に限定されないが、粉砕した石灰石100質量部当たり固形分として0.3質量部以上3.5質量部以下の範囲が好ましく、0.5質量部以上3質量部以下の範囲がより好ましい。得られる予備分散スラリーを従来公知の方法により湿式粉砕する。または、上記範囲の量となる有機分散剤を予め溶解してなる水性媒体を石灰石と混合し従来公知の方法により湿式粉砕する。湿式粉砕は、バッチ式でも連続式でもよく、サンドミル、アトライター、ボールミル、ビーズミルなどの粉砕媒体を使用したミルなどの装置によって実施することができる。このように湿式粉砕することにより、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムを得ることができる。さらに、所定の半値幅を得るために整粒することにより(整粒により半値幅が小さくなる)、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下である重質炭酸カルシウムを得ることができる。なお、本発明に使用される重質炭酸カルシウムを得る方法は、以上説明した方法に限定されない。
発明の態様1における塗工層及び発明の態様2における最外層は、重質炭酸カルシウム以外に従来公知の顔料を含有しても構わない。従来公知の顔料としては、例えば、各種カオリン、クレー、タルク、軽質炭酸カルシウム、サチンホワイト、リトポン、酸化チタン、酸化亜鉛、気相法シリカ、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、プラスチック顔料などを挙げることができる。これらは2種以上が含有されても構わない。
発明の態様1の塗工層及び発明の態様2の最外層は、バインダーを含有する。バインダーは従来公知の水溶性バインダーまたは水分散性バインダーであって、その例としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等のポリアクリル酸系重合体、ポリ酢酸ビニル系重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル等の各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ユリアまたはメラミン等のホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン、エピクロルヒドリン等の水溶性合成物が挙げられる。さらには、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の天然多糖類またはそのオリゴマー、そしてその変性体がバインダーとして挙げられる。また、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲン等の天然タンパク質またはその変性体、ポリ乳酸、ペプチド等の合成高分子やオリゴマーも挙げられる。これらは単独でまたは組み合わせて使用することができる。またバインダーは、カチオン変性を施して使用することができる。
発明の態様1の塗工層及び発明の態様2の最外層におけるバインダーの含有量は、産業用インクジェット印刷機に対するインク吸収容量やインク吸収速度の点から、塗工層または最外層中の総顔料100質量部に対して3質量部以上30質量部以下の範囲が好ましく、5質量部以上20質量部以下の範囲がより好ましい。
発明の態様1の塗工層及び発明の態様2の最外層は、カチオン性化合物を含有する。かかるカチオン性化合物の例としては、カチオン性樹脂および水溶性多価陽イオン塩が挙げられる。塗工層または最外層がカチオン性化合物を含有することによって、オフセット印刷などの従来の印刷機に対する印刷適性を有しつつ、産業用インクジェット印刷機の印刷速度に対応する印刷適性を有することができる。
前記カチオン性樹脂は、従来公知のカチオン性ポリマーまたはカチオン性オリゴマーであればよく、特に限定されない。好ましいカチオン性樹脂は、プロトンが配位し易く、水に溶解したとき離解してカチオン性を呈する1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩を含有するポリマーまたはオリゴマーである。その具体例としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアミンスルホン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、ジシアンジアミドポリアルキル−ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の化合物およびこれらの塩酸塩、さらにジアリルアミン−アクリルアミド共重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよびジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミド等との共重合物、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン−アンモニア−エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン重縮合物のようなアルキルアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物等を挙げることができる。本発明において、カチオン性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、500以上100,000以下が好ましく、1,000以上60,000以下がより好ましい。カチオン性樹脂としては、産業用インクジェット印刷機に対するインク定着性の点から、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン重縮合物、ジアリルアミン−アクリルアミド共重合体、およびポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドが好ましい。また、同様な観点から、アルキルアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物及びジアリルアミン−アクリルアミド共重合体が好ましい。以上説明したカチオン性樹脂は、2種以上を併用しても構わない。
前記水溶性多価陽イオン塩とは多価陽イオンを含む水溶性塩であり、水溶性塩とは20℃の水に1質量%以上溶解することができる塩をいう。多価陽イオンの例としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、亜鉛、銅、鉄、コバルト、スズ、マンガンなどの二価陽イオン、アルミニウム、鉄、クロムなどの三価陽イオン、またはチタン、ジルコニウムなどの四価陽イオン、並びにそれらの錯イオンを挙げることができる。多価陽イオンと塩を形成する陰イオンとしては、無機酸および有機酸のいずれでもよく、特に限定されない。無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸などを挙げることができる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、有機スルホン酸などを挙げることができる。水溶性多価陽イオン塩としては、産業用インクジェット印刷機に対するインク定着性の点から、カルシウム塩が好ましく、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、および硝酸カルシウムがより好ましい。水溶性多価陽イオン塩は、2種以上を併用して構わない。
色材が染料である水性染料インクと色材が顔料である水性顔料インクとの両方に対するインク定着性の点で、発明の態様1の塗工層及び発明の態様2の最外層は、カチオン性樹脂と水溶性多価陽イオン塩との両方を含有することが好ましい。
発明の態様1において、前記塗工層中におけるカチオン性化合物の含有量は、産業用インクジェット印刷機に対するインク定着性やインク吸収速度の点、従来の印刷機に対する印刷適性および薬品コストの点から、塗工層中の総顔料100質量部に対して5質量部以上30質量部以下の範囲が好ましく、10質量部以上25質量部以下の範囲がより好ましい。
発明の態様2において、前記最外層中におけるカチオン性化合物の含有量は、同様な点から、最外層中の総顔料100質量部に対して10質量部以上30質量部以下の範囲が好ましく、15質量部以上25質量部以下の範囲がより好ましい。
発明の態様1の塗工層及び発明の態様2の最外層は、顔料、バインダーおよびカチオン性化合物以外に必要に応じて、顔料分散剤、染料、染料定着剤、熱可塑性樹脂、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、発泡剤、離型剤、浸透剤、熱ゲル化剤、滑剤、増粘剤、湿潤剤、印刷適性向上剤、色味調整剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐水化剤など製紙分野で通常使用されている従来公知の各種添加剤を含有することができる。
発明の態様1の塗工層および発明の態様2の最外層は、塗工層塗工液を支持体上または下層上に塗工・乾燥して得ることができる。塗工層塗工液を支持体上または下層上に塗工する方法としては、通常使用される塗工装置を用いる方法が挙げられるが、特に限定されない。前記塗工装置として例えば、エアナイフコーター、ロッドブレードコーターなど各種ブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ショートドウェルコーターなどを挙げることができる。好ましくは、高速生産性に適した各種ブレードコーター、カーテンコーターまたはフィルムトランスファーコーターであり、特に好ましくはブレードコーターである。乾燥方法としては、通常使用される乾燥装置を用いた方法を挙げることができ、特に限定されない。前記乾燥装置として例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等の各種乾燥装置を挙げることができる。
塗工層または最外層の塗工量は、オフセット印刷機に対する印刷適性とインクジェット印刷機に対する印刷適性との両立の点から、片面あたり5.0g/m2以上20.0g/m2以下の範囲が好ましい。なお、本発明において、塗工量とは片面あたりの乾燥固形分の塗工量を指す。
本発明の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙が2層以上の塗工層を有する場合、その最外層については、必要に応じてマシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を用いたカレンダー処理により表面を平滑化することができる。なお、最外層に対してカレンダー処理を行わなくても構わない。
2層以上の塗工層を有する場合において、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙の下層は、顔料とバインダーを主成分として含有する。産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙の下層の顔料は従来公知の顔料であって、その例として、各種カオリン、クレー、タルク、ケイソウ土、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、サチンホワイト、リトポン、酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、ゼオライト、アルミナ、アルミナ水和物、気相法シリカ、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、プラスチック顔料などを挙げることができる。顔料は、2種以上を併用しても構わない。
産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙の下層のバインダーは従来公知のバインダーであって、発明の態様1の塗工層や発明の態様2の最外層のバインダーと同様に、従来公知の水分散性バインダーまたは水溶性バインダーから1種以上を適宜選択することができる。
下層におけるバインダーの含有量は、顔料に対して過剰にバインダーを配合すると産業用インクジェット印刷において画像の汚れを発生する場合があるため、下層中の総顔料100質量部に対して10質量部以上40質量部以下の範囲が好ましい。
産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙の下層は、顔料およびバインダー以外に必要に応じて、顔料分散剤、染料定着剤、熱可塑性樹脂、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、湿潤剤、印刷適性向上剤、色味調整剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐水化剤など製紙分野で通常使用されている従来公知の各種添加剤を含有することができる。
以上説明した下層は、下層塗工液を支持体上に塗工・乾燥して得ることができる。下層塗工液を支持体上に塗工する方法としては、通常使用される塗工装置を用いる方法を挙げることができ、特に限定されない。前記塗工装置として例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター等の各種ブレードコーター、ショートドウェルコーター、カーテンコーターなどの各種塗工装置を挙げることができる。乾燥方法としては、通常使用される乾燥装置を用いる方法を挙げることができ、特に限定されない。前記乾燥装置として例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等の各種乾燥装置を挙げることができる。
下層の塗工量は、オフセット印刷機に対する印刷適性および産業用インクジェット印刷機に対するインク吸収容量の点から、片面あたり4.0g/m2以上20.0g/m2以下の範囲が好ましい。
下層については、必要に応じてマシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を用いたカレンダー処理により表面を平滑化することができる。なお、下層に対してカレンダー処理を行わなくても構わない。
一方、発明の態様2の最外層は、光沢感の点から、JIS Z8741で規定する75度光沢度が45%以上の範囲であることが好ましい。
最外層の光沢感は、最外層に含まれる重質炭酸カルシウムの含有量若しくは平均粒子径、またはその他顔料の種類および平均粒子径によって制御することができる。また光沢感は、最外層に従来公知のマット剤を含有させることにより制御することができる。また光沢感は、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を用いたカレンダー処理によって向上させることができる。但し、過度のカレンダー処理を行うと最外層および下層の空隙を潰すこととなり、産業用インクジェット印刷機に対する印刷適性を悪化させることがある。故に、適度のカレンダー処理が好ましい。
本発明の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙は、以上説明した塗工層(単層の場合および複数層の場合がある)を支持体の少なくとも一方の面上に有する。当該支持体は、例えば以下の各種の紙である:
LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGPなどの機械パルプ、DIPなどの古紙パルプなどの木材パルプと従来公知の填料を主成分として、バインダーおよびサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの各種添加剤を必要に応じ1種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造された原紙。
該原紙に対して、澱粉、ポリビニルアルコールなどでのサイズプレスやアンカーコート層を設けた上質紙。
該上質紙にさらにコート層を設けたアート紙、コート紙、キャストコート紙、バライタ紙などの塗工紙。
LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGPなどの機械パルプ、DIPなどの古紙パルプなどの木材パルプと従来公知の填料を主成分として、バインダーおよびサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの各種添加剤を必要に応じ1種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造された原紙。
該原紙に対して、澱粉、ポリビニルアルコールなどでのサイズプレスやアンカーコート層を設けた上質紙。
該上質紙にさらにコート層を設けたアート紙、コート紙、キャストコート紙、バライタ紙などの塗工紙。
原紙、上質紙または塗工紙については、必要に応じてマシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等によりその表面を平滑化することができる。また、支持体は、樹脂被覆された原紙であってもよい。
なお、本発明の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙における支持体は、製造工程から排出されるホウ素含有の廃液に関する環境問題の観点から、ホウ酸化合物及びホウ酸塩化合物のいずれも含まないことが好ましい。
本発明において、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙は、以上説明した塗工層を両面に有することが好ましい。塗工層を両面に設けることでA2コート紙並みの画質を両面に得ることができる。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す質量部、質量%および体積%は、他に明示しない限り乾燥固形分あるいは実質成分の値を示す。
<平均粒子径および最大ピークの半値幅の測定>
下記<印刷用塗工紙の作製>において得られた印刷用塗工紙表面を走査型電子顕微鏡(JSM−6490LA、日本電子社製)で写真撮影した。撮影画像から、撮影された粒子を面積が近似する球形と見なしてその粒子径を計算し、撮影画像内に存在する100個の粒子について粒子径を測定することによって、平均粒子径を算出した。縦軸が頻度(%)で横軸が粒子径(μm)である粒度分布曲線は、100個の粒子から測定された粒子径データから粒子画像解析ソフトウェアを用いて得た。得られた粒度分布曲線から、半値幅を、最大ピークのピーク高さの1/2高さにおける幅として求めた。平均粒子径および最大ピークの半値幅を下記表1に記載する。
下記<印刷用塗工紙の作製>において得られた印刷用塗工紙表面を走査型電子顕微鏡(JSM−6490LA、日本電子社製)で写真撮影した。撮影画像から、撮影された粒子を面積が近似する球形と見なしてその粒子径を計算し、撮影画像内に存在する100個の粒子について粒子径を測定することによって、平均粒子径を算出した。縦軸が頻度(%)で横軸が粒子径(μm)である粒度分布曲線は、100個の粒子から測定された粒子径データから粒子画像解析ソフトウェアを用いて得た。得られた粒度分布曲線から、半値幅を、最大ピークのピーク高さの1/2高さにおける幅として求めた。平均粒子径および最大ピークの半値幅を下記表1に記載する。
<重質炭酸カルシウムの調製>
下記の実施例及び比較例で使用した重質炭酸カルシウムは、以下のようにして調製した。天然の石灰石をジョークラッシャー、ハンマークラッシャー、ローラーミルによって平均粒子径30μm程度になるまで粗粉砕して、粒度分布曲線において最大ピークの半値幅が最終的に下記表1及び2に示される重質炭酸カルシウムの半値幅になるように必要に応じて整粒し、これに水と市販のポリアクリル酸系分散剤を加えて攪拌し、固形分約75質量%の予備分散スラリーとした。この予備分散スラリーをアシザワ・ファインテック社製湿式粉砕機(横型ビーズミル、円柱型粉砕室の寸法:直径約0.5m、長さ約1.3m)を用いて処理し、その後、粒度分布曲線において最大ピークの半値幅が下記表1及び2に示される重質炭酸カルシウムの半値幅になるように必要に応じて整粒した。ビーズとしては直径約0.2mmのジルコニア製のものを用いた。ビーズの充填率は80体積%〜85体積%の範囲で変化させた。流量は約15リットル/分とし、パス回数を変化させた。以上の操作から、下記表1及び2の各種平均粒子径や半値幅の重質炭酸カルシウムを調製した。
下記の実施例及び比較例で使用した重質炭酸カルシウムは、以下のようにして調製した。天然の石灰石をジョークラッシャー、ハンマークラッシャー、ローラーミルによって平均粒子径30μm程度になるまで粗粉砕して、粒度分布曲線において最大ピークの半値幅が最終的に下記表1及び2に示される重質炭酸カルシウムの半値幅になるように必要に応じて整粒し、これに水と市販のポリアクリル酸系分散剤を加えて攪拌し、固形分約75質量%の予備分散スラリーとした。この予備分散スラリーをアシザワ・ファインテック社製湿式粉砕機(横型ビーズミル、円柱型粉砕室の寸法:直径約0.5m、長さ約1.3m)を用いて処理し、その後、粒度分布曲線において最大ピークの半値幅が下記表1及び2に示される重質炭酸カルシウムの半値幅になるように必要に応じて整粒した。ビーズとしては直径約0.2mmのジルコニア製のものを用いた。ビーズの充填率は80体積%〜85体積%の範囲で変化させた。流量は約15リットル/分とし、パス回数を変化させた。以上の操作から、下記表1及び2の各種平均粒子径や半値幅の重質炭酸カルシウムを調製した。
このように調製した重質炭酸カルシウムを、各実施例および各比較例の印刷用塗工紙の製造に使用した。なお、実施例1で用いた重質炭酸カルシウムの粒度分布図を図1に示す。
[1層の塗工層の場合](実施例1〜13および比較例1〜12)
<支持体の作製>
濾水度400mlcsfのLBKP100質量部からなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム10質量部、両性澱粉0.8質量部、硫酸バンド0.8質量部、アルキルケテンダイマー型サイズ剤(サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.1質量部を添加した。得られた混合物を長網抄紙機で抄造し、サイズプレス装置で両面あたり酸化澱粉を2.5g/m2付着させ、マシンカレンダー処理をして坪量100g/m2の原紙を作製し、これを支持体とした。
<支持体の作製>
濾水度400mlcsfのLBKP100質量部からなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム10質量部、両性澱粉0.8質量部、硫酸バンド0.8質量部、アルキルケテンダイマー型サイズ剤(サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.1質量部を添加した。得られた混合物を長網抄紙機で抄造し、サイズプレス装置で両面あたり酸化澱粉を2.5g/m2付着させ、マシンカレンダー処理をして坪量100g/m2の原紙を作製し、これを支持体とした。
<塗工層塗工液の調製>
塗工層塗工液は、下記の内容により調製した。
塗工層塗工液は、下記の内容により調製した。
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、固形分濃度40質量%に調整した塗工層塗工液を得た。
表1に示した市販の顔料は、以下の通りである。
軽質炭酸カルシウムA(TP123、奥多摩工業社製、平均粒子径0.63μm)
軽質炭酸カルシウムB(Brilliant−15、白石カルシウム社製、平均粒子径0.15μm)
カオリンA(HG90、ヒューバー社製、平均粒子径0.19μm)
カオリンB(カオファイン90、白石カルシウム社製、平均粒子径1.10μm)
コロイダルシリカ(コロイダルシリカMP−2040、日産化学工業社製、平均粒子径0.20μm)
比較例7で用いた重質炭酸カルシウム(FMT−OP2A、ファイマテック社製、平均粒子径0.73μm、半値幅1.10μm)
なお、比較例7で用いた市販品の重質炭酸カルシウムの粒度分布図を図2に示す。
軽質炭酸カルシウムA(TP123、奥多摩工業社製、平均粒子径0.63μm)
軽質炭酸カルシウムB(Brilliant−15、白石カルシウム社製、平均粒子径0.15μm)
カオリンA(HG90、ヒューバー社製、平均粒子径0.19μm)
カオリンB(カオファイン90、白石カルシウム社製、平均粒子径1.10μm)
コロイダルシリカ(コロイダルシリカMP−2040、日産化学工業社製、平均粒子径0.20μm)
比較例7で用いた重質炭酸カルシウム(FMT−OP2A、ファイマテック社製、平均粒子径0.73μm、半値幅1.10μm)
なお、比較例7で用いた市販品の重質炭酸カルシウムの粒度分布図を図2に示す。
表1に略称で示したカチオン性化合物は、以下の通りである。
a:ジメチルアミン−エピクロルヒドリン重縮合物(ジェットフィックス5052、里田化工社製)
b:ジアリルアミン−アクリルアミド共重合体(SR1001、住友化学社製)
c:ポリエチレンイミン(エポミン、日本触媒社製)
d:塩化カルシウム
e:硫酸マグネシウム
a:ジメチルアミン−エピクロルヒドリン重縮合物(ジェットフィックス5052、里田化工社製)
b:ジアリルアミン−アクリルアミド共重合体(SR1001、住友化学社製)
c:ポリエチレンイミン(エポミン、日本触媒社製)
d:塩化カルシウム
e:硫酸マグネシウム
<印刷用塗工紙の作製>
各実施例および各比較例の印刷用塗工紙を、以下の手順にて作製した。すなわち、支持体に、塗工層塗工液をブレードコーターにて両面塗工し、乾燥させた後、カレンダー処理をして塗工紙を作製した。塗工量は固形分として片面当たり10g/m2とした。
各実施例および各比較例の印刷用塗工紙を、以下の手順にて作製した。すなわち、支持体に、塗工層塗工液をブレードコーターにて両面塗工し、乾燥させた後、カレンダー処理をして塗工紙を作製した。塗工量は固形分として片面当たり10g/m2とした。
<オフセット印刷機印刷>
オフセット印刷機としてミヤコシ社製オフセットフォーム輪転機を用いて、印刷速度:150m/分、使用インク:T&K TOKA UVベストキュア墨および金赤(Bronze Red)、UV照射量:8kW2基の条件で、6000m、所定の評価画像を繰り返し印刷し、印刷物を製造した。
オフセット印刷機としてミヤコシ社製オフセットフォーム輪転機を用いて、印刷速度:150m/分、使用インク:T&K TOKA UVベストキュア墨および金赤(Bronze Red)、UV照射量:8kW2基の条件で、6000m、所定の評価画像を繰り返し印刷し、印刷物を製造した。
<産業用インクジェット印刷機印刷>
産業用インクジェット印刷機としてコダック社製印刷機Prosper 5000XL Pressを用いて、印刷速度:75m/分と150m/分との2段階、使用インク:水性顔料インクの条件で、6000m、所定の評価画像を印刷し、印刷物を製造した。
産業用インクジェット印刷機としてコダック社製印刷機Prosper 5000XL Pressを用いて、印刷速度:75m/分と150m/分との2段階、使用インク:水性顔料インクの条件で、6000m、所定の評価画像を印刷し、印刷物を製造した。
<印刷物の評価>
得られた印刷物の画質を官能評価した。オフセット印刷においてはブランケットパイリングの発生による印刷不良による画質の低下度合いを、産業用インクジェット印刷においてはインク吸収速度不足、インクのドット拡散不良による画質の低下度合いを、および耐擦過性として印刷物を手で擦った際のインクの剥がれ具合を、それぞれ目視観察し、下記の4段階で総合的に官能評価した。以下において、評価AAおよびAのいずれかであれば、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙は本発明の効果を有するものとする。
AA:画質の低下が無く、用途に関係なく商品として十分な画質を有する。
A:画質の低下が僅かであり、用途に関係なく商品として十分な画質を有する。
B:画質の低下があり、用途によっては商品として十分な画質を有さない。
C:画質の低下があり、用途に関係なく商品として十分な画質を有さない。
得られた印刷物の画質を官能評価した。オフセット印刷においてはブランケットパイリングの発生による印刷不良による画質の低下度合いを、産業用インクジェット印刷においてはインク吸収速度不足、インクのドット拡散不良による画質の低下度合いを、および耐擦過性として印刷物を手で擦った際のインクの剥がれ具合を、それぞれ目視観察し、下記の4段階で総合的に官能評価した。以下において、評価AAおよびAのいずれかであれば、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙は本発明の効果を有するものとする。
AA:画質の低下が無く、用途に関係なく商品として十分な画質を有する。
A:画質の低下が僅かであり、用途に関係なく商品として十分な画質を有する。
B:画質の低下があり、用途によっては商品として十分な画質を有さない。
C:画質の低下があり、用途に関係なく商品として十分な画質を有さない。
各実施例および各比較例の評価結果は上記表1に示されている。
表1から、本発明の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙である実施例1〜13は、オフセット印刷などの従来の印刷機に対する印刷適性を有しつつ、産業用インクジェット印刷機の印刷適性を有し、商品として十分な画質を有する印刷物を製造することができる。一方、本発明の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙に相当しない比較例1〜12は、これらの印刷適性の少なくとも一つを有さず、商品として十分な画質を有する印刷物を製造することができない。
[2層の塗工層の場合](実施例14〜35及び比較例13〜24)
<支持体の作製>
濾水度400mlcsfのLBKP100質量部からなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム10質量部、両性澱粉0.8質量部、硫酸バンド0.8質量部、アルキルケテンダイマー型サイズ剤(サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.15質量部を添加した。得られた混合物を長網抄紙機で抄造し、サイズプレス装置で両面あたり酸化澱粉を2.5g/m2付着させ、マシンカレンダー処理をして坪量100g/m2の原紙を作製し、これを支持体とした。
<支持体の作製>
濾水度400mlcsfのLBKP100質量部からなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム10質量部、両性澱粉0.8質量部、硫酸バンド0.8質量部、アルキルケテンダイマー型サイズ剤(サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.15質量部を添加した。得られた混合物を長網抄紙機で抄造し、サイズプレス装置で両面あたり酸化澱粉を2.5g/m2付着させ、マシンカレンダー処理をして坪量100g/m2の原紙を作製し、これを支持体とした。
<下層塗工液の調製>
下層塗工液は、下記の内容により調製した。
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、固形分濃度25質量%に調整した下層塗工液を得た。
下層塗工液は、下記の内容により調製した。
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、固形分濃度25質量%に調整した下層塗工液を得た。
<最外層塗工液の調製>
最外層塗工液は、下記の内容により調製した。
最外層塗工液は、下記の内容により調製した。
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、固形分濃度40質量%に調整した最外層塗工液を得た。
表2に示した顔料は、以下の通りである。
(下層)
合成非晶質シリカ(NIPGEL AZ−204、東ソー・シリカ社製)
軽質炭酸カルシウム(カルライトKT、白石工業社製)
重質炭酸カルシウム(SETACARB−HG、白石カルシウム社製)
カオリン(カオファイン90、白石カルシウム社製)
(最外層)
軽質炭酸カルシウムA(TP123、奥多摩工業社製、平均粒子径0.63μm)
軽質炭酸カルシウムB(Brilliant−15、白石カルシウム社製、平均粒子径0.15μm)
軽質炭酸カルシウムC(TP221HDP、奥多摩工業社製、平均粒子径0.23μm)
カオリンA(HG90、ヒューバー社製、平均粒子径0.19μm)
カオリンB(カオファイン90、白石カルシウム社製、平均粒子径1.10μm)
コロイダルシリカ(コロイダルシリカMP−2040、日産化学工業社製、平均粒子径0.20μm)
比較例24で用いた重質炭酸カルシウム(FMT−OP2A、ファイマテック社製、平均粒子径0.73μm、半値幅1.10μm)
(下層)
合成非晶質シリカ(NIPGEL AZ−204、東ソー・シリカ社製)
軽質炭酸カルシウム(カルライトKT、白石工業社製)
重質炭酸カルシウム(SETACARB−HG、白石カルシウム社製)
カオリン(カオファイン90、白石カルシウム社製)
(最外層)
軽質炭酸カルシウムA(TP123、奥多摩工業社製、平均粒子径0.63μm)
軽質炭酸カルシウムB(Brilliant−15、白石カルシウム社製、平均粒子径0.15μm)
軽質炭酸カルシウムC(TP221HDP、奥多摩工業社製、平均粒子径0.23μm)
カオリンA(HG90、ヒューバー社製、平均粒子径0.19μm)
カオリンB(カオファイン90、白石カルシウム社製、平均粒子径1.10μm)
コロイダルシリカ(コロイダルシリカMP−2040、日産化学工業社製、平均粒子径0.20μm)
比較例24で用いた重質炭酸カルシウム(FMT−OP2A、ファイマテック社製、平均粒子径0.73μm、半値幅1.10μm)
<印刷用塗工紙の作製>
実施例および比較例の塗工紙を以下の手順にて作製した。すなわち、支持体上に、下層塗工液を、エアナイフコーターを用いて片面あたり10g/m2となるように両面に塗工・乾燥した。乾燥後に、最外層塗工液を、ブレードコーターを用いて片面あたり10g/m2となるように両面に塗工・乾燥した。乾燥後に、カレンダー処理を施して印刷用塗工紙を作製した。カレンダーは、弾性ロールと金属ロールからなる装置を用いて、ニップ線圧は幅方向の厚みプロファイルが適切に得られる範囲において、線圧120kN/mで行った。また金属ロールの温度を50℃とした。
実施例および比較例の塗工紙を以下の手順にて作製した。すなわち、支持体上に、下層塗工液を、エアナイフコーターを用いて片面あたり10g/m2となるように両面に塗工・乾燥した。乾燥後に、最外層塗工液を、ブレードコーターを用いて片面あたり10g/m2となるように両面に塗工・乾燥した。乾燥後に、カレンダー処理を施して印刷用塗工紙を作製した。カレンダーは、弾性ロールと金属ロールからなる装置を用いて、ニップ線圧は幅方向の厚みプロファイルが適切に得られる範囲において、線圧120kN/mで行った。また金属ロールの温度を50℃とした。
<オフセット印刷機印刷>
オフセット印刷機としてミヤコシ社製オフセットフォーム輪転機を用いて、印刷速度:150m/分、使用インク:T&K TOKA UVベストキュア墨および金赤(Bronze Red)、UV照射量:8kW2基の条件で、6000m、所定の評価画像を繰り返し印刷し、印刷物を製造した。
オフセット印刷機としてミヤコシ社製オフセットフォーム輪転機を用いて、印刷速度:150m/分、使用インク:T&K TOKA UVベストキュア墨および金赤(Bronze Red)、UV照射量:8kW2基の条件で、6000m、所定の評価画像を繰り返し印刷し、印刷物を製造した。
<産業用インクジェット印刷機印刷>
産業用インクジェット印刷機としてコダック社製印刷機Prosper 5000XL Pressを用いて、印刷速度:75m/分と150m/分との2段階、使用インク:水性顔料インクの条件で、6000m、所定の評価画像を印刷し、印刷物を製造した。
産業用インクジェット印刷機としてコダック社製印刷機Prosper 5000XL Pressを用いて、印刷速度:75m/分と150m/分との2段階、使用インク:水性顔料インクの条件で、6000m、所定の評価画像を印刷し、印刷物を製造した。
さらに、産業用インクジェット印刷機として大日本スクリーン製造社製印刷機Truepress Jet520を用いて、印刷速度:128m/分、使用インク:水性染料インクの条件で、6000m、所定の評価画像を印刷し、印刷物を製造した。
<印刷物評価>
得られた印刷物の画質を官能評価した。オフセット印刷においてはブランケットパイリングの発生による印刷不良による画質の低下度合いを、産業用インクジェット印刷においてはインク吸収速度不足、インクのドット拡散不良による画質の低下度合いを、および耐擦過性として印刷物を手で擦った際のインクの剥がれ具合を、それぞれ目視観察し、下記の4段階で総合的に官能評価した。以下において、評価AAおよびAのいずれかであれば、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙は本発明の効果を有するものとする。
AA:画質の低下が無く、用途に関係なく商品として十分な画質を有する。
A:画質の低下が僅かであり、用途に関係なく商品として十分な画質を有する。
B:画質の低下があり、用途によっては商品として十分な画質を有さない。
C:画質の低下があり、用途に関係なく商品として十分な画質を有さない。
得られた印刷物の画質を官能評価した。オフセット印刷においてはブランケットパイリングの発生による印刷不良による画質の低下度合いを、産業用インクジェット印刷においてはインク吸収速度不足、インクのドット拡散不良による画質の低下度合いを、および耐擦過性として印刷物を手で擦った際のインクの剥がれ具合を、それぞれ目視観察し、下記の4段階で総合的に官能評価した。以下において、評価AAおよびAのいずれかであれば、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙は本発明の効果を有するものとする。
AA:画質の低下が無く、用途に関係なく商品として十分な画質を有する。
A:画質の低下が僅かであり、用途に関係なく商品として十分な画質を有する。
B:画質の低下があり、用途によっては商品として十分な画質を有さない。
C:画質の低下があり、用途に関係なく商品として十分な画質を有さない。
各実施例および各比較例の各評価結果は上記表2に示されている。
表2から、本発明の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙である実施例14〜35は、オフセット印刷など従来の印刷機と産業用インクジェット印刷機の両方に適性を有し、商品になり得る十分な画質と耐擦過性を有する印刷物を製造することができる。一方、本発明の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙に相当しない比較例13〜24は、これらの印刷適性の少なくとも一つを有さず、商品になり得る十分な画質を有する印刷物を製造することができない。
Claims (6)
- 支持体と、
該支持体の少なくとも一方の面上に、バインダー、カチオン性化合物、および、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムを、少なくとも含有する塗工層と
を有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。 - 前記塗工層が1層で構成されている、請求項1に記載の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
- 前記重質炭酸カルシウムの塗工層中の含有量が、塗工層中の総顔料100質量部に対して60質量部以上である、請求項1または2に記載の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
- 支持体と、支持体の少なくとも一方の面に顔料およびバインダーを主成分とする2層以上の塗工層とを有する産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙であって、
前記支持体を基準として最も外側に設けられる最外層における顔料の少なくとも1種が、粒度分布曲線において少なくとも1つのピークを有し且つ最大ピークの半値幅が0.25μm以下であり、平均粒子径が0.10μm以上0.28μm以下である重質炭酸カルシウムであり、該重質炭酸カルシウムの最外層中の含有量が最外層中の総顔料100質量部に対して60質量部以上であり、
前記最外層がカチオン性化合物を含有する、産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。 - 前記塗工層がカチオン性化合物としてカチオン性樹脂および水溶性多価陽イオン塩を含有し、
該カチオン性樹脂がアルキルアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物またはジアリルアミン−アクリルアミド共重合体であり、
前記水溶性多価陽イオン塩がカルシウム塩である、請求項1〜3のいずれかに記載の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。 - 前記最外層が前記カチオン性化合物としてカチオン性樹脂および水溶性多価陽イオン塩を含有し、
該カチオン性樹脂がアルキルアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物またはジアリルアミン−アクリルアミド共重合体であり、
前記水溶性多価陽イオン塩がカルシウム塩である、請求項4に記載の産業用インクジェット印刷機向け印刷用塗工紙。
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