JPWO2015046324A1 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

(A)カルボキシル基含有量が100μmol/gを超え400μmol/g未満かつ重量平均分子量が10000以上100000未満のポリアリーレンスルフィド樹脂、および(B)充填材を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。本発明は、ポリアリーレンスルフィド本来の高い融点を維持しつつ、機械物性や耐薬品性が向上したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供。

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィド本来の高い融点を維持しつつ、機械物性や耐薬品性が飛躍的に向上したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下PASと略す)は、優れた耐熱性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有しており、射出成形、押出成形用途を中心として各種電気・電子部品、機械部品、自動車部品、フィルム、繊維などに使用されている。
中でも射出成形用途では、高強度化や電気特性の改良など、各種特性発現のため充填材を添加することが多い。特に高強度化を目的とする場合、補強効果を最大限引き出すため、充填材と共にカップリング剤などの反応性化合物を添加することが広く知られている。しかしながら、PASの代表であるPPSの一般的な製造方法であるジクロロベンゼンとスルフィド化剤の反応では、主鎖骨格はベンゼン環と硫黄が主成分であり、十分な官能基を有していないため、カップリング剤などの反応性化合物を添加することによる充填材の補強効果向上には限界があった。また、PAS自体は耐薬品性に優れたポリマーであるが、樹脂組成物になると充填材の密着性が低いが故に、薬品処理後に機械物性が大幅に低下する問題もあった。
そのため、特許文献1では、特定のカルボキシル基を有したPASを選択的に用いることで機械物性を改善させることが開示されている。
特許文献2では、PPSへの反応性官能基導入による物性向上を期待し、分子中にカルボキシル基と、メルカプト基またはジスルフィド基とを同時に有する化合物から選ばれた変性剤を溶融混練時に反応させてカルボキシル基含有PPSを調製する製造方法が開示されている。
特許文献3や特許文献4では金属との接着性や他ポリマーとの相溶性向上を目的に、予め調製したアミノ基含有PASとフタル酸クロライドや酸無水物を加熱反応させてカルボキシル基を導入する方法が開示されている。
特開2001−279097号公報 (特許請求の範囲) 特開平5−170907号公報 (特許請求の範囲) 特開平4−018422号公報 (特許請求の範囲) 特開平4−372624号公報 (特許請求の範囲)
しかし、特許文献1に記載の方法では、カルボキシル量は少なく機械物性に乏しいものしか得られていなかった。
しかし、特許文献2に記載の方法では、カルボキシル基導入量は不明であり、また機械物性などの特性は全く開示されておらず、機械物性や耐薬品性が飛躍的に向上するのに必要なカルボキシル基量について該特許文献から想到することはできない。さらに開示されているFT−IRスペクトルでのカルボキシル基由来吸収ピークは非常に小さく、ほとんど導入されていないと推測される。
しかし、特許文献3、4に記載の方法では、導入されたカルボキシル基含有の側鎖は嵩高いため融点が低下すると予想され、該PASを用いた樹脂組成物は耐熱性が要求される用途に適さないものと推測される。また、融点低下、つまり低い結晶性により機械物性の低下や耐薬品性の低下も予想される。
本発明は、ポリアリーレンスルフィド本来の高い融点を維持しつつ、機械物性や耐薬品性が飛躍的に向上したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることを課題として検討した結果達成されたものである。
かかる課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定のカルボキシル基含有量のPASと充填材とを用いたPAS樹脂組成物において、機械物性や耐薬品性が飛躍的に向上することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(A)カルボキシル基含有量が100μmol/gを超え400μmol/g未満かつ重量平均分子量が10000以上100000未満のポリアリーレンスルフィド樹脂、および(B)充填材を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
本発明によれば、ポリアリーレンスルフィド本来の高い融点を維持しつつ、機械物性や耐薬品性が飛躍的に向上したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる。
本発明におけるPASとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とするホモポリマーまたはコポリマーである。ここで、主要構成単位とするとは、PASを構成する全構成単位のうち、当該繰り返し単位を80モル%以上含有することを意味する。前記Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表されるいずれかの単位が例示されるが、なかでも式(A)で表される単位が特に好ましい。
Figure 2015046324
R1、R2は水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 2015046324
また、本発明におけるPASは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物のいずれかであってもよい。
PASの繰り返し単位として、式(A)のp−アリーレンスルフィド単位が、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上含有されることが、PAS本来が有する高い融点を維持する上で好ましい。p−アリーレンスルフィド単位が90モル%未満、つまりo−アリーレンスルフィド単位やm−アリーレンスルフィド単位が多くなると、PAS本来が有する高い融点が低下するとともに機械物性も低下する傾向にあるため、好ましくない。
これらPASの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドエーテル、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいPASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2015046324
を90モル%以上、好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
また、PASに含有されるカルボキシル基については、PASの主骨格を構成するアリーレンスルフィド単位に導入されたものでも、末端を構成するアリールスルフィド単位に導入されたものでもよい。また、カルボキシル基は、アリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位に直接結合した構造であっても、アリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位にアミノ基、アミド基、エステル基、イミド基、アルキル基、アルコキシ基、フェニレン基などを介して間接的に結合した構造であっても良い。ただし、PASのアリーレンスルフィド単位においてカルボキシル基がアミノ基、アミド基、エステル基、イミド基、アルキル基、アルコキシ基、フェニレン基などを介して間接的に結合した構造であると、PASの主鎖に対して嵩高な成分が側鎖として導入されることになり、融点低下や機械物性の低下につながる。そのため、PASのアリーレンスルフィド単位にカルボキシル基が直接結合した構造、または、PASの末端を構成するアリールスルフィド単位にカルボキシル基が直接または間接的に結合した構造であることが好ましい。なお、カルボキシル基が直接結合したアリーレンスルフィド単位のなかでも、2,5−安息香酸スルフィド単位のようにp−フェニレンスルフィド単位を構成していることが、高い融点や優れた機械物性の観点からより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、カルボキシル基含有量が100μmol/gを超え400μmol/g未満のPASを含むことが必要である。高い融点や優れた機械物性の観点からすると、全カルボキシル基の内、PASのアリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位にカルボキシル基が直接結合した構造は、80μmol/g以上380μmol/g未満であることが好ましく、100μmol/g以上300μmol/g未満がより好ましい。PASのアリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位に、カルボキシル基が、アミノ基、アミド基、エステル基、イミド基、アルキル基、アルコキシ基、フェニレン基などを介して間接的に結合した構造は、高い融点や優れた機械物性の観点からすると少ないほうが好ましいものの、90μmol/g未満であれば実使用上好ましく、50μmol/g未満がより好ましい。
PAS樹脂組成物に使用する(A)PAS樹脂、(B)充填材、(C)オレフィン系共重合体、(D)アルコキシシラン化合物、(E)その他添加剤について以下説明する。
(A)PAS樹脂
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に用いられるPAS樹脂は、カルボキシル基含有量が100μmol/gを超え400μmol/g未満かつ重量平均分子量が10000以上100000未満のPAS樹脂である。PAS樹脂は、重合反応により調製することが可能であり、以下PASの重合に用いるスルフィド化剤、有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物、モノハロゲン化化合物、重合助剤、分岐・架橋剤、分子量調整剤、重合安定剤、脱水工程、重合工程、ポリマー回収、生成PASの順に説明する。
(A−1)スルフィド化剤
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。取り扱い性、汎用性などから、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、およびそれらの混合物が好ましく用いられる。スルフィド化剤は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。
好ましいスルフィド化剤としては、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウムが挙げられ、取り扱い性の観点から水性混合物の状態で用いることが好ましい。
以下の説明において、スルフィド化剤の量は、後述の脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量はアルカリ金属水硫化物100モルに対し、好ましくは90モル以上120モル未満、より好ましくは95モル以上115モル未満、さらに好ましくは95モル以上110モル未満の範囲が例示できる。使用量をこの範囲にすることで、分解を引き起こすことなく、重合副生物量の少ないPASを得ることができる。
(A−2)有機極性溶媒
重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類;N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒;およびこれらの混合物などが反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましく用いられる。
PASの重合溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量は、特に制限はないが、安定した反応性および経済性の観点から、スルフィド化剤100モル当たり、好ましくは250モル以上550モル未満、より好ましくは250モル以上500モル未満、より好ましくは250モル以上450モル未満の範囲が例示される。
(A−3)ジハロゲン化芳香族化合物
PASを製造する際、原料としてジハロゲン化芳香族化合物を用いる。PASの代表であるPPSを製造する際、ベンゼン環と硫黄がポリマーの主骨格となるため、用いるジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼンが挙げられる。また、カルボキシル基の導入を目的に、2,4−ジクロロ安息香酸、2,5−ジクロロ安息香酸、2,6−ジクロロ安息香酸、3,5−ジクロロ安息香酸などのカルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物、およびそれらの混合物を共重合モノマーとして用いることも好ましい態様の一つである。さらに、本発明の効果を損なわない限り、2,4−ジクロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2,6−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、2,4−ジクロロフェノール、2,5−ジクロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール、3,5−ジクロロフェノール、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジクロロフェニルケトンなどのジハロゲン化芳香族化合物などを用いることも可能である。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分とすることが好ましい。また、2,4−ジクロロ安息香酸や2,5−ジクロロ安息香酸に代表されるジハロゲン化安息香酸を共重合成分として一部使用することも好ましい態様の一つであり、高い融点を維持する観点では、2,5−ジクロロ安息香酸がよりこの好ましい共重合成分である。
ジハロゲン化芳香族化合物の使用量は、分解を抑制すると共に加工に適した粘度のPASを効率よく得る観点から、スルフィド化剤100モル当たり、好ましくは80モル以上150モル未満、より好ましくは90モル以上110モル未満、さらに好ましくは、95モル以上105モル未満の範囲が例示できる。スルフィド化剤100モル当たり、ジハロゲン化芳香族化合物が80モル未満であると、得られるPASが分解する傾向にある。スルフィド化剤100モル当たり、ジハロゲン化芳香族化合物が150モル以上であると、得られるPASの分子量が低下し、機械物性や耐薬品性が低下する傾向にある。共重合成分としてカルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物を使用する場合は、ジハロゲン化芳香族化合物の合計量の内、カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物の使用量がスルフィド化剤100モル当たり、好ましくは0.1モル以上20モル未満、より好ましくは1モル以上15モル未満、さらに好ましくは2モル以上10モル未満の範囲が例示できる。カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物が、スルフィド化剤100モル当たり0.1モル未満であると、得られるPASのカルボキシル基量が少なくなる。カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物が、スルフィド化剤100モル当たり、20モル以上であると、得られるPASの分子量が低下し機械物性や耐薬品性が低下する傾向にある。
カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物を使用する場合、その添加時期に特に制限はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。脱水工程時に添加すると、脱水工程時にカルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物が揮散しないような還流装置が必要である。また、重合途中(加圧状態)で添加するには圧入装置が必要であるとともに、重合途中からカルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物が反応することになるため、重合終了時点でカルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物の消費が完結せず、重合系内に残存するとともに、PASへのカルボキシル基導入量が少なくなるため、優れた機械物性や耐薬品性を発現しにくくなる傾向にある。よって、カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物の添加時期は、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率が80%未満の時点が好ましく、70%未満の時点がより好ましく、脱水工程完了後から重合開始までの間がさらに好ましく、重合開始時つまりジハロゲン化芳香族化合物と同時に添加することが最も好ましい。
(A−4)モノハロゲン化化合物
PASを製造する際、カルボキシル基含有量の多いPASを得る目的でカルボキシル基含有モノハロゲン化化合物を添加することも好ましい態様の一つである。カルボキシル基含有モノハロゲン化化合物としては、カルボキシル基含有モノハロゲン化芳香族化合物が好ましい例として挙げられる。具体的には、2−クロロ安息香酸、3−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、4−クロロフタル酸水素ナトリウム、2−アミノ−4−クロロ安息香酸、4−クロロ−3−ニトロ安息香酸、4’−クロロベンゾフェノン−2−カルボン酸などが挙げられる。重合時の反応性や汎用性などから、3−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、4−クロロフタル酸水素ナトリウムが好ましいモノハロゲン化化合物として挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、4−クロロベンズアミド、4−クロロベンゼンアセトアミド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンチオール、2−アミノ−5−クロロベンゾフェノン、2−アミノ−4−クロロフェノール、2−クロロニトロベンゼン、3−クロロニトロベンゼン、4−クロロニトロベンゼン、4−クロロフタル酸無水物などのモノハロゲン化化合物、およびそれらの混合物を用いることも可能である。
モノハロゲン化化合物を使用する場合、その使用量は、スルフィド化剤100モル当たり0.01モル以上20モル未満が好ましく、より好ましくは0.1モル以上15モル未満、さらに好ましくは1.0モル以上10モル未満、特に好ましくは2.0モル以上8モル未満の範囲である。スルフィド化剤100モル当たり、モノハロゲン化化合物が0.01モル未満であると、得られるPASのカルボキシル基量が少なくなる。スルフィド化剤100モル当たり、モノハロゲン化化合物が20モル以上であると、得られるPASの分子量が低下し、機械物性や耐薬品性が低下する傾向にある。
また、ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物などのハロゲン化化合物の合計量を特定の範囲にすることが好ましい。スルフィド化剤100モルに対してハロゲン化化合物の合計量を98モル以上110モル未満にすることが好ましく、100モル以上108モル未満がより好ましく、103モル以上107モル未満が一層好ましい。スルフィド化剤100モルに対してハロゲン化化合物の合計量が98モル未満であると、得られるPASが分解する傾向にある。スルフィド化剤100モルに対してハロゲン化化合物の合計量が110モル以上であると、得られるPASの分子量が低下し機械物性や耐薬品性が低下する傾向にある。なお、ハロゲン化化合物としては、上述のジハロゲン化芳香族化合物や反応性官能基を有するモノハロゲン化芳香族化合物のみならず、後述の分岐・架橋剤で使用するトリハロゲン化以上のポリハロゲン化化合物も含む。
モノハロゲン化化合物の添加時期には特に制限はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。脱水工程時に添加すると、脱水工程時にモノハロゲン化化合物が揮散しないような還流装置が必要である。また、重合途中(加圧状態)で添加するには圧入装置が必要であるとともに、重合途中からモノハロゲン化化合物が反応することになるため、重合終了時点でモノハロゲン化化合物の消費が完結せず、重合系内に残存する。モノハロゲン化化合物にカルボキシル基含有モノハロゲン化芳香族化合物を使用した場合ではPASへのカルボキシル基導入量が少なくなるため、優れた機械物性や耐薬品性を発現しにくくなる傾向にある。よって、モノハロゲン化化合物の添加時期は、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率が80%未満の時点が好ましく、70%未満の時点がより好ましく、脱水工程完了後から重合開始までの間がさらに好ましく、重合開始時つまりジハロゲン化芳香族化合物と同時に添加することが最も好ましい。
なお、モノハロゲン化化合物は、PASの分子量を調整する目的、またはPASの塩素含有量を低減する目的で使用することも可能であり、カルボキシル基含有モノハロゲン化化合物を用いた場合、PAS中のカルボキシル基含有量の増大のみならず塩素量の低減にも寄与する。
(A−5)重合助剤
PASを製造する際、重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。重合助剤を用いる目的は、得られるPASを所望の溶融粘度に調整するためである。重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸金属塩、水、アルカリ金属塩化物(ただし、塩化ナトリウムは除く)、有機スルホン酸金属塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上同時に用いても差し障りない。なかでも、有機カルボン酸金属塩および/または水が好ましく用いられる。
有機カルボン酸金属塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。具体例としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、およびそれらの混合物などが挙げられる。安価でかつ反応系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが好ましく用いられる。
重合助剤として上記有機カルボン酸金属塩を用いる場合の使用量は、仕込みスルフィド化剤100モルに対し、1モル以上70モル未満の範囲が好ましく、2モル以上60モル未満の範囲がより好ましく、2モル以上55モル未満の範囲がいっそう好ましい。
重合助剤として有機カルボン酸金属塩を使用する場合、その添加時期には特に制限はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。添加の容易性からすると、脱水工程開始時あるいは重合開始時に、スルフィド化剤と同時に添加することが好ましい。
重合助剤として水を用いる場合、水単独で用いることも可能であるが、有機カルボン酸金属塩を同時に用いることが好ましい。これにより重合助剤としての効果をより高めることができ、より少ない重合助剤の使用量でも短時間で所望の溶融粘度のPASを得ることができる傾向にある。この場合の重合系内の好ましい水分量の範囲は、スルフィド化剤100モルに対し80モル以上300モル未満であり、85モル以上180モル未満がより好ましい。水分量が多すぎると反応器内圧の上昇が大きく、高い耐圧性能を有した反応器が必要となるため、経済的にも安全性の面でも好ましくない傾向にある。
また、重合後に水を添加することも好ましい様態の一つである。重合後に水を添加した後の重合系内の水分量の好ましい範囲は、スルフィド化剤100モルに対して100〜1500モルであり、150〜1000モルがより好ましい。
(A−6)分子量調整剤
PASを製造する際、分岐または架橋重合体を形成させ、得られるPASを所望の溶融粘度に調整するために、トリハロゲン化以上のポリハロゲン化合物などの分岐・架橋剤を併用することも可能である。ポリハロゲン化合物としてはポリハロゲン化芳香族化合物が好ましく、具体例としては、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンが挙げられる。
(A−7)重合安定剤
PASを製造する際、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることも可能である。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、チオフェノールの生成など望ましくない副反応を抑制する。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。前述した有機カルボン酸金属塩も重合安定剤として作用する。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、重合反応開始前の反応系内のスルフィド化剤100モルに対して、好ましくは1〜20モル、より好ましくは3〜10モルの割合で使用することが望ましい。この割合が多すぎると経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下したりする傾向にある。なお、反応時にアルカリ金属硫化物の一部が分解して、硫化水素が発生する場合には、その結果生成したアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
重合安定剤の添加時期には特に限定はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。
(A−8)脱水工程
PASを製造する際、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用される。ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。この工程を脱水工程と呼ぶ。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180℃〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。
脱水工程が終了した段階での系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤100モル当たり90〜110モルであることが好ましい。ここで系内の水分量とは脱水工程で仕込まれた水分量から系外に除去された水分量を差し引いた量である。
(A−9)重合工程
PASを製造する際、上記脱水工程で調製した反応物と、ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物とを有機極性溶媒中で接触させて重合反応させる重合工程を行う。重合工程開始に際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、100〜220℃、好ましくは130〜200℃の温度範囲で、ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
重合工程は200℃以上280℃未満の温度範囲で行うことが好ましいが、本発明の効果が得られる限り重合条件に制限はない。例えば、一定速度で昇温した後、245℃以上280℃未満の温度範囲で反応を一定時間継続する方法、200℃以上245℃未満の温度範囲において一定温度で一定時間反応を行った後に245℃以上280℃未満の温度範囲に昇温して反応を一定時間継続する方法、200℃以上245℃未満の温度範囲、中でも230℃以上245℃未満の温度範囲において一定温度で一定時間反応を行った後、245℃以上280℃未満の温度範囲に昇温して短時間で反応を完了させる方法などが挙げられる。なかでも、本発明のPAS樹脂組成物を得るために必要な高いカルボキシル量を有し、なおかつ揮発性成分が少ないPASを得るのに好ましい重合条件としては、有機極性溶媒中で、スルフィド化剤と所定量のジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物を200℃以上280℃未満の温度範囲内で反応させてPASを得る際、
<工程1>230℃以上245℃未満の温度範囲内において、昇降温時間を含めた重合時間(T1a)が30分以上3.5時間未満であり、工程終了時点でのジハロゲン化芳香族化合物の転化率が70〜98モル%になるように反応させてPASのプレポリマーを生成させる工程、および
<工程2>245℃以上280℃未満の温度範囲内において、昇降温時間を含めた重合時間(T2)が5分以上1時間未満で前記PASのプレポリマーを反応させてPASを得る工程、
を経る重合条件が挙げられる。
以下、工程1および工程2について詳述する。
<工程1>高いカルボキシル量を有し、なおかつ揮発性成分が少ないPASを得るには、低い温度でジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物の転化率を十分上げた後に工程2を行うことが好ましい。しかし、重合温度230℃未満の反応では、反応速度が遅いため、ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物の転化率が上がりにくく、得られるPASの溶融粘度が低く、射出成形に好適な溶融流動性が得られにくい傾向にある。また、230℃未満のみの反応でジハロゲン化芳香族化合物の転化率を上げるには長時間の反応を要し、生産効率上好ましくない。そのため、工程1においては、比較的反応速度が高い230℃以上245℃未満の温度範囲で30分以上3.5時間未満、好ましくは40分以上3.5時間未満、より好ましくは1時間以上3時間未満、さらに好ましくは1.5時間以上3時間未満反応を行うのがよい。230℃以上245℃未満の温度範囲でジハロゲン化芳香族化合物の転化率を上げるため、230℃未満の温度範囲での重合時間を短時間にする方が生産効率上好ましい。200℃以上230℃未満の温度範囲での重合時間は2時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましい時間として例示できる。さらに、工程1を含む200℃以上245℃未満の温度範囲内での昇降温時間を含めた重合時間(T1)は1.5時間以上4時間未満であることが好ましく、1.5時間以上3.5時間未満がより好ましく、2時間以上3.5時間以内がさらに好ましい。T1が1.5時間未満の場合、後記のジハロゲン化芳香族化合物の転化率が低くなり、工程2において未反応のスルフィド化剤がプレポリマーの分解を引き起こし、得られたPASを加熱溶融させたときの揮発性成分が増大する傾向にある。また、T1が4時間を超えると生産効率の低下につながる。
かかる重合温度範囲内での平均昇温速度は0.1℃/分以上で行うことが望ましい。なお、前記の平均昇温速度とは、ある一定の温度t2(℃)からある一定の温度t1(℃)までの温度区間(ただしt2<t1とする)を昇温するのに要した時間m(分)から、下記式
平均昇温速度(℃/分)=[t1(℃)−t2(℃)]/m(分)
で計算される平均速度である。従って、前述した平均昇温速度の範囲内であれば、必ずしも一定速度である必要はなく、定温区間があってもよいし、多段で昇温を行っても差し障り無く、一時的に負の昇温速度となる区間があっても良い。
平均昇温速度は2.0℃/分以下がより好ましく1.5℃/分以下がさらに好ましい。平均昇温速度が高すぎると反応の制御が困難になる場合があり、また昇温するために、より大きなエネルギーが必要になる傾向がある。反応初期に激しい反応が起こる場合には240℃以下である程度反応を行った後に240℃を越える温度に昇温する方法で反応を行う方が好ましい傾向にある。
工程1終了時のジハロゲン化芳香族化合物の転化率が70〜98モル%になるように反応させてPASのプレポリマーを生成させることが好ましく、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、いっそう好ましくは90モル%以上になるように反応させることが望ましい。かかる転化率が低い状態で工程2に移行すると、未反応のスルフィド化剤がプレポリマーの分解を引き起こし、得られたPASを加熱溶融させたときの揮発性成分量が増大する傾向にある。また、工程1での転化率が98モル%を超えるまで反応を行うと、長い重合時間が必要となるため生産効率の低下につながる。なお、ジハロゲン化芳香族化合物(以下DHAと略す)の転化率は、以下の式で算出した値である。DHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(a)ジハロゲン化芳香族化合物をスルフィド化剤に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕]×100%
(b)上記(a)以外の場合
転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕]×100%。
<工程2>工程2の最終温度は275℃以下であることが好ましく、270℃以下がより好ましい。工程2を経ることなく工程1のみで重合を終了させた場合、または工程2の重合時間が極端に短い場合、得られるPASの溶融粘度が低くなり、成形品の強度が低下する傾向にある。また、カルボキシル基含有化合物の反応率が低くなることでPASのカルボキシル基量が少なく、モノハロゲン化化合物を使用する場合は塩素量低減効果も小さい。また、後記するポリマー回収工程においてフラッシュ法を用いる場合、重合物の温度が低いとフラッシュエネルギーが小さくなるため、重合溶媒の気化熱が減少し効率的にフラッシュ回収できないという問題も生じる。工程2の最終温度が280℃以上に達すると、得られるPASの溶融粘度が高くなりすぎるとともに、反応器内圧の上昇が大きくなる傾向にあり、高い耐圧性能を有した反応器が必要となる場合があるため、経済的にも安全性の面でも好ましくない。また、重合温度が高温になるほど、PASに導入されたカルボキシル基が熱分解や変性することにより、PASの機械物性が低下する傾向にある。
工程2の重合時間(T2)は、5分以上1時間未満であることが好ましく、10分以上40分未満であることがより好ましく、10分以上30分未満であることがいっそう好ましい。有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物をアルカリ金属水酸化物存在下で反応させると、NMPなどの有機極性溶媒とアルカリ金属水酸化物とが反応して、アルカリ金属アルキルアミノアルキルカルボキシレートが生成する副反応が進行する。工程2での重合時間(T2)が1時間以上であると、かかる副反応の進行が著しく、得られたPASを溶融加熱したときに副反応物由来の揮発性成分量が増大する傾向にある。また、長い重合時間は生産効率の低下やPASの溶融粘度増大を引き起こすという問題も生じると同時に、PASに導入されたカルボキシル基が熱分解や変性することにより、PASの機械物性が低下する傾向にある。また熱によるPASの主鎖分解、それに伴う機械物性の低下も引き起こす。
なお、工程2での反応は一定温度で行う一段反応、段階的に温度を上げていく多段階反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでもかまわない。
また、工程1の重合時間(T1a)と工程2の重合時間(T2)の比(T1a/T2)を0.5以上にすることが好ましい。かかる比が高いほど、工程1での重合時間を十分確保しジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物の転化率を高めることができると同時に工程2での重合時間を短時間に抑えることができる。また、工程2のような高温での反応を短時間に抑えることでPASに導入されたカルボキシル基の熱分解や変性も抑制することができるため、高い機械物性や耐薬品性を発現することができる。そのため、T1a/T2は1以上がより好ましく、2以上がさらに好ましく、5以上がいっそう好ましい。T1a/T2の上限は特に制限されるものではないが、好ましい溶融流動性を備えたPASを得るうえで、25以下が好ましく、20以下がより好ましい。
また、工程1を含む200℃以上245℃未満の温度範囲での重合時間(T1)と工程2の重合時間(T2)の比(T1/T2)を1.2以上にすることが好ましい。かかる比が高いほど、低い温度での重合時間を十分確保しジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物の転化率を高めることができると同時に工程2での重合時間を短時間に抑えることができる。そのため、T1/T2は3以上がより好ましく、5以上がいっそう好ましい。T1/T2の上限は特に制限されるものではないが、好ましい溶融流動性を備えたPASを得るうえで、30以下が好ましく、25以下がより好ましい。
さらに、工程1開始から工程2終了までの全反応時間(T1+T2)を5時間未満にすることが好ましく、4時間未満にすることがさらに好ましく、3.5時間未満にすることがいっそう好ましい。重合時間の長時間化は生産効率の低下につながるとともに、溶融時の揮発性成分量の増加や溶融流動性の悪化、カルボキシル基の熱分解や変性によるPASの機械物性の低下を引き起こす傾向にある。
重合の際における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。特に、経済性および取扱いの容易さの面からは窒素が好ましい。反応圧力については、使用した原料および溶媒の種類や量、あるいは反応温度等に依存し一概に規定できないので、特に制限はない。
重合反応工程を終えた段階でのPASへのカルボキシル基導入量は、FT−IRでのベンゼン環由来の吸収とカルボキシル基由来の吸収の比較による相対評価で評価することができる。
PASにカルボキシル基を導入するために、重合工程にカルボキシル基含有ハロゲン化芳香族化合物を添加する場合、その化合物の化学式は
Figure 2015046324
で表される。ここで、Xはハロゲン基。Y1はハロゲン基またはカルボキシル基。Y2〜Y5は水素、アルキル基、アルコキシ基、フェニレン基、アミノ基、アミド基、エステル基、イミド基、アセトアミド基、スルホンアミド基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、シアノ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アセチル基、無水物基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基、もしくはそれらの誘導体から選ばれた置換基であり、Y1がハロゲン基の場合、Y2〜Y5の少なくとも1つはカルボキシル基である。つまり、カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物やカルボキシル基含有モノハロゲン化芳香族化合物であり、2種以上の化合物を混合して反応に用いても良い。その反応量は、スルフィド化剤100モルに対し0.1モル以上20モル未満が好ましく、1.0モル以上6モル未満がさらに好ましく、1.5モル以上5モル未満が一層好ましい。ここで、反応量とは、重合工程終了後にサンプリングしたサンプル中に残存するカルボキシル基含有ハロゲン化芳香族化合物をガスクロマトグラフにて定量し、仕込量から残存量を差し引いた値のことである。該反応量が多いほどPASへのカルボキシル基の導入量が多く、高い機械物性や耐薬品性を発現することを意味している。スルフィド化剤100モルに対し反応量が20モル以上となると、得られるPASが低分子量となり、機械物性低下につながる。一方、反応量が0.1モル未満であると、得られるPASのカルボキシル基量が少ないがために機械物性の低下につながる。
(A−10)ポリマー回収
PASを製造する際、重合工程終了後に、重合工程で得られたPAS成分および溶剤などを含む重合反応物からPASを回収する。回収方法としては、例えばフラッシュ法、すなわち重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、0.8MPa以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉粒状にして回収する方法や、クエンチ法、すなわち重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内のPAS成分を析出させ、かつ70℃以上、好ましくは100℃以上の状態で濾別することでPAS成分を含む固体を回収する方法等が挙げられる。
回収方法は、クエンチ法、フラッシュ法いずれかに限定されるものではないが、フラッシュ法は、溶媒回収と同時に固形物の回収が可能であること、回収時間が比較的短いこと、クエンチ法に比較して得られる回収物量が多いことなど、経済的に優れた回収方法であること、および、フラッシュ法にて得られたPASはクロロホルム抽出成分に代表されるようなオリゴマー成分を多く含むため、クエンチ法で得られたPASに比較して、溶融流動性の高いPASを簡便に得やすいことから、フラッシュ法が好ましい回収方法である。
フラッシュ法では、高温高圧状態の重合反応物を常圧の雰囲気中へフラッシュしたときの溶媒の気化熱を利用して効率よく溶媒回収することができる。フラッシュさせるときの重合反応物の温度が低いと溶媒回収の効率が低下し生産性が悪化する。そのためフラッシュさせるときの重合反応物の温度は250℃以上が好ましく、255℃以上がより好ましい。フラッシュさせるときの雰囲気は、窒素または水蒸気などの雰囲気が好ましい。雰囲気の温度は150〜250℃が好ましく、重合反応物からの溶媒回収が不足する場合は、フラッシュ後に150〜250℃の窒素または水蒸気などの雰囲気下で加熱を継続しても良い。
かかるフラッシュ法で得られたPASには重合副生物であるアルカリ金属ハロゲン化物やアルカリ金属有機物などのイオン性不純物を含まれているため、洗浄を行うことが好ましい。洗浄条件としては、かかるイオン性不純物を除去するに足る条件であれば特に限定されるものではない。洗浄液としては例えば水や有機溶媒を用いて洗浄する方法が挙げられる。簡便かつ安価である点、PAS中にオリゴマー成分を含有させて高い溶融流動性を持たせられる点で、水を用いた洗浄が好ましい方法として例示できる。水、酸または酸の水溶液、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液のいずれかの液体にPASを浸漬させる処理を1回以上行うことが好ましく、各洗浄処理の間にはポリマーと洗浄液を分離する濾過工程を経ることがより好ましい。
酸または酸の水溶液にPASを浸漬させる場合は、処理後の洗浄液のpHが2〜8であることが好ましい。酸または酸の水溶液とは、有機酸、無機酸または水に有機酸、無機酸等を添加して酸性にしたものである。使用する有機酸、無機酸としては、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸等が例示できる。酢酸または塩酸が好ましい。
アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液にPASを浸漬させる場合、水溶液中のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の量はPASに対し、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜0.7質量%がさらに好ましい。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液とは、水にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を添加して溶解させたものである。使用するアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩としては、上記有機酸のカルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
洗浄液でPASを洗浄する際の温度は80℃以上220℃以下が好ましく、イオン性不純物の少ないPASを得る点において150℃以上200℃以下がより好ましく、さらには180℃以上200℃以下がより好ましい。

洗浄液に使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましく、PASと洗浄液の割合は、通常、洗浄液1リットルに対し、PAS10〜500gの範囲が好ましく選択される。
いずれの洗浄液を用いても差し支えないが、酸で処理するとより高い溶融流動性が得られるため、好適な方法として例示できる。
洗浄液は洗浄工程のいずれの段階で使用してもよいが、少量の洗浄液で効率的に洗浄を行うには、フラッシュ法にて回収した固形物を80℃以上220℃以下の熱水に浸漬および濾過する処理を数回行った後、150℃以上の酸または酸の水溶液にPASを浸漬させて処理する方法が好ましい。
かくして得られたPASは、常圧下および/または減圧下で乾燥する。かかる乾燥温度としては、120〜280℃の範囲が好ましい。乾燥雰囲気は、窒素、ヘリウム、減圧下などの不活性雰囲気、酸素、空気などの酸化性雰囲気、空気と窒素の混合雰囲気の何れでも良いが、溶融粘度の関係から不活性雰囲気が好ましい。乾燥時間は、0.5〜50時間が好ましい。
得られたPASを、揮発性成分を除去するために、あるいは架橋高分子量化して好ましい溶融粘度に調整するために、酸素含有雰囲気下、130〜260℃の温度で0.1〜20時間処理することも可能である。
(A−11)生成PAS
かくして得られたPASは、カルボキシル基含有量が100μmol/gを超え400μmol/g未満であることが必要である。カルボキシル基含有量は、130μmol/g以上が好ましく、150μmol/g以上がより好ましく、160μmol/g以上がいっそう好ましい範囲である。カルボキシル基含有量は、350μmol/g未満が好ましく、300μmol/g未満がより好ましく、250μmol/g未満がいっそう好ましい範囲である。本発明では、このような範囲のカルボキシル基含有量を有するPASと、充填材を配合して得られるPAS樹脂組成物が、従来にない優れた機械物性や耐薬品性を有することを見出したものである。PASのカルボキシル基含有量が100μmol/g以下であると充填材との相互作用が低下し、得られる樹脂組成物から作成した成形品の機械物性や耐薬品性向上効果が小さくなる。一方、PASのカルボキシル基含有量が400μmol/g以上であると、揮発性成分量が増大する傾向にあるとともに、成形品にボイドが入りやすくなる。また、カルボキシル基含有モノハロゲン化化合物を用いてPASの末端へカルボキシル基を導入する場合に、カルボキシル含有量が400μmol/g以上のPASを得るには、末端に多量のカルボキシル基を導入する必要が有る。すなわち、末端数が多くなるため、PASの分子量が低くなり、本発明に必要な重量平均分子量10000以上100000未満のPASを得るのが困難となる。

本発明において、PASの重量平均分子量は10000以上100000未満が必要である。本発明では、通常のPASより多くカルボキシル基を含有するPASを用いることで、得られる成形品の機械物性や耐薬品性を飛躍的に向上させる。一方でPASの分子量が低いと、PAS自体の機械物性が大幅に低下するため、たとえカルボキシル基含有量が多いとしても、充填材を添加して得られる樹脂組成物から作成する成形品の機械物性や耐薬品性は低下する傾向にある。また、PASの分子量が高すぎると、溶融時の粘度が大幅に増大し、射出成形時に金型に樹脂組成物が入り込めず成形品が得られない傾向にある。PASの重量平均分子量は15000以上が好ましく、16000以上がより好ましく、17000以上がさらに好ましい。PASの重量平均分子量は80000未満が好ましく、60000未満がより好ましく、40000未満がさらに好ましい。
また、PASの特性として、真空下320℃×2時間加熱溶融した際に揮発する揮発性成分量が1.0質量%以下であることが好ましい。PASに含まれる揮発性成分が多い場合、充填材を添加して得られるPAS樹脂組成物を射出成形などで各種製品に成形する際、金型汚れや金型ベント詰まりを引き起こし生産効率が悪化するという問題や、成形品中に揮発性成分がガスとしてボイド形成を引き起こし、優れた機械物性や耐薬品性発現の阻害要因となる。そのため揮発性成分量は少ないことが望まれており、0.9質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下がいっそう好ましい。揮発性成分量は少ないことが好ましいため下限はないものの、通常、0.01質量%以上は発生する。
なお、上記揮発性成分量とは、PASを真空下で加熱溶融した際に揮発する成分が冷却されて液化または固化した付着性成分の量を意味しており、PASを真空封入したガラスアンプルを管状炉を用いて、上記条件で加熱することにより測定されるものである。
PASを得る際、カルボキシル基含有モノハロゲン化化合物を重合時に添加する場合、PASの末端塩素の一部がカルボキシル基に置き換わるため、PASの塩素含有量が低減する傾向にある。電気電子部品分野では、環境に対する取り組みとして低ハロゲン化への動きが活発化しており、塩素含有量の低いPASは環境負荷低減材料としての効果も有している。カルボキシル基含有モノハロゲン化化合物を用いた重合反応で得られるPASの塩素含有量は、3500ppm以下が好ましく、より好ましくは3000ppm以下、さらに好ましくは2500ppm以下である。
PAS樹脂組成物に用いるPASとしては、2種以上のPASを併用することも可能である。2種以上のPASを併用した場合は、PAS樹脂組成物に含まれる全てのPASの平均のカルボキシル基含有量および重量平均分子量が本発明の特定の範囲内にあることが必要である。
(B)充填材
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、上記のPASに充填材を配合することが必要である。特定のPASに充填材を添加することで、飛躍的に機械物性や耐薬品性が向上する。充填材としては無機充填材や有機充填材が挙げられる。
無機充填材としては、ガラス繊維、ガラスミルド繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカ、ワラステナイトウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、石コウ繊維、金属繊維、バサルト繊維などの繊維状無機充填材;タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、雲母、フェライト、パイロフィライト、ベントナイト、アルミナシリケート、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、黒鉛などの非繊維状無機充填材が挙げられる。
有機充填材としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、フッ素樹脂繊維、熱硬化性樹脂繊維、エポキシ樹脂繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリフッ化ビニリデン系繊維、セルロース繊維などの繊維状有機充填材;エボナイト粉末、コルク粉末、木粉などの非繊維状有機充填材が挙げられる。
これら無機充填材および有機充填材は中空であってもよい。これら充填材を2種類以上併用することも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
繊維状充填材は、繊維形状が限定されるものではなく、短繊維でも長繊維でも使用することができる。短繊維とは、一般に、配合前の平均繊維長1mm以上10mm未満の繊維状充填材のことを言う。また、長繊維とは、一般に、配合前の平均繊維長が10mm以上50mm未満の範囲の繊維状充填材のことを言う。一般的にはストランド状の繊維のカッティングや破砕により調製される。ここで、平均繊維長とは、繊維長の寄与を考慮した下記の式から算出される平均繊維長を指す。
平均繊維長(Lw)=Σ(Wi×Li)/ΣWi
=Σ(πri×Li×ρ×ni×Li)/Σ(πri×Li×ρ×ni)
繊維径ri、および密度ρが一定である場合、上式は簡略化され、以下の式となる。
平均繊維長(Lw)=Σ(Li×ni)/Σ(Li×ni)
Li:繊維状充填材の繊維長
ni:繊維長Liの繊維状充填材の本数
Wi:繊維状充填材の重量
ri:繊維状充填材の繊維径
ρ:繊維状充填材の密度。
本発明では、充填材の種類は特定されるものではないが、樹脂組成物としての充填材による補強効果を考慮すると、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状無機充填材が好ましい。炭素繊維は機械物性向上効果のみならず成形品の軽量化効果も有している。また、充填材が炭素繊維の場合、PAS樹脂組成物の機械物性や耐薬品性が向上する効果が、より大きく発現するのでより好ましい。PAN系、ピッチ系、レーヨン系の炭素繊維の中でも成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維が好ましい。
また、充填材にはサイジング剤が付与されていることが、毛羽、糸切れの発生を抑制でき、高次加工性を向上させることができると同時に、PAS樹脂組成物から得られる成形品の機械物性や耐薬品性を向上することができ、好ましい。炭素繊維の場合、サイジング剤を付与することで、その機械物性向上効果はより高いものとなる。サイジング剤の付着量は、特に限定しないが、充填材に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜2質量%がさらに好ましい。サイジング剤の付着量が0.01質量%未満では、PAS樹脂組成物の機械物性向上効果が現れにくい。10質量%を越える付着量では、PAS樹脂組成物の溶融時にサイジング剤が揮散し、ガス発生により作業環境が悪化する傾向にある。サイジング剤としては、エポキシ樹脂、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、乳化剤あるいは界面活性剤などが挙げられ、エポキシ樹脂が好ましい。また、これらは1種または2種以上を併用してもよい。
(B)充填材の配合量としては、(A)PAS樹脂100質量部に対し、10〜250質量部の範囲が好ましく、20〜150質量部の範囲がより好ましく、30〜100質量部の範囲がさらに好ましい。(B)充填材の配合量が250質量部を超えると、PAS樹脂組成物の溶融流動性が低下する。配合量が10質量部未満では充填材としての補強効果が小さいため、優れた機械物性や耐薬品性向上効果が発現し難い傾向にある。
(C)オレフィン系共重合体
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に、オレフィン系共重合体をさらに配合することも好ましい態様の一つである。オレフィン系共重合体としては、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、水酸基およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有するオレフィン系共重合体がより好ましい。中でもエポキシ基含有オレフィン系共重合体が、PAS樹脂との相溶性が良好で高靱性が発現するために、好ましく用いられる。エポキシ基含有オレフィン系共重合体としては、オレフィン系単量体成分にエポキシ基を有する単量体成分を共重合して得られるオレフィン共重合体が挙げられる。また、主鎖中に二重結合を有するオレフィン系共重合体の二重結合部分をエポキシ化した共重合体も使用することができる。
オレフィン系共重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入するための官能基含有成分の例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、およびシトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
エポキシ基を含有する単量体成分の導入量は、エポキシ基含有オレフィン系共重合体の原料となる単量体全体に対して0.001モル%以上、好ましくは0.01モル%以上とするのが好ましい。また、上記導入量は、エポキシ基含有オレフィン系共重合体の原料となる単量体全体に対して40モル%以下、好ましくは35モル%以下とするのが好ましい。
オレフィン系共重合体としては、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合成分とするエポキシ系含有オレフィン系共重合体が好ましく挙げられる。上記α−オレフィンとしては、エチレンが好ましく挙げられる。また、これら共重合体には、さらにアクリル酸、メタクリル酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびそのNa、Zn、K、Ca、Mgなどの塩が共重合されたオレフィン系共重合体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等から選ばれた単量体成分を共重合することも可能である。
また、オレフィン系共重合体として、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体にマレイン酸無水物、琥珀酸無水物、フマル酸無水物などの酸無水物が導入されたオレフィン系共重合体も使用することができる。
かかるオレフィン系共重合体は、ランダム、交互、ブロック、グラフトのいずれの共重合様式でも良い。
特にα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合してなるオレフィン系共重合体では、α−オレフィン60〜99質量%と、α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜40質量%とを共重合してなるオレフィン系共重合体が特に好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとは、
Figure 2015046324
で示される化合物である。ただし、式中のRは水素原子または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状低級アルキル基を示す。具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルからなるオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−ポリスチレン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−PMMA、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、およびエチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。中でも、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、およびエチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が好ましく用いられる。
エチレンとα,β−不飽和カルボン酸からなるオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/アクリル酸、エチレン/メタクリル酸(E/MAA)、エチレン/アクリル酸/アクリル酸n−ブチル、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸n−ブチル、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸イソ−ブチル、エチレン/アクリル酸/アクリル酸イソ−ブチル、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸n−ブチル、エチレン/アクリル酸/メタクリル酸メチル、エチレン/アクリル酸/エチルビニルエーテル、エチレン/アクリル酸/ブチルビニルエーテル、エチレン/アクリル酸/アクリル酸メチル、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸エチル、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチル、エチレン/アクリル酸/メタクリル酸n−ブチル、エチレン/メタクリル酸/エチルビニルエーテル、およびエチレン/アクリル酸/ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
かかる(C)オレフィン系共重合体の配合量としては、(A)PAS樹脂100質量部に対し、1〜30質量部の範囲が好ましく、3〜25質量部の範囲がより好ましく、5〜20質量部の範囲がさらに好ましい。(C)オレフィン系共重合体の配合量が30質量部を越えると、PAS樹脂組成物の溶融流動性が低下し、1質量部未満では優れた機械物性や耐薬品性向上効果が発現し難い傾向にある。
オレフィン系共重合体としては、上記官能基含有オレフィン系共重合と共に、官能基を含有しないオレフィンホモポリマーやオレフィン系共重合体を用いても良い。例えば、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体が挙げられる。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも炭素数6から12であるα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上、改質効果の一層の向上が見られるためより好ましい。その他の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリイソプレン、ブテン−イソプレン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、および上記α−オレフィンと、既述したα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルからなるオレフィン系共重合体などが例示できる。
(D)アルコキシシラン化合物
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物において、(A)PAS樹脂100質量部に対し、(D)アルコキシシラン化合物を0.05〜5質量部をさらに配合することが好ましい。アルコキシシラン化合物としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物を用いてもよい。該シラン化合物の添加により機械的強度、靱性、低バリ性などの物性が向上する。添加量が少なすぎると物性向上効果が小さく、添加量が多すぎると溶融粘度が上昇し、射出成形が困難となる。そのため、添加量は0.05〜3質量部がより好ましい。
かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物;γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物;γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物;およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
(E)その他添加剤
PAS樹脂組成物の難燃性を改良するために難燃剤を配合しても良い。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系難燃剤;およびブロム系難燃剤、塩素系難燃剤、燐系難燃剤、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤等が挙げられる。これらの中でも燐系難燃剤が好ましい。
燐系難燃剤としては、燐原子を有する化合物であれば特に制限されず、赤燐、有機燐化合物、および無機系燐酸塩等が挙げられる。有機燐化合物としては、例えば、燐酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸誘導体、ホスホン酸塩、ホスフィン酸、ホスフィン酸誘導体、ホスフィン酸塩、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、ビホスフィン、ホスホニウム塩、ホスファゼン、ホスファフェナントレン誘導体等が挙げられる。
かかる難燃剤成分の含有量は、樹脂組成物全体の好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下の範囲が選択される。
PAS樹脂組成物の耐摩耗性を向上させる観点から、ポリテトラフルオロエテレン、エチレン−テトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;シリコーンオイル等を添加しても良い。かかる添加剤の添加量は、樹脂組成物全体の0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
さらに、本発明のPAS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、オレフィン系共重合以外の樹脂をさらに添加することが可能である。例えば、柔軟性の高い熱可塑性樹脂を少量添加することにより、柔軟性および耐衝撃性をさらに改良することが可能である。ただし、この量がPAS樹脂100質量部に対し30質量部を超えるとPAS樹脂本来の特徴が損なわれるため好ましくなく、特に25質量部以下が好ましい。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、および四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲において、フェノール系化合物およびリン系化合物の中から選ばれた1種以上の酸化防止剤を含有せしめることも可能である。
フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物が好ましく用いられる。具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−t−ブチル−(5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、および1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。中でも、エステル型高分子ヒンダードフェノールタイプが好ましく、具体的には、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、および3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが好ましく用いられる。
次に、リン系酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンホスファイト、ジ−ステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイト、および3,5−ジーブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステルなどが挙げられる。中でも、PAS樹脂のコンパウンド中に酸化防止剤の揮発や分解を少なくするために、酸化防止剤の融点が高いものが好ましい。具体的にはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、およびビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどが好ましく用いられる。
かかる酸化防止剤の添加量は、少なすぎると酸化防止効果が発現せず、多すぎると溶融混練時や射出成形時にガス化して作業環境の悪化につながることから、樹脂組成物全体の0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜3質量%がより好ましい。
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。イソシアネート系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤;タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤;モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸;エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤;次亜リン酸塩などの着色防止剤;および滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの添加剤を配合することができる。上記化合物の添加量は、PAS樹脂本来の特性を損なわないために、何れも組成物全体の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
本発明のPAS樹脂組成物は、上記の(A)PAS樹脂および(B)充填材、ならびに必要に応じて(C)オレフィン系共重合体、(D)アルコキシシラン化合物、および(E)その他添加剤を溶融混練することによって得ることができる。溶融混練は、原料を、単軸または2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、およびミキシングロールなど公知の溶融混練機に供給して、PAS樹脂の融解ピーク温度+5〜100℃の加工温度の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。溶融混練時の各種添加剤の分散性を上げるためには、せん断力を比較的強くすることが好ましい。具体的には、二軸押出機を使用し、ニーディング部を2箇所以上有するスクリューを用いることが好ましく、ニーディング部が3箇所以上あることがより好ましい。二軸押出機のL/D(L:スクリュー長さ、D:スクリュー直径)としては、20以上が望ましく、30以上がより好ましい。この際のスクリュー回転数としては、200〜500回転/分の範囲が選択され、250〜400回転/分がより好ましく選択される。
混合時の樹脂温度は、上述の通りPAS樹脂の融解ピーク温度+5〜100℃の範囲が好ましく、+10〜70℃の範囲がより好ましい。混練温度がPAS樹脂の融解ピーク+5℃よりも低い場合には、部分的に融解しないPAS樹脂の存在により、組成物の粘度が大幅に上昇し、二軸押出機への付加が大きくなるため生産性上好ましくない。一方、混練温度がPAS樹脂の融解ピーク+100℃を越える場合には、PAS樹脂の分解や変性が生じるため好ましくない。
原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練しさらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも勿論可能である。
本発明のPAS樹脂組成物から得られる成形品は、優れた機械物性や耐薬品性を有している。本発明のPAS樹脂組成物は、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形等の用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維およびパイプなどの押出成形品に成形する用途にも用いることができる。
本発明のPAS樹脂組成物の用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、可変蓄電器ケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、CD・DVD・ブルーレイディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、燃料タンク、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナー等の自動車・車両関連部品、およびその他各種用途が例示できる。
以下、本発明の方法を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、物性の測定法は以下の通りである。
[カルボキシル基含有量]
PAS樹脂のカルボキシル基含有量は、フーリエ変換赤外分光装置(以下FT−IRと略す)を用いて算出した。
まず、標準物質として安息香酸をFT−IRにて測定し、ベンゼン環のC−H結合の吸収である3066cm−1のピークの吸収強度(b1)とカルボキシル基の吸収である1704cm−1のピークの吸収強度(c1)を読み取り、ベンゼン環1単位に対するカルボキシル基量(U1)、(U1)=(c1)/[(b1)/5]を求めた。次に、PAS樹脂を320℃にて1分間溶融プレスした後、急冷して得られた非晶フィルムのFT−IR測定を行った。3066cm−1の吸収強度(b2)と1704cm−1の吸収強度(c2)を読み取り、ベンゼン環1単位に対するカルボキシル基量(U2)、(U2)=(c2)/[(b2)/4]を求めた。PAS樹脂がPPS樹脂の場合、フェニレンスルフィド単位から構成されていることから、PPS樹脂1gに対するカルボキシル基含有量を以下の式から算出した。PPS樹脂のカルボキシル基含有量(μmol/g)=(U2)/(U1)/108.161×1000000
なお、PPS樹脂にメタフェニレンスルフィド単位を含有している場合、780cm−1に吸収が観察されるが、以下のPPS−1〜9では該吸収が観察されなかった。
[重量平均分子量]
PAS樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:SSC−7100(センシュー科学)
カラム名:shodex UT−806M
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2質量%)。
[塩素含有量]
ダイアインスツルメンツ社製自動試料燃焼装置AQF−100を用い、PAS樹脂1〜2mgを計量した後、最終温度1000℃で燃焼させ、発生したガス成分を希薄な酸化剤を含んだ10mLの水に吸収させた。吸収液を炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム混合水溶液を移動相とするDIONEX社製イオンクロマトグラフィーシステムICS1500に供し、吸収液に含まれる塩素量を測定した。測定に供したPAS樹脂の質量と、吸収液中の塩素量から、PAS樹脂の全塩素含有量を算出した。
[揮発性成分量]
腹部が100mm×25mmφ、首部が255mm×12mmφ、肉厚が1mmのガラスアンプルにPAS樹脂3gを計り入れてから、ガラスアンプルを真空封入した。このガラスアンプルの胴部のみを、アサヒ理化製作所製のセラミックス電気管状炉ARF−30Kに挿入して320℃で2時間加熱した。PAS樹脂から揮発した、揮発性ガスが、ガラスアンプルの管状炉によって加熱されていない部分に付着した。アンプルを取り出した後、揮発性ガスの付着したアンプル首部をヤスリで切り出して秤量した。次いで付着ガスを5gのクロロホルムで溶解して除去した後、60℃のガラス乾燥機で1時間乾燥してから、該アンプル首部を再度秤量した。ガスを除去した前後のアンプル首部の質量差から揮発性成分量(ポリマーに対する質量%)を算出した。
[融点]
パーキンエルマー社製DSC7を用い、サンプル約5mgを、窒素雰囲気下、昇温・降温速度20℃/分で、
(1)50℃から340℃まで昇温した後、340℃で1分間ホールド;
(2)100℃まで降温;
(3)再度340℃まで昇温した後、340℃で1分間ホールド;
(4)再度100℃まで降温;
した際、(3)の工程で観測される融解ピーク温度を融点(Tm)とした。
[(A)PAS樹脂の合成]
以下の合成例1〜9にてPPS−1〜9を合成した。合成したPPSの各種物性を表1に示す。
[合成例1(PPS−1の合成)]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.26kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム3.03kg(72.69モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、およびイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら、反応容器を225℃まで約3時間かけて徐々に加熱して脱水工程を行った。水9.82kgおよびNMP0.28kgが留出した時点で加熱を終え、冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.01モルであった。また、硫化水素の飛散量は1.4モルであったため、本脱水工程後の系内のスルフィド化剤の量は68.6モルであった。なお、硫化水素の飛散に伴い、系内には水酸化ナトリウムが新たに1.4モル生成している。
その後、反応容器を200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.08kg(68.60モル)、p−クロロ安息香酸0.32kg(2.06モル)およびNMP9.37kg(94.50モル)を加えた後に、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら以下の反応条件で重合工程を行った。
200℃から230℃までを0.8℃/分で38分かけて昇温した。
<工程1>引き続き230℃から245℃までを0.6℃/分で25分かけて昇温した。T1は63分、T1aは25分であった。工程1終了時に反応物をサンプリングし、サンプル中に残存するp−DCB量をガスクロマトグラフにて定量した結果からp−DCBの消費率、つまり転化率を算出したところ、p−DCBの転化率は64%であった。
<工程2>工程1に引き続き、245℃から276℃までを0.6℃/分で52分かけて昇温し、その後276℃の定温状態で65分反応を行った。T2は117分であった。
工程2終了後、直ちにオートクレーブの底栓弁を開放し、内容物を撹拌機付き装置にフラッシュさせ、重合時に使用したNMPの95%以上が揮発除去されるまで230℃の撹拌機付き装置内で1.5時間乾固し、PPSと塩類を含む固形物を回収した。
得られた回収物およびイオン交換水74リットルを攪拌機付きオートクレーブに入れ、75℃で15分洗浄した後、フィルターで濾過し、ケークを得た。得られたケークを75℃のイオン交換水で15分洗浄、濾過する操作を3回行った後、ケーク、イオン交換水74リットルおよび酢酸0.4kgを攪拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターで濾過し、ケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することで、乾燥PPSを得た。
[合成例2(PPS−2の合成)]
以下の反応条件で工程1と工程2を行ったこと以外は合成例1と同様の操作を行った。
<工程1>230℃から238℃までを0.6℃/分で13分かけて昇温した。238℃の定温状態で128分反応を行った後、238℃から245℃までを0.8℃/分で9分かけて昇温した。T1は188分、T1aは150分であった。p−DCBの転化率は94.5%であった。
<工程2>工程1に引き続き、245℃から255℃までを0.8℃/分で12分かけて昇温した。工程2の重合時間(T2)は12分であった。
[合成例3(PPS−3の合成)]
p−クロロ安息香酸のかわりに、2,5−ジクロロ安息香酸を0.39kg(2.06モル)加えたこと以外は、合成例2と同様の操作を行った。工程1終了時のp−DCBの転化率は94.5%であった。
[合成例4(PPS−4の合成)]
96%水酸化ナトリウムを3.09kg(74.06モル)加えて脱水工程を行い、p−DCBを9.98kg(67.91モル)、2,5−ジクロロ安息香酸を0.66kg(3.43モル)加えたこと以外は、合成例3と同様の操作を行った。工程1終了時のp−DCBの転化率は94%であった。
[合成例5(PPS−5の合成)]
96%水酸化ナトリウムを2.94kg(70.63モル)加えて脱水工程を行い、p−DCBを10.39kg(70.66モル)加え、p−クロロ安息香酸は加えなかったこと以外は、合成例1と同様の操作を行った。工程1終了時のp−DCBの転化率は65%であった。
[合成例6(PPS−6の合成)]
96%水酸化ナトリウムを2.94kg(70.63モル)加えて脱水工程を行い、p−DCBを10.39kg(70.66モル)加え、p−クロロ安息香酸は加えなかったこと以外は、合成例2と同様の操作を行った。工程1終了時のp−DCBの転化率は93%であった。
[合成例7(PPS−7の合成)]
96%水酸化ナトリウムを2.99kg(71.83モル)加えて脱水工程を行い、p−DCBを10.19kg(69.29モル)加え、p−クロロ安息香酸は0.19kg(1.20モル)加えたこと以外は、合成例2と同様の操作を行った。工程1終了時のp−DCBの転化率は95%であった。
[合成例8(PPS−8の合成)]
96%水酸化ナトリウムを3.23kg(77.49モル)加えて脱水工程を行い、p−DCBを9.68kg(65.86モル)加え、p−クロロ安息香酸は1.07kg(6.86モル)加えたこと以外は、合成例2と同様の操作を行った。工程1終了時のp−DCBの転化率は92.5%であった。
[合成例9(PPS−9の合成)]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.26kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム3.03kg(72.69モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、およびイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら、反応容器を225℃まで約3時間かけて徐々に加熱して脱水工程を行った。水9.82kgおよびNMP0.28kgが留出した時点で加熱を終え、冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.01モルであった。また、硫化水素の飛散量は1.4モルであったため、本脱水工程後の系内のスルフィド化剤の量は68.6モルであった。なお、硫化水素の飛散に伴い、系内には水酸化ナトリウムが新たに1.4モル生成している。
その後、反応容器を200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.08kg(68.60モル)およびNMP9.37kg(94.50モル)を加えた後に、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら以下の反応条件で重合工程を行った。
200℃から230℃までを0.8℃/分で38分かけて昇温した。
<工程1>引き続き230℃から238℃までを0.6℃/分で13分かけて昇温した。238℃の定温状態で128分反応を行った後、238℃から245℃までを0.8℃/分で9分かけて昇温した。T1は188分、T1aは150分であった。p−DCBの転化率は94.5%であった。
<工程2>工程1終了後、直ちにp−クロロ安息香酸0.32kg(2.06モル)を圧入し、工程1に引き続き、245℃から255℃までを0.8℃/分で12分かけて昇温した。工程2の重合時間(T2)は12分であった。
工程2終了後は合成例1と同様の操作を行った。
Figure 2015046324
[(B)充填材]
ガラス繊維:日本電気硝子社製 T−747H、3mm長、平均繊維径10.5μm。
炭素繊維:ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理および表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm、表面酸素濃度[O/C]0.06、ストランド引張強度は4880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaの連続炭素繊維に、付着量が1.0質量%となるようサイジング剤であるポリグリセロールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量140g/eq)を付着させ、200℃で乾燥を行った後、ロータリーカッターで平均繊維長6.0mmにカットした炭素繊維。
なお、表面酸素濃度比は、表面酸化処理を行ったあとの炭素繊維を用いて、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めた。まず、炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保った。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせた。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出した。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とした。
[(C)オレフィン系共重合体]
エチレン/グリシジルメタクリレート=88/12(質量%)共重合体(住友化学社製 ボンドファスト−E)
[(D)アルコキシシラン化合物]
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 KBM303)
[実施例1〜10、比較例1〜6]
(B)充填材以外の材料を予め表2または表3に示す割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(L/D=30)の元込め部に投入した。一方、(B)充填材は表2または表3に示す割合で該二軸押出機のサイドフィーダーから投入をおこなった。溶融混練は、温度320℃、回転数200rpmの条件で実施した。溶融混練後、二軸押出機から吐出された樹脂組成物をストランドカッターによりペレット化した後、120℃にて1晩熱風乾燥して、樹脂組成物のペレットを得た。
引張試験は以下の条件で行った。住友重機械工業製射出成形機(SE75DUZ−C250)を用い、樹脂温度310℃、金型温度130℃にて、引張試験用のASTM1号ダンベル試験片を成形し、得られた試験片を用い、支点間距離114mm、引張速度10mm/min、温度23℃×相対湿度50%条件下で、ASTM D638に従って引張強度を測定した。また、耐薬品性試験として、同試験片をロングライフクーラント(LLC)50%水溶液に浸漬させ、130℃で1000時間処理した後の引張強度を前記同条件で測定し、浸漬前の引張強度に対する強度保持率を測定した。
曲げ試験は以下の条件で行った。前記射出成形機を用い、前記と同じ成形条件にて長さ127mm、幅12.7mm、厚み6.35mmの曲げ試験片を成形した。得られた試験片を用い、支点間距離100mm、クロスヘッド速度3mm/min、温度23℃×相対湿度50%条件下で、ASTM D790に従って曲げ強度を測定した。
ウェルド強度試験は以下の条件で行った。両端にゲートを有し、試験片中央部付近にウェルドラインを有するASTM1号ダンベル片を、前記射出成形機を用い、前記と同じ成形条件で作成した。得られた試験片を用い、支点間距離114mm、引張速度10mm/min、温度23℃×相対湿度50%条件下で、ASTM D638に従って引張強度を測定した。この試験により得られた引張強度の値をウェルド強度とする。また、耐薬品性試験として、同試験片をLLC50%水溶液に浸漬させ、130℃で1000時間処理した後の引張強度を前記同条件で測定し、浸漬前の引張強度に対する強度保持率をウェルド強度保持率とした。
引張強度、曲げ強度、ウェルド強度の測定結果を表2および表3に示す。
Figure 2015046324
Figure 2015046324
カルボキシル基含有量が100〜400μmol/g、かつ重量平均分子量が10000〜100000のPASを用い、充填材と溶融混練することで、機械物性および耐薬品性が飛躍的に向上し、特に、ウェルド部分での耐薬品性の向上に効果的であることがわかる。
かかる課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定のカルボキシル基含有量のPASと充填材とを用いたPAS樹脂組成物において、機械物性や耐薬品性が飛躍的に向上することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(A)カルボキシル基含有量が100μmol/gを超え400μmol/g未満かつ重量平均分子量が10000以上100000未満のポリアリーレンスルフィド樹脂、および(B)サイジング剤が付与された充填材を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。

Claims (8)

  1. (A)カルボキシル基含有量が100μmol/gを超え400μmol/g未満かつ重量平均分子量が10000以上100000未満のポリアリーレンスルフィド樹脂、および(B)充填材を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  2. p−アリーレンスルフィド単位が90モル%以上のポリアリーレンスルフィド樹脂である請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  3. (B)充填材が繊維状無機充填材である請求項1または2いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 前記(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂が、真空下320℃×2時間加熱溶融した際に揮発する揮発性成分量が1.0質量%以下のポリアリーレンスルフィド樹脂である請求項1〜3のいずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 前記(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対し、(B)充填材を10〜250質量部含む請求項1〜4のいずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  6. 前記(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対し、さらに(C)オレフィン系共重合体1〜30質量部を配合してなる請求項1〜5のいずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  7. (C)オレフィン系共重合体が、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有するオレフィン系共重合体である請求項6記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  8. (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対し、さらに(D)アルコキシシラン化合物を0.05〜5質量部を配合してなる請求項1〜7のいずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
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