JP2018053118A - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

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武志 東原
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悠司 山中
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Abstract

【課題】ポリアリーレンスルフィドの高い耐熱性を維持しながら高い柔軟性を有すると共に、溶融滞留安定性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることを課題とする。【解決手段】(A)ポリアリーレンスルフィド、(B)ポリアリーレンスルフィド単位1〜99重量%とポリオルガノシロキサン単位99〜1重量%を含むポリアリーレンスルフィドブロック共重合体、(C)ポリシロキサンを含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィドの高い耐熱性を維持しながら高い柔軟性を有すると共に、溶融滞留安定性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下PASと略す)は、優れた耐熱性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有しており、射出成形、押出成形用途を中心として各種電気・電子部品、機械部品、自動車部品、フィルム、繊維など幅広い用途に用いられている。しかしながらPASは柔軟性が低く、柔軟性向上検討が種々行われている。例えば、柔軟性の指標である耐衝撃性の向上を目的に、シリコーン系樹脂を用いたPAS樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。また、特許文献1同様にシリコーン系ポリマーを用いることで耐コロナ性が向上する樹脂組成物が開示されている(特許文献2)
特開2011−111468号公報 国際公開第2015/064499号
特許文献1ではPPS樹脂100重量部に対してシロキサンゴム重合体含有多層構造重
合体5〜50重量部を含むことで耐衝撃性の高いPPS樹脂組成物が開示されているが、耐熱性の低いエチレン性不飽和単量体重合体などを含むシロキサンゴム重合体を使用しており、溶融加熱時は分解などによる揮発性ガス成分の発生量が多いと予想される。また、シロキサンゴム重合体含有多層構造重合体は、PPS樹脂との相溶性が低く、化学的な結合も有していないことから、シロキサンゴム重合体含有多層構造重合体の分散性が悪く、粗大分散が生じているとともに溶融滞留安定性も低いと予想される。
特許文献2ではPPS樹脂100重量部に対してシリコーン系ポリマー7〜80重量部を溶融混練して耐コロナ性を向上する方法が開示されているが、特許文献1同様、溶融滞留安定性が低いと予想される。
そこで本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、PASとシリコーンポリマーに、ポリアリーレンスルフィド単位とポリオルガノシロキサン単位を有するポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を含ませることで、高い耐熱性を維持しながら高い柔軟性を有すると共に高い溶融滞留安定性が発現することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の通りである、
1.(A)ポリアリーレンスルフィド、(B)ポリアリーレンスルフィド単位1〜99重量%とポリオルガノシロキサン単位99〜1重量%を含むポリアリーレンスルフィドブロック共重合体、(C)ポリシロキサンを含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
2.(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体のガラス転移温度が80℃以下である前記1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
3.(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の冷結晶化温度が100℃以下である前記1または2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
4.(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体が、ポリアリーレンスルフィド単位40〜80重量%とポリオルガノシロキサン単位20〜60重量%を含むものである前記1〜3いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
5.(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体が、重量平均分子量が35,000以上100,000以下である前記1〜4いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
6.(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体が、一般式(A)で表される構造を有し、下記で定義される末端官能基率が85%以上である(X)ポリアリーレンスルフィドと、官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンを反応させて得られたものであることを特徴とする前記1〜5いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
末端官能基率(%)=(官能基含有量(mol/g)/(1/数平均分子量(g/mol)×2))×100(%)
(ここで、一般式(A)におけるWは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、アセトアミド基、スルホン酸基、スルホンアミド基、シラノール基、アルコキシシラン基、アルデヒド基、アセチル基、またはそれらの誘導体から選ばれる官能基であり、mは5以上の整数を表す。)
7.前記(X)ポリアリーレンスルフィドの官能基含有量が100μmol/g以上であることを特徴とする前記6記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
8.前記(X)ポリアリーレンスルフィドの官能基含有量が550μmol/g以上であることを特徴とする前記6または7記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
9.前記官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンが、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、シラノール基、アルコキシシラン基またはそれらの誘導体から選ばれる反応性官能基を末端に有するポリオルガノシロキサンである前記6〜8いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
10.前記官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンの官能基量が、前記(X)ポリアリーレンスルフィドの官能基量に対して1当量以上3等量未満となる範囲で反応させることを特徴とする前記6〜9いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
11.一般式(A)で表される構造を有し、下記で定義される末端官能基率が85%以上である(X)ポリアリーレンスルフィドと、官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンを反応させて、ポリアリーレンスルフィド単位1〜99重量%とポリオルガノシロキサン単位99〜1重量%を含む(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を得、次いで(A)ポリアリーレンスルフィドおよび(C)ポリシロキサンを配合するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
末端官能基率(%)=(官能基含有量(mol/g)/(1/数平均分子量(g/mol)×2))×100(%)
(ここで、一般式(A)におけるWは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、アセトアミド基、スルホン酸基、スルホンアミド基、シラノール基、アルコキシシラン基、アルデヒド基、アセチル基、またはそれらの誘導体から選ばれる官能基であり、mは5以上の整数を表す。)
本発明によれば、ポリアリーレンスルフィドの高い耐熱性を維持しながら高い柔軟性を有すると共に、溶融滞留安定性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)ポリアリーレンスルフィド
本発明における(A)PASとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とするホモポリマーまたはコポリマーである。ここで、主要構成単位とするとは、PASを構成する全構成単位のうち、当該繰り返し単位を80モル%以上含有することを意味する。前記Arとしては下記の式(B)〜式(L)などで表されるいずれかの単位が例示されるが、なかでも式(B)で表される単位が特に好ましい。
R1、R2は水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(M)〜式(O)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の含有量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
これらPASの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドエーテル、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられる。特に好ましいPASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
を90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(PPS)が挙げられる。m−フェニレン単位やo−フェニレン単位を含むこともできるが、PASの高い耐熱性や耐薬品性などを維持するには、10モル%以下の含有量であることが好ましい。
上記PAS構造を有していればその製造方法に限定はなく、有機極性溶媒中でジクロロ芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させる方法や、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱してポリアリーレンスルフィドに転化する方法や、ジヨード芳香族化合物と硫黄単体を溶融反応させる方法などが挙げられる。これら方法から得られたPASの後処理にも特に制限はなく、溶媒で洗浄してオリゴマー成分を除去する処理、加熱や脱揮などで溶媒やガス成分を低減する処理、酸素雰囲気下で架橋させる処理、得られたPASを再度溶融させて追加反応を行う処理などを施しても良い。
得られたPASには官能基を含んでいても良く、アミノ基、アセトアミド基、スルホンアミド基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、シアノ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アセチル基、酸無水物基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基、もしくはそれらから誘導される官能基から選ばれる反応性官能基を有していてもよい。これら官能基の結合位置は特に制限はなく、PASの側鎖および/または末端に位置する。
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体
本発明における(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体とは、(X)ポリアリーレンスルフィドと(Y)ポリオルガノシロキサンから構成されるブロック共重合体である。
(X)ポリアリーレンスルフィドとは、前記(A)のPAS同様、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位としており、Arとしては前記式(B)〜式(L)などであらわされる単位などがあり、なかでも式(B)で表される単位が特に好ましい。また前記(A)のPAS同様、前記式(M)〜式(O)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができ、これら分岐単位または架橋単位の含有量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。これらの代表的なものとして、フェニレンスルフィド骨格、ポリフェニレンスルフィドスルホン骨格、ポリフェニレンスルフィドエーテル骨格、ポリフェニレンスルフィドケトン骨格などが挙げられる。特に好ましいPASとしては、p−フェニレンスルフィド骨格を90モル%以上含有する(X)ポリアリーレンスルフィドが挙げられる。
(X)ポリアリーレンスルフィドの繰り返し数としては、5以上の整数である。一方、その上限としては、200以下が挙げられ、120以下が好ましく、ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体中の(Y)ポリオルガノシロキサンの重量分率を増加させて、十分な改質を得る観点から80以下が特に好ましい。
(Y)ポリオルガノシロキサンとは、一般式(P)で表される繰り返し単位を主要構成単位とする。
ここでR3、R4はC1〜C10のアルキル基、またはC6〜C10の芳香族基を示す。具体的には、R3としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基を挙げることができる。nは1以上が挙げられ、5以上が好ましく、10以上が特に好ましい。一方、その上限としては、100以下が挙げられ、60以下が好ましく、ポリアリーレンスルフィド及び有機極性溶媒との相溶性の観点から40以下が特に好ましい。
また、(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体において、(X)ポリアリーレンスルフィドと前記一般式(P)で表される(Y)ポリオルガノシロキサンは、これらが各ブロックの繰り返し単位以外の構造を介して連結されていても、繰り返し単位に由来する末端構造同士が直接連結していても良い。また、同一の繰り返し単位が複数連結していても良い。
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体中における(Y)ポリオルガノシロキサンの含有量は、(X)ポリアリーレンスルフィドと(Y)ポリオルガノシロキサンの合計を100重量%として、1重量%以上99重量%以下の範囲であることが好ましい。(Y)ポリオルガノシロキサンの含有量が1重量%未満の場合には十分な柔軟性、靭性を得られない問題があり、一方、99重量%を超える場合には耐熱性、耐薬品性などの(X)ポリアリーレンスルフィドに由来する特性が発現しにくくなる問題がある。よって、(Y)ポリオルガノシロキサンの含有量は80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がいっそう好ましく、60重量%以下が特に好ましい。また、(Y)ポリオルガノシロキサンの含有量は1重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、20重量%以上がいっそう好ましく、30重量%以上が特に好ましい。
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の融点は245℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。一方、融点の上限としては、290℃以下であることが好ましい。融点が上記の好ましい範囲であると、耐熱性など(X)ポリアリーレンスルフィドに由来する特性が発現しやすくなる。
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体のガラス転移温度は、柔軟性・靭性付与の面から80℃以下が好ましく、より優れた柔軟性・靭性を得るためには、60℃以下なども好ましく例示できる。ガラス転移温度の下限は特に制限しないが、ポリアリーレンスルフィドが本来有する性質を維持するためには、40℃以上であることが好ましい。
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体は、(X)ポリアリーレンスルフィドと(Y)ポリオルガノシロキサンのブロック共重合化が、副反応を併発することなく効率よくマルチブロック的に進行したものであり、主鎖の柔軟性が高く、かつ冷結晶化の速度が高いため、冷結晶化温度が100℃以下となる傾向にある。冷結晶化温度が低下することで結晶化速度が向上し、成形サイクルが早くなるためコストダウンに繋がる。または金型温度をより低く出来るため、エネルギー面や安全面で利点となる。さらに柔軟性の付与に効果的であることから、より好ましい冷結晶化温度としては95℃以下が挙げられる。冷結晶化温度の下限は特に制限しないが、ポリアリーレンスルフィドが本来有する性質を維持するためには、70℃以上であることが好ましい。
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の重量平均分子量は35,000以上が好ましく、より好ましくは40,000以上であり、特に好ましくは、45,000以上である。これにより、実用的な柔軟性・靭性を有するポリアリーレンスルフィドブロック共重合体が得られる。また、重量平均分子量は100,000以下が好ましく、より好ましくは90,000以下、特に好ましくは80,000以下である。重量平均分子量が100,000を上回るとポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の溶融粘度が高くなり、成形加工性が悪くなる。
また、(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の分子量分布は単峰性であることが好ましい。ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の分子量分布が単峰性の場合、(X)ポリアリーレンスルフィドと(Y)ポリオルガノシロキサンのブロック共重合化が十分であることを意味し、十分な改質効果が得られる。また、ブロック共重合の進行指標として、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)6.0以下が好ましく、低分子成分による靭性低下を防ぐためには、分散度5.0以下がさらに好ましい。
(B−1)(X)ポリアリーレンスルフィド
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の(X)ポリアリーレンスルフィドは、反応性官能基を有していることが好ましく、例えば、一般式(A)に示すものを挙げることができる。
(ここで、一般式(A)におけるWは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、アセトアミド基、スルホン酸基、スルホンアミド基、シラノール基、アルコキシシラン基、アルデヒド基、アセチル基、またはそれらの誘導体から選ばれる官能基であり、mは5以上の整数を表す。一方、その上限としては、200以下が挙げられ、120以下が好ましく、ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体中のポリオルガノシロキサンの重量分率を増加させて、十分な改質を得る観点から80以下が特に好ましい。)
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体中の(X)ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は2500以上が好ましく、3,000以上がさらに好ましい。重量平均分子量が2500以上であると、PASの耐熱性、耐薬品性等が維持できる。一方、その上限は20000以下が好ましく、15000以下がさらに好ましい。重量平均分子量が20000以下であると、分子量の増加に伴い、分子鎖末端の反応性官能基が減少することはない。
(X)ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量は1500以上が好ましく、2000以上がさらに好ましい。数平均分子量が1500以上であると、PASの耐熱性、耐薬品性等が維持できる。一方、その上限は7000以下が好ましく、4000以下がさらに好ましい。数平均分子量が7000以下であると、分子量の増加に伴い、分子鎖末端の反応性官能基が減少することはない。
(X)ポリアリーレンスルフィドの分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は2.5以下が好ましく、2.0以下が特に好ましい。(X)ポリアリーレンスルフィドの分散度が低いと、各分子鎖の反応性が均一化し、(Y)ポリオルガノシロキサンとの共重合化がより効率的に進行する。
また、(X)ポリアリーレンスルフィドに含まれる官能基含有量は、好ましくは550μmol/g以上、より好ましくは600μmol/g以上が挙げられる。(X)ポリアリーレンスルフィド中に含まれる官能基含有量が550μmol/g以上であると(Y)ポリオルガノシロキサンとの共重合化が進行し、十分な改質効果を得ることができる。官能基含有量に特に制限はないが、2,000μmol/g以下、特に好ましくは1,500μmol/g以下が挙げられる。官能基含有量の上限が2,000μmol/g以下であると、官能基含有量の増加に伴う(X)ポリアリーレンスルフィドの分子量低下が抑制されるため、耐熱性が損なわれることはない。
(X)ポリアリーレンスルフィドの末端には反応性官能基を多く有しているだけでなく、分子鎖の全末端に占める反応性官能基の導入率が高い程好ましい。この指標として、本発明では末端官能基率を用いる。ただし、末端官能基率は、((官能基含有量(mol/g)/(1/数平均分子量(g/mol)×2))×100(%)で求められ、単位が百分率である値と定義できる。(X)ポリアリーレンスルフィドの末端官能基率は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。特に好ましくは95%以上であり、(Y)ポリオルガノシロキサンとの共重合化が効率よく進行する。末端官能基率が85%以上であれば、(Y)ポリオルガノシロキサンとの共重合化を行う上で反応が意図せず停止してしまうことがないため、より高分子量で、靭性や耐熱性に優れた(B)ポリアリーレンスルフィド共重合体が得られる傾向にある。
(X)ポリアリーレンスルフィドの融点は270℃以上が好ましく、上限は290℃以下が好ましい。融点が上記範囲であると、ポリアリーレンスルフィド共重合体の耐熱性、耐薬品性などのPASに由来する特性が発現しやすくなる。
(X)ポリアリーレンスルフィドの塩素含有量は3500ppm以下が好ましく、2500ppm以下がさらに好ましく、1500ppm以下が特に好ましく、環境負荷の低減及び、反応性官能基を末端に選択的に導入させる観点から1000ppm以下が殊更好ましい。塩素含有量が3500ppm以下であれば、(X)ポリアリーレンスルフィドの分子鎖末端への反応性官能基の導入が不十分であるということはない。
以下にポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を合成するのに用いる(X)ポリアリーレンスルフィドの製造方法について述べる。
(B−2)(X)ポリアリーレンスルフィドの製造方法
(B−2−1)硫黄源
硫黄源として、アルカリ金属水硫化物またはアルカリ金属硫化物を用いる。アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。その他、アルカリ金属水硫化物の前駆体となり得るアルカリ金属硫化物を用いることも可能である。アルカリ金属水硫化物の具体例としては、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化リチウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
硫黄源がアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属硫化物との混合物である場合には、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属硫化物との総モル量が、重合反応に供される硫黄源のモル量となる。
硫黄源の量、または、系内の硫黄原子の量とは、脱水操作などにより重合反応開始前に硫黄源、または系内の硫黄原子の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
(B−2−2)アルカリ金属水酸化物
前述したアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この場合、アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、特にコスト、入手性の面で水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
また、アルカリ金属水酸化物は、スルフィド化剤の調製として用いるだけでなく、重合反応系を安定化し、分解反応などの副反応を抑制するための重合安定剤として用いることもできる。これらの効果を効率的に得るための、アルカリ金属水酸化物の使用量は、重合系内のチオラート末端成長鎖の活性を安定化させる観点から、系内の硫黄原子1.0モルに対し、1.2モルを超える必要がある。また、上限としては、2.0モル以下が必要で、1.8モル以下が好ましく、1.6モル以下がさらに好ましい範囲として例示できる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物の前駆体であるアルカリ金属硫化物を用いる場合、アルカリ金属水酸化物は、主に重合安定剤として寄与するが、その使用量は、例えばアルカリ金属硫化物が硫化ナトリウムである場合、硫化ナトリウム1モルに対して、0.2モル以上であることが好ましい。また、上限としては、1.0モル以下が好ましく、0.8モル以下がより好ましく、0.6モル以下がさらに好ましい範囲として例示できる。
(B−2−3)有機極性溶媒
重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましく用いられる。
(X)ポリアリーレンスルフィドの重合溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量に特に制限はないが、安定した反応性の観点から系内の硫黄原子1.0モル当たり2.5モル以上が好ましく、経済性の観点から、系内の硫黄原子1.0モル当たり5.5モル未満、好ましくは5.0モル未満、より好ましくは4.5モル未満の範囲が選択される。
(B−2−4)ジハロゲン化芳香族化合物
ジハロゲン化芳香族化合物は、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼン、2,3−ジクロロ安息香酸、2,4−ジクロロ安息香酸、2,5−ジクロロ安息香酸、2,6−ジクロロ安息香酸、3,4−ジクロロ安息香酸、3,5−ジクロロ安息香酸およびそれらの塩や、2,3−ジクロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,5−ジクロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール、3,4−ジクロロフェノール、3,5−ジクロロフェノールおよびそれらの塩や、2,3−ジクロロアニリン、2,4−ジクロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2,6−ジクロロアニリン、3,4−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリンや、4−アミノ−2,5−ジクロロ安息香酸およびその塩などの反応性官能基を有するジハロゲン化ベンゼンなどを挙げることができ、異なる2種以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用いることも可能である。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。
本発明で用いる(B)ポリアリーレンスルフィド共重合体は、分子鎖末端に多くの官能基を有する(X)ポリアリーレンスルフィドと(Y)ポリオルガノシロキサン骨格を反応させることが好ましいが、ジハロゲン化芳香族化合物を大過剰で使用することは(X)ポリアリーレンスルフィドの末端ハロゲン量の増大を引き起こすため好ましくない。そのため、ジハロゲン化芳香族化合物の使用量の上限は、系内の硫黄原子1.00モル当たり1.05モル未満が好ましく、さらに好ましくは1.04モル未満、特に好ましくは1.03モル未満の範囲が例示できる。また、ジハロゲン化芳香族化合物が少なすぎると反応系内にチオラート末端の成長鎖が過剰となり、分解反応を引き起こす。そのため、ジハロゲン化芳香族化合物の使用量の下限は、系内の硫黄原子1.00モル当たり0.85モル以上が好ましく、さらに好ましくは0.88モル以上、特に好ましくは、0.90モル以上の範囲が例示できる。
(B−2−5)反応性官能基を有するモノハロゲン化芳香族化合物
ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体に含まれる(X)ポリアリーレンスルフィドの合成に用いられるモノハロゲン化化合物は、下記一般式(B)で表される反応性官能基Wを有するモノハロゲン化化合物であれば如何なるものでも良いが、反応性官能基Wとして、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、アセトアミド基、スルホン酸基、スルホンアミド基、シラノール基、アルコキシシラン基、アルデヒド基、アセチル基、またはそれらの誘導体から選ばれる官能基が好ましく、なかでも、反応性の観点から、酸性の官能基を有するものがより好ましく、特にカルボキシル基が好ましい。これらの官能基を選択することでポリアリーレンスルフィド中に効率良く官能基が導入される傾向にある。
(式(B)中、Vはハロゲンを示す)
このようなモノハロゲン化化合物の具体例としては、2−クロロ安息香酸、3−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、2−アミノ−4−クロロ安息香酸、4−クロロ−3−ニトロ安息香酸、4−クロロベンゾフェノン−2−カルボン酸、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、4−クロロベンズアミド、4−クロロベンゼンアセトアミド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンチオール、4’−クロロベンゾフェノン−2−カルボン酸、2−アミノ−5−クロロベンゾフェノン、3,5−ジアミノクロロベンゼン、4−クロロフタル酸、4−クロロ無水フタル酸、5−クロロイソフタル酸などのモノハロゲン化化合物を挙げることができる。これらのなかでも重合時の反応性や経済性、汎用性などの観点から4−クロロ安息香酸、4−クロロフタル酸もしくはその塩、がより好ましく例示できる。また、これらのモノハロゲン化化合物は1種類単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても問題ない。
モノハロゲン化化合物の使用量の下限としては、系内の硫黄原子1.00モル当たり、0.10モルを超えることが好ましく、0.15モル以上がより好ましく、0.20モル以上が更に好ましく、0.25モル以上が特に好ましい。また、その上限としては、系内の硫黄原子1.00モル当たり0.40モル以下が好ましく、0.35モル以下がより好ましい。モノハロゲン化化合物の使用量が0.10モルを超えると、得られる(X)ポリアリーレンスルフィドにおける反応性末端の導入が十分となる。また、0.40モル以下であると、(X)ポリアリーレンスルフィドの分子量低下は抑制できる。
また、ジハロゲン化芳香族化合物とモノハロゲン化化合物などのハロゲン化化合物の合計量を特定の範囲にすることが好ましく、系内の硫黄原子1.00モルに対するハロゲン化化合物の合計量が0.98モル以上であることが好ましく、1.00モル以上であることがより好ましく、1.03モル以上であることがさらに好ましい。一方、系内の硫黄原子1.00モルに対するハロゲン化化合物の合計量の上限としては、1.30モル未満にすることが好ましく、1.25モル未満がより好ましい。系内の硫黄原子1.00モルに対してハロゲン化化合物の合計量が0.98モル以上であると分解する傾向はなく、1.30モル未満であると分子量が低下してポリアリーレンスルフィド本来の耐熱性が発現しないということはない。
また、反応性官能基を有するモノハロゲン化化合物の添加時期には特に制限はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。モノハロゲン化化合物の添加時期は、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率80%未満が好ましく、70%未満がより好ましく、脱水工程完了後から重合開始までの間、重合開始時つまりジハロゲン化芳香族化合物と同時に添加することが最も好ましい。このようにモノハロゲン化化合物を好ましい時期に添加すると、モノハロゲン化化合物が揮散しないような還流装置や圧入装置などは不要であり、また、重合終了時点でのモノハロゲン化化合物の残存も抑制できる。
(B−2−6)重合助剤
(X)ポリアリーレンスルフィドを所望の溶融粘度に調整することを目的に重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸金属塩、水、アルカリ金属塩化物(但し、塩化ナトリウムは除く)、有機スルホン酸金属塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上同時に用いても差し障りない。なかでも、有機カルボン酸金属塩および/または水が好ましく用いられる。
有機カルボン酸金属塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物を好ましい例として挙げることができる。有機カルボン酸金属塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。有機カルボン酸金属塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。有機カルボン酸金属塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記有機カルボン酸金属塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると推定しており、安価でかつ反応系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが好ましく用いられる。
重合助剤として上記有機カルボン酸金属塩を用いる場合の使用量は、系内の硫黄原子1.00モルに対し、0.01モル以上が好ましく、0.02モル以上がさらに好ましく、またその上限としては、0.70モル未満の範囲が好ましく、0.60モル未満の範囲がより好ましく、0.55モル未満の範囲が特に好ましい。
重合助剤として有機カルボン酸金属塩を使用する場合、その添加時期には特に制限はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。
重合助剤として水を用いる場合、水単独で用いることも可能であるが、有機カルボン酸金属塩を同時に用いることが好ましく、これにより重合助剤としての効果をより高めることができ、より少ない重合助剤の使用量でも短時間で所望の溶融粘度の(X)ポリアリーレンスルフィドを得ることができる傾向にある。この場合の重合系内の好ましい水分量の範囲は、系内の硫黄原子1.00モルに対し0.80モル以上が好ましく、0.85モル以上がさらに好ましい。その上限としては、3.00モル未満が好ましく、1.80モル未満がさらに好ましい。水分量が多すぎると反応器内圧の上昇が大きく、高い耐圧性能を有した反応器が必要となるため、経済的にも安全性の面でも好ましくない傾向にある。重合系内の水分量を前記範囲にする段階のジハロゲン化芳香族化合物の転化率は、後述するように60モル%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上であることが好ましい。なお、重合時に副生した水も重合助剤となり得る。
また、重合後に水を添加することも好ましい様態の一つである。重合後に水を添加した後の重合系内の水分量の好ましい範囲は、系内の硫黄原子1.0モルに対して1.0モル以上が好ましく、1.5モル以上が好ましい。上限としては、15.0モル以下が好ましく、10.0モル以下がより好ましい。
(B−2−7)分岐・架橋剤
分岐または架橋重合体を形成させ所望の溶融粘度に調整するために、トリハロゲン化以上のポリハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物及びハロゲン化芳香族ニトロ化合物などの分岐・架橋剤を併用することも可能である。ポリハロゲン化合物としては通常に用いられる化合物を用いることができるが、中でもポリハロゲン化芳香族化合物が好ましく、具体例としては、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,4,6−トリクロロナフタレン等を挙げることができ、中でも1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンが好ましい。前記、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物としては、例えばアミノ基、メルカプト基及びヒドロキシル基などの官能基を有するハロゲン化芳香族化合物を挙げることができる。具体例としては2,5−ジクロロアニリン、2,4−ジクロロアニリン、2,3−ジクロロアニリン、2,4,6−トリクロロアニリン、2,2’−ジアミノ−4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノ−2’,4−ジクロロジフェニルエーテルなどを挙げることができる。前記、ハロゲン化芳香族ニトロ化合物としては、例えば2,4−ジニトロクロロベンゼン、2,5−ジクロロニトロベンゼン、2−ニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、2,5−ジクロロ−2−ニトロピリジン、2−クロロ−3,5−ジニトロピリジンなどを挙げることができる。
(B−2−8)脱水工程
(X)ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、硫黄源は通常水和物の形で使用されるが、ジハロゲン化芳香族化合物や反応性官能基を有するモノハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒と硫黄源を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
また、硫黄源として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180℃〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
脱水工程が終了した段階での系内の水分量は、仕込み硫黄源1.00モル当たり0.90以上1.10モル以下であることが好ましい。ここで系内の水分量とは脱水工程で仕込まれた水分量から系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
(B−2−9)重合反応工程
前記した脱水工程で調製した反応物とジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物を有機極性溶媒中で接触させて重合反応させる重合工程を行う。重合工程開始に際しては、100℃以上、好ましくは130℃以上がよく、上限としては220℃以下、好ましくは200℃以下の温度範囲で、有機極性溶媒にスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物を加える。
重合反応は200℃以上280℃未満の温度範囲で行うが、本発明の効果が得られる限り重合条件に制限はない。例えば、一定速度で昇温した後、245℃以上280℃未満で反応を一定時間継続する方法、200℃以上245℃未満において一定温度で一定時間反応を行った後に245℃以上280℃未満に昇温して反応を一定時間継続する方法、200℃以上245℃未満、中でも230℃以上245℃未満において一定温度で一定時間反応を行った後、245℃以上280℃未満に昇温して短時間で反応を完了させる方法などが挙げられる。
また、前記した重合反応を行う雰囲気は非酸化性雰囲気下であることが望ましく、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、特に経済性および取り扱いの容易さの観点から窒素雰囲気下で行うことが好ましい。さらに、重合反応における反応圧力に関しては、使用する原料及び溶媒の種類や量、あるいは重合反応温度などに依存し一概に規定できないため、特に制限はない。
重合反応工程を終えた段階での反応性官能基を有するモノハロゲン化芳香族化合物の(X)ポリアリーレンスルフィドへの導入量は、例えば、固体NMRでの官能基直接分析、FT−IRでのベンゼン環由来の吸収と官能基由来の吸収の比較による評価、重合前または重合途中での反応性官能基含有モノハロゲン化芳香族化合物の仕込量から残存量を差し引いて算出した反応量などで評価することができる。
反応性官能基を有するモノハロゲン化芳香族化合物の反応量は、系内の硫黄原子1.00モルに対し0.07モル以上が好ましく、0.10モル以上が更に好ましく、0.12モル以上が特に好ましい。上限は、0.40モル以下が好ましく、0.30モル以下が更に好ましく、0.25モル以下が特に好ましい。なお、反応量とは、重合工程終了後にサンプリングしたサンプル中に残存する反応性官能基含有モノハロゲン化芳香族化合物量をガスクロマトグラフにて定量し、重合前または重合途中の仕込量から残存量を差し引いて算出した値のことである。該反応量が多いほど(X)ポリアリーレンスルフィド末端への反応性官能基の導入量が多く、高い反応性を有することを意味している。
(B−2−10)ポリマー回収
重合工程終了後に、重合工程で得られた(X)ポリアリーレンスルフィド成分および溶剤などを含む重合反応物から(X)ポリアリーレンスルフィドを回収する。回収方法としては、例えばフラッシュ法、すなわち重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、0.8MPa以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ溶媒回収と同時に重合体を粉粒状にして回収する方法や、クエンチ法、すなわち重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内の(X)ポリアリーレンスルフィド成分を析出させ、かつ70℃以上、好ましくは100℃以上の状態で濾別することで(X)ポリアリーレンスルフィド成分を含む固体を回収する方法等が挙げられる。
PAS本来の耐熱性を損なうことなく、ポリマー鎖末端に反応性官能基が多く導入された(X)ポリアリーレンスルフィドが得られれば、クエンチ法、フラッシュ法いずれかに限定されるものではないが、フラッシュ法は、溶媒回収と同時に固形物の回収が可能であること、回収時間が比較的短いこと、クエンチ法に比較して得られる回収物量が多いことなど、経済的に優れた回収方法であること、また、フラッシュ法にて得られたPASはクロロホルム抽出成分に代表されるようなポリマー鎖末端に反応性官能基が有するオリゴマー成分を多く含むため、クエンチ法で得られたPASに比較して、反応性官能基が多いPASを簡便に得やすいことから、本発明における好ましい回収方法である。官能基含有量の多い(X)ポリアリーレンスルフィドを得るのに好ましいクロロホルム抽出量としては1.0重量%以上が例示でき、より好ましくは2.0重量%以上である。なお、ここでのクロロホルム抽出量は、ポリマー10gを90℃のクロロホルム100gで3時間ソックスレー抽出し、この抽出液からクロロホルムを留去した際に得られる成分の重量をポリマー重量に対する百分率で表す。
フラッシュ法の好ましい態様としては、重合工程で得られた高温高圧の重合反応物を常圧中の窒素または水蒸気などの雰囲気にノズルから噴出させる方法が例示できる。フラッシュ法では、高温高圧状態から常圧状態に重合反応物をフラッシュしたときの溶媒の気化熱を利用して効率よく溶媒回収することができる。フラッシュさせるときの重合反応物の温度は250℃以上が好ましく255℃以上がより好ましい。常圧中にフラッシュさせるときの窒素または水蒸気などの雰囲気の温度は通常150〜250℃が選択される。
フラッシュ法で得られた(X)ポリアリーレンスルフィドには重合副生物であるアルカリ金属ハロゲン化物やアルカリ金属有機物などのイオン性不純物を含んでいるため、洗浄を行うことが通例である。洗浄条件としては、かかるイオン性不純物を除去するに足る条件であれば特に限定されるものではない。洗浄液としては例えば水や有機溶媒を用いて洗浄する方法が挙げられ、簡便かつ安価に(X)ポリアリーレンスルフィドを得る点やオリゴマー成分を含有させて高い官能基含有量を持たせる点で、水を用いた洗浄が好ましい。水の温度は80℃以上であることが好ましく、熱水、酸または酸の水溶液、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液のいずれかの液体に浸漬させる処理を1回以上行うことが好ましい。
酸または酸の水溶液に(X)ポリアリーレンスルフィドを浸漬させる処理は、処理後の液体のpHが2〜8であることが好ましい。酸または酸の水溶液とは、有機酸、無機酸または上記水に有機酸、無機酸等を添加して酸性にしたものである。使用する有機酸、無機酸としては、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸等が例示でき、これらに限定されるものではないが、酢酸、塩酸が好ましい。
アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液に(X)ポリアリーレンスルフィドを浸漬させる処理に使用する水溶液のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の量は(X)ポリアリーレンスルフィドに対し、0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜15重量%が更に好ましい。使用するアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩としては、上記有機酸のカルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
(X)ポリアリーレンスルフィドを洗浄する際の洗浄温度は80℃以上200℃以下が好ましく、イオン性不純物の少ないPASを得る点において150℃以上200℃以下がより好ましく、さらには180℃以上200℃以下がより好ましい。
洗浄添加剤は洗浄工程のいずれの段階で使用してもよいが、少量の添加剤で効率的に洗浄を行うには、フラッシュ法にて回収した固形物を80℃以上200℃以下の熱水に浸漬、濾過する処理を数回行った後、150℃以上の酸または酸の水溶液に(X)ポリアリーレンスルフィドを浸漬させて処理する方法が好ましい。
(B−2−11)その他の後処理
かくして得られた(X)ポリアリーレンスルフィドは常圧下および/または減圧下で乾燥する。かかる乾燥温度は、120〜280℃の範囲が好ましい。窒素、ヘリウム、減圧下などの不活性雰囲気で0.5〜50時間乾燥することが好ましい。
本発明において得られた(X)ポリアリーレンスルフィドを、揮発性成分を除去するために、或いは架橋高分子量化して好ましい溶融粘度に調整するために、酸素含有雰囲気下、130〜260℃の温度で処理することも可能である。
(B−3)官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサン
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を合成する際に用いる、官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンとは、(X)ポリアリーレンスルフィドと効率よく反応するものであれば良く、例えば、下記一般式(Q)に示すものを挙げることができる。
ここでP、Qはエポキシ基、グリシジル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基を示し、官能基の反応性の観点からエポキシ基、グリシジル基が好ましい。これら官能基はポリオルガノシロキサンの片末端及び、側鎖に結合していても問題はないが、ブロック共重合化による効率的改質の観点から両末端に結合しているのが好ましい。また、R1、R2、R3はC1〜C10のアルキル基、またはC6〜C10の芳香族基を示す。具体的には、R1、R2としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基を挙げることができ、好ましくは、入手容易性の観点からメチル基、またはフェニル基、もしくはそれらが組み合わされた構造を有することが好ましい。R3としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基を挙げることができ、入手容易性の観点からメチル基、エチル基、またはプロピル基が好ましい。nは1以上が挙げられ、5以上が好ましく、10以上が特に好ましい。一方、その上限としては、100以下が挙げられ、60以下が好ましく、(X)ポリアリーレンスルフィド及び有機極性溶媒との相溶性の観点から40以下が特に好ましい。また、官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンの官能基含有量は、(X)ポリアリーレンスルフィドに有する官能基との組み合わせにより異なるため一概には規定できないが、100μmol/g以上が好ましく、250μmol/g以上がより好ましく、400μmol/g以上が特に好ましい。官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンの官能基含有量が100μmol/g以上の場合は、(Y)ポリオルガノシロキサンの共重合量が十分になるため十分な改質効果が得られる。また、その上限は、特に限定されないが、4,000μmol/g以下が好ましく、3,000μmol/g以下が特に好ましい。このような(Y)ポリオルガノシロキサンの具体例としては、信越シリコーンから市販されている、KF−105、X−22−163A、X−22−163B、X−22−163C、KF−8010、X−22−161A、X−22−161B、KF−8012、X−22−169AS、X−22−169B、X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003、X−22−1821、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−162C、X−22−167B、X−22−167C、X−22−173BX、X−22−173DX、X−22−170BX、X−22−170DX、X−22−176DX、X−22−176GX−A等が挙げられる。
(B−4)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の製造方法
以下に(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の製造方法について記述する。
(B−4−1)重合反応工程
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の製造方法は、一般式(A)で表される構造を有し、末端官能基率が85%以上である(X)ポリアリーレンスルフィドと、官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンを加熱して反応させる。
(X)ポリアリーレンスルフィドと(Y)ポリオルガノシロキサンの混合比率は、用いる(X)ポリアリーレンスルフィドの分子量、官能基含有量や、(Y)ポリオルガノシロキサンの種類や分子量、さらには反応条件などに依存するため一概には規定できないが、(X)ポリアリーレンスルフィドの官能基量に対して、(Y)ポリオルガノシロキサンの官能基量の比(以下官能基比とする)が、1.0以上であることが好ましい範囲として例示でき、1.2以上であることがさらに好ましく、より効率的にブロック共重合を進行させ、ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の高分子量化を進める観点から、1.3以上であることが特に好ましい。一方、その上限としては、3.0未満であることが好ましい範囲として例示でき、2.8以下であることがさらに好ましく、より効率的にブロック共重合を進行させ、ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の高分子量化を進める観点から、2.5以下であることが最も好ましい。官能基比を3.0以上にすると、(Y)ポリオルガノシロキサン同士の反応頻度が増加し、高分子量のポリアリーレンスルフィドブロック共重合体が得られる傾向にあるが、(Y)ポリオルガノシロキサン同士のカップリング反応が併発するので、主鎖の柔軟性を向上させる観点では最適な分子構造ではなく、また冷結晶化温度を低下させて成形加工性を向上させる観点からも適していない。
また、(X)ポリアリーレンスルフィドと(Y)ポリオルガノシロキサンの加熱による反応は、溶媒を用いない溶融重合もしくは、有機極性溶媒中での溶液重合のどちらで行ってもよい。後者の場合、有機アミド溶媒の使用が好ましく、具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N、N−ジメチルアセトアミド、N、N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく、N−メチル−2−ピロリドンがより好ましく用いられる。また、有機極性溶媒の使用量については特に制限はないが、(X)ポリアリーレンスルフィドの構造単位1モル当たりに対して0.1モル以上が好ましく、(X)ポリアリーレンスルフィドと(Y)ポリオルガノシロキサンが十分に溶解し、高い反応性を得る観点から0.5モル以上がより好ましい。また、上限としては、5.0モル以下が好ましく、経済的観点より3.0モル以下がより好ましい。
さらに、上記2つの反応を組み合わせてもよく、例えば、溶融重合後に有機極性溶媒を添加して加熱することもできるし、上記好ましい範囲内で、有機極性溶媒中で加熱した後にさらに有機極性溶媒を添加して加熱することもできる。
(X)ポリアリーレンスルフィドと(Y)ポリオルガノシロキサンを含む混合物を加熱して反応させる温度は、(X)ポリアリーレンスルフィドの分子量、(Y)ポリオルガノシロキサンの種類や分子量などに依存するため一概には規定できないが、(X)ポリアリーレンスルフィドおよび(Y)ポリオルガノシロキサンが融解する、もしくは有機極性溶媒に溶解する温度以上であることが好ましく、具体例としては200℃以上であることが好ましく例示でき、230℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましく例示できる。また、反応温度の上限としては400℃以下であることが例示でき、380℃以下であることが好ましく、350℃以下であることがより好ましく例示できる。反応温度が200℃以上の場合、反応の効率が良くブロック共重合化が十分となり、400℃以下の場合(X)ポリアリーレンスルフィドおよび(Y)ポリオルガノシロキサンが熱分解することもない。また、反応は一定の温度で行う1段階反応、段階的に温度を上げていく多段反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでも構わない。
また、本製造方法によりポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を製造する際、(Y)ポリオルガノシロキサンの添加時期には特に制限はなく、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよい。
(X)ポリアリーレンスルフィドと(Y)ポリオルガノシロキサンの共重合反応の時間は、反応に用いる(X)ポリアリーレンスルフィドや(Y)ポリオルガノシロキサンの構造や分子量、反応温度などの条件に依存するため一概には規定できないが、生産性及び、十分に共重合反応を進行させる観点から0.1時間以上が例示でき、0.5時間以上が好ましい。一方、反応時間の上限は特に限定されないが、生産性の観点より10時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは6時間以下も採用できる。さらに、(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の製造方法における重合雰囲気は、一般にポリアリーレンスルフィドの製造に採用されている反応条件、例えば窒素やヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気下での反応、減圧下での反応などを適宜採用することができる。
(B−4−2)ポリマー回収
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を回収する方法に特に制限はなく、例えば、(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体成分に対する溶解性が低く且つ(Y)ポリオルガノシロキサンを溶解する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させてポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を固体として回収する方法が例示できる。このような特性を有する溶剤は一般に比較的極性の低い溶剤であり、用いた(Y)ポリオルガノシロキサンの種類により好ましい溶剤は異なるので限定はできないが、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタンに代表される炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンに代表される芳香族炭化水素類、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールに代表される長鎖アルコール類が例示でき、入手性、経済性の観点からヘキサンが好ましい。また、必要に応じて有機極性溶媒を除去するために(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させて、(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を固体として回収する方法を組み合わせもよい。このような特性を有する溶剤は一般に比較的極性の高い溶剤であり、用いた有機極性溶媒の種類により好ましい溶剤は異なるので限定はできないが、例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールに代表されるアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンに代表されるケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類が例示でき、入手性、経済性の観点から水、メタノールおよびアセトンが好ましく、水が特に好ましい。
このような溶剤による処理を行うことで、(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体に残存する未反応の(Y)ポリオルガノシロキサン、有機極性溶媒の量を低減することが可能である。この処理により(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体は固形成分として析出するので、公知の固液分離法を用いて回収することが可能である。固液分離方法としては、例えばろ過による分離、遠心分離、デカンテーションなどを例示できる。なお、これら一連の処理は必要に応じて数回繰り返すことも可能である。
(C)ポリシロキサン
本発明で用いるポリシロキサンは、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンゴムなど、主鎖にシロキサン結合を複数含む化合物であれば特に限定されるものではなく、取り扱い性の観点から、シリコーンレジンパウダーやシリコーンレジンゴムを使用することが例示できる。なかでもR−〔SiR2−O〕n−R(Rは水素原子、有機基を表し、nは2以上の正の整数である。)で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。具体的には、特に上記式中Rが総てメチル基であるポリジメチルシロキサンが好ましく用いられるが、該ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部を、水素原子又はその他の置換基に置き換えたものも好ましく使用できる。ここで、その他の置換基としては、炭素原子数2以上のアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、シリルアルキル基、ポリオキシアルキレン基及び反応性官能基が挙げられ、複数のメチル基を置換する場合は、これらの中から、互いに同一或いは異なるものを選択可能である。
炭素原子数2以上のアルキル基としては、例えばエチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基等が挙げられる。アリール基としては例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては例えば、フルオロプロピル基、クロロプロピル基等が挙げられる。シリルアルキル基としては、式−〔CH〕n−Si〔OCH(nは1以上の正の整数である。)で表されるものがその代表的な具体例として挙げられる。ポリオキシアルキレン基は、式−〔CH〕k−O−〔CO〕l−〔CO〕m−R1(式中k、l、mは、0または正の整数である。式中R1は水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、シリルアルキル基及び反応性官能基から選択される基である。)で表されるものがその具体例として挙げられる。反応性官能基の具体例としては、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、カルボキシル基、水酸基、イソシアネート基、アミド基、アシル基、及びニトリル基等が挙げられる。これらの反応性官能基は主鎖に直接結合していても良く、或いは主鎖に結合したアルキレン基、ポリオキシアルキレン基等の有機基の末端に結合していても良い。
また、シリコーン系のコアシェルゴム、シリコーン・アクリル共重合体、シリコーン複合パウダーも好ましいポリシロキサンとして挙げられる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、(A)ポリアリーレンスルフィド、(B)ポリアリーレンスルフィド単位1〜99重量%とポリオルガノシロキサン単位99〜1重量%を含むポリアリーレンスルフィドブロック共重合体、(C)ポリシロキサンを含むことが必要である。その含有量は(A)ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を0.1〜50重量部、(C)ポリシロキサンを5〜300重量部とすることが好ましい。(B)の含有量は0.2〜20重量部がより好ましく、0.5〜10重量部がさらに好ましい。(C)の含有量は5〜100重量部がより好ましく、10〜80重量部がさらに好ましい。本発明では、(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を用いることで、(A)ポリアリーレンスルフィド相中での(C)ポリシロキサン相の分散が安定化し、溶融滞留安定性が飛躍的に向上する。
本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に無機フィラーを含有することも可能である。かかる無機フィラーの具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはフラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられ、なかでもガラス繊維、シリカ、炭酸カルシウムが好ましい。またこれらの無機フィラーは中空であってもよく、さらに2種類以上併用することも可能である。また、これらの無機フィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
かかる無機フィラーの配合量には特に制限はないものの、柔軟性維持の観点から(A)ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、30重量部以下の範囲が選択され、25重量部以下の範囲が好ましい。
また、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に、オレフィン系共重合体をさらに含有することも可能である。オレフィン系共重合体としては、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、水酸基およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有するオレフィン系共重合体がより好ましい。中でもエポキシ基含有オレフィン系共重合体が、PAS樹脂との相溶性が良好で高靱性が発現するために、好ましく用いられる。エポキシ基含有オレフィン系共重合体としては、オレフィン系単量体成分にエポキシ基を有する単量体成分を共重合して得られるオレフィン共重合体が挙げられる。また、主鎖中に二重結合を有するオレフィン系共重合体の二重結合部分をエポキシ化した共重合体も使用することができる。
エポキシ基を含有する単量体成分の導入量は、エポキシ基含有オレフィン系共重合体の原料となる単量体全体に対して0.001モル%以上、好ましくは0.01モル%以上とするのが好ましい。また、上記導入量は、エポキシ基含有オレフィン系共重合体の原料となる単量体全体に対して40モル%以下、好ましくは35モル%以下とするのが好ましい。
オレフィン系共重合体としては、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合成分とするエポキシ系含有オレフィン系共重合体が好ましく挙げられる。上記α−オレフィンとしては、エチレンが好ましく挙げられる。また、これら共重合体には、さらにアクリル酸、メタクリル酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびそのNa、Zn、K、Ca、Mgなどの塩が共重合されたオレフィン系共重合体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等から選ばれた単量体成分を共重合することも可能である。
また、オレフィン系共重合体として、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体にマレイン酸無水物、琥珀酸無水物、フマル酸無水物などの酸無水物が導入されたオレフィン系共重合体も使用することができる。
かかるオレフィン系共重合体は、ランダム、交互、ブロック、グラフトのいずれの共重合様式でも良い。
特にα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合してなるオレフィン系共重合体では、α−オレフィン60〜99重量%と、α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜40重量%とを共重合してなるオレフィン系共重合体が特に好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとは、
で示される化合物である。ただし、式中のRは水素原子または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状低級アルキル基を示す。具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルからなるオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−ポリスチレン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−PMMA、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、およびエチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。中でも、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、およびエチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が好ましく用いられる。
エチレンとα,β−不飽和カルボン酸からなるオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/アクリル酸、エチレン/メタクリル酸(E/MAA)、エチレン/アクリル酸/アクリル酸n−ブチル、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸n−ブチル、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸イソ−ブチル、エチレン/アクリル酸/アクリル酸イソ−ブチル、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸n−ブチル、エチレン/アクリル酸/メタクリル酸メチル、エチレン/アクリル酸/エチルビニルエーテル、エチレン/アクリル酸/ブチルビニルエーテル、エチレン/アクリル酸/アクリル酸メチル、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸エチル、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチル、エチレン/アクリル酸/メタクリル酸n−ブチル、エチレン/メタクリル酸/エチルビニルエーテル、およびエチレン/アクリル酸/ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
オレフィン系共重合体としては、上記官能基含有オレフィン系共重合と共に、官能基を含有しないオレフィンホモポリマーやオレフィン系共重合体を用いても良い。例えば、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体が挙げられる。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも炭素数6から12であるα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上、改質効果の一層の向上が見られるためより好ましい。その他の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリイソプレン、ブテン−イソプレン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、および上記α−オレフィンと、既述したα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルからなるオレフィン系共重合体などが例示できる。
かかるオレフィン系共重合体の配合量としては、本発明の耐熱性や溶融滞留安定性を損なわない範囲であれば特に制限はないが、(A)ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、1〜30重量部の範囲が例示でき、1〜20重量部の範囲がより好ましく、3〜10重量部の範囲がさらに好ましい。
また、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物にアルコキシシラン化合物をさらに含有することも可能である。アルコキシシラン化合物としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物を用いてもよい。添加量は0.05〜5重量部が好ましく、0.05〜3重量部がより好ましい。
かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物;γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物;γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物;およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
さらに、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に、ポリフェニレンスルフィド以外の樹脂を添加配合しても良い。その具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
また、改質を目的として、以下のような化合物を含むことも可能である。ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、(3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)などの様なフェノール系酸化防止剤、(ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト)などのようなリン系酸化防止剤、その他、水、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を含有することができる。上記化合物はポリアリーレンスルフィド樹脂組成物100重量部に対し、10重量部以下が好ましく、1重量部以下が更に好ましい。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法については、特に制限は無く、単軸、二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に原料を供給し、樹脂温度が(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂の融解ピーク温度+5〜100℃になる様に溶融混練する方法などを代表例として挙げることができるが、中でも二軸押出機による溶融混練が好ましい。
二軸押出機の、スクリュー長さLとスクリュー直径Dの比L/Dとしては、10以上が望ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。二軸押出機のL/Dの上限は通常60である。L/Dが10未満の場合、混練が不足し、前述した所望の相構造が得られ難くなる。
この際、原料の混合順序は特に制限がなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、これと更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、押出機により溶融混練する途中からサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
また、スクリューの構成として、BMSなどに代表される切り欠き部を有する撹拌スクリューを使用することも可能である。ここで「切り欠き」とは、スクリューフライトの山部分を一部削って出来たものをいう。切り欠き部を有する撹拌スクリューは樹脂充填率を高くすることが可能であり、その切り欠き部を有する撹拌スクリューを連結させたニーディング部を通過する溶融樹脂は、押出機シリンダー温度の影響を受けやすい。そのため、混練時のせん断により発熱した溶融樹脂でも切り欠き部を有する撹拌スクリュー部分で効率的に冷却され、樹脂温度を低下させることが可能となる。また、切り欠き部を有する撹拌スクリューは、従来の樹脂をすりつぶす手法とは異なり、撹拌・掻き混ぜを主体とする混練を行うことが出来るため、発熱による樹脂の分解抑制が可能となる。
切り欠き部を有する撹拌スクリューとしては、樹脂充満による溶融樹脂の冷却効率向上、混練性向上の観点から、スクリュー直径をDとするとスクリューピッチの長さが0.1D〜0.3D、かつ切り欠き数が1ピッチあたり10〜15個である切り欠き部を有する撹拌スクリューであることが好ましい。ここで「スクリューピッチの長さ」とは、スクリューが360度回転したときの、スクリューの山部分間のスクリュー長さをいう。
BMSなどに代表される切り欠き部を有する撹拌型スクリューについては、スクリューの全長Lの3%以上になる様に導入することが好ましく、更には5%以上になる様に導入することがより好ましい。その上限としては20%以下が好ましく15%以下がより好ましい。
かくして得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を介在させることで、(A)ポリアリーレンスルフィドの海相中への、(C)ポリシロキサンの分散安定性が向上し、溶融時の滞留安定性を飛躍的に向上させることができる。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形など、各種成形手法により成形可能であるが、中でも射出成形、押出成形用途として有用である。
押出成形により得られる成形品としては、丸棒、角棒、シート、フィルム、チューブ、パイプなどが挙げられ、更に具体的な用途としては、給湯器モーター、エアコンモーター、駆動モーター用などの電気絶縁材料、フィルムコンデンサー、スピーカー振動板、記録用の磁気テープ、プリント基板材料、プリント基板周辺部品、半導体パッケージ、半導体搬送トレイ、工程・離型フィルム、保護フィルム、自動車用フィルムセンサー、ワイヤーケーブルの絶縁テープ、リチウムイオン電池内の絶縁ワッシャー、熱水や冷却水、化学薬品用のチューブ、自動車用燃料チューブ、自動車用ターボダクト、熱水配管、化学プラントなどの薬品配管、超純水や超高純度溶媒用の配管、自動車配管、フロンや超臨界二酸化炭素冷媒用の配管パイプ、研磨装置用のワークピース保持リングなどが例示できる。その他、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道、発電設備のモーターコイル用巻線の被覆成形体、家電用の耐熱電線ケーブル、自動車内の配線に使用されるフラットケーブル等のワイヤーハーネスやコントロールワイヤー、通信、伝送用、高周波用、オーディオ用、計測用などの信号用トランスまたは車載用トランスの巻線の被覆成形体などが例示できる。
射出成形により得られる成形品の用途としては、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、機遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品;センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、コンパクトディスク等の音声機器部品;照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭・事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品;顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器・精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ、エアコン冷媒調整弁等の各種バルブ;燃料関係・排気系・吸気系各種パイプとダクト、ターボダクト、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネスおよび結束バンド、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品;携帯電話、ノート型パソコン、ビデオカメラ、ハイブリッド自動車、電気自動車などの一次電池または二次電池用のガスケット;等々を例示できる。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでは無い。
<分子量>
数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:SSC−7100(センシュー科学)
カラム名:GPC3506(センシュー科学)
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
<ガラス転移温度、融点、冷結晶化温度>
340℃×1分にて溶融プレスして得た非晶フィルムを用い、パーキンエルマー社製DSC7にて、サンプル約5mg、窒素雰囲気下、昇温・降温速度20℃/分で測定した際、以下の(1)で検出されたベースラインシフトの変曲点温度をガラス転移温度、(1)で検出された発熱ピーク温度を冷結晶化温度、(3)で検出された吸熱ピーク温度を融点とした。
(1)50℃から340℃まで昇温した後、340℃で1分間ホールド;
(2)100℃まで降温;
(3)再度340℃まで昇温した後、340℃で1分間ホールド;
(4)再度100℃まで降温。
<カルボキシル基含有量>
340℃×1分にて溶融プレスして得た非晶フィルムを用い、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR)にて、ベンゼン環由来の1,900cm−1付近における吸収に対する、カルボキシル基由来の1,704cm−1付近における吸収を比較することによりカルボキシル基含有量を測定した。
<ポリオルガノシロキサン単位含有量>
(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体中におけるポリオルガノシロキサン単位の含有量は、元素分析から求められるSi原子のモル分率にコモノマーとして用いたオルガノシロキサンの分子量を乗じて算出した。
<加熱減量>
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物ペレットを130℃で3時間予備乾燥した後、約10gをアルミカップに精秤した。これを大気下320℃で2時間処理した際の加熱減量を測定した。加熱減量は耐熱性の指標として測定した。
<引張破断伸度>
実施例で溶融混練して得たPAS樹脂組成物を住友重機械工業製射出成形機(SE75DUZ−C250)に投入し、樹脂温度310℃、金型温度150℃にて、引張試験用のASTM1号ダンベル試験片を成形し、得られた試験片を用い、支点間距離114mm、引張速度10mm/min、温度23℃×相対湿度50%条件下で、ASTM D638(2010)に従って引張強度を測定した。
<溶融滞留前後のシロキサン数平均分散粒径>
実施例で溶融混練して得たPAS樹脂組成物のストランド、および、該樹脂組成物を窒素雰囲気下320℃で30分滞留させたのちに得たPAS樹脂組成物のストランドを準備し、それぞれを樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断し、−80℃雰囲気下で0.1μm以下の薄片を断面積方向に切削した。これを日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、1000〜1万倍に拡大して写真撮影した。該写真から、PPS樹脂中に分散するシロキサン分散部分について、任意の100個の分散相を選択し、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値を求め、その後にそれらから求めた数平均値をシロキサン数平均分散粒径とした。
[(A)PAS]
(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂(リニア型、重量平均分子量:50000)
[(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体]
まず(X)ポリフェニレンスルフィド(PPS)を以下の方法で合成した。
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム3.60kg(86.4モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.82kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.01モルであった。また、硫化水素の飛散量は1.4モルであったため、本工程後の系内のスルフィド化剤は68.6モルであった。
その後、200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)9.276kg(63.1モル)、4−クロロ安息香酸2.238kg(15.57モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で250℃まで昇温し、250℃で180分反応した。
反応終了後、直ちにオートクレーブ底栓弁を開放し、内容物を撹拌機付き装置にフラッシュさせ、重合時に使用したNMPの95%以上が揮発除去されるまで230℃の撹拌機付き装置内で1.5時間乾固し、PPSと塩類を含む固形物を回収した。
得られた回収物およびイオン交換水74リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、75℃で15分洗浄した後、フィルターでろ過しケークを得た。得られたケークを75℃のイオン交換水で15分洗浄、ろ過する操作を3回行った後、ケークおよびイオン交換水74リットル、酢酸0.4kgを撹拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターでろ過しケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することで(X)PPSを得た。(X)は数平均分子量Mn2800、重量平均分子量5100、カルボキシル基含有量690μmol/g、末端官能基(カルボキシル基)率98%、融点278℃であった。
次に、(X)PPSと(Y)エポキシ基変性ポリジメチルシロキサンから(B)ポリフェニレンスルフィドブロック共重合体を以下の方法で合成した。
撹拌翼付10リットルオートクレーブに、上記(X)PPSを1.62kg、NMPを1.49kg加えて反応混合物を調製した。オートクレーブ内を密封して3回窒素置換した後に、240rpmで攪拌しながら、約15分かけて反応混合物を250℃に昇温した。また、(Y)エポキシ基変性ポリジメチルシロキサン(信越シリコーン製“KF−105”官能基含有量2,041μmol/g)1.38kgを、高圧バルブを介してオートクレーブ上部に設置した2リットルタンクaに仕込み、タンクa内を1.5MPaの窒素ガスで加圧した。
反応混合物が250℃に達した時点で、タンクa下部のバルブを開き、(Y)をオートクレーブ内に加えて、反応を開始した。このとき、(X)の官能基量に対する(Y)の官能基量の比(以下官能基比とする)は2.3当量であった。また、NMP2.97kgを、高圧バルブを介してオートクレーブ上部に設置した別の2リットルタンクbに仕込み、タンクb内を1.5MPaの窒素ガスで加圧した。
反応温度250℃で30分反応させた後に、タンクb下部のバルブを開き、NMP2.97kgをオートクレーブ内に加えて、250℃でさらに15分攪拌を続けた。その後、オートクレーブを急冷させることにより生成物を得た。
得られた生成物を回収するため、重合物を50℃のヘキサンで15分洗浄、ろ過操作を2回行い、さらに、50℃のメタノールで15分洗浄、ろ過操作を2回行い、70℃の水で15分洗浄、ろ過操作を1回行い、(B)ポリフェニレンスルフィドブロック共重合体を得た。ガラス転移温度は51℃、融点は257℃、冷結晶化温度は88℃、数平均分子量11000、重量平均分子量36000、ポリオルガノシロキサン単位含有量28%であった。
[(C)ポリシロキサン]
(C−1)信越シリコーン製 KMP−590(シリコーンレジンパウダー)
(C−2)カネカ製 KANEACE MR−01(シリコーンアクリルコアシェルゴム)
[実施例1〜2、比較例1〜2]
表1に示す割合で各原料をドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部3箇所、切り欠き部を有するスクリューの割合10%)を用い、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数300rpmにて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。ペレットを130℃で一晩乾燥させ、得られたPAS樹脂組成物を前述した方法で射出成形し、各種物性評価を行った。測定結果を表1に示す。

Claims (11)

  1. (A)ポリアリーレンスルフィド、(B)ポリアリーレンスルフィド単位1〜99重量%とポリオルガノシロキサン単位99〜1重量%を含むポリアリーレンスルフィドブロック共重合体、(C)ポリシロキサンを含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  2. (B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体のガラス転移温度が80℃以下である請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  3. (B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体の冷結晶化温度が100℃以下である請求項1または2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  4. (B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体が、ポリアリーレンスルフィド単位40〜80重量%とポリオルガノシロキサン単位20〜60重量%を含むものである請求項1〜3いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  5. (B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体が、重量平均分子量が35,000以上100,000以下である請求項1〜4いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  6. (B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体が、一般式(A)で表される構造を有し、下記で定義される末端官能基率が85%以上である(X)ポリアリーレンスルフィドと、官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンを反応させて得られたものであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
    末端官能基率(%)=(官能基含有量(mol/g)/(1/数平均分子量(g/mol)×2))×100(%)
    (ここで、一般式(A)におけるWは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、アセトアミド基、スルホン酸基、スルホンアミド基、シラノール基、アルコキシシラン基、アルデヒド基、アセチル基、またはそれらの誘導体から選ばれる官能基であり、mは5以上の整数を表す。)
  7. 前記(X)ポリアリーレンスルフィドの官能基含有量が100μmol/g以上であることを特徴とする請求項6記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  8. 前記(X)ポリアリーレンスルフィドの官能基含有量が550μmol/g以上であることを特徴とする請求項6または7記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  9. 前記官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンが、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、シラノール基、アルコキシシラン基またはそれらの誘導体から選ばれる反応性官能基を末端に有するポリオルガノシロキサンである請求項6〜8いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  10. 前記官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンの官能基量が、前記(X)ポリアリーレンスルフィドの官能基量に対して1当量以上3等量未満となる範囲で反応させることを特徴とする請求項6〜9いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  11. 一般式(A)で表される構造を有し、下記で定義される末端官能基率が85%以上である(X)ポリアリーレンスルフィドと、官能基を有する(Y)ポリオルガノシロキサンを反応させて、ポリアリーレンスルフィド単位1〜99重量%とポリオルガノシロキサン単位99〜1重量%を含む(B)ポリアリーレンスルフィドブロック共重合体を得、次いで(A)ポリアリーレンスルフィドおよび(C)ポリシロキサンを配合するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
    末端官能基率(%)=(官能基含有量(mol/g)/(1/数平均分子量(g/mol)×2))×100(%)
    (ここで、一般式(A)におけるWは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、アセトアミド基、スルホン酸基、スルホンアミド基、シラノール基、アルコキシシラン基、アルデヒド基、アセチル基、またはそれらの誘導体から選ばれる官能基であり、mは5以上の整数を表す。)
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