JP2020143274A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】機械的強度、耐薬品性、電気絶縁性を損なうことなく、靭性に優れると共に、溶融粘度比の高いポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることを課題とする。【解決手段】(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体0.1〜35重量部、および(C)官能基を含有するエラストマー0.1〜50重量部を配合してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、靭性に優れると共に、高剪断速度領域での溶融粘度に対する低剪断速度領域での溶融粘度が高いポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略すことがある)樹脂は、優れた機械的強度、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有している。このため、PPSは、電気・電子部品、通信機器部品、自動車部品等に幅広く使用されている。特に近年、自動車のインターネットへの接続化、自動運転化、電動化の加速に伴い、電気・電子部品の薄肉化、高集積化、複雑形状化が進み、後加工や組立工程で割れ防止のため、靱性に優れたPPS樹脂が求められている。一方、PPSは射出成形時にバリが発生しやすく、バリを除去する工程を必要とするため、コストや労力が大幅に増加してしまう問題が指摘されている。
そこで、PPSのバリ低減を目的に、高剪断速度領域での溶融粘度に対する低剪断速度領域での溶融粘度が高い、すなわち溶融粘度比の高いPPS樹脂が設計されている。特許文献1には、PPS樹脂に微粒子状高分岐型PPSを配合してなる樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、PPS樹脂にカーボンナノチューブを配合してなるPPS樹脂組成物が開示されている。特許文献3には、PPS樹脂にホウ酸と有機アミンとの付加物と充填材を配合してなるPPS樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載されたPPS樹脂組成物では、溶融粘度比が高い一方で、高分岐型PPSに起因して靱性が大幅に低下する。特許文献2に記載されたPPS樹脂組成物では、溶融粘度比は比較的高いが、一方で、カーボンナノチューブに起因したPPS樹脂組成物の靱性低下や大幅なコスト増が懸念され、適用可能な用途が限定される。特許文献3に記載されたPPS樹脂組成物では、溶融粘度比が比較的高いものの、靱性が著しく低く、成形品の組み付け時において加工上の制限が多い。
このように特許文献1〜3に記載されたPPS樹脂組成物では、優れた靱性と高い溶融粘度比を両立することはできず、電気・電子部品、通信機器部品、自動車部品に採用できないという課題があった。
本発明はポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する機械的強度、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性を損なうことなく、引張破断伸度に優れると共に、溶融粘度比を高めたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
そこで本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、PPSに対し、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体と、官能基を含有するエラストマーを特定量配合することによって、引張破断伸度に優れると共に、溶融粘度比が高い特徴を有するPPS樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下の形態として実施可能である。
1.(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体0.1〜35重量部、および(C)官能基を含有するエラストマー0.1〜50重量部を配合してなる、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
2.前記(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体が、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、および酸無水物基から選択される少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
3.(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、さらに(D)有機シラン化合物を0.01〜10重量部配合してなる1〜2のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
4.前記(D)有機シラン化合物が、イソシアネート基を含有することを特徴とする3に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
5.前記(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および前記(C)官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が、500nm以下であることを特徴とする、1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
6.1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
1.(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体0.1〜35重量部、および(C)官能基を含有するエラストマー0.1〜50重量部を配合してなる、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
2.前記(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体が、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、および酸無水物基から選択される少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
3.(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、さらに(D)有機シラン化合物を0.01〜10重量部配合してなる1〜2のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
4.前記(D)有機シラン化合物が、イソシアネート基を含有することを特徴とする3に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
5.前記(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および前記(C)官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が、500nm以下であることを特徴とする、1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
6.1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
本発明によれば、PPSに対し、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体と、官能基を含有するエラストマーを特定量配合することによって、機械的強度、耐薬品性、電気絶縁性、成形加工性を損なうことなく、引張破断伸度に優れると共に、溶融粘度比が高いポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が得られる。これらの特性は、バリの発生が懸念される射出成形品全般に特に有効である。また、成形品を切削、打ち抜き、プレス成形、真空成形、スタンパブル成形、パンチング、ラミネート加工などの後加工時のバリ低減にも有効である。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂
本発明で用いられるPPS樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体である。
本発明で用いられるPPS樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体である。
耐熱性の観点から、PPS樹脂は上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
かかる構造を一部有するPPS共重合体は、融点が低くなるため、このような樹脂組成物は成形性の点で有利となる。
本発明で用いられるPPS樹脂の溶融粘度に特に制限はないが、より優れた引張破断伸度を得る意味からその溶融粘度は高い方が好ましい。例えば30Pa・sを超える範囲が好ましく、50Pa・s以上がさらに好ましく、100Pa・s以上がさらに好ましい。上限については溶融流動性保持の点から600Pa・s以下であることが好ましい。なお、本発明における溶融粘度は、310℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機製キャピログラフを用いて測定した値である。
以下に、本発明に用いるPPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造のPPS樹脂が得られれば下記方法に限定されるものではない。
まず、製造方法において使用するポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9モルから2.0モル、好ましくは0.95モルから1.5モル、更に好ましくは1.005モルから1.2モルの範囲が例示できる。
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調製し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調製し、これを重合槽に移して用いることができる。
仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95モルから1.20モル、好ましくは1.00モルから1.15モル、更に好ましくは1.005モルから1.100モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられる。これらの重合溶媒はいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられる。これらの重合溶媒はいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25モルから6.0モル、より好ましくは2.5モルから5.5モルの範囲が選ばれる。
[分子量調節剤]
生成するPPS樹脂の末端を形成させるため、あるいは重合反応や分子量を調節するためなどにより、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
生成するPPS樹脂の末端を形成させるため、あるいは重合反応や分子量を調節するためなどにより、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
本発明において、形成させるPPS樹脂の末端基として、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、カルビノール基、カルボキシル基、メルカプト基、ウレイド基、フタル酸基、無水フタル酸基、カテコール基、レゾシノール基を好ましく例示することができる。
[重合助剤]
比較的に高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
比較的に高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩からなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価である。一方、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1モル〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2モル〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6モル〜10モルの範囲が好ましく、1モル〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、より少量のアルカリ金属カルボン酸塩と水で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に他の添加物と同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられる。重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられる。重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02モル〜0.2モル、好ましくは0.03モル〜0.1モル、より好ましくは0.04モル〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが容易である点からより好ましい。
次に、本発明の実施形態に用いるPPS樹脂の好ましい製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明するが、勿論この方法に限定されるものではない。
[前工程]
PPS樹脂の製造方法において、通常、スルフィド化剤は水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
PPS樹脂の製造方法において、通常、スルフィド化剤は水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180℃〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3モル〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を製造する。
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下において、常温〜240℃、好ましくは100℃〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
この混合物を通常200℃〜290℃未満の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01℃/分〜5℃/分の速度が選択され、0.1℃/分〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般的に、最終的には250℃〜290℃未満の温度まで昇温し、その温度で通常0.25時間〜50時間、好ましくは0.5時間〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270℃〜290℃未満に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間〜20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25時間〜10時間の範囲が選ばれる。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記する)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(A)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(B)上記(A)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
(A)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(B)上記(A)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用してもよい。
PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用してもよい。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いてもよい。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全工程において同一速度で徐冷する必要はなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1℃/分〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つである。この回収方法のうち、好ましい方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm2以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法である。ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には、常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選ばれる。
[後処理工程]
PPS樹脂は、上記重合反応工程、回収工程を経て生成された後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属やアルカリ土類金属処理を施されたものであってもよい。
PPS樹脂は、上記重合反応工程、回収工程を経て生成された後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属やアルカリ土類金属処理を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられる。なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられる。一方、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、例えば、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめる方法があり、必要により撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の酢酸水溶液を80℃〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpHは4以上となってもよく、例えばpH4〜8程度となってもよい。酸処理を施されたPPS樹脂から残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわないために、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。PPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満ではPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無い。所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法や、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)が選ばれる。
また、末端基の分解が好ましくないので、これを回避するため、処理の雰囲気は不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、残留している成分を除去するため、この熱水処理操作を終えたPPS樹脂は、温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はない。例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒として挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、例えば、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめる方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。後処理工程は、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄のいずれかを施すことが好ましく、2種以上の処理を併用することが、不純物除去の観点から好ましい。
アルカリ金属、アルカリ土類金属処理する方法としては、上記前工程の前、前工程中、前工程後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、重合工程前、重合工程中、重合工程後に重合釜内にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、あるいは上記洗浄工程の最初、中間、最後の段階でアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法などが挙げられる。中でももっとも容易な方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの形でPPS中に導入するのが好ましい。また過剰のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属導入の際のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン濃度としてはPPS1gに対して0.001mmol以上が好ましく、0.01mmol以上がより好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)としては0.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
[熱酸化架橋処理]
その他、本発明におけるPPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱や過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
その他、本発明におけるPPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱や過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160℃〜260℃が好ましく、170℃〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1時間〜50時間がより好ましく、2時間〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機もしくは回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよい。効率よく、より均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのが好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことも可能である。その温度は130℃〜250℃が好ましく、160℃〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5時間〜50時間が好ましく、1時間〜20時間がより好ましく、1時間〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機または回転式もしくは撹拌翼付の加熱装置であってもよい。効率よく、より均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明において、優れた引張破断伸度を発現させる観点から、配合に供するPPS樹脂の数平均分子量が10000以上であることが好ましく、13000以上であることがより好ましい。PPS樹脂の数平均分子量が10000未満であると、分子鎖同士の絡み合いが極端に不足するため好ましくない。PPS樹脂の数平均分子量の上限は特に限定されないが、成形加工性の観点から50000以下であることが好ましい。ここでいうPPS樹脂の数平均分子量(Mn)は、センシュー科学社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した値である。
また、本発明において、優れた引張破断伸度を発現させる観点から、配合に供するPPS樹脂の非ニュートン指数が、1.2以上であることが好ましく、1.6以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。PPS樹脂の非ニュートン指数は特に限定されないが、成形加工性の観点から3.5以下であることが好ましい。ここでいうPPS樹脂の非ニュートン指数は、東洋精機社製キャピログラフ1B(長さ10mm、直径1mmのキャピラリー)を用いて、310℃の条件下、せん断応力、せん断速度を測定し、下記式にて算出する。
SR=k・SSn
SR:せん断速度
SS:せん断応力
K:定数
n:非ニュートン指数
SR=k・SSn
SR:せん断速度
SS:せん断応力
K:定数
n:非ニュートン指数
なお、PPS樹脂の非ニュートン指数を上記の好ましい範囲とする方法は、そのようなPPS樹脂を得ることができれば特に限定されないが、例えば、PPS樹脂に分岐構造を導入することや、洗浄工程においてアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を添加して洗浄する方法が挙げられる。
(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体
本発明に用いられる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、4−メチル−1−ペンテンに由来する構造単位を含む重合体であり、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体であっても、4−メチル−1−ペンテンと他の成分の共重合体であってもよい。共重合する他の成分としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のα−オレフィンが好ましい。これら共重合する他の成分は1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。本発明に用いられる4−メチル−1−ペンテンを他の成分と共重合する場合は、ランダム、ブロック、グラフト共重合のいずれの共重合様式であってもよい。
本発明に用いられる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、4−メチル−1−ペンテンに由来する構造単位を含む重合体であり、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体であっても、4−メチル−1−ペンテンと他の成分の共重合体であってもよい。共重合する他の成分としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のα−オレフィンが好ましい。これら共重合する他の成分は1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。本発明に用いられる4−メチル−1−ペンテンを他の成分と共重合する場合は、ランダム、ブロック、グラフト共重合のいずれの共重合様式であってもよい。
本発明に用いられる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の融点は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体自体の耐熱性を向上させる観点から、200℃以上であることが好ましく、215℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることが更に好ましい。4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の融点が190℃未満であると、PPSと溶融混練した際のガス発生が顕著に多くなることから好ましくない。
本発明において、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の融点を200℃以上とするためには、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体に含まれる、4−メチル−1−ペンテンに由来する構造単位の割合が80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることが更に好ましい。かかる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体とすることで、結果として高い溶融粘度比を発現させることもできる。
ここでいう融点は、TAインスツルメント社製示差走査熱量計DSCQ200を用い、密閉アルミパンに10mgのサンプルを仕込み、0℃から270℃まで20℃/分で昇温する条件にて測定した吸熱ピークトップの値である。
本発明に用いられる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、PPSへの分散性を向上させ、優れた引張破断伸度を発現させる観点から、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、および酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有することが好ましく、カルボキシル基、および酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有することがより好ましく、酸無水物基を有することが更に好ましい。
本発明に用いられる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、高い溶融粘度比を発現させる観点から、ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、0.1〜35重量部配合することが必須であり、1〜20重量部であることが好ましく、2〜15重量部であることがより好ましく、3〜10重量部であることが更に好ましい。4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の配合量が0.1重量部未満であると、高い溶融粘度比を発現させる効果が十分に発揮されず好ましくない。4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の配合量が35重量部を超えると、PPSが本来有する耐熱性・機械的強度を損ねる恐れがあるため好ましくない。
(C)官能基を含有するエラストマー
本発明に用いられる官能基を含有するエラストマーは、オレフィン系、スチレン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系のいずれであってもよく、中でもオレフィン系エラストマーが好ましく用いられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合物や共重合体を使用してもよい。
本発明に用いられる官能基を含有するエラストマーは、オレフィン系、スチレン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系のいずれであってもよく、中でもオレフィン系エラストマーが好ましく用いられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合物や共重合体を使用してもよい。
本発明に用いられる官能基を含有するエラストマーは、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、および酸無水物基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含有することが好ましく、エポキシ基、カルボキシル基、および酸無水物基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含有することがより好ましく、エポキシ基を含有することが更に好ましい。これらの官能基の導入方法としては、官能基を有するモノマーを重合時に共重合せしめたり、ラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。
本発明に用いられる官能基を含有するエラストマーの具体的としては、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体を好ましく例示することができる。エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体としては、側鎖にグリシジルエステル、グリシジルエーテルなどを有するオレフィン系共重合体や、二重結合を有するオレフィン系共重合体の二重結合部分を、エポキシ酸化したものなどが挙げられ、中でもエポキシ基を有するモノマーが共重合されたオレフィン系共重合体が好ましく、α−オレフィンおよびα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体がより好ましい。
かかるα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−オクテンなどが挙げられ、中でもエチレンが好ましく用いられる。またこれらは2種以上を同時に使用してもよい。
一方、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルの具体例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどが挙げられ、中でもアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましい。
かかるα−オレフィンおよびα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体は、上記α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルとのランダム、ブロック、グラフト共重合のいずれの共重合様式であってもよい。α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを成分とするオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。中でも、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体から選ばれた共重合体が好ましく用いられる。
α−オレフィンおよびα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体におけるα,β−不飽和酸のグリシジルエステルの共重合量は、目的とする効果への影響、重合性、ゲル化、耐熱性、流動性、強度への影響などの観点から、0.5〜40重量%であることが好ましく、3〜30重量%であることがより好ましい。
本発明に用いられる官能基を含有するエラストマーの配合量は、優れた引張破断伸度を発現させる観点から、ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、0.1〜50重量部であることが必須であり、1〜30重量部であることが好ましく、2〜15重量部であることがより好ましく、3〜10重量部であることが更に好ましい。官能基を含有するエラストマーの配合量が0.1重量部未満であると、後述する、(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および(C)官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が大きくなり、優れた引張破断伸度を発現させる観点から好ましくない。官能基を含有するエラストマーの配合量が50重量部を超えると、PPSが本来有する耐熱性・機械的強度に加え、流動性を著しく損ねる恐れがあるため好ましくない。
なお、本発明において、(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体に該当する樹脂、すなわち4−メチル−1−ペンテンに由来する構造単位を含む化合物は、(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体として取扱い、(C)官能基を含有するエラストマーとして取り扱わないものとする。
(D)有機シラン化合物
本発明においては、PPS樹脂と(C)官能基を含有するエラストマーのブロックポリマーを効率良く生成する観点から、有機シラン化合物を配合することが好ましい。本発明において、有機シラン化合物としては、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基から選択される少なくとも一つの官能基を有するアルコキシシラン化合物であることが好ましい。
本発明においては、PPS樹脂と(C)官能基を含有するエラストマーのブロックポリマーを効率良く生成する観点から、有機シラン化合物を配合することが好ましい。本発明において、有機シラン化合物としては、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基から選択される少なくとも一つの官能基を有するアルコキシシラン化合物であることが好ましい。
具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル−3−ピペラジノプロピルシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシランなどを好ましく例示することができる。
上記したアルコキシシラン化合物の中で、反応性や取扱上の観点から、イソシアネート基、およびエポキシ基から選択される少なくとも一つの官能基を有するアルコキシシラン化合物がより好ましく、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが更に好ましい。これらアルコキシシラン化合物はそれぞれ単独または2種以上の混合物の形で用いることができる。
本発明に用いられるこれら有機シラン化合物の配合量は、PPS樹脂100重量部に対して0.01重量部〜10重量部であることが好ましく、0.1重量部〜5重量部であることがより好ましく、0.3重量部〜3重量部であることが更に好ましい態様として例示できる。有機シラン化合物の配合量が10重量部を超えると、得られるPPS樹脂組成物の粘度が著しく上昇し、成形加工上の観点から好ましくない。有機シラン化合物の配合量が0.01重量部未満であると、PPS樹脂と官能基を含有するエラストマーの反応が不十分となる結果、優れた引張破断伸度が発現しない恐れがあり、好ましくない。
(E)PPS樹脂以外の樹脂・添加剤
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリールスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エチレン/ブテン共重合体などの官能基を含有しないエラストマーなどの、(A)PPS樹脂、(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体および(C)官能基を含有するエラストマー以外の樹脂を配合することができる。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリールスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エチレン/ブテン共重合体などの官能基を含有しないエラストマーなどの、(A)PPS樹脂、(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体および(C)官能基を含有するエラストマー以外の樹脂を配合することができる。
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、その他、水、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物はいずれも組成物全体の20重量%を超えると本発明のPPS樹脂組成物本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
特に、本発明のPPS樹脂組成物の特性を損なわない組成物とするために、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素樹脂を配合した組成物とすることが好ましい。
(F)PPS樹脂組成物の製造方法
本発明のPPS樹脂組成物の製造方法としては、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が使用できるが、簡便さの観点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機による溶融混練や、ニーダーによる溶融混練等が使用できるが、生産性の観点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機による溶融混練については、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等の押出機を1台以上で使用できるが、混練性、反応性、生産性向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく使用でき、二軸押出機による溶融混練が最も好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物の製造方法としては、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が使用できるが、簡便さの観点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機による溶融混練や、ニーダーによる溶融混練等が使用できるが、生産性の観点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機による溶融混練については、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等の押出機を1台以上で使用できるが、混練性、反応性、生産性向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく使用でき、二軸押出機による溶融混練が最も好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物を製造するより具体的な方法としては、PPS樹脂と4−メチル−1−ペンテン(共)重合体および官能基を含有するエラストマーを押出機で一括混合する方法、一部のPPS樹脂と、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体および官能基を含有するエラストマーを予め押出機で混合しておき、残りのPPS樹脂を混合する方法が挙げられるが、樹脂組成物を効率良く製造するという観点で、PPS樹脂、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、官能基を含有するエラストマー、他の配合成分を二軸の押出機に供給して、PPS樹脂の融点+5〜100℃の加工温度で溶融混練する方法を代表例として挙げることができる。
PPS樹脂と、官能基を含有するエラストマーを溶融混練により反応させるためには、せん断力を比較的強くする必要があることから、二軸押出機のスクリューアレンジ構成において、ニーディング部が2箇所以上、好ましくは3箇所以上、さらに好ましくは5箇所以上配置されることが好ましい。ニーディング部箇所の上限としては、1箇所あたりのニーディング部の長さとニーディング部の間隔によって変化し得るが、10箇所以下が好ましく、8箇所以下がより好ましい。また、押出機のスクリュー全長に対するニーディング部の合計の長さの割合が、10〜60%の範囲が好ましく、より好ましくは15〜55%、さらには20〜50%の範囲が好ましい。
二軸押出機のスクリュー長さLとスクリュー直径Dの比であるL/Dは、10以上が望ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。二軸押出機のL/Dの上限は通常60である。この際の周速度としては、15〜50m/分の範囲が選択され、20〜40m/分がより好ましく選択される。二軸押出機のL/Dが10未満の場合には、混練部分が不足するため、PPS樹脂と官能基を含有するエラストマーが十分に反応しないため好ましくない。更に、切り欠き部を有する撹拌スクリューを組み込んだスクリューアレンジを配して溶融混練する方法も好ましい方法として例示できる。ここで「切り欠き」とは、スクリューフライトの山部分を一部削ってできたものをいう。切り欠き部を有する撹拌スクリューは樹脂充填率を高くすることが可能であると共に、従来の樹脂をすりつぶす手法のニーディングとは異なり、発熱による樹脂の分解を抑制するのみならず、撹拌・掻き混ぜを主体とする混練を行うことができ、PPS樹脂と官能基を含有するエラストマーを十分に反応させることができるため好ましい。
切り欠き部を有する撹拌スクリューとしては、樹脂充満による溶融樹脂の冷却効率向上、撹拌・混練性向上の観点から、スクリュー直径をDとするとスクリューピッチの長さが0.1D〜0.3D、かつ切り欠き数が1ピッチあたり10〜15個である切り欠き部を有する撹拌スクリューであることが好ましい。ここでスクリューピッチの長さとは、スクリューが360度回転したときの、スクリューの山部分間のスクリュー長さをいう。
また、押出機のスクリュー全長に対する切り欠き部を有する撹拌スクリュー部の合計の長さの割合は、前記L/Dのうちの3〜20%であることが好ましく、5〜15%であることがより好ましい。
スクリュー回転数については、本発明の特定の相構造を形成する観点から、150rpm以上が好ましく、200rpm以上がより好ましい。スクリュー回転数の上限については、特に制限されないが、押出機への負荷軽減の観点から1500rpm以下であることが好ましい。
原料の混合順序については特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、これと更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
(G)PPS樹脂組成物の特徴
本発明のPPS樹脂組成物は、PPS樹脂に対し、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体および官能基を含有するエラストマーを特定量配合することによって、PPS樹脂が本来有する優れた機械的強度、耐薬品性、電気絶縁性、成形加工性を損なうこと無く、引張破断伸度に優れると共に、高い溶融粘度比を発現させたものである。
本発明のPPS樹脂組成物は、PPS樹脂に対し、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体および官能基を含有するエラストマーを特定量配合することによって、PPS樹脂が本来有する優れた機械的強度、耐薬品性、電気絶縁性、成形加工性を損なうこと無く、引張破断伸度に優れると共に、高い溶融粘度比を発現させたものである。
ここでいうPPS樹脂組成物の引張破断伸度とは、射出成形して得られるJIS K7161−2 1A形試験片を、AG−20kNx万能試験機を用い、引張速度5mm/min、雰囲気温度23℃、相対湿度50%の条件下、ISO527−1に従い引張破断伸度を5回測定した平均値をいう。
本発明においては、PPS樹脂組成物の引張破断伸度は10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、18%以上であることがさらに好ましい態様として例示できる。引張破断伸度の上限は特に限定されないが、一般的に200%以下である。引張破断伸度が10%未満であると、降伏することなく脆性破壊となる傾向が強く、押出成形品や射出成形品とした際にひび割れが生じることや、部品として組み付けの際や、後加工の際に破損してしまうなどの製造上の問題に加え、成形品の性能に問題が起こりやすく好ましくない。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には、必須成分ではないが、本発明の効果を損なわない範囲で無機充填材を配合して使用することも可能である。かかる無機充填材の具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはフラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられ、なかでもガラス繊維、シリカ、炭酸カルシウムが好ましく、さらに炭酸カルシウムやシリカが、防食材、滑材の効果の点から特に好ましい。またこれらの無機充填材は中空であってもよく、さらに2種類以上併用することも可能である。また、これらの無機充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でも炭酸カルシウムやシリカ、カーボンブラックが、防食材、滑材、導電性付与の効果の点から好ましい。
本発明において、溶融粘度比(高剪断速度領域での溶融粘度に対する低剪断速度領域での溶融粘度)が大きい程、PPS樹脂組成物のバリを低減させることが可能である。より具体的には、PPS樹脂組成物の低剪断速度領域での溶融粘度を大きく、高剪断速度領域での溶融粘度を小さくすることが挙げられる。
本発明においては、PPSのバリを低減させる観点から、PPS樹脂組成物の溶融粘度比が7.0以上であることが好ましく、7.4以上であることがより好ましく、7.8以上であることが更に好ましい。PPS樹脂組成物の溶融粘度比に上限は無いが、通常50以下である。溶融粘度比が6未満であると、PPSのバリを低減させる効果が不十分となるため好ましくない。
ここでいう溶融粘度比は、東洋精機製キャピログラフ1B(長さ10mm、直径1mmのキャピラリー)を用い、310℃、剪断速度120/sおよび6000/sの条件下にて、PPS樹脂組成物の溶融粘度を測定し、得られた溶融粘度から以下の式より計算される数値である。
溶融粘度比=(310℃、剪断速度120/sでの溶融粘度)/(310℃、剪断速度6000/sでの溶融粘度)。
溶融粘度比=(310℃、剪断速度120/sでの溶融粘度)/(310℃、剪断速度6000/sでの溶融粘度)。
本発明において、高い溶融粘度比を発現させる観点から、PPS樹脂組成物の非ニュートン指数が1.7以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。PPS樹脂組成物の非ニュートン指数が1.4以下であると、高い溶融粘度比を発現させることができず、好ましくない。
ここでいう非ニュートン指数は、東洋精機社製キャピログラフ1B(長さ10mm、直径1mmのキャピラリー)を用いて、310℃の条件下、せん断応力、せん断速度を測定し、下記式にて算出される数値である。
SR=k・SSn
SR:せん断速度
SS:せん断応力
K:定数
n:非ニュートン指数。
SR=k・SSn
SR:せん断速度
SS:せん断応力
K:定数
n:非ニュートン指数。
本発明において、PPS樹脂組成物中における4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が1500nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、500nm以下であることが更に好ましい。4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径に下限は無いが、通常1nm以上である。4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が4000nm以上であると、成形品の引張破断伸度が低下するだけでなく、外観が著しく悪化するため好ましくない。
ここでいう、PPS樹脂組成物における、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径は、以下の方法で算出した。PPS樹脂組成物を射出成形して得られたJIS K7161−2 1A形試験片を、樹脂流動方向に対して断面積方向(垂直方向)に切削して0.1μm以下の薄片を切り出し、透過型電子顕微鏡を用いて1000〜5000倍程度の倍率で撮影した。撮影した写真から、任意の100個の分散相について、まずそれぞれの分散相の最大径と最小径を測定してそれぞれの分散相の径の平均値を求め、その後にそれらの径の平均値から求めた数平均値とした。
(H)PPS樹脂組成物の用途
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形など、各種成形手法により成形可能であるが、引張破断伸度に優れると共に、高い溶融粘度比を発現することから、射出成形用途として特に有用である。本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、寸法安定性にも優れる特徴から、均一な厚みと寸法精度が求められる薄肉成形品、特に半導体部品、電気電子部品、通信機器部品に有利である。更に、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、メルトテンションや伸張粘度などの特性にも優れる特徴から、吹込(ブロー)成形用途としても有用である。具体的には、押出ブロー、射出ブロー、シートブローの他、三次元ブローやサクションブロー、エクスチェンジブローなどの多次元ブローなどが挙げられる。また、種々特性を複合的に付与する観点から、二種二層、三種三層、二種五層などの多層ブローとして設計する事も好適である。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形など、各種成形手法により成形可能であるが、引張破断伸度に優れると共に、高い溶融粘度比を発現することから、射出成形用途として特に有用である。本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、寸法安定性にも優れる特徴から、均一な厚みと寸法精度が求められる薄肉成形品、特に半導体部品、電気電子部品、通信機器部品に有利である。更に、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、メルトテンションや伸張粘度などの特性にも優れる特徴から、吹込(ブロー)成形用途としても有用である。具体的には、押出ブロー、射出ブロー、シートブローの他、三次元ブローやサクションブロー、エクスチェンジブローなどの多次元ブローなどが挙げられる。また、種々特性を複合的に付与する観点から、二種二層、三種三層、二種五層などの多層ブローとして設計する事も好適である。
射出成形により得られる成形品の用途としては、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、機遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭・事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器・精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプとダクト、ターボダクト、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、クラッシュパッド、インシュロック、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品、携帯電話、スマートフォン、ノート型パソコン、タブレット型パソコン、ビデオカメラ、ハイブリッド自動車、電気自動車などの一次電池または二次電池用のガスケット等々を例示できる。押出成形により得られる成形品としては、丸棒、角棒、シート、フィルム、チューブ、パイプなどが挙げられ、更に具体的な用途としては、給湯器モーター、エアコンモーター、駆動モーター用などの電気絶縁材料、フィルムコンデンサー、スピーカー振動板、記録用の磁気テープ、プリント基板材料、プリント基板周辺部品、シームレスベルト、半導体パッケージ、半導体搬送トレイ、工程・離型フィルム、保護フィルム、自動車用フィルムセンサー、ワイヤーケーブルの絶縁テープ、リチウムイオン電池内の絶縁ワッシャー、熱水や冷却水、化学薬品用のチューブ、自動車用の燃料チューブ、熱水配管、化学プラントなどの薬品配管、超純水や超高純度溶媒用の配管、自動車配管、フロンや超臨界二酸化炭素冷媒用の配管パイプ、研磨装置用のワークピース保持リングなどが例示できる。その他、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道、発電設備のモーターコイル用巻線の被覆成形体、自動車の電線被覆体、家電用の耐熱電線ケーブル、自動車内の配線に使用されるフラットケーブル等のワイヤーハーネスやコントロールワイヤー、通信、伝送用、高周波用、オーディオ用、計測用などの信号用トランスまたは車載用トランスの巻線の被覆成形体などが例示できる。吹込(ブロー)成形により得られる成形品の用途としては、自動車用の燃料タンク、オイルタンク、レゾネーター、インタークーラー、インテークマニホールド、ターボダクト、吸排気ダクト、ラジエターパイプ、ラジエターヘッダー、エクスパンジョンタンク、オイル循環パイプなどが例示できる。また、成形品の後加工にてバリの発生が懸念される用途全般にも特に有効である。例えば、切削、打ち抜き、プレス成形、真空成形、スタンパブル成形、パンチング、ラミネート加工などが挙げられる。これら各種成形品は、熱板溶着、レーザー溶着、誘導加熱溶着、高周波溶着、スピン溶着、振動溶着、超音波溶着、射出溶着などの二次加工に供することも勿論可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
以下の実施例において、材料特性については次の方法により評価した。
[数平均分子量]
PPS樹脂の数平均分子量(Mn)は、以下に示す条件にて、センシュー科学社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。
装置:SSC−7100(センシュー科学)
カラム名:GPC3506(センシュー科学)
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
PPS樹脂の数平均分子量(Mn)は、以下に示す条件にて、センシュー科学社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。
装置:SSC−7100(センシュー科学)
カラム名:GPC3506(センシュー科学)
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
[溶融粘度]
東洋精機製キャピログラフ1B(長さ10mm、直径1mmのキャピラリー)を用い、310℃、剪断速度120/sおよび6000/sの条件下にて、PPS樹脂組成物の溶融粘度を測定した。
東洋精機製キャピログラフ1B(長さ10mm、直径1mmのキャピラリー)を用い、310℃、剪断速度120/sおよび6000/sの条件下にて、PPS樹脂組成物の溶融粘度を測定した。
[溶融粘度比]
東洋精機製キャピログラフ1B(長さ10mm、直径1mmのキャピラリー)を用い、310℃、剪断速度120/sおよび6000/sの条件下にて、PPS樹脂組成物の溶融粘度を測定し、得られた溶融粘度から以下の式より溶融粘度比を算出した。
溶融粘度比=(310℃、剪断速度120/sでの溶融粘度)/(310℃、剪断速度6000/sでの溶融粘度)
東洋精機製キャピログラフ1B(長さ10mm、直径1mmのキャピラリー)を用い、310℃、剪断速度120/sおよび6000/sの条件下にて、PPS樹脂組成物の溶融粘度を測定し、得られた溶融粘度から以下の式より溶融粘度比を算出した。
溶融粘度比=(310℃、剪断速度120/sでの溶融粘度)/(310℃、剪断速度6000/sでの溶融粘度)
[非ニュートン指数]
PPS樹脂およびPPS樹脂組成物の非ニュートン指数は、次の方法により求めた。東洋精機社製キャピログラフ1B(長さ10mm、直径1mmのキャピラリー)を用いて、310℃の条件下、せん断応力、せん断速度を測定し下記式にて非ニュートン指数を算出した。
SR=k・SSn
SR:せん断速度
SS:せん断応力
K:定数
n:非ニュートン指数。
PPS樹脂およびPPS樹脂組成物の非ニュートン指数は、次の方法により求めた。東洋精機社製キャピログラフ1B(長さ10mm、直径1mmのキャピラリー)を用いて、310℃の条件下、せん断応力、せん断速度を測定し下記式にて非ニュートン指数を算出した。
SR=k・SSn
SR:せん断速度
SS:せん断応力
K:定数
n:非ニュートン指数。
[射出成形]
PPS樹脂組成物は、住友重機械製射出成形機SE75−DUZを用い、樹脂温度310℃、金型温度140℃とする条件にて、JIS K7161−2 1A形試験片を成形した。
PPS樹脂組成物は、住友重機械製射出成形機SE75−DUZを用い、樹脂温度310℃、金型温度140℃とする条件にて、JIS K7161−2 1A形試験片を成形した。
[PPS樹脂組成物の引張破断伸度]
射出成形して得られたJIS K7161−2 1A形試験片を、AG−20kNx万能試験機を用い、引張速度5mm/min、雰囲気温度23℃、相対湿度50%の条件下、ISO527−1に従い引張破断伸度を測定し、5回測定した平均値を求めた。
射出成形して得られたJIS K7161−2 1A形試験片を、AG−20kNx万能試験機を用い、引張速度5mm/min、雰囲気温度23℃、相対湿度50%の条件下、ISO527−1に従い引張破断伸度を測定し、5回測定した平均値を求めた。
[島相の数平均分散径]
PPS樹脂組成物における、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種を含む樹脂の島相の数平均分散粒子径は、以下の方法で算出した。PPS樹脂組成物を射出成形して得られたJIS K7161−2 1A形試験片を、樹脂流動方向に対して断面積方向(垂直方向)に切削して0.1μm以下の薄片を切り出し、透過型電子顕微鏡を用いて1000〜5000倍程度の倍率で撮影した。撮影した写真から、任意の100個の分散相について、まずそれぞれの分散相の最大径と最小径を測定してそれぞれの分散相の径の平均値を求め、その後にそれらの径の平均値から求めた数平均値とした。
PPS樹脂組成物における、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種を含む樹脂の島相の数平均分散粒子径は、以下の方法で算出した。PPS樹脂組成物を射出成形して得られたJIS K7161−2 1A形試験片を、樹脂流動方向に対して断面積方向(垂直方向)に切削して0.1μm以下の薄片を切り出し、透過型電子顕微鏡を用いて1000〜5000倍程度の倍率で撮影した。撮影した写真から、任意の100個の分散相について、まずそれぞれの分散相の最大径と最小径を測定してそれぞれの分散相の径の平均値を求め、その後にそれらの径の平均値から求めた数平均値とした。
[参考例1]PPSの調製(PPS−1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次にp−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS−1は、310℃、剪断速度120/sでの溶融粘度が272Pa・s、310℃、剪断速度6000/sでの溶融粘度が95Pa・s、数平均分子量が16000であった。また、PPS−1の非ニュートン指数は1.23であった。
[参考例2]PPSの調製(PPS−2)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次にp−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、1,2,4−トリクロロベンゼン381.02g(2.10モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸カルシウム水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS−2は、310℃、剪断速度120/sでの溶融粘度が770Pa・s、310℃、剪断速度6000/sでの溶融粘度が265Pa・s、数平均分子量が21000であった。また、PPS−2の非ニュートン指数は2.13であった。
[参考例3]4−メチル−1−ペンテン(共)重合体
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体−1:4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(三井化学社製“DX820”)。融点238℃
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体−2:カルボキシル基を含有する4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(三井化学社製“RT18”)。融点236℃
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体−3:4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(三井化学社製“MX002O”)。融点225℃。
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体−1:4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(三井化学社製“DX820”)。融点238℃
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体−2:カルボキシル基を含有する4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(三井化学社製“RT18”)。融点236℃
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体−3:4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(三井化学社製“MX002O”)。融点225℃。
[参考例4]その他の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(4−メチル−1−ペンテン(共)重合体−4)
三井化学社製4−メチル−1−ペンテン(共)重合体“DX820”100重量部に対し、日油社製過酸化物パーヘキサ25B0.1重量部、無水マレイン酸1重量部をドライブレンドした後、真空ベントを具備したTEX30α型二軸押出機(日本製鋼所社製:L/D=30、ニーディング部3箇所、ニーディング部の合計L/D=20とし、11箇所あるシリンダーブロックの内、ダイ先端に接した2箇所を300℃、それ以外の9箇所(Tc:シリンダー温度)を280℃に設定して溶融混練)に投入して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化して無水マレイン酸基を含有する4−メチル−1−ペンテン(共)重合体−4を得た。得られた4−メチル−1−ペンテン(共)重合体−4の融点は233℃であった。
三井化学社製4−メチル−1−ペンテン(共)重合体“DX820”100重量部に対し、日油社製過酸化物パーヘキサ25B0.1重量部、無水マレイン酸1重量部をドライブレンドした後、真空ベントを具備したTEX30α型二軸押出機(日本製鋼所社製:L/D=30、ニーディング部3箇所、ニーディング部の合計L/D=20とし、11箇所あるシリンダーブロックの内、ダイ先端に接した2箇所を300℃、それ以外の9箇所(Tc:シリンダー温度)を280℃に設定して溶融混練)に投入して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化して無水マレイン酸基を含有する4−メチル−1−ペンテン(共)重合体−4を得た。得られた4−メチル−1−ペンテン(共)重合体−4の融点は233℃であった。
[参考例5]官能基を含有するエラストマー
官能基を含有するエラストマー1:エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学社製“BF−E”)。
官能基を含有するエラストマー1:エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学社製“BF−E”)。
[参考例6]エポキシ樹脂
エポキシ樹脂−1:ビスA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製“エピコート1001”)。
エポキシ樹脂−1:ビスA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製“エピコート1001”)。
[参考例7]有機シラン化合物
有機シラン化合物−1:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製“KBE9007”)
有機シラン化合物−2:3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製“KBE903”)。
有機シラン化合物−3:2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製“KBM303”)。
有機シラン化合物−1:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製“KBE9007”)
有機シラン化合物−2:3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製“KBE903”)。
有機シラン化合物−3:2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製“KBM303”)。
[実施例1]
PPS樹脂、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、官能基を含有するエラストマーを表1に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備したTEX30α型二軸押出機(日本製鋼所社製:L/D=30、ニーディング部3箇所、ニーディング部の合計L/D=20とし、11箇所あるシリンダーブロックの内、ダイ先端に接した2箇所を300℃、それ以外の9箇所(Tc:シリンダー温度)を280℃に設定して溶融混練)に投入して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットを130℃で一晩乾燥した。ペレットの310℃、剪断速度120/sでの溶融粘度、310℃、剪断速度6000/sでの溶融粘度、溶融粘度比、非ニュートン指数、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、官能基含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径を評価した。また、乾燥ペレットを射出成形に供し、得られた成形品について引張破断伸度を評価した。結果は表1に示す通りであった。
PPS樹脂、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、官能基を含有するエラストマーを表1に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備したTEX30α型二軸押出機(日本製鋼所社製:L/D=30、ニーディング部3箇所、ニーディング部の合計L/D=20とし、11箇所あるシリンダーブロックの内、ダイ先端に接した2箇所を300℃、それ以外の9箇所(Tc:シリンダー温度)を280℃に設定して溶融混練)に投入して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットを130℃で一晩乾燥した。ペレットの310℃、剪断速度120/sでの溶融粘度、310℃、剪断速度6000/sでの溶融粘度、溶融粘度比、非ニュートン指数、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、官能基含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径を評価した。また、乾燥ペレットを射出成形に供し、得られた成形品について引張破断伸度を評価した。結果は表1に示す通りであった。
[実施例2〜9、比較例5]
PPS樹脂、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、官能基を含有するエラストマーに加え、さらに有機シラン化合物を配合したこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
PPS樹脂、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、官能基を含有するエラストマーに加え、さらに有機シラン化合物を配合したこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
[比較例1]
官能基を含有するエラストマーを配合しなかった以外は、実施例6と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
官能基を含有するエラストマーを配合しなかった以外は、実施例6と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
[比較例2]
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を配合しなかった以外は、実施例6と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を配合しなかった以外は、実施例6と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
[比較例3]
官能基を含有するエラストマーおよび有機シラン化合物を配合しなかった以外は、実施例6と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
官能基を含有するエラストマーおよび有機シラン化合物を配合しなかった以外は、実施例6と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
[比較例4]
官能基を含有するエラストマー、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体および有機シラン化合物を配合しなかった以外は、実施例3と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
官能基を含有するエラストマー、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体および有機シラン化合物を配合しなかった以外は、実施例3と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
[比較例6]
官能基を含有するエラストマー、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を配合しなかった以外は、実施例3と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
官能基を含有するエラストマー、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を配合しなかった以外は、実施例3と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
[比較例7]
官能基を含有するエラストマーをエポキシ樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
官能基を含有するエラストマーをエポキシ樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様に溶融混練、ペレット化、各種特性評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
上記実施例と比較例の結果を比較して説明する。
実施例1〜9はPPS樹脂、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、官能基を含有するエラストマーを溶融混練することにより、溶融粘度比と非ニュートン指数、引張破断伸度が優れたPPS樹脂組成物が得られた。
特に、実施例2〜7および9は、さらに有機シラン化合物を配合したことにより、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が1500nm以下となり、より引張破断伸度に優れたPPS樹脂組成物が得られた。
また、実施例3〜7および9は、配合に供する4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の融点を230℃以上としたことにより、非ニュートン指数がより上昇したPPS樹脂組成物が得られた。
実施例4〜7および9は、カルボキシル基あるいは酸無水物基を有する4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を使用したことにより、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が800nm以下となり、さらに引張破断伸度に優れたPPS樹脂組成物が得られた。
実施例6、7および9は、イソシアネート基を有する有機シラン化合物を使用したことにより、溶融粘度比、非ニュートン指数が飛躍的に上昇すると共に、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が500nm以下となり、飛躍的に引張破断伸度に優れるPPS樹脂組成物が得られた。
実施例8は、非ニュートン指数が2.0以上のPPSを使用したことにより、PPS樹脂組成物とした際の溶融粘度比、非ニュートン指数が飛躍的に上昇すると共に、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が500nm以下となり、飛躍的に引張破断伸度に優れるPPS樹脂組成物が得られた。
一方、比較例1で示す通り、官能基を有するエラストマーを配合しなかった場合、非ニュートン指数が1.8以上となる場合もあるが、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が4000nm以上となり、引張破断伸度が極めて低いものであった。
また、比較例2で示す通り、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を配合しなかった場合、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が800nm以下となる場合もあるが、溶融粘度比が低いものであった。
比較例3で示す通り、官能基を含有するエラストマーおよび有機シラン化合物を配合しなかった場合、溶融粘度比ならびに非ニュートン指数が極めて低いことに加え、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂の島相の数平均分散粒子径が4000nm以上となり、引張破断伸度が極めて低いものであった。
比較例4で示す通り、PPSのみを溶融混練した場合、溶融粘度比ならびに非ニュートン指数のみならず、引張破断伸度も極めて低いものであった。
比較例5で示す通り、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の配合量が35重量部を超えると、溶融粘度比が7.8以上かつ非ニュートン指数が2.0以上となる場合もあるが、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が4000nm以上となり、引張破断伸度が極めて低いものであった。
比較例6で示す通り、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体および官能基を含有するエラストマーを配合しなかった場合、溶融粘度比は極めて低いものであった。
比較例7で示す通り、官能基を含有するエラストマーの代わりにエポキシ樹脂を配合した場合、溶融粘度比ならびに非ニュートン指数が極めて低いと共に、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が4000nm以上となり、引張破断伸度も極めて低いものであった。
Claims (6)
- (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体0.1〜35重量部、および(C)官能基を含有するエラストマー0.1〜50重量部を配合してなる、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体が、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、および酸無水物基から選択される少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、さらに(D)有機シラン化合物を0.01〜10重量部配合してなる請求項1〜2のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記(D)有機シラン化合物が、イソシアネート基を含有することを特徴とする請求項3に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記(B)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および前記(C)官能基を含有するエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を含む島相の数平均分散粒子径が、500nm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
Applications Claiming Priority (2)
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JP2019035298 | 2019-02-28 | ||
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JP2020031110A Pending JP2020143274A (ja) | 2019-02-28 | 2020-02-27 | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびそれからなる成形品 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022210350A1 (ja) * | 2021-03-29 | 2022-10-06 | 東レ株式会社 | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびその製造方法 |
-
2020
- 2020-02-27 JP JP2020031110A patent/JP2020143274A/ja active Pending
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WO2022210350A1 (ja) * | 2021-03-29 | 2022-10-06 | 東レ株式会社 | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびその製造方法 |
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