JP6405830B2 - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は柔軟でありながら、耐熱性とクリープ特性および電気絶縁性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略すことがある)樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性など、エンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、電気・電子部品、通信機器部品、自動車部品などに幅広く利用されているものの、堅くて脆い欠点がある。このため、PPS樹脂にエラストマーを配合することにより、柔軟性を付与する改良方法が多数報告されているが、PPS樹脂の本来有する優れた耐熱性や耐薬品性が犠牲になると同時に、クリープ特性も著しく低下してしまうなどの新たな課題を生じてしまう。
一方、フッ素樹脂は、柔軟性、耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気特性に優れているものの、機械特性に劣る欠点を有している。
そこで、これらPPS樹脂、フッ素樹脂の優れた特性を両立するために、両樹脂を配合する試みがいくつか報告されている。例えば特許文献1には、ポリチオアリーレンエーテルと融点が320℃以下のフッ素樹脂とアミノアルコキシシラン化合物からなる熱可塑性樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、ポリアリーレンスルフィド樹脂と熱可塑性フッ素樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物が開示されている。特許文献3には、融点が235℃以下に低下させられたエチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体とポリフェニレンスルフィドと相溶化剤を含んだポリマーアロイが開示されている。しかし、いずれもフッ素樹脂中に反応性の官能基が含まれておらず、実質的にPPS樹脂と反応できないために、相構造の安定性を保持することが困難となり、溶融成形加工時にフッ素樹脂分散相が合体・凝集を引き起こす結果、期待する特性が発現されない。一方、特許文献4には、ポリフェニレンスルフィド、官能基を有する含フッ素ポリマー、ガラス繊維を含む耐衝撃性ポリフェニレンスルフィド組成物が開示されている。しかし、PPS樹脂とフッ素樹脂との反応が十分ではなく、溶融混練時にはPPS樹脂とフッ素樹脂の混和性が仮に良好であっても、溶融成形加工時にはやはりフッ素樹脂分散相が合体・凝集を引き起こしてしまうため、期待する特性が有効に発現されない課題を生じてしまう。
特開平8−53592号公報 特開平8−176390号公報 国際公開1998/021277号 特開平9−263676号公報
本発明はポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する耐薬品性や機械的強度を損なうことなく、柔軟性に優れると共に、耐熱性とクリープ特性および電気絶縁性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
そこで本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリフェニレンスルフィド樹脂と反応性官能基を含有するフッ素樹脂とからなる樹脂組成物において、溶融滞留後にもフッ素樹脂分散相が凝集・合体を引き起こすことがない様、その数平均分散粒子径の変化率を特定の範囲に制御することにより、優れた柔軟性と共に、耐熱性とクリープ特性および電気絶縁性も高位に両立することを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
1.(a)成分と(b)成分の合計を100体積%として、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂99〜51体積%、(b)エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基および水酸基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を含有するフッ素樹脂1〜49体積%からなる樹脂組成物であって、電子顕微鏡により観察されるモルフォロジーにおいて、(a)成分が連続相(海相)を、(b)成分が分散相(島相)を形成すると共に、(b)成分からなる分散相の数平均分散粒子径r1と、320℃で30分間溶融滞留させた後の(b)成分からなる分散相の数平均分散粒子径r2との比r2/r1が、1.5以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
2.前記(b)成分が、前記反応性官能基を含有する、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体から選ばれる少なくとも1種のフッ素樹脂であることを特徴とする1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
3.(a)成分と(b)成分の合計100重量部に対して、更に(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有する化合物を0.1〜10重量部含有することを特徴とする1または2に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
4.(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂および(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂を溶融混練する際に、シリンダー温度Tc(℃)と前記(b)成分の融点Tmf(℃)が、以下の式を満たす条件で溶融混練することを特徴とする1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
Tc(℃)≦Tmf(℃)−10(℃)
である。
本発明によれば、柔軟でありながら、耐熱性とクリープ特性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が得られる。これら特性は、シール性と長期耐久性の求められるガスケット用途などに特に好適である。また高温までの幅広い温度領域において電気絶縁性を保持するため、インシュレータや絶縁フィルム、電線被覆材料などの用途にも好適である。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂
本発明で用いられる(a)PPS樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
Figure 0006405830
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。また(a)PPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
Figure 0006405830
かかる構造を一部有するPPS共重合体は、融点が低くなるため、このような樹脂組成物は成形性の点で有利となる。
本発明で用いられる(a)PPS樹脂の溶融粘度に特に制限はないが、より優れた引張破断伸度を得る意味からその溶融粘度は高い方が好ましい。例えば30Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)を越える範囲が好ましく、50Pa・s以上がさらに好ましく、100Pa・s以上がさらに好ましい。上限については溶融流動性保持の点から600Pa・s以下であることが好ましい。
なお、本発明における溶融粘度は、310℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機製キャピログラフを用いて測定した値である。
以下に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造の(a)PPS樹脂が得られれば下記方法に限定されるものではない。
まず、製造方法において使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ-p-キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度の(a)PPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選ばれる。
[分子量調節剤]
生成する(a)PPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
[重合助剤]
比較的高重合度の(a)PPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られる(a)PPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、それぞれより少量で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが容易である点からより好ましい。
次に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の好ましい製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明するが、勿論この方法に限定されるものではない。
[前工程]
(a)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることにより(a)PPS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜240℃、好ましくは100〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選ばれる。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(A)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(B)上記(A)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
(a)PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用しても良い。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要はなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選ばれる。
[後処理工程]
(a)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属やアルカリ土類金属処理を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、(a)PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のような(a)PPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液に(a)PPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、PH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のPHは4以上例えばPH4〜8程度となっても良い。酸処理を施された(a)PPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満では(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
熱水洗浄による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量の(a)PPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。(a)PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、(a)PPS樹脂200g以下の浴比が選ばれる。
また、処理の雰囲気は、末端基の分解が好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えた(a)PPS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、(a)PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中に(a)PPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒で(a)PPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。
アルカリ金属、アルカリ土類金属処理する方法としては、上記前工程の前、前工程中、前工程後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、重合行程前、重合行程中、重合行程後に重合釜内にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、あるいは上記洗浄工程の最初、中間、最後の段階でアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法などが挙げられる。中でももっとも容易な方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの形でPPS中に導入するのが好ましい。また過剰のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属導入の際のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン濃度としてはPPS1gに対して0.001mmol以上が好ましく、0.01mmol以上がより好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)としては0.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
本発明においては、滞留安定性の優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得る観点から、有機溶媒洗浄と80℃程度の温水または前記した熱水洗浄を数回繰り返すことにより残留オリゴマーや残留塩を除いた後、酸処理もしくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で処理する方法が好ましく、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で処理する方法が更に好ましい。
また、反応性官能基を含有するフッ素樹脂からなる分散相の微細化の観点からは酸処理したPPS樹脂を用いることが好ましく、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の長期耐熱性の観点からはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で処理した樹脂を用いることが好ましい。かかる特性を発現するためには、ポリフェニレンスルフィド樹脂中に含まれるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属分の合計が50ppm以上であることが好ましく、より好ましくは150ppm以上であり、更には300ppm以上であることが好ましい。また、同様の観点から、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中に含まれるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属分の合計は30ppm以上であることが好ましく、より好ましくは100ppm以上であり、更には150ppm以上であることが好ましい。 その他、(a)PPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことも可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
但し、本発明の(a)PPS樹脂は、優れた靱性を発現する観点から、熱酸化架橋処理による高分子量化を行わない実質的に直鎖状のPPS樹脂であるか、軽度に酸化架橋処理した半架橋状のPPS樹脂であることが好ましい。その一方で、熱酸化架橋処理を施したPPS樹脂は、クリープ歪みを小さく抑制する観点からは好適であり、適宜、直線状のPPS樹脂と混合して使用することも可能である。また、本発明では、溶融粘度の異なる複数の(a)PPS樹脂を混合して使用しても良い。
本発明の(a)PPS樹脂は、(b)フッ素樹脂との親和性を向上する観点から、カルボキシル基およびその誘導体基を含むことも好ましい態様として挙げられる。(a)PPS樹脂中に、カルボキシル基およびその誘導体基を導入する方法としては、カルボキシル基およびその誘導体基を含むポリハロゲン化芳香族化合物を共重合する方法や、カルボキシル基およびその誘導体基を含む化合物、例えば無水マレイン酸、ソルビン酸などを添加して、(a)PPS樹脂と溶融混練しながら反応せしめることにより導入する方法などを例示できる。
(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂
本発明で用いられるフッ素樹脂は、反応性官能基を導入されたものである必要がある。
反応性官能基は特に限定されるものではなく、具体的にはビニル基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、エステル基、アルデヒド基、カルボニルジオキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、水酸基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基、加水分解性シリル基などを例示できるが、中でもエポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、水酸基が好ましく、更にはカルボキシル基、酸無水物基がより好ましい。これら反応性官能基が2種以上含まれていても良い。
フッ素樹脂に反応性官能基を導入する方法としては、フッ素樹脂に相溶し、前記官能基を含有する化合物または樹脂を配合する方法や、フッ素樹脂を重合する際に、前記官能基を含有するか前記官能基に変換可能な官能基を含有する重合性モノマーと共重合する方法、フッ素樹脂を重合する際に、前記官能基を含有するか前記官能基に変換可能な官能基を含有する開始剤を用いる方法、フッ素樹脂と前記官能基を含有するか前記官能基に変換可能な官能基を含有する重合性モノマーとをラジカル発生剤の存在下に反応させる方法、フッ素樹脂を酸化、熱分解などの手法により変性する方法などが挙げられるが、中でも共重合によりフッ素樹脂の主鎖または側鎖に官能基を導入する方法、フッ素樹脂と官能基を含有する重合性モノマーとをラジカル発生剤の存在下に反応させる方法が、品質、コスト、導入量制御の観点から好ましい。
前記官能基を含有する重合性モノマーは、特に限定されるものではないが、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ハイミック酸、これらの酸無水物、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エチルアクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂中に含まれる官能基の量は、(a)PPS樹脂との反応が十分に進行する観点から、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂1gに対して、0.01モル%以上が好ましく、0.05モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上で有ることが更に好ましい。官能基量の上限については、フッ素樹脂本来の特性が損なわれなければ特に限定されることはなく、流動性の悪化なども考慮すると、10モル%以下が好ましい範囲として例示できる。
本発明で用いられるフッ素樹脂の構造は、特に限定されるものでは無いが、少なくとも1種のフルオロオレフィンから構成されることが望ましい。例えば、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンなどの単独重合体や、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン、フッ化ビニルとの共重合体、更にはエチレン、プロピレン、ブテン、アルキルビニルエーテル類などのフッ素を含まない非フッ素エチレン性単量体との共重合体も例示できる。更に具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロピレン共重合体(EFEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などが挙げられるが、中でも、耐熱性が高く、溶融成形加工が容易である観点から、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が好ましく、ETFEが更に好ましい。
本発明で用いられるフッ素樹脂の溶融粘度は、特に限定されるものでは無いが、PPS樹脂との粘度差を小さくして混和性を高める観点から、融点+100℃の温度で測定した場合に100Pa・s以上10000Pa・s以下で有ることが好ましい。
本発明で用いられるフッ素樹脂の融点は、特に限定されるものでは無いが、130℃以上330℃以下であることが好ましく、耐熱性の観点からは、150℃以上310℃以下がより好ましく、180℃以上300℃以下であることが更に好ましく、200℃以上280℃以下であることが更に好ましく、210℃以上260℃以下であることがより好ましい。
なお、本発明では、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂と共に反応性官能基を含有しないフッ素樹脂を併用することも可能である。
(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を含有する化合物
本発明において、必須では無いが、フッ素樹脂分散相の凝集・合体を抑制し、その数平均分散粒子径の変化率を特定の範囲に制御し易くする観点から、(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を含有する化合物(フッ素樹脂は除く)を添加することが望ましい。
エポキシ基含有化合物としてはビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5,5,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノール類のグリシジルエーテル、ビスフェノールの替わりにハロゲン化ビスフェノールを用いたもの、ブタンジオールのジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系化合物、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系化合物等々のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油等の線状エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂などが挙げられる。
またその他ノボラック型エポキシ樹脂も挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂はエポキシ基を2個以上有し、通常ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させて得られるものである。また、ノボラック型フェノール樹脂はフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる。原料のフェノール類としては特に制限はないがフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール、p−ターシャリーブチルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびこれらの縮合物が挙げられる。
またその他エポキシ基を有するオレフィン共重合体も挙げられる。かかるエポキシ基を有するオレフィン共重合体(エポキシ基含有オレフィン共重合体)としては、オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入して得られるオレフィン共重合体が挙げられる。また、主鎖中に二重結合を有するオレフィン系重合体の二重結合部分をエポキシ化した共重合体も使用することができる。
オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入するための官能基含有成分の例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
これらエポキシ基含有成分を導入する方法は特に制限なく、α−オレフィンなどとともに共重合せしめたり、オレフィン(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。
エポキシ基を含有する単量体成分の導入量はエポキシ基含有オレフィン系共重合体の原料となる単量体全体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが適当である。
本発明で特に有用なエポキシ基含有オレフィン共重合体としては、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合成分とするオレフィン系共重合体が好ましく挙げられる。上記α−オレフィンとしては、エチレンが好ましく挙げられる。また、これら共重合体にはさらに、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等を共重合することも可能である。
またかかるオレフィン共重合体はランダム、交互、ブロック、グラフトいずれの共重合様式でも良い。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合してなるオレフィン共重合体は、中でも、α−オレフィン60〜99重量%とα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜40重量%を共重合してなるオレフィン共重合体が特に好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとしては、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを必須共重合成分とするオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−ポリスチレン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−アクリロニトリルースチレン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−PMMA、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。
さらにエポキシ基を有するアルコキシシランが挙げられる。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物などが例示できる。
アミノ基含有化合物としてはアミノ基を有するアルコキシシランが挙げられる。かかる化合物の具体例としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
イソシアネート基を1個以上含む化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどのイソシアネート化合物やγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を例示することができる。
中でも反応性が高く、より優れた相構造安定性を発現する上で、イソシアネート基、エポキシ基を含む化合物がより好ましく、イソシアネート基を含有するアルコキシシラン化合物であることが更に好ましい。
本発明における(a)PPS樹脂と(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂との配合割合は、(a)成分と(b)成分の合計を100体積%として、(a)PPS樹脂99〜51体積%、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂1〜49体積%である必要がある。(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂が1体積%を下回る場合、十分な柔軟性を付与することが困難なとなる。一方、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂が49体積%を上回る場合には、クリープ特性や、引張強度、曲げ強度といった機械物性が著しく低下してしまうため好ましくない。(a)PPS樹脂と(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂のより好ましい配合割合は、(a)PPS樹脂90〜51体積%、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂10〜49体積%であり、(a)PPS樹脂80〜51体積%、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂20〜49体積%であることがより好ましく、優れた柔軟性を付与する観点からは(a)PPS樹脂70〜51体積%、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂30〜49体積%であることがさらに好ましい。
なお、ここで言う体積とは、配合する(a)PPS樹脂と(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の重量について、それぞれの樹脂固有の比重で割り返した値と定義できる。(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の比重については、その構造、共重合組成によって異なり、1.5〜2.3g/cmが好ましい範囲として例示できる。
また、本発明によって得られるPPS樹脂組成物について、(a)PPS樹脂と(b)官能基を含有するフッ素樹脂の体積%は、後述する電子顕微鏡によって観察されるモルフォロジーにおける(a)PPS樹脂部分の面積と(b)官能基を含有するフッ素樹脂部分の面積との比によって算出することができる。
本発明における(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有する化合物の配合割合は、(a)PPS樹脂と(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましい。(c)官能基を有する化合物が0.1重量部を下回る場合、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の分散性が低下し易くなり、また、溶融滞留後に(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂分散相が凝集・粗大化する傾向が強くなるために好ましくない。一方、(c)官能基を有する化合物が10重量部を上回る場合、樹脂組成物の溶融粘度が極度に高くなり射出成形圧力が上昇するなど、成形加工上の問題が生じるため好ましくない。(c)官能基を有する化合物のより好ましい配合量としては、0.2〜5.0重量部であり、溶融粘度の上昇を抑制する他、原料コストの上昇を最小限に抑える観点からも0.3〜2.0重量部であることが更に好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物は、(a)PPS樹脂が本来有する優れた耐薬品性や機械的強度を損なうことなく、柔軟性に優れると共に、耐熱性とクリープ特性に優れたものである。かかる特性を発現させるためには、電子顕微鏡により観察されるモルフォロジーにおいて、(a)PPS樹脂が連続相(海相あるいはマトリックス)を形成し、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂が分散相(島相あるいはドメイン)を形成することが必要である。
更に、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂からなる分散相の数平均分散粒子径r1と、320℃で30分間溶融滞留させた後の(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂からなる分散相の数平均分散粒子径r2との比r2/r1が1.5以下である必要がある。r2/r1が1.5を超える場合には、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂からなる分散相が、溶融滞留によって粗大化し易くなることを意味し、溶融成形加工した後の成形品のクリープ特性が著しく低下する結果となる。一方、r2/r1の下限については特に限定しないが、0.6を下回る場合には、本発明におけるPPS樹脂組成物の溶融粘度が増加してしまうため好ましくない。r2/r1のより好ましい範囲は0.8以上1.4以下で有り、0.9以上1.3以下で有ることが更に好ましい。
(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂からなる分散相の数平均分散粒子径については特に制限されるものでは無いが、50μm以下で有ることが好ましく、20μm以下で有ることがより好ましく、5μm以下であることが更に好ましく、1μm以下であることが最も好ましい。
なお、ここでいう数平均分散粒子径は、樹脂組成物ペレットまたは成形品の中心部から、−20℃にて0.1μm以下の薄片を切削し、例えば日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、1万〜2万倍に拡大して観察した際の任意の100個の、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の分散部分について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散粒子径とし、その後それらの平均値を求めた数平均分散粒子径である。
(d)無機フィラー
本発明のPPS樹脂組成物には、必須成分ではないが、本発明の効果を損なわない範囲で(d)無機フィラーを配合して使用することも可能である。かかる(d)無機フィラーの具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはフラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられ、なかでもガラス繊維、シリカ、炭酸カルシウムが好ましく、さらに炭酸カルシウムやシリカが、防食材、滑材の効果の点から特に好ましい。またこれらの(d)無機フィラーは中空であってもよく、さらに2種類以上併用することも可能である。また、これらの(d)無機フィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でも炭酸カルシウムやシリカ、カーボンブラックが、防食材、滑材、導電性付与の効果の点から好ましい。
かかる無機フィラーの配合量は、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と前記(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の合計100重量部に対し、30重量部以下の範囲が選択され、10重量部未満の範囲が好ましく、1重量部未満の範囲がより好ましく、0.8重量部以下の範囲が更に好ましい。下限は特に無いが0.0001重量部以上が好ましい。無機フィラーの配合は材料の弾性率向上に有効である反面、30重量部を越えるような多量の配合は靱性の大きな低下をもたらすため、好ましくない。無機フィラーの含有量は、靱性と剛性のバランスから用途により適宜変えることが可能である。
(e)その他の添加物
さらに、本発明のPPS樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポフッ素樹脂以外の樹脂を添加配合しても良い。その具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、官能基を含有しないフッ素系樹脂、エチレン/ブテン共重合体などのエポキシ基を含有しないオレフィン系重合体、共重合体などが挙げられる。
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、その他、水、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物は何れも組成物全体の20重量%を越えると本発明のPPS樹脂組成物本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法
本発明のPPS樹脂組成物を製造する方法としては、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が使用できるが、簡便さの観点から、溶融状態での製造が好ましく用いられる。溶融状態での製造については、押出機による溶融混練や、ニーダーによる溶融混練等が使用できるが、生産性の観点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく用いられる。押出機による溶融混練については、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等の押出機を1台以上で使用できるが、混練性、反応性、生産性向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく使用でき、二軸押出機による溶融混練が最も好ましい。
溶融混練する更に具体的な方法としては、必ずしもこれに限定されるものでは無いが、L/D(L:スクリュー長さ、D:スクリュー直径)が10以上、好ましくは20以上であり、ニーディング部を2箇所以上、好ましくは3箇所以上有する二軸押出機を使用することが好ましい。L/Dの上限については特に制限しないが、60以下が経済性の観点から好ましい。また、ニーディング部箇所の上限についても特に制限しないが、生産性の観点から10箇所以下であることが好ましい。
スクリュー回転数については150〜1000回転/分、好ましくは300〜1000回転/分とし、混合時の樹脂温度が(a)PPS樹脂の融解ピーク温度〜70℃となるように混練する方法が好ましい。
特に、本発明のPPS樹脂組成物は、(a)PPS樹脂が本来有する優れた耐薬品性や機械的強度を損なうことなく、柔軟性に優れると共に、耐熱性とクリープ特性に優れたものである。かかる特性を発現させるためには、前記溶融混練を行う際の押出機のシリンダー温度Tc(℃)が、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の融点Tmf(℃)に対して以下の式を満たす条件で溶融混練を行うことが好ましい方法である。
Tc(℃)≦Tmf(℃)−10(℃)
この様に、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の融点Tmf(℃)よりも10℃以下低い温度にシリンダー温度Tc(℃)を設定し、冷却しながら溶融混練を行う事により、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂中における反応性官能基の熱分解が抑制され、(a)PPS樹脂との反応をより効果的に進行させることができる。この結果として、(a)PPS樹脂と(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂との界面における接着強度が増大し、溶融滞留させた際にも凝集・粗大化が起こり難くなるため、溶融成形加工後にも柔軟性と優れたクリープ特性を発現することが可能となり易いのである。
シリンダー温度Tc(℃)は(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の融点Tmf(℃)よりも少なくとも10℃低ければ良く、好ましくはTmf(℃)よりも20℃以下、更にTmf(℃)よりも30℃以下であることが好ましい範囲として例示できる。
好ましいシリンダー温度Tc(℃)の範囲は、使用する(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の融点Tmf(℃)にもよるが、120〜320℃の範囲であり、140〜280℃の範囲がより好ましく、160〜230℃の範囲が更に好ましい。
前記式の温度条件を満足する押出機のシリンダーブロック数については、特に限定されないが、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂中における反応性官能基の熱分解を効果的に抑制する観点から、全シリンダーブロックの1/3以上であることが好ましい。
なお、ここで言う押出機のシリンダー温度Tc(℃)とは、溶融混練する際のシリンダー設定温度およびシリンダーの実測温度を指し、溶融混練している樹脂の温度を指すものではない。この様に、シリンダー温度を(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の融点Tmf(℃)や(a)PPS樹脂の融点よりも低く設定しても、比較的強い混練力に伴う剪断発熱により、十分可塑化した状態で溶融混練が進行するものである。
溶融混練する際の原料の混合順序については特に制限されるものではないが、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、これと更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。中でも、(a)PPS樹脂と(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂との反応を効率的に進行させるためには、前記シリンダー温度条件を満足しながら、全ての原材料を配合後に溶融混練することが好ましい。
その他、(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基などの官能基を有する化合物を配合する場合には、(a)PPS樹脂と(c)官能基を有する化合物とを予め溶融混練した後、さらに(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂と溶融混練する手法、あるいは(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂と(c)官能基を有する化合物とを予め溶融混練した後、(a)PPS樹脂と溶融混練する手法を好ましい方法として例示できる。
なお、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも勿論可能である。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形など、各種成形手法により成形可能であるが、中でも射出成形、押し出し成形用途として有用である。
また、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、柔軟性に優れるとともに、クリープ変形量も小さく抑制される特徴から、電気電子部品、通信機器部品、自動車部品、家電部品、OA機器部品などに利用するのに適しており、例えば各種パッキン、ガスケット用途などに好適である。また高温までの幅広い温度領域において電気絶縁性を保持するため、電気絶縁部材の用途にも好適である。
押出成形により得られる成形品としては、丸棒、角棒、シート、フィルム、チューブ、パイプなどが挙げられ、更に具体的な用途としては、給湯器モーター、エアコンモーター、駆動モーター用などの電気絶縁材料、フィルムコンデンサー、スピーカー振動板、記録用の磁気テープ、プリント基板材料、プリント基板周辺部品、半導体パッケージ、半導体搬送トレイ、工程・離型フィルム、保護フィルム、自動車用フィルムセンサー、ワイヤーケーブルの絶縁テープ、リチウムイオン電池内の絶縁ワッシャー、熱水や冷却水、化学薬品用のチューブ、自動車用の燃料チューブ、熱水配管、化学プラントなどの薬品配管、超純水や超高純度溶媒用の配管、自動車配管、フロンや超臨界二酸化炭素冷媒用の配管パイプ、研磨装置用のワークピース保持リングなどが例示できる。その他、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道、発電設備のモーターコイル用巻線の被覆成形体、家電用の耐熱電線ケーブル、自動車内の配線に使用されるフラットケーブル等のワイヤーハーネスやコントロールワイヤー、通信、伝送用、高周波用、オーディオ用、計測用などの信号用トランスまたは車載用トランスの巻線の被覆成形体などが例示できる。
射出成形により得られる成形品の用途としては、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、機遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭・事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器・精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプとダクト、ターボダクト、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品、携帯電話、ノート型パソコン、ビデオカメラ、ハイブリッド自動車、電気自動車などの一次電池または二次電池用のガスケット等々を例示できる。
中でも、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道、発電設備のモーターコイル用巻線の被覆成形体や、高温環境下に晒される自動車の燃料関係・排気系・吸気系各種パイプとダクト、とりわけターボダクトとして有用である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
以下の実施例において、材料特性については次の方法により評価した。
[溶融滞留させる前の数平均分散粒子径r1]
押出機により溶融混練した後の樹脂組成物ペレットについて、その中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断した中心部から、−20℃で0.1μm以下の薄片を切削し、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、1万倍に拡大して写真撮影した後、(a)PPS樹脂中に分散する(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の分散粒子部分について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散粒子径とし、その後それらの平均値として数平均粒子径r1を求めた。
[溶融滞留させた後の数平均分散粒子径r2]
押出機により溶融混練した後の樹脂組成物ペレット3gを、腹部が100mm×25mm、首部が255mm×12mm、肉厚が1mmのガラスアンプル中に真空封入した後、電気環状炉(アサヒ理化製作所製セラミックス電気管状炉ARF−30K)中に挿入して、320℃、30分間の条件にて溶融滞留させてから室温にて放冷した。ガラスアンプル中の樹脂組成物を取り出し、切断した中心部から、−20℃で0.1μm以下の薄片を切削し、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、1万倍に拡大して写真撮影した後、(a)PPS樹脂中に分散する(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂の分散粒子部分について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散粒子径とし、その後それらの平均値として数平均粒子径r2を求めた。
[アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量]
ポリフェニレンスルフィド樹脂またはポリフェニレンスルフィド樹脂組成物5gを500℃の電気炉で灰化した後、0.1規定塩酸水溶液、0.1%塩化ランタン水溶液で希釈した水溶液を試料とし、島津製作所製原子吸光分光光度計AA−6300を用いた原子吸光法により測定した。
[射出成形]
住友重機械製射出成形機SE75−DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度150℃とする条件にて、ASTM1号ダンベル試験片および(長さ)125mm×(幅)12mm×(厚さ)6mmの曲げ試験片を成形した。
[曲げ試験]
前記、射出成形した曲げ試験片について、インストロン製5561型曲げ試験機を用い、雰囲気温度23℃、クロスヘッドスピード3mm/分、試験間距離100mmの条件にて曲げ試験を行った。
[圧縮クリープ歪み]
前記、射出成形したASTM1号ダンベル試験片を(縦)10mm×(横)10mm×(厚さ)3.2mmの角柱に切削した後、(株)オリエンテック製6点掛けクリープ試験機CP6−L−10KNの圧縮治具に挟み込み、雰囲気温度80℃、荷重40MPaの条件にて圧縮クリープ試験を行った。100時間経過時の変位量について、以下の計算式によりクリープ歪み(%)を算出した。
(変位量(mm)−初期歪み量(mm))/厚さ(mm)×100(%)
[引張試験]
住友重機械工業製射出成形機(SE75DUZ)を用い、樹脂温度320℃、金型温度150℃とする条件にて、ASTM4号ダンベル試験片を成形した。得られた試験片について、支点間距離64mm、引張速度10mm/min、温度23℃×相対湿度50%条件下で、ASTM D638に従って引張破断伸度(初期伸度)を測定した。
[200℃×500時間処理後 引張破断伸度]
前記、射出成形したASTM4号ダンベル試験片を200℃の雰囲気で500時間処理後、ASTM−D638に準拠した条件で引張試験を実施し、試験片破断時の伸度(熱処理後伸度)を測定した。
[絶縁破壊電圧]
ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を340℃で5分間ホットプレスし、厚さ100μmのフィルムを作成し、更に150℃で5分間プレスして結晶化させた。得られた結晶化フィルムについて、JIS C2110の短時間破壊試験法に準拠して測定した。
[参考例1]PPS樹脂の調製(PPS−1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次にp−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS−1は、溶融粘度が200Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)、比重が1.35g/cm、アルカリ金属およびアルカリ土類金属含有量が70ppmであった。
[参考例2]PPS樹脂の調製(PPS−2)
参考例1と同様の前工程・重合反応工程・回収工程にて得た反応物に対して、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸ナトリウム水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS−2は、溶融粘度が220Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)、比重が1.35g/cm、アルカリ金属およびアルカリ土類金属含有量が350ppmであった。
[参考例3]PPS樹脂の調製(PPS−3)
参考例1と同様の前工程・重合反応工程・回収工程にて得た反応物に対して、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸カルシウム水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS−2は、溶融粘度が240Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)、比重が1.35g/cmアルカリ金属およびアルカリ土類金属含有量が320ppmであった。
[参考例4]官能基を含有するフッ素樹脂の調製(フッ素樹脂−1)
ETFE(ダイキン製ネオフロン(登録商標)EP−610)100重量部、グリシジルメタクリレート(東京化成製)2.0部、ジクミルパーオキサイド(メルク製)0.2部をドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(スクリュー構成I、L/D=45、ニーディング箇所2箇所)を用い、スクリュー回転数200rpmにて、シリンダー温度を250℃に設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。比重は1.85g/cmであった。
[参考例5]官能基を含有するフッ素樹脂の調製(フッ素樹脂−2)
ETFE(ダイキン製ネオフロン(登録商標)EP−610)100重量部、無水マレイン酸(東京化成製)2.0部、ジクミルパーオキサイド(メルク製)0.2部をドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(スクリュー構成I、L/D=45、ニーディング箇所2箇所)を用い、スクリュー回転数200rpmにて、シリンダー温度を250℃に設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。比重は1.86g/cmであった。
[参考例6]官能基を含有するフッ素樹脂の調製(フッ素樹脂−3)
FEP(ダイキン製ネオフロン(登録商標)NP−20)100重量部、無水マレイン酸(東京化成製)2.0部、ジクミルパーオキサイド(メルク製)0.2部をドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(スクリュー構成I、L/D=45、ニーディング箇所2箇所)を用い、スクリュー回転数200rpmにて、シリンダー温度を300℃に設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。比重は2.13g/cmであった。
[参考例7]官能基を含有しないフッ素樹脂(フッ素樹脂−4)
市販のETFE(ダイキン製ネオフロン(登録商標)EP−610)を用いた。比重は1.85g/cmであった。
[参考例8]官能基を含有するフッ素樹脂(フッ素樹脂−5)
カルボン酸変性ETFE(旭硝子製フルオン(登録商標)AH−2000)。比重1.78g/cm
[参考例9]官能基を有する化合物
市販の2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業製KBM303)、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製KBE9007)を用いた。
[実施例1〜4、比較例1]
表1に示すPPS樹脂、フッ素樹脂、官能基を有する化合物を表1に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45)を用い、スクリューアレンジをニーディング部3箇所、ニーディング部の合計L/D=20とし、13箇所あるシリンダーブロックの内、原料供給口に接した2箇所を280℃、ダイ先端に接した2箇所を300℃、それ以外の9箇所を200℃に設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットを130℃で1晩乾燥してから、射出成形に供し、得られた成形品について、モルフォロジー観察、曲げ試験、圧縮クリープ歪みを評価した。結果を表1に記載する。
Figure 0006405830
[実施例5]
13箇所あるシリンダーブロックの内、原料供給口に接した2箇所を280℃、ダイ先端に接した2箇所を300℃、それ以外の9箇所を230℃に設定した以外は実施例1〜4と同様にして溶融混練、評価を行った。
[実施例6〜9]
13箇所あるシリンダーブロックの内、原料供給口に接した2箇所を280℃、ダイ先端に接した2箇所を300℃、それ以外の9箇所を220℃に設定した以外は実施例1〜4と同様にして溶融混練、評価を行った。
[比較例2〜3]
13箇所あるシリンダーブロックの内、原料供給口に接した2箇所を280℃、ダイ先端に接した2箇所を300℃、それ以外の9箇所をフッ素樹脂の融点よりも高い230℃に設定した以外は実施例1〜4と同様にして溶融混練、評価を行った。以上の結果を表2に記載する。
Figure 0006405830
上記実施例と比較例の結果を比較して説明する。
実施例1〜9では、(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂分散相の数平均分散粒子径について、溶融滞留前後の比r2/r1が1.5以下に制御されているため、弾性率が低く柔軟で有りながらも、圧縮クリープ歪みは小さく抑制されている。また、同様の理由により、引張試験における優れた初期伸度と熱処理後伸度の発現および優れた絶縁特性の発現に繋がっていると推測される。
一方、比較例1では、反応性官能基を含有しないフッ素樹脂を使用しているため、PPS樹脂とフッ素樹脂との界面密着強度が小さく、r2/r1が1.5を超えてしまい、結果として圧縮クリープ歪みは相当する実施例2に比較して大きくなった。比較例2、3については、相当する実施例2、4とは異なり、溶融混練の際のシリンダー温度Tcがフッ素樹脂の融点Tmfを超えているため、フッ素樹脂中の反応性官能基が分解しやすく、結果として圧縮クリープ歪みは大きくなった。

Claims (4)

  1. (a)成分と(b)成分の合計を100体積%として、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂99〜51体積%、(b)エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基および水酸基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を含有するフッ素樹脂1〜49体積%からなる樹脂組成物であって、電子顕微鏡により観察されるモルフォロジーにおいて、(a)成分が連続相(海相)を、(b)成分が分散相(島相)を形成すると共に、(b)成分からなる分散相の数平均分散粒子径r1と、320℃で30分間溶融滞留させた後の(b)成分からなる分散相の数平均分散粒子径r2との比r2/r1が、1.5以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. 前記(b)成分が、前記反応性官能基を含有する、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体から選ばれる少なくとも1種のフッ素樹脂であることを特徴とする請求項に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. (a)成分と(b)成分の合計100重量部に対して、更に(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有する化合物を0.1〜10重量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. (a)ポリフェニレンスルフィド樹脂および(b)反応性官能基を含有するフッ素樹脂を溶融混練する際に、シリンダー温度Tc(℃)と前記(b)成分の融点Tmf(℃)が、以下の式を満たす条件で溶融混練することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
    Tc(℃)≦Tmf(℃)−10(℃)
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