JPWO2014185281A1 - 振動装置 - Google Patents
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Abstract
周波数温度係数TCFの絶対値をより一層小さくし得る振動装置を提供する。基部2に、Y方向に延びる複数本の音叉腕3〜5がX方向に並列されており、音叉腕3〜5が、縮退半導体であるSi層11上に酸化ケイ素層12が積層されており、酸化ケイ素層12上に励振部13が設けられている構造を有し、Si層11の厚みの総和をT1、酸化ケイ素層12の厚みの総和をT2とし、Si層11に酸化ケイ素層12が設けられていない場合の周波数温度係数TCFをxとしたとき、厚み比T2/(T1+T2)が、(−0.0002x2−0.0136x+0.0014)±0.05の範囲内とされている、振動装置1。
Description
本発明は、複数の音叉腕を有する振動装置に関し、特に、MEMS型の振動装置に関する。
従来、Si半導体層上に圧電薄膜を含む励振部が構成されているMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)構造が知られている。MEMS構造を有する振動子において、周波数温度係数TCFを改善するために様々な試みがなされている。下記の特許文献1には、Siと、SiO2とを積層することによりTCFの絶対値を小さくする方法が開示されている。また下記の特許文献2及び3には、Siにp型またはn型のドーピングを施すことにより、Si自体の一次の周波数温度係数を小さくする方法が開示されている。
下記の特許文献4には、Si/SiO2複合材料を用い、かつSiに高濃度ドーピングする方法が開示されている。特許文献4では、二次の周波数温度係数を小さくすることができる旨が記載されている。
特許文献1〜4に記載のように、MEMS構造を有する振動子においてTCFの絶対値を小さくする方法が種々提案されていた。しかしながら、これらに記載の方法では、なおTCFの絶対値を十分に小さくすることは困難であった。
本発明の目的は、周波数温度係数TCFの絶対値をより一層小さくすることができる振動装置を提供することにある。
本願の第1の発明によれば、基部と、前記基部に一端が連ねられており、Y方向に延びる複数の音叉腕とを備える振動装置が提供される。複数の音叉腕は、Y方向と直交するX方向に並列されている。
第1の発明では、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とすると、音叉腕は、Z方向に屈曲振動する。
音叉腕は、縮退半導体からなるSi層と、酸化ケイ素層と、圧電体層と、前記圧電体層に電圧を印加する第1,第2の電極とを含む。前記Si層の厚みの総和をT1、酸化ケイ素層の厚みの総和をT2、酸化ケイ素層が設けられていない場合の上記振動装置におけるTCFをx(ppm/K)としたときに、T2/(T1+T2)は、(−0.0002x2−0.0136x+0.0014)±0.05の範囲内にある。
第1の発明のある特定の局面では、前記複数の音叉腕の振動の向きが、前記X方向中心を通りY方向に延びる中心線の一方側と他方側とで対称である。
第2の発明に係る振動装置は、基部と、前記基部に一端が連ねられており、Y方向に延びる複数の音叉腕とを備える。複数の音叉腕は、Y方向と直交するX方向に並列されている。第2の発明では、音叉腕はX方向に屈曲振動する。
第2の発明においては、音叉腕は、縮退半導体からなるSi層と、酸化ケイ素層と、圧電体層と、前記圧電体層に電圧を印加する第1,第2の電極とを含む。第2の発明においては、前記Si層の厚みの総和をT1、酸化ケイ素層の厚みの総和をT2、酸化ケイ素層が設けられていない場合の上記振動装置におけるTCFをx(ppm/K)としたときに、T2/(T1+T2)が、(−0.0003x2−0.0236x+0.0219)±0.05の範囲にある。
第2の発明のある特定の局面では、前記複数の音叉腕の振動の向きが、X方向中心を通りY方向に延びる中心線の一方側と他方側とで対称である。
本発明(第1,第2の発明を総称して、以下本発明とする。)の他の特定の局面では、Si層がn型ドーピング剤によりドーピングされている。好ましくは、ドーピング剤としてリン(P)が用いられる。
本発明に係る振動装置の他の特定の局面では、前記酸化ケイ素層が、前記Si層の一方主面に積層されている。
本発明に係る振動装置の別の特定の局面では、前記圧電体層の一方主面に前記第1の電極が設けられており、前記圧電体層の他方主面に前記第2の電極が設けられている。
本発明に係る振動装置のさらに別の特定の局面では、前記第2の電極が、前記Si層で兼ねられている。
本発明に係る振動装置のさらに別の特定の局面では、前記酸化ケイ素層が、前記Si層の両面に形成されている。
本発明の振動装置によれば、酸化ケイ素層の厚みの総和T2が上記特定の範囲内とされているため、周波数温度係数TCFの絶対値をより一層小さくすることが可能となる。従って、温度特性の良好な振動装置を提供することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置の斜視図であり、(b)はその正面断面図である。図1(c)は第1の実施形態で用いられている励振部の断面構造を示す部分切欠正面断面図である。
振動装置1は、基部2を有する。基部2と一体に複数の音叉腕3〜5が設けられている。すなわち、基部2は矩形板状の形状を有する。この基部2の1つの側面に、長さ方向を有する複数本の音叉腕3〜5の一端が連ねられている。
基部2の下面には、支持部6が固定されている。支持部6は、振動装置1を外部に固定するための部分である。
図1(a)に示すように、音叉腕3〜5の延びる方向をY方向とする。また、基部2の両主面に並行な面内においてY方向と直交する方向をX方向とする。基部2の音叉腕3〜5の一端が連結されている側面はX方向に延びている。従って、複数の音叉腕3〜5は、X方向に並列されている。
Z方向は、X方向及びY方向で規定される面に直交する方向である。
本実施形態では、3本の音叉腕3〜5が、後述するように、Z方向において屈曲振動する。
図1(b)に示すように、支持部6は、基部2のSi層11と一体に形成されている。支持部6は、Si、Al2O3などの半導体材料や絶縁性材料により構成することができる。なお、接合剤を用いて基部2を支持部6に接合してもよい。
基部2は、Si層11上に酸化ケイ素層12が積層された構造を有する。音叉腕4も、Si層11上に酸化ケイ素層12が積層されている構造を有する。すなわち、音叉腕4におけるSi層11及び酸化ケイ素層12は、基部2と一体に形成されている。
Si層11は、縮退半導体からなる。本実施形態では、Si層はn型Si半導体からなる。縮退半導体であるため、n型ドーパントのドーピング濃度は、1×1019/cm3以上である。n型ドーパントとしては、P、AsまたはSbなどの第15族元素を挙げることができる。好ましくは、ドーパントとしてPが用いられる。その場合には、容易にn型の縮退半導体を製造とすることができる。
酸化ケイ素層12は、本実施形態では、SiO2からなる。本実施形態では、上記Si層11の上面にSiO2からなる酸化ケイ素層12が積層されている。
なお、基部2においては、酸化ケイ素層12は設けられずともよいが、本実施形態のように酸化ケイ素層12を設けることが望ましい。それによって、製造工程の簡略化を図ることができる。
酸化ケイ素層12は、SiO2に限らず、SiaOb(a、bは整数)の適宜の組成を有する酸化ケイ素系材料により構成することができる。
本実施形態では、励振部13は、圧電薄膜14と、第1の電極15と、第2の電極16とを有する。第1の電極15と第2の電極16とは、圧電薄膜14の一部の圧電薄膜層14aを挟むように設けられている。もっとも、第1,第2の電極15,16は圧電薄膜14中に埋設されている必要は必ずしもない。例えば、圧電薄膜14の上面及び下面に、第1,第2の電極15,16を形成してもよい。
本実施形態のように、圧電薄膜14内に第1,第2の電極15,16を配置することにより、耐湿性などを高めることができる。
上記圧電薄膜14を構成する圧電材料は特に限定されないが、バルク波を利用した振動装置では、Q値が高いことが好ましい。従って、電気機械結合係数k2は小さいが、Q値が高いAlNが好適に用いられる。
もっとも、ZnO、Sc置換AlN、PZT、KNNなどを用いてもよい。Sc置換AlN膜(ScAlN)は、ScとAlの原子濃度を100at%とした場合、Sc濃度が0.5at%から50at%程度であることが望ましい。
ScAlNは、AlNよりも電気機械結合係数k2が大きく、PZTやKNNよりも機械的なQmが大きい。従って、ScAlNは、本発明のような共振型振動子に適用すると、以下の利点がある。共振型振動子の用途として発振器がある。例えばTCXO(温度補償型発振器)では内蔵する温度センサの信号を、振動子と直列接続された可変容量素子にフィードバックし、可変容量素子の容量値を変化させる。それによって、発振周波数を調整することができる。この時、圧電薄膜としてAlNの代わりにScAlNを用いると、共振型振動子の比帯域が広がる。従って、発振周波数の調整範囲を広げることができる。
同様にScAlNをVCXO(電圧制御発振器)に用いる場合は、発振周波数の調整範囲が広がる。従って、共振型振動子の初期の周波数ばらつきを可変容量素子で調整することができる。よって、周波数調整工程のコストが大幅に削減できる。
第1,第2の電極15,16は、Mo、Ru、Pt、Ti、Cr、Al、Cu、Ag、またはこれらの合金などの適宜の金属により形成することができる。
圧電薄膜14は、厚み方向に分極している。従って、第1,第2の電極15,16間に交番電界を印加することにより、励振部13が圧電効果により励振される。その結果、音叉腕4は、Z方向に屈曲振動する。
本実施形態では、音叉腕3,5と音叉腕4とは逆位相でZ方向に屈曲振動する。これは、音叉腕4に印加される交番電界の位相と、両側の音叉腕3,5に印加される交番電界の位相を逆位相とすることにより達成し得る。あるいは、音叉腕4における圧電薄膜14の分極方向を、音叉腕3,5における圧電薄膜の分極方向と逆方向としてもよい。その場合には、音叉腕3〜5を同位相の交番電界で駆動すればよい。
従って、X方向中心を通り、Y方向に延びる中心線の一方側と反対側との振動の向きは対称である。
本実施形態では、音叉腕3〜5が上記のようにZ方向に屈曲振動する。この振動を妨げないように、支持部6により外部に固定される。支持部6は、Si、Al2O3などの適宜の剛性材料により形成することができる。すなわち、支持部6は、適宜の半導体材料や絶縁性材料により形成することができる。好ましくは、Si層11と同じ材料で支持部6を一体に形成することが望ましい。それによって、製造の工程の簡略化を果たし得る。もっとも、別材料からなる支持部6を接着剤を介してSi層11に接合してもよい。
本実施形態の特徴は、音叉腕3〜5において、SiO2からなる酸化ケイ素層12の厚みT2が特定の範囲内とされていることにより、周波数温度係数TCFの絶対値を著しく小さくし得ることにある。より具体的には、酸化ケイ素層12の厚みをT2、Si層11の厚みをT1とする。酸化ケイ素層12が設けられていない場合の振動装置1におけるTCFをx(ppm/K)としたとき、T2/(T1+T2)が、(−0.0002x2−0.0136x+0.0014)±0.05の範囲とされている。
これを、図3及び図4を参照して説明する。
従来、Si層上に、SiO2膜を積層することにより、周波数温度係数TCFを小さくすることは試みられていた。しかしながら、単にTCFの符号が逆極性であるSiOをSiに積層しただけでは、TCFを著しく小さくすることはできなかった。
本発明では、上記酸化ケイ素層12の厚み比T2/(T1+T2)を上記特定の範囲とことにより、TCFを著しく小さくすることができる。
図3の曲線Aは、振動装置1においてTCFの絶対値が0である関係を示す。図3において横軸は、酸化ケイ素層12が設けられていないSi層11のTCFである。ドーピング濃度に応じてSi層のTCFは特定の値となる。縦軸は厚み比T2/(T1+T2)である。
図3でプロットされている点は、ドープされたSi層11上に、様々な膜厚で酸化ケイ素層を積層した構造において、TCFが0となる点である。
いま、上記SiのTCFをxとし、上記厚み比T2/(T1+T2)をyとしたとき、これらの多数のプロットされた点から近似することにより、曲線Aが得られる。曲線Aは、y=−0.0002x2−0.0136x+0.0014で表される。従って、厚み比T2/(T1+T2)を、この曲線A上の位置とすることにより、周波数温度係数TCFを0とすることができる。そして、本願発明者によれば、T2/(T1+T2)が、(−0.0002x2−0.0136x+0.0014)±0.05…式(1)の範囲内にあれば、周波数温度係数TCFを0±5ppm/℃とし得ることが確かめられている。従って、振動装置1では、厚み比T2/(T1+T2)を、この範囲内とすることにより、周波数温度係数TCFを±5ppm/℃の範囲内とすることができる。よって、周波数温度係数TCFを確実に著しく小さくすることができる。
図4は、上記実施形態の振動装置1の共振周波数の温度特性を示す図であり、横軸は温度、縦軸は共振周波数変化率dFr/dF(ppm)である。ここでは、音叉腕3,5における厚みT1及びT2は以下の通りとした。
T1=9.5μm、T2=0.5μm。また、音叉腕3〜5の長さ及び幅は、長さ650μm×幅20μmとした。
励振部13については、第1,第2の電極15,16として0.1μmの厚みのMoを用いた。また、第1,第2の電極15,16の対向する長さは325μmとした。圧電薄膜層14aの厚みは0.8μmとした。
上記のようにして構成した振動装置1において、20℃における共振周波数を基準とし、該基準の共振周波数からの温度による共振周波数変化率dFr(Fr−20℃における共振周波数)/(20℃における共振周波数)を求めた。なお、Frは、共振周波数である。
図4に示すように、本実施形態の振動装置1では、約−40℃〜85℃において、共振周波数変化率が250ppm以内であり、温度による共振特性の変化が非常に小さいことがわかる。
なお、上記実施形態では、Si層11上に酸化ケイ素層12が積層されていた。この場合の厚み比T2/(T1+T2)は、図5に示すように、T2のT1とT2との合計に対する割合となる。
もっとも、本発明においては、Si層11及び酸化ケイ素層12は少なくとも一方が複数層積層されていてもよい。その場合には、T1及びT2は、複数の層の厚みの総和とすればよい。例えば、図6に示すように、Si層11の上面に酸化ケイ素層12aが積層されており、下面に酸化ケイ素層12bが積層されていてもよい。その場合には、T2=T2a+T2bとすればよい。すなわち、複数の酸化ケイ素層の厚みの総和をT2とすればよい。同様に、複数のSi層が積層されている場合には、複数のSi層の厚みの総和をT1とすればよい。
図10(a)は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る振動装置の正面断面図である。図10(b)は、その変形例の振動装置で用いられている励振部の部分切欠正面断面図である。
図10(a)に示すように、第1の実施形態の変形例に係る振動装置では、Si層11の一方主面に酸化ケイ素層12が積層されている。Si層11の他方主面には、励振部17が積層されている。上記励振部17は、圧電薄膜14及び第1の電極15を備える。本変形例においては、第2の電極16が別途設けられておらず、Si層11が第2の電極を兼ねている。また、第1の電極15は、圧電薄膜14中に埋設されていない。
上記圧電薄膜14及び第1の電極15は、Si層11上にこの順に積層されている。上記Si層11は縮退半導体からなるため、Si層11、圧電薄膜14及び第1の電極15がこの順に積層される場合、Si層11が第2の電極として作用する。すなわち、本変形例においては、上記第1の電極15及びSi層11により、圧電薄膜14に電圧が印加される。この場合、第2の電極16を別途設けなくともよいため、構造を簡略化することができる。従って、信頼性や、量産性に優れた振動装置を提供することができる。
また、図11に示すように、第1の実施形態の変形例においても、Si層11の厚みをT1、酸化ケイ素層12の厚みをT2、酸化ケイ素層12が設けられていない場合の振動装置1におけるTCFをx(ppm/K)としたとき、T2/(T1+T2)が、(−0.0002x2−0.0136x+0.0014)±0.05の範囲とされている。それによって、周波数温度係数TCFを±5ppm/℃の範囲内と確実に著しく小さくすることができる。従って、温度特性が良好な振動装置を提供することができる。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る振動装置の斜視図である。第2の実施形態の振動装置21は、Si層11の上面に酸化ケイ素層12aが、下面に酸化ケイ素層12bが積層されていること、4本の音叉腕23〜26が基部2に連結されていることを除いては第1の実施形態と同様である。従って、同一部分については同一の参照番号を付することによりその説明を省略する。
前述したように、Si層11の上面に酸化ケイ素層12aが、下面に酸化ケイ素層12bが積層されていてもよい。
そして、本実施形態のように、4本の音叉腕23〜26が基部2に連結されていてもよい。本実施形態においても、音叉腕23〜26はY方向に延びている。そして、音叉腕23〜26はX方向に並列されている。そして、音叉腕23〜26は、Z方向に屈曲振動する。もっとも、中央側の音叉腕24,25と、外側の音叉腕23,26とが逆位相で振動するように駆動される。言い換えれば、X方向中心を通り、Y方向に延びる中心線の両側が対称に変位する。すなわち、該中心線の一方側に位置している音叉腕24と他方側に位置している音叉腕25とが同位相で振動する。また、音叉腕23と音叉腕26とが同位相で振動する。
上記のように屈曲振動させるには、音叉腕24,25における励振部13,13を駆動するための交番電界の位相を、音叉腕23,26を駆動するための交番電界の位相と逆とすればよい。あるいは、音叉腕24,25における圧電薄膜の分極方向と、音叉腕23,26における圧電薄膜の分極方向を逆とし、音叉腕23〜26の全てに同位相の交番電界を印加してもよい。
第2の実施形態においても、音叉腕23〜26におけるSi層11の厚みT1、酸化ケイ素層12a,12bの厚みの総和T2が、厚み比T2/(T1+T2)が前述した式(1)で示す範囲内とされればよく、それによって周波数温度係数TCFの絶対値を±5ppm/℃内とすることができる。
また、第2の実施形態では、Si層11の両面に酸化ケイ素層12a,12bが設けられているため、Si層11の反りを抑制することができる。
また、本実施形態では、逆位相で振動する音叉腕の数が同じであるため、振動特性を第1の実施形態よりも高めることができる。
すなわち、2本の音叉腕24,25と2本の音叉腕23,26とが逆位相で振動するため、振動姿態の対称性を高めることができる。よって、振動特性を高めることができる。
図8は、本発明の第3の実施形態に係る振動装置の斜視図である。第3の実施形態の振動装置31は、第1の実施形態と同様に基部2及び支持部6を有する。また、基部2では、Si層11上に酸化ケイ素層12が積層されている。本実施形態では、2本の音叉腕33,34が基部2に連ねられている。音叉腕33,34はY方向に延び、X方向に並列されている。音叉腕33,34においても、Si層11上に酸化ケイ素層12が積層されている。
2本の音叉腕33,34が設けられていること、励振部13a,13bが設けられていることを除いては、第1の実施形態と同様である。従って、同一部分については、同一の参照番号を付することによりその説明を省略する。
本実施形態では、酸化ケイ素層12の上面に、一対の励振部13a,13bが設けられている。すなわち、音叉腕33を例にとると、酸化ケイ素層12の上面において、Y方向に延びる一方の側縁に沿うように励振部13aが、他方の側縁に沿うように励振部13bが設けられている。励振部13aと励振部13bは、Y方向に延びるストリップ状の領域に設けられており、X方向において隔てられている。励振部13a,13bは、第1の励振部13と同様に、圧電薄膜14及び第1,第2の電極15,16を有する。
本実施形態では、励振部13aと励振部13bとを逆位相で駆動する。それによって、音叉腕33が、X方向及びY方向に含む平面内において屈曲振動する。
音叉腕34も同様である。ただし、音叉腕33と音叉腕34とが逆位相で振動される。従って、振動姿態は、音叉腕33,34の先端が近づいている状態と、音叉腕33,34の先端が互いに遠ざかっている状態とを繰り返すように、XY平面内において音叉腕33,34が屈曲振動する。
上記のように、音叉腕33と音叉腕34とを逆位相で振動させればよい。従って、音叉腕33,34における励振部13a,13bの圧電薄膜14の分極方向が全て同じである場合には、音叉腕33の励振部13aに印加される交番電界の位相を、音叉腕34の励振部13aに印加される交番電界の位相と逆とすればよい。同様に、音叉腕33の励振部13bに印加される交番電界の位相を、音叉腕34の励振部13bに印加される交番電界と逆とすればよい。
あるいは、励振部13aと励振部13bの圧電薄膜における分極方向を逆としてもよい。その場合には、1つの音叉腕33において、励振部13aと励振部13bに印加される交番電界の位相を同一とすることができる。音叉腕34においても同様である。
本実施形態のように、本発明においては、複数の音叉腕33,34は、X方向に屈曲振動するように構成されていてもよい。本実施形態においても、X方向中心を通り、Y方向に延びる中心線の一方側と他方側の振動の向きは対称とされている。
このように、面内振動で複数の音叉腕33,34が変位する振動装置31では、厚み比T2/(T1+T2)は、(−0.0003x2−0.0236x+0.0219)±0.05の範囲内とすればよい。それによってTCFの絶対値を±5ppm/℃の範囲内とすることができる。これを、図9を参照して説明する。
図9の横軸は、ある量のn型ドーパントがドーピングされているSi層におけるTCFであり、この値をxとする。縦軸はT2/(T1+T2)であり、これをyとする。図9のプロットされている点は、TCFが0となる位置を示している。従って、これらの点の座標から近似により曲線Bが得られる。曲線Bは、y=−0.0003x2−0.0236x+0.0219で表される。曲線B上に位置するように、Si層のTCFの値xに応じて、厚み比T2/(T1+T2)を選択すればよい。それによって、TCFを0とすることができる。そして、本願発明者によれば、(−0.0003x2−0.0236x+0.0219)±0.05…式(2)の範囲内とすれば、TCFを±5ppm/℃の範囲内とし得ることが確かめられている。
よって、上記面内振動を利用する場合には、T2/(T1+T2)を上記式(2)の範囲内とすればよい。
なお、第1,第2の実施形態では、3本及び4本の音叉腕が配置されており、第3の実施形態では2本の音叉腕が基部2に連ねられていた。本発明においては、複数の音叉腕の数は特に限定されない。
また、第3の実施形態においても、Si層の両面に酸化ケイ素層が設けられていてもよい。さらに、第3の実施形態においても、複数のSi層が積層されていてもよい。
1…振動装置
2…基部
3〜5…音叉腕
6…支持部
11…Si層
12,12a,12b…酸化ケイ素層
13,13a,13b,17…励振部
14…圧電薄膜
14a…圧電薄膜層
15,16…第1,第2の電極
21…振動装置
23〜26…音叉腕
31…振動装置
33,34…音叉腕
2…基部
3〜5…音叉腕
6…支持部
11…Si層
12,12a,12b…酸化ケイ素層
13,13a,13b,17…励振部
14…圧電薄膜
14a…圧電薄膜層
15,16…第1,第2の電極
21…振動装置
23〜26…音叉腕
31…振動装置
33,34…音叉腕
図4は、上記実施形態の振動装置1の共振周波数の温度特性を示す図であり、横軸は温度、縦軸は共振周波数変化率dFr/dF(ppm)である。ここでは、音叉腕3〜5における厚みT1及びT2は以下の通りとした。
本実施形態では、酸化ケイ素層12の上面に、一対の励振部13a,13bが設けられている。すなわち、音叉腕33を例にとると、酸化ケイ素層12の上面において、Y方向に延びる一方の側縁に沿うように励振部13aが、他方の側縁に沿うように励振部13bが設けられている。励振部13aと励振部13bは、Y方向に延びるストリップ状の領域に設けられており、X方向において隔てられている。励振部13a,13bは、第1の実施形態の励振部13と同様に、圧電薄膜14及び第1,第2の電極15,16を有する。
Claims (10)
- 基部と、前記基部に一端が連ねられており、Y方向に延びる複数の音叉腕とを備え、該複数の音叉腕は、前記Y方向と直交するX方向に並列されており、
前記音叉腕が、前記X方向及びY方向と直交するZ方向に屈曲振動する振動措置であって、
前記音叉腕が、縮退半導体からなるSi層と、酸化ケイ素層と、圧電体層と、前記圧電体層に電圧を印加する第1,第2の電極とを含み、前記Si層の厚みの総和をT1、前記酸化ケイ素層の厚みの総和をT2、前記酸化ケイ素層が設けられていない場合の前記振動装置におけるTCFをx(ppm/K)としたときに、T2/(T1+T2)が、(−0.0002x2−0.0136x+0.0014)±0.05の範囲にある、振動装置。 - 前記複数の音叉腕の振動の向きが、前記X方向中心を通りY方向に延びる中心線の一方側と他方側とで対称である、請求項1に記載の振動装置。
- 基部と、前記基部に一端が連ねられており、Y方向に延びる複数の音叉腕とを備え、複数の音叉腕が前記Y方向と直交するX方向において並列されており、前記音叉腕がX方向に屈曲振動する振動装置であって、
前記音叉腕が、縮退半導体からなるSi層と、酸化ケイ素層と、圧電体層と、前記圧電体層に電圧を印加する第1,第2の電極とを含み、前記Si層の厚みの総和をT1、前記酸化ケイ素層の厚みの総和をT2、前記酸化ケイ素層が設けられていない場合の前記振動装置におけるTCFをx(ppm/K)としたときに、T2/(T1+T2)が、(−0.0003x2−0.0236x+0.0219)±0.05の範囲にある、振動装置。 - 前記複数の音叉腕の振動の向きが、前記X方向中心を通りY方向に延びる中心線の一方側と他方側とで対称である、請求項3に記載の振動装置。
- 前記Si層が、n型ドーピング剤によりドーピングされている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動装置。
- 前記ドーピング剤がリン(P)である、請求項5に記載の振動装置。
- 前記酸化ケイ素層が、前記Si層の一方主面に積層されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の振動装置。
- 前記圧電体層の一方主面に前記第1の電極が設けられており、前記圧電体層の他方主面に前記第2の電極が設けられている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の振動装置。
- 前記第2の電極が、前記Si層で兼ねられている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の振動装置。
- 前記酸化ケイ素層が、前記Si層の両面に形成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の振動装置。
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