JPWO2014103582A1 - テトラフルオロプロペンの精製方法 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、本明細書において、ハロゲン化炭化水素については化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。
このような方法として、例えば、特許文献1には、クロロメタン(R40)とクロロジフルオロメタン(R22)および/またはテトラフルオロエチレン(TFE)との混合物を、反応器内で電気ヒータのような通常の加熱手段により700〜950℃の温度に加熱・分解して、HFO−1234yfを得る方法が提示されている(特許文献1)。
HFO−1234yfの製造方法として、たとえば上述の背景技術に記載した方法においては、原料のR40が混入することから、HFO−1234yfおよびR40を含む組成物からHFO−1234yfまたはR40を効率良く得る方法が望まれている。
本発明者らは、HFO−1234yfおよびR40を含む組成物から両者を分離しようとする際には、共沸組成物ないし共沸様組成物が生じ、両者を容易には分離できなことを見出した。
このように通常の蒸留では分離することが困難な組成物を分離する際には、組成物の一部の物質に親和性を持つ化合物と接触させることを特徴とする分離方法、例えば抽出蒸留や吸収などを用いて分離することが知られている。
これらの抽出蒸留や吸収などによる分離をHFO−1234yfとR40を含む組成物に用いる場合、R40に対するHFO−1234yfの比揮発度が大きい化合物を用いる必要がある。しかしながら、ある化合物についてR40に対するHFO−1234yfの比揮発度の値を予測すること、または、ある物質についてHFO−1234yfに対するR40の比揮発度の値を予測することは困難である。このため、抽出蒸留や吸収などにより、たとえばHFO−1234yfをR40から分離する方法において、どのような物質を用いれば分離できるか予測することはできない。
すなわち、本発明者らは、種々の物質について鋭意検討を行った結果、特定の化合物と共沸組成物ないし共沸様組成物を接触させることで、R40に対するHFO−1234yfの比揮発度が変化することを見出し、本発明を完成するに至った。
1.2,3,3,3−テトラフルオロプロペンとクロロメタンの共沸組成物ないし共沸様組成物を抽出溶媒と接触させ、実質的にクロロメタンを含まない2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得ることを特徴とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
本発明のHFO−1234yfとR40からなる共沸組成物は、HFO−1234yfの含有割合が63モル%であり、R40の含有割合が37モル%の組成物であって、圧力1.011×106Paにおける沸点が41.3℃である。共沸組成物は、該組成物を繰り返し蒸発、凝縮させた場合、組成変化がなく、冷媒等の用途に用いた場合に、極めて安定して性能が得られる利点がある。なお、共沸組成物は、以下の式で示される比揮発度が1.00である。
比揮発度=(気相部におけるHFO−1234yfのモル%/気相部におけるR40のモル%)/(液相部におけるHFO−1234yfのモル%/液相部におけるR40のモル%)
本発明のHFO−1234yfとR40からなる共沸様組成物は、HFO−1234yfの含有割合が58〜78モル%であり、R40の含有割合が22〜42モル%の組成物である。蒸発、凝縮を繰り返した場合の組成の変動が小さい。なお、本明細書において、共沸様組成物とは、上記式で求められる比揮発度が1.00±0.20の範囲にある組成物をいう。また、本発明のHFO−1234yfとR40からなる共沸様組成物は、圧力が1.011×106Paにおける沸点が41〜42℃である。
抽出蒸留においては、主に2成分からなる組成物に第3の成分を加えることにより、当初の主に2成分からなる組成物の比揮発度を変化させることにより蒸留分離を行い易くすることができる。ここでいう第3の成分を本明細書において抽出溶媒と呼ぶ。
当該抽出溶媒は、抽出蒸留に用いることのできる化合物をいい、常温で液体でないものであってもよいが、抽出蒸留を行う際には液体で存在するものである。当該抽出溶媒を、共沸組成物または沸点が近接しているため蒸留分離が困難な液体組成物に加えることで、2成分のいずれかの成分であって、当該抽出溶媒に吸収されない成分、すなわち分離したいいずれかの成分の分離が可能になる。さらに共沸組成物には少量の他の成分が含有していても良い。
また本発明は、HFO−1234yfとR40を含む組成物から実質的にHFO−1234yfを含まないR40を分離する方法であって、前記組成物を抽出溶媒と接触させることを特徴とする、R40を分離する方法である。
比揮発度を変化させ得る化合物を本明細書においては抽出溶媒と呼ぶ。
抽出溶媒を加えていない状態(2成分)での比揮発度と抽出溶媒を加えた場合の比揮発度を比較する。上記式で得られる数値が増加していれば、R40を吸収する抽出溶媒であることが理解される。かかる抽出溶媒を用いることで、HFO−1234yfとR40とを含む組成物から1234yfを抽出蒸留により分離することができる。
一方で、上記式で得られる数値が減少していれば、HFO−1234yfを吸収する抽出溶媒であることが理解される。かかる抽出溶媒を用いることで、HFO−1234yfとR40とを含む組成物からR40を抽出蒸留により分離することができる。
本発明おける抽出溶媒としては、炭化水素類、塩素化炭化水素類、アルコール類、エーテル類、ニトリル類、ケトン類、カーボネート類、アミン類、エステル類およびスルホキシド類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってフッ素原子を有しない化合物が挙げられる。
ケトン類としては、具体的には、ジメチルケトン(アセトン)、メチルエチルケトン、ジエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンが好ましい。特に好ましくは、ジメチルケトンまたはメチルエチルケトンである。
カーボネートとして類は、炭素数3〜5の脂肪族のカーボネートが好ましく、具体的にはジメチルカーボネートが好ましい。
エステル類としては、線状または環状エステルをいう。炭素数3〜5の線状または環状エステルが好ましく、具体的にはγ−ブチロラクトンが好ましい。
スルホキシド類としては、具体的にはジメチルスルホキシドが好ましい。
本発明において極性基を有する含フッ素化合物とは、分子内にフッ素を有するか有しないに関わらず、極性のある原子団である極性基を有する化合物をいい、該原子団が有機化合物中に存在することにより極性を持つ化合物をいう。極性基としては具体的にはエーテル基、エステル基、アミド基、または水酸基が好ましい。
エーテル基を有する化合物としては、炭素数3〜8の化合物が好ましく、エステル基を有する化合物としては、炭素数3〜5の化合物が好ましく、アミド基を有する化合物としては、炭素数3〜5の化合物が好ましく、水酸基を有する化合物としては、炭素数1〜8の化合物が好ましい。
また、本発明者が検討した結果、特定の抽出溶媒を用いることで、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンとクロロメタンを含む組成物から、実質的に2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含まないクロロメタンを分離できることが明らかとなった。
[例1]
HFO−1234yfを176g、R40を26g、およびメタノールを99gの重量比で混合して得られる組成物を、500mLの圧力計付きオートクレーブに入れ、圧力が1.011×106Paとなるように徐々に外部ヒータによって加熱した。なお、溶媒:HFO−1234yf:R40=60:30:10のモル%比になるように調整した。オートクレーブ内の圧力が所定の1.011×106Paとなった後、一定時間保持して、オートクレーブ内の組成を安定化させた。気相および液相から組成物のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーでHFO−1234yfとR40を分析し、両者の組成比を測定した。両者の組成比から下記の式の比揮発度を求める式により比揮発度を求めた。
比揮発度=(気相部におけるHFO−1234yfのモル%/気相部におけるR40のモル%)/(液相部におけるHFO−1234yfのモル%/液相部におけるR40のモル%)
使用する溶媒の種類を表1に示した溶媒に変更した以外は実施例1と同様にして気相及び液相のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーでHFO−1234yfとR40を分析し、両者の組成比を測定した。両者の組成比から比揮発度を求める式により比揮発度を求めた。
[例16]
HFO−1234yfを186gとR40を28gの物質量比で混合して得られる組成物を、500mLの圧力計付きオートクレーブに入れ、圧力が1.011×106Paとなるように徐々に外部ヒータによって加熱した。オートクレーブ内の圧力が所定の1.011×106Paとなった後、一定時間保持してオートクレーブ内の組成を安定化させた。気相および液相から組成物のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーでHFO−1234yfとR40を分析し、両者の組成比を測定した。両者の組成比から比揮発度を求める式により比揮発度を求めた。結果を表4に示す。
使用する溶媒を表3に示した溶媒に変更した以外は例1と同様にして気相及び液相のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーでHFO−1234yfとR40を分析し、両者の組成比を測定した。両者の組成比から比揮発度を求める式により比揮発度を求めた。結果を表4に示す。
[例21]
HFO−1234yfを55gと、R40を8gと、CClF2CF2CHClF(AK225cb)を195gの重量で混合して得られる組成物を、500mLの圧力計付きオートクレーブに入れ、圧力が1.011×106Paとなるように徐々に外部ヒータによって加熱した。オートクレーブ内の圧力が所定の1.011×106Paとなった後、一定時間保持してオートクレーブ内の組成を安定化させた。気相および液相から組成物のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーでHFO−1234yfとR40を分析し、両者の組成比を測定した。両者の組成比から比揮発度を求める式により比揮発度を求めた。結果を表6に示す。
使用する溶媒と、HFO−1234yf、R40、および溶媒の仕込み量を表5に示す条件に変更した以外は例21と同様にして気相及び液相のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーでHFO−1234yfとR40を分析し、両者の組成比を測定両者の組成比から比揮発度を求める式により比揮発度を求めた。結果を表6に示す。
[例24]
HFO−1234yfを34gと、R40を5gと、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロー3−メトキシー4−トリフルオロメチルペンタンを208gの重量で混合して得られる組成物を、500mLの圧力計付きオートクレーブに入れ、圧力が1.011×106Paとなるように徐々に外部ヒータによって加熱した。オートクレーブ内の圧力が所定の1.011×106Paとなった後、一定時間保持してオートクレーブ内の組成を安定化させた。気相および液相から組成物のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーでHFO−1234yfとR40を分析し、両者の組成比を測定した。両者の組成比から比揮発度を求める式により比揮発度を求めた。結果を表8に示す。
使用する溶媒を表7に示した溶媒に変更した以外は例24と同様にして気相及び液相のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーでHFO−1234yfとR40を分析し、両者の組成比を測定した。両者の組成比から比揮発度を求める式により比揮発度を求めた。結果を表8に示す。
[例28]
HFO−1234yfを37gと、R40を5gと、トリデカフルオロヘキサン(AC2000)を209gの物質量比で混合して得られる組成物を、500mLの圧力計付きオートクレーブに入れ、圧力が1.011×106Paとなるように徐々に外部ヒータによって加熱した。オートクレーブ内の圧力が所定の1.011×106Paとなった後、一定時間保持してオートクレーブ内の組成を安定化させた。気相および液相から組成物のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーでHFO−1234yfとR40を分析し、両者の組成比を測定した。両者の組成比から比揮発度を求める式により比揮発度を求めた。表10に結果を示す。
使用する溶媒をパーフルオロヘキサンに変更した以外は例28と同様にして気相及び液相のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーでHFO−1234yfとR40を分析し、両者の組成比を測定した。両者の組成比から比揮発度を求める式により比揮発度を求めた。
HFO−1234yfを143gと、R40を63gの物質量比で混合して得られる組成物を、500mLの圧力計付きオートクレーブに入れ、圧力が1.011×106Paとなるように徐々に外部ヒータによって加熱した。オートクレーブ内の圧力が所定の1.011×106Paとなった後、一定時間保持してオートクレーブ内の組成を安定化させた。気相および液相から組成物のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーでHFO−1234yfとR40を分析し、両者の組成比を測定した。両者の組成比から比揮発度を求める式により比揮発度を求めた。結果を表9、表10、および表12に示す。
HFO−1234yfおよびR40を含んで成る組成物1は、加圧で操作される抽出蒸留塔2に供給される。抽出蒸留塔2としては、使用する溶媒や、留出物4が目的のHFO−1234yfの純度などに応じて、理論段数や操作条件は適宜設定される。抽出蒸留塔2に供給された組成物1は、抽出溶媒である抽出剤3と接触しながら蒸留される。 R40と親和性の高い抽出溶媒を抽出剤3として用いた場合には、塔頂より組成物1よりもHFO−1234yfの濃度の増加した留出物4を得ることができ、組成物1よりもR40の濃度の増加した缶出物5を得ることができる。
また、HFO−1234yfと親和性の高い抽出溶媒を抽出剤3として用いた場合には、塔頂より組成物1よりR40の純度の高い留出物4を得ることができ、組成物1よりもHFO−1234yfの濃度の増加した缶出物5を得ることができる。この缶出物を、加圧で操作される溶媒回収塔6に供給することにより、例えば、抽出蒸留塔2でR40と親和性の高い抽出溶媒を抽出剤3として用いた場合は、塔頂部より組成物1よりもR40の濃度が増加した留出物7を得ることができる。また、缶出物5を加圧で操作される溶媒回収塔6に供給することにより、例えば、抽出蒸留塔2において、HFO−1234yfと親和性の高い抽出溶媒を抽出剤3として用いた場合は、塔頂より組成物1よりHFO−1234yfの純度の高い留出物7を得ることができる。
さらに、溶媒回収塔6の塔底部からは、実質的にHFO−1234yfおよびR40を含まない抽出溶媒を缶出物8として回収し、この缶出物を必要に応じて熱交換器9にて、加熱もしくは冷却して抽出蒸留塔2に供給し、抽出溶媒である抽出剤3として再使用する。
抽出溶媒がN−メチルピロリドンについて、本発明を実施した場合をシミュレーションした。
抽出溶媒がパークロロエチレンについて、本発明を実施した場合をシミュレーションした。
抽出溶媒が1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(AK225cb)について、本発明を実施した場合をシミュレーションした。
なお、2012年12月27日に出願された日本特許出願2012−285248号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (5)
- 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンとクロロメタンの共沸組成物ないし共沸様組成物を抽出溶媒と接触させ、実質的にクロロメタンを含まない2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得ることを特徴とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
- 前記抽出溶媒として、
炭化水素類、塩素化炭化水素類、アルコール類、エーテル類、ニトリル類、ケトン類、カーボネート類、アミン類、エステル類、およびスルホキシド類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってフッ素原子を有しない化合物を用いるか、
フッ素化率が0.8未満でありかつ極性基を有するフッ素化合物を用いるか、または、 フッ素化率が0.9未満でありかつ極性基を有しないフッ素化合物を用いる、
請求項1に記載の方法。 - 炭化水素類がペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカンまたはドデカンであり、塩素化炭化水素類がジクロロメタン、トリクロロメタン、パークロロメタン、1.2−ジクロロプロパンまたはパークロロエチレンであり、アルコール類がメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはペンタノールであり、エーテル類が1,3−ジオキソランまたはテトラヒドロフランであり、ニトリル類がアセトニトリルであり、ケトン類がアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンであり、カーボネート類がジメチルカーボネートであり、アミン類がジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンまたはN−ホルミルノルホリンであり、エステル類がγ−ブチロラクトンであり、スルホキシド類がジメチルスルホキシドである、請求項2に記載の方法。
- 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンとクロロメタンの共沸組成物ないし共沸様組成物から、実質的に2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含まないクロロメタンを製造する方法であって、
前記組成物を抽出溶媒と接触させることを特徴とするクロロメタンの製造方法。 - 前記抽出溶媒として、
フッ素化率が0.8以上でありかつ極性基を有するフッ素化合物を用いるか、または、
フッ素化率が0.9以上でありかつ極性基を有しないフッ素化合物を用いる、請求項4に記載の方法。
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