本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[1]第1実施形態
[1.1]アプリケータの構成
図1〜図9を参照して、第1実施形態に係るアプリケータA1の構成を説明する。説明中、「上」との語は図1〜図3の上方向に対応しており、「下」との語は図1〜図3の下方向に対応している。すなわち、上下方向は、アプリケータA1の高さ方向に対応している。
アプリケータA1は、マイクロニードル32(詳しくは後述する)の皮膚への穿刺によりヒト等の動物の皮膚を通して薬剤等の活性成分を動物の体内に移行するための装置である。アプリケータA1は、筐体10と、ピストン板20と、マイクロニードルアレイ30と、円錐コイルばね40と、解除部材50とを備える。
筐体10は、図1〜図3に示されるように、中心軸が上下方向に沿って延びる円筒形状を呈する本体部12と、本体部12の上端側に配置された蓋部14とを有する。筐体10は、円錐コイルばね40(詳しくは後述する)の付勢力を維持出来る強度を有する。筐体10の材質としては、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂やポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール(POM)などの合成又は天然の樹脂素材等のほか、シリコン、二酸化ケイ素、セラミック、金属(ステンレス鋼、チタン、ニッケル、モリブデン、クロム、コバルト等)を例示することができる。強度等の強化を目的として、上記の樹脂材料にガラス繊維を添加してもよい。
アプリケータA1は、持ちやすく、動物(ヒトを含む)の皮膚にマイクロニードル32(後述する)を適用しやすい(穿刺しやすい)形状が望ましい。そのため、本体部12の外形は、円筒形状以外でもよく、例えば、多角形状であったり、丸みを帯びていたりしてもよい。本体部12の表面に、窪みが設けられていたり、段差が設けられていたりしてもよい。本体部12の表面に細かな溝を形成したり、滑り難いコーティング層を設けたりすることで、本体部12の表面が粗面化処理されていてもよい。空気抵抗の低減や軽量化を目的として、本体部12に貫通孔が形成されていてもよい。
本体部12は、図2〜図5に示されるように、円筒状を呈する外壁12aと、円弧状を呈する内側内壁12b1〜12b4と、円弧状を呈する外側内壁12c1〜12c4と、円環状を呈する底壁12dとを有する。外壁12aの外周面のうち上端寄り(蓋部14寄り)の位置には、円環状を呈する鍔部材12eが設けられている。鍔部材12eは、外壁12aの外周面から外方に向けて突出している。外壁12aの上端と鍔部材12eとの間には、周方向に延びる切欠き部12fが設けられている。
内側内壁12b1〜12b4は、外壁12aよりも内側であって、同一半径の円周上に位置している。内側内壁12b1〜12b4は、本体部12の上端側(蓋部14側)から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。すなわち、内側内壁12b1と内側内壁12b2とは周方向において所定間隔をもって離間しており、内側内壁12b2と内側内壁12b3とは周方向において所定間隔をもって離間しており、内側内壁12b3と内側内壁12b4とは周方向において所定間隔をもって離間しており、内側内壁12b4と内側内壁12b1とは周方向において所定間隔をもって離間している。
内側内壁12b1〜12b4で構成される円は、ピストン板20の本体20a(後述する)の外径と同程度か、それよりも若干大きくなるように設定することができる。内側内壁12b1〜12b4のうち周方向において隣り合う内側内壁の間隔は、ピストン板20の突起20c1〜20c4(後述する)の幅と同程度か、当該突起20c1〜20c4の幅よりも若干大きくなるように設定することができる。本実施形態において、内側内壁12b1〜12b4の中心軸は、外壁12a(本体部12)の中心軸と略一致しているが、一致していなくてもよい。
内側内壁12b1の上端であって内側内壁12b4寄りの部分は、切り欠かれている。より具体的には、上下方向(本体部12の中心軸方向)において、内側内壁12b1は、上端の位置が外壁12aの上端の位置と同程度の第1の部分12b11と、上端の位置が第1の部分12b11よりも底壁12d寄りの第2の部分12b12とを有している。すなわち、第1の部分12b11と第2の部分12b12とで、周方向において段差が形成されている。内側内壁12b1と外壁12aとは連結壁12g1によって連結されており、両者の剛性が高められている。連結壁12g1の上端の位置は、第1の部分12b11の上端の位置と同程度である。内側内壁12b1、外壁12a及び連結壁12g1は、一体的に成形しうる。
内側内壁12b2の上端であって内側内壁12b1寄りの部分は、切り欠かれている。より具体的には、上下方向において、内側内壁12b2は、上端の位置が外壁12aの上端の位置と同程度の第1の部分12b21と、上端の位置が第1の部分12b21よりも底壁12d寄りの第2の部分12b22とを有している。すなわち、第1の部分12b21と第2の部分12b22とで、周方向において段差が形成されている。内側内壁12b2と外壁12aとは連結壁12g2によって連結されており、両者の剛性が高められている。連結壁12g2の上端の位置は、第1の部分12b21の上端の位置と同程度である。内側内壁12b2、外壁12a及び連結壁12g2は、一体的に成形しうる。
内側内壁12b3の上端であって内側内壁12b2寄りの部分は、切り欠かれている。より具体的には、上下方向において、内側内壁12b3は、上端の位置が外壁12aの上端の位置と同程度の第1の部分12b31と、上端の位置が第1の部分12b31よりも底壁12d寄りの第2の部分12b32とを有している。すなわち、第1の部分12b31と第2の部分12b32とで、周方向において段差が形成されている。内側内壁12b3と外壁12aとは連結壁12g3によって連結されており、両者の剛性が高められている。連結壁12g3の上端の位置は、第2の部分12b32の上端の位置と同程度である。内側内壁12b3、外壁12a及び連結壁12g3は、一体的に成形しうる。
内側内壁12b4の上端であって内側内壁12b3寄りの部分は、切り欠かれている。より具体的には、上下方向において、内側内壁12b4は、上端の位置が外壁12aの上端の位置と同程度の第1の部分12b41と、上端の位置が第1の部分12b41よりも底壁12d寄りの第2の部分12b42とを有する。すなわち、第1の部分12b41と第2の部分12b42とで、周方向において段差が形成されている。内側内壁12b4と外壁12aとは連結壁12g4によって連結されており、両者の剛性が高められている。連結壁12g4の上端の位置は、第2の部分12b42の上端の位置と同程度である。内側内壁12b4、外壁12a及び連結壁12g4は、一体的に成形しうる。
外側内壁12c1〜12c4は、外壁12aと内側内壁12b1〜12b4との間であって、同一半径の円周上に位置している。外側内壁12c1〜12c4がなす円の半径と、内側内壁12b1〜12b4がなす円の半径との差、すなわち、溝部G1〜G4(後述する)の深さは、ピストン板20の突起20c1〜20c4(後述する)の突出長さと同程度か、当該突起20c1〜20c4の突出長さよりも若干大きくなるように設定することができる。外側内壁12c1〜12c4は、上端側(蓋部14側)から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。すなわち、外側内壁12c1と外側内壁12c2とは周方向において所定間隔をもって離間しており、外側内壁12c2と外側内壁12c3とは周方向において所定間隔をもって離間しており、外側内壁12c3と外側内壁12c4とは周方向において所定間隔をもって離間しており、外側内壁12c4と外側内壁12c1とは周方向において所定間隔をもって離間している。
外側内壁12c1の側部は、それぞれ内側内壁12b1,12b2の側部と接続されている。外側内壁12c1と、内側内壁12b1,12b2とは、一体的に成形しうる。そのため、外側内壁12c1と、内側内壁12b1,12b2とにより、上下方向に延びる溝部G1が本体部12の内周面に形成される。すなわち、溝部G1は、内側内壁12b2の第2の部分12b22と隣接している。上下方向において、外側内壁12c1の上端の位置は、外壁12aの上端の位置と同程度である。外側内壁12c1と外壁12aとは連結壁12g5によって連結されており、両者の剛性が高められている。連結壁12g5の上端の位置は、外側内壁12c1の上端の位置と同程度である。外側内壁12c1、外壁12a及び連結壁12g5は、一体的に成形しうる。
外側内壁12c2の側部は、それぞれ内側内壁12b2,12b3の側部と接続されている。外側内壁12c2と、内側内壁12b2,12b3とは、一体的に成形しうる。そのため、外側内壁12c2と、内側内壁12b2,12b3とにより、上下方向に延びる溝部G2が本体部12の内周面に形成される。すなわち、溝部G2は、内側内壁12b3の第2の部分12b32と隣接している。上下方向において、外側内壁12c2の上端の位置は、外壁12aの上端の位置と同程度である。外側内壁12c2と外壁12aとは連結壁12g6によって連結されており、両者の剛性が高められている。連結壁12g6の上端の位置は、外側内壁12c2の上端の位置と同程度である。外側内壁12c2、外壁12a及び連結壁12g6は、一体的に成形しうる。
外側内壁12c3の側部は、それぞれ内側内壁12b3,12b4の側部と接続されている。外側内壁12c3と、内側内壁12b3,12b4とは、一体的に成形しうる。そのため、外側内壁12c3と、内側内壁12b3,12b4とにより、上下方向に延びる溝部G3が本体部12の内周面に形成される。すなわち、溝部G3は、内側内壁12b4の第2の部分12b42と隣接している。上下方向において、外側内壁12c3の上端の位置は、隣接する内側内壁12b4の第2の部分12b42の上端の位置と同程度である。すなわち、外側内壁12c3の上端は、外壁12aの上端よりも底壁12d寄りに位置している。外側内壁12c3と外壁12aとは連結壁12g7によって連結されており、両者の剛性が高められている。連結壁12g7の上端の位置は、外側内壁12c3の上端の位置よりも底壁12d寄りに位置している。従って、外側内壁12c3、連結壁12g7及び外壁12aの断面を見た場合、連結壁12g7の部分が凹んだ凹部となっている。外側内壁12c3、外壁12a及び連結壁12g7は、一体的に成形しうる。
外側内壁12c4の側部は、それぞれ内側内壁12b4,12b1の側部と接続されている。外側内壁12c4と、内側内壁12b4,12b1とは、一体的に成形しうる。そのため、外側内壁12c4と、内側内壁12b4,12b1とにより、上下方向に延びる溝部G4が本体部12の内周面に形成される。すなわち、溝部G4は、内側内壁12b1の第2の部分12b12と隣接している。上下方向において、外側内壁12c4の上端の位置は、隣接する内側内壁12b1の第2の部分12b12の上端の位置と同程度である。すなわち、外側内壁12c4の上端は、外壁12aの上端よりも底壁12d寄りに位置している。外側内壁12c4と外壁12aとは連結壁12g8によって連結されており、両者の剛性が高められている。連結壁12g8の上端の位置は、外側内壁12c4の上端の位置と同程度である。外側内壁12c4、外壁12a及び連結壁12g8は、一体的に成形しうる。
底壁12dは、外壁12aの下端と、内側内壁12b1〜12b4の下端と、外側内壁12c1〜12c4の下端と、連結壁12g1〜12g8の下端とに接続されている。底壁12dの外径は、外壁12aの外周面の径と同程度である。底壁12dの内径は、内側内壁12b1〜12b4の内周面がなす円の径と同程度である。そのため、溝部G1〜G4の下端は、底壁12dによって塞がれている(図2及び図5参照)。
蓋部14は、図1〜図3に示されるように、円形状を呈する天板14aと、天板14aの周縁から下方に向けて延びる円筒部材14bとを有する。円筒部材14bの高さは、外壁12aのうち鍔部材12eから上端までの長さと同程度に設定することができる。円筒部材14bには、周方向に延びる切欠き部14cが設けられている。切欠き部14cの長さは、外壁12aの切欠き部12fと同じ長さに設定することができる。
アプリケータA1の完成状態においては、蓋部14は本体部12に取り付けられている。蓋部14の本体部12への取り付けは、蓋部14の切欠き部14cと外壁12aの切欠き部12fとが一致するように蓋部14が本体部12に対して位置決めされた状態で行われる。そのため、切欠き部12f,14cにより、筐体10の内外を連通する貫通孔H(図3及び図5参照)が形成される。蓋部14と本体部12との取り付け方法として、接着剤や接着シート等を用いて蓋部14の円筒部材14bと本体部12の鍔部材12eとを接着する方法を採用してもよいし、機械的に係合する(例えば、円筒部材14bに係合爪を設け、鍔部材12eに係合孔を設けて、当該係合爪と当該係合孔とを嵌め合う)方法を採用してもよいし、蓋部14と本体部12とを圧着する(例えば、蓋部14の円筒部材14bの径を本体部12の外径よりも小さく設定して、蓋部14を本体部12に押し込む)方法を採用してもよいし、蓋部14と本体部12とを溶着する(例えば、円筒部材14bと鍔部材12eとを加熱して溶かした後、冷却して一体化する)方法を採用してもよい。
ピストン板20は、本体部12内に収容されており、本体部12内において本体部12の中心軸に沿って上下方向に移動可能である。ピストン板20の材質は、筐体10の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質(後述する)と同じであってもよい。ピストン板20は、図2〜図4に示されるように、円板状の本体20aと、本体20aの周縁から上方に向けて延びる円筒部材20bとを有する。空気抵抗の低減やピストン板20の軽量化を目的として、開口、溝又は貫通孔などが本体20aに形成されていてもよい。あるいは、ピストン板20の剛性の向上を目的として、本体20aの上面(円錐コイルばね40が配置される側の面)に突条などが設けられていてもよい。本体20aの下面(上面とは反対側の面)は、ピストン板20をマイクロニードルアレイ30に均一に作用させることを考慮して、平面状であると好ましい。しかしながら、本体20aの下面が平面以外の他の形状であってもよく、皮膚への穿刺のための各種の条件(例えば、薬剤、マイクロニードルアレイ30の形状、マイクロニードル32の高さ、マイクロニードル32の密度、穿刺速度、皮膚への衝撃力など)を考慮して、本体20aの下面の形状を適切に選択することができる。
円筒部材20bの内径は、円錐コイルばね40の最大直径D1(後述する)よりも大きくなるように設定されている。円錐コイルばね40が径方向に移動したときにピストン板20から脱落しないようなストッパとしての機能を円筒部材20bが発揮できれば、円筒部材20bの高さに特に制限はない。例えば、アプリケータA1の高さをできる限り小さくしたい場合には、円筒部材20bの高さを、円錐コイルばね40を構成する金属線の太さ程度に設定することができる。円錐コイルばね40のストッパが不要な場合には、ピストン板20が円筒部材20bを有していなくてもよい。ピストン板20が円筒部材20bを有していない場合であっても、円錐コイルばね40を構成する金属線が嵌まる環状溝が本体20aに形成されていれば、円錐コイルばね40のストッパの機能を環状溝によって果たすことができる。このような円錐コイルばね40のストッパがある場合、円錐コイルばね40をピストン板20の上面に配置した後に蓋部14を本体部12に取り付けてアプリケータA1を作成する際に、円錐コイルばね40がピストン板20に対して位置ずれしてしまうことを防止できる。
ピストン板20の周縁(外周面)には、径方向(ピストン板の厚さ方向とは交差する方向)で且つ外方に向けて突出する複数の突起(第1実施形態では4つの突起)20c1〜20c4が設けられている。突起20c1〜20c4は、上方(円錐コイルばね40が載置されるピストン板20の上面側)から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。突起20c1〜20c4は、第1実施形態において四角柱状を呈する。しかしながら、内側内壁12b1〜12b4の第2の部分12b12〜12b42への係止が可能であり、溝部G1〜G4内での移動が可能であれば、突起20c1〜20c4は他の形状(例えば、円柱状、多角柱状、異形柱状、円錐状、多角錐状、截頭円錐状、切頭多角錐状など)を呈していてもよい。
突起20c1は、溝部G1内をその延在方向に沿って移動可能である。突起20c2は、溝部G2内をその延在方向に沿って移動可能である。突起20c3は、溝部G3内をその延在方向に沿って移動可能である。突起20c4は、溝部G4内をその延在方向に沿って移動可能である。そのため、ピストン板20は、溝部G1〜G4の延在方向(本体部12の軸方向)に沿って上下方向に案内されうる。
突起20c1は、溝部G1の上端側に位置している状態において、内側内壁12b2の第2の部分12b22の上方を水平方向に移動可能である。そのため、突起20c1は、溝部G1に隣接する内側内壁12b2の第2の部分12b22の上端に載置されうる。突起20c2は、溝部G2の上端側に位置している状態において、内側内壁12b3の第2の部分12b32の上方を水平方向に移動可能である。そのため、突起20c2は、溝部G2に隣接する内側内壁12b3の第2の部分12b32の上端に載置されうる。
突起20c3は、溝部G3の上端側に位置している状態において、内側内壁12b4の第2の部分12b42の上方を水平方向に移動可能である。そのため、突起20c3は、溝部G3に隣接する内側内壁12b4の第2の部分12b42の上端に載置されうる。突起20c4は、溝部G4の上端側に位置している状態において、内側内壁12b1の第2の部分12b12の上方を水平方向に移動可能であるそのため、突起20c4は、溝部G4に隣接する内側内壁12b1の第2の部分12b12の上端に載置されうる。
内側内壁12b1〜12b4の第2の部分12b12〜12b42の上端は、周方向において水平面と平行となるように延びていてもよいし、周方向において水平面に対して傾いていてもよい。特に、第2の部分12b12〜12b42が隣り合う溝部G1〜G4に向かうにつれてその高さが高くなるように、第2の部分12b12〜12b42の上端が傾いていてもよい。この場合、第2の部分12b12〜12b42の上端に載置されている突起20c1〜20c4が溝部G1〜G4に向かう際に、突起20c1〜20c4が第2の部分12b12〜12b42の上端を登坂しなければならない。そのため、アプリケータA1に外部から衝撃などが加わったとしても、突起20c1〜20c4が溝部G1〜G4内に意図せず移動してしまうことが防止できる。
マイクロニードルアレイ30は、図2、図3、図6及び図7に示されるように、円板状の基板31と、基板31の一方の主面(下面)に突設された複数のマイクロニードル32とを有する。基板31は、マイクロニードル32を支持するための土台である。基板31の面積は、0.5cm2〜300cm2でもよいし、1cm2〜100cm2でもよいし、1cm2〜50cm2でもよい。基板31を複数繋げることで所望の大きさの基板を構成するようにしてもよい。
基板31は、他方の主面(上面)がピストン板20の本体20aの下面に取り付けられている。すなわち、マイクロニードルアレイ30はピストン板20に一体化されている。基板31のピストン板20への取り付け方法として、基板31とピストン板20とを機械的に一体化する(例えば、基板31の上面に係合爪を設け、ピストン板20に係合孔を設けて、当該係合爪と当該係合孔とを嵌め合う)方法を採用してもよいし、接着剤や接着シート等を用いて基板31とピストン板20とを接着する方法を採用してもよい。
マイクロニードル32は、図6に示されるように、基板31の表面上において千鳥状(互い違い)に略等間隔に配列されている。マイクロニードル32の高さ(長さ)は、20μm〜700μmでもよいし、50μm〜700μmでもよい。マイクロニードル32の高さを20μm以上とするのは、薬剤等の体内への移行を確実にするためである。マイクロニードル32の高さを700μm以下とするのは、マイクロニードル32が皮膚の角質を穿孔するのみにとどまり、真皮層にマイクロニードル32が到達しないようにするためである。
マイクロニードル32は、基板31と接続される基底部から先端部に向けて細くなるテーパ状の構造物である。すなわち、マイクロニードル32は、針形状、又は針形状を含む構造物である。マイクロニードル32は、円錐状や多角錐状などの先端が尖った形状であってもよいし、截頭円錐状や截頭多角錐状などの先端が尖っていない形状であってもよい。図6に示されるように、マイクロニードル32が円錐状を呈する場合には、基底部における直径が5μm〜250μmでもよいし、10μm〜200μmでもよい。
マイクロニードル32の先端が丸みを帯びている場合には、先端部の曲率半径が2μm〜100μmでもよいし、5μm〜30μmでもよい。マイクロニードル32の先端が平坦である場合には、その平坦部の面積が20μm2〜600μm2でもよいし、50μm2〜250μm2でもよい。
マイクロニードル32の基板31上における密度に関しては、典型的には、一つの列について1mmあたり1本〜10本のマイクロニードル32が配列されている。一般に、隣接する横列は、横列内のマイクロニードル32の空間に対して実質的に等しい距離だけ互いに離間している。そのため、マイクロニードル32の密度の下限は、100本/cm2でもよいし、200本/cm2でもよいし、300本/cm2でもよいし、400本/cm2でもよいし、500本/cm2でもよい。マイクロニードル32の密度の上限は、10000本/cm2でもよいし、5000本/cm2でもよいし、2000本/cm2でもよいし、850本/cm2でもよい。
基板31とマイクロニードル32との材質は、同じであっても異なっていてもよい。全てのマイクロニードル32が同じ材質であってもよいし、異なる材質のマイクロニードル32が混在していてもよい。基板31及びマイクロニードル32の材質としては、例えば、シリコン、二酸化ケイ素、セラミック、金属(ステンレス鋼、チタン、ニッケル、モリブデン、クロム、コバルト等)及び、合成又は天然の樹脂材料が挙げられる。樹脂材料としては、基板31及びマイクロニードル32の抗原性及び材質の単価を考慮すると、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリ乳酸−co−ポリグリコリド、プルラン、カプロラクトン、ポリウレタン、ポリ無水物等の生分解性ポリマーや、非分解性ポリマーであるポリカーボネート、ポリメタクリル酸、エチレンビニルアセテート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオキシメチレン等が挙げられる。また、基板31及びマイクロニードル32の材質としては、多糖類であるヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、プルラン、デキストラン、デキストリン又はコンドロイチン硫酸、セルロース誘導体等でもよい。また、他の実施形態においては、基板31及び/又はマイクロニードル32の材質として、上記の生物分解性樹脂に活性成分を配合したものを用いてもよい。強度等の強化を目的として、上記の樹脂材料にガラス繊維を添加してもよい。
マイクロニードル32の材質は、皮膚上で折れたことを考えると、ポリ乳酸などの生分解性樹脂であってもよい。なお、ポリ乳酸には、ポリL−乳酸やポリD−乳酸のポリ乳酸ホモポリマ、ポリL/D−乳酸共重合体、およびこれらの混合体等が存在するが、これらのいずれを用いてもよい。ポリ乳酸の平均分子量が大きいほどその強度は強くなり、分子量が40,000〜100,000のものを使用することができる。
基板31及びマイクロニードル32の製法としては、シリコン基板を用いたウエットエッチング加工又はドライエッチング加工、金属又は樹脂を用いた精密機械加工(放電加工、レーザー加工、ダイシング加工、ホットエンボス加工、射出成型加工等)、機械切削加工等が挙げられる。これらの加工法により、基板31及びマイクロニードル32が一体的に形成される。マイクロニードル32を中空状に加工する方法としては、マイクロニードル32を作製後にレーザー加工等で二次加工する方法が挙げられる。
図7に示されるように、基板31及び/又はマイクロニードル32上には、活性成分によるコーティングCが施されていてもよい。本実施形態において、コーティングCは、活性成分と、精製水および/またはコーティング担体とを含むコーティング剤(コーティング液)が、基板31及び/又はマイクロニードル32の一部又は全面に固着化されたものである。「固着化された」とは、コーティング液が対象物にほぼ一様に付着している状態を保つことをいう。コーティング直後には、風乾、真空乾燥、凍結乾燥またはそれらの組み合わせの既知の乾燥方法で、コーティング液が乾燥状態で固着しているが、経皮投与後は、取り巻く雰囲気と平衡にある水分含量や有機溶媒などを保持することもあるため、乾燥状態で固着しているとは限らない。
本実施形態に用いられる活性成分は、特に限定することなく、酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、保湿剤、脱色素剤、脂肪調節剤、紫外線反射剤、湿潤剤、抗菌剤、抗アレルギー剤、抗ニキビ薬、老化防止薬、しわ防止薬、殺菌剤、鎮痛剤、咳止め薬、かゆみ止めの薬、局所麻酔薬、脱毛防止剤、育毛助成剤、育毛抑制剤、ふけ防止剤、抗ヒスタミン剤、角質溶解薬、抗炎症薬、抗感染薬、制吐薬、抗コリン作用薬、血管収縮薬、血管拡張薬、外傷治癒助剤、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、体臭防止剤、制汗剤、皮膚軟化剤、日焼け剤、美白剤、抗真菌剤、痔疾薬、化粧水、ビタミン、アミノ酸、アミノ酸誘導体、細胞ターンオーバーエンハンサー、免疫賦活剤、DNA、RNA、ワクチン、低分子ペプチド、糖、核酸、催眠・鎮静剤、解熱消炎鎮痛剤、ステロイド系抗炎症剤、興奮・覚醒剤、精神神経用剤、ホルモン剤、泌尿器官用剤、骨格筋弛緩剤、生殖器官用剤、抗てんかん剤、自律神経用、抗パーキンソン病剤、利尿剤、呼吸促進剤、抗片頭痛剤、気管支拡張剤、強心剤、冠血管拡張剤、末梢血管拡張剤、禁煙補助薬、循環器官用剤、不整脈用剤、抗悪性潰瘍剤、抗脂血症剤、血糖降下剤、消化性潰瘍治療剤、利胆剤、消化管運動改善剤、肝臓疾患用剤、抗ウイルス剤、鎮暈剤、抗生剤、習慣性中毒用剤、食欲抑制剤、化学療法剤、血液凝固促進剤、抗アルツハイマー剤、セロトニン受容体拮抗制吐剤、痛風治療剤、及びこれらの混合物からなる群より選択される。
なお、これらの活性成分は単独で用いても2種類以上併用してもよく、薬学的に許容できる塩であれば、無機塩あるいは有機塩のいずれの形態の活性成分も当然含まれる。また、活性成分はコーティング担体中に包含させるのが基本であるが、コーティング担体中には活性成分を包含させずに、後から、基板31に形成された貫通孔を介して供給することもできる。また、活性成分を皮膚に直接塗布し、その後皮膚の同じ部分にマイクロニードルアレイ30を当てることもできる。この場合には、皮膚を引き伸ばす効果と皮膚上におけるODT(密封包袋療法)効果とにより、活性成分の皮膚への浸透を促進させることが可能となる。
円錐コイルばね40は、図2及び図3に示されるように、本体部12内に収容されている。具体的には、円錐コイルばね40は、ピストン板20と蓋部14との間に配置されており、ピストン板20の上面と蓋部14の下面とで挟持されている。円錐コイルばね40は、図2、図3及び図8に示されるように、断面円形状を呈する金属線を螺旋状に巻回して、側方から見て円錐状となるように形成したものである。本実施形態において、円錐コイルばね40は、当該円錐コイルばね40の中心線方向から見て重なり合っていない。金属線としては、例えば、ステンレス鋼線、ピアノ線(鉄線)、銅線が挙げられる。この中でも特に、ステンレス鋼線は極めて錆び難い。
本実施形態において、円錐コイルばね40の小径側が蓋部14に当接し、円錐コイルばね40の大径側がピストン板20側に当接している。円錐コイルばね40の付勢力により作動するピストン板20のエネルギに関するパラメータとして、横弾性係数、線径(図8におけるd)、最大直径(図8におけるD1)、最小直径(図8におけるD2)、総巻き数、円錐コイルばね40の重量、ピストン板20及びマイクロニードルアレイ30の合計重量、自由高さ(図8におけるh)、密着高さ、ピッチ角並びにピッチが挙げられる。
横弾性係数は、円錐コイルばね40の材質によって定まる。ステンレス鋼線であれば横弾性係数は68500N/mm2、ピアノ線(鉄線)であれば横弾性係数は78500N/mm2、銅線であれば3.9×104N/mm2〜4.4×104N/mm2である。円錐コイルばねの線径dは、0.01mm〜2mmでもよいし、0.1mm〜1.5mmでもよいし、0.3mm〜1.3mmでもよい。円錐コイルばね40を構成する金属線の一端から他端にかけて、線径dが一定でもよいし、テーパコイルばねのように線径dが変化していてもよい。
最大直径D1は、線径dの4倍以上であればよい。最大直径D1は、1mm〜100mmでもよいし、1mm〜50mmでもよいし、5mm〜30mmでもよい。最大直径D1が1mm未満であると、アプリケータA1が十分な穿刺性能を発揮できない傾向にある。動物の皮膚において平坦と見做せる領域は限られているため、最大直径D1が100mmを超えると、アプリケータA1を皮膚に安定して取り付けることが困難となる傾向にある。
最小直径D2は、最大直径D1の1/1000倍以上で且つ1倍未満でもよいし、1/100倍〜2/3倍でもよいし、1/10倍〜1/2倍でもよい。最小直径D2は、例えば、1mm〜100mmでもよいし、1mm〜50mmでもよいし、1mm〜20mmでもよいし、1mm〜10mmでもよい。特に、最小直径D2は、最大直径D1の0.33倍〜0.38倍でもよいし、0.34倍〜0.37倍でもよい。
総巻き数は、1〜100でもよいし、1〜10でもよいし、2〜5でもよい。円錐コイルばね40の重量は、0.01g〜10gでもよいし、0.1g〜5gでもよいし、0.1g〜3gでもよい。ピストン板20、マイクロニードルアレイ30及び円錐コイルばね40で構成される作動部の総重量の下限は、0.1gでもよいし、0.2gでもよいし、0.3gでもよい。作動部の総重量の上限は、20.0gでもよいし、10.0gでもよいし、1.5gでもよいし、0.6gでもよい。作動部の運動量の下限は、0.006Nsでもよいし、0.0083Nsでもよい。作動部の運動量の上限は、0.015Nsでもよいし、0.012Nsでもよいし、0.010Nsでもよい。なお、作動部の運動量は、アプリケータA1を作動させたときの作動部の速度と、作動部の総重量との乗算によって求められる。
自由高さは、線径の3倍以上であるとよい。例えば、自由高さは、1mm〜100mmでもよいし、2mm〜20mmでもよいし、2mm〜10mmでもよい。自由高さが1mm未満であると、アプリケータA1が十分な穿刺性能を発揮できない傾向にある。自由高さが100mmを超えると、使用者がアプリケータA1を取り付けたまま行動することが困難となる傾向にある。
解除部材50は、図2〜図4及び図9に示されるように、本体部12の内側に位置する内側部50aと、本体部12の外側に位置する外側部50bと、内側部50aと外側部50bとを連結する連結部50cとを有する。内側部50aは、円弧状を呈する平板である。内側部50aの径は、内側内壁12b1〜12b4の径よりも大きく、外壁12aの径よりも小さい。アプリケータA1の完成状態において、内側部50aは、外壁12aと内側内壁12b1〜12b4との間に位置している(図4参照)。アプリケータA1の完成状態において、内側部50aは、高さの低い外側内壁12c3,12c4と、高さの低い連結壁12g3,12g4,12g7,12g8との上に載置されている(同図参照)。
内側部50aには、その内側縁から中心軸側に向けて径方向に突出する突出部50dが一体的に設けられている。突出部50dは、矩形状を呈する平板である。アプリケータA1の完成状態において、突出部50dは、内側内壁12b1〜12b4と同一半径の円周上で、且つ、内側内壁12b3の第1の部分12b31と内側内壁12b4の第1の部分12b41との間に位置している(図4参照)。
内側部50aには、図2及び図9に示されるように、その下面から下方に突出する突条50eが一体的に設けられている。突条50eは、内側部50aと同程度の曲率を有する円弧状を呈しており、内側部50aに沿って延在している。アプリケータA1の完成状態において、突条50eは、外側内壁12c3と外壁12aとの間に位置する。後述する解除部材50の周方向における移動を妨げないよう、突条50eの高さは、外側内壁12c3、連結壁12g7及び外壁12aで形成される凹部の深さよりも小さくなるように設定することが好ましい。
外側部50bは、図3、図4及び図9に示されるように、本体部12の外周面に沿って周方向に延びる曲板であり、断面円弧状を呈している。外側部50bの外表面には、上下方向に沿って延びる突条が複数設けられている。複数の突条は、周方向に沿って並んで配置されている。そのため、外側部50bの外周面は周方向において凹凸状をなしている。これにより、アプリケータA1の使用者が指を外側部50bの外周面に触れて解除部材50を周方向に操作する際に、指が外側部50bの外周面上を滑り難くなる。このような滑り止め効果を得るために、複数の突条に代えて、例えば外側部50bの外周面をエンボス加工したり粗面化したりしてもよい。外側部50bの外周面が特に加工されていなくてもよい。
連結部50cは、矩形状を呈する平板である。連結部50cは、内側部50aの外側縁から中心軸とは反対側に向けて径方向に突出している。アプリケータA1の完成状態において、連結部50cは、貫通孔Hを通って本体部12の外周面に露出している。連結部50c(解除部材50)が貫通孔Hの延在方向において移動可能となるように、連結部50cの幅は貫通孔Hの開口幅よりも小さく設定されている。
[1.2]アプリケータの製造方法
続いて、アプリケータA1の製造方法について説明する。
(a)第1の工程
まず、上記したアプリケータA1の各部品(筐体10、ピストン板20、マイクロニードルアレイ30、円錐コイルばね40及び解除部材50)を用意する。用意したマイクロニードルアレイ30のマイクロニードル32には、予めコーティングCが施されている。次に、マイクロニードルアレイ30をピストン板20の下面に取り付ける。
(b)第2の工程
続いて、解除部材50の突出部50dが、内側内壁12b4の第1の部分12b41の上に位置するように、解除部材50の内側部50aを、外側内壁12c3,12c4及び連結壁12g3,12g4,12g7,12g8の上に載置する(図10参照)。従って、解除部材50(連結部50c)は、貫通孔Hの一端側に位置している。
(c)第3の工程
続いて、内側内壁12b2の第2の部分12b22の上にピストン板20の突起20c1が位置し、内側内壁12b3の第2の部分12b32の上にピストン板20の突起20c2が位置し、内側内壁12b4の第2の部分12b42の上で、且つ、解除部材50の突出部50dと溝部G3との間にピストン板20の突起20c3が位置し、内側内壁12b1の第2の部分12b12の上にピストン板20の突起20c4が位置するように、ピストン板20を本体部12に載置する(同図参照)。この際、内側内壁12b4の第2の部分12b42の上には、解除部材50の突出部50dとピストン板20の突起20c4とが載置されることになるので、第2の部分12b42の幅は、突出部50dの幅と突起20c4の幅との合計よりも大きいことが好ましい。
(d)第4の工程
続いて、円錐コイルばね40の大径側が下側で且つ小径側が上側となるように、円錐コイルばね40をピストン板20の上面に載置する。このようにすると、円錐コイルばね40をピストン板20に載置する際、円錐コイルばね40が安定して起立するので、アプリケータA1を製造しやすくなる。
(e)第5の工程
続いて、本体部12の切欠き部12fと蓋部14の切欠き部14cとが一致するように、蓋部14を本体部12に取り付ける。この際、突起20c1〜20c4がそれぞれ内側内壁12b1〜12b4の第2の部分12b12〜12b42に載置されているので、蓋部14を本体部12に取り付けて円錐コイルばね40が圧縮されても、円錐コイルばね40によってピストン板20が下方向に押し出されない。すなわち、ピストン板20は、筐体10(本体部12)に係止されている。従って、ピストン板20は、図11に示されるように、蓋部14とピストン板20とで円錐コイルばね40が圧縮された状態のまま、本体部12内において蓋部14側の退避位置で保持される。このように、ピストン板20が筐体10(本体部12)に係止され、蓋部14とピストン板20とで円錐コイルばね40が圧縮された状態を、以下では「係止状態」という。
このように、退避位置でピストン板20を筐体10(本体部12)に係止することを、コッキング(cocking)ともいう。本実施形態では、円錐コイルばね40の中心線方向から見て円錐コイルばね40を構成する金属線が重なり合っていないので、ピストン板20が筐体10に係止(コッキング)された状態においてピストン板20と蓋部14との間に挟まれる円錐コイルばね40は、線径と同程度の高さとなる(図11参照)。
以上の工程を経て、アプリケータA1の組み立てが完了する。従って、アプリケータA1が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、円錐コイルばね40は縮まった状態のままである。
[1.3]アプリケータの使用方法
続いて、アプリケータA1の使用方法について説明する。まず、皮膚のうち薬剤等を適用したい箇所に、マイクロニードル32が皮膚に向かうようにアプリケータA1を位置決めする。この位置決めされた状態を保持したまま、解除部材50を貫通孔Hの他端側にスライドさせる。これにより、解除部材50の突出部50dが、ピストン板20の突起20c3を溝部G3に向けて押す。これに伴い、ピストン板20が回転する。
第2の部分12b22の上端は、溝部G1のうち蓋部14側の端部(溝部G1の上端部)に隣接しているので、ピストン板20が回転すると、突起20c1は第2の部分12b22の上端上をスライドして溝部G1に達する。第2の部分12b32の上端は、溝部G2のうち蓋部14側の端部(溝部G2の上端部)に隣接しているので、ピストン板20が回転すると、突起20c2は第2の部分12b32の上端上をスライドして溝部G2に達する。第2の部分12b42の上端は、溝部G3のうち蓋部14側の端部(溝部G3の上端部)に隣接しているので、ピストン板20が回転すると、突起20c3は第2の部分12b32の上端上をスライドして溝部G3に達する。第2の部分12b12の上端は、溝部G4のうち蓋部14側の端部(溝部G4の上端部)に隣接しているので、ピストン板20が回転すると、突起20c4は第2の部分12b12の上端上をスライドして溝部G4に達する。その結果、筐体10(本体部12)に対するピストン板20の係止(コッキング)が解除される。そして、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、ピストン板20が溝部G1〜G4(本体部12の中心軸)に沿って本体部12内を外方(皮膚)に向かって移動し、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する。このとき、突起20c1〜20c4は底壁12dと当接するので、ピストン板20が筐体10(本体部12)の外へ飛び出すことが防止される。
マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突すると、マイクロニードル32が皮膚に穿刺される。この際のマイクロニードル32(ピストン板20)の速度は、4m/s〜30m/sでもよいし、4m/s〜15m/sでもよいし、7m/s〜15m/sでもよい。マイクロニードル32が皮膚に4m/s〜30m/sの速度で衝突するように構成されていると、マイクロニードル32を適切に皮膚に穿刺でき、それにより、薬剤等を動物の体内に十分に移行できる。
[1.4]作用
第1実施形態に係るアプリケータA1の作用について説明する。
(A)以上のような第1実施形態では、使用者が解除部材50をスライドさせるだけでアプリケータA1による皮膚の穿刺が行われる。従って、誰がアプリケータA1を使用しても、円錐コイルばね40の付勢力がピストン板20を介してマイクロニードル32に伝わり、一定の衝撃力をもってマイクロニードル32により皮膚が穿刺されるので、皮膚の穿刺が確実に行える(穿刺の再現性が高まる)。マイクロニードル32が皮膚を穿刺すると、マイクロニードル32に付着しているコーティングCの活性成分が体内に投与され、皮膚を通して活性成分が体内に移行することとなる。
(B)第1実施形態に係るアプリケータA1では、ピストン板20が筐体10に係止された係止状態を、解除部材50によって解除する。それにより、円錐コイルばね40の付勢力がピストン板20に作用して、ピストン板20が溝部G1〜G4に沿って本体部12内を移動し、皮膚の作用位置に到達する。そのため、本体部12の軸方向(アプリケータA1の高さ方向)に延びるシャフトなどの部材をピストン板20に取り付ける必要がなくなる。また、第1実施形態に係るアプリケータA1では、ピストン板20に付勢力を付与するために円錐コイルばね40を用いている。一般的な円筒形コイルばねと比較して、円錐コイルばね40は、圧縮時の高さが極めて小さくなる。以上により、アプリケータA1自体の高さを小さくすることができ、アプリケータA1の軽量化が図られる。
(C)薬剤等の種類によっては、マイクロニードル32を皮膚に衝突させた後にアプリケータA1を皮膚上に長時間保持させる必要が生ずる。このような場合でも、小型化及び軽量化された第1実施形態に係るアプリケータA1を用いると、使用者はアプリケータA1を皮膚につけたまま衣類を着用したり制限なく移動したりできるようになる。しかも、第1実施形態に係るアプリケータA1は小型であるので、使用者がこのように自由に行動した場合であっても、アプリケータA1が他の物体(障害物)に衝突して、マイクロニードル32が皮膚から抜けたり、マイクロニードル32が折れて皮膚内に残ったりする虞が極めて低い。
(D)従来の大型のアプリケータを用いる場合には、取り扱いに手間取ることがあったり、その外観の大きさから使用者に恐怖心が生じたりする虞があった。しかしながら、小型化及び軽量化された第1実施形態に係るアプリケータA1を用いると、簡単に取り扱うことができると共に、使用者に与えうる恐怖心も大きく低減できる。
(E)第1実施形態に係るアプリケータA1では、解除部材50が筐体10(本体部12)の側方(外周面)に位置しているので、解除部材50が本体部12の軸方向(アプリケータA1の高さ方向)に延びることが抑制される。そのため、アプリケータA1自体の高さをさらに小さくすることができる。
[2]第2実施形態
続いて、図12〜図15を参照して、第2実施形態に係るアプリケータA2について説明する。第2実施形態に係るアプリケータA2は、主として、本体部12に切欠き部12fが設けられていない点と、蓋部14に切欠き部14cが設けられていないが貫通孔14dが設けられている点と、解除部材50の構成の点とで、第1実施形態に係るアプリケータA1と相違する。以下では、第1実施形態に係るアプリケータA1との相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
貫通孔14dは、図12及び図13に示されるように、天板14aの周縁に沿って延びる円弧状を呈しており、筐体10の内外を連通する。この貫通孔14dによって解除部材50の移動量及び移動位置が決定する。そのため、蓋部14を本体部12に取り付ける際には、解除部材50が所望の位置を移動できるよう、蓋部14が本体部12に対して位置決めされる。なお、解除部材50の移動により、筐体10(本体部12)に対するピストン板20の係止を解除することができれば、貫通孔14dは、必ずしも円弧状を呈していなくてもよく、直線状などの他の形状をとりうる。
解除部材50は、図12及び図13に示されるように、内側部50aと、外側部50bと、連結部50cとを有する。内側部50aの構成は第1実施形態に係るアプリケータA1と同じであるため、説明を省略する。外側部50bは、円弧状を呈する平板であり、蓋部14の上面に位置している。外側部50bの上面には、V字形状を呈する突条が複数設けられている。これらの突条は、外側部50bの周方向に沿って並んでいる。これらの突条により、解除部材50をスライドさせる方向が使用者に視覚的に理解されやすくなっていると共に、使用者が指で解除部材50を操作する際の滑り止め機能が果たされる。外側部50bの幅は、外側部50bが貫通孔14dを通過しないよう、貫通孔14dの幅よりも大きく設定することができる。
連結部50cは、内側部50aの上面に立設された一対の円筒体50c1と、外側部50bの下面に立設された一対の丸棒50c2とを有する。各丸棒50c2が、対応する円筒体50c1にそれぞれ挿入されて一体化されることで、連結部50cとなる。つまり、第2実施形態に係るアプリケータA2の解除部材50は、内側部50aに円筒体50c1及び突条50eが設けられた第1の部材と、外側部50bに丸棒50c2及び複数の突条が設けられた第2の部材との組み合わせにより構成される。解除部材50の移動が阻害されないよう、連結部50cの長さは貫通孔14dの長さ(天板14aの厚さ)よりも長く設定することができる。
アプリケータA2を製造する際には、まず、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第1〜第4の工程と同様の各工程を経て、蓋部14及び解除部材50の外側部50b以外が組み立てられる。
続いて、解除部材50の突出部50dが溝部G3に向けて移動できるよう、解除部材50が貫通孔14dの一端側に位置するように蓋部14を本体部12に対して位置決めする。この状態で、貫通孔14dに円筒体50c1を挿入し、蓋部14を本体部12に取り付ける。この際、突起20c1〜20c4がそれぞれ内側内壁12b1〜12b4の第2の部分12b12〜12b42に載置されているので、蓋部14を本体部12に取り付けて円錐コイルばね40が圧縮されても、円錐コイルばね40によってピストン板20が下方向に押し出されない。すなわち、ピストン板20は、筐体10(本体部12)に係止されている。従って、ピストン板20は、図14(b)に示されるように、蓋部14とピストン板20とで円錐コイルばね40が圧縮された状態のまま、本体部12内において蓋部14側の退避位置で保持される。次に、各丸棒50c2を対応する円筒体50c1にそれぞれ挿入して、連結部50cとして一体化する。
以上の工程を経て、アプリケータA2が製造される。従って、アプリケータA2が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、円錐コイルばね40は縮まった状態のままである。
アプリケータA2の使用方法は、第1実施形態に係るアプリケータA1の使用方法と同様である。すなわち、解除部材50を貫通孔14dの他端側にスライドさせることにより、筐体10(本体部12)に対するピストン板20の係止が解除される。その後は、第1実施形態に係るアプリケータA1と同様に、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する(図15参照)。
以上のような第2実施形態では、第1実施形態に係るアプリケータA1の作用(A)〜(D)と同様の作用及び効果を奏する。
[3]第3実施形態
続いて、図16を参照して、第3実施形態に係るアプリケータA3について説明する。第3実施形態に係るアプリケータA3は、解除部材50の外側部50bの形状が第2実施形態に係るアプリケータA2と異なる。具体的には、外側部50bは、台形状を呈する平板である。外側部50bの上面のうち長辺側には、長辺に沿って延びる矢印状体が浮き出るように設けられている。外側部50bの上面のうち短辺側には、短辺及び斜辺に沿って延び、C字形状を呈する第1の突条と、当該第1の突条の内側において短辺側から長辺側に向けて延びる第2の突条とが設けられている。これらの突条により、解除部材50をスライドさせる方向が使用者に視覚的に理解されやすくなっていると共に、使用者が指で解除部材50を操作する際の滑り止め機能が果たされる。アプリケータA3の完成状態において、外側部50bの長辺側が蓋部14の周縁側に位置し、外側部50bの短辺側が蓋部14の中心側に位置する。
以上のような第3実施形態に係るアプリケータA3は、第2実施形態に係るアプリケータA2と同様の作用及び効果を奏する。
[4]第4実施形態
続いて、図17及び図18を参照して、第4実施形態に係るアプリケータA4について説明する。第4実施形態に係るアプリケータA4は、解除部材50の形状が第2実施形態に係るアプリケータA2と異なる。具体的には、外側部50b及び連結部50cの代わりに、矩形状を呈する板状体50fが内側部50aの上面に複数突設されている。これらの板状体50fは、所定間隔で離間しつつ内側部50aの周方向に沿って並んでいる。板状体50fの長さは、アプリケータA4の完成状態において、その上端が蓋部14の上面よりも上に位置するように設定されている。つまり、アプリケータA4の完成状態において、板状体50fは貫通孔14dを挿通されており、その上端部は蓋部14の外表面に露出している。そのため、板状体50fの上端部により、使用者が指で解除部材50を操作する際の滑り止め機能が果たされる。
第4実施形態に係るアプリケータA4は、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第1〜第5の工程と同様の各工程を経て、組み立てられる(図19参照)。従って、アプリケータA4が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、円錐コイルばね40は縮まった状態のままである。
アプリケータA4の使用方法は、第1実施形態に係るアプリケータA1の使用方法と同様である。すなわち、解除部材50を貫通孔14dの他端側にスライドさせることにより、筐体10(本体部12)に対するピストン板20の係止が解除される。その後は、第1実施形態に係るアプリケータA1と同様に、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する(図20参照)。
以上のような第4実施形態に係るアプリケータA4は、第2実施形態に係るアプリケータA2と同様の作用及び効果を奏する。
[5]第5実施形態
続いて、図21及び図22を参照して、第5実施形態に係るアプリケータA5について説明する。第5実施形態に係るアプリケータA5は、解除部材50の外側部50bの形状が第1実施形態に係るアプリケータA1と異なる。具体的には、外側部50bは、第1の部材50b1と、第2の部材50b2とを有している。第1の部材50b1は、本体部12の外周面に沿って周方向に延びる曲板であり、断面円弧状を呈している。第2の部材50b2は、円弧状を呈する平板である。第2の部材50b2は、第1の部材50b1の上端から筐体10(本体部12)の中心側に向けて水平に延びている。すなわち、外側部50bは、本体部12の外周面から蓋部14の上面にかけて延びている。そのため、外側部50bの断面は、L字形状を呈している。使用者が指で解除部材50を操作する際の滑り止め機能を発揮するよう、外側部50bの表面は、凹凸面であってもよいし、粗面化されていてもよい。
以上のような第5実施形態に係るアプリケータA5は、第2実施形態に係るアプリケータA2と同様の作用及び効果を奏する。
[6]第6実施形態
続いて、図23〜図26を参照して、第6実施形態に係るアプリケータA6について説明する。第6実施形態に係るアプリケータA6は、主として、本体部12に切欠き部12fが設けられていない点と、蓋部14及び解除部材50の構成の点とで、第1実施形態に係るアプリケータA1と異なる。以下では、第6実施形態に係るアプリケータA6と第1実施形態に係るアプリケータA1との相違点について主として説明し、重複する説明を省略する。
蓋部14には、1つの貫通孔14dと、一対の貫通孔14eとが設けられている。これらの貫通孔14d,14eは、天板14aの周縁に沿って延びる円弧状を呈しており、筐体10の内外を連通する。一対の貫通孔14eは、天板14aの中心に関して点対称となるように位置しており、貫通孔14dは、周方向において一対の貫通孔14eの間に位置している。これらの貫通孔14d,14eによって解除部材50の移動量及び移動位置が決定する。そのため、蓋部14を本体部12に取り付ける際には、解除部材50が所望の位置を移動できるよう、蓋部14が本体部12に対して位置決めされる。
解除部材50は、内側部50aと、外側部50bとを有する。内側部50aは、四角柱状を呈しており、貫通孔14dに挿通されている。内側部50aは、後述する外側部50bの基部50b1の下面に突設されており、周方向において後述する一対のフック50b2の間に位置している。内側部50aの下端は、天板14aの下面よりも下方に位置している。すなわち、内側部50aの下端部は、筐体10(本体部12)内に位置している。
外側部50bは、円板状を呈する基部50b1と、一対のフック50b2と、基部50b1に設けられた円柱状を呈する突起50b3と、つまみ部50b4と、つまみ部50b4に設けられた貫通孔50b5とを有する。基部50b1は、蓋部14の上面(外表面)上に配置されている。
一対のフック50b2は、基部50b1の中心軸に関して点対称となるように基部50b1の下面に突設されている。フック50b2は、所定間隔をもって離間すると共に互いに対向する一対のロッドによって構成されている。一対のロッドの先端(下端)は、他方のロッドとは離れる側に突出する突出部を有している。各突出部は、先端(下端)に向かうにつれて先細りとなっており、錐体状を呈している。突出部の先端によって構成される一対のロッドの幅は、蓋部14の貫通孔14eの開口幅よりも小さく設定されている。突出部の基端によって構成される一対のロッドの幅は、蓋部14の貫通孔14eの開口幅よりも大きく設定されている。
一対のフック50b2がそれぞれ蓋部14の一対の貫通孔14eに挿通されることで、外側部50b(基部50b1)が蓋部14に取り付けられる。外側部50b(基部50b1)と蓋部14との取り付けの際、フック50b2の一対のロッドの先端側は、貫通孔14eと当接して互いに近づきあう。ロッドの突出部が貫通孔14eを通過できるまでロッドの先端側が撓むと、ロッドの突出部が筐体10内に移動し、撓んだロッドが元の形状に戻る。その結果、ロッドの突出部と蓋部14とが係合し、一対の貫通孔14eに沿って一対のフック50b2が移動可能となる。一対の貫通孔14eは天板14aの周縁に沿って延びる円弧状を呈しているため、外側部50b(基部50b1)は筐体10(本体部12)の中心を軸として回転可能となる。
外側部50b(基部50b1)と蓋部14との取り付けの際、内側部50aも貫通孔14d内に挿通される。外側部50b(基部50b1)が筐体10(本体部12)の中心を軸として回転すると、内側部50aも回転して貫通孔14d内を移動する。
突起50b3は、基部50b1の上面で且つ周縁近傍に配置されている。つまみ部50b4は、半円状を呈する板状体である。つまみ部50b4は、基部50b1上に配置されている。つまみ部50b4の直線状を呈する基端は、基部50b1に対して旋回可能に取り付けられている。より具体的には、つまみ部50b4は、筐体10(本体部12)の軸方向と交差する方向を中心に旋回可能である。従って、つまみ部50b4は、基部50b1と重なり基部50b1の上面の半分を覆う倒伏状態と、基部50b1に対して略直立する起立状態とをとる。
貫通孔50b5は、つまみ部50b4の周縁近傍に配置されている。貫通孔50b5は、つまみ部50b4が倒伏状態であるときに、基部50b1上の突起50b3と係合する。貫通孔50b5と突起50b3とが係合しているときは、アプリケータA6の使用者がつまみ部50b4をつまむことができないため、アプリケータA6の意図しない動作を防ぐことができる。一方、貫通孔50b5と突起50b3との係合を解除すると、つまみ部50b4を旋回して起立状態にすることができる。
第6実施形態に係るアプリケータA6を製造する際には、まず、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第1及び第3の工程と同様の各工程を経て、ピストン板20が本体部12に載置される(図26参照)。このとき、ピストン板20の突起20c2と内側内壁12b3の第1の部分12b31との間を離間させておく。
続いて、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第4の工程と同様の工程を経て、円錐コイルばね40がピストン板20の上面に載置される。
続いて、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第5の工程と同様の工程を経て、蓋部14が本体部12に取り付けられる。このとき、解除部材50の内側部50aが溝部G2に向けて移動できるよう、貫通孔14dが第3の内側内壁12b3の第1の部分12b31及び溝部G2の上方に位置するように蓋部14が本体部12に対して位置決めされる。
続いて、内側部50aを貫通孔14d内に挿通すると共に、一対のフック50b2をそれぞれ蓋部14の一対の貫通孔14e内に挿通して、解除部材50を蓋部14に取り付ける。このとき、内側部50aの先端部(下端部)を、ピストン板20の突起20c3と内側内壁12b3の第1の部分12b31との間の隙間に位置させる(図26参照)。
以上の工程を経て、アプリケータA6が製造される。従って、アプリケータA6が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、円錐コイルばね40は縮まった状態のままである。
アプリケータA6を使用する際には、皮膚のうち薬剤等を適用したい箇所に、マイクロニードル32が皮膚に向かうようにアプリケータA6を位置決めする。この位置決めされた状態を保持したまま、解除部材50における貫通孔50b5と突起50b3との係合を解除し、つまみ部50b4を旋回して起立状態にする。次に、起立状態のつまみ部50b4を捻り、筐体10(本体部12)の軸を中心として解除部材50を回転させる。これにより、解除部材50の内側部50aが、貫通孔14dの一端から他端へと移動して、ピストン板20の突起20c2を溝部G2に向けて押す。これに伴い、ピストン板20が回転する。すなわち、解除部材50(基部50b1)の回転力が内側部50aを介してピストン板20に伝達される。その後は、第1実施形態に係るアプリケータA1と同様に、筐体10(本体部12)に対するピストン板20の係止が解除され、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、ピストン板20が溝部G1〜G4(本体部12の中心軸)に沿って本体部12内を外方(皮膚)に向かって移動し、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する。
以上のような第6実施形態では、使用者が、解除部材50のつまみ部50b4を起立状態に旋回して捻るだけで、アプリケータA6による皮膚の穿刺が行われる。従って、誰がアプリケータA6を使用しても、円錐コイルばね40の付勢力がピストン板20を介してマイクロニードル32に伝わり、一定の衝撃力をもってマイクロニードル32により皮膚が穿刺されるので、皮膚の穿刺が確実に行える(穿刺の再現性が高まる)。マイクロニードル32が皮膚を穿刺すると、マイクロニードル32に付着しているコーティングCの活性成分が体内に投与され、皮膚を通して活性成分が体内に移行することとなる。
第6実施形態に係るアプリケータA6では、ピストン板20が筐体10に係止された係止状態を、解除部材50によって解除する。それにより、円錐コイルばね40の付勢力がピストン板20に作用して、ピストン板20が溝部G1〜G4に沿って本体部12内を移動し、皮膚の作用位置に到達する。そのため、本体部12の軸方向(アプリケータA6の高さ方向)に延びるシャフトなどの部材をピストン板20に取り付ける必要がなくなる。また、第6実施形態に係るアプリケータA6では、ピストン板20に付勢力を付与するために円錐コイルばね40を用いている。一般的な円筒形コイルばねと比較して、円錐コイルばね40は、圧縮時の高さが極めて小さくなる。以上により、アプリケータA6自体の高さを小さくすることができ、アプリケータA6の軽量化が図られる。
第6実施形態に係るアプリケータA6では、つまみ部50b4が、筐体10(本体部12)の軸方向と交差する方向を中心に旋回可能となるように基部50b1に対して取り付けられている。そのため、この場合、アプリケータA6による皮膚への穿刺を行おうとするときには、つまみ部50b4を旋回して基部50b1に対して起立した状態(起立状態)にすればよい。これに対し、アプリケータA6を皮膚上に保持させるときには、つまみ部50b4を基部50b1に対して寝た状態(倒伏状態)にすればよい。そのため、解除部材50による係止状態の解除をつまみ部50b4により簡便に行えると共に、アプリケータA6を皮膚上に保持させる場合にはつまみ部50b4を倒伏状態とすることでアプリケータA6の高さを小さくすることができる。
第6実施形態に係るアプリケータA6では、第1実施形態に係るアプリケータA1の作用(C),(D)と同様の作用及び効果を奏する。
[7]第7実施形態
[7.1]アプリケータの構成
続いて、図27〜図29を参照して、第7実施形態に係るアプリケータA7の構成を説明する。説明中、「上」との語は図27〜図29の上方向に対応しており、「下」との語は図27〜図29の下方向に対応している。すなわち、上下方向は、アプリケータA7の高さ方向に対応している。
アプリケータA7は、ヒト等の動物の皮膚を通して薬剤等の活性成分を動物の体内に移行するための装置である。アプリケータA7は、筐体110と、ピストン板120と、マイクロニードルアレイ30と、円錐コイルばね40とを備える。
筐体110は、内側本体部112と、外側本体部114と、蓋部116とを有する。筐体110の強度や材質は、第1実施形態に係るアプリケータA1の筐体10と同様としてもよい。
内側本体部112は、図28及び図29に示されるように、中心軸が上下方向に沿って延びる円筒形状を呈している。内側本体部112は、円筒体112aと、円筒体112aの内周面に設けられた案内部112b〜112dと、円筒体112aの外周面に設けられた円環状を呈する鍔部材112eとを有する。円筒体112aの内径は、ピストン板120が内部を上下方向に移動できるよう、後述する突起120c1〜120c3を含むピストン板120の外径と同程度か、それよりも若干大きくなるように設定することができる。
案内部112b〜112dは、内側本体部112の上端側(蓋部14側)から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。すなわち、案内部112bと案内部112cとは周方向において所定間隔をもって離間しており、案内部112cと案内部112dとは周方向において所定間隔をもって離間しており、案内部112dと案内部112bとは周方向において所定間隔をもって離間している。ピストン板120が円筒体112aの内部を上下方向に移動できるよう、上下方向から見て案内部112b〜112dに外接する仮想円の径が、ピストン板120の後述する本体120aの外径と同程度か、それよりも若干大きくなるように、案内部112b〜112dの突出高さを設定することができる。ただし、ピストン板120の後述する突起120c1〜120c3が案内部112b〜112dを超えて移動しないよう、上下方向から見て案内部112b〜112dに外接する仮想円の径が、後述する突起120c1〜120c3を含むピストン板120の外径よりも小さくなるように、案内部112b〜112dの突出高さを設定することができる。
案内部112bは、上下方向に直線状に延びる突条112b1〜112b3と、周方向に直線状に延びる突条112b4,112b5とを含む。突条112b1〜112b3は、内側本体部112の上端側(蓋部14側)から見て時計回りにこの順で配置されている。
突条112b1の上端は、円筒体112aの上端と略一致している。突条112b1の下端は、上下方向における円筒体112aの中央部に位置している。突条112b2の上端は、上下方向における円筒体112aの中央部で且つ突条112b1の下端と同程度の高さに位置している。突条112b2の下端は、円筒体112aの下端と略一致している。突条112b3の上端は、円筒体112aの上端と略一致している。突条112b3の下端は、円筒体112aの下端と略一致している。
突条112b4,112b5は、内側本体部112の上端側(蓋部14側)から見て時計回りにこの順で配置されている。突条112b4の一端は、突条112b1の下端と一体的に接続されている。突条112b4の他端は、突条112b2の上端と一体的に接続されている。突条112b5の一端は、突条112b2の下端と一体的に接続されている。突条112b5の他端は、突条112b3の下端と一体的に接続されている。
このように配置された突条112b1〜112b5により、案内部112bは、周方向に延びる直線状の溝部G111と、上下方向に延びる直線状の溝部G112とが直交した溝体G110を構成している。当該溝体G110は、内側本体部112の外周面側から見て、L字形状を呈している。
案内部112cは、上下方向に直線状に延びる突条112c1〜112c3と、周方向に直線状に延びる突条112c4,112c5とを含む。突条112c1〜112c3は、内側本体部112の上端側(蓋部14側)から見て時計回りにこの順で配置されている。
突条112c1の上端は、円筒体112aの上端と略一致している。突条112c1の下端は、上下方向における円筒体112aの中央部に位置している。突条112c2の上端は、上下方向における円筒体112aの中央部で且つ突条112c1の下端と同程度の高さに位置している。突条112c2の下端は、円筒体112aの下端と略一致している。突条112c3の上端は、円筒体112aの上端と略一致している。突条112c3の下端は、円筒体112aの下端と略一致している。
突条112c4,112c5は、内側本体部112の上端側(蓋部14側)から見て時計回りにこの順で配置されている。突条112c4の一端は、突条112c1の下端と一体的に接続されている。突条112c4の他端は、突条112c2の上端と一体的に接続されている。突条112c5の一端は、突条112c2の下端と一体的に接続されている。突条112c5の他端は、突条112c3の下端と一体的に接続されている。
このように配置された突条112c1〜112c5により、案内部112cは、周方向に延びる直線状の溝部G121と、上下方向に延びる直線状の溝部G122とが直交した溝体G120を構成している。当該溝体G120は、内側本体部112の外周面側から見て、L字形状を呈している。
案内部112dは、上下方向に直線状に延びる突条112d1〜112d3と、周方向に直線状に延びる突条112d4,112d5とを含む。突条112d1〜112d3は、内側本体部112の上端側(蓋部14側)から見て時計回りにこの順で配置されている。
突条112d1の上端は、円筒体112aの上端と略一致している。突条112d1の下端は、上下方向における円筒体112aの中央部に位置している。突条112d2の上端は、上下方向における円筒体112aの中央部で且つ突条112d1の下端と同程度の高さに位置している。突条112d2の下端は、円筒体112aの下端と略一致している。突条112d3の上端は、円筒体112aの上端と略一致している。突条112d3の下端は、円筒体112aの下端と略一致している。
突条112d4,112d5は、内側本体部112の上端側(蓋部14側)から見て時計回りにこの順で配置されている。突条112d4の一端は、突条112d1の下端と一体的に接続されている。突条112d4の他端は、突条112d2の上端と一体的に接続されている。突条112d5の一端は、突条112d2の下端と一体的に接続されている。突条112d5の他端は、突条112d3の下端と一体的に接続されている。
このように配置された突条112d1〜112d5により、案内部112dは、周方向に延びる直線状の溝部G131と、上下方向に延びる直線状の溝部G132とが直交した溝体G130を構成している。当該溝体G130は、内側本体部112の外周面側から見て、L字形状を呈している。
鍔部材112eは、上下方向において、円筒体112aの中央部に位置している。
外側本体部114は、中心軸が上下方向に沿って延びる円筒形状を呈している。外側本体部114は、円筒体114aと、円筒体114aの下端に位置する円環状の鍔部材114bと、突条114cとを有する。図29に示されるように、外側本体部114のうち鍔部材114bから上端までの直線距離d1は、内側本体部112のうち鍔部材112eから上端までの直線距離d2よりも長くなるように設定されている。
鍔部材114bの内縁は、円筒体114aの内周面よりも内側に突出している。鍔部材114bの内径の大きさは、円筒体112aの外径以上で且つ鍔部材112eの外径未満となるように設定されている。そのため、アプリケータA7の完成状態において、内側本体部112の鍔部材112eが外側本体部114の鍔部材114bに当接して係止されない限りにおいて、内側本体部112は、鍔部材114bを通って外側本体部114内を上下方向に移動可能である。
突条114cは、円筒体114aの外周面で且つ上端側に位置している。突条114cは、円筒体114aの外周面において螺旋状に巻回しており、雄ねじを構成している。
蓋部116は、円形状を呈する天板116aと、天板116aの周縁から下方に向けて延びる円筒部材116bとを有する。天板116aの下面には、下方に突出する突起116c1〜116c3が設けられている。突起116c1〜116c3は、同一半径の円周上に位置しており、上方(蓋部116の上面側)から見て時計回りにこの順で配置されている。突起116c1〜116c3は、第7実施形態において四角柱状を呈する。しかしながら、後述する窪み部120d1〜120d3との係合が可能であれば、突起116c1〜116c3は他の形状(例えば、円柱状、多角柱状、異形柱状、円錐状、多角錐状、截頭円錐状、切頭多角錐状など)を呈していてもよい。
円筒部材116bの内周面には、螺旋状に巻回する突条116dが設けられている(図28参照)。突条116dは、雌ねじを構成しており、外側本体部114の突条114c(雄ねじ)と螺合されることにより、蓋部116が外側本体部114の上端側に取り付けられる。蓋部116と外側本体部114との取り付け方法として、接着剤や接着シート等を用いて蓋部116の内周面と外側本体部114の外周面とを接着する方法を採用してもよいし、機械的に係合する(例えば、円筒体114aの上端部に係合爪を設け、円筒部材116bに係合孔を設けて、当該係合爪と当該係合孔とを嵌め合う)方法を採用してもよいし、蓋部116と外側本体部114とを圧着する(例えば、蓋部116の円筒部材116bの径を外側本体部114の外径よりも小さく設定して、蓋部116を外側本体部114に押し込む)方法を採用してもよいし、蓋部116と外側本体部114とを溶着する(例えば、円筒部材116bと円筒体114aの上端部とを加熱して溶かした後、冷却して一体化する)方法を採用してもよい。
アプリケータA7は、持ちやすく、動物(ヒトを含む)の皮膚にマイクロニードル32を適用しやすい(穿刺しやすい)形状が望ましい。そのため、外側本体部114又は蓋部116の外形は、例えば、多角形状であったり、丸みを帯びていたりしてもよい。外側本体部114又は蓋部116の表面に、窪みが設けられていたり、段差が設けられていたりしてもよい。外側本体部114又は蓋部116の表面に細かな溝を形成したり、滑り難いコーティング層を設けたりすることで、外側本体部114又は蓋部116の表面が粗面化処理されていてもよい。空気抵抗の低減や軽量化を目的として、外側本体部114又は蓋部116に貫通孔が形成されていてもよい。
ピストン板120は、内側本体部112内に収容されており、内側本体部112内において内側本体部112の中心軸に沿って上下方向に移動可能である。ピストン板120の材質は、筐体110の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質と同じであってもよい。ピストン板120は、図28及び図29に示されるように、円板状の本体120aと、本体120aの周縁から上方に向けて延びる円筒部材120bとを有する。空気抵抗の低減やピストン板120の軽量化を目的として、開口、溝又は貫通孔などが本体120aに形成されていてもよい。あるいは、ピストン板120の剛性の向上を目的として、本体120aの上面(円錐コイルばね40が配置される側の面)に突条などが設けられていてもよい。本体120aの下面(上面とは反対側の面)は、ピストン板120がマイクロニードルアレイ30に均一に作用させることを考慮して、平面状であると好ましい。しかしながら、本体120aの下面が平面以外の他の形状であってもよく、皮膚への穿刺のための各種の条件(例えば、薬剤、マイクロニードルアレイ30の形状、マイクロニードル32の高さ、マイクロニードル32の密度、穿刺速度、皮膚への衝撃力など)を考慮して、本体120aの下面の形状を適切に選択することができる。
円筒部材120bの内径は、円錐コイルばね40の最大直径D1よりも大きくなるように設定されている。円錐コイルばね40が径方向に移動したときにピストン板120から落ちないようなストッパとしての機能を円筒部材120bが発揮できれば、円筒部材120bの高さに特に制限はない。例えば、アプリケータA7の高さをできる限り小さくしたい場合には、円筒部材120bの高さを、円錐コイルばね40を構成する金属線の太さ程度に設定することができる。円錐コイルばね40のストッパが不要な場合には、ピストン板120が円筒部材120bを有していなくてもよい。ピストン板120が円筒部材120bを有していない場合であっても、円錐コイルばね40を構成する金属線が嵌まる環状溝が本体120aに形成されていれば、円錐コイルばね40のストッパの機能を環状溝によって果たすことができる。このような円錐コイルばね40のストッパがある場合、円錐コイルばね40をピストン板120の上面に配置した後に蓋部116を外側本体部114に取り付けてアプリケータA7を作成する際に、円錐コイルばね40がピストン板120に対して位置ずれしてしまうことを防止できる。
ピストン板120の周縁(外周面)には、径方向(ピストン板の厚さ方向とは交差する方向)で且つ外方に向けて突出する複数の突起(第7実施形態では3つの突起)120c1〜120c3が設けられている。突起120c1〜120c3は、上方(円錐コイルばね40が載置されるピストン板120の上面側)から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。突起120c1〜120c3は、第7実施形態において四角柱状を呈する。しかしながら、突条112b4〜112d4への係止が可能であり、溝体G110〜G130内での移動が可能であれば、突起120c1〜120c3は他の形状(例えば、円柱状、多角柱状、異形柱状、円錐状、多角錐状、截頭円錐状、切頭多角錐状など)を呈していてもよい。
突起120c1は、溝体G110内をその延在方向に沿って移動可能である。具体的には、突起120c1は、水平方向(周方向)に延びる溝部G111に沿って水平方向(周方向)に移動可能であると共に、上下方向に延びる溝部G112に沿って上下方向に移動可能である。すなわち、突起120c1は、溝部G112の上端側に位置している状態において、突条112b4の上方を水平方向に移動可能である。そのため、突起120c1は、溝部G112に隣接する突条112b4の上に載置されうる。
突起120c2は、溝体G120内をその延在方向に沿って移動可能である。具体的には、突起120c2は、水平方向(周方向)に延びる溝部G121に沿って水平方向(周方向)に移動可能であると共に、上下方向に延びる溝部G122に沿って上下方向に移動可能である。すなわち、突起120c2は、溝部G122の上端側に位置している状態において、突条112c4の上方を水平方向に移動可能である。そのため、突起120c2は、溝部G122に隣接する突条112c4の上に載置されうる。
突起120c3は、溝体G130内をその延在方向に沿って移動可能である。具体的には、突起120c3は、水平方向(周方向)に延びる溝部G131に沿って水平方向(周方向)に移動可能であると共に、上下方向に延びる溝部G132に沿って上下方向に移動可能である。すなわち、突起120c3は、溝部G132の上端側に位置している状態において、突条112d4の上方を水平方向に移動可能である。そのため、突起120c3は、溝部G132に隣接する突条112d4の上に載置されうる。
以上のように、突起120c1〜120c3が溝体G110〜G130内を案内されるのに伴い、ピストン板120は、溝部G111〜G131の延在方向(周方向)に沿って案内されうる(内側本体部112の軸を中心に回転しうる)と共に、溝部G112〜G132の延在方向(内側本体部112の軸方向)に沿って上下方向に案内されうる。
突条112b4〜112d4は、周方向において水平面と平行となるように延びていてもよいし、周方向において水平面に対して傾いていてもよい。特に、突条112b4〜112d4は、隣り合う溝部G112〜G132に向かうにつれて内側本体部112の上端寄りとなるように傾いていてもよい。この場合、突条112b4〜112d4の上に載置されている突起120c1〜120c3が溝部G112〜G132に向かう際に、突起120c1〜120c3が突条112b4〜112d4を登坂しなければならない。そのため、アプリケータA7に外部から衝撃などが加わったとしても、突起120c1〜120c3が溝G112〜G132内に意図せず移動してしまうことが防止できる。
ピストン板120の円筒部材120bには、径方向に向けて窪む窪み部120d1〜120d3が設けられている。窪み部120d1〜120d3は、同一半径の円周上に位置しており、上方(蓋部116側)から見て時計回りにこの順で配置されている。アプリケータA7の操作時に、蓋部116の突起116c1はピストン板120の窪み部120d1に係合可能であり、蓋部116の突起116c2はピストン板120の窪み部120d2に係合可能であり、蓋部116の突起116c3はピストン板120の窪み部120d3に係合可能である。
マイクロニードルアレイ30及び円錐コイルばね40は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
[7.2]アプリケータの製造方法
続いて、アプリケータA7の製造方法について説明する。まず、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第1及び第3の工程と同様の各工程を経て、ピストン板120が内側本体部112に載置される(図30参照)。
続いて、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第4の工程と同様の工程を経て、円錐コイルばね40がピストン板120の上面に載置される。
続いて、蓋部116の突条116d(雌ねじ)と外側本体部114の突条114c(雄ねじ)と螺合して、蓋部116を外側本体部114の上端側に取り付ける。蓋部116を外側本体部114に取り付けると、上下方向から見て蓋部116の突起116c1がピストン板120の窪み部120d1に対向するように位置し、蓋部116の突起116c2がピストン板120の窪み部120d2に対向するように位置し、蓋部116の突起116c3がピストン板120の窪み部120d3に対向するように位置する。
この際、突起120c1〜120c3がそれぞれ案内部112b〜112dの突条112b4〜112d4に載置されているので、蓋部116を外側本体部114に取り付けて円錐コイルばね40が圧縮されても、円錐コイルばね40によってピストン板120が下方向に押し出されない。すなわち、ピストン板120は、筐体110(内側本体部112)に係止されている。従って、ピストン板120は、図30に示されるように、蓋部116とピストン板120とで円錐コイルばね40が圧縮された状態のまま、内側本体部112内において蓋部116側の退避位置で保持される。このように、ピストン板120が筐体110(内側本体部112)に係止され、蓋部116とピストン板120とで円錐コイルばね40が圧縮された状態を、以下では「係止状態」という。このように、退避位置でピストン板120を筐体110(内側本体部112)に係止することを、コッキング(cocking)ともいう。
外側本体部114のうち鍔部材114bから上端までの直線距離d1は、内側本体部112のうち鍔部材112eから上端までの直線距離d2よりも長くなるように設定されているので、内側本体部112は、外側本体部114内を上下方向に若干移動が可能である。ただし、円錐コイルばね40によってピストン板120と蓋部116とが互いに離間する方向に付勢され、ピストン板120を介して内側本体部112の鍔部材112eが外側本体部114の鍔部材114bに当接されるので、図30に示されるように、蓋部116の下面と内側本体部112の上端との間には若干の隙間が生ずる。つまり、蓋部116は、内側本体部112及びピストン板120とは離間した離間位置にある。蓋部116が離間位置にある場合、蓋部116の突起116c1〜116c3はそれぞれ、ピストン板120の窪み部120d1〜120d3の外側にあり、ピストン板120の窪み部120d1〜120d3とは係合していない(図30参照)。アプリケータA7の完成状態(蓋部116が離間位置にある状態)においては、円錐コイルばね40は、完全に圧縮されておらず、線径よりも若干大きな高さを有する(同図参照)。
以上の工程を経て、アプリケータA7の組み立てが完了する。従って、アプリケータA7が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、円錐コイルばね40は縮まった状態のままである。
[7.3]アプリケータの使用方法
続いて、アプリケータA7の使用方法について説明する。まず、皮膚のうち薬剤等を適用したい箇所に、マイクロニードル32が皮膚に向かうようにアプリケータA7を位置決めする。この位置決めされた状態を保持したまま、蓋部116を内側本体部112に向けて押しつける。これにより、蓋部116の下面が内側本体部112の上端に当接する。つまり、蓋部116は、内側本体部112及びピストン板120に近接した近接位置まで移動する。蓋部116が近接位置にある状態では、図31に示されるように、蓋部116の突起116c1〜116c3がそれぞれピストン板120の窪み部120d1〜120d3に係合する。本実施形態では、円錐コイルばね40の中心線方向から見て円錐コイルばね40を構成する金属線が重なり合っていないので、蓋部116の下面は内側本体部112の上端に当接する結果、ピストン板120と蓋部116との間に挟まれる円錐コイルばね40は、線径と同程度の高さとなる(図31参照)。
続いて、蓋部116を内側本体部112に向けて押しつけたまま、蓋部116を周方向に回転させる。蓋部116の突起116c1〜116c3がそれぞれピストン板120の窪み部120d1〜120d3に係合しているので、突起116c1〜116c3によってピストン板120に回転力が付与される結果、ピストン板120が回転する。従って、筐体110(内側本体部112)に対するピストン板120の係止(コッキング)が解除される。その後は、第1実施形態に係るアプリケータA1と同様に、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する(図28参照)。
[7.4]作用
以上のような第7実施形態では、第1実施形態に係るアプリケータA1の作用(A)〜(D)と同様の作用及び効果を奏する。
第7実施形態に係るアプリケータA7では、円錐コイルばね40の付勢力に抗する押圧力を蓋部116に付与しつつ蓋部116を回転させない限り、突起116c1〜116c3によるピストン板120の回転が行われない。そのため、アプリケータA7の誤作動を防止することができる。
[8]第8実施形態
続いて、図27、図32〜図34を参照して、第8実施形態に係るアプリケータA8について説明する。第8実施形態に係るアプリケータA8は、蓋部116が突起116c1〜116c3に代わり噛合部116eを有していると共に、ピストン板120が窪み部120d1〜120d3の代わりに噛合部120eを有している点で、第7実施形態に係るアプリケータA7と異なる。以下では、第8実施形態に係るアプリケータA8と第7実施形態に係るアプリケータA7との相違点について主として説明し、重複する説明を省略する。
具体的には、噛合部116eは、図32及び図34に示されるように、蓋部116(天板116a)の下面に形成されている。噛合部116eは、円環状を呈すると共に、周方向に沿って鋸歯状の凹凸が並んで構成されている。噛合部120eは、図33に示されるように、ピストン板120の円筒部材120bの上端に形成されている。噛合部120eは、円環状を呈すると共に、周方向に沿って鋸歯状の凹凸が並んで構成されている。アプリケータA8の完成状態(蓋部116が外側本体部114に取り付けられた状態)において、上方から見て、噛合部116eと噛合部120eとが重なるように位置しており、これらは互いに係合(噛合)することが可能である。
第8実施形態に係るアプリケータA8は、第7実施形態に係るアプリケータA7と同様の工程を経て製造することができる。第8実施形態に係るアプリケータA8においても第7実施形態に係るアプリケータA7と同様に、蓋部116を外側本体部114に取り付けた状態で、蓋部116の下面と内側本体部112の上端との間に若干の隙間が生ずる(図35参照)。つまり、蓋部116は、内側本体部112及びピストン板120とは離間した離間位置にある。蓋部116が離間位置にある場合、蓋部116の噛合部116eとピストン板120の噛合部120eとについても離間しているので、これらは噛合していない(同図参照)。
第8実施形態に係るアプリケータA8は、第7実施形態に係るアプリケータA7と同様に操作することによって使用することができる。具体的には、皮膚のうち薬剤等を適用したい箇所に、マイクロニードル32が皮膚に向かうようにアプリケータA8を位置決めする。この位置決めされた状態を保持したまま、蓋部116を内側本体部112に向けて押しつける。これにより、蓋部116の下面が内側本体部112の上端に当接する。つまり、蓋部116は、内側本体部112及びピストン板120に近接した近接位置まで移動する。蓋部116が近接位置にある状態では、図36に示されるように、蓋部116の噛合部116eがピストン板120の噛合部120eに係合(噛合)する。
続いて、蓋部116を内側本体部112に向けて押しつけたまま、蓋部116を周方向に回転させる。蓋部116の噛合部116eとピストン板120の噛合部120eとが係合(噛合)しているので、噛合部116e,120eを介して蓋部116からピストン板120に回転力が付与される結果、ピストン板120が回転する。従って、筐体110(内側本体部112)に対するピストン板120の係止(コッキング)が解除される。その後は、第7実施形態に係るアプリケータA7と同様に、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する(図32参照)。
以上のような第8実施形態に係るアプリケータA8は、第7実施形態に係るアプリケータA7と同様の作用及び効果を奏する。
[9]第9実施形態
[9.1]アプリケータの構成
続いて、図37〜図43を参照して、第9実施形態に係るアプリケータA9の構成を説明する。説明中、「上」との語は図37、図40、図41及び図43の上方向に対応しており、「下」との語は図37、図40、図41及び図43の下方向に対応している。すなわち、上下方向は、アプリケータA9の高さ方向に対応している。
アプリケータA9は、ヒト等の動物の皮膚を通して薬剤等の活性成分を動物の体内に移行するための装置である。アプリケータA9は、筐体210と、ピストン板220と、マイクロニードルアレイ30と、円錐コイルばね40と、解除部材250と、ストッパ260とを備える。
筐体210は、図41〜図43に示されるように、中心軸が上下方向に沿って延びる円筒形状を呈する本体部212と、本体部212の上端側に配置された蓋部214と、本体部212の下端側に配置された円環状の鍔部216とを有する。筐体210の強度や材質は、第1実施形態に係るアプリケータA1の筐体10と同様としてもよい。
本体部212は、上方から見て円弧状を呈する壁部212a〜212hを有する。壁部212a〜212hは、本体部212の上端側(蓋部214側)から見て時計回りにこの順で並んでおり、隣り合う壁部と一体化されている(図42参照)。壁部212aと壁部212eとは、上方から見て本体部212の軸を中心に対向している。壁部212bと壁部212fとは、上方から見て本体部212の軸を中心に対向している。壁部212cと壁部212gとは、上方から見て本体部212の軸を中心に対向している。壁部212dと壁部212hとは、上方から見て本体部212の軸を中心に対向している。
本体部212には、壁部212a,212eに対応する位置に、それぞれ切欠き部212i,212jが設けられている。切欠き部212i,212jは、上方から見て本体部212の軸を中心に対向している。そのため、壁部212aは、切欠き部212iの存在により高さが低くなっており、上端が蓋部214に達していない。壁部212eは、切欠き部212jの存在により高さが低くなっており、上端が蓋部214に達していない。
本体部212の外周面には、壁部212c,212gに対応する位置に、それぞれ溝部212k,212lが設けられている。溝部212k,212lは、本体部212の上端寄りに位置しており、周方向に沿って延びている。
壁部212aの内面には、上下方向に延びる溝部G210が壁部212h寄りに設けられている。溝部G210は、壁部212aの下端近傍から上端にかけて延在している。つまり、壁部212aは、溝部G210の存在により下端部を除き薄肉化された第1の部分212a1と、上下方向の全域にわたって第1の部分212a1よりも厚肉の第2の部分212a2とを有する。
壁部212cの内面には、上下方向に延びる溝部G221が壁部212b寄りに設けられていると共に、周方向に延びる溝部G222が上端近傍に設けられている。溝部G221は、壁部212cの下端近傍から上端にかけて延在している。溝部G222は、壁部212bから壁部212dにかけて延在しており、溝部G221の上端と連通している。そのため、壁部212cは、溝部G221の存在により下端部を除き薄肉化された第1の部分212c1と、溝部G222の存在により上端部が薄肉化されると共に溝部G222の下方が厚肉の第2の部分212c2とを有する。
壁部212eの内面には、上下方向に延びる溝部G230が壁部212d寄りに設けられている。溝部G230は、壁部212eの下端近傍から上端にかけて延在している。つまり、壁部212eは、溝部G230の存在により下端部を除き薄肉化された第1の部分212e1と、上下方向の全域にわたって第1の部分212e1よりも厚肉の第2の部分212e2とを有する。
壁部212gの内面には、上下方向に延びる溝部G241が壁部212f寄りに設けられていると共に、周方向に延びる溝部G242が上端近傍に設けられている。溝部G241は、壁部212gの下端近傍から上端にかけて延在している。溝部G242は、壁部212fから壁部212hにかけて延在しており、溝部G241の上端と連通している。そのため、壁部212gは、溝部G241の存在により下端部を除き薄肉化された第1の部分212g1と、溝部G242の存在により上端部が薄肉化されると共に溝部G242の下方が厚肉の第2の部分212g2とを有する。
壁部212b,212d,212f,212hは、壁部212aの第2の部分212a2及び壁部212eの第2の部分212e2と同程度の厚さを有する。
蓋部214は円形状を呈する板状体である。蓋部214の下面における周縁部は、壁部212b〜212d,212f〜212hの上端と一体化されている。そのため、蓋部214は、本体部212の上端を塞いでいる。
蓋部214には、上方から見て壁部212a,212eに対応する位置に、それぞれ切欠き部214a,214bが設けられている。切欠き部214a,214bは、上方から見て蓋部214の軸を中心に対向している。切欠き部214a,214bは共に、蓋部214の中心に向けて凹んでいる。
鍔部216は、本体部212の下端から外方に向けて突出している。この鍔部216の存在により、アプリケータA9を使用するにあたり皮膚への接触面積が大きくなるので、皮膚に加わる圧力を小さくすることができる。
鍔部216の上面には、壁部212a,212eに隣接する位置に、矩形状を呈する板状の補強部材216c,216dが立設されている。補強部材216c,216dは、上方から見て本体部212の軸を中心に対向している。補強部材216cは、鍔部216の上面と壁部212aの外表面と一体化されている。補強部材216dは、鍔部216の上面と壁部212eの外表面と一体化されている。これらの補強部材216c,216dの存在により、本体部212と鍔部216との間の剛性が高められている。
鍔部216には、壁部212c,212gに隣接する位置に、貫通孔216e,216fが設けられている。貫通孔216e,216fは、上方から見て本体部212の軸を中心に対向している。
ピストン板220は、本体部212内に収容されており、本体部212内において本体部212の中心軸に沿って上下方向に移動可能である。ピストン板220の材質は、筐体210の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質と同じであってもよい。ピストン板220は、図41に示されるように、円板状の本体220aと、本体220aの周縁から上方に向けて延びる円筒部材220bとを有する。空気抵抗の低減やピストン板220の軽量化を目的として、開口、溝又は貫通孔などが本体220aに形成されていてもよい。あるいは、ピストン板220の剛性の向上を目的として、本体220aの上面(円錐コイルばね40が配置される側の面)に突条などが設けられていてもよい。本体220aの下面(上面とは反対側の面)は、ピストン板220をマイクロニードルアレイ30に均一に作用させることを考慮して、平面状であると好ましい。しかしながら、本体220aの下面が平面以外の他の形状であってもよく、皮膚への穿刺のための各種の条件(例えば、薬剤、マイクロニードルアレイ30の形状、マイクロニードル32の高さ、マイクロニードル32の密度、穿刺速度、皮膚への衝撃力など)を考慮して、本体220aの下面の形状を適切に選択することができる。
円筒部材220bの内径は、円錐コイルばね40の最大直径D1よりも大きくなるように設定されている。円錐コイルばね40が径方向に移動したときにピストン板220から脱落しないようなストッパとしての機能を円筒部材220bが発揮できれば、円筒部材220bの高さに特に制限はない。例えば、アプリケータA9の高さをできる限り小さくしたい場合には、円筒部材220bの高さを、円錐コイルばね40を構成する金属線の太さ程度に設定することができる。円錐コイルばね40のストッパが不要な場合には、ピストン板220が円筒部材220bを有していなくてもよい。ピストン板220が円筒部材220bを有していない場合であっても、円錐コイルばね40を構成する金属線が嵌まる環状溝が本体220aに形成されていれば、円錐コイルばね40のストッパの機能を環状溝によって果たすことができる。このような円錐コイルばね40のストッパがある場合、円錐コイルばね40をピストン板220の上面に配置した状態で筐体210内にこれらを取り付ける際に、円錐コイルばね40がピストン板220に対して位置ずれしてしまうことを防止できる。
ピストン板220の周縁(外周面)には、径方向(ピストン板の厚さ方向とは交差する方向)で且つ外方に向けて突出する複数の突起(第9実施形態では4つの突起)220c1〜220c4が設けられている。突起220c1〜220c4は、上方(円錐コイルばね40が載置されるピストン板220の上面側)から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。突起220c1〜220c4は、第9実施形態において台形状を呈する板状体である。しかしながら、壁部212a,212c,212e,212gの第2の部分212a2,212c2,212e2,212g2への係止が可能であり、溝部G210,G221,G230,G241内での移動が可能であれば、突起220c1〜220c4は他の形状(例えば、円柱状、多角柱状、異形柱状、円錐状、多角錐状、截頭円錐状、切頭多角錐状など)を呈していてもよい。
突起220c1は、溝部G210内をその延在方向に沿って移動可能である。突起220c2は、溝部G221内をその延在方向に沿って移動可能である。突起220c3は、溝部G230内をその延在方向に沿って移動可能である。突起220c4は、溝部G241内をその延在方向に沿って移動可能である。そのため、ピストン板220は、溝部G210,G221,G230,G241の延在方向(本体部212の軸方向)にそって上下方向に案内されうる。
突起220c1は、溝部G210の上端側に位置している状態において、切欠き部212i内を水平方向に移動可能である。そのため、突起220c1は、溝部G210に隣接する壁部212aの第2の部分212a2の上端に載置されうる。突起220c2は、溝部G221の上端側に位置している状態において、溝部G221と連通する溝部G222内を水平方向に移動可能である。そのため、突起220c2は、溝部G221に隣接する壁部212cの第2の部分212c2の上端に載置されうる。
突起220c3は、溝部G230の上端側に位置している状態において、切欠き部212j内を水平方向に移動可能である。そのため、突起220c3は、溝部G230に隣接する壁部212eの第2の部分212e2の上端に載置されうる。突起220c4は、溝部G241の上端側に位置している状態において、溝部G241と連通する溝部G242内を水平方向に移動可能である。そのため、突起220c4は、溝部G241に隣接する壁部212gの第2の部分212g2の上端に載置されうる。
壁部212a,212c,212e,212gの第2の部分212a2,212c2,212e2,212g2の上端は、周方向において水平面と平行となるように延びていてもよいし、周方向において水平面に対して傾いていてもよい。特に、第2の部分212a2,212c2,212e2,212g2が隣り合う溝部G210,G221,G230,G241に向かうにつれてその高さが高くなるように、第2の部分212a2,212c2,212e2,212g2の上端が傾いていてもよい。この場合、第2の部分212a2,212c2,212e2,212g2の上端に載置されている突起220c1〜220c4が溝部G210,G221,G230,G241に向かう際に、突起220c1〜220c4が第2の部分212a2,212c2,212e2,212g2の上端を登坂しなければならない。そのため、アプリケータA9に外部から衝撃などが加わったとしても、突起220c1〜220c4が溝部G210,G221,G230,G241内に意図せず移動してしまうことが防止できる。
マイクロニードルアレイ30及び円錐コイルばね40は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
解除部材250は、図41に示されるように、無端環状体である。解除部材250は、本体部212の外周面に沿って延びる一対の弧状部252,254と、使用者による押圧操作が行われる押圧部256,258とを有する。解除部材250の材質は、筐体210の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質と同じであってもよい。解除部材250の材質は、可撓性又は弾性を有する材質であってもよい。
弧状部252は、本体部212の壁部212cの外周面に沿って延びる帯状の板部材である。弧状部252の下端縁には、下方に突出する突起252aが突設されている。アプリケータA9の完成状態において、突起252aは、鍔部216の貫通孔216e内に挿通される。これにより、弧状部252が鍔部216に対して取り付けられ、解除部材250が筐体210に対して位置決めされる。
弧状部252には、本体部212の溝部212kに対応する位置が切り欠かれた切欠き部252bが設けられている。具体的には、切欠き部252bは、弧状部252の上端部に位置しており、下方に向けて窪むと共に上方に向けて開放されている。溝部212kは、切欠き部252bを介して外部に露出している。
弧状部254は、本体部212の壁部212gの外周面に沿って延びる帯状の板部材である。弧状部254の下端縁には、下方に突出する突起254aが突設されている。アプリケータA9の完成状態において、突起254aは、鍔部216の貫通孔216f内に挿通される。これにより、弧状部254が鍔部216に対して取り付けられ、解除部材250が筐体210に対して位置決めされる。
弧状部254には、本体部212の溝部212lに対応する位置が切り欠かれた切欠き部254bが設けられている。具体的には、切欠き部254bは、弧状部254の上端部に位置しており、下方に向けて窪むと共に上方に向けて開放されている。溝部212lは、切欠き部254bを介して外部に露出している。
押圧部256は、C字形状を呈する板状体である。押圧部256は、直線状を呈する第1〜第3の部分256a1〜256a3と、屈曲部256a4,256a5とを有している。第1の部分256a1の一端は屈曲部256a4を介して第2の部分256a2の一端と接続されており、第1の部分256a1の他端は屈曲部256a5を介して第3の部分256a3の一端と接続されている。第2の部分256a2の他端(押圧部256の一端)は、弧状部252の一端と一体的に接続されており、第3の部分256a3の他端(押圧部256の他端)は弧状部254の一端と一体的に接続されている。
第1の部分256a1の外面には、使用者による把持が行われる把持部材256bが設けられている。把持部材256bは、ブロック状を呈している。把持部材256bの側面のうち第1の部分256a1と平行な面には、階段状の段差が形成されている。第1の部分256a1の内面には、内側(本体部212)に向けて突出する突出部256cが設けられている。突出部256cは、上方から見て三角形状を呈する板状体である。アプリケータA9の完成状態において、突出部256cの斜辺は、本体部212の切欠き部212iに向かっており、屈曲部256a5から屈曲部256a4に向かうにつれて高さが高くなっている。
第1の部分256a1は、把持部材256bに押圧力が付与されておらず解除部材250が変形していない第1の状態と、把持部材256bに押圧力が付与されて解除部材250が変形した後の第2の状態とをとりうる。変形後の第2の状態では、第1の部分256a1は、第2及び第3の部分256a2,256a3に近づくと共に、屈曲部256a4,256a5がよりいっそう屈曲する。そのため、変形後の第2の状態では、第1の部分256a1は本体部212に近接し、突出部256cが本体部212の切欠き部212iを通って本体部212内に挿入された状態となる。
押圧部258は、C字形状を呈する板状体である。押圧部258は、直線状を呈する第1〜第3の部分258a1〜258a3と、屈曲部258a4,258a5とを有している。第1の部分258a1の一端は屈曲部258a4を介して第2の部分258a2の一端と接続されており、第1の部分258a1の他端は屈曲部258a5を介して第3の部分258a3の一端と接続されている。第2の部分258a2の他端(押圧部258の一端)は、弧状部252の他端と一体的に接続されており、第3の部分258a3の他端(押圧部258の他端)は弧状部254の他端と一体的に接続されている。
第1の部分258a1の外面には、使用者による把持が行われる把持部材258bが設けられている。把持部材258bは、ブロック状を呈している。把持部材258bの側面のうち第1の部分258a1と平行な面には、階段状の段差が形成されている。第1の部分258a1の内面には、内側(本体部212)に向けて突出する突出部258cが設けられている。突出部258cは、上方から見て三角形状を呈する板状体である。アプリケータA9の完成状態において、突出部258cの斜辺は、本体部212の切欠き部212jに向かっており、屈曲部258a4から屈曲部258a5に向かうにつれて高さが高くなっている。
第1の部分258a1は、把持部材258bに押圧力が付与されておらず解除部材250が変形していない第1の状態と、把持部材258bに押圧力が付与されて解除部材250が変形した後の第2の状態とをとりうる。変形後の第2の状態では、第1の部分258a1は、第2及び第3の部分258a2,258a3に近づくと共に、屈曲部258a4,258a5がよりいっそう屈曲する。そのため、変形後の第2の状態では、第1の部分258a1は本体部212に近接し、突出部258cが本体部212の切欠き部212jを通って本体部212内に挿入された状態となる。
ストッパ260は、円板状を呈する基部262と、一対のフック264a,264bと、一対のストッパ部材266a,266bと、つまみ部268を有する。基部262は、筐体210の蓋部214上に配置されている。
一対のフック264a,264bは、基部262の中心軸に関して点対称となるように基部262の下面に突設されている。一対のフック264a,264bは、先端が内側に向けて折れ曲がっており、L字形状を呈する。アプリケータA9の完成状態において、フック264aの先端は本体部212の溝部212kと係合しており、フック264bの先端は本体部212の溝部212lと係合している。基部262の周方向におけるフック264a,264bの幅は、本体部212の周方向における溝部212k,212lの幅よりも小さい。そのため、フック264a,264bは、溝部212k,212l内を周方向に移動可能である。フック264a,264bが溝部212k,212l内を移動するのに伴い、ストッパ260が基部262(本体部212)の中心軸を中心に回転する。
一対のストッパ部材266a,266bは、基部262の中心軸に関して点対称となるように基部262の周縁に突設されている。一対のストッパ部材266a,266bは、基部262の周方向において、一対のフック264a,264bの間に位置している。一対のストッパ部材266a,266bは、基部262の周縁から外方に向けて延びている。
フック264a,264bが溝部212k,212lの一端側に位置する第1の位置では、ストッパ部材266aの先端が押圧部256の第1の部分256a1に近接又は当接すると共に、ストッパ部材266bの先端が押圧部258の第1の部分258a1に近接又は当接する。そのため、押圧部256,258が押圧されても、ストッパ部材266a,266bにより押圧部256,258(第1の部分256a1,258a1)が筐体210(本体部212)に近づくことが妨げられ、解除部材250の第1の状態が保たれる。一方、フック264a,264bが溝部212k,212lの他端側に位置する第2の位置では、ストッパ部材266aの先端が押圧部256の第1の部分256a1から離間すると共に、ストッパ部材266bの先端が押圧部258の第1の部分258a1から離間する。そのため、押圧部256,258が押圧されると、ストッパ部材266a,266bに妨げられることなく押圧部256,258(第1の部分256a1,258a1)が筐体210(本体部212)に近づき、解除部材250が第2の状態に変形する。
つまみ部268は、基部262の上面に設けられている。第9実施形態においては、つまみ部268は、基部262の中心軸を中心として放射状に延びる3つの突条によって構成されているが、使用者が指を引っ掛けてストッパ260を回転させることができれば、つまみ部268として異なる構成を採用してもよい。例えば、つまみ部268は、一つ以上の突条であってもよいし、基部262の上面に設けられた一つ以上の凹部であってもよいし、基部262を貫通する一つ以上の貫通孔であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
アプリケータA9は、持ちやすく、動物(ヒトを含む)の皮膚にマイクロニードル32を適用しやすい(穿刺しやすい)形状が望ましい。そのため、解除部材250の表面又はストッパ260の表面に、窪みが設けられていたり、段差が設けられていたりしてもよい。解除部材250の表面又はストッパ260の表面に細かな溝を形成したり、滑り難いコーティング層を設けたりすることで、これらの表面が粗面化処理されていてもよい。空気抵抗の低減や軽量化を目的として、筐体210、解除部材250又はストッパ260に貫通孔が形成されていてもよい。
[9.2]アプリケータの製造方法
続いて、アプリケータA9の製造方法について説明する。まず、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第1、第4及び第3の工程と同様の各工程をこの順に経て、ピストン板220が本体部212内に搭載される(図44参照)。
この際、突起220c1〜220c4がそれぞれ壁部212a,212c,212e,212gの第2の部分212a2,212c2,212e2,212g2に載置されているので、蓋部214とピストン板220とで円錐コイルばね40が圧縮されても、円錐コイルばね40によってピストン板220が下方向に押し出されない。すなわち、ピストン板220は、筐体210(本体部212)に係止されている。従って、ピストン板220は、図44に示されるように、蓋部214とピストン板220とで円錐コイルばね40が圧縮された状態のまま、本体部212内において蓋部214側の退避位置で保持される。このように、ピストン板220が筐体210(本体部212)に係止され、蓋部214とピストン板220とで円錐コイルばね40が圧縮された状態を、以下では「係止状態」という。
このように、退避位置でピストン板220を筐体210(本体部212)に係止することを、コッキング(cocking)ともいう。本実施形態では、円錐コイルばね40の中心線方向から見て円錐コイルばね40を構成する金属線が重なり合っていないので、ピストン板220が筐体210に係止(コッキング)された状態においてピストン板220と蓋部214との間に挟まれる円錐コイルばね40は、線径よりも若干大きな高さとなる(図44参照)。ただし、ピストン板220の構成によっては、ピストン板220が筐体210に係止(コッキング)された状態においてピストン板220が蓋部214に極めて近接し、ピストン板220と蓋部214との間に挟まれる円錐コイルばね40が線径と同程度の高さにもなりうる。
続いて、突起252a,254aがそれぞれ貫通孔216e,216fに挿通するように、解除部材250を筐体210(本体部212)に取り付ける。続いて、フック264a,264bをそれぞれ溝部212k,212lに係合させて、フック264a,264bが溝部212k,212lの一端側に位置するようにストッパ260を筐体210(本体部212)に取り付ける。
以上の工程を経て、アプリケータA9の組み立てが完了する。従って、アプリケータA9が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、円錐コイルばね40は縮まった状態のままである。また、アプリケータA9が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、ストッパ部材266a,266bにより押圧部256,258(第1の部分256a1,258a1)が筐体210(本体部212)に近づくことが妨げられるので、解除部材250の第1の状態が保たれる(図38参照)。すなわち、ストッパ部材266a,266bにより、突出部256cが突起220c1と接触することが防止されると共に、突出部258cが突起220c3と接触することが防止される。
[9.3]アプリケータの使用方法
続いて、アプリケータA9の使用方法について説明する。まず、つまみ部268を摘まんでストッパ260を回転させ、フック264a,264bを溝部212k,212lの他端側に位置させる(図45参照)。これにより、押圧部256,258の筐体210側(本体部212側)への移動が可能となる。このとき、図46に示されるように、突出部256cの斜辺は突起220c1と対向しており、突出部258cの斜辺は突起220c3と対向している。
続いて、皮膚のうち薬剤等を適用したい箇所に、マイクロニードル32が皮膚に向かうようにアプリケータA9を位置決めする。この位置決めされた状態を保持したまま、押圧部256,258を筐体210(本体部212)に向けて押しつける。これにより、突出部256cの斜辺が突起220c1と当接し、突出部258cの斜辺が突起220c3と当接する。押圧部256,258を筐体210(本体部212)に向けてさらに押しつけると、突起220c1が突出部256cの斜辺上を滑るように斜辺の法線方向に押し出されると共に、突起220c3が突出部258cの斜辺上を滑るように斜辺の法線方向に押し出される。これに伴い、図47に示されるように、ピストン板220に回転力が付与される結果、ピストン板220が回転する。従って、筐体210(本体部212)に対するピストン板220の係止(コッキング)が解除される。その後は、第1実施形態に係るアプリケータA1と同様に、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する(図40参照)。
[9.4]作用
以上のような第9実施形態では、第1実施形態に係るアプリケータA1の作用(A)〜(D)と同様の作用及び効果を奏する。
第9実施形態に係るアプリケータA9では、ストッパ260のストッパ部材266a,266bが、解除部材250(押圧部256,258)の駆動を規制して、押圧部256,258が切欠き部212i,212jを通過して係止状態にある突起220c1〜220c4に接触することが防止される。そのため、ストッパ260によってアプリケータA9の誤作動を防止することができる。また、使用する際はストッパ260を回転させるだけでよいので、簡単な操作により使用の準備を完了することができる。
[10]第10実施形態
[10.1]アプリケータの構成
続いて、図48〜図50を参照して、第10実施形態に係るアプリケータA10の構成を説明する。説明中、「上」との語は図48〜図50の上方向に対応しており、「下」との語は図48〜図50の下方向に対応している。すなわち、上下方向は、アプリケータA10の高さ方向に対応している。
アプリケータA10は、ヒト等の動物の皮膚を通して薬剤等の活性成分を動物の体内に移行するための装置である。アプリケータA10は、筐体310と、ピストン板320と、マイクロニードルアレイ30と、円錐コイルばね40と、解除部材350とを備える。
筐体310は、図48〜図50に示されるように、中心軸が上下方向に沿って延びる円筒形状を呈する本体部312と、本体部312の上端側に配置された蓋部314と、本体部312の下端側に配置された円環状の鍔部316とを有する。筐体310の強度や材質は、第1実施形態に係るアプリケータA1の筐体10と同様としてもよい。
本体部312の周面には、3つの溝体G310〜G330が形成されている。溝体G310〜G330は、本体部312の厚さ方向に貫通しており、本体部312の内部と外部とを連通している。溝体G310〜G330は、上方から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。
溝体G310は、第1〜第3の部分G311〜G313を有する。第1の部分G311は、本体部312の上端から中央近傍にかけて上下方向に延在している。第2の部分G312は水平方向(周方向)に延在している。第2の部分G312の一端は第1の部分G311の下端と連通している。第2の部分G312の他端は溝体G330側に向けて延びている。第3の部分G313は上下方向に延在している。第3の部分G313の上端は第2の部分G312の他端と連通している。第3の部分G313の下端は、本体部312の下端近傍に向けて延びている。すなわち、溝体G310は、クランク状を呈している。
第1の部分G311には、解除部材350の突起3541が挿入され、突起3541が第1の部分G311に沿って案内される。第2及び第3の部分G312,G313には、ピストン板320の突起320c1が挿入され、突起320c1が第2及び第3の部分G312,G313に沿って案内される。第1の部分G311の幅は、第2及び第3の部分G312,G313の幅と同程度でもよいし、第2及び第3の部分G312,G313の幅に対して大きくても小さくてもよい。
溝体G320は、第1〜第3の部分G321〜G323を有する。第1の部分G321は、本体部312の上端から中央近傍にかけて上下方向に延在している。第2の部分G322は水平方向(周方向)に延在している。第2の部分G322の一端は第1の部分G321の下端と連通している。第2の部分G322の他端は溝体G310側に向けて延びている。第3の部分G323は上下方向に延在している。第3の部分G323の上端は第2の部分G322の他端と連通している。第3の部分G323の下端は、本体部312の下端近傍に向けて延びている。すなわち、溝体G320は、クランク状を呈している。
第1の部分G321には、解除部材350の突起3542が挿入され、突起3542が第1の部分G321に沿って案内される。第2及び第3の部分G322,G323には、ピストン板320の突起320c2が挿入され、突起320c2が第2及び第3の部分G322,G323に沿って案内される。第1の部分G321の幅は、第2及び第3の部分G322,G323の幅と同程度でもよいし、第2及び第3の部分G322,G323の幅に対して大きくても小さくてもよい。
溝体G330は、第1〜第3の部分G331〜G333を有する。第1の部分G331は、本体部312の上端から中央近傍にかけて上下方向に延在している。第2の部分G332は水平方向(周方向)に延在している。第2の部分G332の一端は第1の部分G331の下端と連通している。第2の部分G332の他端は溝体G320側に向けて延びている。第3の部分G333は上下方向に延在している。第3の部分G333の上端は第2の部分G332の他端と連通している。第3の部分G333の下端は、本体部312の下端近傍に向けて延びている。すなわち、溝体G330は、クランク状を呈している。
第1の部分G331には、解除部材350の突起3543が挿入され、突起3543が第1の部分G331に沿って案内される。第2及び第3の部分G332,G333には、ピストン板320の突起320c3が挿入され、突起320c3が第2及び第3の部分G332,G333に沿って案内される。第1の部分G331の幅は、第2及び第3の部分G332,G333の幅と同程度でもよいし、第2及び第3の部分G332,G333の幅に対して大きくても小さくてもよい。
蓋部314は、円環状を呈する第1の部分314aと、有底円筒状を呈する第2の部分314bとで構成されている。第1の部分314aの外縁は、本体部312の上端と一体化されている。第2の部分314bの開放端(上端)は、第1の部分314aの内縁と一体化されている。第2の部分314bは、第1の部分314aよりも下側に配置されている。そのため、第2の部分314bの底板は、本体部312内に位置している。
鍔部316は、本体部312の外周面から外方に向けて突出している。この鍔部316の存在により、アプリケータA10を使用するにあたり皮膚への接触面積が大きくなるので、皮膚に加わる圧力を小さくすることができる。
ピストン板320は、本体部312内に収容されており、本体部312内において本体部312の中心軸に沿って上下方向に移動可能である。ピストン板320の材質は、筐体310の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質と同じであってもよい。ピストン板320は、図50に示されるように、円板状の本体320aと、本体320a上面の周縁から上方に向けて延びる板状部材320b1〜320b3と、板状部材320b1〜320b3の先端部(上端部)に設けられた突起320c1〜320c3とを有する。
空気抵抗の低減やピストン板320の軽量化を目的として、開口、溝又は貫通孔などが本体320aに形成されていてもよい。あるいは、ピストン板320の剛性の向上を目的として、本体320aの上面(円錐コイルばね40が配置される側の面)に突条などが設けられていてもよい。本体320aの下面(上面とは反対側の面)は、ピストン板320をマイクロニードルアレイ30に均一に作用させることを考慮して、平面状であると好ましい。しかしながら、本体320aの下面が平面以外の他の形状であってもよく、皮膚への穿刺のための各種の条件(例えば、薬剤、マイクロニードルアレイ30の形状、マイクロニードル32の高さ、マイクロニードル32の密度、穿刺速度、皮膚への衝撃力など)を考慮して、本体320aの下面の形状を適切に選択することができる。
板状部材320b1〜320b3は、矩形状を呈している。板状部材320b1〜320b3は、上方から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。上方から見て板状部材320b1〜320b3に外接する仮想円の径は、円錐コイルばね40の最大直径D1よりも大きくなるように設定されている。そのため、板状部材320b1〜320b3は、円錐コイルばね40が径方向に移動したときにピストン板320から脱落しないようなストッパとしての機能を発揮する。板状部材320b1〜320b3の高さは、アプリケータA10の設計に応じて適宜変更してもよい。例えば、アプリケータA10の高さをできる限り小さくしたい場合には、板状部材320b1〜320b3の高さを、円錐コイルばね40を構成する金属線の太さ程度に設定することができる。なお、円錐コイルばね40を構成する金属線が嵌まる環状溝が本体320aに形成されていれば、円錐コイルばね40のストッパの機能を環状溝によって果たすことができる。このような円錐コイルばね40のストッパがある場合、円錐コイルばね40をピストン板320の上面に配置した状態で筐体310内にこれらを取り付ける際に、円錐コイルばね40がピストン板320に対して位置ずれしてしまうことを防止できる。
突起320c1〜320c3はそれぞれ、径方向(ピストン板の厚さ方向とは交差する方向)で且つ外方に向けて突出する。突起320c1〜320c3は、第10実施形態において円柱状を呈している。しかしながら、後述する解除部材350の突起3541〜3543によって押されて周方向に移動可能であれば、突起320c1〜320c3は他の形状(例えば、多角柱状、異形柱状、円錐状、多角錐状、截頭円錐状、切頭多角錐状など)を呈していてもよい。
突起320c1は、水平方向(周方向)に延びる第2の部分G312に沿って水平方向(周方向)に移動可能であると共に、上下方向に延びる第3の部分G313に沿って上下方向に移動可能である。すなわち、突起320c1は、第3の部分G313の上端側に位置している状態において、本体部312のうち第2の部分G312を構成する壁部312aの上方を水平方向に移動可能である。そのため、突起320c1は、第3の部分G313に隣接する壁部312aの上に載置されうる。
突起320c2は、水平方向(周方向)に延びる第2の部分G322に沿って水平方向(周方向)に移動可能であると共に、上下方向に延びる第3の部分G323に沿って上下方向に移動可能である。すなわち、突起320c2は、第3の部分G323の上端側に位置している状態において、本体部312のうち第2の部分G322を構成する壁部312bの上方を水平方向に移動可能である。そのため、突起320c2は、第3の部分G323に隣接する壁部312bの上に載置されうる。
突起320c3は、水平方向(周方向)に延びる第2の部分G332に沿って水平方向(周方向)に移動可能であると共に、上下方向に延びる第3の部分G333に沿って上下方向に移動可能である。すなわち、突起320c3は、第3の部分G333の上端側に位置している状態において、本体部312のうち第2の部分G332を構成する壁部312cの上方を水平方向に移動可能である。そのため、突起320c3は、第3の部分G333に隣接する壁部312cの上に載置されうる。
以上のように、突起320c1〜320c3が第2の部分G312〜G332内を案内されるのに伴い、ピストン板320は、第2の部分G312〜G332の延在方向(周方向)に沿って案内されうる(本体部312の軸を中心に回転しうる)。また、突起320c1〜320c3が第3の部分G313〜G333内を案内されるのに伴い、第3の部分G313〜G333の延在方向(本体部312の軸方向)に沿って上下方向に案内されうる。
壁部312a〜312cの上端は、周方向において水平面と平行となるように延びていてもよいし、周方向において水平面に対して傾いていてもよい。第10実施形態においては、壁部312a〜312cは、隣り合う第3の部分G313〜G333に向かうにつれてその高さが高くなっている(図53参照)。この場合、壁部312a〜312cの上端に載置されている突起320c1〜320c3が第3の部分G313〜G333に向かう際に、突起320c1〜320c3が壁部312a〜312cの上端を登坂しなければならない。そのため、アプリケータA10に外部から衝撃などが加わったとしても、突起320c1〜320c3が第3の部分G313〜G333内に意図せず移動してしまうことが防止できる。
マイクロニードルアレイ30及び円錐コイルばね40は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
解除部材350は、図48〜図50に示されるように、有底円筒状を呈している。解除部材350の開放端側(下端側)には、上下方向に延びる一対のスリットが3箇所に形成されている。このスリットの組により、矩形状を呈する片持ちの板状体3521〜3523が構成されている。
板状体3521〜3523の先端側(下端側)にはそれぞれ、径方向(ピストン板の厚さ方向とは交差する方向)で且つ内方に向けて突出する突起3541〜3543が設けられている。突起3541〜3543は、第10実施形態において円柱状を呈している。しかしながら、ピストン板320の突起320c1〜320c3を押して周方向に移動させることができれば、突起3541〜3543は他の形状(例えば、多角柱状、異形柱状、円錐状、多角錐状、截頭円錐状、切頭多角錐状など)を呈していてもよい。
突起3541は、上下方向に延びる第1の部分G311に沿って上下方向に移動可能である。突起3542は、上下方向に延びる第1の部分G321に沿って上下方向に移動可能である。突起3543は、上下方向に延びる第1の部分G331に沿って上下方向に移動可能である。従って、突起3541〜3543が第1の部分G311〜G331内を案内されるのに伴い、解除部材350は、第1の部分G311〜G331の延在方向(本体部312の軸方向)に沿って上下方向に案内されうる。
[10.2]アプリケータの製造方法
続いて、アプリケータA10の製造方法について説明する。まず、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第1及び第4の工程と同様の各工程を経て、マイクロニードルアレイ30がピストン板320の下面に取り付けられると共に、円錐コイルばね40がピストン板320の上面に載置される。続いて、壁部312aの上端で且つ第1の部分G311の下方にピストン板320の突起320c1が位置し、壁部312bの上端で且つ第1の部分G321の下方にピストン板320の突起320c2が位置し、壁部312cの上端で且つ第1の部分G331の下方にピストン板320の突起320c3が位置するように、ピストン板320を本体部312内に搭載する(図51及び図52参照)。
この際、突起320c1〜320c3がそれぞれ壁部312a〜312cに載置されているので、蓋部314の第2の部分314bとピストン板320とで円錐コイルばね40が圧縮されても、円錐コイルばね40によってピストン板320が下方向に押し出されない。すなわち、ピストン板320は、筐体310(本体部312)に係止されている。従って、ピストン板320は、図52に示されるように、蓋部314の第2の部分314bとピストン板320とで円錐コイルばね40が圧縮された状態のまま、本体部312内において蓋部314側の退避位置で保持される。このように、ピストン板320が筐体310(本体部312)に係止され、蓋部314とピストン板320とで円錐コイルばね40が圧縮された状態を、以下では「係止状態」という。
このように、退避位置でピストン板320を筐体310(本体部312)に係止することを、コッキング(cocking)ともいう。本実施形態では、円錐コイルばね40の中心線方向から見て円錐コイルばね40を構成する金属線が重なり合っていないので、ピストン板320が筐体310に係止(コッキング)された状態においてピストン板320と蓋部314の第2の部分314bとの間に挟まれる円錐コイルばね40は、線径と同程度の高さとなる(図52参照)。
続いて、突起3541〜3543をそれぞれ第1の部分G311〜G331内に配置する。これにより、突起3541〜3543が突起320c1〜320c3の上部に当接した状態となる(図51及び図52参照)。
以上の工程を経て、アプリケータA10の組み立てが完了する。従って、アプリケータA10が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、円錐コイルばね40は縮まった状態のままである。
[10.3]アプリケータの使用方法
続いて、アプリケータA10の使用方法について説明する。まず、皮膚のうち薬剤等を適用したい箇所に、マイクロニードル32が皮膚に向かうようにアプリケータA10を位置決めする。この位置決めされた状態を保持したまま、解除部材350を筐体310(蓋部314)に向けて押しつける。これにより、突起3541が突起320c1に押しつけられる(図53(a)参照)。これに伴い、突起320c1は、突起3541に押されて突起3541から逃げるように、第2の部分G312に沿って水平方向(周方向)に移動する(図53(b)参照)。同様に、突起3542が突起320c2に押しつけられる。これに伴い、突起320c2は、突起3542に押されて突起3542から逃げるように、第2の部分G322に沿って水平方向(周方向)に移動する。また同様に、突起3543が突起320c3に押しつけられる。これに伴い、突起320c3は、突起3543に押されて突起3543から逃げるように、第2の部分G332に沿って水平方向(周方向)に移動する。こうして、ピストン板320に回転力が付与される結果、ピストン板320が回転する従って、筐体310(本体部312)に対するピストン板320の係止(コッキング)が解除される。その後は、第1実施形態に係るアプリケータA1と同様に、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する(図48及び図49参照)。なお、解除部材350が筐体310の第1の部分314aと接するまで押し込まれると、図48及び図49に示されるように、突起3541〜突起3543が第1の部分G311〜G331から外れて本体部312の外周面に当接し、板状部材320b1〜320b3が外方に向けて反った状態となる。
[10.4]作用
以上のような第10実施形態では、第10実施形態に係るアプリケータA1の作用(A)〜(D)と同様の作用及び効果を奏する。
[11]第11実施形態
[11.1]アプリケータの構成
続いて、図54〜図57を参照して、第11実施形態に係るアプリケータA11の構成を説明する。説明中、「上」との語は図54〜図56の上方向に対応しており、「下」との語は図54〜図56の下方向に対応している。すなわち、上下方向は、アプリケータA11の高さ方向に対応している。
アプリケータA11は、ヒト等の動物の皮膚を通して薬剤等の活性成分を動物の体内に移行するための装置である。アプリケータA11は、筐体410と、ピストン板420と、マイクロニードルアレイ30と、円錐コイルばね40と、解除部材450とを備える。
筐体410は、図54〜図56に示されるように、中心軸が上下方向に沿って延びる円筒形状を呈する本体部412と、本体部412の上端側に配置された外蓋部414と、本体部412内に配置された内蓋部416とを有する。筐体410の強度や材質は、第1実施形態に係るアプリケータA1の筐体10と同様としてもよい。
アプリケータA10は、持ちやすく、動物(ヒトを含む)の皮膚にマイクロニードル32を適用しやすい(穿刺しやすい)形状が望ましい。そのため、本体部412の外形は、例えば、多角形状であったり、丸みを帯びていたりしてもよい。本体部412の表面に、窪みが設けられていたり、段差が設けられていたりしてもよい。本体部412の表面に細かな溝を形成したり、滑り難いコーティング層を設けたりすることで、本体部412の表面が粗面化処理されていてもよい。空気抵抗の低減や軽量化を目的として、本体部412に貫通孔が形成されていてもよい。
本体部412は、円筒状を呈している。本体部412は、図55に示されるように、厚肉の第1の部分412aと、第1の部分412aよりも薄肉の第2の部分412bとを有する。第1の部分412aは本体部412の下部を構成し、第2の部分412bは本体部412の上部を構成している。第1の部分412aの上端と第2の部分412bの下端とは一体化されている。第1の部分412aの内径は、第2の部分412bの内径よりも小さく設定されている。そのため、第1の部分412aと第2の部分412bとの境界部分によって、段差部412cが構成されている。
本体部412の周面には、一対の溝部412d1,412d2が形成されている。溝部412d1,412d2は、本体部412の厚さ方向に貫通しており、本体部412の内部と外部とを連通している。溝部412d1,412d2は、本体部412の上端寄りに位置しており、本体部412の周方向に沿って直線状に延びている。溝部412d1,412d2は、上方から見て本体部412の軸を中心に対向している。
本体部412の下端には、図55に示されるように、円環状部材412eが設けられている。円環状部材412eの外周縁は、本体部412の下端と一体化されている。円環状部材412eの内径は、ピストン板420は通過できないが、マイクロニードルアレイ30は通過できる大きさに設定されている。
外蓋部414は、有底円筒状を呈しており、本体部412(第2の部分412b)の上端部に取り付けられている。外蓋部414の外周面は、図55に示されるように、閉塞端側が上向きとなるように本体部412(第2の部分412b)の内周面と嵌合している。すなわち、外蓋部414の外径は、本体部412(第2の部分412b)の内径と同程度か、本体部412(第2の部分412b)の内径よりも若干大きく設定されている。
内蓋部416は、円板状を呈している。内蓋部416は、本体部412の段差部412c上に載置されており、本体部412の内周面に固定されている。内蓋部416の外径は、本体部412の第2の部分412bの内径と同程度である。内蓋部416の周縁には、切欠き部416a〜416cが形成されている。切欠き部416a〜416cは、上方から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。
切欠き部416aは、切り込み深さが浅い第1の部分416a1と、切り込み深さが第1の部分416a1よりも深い第2の部分416a2とを有している。第2の部分416a2は、第1の部分416a1に隣接して一体化されており、第1の部分416a1と切欠き部416cとの間に位置している。
切欠き部416bは、切り込み深さが浅い第1の部分416b1と、切り込み深さが第1の部分416b1よりも深い第2の部分416b2とを有している。第2の部分416b2は、第1の部分416b1に隣接して一体化されており、第1の部分416b1と切欠き部416aとの間に位置している。
切欠き部416cは、切り込み深さが浅い第1の部分416c1と、切り込み深さが第1の部分416c1よりも深い第2の部分416c2とを有している。第2の部分416c2は、第1の部分416c1に隣接して一体化されており、第1の部分416c1と切欠き部416bとの間に位置している。
ピストン板420は、本体部412内に収容されており、本体部412内において本体部412の中心軸に沿って上下方向に移動可能である。ピストン板420の材質は、筐体410の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質と同じであってもよい。ピストン板420は、図56に示されるように、円板状の本体420aと、本体420a上面の周縁から上方に向けて延びる板状部材420b1〜420b3と、板状部材420b1〜420b3の先端(上端)に設けられた突起420c1〜420c3とを有する。
空気抵抗の低減やピストン板420の軽量化を目的として、開口、溝又は貫通孔などが本体420aに形成されていてもよい。あるいは、ピストン板420の剛性の向上を目的として、本体420aの上面(円錐コイルばね40が配置される側の面)に突条などが設けられていてもよい。本体420aの下面(上面とは反対側の面)は、ピストン板420をマイクロニードルアレイ30に均一に作用させることを考慮して、平面状であると好ましい。しかしながら、本体420aの下面が平面以外の他の形状であってもよく、皮膚への穿刺のための各種の条件(例えば、薬剤、マイクロニードルアレイ30の形状、マイクロニードル32の高さ、マイクロニードル32の密度、穿刺速度、皮膚への衝撃力など)を考慮して、本体420aの下面の形状を適切に選択することができる。
板状部材420b1〜420b3は、円弧状を呈している。板状部材420b1〜420b3は、上方から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。上方から見て板状部材420b1〜420b3に外接する仮想円の径は、円錐コイルばね40の最大直径D1よりも大きくなるように設定されている。そのため、板状部材420b1〜420b3は、円錐コイルばね40が径方向に移動したときにピストン板420から脱落しないようなストッパとしての機能を発揮する。板状部材420b1〜420b3の高さは、アプリケータA11の設計に応じて適宜変更してもよい。例えば、アプリケータA11の高さをできる限り小さくしたい場合には、板状部材420b1〜420b3の高さを、円錐コイルばね40を構成する金属線の太さ程度に設定することができる。なお、円錐コイルばね40を構成する金属線が嵌まる環状溝が本体420aに形成されていれば、円錐コイルばね40のストッパの機能を環状溝によって果たすことができる。このような円錐コイルばね40のストッパがある場合、円錐コイルばね40をピストン板420の上面に配置した状態で筐体410内にこれらを取り付ける際に、円錐コイルばね40がピストン板420に対して位置ずれしてしまうことを防止できる。
突起420c1〜420c3はそれぞれ、径方向(ピストン板の厚さ方向とは交差する方向)で且つ外方に向けて突出する。突起420c1〜420c3は、第11実施形態において四角柱状を呈している。しかしながら、切欠き部416a〜416cを介して内蓋部416に係止可能であれば、突起420c1〜420c3は他の形状(例えば、多角柱状、異形柱状、円錐状、多角錐状、截頭円錐状、切頭多角錐状など)を呈していてもよい。
板状部材420b1は、切欠き部416aの第1及び第2の部分416a1,416a2を共に通過可能である。一方、突起420c1は、切欠き部416aの第2の部分416a2を通過可能であるが、切欠き部416aの第1の部分416a1を通過することができない。そのため、突起420c1が第2の部分416a2を通過した後にピストン板420を第1の部分416a1に向けて周方向に回転させると、突起420c1が内蓋部416上に載置されうる。
板状部材420b2は、切欠き部416bの第1及び第2の部分416b1,416b2を共に通過可能である。一方、突起420c2は、切欠き部416bの第2の部分416b2を通過可能であるが、切欠き部416bの第1の部分416b1を通過することができない。そのため、突起420c2が第2の部分416b2を通過した後にピストン板420を第1の部分416b1に向けて周方向に回転させると、突起420c2が内蓋部416上に載置されうる。
板状部材420b3は、切欠き部416cの第1及び第2の部分416c1,416c2を共に通過可能である。一方、突起420c3は、切欠き部416cの第2の部分416c2を通過可能であるが、切欠き部416cの第1の部分416c1を通過することができない。そのため、突起420c3が第2の部分416c2を通過した後にピストン板420を第1の部分416c1に向けて周方向に回転させると、突起420c3が内蓋部416上に載置されうる。
以上のように、板状部材420b1〜420b3が切欠き部416a〜416c内を案内されるのに伴い、ピストン板420は、切欠き部416a〜416cの延在方向(周方向)に沿って案内されうる(本体部412の軸を中心に回転しうる)。また、突起420c1〜420c3が第2の部分416a2〜416c2を通過した場合には、ピストン板420は、本体部412の軸方向に沿って上下方向に案内されうる。ピストン板420の下面が水平状態を維持したまま本体部412内においてピストン板420を案内させるために、板状部材420b1〜420b3及び突起420c1〜420c3の外周面は本体部412に当接していると好ましい。すなわち、板状部材420b1〜420b3及び突起420c1〜420c3の外接円の径は、本体部412の第1の部分412aの内径と同程度となるように設定される。
内蓋部416の上面は、水平面であってもよい。または、内蓋部416の上面のうち切欠き部416aの第1の部分416a1に対応する領域が、第2の部分416a2に向かうにつれて盛り上がるような凸状となっていてもよいし、内蓋部416の上面のうち切欠き部416bの第1の部分416b1に対応する領域が、第2の部分416b2に向かうにつれて盛り上がるような凸状となっていてもよいし、内蓋部416の上面のうち切欠き部416cの第1の部分416c1に対応する領域が、第2の部分416c2に向かうにつれて盛り上がるような凸状となっていてもよい。この場合、内蓋部416の上面に載置されている突起420c1〜420c3が第2の部分416a2〜416c2に向かう際に、突起420c1〜420c3が内蓋部416の突出部分を登坂しなければならない。そのため、アプリケータA11に外部から衝撃などが加わったとしても、突起420c1〜420c3が第2の部分416a2〜416c2内に意図せず移動してしまうことが防止できる。
マイクロニードルアレイ30及び円錐コイルばね40は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
解除部材450は、回転板452と、一対のスイッチ部材454,456とを有する。
回転板452は、円板状の基部452aと、基部452aの上面に突設された一対の突起452b1,452b2と、基部452aの下面に突設された円筒状部材452cと、基部452aの下面に突設された突起452d1〜452d3とで構成されている。基部452aの外径は、本体部412の第2の部分412bの内径と同程度となるように設定される。基部452aの外縁は、本体部412(第2の部分412b)の内周面と接続されていない。
突起452b1,452b2は、円柱状を呈している。突起452b1,452b2は、上方から見て基部452aの軸を中心に対向している。突起452b1,452b2は、基部452aの軸に関して同一円周上に位置している。突起452b1,452b2は、スイッチ部材454,456によって押されたときに回転板452(基部452a)に偶力を作用させることができるよう、アプリケータA11の完成状態においてスイッチ部材454,456の対向方向に一列に並ばないことが好ましい。
円筒状部材452cは、内蓋部416の上面に載置されている。円筒状部材452cの下端は、内蓋部416とは接続されていない。そのため、基部452aの外縁が本体部412(第2の部分412b)の内周面と接続されていないことと相俟って、回転板452は、本体部412(第2の部分412b)内において基部452aの軸を中心に回転可能である。円筒状部材452cは、基部452aと内蓋部416との間に位置し、基部452aと内蓋部416とを所定間隔にて離間させるスペーサとして機能する。円筒状部材452cの高さ(基部452aと内蓋部416との間隔)は、突起420c1〜420c3が基部452aと内蓋部416との間で移動できるよう、突起420c1〜420c3の高さと同程度か、突起420c1〜420c3の高さよりも大きく設定されている。
突起452d1〜452d3は、円柱状を呈している。突起452d1〜452d3は、上方から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。突起452d1〜452d3は、円筒状部材452cの外側で且つ基部452aの軸に関して同一円周上に位置している。突起452d1〜452d3が位置する当該円は、上方から見て、内蓋部416の切欠き部416a〜416cに重なっている。
スイッチ部材454は、全体として板状を呈している。スイッチ部材454は、基部454aと、基部454aの基端側に設けられた押圧部454bと、基部454aの先端側に設けられた先端部454cとで構成されている。基部454aは、本体部412の溝部412d1を通過可能な大きさである。押圧部454bの外形は、本体部412の溝部412d1よりも大きい。そのため、押圧部454bは、溝部412d1を通過できず、アプリケータA11の動作の前後において、本体部412の外方に位置する。
先端部454cは、スイッチ部材454,456が本体部412に向けて押されて互いに近づき合ったときに、スイッチ部材456の先端部456cにより移動が妨げられないよう、上方から見て突起452b1寄りに位置している。先端部454cには、スイッチ部材454,456の対向方向と交差する方向(例えば直交する方向)に延びる直線状の切欠き部454dが形成されている。切欠き部454dの開放端は、上方から見て突起452b1側に向かっている。アプリケータA11の完成状態において、切欠き部454d内に突起452b1が配置されており、切欠き部454dと突起452b1とが係合している。そのため、スイッチ部材454,456の対向方向にスイッチ部材454を移動させると、切欠き部454d内において突起452b1がスライドする。
スイッチ部材456は、全体として板状を呈している。スイッチ部材456は、基部456aと、基部456aの基端側に設けられた押圧部456bと、基部456aの先端側に設けられた先端部456cとで構成されている。基部456aは、本体部412の溝部412d2を通過可能な大きさである。押圧部456bの外形は、本体部412の溝部412d2よりも大きい。そのため、押圧部456bは、溝部412d2を通過できず、アプリケータA11の動作の前後において、本体部412の外方に位置する。
先端部456cは、スイッチ部材454,456が本体部412に向けて押されて互いに近づき合ったときに、スイッチ部材454の先端部454cにより移動が妨げられないよう、上方から見て突起452b2寄りに位置している。先端部456cには、スイッチ部材454,456の対向方向と交差する方向(例えば直交する方向)に延びる直線状の切欠き部456dが形成されている。切欠き部456dの開放端は、上方から見て突起452b2側に向かっている。アプリケータA11の完成状態において、切欠き部456d内に突起452b2が配置されており、切欠き部456dと突起452b2とが係合している。そのため、スイッチ部材454,456の対向方向にスイッチ部材456を移動させると、切欠き部456d内において突起452b2がスライドする。
[11.2]アプリケータの製造方法
続いて、アプリケータA11の製造方法について説明する。まず、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第1及び第4の工程と同様の各工程を経て、マイクロニードルアレイ30がピストン板420の下面に取り付けられると共に、円錐コイルばね40がピストン板420の上面に載置される。続いて、内蓋部416の上面のうち切欠き部416aの第1の部分416a1に対応する領域の上にピストン板420の突起420c1が位置し、内蓋部416の上面のうち切欠き部416bの第1の部分416b1に対応する領域の上にピストン板420の突起420c2が位置し、内蓋部416の上面のうち切欠き部416cの第1の部分416c1に対応する領域の上にピストン板420の突起420c3が位置するように、ピストン板420を本体部412内に搭載する(図59及び図60参照)。
この際、突起420c1〜420c3が内蓋部416上に載置されているので、内蓋部416とピストン板420とで円錐コイルばね40が圧縮されても、円錐コイルばね40によってピストン板420が下方向に押し出されない。すなわち、ピストン板420は、筐体410(内蓋部416)に係止されている。従って、ピストン板420は、図59に示されるように、内蓋部416とピストン板420とで円錐コイルばね40が圧縮された状態のまま、本体部412内において内蓋部416側の退避位置で保持される。このように、ピストン板420が筐体410(内蓋部416)に係止され、内蓋部416とピストン板420とで円錐コイルばね40が圧縮された状態を、以下では「係止状態」という。
このように、退避位置でピストン板420を筐体410(内蓋部416)に係止することを、コッキング(cocking)ともいう。本実施形態では、円錐コイルばね40の中心線方向から見て円錐コイルばね40を構成する金属線が重なり合っていないので、ピストン板420が筐体410に係止(コッキング)された状態においてピストン板420と内蓋部416との間に挟まれる円錐コイルばね40は、線径よりも若干大きな高さとなる(図59参照)。ただし、ピストン板420の構成によっては、ピストン板420が筐体410に係止(コッキング)された状態においてピストン板420が内蓋部416に極めて近接し、ピストン板420と内蓋部416との間に挟まれる円錐コイルばね40が線径と同程度の高さにもなりうる。
続いて、回転板452を内蓋部416上に載置する。このとき、突起420c1のうち切欠き部416aの第2の部分416a2とは反対側の側面に突起452d1を当接させ、突起420c2のうち切欠き部416bの第2の部分416b2とは反対側の側面に突起452d2を当接させ、突起420c3のうち切欠き部416cの第2の部分416c2とは反対側の側面に突起452d3を当接させる。従って、上方から見て、突起420c1は突起452d1と切欠き部416aの第2の部分416a2との間に位置し、突起420c2は突起452d2と切欠き部416bの第2の部分416b2との間に位置し、突起420c3は突起452d3と切欠き部416cの第2の部分416c2との間に位置する。
続いて、スイッチ部材454の基部454a及び先端部454cを本体部412の外側から溝部412d1に挿入しつつ、先端部454cの切欠き部454dと突起452b1とを係合する。また、スイッチ部材456の基部456a及び先端部456cを本体部412の外側から溝部412d2に挿入しつつ、先端部456cの切欠き部456dと突起452b2とを係合する。続いて、外蓋部414を本体部412(第2の部分412b)の上端に取り付ける。
以上の工程を経て、アプリケータA11の組み立てが完了する(図59及び図60参照)。従って、アプリケータA11が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、円錐コイルばね40は縮まった状態のままである。
[11.3]アプリケータの使用方法
続いて、アプリケータA11の使用方法について説明する。まず、皮膚のうち薬剤等を適用したい箇所に、マイクロニードル32が皮膚に向かうようにアプリケータA11を位置決めする。この位置決めされた状態を保持したまま、スイッチ部材454,456の押圧部454b,456bを摘まんで両者を近づける方向に(本体部412側に)向けて押しつける。これにより、突起452b1,452b2が、回転板452(基部452a)に偶力を付与しつつ、切欠き部454d,456d内をスライドする。これに伴い、回転板452(基部452a)が回転して、突起452d1が突起420c1を切欠き部416aの第2の部分416a2に向けて押し、突起452d2が突起420c2を切欠き部416bの第2の部分416b2に向けて押し、突起452d3が突起420c3を切欠き部416cの第2の部分416c2に向けて押す。こうして、ピストン板420に回転力が付与される結果、ピストン板420が回転する。従って、筐体410(内蓋部416)に対するピストン板420の係止(コッキング)が解除される(図57参照)。その後は、第1実施形態に係るアプリケータA1と同様に、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する(図54及び図55参照)。
[11.4]作用
以上のような第11実施形態では、第1実施形態に係るアプリケータA1の作用(A)〜(D)と同様の作用及び効果を奏する。
第11実施形態に係るアプリケータA11では、スイッチ部材454,456が筐体410(本体部412)の側方(外周面)に位置しているので、スイッチ部材454,456が本体部412の軸方向(アプリケータA11の高さ方向)に延びることが抑制される。そのため、アプリケータA11自体の高さをさらに小さくすることができる。
[12]第12実施形態
[12.1]アプリケータの構成
続いて、図61〜図68を参照して、第12実施形態に係るアプリケータA12の構成を説明する。説明中、「上」との語は図61、図63及び図65〜図67の上方向に対応しており、「下」との語は図61、図63及び図65〜図67の下方向に対応している。すなわち、上下方向は、アプリケータA12の高さ方向に対応している。
アプリケータA12は、ヒト等の動物の皮膚を通して薬剤等の活性成分を動物の体内に移行するための装置である。アプリケータA12は、筐体510と、ピストン板520と、マイクロニードルアレイ30と、円錐コイルばね40と、解除部材550とを備える。
筐体510は、図63〜図65に示されるように、中心軸が上下方向に沿って延びる円筒形状を呈する本体部512と、本体部512の上端側に配置された蓋部514と、本体部512の下端側に配置された円環状の鍔部516とを有する。筐体510の強度や材質は、第1実施形態に係るアプリケータA1の筐体10と同様としてもよい。
本体部512は、上方から見て円弧状を呈する壁部512a〜512hを有する。壁部512a〜512hは、本体部512の上端側(蓋部514側)から見て時計回りにこの順で並んでいる。壁部512a〜512dのうち隣り合う壁部は、互いに一体化されている(図64参照)。壁部512e〜512hのうち隣り合う壁部は、互いに一体化されている(同図参照)。壁部512aと壁部512eとは、上方から見て本体部512の中心軸を中心に対向している。壁部512bと壁部512fとは、上方から見て本体部512の中心軸を中心に対向している。壁部512cと壁部512gとは、上方から見て本体部512の中心軸を中心に対向している。壁部512dと壁部512hとは、上方から見て本体部512の中心軸を中心に対向している。
本体部512には、壁部512a,512eに対応する位置に、それぞれ切欠き部512i,512jが設けられている。切欠き部512i,512jは、上方から見て本体部512の中心軸を中心に対向している。そのため、壁部512aは、切欠き部512iの存在により高さが低くなっており、上端が蓋部514に達していない。壁部512eは、切欠き部512jの存在により高さが低くなっており、上端が蓋部514に達していない。
本体部512の外周面には、壁部512c,512gに対応する位置に、それぞれ溝部512k,512lが設けられている。溝部512k,512lは、本体部512の上端寄りに位置しており、周方向に沿って延びている。
壁部512aと壁部512hとの間は、所定の間隔をもって離間している。そのため、壁部512aと壁部512hとの間隙によって、本体部512の厚さ方向に貫通する溝体G510が本体部512の周面に形成されている。壁部512dと壁部512eとの間は、所定の間隔をもって離間している。そのため、壁部512dと壁部512eとの間隙によって、本体部512の厚さ方向に貫通する溝体G530が本体部512の周面に形成されている。
壁部512cの内面には、上下方向に延びる溝部G521が壁部512b寄りに設けられていると共に、周方向に延びる溝部G522が上端近傍に設けられている。溝部G521は、壁部512cの下端近傍から上端にかけて延在している。溝部G522は、壁部512bから壁部512dにかけて延在しており、溝部G521の上端と連通している。そのため、壁部512cは、溝部G521の存在により下端部を除き薄肉化された第1の部分512c1と、溝部G522の存在により上端部が薄肉化されると共に溝部G522の下方が厚肉の第2の部分512c2とを有する。
壁部512gの内面には、上下方向に延びる溝部G541が壁部512f寄りに設けられていると共に、周方向に延びる溝部G542が上端近傍に設けられている。溝部G541は、壁部512gの下端近傍から上端にかけて延在している。溝部G542は、壁部512fから壁部512hにかけて延在しており、溝部G541の上端と連通している。そのため、壁部512gは、溝部G541の存在により下端部を除き薄肉化された第1の部分512g1と、溝部G542の存在により上端部が薄肉化されると共に溝部G542の下方が厚肉の第2の部分512g2とを有する。
蓋部514は円形状を呈する板状体である。蓋部514の下面における周縁部は、壁部512b〜512d,512f〜512hの上端と一体化されている。そのため、蓋部514は、本体部512の上端を塞いでいる。
蓋部514には、上方から見て壁部512a,512eに対応する位置に、それぞれ切欠き部514a,514bが設けられている。切欠き部514a,514bは、上方から見て蓋部514の軸を中心に対向している。切欠き部514a,514bは共に、蓋部514の中心に向けて凹んでいる。
鍔部516は、本体部512の外周面から外方に向けて突出している。この鍔部516の存在により、アプリケータA12を使用するにあたり皮膚への接触面積が大きくなるので、皮膚に加わる圧力を小さくすることができる。
ピストン板520は、本体部512内に収容されており、本体部512内において本体部512の中心軸に沿って上下方向に移動可能である。ピストン板520の材質は、筐体510の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質と同じであってもよい。ピストン板520は、図63に示されるように、円板状の本体520aと、本体520aの周縁から上方に向けて延びる円筒部材520bとを有する。空気抵抗の低減やピストン板520の軽量化を目的として、開口、溝又は貫通孔などが本体520aに形成されていてもよい。あるいは、ピストン板520の剛性の向上を目的として、本体520aの上面(円錐コイルばね40が配置される側の面)に突条などが設けられていてもよい。本体520aの下面(上面とは反対側の面)は、ピストン板520をマイクロニードルアレイ30に均一に作用させることを考慮して、平面状であると好ましい。しかしながら、本体520aの下面が平面以外の他の形状であってもよく、皮膚への穿刺のための各種の条件(例えば、薬剤、マイクロニードルアレイ30の形状、マイクロニードル32の高さ、マイクロニードル32の密度、穿刺速度、皮膚への衝撃力など)を考慮して、本体520aの下面の形状を適切に選択することができる。
円筒部材520bの内径は、円錐コイルばね40の最大直径D1よりも大きくなるように設定されている。円錐コイルばね40が径方向に移動したときにピストン板520から脱落しないようなストッパとしての機能を円筒部材520bが発揮できれば、円筒部材520bの高さに特に制限はない。例えば、アプリケータA12の高さをできる限り小さくしたい場合には、円筒部材520bの高さを、円錐コイルばね40を構成する金属線の太さ程度に設定することができる。円錐コイルばね40のストッパが不要な場合には、ピストン板520が円筒部材520bを有していなくてもよい。ピストン板520が円筒部材520bを有していない場合であっても、円錐コイルばね40を構成する金属線が嵌まる環状溝が本体520aに形成されていれば、円錐コイルばね40のストッパの機能を環状溝によって果たすことができる。このような円錐コイルばね40のストッパがある場合、円錐コイルばね40をピストン板520の上面に配置した状態で筐体510内にこれらを取り付ける際に、円錐コイルばね40がピストン板520に対して位置ずれしてしまうことを防止できる。
ピストン板520の周縁(外周面)には、径方向(ピストン板の厚さ方向とは交差する方向)で且つ外方に向けて突出する複数の突起(第12実施形態では4つの突起)520c1〜520c4が設けられている。突起520c1〜520c4は、上方(円錐コイルばね40が載置されるピストン板520の上面側)から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。突起520c1〜520c4は、第12実施形態において台形状を呈する板状体である。しかしながら、壁部512a,512e及び壁部512e,512gの第2の部分212c2,212g2への係止が可能であり、溝体G510,G530及び溝部G521,G541内での移動が可能であれば、突起520c1〜520c4は他の形状(例えば、円柱状、多角柱状、異形柱状、円錐状、多角錐状、截頭円錐状、切頭多角錐状など)を呈していてもよい。
突起520c1は、溝体G510内をその延在方向に沿って移動可能である。突起520c2は、溝部G521内をその延在方向に沿って移動可能である。突起520c3は、溝体G530内をその延在方向に沿って移動可能である。突起520c4は、溝部G541内をその延在方向に沿って移動可能である。そのため、ピストン板520は、溝体G510,G530及び溝部G521,G541の延在方向(本体部512の中心軸方向)に沿って上下方向に案内されうる。
突起520c1は、溝体G510の上端側に位置している状態において、切欠き部512i内を水平方向に移動可能である。そのため、突起520c1は、溝体G510に隣接する壁部512aの上端に載置されうる。突起520c2は、溝部G521の上端側に位置している状態において、溝部G521と連通する溝部G522内を水平方向に移動可能である。そのため、突起520c2は、溝部G521に隣接する壁部512cの第2の部分512c2の上端に載置されうる。
突起520c3は、溝体G530の上端側に位置している状態において、切欠き部512j内を水平方向に移動可能である。そのため、突起520c3は、溝体G530に隣接する壁部512eの上端に載置されうる。突起520c4は、溝部G541の上端側に位置している状態において、溝部G541と連通する溝部G542内を水平方向に移動可能である。そのため、突起520c4は、溝部G541に隣接する壁部512gの第2の部分512g2の上端に載置されうる。
壁部512a,512eの上端及び壁部512c,512gの第2の部分512c2,512g2の上端は、周方向において水平面と平行となるように延びていてもよいし、周方向において水平面に対して傾いていてもよい。特に、壁部512a,512eが隣り合う溝体G510,G530に向かうにつれてその高さが高くなるように、壁部512a,512eの上端が傾いていると共に、壁部512c,512gの第2の部分512c2,512g2が隣り合う溝部G521,G541に向かうにつれてその高さが高くなるように、第2の部分512c2,512g2の上端が傾いていてもよい。この場合、壁部512a,512eの上端及び第2の部分512c2,512g2の上端にそれぞれ載置されている突起520c1〜520c4が溝体G510,G530及び溝部G521,G541に向かう際に、突起520c1〜520c4が壁部512a,512eの上端及び第2の部分512c2,512g2の上端を登坂しなければならない。そのため、アプリケータA12に外部から衝撃などが加わったとしても、突起520c1〜520c4が溝体G510,G530及び溝部G521,G541内に意図せず移動してしまうことが防止できる。
マイクロニードルアレイ30及び円錐コイルばね40は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
解除部材550は、図61〜図63、図66〜図68に示されるように、円板状を呈する基部552と、一対のフック部554a,554bと、つまみ部556と、使用者による押圧操作が行われる一対の押圧部558a,558bとを有する。解除部材550の材質は、筐体510の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質と同じであってもよい。解除部材550は、可撓性又は弾性を有する材質により構成されていてもよい。
一対のフック部554a,554bは、基部552の中心軸に関して点対称となるように基部552の下面に突設されている。フック部554a,554bは、基部552の中心軸方向から見て、基部552の周縁に沿って延びる円弧状を呈している。フック部554a,554bの内周面は、基部552の中心軸に向かう側の面である。フック部554a,554bの内周面にはそれぞれ、突条554c,554dが設けられている(図68参照)。突条554c,554dは、基部552の中心軸に向かって突出すると共に、フック部554a,554bの径方向(基部552の周方向)に沿って延びている。
アプリケータA12の完成状態において、突条554cは本体部512の溝部512kと係合しており、突条554dは本体部512の溝部512lと係合している。基部552の周方向における突条554c,554dの長さは、本体部512の周方向における溝部512k、512lの幅よりも小さい。そのため、突条554c,554dは、溝部512k、512l内を周方向に移動可能である。突条554c,554dが溝部512k、512l内を移動するのに伴い、解除部材550は、フック部554a,554bを介して基部552(本体部512)の中心軸周りに回転する。
つまみ部556は、基部552の上面に設けられている。第12実施形態において、つまみ部556は、基部552の中心から径方向に延びる2つの突条によって構成されているが、使用者が指を引っ掛けて解除部材550を回転させることができれば、つまみ部556として異なる構成を採用してもよい。例えば、つまみ部556は、一つ以上の突条であってもよいし、基部552の上面に設けられた一つ以上の凹部であってもよいし、基部552を貫通する一つ以上の貫通孔であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
押圧部558aは、第1及び第2の板状体558a1,558a2と、第1及び第2の突出部558a3,558a4とを有する。第1の板状体558a1は、基部552の周縁に沿って延びる円弧状を呈している。第1の板状体558a1の一端は、フック部554aに一体的に接続されている。第1の板状体558a1の他端側は、押圧部558bとは反対側で且つ本体部512の切欠き部514aの近傍まで延びている。第1の板状体558a1の他端側は、フック部554aから離れるに従って外方に向けて基部552から離間している。第2の板状体558a2は、矩形状を呈する。第2の板状体558a2の一方の主面は、基部552の周縁及び本体部512の外周面に対向している。
第1及び第2の突出部558a3,558a4は、第2の板状体558a2の一方の主面から本体部512の外周面側に向けて延びている。第1の突出部558a3は、上方から見て三角形状を呈する板状体である。アプリケータA12の完成状態において、第1の突出部558a3の斜辺は、本体部512の切欠き部512iに向かっており、第1の板状体558a1に近づくにつれて高さが高くなっている。第2の突出部558a4は、第1の突出部558a3の下方で且つ第2の板状体558a2のうち第1の板状体558a1とは反対側の側縁寄りに位置している。
押圧部558aは、第2の板状体558a2に押圧力が付与されておらず押圧部558aが変形していない第1の状態と、第2の板状体558a2に押圧力が付与されて押圧部558aが変形した後の第2の状態とをとりうる。変形後の第2の状態では、第2の板状体558a2が基部552の周縁及び本体部512の外周面に近接し、第1の突出部558a3が切欠き部512iのうち壁部512aの上方の領域を通って本体部512内に挿入された状態となると共に、第2の突出部558a4が溝体G510を通って本体部512内に挿入された状態となる。
押圧部558bは、第1及び第2の板状体558b1,558b2と、第1及び第2の突出部558b3,558b4とを有する。第1の板状体558b1は、基部552の周縁に沿って延びる円弧状を呈している。第1の板状体558b1の一端は、フック部554bに一体的に接続されている。第1の板状体558b1の他端側は、押圧部558aとは反対側で且つ本体部512の切欠き部514bの近傍まで延びている。第1の板状体558b1の他端側は、フック部554bから離れるに従って外方に向けて基部552から離間している。第2の板状体558b2は、矩形状を呈する。第2の板状体558b2の一方の主面は、基部552の周縁及び本体部512の外周面に対向している。
第1及び第2の突出部558b3,558b4は、第2の板状体558b2の一方の主面から本体部512の外周面側に向けて延びている。第1の突出部558b3は、上方から見て三角形状を呈する板状体である。アプリケータA12の完成状態において、第1の突出部558b3の斜辺は、本体部512の切欠き部512jに向かっており、第1の板状体558b1に近づくにつれて高さが高くなっている。第2の突出部558b4は、第1の突出部558b3の下方で且つ第2の板状体558b2のうち第1の板状体558b1とは反対側の側縁寄りに位置している。
押圧部558bは、第2の板状体558b2に押圧力が付与されておらず押圧部558bが変形していない第1の状態と、第2の板状体558b2に押圧力が付与されて押圧部558bが変形した後の第2の状態とをとりうる。変形後の第2の状態では、第2の板状体558b2が基部552の周縁及び本体部512の外周面に近接し、第1の突出部558b3が切欠き部512jのうち壁部512eの上方の領域を通って本体部512内に挿入された状態となると共に、第2の突出部558b4が溝体G530を通って本体部512内に挿入された状態となる。
アプリケータA12は、持ちやすく、動物(ヒトを含む)の皮膚にマイクロニードル32を適用しやすい(穿刺しやすい)形状が望ましい。そのため、解除部材550の表面に、窪みが設けられていたり、段差が設けられていたりしてもよい。解除部材550の表面に細かな溝を形成したり、滑り難いコーティング層を設けたりすることで、これらの表面が粗面化処理されていてもよい。空気抵抗の低減や軽量化を目的として、筐体510又は解除部材550に貫通孔が形成されていてもよい。
[12.2]アプリケータの製造方法
続いて、アプリケータA12の製造方法について説明する。まず、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第1、第4及び第3の工程と同様の各工程をこの順に経て、ピストン板520が本体部512内に搭載される(後述の図70参照)。
この際、突起520c1〜520c4がそれぞれ壁部512a,512e及び壁部512c,512gの第2の部分512c2,512g2に載置されているので、蓋部514とピストン板520とで円錐コイルばね40が圧縮されても、円錐コイルばね40によってピストン板520が下方向に押し出されない。すなわち、ピストン板520は、筐体510(本体部512)に係止されている。従って、ピストン板520は、後述の図71に示されるように、蓋部514とピストン板520とで円錐コイルばね40が圧縮された状態のまま、本体部512内において蓋部514側の退避位置で保持される。このように、ピストン板520が筐体510(本体部512)に係止され、蓋部514とピストン板520とで円錐コイルばね40が圧縮された状態を、以下では「係止状態」という。
このように、退避位置でピストン板520を筐体510(本体部512)に係止することを、コッキング(cocking)ともいう。本実施形態では、円錐コイルばね40の中心線方向から見て円錐コイルばね40を構成する金属線が重なり合っていないので、ピストン板520が筐体510に係止(コッキング)された状態においてピストン板520と蓋部514との間に挟まれる円錐コイルばね40は、線径よりも若干大きな高さとなる(図71参照)。ただし、ピストン板520の構成によっては、ピストン板520が筐体510に係止(コッキング)された状態においてピストン板520が蓋部514に極めて近接し、ピストン板520と蓋部514との間に挟まれる円錐コイルばね40が線径と同程度の高さにもなりうる。
続いて、フック部554a,554bの突条554c,554dをそれぞれ溝部512k,512lに係合させて、突条554c,554dが溝部512k,512lの一端側に位置するように、解除部材550を筐体510(本体部512)に取り付ける。このとき、図61及び図62に示されるように、第1の突出部558a3は切欠き部512iとは対向せずに壁部512bの外周面と対向し、第2の突出部558a4は溝体G510とは対向せずに壁部512aの外周面と対向する。同様に、第1の突出部558b3は切欠き部512jとは対向せずに壁部512fの外周面と対向し、第2の突出部558b4は溝体G530とは対向せずに壁部512eの外周面と対向する。
以上の工程を経て、アプリケータA12の組み立てが完了する。従って、アプリケータA12が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、円錐コイルばね40は縮まった状態のままである。加えて、使用者が押圧部558a,558bを押圧しても、押圧部558a,558bが本体部512内に挿入されないので、押圧部558a,558bの第1の状態が保たれる(図61及び図62参照)。すなわち、第1の突出部558a3,558b3が突起520c1,520c3と接触することが防止される。
[12.3]アプリケータの使用方法
続いて、アプリケータA12の使用方法について説明する。まず、使用者は、つまみ部556を摘まんで解除部材550を回転させ、突条554c,554dを溝部512k,512lの他端側に位置させる(図69〜図71参照)。これにより、解除部材550のロックが解除され、押圧部558a,558bの筐体510側(本体部512側)への移動が可能となる。このとき、図70及び図71に示されるように、第1の突出部558a3の斜辺は突起520c1と対向しており、第1の突出部558b3の斜辺は突起520c3と対向している。
続いて、使用者は、皮膚のうち薬剤等を適用したい箇所に、マイクロニードル32が皮膚に向かうようにアプリケータA12を位置決めする。この位置決めされた状態を保持したまま、使用者は、押圧部558a,558bを筐体510(本体部512)に向けて押しつける。これにより、第1の突出部558a3の斜辺が突起520c1と当接し、第1の突出部558b3の斜辺が突起520c3と当接する。使用者は、押圧部558a,558bを筐体510(本体部512)に向けてさらに押しつけると、突起520c1が第1の突出部558a3の斜辺上を滑るように斜辺の法線方向に押し出されると共に、突起520c3が第1の突出部558b3の斜辺上を滑るように斜辺の法線方向に押し出される。これに伴い、ピストン板520に回転力が付与される結果、ピストン板520が回転する(図72〜図74参照)。従って、筐体510(本体部512)に対するピストン板520の係止(コッキング)が解除される。その後は、第1実施形態に係るアプリケータA1と同様に、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する(図74参照)。
使用者が押圧部558a,558bを筐体510(本体部512)に向けて押しつけると、第2の突出部558a4が溝体G510を通って本体部512内に挿入された状態となると共に、第2の突出部558b4が溝体G530を通って本体部512内に挿入された状態となる。第2の突出部558a4は第1の突出部558a3の下方に位置しており、第2の突出部558b4は第1の突出部558b3の下方に位置しているので、第2の突出部558a4,558b4の本体部512内への挿入状態は、ピストン板520が第2の突出部558a4,558b4を通過した後に実現される。そのため、皮膚の作用位置に到達した後のピストン板520の移動は、第2の突出部558a4,558b4によって制限される。
[12.4]作用
以上のような第12実施形態では、第1実施形態に係るアプリケータA1の作用(A)〜(D)と同様の作用及び効果を奏する。
第12実施形態に係るアプリケータA12では、使用前において突条554c,554dが溝部512k,512lの一端側に位置しており、解除部材550がロックされている。そのため、使用者が押圧部558a,558bを押圧しても、押圧部558a,558bが本体部512内に挿入されないので、押圧部558a,558bの第1の状態が保たれる。すなわち、第1の突出部558a3,558b3が突起520c1,520c3と接触することが防止される。そのため、解除部材550によってアプリケータA12の誤作動を防止することができる。また、使用する際は解除部材550を回転させるだけでよいので、簡単な操作により使用の準備を完了することができる。
第12実施形態に係るアプリケータA12では、皮膚の作用位置に到達したピストン板520と係合する第2の突出部(係合片)558a4,558b4が、解除部材550に設けられている。そのため、ピストン板520が皮膚の作用位置に到達後、ピストン板520の移動が第2の突出部558a4,558b4により制限される。そのため、ピストン板520の蓋部514側への跳ね返りが、第2の突出部558a4,558b4により抑制される。その結果、マイクロニードル32による皮膚への穿刺の確実性を高めることが可能となる。
[13]第13実施形態
[13.1]アプリケータの構成
続いて、図75〜図78を参照して、第13実施形態に係るアプリケータA13の構成を説明する。説明中、「上」との語は図75、図76及び図78の上方向に対応しており、「下」との語は図75、図76及び図78の下方向に対応している。すなわち、上下方向は、アプリケータA13の高さ方向に対応している。
アプリケータA13は、ヒト等の動物の皮膚を通して薬剤等の活性成分を動物の体内に移行するための装置である。アプリケータA13は、筐体610と、ピストン板620と、マイクロニードルアレイ30と、円錐コイルばね40と、第1の解除部材650と、第2の解除部材660とを備える。
筐体610は、図76〜図78に示されるように、中心軸が上下方向に沿って延びる円筒形状を呈する本体部612と、本体部612の上端側に配置された蓋部614と、本体部612の下端側に配置された円環状の鍔部616とを有する。筐体610の強度や材質は、第1実施形態に係るアプリケータA1の筐体10と同様としてもよい。
本体部612は、上方から見て円弧状を呈する壁部612a〜612hを有する。壁部612a〜612hは、本体部612の上端側(蓋部614側)から見て時計回りにこの順で並んでいる。壁部612a〜612hのうち隣り合う壁部は、互いに一体化されている(図77参照)。壁部612aと壁部612eとは、上方から見て本体部612の軸を中心に対向している。壁部612bと壁部612fとは、上方から見て本体部612の軸を中心に対向している。壁部612cと壁部612gとは、上方から見て本体部612の軸を中心に対向している。壁部612dと壁部612hとは、上方から見て本体部612の軸を中心に対向している。
本体部612には、壁部612a,612eに対応する位置に、それぞれ切欠き部612i,612jが設けられている。切欠き部612i,612jは、上方から見て本体部612の中心軸を中心に対向している。そのため、壁部5612aは、切欠き部612iの存在により高さが低くなっており、上端が蓋部614に達していない。壁部612eは、切欠き部612jの存在により高さが低くなっており、上端が蓋部614に達していない。
本体部612の外周面には、壁部612c,612gに対応する位置に、それぞれ溝部612k,612lが設けられている。溝部612k,612lは、本体部612の上端寄りに位置しており、周方向に沿って延びている。
壁部612aの内面には、上下方向に延びる溝部G611が壁部612h寄りに設けられていると共に、周方向に延びる溝部G612が上端近傍に設けられている。溝部G611は、壁部612aの下端近傍から上端にかけて延在している。溝部G612は、壁部612hから本体部612の周方向に延在しているが、壁部612bには到達していない。溝部G612は、溝部G611の上端と連通している。そのため、壁部612aは、溝部G611の存在により下端部を除き薄肉化された第1の部分612a1と、溝部G612の存在により上端部が薄肉化されると共に溝部G612の下方が厚肉の第2の部分612a2と、上下方向の全域にわたって第1の部分612a1よりも肉厚の第3の部分612a3とを有する。
壁部612cの内面には、上下方向に延びる溝部G621が壁部612b寄りに設けられていると共に、周方向に延びる溝部G622が上端近傍に設けられている。溝部G621は、壁部612cの下端近傍から上端にかけて延在している。溝部G622は、壁部612bから壁部612dにかけて延在しており、溝部G621の上端と連通している。そのため、壁部612cは、溝部G621の存在により下端部を除き薄肉化された第1の部分612c1と、溝部G622の存在により上端部が薄肉化されると共に溝部G622の下方が厚肉の第2の部分612c2とを有する。
壁部612eの内面には、上下方向に延びる溝部G631が壁部612d寄りに設けられていると共に、周方向に延びる溝部G632が上端近傍に設けられている。溝部G631は、壁部612eの下端近傍から上端にかけて延在している。溝部G632は、壁部612dから本体部612の周方向に延在しているが、壁部612fには到達していない。溝部G632は、溝部G631の上端と連通している。そのため、壁部612eは、溝部G631の存在により下端部を除き薄肉化された第1の部分612e1と、溝部G632の存在により上端部が薄肉化されると共に溝部G632の下方が厚肉の第2の部分612e2と、上下方向の全域にわたって第1の部分612e1よりも肉厚の第3の部分612e3とを有する。
壁部612gの内面には、上下方向に延びる溝部G641が壁部612f寄りに設けられていると共に、周方向に延びる溝部G642が上端近傍に設けられている。溝部G641は、壁部612gの下端近傍から上端にかけて延在している。溝部G642は、壁部612fから壁部612hにかけて延在しており、溝部G641の上端と連通している。そのため、壁部612gは、溝部G641の存在により下端部を除き薄肉化された第1の部分612g1と、溝部G642の存在により上端部が薄肉化されると共に溝部G642の下方が厚肉の第2の部分612g2とを有する。
蓋部614は円形状を呈する板状体である。蓋部614の下面における周縁部は、壁部612b〜612d,612f〜612hの上端と一体化されている。そのため、蓋部614は、本体部612の上端を塞いでいる。
蓋部614には、上方から見て壁部612a,612eに対応する位置に、それぞれ切欠き部614a,614bが設けられている。切欠き部614a,614bは、上方から見て蓋部614の軸を中心に対向している。切欠き部614a,614bは共に、蓋部614の中心に向けて凹んでいる。
鍔部616は、本体部612の下端から外方に向けて突出している。この鍔部616の存在により、アプリケータA13を使用するにあたり皮膚への接触面積が大きくなるので、皮膚に加わる圧力を小さくすることができる。鍔部616の上面には、4つのピン部材616a〜616dが立設されている。ピン部材616a〜616dは、第2の解除部材660を本体部612の中心軸方向に案内する案内手段として機能する。ピン部材616aは壁部612bの外周面と対向している。ピン部材616bは壁部612dの外周面と対向している。ピン部材616cは壁部612fの外周面と対向している。ピン部材616dは壁部612hの外周面と対向している。
ピストン板620は、本体部612内に収容されており、本体部612内において本体部612の中心軸に沿って上下方向に移動可能である。ピストン板620の材質は、筐体610の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質と同じであってもよい。ピストン板620は、図76に示されるように、円板状の本体620aと、本体620aの周縁から上方に向けて延びる円筒部材620bとを有する。空気抵抗の低減やピストン板620の軽量化を目的として、開口、溝又は貫通孔などが本体620aに形成されていてもよい。あるいは、ピストン板620の剛性の向上を目的として、本体620aの上面(円錐コイルばね40が配置される側の面)に突条などが設けられていてもよい。本体620aの下面(上面とは反対側の面)は、ピストン板620をマイクロニードルアレイ30に均一に作用させることを考慮して、平面状であると好ましい。しかしながら、本体620aの下面が平面以外の他の形状であってもよく、皮膚への穿刺のための各種の条件(例えば、薬剤、マイクロニードルアレイ30の形状、マイクロニードル32の高さ、マイクロニードル32の密度、穿刺速度、皮膚への衝撃力など)を考慮して、本体620aの下面の形状を適切に選択することができる。
円筒部材620bの内径は、円錐コイルばね40の最大直径D1よりも大きくなるように設定されている。円錐コイルばね40が径方向に移動したときにピストン板620から脱落しないようなストッパとしての機能を円筒部材620bが発揮できれば、円筒部材620bの高さに特に制限はない。例えば、アプリケータA13の高さをできる限り小さくしたい場合には、円筒部材620bの高さを、円錐コイルばね40を構成する金属線の太さ程度に設定することができる。円錐コイルばね40のストッパが不要な場合には、ピストン板620が円筒部材620bを有していなくてもよい。ピストン板620が円筒部材620bを有していない場合であっても、円錐コイルばね40を構成する金属線が嵌まる環状溝が本体620aに形成されていれば、円錐コイルばね40のストッパの機能を環状溝によって果たすことができる。このような円錐コイルばね40のストッパがある場合、円錐コイルばね40をピストン板620の上面に配置した状態で筐体610内にこれらを取り付ける際に、円錐コイルばね40がピストン板620に対して位置ずれしてしまうことを防止できる。
ピストン板620の周縁(外周面)には、径方向(ピストン板の厚さ方向とは交差する方向)で且つ外方に向けて突出する複数の突起(第13実施形態では4つの突起)620c1〜620c4が設けられている。突起620c1〜620c4は、上方(円錐コイルばね40が載置されるピストン板620の上面側)から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。突起620c1〜620c4は、第13実施形態において台形状を呈する板状体である。しかしながら、壁部612a,612e,612e,612gの第2の部分612a2,612c2,612e2,612g2への係止が可能であり、溝部G611,G621,G631,G641内での移動が可能であれば、突起620c1〜620c4は他の形状(例えば、円柱状、多角柱状、異形柱状、円錐状、多角錐状、截頭円錐状、切頭多角錐状など)を呈していてもよい。
突起620c1は、溝部G611内をその延在方向に沿って移動可能である。突起620c2は、溝部G621内をその延在方向に沿って移動可能である。突起620c3は、溝部G631内をその延在方向に沿って移動可能である。突起620c4は、溝部G641内をその延在方向に沿って移動可能である。そのため、ピストン板620は、溝部G611,G621,G631,G641の延在方向(本体部612の中心軸方向)に沿って上下方向に案内されうる。
突起620c1は、溝部G611の上端側に位置している状態において、溝部G611と連通する溝部G612内を水平方向に移動可能である。そのため、突起620c1は、溝部G611に隣接する壁部612aの第2の部分612a2の上端に載置されうる。突起620c2は、溝部G621の上端側に位置している状態において、溝部G621と連通する溝部G622内を水平方向に移動可能である。そのため、突起620c2は、溝部G621に隣接する壁部612cの第2の部分612c2の上端に載置されうる。
突起620c3は、溝部G631の上端側に位置している状態において、溝部G631と連通する溝部G632内を水平方向に移動可能である。そのため、突起620c3は、溝部G631に隣接する壁部612eの上端に載置されうる。突起620c4は、溝部G641の上端側に位置している状態において、溝部G641と連通する溝部G642内を水平方向に移動可能である。そのため、突起620c4は、溝部G641に隣接する壁部612gの第2の部分612g2の上端に載置されうる。
壁部612a,612e,612e,612gの第2の部分612a2,612c2,612e2,612g2の上端は、周方向において水平面と平行となるように延びていてもよいし、周方向において水平面に対して傾いていてもよい。特に、第2の部分612a2,612c2,612e2,612g2が隣り合う溝部G611,G621,G631,G641に向かうにつれてその高さが高くなるように、第2の部分612a2,612c2,612e2,612g2の上端が傾いていてもよい。この場合、第2の部分612a2,612c2,612e2,612g2の上端にそれぞれ載置されている突起620c1〜620c4が溝部G611,G621,G631,G641に向かう際に、突起620c1〜620c4が第2の部分612a2,612c2,612e2,612g2の上端を登坂しなければならない。そのため、アプリケータA13に外部から衝撃などが加わったとしても、突起620c1〜620c4が溝部G611,G621,G631,G641内に意図せず移動してしまうことが防止できる。
マイクロニードルアレイ30及び円錐コイルばね40は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
第1の解除部材650は、図76に示されるように、円筒状を呈する本体652と、一対の突起654a,654bと、一対の突出部656a,656bと、4つの突条658a〜658dとを有する。第1の解除部材650の材質は、筐体610の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質と同じであってもよい。第1の解除部材650は、可撓性又は弾性を有する材質により構成されていてもよい。
本体652は、アプリケータA13の完成状態において、筐体610の本体部612の外周面に挿通され、当該外周面を覆っている。本体652の内径は本体部612の外径と同程度か本体部612の外径よりも若干大きくなるように設定されている。そのため、本体652は、本体部612に対して相対的に回転可能である。
一対の突起654a,654bは、本体652の中心軸側に向かうように本体652の内周面に突設されている。突起654a,654bは、本体652の内周面において互いに対向するように位置している。アプリケータA13の完成状態において、突起654aは、本体部612の溝部612k内に挿入され、溝部612kと係合している。アプリケータA13の完成状態において、突起654bは、本体部612の溝部612l内に挿入され、溝部612lと係合している。そのため、突起654a,654bはそれぞれ溝部612k,612l内を移動可能である。
一対の突出部656a,656bは、本体652の中心軸側に向かうように本体652の内周面に突設されている。突出部656a,656bは、本体652の内周面において互いに対向するように位置している。アプリケータA13の完成状態において、突出部656aは、本体部612の切欠き部612i内に挿入されている。アプリケータA13の完成状態において、突出部656bは、本体部612の切欠き部612j内に挿入されている。
4つの突条658a〜658dは、本体652の外周面上に設けられている。突条658a〜658dは、本体部612の中心軸(本体652の中心軸)方向に沿って、本体652の下端部から中央部にかけて延在している。アプリケータA13の完成状態において、突条658aは本体部612の壁部612aと対向し、突条658bは本体部612の壁部612cと対向し、突条658cは本体部612の壁部612eと対向し、突条658dは本体部612の壁部612gと対向している。
第2の解除部材660は、図75及び図76に示されるように、筒状を呈する側壁部662と、側壁部662の上端部に配置された円板状の天板部664とを有する。第2の解除部材660の材質は、筐体610の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質と同じであってもよい。第2の解除部材660は、可撓性又は弾性を有する材質により構成されていてもよい。
側壁部662は、本体部612の中心軸方向から見て、円弧状を呈する第1〜第4の部分662a〜662dと、C字形状を呈する第5〜第8の部分662e〜662hとを有する。第1〜第4の部分662a〜662dは、同一半径の円周上に位置している。第1〜第4の部分662a〜662dの下端部にはそれぞれ、切欠き部666a〜666dが形成されている。アプリケータA13の完成状態において、切欠き部666a〜666dがそれぞれ突条658a〜658dを囲むように、第2の解除部材660が筐体610に取り付けられる。
切欠き部666aは、本体部612の中心軸方向に沿って互いに略平行に延びる一対の第1及び第2の辺と、第1の部分662aの周方向に沿って延びる第3の辺と、本体部612の中心軸方向及び第1の部分662aの周方向に共に交差するように延びる第4の辺とを有する。第1の辺は第5の部分662e寄りに位置しており、第2の辺は第8の部分662h寄りに位置している。第1の辺の長さは、第2の辺よりも短い。第3の辺の一端は第2の辺の上端と接続され、第3の辺の他端は第5の部分662e側に向けて延びている。第3の辺の長さは、第1及び第2の辺の間隔よりも短い。第4の辺の一端は第1の辺の上端と接続され、第4の辺の他端は第3の辺の他端と接続されている。従って、第4の辺は、側方から見て、第1の辺から第2の辺に向かうにつれて第1の部分662aの下端側から上端側に向けて傾斜している。切欠き部666b〜666dの形状は、切欠き部666aと同様であるので、その説明を省略する。
第5の部分662eは、第1及び第2の部分662a,662bを一体的に連結している。第6の部分662fは、第2及び第3の部分662b,662cを一体的に連結している。第7の部分662fは、第3及び第4の部分662c,662dを一体的に連結している。第8の部分662hは、第4及び第1の部分662d,662aを一体的に連結している。すなわち、上方から見て、第1の部分662a、第5の部分662e、第2の部分662b、第6の部分662f、第3の部分662c、第7の部分662g、第4の部分662d及び第8の部分662hが時計回りにこの順で並んでいる。第5〜第8の部分662e〜662hはいずれも、半割り筒形状を呈している。そのため、第5〜第8の部分662e〜662hの凹部がそれぞれピン部材616a〜616dと対向している場合、ピン部材616a〜616dは第5〜第8の部分662e〜662h内に挿通されうる。従って、ピン部材616a〜616dは、その延在方向に第2の解除部材660を案内する案内手段として機能する。
側壁部662は、アプリケータA13の完成状態において、第1の解除部材650の本体652の外周面に挿通され、当該外周面を覆っている。側壁部662の内径は本体652の外径と同程度か本体652の外径よりも若干大きくなるように設定されている。
[13.2]アプリケータの製造方法
続いて、アプリケータA13の製造方法について説明する。まず、第1実施形態に係るアプリケータA1の製造工程のうち第1、第4及び第3の工程と同様の各工程をこの順に経て、ピストン板620が本体部612内に搭載される(後述の図81参照)。
この際、突起620c1〜620c4がそれぞれ壁部612a,612c,612e,612gの第2の部分612a2,612c2,612e2,612g2に載置されているので、蓋部614とピストン板620とで円錐コイルばね40が圧縮されても、円錐コイルばね40によってピストン板620が下方向に押し出されない。すなわち、ピストン板620は、筐体610(本体部612)に係止されている。従って、ピストン板620は、蓋部614とピストン板620とで円錐コイルばね40が圧縮された状態のまま、本体部612内において蓋部614側の退避位置で保持される。このように、ピストン板620が筐体610(本体部612)に係止され、蓋部614とピストン板620とで円錐コイルばね40が圧縮された状態を、以下では「係止状態」という。
このように、退避位置でピストン板620を筐体610(本体部612)に係止することを、コッキング(cocking)ともいう。本実施形態では、円錐コイルばね40の中心線方向から見て円錐コイルばね40を構成する金属線が重なり合っていないので、ピストン板620が筐体610に係止(コッキング)された状態においてピストン板620と蓋部614との間に挟まれる円錐コイルばね40は、線径よりも若干大きな高さとなる。ただし、ピストン板620の構成によっては、ピストン板620が筐体610に係止(コッキング)された状態においてピストン板620が蓋部614に極めて近接し、ピストン板620と蓋部614との間に挟まれる円錐コイルばね40が線径と同程度の高さにもなりうる。
続いて、第1の解除部材650の突起654a,654bをそれぞれ溝部612k,612lに係合させて、突条654c,654dが溝部612k,612lの一端側に位置するように、第1の解除部材650を筐体610(本体部612)に取り付ける。このとき、図81に示されるように、第1の解除部材650の突出部656aは、壁部612aの第3の部分612a3上で、且つ、ピストン板620の突起620c1の側方に位置する。同様に、第1の解除部材650の突出部656bは、壁部612cの第3の部分612c3上で、且つ、ピストン板620の突起620c3の側方に位置する。
続いて、第1の解除部材650を覆うように、第2の解除部材660を筐体610に取り付ける。このとき、切欠き部666a〜666dはそれぞれ、突条658a〜658dを囲む。このとき、ピン部材616a〜616dの先端はそれぞれ、第5〜第8の部分662e〜662hの凹部と対向せず、第1〜第4の部分662a〜662dと対向する。従って、ピン部材616a〜616dは第5〜第8の部分662e〜662h内に挿通されず、第2の解除部材660はピン部材616a〜616dよりも下方に移動できない。すなわち、ピン部材616a〜616dは第2の解除部材660の移動を規制するストッパとして機能している。
以上の工程を経て、アプリケータA13の組み立てが完了する。従って、アプリケータA13が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、円錐コイルばね40は縮まった状態のままである。
[13.3]アプリケータの使用方法
続いて、アプリケータA13の使用方法について説明する。まず、使用者は、第2の解除部材660を摘まんで第2の解除部材660を回転させ、ピン部材616a〜616dの先端を第5〜第8の部分662e〜662hの凹部にそれぞれ対向させる(図79及び図80参照)。これにより、第2の解除部材660のロックが解除され、第2の解除部材660の鍔部616側への移動が可能となる。このとき、図79及び図80に示されるように、切欠き部666a〜666dの第4の辺(斜辺)は突条658a〜658dの先端と対向する。
続いて、使用者は、皮膚のうち薬剤等を適用したい箇所に、マイクロニードル32が皮膚に向かうようにアプリケータA13を位置決めする。この位置決めされた状態を保持したまま、使用者は、第2の解除部材660を筐体610(本体部612)に向けて押しつける。これにより、第2の解除部材660がピン部材616a〜616dの延在方向に沿って鍔部616に近づくように案内される。このとき、切欠き部666a〜666dの第4の辺(斜辺)は突条658a〜658dの先端とそれぞれ当接する。使用者は、第2の解除部材660を筐体610(本体部612)に向けてさらに押しつけると、突条658a〜658dが切欠き部666a〜666dの第4の辺(斜辺)上を滑るように本体652の周方向に押し出される。これに伴い、第1の解除部材650に回転力が付与される結果、突起654a,654bがそれぞれ溝部612k,612lの他端まで案内され、突起620c1,620c3がそれぞれ突出部656a,656bによって押し出される。以上により、ピストン板620が回転する(図82及び図83参照)。従って、筐体610(本体部612)に対するピストン板620の係止(コッキング)が解除される。その後は、第1実施形態に係るアプリケータA1と同様に、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する。
[13.4]作用
以上のような第13実施形態では、第1実施形態に係るアプリケータA1の作用(A)〜(D)と同様の作用及び効果を奏する。
第13実施形態に係るアプリケータA13では、使用前において、ピン部材616a〜616dの先端はそれぞれ、第5〜第8の部分662e〜662hの凹部と対向せず、第1〜第4の部分662a〜662dと対向しており、第2の解除部材660がロックされている。そのため、使用者が第2の解除部材660を押圧しても、ピン部材616a〜616dが第5〜第8の部分662e〜662hの凹部内に挿入されない。従って、第2の解除部材660及びピン部材616a〜616dによってアプリケータA13の誤作動を防止することができる。また、使用する際は第2の解除部材660を回転させるだけでよいので、簡単な操作により使用の準備を完了することができる。
第13実施形態に係るアプリケータA13では、第2の解除部材660は、本体部612の中心軸方向に移動可能となるよう本体部612の外側に取り付けられている。押圧力が第2の解除部材660に付与されると、第2の解除部材660が本体部612の一端側(蓋部614側)から他端側(鍔部616側)に向けて移動し、これに伴い、第1の解除部材650がピストン板620に回転力を付与する。その結果、ピストン板620の係止状態が解除され、ピストン板620が皮膚の作用位置に到達する。そのため、第2の解除部材660を介してアプリケータA13が皮膚に押しつけられた状態で、マイクロニードル32による皮膚への穿刺が行われる。従って、アプリケータA13が皮膚に押しつけられることにより、皮膚がアプリケータA13で引き伸ばされる。その結果、穿刺の際に、皮膚の表面に引っ張り力を作用させることができるので、マイクロニードル32が皮膚に刺さりやすくなる。
[14]第14実施形態
[14.1]アプリケータの構成
続いて、図84〜図86を参照して、第14実施形態に係るアプリケータA14の構成を説明する。説明中、「上」との語は図84及び図85の上方向に対応しており、「下」との語は図84及び図85の下方向に対応している。すなわち、上下方向は、アプリケータA14の高さ方向に対応している。
アプリケータA14は、ヒト等の動物の皮膚を通して薬剤等の活性成分を動物の体内に移行するための装置である。アプリケータA14は、筐体710と、ピストン部材720と、マイクロニードルアレイ30と、円錐コイルばね40と、一対の解除部材750a,750bとを備える。
筐体710は、本体部712と、蓋部716とを有する。筐体710の強度や材質は、第1実施形態に係るアプリケータA1の筐体10と同様としてもよい。
本体部712は、図84及び図85に示されるように、中心軸が上下方向に沿って延びる円筒形状を呈している。蓋部716は、円板状を呈しており、本体部712の上端部に取り付けられている。蓋部716の中心部には、後述するアーム部材724が通過可能な矩形状の貫通孔716aが形成されている。蓋部716の上面には、解除部材750a,750bをそれぞれ案内する案内部718a,718bが設けられている。
案内部718aは、貫通孔716aの一方の長辺から蓋部716の外周縁に向けて蓋部716の径方向に延びている。案内部718aは、断面L字形状を呈する一対の案内部材718a1,718a2を有する。案内部材718a1は、蓋部716の上面に立設された突条と、当該突条の先端から案内部材718a2に向けて延びる矩形状板とを有する。案内部材718a2は、蓋部716の上面に立設された突条と、当該突条の先端から案内部材718a1に向けて延びる矩形状板とを有する。案内部材718a1,718a2の各突条間の直線距離は、解除部材750aの幅と同等か解除部材750aの幅よりも若干大きくなるように設定されている。案内部材718a1,718a2の各矩形状板と蓋部716との直線距離は、解除部材750aの厚さと同等か解除部材750aの厚さよりも若干大きくなるように設定されている。
案内部718bは、貫通孔716aの他方の長辺から蓋部716の外周縁に向けて蓋部716の径方向に延びている。案内部718bは、断面L字形状を呈する一対の案内部材718b1,718b2を有する。案内部材718b1は、蓋部716の上面に立設された突条と、当該突条の先端から案内部材718b2に向けて延びる矩形状板とを有する。案内部材718b2は、蓋部716の上面に立設された突条と、当該突条の先端から案内部材718b1に向けて延びる矩形状板とを有する。案内部材718b1,718b2の各突条間の直線距離は、解除部材750bの幅と同等か解除部材750bの幅よりも若干大きくなるように設定されている。案内部材718b1,718b2の各矩形状板と蓋部716との直線距離は、解除部材750bの厚さと同等か解除部材750bの厚さよりも若干大きくなるように設定されている。
ピストン部材720は、本体部712内に収容されており、本体部712内において本体部712の中心軸に沿って上下方向に移動可能である。ピストン部材720の材質は、筐体710の材質と同じであってもよいし、マイクロニードルアレイ30の材質と同じであってもよい。ピストン部材720は、図85に示されるように、円板状の本体(ピストン板)722と、本体722の上面(円錐コイルばね40が配置される側の面)に設けられたアーム部材724とを有する。空気抵抗の低減やピストン部材720の軽量化を目的として、開口、溝又は貫通孔などが本体722に形成されていてもよい。あるいは、ピストン部材720の剛性の向上を目的として、本体722の上面に突条などが設けられていてもよい。本体722の下面(上面とは反対側の面)は、ピストン部材720をマイクロニードルアレイ30に均一に作用させることを考慮して、平面状であると好ましい。しかしながら、本体722の下面が平面以外の他の形状であってもよく、皮膚への穿刺のための各種の条件(例えば、薬剤、マイクロニードルアレイ30の形状、マイクロニードル32の高さ、マイクロニードル32の密度、穿刺速度、皮膚への衝撃力など)を考慮して、本体722の下面の形状を適切に選択することができる。
アーム部材724は、共に四角柱状を呈する第1及び第2の部分724a,724bを有する。第1の部分724aは、本体部712の上面に立設されている。第2の部分724bは、本体部712の上面と平行な方向に延在している。第2の部分724bの中央部は、第1の部分724aの先端と接続されている。従って、アーム部材724は、第1及び第2の部分724a,724bによりT字形状を呈する。
マイクロニードルアレイ30及び円錐コイルばね40は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。円錐コイルばね40は、小径側が下側(本体部712側)で大径側が上側(第2の部分724b側)となるように、アーム部材724の周囲に取り付けられている。
一対の解除部材750a,750bは、平板状を呈する。解除部材750aは、使用者による操作が行われる第1の部分750a1と、案内部718aによる案内が行われる第2の部分750a2とを有する。解除部材750bは、使用者による操作が行われる第1の部分750b1と、案内部718aによる案内が行われる第2の部分750b2とを有する。
[14.2]アプリケータの製造方法
続いて、アプリケータA14の製造方法について説明する。まず、上記したアプリケータA14の各部品(筐体710、ピストン部材720、マイクロニードルアレイ30、円錐コイルばね40及び解除部材750a,750b)を用意する。用意したマイクロニードルアレイ30のマイクロニードル32には、予めコーティングCが施されている。次に、マイクロニードルアレイ30をピストン部材720の本体部712の下面に取り付ける。
続いて、円錐コイルばね40の小径側が下側(本体部712側)で大径側が上側(第2の部分724b側)となるように、円錐コイルばね40をアーム部材724の周囲に取り付ける。続いて、蓋部716と本体部712との間で円錐コイルばね40を圧縮させつつ、アーム部材724を貫通孔716aに挿通させる。続いて、第2の部分724bが貫通孔716aを完全に通過した後に、第2の部分724bが貫通孔716aと重ならない位置に移動するまでピストン部材720を回転させ、第2の部分724b(ピストン部材720)を蓋部716に係止させる(図84参照)。従って、本体部712は、蓋部716と本体部712とで円錐コイルばね40が圧縮された状態のまま、本体部712内において蓋部716側の退避位置で保持される。このように、ピストン部材720が筐体710(蓋部716)に係止され、蓋部716と本体部712とで円錐コイルばね40が圧縮された状態を、以下では「係止状態」という。
このように、退避位置でピストン部材720を筐体710(蓋部716)に係止することを、コッキング(cocking)ともいう。本実施形態では、円錐コイルばね40の中心線方向から見て円錐コイルばね40を構成する金属線が重なり合っていないので、ピストン部材720が筐体710に係止(コッキング)された状態において本体部712と蓋部716との間に挟まれる円錐コイルばね40は、線径よりも若干大きな高さとなる。ただし、ピストン部材720の構成によっては、ピストン部材720が筐体710に係止(コッキング)された状態において本体部712が蓋部716に極めて近接し、本体部712と蓋部716との間に挟まれる円錐コイルばね40が線径と同程度の高さにもなりうる。
続いて、解除部材750a,750bの第2の部分750a2,750b2がそれぞれ案内部718a,718bに挿通するように、解除部材750a,750bを案内部718a,718bに取り付ける。
以上の工程を経て、アプリケータA14の組み立てが完了する。従って、アプリケータA14が製造後に出荷されて使用者により使用されるまで、円錐コイルばね40は縮まった状態のままである。
[14.3]アプリケータの使用方法
続いて、アプリケータA14の使用方法について説明する。まず、皮膚のうち薬剤等を適用したい箇所に、マイクロニードル32が皮膚に向かうようにアプリケータA14を位置決めする。この位置決めされた状態を保持したまま、解除部材750a,750bの第1の部分750a1,750b1が互いに近接するように第1の部分750a1,750b1を押しつける。これにより、第2の部分750a2,750b2がそれぞれ案内部718a,718bに案内されて、第2の部分750a2,750b2の先端がそれぞれピストン部材720の第2の部分724bと当接する。第1の部分750a1,750b1をさらに押しつけると、ピストン部材720の第2の部分724bが貫通孔716aと重なるまで回転する。これに伴い、ピストン部材720に回転力が付与される結果、ピストン部材720が回転する。その結果、筐体710(蓋部716)に対するピストン部材720の係止(コッキング)が解除される。そして、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、ピストン部材720が本体部712内を外方(皮膚)に向かって移動し、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する。
[14.4]作用
以上のような第14実施形態では、第1実施形態に係るアプリケータA1の作用(A)〜(D)と同様の作用及び効果を奏する。
[15]第15実施形態
続いて、図87〜図89を参照して、第15実施形態に係るアプリケータA15について説明する。第15実施形態に係るアプリケータA15は、筐体810及び解除部材850の構成の点で、第14実施形態に係るアプリケータA14と異なる。以下では、第15実施形態に係るアプリケータA15と第14実施形態に係るアプリケータA14との相違点について主として説明し、重複する説明を省略する。
具体的には、筐体810は、本体部812と、蓋部816とを有する。本体部712は、図87及び図88に示されるように、中心軸が上下方向に沿って延びる円筒形状を呈している。蓋部816は、円板状を呈しており、本体部812の上端寄りに取り付けられている。蓋部816の中心部には、アーム部材724が通過可能な矩形状の貫通孔816aが形成されている。蓋部816の上面には、円柱状を呈する一対の突起818a,818bが設けられている。突起818a,818bは、貫通孔816aの長辺に対向する位置において、貫通孔816aを間に置くように配置されている。突起818a,818bは、蓋部816の上面におけるアーム部材724の第2の部分724bの移動(回転)を制限する。
解除部材850は、図87〜図89に示されるように、中心軸が上下方向に沿って延びる円筒形状を呈する側壁部852と、側壁部852の上端部に配置された円板上の天板部854とを有する。側壁部852の内径は、本体部812の外径と同程度か本体部812の外径よりも若干大きくなるように設定されている。天板部854の下面側(側壁部852側)には、一対の突条856a,856bが設けられている。突条856a,856bは、側壁部852の中心軸方向から見て円弧状を呈しており、互いに向かい合っている。
突条856a,856bのそれぞれにおいて、天板部854と接する縁部は、天板部854と離れる側の縁部よりも長い。突条856a,856bのそれぞれにおいて、両側縁部は、天板部854から離れるにつれて、他方の側縁部に近づくように傾斜している。従って、互いに向かい合う突条856aの一端と突条856bの一端との間に形成された溝G801は、天板部854から離れるにつれてその幅が大きくなっている。互いに向かい合う突条856aの他端と突条856bの他端との間に形成された溝G802は、天板部854から離れるにつれてその幅が大きくなっている。
ピストン部材720が筐体810(蓋部816)に係止され、蓋部816と本体部712とで円錐コイルばね40が圧縮された係止状態では、図90に示されるように、アーム部材724の第2の部分724bの一端側が突起818aに近接しており、当該第2の部分724bの他端側が突起818bに近接している。この状態において、筐体810にさらに解除部材850を取り付けることにより、アプリケータA15が完成する。アプリケータA15の完成状態において、第2の部分724bの一端側は溝G801と対向し、第2の部分724bの他端側は溝G802と対向する。
ピストン部材720の係止を解除する際は、解除部材850を筐体810(本体部812)に向けて押しつける。このとき、第2の部分724bの各端部は、突条856a,856bの斜辺をなす側縁上を滑るように本体部812の周方向に押し出される。解除部材850をさらに押しつけると、ピストン部材720の第2の部分724bが貫通孔816aと重なるまで回転する。これに伴い、ピストン部材720に回転力が付与される結果、ピストン部材720が回転する。その結果、筐体810(蓋部816)に対するピストン部材720の係止(コッキング)が解除される(図91参照)。そして、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、ピストン部材720が本体部812内を外方(皮膚)に向かって移動し、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する。
以上のような第15実施形態に係るアプリケータA15は、第14実施形態に係るアプリケータA14と同様の作用及び効果を奏する。さらに第15実施形態に係るアプリケータA15では、解除部材850を筐体810(本体部812)に向けて押しつけることにより、筐体810(蓋部816)に対するピストン部材720の係止(コッキング)が解除される。そのため、解除部材850を介してアプリケータA15が皮膚に押しつけられた状態で、マイクロニードル32による皮膚への穿刺が行われる。従って、アプリケータA15が皮膚に押しつけられることにより、皮膚がアプリケータA15で引き伸ばされる。その結果、穿刺の際に、皮膚の表面に引っ張り力を作用させることができるので、マイクロニードル32が皮膚に刺さりやすくなる。
[16]他の実施形態
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、ピストン板20とマイクロニードルアレイ30とが一体化されていたが、図92に示されるアプリケータA16のように、これらが別体であってもよい。これらが別体である場合には、マイクロニードルアレイ30を皮膚上に載置し、マイクロニードルアレイ30と対向するようにアプリケータA16を皮膚上に載置した後に、アプリケータA16を作動させることで、ピストン板20が皮膚上のマイクロニードルアレイ30に衝突し、皮膚への穿刺が行われる。図92に示されるアプリケータA16は、第1実施形態に係るアプリケータA1をベースとした変形例であるが、他のアプリケータA2〜A15においても同様の変形をすることが可能である。
上記の実施形態では、マイクロニードルアレイ30がピストン板と一体化されていたが、図93に示されるアプリケータA17のように、ピストン板20の下面にマイクロニードル32が一体成形されていてもよい。アプリケータA17は、ピストン板20の点で第1実施形態に係るアプリケータA1と相違する。この場合、ピストン板20の本体20aはマイクロニードルアレイの基板と同視できる。すなわち、マイクロニードルアレイがピストン板20として振る舞っていると見ることもできる。図93に示されるアプリケータA17は、第1実施形態に係るアプリケータA1をベースとした変形例であるが、他のアプリケータA2〜A15においても同様の変形をすることが可能である。
上記の実施形態では、筐体の本体部の内周面に、その軸方向に延びる複数の溝部が設けられていると共に、溝部内を移動可能な複数の突起がピストン板に設けられていた。しかしながら、図94に示されるアプリケータA18のように、筐体910の本体部912の内周面に、その軸方向に延びる複数の突条912h1〜912h4が設けられていると共に、ピストン板920に複数の切り欠き溝部920c1〜920c4が設けられていてもよい。アプリケータA18は、筐体910の本体部912と、ピストン板920との点で、第1実施形態に係るアプリケータA1と相違する。
具体的には、筐体910は、円筒状を呈する外壁912aと、円筒状を呈する内壁912bと、円環状を呈する底壁とを有する。外壁912aの径は、内壁912bの径よりも大きい。そのため、外壁912aは内壁912bよりも外側に位置する。外壁912aの中心軸は、内壁912bの中心軸と略一致しているが、一致していなくてもよい。外壁912aと内壁912bとは、連結壁912g1〜912g8によって連結されており、両者の剛性が高められている。
外壁912aの外周面のうち上端寄り(蓋部14寄り)の位置には、円環状を呈する鍔部材912eが設けられている。鍔部材912eは、外壁912aの外周面から外方に向けて突出している。外壁912aの上端と鍔部材912eとの間には、周方向に延びる切欠き部912fが設けられている。蓋部14が本体部912に取り付けられると、切欠き部912fは、蓋部14の切欠き部14cと共に、筐体910の内外を連通する貫通孔Hを構成する。
内壁912bの内周面には、本体部912の中心軸に沿って上下方向に延びる複数(図94においては4つ)の突条912h1〜912h4が設けられている。突条912h1〜912h4は、本体部912の上端側(蓋部14側)から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。突条912h1〜912h4の突出高さは、後述するピストン板920の切り欠き溝部920c1〜920c4の係合した状態でピストン板920を案内できる程度の高さであればよい。
底壁は、外壁912aの下端と、内壁912bの下端とに接続されている。底壁の外径は、外壁912aの外周面の径と同程度である。底壁の内径は、突条912h1〜912h4の先端に外接する円の径と同程度である。そのため、本体部912の上端側(蓋部14側)から見て、隣り合う突条912h1〜912h4の間には底壁が位置している。
ピストン板920は、本体部912内に収容されており、本体部912内において本体部912の中心軸に沿って上下方向に移動可能である。ピストン板920は、円板状の本体920aと、本体920aの周縁から上方に向けて延びる円筒部材920bとを有する。円筒部材920bの内径は、円錐コイルばね40の最大直径D1よりも大きくなるように設定されている。
ピストン板920の周縁には、その厚さ方向に延びる複数(図94では4つ)の切り欠き溝部920c1〜920c4が設けられている。切り欠き溝部920c1〜920c4は、上方(円錐コイルばね40が載置されるピストン板920の上面側)から見て時計回りにこの順で、周方向において一定間隔を有しつつ配置されている。
切り欠き溝部920c1〜920c4はそれぞれ、突条912h1〜912h4と係合可能である。そのため、切り欠き溝部920c1〜920c4がそれぞれ突条912h1〜912h4と係合した状態において、ピストン板920は、突条912h1〜912h4の延在方向(本体部912の中心軸方向)に沿って上下方向に案内されうる。一方、ピストン板920が突条912h1〜912h4の上端側に位置している状態において、上方から見て突条912h1〜912h4と切り欠き溝部920c1〜920c4とが重なっていない場合に、ピストン板920は、突条912h1〜912h4の上端に載置されて筐体910(本体部912)に係止されうる。
ピストン板920の周縁には、内側に向けて窪む凹部920dが設けられている。アプリケータA18の完成状態(ピストン板920が本体部912に係止された状態)において、凹部920dには解除部材50の突出部50dが係合される。そのため、解除部材50を貫通孔Hの他端側にスライドさせると、突出部50dがピストン板920に回転力を付与し、ピストン板920が回転する。上方から見て突条912h1〜912h4と切り欠き溝部920c1〜920c4とが重なり合うまでピストン板920が回転すると、筐体910(本体部912)に対するピストン板920の係止(コッキング)が解除される。その結果、円錐コイルばね40の付勢力(弾性力)によって、ピストン板920が突条912h1〜912h4(本体部912の中心軸)に沿って本体部912内を外方(皮膚)に向かって移動し、マイクロニードルアレイ30が皮膚に衝突する。このとき、ピストン板920は底壁と当接するので、ピストン板920が筐体910(本体部912)の外へ飛び出すことが防止される。
図94に示されるアプリケータA18は、第1実施形態に係るアプリケータA1をベースとした変形例であるが、他のアプリケータA2〜A10,A12,A13においても同様の変形をすることが可能である。
上記の実施形態では、マイクロニードル32が基板31の表面上において千鳥状(互い違い)に略等間隔となるように配列されていたが、基板31においてマイクロニードル32の密度が異なっていてもよい。例えば、マイクロニードル32の密度を、基板31の周縁側よりも中心近傍において高くしたり、基板31の中心近傍よりも周縁側において高くしたりしてもよい。
マイクロニードル32の高さは、全て同じでもよいし、異なっていてもよい。マイクロニードル32の高さが異なる場合には、例えば、基板の周縁側よりも中心近傍におけるマイクロニードル32の高さを高くしてもよいし、基板の中心近傍よりも周縁側におけるマイクロニードル32の高さを高くしてもよい。
図95(a)に示されるように、両端部が、中心線に直交する仮想平面に沿うように平坦に削られている円錐コイルばね41を、上記の円錐コイルばね40の代わりに用いてもよい。例えば第1実施形態に係るアプリケータA1に円錐コイルばね41を採用した場合、円錐コイルばね41の小径側の端部は蓋部14と当接し、円錐コイルばね41の大径側の端部はピストン板20と当接する。そのため、円錐コイルばね41をこのように構成すると、蓋部14及びピストン板20と円錐コイルばね41との接触面積が大きくなる。そのため、筐体10内において、円錐コイルばね41を安定して配置できる。
上記の実施形態では、ピストン板又はピストン部材に付勢力を付与するために円錐コイルばね40を用いたが、他の形状の非線形コイルばねを用いてもよい。他の形状の非線形コイルばねとしては、例えば、鼓型コイルばね42(図95(b)参照)や樽型コイルばね43(図95(c)参照)が挙げられる。
上記の実施形態では、円錐コイルばね40を構成する金属線が、円錐コイルばね40の中心線の延在方向から見て重なり合っていなかったが、中心線の延在方向から見て重なり合うように金属線を巻回させた円錐コイルばね40を用いてもよい。どちらの場合であっても、円錐コイルばね40の自由高さhが、線径dと総巻き数とを乗算した値よりも小さくなるように設定できる。
上記の実施形態では、ピストン板の突起を各種の溝部によって案内していたが、当該溝部は、筐体の本体部を貫通していても、貫通していなくてもよい。すなわち、ピストン板の突起が内部を移動可能な開口部であればよい。
上記の実施形態では、ピストン板の突起を溝部内に係合して、溝部により突起を案内することでピストン板を本体部内において移動させていたが、ピストン板を案内する手段はこれに限られない。例えば、ピストン板の外径と本体部の内径とを同程度に設定し、ピストン板の外周面と本体部の内周面との摺動により、ピストン板を本体部内において案内することもできる。すなわち、ピストン板を本体部の軸方向に案内するにあたり、当該軸方向に延びる溝部が本体部に形成されていなくてもよい。
上記の実施形態では、ピストン板に回転力を付与して、筐体(本体部)に対するピストン板の係止(コッキング)を解除していた。上記の実施形態では、ピストン部材に回転力を付与して、筐体(蓋部)に対するピストン部材の係止(コッキング)を解除していた。しかしながら、ピストン板又はピストン部材の係止を解除する際にピストン板又はピストン部材に付与される力は、回転力に限られない。例えば、ピストン板又はピストン部材を筐体に対して水平方向に移動させることで、ピストン板又はピストン部材の係止を解除させてもよい。また、係止部材を介して筐体(本体部)に対し係止されたピストン板はその場に留まり、係止部材を水平方向に移動させたり回転させることにより、ピストン板の係止を解除させてもよい。あるいは、係止部材を介して筐体(蓋部)に対しピストン部材を係止させるようにし、ピストン部材はその場に留まり、係止部材を水平方向に移動させたり回転させることにより、ピストン部材の係止を解除させてもよい。
図96及び図97に示されるアプリケータA19のように、溝部G1〜G4が、本体部12の中心軸方向と直交する方向から見て当該中心軸方向に対して斜めに延びていてもよい。この場合、ピストン板20が本体部12内を旋回しながら移動し、皮膚の作用位置に到達する。そのため、皮膚の作用位置にピストン板20が到達してピストン板20に衝撃力が生じ、ピストン板20に反力が作用した場合であっても、溝部G1〜G4が当該中心軸方向に対して斜めに延びているので、ピストン板20が溝部G1〜G4を逆行して移動し難い。従って、ピストン板20が皮膚の作用位置に到達後に、ピストン板20が蓋部14側に跳ね返り難くなる。その結果、マイクロニードル32による皮膚への穿刺の確実性を高めることが可能となる。図96及び図97に示されるアプリケータA19は、第1実施形態に係るアプリケータA1をベースとした変形例であるが、他のアプリケータA2〜A10,A12,A13においても同様の変形をすることが可能である。
図98に示されるアプリケータA20のように、ピストン板20の突起20c1〜20c4のうち本体部12の下端側(底壁12d側)に向かう面は、外方に向かうにつれて本体部12の上端側(蓋部14側)に近づくように本体部12の中心軸方向に対して傾斜した斜面であってもよい。本体部12の底壁12dのうち突起20c1〜20c4と係止される部分は、突起20c1〜20c4の斜面に対応する斜面を有していてもよい。この場合、皮膚の作用位置にピストン板20が到達して、ピストン板20の突起20c1〜20c4と本体部12の底壁12dとが衝突したときに、ピストン板20の突起20c1〜20c4と本体部12の底壁12dとの間に生じた衝撃力が本体部12の中心軸方向と当該中心軸方向に直交する方向とに分散する。従って、アプリケータA20の機械的強度を向上させることができると共に、ピストン板20の突起20c1〜20c4と本体部12の底壁12dとが衝突した際に生ずる衝突音を低減することができる。また、ピストン板20の突起20c1〜20c4と本体部12の底壁12dとの衝突の際に生じた衝撃力が分散するので、ピストン板20に対して本体部12の中心軸方向に作用する反力が小さくなる。従って、ピストン板20の突起20c1〜20c4と本体部12の底壁12dとの衝突後にピストン板20が蓋部14側に跳ね返り難くなる。その結果、マイクロニードル32による皮膚への穿刺の確実性を高めることが可能となる。図98に示されるアプリケータA20は、第1実施形態に係るアプリケータA1をベースとした変形例であるが、他のアプリケータA2〜A13においても同様の変形をすることが可能である。
第12実施形態に係るアプリケータA12では、皮膚の作用位置に到達したピストン板520と係合する第2の突出部(係合片)558a4,558b4が、解除部材550に設けられていたが、係合片によってピストン板の跳ね返りを防止することができれば、他の種々の形態を採用しうる。例えば、本体部512の内周面から内側に向けて僅かに突出する係合片が本体部512の内周面に設けられていてもよい。当該係合片の高さは、円錐コイルばね40によって付勢されて皮膚の作用位置へと向かうピストン板520であれば当該係合片を乗り越えて通過できるものの、皮膚から跳ね返ったピストン板520の勢いでは当該係合片を乗り越えられない程度に設定されているとよい。あるいは、例えば、当該係合片は片持ち梁のように構成されており、その自由端が先端に向かうにつれて厚肉となる楔形状を呈していてもよい。この場合、皮膚の作用位置へと向かうピストン板520は当該係合片を本体部512の外側に向けて押し退けつつ通過できるものの、ピストン板520の通過後は当該係合片が元の位置に戻ることとなる。そのため、元の位置に戻った当該係合片の自由端の先端は、皮膚から跳ね返ったピストン板520の蓋部514側への移動を阻害する。当該係合片は、ピストン板520の本体520aや円筒部材520bと係合してもよいし、ピストン板520の突起520c1〜520c4と係合してもよい。
第13実施形態に係るアプリケータA13では、ピストン板620に回転力を付与するために、第1及び第2の解除部材650,660を用いたが、アプリケータA13が、第2の解除部材660と本体652との間に位置する第1の解除部材650を備えていなくてもよい。この場合、第2の解除部材660の天板部664の内面には、ピストン板620の各突起620c1〜620c4に対応する複数の係合突起が設けられる。各係合突起は、対応する突起620c1〜620c4の上方に位置すると共に、対応する突起620c1〜620c4に向けて突出する。各係合突起は、本体部612の中心軸方向と直交する方向から見て当該中心軸方向に対して斜めに延びる斜辺を有している。各斜辺は、対応する突起620c1〜620c4と対向している。この場合、押圧力が第2の解除部材660に付与されて、第2の解除部材660が本体部612の蓋部614側から鍔部616側に向けて移動したときに、係合突起の各斜辺が、対応する突起620c1〜620c4と係合しつつピストン板620に回転力を付与する。その結果、ピストン板620の係止状態が解除され、ピストン板620が皮膚の作用位置に到達する。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
第1実施形態及び第9実施形態に係るアプリケータA1,A9を用いて、穿刺性能を評価した。穿刺性能の評価は、マイクロニードルアレイ30を用いてヒト皮膚(in vitro)に対してオボアルブミン(Ovalbumin:OVA)を投与し、ヒト皮膚へのOVAの移行率を求めて、当該移行率に基づいて行った。ここで、移行率とは、マイクロニードル32に固着されたOVA(コーティングC)の量のうち皮膚に投与されたOVAの量の割合である。
第1実施形態に係るアプリケータA1については、ピストン板20、マイクロニードルアレイ30及び円錐コイルばね40で構成される作動部の総重量を1.24gに設定した1種類を用意した。第9実施形態に係るアプリケータA9については、ピストン板220、マイクロニードルアレイ30及び円錐コイルばね40で構成される作動部の総重量を1.23g,1.10gにそれぞれ設定した2種類を用意した。
マイクロニードルアレイ30については、ポリ乳酸製のものを用意した。マイクロニードルアレイ30における基板31の面積は1.13cm2であった。マイクロニードルアレイ30におけるマイクロニードル32の本数は、640本であった。マイクロニードルアレイ30におけるマイクロニードル32の密度は、566本/cm2であった。マイクロニードルアレイ30の各マイクロニードル32の高さは500μmであった。マイクロニードル32にOVAを塗布した際のコーティング範囲は、マイクロニードル32の頂点を含む約180μmの範囲であった。マイクロニードル32にコーティングされたOVAの初期含量は51μgであった。
アプリケータA1,A9をヒト皮膚上に静置し、アプリケータA1,A9を作動させてマイクロニードル32をヒト皮膚に穿刺させることで、OVAをヒト皮膚に投与した。OVAの投与後に、ヒト皮膚から剥離したマイクロニードルアレイ30をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浸すことでOVAを抽出し、抽出したOVAの量を初期含量から差し引くことにより移行量を求め、初期含量に対する移行量の割合から移行率を求めた。また、レーザ変位計(キーエンス社製LK−H150)を用いて、アプリケータA1,A9の作動時における作動部の速度を計測した。この速度(v[m/s])と、作動部の総重量(m[kg])とを乗算して、作動部の運動量(P=m・v[Ns])を求めた。当該運動量を横軸とし、OVAの移行率を縦軸として実験結果をプロットし、図99に示されるグラフを得た。図99に示されるように、運動量が0.006Ns〜0.015Nsの範囲において、50%以上のOVAの移行率を得ることができた。なお、作動部の運動量は、マイクロニードル32がヒト皮膚に衝突する際の穿刺エネルギーの指標となる。