JPWO2014073600A1 - エポキシ樹脂混合物、エポキシ樹脂組成物およびその硬化物 - Google Patents

エポキシ樹脂混合物、エポキシ樹脂組成物およびその硬化物 Download PDF

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Abstract

流動性に優れ、該硬化物において硬化物は耐熱性、難燃性に優れる硬化物を与えるエポキシ樹脂混合物、およびエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。本発明のエポキシ樹脂混合物は、1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)と置換(もしくは無置換)の4,4’−ビスグリシジルオキシビフェニル(ただし、置換基をその芳香環に有する場合、置換基の数は4以下、炭素数は4以下である。)を含有する。

Description

本発明は流動性に優れた組成物、また難燃性、耐熱性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂混合物に関する。
さらに、本発明は高機能が要求される電気電子材料用途、特に半導体の封止剤、薄膜基板材料として好適なエポキシ樹脂混合物、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物に関する。
エポキシ樹脂組成物は作業性及びその硬化物の優れた電気特性、耐熱性、接着性、耐湿性(耐水性)等により電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く用いられている。
しかし近年、電気・電子分野においてはその発展に伴い、樹脂組成物の高純度化をはじめ耐湿性、密着性、誘電特性、フィラー(無機または有機充填剤)を高充填させるための低粘度化、成型サイクルを短くするための反応性のアップ等の諸特性の一層の向上が求められている。又、構造材としては航空宇宙材料、レジャー・スポーツ器具用途などにおいて軽量で機械物性の優れた材料が求められている。特に半導体封止分野、基板(基板自体、もしくはその周辺材料)においては、その半導体の変遷に従い、薄層化、スタック化、システム化、三次元化と複雑になっていき、そのワイヤ配線の狭ピッチ化、細線化がますます進んできており、高流動性が無いとワイヤスィープを誘発してしまう。さらにはワイヤの接続部に悪影響を及ぼすようになってきた。
さらには、フリップチップタイプのパッケージにおいて、安価製造方法という側面からアンダーフィルを使用せず、一気に封止してしまうというMUFという手法が注目されている。本用途においてはチップとパッケージ基板の非常に狭い隙間を樹脂が通り抜ける必要があり、フィラーの微細化が重要となっており、この微細化により、系の粘度が上昇、ボイドの原因となる。
さらにはウエハーレベルパッケージなど再配線層に使用する封止樹脂や、ビルドアップ層に使用される相関絶縁膜等においては層の厚みが薄いこと、また線膨張率を下げるため、微細フィラーの充填が必要となる。したがって、本用途においても先と同様、樹脂組成物の低粘度化が必要となる。
"2008年 STRJ報告 半導体ロードマップ専門委員会 平成20年度報告"、第8章、p1−1、[online]、平成21年3月、JEITA (社)電子情報技術産業協会 半導体技術ロードマップ専門委員会、[平成24年5月30日検索]、<http://strj-jeita.elisasp.net/strj/nenjihoukoku-2008.cfm> 高倉信之他、松下電工技報 車関連デバイス技術 車載用高温動作IC、74号、日本、2001年5月31日、35−40頁
樹脂組成物の低粘度化の手法にはさまざま挙げられるが、一般に樹脂組成物の低粘度化の手法としてはエポキシ樹脂の低分子量化が用いられるが、エポキシ樹脂を低分子量化すると耐熱性が低下、またその室温での形状が流動性を持ちやすくなってしまうため、室温での取り扱いが難しい、さらには組成物とした際にベタツキが出てしまい、貯蔵やハンドリングが困難となる。加えて分子内におけるエポキシ部(脂肪族鎖)の割合が多くなってしまうことから、比較的熱分解しやすくなり、難燃性の面で悪影響を及ぼしやすい。
即ち、本発明は、優れた流動性を有しながら、耐熱性、難燃性に優れる硬化物を与えることができるエポキシ樹脂組成物を提供できるエポキシ樹脂混合物、これを含有するエポキシ樹脂組成物、およびその硬化物を提供することを目的とする。
本発明者らは前記したような実状に鑑み、鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は
(1)
1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)と置換(もしくは無置換)の4,4’−ビスグリシジルオキシビフェニル(ただし、置換基をその芳香環に有する場合、置換基の数は4以下、炭素数は4以下である。)を含有するエポキシ樹脂混合物、
(2)
1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)(A)と置換(もしくは無置換)の4,4’−グリシジルオキシビフェニル(B)の割合がA/B=1〜10である前項(1)に記載のエポキシ樹脂混合物、
(3)
バイノールと置換(もしくは無置換)の4,4’−ビフェノール(ただし、置換基をその芳香環に有する場合、置換基の数は4以下、炭素数は4以下である。)を混合し、エピハロヒドリンと反応させ、得られる前項(1)に記載のエポキシ樹脂混合物、
(4)
前項(1)〜(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂混合物、および硬化剤を含有することを必須とするエポキシ樹脂組成物、
(5)
前項(1)〜(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂混合物、および重合触媒を含有することを必須とするエポキシ樹脂組成物、
(6)
前項(4)又は(5)に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物
を、提供するものである。
本発明のエポキシ樹脂混合物は非常に低粘度であり、組成物の流動性に寄与するエポキシ樹脂であり、その硬化物は耐熱性、難燃性に優れる。したがって、電気電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である。特に半導体素子を保護する半導体封止材料にきわめて有用である。
本発明のエポキシ樹脂混合物は、1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)と置換もしくは無置換の4,4’−ビスグリシジルオキシビフェニル(ただし、芳香環に置換基を有する場合、置換基の数は4以下であり、炭素数は4以下である。)を含有する。
1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)とはバイノールとエピハロヒドリンとの反応物、また4,4’−ビスグリシジルオキシビフェニル(ただし、芳香環に置換基を有する場合、置換基の数は4以下であり、炭素数は4以下である。)は4,4’−ビフェノール(ただし、芳香環に置換基を有する場合、置換基の数は4以下であり、炭素数は4以下である。)とエピハロヒドリンとの反応物である。
ここで、置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
このような、置換もしくは無置換の4,4’−ビスグリシジルオキシビフェニルは、具体的には、下記の構造が挙げられる。
Figure 2014073600
(上記式において、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基を、Gはグリシジル基を示し、tは1〜4の整数を示す。)
そして、上記置換もしくは無置換の4,4’−ビフェノールは、具体的には、下記の構造が挙げられる。
Figure 2014073600
(上記式において、R、tは上記と同じ意味を表す。)
バイノールには立体異性体が存在するが、本発明のエポキシ樹脂混合物を得るためには、キラル・ラセミ体のどちらを用いてもかまわない。なお、その純度はGPCで90面積%以上が好ましく、より好ましくは93面積%以上、さらに好ましくは95面積%以上、特に好ましくは98面積%以上である。不純物としてはキノン構造を有するものや、原料のナフトール化合物が挙げられるが、これらは各々2面積%以下、好ましくは1面積%以下であることが好ましい。純度は晶析や洗浄によってコントロールできる。本純度が低いと得られる本発明のエポキシ樹脂混合物の特性が低下することがある。また乾燥減量が好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下である。乾燥減量が多い場合、製造工程において製造ラインを汚すことがある。融点は200〜220℃が好ましく、より好ましくは212〜219℃である。これら市販品としてはAldrich、SR−CHEMから入手可能である。
4,4’−ビフェノール(ただし、置換基をその芳香環に有する場合、置換基の数は4以下、炭素数は4以下である。)は、4,4’−ビフェノールを基本骨格とする化合物であり、その具体例としては、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジオール、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジオール等が挙げられる。本発明においては入手のしやすさから、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジオールが好ましく、エポキシ樹脂混合物のハンドリング性から4,4’−ビフェノールが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂混合物において、1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)(A)と置換(もしくは無置換)の4,4’−ビスグリシジルオキシビフェニル(ただし、置換基をその芳香環に有する場合、置換基の数は4以下、炭素数は4以下である。)(B)の比率(重量比)はA/B=1〜10が好ましく、より好ましくは1.5〜7.5、特に好ましくは2.0〜6.0である。耐熱性、難燃性、流動性のバランスの面から本範囲が好ましい。
本エポキシ樹脂混合物の形状としては、均質に混合されている場合、結晶性を帯びた固形樹脂形状を持つことが好ましく、その際の軟化点はハンドリング性、また硬化時の成形性の問題から、好ましくは70〜140℃、より好ましくは80〜130℃である。
本発明のエポキシ樹脂混合物は、1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)と置換(もしくは無置換)の4,4’−ビスグリシジルオキシビフェニル(ただし、置換基をその芳香環に有する場合、置換基の数は4以下、炭素数は4以下である。)を均一に混合しても、バイノールと置換(もしくは無置換)の4,4’−ビフェノール(ただし、置換基をその芳香環に有する場合、置換基の数は4以下、炭素数は4以下である。)を混合し、エピハロヒドリンと反応させることで得てもかまわない。本発明においては特に、製造の簡便さ、分子のつながりから後者が好ましい。
エピハロヒドリンとの反応の手法としては特に限定しないが、以下に本発明のエポキシ樹脂混合物の合成方法の一例を記載する。
本発明のエポキシ樹脂混合物を得る反応において、バイノール(AA)と4,4’−ビフェノール(ただし、置換基をその芳香環に有する場合、置換基の数は4以下、炭素数は4以下である。)(BB)を同時にエピハロヒドリンと反応させることでエポキシ樹脂混合物とする。ここで(AA)と(BB)の比率(重量比)としてはAA/BB=1〜10が好ましく、より好ましくは1.5〜7.5、特に好ましくは2.0〜6.0である。耐熱性、難燃性、流動性のバランスの面から本範囲が好ましい。なお、以下、(AA)と(BB)の混合物を本発明のフェノール混合物と称す。
本発明のエポキシ樹脂混合物を得る反応において、エピハロヒドリンとしては工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は本発明のフェノール混合物の水酸基1モルに対し通常3.0〜15モル、好ましくは3.0〜10モル、より好ましくは3.5〜8.5モルであり、特に好ましくは4.5〜8.5モルである。
3.0モルを下回るとエポキシ当量が大きくなることがあり、また、できたエポキシ樹脂の作業性が悪くなることがあり、15モルを超えると溶剤量が多量になることがある。
上記反応において、エピハロヒドリンとの反応にはアルカリ金属水酸化物の使用が好ましい。使用しうるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形物を利用してもよく、その水溶液を使用してもよいが、本発明においては特に、水分、溶解性、ハンドリングの面からフレーク状に成型された固形物の使用が好ましい。
アルカリ金属水酸化物の使用量はフェノール混合物の水酸基1モルに対して通常0.90〜1.5モルであり、好ましくは0.95〜1.25モル、より好ましくは0.99〜1.15モルである。
反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加してもかまわない。4級アンモニウム塩の使用量としては本発明のフェノール混合物の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
本反応においては上記エピハロヒドリンに加え、非極性プロトン溶媒(ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ジメチルイミダゾリジノン等、本発明においてはジメチルスルホキシド、ジオキサンが好ましい。)や、炭素数1〜5のアルコールを併用することが好ましい。炭素数1〜5のアルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類である(本発明においてはメタノールが好ましい。)。非極性プロトン溶媒もしくは炭素数1〜5のアルコールの使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50重量%、好ましくは4〜25重量%である。また、共沸脱水等の手法により、系内の水分をコントロールしながらエポキシ化を行ってもかまわない。
反応系中の水分が多い場合には、得られたエポキシ樹脂混合物において電気信頼性が低下することがあり、水分は5%以下にコントロールして合成することが好ましい。また、非極性プロトン溶媒を使用してエポキシ樹脂混合物を得た際には、電気信頼性に優れるエポキシ樹脂混合物が得られるため、非極性プロトン溶媒は好適に使用できる。
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。特に本発明においては、より高純度なエポキシ化のために60℃以上が好ましく、還流条件に近い条件での反応が特に好ましい。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間、特に好ましくは1〜3時間である。反応時間が短いと反応が進みきらず、反応時間が長くなると副生成物ができることがある。
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂混合物とするために、回収したエポキシ樹脂混合物を炭素数4〜7のケトン化合物(たとえば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。)を溶剤として溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した本発明のフェノール混合物の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂混合物が得られる。なお、加熱減圧下、溶剤を留去した後、110〜170℃に保った後、100℃以下、より好ましくは80℃以下の板状体(プレート状、シート状、ベルト状等の形状のもの)上に流延もしくは滴下することで、板状、水滴状(マーブル状)等の形状に成型し、取り出すことが好ましい。なお、80℃以下での冷却後、さらに60℃以下で冷却するという段階的な冷却方法でもかまわない。
本発明において、得られる最も好適なエポキシ樹脂混合物の外観としては結晶性を帯びた濁った色味(具体的には白濁 アモルファスではない)を有する。
本発明のエポキシ樹脂混合物においては1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)と置換(もしくは無置換)の4,4’−ビスグリシジルオキシビフェニル(ただし、置換基をその芳香環に有する場合、置換基の数は4以下、炭素数は4以下である。)が同時に存在すれば特に限定はされないが、上記のような好ましい条件での反応においては、バイノール構造とビフェノール構造が−CHCH(OH)CH−構造を介して結合した構造(C)も存在する。単純にバイノールのみをエポキシ化した場合、これらが同様に結合した構造(D)ができ、これが分子量が大きいため、粘度が高くなりやすいが、前述のような同時のエポキシ化を行えば、構造(D)の代わりに、構造(C)の生成することにより、比較的粘度が低くなりやすく、本発明の目的とする流動性の向上において好ましい。
本発明のエポキシ樹脂混合物の好ましい樹脂特性としてはエポキシ当量(得られた本発明のエポキシ樹脂の混合物である1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)、4,4’−ビスグリシジルオキシビフェニル(及び上記構造(C)が含有されている場合には上記構造(C))のエポキシ当量の平均値)が190〜350g/eq.であることが好ましく、より好ましくは200〜300g/eq.である。エポキシ当量が上記範囲内にあることで、硬化物の耐熱性、電気信頼性に優れたエポキシ樹脂を得ることができる。エポキシ当量が350g/eq.を越えている場合、エポキシの環が閉環しきらず、官能基を有さない化合物が多く含まれることがあり、エポキシ当量が下がっていないことがある。またこれら閉環しきらなかった化合物の多くには塩素が含有されている場合が多く、電子材料用途としては高温多湿条件での塩素イオンの遊離、およびそれによる配線の腐食が生じることがある。
また、エポキシ樹脂に残存している全塩素としては、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、特に2000ppm以下であることが好ましい。なお、塩素イオン、ナトリウムイオンについては各々5ppm以下が好ましく、より好ましくは3ppm以下である。塩素イオンは先に記載し、いうまでも無いが、ナトリウムイオン等のカチオンも、特にパワーデバイス用途においては非常に重要なファクターとなり、高電圧がかかった際の不良モードの一因となる。
本発明のエポキシ樹脂混合物は軟化点を有する樹脂上の形態を有する。ここで、軟化点としては55〜130℃が好ましく、より好ましくは60〜120℃である。軟化点が低すぎると保管時のブロッキングが問題となることがある。逆に軟化点が高すぎる場合、他の樹脂との混練の際に、ハンドリングが低下することがある。また、溶融粘度は2Pa・s(ICI 溶融粘度 150℃ コーンプレート法)以下であることが好ましい。無機材料(フィラー等)を混合して用いる場合、流動性が低下、また、ガラスクロス等もその網目がより微細になっており、含浸性が低下することがある。
以下、本発明のエポキシ樹脂混合物を含む本発明のエポキシ樹脂組成物(以下、硬化性樹脂組成物とも称する)について記載する。
本発明の硬化性樹脂組成物においては、硬化剤または重合触媒を必須成分として使用する。
本発明の硬化性樹脂組成物においては大きく二種に分類でき、以下、硬化性樹脂組成物A、硬化性樹脂組成物Bと表現する。
硬化性樹脂組成物Aにおいては本発明のエポキシ樹脂混合物と硬化剤を必須成分とする組成物である。
硬化性樹脂組成物Bにおいては本発明のエポキシ樹脂混合物と重合触媒を必須成分とする組成物である。
本発明の硬化性樹脂組成物Bが含有しうる重合触媒としては、熱または光により重合させる触媒であれば限定なく使用できるが、具体的には、硬化促進剤または酸性硬化触媒が使用できる。
用い得る硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤を用いる場合は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
酸性硬化触媒としてはカチオン重合開始剤が好ましく、光もしくは熱カチオン重合開始剤が特に好ましい。活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤を配合することで、後述する硬化性樹脂組成物Bとして使用することができる。
活性エネルギー線の照射により本発明の硬化性樹脂組成物Bのカチオン重合を開始させるカチオン重合開始剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、フォスフォニウム塩、及びチオピリリニウム塩等が挙げられ、好ましくはヨードニウム塩及びスルフォニウム塩であり、さらに好ましくはジアリールヨードニウム塩及びジアルキルフェナシルスルホニウム塩であり、特にジアリールヨードニウム塩が好適に使用できる。
ヨードニウム塩及びスルフォニウム塩等の光カチオン重合開始剤を本発明のカチオン硬化性樹脂組成物に使用する場合、アニオンとしてはBF -、AsF -、SbF -、PF -、及びB(C -等が挙げられ、好ましくはSbF -、PF -、又はB(C -であり、特に好ましくはSbF -又はB(C -である。
光カチオン重合開始剤の具体例を挙げると、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(GE東芝シリコーン社製、UV−9380Cの主成分)、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローディア社製、PHOTOINITIATOR2074)、ビス(アルキル(C=10〜14)フェニルヨードニウム)ヘキサフルオロアンチモネート(和光純薬製光カチオン重合開始剤WPI−016)等が挙げられる。
熱により活性化してカチオン重合を開始させる化合物、すなわち熱カチオン重合開始剤を本発明の硬化性樹脂組成物Bに用いることもできる。この熱カチオン重合開始剤としては、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩等の各種オニウム塩類や、アルコキシシランとアルミニウム錯体の組み合わせ等が例示できる。入手可能な製品としては、アデカオプトンCP−66及びアデカオプトンCP−77(いずれも商品名、(株)ADEKA製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L及びサンエイドSI−100L(いずれも商品名、三新化学工業(株)製)、及びCIシリーズ(日本曹達(株)製)等が挙げられる。
以下、本発明の硬化性樹脂組成物A、Bについてそれぞれ説明する。
硬化性樹脂組成物Aと硬化性組樹脂成物Bにおいて、本発明のエポキシ樹脂混合物以外に他のエポキシ樹脂を併用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂混合物の全エポキシ樹脂中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。ただし、本発明のエポキシ樹脂混合物を硬化性樹脂組成物の改質剤として使用する場合は、1〜30重量%の割合で添加する。
他のエポキシ樹脂の具体例としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、等シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基、および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以下それぞれの硬化性樹脂組成物について言及する。
硬化剤による熱硬化(硬化性樹脂組成物A)
本発明の硬化性樹脂組成物Aが含有する硬化剤としては例えばフェノール樹脂、フェノール系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。
用いうる硬化剤の具体例としては以下の通りである。
フェノール樹脂、フェノール化合物;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物などのポリフェノール類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
好ましいフェノール樹脂としては、フェノールアラルキル樹脂(芳香族アルキレン構造を有する樹脂)が挙げられ、特に好ましくはフェノール、ナフトール、クレゾールから選ばれる少なくとも一種を有する構造であり、そのリンカーとなるアルキレン部が、ベンゼン構造、ビフェニル構造、ナフタレン構造から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする樹脂(具体的にはザイロック、ナフトールザイロック、フェノールビフェニレンノボラック樹脂、クレゾール−ビフェニレンノボラック樹脂、フェノール−ナフタレンノボラック樹脂などが挙げられる。)である。
アミン系化合物、アミド系化合物;ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂などの含窒素化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
酸無水物系化合物、カルボン酸系化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、などの酸無水物;各種アルコール、カルビノール変性シリコーン、と前述の酸無水物との付加反応により得られるカルボン酸樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
その他の併用し得る硬化剤としては、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明においては特に信頼性の面からフェノール樹脂の使用が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物Aにおいて硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られないことがある。
本発明の硬化性樹脂組成物Aにおいては、硬化剤とともに硬化促進剤を併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては前記のものが挙げられる。硬化促進剤を用いる場合は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
本発明の硬化性樹脂組成物Aには、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性が低下することがある。
さらに本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じて酸化防止剤を添加しても構わない。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物中の樹脂成分に対して100重量部に対して、通常0.008〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部である。
フェノール系酸化防止剤の具体例として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が例示される。
イオウ系酸化防止剤の具体例として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が例示される。
リン系酸化防止剤の具体例として、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが例示される。
これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。特に本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
さらに本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じて光安定剤を添加しても構わない。
光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’―ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
さらに本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、エポキシ樹脂成分100重量部に対して通常0.05〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中において0〜95重量%を占める量が用いられる。更に本発明の硬化性樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、界面活性剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物Aは、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の硬化性樹脂組成物Aは従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば本発明のエポキシ樹脂混合物と硬化剤並びに必要により硬化促進剤、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填材及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して硬化性樹脂組成物を得、その硬化性樹脂組成物をポッティング、溶融後(液状の場合は溶融無しに)注型あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
また本発明の硬化性樹脂組成物Aを必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、硬化性樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物Aの硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。
また本発明の硬化性樹脂組成物Aをフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB−ステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物Aを前記硬化性樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
硬化性樹脂組成物B(酸性硬化触媒によるカチオン硬化)
酸性硬化触媒を用いて硬化させる本発明の硬化性樹脂組成物Bは、酸性硬化触媒として光重合開始剤あるいは熱重合開始剤を含有する。さらに、希釈剤、重合性モノマー、重合性オリゴマー、重合開始補助剤、光増感剤等の各種公知の化合物、材料等を含有していてもよい。また、所望に応じて無機充填材、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤等、各種公知の添加剤を含有してもよい。
酸性硬化触媒としてはカチオン重合開始剤が好ましく、光もしくは熱カチオン重合開始剤が特に好ましい。活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤を配合することで、硬化性樹脂組成物Bとして使用することができる。
活性エネルギー線の照射により本発明の硬化性樹脂組成物Bのカチオン重合を開始させるカチオン重合開始剤としては、前記のものが挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物Bを硬化させるときの活性エネルギー線としては、X線、電子線、紫外線及び可視光等を使用することもできるが、好ましくは紫外線又は可視光であり、特に好ましくは紫外線である。紫外線を使用する場合、その波長範囲は特に限定されないが、好ましくは150〜400nm、さらに好ましくは200〜380nmである。紫外線を用いる場合、カチオン重合を効率よく開始できる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物Bには、必要に応じてさらに光カチオン重合開始剤の活性を高めるため、増感剤を併用することもできる。本発明で用いることができる増感剤として、例えばクリベロがアドバンスドイン ポリマーサイエンス(Adv. in Plymer Sci.,62,1(1984))で開示している化合物を用いることが可能である。具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン及びペンゾフラビン等がある。また、光ラジカル重合開始剤として広く使用されている化合物も使用することができ、具体的には、ベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル類、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンジルジメチルケタール類、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン類、カンファーキノン等のα−ジカルボニル化合物等が挙げられる。本発明においては、チオキサントン類やα−ヒドロキシアルキルフェノン類が特に好適に使用できる。
本発明の硬化性樹脂組成物Bへの光カチオン重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線の種類や照射量に応じて適宜に調整できる。例えば紫外線の場合、カチオン硬化性樹脂組成物の合計100質量部に対し、0.1〜10質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜5部であり、さらに好ましくは1〜3部である。カチオン重合開始剤の配合量が0.1部よりも少ない場合は硬化性が低下することがあり、逆に10質量部より多い場合は硬化物に真に必要な成分を減少させて硬化物の物性が低下する場合や、硬化物の着色が激しくなる場合がある。
本発明の硬化性樹脂組成物Bに増感剤を添加する場合の配合量は、活性エネルギー線の種類や照射量に応じて適宜に調整できる。例えば紫外線の場合、硬化性樹脂組成物Bの合計100質量部に対し、5質量部以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜2部である。増感剤の配合量が5質量部より多い場合は硬化物に真に必要な成分を減少させて硬化物の物性が低下する場合や、硬化物の着色が激しくなる場合がある。
活性エネルギー線が紫外線や可視光である場合、カチオン硬化性樹脂組成物が空気にさらされるが、このとき雰囲気の湿度は低いことが好ましく、好ましくは湿度80%R.H.以下であり、70%R.H.以下であることがさらに好ましい。ここで、紫外線や可視光を生産ラインの中に設置する場合、光照射装置の手前に乾燥空気を送る方法や、加熱装置を取り付けて湿度を下げる方法も採用できる。
熱により活性化してカチオン重合を開始させる化合物としては、前記のものが挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物Bへの熱カチオン重合開始剤の配合割合は、カチオン硬化性樹脂組成物100質量部に対し、0.01〜10質量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜5部であり、さらに好ましくは0.5〜3部である。この配合割合が0.01質量部未満の場合には、熱の作用によりこれが活性化しても、開環重合性基の開環反応を十分に進行させることができないことがある。また、これを10質量部超えて配合したとしても、重合を進行させる作用はそれ以上高まらず、また硬化物の物性が低下する事がある。
更に、本発明の硬化性樹脂組成物Bには、必要に応じて前記のような無機充填剤やシランカップリング材、離型剤、顔料等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物Bは、各成分を均一に混合することにより得られる。またポリエチレングリコールモノエチルエーテルやシクロヘキサノン、γブチロラクトン等の有機溶剤に溶解させ、均一とした後、乾燥により溶剤を除去して使用することも可能である。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物Bと該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。本発明の硬化性樹脂組成物Bは紫外線照射することにより硬化できるが、その紫外線照射量については、硬化性樹脂組成物により変化するため、それぞれの硬化条件によって、決定される。光硬化型硬化性樹脂組成物が硬化する照射量であれば良く、硬化物の接着強度が良好である硬化条件を満たしていれば良い。この硬化の際、光が細部まで透過することが必要であることから本発明のエポキシ樹脂混合物、および硬化性樹脂組成物Bにおいては透明性の高いものが望まれる。また。これらエポキシ樹脂系の光硬化では光照射のみでは完全に硬化することが難しく、耐熱性が求められる用途においては光照射後に加熱により完全に反応硬化を終了させる必要がある。
前記、光照射後の加熱は通常の硬化性樹脂組成物Bの硬化温度域で良い。例えば常温〜150℃で30分〜7日間の範囲が好適である。硬化性樹脂組成物Bの配合により変化するが、特に高い温度域であればあるほど光照射後の硬化促進に効果があり、短時間の熱処理で効果がある。また、低温であればあるほど長時間の熱処理を要する。このような熱アフターキュアすることで、エージング処理になるという効果も生じる。
また、これら硬化性樹脂組成物Bを硬化させて得られる硬化物の形状も用途に応じて種々とりうるので特に限定されないが、例えばフィルム状、シート状、バルク状などの形状とすることもできる。成形する方法は適応する部位、部材によって異なるが、例えば、キャスト法、注型法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレー法、転写法、ディスペンサー方式などの成形方法を適用することができるが、これらに限定されるものではない。成形型は研磨ガラス、硬質ステンレス研磨板、ポリカーボネート板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリメチルメタクリレート板等を適用することができる。また、成形型との離型性を向上させるためポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等を適用することができる。
例えばカチオン硬化性のレジストに使用する際においては、まず、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルやシクロヘキサノンあるいはγブチロラクトン等の有機溶剤に溶解させた本発明の光カチオン硬化性樹脂組成物Bを銅張積層板やセラミック基板またはガラス基板等の基板上に、スクリーン印刷、スピンコート法などの手法によって、5〜160μmの膜厚で本発明の組成物を塗布し、塗膜を形成する。そして、該塗膜を60〜110℃で予備乾燥させた後、所望のパターンの描かれたネガフィルムを通して紫外線(例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、レーザー光等)を照射し、ついで、70〜120℃で露光後ベーク処理を行う。その後ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等の溶剤で未露光部分を溶解除去(現像)した後、さらに必要があれば紫外線の照射及び/または加熱(例えば100〜200℃で0.5〜3時間)によって十分な硬化を行い、硬化物を得る。このようにしてプリント配線板を得ることも可能である。
本発明の硬化性樹脂組成物Aおよび硬化性樹脂組成物Bを硬化してなる硬化物は各種用途に使用できる。
硬化性樹脂組成物Aまたは硬化性樹脂組成物Bが使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
封止剤、基板としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)およびパッケージ基板などを挙げることができる。またネットワーク基板や、モジュール基板といった機能性が求められる基板用途へも好適である。
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
エポキシ当量: JIS K 7236 (ISO 3001) に準拠
ICI溶融粘度: JIS K 7117−2 (ISO 3219) に準拠
軟化点: JIS K 7234 に準拠
GPC:
カラム(Shodex KF−603、KF−602.5、KF−602、KF−601x2)
連結溶離液はテトラヒドロフラン
流速は0.5ml/min.
カラム温度は40℃
検出:RI(示差屈折検出器)
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらバイノール214.7部、4,4’−ビフェノール46.6部、エピクロロヒドリン740部、ジメチルスルホキシド296部を加え、撹拌下で溶解し、45℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム84部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で75分反応を行った。反応終了後,油層からロータリーエバポレーターを用いて減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤類を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン800部を加え溶解し、水洗後、75℃にまで昇温した。撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液30部を加え、1時間反応を行った後、油層の洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液から、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂混合物(EP1)360部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は207g/eq.、軟化点87.5℃、150℃におけるICI溶融粘度は0.03Pa・s以下であった。
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらバイノール214部、エピクロロヒドリン555部(4モル当量 対 フェノール樹脂)、メタノール55部を加え、撹拌下で溶解し、70〜75℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム60部を90分かけて分割添加した後、更に75℃で75分反応を行った。反応終了後,水400部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤類を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン500部を加え溶解し、75℃にまで昇温した。撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部、メタノール10部を加え、1時間反応を行った後、油層の洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液から、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂混合物(EP2)403部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は230g/eq.、軟化点58℃、150℃におけるICI溶融粘度は0.07Pa・sであった。
(合成例2)
バイノール214.7部、4,4’−ビフェノール46.6部を、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジオール242部に変えた以外は実施例21と同様に合成した。その結果、エポキシ樹脂(EP3)349部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は190g/eq.、軟化点107℃、150℃におけるICI溶融粘度は0.03Pa・s以下であった。
実施例2および比較例1、2
<耐熱性試験>
前記で得られたエポキシ樹脂を表1の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
・耐熱性(TMA):JIS K 7244に準拠して測定した。
・耐熱性(HDT):JIS K 7191に準拠して測定した。
Figure 2014073600
バイノール構造とビフェノール構造の混合物である本発明のエポキシ樹脂は、バイノール構造のエポキシ樹脂を用いた硬化物(比較例1)、ビフェノール構造のエポキシ樹脂を用いた硬化物(比較例2)と比較して高い耐熱性と、低い線膨張率を示し、高い耐熱性と寸法安定性を両立できる構造を有することがわかる。
実施例3および比較例3、4
<耐熱性試験・難燃性試験>
前記で得られたエポキシ樹脂を表2の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。難燃性試験結果も表2に示す。尚、硬化促進剤C1は上記と同じものである。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
・難燃性:UL94に準拠して行った。ただし、サンプルサイズは幅12.5mm×長さ150mmとし、厚さは0.8mmで試験を行った。
・残炎時間:5個1組のサンプルに10回接炎したあとの残炎時間の合計
・耐熱性(DMA)
動的粘弾性測定器:TA−instruments、DMA−2980
測定温度範囲:−30〜280℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)
Tg:Tan−δのピーク点をTgとした
Figure 2014073600
本結果より、バイノール構造とビフェノール構造の混合物である本発明のエポキシ樹脂混合物は、バイノール構造のエポキシ樹脂を用いた硬化物(比較例3)、ビフェノール構造のエポキシ樹脂を用いた硬化物(比較例4)と比較して高い耐熱性と、高い難燃性両立できる構造を有することがわかる。
実施例4および比較例5
<流動性試験>
前記で得られたエポキシ樹脂を表3の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型機にて175℃、成型圧力70Kg/cmの条件でスパイラルフローを測定した。尚、硬化剤P2、硬化促進剤C1、無機充填材、カップリング剤、離型剤は上記と同じものである。
Figure 2014073600
本結果より、バイノール構造とビフェノール構造の混合物である本発明のエポキシ樹脂は、一般に流動性が高いビフェノール構造のエポキシ樹脂を用いた硬化物(比較例5)と比較して高い流動性を有することがわかる。(同秒のゲルタイムにもかかわらず、スパイラルフローが長い。)
実施例5および比較例6、7、8、9
<耐熱性・吸水性試験における他構造との比較>
下記に示すエポキシ樹脂を表4の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
・耐熱性(TMA):JIS K 7244に準拠して測定した。
・吸水率:100℃の水に24時間浸漬後の重量増加百分率
Figure 2014073600
EP4: オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とビフェノール型エポキシ樹脂の混合物(エポキシ当量205g/eq. 軟化点91℃ ICI溶融粘度 0.03Pa・s以下)
EP5: フェノールアラルキル型エポキシ樹脂とビフェノール型エポキシ樹脂の混合物(エポキシ当量214g/eq. 軟化点 102℃ ICI溶融粘度 0.09Pa・s)
EP6: ビフェニルタイプフェノールアラルキル型エポキシ樹脂とビフェノール型エポキシ樹脂の混合物(エポキシ当量240g/eq. 軟化点 93℃ ICI溶融粘度 0.03Pa・s)
フェノールアラルキル型エポキシ樹脂の構造式は下記式(A)の通りであり、ビフェニルタイプフェノールアラルキル型エポキシ樹脂の構造式は下記式(B)の通りである。
Figure 2014073600
本結果より、他構造の同様の変性樹脂と比較し、本発明のエポキシ樹脂は耐熱性にすぐれ、また耐熱性が上がると一般に吸水率が悪くなるが、吸水特性においても他と比べ大きくないことから、耐熱性と耐水特性に優れることがわかる。
実施例6
<機械強度・線膨張率・吸湿率・耐クラック特性、耐衝撃性、成型収縮、ゲルタイム>
エポキシ樹脂EP1を207部、P1を103部、C1を2部配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
・機械強度: 曲げ試験 JIS K 6911準拠 120℃における曲げ強度を測定
・線膨張率: JIS K 7244に準拠してTMAを測定し、そのαを測定した。
・吸湿率: 85℃、85%の条件の恒温恒湿槽に24時間放置 重量増加量を測定した。
・耐クラック特性: K1cの測定 ASTM E−399に準拠
・耐衝撃性: アイゾット衝撃試験 JIS K 6911準拠
・成型収縮: 金型との差を測定 JIS K 6911準拠
・ゲルタイム: 175℃のホットプレート上で測定
・機械強度: 82MPa
・線膨張率: 57ppm
・吸湿率: 0.75%
・耐クラック特性:19Nmm-1.5
・耐衝撃性: 5.7kJ/m2
・成型収縮: 1.75%
・ゲルタイム: 59秒
実施例7および比較例10、11
<流動性試験>
前記で得られたエポキシ樹脂を表5の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型機にて175℃、成型圧力70Kg/cmの条件でスパイラルフローを測定した。尚、硬化剤P2、硬化促進剤C1、無機充填材、カップリング剤、離型剤は上記と同じものである。
Figure 2014073600
本結果より、バイノール構造とビフェノール構造の混合物である本発明のエポキシ樹脂は、他の構造のエポキシ樹脂を用いた硬化物と比較して高い流動性を有することがわかる。(ほぼ同秒のゲルタイムにもかかわらず、スパイラルフローが長い。)
以上の結果から、本発明のエポキシ樹脂混合物を用いた組成物は流動性に優れ、さらにはその硬化物は難燃性・耐熱性に特に優れることが明らかであり、高機能化が求められる半導体封止材、また高フィラー充填化が求められる薄膜基板材料(層間絶縁膜を含む)に有用であることがわかる。
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2012年11月8日付で出願された日本国特許出願(特願2012−246258)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
本発明のエポキシ樹脂混合物を含むエポキシ樹脂組成物は、電気電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である。

Claims (6)

  1. 1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)と置換もしくは無置換の4,4’−ビスグリシジルオキシビフェニル(ただし、芳香環に置換基を有する場合、置換基の数は4以下であり、炭素数は4以下である。)を含有するエポキシ樹脂混合物。
  2. 1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)(A)と置換もしくは無置換の4,4’−グリシジルオキシビフェニル(B)の割合がA/B=1〜10である請求項1に記載のエポキシ樹脂混合物。
  3. バイノールと置換もしくは無置換の4,4’−ビフェノール(ただし、芳香環に置換基を有する場合、置換基の数は4以下であり、炭素数は4以下である。)を混合し、エピハロヒドリンと反応させ、得られる請求項1に記載のエポキシ樹脂混合物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂混合物、および硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂混合物、および重合触媒を含有するエポキシ樹脂組成物。
  6. 請求項4又は5に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物。
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