JPWO2014042227A1 - 金属微粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
結晶子径 D=K・λ/(β・cosθ) ・・・Scherrerの式
ここで、KはScherrer定数であり、一般的にK=0.9とする。λは使用したX線管球の波長、βは半値幅、θは回折角を用いて算出する。
例えば、ニッケル微粒子は、積層セラミックコンデンサや基板における伝導性材料、電極材料など広く使用されている材料であるが、ニッケル微粒子の製造方法としては、主に、気相法と液相法とに大別される。
特許文献1には、レーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、該平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であり、且つニッケル粒子内の平均結晶子径が400Å以上であるニッケル粉について記載されている。そのニッケル粉は、湿式法または乾式法で製造されたニッケル粉とアルカリ土類金属化合物の微粉末とを混合した後、またはニッケル粉の各粒子表面にアルカリ土類金属化合物を被覆させた後、不活性ガス又は微還元性ガス雰囲気中で、アルカリ土類金属化合物の溶融温度未満の温度で熱処理して得られたものであることや、SEM観察による平均粒子径が0.05〜1μmであることが好ましいことが記載されている。
特許文献2には、熱プラズマによってニッケルを蒸発させ、凝縮させて微粉化することによって得られたニッケル微粉であって、走査電子顕微鏡観察から求めた個数平均粒径が0.05〜0.2μmであり、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%であり、かつ、0.6μm以上の粗大粒子のニッケル微粉中に含まれる割合が個数基準で50ppm以下であるニッケル微粉について記載されている。また、そのニッケル微粉は、X線回折分析によって求められる結晶子径が、上記個数平均粒径に対して66%以上であることが好ましいことが記載されている。
特許文献3には、ポリオール溶媒に、還元剤、分散剤、及びニッケル塩を添加して混合溶液を製造し、この混合溶液を撹拌して昇温した後、反応温度及び時間を調整して還元反応によって得られるニッケルナノ粒子について記載されている。また、粒度が均一であり、分散性に優れたニッケル微粒子が得られることが記載されている。
具体的には、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHが、酸性条件下で一定となるように制御することも望ましい。また、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHを、酸性条件下で変化させることも望ましい。
また、本願発明は、上記金属もしくは金属化合物がニッケルまたはニッケル化合物であってニッケル微粒子を析出させる場合には、上記金属流体として、下記のものを用いることによって、上記結晶子径(d)が30nm以上であるニッケル微粒子を得るものとして実施することができる。上記金属流体としては、上記金属流体の室温条件下でのpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、上記金属流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.1を超えるものである。
本願発明は、上記金属もしくは金属化合物がニッケルまたはニッケル化合物であってニッケル微粒子を析出させる場合には、上記金属流体として、下記のものを用いることによって、上記の比率(d/D)が0.30以上であるニッケル微粒子を得るものとして実施することができる。上記金属流体としては、上記金属流体の室温条件下でのpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、上記金属流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.2を超えるものである。
さらに、本願発明は、所望する粒子径の金属微粒子に目的とする物性を付与させることができる。
本願発明における金属は、特に限定されない。化学周期表上における全ての金属である。一例として、Ti、Fe、W、Pt、Au、Cu、Ag、Pd、Ni、Mn、Co、Ru、V、Zn、Zr、Sn、In、Te、Ta、Bi、Sbなどの金属元素が挙げられる。それらの金属について、単体元素の金属であっても、複数元素を含む合金や金属元素に非金属元素を含む物質であっても良い。当然、卑金属と貴金属の合金としても実施できる。
本願発明における金属化合物としては、特に限定されない。一例としては、金属の塩、酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられる。金属の塩としては特に限定されないが、金属の硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられる。これらの金属化合物は、それぞれ単独で用いても良く、複数の混合物として用いても良い。
還元剤は、特に限定されないが、金属に対する還元剤の全てが使用可能である。ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、硫酸ヒドラジン、フェニルヒドラジン等のヒドラジン類や、ジメチルホルムアミド、ジメチルアミノエタノール、トリエチエルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミノボランなどのアミン類、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、タンニン酸、ギ酸又はそれらの塩などの有機酸類や、アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールやブタノール等の脂肪族モノアルコール類やターピネオール等の脂環族モノアルコール類等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、テトラエチレングリコール、ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。また、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化トリブチル錫、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、水素化ホウ素亜鉛、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどのヒドリド類や、グルコース等の糖類や、その他ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)、硫酸鉄などの遷移金属(チタンや鉄)の塩や、それらの水和物や溶媒和物などを用いることができる。これらの還元剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明においては、上述の還元剤とポリオールとを併用して金属イオンを還元するポリオール還元法を用いて金属微粒子を得るものであってもよい。
ここで、金属流体中の金属とは、金属イオンや金属の錯イオンなどの状態を問わずに金属流体中に含まれる全ての金属を言う。
本願発明者は、酸の種類を変更して種々実験を行ったが、硫酸についてのみ、比率(d/D)を制御できることを知見した。この知見は、本願発明者にとって大きな驚きであったが、その理由は現在のところ解明されていない。本願発明者は、硫酸イオンや硫酸イオンを構成する硫化物イオンもしくは硫黄の何らかの特性が上記のd/Dの制御に関与しているのではないかと思料しているが、そのメカニズムは不明である。特に、硫酸とポリオール溶媒とを用いることで、上記の比率(d/D)をより確実に制御できることを知見した。本願発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどをポリオールとして用いた場合には、ポリオールが分散剤としても作用する。
以下、本願発明の実施の形態の一例であるニッケル微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
本願発明に係る還元剤流体は、還元剤を溶媒に溶解または分子分散(以下、単に、溶解とする。)したものである。
また、ニッケル化合物流体と、還元剤流体との少なくとも何れか一方の流体には、ポリオールが含まれる。
また、ヒドラジンやヒドラジン一水和物など、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機または有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明においては、上述の還元剤とポリオールとを併用してニッケルイオンを還元するポリオール還元法を用いてニッケル微粒子を得るものである。
本願発明においては、ニッケル化合物流体に硫酸イオンを含み、その濃度を変化させることによって、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比を変化させることができる。また、同時にニッケル化合物流体のpHを変化させることができるが、ニッケル化合物流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。そして、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体のpHとニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比とを制御することによって、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。本願の出願人は、硫酸イオンが、ニッケル微粒子の粒子の成長を制御して、結晶子の成長を助長する作用を有し、その結果、ニッケル化合物流体のpHとニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比とを制御することによって、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。ここで、ニッケル化合物流体中のニッケルとは、ニッケルイオンやニッケルの錯イオンなどの状態を問わずにニッケル化合物流体中に含まれる全てのニッケルを言う。
ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比は、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を良好に制御するために、1.00を超えていることが望ましい。その点において、ニッケルイオンと硫酸イオンとを等しく含む硫酸ニッケルまたはその水和物をニッケル化合物として用いることが好適である。ニッケル化合物を溶解する際に用いる溶媒によっては、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比を高めるために硫酸化合物を添加しすぎると、ニッケル化合物流体中のニッケルイオンと硫酸イオンとが作用して、例えば硫酸ニッケルなどの析出物が生じる。ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比と溶媒のニッケル化合物並びに硫酸化合物に対する溶解度とのバランスが大切である。
本願発明において、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHが酸性であり、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を良好に制御するために、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHは4.4以下が望ましく、4.1以下がより望ましい。なお、この制御を行なう流体の調製や混合等の操作は、室温にて行なうものであってもよいが、室温以外の環境での操作であっても、室温条件下でのpHが上記のものとなる条件が満たされておればよい。
本願発明において、還元剤流体のpHは、特に限定されない。還元剤の種類や濃度などによって適宜選択すればよい。
また、還元剤流体に、上記硫酸化合物を添加しても良い。
また、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHが4.1以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.0を超えるものを用いることが望ましい。比率(d/D)が0.30以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.40以上で、結晶子径(d)が30nm以上、好ましくは35nm以上、より好ましくは40nm以上のニッケル微粒子を得る上で、好適である。
さらに、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を得る上では、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体のpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.1を超えるものを用いることが望ましく、比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子を得る上では、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体のpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.2を超えるものを用いることが望ましい。なお、この制御を行なう流体の調製や混合等の操作は、室温にて行なうものであってもよいが、室温以外の環境での操作であっても、室温条件下でのpHが上記のものとなる条件が満たされておればよい。
比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子や結晶子径が30nm以上のニッケル微粒子は、熱処理後の収縮を抑制することができることから、特に、セラミックコンデンサ用途に適している。
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどをポリオールとして用いた場合には、ポリオールが分散剤としても作用する。
ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比と、ニッケル化合物流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に含まれ、分散剤としても作用するポリオールの濃度とを制御することによっても、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。
その際、分散剤としても作用するポリオールは、ニッケル化合物流体に含まれることが望ましく、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.24では、ニッケル化合物流体中の分散剤としても作用するポリオールの濃度を高くすることで上記の比率(d/D)が高くなるよう制御し、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.00では、ニッケル化合物流体中の分散剤としても作用するポリオールの濃度を高くすることで上記の比率(d/D)が小さくなるよう制御することが望ましい。
以下、本願発明の実施の形態の一例である銀微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
また、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機又は有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願の出願人は、硫酸イオンが、銀微粒子の結晶子及び粒子の成長を制御する作用を有し、その結果、銀含有流体中の銀に対する、銀含有流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比、より具体的には、上記銀含有流体と還元剤流体とが混合された流体における銀に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。ここで、銀含有流体中の銀とは、銀イオンや銀の錯イオンなどの状態を問わずに銀含有流体中に含まれる全ての銀を言う。
銀含有流体中の銀に対する、銀含有流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比は、特に限定されない。目的とする銀の粒子径及び結晶子径に応じて適宜選択できる。なお、銀含有流体中に硫酸イオンを含む場合には、溶媒の銀もしくは銀化合物及び硫酸化合物に対する溶解度と、銀含有流体中の銀に対する銀含有流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比とのバランスが大切である。
本願発明において、銀含有流体と還元剤流体のpHは、特に限定されない。また、銀含有流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合した際の、混合した流体のpHについても特に限定されない。目的とする銀微粒子の結晶子径又は粒子径などによって適宜選択すればよい。
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
以下、本願発明の実施の形態の一例である銅微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、銅が溶解していることを条件に、銅溶解流体や還元剤流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいてもよい。
本願発明においては、金属流体と、還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で混合する方法を用いて行うことが好ましく、例えば、特許文献10,11に示される装置と同様の原理の装置を用いて混合して、金属微粒子を析出させることが好ましい。
図1〜図3に示す流体処理装置は、接近・離反可能な少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用部における処理用面の間で被処理物を処理するものであって、被処理流動体のうちの第1の被処理流動体である第1流体を処理用面間に導入し、前記第1流体を導入した流路とは独立し、処理用面間に通じる開口部を備えた別の流路から被処理流動体のうちの第2の被処理流動体である第2流体を処理用面間に導入して処理用面間で上記第1流体と第2流体を混合・攪拌して処理を行う装置である。なお、図1においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示しているが、本願発明において上下前後左右は相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。図2(A)、図3(B)においてRは回転方向を示している。図3(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
この鏡面研磨の面粗度は、特に限定されないが、好ましくはRa0.01〜1.0μm、より好ましくはRa0.03〜0.3μmとする。
このように、3次元的に変位可能に保持するフローティング機構によって、第2処理用部20を保持することが望ましい。
P=P1×(K−k)+Ps
なお、図示は省略するが、近接用調整面24を離反用調整面23よりも広い面積を持ったものとして実施することも可能である。
レイノルズ数Re=慣性力/粘性力=ρVL/μ=VL/ν
ここで、ν=μ/ρは動粘度、Vは代表速度、Lは代表長さ、ρは密度、μは粘度を示す。
そして、流体の流れは、臨界レイノルズ数を境界とし、臨界レイノルズ数以下では層流、臨界レイノルズ数以上では乱流となる。
上記流体処理装置の両処理用面1,2間は微小間隔に調整されるため、両処理用面1,2間に保有される流体の量は極めて少ない。そのため、代表長さLが非常に小さくなり、両処理用面1,2間を通過する薄膜流体の遠心力は小さく、薄膜流体中は粘性力の影響が大きくなる。従って、上記のレイノルズ数は小さくなり、薄膜流体は層流となる。
遠心力は、回転運動における慣性力の一種であり、中心から外側に向かう力である。遠心力は、以下の式で表される。
遠心力F=ma=mv2/R
ここで、aは加速度、mは質量、vは速度、Rは半径を示す。
上述の通り、両処理用面1,2間に保有される流体の量は少ないため、流体の質量に対する速度の割合が非常に大きくなり、その質量は無視できるようになる。従って、両処理用面1,2間にできる薄膜流体中においては重力の影響を無視できる。そのため、本来微粒子として析出させることが難しい比重差のある2種以上の金属元素を含む合金や複合金属化合物などの微粒子においても、両処理用面1,2間にできる薄膜流体中で析出させることができる。
この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
円環形状の開口部d20を処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状に設けた場合、処理用面1,2間に導入する第2流体を同一条件で導入することができるため、より均一な拡散・反応・析出等の流体処理を行うことができる。微粒子を量産する場合には、開口部を円環形状とすることが好ましい。
上記の流体処理装置において、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転を行う処理用面1,2の間に形成される薄膜流体中で、金属流体と、還元剤流体とを混合させて、金属微粒子を析出させる。その際、金属流体と還元剤流体の少なくとも何れか一方の被処理流動体には、硫酸イオンを含み、処理用面1,2間に導入される金属流体中の金属に対する上記混合した被処理流動体中の硫酸イオンのモル比とを制御する。
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として金属流体を、処理用面1,2間に作られた第1流体膜に直接導入する。
本願発明において、金属流体と還元剤流体とを混合する際の温度は、特に限定されない。金属や金属化合物の種類、還元剤の種類、流体のpHなどによって適切な温度で実施することが可能である。
また、本願発明における金属微粒子は、酸化物や水酸化物、酸化水酸化物などを一部含んでも実施できる。
まず、ニッケル微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
図1に示される流体処理装置を用いて、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中でニッケル微粒子を析出させる。
具体的には、中央から第1流体としてニッケル化合物流体を供給圧力=0.50MPaGで送液する。第1流体は図1の処理用部10の処理用面1と処理用部20の処理用面2との間の密封された空間(処理用面間)に、送り込まれる。処理用部10の回転数は3600 rpmである。第1流体は処理用面1,2間において強制された薄膜流体を形成し、処理用部10,20の外周より吐出される。第2流体として還元剤流体を処理用面1,2間に形成された薄膜流体に直接導入する。微小間隔に調製された処理用面1,2間においてニッケル化合物流体と還元剤流体とを混合させ、ニッケル微粒子を析出させる。ニッケル微粒子を含むスラリー(ニッケル微粒子分散液)が、処理用面1,2間より吐出される。
処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液を磁石の上に置き、ニッケル微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で大気圧にて乾燥し、ニッケル微粒子の乾燥粉体を作製した。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認されたニッケル微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られたニッケル微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶盤は、47.3℃に確認されるピークを使用し、得られたニッケル回折パターンの44.5°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
(ICP分析:不純物元素検出)
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)によるニッケル微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
ニッケル微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例A、比較例Aの全てにおいて、ニッケル元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
表1に示す処方のニッケル化合物流体と、表2に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表3の処理条件にて混合し、ニッケル微粒子を析出させた。得られたニッケル微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表4に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、実施例A1〜A17の全てにおいて、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、実施例A1〜A14においては、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pH及び硫酸イオン濃度を変更するために、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製し、実施例A15〜A17においては、ポリエチレングリコール600に変えてポリビニルピロリドン(k=30)を用いた以外は、実施例A1〜A14と同様に調製した。
また、表1から後述する表16までの表中における略記号は、NiSO4・6H2Oは硫酸ニッケル六水和物、EGはエチレングリコール、PEG600はポリエチレングリコール600、PVP(k=30)はポリビニルピロリドン(k=30)、PWは純水、HMHはヒドラジン一水和物、KOHは水酸化カリウム、H2SO4は硫酸、(NH4)2SO4は硫酸アンモニウム、K2SO4は硫酸カリウム、HNO3は硝酸、KNO3は硝酸カリウム、CH3COOHは酢酸、CH3COOKは酢酸カリウム、SO4 2−は硫酸イオン、CH3COO−3は酢酸イオンである。
実施例A1〜A17の第1流体のpHは4.1以下である。第1流体のpHが4.1以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)が1.0を超えるように制御することによって、比率(d/D)が0.30以上であり、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子や結晶子径が30nm以上のニッケル微粒子は、熱処理後の収縮を抑制できることから、セラミックコンデンサ用途に適したニッケル微粒子を製造できることを確認できた。
また、実施例A1〜A14で用いたポリエチレングリコール600をポリビニルピロリドン(k=30)に変更して実施した実施例A15〜A18においても、実施例A1〜A14と同様の結果が得られた。
また、実施例A1〜A14において、第1流体のpHが同じ場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を高くすることで、比率(d/D)を大きくすることが可能であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を低くすることで、 比率(d/D)を小さくすることが可能であることを確認した。
ニッケル化合物流体の処方を表5とし、処理条件を表6とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表7に示す。また、実施例A15〜A23の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
実施例A18〜A23の第1流体のpHは4.1を超えて4.7以下である。第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)が1.2を超えるように制御することによって、比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。また、第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)が1.1を超えるように制御することによって、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。
また、実施例A18〜A23において、第1流体のpHが同じ場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を高くすることで、 比率(d/D)を大きくすることが可能であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を低くすることで、 比率(d/D)を小さくすることが可能であることを確認した。
ニッケル化合物流体の処方を表8とし、処理条件を表9とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表10に示す。また、比較例A1〜A7の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pHのみを変更するために、別途硝酸及び/または硝酸カリウムを添加して調製した。
第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を1.00と一定とし、第1流体のpHを変化させただけでは、比率(d/D)を制御することができないことを確認した。
ニッケル化合物流体の処方を表11とし、処理条件を表12とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表13に示す。また、比較例A8〜A12の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pHのみを変更するために、別途酢酸及び/または酢酸カリウムを添加して調製した。
第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を1.00と一定とし、第1流体のpHを変化させただけでは、比率(d/D)を制御することができないことを確認した。
表14に示す処方のニッケル化合物流体と、表15に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表16の処理条件にて混合し、ニッケル微粒子を析出させた。得られたニッケル微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表17に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、実施例A24〜A31の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、実施例A24〜A28においては別途硫酸を同量添加し、実施例A29〜A31においては硫酸を添加せずに調製した。実施例A24〜A28と実施例A29〜A31のそれぞれにおいて、ニッケル化合物流体中のポリエチレングリコール600の濃度を変化させた。
また、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)が1.00である、実施例A29〜A31においては、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、ニッケル微粒子の結晶子径(d)とその粒子径(D)は小さくなる傾向を示した。よって、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、比率(d/D)が小さくなる傾向を示すことを確認した。また、実施例A29〜A30においては、結晶子径(d)は30nm以上のニッケル微粒子が得られたが、その比率(d/D)は0.30を大きく下回った。
よって、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)が1.00を超えたところでは、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、比率(d/D)を大きくさせる可能性が示された。
次に、銀微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
図1に示される流体処理装置を用いて、銀含有流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中で銀微粒子を析出させる。
具体的には、中央から第1流体として銀含有流体又は還元剤流体のうちの何れか一方を供給圧力=0.50MPaGで送液する。第1流体は、図1の処理用部10の処理用面1と処理用部20の処理用面2との間の密封された空間(処理用面間)に、送り込まれる。処理用部10の回転数は500 rpmである。第1流体は処理用面1,2間において強制された薄膜流体を形成し、処理用部10,20の外周より吐出される。第2流体として銀含有流体又は還元剤流体のうちの何れか他方を処理用面1,2間に形成された薄膜流体に直接導入する。微小間隔に調整された処理用面1,2間において銀含有流体と還元剤流体とを混合させ、銀微粒子を析出させる。銀微粒子を含むスラリー(銀微粒子分散液)が、処理用面1,2間より吐出される。
処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液を静置し、銀微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で−0.10MPaGにて乾燥し、銀微粒子の乾燥粉体を作製した。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認された銀微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られた銀微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶盤は、47.3°に確認されるピークを使用し、得られた銀微粒子の回折パターンにおける44.5°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
(ICP分析:不純物元素検出)
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)による銀微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
銀微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例B、比較例Bの全てにおいて、銀元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
表18に示す処方の還元剤流体と、表19に示す処方の銀含有流体とを、図1に示す流体処理装置にて表20の処理条件にて混合し、銀微粒子を析出させた。得られた銀微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表21に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、実施例B1〜B17の全てにおいて、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、pHや硫酸イオン濃度を変更するために、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製した。
また、表18から後述する表30までの表中における略記号は、AgNO3は硝酸銀、FeSO4・7H2Oは硫酸鉄(II)七水和物、H2SO4は硫酸、(NH4)2SO4は硫酸アンモニウム、K2SO4は硫酸カリウム、HNO3は硝酸、KNO3は硝酸カリウム、CH3COOHは酢酸、CH3COOKは酢酸カリウム、PWは純水、SO4 2−は硫酸イオン、NO3 −は硝酸イオン、CH3COO−は酢酸イオン、Agは銀である。また実施例B1,B4で作製した銀微粒子のSEM写真を図4,図5に示す。また、表21に得られた結果の内、実施例B1〜B13の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図6に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図7に示す。また、実施例B14〜B17では、第1流体である還元剤流体の流量を変更することで、混合された被処理流動体中における銀に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例B14〜B17の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図8に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図9に示す。
実施例B14〜B17による銀含有流体と還元剤流体との混合比を変化させた場合も、図8,図9より、実施例B1〜B13の場合と同様に、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が小さくなることがわかる。さらに、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が小さくなることを確認した。
還元剤流体の処方を表22とし、処理条件を表23とした以外は、実施例B1〜B17の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表24に示す。また、比較例B1〜B7の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、実施例B1〜B17で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途硝酸及び/又は硝酸カリウムの硝酸化合物を添加して調製した。また、表24にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+NO3 −/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図10に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+NO3 −/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図11に示す。
還元剤流体の処方を表25とし、処理条件を表26とした以外は、実施例B1〜B17の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表27に示す。また、比較例B8〜B14の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、実施例B1〜B17で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途酢酸及び/又は酢酸カリウムの酢酸化合物を添加して調製した。また、表27にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+CH3COO−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第一流体のpH毎にプロットしたグラフを図12に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+CH3COO−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図13に示す。
実施例B7〜B9の比較として、バッチ式の試験を行った。還元剤流体である第1流体の処方を表28とした。第1流体と第2流体との混合は、表29に記載した量の第1流体をビーカー中で撹拌しながら、第2流体を表29に記載の流速にて1分間投入し、銀含有流体と還元剤流体とを混合させ、銀微粒子を析出させた。銀微粒子を含むスラリー(銀微粒子分散液)が得られた。第2流体の処方、粒子の回収方法並びに分析方法については、実施例B1〜B17と同様の方法にて行った。
表31に示す処方の銀含有流体と、表32に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表33の処理条件にて混合し、銀微粒子を析出させた。得られた銀微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表34に示す。なお、第1流体の供給圧力は、上述の通りであり、処理用部10の回転数は1700rpmである。また、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、実施例B18〜B30の全てにおいて、酸性を示した。銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製した。還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物及び硫酸を溶解して調製した。
また、表31から表40までの表中における略記号は、EGはエチレングリコール、PWは純水、Ag2SO4は硫酸銀、FeSO4・7H2Oは硫酸鉄(II)七水和物、H2SO4は硫酸、(NH4)2SO4は硫酸アンモニウム、K2SO4は硫酸カリウム、HNO3は硝酸、KNO3は硝酸カリウム、CH3COOHは酢酸、CH3COOKは酢酸カリウム、SO4 2−は硫酸イオン、NO3 −は硝酸イオン、CH3COO−は酢酸イオン、Agは銀である。また、表34に得られた結果の内、実施例B18〜B26の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図14に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図15に示す。また、実施例B27〜B30では、第2流体である還元剤流体の流量を変更することで、混合された被処理流動体中における銀に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例B27〜B30の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図16に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図17に示す。
図16、図17より、銀含有流体と還元剤流体との混合比を変化させた場合も、実施例B18〜B26場合と同様に、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなることがわかる。さらに、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が大きくなることを確認した。
銀含有流体の処方を表35とし、処理条件を表36とした以外は、実施例B18〜B30の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表37に示す。また、比較例B18〜B26の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、実施例B18〜B30で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途硝酸及び/又は硝酸カリウムの硝酸化合物を添加して調製した。また、表37にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+NO3 −/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図18に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+NO3 −/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図19に示す。
銀含有流体の処方を表38とし、処理条件を表39とした以外は、実施例B18〜B30の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表40に示す。また、比較例B27〜B35の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、実施例B18〜B30で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途酢酸及び/又は酢酸カリウムの酢酸化合物を添加して調製した。また、表40に得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+CH3COO−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図20に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+CH3COO−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図21に示す。
また、銀もしくは銀化合物の溶媒として、エチレングリコールなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒に代表される前述の有機溶媒などの非水溶媒を用いた場合、また、非水溶媒と水とを併用する場合には、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を低くすることで得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が小さくなるよう制御し、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなるよう制御することができるものである。
なお、これらの制御を行う流体の調製や混合等の操作は、室温にて行っても良いが、室温以外の環境で行っても良い。
次に、銅微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
図1に示される流体処理装置を用いて、銅溶解流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中で銅微粒子を析出させる。
処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液を静置し、銅微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で−0.10MPaGにて乾燥し、銅微粒子の乾燥粉体を作製した。
第1流体及び第2流体のpHや、得られた銅微粒子の乾燥粉体について下記測定・分析を行った。
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認された銅微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られた銅微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶板は、47.3°に確認されるピークを使用し、得られた銅微粒子の回折パターンにおける43.0°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)による銅微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
銅微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例C、比較例Cの全てにおいて、銅元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
表41に示す処方の銅溶解流体と、表42に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表43の処理条件にて混合し、銅微粒子を析出させた。得られた銅微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表44に示す。なお、第1流体の供給圧力及び処理用部10の回転数は上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、実施例C1〜C14の全てにおいて、酸性を示した。銅溶解流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銅五水和物を溶解し、硫酸化合物を添加して調製した。還元剤流体は、実施例C1〜C9においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解して調製し、実施例C10〜C14においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解し、硫酸を添加して調製した。
さらに、混合した被処理流動体中の硫酸イオンの濃度を高くすることで、析出させた銅微粒子の結晶子径(d)が大きくなることを確認した。
第1流体である銅溶解流体の処方を表45とし、第2流体である還元剤流体の処方を表46、処理条件を表47とした以外は、実施例C1〜C14の場合と同様に実施して、銅微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表48に示す。また、比較例C1〜C12の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、酸性を示した。
第1流体である銅溶解流体の処方を表49とし、第2流体である還元剤流体の処方を表50、処理条件を表51とした以外は、実施例C1〜C14の場合と同様に実施して、銅微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表52に示す。また、比較例C13〜C24の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、酸性を示した。
実施例C7〜C9の比較として、バッチ式の試験を行った。第1流体である銅溶解流体の処方を表53とした。第2流体である還元剤流体の処方を表54とした。第1流体と第2流体との混合は、表55に記載した液量の第1流体をビーカー中で撹拌しながら、第2流体を表55に記載の送液流量にて1分間投入し、銅溶解流体と還元剤流体とを混合させ、銅微粒子を析出させた。銅微粒子を含むスラリー(銅微粒子分散液)が得られた。粒子の回収方法並びに分析方法については、実施例C1〜C14と同様の方法にて行った。
また、実施例Cには示していないが、銅溶解流体の溶媒として、上記の非水溶媒のみを用いた場合においても、同様の傾向が確認された。
なお、これらの制御を行う流体の調製や混合等の操作は、室温にて行っても良いが、室温以外の環境で行っても良い。
また、(A)ニッケル微粒子の製造方法の実施例においては、金属流体であるニッケル化合物流体は酸性、還元剤流体は塩基性を示すものを用い、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示すものとした。上記のpH条件については、銀や銅、その他の金属でも同様に実施することができる。
一方、(B)銀微粒子の製造方法と(C)銅微粒子の製造方法のそれぞれの実施例においては、金属流体である銀含有流体と銅溶解流体は酸性、還元剤流体は酸性を示すものを用い、処理用面1,2間より吐出された銀又は銅微粒子分散液は、酸性を示すものとした。上記のpH条件については、ニッケルやその他の金属でも同様に実施することができる。
2 第2処理用面
10 第1処理用部
11 第1ホルダ
20 第2処理用部
21 第2ホルダ
d1 第1導入部
d2 第2導入部
d20 開口部
結晶子径 D=K・λ/(β・cosθ) ・・・Scherrerの式
ここで、KはScherrer定数であり、一般的にK=0.9とする。λは使用したX線管球の波長、βは半値幅、θは回折角を用いて算出する。
例えば、ニッケル微粒子は、積層セラミックコンデンサや基板における伝導性材料、電極材料など広く使用されている材料であるが、ニッケル微粒子の製造方法としては、主に、気相法と液相法とに大別される。
特許文献1には、レーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、該平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であり、且つニッケル粒子内の平均結晶子径が400Å以上であるニッケル粉について記載されている。そのニッケル粉は、湿式法または乾式法で製造されたニッケル粉とアルカリ土類金属化合物の微粉末とを混合した後、またはニッケル粉の各粒子表面にアルカリ土類金属化合物を被覆させた後、不活性ガス又は微還元性ガス雰囲気中で、アルカリ土類金属化合物の溶融温度未満の温度で熱処理して得られたものであることや、SEM観察による平均粒子径が0.05〜1μmであることが好ましいことが記載されている。
特許文献2には、熱プラズマによってニッケルを蒸発させ、凝縮させて微粉化することによって得られたニッケル微粉であって、走査電子顕微鏡観察から求めた個数平均粒径が0.05〜0.2μmであり、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%であり、かつ、0.6μm以上の粗大粒子のニッケル微粉中に含まれる割合が個数基準で50ppm以下であるニッケル微粉について記載されている。また、そのニッケル微粉は、X線回折分析によって求められる結晶子径が、上記個数平均粒径に対して66%以上であることが好ましいことが記載されている。
特許文献3には、ポリオール溶媒に、還元剤、分散剤、及びニッケル塩を添加して混合溶液を製造し、この混合溶液を撹拌して昇温した後、反応温度及び時間を調整して還元反応によって得られるニッケルナノ粒子について記載されている。また、粒度が均一であり、分散性に優れたニッケル微粒子が得られることが記載されている。
具体的には、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHが、酸性条件下で一定となるように制御することも望ましい。また、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHを、酸性条件下で変化させることも望ましい。
さらに、本願発明は、所望する粒子径の金属微粒子に目的とする物性を付与させることができる。
本願発明における金属は、特に限定されない。化学周期表上における全ての金属である。一例として、Ti、Fe、W、Pt、Au、Cu、Ag、Pd、Ni、Mn、Co、Ru、V、Zn、Zr、Sn、In、Te、Ta、Bi、Sbなどの金属元素が挙げられる。それらの金属について、単体元素の金属であっても、複数元素を含む合金や金属元素に非金属元素を含む物質であっても良い。当然、卑金属と貴金属の合金としても実施できる。
本願発明における金属化合物としては、特に限定されない。一例としては、金属の塩、酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられる。金属の塩としては特に限定されないが、金属の硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられる。これらの金属化合物は、それぞれ単独で用いても良く、複数の混合物として用いても良い。
還元剤は、特に限定されないが、金属に対する還元剤の全てが使用可能である。ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、硫酸ヒドラジン、フェニルヒドラジン等のヒドラジン類や、ジメチルホルムアミド、ジメチルアミノエタノール、トリエチエルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミノボランなどのアミン類、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、タンニン酸、ギ酸又はそれらの塩などの有機酸類や、アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールやブタノール等の脂肪族モノアルコール類やターピネオール等の脂環族モノアルコール類等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、テトラエチレングリコール、ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。また、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化トリブチル錫、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、水素化ホウ素亜鉛、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどのヒドリド類や、グルコース等の糖類や、その他ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)、硫酸鉄などの遷移金属(チタンや鉄)の塩や、それらの水和物や溶媒和物などを用いることができる。これらの還元剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明においては、上述の還元剤とポリオールとを併用して金属イオンを還元するポリオール還元法を用いて金属微粒子を得るものであってもよい。
ここで、金属流体中の金属とは、金属イオンや金属の錯イオンなどの状態を問わずに金属流体中に含まれる全ての金属を言う。
本願発明者は、酸の種類を変更して種々実験を行ったが、硫酸についてのみ、比率(d/D)を制御できることを知見した。この知見は、本願発明者にとって大きな驚きであったが、その理由は現在のところ解明されていない。本願発明者は、硫酸イオンや硫酸イオンを構成する硫化物イオンもしくは硫黄の何らかの特性が上記のd/Dの制御に関与しているのではないかと思料しているが、そのメカニズムは不明である。特に、硫酸とポリオール溶媒とを用いることで、上記の比率(d/D)をより確実に制御できることを知見した。本願発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどをポリオールとして用いた場合には、ポリオールが分散剤としても作用する。
以下、本願発明の実施の形態の一例であるニッケル微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
本願発明に係る還元剤流体は、還元剤を溶媒に溶解または分子分散(以下、単に、溶解とする。)したものである。
また、ニッケル化合物流体と、還元剤流体との少なくとも何れか一方の流体には、ポリオールが含まれる。
また、ヒドラジンやヒドラジン一水和物など、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機または有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明においては、上述の還元剤とポリオールとを併用してニッケルイオンを還元するポリオール還元法を用いてニッケル微粒子を得るものである。
本願発明においては、ニッケル化合物流体に硫酸イオンを含み、その濃度を変化させることによって、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比を変化させることができる。また、同時にニッケル化合物流体のpHを変化させることができるが、ニッケル化合物流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。そして、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体のpHとニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比とを制御することによって、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。本願の出願人は、硫酸イオンが、ニッケル微粒子の粒子の成長を制御して、結晶子の成長を助長する作用を有し、その結果、ニッケル化合物流体のpHとニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比とを制御することによって、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。ここで、ニッケル化合物流体中のニッケルとは、ニッケルイオンやニッケルの錯イオンなどの状態を問わずにニッケル化合物流体中に含まれる全てのニッケルを言う。
ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比は、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を良好に制御するために、1.00を超えていることが望ましい。その点において、ニッケルイオンと硫酸イオンとを等しく含む硫酸ニッケルまたはその水和物をニッケル化合物として用いることが好適である。ニッケル化合物を溶解する際に用いる溶媒によっては、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比を高めるために硫酸化合物を添加しすぎると、ニッケル化合物流体中のニッケルイオンと硫酸イオンとが作用して、例えば硫酸ニッケルなどの析出物が生じる。ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比と溶媒のニッケル化合物並びに硫酸化合物に対する溶解度とのバランスが大切である。
本願発明において、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHが酸性であり、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を良好に制御するために、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHは4.4以下が望ましく、4.1以下がより望ましい。なお、この制御を行なう流体の調製や混合等の操作は、室温にて行なうものであってもよいが、室温以外の環境での操作であっても、室温条件下でのpHが上記のものとなる条件が満たされておればよい。
本願発明において、還元剤流体のpHは、特に限定されない。還元剤の種類や濃度などによって適宜選択すればよい。
また、還元剤流体に、上記硫酸化合物を添加しても良い。
また、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHが4.1以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.0を超えるものを用いることが望ましい。比率(d/D)が0.30以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.40以上で、結晶子径(d)が30nm以上、好ましくは35nm以上、より好ましくは40nm以上のニッケル微粒子を得る上で、好適である。
さらに、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を得る上では、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体のpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.1を超えるものを用いることが望ましく、比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子を得る上では、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体のpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.2を超えるものを用いることが望ましい。なお、この制御を行なう流体の調製や混合等の操作は、室温にて行なうものであってもよいが、室温以外の環境での操作であっても、室温条件下でのpHが上記のものとなる条件が満たされておればよい。
比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子や結晶子径が30nm以上のニッケル微粒子は、熱処理後の収縮を抑制することができることから、特に、セラミックコンデンサ用途に適している。
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどをポリオールとして用いた場合には、ポリオールが分散剤としても作用する。
ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比と、ニッケル化合物流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に含まれ、分散剤としても作用するポリオールの濃度とを制御することによっても、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。
その際、分散剤としても作用するポリオールは、ニッケル化合物流体に含まれることが望ましく、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.24では、ニッケル化合物流体中の分散剤としても作用するポリオールの濃度を高くすることで上記の比率(d/D)が高くなるよう制御し、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.00では、ニッケル化合物流体中の分散剤としても作用するポリオールの濃度を高くすることで上記の比率(d/D)が小さくなるよう制御することが望ましい。
以下、本願発明の実施の形態の一例である銀微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
また、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機又は有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願の出願人は、硫酸イオンが、銀微粒子の結晶子及び粒子の成長を制御する作用を有し、その結果、銀含有流体中の銀に対する、銀含有流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比、より具体的には、上記銀含有流体と還元剤流体とが混合された流体における銀に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。ここで、銀含有流体中の銀とは、銀イオンや銀の錯イオンなどの状態を問わずに銀含有流体中に含まれる全ての銀を言う。
銀含有流体中の銀に対する、銀含有流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比は、特に限定されない。目的とする銀の粒子径及び結晶子径に応じて適宜選択できる。なお、銀含有流体中に硫酸イオンを含む場合には、溶媒の銀もしくは銀化合物及び硫酸化合物に対する溶解度と、銀含有流体中の銀に対する銀含有流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比とのバランスが大切である。
本願発明において、銀含有流体と還元剤流体のpHは、特に限定されない。また、銀含有流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合した際の、混合した流体のpHについても特に限定されない。目的とする銀微粒子の結晶子径又は粒子径などによって適宜選択すればよい。
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
以下、本願発明の実施の形態の一例である銅微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、銅が溶解していることを条件に、銅溶解流体や還元剤流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいてもよい。
本願発明においては、金属流体と、還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で混合する方法を用いて行うことが好ましく、例えば、特許文献10,11に示される装置と同様の原理の装置を用いて混合して、金属微粒子を析出させることが好ましい。
図1〜図3に示す流体処理装置は、接近・離反可能な少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用部における処理用面の間で被処理物を処理するものであって、被処理流動体のうちの第1の被処理流動体である第1流体を処理用面間に導入し、上記第1流体を導入した流路とは独立し、処理用面間に通じる開口部を備えた別の流路から被処理流動体のうちの第2の被処理流動体である第2流体を処理用面間に導入して処理用面間で上記第1流体と第2流体を混合・攪拌して処理を行う装置である。なお、図1においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示しているが、本願発明において上下前後左右は相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。図2(A)、図3(B)においてRは回転方向を示している。図3(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
この鏡面研磨の面粗度は、特に限定されないが、好ましくはRa0.01〜1.0μm、より好ましくはRa0.03〜0.3μmとする。
このように、3次元的に変位可能に保持するフローティング機構によって、第2処理用部20を保持することが望ましい。
P=P1×(K−k)+Ps
なお、図示は省略するが、近接用調整面24を離反用調整面23よりも広い面積を持ったものとして実施することも可能である。
レイノルズ数Re=慣性力/粘性力=ρVL/μ=VL/ν
ここで、ν=μ/ρは動粘度、Vは代表速度、Lは代表長さ、ρは密度、μは粘度を示す。
そして、流体の流れは、臨界レイノルズ数を境界とし、臨界レイノルズ数以下では層流、臨界レイノルズ数以上では乱流となる。
上記流体処理装置の両処理用面1,2間は微小間隔に調整されるため、両処理用面1,2間に保有される流体の量は極めて少ない。そのため、代表長さLが非常に小さくなり、両処理用面1,2間を通過する薄膜流体の遠心力は小さく、薄膜流体中は粘性力の影響が大きくなる。従って、上記のレイノルズ数は小さくなり、薄膜流体は層流となる。
遠心力は、回転運動における慣性力の一種であり、中心から外側に向かう力である。遠心力は、以下の式で表される。
遠心力F=ma=mv2/R
ここで、aは加速度、mは質量、vは速度、Rは半径を示す。
上述の通り、両処理用面1,2間に保有される流体の量は少ないため、流体の質量に対する速度の割合が非常に大きくなり、その質量は無視できるようになる。従って、両処理用面1,2間にできる薄膜流体中においては重力の影響を無視できる。そのため、本来微粒子として析出させることが難しい比重差のある2種以上の金属元素を含む合金や複合金属化合物などの微粒子においても、両処理用面1,2間にできる薄膜流体中で析出させることができる。
この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
円環形状の開口部d20を処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状に設けた場合、処理用面1,2間に導入する第2流体を同一条件で導入することができるため、より均一な拡散・反応・析出等の流体処理を行うことができる。微粒子を量産する場合には、開口部を円環形状とすることが好ましい。
上記の流体処理装置において、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転を行う処理用面1,2の間に形成される薄膜流体中で、金属流体と、還元剤流体とを混合させて、金属微粒子を析出させる。その際、金属流体と還元剤流体の少なくとも何れか一方の被処理流動体には、硫酸イオンを含み、処理用面1,2間に導入される金属流体中の金属に対する上記混合した被処理流動体中の硫酸イオンのモル比とを制御する。
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として金属流体を、処理用面1,2間に作られた第1流体膜に直接導入する。
本願発明において、金属流体と還元剤流体とを混合する際の温度は、特に限定されない。金属や金属化合物の種類、還元剤の種類、流体のpHなどによって適切な温度で実施することが可能である。
また、本願発明における金属微粒子は、酸化物や水酸化物、酸化水酸化物などを一部含んでも実施できる。
まず、ニッケル微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
図1に示される流体処理装置を用いて、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中でニッケル微粒子を析出させる。
具体的には、中央から第1流体としてニッケル化合物流体を供給圧力=0.50MPaGで送液する。第1流体は図1の処理用部10の処理用面1と処理用部20の処理用面2との間の密封された空間(処理用面間)に、送り込まれる。処理用部10の回転数は3600 rpmである。第1流体は処理用面1,2間において強制された薄膜流体を形成し、処理用部10,20の外周より吐出される。第2流体として還元剤流体を処理用面1,2間に形成された薄膜流体に直接導入する。微小間隔に調製された処理用面1,2間においてニッケル化合物流体と還元剤流体とを混合させ、ニッケル微粒子を析出させる。ニッケル微粒子を含むスラリー(ニッケル微粒子分散液)が、処理用面1,2間より吐出される。
処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液を磁石の上に置き、ニッケル微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で大気圧にて乾燥し、ニッケル微粒子の乾燥粉体を作製した。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認されたニッケル微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られたニッケル微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶盤は、47.3℃に確認されるピークを使用し、得られたニッケル回折パターンの44.5°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
(ICP分析:不純物元素検出)
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)によるニッケル微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
ニッケル微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例A、比較例Aの全てにおいて、ニッケル元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
表1に示す処方のニッケル化合物流体と、表2に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表3の処理条件にて混合し、ニッケル微粒子を析出させた。得られたニッケル微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表4に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、実施例A1〜A17の全てにおいて、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、実施例A1〜A14においては、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pH及び硫酸イオン濃度を変更するために、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製し、実施例A15〜A17においては、ポリエチレングリコール600に変えてポリビニルピロリドン(k=30)を用いた以外は、実施例A1〜A14と同様に調製した。
また、表1から後述する表16までの表中における略記号は、NiSO4・6H2Oは硫酸ニッケル六水和物、EGはエチレングリコール、PEG600はポリエチレングリコール600、PVP(k=30)はポリビニルピロリドン(k=30)、PWは純水、HMHはヒドラジン一水和物、KOHは水酸化カリウム、H2SO4は硫酸、(NH4)2SO4は硫酸アンモニウム、K2SO4は硫酸カリウム、HNO3は硝酸、KNO3は硝酸カリウム、CH3COOHは酢酸、CH3COOKは酢酸カリウム、SO4 2−は硫酸イオン、CH3COO−3は酢酸イオンである。
実施例A1〜A17の第1流体のpHは4.1以下である。第1流体のpHが4.1以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)が1.0を超えるように制御することによって、比率(d/D)が0.30以上であり、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子や結晶子径が30nm以上のニッケル微粒子は、熱処理後の収縮を抑制できることから、セラミックコンデンサ用途に適したニッケル微粒子を製造できることを確認できた。
また、実施例A1〜A14で用いたポリエチレングリコール600をポリビニルピロリドン(k=30)に変更して実施した実施例A15〜A18においても、実施例A1〜A14と同様の結果が得られた。
また、実施例A1〜A14において、第1流体のpHが同じ場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を高くすることで、比率(d/D)を大きくすることが可能であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を低くすることで、 比率(d/D)を小さくすることが可能であることを確認した。
ニッケル化合物流体の処方を表5とし、処理条件を表6とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表7に示す。また、実施例A15〜A23の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
実施例A18〜A23の第1流体のpHは4.1を超えて4.7以下である。第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)が1.2を超えるように制御することによって、比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。また、第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)が1.1を超えるように制御することによって、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。
また、実施例A18〜A23において、第1流体のpHが同じ場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を高くすることで、 比率(d/D)を大きくすることが可能であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を低くすることで、 比率(d/D)を小さくすることが可能であることを確認した。
ニッケル化合物流体の処方を表8とし、処理条件を表9とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表10に示す。また、比較例A1〜A7の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pHのみを変更するために、別途硝酸及び/または硝酸カリウムを添加して調製した。
第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を1.00と一定とし、第1流体のpHを変化させただけでは、比率(d/D)を制御することができないことを確認した。
ニッケル化合物流体の処方を表11とし、処理条件を表12とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表13に示す。また、比較例A8〜A12の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pHのみを変更するために、別途酢酸及び/または酢酸カリウムを添加して調製した。
第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)を1.00と一定とし、第1流体のpHを変化させただけでは、比率(d/D)を制御することができないことを確認した。
表14に示す処方のニッケル化合物流体と、表15に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表16の処理条件にて混合し、ニッケル微粒子を析出させた。得られたニッケル微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表17に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、実施例A24〜A31の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、実施例A24〜A28においては別途硫酸を同量添加し、実施例A29〜A31においては硫酸を添加せずに調製した。実施例A24〜A28と実施例A29〜A31のそれぞれにおいて、ニッケル化合物流体中のポリエチレングリコール600の濃度を変化させた。
また、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)が1.00である、実施例A29〜A31においては、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、ニッケル微粒子の結晶子径(d)とその粒子径(D)は小さくなる傾向を示した。よって、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、比率(d/D)が小さくなる傾向を示すことを確認した。また、実施例A29〜A30においては、結晶子径(d)は30nm以上のニッケル微粒子が得られたが、その比率(d/D)は0.30を大きく下回った。
よって、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ni)が1.00を超えたところでは、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、比率(d/D)を大きくさせる可能性が示された。
次に、銀微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
図1に示される流体処理装置を用いて、銀含有流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中で銀微粒子を析出させる。
具体的には、中央から第1流体として銀含有流体又は還元剤流体のうちの何れか一方を供給圧力=0.50MPaGで送液する。第1流体は、図1の処理用部10の処理用面1と処理用部20の処理用面2との間の密封された空間(処理用面間)に、送り込まれる。処理用部10の回転数は500 rpmである。第1流体は処理用面1,2間において強制された薄膜流体を形成し、処理用部10,20の外周より吐出される。第2流体として銀含有流体又は還元剤流体のうちの何れか他方を処理用面1,2間に形成された薄膜流体に直接導入する。微小間隔に調整された処理用面1,2間において銀含有流体と還元剤流体とを混合させ、銀微粒子を析出させる。銀微粒子を含むスラリー(銀微粒子分散液)が、処理用面1,2間より吐出される。
処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液を静置し、銀微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で−0.10MPaGにて乾燥し、銀微粒子の乾燥粉体を作製した。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認された銀微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られた銀微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶盤は、47.3°に確認されるピークを使用し、得られた銀微粒子の回折パターンにおける44.5°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
(ICP分析:不純物元素検出)
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)による銀微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
銀微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例B、比較例Bの全てにおいて、銀元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
表18に示す処方の還元剤流体と、表19に示す処方の銀含有流体とを、図1に示す流体処理装置にて表20の処理条件にて混合し、銀微粒子を析出させた。得られた銀微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表21に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、実施例B1〜B17の全てにおいて、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、pHや硫酸イオン濃度を変更するために、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製した。
また、表18から後述する表30までの表中における略記号は、AgNO3は硝酸銀、FeSO4・7H2Oは硫酸鉄(II)七水和物、H2SO4は硫酸、(NH4)2SO4は硫酸アンモニウム、K2SO4は硫酸カリウム、HNO3は硝酸、KNO3は硝酸カリウム、CH3COOHは酢酸、CH3COOKは酢酸カリウム、PWは純水、SO4 2−は硫酸イオン、NO3 −は硝酸イオン、CH3COO−は酢酸イオン、Agは銀である。また実施例B1,B4で作製した銀微粒子のSEM写真を図4,図5に示す。また、表21に得られた結果の内、実施例B1〜B13の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図6に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図7に示す。また、実施例B14〜B17では、第1流体である還元剤流体の流量を変更することで、混合された被処理流動体中における銀に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例B14〜B17の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図8に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図9に示す。
実施例B14〜B17による銀含有流体と還元剤流体との混合比を変化させた場合も、図8,図9より、実施例B1〜B13の場合と同様に、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が小さくなることがわかる。さらに、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が小さくなることを確認した。
還元剤流体の処方を表22とし、処理条件を表23とした以外は、実施例B1〜B17の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表24に示す。また、比較例B1〜B7の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、実施例B1〜B17で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途硝酸及び/又は硝酸カリウムの硝酸化合物を添加して調製した。また、表24にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+NO3 −/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図10に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+NO3 −/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図11に示す。
還元剤流体の処方を表25とし、処理条件を表26とした以外は、実施例B1〜B17の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表27に示す。また、比較例B8〜B14の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、実施例B1〜B17で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途酢酸及び/又は酢酸カリウムの酢酸化合物を添加して調製した。また、表27にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+CH3COO−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第一流体のpH毎にプロットしたグラフを図12に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+CH3COO−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図13に示す。
実施例B7〜B9の比較として、バッチ式の試験を行った。還元剤流体である第1流体の処方を表28とした。第1流体と第2流体との混合は、表29に記載した量の第1流体をビーカー中で撹拌しながら、第2流体を表29に記載の流速にて1分間投入し、銀含有流体と還元剤流体とを混合させ、銀微粒子を析出させた。銀微粒子を含むスラリー(銀微粒子分散液)が得られた。第2流体の処方、粒子の回収方法並びに分析方法については、実施例B1〜B17と同様の方法にて行った。
表31に示す処方の銀含有流体と、表32に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表33の処理条件にて混合し、銀微粒子を析出させた。得られた銀微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表34に示す。なお、第1流体の供給圧力は、上述の通りであり、処理用部10の回転数は1700rpmである。また、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、実施例B18〜B30の全てにおいて、酸性を示した。銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製した。還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物及び硫酸を溶解して調製した。
また、表31から表40までの表中における略記号は、EGはエチレングリコール、PWは純水、Ag2SO4は硫酸銀、FeSO4・7H2Oは硫酸鉄(II)七水和物、H2SO4は硫酸、(NH4)2SO4は硫酸アンモニウム、K2SO4は硫酸カリウム、HNO3は硝酸、KNO3は硝酸カリウム、CH3COOHは酢酸、CH3COOKは酢酸カリウム、SO4 2−は硫酸イオン、NO3 −は硝酸イオン、CH3COO−は酢酸イオン、Agは銀である。また、表34に得られた結果の内、実施例B18〜B26の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図14に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図15に示す。また、実施例B27〜B30では、第2流体である還元剤流体の流量を変更することで、混合された被処理流動体中における銀に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例B27〜B30の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図16に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO4 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図17に示す。
図16、図17より、銀含有流体と還元剤流体との混合比を変化させた場合も、実施例B18〜B26場合と同様に、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなることがわかる。さらに、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が大きくなることを確認した。
銀含有流体の処方を表35とし、処理条件を表36とした以外は、実施例B18〜B30の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表37に示す。また、比較例B18〜B26の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、実施例B18〜B30で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途硝酸及び/又は硝酸カリウムの硝酸化合物を添加して調製した。また、表37にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+NO3 −/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図18に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+NO3 −/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図19に示す。
銀含有流体の処方を表38とし、処理条件を表39とした以外は、実施例B18〜B30の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表40に示す。また、比較例B27〜B35の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、実施例B18〜B30で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途酢酸及び/又は酢酸カリウムの酢酸化合物を添加して調製した。また、表40に得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+CH3COO−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図20に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO4 2−+CH3COO−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図21に示す。
また、銀もしくは銀化合物の溶媒として、エチレングリコールなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒に代表される前述の有機溶媒などの非水溶媒を用いた場合、また、非水溶媒と水とを併用する場合には、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を低くすることで得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が小さくなるよう制御し、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなるよう制御することができるものである。
なお、これらの制御を行う流体の調製や混合等の操作は、室温にて行っても良いが、室温以外の環境で行っても良い。
次に、銅微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
図1に示される流体処理装置を用いて、銅溶解流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中で銅微粒子を析出させる。
処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液を静置し、銅微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で−0.10MPaGにて乾燥し、銅微粒子の乾燥粉体を作製した。
第1流体及び第2流体のpHや、得られた銅微粒子の乾燥粉体について下記測定・分析を行った。
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認された銅微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られた銅微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶板は、47.3°に確認されるピークを使用し、得られた銅微粒子の回折パターンにおける43.0°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)による銅微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
銅微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例C、比較例Cの全てにおいて、銅元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
表41に示す処方の銅溶解流体と、表42に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表43の処理条件にて混合し、銅微粒子を析出させた。得られた銅微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表44に示す。なお、第1流体の供給圧力及び処理用部10の回転数は上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、実施例C1〜C14の全てにおいて、酸性を示した。銅溶解流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銅五水和物を溶解し、硫酸化合物を添加して調製した。還元剤流体は、実施例C1〜C9においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解して調製し、実施例C10〜C14においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解し、硫酸を添加して調製した。
さらに、混合した被処理流動体中の硫酸イオンの濃度を高くすることで、析出させた銅微粒子の結晶子径(d)が大きくなることを確認した。
第1流体である銅溶解流体の処方を表45とし、第2流体である還元剤流体の処方を表46、処理条件を表47とした以外は、実施例C1〜C14の場合と同様に実施して、銅微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表48に示す。また、比較例C1〜C12の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、酸性を示した。
第1流体である銅溶解流体の処方を表49とし、第2流体である還元剤流体の処方を表50、処理条件を表51とした以外は、実施例C1〜C14の場合と同様に実施して、銅微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表52に示す。また、比較例C13〜C24の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、酸性を示した。
実施例C7〜C9の比較として、バッチ式の試験を行った。第1流体である銅溶解流体の処方を表53とした。第2流体である還元剤流体の処方を表54とした。第1流体と第2流体との混合は、表55に記載した液量の第1流体をビーカー中で撹拌しながら、第2流体を表55に記載の送液流量にて1分間投入し、銅溶解流体と還元剤流体とを混合させ、銅微粒子を析出させた。銅微粒子を含むスラリー(銅微粒子分散液)が得られた。粒子の回収方法並びに分析方法については、実施例C1〜C14と同様の方法にて行った。
また、実施例Cには示していないが、銅溶解流体の溶媒として、上記の非水溶媒のみを用いた場合においても、同様の傾向が確認された。
なお、これらの制御を行う流体の調製や混合等の操作は、室温にて行っても良いが、室温以外の環境で行っても良い。
また、(A)ニッケル微粒子の製造方法の実施例においては、金属流体であるニッケル化合物流体は酸性、還元剤流体は塩基性を示すものを用い、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示すものとした。上記のpH条件については、銀や銅、その他の金属でも同様に実施することができる。
一方、(B)銀微粒子の製造方法と(C)銅微粒子の製造方法のそれぞれの実施例においては、金属流体である銀含有流体と銅溶解流体は酸性、還元剤流体は酸性を示すものを用い、処理用面1,2間より吐出された銀又は銅微粒子分散液は、酸性を示すものとした。上記のpH条件については、ニッケルやその他の金属でも同様に実施することができる。
2 第2処理用面
10 第1処理用部
11 第1ホルダ
20 第2処理用部
21 第2ホルダ
d1 第1導入部
d2 第2導入部
d20 開口部
Claims (11)
- 少なくとも2種類の被処理流動体を用いるものであり、
そのうちで少なくとも1種類の被処理流動体は、金属もしくは金属化合物を溶媒に溶解させた金属流体であり、
上記以外の被処理流動体で少なくとも1種類の被処理流動体は、還元剤を含む還元剤流体であり、
上記被処理流動体のうち少なくとも1種類の被処理流動体には、硫酸イオンを含むものであり、
上記の被処理流動体を、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で混合し、上記金属流体中の金属若しくは金属化合物に由来する金属微粒子を析出させるものであり、
上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比を制御することによって、上記金属微粒子の粒子径(D)に対する上記金属微粒子の結晶子径(d)の比率(d/D)を制御するものであることを特徴とする、金属微粒子の製造方法。 - 上記被処理流動体のうち少なくとも1種類の被処理流動体には、ポリオールを含むことを特徴とする、請求項1記載の金属微粒子の製造方法。
- 上記金属流体中の金属の濃度と、上記混合がなされる前の上記被処理流動体中の硫酸イオンの濃度と、上記混合がなされる上記被処理流動体の混合比とを制御することによって、上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比を制御することを特徴とする、請求項1または2に記載の金属微粒子の製造方法。
- 上記溶媒は、ポリオールを含有するポリオール溶媒であり、
上記の混合した被処理流動体中の金属に対する硫酸イオンのモル比を高くなるように制御することで上記の比率(d/D)が大きくなるように制御することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の金属微粒子の製造方法。 - 上記制御に際して、上記の混合した被処理流動体のpHを制御することによって、上記金属微粒子の粒子径(D)に対する上記金属微粒子の結晶子径(d)の比率(d/D)を制御するものであることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の金属微粒子の製造方法。
- 上記の制御に際して、上記金属流体中の金属に対する、上記金属流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を変化させることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の金属微粒子の製造方法。
- 上記制御に際して、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHを、酸性条件下で一定となるように制御することを特徴とする、請求項5に記載の金属微粒子の製造方法。
- 上記制御に際して、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHを、酸性条件下で変化させることを特徴とする、請求項5に記載の金属微粒子の製造方法。
- 上記金属もしくは金属化合物は、ニッケル、銀、銅、ニッケル化合物、銀化合物、銅化合物から選ばれる少なくとも何れか1種であることを特徴とする、請求項1〜8に記載の金属微粒子の製造方法。
- 上記少なくとも2つの処理用面として、第1処理用面と第2処理用面とを備え、
第1処理用面と第2処理用面との間に上記被処理流動体を導入し、
この被処理流動体の圧力により第1処理用面と第2処理用面とを離反させる方向に移動させる力を発生させ、この力によって、第1処理用面と第2処理用面との間が微小間隔に保たれ、この微小間隔に保たれた第1処理用面と第2処理用面との間を通過する上記被処理流動体が上記薄膜流体を形成することを特徴とする、請求項1〜9の何れかに記載の金属微粒子の製造方法。 - 上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか一方の被処理流動体が、上記薄膜流体を形成しながら上記少なくとも2つの処理用面間を通過し、
上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか一方の被処理流動体が流される流路とは独立した別途の導入路を備えており、
上記少なくとも2つの処理用面の少なくとも何れか一方に上記別途の導入路に通じる開口部を少なくとも一つ備え、
上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか他方の被処理流動体を、上記開口部から上記少なくとも2つの処理用面間に導入して、上記金属流体と上記還元剤流体とを、上記薄膜流体中で混合することを特徴とする、請求項1〜10の何れかに記載の金属微粒子の製造方法。
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