JPWO2014042227A1 - 金属微粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御された金属微粒子の製造方法を提供する。金属もしくは金属化合物を溶媒に溶解させた金属流体と、還元剤を含む還元剤流体との少なくとも2種類の被処理流動体を用いる。上記金属流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方の被処理流動体には硫酸イオンを含む。上記の被処理流動体を、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面間にできる薄膜流体中で混合し、金属微粒子を析出させる。その際、上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比を制御することによって、金属微粒子の粒子径(D)に対する金属微粒子の結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することを特徴とする。

Description

本願発明は、金属微粒子の製造方法に関する。
近年、触媒、導電性材料、磁性材料、二次電子放出材料、発光体、吸熱体、エネルギー貯蔵、電極材料、色材など、幅広い分野において金属微粒子が求められており、目的に応じて粒子径および粒度分布が制御されたものが使用されている。また、金属微粒子の物性は、その結晶子径によっても変化するものであり、例えば、同じ粒子径を持つ金属微粒子であっても、結晶子が小さい場合には焼成温度を低くでき、結晶子が大きい場合には熱処理後の収縮を小さくできる。よって、金属微粒子の結晶子径を制御すること、特に、金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御する技術を確立することは極めて有用性が高い。
一般に結晶子とは、単結晶とみなせる最大の集まりのことをいい、その結晶子の大きさのことを結晶子径という。微小粒子の結晶子径の測定方法には、電子顕微鏡を用いて結晶子の格子縞を確認する方法と、X線回折装置を用いて回折パターンとScherrerの式より結晶子径を算出する方法とがある。
結晶子径 D=K・λ/(β・cosθ) ・・・Scherrerの式
ここで、KはScherrer定数であり、一般的にK=0.9とする。λは使用したX線管球の波長、βは半値幅、θは回折角を用いて算出する。
金属微粒子の製造方法としては、種々の方法が提案されている。
例えば、ニッケル微粒子は、積層セラミックコンデンサや基板における伝導性材料、電極材料など広く使用されている材料であるが、ニッケル微粒子の製造方法としては、主に、気相法と液相法とに大別される。
特許文献1には、レーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、該平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であり、且つニッケル粒子内の平均結晶子径が400Å以上であるニッケル粉について記載されている。そのニッケル粉は、湿式法または乾式法で製造されたニッケル粉とアルカリ土類金属化合物の微粉末とを混合した後、またはニッケル粉の各粒子表面にアルカリ土類金属化合物を被覆させた後、不活性ガス又は微還元性ガス雰囲気中で、アルカリ土類金属化合物の溶融温度未満の温度で熱処理して得られたものであることや、SEM観察による平均粒子径が0.05〜1μmであることが好ましいことが記載されている。
特許文献2には、熱プラズマによってニッケルを蒸発させ、凝縮させて微粉化することによって得られたニッケル微粉であって、走査電子顕微鏡観察から求めた個数平均粒径が0.05〜0.2μmであり、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%であり、かつ、0.6μm以上の粗大粒子のニッケル微粉中に含まれる割合が個数基準で50ppm以下であるニッケル微粉について記載されている。また、そのニッケル微粉は、X線回折分析によって求められる結晶子径が、上記個数平均粒径に対して66%以上であることが好ましいことが記載されている。
特許文献3には、ポリオール溶媒に、還元剤、分散剤、及びニッケル塩を添加して混合溶液を製造し、この混合溶液を撹拌して昇温した後、反応温度及び時間を調整して還元反応によって得られるニッケルナノ粒子について記載されている。また、粒度が均一であり、分散性に優れたニッケル微粒子が得られることが記載されている。
一般的に、気相法で得られたニッケル微粒子の粒度分布は広く、ニッケル微粒子の粒子径や結晶子径を均一にする事が難しいだけでなく、製造におけるエネルギーコストが高くなる。加えて、特許文献1に記載されたような、粒度分布が狭く結晶子径が大きいニッケル微粒子や、特許文献2に記載されたような、全体における粗大粒子の割合が少なく平均粒径に対して結晶子径の比率が大きなニッケル微粒子を得るためには、製造工程が複雑となり、製造時のエネルギーが増大する。その他、異物混入の問題もある。
また、液相法は、気相法に比べてニッケル微粒子の粒子径を制御し易く製造コストも下げやすいが、結晶子径の制御が難しい。特許文献3や後述する特許文献10には、ニッケル微粒子を含めた金属微粒子の粒子径についての記載はあるが、結晶子径についての記載はない。そのため、液相法を用いた、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御されたニッケル微粒子の製造方法については、これまでに開示がなされていない。
また、銀微粒子は、導電性材料、電極材料など広く使用されている材料であるが、銀微粒子の製造方法は、超臨界法、熱分解法、超音波法、レーザーアブレーション法、逆ミセル法、気相法などの一般的な方法や、特許文献4に記載されたようなマイクロ波を用いた方法等がある。また、比較的粒子径を制御し易く、製造コストも下げやすい液相法として、特許文献5、6、10に記載されたような製造方法がある。
従来の一般的な方法や、特許文献4のような方法で得られた銀微粒子の粒度分布は広く、銀微粒子の粒子径や結晶子径を均一にする事が難しいだけでなく、製造におけるエネルギーコストが高くなる。
また、液相法は、気相法に比べて銀微粒子の粒子径を制御し易く製造コストも下げやすいが、結晶子径の制御が難しい。特許文献5、6、10には、銀微粒子を含めた金属微粒子の粒子径についての記載はあるが、粒子径に対する結晶子径の制御に関する記載はない。
また、銅微粒子は、導電性材料や電極材料として、積層セラミックコンデンサーや、プリンタブルエレクトロニクスの分野など、広く使用されている材料であり、銅微粒子の製造方法は、超臨界法、熱分解法、超音波法、逆ミセル法、気相法などの一般的な方法や、特許文献7に記載されたような溶融状態の銅にアンモニアを含むガスを吹き当てる方法等がある。また、比較的粒子径を制御し易く、製造コストも下げやすい液相法として、特許文献8〜11に記載されたような製造方法がある。
従来の一般的な方法や、特許文献7のような方法で得られた銅微粒子の粒度分布は広く、銅微粒子の粒子径や結晶子径を均一にする事が難しいだけでなく、製造におけるエネルギーコストが高くなる。例えば、特許文献7に記載された金属銅微粒子は、BET法で測定した粒子径が3μm以下、真珠状で、かつ結晶子サイズが0.1〜10μmであることを特徴としており、導電ペースト用材料に好適であることが記載されている。しかしながら、実施例に示されたように、金属銅微粒子のSEM観察による粒子径はナノサイズからマイクロサイズの範囲となっており、その粒度分布は広く、粒子径や結晶子径を均一にすることが難しい。
また、液相法は、気相法に比べて銅微粒子の粒子径を制御し易く製造コストも下げやすいが、結晶子径の制御が難しい。特許文献8〜11には、銅微粒子を含めた金属微粒子の粒子径及び/又は結晶子径についての記載はあるが、粒子径に対する結晶子径の制御に関する記載はない。
例えば、特許文献8にあっては、請求項1として、有機金属化合物を、前記有機金属化合物を構成する有機化合物に対してアミノ基含有置換アルコール類を等モル以上含有する溶媒に溶解することにより、金属換算濃度が少なくとも1質量%であり、かつ実質的に水を含有しない有機金属化合物溶液を調製し、有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも一種により還元することを特徴とする金属微粒子分散液の製造方法が開示されている。特許文献8に記載された金属微粒子分散液中の金属微粒子の粒子径は通常コロイドを形成する程度であるが限定的ではないことや、好ましい粒子径は1〜100nmであることが記載され、特許文献8に記載された金属微粒子の平均結晶子サイズは、通常1〜100nmであることが記載されているが、粒子径や結晶子サイズをどのように制御するかについての記載はない。
また、特許文献9には、請求項1として、アミン類、窒素含有複素環化合物、ニトリル類及びシアン化合物、ケトン類、アミノ酸類、アルカノールアミン類又はそれらの塩又は誘導体から選ばれる少なくとも1種の錯化剤、及び保護コロイドの存在下で、2価の銅酸化物と還元剤とを媒液中で混合して、金属銅微粒子を生成させることを特徴とする銅微粒子の製造方法が開示され、2価の銅酸化物が20〜500nmの範囲の平均結晶子径を有することも記載されているが、金属銅微粒子の結晶子径についての記載はない。
本願出願人の出願である特許文献10にあっては、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する装置を使用して、上記の薄膜流体中で、ニッケル、銀、銅などの金属化合物を含む水溶液と還元剤水溶液とを合流させ、均一混合しながら金属化合物の還元反応を行うことにより、ニッケル、銀、銅などの金属微粒子を得る方法が記載されている。そして、高分子分散剤を含む硫酸ニッケル六水和物と高分子分散剤を含むヒドラジン水溶液とを合流させてニッケル微粒子を析出させた実施例や高分子分散剤を含む硝酸銀水溶液をヒドラジン水溶液又はジメチルアミノエタノール水溶液と合流させて銀微粒子を析出させた実施例、硝酸銅水溶液と高分子分散剤を含むヒドラジン水溶液とを合流させて銅微粒子を析出させた実施例などが示されている。ところが、特許文献10にあっては、金属微粒子の粒子径や、金属コロイド溶液の単分散度の制御について、処理用面の回転数や処理用面間の距離、及び、薄膜流体の流速や原料濃度を変えることによりなされ得ることが示唆されているに止まり、粒子径に対する結晶子径の制御に関しては言及することはなかった。より詳しくは、薄膜流体を構成する酸としては、アスコルビン酸や有機酸類(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等)の還元剤を用いることが記載されているに止まり、硫酸によって結晶子径と粒子径とを制御することに関する記載はなかった。
また、本願出願人の出願である特許文献11にあっては、薄膜流体を構成する流体中の物質の種類、濃度、流体のpH、流体の導入温度、流体の導入速度を変化させることによって、銅微粒子を含む微粒子の結晶子径を制御することが開示されている。ところが、原料流体や析出流体中の物質や、流体のpH調整に用いる物質の種類については、極めて多数の物質が示されており、また、粒子径に対する結晶子径の制御に関しての記載はなく、また特定の傾向についても記載されていなかった。そのため、実際の微粒子の製造に関しては、未だ多くの試行錯誤を必要とする場合があった。詳しくは、実施例では、ポリオールと、塩化銅又は硝酸銅三水和物との原料流体に対して、ヒドラジン一水和物とポリオールとの析出流体を用いた例が示され、さらに詳しくは、ベンゾトリアゾールによるpH調整や流体の導入速度の変更を行なう例が示されているが、混合後の流体は酸性条件ではないと考えられ、混合後の流体中の銅と硫酸イオンとのモル比を制御することによって、結晶子径並びにd/Dを制御するものではなかった。
この特許文献10や11に記載の装置や方法は、本願出願人の開発に係るものであり、微粒子、特にナノサイズの微粒子の製造に貢献できるものと高い評価を受けているものであるが、個々の微粒子の製造や得られる微粒子の物性などの諸特性の制御に関しては、未だ未解明な部分が多いのが現状である。
特開2007−197836号公報 特開2011−195888号公報 特開2009−24254号公報 特開2007−169680号公報 特開2006−28637号公報 特開2008−255377号公報 特開2004−124257号公報 特開2006−97116号公報 特開2012−52240号公報 国際公開WO2009/008390号パンフレット 国際公開WO2013/008706号パンフレット
上記の事情に鑑み、本願発明は、金属微粒子の製造方法にあって、金属微粒子の結晶子径を制御すること、特に、金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御する方法を提供するものである。
本願発明者は、金属微粒子の製造について鋭意研究して種々実験を繰り返す中で、結晶子径の制御に関して硫酸イオンが大きな役割を果たすことを知見した。かかる知見は本願発明者にとっても大きな驚きであり、この知見に基づき、本願発明を完成させるに至った。
即ち、本願発明の金属微粒子の製造方法は、少なくとも2種類の被処理流動体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の被処理流動体は、金属もしくは金属化合物を溶媒に溶解させた金属流体であり、上記以外の被処理流動体で少なくとも1種類の被処理流動体は、還元剤を含む還元剤流体である。必要に応じて、上記金属流体及び上記還元剤流体以外の第3の被処理流動体を用いることもできる。上記金属流体と、上記還元剤流体と、必要に応じて加えられる上記第3の被処理流動体との、少なくとも何れか一の被処理流動体には、硫酸イオンが含まれる。上記の被処理流動体を、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間に導入する。導入された上記の被処理流動体は、上記の少なくとも2つの処理用面の間で薄膜流体となる。本願発明は、上記の薄膜流体中で上記の被処理流動体が混合し、上記の薄膜流体中で上記の金属もしくは金属化合物と上記の還元剤とが反応し、金属微粒子が析出するところの、混合・析出工程を含むものである。
そして、本願発明は、上記の混合・析出工程中において、上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比を制御することによって、上記金属微粒子の粒子径(D)に対する上記金属微粒子の結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することを要旨とする。
例えば、上記の比率(d/D)は、用いる金属や金属化合物等の原料を始めとする被処理流動体の条件や、目的とする金属微粒子の条件等に応じて、種々が可能である。得られた金属微粒子に熱を加えた場合にあっても、収縮が生じにくい特性を有するものを得るためには、上記の比率(d/D)を0.3以上、より望ましくは0.5を越えるように制御することが適当である。言い換えれば、上記の比率(d/D)を0.3以上、より望ましくは0.5を越えるように制御することで、粒子径に対して比較的結晶子径の大きな金属微粒子を得ることが可能であることを本願発明者は知見した。そして、粒子径に対して比較的結晶子径の大きな金属微粒子を得ることで、得られた金属微粒子に熱を加えた場合にあっても、得られた微粒子に収縮が生じにくい特性を与えることができる。
また、本願発明は、上記被処理流動体のうち少なくとも1種類の被処理流動体には、ポリオールを含むものとして実施することができる。
上記ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも何れか1種を用いることができる。
特に、上記溶媒、すなわち金属流体の溶媒として、ポリオールを含有するポリオール溶媒を用いることによって、上記の混合した被処理流動体中の金属に対する硫酸イオンのモル比を高くなるように制御することで、上記の比率(d/D)が大きくなるように制御することができる。
また、本願発明は、上記の混合・析出工程において、上記金属流体中の金属の濃度と、上記混合がなされる前の上記被処理流動体中の硫酸イオンの濃度と、上記混合がなされる上記被処理流動体の混合比とを制御することによって、上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比を制御するものとして実施することができる。例えば、(1)上記金属流体中の金属の濃度と、(2)上記混合がなされる前の上記被処理流動体中の硫酸イオンの濃度と、(3)上記混合がなされる上記被処理流動体の混合比との、それぞれを一定としてもよく、(1)〜(3)の全てを変化させてもよく、(1)〜(3)のうちの一部を一定としてその残りを変化させてもよい。
また、本願発明は、上記の混合・析出工程中において、上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比に加えて、上記の混合した被処理流動体のpHを制御することによって、上記金属微粒子の粒子径(D)に対する上記金属微粒子の結晶子径(d)の比率(d/D)を制御するものとして実施できる。
また、本願発明は、上記制御は、混合時の被処理流動体における上記の特定の条件を制御するものであるが、上記金属流体中の金属に対する、上記金属流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を変化させるなどして、混合時の上記の特定の条件の制御を実現することができる。また、上記金属流体中の金属の濃度や上記金属流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させることで、混合時の上記の特定の条件の制御を実現することができる。上記金属流体と上記還元剤流体との混合比を変化させることで、混合時の上記の特定の条件の制御を実現することができる。
また、本願発明は、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHを制御して実施することも望ましい。
具体的には、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHが、酸性条件下で一定となるように制御することも望ましい。また、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHを、酸性条件下で変化させることも望ましい。
また、本願発明に係る上記金属もしくは金属化合物の金属として、化学周期表上の金属から選択される種々の金属を用いることができる。本願発明は、上記の金属の種類を限定するものではないが、ニッケル、銀、銅、ニッケル化合物、銀化合物、銅化合物から選ばれる少なくとも何れか1種であるものとして実施することができる。
また、本願発明は、上記金属もしくは金属化合物がニッケルまたは硫酸ニッケルの水和物などのニッケル化合物であってニッケル微粒子を析出させる場合には、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体の室温条件下でのpHが、酸性条件下で一定となるとの条件を維持しつつ、上記金属流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が高くなるようにすることで上記の比率(d/D)が大きくなるよう制御するものであり、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体の室温条件下でのpHが、酸性条件下で一定となるとの条件を維持しつつ、上記金属流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が低くなるようにすることで上記の比率(d/D)が小さくなるよう制御するものとして実施できる。
また、本願発明は、上記金属もしくは金属化合物がニッケルまたはニッケル化合物であってニッケル微粒子を析出させる場合には、上記金属流体として、下記のものを用いることによって、上記の比率(d/D)が0.30以上であるニッケル微粒子を得るものとして実施することができる。上記金属流体としては、上記金属流体の室温条件下でのpHが4.1以下を示し、かつ、上記金属流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.0を超えるものである。
本願発明は、上記金属もしくは金属化合物がニッケルまたはニッケル化合物であってニッケル微粒子を析出させる場合には、上記金属流体として、下記のものを用いることによって、上記結晶子径(d)が30nm以上であるニッケル微粒子を得るものとして実施することができる。上記金属流体としては、上記金属流体の室温条件下でのpHが4.1以下を示し、かつ、上記金属流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.0を超えるものである。
また、本願発明は、上記金属もしくは金属化合物がニッケルまたはニッケル化合物であってニッケル微粒子を析出させる場合には、上記金属流体として、下記のものを用いることによって、上記結晶子径(d)が30nm以上であるニッケル微粒子を得るものとして実施することができる。上記金属流体としては、上記金属流体の室温条件下でのpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、上記金属流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.1を超えるものである。
本願発明は、上記金属もしくは金属化合物がニッケルまたはニッケル化合物であってニッケル微粒子を析出させる場合には、上記金属流体として、下記のものを用いることによって、上記の比率(d/D)が0.30以上であるニッケル微粒子を得るものとして実施することができる。上記金属流体としては、上記金属流体の室温条件下でのpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、上記金属流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.2を超えるものである。
また、本願発明は、上記被処理流動体のうち少なくとも1種類の被処理流動体にはポリオールを含み、上記の混合・析出工程中において、上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比の制御に加え、上記の混合した被処理流動体中のポリオールの濃度を制御することによって、上記金属微粒子の粒子径(D)に対する上記金属微粒子の結晶子径(d)の比率(d/D)を制御するものとして実施することができる。
そして、本願発明は、上記金属もしくは金属化合物がニッケルまたはニッケル化合物であってニッケル微粒子を析出させる場合には、上記金属流体が上記ポリオールとしてエチレングリコールとポリエチレングリコールとを含み、上記金属流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.24では、上記金属流体中の上記ポリオールの濃度を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなるよう制御するものであり、上記金属流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.00では、上記金属流体中の上記ポリオールの濃度を高くすることで上記の比率(d/D)が小さくなるよう制御するものとして実施することができる。
また、本願発明は、上記金属もしくは金属化合物が銀または銀化合物であって銀微粒子を析出させる場合には、上記金属流体の溶媒として水のみを用いることによって、上記の混合した被処理流動体中の金属に対する硫酸イオンのモル比を低くなるように制御することで上記の比率(d/D)が大きくなるように制御することもできる。
また、本願発明は、上記の少なくとも2つの処理用面として、第1処理用面と第2処理用面とを備え、第1処理用面と第2処理用面との間に上記被処理流動体を導入し、この被処理流動体の圧力により第1処理用面と第2処理用面とを離反させる方向に移動させる力を発生させ、この力によって、第1処理用面と第2処理用面との間が微小な間隔に保たれ、この微小間隔に保たれた第1処理用面と第2処理用面との間を通過する上記被処理流動体が上記薄膜流体を形成するものとして実施することができる。
また、本願発明は、上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか一方の被処理流動体が、上記薄膜流体を形成しながら上記少なくとも2つの処理用面間を通過し、上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか一方の被処理流動体が流される流路とは独立した別途の導入路を備えており、上記少なくとも2つの処理用面の少なくとも何れか一方に上記別途の導入路に通じる開口部を少なくとも一つ備え、上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか他方の被処理流動体を、上記開口部から上記少なくとも2つの処理用面間に導入して、上記金属流体と上記還元剤流体とを、上記薄膜流体中で混合するものとして実施できる。
本願発明の実施の態様の一例を示せば、被処理流動体に圧力を付与する流体圧付与機構と、上記少なくとも2つの処理用面のうち第1処理用面を備えた第1処理用部と、上記少なくとも2つの処理用面のうち第2処理用面を備えた第2処理用部とを備え、これらの処理用部を相対的に回転させる回転駆動機構とを備え、上記の各処理用面は、上記の圧力が付与された被処理流動体が流される、密封された流路の一部を構成するものであり、上記第1処理用部と第2処理用部のうち、少なくとも第2処理用部は受圧面を備えるものであり、且つ、この受圧面の少なくとも一部が上記第2処理用面により構成され、この受圧面は、上記の流体圧付与機構が被処理流動体に付与する圧力を受けて第1処理用面から第2処理用面を離反させる方向に移動させる力を発生させ、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する第1処理用面と第2処理用面との間に上記の圧力が付与された被処理流動体が通されることにより、上記被処理流動体が上記薄膜流体を形成し、この薄膜流体中において、金属微粒子を析出させる金属微粒子の製造方法として実施することができる。
本願発明は、従来の液相法による製造方法では困難であった、金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率の制御を可能とし、粒子径に対する結晶子径の比率を制御された金属微粒子を連続して製造することができる。
また、本願発明は、混合時の被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比を制御するという制御条件、特に、金属流体中の金属に対する金属流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を制御するという簡単な処理条件の変更によって、金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御することができるため、これまで以上に低コスト、低エネルギーで目的に応じ金属微粒子を作り分けることができ、安価かつ安定的に金属微粒子を提供することができる。
さらに、本願発明は、所望する粒子径の金属微粒子に目的とする物性を付与させることができる。
本願発明の実施の形態に係る流体処理装置の略断面図である。 (A)は図1に示す流体処理装置の第1処理用面の略平面図であり、(B)は同装置の処理用面の要部拡大図である。 (A)は同装置の第2導入部の断面図であり、(B)は同第2導入部を説明するための処理用面の要部拡大図である。 実施例B1にて得られた銀微粒子のSEM写真である。 実施例B4にて得られた銀微粒子のSEM写真である。 実施例B1〜B13にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例B1〜B13にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例B14〜B17にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 実施例B14〜B17にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 比較例B1〜B7にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B1〜B7にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B8〜B14にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B8〜B14にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例B18〜B26にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例B18〜B26にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例B27〜B30にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 実施例B27〜B30にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 比較例B18〜B26にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B18〜B26にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B27〜B35にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B27〜B35にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例C1〜C9にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例C1〜C9にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例C10〜C12にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 実施例C10〜C12にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 実施例C11,C13,C14にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 実施例C11,C13,C14にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 比較例C1〜C9にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例C1〜C9にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例C10〜C12にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 比較例C10〜C12にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 比較例C13〜C21にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例C13〜C21にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例C22〜C24にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 比較例C22〜C24にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 実施例C7にて得られた銅微粒子SEM写真である。
以下に、本願発明に係る金属微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
(金属)
本願発明における金属は、特に限定されない。化学周期表上における全ての金属である。一例として、Ti、Fe、W、Pt、Au、Cu、Ag、Pd、Ni、Mn、Co、Ru、V、Zn、Zr、Sn、In、Te、Ta、Bi、Sbなどの金属元素が挙げられる。それらの金属について、単体元素の金属であっても、複数元素を含む合金や金属元素に非金属元素を含む物質であっても良い。当然、卑金属と貴金属の合金としても実施できる。
(金属化合物)
本願発明における金属化合物としては、特に限定されない。一例としては、金属の塩、酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられる。金属の塩としては特に限定されないが、金属の硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられる。これらの金属化合物は、それぞれ単独で用いても良く、複数の混合物として用いても良い。
(還元剤)
還元剤は、特に限定されないが、金属に対する還元剤の全てが使用可能である。ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、硫酸ヒドラジン、フェニルヒドラジン等のヒドラジン類や、ジメチルホルムアミド、ジメチルアミノエタノール、トリエチエルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミノボランなどのアミン類、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、タンニン酸、ギ酸又はそれらの塩などの有機酸類や、アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールやブタノール等の脂肪族モノアルコール類やターピネオール等の脂環族モノアルコール類等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、テトラエチレングリコール、ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。また、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化トリブチル錫、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、水素化ホウ素亜鉛、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどのヒドリド類や、グルコース等の糖類や、その他ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)、硫酸鉄などの遷移金属(チタンや鉄)の塩や、それらの水和物や溶媒和物などを用いることができる。これらの還元剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明に係る金属流体は、上記の金属もしくは金属化合物を溶媒に溶解又は分子分散したものである。以下、特に断らないかぎり、「溶解と分子分散」を併せて、単に、「溶解」とする。
本願発明に係る還元剤流体は、上記の還元剤を溶媒に溶解又は分子分散させて用いることが好ましいが、上記の還元剤が含まれていれば、他の状態であってもよい。
また、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機又は有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒は、特に限定されないが、イオン交換水やRO水、純水や超純水などの水や、メタノールやエタノールのようなアルコール系有機溶媒や、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、又はポリエチレングリコールやグリセリンなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系有機溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルのようなエステル系有機溶媒、ジメチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒、ヘキサンや、ペンタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒などが挙げられる。また、アルコール系有機溶媒やポリオール(多価アルコール)系溶媒を溶媒として用いた場合には、溶媒そのものが還元性物質としても働く利点があり、金属微粒子を作製する場合には有効である。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明では、金属流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方の流体にポリオールを含むものとして実施してもよい。ポリオールは、2価以上のアルコールであり、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、またはジエチレングリコールやグリセリン、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらのポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明においては、上述の還元剤とポリオールとを併用して金属イオンを還元するポリオール還元法を用いて金属微粒子を得るものであってもよい。
本願発明では、上記金属流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に、すなわち、上記金属流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンが含まれる。硫酸イオンの供給源としては、硫酸のほか、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸銅、硫酸ニッケルや硫酸鉄などの硫酸塩又はそれらの水和物や有機溶媒和物を用いることができる。上記の硫酸ニッケルや硫酸銅は金属流体の原料として用いることができると同時に硫酸イオンの供給源としても作用する。また、硫酸ヒドラジンは、金属に対する還元剤でもあると同時に、硫酸イオンの供給源としても作用する。さらに、金属の種類によっては、硫酸鉄も金属に対する還元剤でもあると同時に、硫酸イオンの供給源としても作用する。金属イオンに対する還元剤の割合を変更することで、粒子径が変化することは公知であるが、加えて硫酸イオンを含む還元剤を用いることで、粒子径に対する結晶子径も制御出来るため、得られる金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を厳密且つ容易に制御できる。即ち、本願発明は、還元剤が、金属に対する還元剤であり且つ硫酸イオンの供給源である化合物であるものとしても、実施することができる。以下、硫酸イオンの供給源を硫酸化合物という。
本願発明においては、金属流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンを含み、その濃度を変化させることによって、金属流体中の金属に対する上記金属流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を変化させることができる。また、同時に金属流体及び/又は還元剤流体のpHを変化させることができるが、上記流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。そして、金属流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、金属流体中の金属に対する、上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を制御することによって、ひいては析出反応がなされる混合された流体における金属に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる金属微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。加えて、上記の混合した流体のpHを制御することによって、得られる金属微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。なお、被処理流動体の液性、特に、硫酸イオンを含まない金属流体又は還元剤流体については、特に限定されない。
本願の出願人は、硫酸イオンが、金属微粒子の結晶子及び粒子の成長を制御する作用を有し、その結果、金属流体中の金属に対する、金属流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比、より具体的には、上記金属流体と還元剤流体とが混合された流体における金属に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる金属微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。
ここで、金属流体中の金属とは、金属イオンや金属の錯イオンなどの状態を問わずに金属流体中に含まれる全ての金属を言う。
本願発明者は、酸の種類を変更して種々実験を行ったが、硫酸についてのみ、比率(d/D)を制御できることを知見した。この知見は、本願発明者にとって大きな驚きであったが、その理由は現在のところ解明されていない。本願発明者は、硫酸イオンや硫酸イオンを構成する硫化物イオンもしくは硫黄の何らかの特性が上記のd/Dの制御に関与しているのではないかと思料しているが、そのメカニズムは不明である。特に、硫酸とポリオール溶媒とを用いることで、上記の比率(d/D)をより確実に制御できることを知見した。本願発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
金属流体中の金属に対する、金属流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比は、特に限定されない。目的とする金属の粒子径及び結晶子径に応じて適宜選択できる。なお、金属流体中に硫酸イオンを含む場合には、溶媒の金属もしくは金属化合物及び硫酸化合物に対する溶解度と、金属流体中の金属に対する金属流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比とのバランスが大切である。
上述したように、本願発明においては、金属流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、金属流体と還元剤流体とが混合された流体における金属に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御することができる。金属流体と還元剤流体とが混合された流体中の硫酸イオンの濃度の変更は、金属流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンの濃度、又は金属流体と還元剤流体との混合比を変更することで実施できる。例えば、還元剤流体中の硫酸化合物の濃度を変化させることによって還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させることができる。その時、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させると、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度だけではなくpHも変化させることもできる。金属流体と還元剤流体とが混合された流体のpHの変更は、金属流体及び/又は還元剤流体のpH、又は金属流体及び/又は還元剤流体の混合比を変更することで実施できる。また、金属流体中の硫酸イオンの濃度及びpHについても、還元剤流体と同様に変更可能である。上記金属流体と還元剤流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。さらに、金属流体と還元剤流体とが混合された流体中の金属の濃度の変更は、金属流体中の金属の濃度や、金属流体と還元剤流体との混合比を変更することで実施できる。
本願発明において、金属流体と還元剤流体のpHは、特に限定されず、目的とする金属微粒子の結晶子径又は粒子径などによって適宜選択すればよいが、金属流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、混合された流体のpHが、酸性条件下で一定となるように制御することも望ましい。
もちろん、上記の混合された流体における金属に対する硫酸イオンのモル比の制御に加えて、混合された流体中のpHを酸性条件下で変化させる制御も併用することも望ましい。これによって、粒子径、結晶子径、及び両者の比率に関して、よりダイナミックなレンジでの制御が可能となる。
(分散剤等)
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどをポリオールとして用いた場合には、ポリオールが分散剤としても作用する。
また、本願発明においては、金属流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、金属流体と還元剤流体とが混合された流体における金属に対する硫酸イオンのモル比と、金属流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に含まれ、金属流体と還元剤流体とが混合された流体におけるポリオールの濃度とを制御することによっても、得られる金属微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御するものとして実施することができる。
また、金属が溶解していることを条件に、金属流体や還元剤流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいてもよい。
本願発明は、(A)ニッケル微粒子の製造方法、(B)銀微粒子の製造方法、(C)銅微粒子の製造方法に限定するものではないことは、上記の通りであるが、より具体的な理解を高めるために、(A)〜(C)の順に、それぞれの製造方法について説明する。以下、(A)においては金属流体をニッケル化合物流体、(B)においては金属流体を銀含有流体、(C)においては金属流体を銅溶解流体と表記する。
(A)ニッケル微粒子の製造方法
以下、本願発明の実施の形態の一例であるニッケル微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
本願発明に係るニッケル化合物流体は、ニッケル化合物を溶媒に溶解または分子分散したものであり、ニッケル化合物流体には、硫酸イオンが含まれる。
本願発明に係る還元剤流体は、還元剤を溶媒に溶解または分子分散(以下、単に、溶解とする。)したものである。
また、ニッケル化合物流体と、還元剤流体との少なくとも何れか一方の流体には、ポリオールが含まれる。
ニッケル化合物は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、塩基性炭酸ニッケルやそれらの水和物などの種々のニッケル化合物を用いることができ、特に、後述する硫酸イオンの供給源ともなる硫酸ニッケルを用いることが望ましい。これらのニッケル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
還元剤は、特に限定されないが、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、硫酸ヒドラジン、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム金属塩、水素化トリエチルホウ素金属塩、グルコース、クエン酸、アスコルビン酸、タンニン酸、ジメチルホルムアミド、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)などを用いることができる。これらの還元剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ヒドラジンやヒドラジン一水和物など、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機または有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒は、特に限定されないが、イオン交換水やRO水、純水や超純水などの水や、メタノールやエタノールのようなアルコール系有機溶媒や、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、またはポリエチレングリコールやグリセリンなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系有機溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルのようなエステル系有機溶媒、ジメチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒、ヘキサンや、ペンタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒などが挙げられる。また、アルコール系有機溶媒やポリオール(多価アルコール)系溶媒を溶媒として用いた場合には、溶媒そのものが還元性物質としても働く利点があり、ニッケル微粒子を作製する場合には有効である。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明では、ニッケル化合物流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方の流体にポリオールが含まれる。ポリオールは、2価以上のアルコールであり、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、またはジエチレングリコールやグリセリン、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらのポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明においては、上述の還元剤とポリオールとを併用してニッケルイオンを還元するポリオール還元法を用いてニッケル微粒子を得るものである。
本願発明では、ニッケル化合物流体に硫酸イオンが含まれる。硫酸イオンの供給源としては、硫酸のほか、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウムなどの硫酸塩またはそれらの水和物や有機溶媒和物を用いることができる。上記硫酸ヒドラジンは、還元剤でもあり、硫酸イオンの供給源としても作用する。以下、硫酸ニッケルを除く硫酸イオンの供給源を硫酸化合物という。
本願発明においては、ニッケル化合物流体に硫酸イオンを含み、その濃度を変化させることによって、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比を変化させることができる。また、同時にニッケル化合物流体のpHを変化させることができるが、ニッケル化合物流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。そして、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体のpHとニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比とを制御することによって、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。本願の出願人は、硫酸イオンが、ニッケル微粒子の粒子の成長を制御して、結晶子の成長を助長する作用を有し、その結果、ニッケル化合物流体のpHとニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比とを制御することによって、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。ここで、ニッケル化合物流体中のニッケルとは、ニッケルイオンやニッケルの錯イオンなどの状態を問わずにニッケル化合物流体中に含まれる全てのニッケルを言う。
ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比は、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を良好に制御するために、1.00を超えていることが望ましい。その点において、ニッケルイオンと硫酸イオンとを等しく含む硫酸ニッケルまたはその水和物をニッケル化合物として用いることが好適である。ニッケル化合物を溶解する際に用いる溶媒によっては、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比を高めるために硫酸化合物を添加しすぎると、ニッケル化合物流体中のニッケルイオンと硫酸イオンとが作用して、例えば硫酸ニッケルなどの析出物が生じる。ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比と溶媒のニッケル化合物並びに硫酸化合物に対する溶解度とのバランスが大切である。
上述したように、本願発明においては、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体のpHとニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比とを制御することによって、得られるニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御することができる。ニッケル化合物流体中の硫酸イオンの濃度、例えば、ニッケル化合物流体中のニッケル化合物である硫酸ニッケルの濃度や硫酸化合物の濃度を変化させることによってニッケル化合物流体のpHを変化させることができるほか、ニッケル化合物流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。ニッケル化合物流体中の硫酸イオンの濃度を変化させると、ニッケル化合物流体中の硫酸イオンの濃度だけではなくpHも変化させることができる。
本願発明において、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHが酸性であり、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を良好に制御するために、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHは4.4以下が望ましく、4.1以下がより望ましい。なお、この制御を行なう流体の調製や混合等の操作は、室温にて行なうものであってもよいが、室温以外の環境での操作であっても、室温条件下でのpHが上記のものとなる条件が満たされておればよい。
本願発明において、還元剤流体のpHは、特に限定されない。還元剤の種類や濃度などによって適宜選択すればよい。
また、還元剤流体に、上記硫酸化合物を添加しても良い。
また、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHを酸性条件下で一定となるとの条件を維持しつつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が高くなるようにすることで得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が大きくなるよう制御し、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHを酸性条件下で一定となるとの条件を維持しつつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が低くなるようにすることで上記の比率(d/D)が小さくなるよう制御することが望ましい。なお、この制御を行なう流体の調製や混合等の操作は、室温にて行なうものであってもよいが、室温以外の環境での操作であっても、ニッケル化合物流体の 室温条件下でのpHを酸性条件下で一定となるとの条件が満たされておればよい。
また、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHが4.1以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.0を超えるものを用いることが望ましい。比率(d/D)が0.30以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.40以上で、結晶子径(d)が30nm以上、好ましくは35nm以上、より好ましくは40nm以上のニッケル微粒子を得る上で、好適である。
さらに、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を得る上では、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体のpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.1を超えるものを用いることが望ましく、比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子を得る上では、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体のpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.2を超えるものを用いることが望ましい。なお、この制御を行なう流体の調製や混合等の操作は、室温にて行なうものであってもよいが、室温以外の環境での操作であっても、室温条件下でのpHが上記のものとなる条件が満たされておればよい。
比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子や結晶子径が30nm以上のニッケル微粒子は、熱処理後の収縮を抑制することができることから、特に、セラミックコンデンサ用途に適している。
(分散剤等)
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどをポリオールとして用いた場合には、ポリオールが分散剤としても作用する。
ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比と、ニッケル化合物流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に含まれ、分散剤としても作用するポリオールの濃度とを制御することによっても、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。
その際、分散剤としても作用するポリオールは、ニッケル化合物流体に含まれることが望ましく、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.24では、ニッケル化合物流体中の分散剤としても作用するポリオールの濃度を高くすることで上記の比率(d/D)が高くなるよう制御し、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.00では、ニッケル化合物流体中の分散剤としても作用するポリオールの濃度を高くすることで上記の比率(d/D)が小さくなるよう制御することが望ましい。
また、ニッケル化合物流体や還元剤流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいてもよい。
(B)銀微粒子の製造方法
以下、本願発明の実施の形態の一例である銀微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
本願発明に係る銀含有流体は、銀もしくは銀化合物を溶媒に溶解又は分子分散(以下、単に、溶解とする。)したものである。
銀化合物には、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、炭酸銀、酸化銀、クエン酸銀、乳酸銀やそれらの水和物などの種々の原料を用いることができる。これらの銀化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
還元剤は、特に限定されないが、銀に対する還元剤の全てが使用可能である。ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、硫酸ヒドラジン、フェニルヒドラジン等のヒドラジン類や、ジメチルアミノエタノール、トリエチエルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミノボランなどのアミン類、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、タンニン酸、ギ酸又はそれらの塩などの有機酸類や、アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールやブタノール等の脂肪族モノアルコール類やターピネオール等の脂環族モノアルコール類等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、テトラエチレングリコール、ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。また、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化トリブチル錫、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、水素化ホウ素亜鉛、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどのヒドリド類や、グルコース等の糖類や、その他ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)、硫酸鉄などの遷移金属(チタンや鉄)の塩や、それらの水和物や溶媒和物などを用いることができる。これらの還元剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機又は有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒は、特に限定されないが、イオン交換水やRO水、純水や超純水などの水や、メタノールやエタノールのようなアルコール系有機溶媒や、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、又はポリエチレングリコールやグリセリンなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系有機溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルのようなエステル系有機溶媒、ジメチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒、ヘキサンや、ペンタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明では、上記銀含有流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に、すなわち、上記銀含有流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンが含まれる。硫酸イオンの供給源としては、硫酸のほか、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸鉄などの硫酸塩又はそれらの水和物や有機溶媒和物を用いることができる。上記硫酸鉄や硫酸ヒドラジンは、銀に対する還元剤でもあり、硫酸イオンの供給源としても作用する。金属イオンに対する還元剤の割合を変更することで、粒子径が変化することは公知であるが、加えて硫酸イオンを含む還元剤を用いることで、粒子径に対する結晶子径も制御出来るため、得られる銀微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を厳密且つ容易に制御できる。即ち、本願発明は、還元剤が、銀に対する還元剤であり且つ硫酸イオンの供給源である化合物であるものとしても、実施することができる。以下、硫酸イオンの供給源を硫酸化合物という。
本願発明においては、銀含有流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンを含み、その濃度を変化させることによって、銀含有流体中の銀に対する上記銀含有流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を変化させることができる。また、同時に銀含有流体及び/又は還元剤流体のpHを変化させることができるが、上記流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。そして、銀含有流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、銀含有流体中の銀に対する、上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を制御することによって、ひいては析出反応がなされる混合された流体における銀に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。加えて、上記の混合した流体のpHを制御することによって、得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。
本願の出願人は、硫酸イオンが、銀微粒子の結晶子及び粒子の成長を制御する作用を有し、その結果、銀含有流体中の銀に対する、銀含有流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比、より具体的には、上記銀含有流体と還元剤流体とが混合された流体における銀に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。ここで、銀含有流体中の銀とは、銀イオンや銀の錯イオンなどの状態を問わずに銀含有流体中に含まれる全ての銀を言う。
銀含有流体中の銀に対する、銀含有流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比は、特に限定されない。目的とする銀の粒子径及び結晶子径に応じて適宜選択できる。なお、銀含有流体中に硫酸イオンを含む場合には、溶媒の銀もしくは銀化合物及び硫酸化合物に対する溶解度と、銀含有流体中の銀に対する銀含有流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比とのバランスが大切である。
上述したように、本願発明においては、銀含有流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、銀含有流体と還元剤流体とが混合された流体における銀に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銀微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御することができる。銀含有流体と還元剤流体とが混合された流体中の硫酸イオンの濃度の変更は、銀含有流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンの濃度、又は銀含有流体と還元剤流体との混合比を変更することで実施できる。例えば、還元剤流体中の還元剤である硫酸鉄の濃度や硫酸化合物の濃度を変化させることによって還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させることができる。その時、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させると、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度だけではなくpHも変化させることもできる。銀含有流体と還元剤流体とが混合された流体のpHの変更は、銀含有流体及び/又は還元剤流体のpH、又は銀含有流体及び/又は還元剤流体の混合比を変更することで実施できる。また、銀化合物中の硫酸イオン濃度及びpHについても、還元剤流体と同様に変更可能である。上記銀含有流体と還元剤流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。
本願発明において、銀含有流体と還元剤流体のpHは、特に限定されない。また、銀含有流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合した際の、混合した流体のpHについても特に限定されない。目的とする銀微粒子の結晶子径又は粒子径などによって適宜選択すればよい。
また、銀含有流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、混合された流体のpHが、酸性条件下で一定となるように制御することも望ましい。もちろん、上記の混合された流体における銀に対する硫酸イオンのモル比の制御に加えて、被処理流動体中のpHを酸性条件下で変化させる制御も併用することによって、粒子径、結晶子径、及び両者の比率に関して、よりダイナミックなレンジでの制御が可能となる。
(分散剤等)
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、銀含有流体や還元剤流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいてもよい。
(C)銅微粒子の製造方法
以下、本願発明の実施の形態の一例である銅微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
本願発明に係る銅溶解流体は、銅もしくは銅化合物を溶媒に溶解又は分子分散(以下、単に、溶解とする。)したものである。
銅化合物には、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、炭酸銅、酸化銅、水酸化銅、クエン酸銅、乳酸銅やそれらの水和物などの種々の原料を用いることができる。これらの銅化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
還元剤は、特に限定されないが、銅に対する還元剤の全てが使用可能である。ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、硫酸ヒドラジン、フェニルヒドラジン等のヒドラジン類や、ジメチルアミノエタノール、トリエチエルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミノボランなどのアミン類、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、タンニン酸、ギ酸又はそれらの塩などの有機酸類や、アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールやブタノール等の脂肪族モノアルコール類やターピネオール等の脂環族モノアルコール類等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、テトラエチレングリコール、ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。また、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化トリブチル錫、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、水素化ホウ素亜鉛、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどのヒドリド類や、グルコース等の糖類や、その他ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)、硫酸鉄などの遷移金属(チタンや鉄)の塩や、それらの水和物や溶媒和物などを用いることができる。これらの還元剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明に係る還元剤流体は、上記の還元剤を溶媒に溶解又は分子分散させて用いることが好ましいが、上記の還元剤が含まれていれば、他の状態であってもよい。
また、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機又は有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒は、特に限定されないが、イオン交換水やRO水、純水や超純水などの水や、メタノールやエタノールのようなアルコール系有機溶媒や、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、又はポリエチレングリコールやグリセリンなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系有機溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルのようなエステル系有機溶媒、ジメチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒、ヘキサンや、ペンタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明では、上記銅溶解流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に、すなわち、上記銅溶解流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンが含まれる。硫酸イオンの供給源としては、硫酸のほか、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸銅や硫酸鉄などの硫酸塩又はそれらの水和物や有機溶媒和物を用いることができる。上記の硫酸銅は銅溶解流体の原料として用いることができると同時に、また、上記硫酸ヒドラジンは、銅に対する還元剤でもあると同時に、硫酸イオンの供給源としても作用する。金属イオンに対する還元剤の割合を変更することで、粒子径が変化することは公知であるが、加えて硫酸イオンを含む還元剤を用いることで、粒子径に対する結晶子径も制御出来るため、得られる銅微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を厳密且つ容易に制御できる。即ち、本願発明は、還元剤が、銅に対する還元剤であり且つ硫酸イオンの供給源である化合物であるものとしても、実施することができる。以下、硫酸イオンの供給源を硫酸化合物という。
本願発明においては、銅溶解流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンを含み、その濃度を変化させることによって、銅溶解流体中の銅に対する上記銅溶解流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を変化させることができる。また、同時に銅溶解流体及び/又は還元剤流体のpHを変化させることができるが、上記流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。そして、銅溶解流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、銅溶解流体中の銅に対する、上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を制御することによって、ひいては析出反応がなされる混合された流体における銅に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銅微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。加えて、上記の混合した流体のpHを制御することによって、得られる銅微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。
本願の出願人は、硫酸イオンが、銅微粒子の結晶子及び粒子の成長を制御する作用を有し、その結果、銅溶解流体中の銅に対する、銅溶解流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比、より具体的には、上記銅溶解流体と還元剤流体とが混合された流体における銅に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銅微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。ここで、銅溶解流体中の銅とは、銅イオンや銅の錯イオンなどの状態を問わずに銅溶解流体中に含まれる全ての銅を言う。
銅溶解流体中の銅に対する、銅溶解流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比は、特に限定されない。目的とする銅の粒子径及び結晶子径に応じて適宜選択できる。なお、銅溶解流体中に硫酸イオンを含む場合には、溶媒の銅もしくは銅化合物及び硫酸化合物に対する溶解度と、銅溶解流体中の銅に対する銅溶解流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比とのバランスが大切である。
上述したように、本願発明においては、銅溶解流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、銅溶解流体と還元剤流体とが混合された流体における銅に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銅微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御することができる。銅溶解流体と還元剤流体とが混合された流体中の硫酸イオンの濃度の変更は、銅溶解流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンの濃度、又は銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変更することで実施できる。例えば、還元剤流体中の硫酸化合物の濃度を変化させることによって還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させることができる。その時、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させると、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度だけではなくpHも変化させることもできる。銅溶解流体と還元剤流体とが混合された流体のpHの変更は、銅溶解流体及び/又は還元剤流体のpH、又は銅溶解流体及び/又は還元剤流体の混合比を変更することで実施できる。また、銅溶解流体中の硫酸イオンの濃度及びpHについても、還元剤流体と同様に変更可能である。上記銅溶解流体と還元剤流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。さらに、銅溶解流体と還元剤流体とが混合された流体中の銅の濃度の変更は、銅溶解流体中の銅の濃度や、銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変更することで実施できる。
本願発明において、銅溶解流体と還元剤流体のpHは、特に限定されず、目的とする銅微粒子の結晶子径又は粒子径などによって適宜選択すればよいが、銅溶解流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、混合された流体のpHが、酸性条件下で一定となるように制御することも望ましい。
もちろん、上記の混合された流体における銅に対する硫酸イオンのモル比の制御に加えて、混合された流体中のpHを酸性条件下で変化させる制御も併用することも望ましい。これによって、粒子径、結晶子径、及び両者の比率に関して、よりダイナミックなレンジでの制御が可能となる。
上記のように、銅溶解流体と還元剤流体との被処理流動体を、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で混合するものであり、混合された流体のpHが酸性であり、銅溶解流体の溶媒として前述のポリオール溶媒を用いるとの条件下で、混合した被処理流動体中の銅に対する硫酸イオンのモル比を高くなるように制御することで、結晶子径と粒子径との比率(d/D)が大きくなるように、確実に制御することが容易となる。
(分散剤等)
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、銅が溶解していることを条件に、銅溶解流体や還元剤流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいてもよい。
(流体処理装置)
本願発明においては、金属流体と、還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で混合する方法を用いて行うことが好ましく、例えば、特許文献10,11に示される装置と同様の原理の装置を用いて混合して、金属微粒子を析出させることが好ましい。
以下、図面を用いて流体処理装置の実施の形態について説明する。
(装置の説明)
図1〜図3に示す流体処理装置は、接近・離反可能な少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用部における処理用面の間で被処理物を処理するものであって、被処理流動体のうちの第1の被処理流動体である第1流体を処理用面間に導入し、前記第1流体を導入した流路とは独立し、処理用面間に通じる開口部を備えた別の流路から被処理流動体のうちの第2の被処理流動体である第2流体を処理用面間に導入して処理用面間で上記第1流体と第2流体を混合・攪拌して処理を行う装置である。なお、図1においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示しているが、本願発明において上下前後左右は相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。図2(A)、図3(B)においてRは回転方向を示している。図3(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
この装置は、被処理流動体として少なくとも2種類の流体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の流体については被処理物を少なくとも1種類含むものであり、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面を備え、これらの処理用面の間で上記の各流体を合流させて薄膜流体とするものであり、当該薄膜流体中において上記の被処理物を処理する装置である。この装置は、上述のとおり、複数の被処理流動体を処理することができるが、単一の被処理流動体を処理することもできる。
この流体処理装置は、対向する第1及び第2の、2つの処理用部10,20を備え、少なくとも一方の処理用部が回転する。両処理用部10,20の対向する面が、夫々処理用面となる。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える。
両処理用面1,2は、被処理流動体の流路に接続され、被処理流動体の流路の一部を構成する。この両処理用面1,2間の間隔は、適宜変更して実施することができるが、通常は、1mm以下、例えば0.1μmから50μm程度の微小間隔に調整される。これによって、この両処理用面1,2間を通過する被処理流動体は、両処理用面1,2によって強制された強制薄膜流体となる。
この装置を用いて複数の被処理流動体を処理する場合、この装置は、第1の被処理流動体の流路に接続され、当該第1被処理流動体の流路の一部を形成すると共に、第1被処理流動体とは別の、第2被処理流動体の流路の一部を形成する。そして、この装置は、両流路を合流させて、処理用面1,2間において、両被処理流動体を混合し、反応させるなどの流体の処理を行なう。なお、ここで「処理」とは、被処理物が反応する形態に限らず、反応を伴わずに混合・分散のみがなされる形態も含む。
具体的に説明すると、上記の第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構と、回転駆動機構と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、流体圧付与機構pとを備える。
図2(A)へ示す通り、この実施の形態において、第1処理用部10は、環状体であり、より詳しくはリング状のディスクである。また、第2処理用部20もリング状のディスクである。第1、第2処理用部10、20の材質は、金属の他、カーボン、セラミック、焼結金属、耐磨耗鋼、サファイア、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用することができる。この実施の形態において、両処理用部10,20は、互いに対向する第1、第2の処理用面1、2の少なくとも一部が鏡面研磨されている。
この鏡面研磨の面粗度は、特に限定されないが、好ましくはRa0.01〜1.0μm、より好ましくはRa0.03〜0.3μmとする。
少なくとも一方のホルダは、電動機などの回転駆動機構(図示せず)にて、他方のホルダに対して相対的に回転することができる。図1の50は、回転駆動機構の回転軸を示しており、この例では、この回転軸50に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。また、この例では、第1、第2ホルダ11、21を固定しておき、この第1、第2ホルダ11、21に対して第1、第2処理用部10、20が回転するようにしてもよい。
第1処理用部10と第2処理用部20とは、少なくとも何れか一方が、少なくとも何れか他方に、接近・離反可能となっており、両処理用面1,2は、接近・離反できる。
この実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が接近・離反するもので、第2ホルダ21に設けられた収容部41に、第2処理用部20が出没可能に収容されている。但し、これとは、逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近・離反するものであってもよく、両処理用部10,20が互いに接近・離反するものであってもよい。
この収容部41は、第2処理用部20の、主として処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、平面視において、円を呈する、即ち環状に形成された、溝である。この収容部41は、第2処理用部20を回転させ得る十分なクリアランスを持って、第2処理用部20を収容する。なお、第2処理用部20は軸方向に平行移動のみが可能なように配置してもよいが、上記クリアランスを大きくすることにより、第2処理用部20は、収容部41に対して、処理用部20の中心線を、上記収容部41の軸方向と平行の関係を崩すように傾斜して変位できるようにしてもよく、さらに、第2処理用部20の中心線と収容部41の中心線とが半径方向にずれるように変位できるようにしてもよい。
このように、3次元的に変位可能に保持するフローティング機構によって、第2処理用部20を保持することが望ましい。
上記の被処理流動体は、各種のポンプや位置エネルギーなどによって構成される流体圧付与機構pによって圧力が付与された状態で、第1導入部d1と、第2導入部d2から両処理用面1、2間に導入される。この実施の形態において、第1導入部d1は、環状の第2ホルダ21の中央に設けられた通路であり、その一端が、環状の両処理用部10、20の内側から、両処理用面1、2間に導入される。第2導入部d2は、第1の被処理流動体と反応させる第2の被処理流動体を処理用面1,2へ供給する。この実施の形態において、第2導入部d2は、第2処理用部20の内部に設けられた通路であり、その一端が、第2処理用面2にて開口する。流体圧付与機構pにより加圧された第1の被処理流動体は、第1導入部d1から、両処理用部10,20の内側の空間に導入され、第1処理用面1と第2処理用面2との間を通り、両処理用部10,20の外側に通り抜けようとする。これらの処理用面1,2間において、第2導入部d2から流体圧付与機構pにより加圧された第2の被処理流動体が供給され、第1の被処理流動体と合流し、混合、攪拌、乳化、分散、反応、晶出、晶析、析出などの種々の流体処理がなされ、両処理用面1,2から、両処理用部10,20の外側に排出される。なお、減圧ポンプにより両処理用部10,20の外側の環境を負圧にすることもできる。
上記の接面圧付与機構は、第1処理用面1と第2処理用面2とを接近させる方向に作用させる力を、処理用部に付与する。この実施の形態では、接面圧付与機構は、第2ホルダ21に設けられ、第2処理用部20を第1処理用部10に向けて付勢する。
前記の接面圧付与機構は、第1処理用部10の第1処理用面1と第2処理用部20の第2処理用面2とが接近する方向に押す力(以下、接面圧力という)を発生させるための機構である。この接面圧力と、流体圧力などの両処理用面1、2間を離反させる力との均衡によって、nm単位ないしμm単位の微小な膜厚を有する薄膜流体を発生させる。言い換えれば、上記力の均衡によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保つ。
図1に示す実施の形態において、接面圧付与機構は、上記の収容部41と第2処理用部20との間に配位される。具体的には、第2処理用部20を第1処理用部10に近づく方向に付勢するスプリング43と、空気や油などの付勢用流体を導入する付勢用流体導入部44とにて構成され、スプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とによって、上記の接面圧力を付与する。このスプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とは、いずれか一方が付与されるものであればよく、磁力や重力などの他の力であってもよい。この接面圧付与機構の付勢に抗して、流体圧付与機構pにより加圧された被処理流動体の圧力や粘性などによって生じる離反力によって、第2処理用部20は、第1処理用部10から遠ざかり、両処理用面間に微小な間隔を開ける。このように、この接面圧力と離反力とのバランスによって、第1処理用面1と第2処理用面2とは、μm単位の精度で設定され、両処理用面1,2間の微小間隔の設定がなされる。上記離反力としては、被処理流動体の流体圧や粘性と、処理用部の回転による遠心力と、付勢用流体導入部44に負圧を掛けた場合の当該負圧、スプリング43を引っ張りスプリングとした場合のバネの力などを挙げることができる。この接面圧付与機構は、第2処理用部20ではなく、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。
上記の離反力について、具体的に説明すると、第2処理用部20は、上記の第2処理用面2と共に、第2処理用面2の内側(即ち、第1処理用面1と第2処理用面2との間への被処理流動体の進入口側)に位置して当該第2処理用面2に隣接する離反用調整面23を備える。この例では、離反用調整面23は、傾斜面として実施されているが、水平面であってもよい。被処理流動体の圧力が、離反用調整面23に作用して、第2処理用部20を第1処理用部10から離反させる方向への力を発生させる。従って、離反力を発生させるための受圧面は、第2処理用面2と離反用調整面23とになる。
さらに、この図1の例では、第2処理用部20に近接用調整面24が形成されている。この近接用調整面24は、離反用調整面23と軸方向において反対側の面(図1においては上方の面)であり、被処理流動体の圧力が作用して、第2処理用部20を第1処理用部10に接近させる方向への力を発生させる。
なお、第2処理用面2及び離反用調整面23に作用する被処理流動体の圧力、即ち流体圧は、メカニカルシールにおけるオープニングフォースを構成する力として理解される。処理用面1,2の接近・離反の方向、即ち第2処理用部20の出没方向(図1においては軸方向)と直交する仮想平面上に投影した近接用調整面24の投影面積A1と、当該仮想平面上に投影した第2処理用部20の第2処理用面2及び離反用調整面23との投影面積の合計面積A2との、面積比A1/A2は、バランス比Kと呼ばれ、上記オープニングフォースの調整に重要である。このオープニングフォースについては、上記バランスライン、即ち近接用調整面24の面積A1を変更することで、被処理流動体の圧力、即ち流体圧により調整できる。
摺動面の実面圧P、即ち、接面圧力のうち流体圧によるものは次式で計算される。
P=P1×(K−k)+Ps
ここでP1は、被処理流動体の圧力即ち流体圧を示し、Kは上記のバランス比を示し、kはオープニングフォース係数を示し、Psはスプリング及び背圧力を示す。
このバランスラインの調整により摺動面の実面圧Pを調整することで処理用面1,2間を所望の微小隙間量にし被処理流動体による流動体膜を形成させ、生成物などの処理された被処理物を微細とし、また、均一な反応処理を行うのである。
なお、図示は省略するが、近接用調整面24を離反用調整面23よりも広い面積を持ったものとして実施することも可能である。
被処理流動体は、上記の微小な隙間を保持する両処理用面1,2によって強制された薄膜流体となり、環状の両処理用面1、2の外側に移動しようとする。ところが、第1処理用部10は回転しているので、混合された被処理流動体は、環状の両処理用面1,2の内側から外側へ直線的に移動するのではなく、環状の半径方向への移動ベクトルと周方向への移動ベクトルとの合成ベクトルが被処理流動体に作用して、内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
なお、回転軸50は、鉛直に配置されたものに限定するものではなく、水平方向に配位されたものであってもよく、傾斜して配位されたものであってよい。被処理流動体は両処理用面1,2間の微細な間隔にて処理がなされるものであり、実質的に重力の影響を排除できるからである。また、この接面圧付与機構は、前述の第2処理用部20を変位可能に保持するフローティング機構と併用することによって、微振動や回転アライメントの緩衝機構としても機能する。
流体の運動において、慣性力と粘性力の比を表す無次元数をレイノルズ数と呼び、以下の式で表される。
レイノルズ数Re=慣性力/粘性力=ρVL/μ=VL/ν
ここで、ν=μ/ρは動粘度、Vは代表速度、Lは代表長さ、ρは密度、μは粘度を示す。
そして、流体の流れは、臨界レイノルズ数を境界とし、臨界レイノルズ数以下では層流、臨界レイノルズ数以上では乱流となる。
上記流体処理装置の両処理用面1,2間は微小間隔に調整されるため、両処理用面1,2間に保有される流体の量は極めて少ない。そのため、代表長さLが非常に小さくなり、両処理用面1,2間を通過する薄膜流体の遠心力は小さく、薄膜流体中は粘性力の影響が大きくなる。従って、上記のレイノルズ数は小さくなり、薄膜流体は層流となる。
遠心力は、回転運動における慣性力の一種であり、中心から外側に向かう力である。遠心力は、以下の式で表される。
遠心力F=ma=mv2/R
ここで、aは加速度、mは質量、vは速度、Rは半径を示す。
上述の通り、両処理用面1,2間に保有される流体の量は少ないため、流体の質量に対する速度の割合が非常に大きくなり、その質量は無視できるようになる。従って、両処理用面1,2間にできる薄膜流体中においては重力の影響を無視できる。そのため、本来微粒子として析出させることが難しい比重差のある2種以上の金属元素を含む合金や複合金属化合物などの微粒子においても、両処理用面1,2間にできる薄膜流体中で析出させることができる。
第1、第2処理用部10、20は、その少なくともいずれか一方を、冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよく、図1では、第1、第2処理用部10、20に温調機構(温度調整機構)J1,J2を設けた例を図示している。また、導入される被処理流動体を冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよい。これらの温度は、処理された被処理物の析出のために用いることもでき、また、第1、第2処理用面1、2間における被処理流動体にベナール対流若しくはマランゴニ対流を発生させるために設定してもよい。
図2に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1には、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、即ち径方向について伸びる溝状の凹部13を形成して実施してもよい。この凹部13の平面形状は、図2(B)へ示すように、第1処理用面1上をカーブして或いは渦巻き状に伸びるものや、図示はしないが、真っ直ぐ外方向に伸びるもの、L字状などに屈曲あるいは湾曲するもの、連続したもの、断続するもの、枝分かれするものであってもよい。また、この凹部13は、第2処理用面2に形成するものとしても実施可能であり、第1及び第2の処理用面1,2の双方に形成するものとしても実施可能である。この様な凹部13を形成することによりマイクロポンプ効果を得ることができ、被処理流動体を第1及び第2の処理用面1,2間に吸引することができる効果がある。
この凹部13の基端は第1処理用部10の内周に達することが望ましい。この凹部13の先端は、第1処理用部面1の外周面側に向けて伸びるもので、その深さ(横断面積)は、基端から先端に向かうにつれて、漸次減少するものとしている。
この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
前述の第2導入部d2の開口部d20を第2処理用面2に設ける場合は、対向する上記第1処理用面1の平坦面16と対向する位置に設けることが好ましい。
この開口部d20は、第1処理用面1の凹部13からよりも下流側(この例では外側)に設けることが望ましい。特に、マイクロポンプ効果によって導入される際の流れ方向が処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも外径側の平坦面16に対向する位置に設置することが望ましい。具体的には、図2(B)において、第1処理用面1に設けられた凹部13の最も外側の位置から、径方向への距離nを、約0.5mm以上とするのが好ましい。特に、流体中から微粒子を析出させる場合には、層流条件下にて複数の被処理流動体の混合と、微粒子の析出が行なわれることが望ましい。開口部d20の形状は、図2(B)や図3(B)に実線で示すように円形状であってもよく、図2(B)に点線で示すように、リング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であってもよい。円環形状の開口部d20を処理用面2の中央の開口取り巻く同心円状に設けなくてもよい。また、開口部を円環形状とした場合、その円環形状の開口部は連続していてもよいし、不連続であってもよい。
円環形状の開口部d20を処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状に設けた場合、処理用面1,2間に導入する第2流体を同一条件で導入することができるため、より均一な拡散・反応・析出等の流体処理を行うことができる。微粒子を量産する場合には、開口部を円環形状とすることが好ましい。
この第2導入部d2は方向性を持たせることができる。例えば、図3(A)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、第2処理用面2に対して所定の仰角(θ1)で傾斜している。この仰角(θ1)は、0度を超えて90度未満に設定されており、さらに反応速度が速い反応の場合には1度以上45度以下で設置されるのが好ましい。
また、図3(B)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、上記の第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有するものである。この第2流体の導入方向は、処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向である。言い換えると、開口部d20を通る半径方向であって外方向の線分を基準線gとして、この基準線gから回転方向Rへの所定の角度(θ2)を有するものである。この角度(θ2)についても、0度を超えて90度未満に設定されることが好ましい。
この角度(θ2)は、流体の種類、反応速度、粘度、処理用面の回転速度などの種々の条件に応じて、変更して実施することができる。また、第2導入部d2に方向性を全く持たせないこともできる。
上記の被処理流動体の種類とその流路の数は、図1の例では、2つとしたが、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。図1の例では、第2導入部d2から処理用面1,2間に第2流体を導入したが、この導入部は、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。また、一種類の被処理流動体に対して、複数の導入部を用意してもよい。また、各処理用部に設けられる導入用の開口部は、その形状や大きさや数は特に制限はなく適宜変更して実施し得る。また、上記第1及び第2の処理用面間1、2の直前或いはさらに上流側に導入用の開口部を設けてもよい。
なお、処理用面1,2間にて上記処理を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
上記流体処理装置においては、析出・沈殿または結晶化のような処理が、図1に示すように、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1、2の間で強制的に均一混合しながら起こる。処理された被処理物の粒子径や単分散度は処理用部10、20の回転数や流速、処理用面1,2間の距離や、被処理流動体の原料濃度、または被処理流動体の溶媒種等を適宜調整することにより、制御することができる。
以下、上記の装置を用いて行う金属微粒子の製造方法の具体的な態様について説明する。
上記の流体処理装置において、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転を行う処理用面1,2の間に形成される薄膜流体中で、金属流体と、還元剤流体とを混合させて、金属微粒子を析出させる。その際、金属流体と還元剤流体の少なくとも何れか一方の被処理流動体には、硫酸イオンを含み、処理用面1,2間に導入される金属流体中の金属に対する上記混合した被処理流動体中の硫酸イオンのモル比とを制御する。
上記の流体処理装置を用いて金属微粒子、特にニッケル微粒子を析出させる際には、金属流体には、硫酸イオンを含み、金属流体と、還元剤流体との、少なくともいずれか一方の被処理流動体には、ポリオールを含み、処理用面1,2間に導入される金属流体のpHと金属流体中の金属に対する硫酸イオンのモル比とを制御してもよい。また、金属流体には硫酸イオンを含み、金属流体と還元剤流体との少なくともいずれか一方の被処理流動体にはポリオールを含み、処理用面1,2間に導入される金属流体と還元剤流体との少なくともいずれか一方の被処理流動体中のポリオールの濃度と金属流体中の金属に対する硫酸イオンのモル比とを制御してもよい。
金属微粒子の析出は、本願の図1に示す装置の、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間の薄膜流体中で強制的に均一混合しながら起こる。
まず、一つの流路である第1導入部d1より、第1流体として還元剤流体を、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に導入して、この処理用面間に第1流体から構成された薄膜流体である第1流体膜を作る。
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として金属流体を、処理用面1,2間に作られた第1流体膜に直接導入する。
上記のように、被処理流動体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力との圧力バランスによって距離を固定された処理用面1,2間にて、第1流体と第2流体とが混合され、金属微粒子の析出を行うことができる。
上述のように、第1導入部d1、第2導入部d2以外に第3導入部d3を処理装置に設けることもできるが、この場合にあっては、例えば各導入部から、金属流体、還元剤流体、硫酸イオンを含む流体をそれぞれ別々に処理装置に導入することが可能である。そうすると、各流体の濃度や圧力を個々に管理することができ、析出反応及び微粒子の粒子径をより精密に制御することができる。なお、各導入部へ導入する被処理流動体(第1流体〜第3流体)の組み合わせは、任意に設定できる。第4以上の導入部を設けた場合も同様であって、このように処理装置へ導入する流体を細分化できる。
さらに、第1、第2流体等の被処理流動体の温度を制御したり、第1流体と第2流体等との温度差(即ち、供給する各被処理流動体の温度差)を制御することもできる。供給する各被処理流動体の温度や温度差を制御するために、各被処理流動体の温度(処理装置、より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前の温度)を測定し、処理用面1,2間に導入される各被処理流動体の加熱又は冷却を行う機構を付加して実施することも可能である。
(温度)
本願発明において、金属流体と還元剤流体とを混合する際の温度は、特に限定されない。金属や金属化合物の種類、還元剤の種類、流体のpHなどによって適切な温度で実施することが可能である。
(酸化物や水酸化物を含む場合)
また、本願発明における金属微粒子は、酸化物や水酸化物、酸化水酸化物などを一部含んでも実施できる。
以下に実施例を挙げて本願発明を詳細に説明するが、本願発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、「中央から」というのは、図1に示す処理装置の「第1導入部d1から」という意味であり、第1流体は、第1導入部d1から導入される、前述の第1被処理流動体を指し、第2流体は、図1に示す処理装置の第2導入部d2から導入される、前述の第2被処理流動体を指す。また、第2導入部d2の開口部d20として、図2(B)に点線で示すように、処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状のものを用いた。
(A)ニッケル微粒子の製造方法に係る実施例及び比較例は、実施例及び比較例の番号の前に「A」を付して、(B)銀微粒子の製造方法に係る実施例及び比較例は、実施例及び比較例の番号の前に「B」を付して、(C)銅微粒子の製造方法に係る実施例及び比較例は、実施例及び比較例の番号の前に「C」を付して、それぞれの実施例を特定する。但し、表1〜表56においては、「A」「B」「C」を省略する。
(A)ニッケル微粒子の製造方法
まず、ニッケル微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
(ニッケル微粒子の析出)
図1に示される流体処理装置を用いて、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中でニッケル微粒子を析出させる。
具体的には、中央から第1流体としてニッケル化合物流体を供給圧力=0.50MPaGで送液する。第1流体は図1の処理用部10の処理用面1と処理用部20の処理用面2との間の密封された空間(処理用面間)に、送り込まれる。処理用部10の回転数は3600 rpmである。第1流体は処理用面1,2間において強制された薄膜流体を形成し、処理用部10,20の外周より吐出される。第2流体として還元剤流体を処理用面1,2間に形成された薄膜流体に直接導入する。微小間隔に調製された処理用面1,2間においてニッケル化合物流体と還元剤流体とを混合させ、ニッケル微粒子を析出させる。ニッケル微粒子を含むスラリー(ニッケル微粒子分散液)が、処理用面1,2間より吐出される。
(微粒子回収方法)
処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液を磁石の上に置き、ニッケル微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で大気圧にて乾燥し、ニッケル微粒子の乾燥粉体を作製した。
第1流体及び第2流体のpHや、得られたニッケル微粒子の乾燥粉体について下記分析を行った。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認されたニッケル微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られたニッケル微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶盤は、47.3℃に確認されるピークを使用し、得られたニッケル回折パターンの44.5°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
(ICP分析:不純物元素検出)
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)によるニッケル微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
ニッケル微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例A、比較例Aの全てにおいて、ニッケル元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
(実施例A1〜A17)
表1に示す処方のニッケル化合物流体と、表2に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表3の処理条件にて混合し、ニッケル微粒子を析出させた。得られたニッケル微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表4に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、実施例A1〜A17の全てにおいて、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、実施例A1〜A14においては、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pH及び硫酸イオン濃度を変更するために、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製し、実施例A15〜A17においては、ポリエチレングリコール600に変えてポリビニルピロリドン(k=30)を用いた以外は、実施例A1〜A14と同様に調製した。
また、表1から後述する表16までの表中における略記号は、NiSO・6HOは硫酸ニッケル六水和物、EGはエチレングリコール、PEG600はポリエチレングリコール600、PVP(k=30)はポリビニルピロリドン(k=30)、PWは純水、HMHはヒドラジン一水和物、KOHは水酸化カリウム、HSOは硫酸、(NHSOは硫酸アンモニウム、KSOは硫酸カリウム、HNOは硝酸、KNOは硝酸カリウム、CHCOOHは酢酸、CHCOOKは酢酸カリウム、SO 2−は硫酸イオン、CHCOO−3は酢酸イオンである。
表4より、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を制御することによって、析出させたニッケル微粒子の粒子径が大きくなることを制御しつつ、結晶子径が大きくなることを助長させることを確認できた。また、結晶子径が大きくなるとともに粒子径も大きくなることを抑制することを確認できた。よって、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を制御できることを確認できた。
実施例A1〜A17の第1流体のpHは4.1以下である。第1流体のpHが4.1以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.0を超えるように制御することによって、比率(d/D)が0.30以上であり、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子や結晶子径が30nm以上のニッケル微粒子は、熱処理後の収縮を抑制できることから、セラミックコンデンサ用途に適したニッケル微粒子を製造できることを確認できた。
また、実施例A1〜A14で用いたポリエチレングリコール600をポリビニルピロリドン(k=30)に変更して実施した実施例A15〜A18においても、実施例A1〜A14と同様の結果が得られた。
また、実施例A1〜A14において、第1流体のpHが同じ場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を高くすることで、比率(d/D)を大きくすることが可能であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を低くすることで、 比率(d/D)を小さくすることが可能であることを確認した。
(実施例A18〜A23)
ニッケル化合物流体の処方を表5とし、処理条件を表6とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表7に示す。また、実施例A15〜A23の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
表7より、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を制御することによって、析出させたニッケル微粒子の粒子径が大きくなることを抑制しつつ、結晶子径が大きくなることを助長させることを確認できた。また、結晶子径が大きくなるとともに粒子径も大きくなることを抑制することを確認できた。よって、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を制御できることを確認できた。
実施例A18〜A23の第1流体のpHは4.1を超えて4.7以下である。第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.2を超えるように制御することによって、比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。また、第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.1を超えるように制御することによって、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。
また、実施例A18〜A23において、第1流体のpHが同じ場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を高くすることで、 比率(d/D)を大きくすることが可能であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を低くすることで、 比率(d/D)を小さくすることが可能であることを確認した。
(比較例A1〜A7)
ニッケル化合物流体の処方を表8とし、処理条件を表9とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表10に示す。また、比較例A1〜A7の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pHのみを変更するために、別途硝酸及び/または硝酸カリウムを添加して調製した。
表10より、第1流体のpHが4.1以下、かつ、その送液温度が135℃±2℃であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定にした比較例A1,2で得られたニッケル微粒子は、その結晶子径(d)は30nm以上となったが、粒子径(D)も同時に大きくなり、その比率(d/D)は0.30を大きく下回った。また、第1流体のpHが4.1以下、かつ、その送液温度が153℃±2℃であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定にした比較例A3〜A5で得られたニッケル微粒子は、結晶子径(d)は30nm未満となり、比率(d/D)も0.30未満となった。さらに、第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下、かつ、その送液温度が153℃±2℃であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定にした比較例A6,A7で得られたニッケル微粒子も、結晶子径(d)は30nm未満となり、比率(d/D)も0.30未満となった。また、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンと硝酸イオンの合計のモル比が1.20を超えても、比率(d/D)は0.30以上とはならなかった。
第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定とし、第1流体のpHを変化させただけでは、比率(d/D)を制御することができないことを確認した。
(比較例A8〜A12)
ニッケル化合物流体の処方を表11とし、処理条件を表12とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表13に示す。また、比較例A8〜A12の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pHのみを変更するために、別途酢酸及び/または酢酸カリウムを添加して調製した。
表13より、第1流体のpHが4.1以下、かつ、その送液温度が153℃±2℃であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定にした比較例A8,A9,A10で得られたニッケル微粒子は、その結晶子径(d)は30nm以上となったが、粒子径(D)も同時に大きくなり、その比率(d/D)は0.30を大きく下回った。また、第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下、かつ、その送液温度が153℃±2℃であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定にした比較例A11,12で得られたニッケル微粒子は、結晶子径(d)は30nm未満となり、比率(d/D)も0.30未満となった。また、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンと酢酸イオンの合計のモル比が1.20を超えても、比率(d/D)は0.3以上とはならなかった。
第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定とし、第1流体のpHを変化させただけでは、比率(d/D)を制御することができないことを確認した。
(実施例A24〜A31)
表14に示す処方のニッケル化合物流体と、表15に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表16の処理条件にて混合し、ニッケル微粒子を析出させた。得られたニッケル微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表17に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、実施例A24〜A31の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、実施例A24〜A28においては別途硫酸を同量添加し、実施例A29〜A31においては硫酸を添加せずに調製した。実施例A24〜A28と実施例A29〜A31のそれぞれにおいて、ニッケル化合物流体中のポリエチレングリコール600の濃度を変化させた。
表17より、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.24である、実施例A25〜A27においては、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、ニッケル微粒子の結晶子径(d)は大きくなる傾向を示したが、その粒子径(D)はさほど大きくならなかった。析出させたニッケル微粒子の粒子径が大きくなることを抑制しつつ、結晶子径が大きくなることを助長する傾向を確認した。また、結晶子径が大きくなるとともに粒子径も大きくなることを抑制する傾向を確認した。よって、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、比率(d/D)が大きくなる傾向を示すことを確認した。また、実施例A24〜A28においては、比率(d/D)が0.30以上であり、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子が得られた。
また、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.00である、実施例A29〜A31においては、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、ニッケル微粒子の結晶子径(d)とその粒子径(D)は小さくなる傾向を示した。よって、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、比率(d/D)が小さくなる傾向を示すことを確認した。また、実施例A29〜A30においては、結晶子径(d)は30nm以上のニッケル微粒子が得られたが、その比率(d/D)は0.30を大きく下回った。
よって、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.00を超えたところでは、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、比率(d/D)を大きくさせる可能性が示された。
(B)銀微粒子の製造方法
次に、銀微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
(銀微粒子の析出)
図1に示される流体処理装置を用いて、銀含有流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中で銀微粒子を析出させる。
具体的には、中央から第1流体として銀含有流体又は還元剤流体のうちの何れか一方を供給圧力=0.50MPaGで送液する。第1流体は、図1の処理用部10の処理用面1と処理用部20の処理用面2との間の密封された空間(処理用面間)に、送り込まれる。処理用部10の回転数は500 rpmである。第1流体は処理用面1,2間において強制された薄膜流体を形成し、処理用部10,20の外周より吐出される。第2流体として銀含有流体又は還元剤流体のうちの何れか他方を処理用面1,2間に形成された薄膜流体に直接導入する。微小間隔に調整された処理用面1,2間において銀含有流体と還元剤流体とを混合させ、銀微粒子を析出させる。銀微粒子を含むスラリー(銀微粒子分散液)が、処理用面1,2間より吐出される。
(微粒子回収方法)
処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液を静置し、銀微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で−0.10MPaGにて乾燥し、銀微粒子の乾燥粉体を作製した。
第1流体及び第2流体のpHや、得られた銀微粒子の乾燥粉体について下記測定・分析を行った。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認された銀微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られた銀微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶盤は、47.3°に確認されるピークを使用し、得られた銀微粒子の回折パターンにおける44.5°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
(ICP分析:不純物元素検出)
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)による銀微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
銀微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例B、比較例Bの全てにおいて、銀元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
(実施例B1〜B17)
表18に示す処方の還元剤流体と、表19に示す処方の銀含有流体とを、図1に示す流体処理装置にて表20の処理条件にて混合し、銀微粒子を析出させた。得られた銀微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表21に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、実施例B1〜B17の全てにおいて、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、pHや硫酸イオン濃度を変更するために、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製した。
また、表18から後述する表30までの表中における略記号は、AgNOは硝酸銀、FeSO・7HOは硫酸鉄(II)七水和物、HSOは硫酸、(NHSOは硫酸アンモニウム、KSOは硫酸カリウム、HNOは硝酸、KNOは硝酸カリウム、CHCOOHは酢酸、CHCOOKは酢酸カリウム、PWは純水、SO 2−は硫酸イオン、NO は硝酸イオン、CHCOOは酢酸イオン、Agは銀である。また実施例B1,B4で作製した銀微粒子のSEM写真を図4,図5に示す。また、表21に得られた結果の内、実施例B1〜B13の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図6に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図7に示す。また、実施例B14〜B17では、第1流体である還元剤流体の流量を変更することで、混合された被処理流動体中における銀に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例B14〜B17の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図8に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図9に示す。
表21及び図6,図7より、第2流体中の銀に対する、第1流体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を制御することによって、析出させた銀微粒子の粒子径を制御しつつ、結晶子の成長を制御出来ることを確認できた。また、結晶子径が小さくなるとともに粒子径も小さくなることを抑制することを確認できた。よって、銀微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を制御できることを確認できた。また、図6、図7より、還元剤流体(第1流体)のpHが、酸性条件下で一定とした条件下では、銀含有流体中の銀に対する還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が小さくなる傾向を示すことがわかる。また、この傾向は、酸性条件下でpHの変化に関わらず、維持されるものであることがわかる。従って、上記のモル比と上記pHとの双方を制御することで、よりダイナミックなレンジでの上記の比率(d/D)の制御が可能となることがわかる。さらに、銀含有流体中の銀に対する還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が小さくなる傾向を示すことを確認した。
実施例B14〜B17による銀含有流体と還元剤流体との混合比を変化させた場合も、図8,図9より、実施例B1〜B13の場合と同様に、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が小さくなることがわかる。さらに、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が小さくなることを確認した。
(比較例B1〜B7)
還元剤流体の処方を表22とし、処理条件を表23とした以外は、実施例B1〜B17の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表24に示す。また、比較例B1〜B7の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、実施例B1〜B17で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途硝酸及び/又は硝酸カリウムの硝酸化合物を添加して調製した。また、表24にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図10に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図11に示す。
表24及び図10,図11より、第2流体中の銀に対する、第1流体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を一定として、別途、第1流体中に硝酸化合物を加えた場合、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計に対する、結晶子径及び粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
(比較例B8〜B14)
還元剤流体の処方を表25とし、処理条件を表26とした以外は、実施例B1〜B17の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表27に示す。また、比較例B8〜B14の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、実施例B1〜B17で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途酢酸及び/又は酢酸カリウムの酢酸化合物を添加して調製した。また、表27にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第一流体のpH毎にプロットしたグラフを図12に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図13に示す。
表27及び図12,図13より、第2流体中の銀に対する、第1流体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を一定として、別途、第1流体中に酢酸化合物を加えた場合、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンとのモル比の総計に対する、結晶子径並びに粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
(比較例B15〜B17)
実施例B7〜B9の比較として、バッチ式の試験を行った。還元剤流体である第1流体の処方を表28とした。第1流体と第2流体との混合は、表29に記載した量の第1流体をビーカー中で撹拌しながら、第2流体を表29に記載の流速にて1分間投入し、銀含有流体と還元剤流体とを混合させ、銀微粒子を析出させた。銀微粒子を含むスラリー(銀微粒子分散液)が得られた。第2流体の処方、粒子の回収方法並びに分析方法については、実施例B1〜B17と同様の方法にて行った。
表30より、バッチ式の試験においては、第2流体中の銀に対する、第1流体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を変化させても、粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)に大きな変化は見られなかった。特に、実施例B7〜B9と比べて、比較例B15〜B17で得られた銀微粒子の結晶子径(d)が小さくなった。
(実施例B18〜B30)
表31に示す処方の銀含有流体と、表32に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表33の処理条件にて混合し、銀微粒子を析出させた。得られた銀微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表34に示す。なお、第1流体の供給圧力は、上述の通りであり、処理用部10の回転数は1700rpmである。また、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、実施例B18〜B30の全てにおいて、酸性を示した。銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製した。還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物及び硫酸を溶解して調製した。
また、表31から表40までの表中における略記号は、EGはエチレングリコール、PWは純水、AgSOは硫酸銀、FeSO・7HOは硫酸鉄(II)七水和物、HSOは硫酸、(NHSOは硫酸アンモニウム、KSOは硫酸カリウム、HNOは硝酸、KNOは硝酸カリウム、CHCOOHは酢酸、CHCOOKは酢酸カリウム、SO 2−は硫酸イオン、NO は硝酸イオン、CHCOOは酢酸イオン、Agは銀である。また、表34に得られた結果の内、実施例B18〜B26の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図14に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図15に示す。また、実施例B27〜B30では、第2流体である還元剤流体の流量を変更することで、混合された被処理流動体中における銀に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例B27〜B30の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図16に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図17に示す。
表34及び図14,図15より、第1流体中の銀に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を制御することによって、析出させた銀微粒子の粒子径を制御しつつ、結晶子の成長を制御出来ることを確認できた。また、結晶子径が大きくなるとともに粒子径も大きくなることを抑制することを確認できた。よって、銀微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を制御できることを確認できた。また、図14,図15より、銀含有流体(第1流体)のpHが、酸性条件下で一定となるとの条件を与え、銀含有流体中の銀に対する混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなる傾向を示すことがわかる。また、この傾向は、酸性条件下でpHの変化に関わらず、維持されるものであることがわかる。従って、上記のモル比率と上記pHとの双方を制御することで、よりダイナミックなレンジでの上記の比率(d/D)の制御が可能となることがわかる。さらに、銀含有流体中の銀に対する混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が大きくなる傾向を示すことを確認した。
図16、図17より、銀含有流体と還元剤流体との混合比を変化させた場合も、実施例B18〜B26場合と同様に、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなることがわかる。さらに、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が大きくなることを確認した。
(比較例B18〜B26)
銀含有流体の処方を表35とし、処理条件を表36とした以外は、実施例B18〜B30の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表37に示す。また、比較例B18〜B26の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、実施例B18〜B30で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途硝酸及び/又は硝酸カリウムの硝酸化合物を添加して調製した。また、表37にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図18に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図19に示す。
表37及び図18,図19より、第1流体中の銀に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を一定として、別途、第1流体中に硝酸化合物を加えた場合、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計に対する、結晶子径及び粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
(比較例B27〜B35)
銀含有流体の処方を表38とし、処理条件を表39とした以外は、実施例B18〜B30の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表40に示す。また、比較例B27〜B35の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、実施例B18〜B30で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途酢酸及び/又は酢酸カリウムの酢酸化合物を添加して調製した。また、表40に得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図20に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図21に示す。
表40及び図20,図21より、第1流体中の銀に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を一定として、別途、第1流体中に酢酸化合物を加えた場合、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンとのモル比の総計に対する、結晶子径並びに粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
上記の実施例Bから明らかなように、本願発明においては、銀もしくは銀化合物の溶媒として、水のみを用いる場合には、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が小さくなるよう制御し、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を低くすることで上記の比率(d/D)が大きくなるよう制御することができる。
また、銀もしくは銀化合物の溶媒として、エチレングリコールなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒に代表される前述の有機溶媒などの非水溶媒を用いた場合、また、非水溶媒と水とを併用する場合には、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を低くすることで得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が小さくなるよう制御し、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなるよう制御することができるものである。
なお、これらの制御を行う流体の調製や混合等の操作は、室温にて行っても良いが、室温以外の環境で行っても良い。
(C)銅微粒子の製造方法
次に、銅微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
(銅微粒子の析出)
図1に示される流体処理装置を用いて、銅溶解流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中で銅微粒子を析出させる。
具体的には、中央から第1流体として銅溶解流体又は還元剤流体のうちの何れか一方を供給圧力=0.50MPaGで送液する。第1流体は、図1の処理用部10の処理用面1と処理用部20の処理用面2との間の密封された空間(処理用面間)に、送り込まれる。処理用部10の回転数は1700 rpmである。第1流体は処理用面1,2間において強制された薄膜流体を形成し、処理用部10,20の外周より吐出される。第2流体として銅溶解流体又は還元剤流体のうちの何れか他方を処理用面1,2間に形成された薄膜流体に直接導入する。微小間隔に調整された処理用面1,2間において銅溶解流体と還元剤流体とを混合させ、銅微粒子を析出させる。銅微粒子を含むスラリー(銅微粒子分散液)が、処理用面1,2間より吐出される。
(微粒子回収方法)
処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液を静置し、銅微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で−0.10MPaGにて乾燥し、銅微粒子の乾燥粉体を作製した。
第1流体及び第2流体のpHや、得られた銅微粒子の乾燥粉体について下記測定・分析を行った。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認された銅微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られた銅微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶板は、47.3°に確認されるピークを使用し、得られた銅微粒子の回折パターンにおける43.0°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
(ICP分析:不純物元素検出)
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)による銅微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
銅微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例C、比較例Cの全てにおいて、銅元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
(実施例C1〜C14)
表41に示す処方の銅溶解流体と、表42に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表43の処理条件にて混合し、銅微粒子を析出させた。得られた銅微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表44に示す。なお、第1流体の供給圧力及び処理用部10の回転数は上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、実施例C1〜C14の全てにおいて、酸性を示した。銅溶解流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銅五水和物を溶解し、硫酸化合物を添加して調製した。還元剤流体は、実施例C1〜C9においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解して調製し、実施例C10〜C14においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解し、硫酸を添加して調製した。
また、表41から後述する表56までの表中における略記号は、EGはエチレングリコール、PWは純水、CuSO・5HOは硫酸銅五水和物、Ascorbic AcidはL−アスコルビン酸、HSOは硫酸、(NHSOは硫酸アンモニウム、KSOは硫酸カリウム、HNOは硝酸、KNOは硝酸カリウム、CHCOOHは酢酸、CHCOOKは酢酸カリウム、SO 2−は硫酸イオン、NO は硝酸イオン、CHCOOは酢酸イオン、Cuは銅である。また、表44に得られた結果の内、実施例C1〜C9の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図22に、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図23に示す。また、実施例C10〜C12では、第1流体の処方は、実施例C7と同様とし、第2流体である還元剤流体中の硫酸の濃度を変更することで、混合された被処理流動体中における銅に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例C10〜C12の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図24に、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図25に示す。また、実施例C11、C13、C14では、第1流体である銅溶解流体の流量を変更し、銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変化させることで、混合された被処理流動体中における銅に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例C11,C13,C14の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図26に、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図27に示す。また、実施例C7において得られた銅微粒子のSEM写真を図36に示す。
表44及び図22,図23より、第1流体中の銅に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)を制御することによって、析出させた銅微粒子の粒子径を制御しつつ、結晶子の成長を制御出来ることを確認できた。また、結晶子径が大きくなる度合いに比べて粒子径が大きくなる度合いを抑制できることを確認した。よって、銅微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を制御できることを確認できた。また、図22,図23より、銅溶解流体(第1流体)のpHが、酸性条件下で一定となるとの条件を与え、銅溶解流体中の銅に対する混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比を高くなるようにすることで上記の比率(d/D)が大きくなる傾向を示すことがわかる。また、この傾向は、酸性条件下でpHの変化に関わらず、維持されるものであることがわかる。従って、上記のモル比率と上記pHとの双方を制御することで、よりダイナミックなレンジでの上記の比率(d/D)の制御が可能となることがわかる。さらに、銅溶解流体中の銅に対する混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比を高くなるようにすることで、析出させた銅微粒子の結晶子径(d)が大きくなる傾向を示すことを確認した。
図24、図25より、第2流体中の硫酸化合物である硫酸の濃度を変化させた場合も、実施例C1〜C9の場合と同様に、混合した被処理流動体中の銅に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなることがわかる。さらに、混合した被処理流動体中の銅に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銅微粒子の結晶子径(d)が大きくなることを確認した。
図26、図27より、銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変化させた場合も、実施例C1〜C9の場合と同様に、混合した被処理流動体中の銅に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなることがわかる。
さらに、混合した被処理流動体中の硫酸イオンの濃度を高くすることで、析出させた銅微粒子の結晶子径(d)が大きくなることを確認した。
(比較例C1〜C12)
第1流体である銅溶解流体の処方を表45とし、第2流体である還元剤流体の処方を表46、処理条件を表47とした以外は、実施例C1〜C14の場合と同様に実施して、銅微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表48に示す。また、比較例C1〜C12の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、酸性を示した。
銅溶解流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銅五水和物を溶解し、実施例C1〜C14で加えた硫酸化合物とは異なり、別途硝酸及び/又は硝酸カリウムの硝酸化合物を添加して調製した。還元剤流体は、比較例C1〜C9においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解して調製し、比較例C10〜C12においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解し、硝酸を添加して調製した。また、表48に得られた結果のうち、比較例C1〜C9の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図28に、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図29に示す。また比較例C10〜C12では、第2流体である還元剤流体中に硝酸を溶解し、かつ、第2流体である還元剤流体の流量を変更して、銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変化させることで、混合された被処理流動体中における銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンとのモル比の総計を変化させた。比較例C10〜C12の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図30に、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図31に示す。
表48及び図28〜図31より、第1流体中の銅に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)を一定として、別途、第1流体又は第2流体中に硝酸化合物を加えた場合、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計に対する、結晶子径及び粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
(比較例C13〜C24)
第1流体である銅溶解流体の処方を表49とし、第2流体である還元剤流体の処方を表50、処理条件を表51とした以外は、実施例C1〜C14の場合と同様に実施して、銅微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表52に示す。また、比較例C13〜C24の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、酸性を示した。
銅溶解流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銅五水和物を溶解し、実施例C1〜C14で加えた硫酸化合物とは異なり、別途酢酸及び/又は酢酸カリウムの酢酸化合物を添加して調製した。還元剤流体は、比較例C13〜C21においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解して調製し、比較例C22〜C24においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解し、酢酸を添加して調製した。また、表52に得られた結果のうち、比較例C13〜21の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図32に、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図33に示す。また比較例C22〜C24では、第2流体である還元剤流体中に酢酸を溶解し、かつ、第2流体である還元剤流体の流量を変更して、銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変化させることで、混合された被処理流動体中における銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンとのモル比の総計を変化させた。比較例C22〜C24の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図34に、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計((SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図35に示す。
表52及び図32〜図35より、第1流体中の銅に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)を一定として、別途、第1流体又は第2流体中に酢酸化合物を加えた場合、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンとのモル比の総計に対する、結晶子径並びに粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
(比較例C25〜C27)
実施例C7〜C9の比較として、バッチ式の試験を行った。第1流体である銅溶解流体の処方を表53とした。第2流体である還元剤流体の処方を表54とした。第1流体と第2流体との混合は、表55に記載した液量の第1流体をビーカー中で撹拌しながら、第2流体を表55に記載の送液流量にて1分間投入し、銅溶解流体と還元剤流体とを混合させ、銅微粒子を析出させた。銅微粒子を含むスラリー(銅微粒子分散液)が得られた。粒子の回収方法並びに分析方法については、実施例C1〜C14と同様の方法にて行った。
表56より、バッチ式の試験においては、第1流体中の銅に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)を変化させても、粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)に大きな変化は見られなかった。特に、実施例C7〜C9と比べて、比較例C25〜C27で得られた銅微粒子の結晶子径(d)が小さくなった。
上記の実施例Cから明らかなように、銅溶解流体の溶媒として、エチレングリコールなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒に代表される前述の有機溶媒などの非水溶媒と水とを併用した場合には、銅溶解流体中の銅に対する上記の混合した被処理流動体中の硫酸イオンのモル比を低くすることで得られる銅微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が小さくなるよう制御し、銅溶解流体中の銅に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなるよう制御することができるものである。
また、実施例Cには示していないが、銅溶解流体の溶媒として、上記の非水溶媒のみを用いた場合においても、同様の傾向が確認された。
なお、これらの制御を行う流体の調製や混合等の操作は、室温にて行っても良いが、室温以外の環境で行っても良い。
以上のように、3種の金属を用いた実施例を示したが、ニッケルはイオン化傾向が水素よりも大きく、銅はイオン化傾向が水素よりもやや小さく、銀はイオン化傾向が小さい金属である。また、銀と銅は周期表の第11属同族元素であるが、銀は第5周期の貴金属であるのに対して、銅は第4周期の卑金属である。また、ニッケルは、銅と同じく第4周期であるが、銅とは異なる鉄族元素である。従って、これらの3種の金属はそれぞれその特性が異なるにもかかわらず、上記の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が可能となったものであり、本願発明の実施によって、これら3種以外の金属にあっても、同様な制御が可能であると考えられる。
また、(A)ニッケル微粒子の製造方法の実施例においては、金属流体であるニッケル化合物流体は酸性、還元剤流体は塩基性を示すものを用い、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示すものとした。上記のpH条件については、銀や銅、その他の金属でも同様に実施することができる。
一方、(B)銀微粒子の製造方法と(C)銅微粒子の製造方法のそれぞれの実施例においては、金属流体である銀含有流体と銅溶解流体は酸性、還元剤流体は酸性を示すものを用い、処理用面1,2間より吐出された銀又は銅微粒子分散液は、酸性を示すものとした。上記のpH条件については、ニッケルやその他の金属でも同様に実施することができる。
1 第1処理用面
2 第2処理用面
10 第1処理用部
11 第1ホルダ
20 第2処理用部
21 第2ホルダ
d1 第1導入部
d2 第2導入部
d20 開口部
本願発明は、金属微粒子の製造方法に関する。
近年、触媒、導電性材料、磁性材料、二次電子放出材料、発光体、吸熱体、エネルギー貯蔵、電極材料、色材など、幅広い分野において金属微粒子が求められており、目的に応じて粒子径および粒度分布が制御されたものが使用されている。また、金属微粒子の物性は、その結晶子径によっても変化するものであり、例えば、同じ粒子径を持つ金属微粒子であっても、結晶子が小さい場合には焼成温度を低くでき、結晶子が大きい場合には熱処理後の収縮を小さくできる。よって、金属微粒子の結晶子径を制御すること、特に、金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御する技術を確立することは極めて有用性が高い。
一般に結晶子とは、単結晶とみなせる最大の集まりのことをいい、その結晶子の大きさのことを結晶子径という。微小粒子の結晶子径の測定方法には、電子顕微鏡を用いて結晶子の格子縞を確認する方法と、X線回折装置を用いて回折パターンとScherrerの式より結晶子径を算出する方法とがある。
結晶子径 D=K・λ/(β・cosθ) ・・・Scherrerの式
ここで、KはScherrer定数であり、一般的にK=0.9とする。λは使用したX線管球の波長、βは半値幅、θは回折角を用いて算出する。
金属微粒子の製造方法としては、種々の方法が提案されている。
例えば、ニッケル微粒子は、積層セラミックコンデンサや基板における伝導性材料、電極材料など広く使用されている材料であるが、ニッケル微粒子の製造方法としては、主に、気相法と液相法とに大別される。
特許文献1には、レーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、該平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であり、且つニッケル粒子内の平均結晶子径が400Å以上であるニッケル粉について記載されている。そのニッケル粉は、湿式法または乾式法で製造されたニッケル粉とアルカリ土類金属化合物の微粉末とを混合した後、またはニッケル粉の各粒子表面にアルカリ土類金属化合物を被覆させた後、不活性ガス又は微還元性ガス雰囲気中で、アルカリ土類金属化合物の溶融温度未満の温度で熱処理して得られたものであることや、SEM観察による平均粒子径が0.05〜1μmであることが好ましいことが記載されている。
特許文献2には、熱プラズマによってニッケルを蒸発させ、凝縮させて微粉化することによって得られたニッケル微粉であって、走査電子顕微鏡観察から求めた個数平均粒径が0.05〜0.2μmであり、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%であり、かつ、0.6μm以上の粗大粒子のニッケル微粉中に含まれる割合が個数基準で50ppm以下であるニッケル微粉について記載されている。また、そのニッケル微粉は、X線回折分析によって求められる結晶子径が、上記個数平均粒径に対して66%以上であることが好ましいことが記載されている。
特許文献3には、ポリオール溶媒に、還元剤、分散剤、及びニッケル塩を添加して混合溶液を製造し、この混合溶液を撹拌して昇温した後、反応温度及び時間を調整して還元反応によって得られるニッケルナノ粒子について記載されている。また、粒度が均一であり、分散性に優れたニッケル微粒子が得られることが記載されている。
一般的に、気相法で得られたニッケル微粒子の粒度分布は広く、ニッケル微粒子の粒子径や結晶子径を均一にする事が難しいだけでなく、製造におけるエネルギーコストが高くなる。加えて、特許文献1に記載されたような、粒度分布が狭く結晶子径が大きいニッケル微粒子や、特許文献2に記載されたような、全体における粗大粒子の割合が少なく平均粒径に対して結晶子径の比率が大きなニッケル微粒子を得るためには、製造工程が複雑となり、製造時のエネルギーが増大する。その他、異物混入の問題もある。
また、液相法は、気相法に比べてニッケル微粒子の粒子径を制御し易く製造コストも下げやすいが、結晶子径の制御が難しい。特許文献3や後述する特許文献10には、ニッケル微粒子を含めた金属微粒子の粒子径についての記載はあるが、結晶子径についての記載はない。そのため、液相法を用いた、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御されたニッケル微粒子の製造方法については、これまでに開示がなされていない。
また、銀微粒子は、導電性材料、電極材料など広く使用されている材料であるが、銀微粒子の製造方法は、超臨界法、熱分解法、超音波法、レーザーアブレーション法、逆ミセル法、気相法などの一般的な方法や、特許文献4に記載されたようなマイクロ波を用いた方法等がある。また、比較的粒子径を制御し易く、製造コストも下げやすい液相法として、特許文献5、6、10に記載されたような製造方法がある。
従来の一般的な方法や、特許文献4のような方法で得られた銀微粒子の粒度分布は広く、銀微粒子の粒子径や結晶子径を均一にする事が難しいだけでなく、製造におけるエネルギーコストが高くなる。
また、液相法は、気相法に比べて銀微粒子の粒子径を制御し易く製造コストも下げやすいが、結晶子径の制御が難しい。特許文献5、6、10には、銀微粒子を含めた金属微粒子の粒子径についての記載はあるが、粒子径に対する結晶子径の制御に関する記載はない。
また、銅微粒子は、導電性材料や電極材料として、積層セラミックコンデンサーや、プリンタブルエレクトロニクスの分野など、広く使用されている材料であり、銅微粒子の製造方法は、超臨界法、熱分解法、超音波法、逆ミセル法、気相法などの一般的な方法や、特許文献7に記載されたような溶融状態の銅にアンモニアを含むガスを吹き当てる方法等がある。また、比較的粒子径を制御し易く、製造コストも下げやすい液相法として、特許文献8〜11に記載されたような製造方法がある。
従来の一般的な方法や、特許文献7のような方法で得られた銅微粒子の粒度分布は広く、銅微粒子の粒子径や結晶子径を均一にする事が難しいだけでなく、製造におけるエネルギーコストが高くなる。例えば、特許文献7に記載された金属銅微粒子は、BET法で測定した粒子径が3μm以下、真珠状で、かつ結晶子サイズが0.1〜10μmであることを特徴としており、導電ペースト用材料に好適であることが記載されている。しかしながら、実施例に示されたように、金属銅微粒子のSEM観察による粒子径はナノサイズからマイクロサイズの範囲となっており、その粒度分布は広く、粒子径や結晶子径を均一にすることが難しい。
また、液相法は、気相法に比べて銅微粒子の粒子径を制御し易く製造コストも下げやすいが、結晶子径の制御が難しい。特許文献8〜11には、銅微粒子を含めた金属微粒子の粒子径及び/又は結晶子径についての記載はあるが、粒子径に対する結晶子径の制御に関する記載はない。
例えば、特許文献8にあっては、請求項1として、有機金属化合物を、前記有機金属化合物を構成する有機化合物に対してアミノ基含有置換アルコール類を等モル以上含有する溶媒に溶解することにより、金属換算濃度が少なくとも1質量%であり、かつ実質的に水を含有しない有機金属化合物溶液を調製し、有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも一種により還元することを特徴とする金属微粒子分散液の製造方法が開示されている。特許文献8に記載された金属微粒子分散液中の金属微粒子の粒子径は通常コロイドを形成する程度であるが限定的ではないことや、好ましい粒子径は1〜100nmであることが記載され、特許文献8に記載された金属微粒子の平均結晶子サイズは、通常1〜100nmであることが記載されているが、粒子径や結晶子サイズをどのように制御するかについての記載はない。
また、特許文献9には、請求項1として、アミン類、窒素含有複素環化合物、ニトリル類及びシアン化合物、ケトン類、アミノ酸類、アルカノールアミン類又はそれらの塩又は誘導体から選ばれる少なくとも1種の錯化剤、及び保護コロイドの存在下で、2価の銅酸化物と還元剤とを媒液中で混合して、金属銅微粒子を生成させることを特徴とする銅微粒子の製造方法が開示され、2価の銅酸化物が20〜500nmの範囲の平均結晶子径を有することも記載されているが、金属銅微粒子の結晶子径についての記載はない。
本願出願人の出願である特許文献10にあっては、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する装置を使用して、上記の薄膜流体中で、ニッケル、銀、銅などの金属化合物を含む水溶液と還元剤水溶液とを合流させ、均一混合しながら金属化合物の還元反応を行うことにより、ニッケル、銀、銅などの金属微粒子を得る方法が記載されている。そして、高分子分散剤を含む硫酸ニッケル六水和物と高分子分散剤を含むヒドラジン水溶液とを合流させてニッケル微粒子を析出させた実施例や高分子分散剤を含む硝酸銀水溶液をヒドラジン水溶液又はジメチルアミノエタノール水溶液と合流させて銀微粒子を析出させた実施例、硝酸銅水溶液と高分子分散剤を含むヒドラジン水溶液とを合流させて銅微粒子を析出させた実施例などが示されている。ところが、特許文献10にあっては、金属微粒子の粒子径や、金属コロイド溶液の単分散度の制御について、処理用面の回転数や処理用面間の距離、及び、薄膜流体の流速や原料濃度を変えることによりなされ得ることが示唆されているに止まり、粒子径に対する結晶子径の制御に関しては言及することはなかった。より詳しくは、薄膜流体を構成する酸としては、アスコルビン酸や有機酸類(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等)の還元剤を用いることが記載されているに止まり、硫酸によって結晶子径と粒子径とを制御することに関する記載はなかった。
また、本願出願人の出願である特許文献11にあっては、薄膜流体を構成する流体中の物質の種類、濃度、流体のpH、流体の導入温度、流体の導入速度を変化させることによって、銅微粒子を含む微粒子の結晶子径を制御することが開示されている。ところが、原料流体や析出流体中の物質や、流体のpH調整に用いる物質の種類については、極めて多数の物質が示されており、また、粒子径に対する結晶子径の制御に関しての記載はなく、また特定の傾向についても記載されていなかった。そのため、実際の微粒子の製造に関しては、未だ多くの試行錯誤を必要とする場合があった。詳しくは、実施例では、ポリオールと、塩化銅又は硝酸銅三水和物との原料流体に対して、ヒドラジン一水和物とポリオールとの析出流体を用いた例が示され、さらに詳しくは、ベンゾトリアゾールによるpH調整や流体の導入速度の変更を行なう例が示されているが、混合後の流体は酸性条件ではないと考えられ、混合後の流体中の銅と硫酸イオンとのモル比を制御することによって、結晶子径並びにd/Dを制御するものではなかった。
この特許文献10や11に記載の装置や方法は、本願出願人の開発に係るものであり、微粒子、特にナノサイズの微粒子の製造に貢献できるものと高い評価を受けているものであるが、個々の微粒子の製造や得られる微粒子の物性などの諸特性の制御に関しては、未だ未解明な部分が多いのが現状である。
特開2007−197836号公報 特開2011−195888号公報 特開2009−24254号公報 特開2007−169680号公報 特開2006−28637号公報 特開2008−255377号公報 特開2004−124257号公報 特開2006−97116号公報 特開2012−52240号公報 国際公開WO2009/008390号パンフレット 国際公開WO2013/008706号パンフレット
上記の事情に鑑み、本願発明は、金属微粒子の製造方法にあって、金属微粒子の結晶子径を制御すること、特に、金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御する方法を提供するものである。
本願発明者は、金属微粒子の製造について鋭意研究して種々実験を繰り返す中で、結晶子径の制御に関して硫酸イオンが大きな役割を果たすことを知見した。かかる知見は本願発明者にとっても大きな驚きであり、この知見に基づき、本願発明を完成させるに至った。
即ち、本願発明の金属微粒子の製造方法は、少なくとも2種類の被処理流動体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の被処理流動体は、金属もしくは金属化合物を溶媒に溶解させた金属流体であり、上記以外の被処理流動体で少なくとも1種類の被処理流動体は、還元剤を含む還元剤流体である。必要に応じて、上記金属流体及び上記還元剤流体以外の第3の被処理流動体を用いることもできる。上記金属流体と、上記還元剤流体と、必要に応じて加えられる上記第3の被処理流動体との、少なくとも何れか一の被処理流動体には、硫酸イオンが含まれる。上記の被処理流動体を、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間に導入する。導入された上記の被処理流動体は、上記の少なくとも2つの処理用面の間で薄膜流体となる。本願発明は、上記の薄膜流体中で上記の被処理流動体が混合し、上記の薄膜流体中で上記の金属もしくは金属化合物と上記の還元剤とが反応し、ニッケル微粒子を除く金属微粒子が析出するところの、混合・析出工程を含むものである。以下、金属微粒子にはニッケル微粒子を含まないものとする。
そして、本願発明は、上記の混合・析出工程中において、上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比を制御することによって、上記金属微粒子の粒子径(D)に対する上記金属微粒子の結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することを要旨とする。
例えば、上記の比率(d/D)は、用いる金属や金属化合物等の原料を始めとする被処理流動体の条件や、目的とする金属微粒子の条件等に応じて、種々が可能である。得られた金属微粒子に熱を加えた場合にあっても、収縮が生じにくい特性を有するものを得るためには、上記の比率(d/D)を0.3以上、より望ましくは0.5を越えるように制御することが適当である。言い換えれば、上記の比率(d/D)を0.3以上、より望ましくは0.5を越えるように制御することで、粒子径に対して比較的結晶子径の大きな金属微粒子を得ることが可能であることを本願発明者は知見した。そして、粒子径に対して比較的結晶子径の大きな金属微粒子を得ることで、得られた金属微粒子に熱を加えた場合にあっても、得られた微粒子に収縮が生じにくい特性を与えることができる。
また、本願発明は、上記被処理流動体のうち少なくとも1種類の被処理流動体には、ポリオールを含むものとして実施することができる。
上記ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも何れか1種を用いることができる。
特に、上記溶媒、すなわち金属流体の溶媒として、ポリオールを含有するポリオール溶媒を用いることによって、上記の混合した被処理流動体中の金属に対する硫酸イオンのモル比を高くなるように制御することで、上記の比率(d/D)が大きくなるように制御することができる。
また、本願発明は、上記の混合・析出工程において、上記金属流体中の金属の濃度と、上記混合がなされる前の上記被処理流動体中の硫酸イオンの濃度と、上記混合がなされる上記被処理流動体の混合比とを制御することによって、上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比を制御するものとして実施することができる。例えば、(1)上記金属流体中の金属の濃度と、(2)上記混合がなされる前の上記被処理流動体中の硫酸イオンの濃度と、(3)上記混合がなされる上記被処理流動体の混合比との、それぞれを一定としてもよく、(1)〜(3)の全てを変化させてもよく、(1)〜(3)のうちの一部を一定としてその残りを変化させてもよい。
また、本願発明は、上記の混合・析出工程中において、上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比に加えて、上記の混合した被処理流動体のpHを制御することによって、上記金属微粒子の粒子径(D)に対する上記金属微粒子の結晶子径(d)の比率(d/D)を制御するものとして実施できる。
また、本願発明は、上記制御は、混合時の被処理流動体における上記の特定の条件を制御するものであるが、上記金属流体中の金属に対する、上記金属流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を変化させるなどして、混合時の上記の特定の条件の制御を実現することができる。また、上記金属流体中の金属の濃度や上記金属流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させることで、混合時の上記の特定の条件の制御を実現することができる。上記金属流体と上記還元剤流体との混合比を変化させることで、混合時の上記の特定の条件の制御を実現することができる。
また、本願発明は、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHを制御して実施することも望ましい。
具体的には、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHが、酸性条件下で一定となるように制御することも望ましい。また、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHを、酸性条件下で変化させることも望ましい。
また、本願発明に係る上記金属もしくは金属化合物の金属として、化学周期表上の金属から選択される種々の金属を用いることができる。本願発明は、上記の金属の種類を限定するものではないが、銀、銅、銀化合物、銅化合物から選ばれる少なくとも何れか1種であるものとして実施することができる。
また、本願発明は、上記被処理流動体のうち少なくとも1種類の被処理流動体にはポリオールを含み、上記の混合・析出工程中において、上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比の制御に加え、上記の混合した被処理流動体中のポリオールの濃度を制御することによって、上記金属微粒子の粒子径(D)に対する上記金属微粒子の結晶子径(d)の比率(d/D)を制御するものとして実施することができる。
また、本願発明は、上記金属もしくは金属化合物が銀または銀化合物であって銀微粒子を析出させる場合には、上記金属流体の溶媒として水のみを用いることによって、上記の混合した被処理流動体中の金属に対する硫酸イオンのモル比を低くなるように制御することで上記の比率(d/D)が大きくなるように制御することもできる。
また、本願発明は、上記の少なくとも2つの処理用面として、第1処理用面と第2処理用面とを備え、第1処理用面と第2処理用面との間に上記被処理流動体を導入し、この被処理流動体の圧力により第1処理用面と第2処理用面とを離反させる方向に移動させる力を発生させ、この力によって、第1処理用面と第2処理用面との間が微小な間隔に保たれ、この微小間隔に保たれた第1処理用面と第2処理用面との間を通過する上記被処理流動体が上記薄膜流体を形成するものとして実施することができる。
また、本願発明は、上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか一方の被処理流動体が、上記薄膜流体を形成しながら上記少なくとも2つの処理用面間を通過し、上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか一方の被処理流動体が流される流路とは独立した別途の導入路を備えており、上記少なくとも2つの処理用面の少なくとも何れか一方に上記別途の導入路に通じる開口部を少なくとも一つ備え、上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか他方の被処理流動体を、上記開口部から上記少なくとも2つの処理用面間に導入して、上記金属流体と上記還元剤流体とを、上記薄膜流体中で混合するものとして実施できる。
本願発明の実施の態様の一例を示せば、被処理流動体に圧力を付与する流体圧付与機構と、上記少なくとも2つの処理用面のうち第1処理用面を備えた第1処理用部と、上記少なくとも2つの処理用面のうち第2処理用面を備えた第2処理用部とを備え、これらの処理用部を相対的に回転させる回転駆動機構とを備え、上記の各処理用面は、上記の圧力が付与された被処理流動体が流される、密封された流路の一部を構成するものであり、上記第1処理用部と第2処理用部のうち、少なくとも第2処理用部は受圧面を備えるものであり、且つ、この受圧面の少なくとも一部が上記第2処理用面により構成され、この受圧面は、上記の流体圧付与機構が被処理流動体に付与する圧力を受けて第1処理用面から第2処理用面を離反させる方向に移動させる力を発生させ、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する第1処理用面と第2処理用面との間に上記の圧力が付与された被処理流動体が通されることにより、上記被処理流動体が上記薄膜流体を形成し、この薄膜流体中において、金属微粒子を析出させる金属微粒子の製造方法として実施することができる。
本願発明は、従来の液相法による製造方法では困難であった、金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率の制御を可能とし、粒子径に対する結晶子径の比率を制御された金属微粒子を連続して製造することができる。
また、本願発明は、混合時の被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比を制御するという制御条件、特に、金属流体中の金属に対する金属流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を制御するという簡単な処理条件の変更によって、金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御することができるため、これまで以上に低コスト、低エネルギーで目的に応じ金属微粒子を作り分けることができ、安価かつ安定的に金属微粒子を提供することができる。
さらに、本願発明は、所望する粒子径の金属微粒子に目的とする物性を付与させることができる。
本願発明の実施の形態に係る流体処理装置の略断面図である。 (A)は図1に示す流体処理装置の第1処理用面の略平面図であり、(B)は同装置の処理用面の要部拡大図である。 (A)は同装置の第2導入部の断面図であり、(B)は同第2導入部を説明するための処理用面の要部拡大図である。 実施例B1にて得られた銀微粒子のSEM写真である。 実施例B4にて得られた銀微粒子のSEM写真である。 実施例B1〜B13にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例B1〜B13にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例B14〜B17にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 実施例B14〜B17にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 比較例B1〜B7にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B1〜B7にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B8〜B14にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B8〜B14にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例B18〜B26にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例B18〜B26にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例B27〜B30にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 実施例B27〜B30にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 比較例B18〜B26にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B18〜B26にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B27〜B35にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例B27〜B35にて得られた銀微粒子において、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例C1〜C9にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例C1〜C9にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 実施例C10〜C12にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 実施例C10〜C12にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 実施例C11,C13,C14にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 実施例C11,C13,C14にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 比較例C1〜C9にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例C1〜C9にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例C10〜C12にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 比較例C10〜C12にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 比較例C13〜C21にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例C13〜C21にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフである。 比較例C22〜C24にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフである。 比較例C22〜C24にて得られた銅微粒子において、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフである。 実施例C7にて得られた銅微粒子SEM写真である。
以下に、本願発明に係る金属微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
(金属)
本願発明における金属は、特に限定されない。化学周期表上における全ての金属である。一例として、Ti、Fe、W、Pt、Au、Cu、Ag、Pd、Ni、Mn、Co、Ru、V、Zn、Zr、Sn、In、Te、Ta、Bi、Sbなどの金属元素が挙げられる。それらの金属について、単体元素の金属であっても、複数元素を含む合金や金属元素に非金属元素を含む物質であっても良い。当然、卑金属と貴金属の合金としても実施できる。
(金属化合物)
本願発明における金属化合物としては、特に限定されない。一例としては、金属の塩、酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられる。金属の塩としては特に限定されないが、金属の硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられる。これらの金属化合物は、それぞれ単独で用いても良く、複数の混合物として用いても良い。
(還元剤)
還元剤は、特に限定されないが、金属に対する還元剤の全てが使用可能である。ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、硫酸ヒドラジン、フェニルヒドラジン等のヒドラジン類や、ジメチルホルムアミド、ジメチルアミノエタノール、トリエチエルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミノボランなどのアミン類、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、タンニン酸、ギ酸又はそれらの塩などの有機酸類や、アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールやブタノール等の脂肪族モノアルコール類やターピネオール等の脂環族モノアルコール類等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、テトラエチレングリコール、ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。また、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化トリブチル錫、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、水素化ホウ素亜鉛、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどのヒドリド類や、グルコース等の糖類や、その他ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)、硫酸鉄などの遷移金属(チタンや鉄)の塩や、それらの水和物や溶媒和物などを用いることができる。これらの還元剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明に係る金属流体は、上記の金属もしくは金属化合物を溶媒に溶解又は分子分散したものである。以下、特に断らないかぎり、「溶解と分子分散」を併せて、単に、「溶解」とする。
本願発明に係る還元剤流体は、上記の還元剤を溶媒に溶解又は分子分散させて用いることが好ましいが、上記の還元剤が含まれていれば、他の状態であってもよい。
また、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機又は有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒は、特に限定されないが、イオン交換水やRO水、純水や超純水などの水や、メタノールやエタノールのようなアルコール系有機溶媒や、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、又はポリエチレングリコールやグリセリンなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系有機溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルのようなエステル系有機溶媒、ジメチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒、ヘキサンや、ペンタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒などが挙げられる。また、アルコール系有機溶媒やポリオール(多価アルコール)系溶媒を溶媒として用いた場合には、溶媒そのものが還元性物質としても働く利点があり、金属微粒子を作製する場合には有効である。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明では、金属流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方の流体にポリオールを含むものとして実施してもよい。ポリオールは、2価以上のアルコールであり、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、またはジエチレングリコールやグリセリン、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらのポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明においては、上述の還元剤とポリオールとを併用して金属イオンを還元するポリオール還元法を用いて金属微粒子を得るものであってもよい。
本願発明では、上記金属流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に、すなわち、上記金属流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンが含まれる。硫酸イオンの供給源としては、硫酸のほか、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸銅、硫酸ニッケルや硫酸鉄などの硫酸塩又はそれらの水和物や有機溶媒和物を用いることができる。上記の硫酸ニッケルや硫酸銅は金属流体の原料として用いることができると同時に硫酸イオンの供給源としても作用する。また、硫酸ヒドラジンは、金属に対する還元剤でもあると同時に、硫酸イオンの供給源としても作用する。さらに、金属の種類によっては、硫酸鉄も金属に対する還元剤でもあると同時に、硫酸イオンの供給源としても作用する。金属イオンに対する還元剤の割合を変更することで、粒子径が変化することは公知であるが、加えて硫酸イオンを含む還元剤を用いることで、粒子径に対する結晶子径も制御出来るため、得られる金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を厳密且つ容易に制御できる。即ち、本願発明は、還元剤が、金属に対する還元剤であり且つ硫酸イオンの供給源である化合物であるものとしても、実施することができる。以下、硫酸イオンの供給源を硫酸化合物という。
本願発明においては、金属流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンを含み、その濃度を変化させることによって、金属流体中の金属に対する上記金属流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を変化させることができる。また、同時に金属流体及び/又は還元剤流体のpHを変化させることができるが、上記流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。そして、金属流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、金属流体中の金属に対する、上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を制御することによって、ひいては析出反応がなされる混合された流体における金属に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる金属微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。加えて、上記の混合した流体のpHを制御することによって、得られる金属微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。なお、被処理流動体の液性、特に、硫酸イオンを含まない金属流体又は還元剤流体については、特に限定されない。
本願の出願人は、硫酸イオンが、金属微粒子の結晶子及び粒子の成長を制御する作用を有し、その結果、金属流体中の金属に対する、金属流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比、より具体的には、上記金属流体と還元剤流体とが混合された流体における金属に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる金属微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。
ここで、金属流体中の金属とは、金属イオンや金属の錯イオンなどの状態を問わずに金属流体中に含まれる全ての金属を言う。
本願発明者は、酸の種類を変更して種々実験を行ったが、硫酸についてのみ、比率(d/D)を制御できることを知見した。この知見は、本願発明者にとって大きな驚きであったが、その理由は現在のところ解明されていない。本願発明者は、硫酸イオンや硫酸イオンを構成する硫化物イオンもしくは硫黄の何らかの特性が上記のd/Dの制御に関与しているのではないかと思料しているが、そのメカニズムは不明である。特に、硫酸とポリオール溶媒とを用いることで、上記の比率(d/D)をより確実に制御できることを知見した。本願発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
金属流体中の金属に対する、金属流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比は、特に限定されない。目的とする金属の粒子径及び結晶子径に応じて適宜選択できる。なお、金属流体中に硫酸イオンを含む場合には、溶媒の金属もしくは金属化合物及び硫酸化合物に対する溶解度と、金属流体中の金属に対する金属流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比とのバランスが大切である。
上述したように、本願発明においては、金属流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、金属流体と還元剤流体とが混合された流体における金属に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる金属微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御することができる。金属流体と還元剤流体とが混合された流体中の硫酸イオンの濃度の変更は、金属流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンの濃度、又は金属流体と還元剤流体との混合比を変更することで実施できる。例えば、還元剤流体中の硫酸化合物の濃度を変化させることによって還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させることができる。その時、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させると、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度だけではなくpHも変化させることもできる。金属流体と還元剤流体とが混合された流体のpHの変更は、金属流体及び/又は還元剤流体のpH、又は金属流体及び/又は還元剤流体の混合比を変更することで実施できる。また、金属流体中の硫酸イオンの濃度及びpHについても、還元剤流体と同様に変更可能である。上記金属流体と還元剤流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。さらに、金属流体と還元剤流体とが混合された流体中の金属の濃度の変更は、金属流体中の金属の濃度や、金属流体と還元剤流体との混合比を変更することで実施できる。
本願発明において、金属流体と還元剤流体のpHは、特に限定されず、目的とする金属微粒子の結晶子径又は粒子径などによって適宜選択すればよいが、金属流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、混合された流体のpHが、酸性条件下で一定となるように制御することも望ましい。
もちろん、上記の混合された流体における金属に対する硫酸イオンのモル比の制御に加えて、混合された流体中のpHを酸性条件下で変化させる制御も併用することも望ましい。これによって、粒子径、結晶子径、及び両者の比率に関して、よりダイナミックなレンジでの制御が可能となる。
(分散剤等)
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどをポリオールとして用いた場合には、ポリオールが分散剤としても作用する。
また、本願発明においては、金属流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、金属流体と還元剤流体とが混合された流体における金属に対する硫酸イオンのモル比と、金属流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に含まれ、金属流体と還元剤流体とが混合された流体におけるポリオールの濃度とを制御することによっても、得られる金属微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御するものとして実施することができる。
また、金属が溶解していることを条件に、金属流体や還元剤流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいてもよい。
本願発明は、(A)ニッケル微粒子の製造方法、(B)銀微粒子の製造方法、(C)銅微粒子の製造方法に限定するものではないことは、上記の通りであるが、より具体的な理解を高めるために、(A)〜(C)の順に、それぞれの製造方法について説明する。以下、(A)においては金属流体をニッケル化合物流体、(B)においては金属流体を銀含有流体、(C)においては金属流体を銅溶解流体と表記する。
(A)ニッケル微粒子の製造方法
以下、本願発明の実施の形態の一例であるニッケル微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
本願発明に係るニッケル化合物流体は、ニッケル化合物を溶媒に溶解または分子分散したものであり、ニッケル化合物流体には、硫酸イオンが含まれる。
本願発明に係る還元剤流体は、還元剤を溶媒に溶解または分子分散(以下、単に、溶解とする。)したものである。
また、ニッケル化合物流体と、還元剤流体との少なくとも何れか一方の流体には、ポリオールが含まれる。
ニッケル化合物は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、塩基性炭酸ニッケルやそれらの水和物などの種々のニッケル化合物を用いることができ、特に、後述する硫酸イオンの供給源ともなる硫酸ニッケルを用いることが望ましい。これらのニッケル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
還元剤は、特に限定されないが、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、硫酸ヒドラジン、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム金属塩、水素化トリエチルホウ素金属塩、グルコース、クエン酸、アスコルビン酸、タンニン酸、ジメチルホルムアミド、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)などを用いることができる。これらの還元剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ヒドラジンやヒドラジン一水和物など、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機または有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒は、特に限定されないが、イオン交換水やRO水、純水や超純水などの水や、メタノールやエタノールのようなアルコール系有機溶媒や、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、またはポリエチレングリコールやグリセリンなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系有機溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルのようなエステル系有機溶媒、ジメチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒、ヘキサンや、ペンタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒などが挙げられる。また、アルコール系有機溶媒やポリオール(多価アルコール)系溶媒を溶媒として用いた場合には、溶媒そのものが還元性物質としても働く利点があり、ニッケル微粒子を作製する場合には有効である。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明では、ニッケル化合物流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方の流体にポリオールが含まれる。ポリオールは、2価以上のアルコールであり、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、またはジエチレングリコールやグリセリン、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらのポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明においては、上述の還元剤とポリオールとを併用してニッケルイオンを還元するポリオール還元法を用いてニッケル微粒子を得るものである。
本願発明では、ニッケル化合物流体に硫酸イオンが含まれる。硫酸イオンの供給源としては、硫酸のほか、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウムなどの硫酸塩またはそれらの水和物や有機溶媒和物を用いることができる。上記硫酸ヒドラジンは、還元剤でもあり、硫酸イオンの供給源としても作用する。以下、硫酸ニッケルを除く硫酸イオンの供給源を硫酸化合物という。
本願発明においては、ニッケル化合物流体に硫酸イオンを含み、その濃度を変化させることによって、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比を変化させることができる。また、同時にニッケル化合物流体のpHを変化させることができるが、ニッケル化合物流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。そして、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体のpHとニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比とを制御することによって、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。本願の出願人は、硫酸イオンが、ニッケル微粒子の粒子の成長を制御して、結晶子の成長を助長する作用を有し、その結果、ニッケル化合物流体のpHとニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比とを制御することによって、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。ここで、ニッケル化合物流体中のニッケルとは、ニッケルイオンやニッケルの錯イオンなどの状態を問わずにニッケル化合物流体中に含まれる全てのニッケルを言う。
ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比は、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を良好に制御するために、1.00を超えていることが望ましい。その点において、ニッケルイオンと硫酸イオンとを等しく含む硫酸ニッケルまたはその水和物をニッケル化合物として用いることが好適である。ニッケル化合物を溶解する際に用いる溶媒によっては、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比を高めるために硫酸化合物を添加しすぎると、ニッケル化合物流体中のニッケルイオンと硫酸イオンとが作用して、例えば硫酸ニッケルなどの析出物が生じる。ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比と溶媒のニッケル化合物並びに硫酸化合物に対する溶解度とのバランスが大切である。
上述したように、本願発明においては、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体のpHとニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比とを制御することによって、得られるニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御することができる。ニッケル化合物流体中の硫酸イオンの濃度、例えば、ニッケル化合物流体中のニッケル化合物である硫酸ニッケルの濃度や硫酸化合物の濃度を変化させることによってニッケル化合物流体のpHを変化させることができるほか、ニッケル化合物流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。ニッケル化合物流体中の硫酸イオンの濃度を変化させると、ニッケル化合物流体中の硫酸イオンの濃度だけではなくpHも変化させることができる。
本願発明において、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHが酸性であり、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を良好に制御するために、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHは4.4以下が望ましく、4.1以下がより望ましい。なお、この制御を行なう流体の調製や混合等の操作は、室温にて行なうものであってもよいが、室温以外の環境での操作であっても、室温条件下でのpHが上記のものとなる条件が満たされておればよい。
本願発明において、還元剤流体のpHは、特に限定されない。還元剤の種類や濃度などによって適宜選択すればよい。
また、還元剤流体に、上記硫酸化合物を添加しても良い。
また、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHを酸性条件下で一定となるとの条件を維持しつつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が高くなるようにすることで得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が大きくなるよう制御し、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHを酸性条件下で一定となるとの条件を維持しつつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が低くなるようにすることで上記の比率(d/D)が小さくなるよう制御することが望ましい。なお、この制御を行なう流体の調製や混合等の操作は、室温にて行なうものであってもよいが、室温以外の環境での操作であっても、ニッケル化合物流体の 室温条件下でのpHを酸性条件下で一定となるとの条件が満たされておればよい。
また、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体の室温条件下でのpHが4.1以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.0を超えるものを用いることが望ましい。比率(d/D)が0.30以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.40以上で、結晶子径(d)が30nm以上、好ましくは35nm以上、より好ましくは40nm以上のニッケル微粒子を得る上で、好適である。
さらに、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を得る上では、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体のpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.1を超えるものを用いることが望ましく、比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子を得る上では、ニッケル化合物流体として、ニッケル化合物流体のpHが4.1を超えて4.4以下を示し、かつ、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.2を超えるものを用いることが望ましい。なお、この制御を行なう流体の調製や混合等の操作は、室温にて行なうものであってもよいが、室温以外の環境での操作であっても、室温条件下でのpHが上記のものとなる条件が満たされておればよい。
比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子や結晶子径が30nm以上のニッケル微粒子は、熱処理後の収縮を抑制することができることから、特に、セラミックコンデンサ用途に適している。
(分散剤等)
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどをポリオールとして用いた場合には、ポリオールが分散剤としても作用する。
ニッケル化合物流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比と、ニッケル化合物流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に含まれ、分散剤としても作用するポリオールの濃度とを制御することによっても、得られるニッケル微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。
その際、分散剤としても作用するポリオールは、ニッケル化合物流体に含まれることが望ましく、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.24では、ニッケル化合物流体中の分散剤としても作用するポリオールの濃度を高くすることで上記の比率(d/D)が高くなるよう制御し、ニッケル化合物流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比が1.00では、ニッケル化合物流体中の分散剤としても作用するポリオールの濃度を高くすることで上記の比率(d/D)が小さくなるよう制御することが望ましい。
また、ニッケル化合物流体や還元剤流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいてもよい。
(B)銀微粒子の製造方法
以下、本願発明の実施の形態の一例である銀微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
本願発明に係る銀含有流体は、銀もしくは銀化合物を溶媒に溶解又は分子分散(以下、単に、溶解とする。)したものである。
銀化合物には、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、炭酸銀、酸化銀、クエン酸銀、乳酸銀やそれらの水和物などの種々の原料を用いることができる。これらの銀化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
還元剤は、特に限定されないが、銀に対する還元剤の全てが使用可能である。ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、硫酸ヒドラジン、フェニルヒドラジン等のヒドラジン類や、ジメチルアミノエタノール、トリエチエルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミノボランなどのアミン類、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、タンニン酸、ギ酸又はそれらの塩などの有機酸類や、アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールやブタノール等の脂肪族モノアルコール類やターピネオール等の脂環族モノアルコール類等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、テトラエチレングリコール、ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。また、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化トリブチル錫、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、水素化ホウ素亜鉛、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどのヒドリド類や、グルコース等の糖類や、その他ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)、硫酸鉄などの遷移金属(チタンや鉄)の塩や、それらの水和物や溶媒和物などを用いることができる。これらの還元剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機又は有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒は、特に限定されないが、イオン交換水やRO水、純水や超純水などの水や、メタノールやエタノールのようなアルコール系有機溶媒や、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、又はポリエチレングリコールやグリセリンなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系有機溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルのようなエステル系有機溶媒、ジメチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒、ヘキサンや、ペンタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明では、上記銀含有流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に、すなわち、上記銀含有流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンが含まれる。硫酸イオンの供給源としては、硫酸のほか、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸鉄などの硫酸塩又はそれらの水和物や有機溶媒和物を用いることができる。上記硫酸鉄や硫酸ヒドラジンは、銀に対する還元剤でもあり、硫酸イオンの供給源としても作用する。金属イオンに対する還元剤の割合を変更することで、粒子径が変化することは公知であるが、加えて硫酸イオンを含む還元剤を用いることで、粒子径に対する結晶子径も制御出来るため、得られる銀微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を厳密且つ容易に制御できる。即ち、本願発明は、還元剤が、銀に対する還元剤であり且つ硫酸イオンの供給源である化合物であるものとしても、実施することができる。以下、硫酸イオンの供給源を硫酸化合物という。
本願発明においては、銀含有流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンを含み、その濃度を変化させることによって、銀含有流体中の銀に対する上記銀含有流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を変化させることができる。また、同時に銀含有流体及び/又は還元剤流体のpHを変化させることができるが、上記流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。そして、銀含有流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、銀含有流体中の銀に対する、上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を制御することによって、ひいては析出反応がなされる混合された流体における銀に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。加えて、上記の混合した流体のpHを制御することによって、得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。
本願の出願人は、硫酸イオンが、銀微粒子の結晶子及び粒子の成長を制御する作用を有し、その結果、銀含有流体中の銀に対する、銀含有流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比、より具体的には、上記銀含有流体と還元剤流体とが混合された流体における銀に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。ここで、銀含有流体中の銀とは、銀イオンや銀の錯イオンなどの状態を問わずに銀含有流体中に含まれる全ての銀を言う。
銀含有流体中の銀に対する、銀含有流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比は、特に限定されない。目的とする銀の粒子径及び結晶子径に応じて適宜選択できる。なお、銀含有流体中に硫酸イオンを含む場合には、溶媒の銀もしくは銀化合物及び硫酸化合物に対する溶解度と、銀含有流体中の銀に対する銀含有流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比とのバランスが大切である。
上述したように、本願発明においては、銀含有流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、銀含有流体と還元剤流体とが混合された流体における銀に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銀微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御することができる。銀含有流体と還元剤流体とが混合された流体中の硫酸イオンの濃度の変更は、銀含有流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンの濃度、又は銀含有流体と還元剤流体との混合比を変更することで実施できる。例えば、還元剤流体中の還元剤である硫酸鉄の濃度や硫酸化合物の濃度を変化させることによって還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させることができる。その時、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させると、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度だけではなくpHも変化させることもできる。銀含有流体と還元剤流体とが混合された流体のpHの変更は、銀含有流体及び/又は還元剤流体のpH、又は銀含有流体及び/又は還元剤流体の混合比を変更することで実施できる。また、銀化合物中の硫酸イオン濃度及びpHについても、還元剤流体と同様に変更可能である。上記銀含有流体と還元剤流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。
本願発明において、銀含有流体と還元剤流体のpHは、特に限定されない。また、銀含有流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合した際の、混合した流体のpHについても特に限定されない。目的とする銀微粒子の結晶子径又は粒子径などによって適宜選択すればよい。
また、銀含有流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、混合された流体のpHが、酸性条件下で一定となるように制御することも望ましい。もちろん、上記の混合された流体における銀に対する硫酸イオンのモル比の制御に加えて、被処理流動体中のpHを酸性条件下で変化させる制御も併用することによって、粒子径、結晶子径、及び両者の比率に関して、よりダイナミックなレンジでの制御が可能となる。
(分散剤等)
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、銀含有流体や還元剤流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいてもよい。
(C)銅微粒子の製造方法
以下、本願発明の実施の形態の一例である銅微粒子の製造方法について、具体的に説明する。
本願発明に係る銅溶解流体は、銅もしくは銅化合物を溶媒に溶解又は分子分散(以下、単に、溶解とする。)したものである。
銅化合物には、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、炭酸銅、酸化銅、水酸化銅、クエン酸銅、乳酸銅やそれらの水和物などの種々の原料を用いることができる。これらの銅化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
還元剤は、特に限定されないが、銅に対する還元剤の全てが使用可能である。ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、硫酸ヒドラジン、フェニルヒドラジン等のヒドラジン類や、ジメチルアミノエタノール、トリエチエルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミノボランなどのアミン類、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、タンニン酸、ギ酸又はそれらの塩などの有機酸類や、アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールやブタノール等の脂肪族モノアルコール類やターピネオール等の脂環族モノアルコール類等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、テトラエチレングリコール、ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。また、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化トリブチル錫、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、水素化ホウ素亜鉛、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどのヒドリド類や、グルコース等の糖類や、その他ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)、硫酸鉄などの遷移金属(チタンや鉄)の塩や、それらの水和物や溶媒和物などを用いることができる。これらの還元剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明に係る還元剤流体は、上記の還元剤を溶媒に溶解又は分子分散させて用いることが好ましいが、上記の還元剤が含まれていれば、他の状態であってもよい。
また、還元作用において一定のpH領域の確保を必要とする還元剤を用いる場合には、還元剤と共にpH調整物質を併用してもよい。pH調整物質の一例としては、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機又は有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩などが挙げられる。pH調整物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒は、特に限定されないが、イオン交換水やRO水、純水や超純水などの水や、メタノールやエタノールのようなアルコール系有機溶媒や、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、又はポリエチレングリコールやグリセリンなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系有機溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルのようなエステル系有機溶媒、ジメチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒、ヘキサンや、ペンタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本願発明では、上記銅溶解流体と還元剤流体との少なくとも何れか一方に、すなわち、上記銅溶解流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンが含まれる。硫酸イオンの供給源としては、硫酸のほか、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸銅や硫酸鉄などの硫酸塩又はそれらの水和物や有機溶媒和物を用いることができる。上記の硫酸銅は銅溶解流体の原料として用いることができると同時に、また、上記硫酸ヒドラジンは、銅に対する還元剤でもあると同時に、硫酸イオンの供給源としても作用する。金属イオンに対する還元剤の割合を変更することで、粒子径が変化することは公知であるが、加えて硫酸イオンを含む還元剤を用いることで、粒子径に対する結晶子径も制御出来るため、得られる銅微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を厳密且つ容易に制御できる。即ち、本願発明は、還元剤が、銅に対する還元剤であり且つ硫酸イオンの供給源である化合物であるものとしても、実施することができる。以下、硫酸イオンの供給源を硫酸化合物という。
本願発明においては、銅溶解流体及び/又は還元剤流体に硫酸イオンを含み、その濃度を変化させることによって、銅溶解流体中の銅に対する上記銅溶解流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を変化させることができる。また、同時に銅溶解流体及び/又は還元剤流体のpHを変化させることができるが、上記流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。そして、銅溶解流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、銅溶解流体中の銅に対する、上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を制御することによって、ひいては析出反応がなされる混合された流体における銅に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銅微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。加えて、上記の混合した流体のpHを制御することによって、得られる銅微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御することができる。
本願の出願人は、硫酸イオンが、銅微粒子の結晶子及び粒子の成長を制御する作用を有し、その結果、銅溶解流体中の銅に対する、銅溶解流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比、より具体的には、上記銅溶解流体と還元剤流体とが混合された流体における銅に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銅微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)を制御できたものと考えている。ここで、銅溶解流体中の銅とは、銅イオンや銅の錯イオンなどの状態を問わずに銅溶解流体中に含まれる全ての銅を言う。
銅溶解流体中の銅に対する、銅溶解流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比は、特に限定されない。目的とする銅の粒子径及び結晶子径に応じて適宜選択できる。なお、銅溶解流体中に硫酸イオンを含む場合には、溶媒の銅もしくは銅化合物及び硫酸化合物に対する溶解度と、銅溶解流体中の銅に対する銅溶解流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンのモル比とのバランスが大切である。
上述したように、本願発明においては、銅溶解流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、銅溶解流体と還元剤流体とが混合された流体における銅に対する硫酸イオンのモル比を制御することによって、得られる銅微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率を制御することができる。銅溶解流体と還元剤流体とが混合された流体中の硫酸イオンの濃度の変更は、銅溶解流体中及び/又は還元剤流体中の硫酸イオンの濃度、又は銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変更することで実施できる。例えば、還元剤流体中の硫酸化合物の濃度を変化させることによって還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させることができる。その時、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度を変化させると、還元剤流体中の硫酸イオンの濃度だけではなくpHも変化させることもできる。銅溶解流体と還元剤流体とが混合された流体のpHの変更は、銅溶解流体及び/又は還元剤流体のpH、又は銅溶解流体及び/又は還元剤流体の混合比を変更することで実施できる。また、銅溶解流体中の硫酸イオンの濃度及びpHについても、還元剤流体と同様に変更可能である。上記銅溶解流体と還元剤流体のpHについては、上述のpH調整物質を用いて別途調整することもできる。さらに、銅溶解流体と還元剤流体とが混合された流体中の銅の濃度の変更は、銅溶解流体中の銅の濃度や、銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変更することで実施できる。
本願発明において、銅溶解流体と還元剤流体のpHは、特に限定されず、目的とする銅微粒子の結晶子径又は粒子径などによって適宜選択すればよいが、銅溶解流体と還元剤流体とを後述するような方法で混合する際に、混合された流体のpHが、酸性条件下で一定となるように制御することも望ましい。
もちろん、上記の混合された流体における銅に対する硫酸イオンのモル比の制御に加えて、混合された流体中のpHを酸性条件下で変化させる制御も併用することも望ましい。これによって、粒子径、結晶子径、及び両者の比率に関して、よりダイナミックなレンジでの制御が可能となる。
上記のように、銅溶解流体と還元剤流体との被処理流動体を、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で混合するものであり、混合された流体のpHが酸性であり、銅溶解流体の溶媒として前述のポリオール溶媒を用いるとの条件下で、混合した被処理流動体中の銅に対する硫酸イオンのモル比を高くなるように制御することで、結晶子径と粒子径との比率(d/D)が大きくなるように、確実に制御することが容易となる。
(分散剤等)
本願発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したものなどを使用できる。特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、銅が溶解していることを条件に、銅溶解流体や還元剤流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいてもよい。
(流体処理装置)
本願発明においては、金属流体と、還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で混合する方法を用いて行うことが好ましく、例えば、特許文献10,11に示される装置と同様の原理の装置を用いて混合して、金属微粒子を析出させることが好ましい。
以下、図面を用いて流体処理装置の実施の形態について説明する。
(装置の説明)
図1〜図3に示す流体処理装置は、接近・離反可能な少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用部における処理用面の間で被処理物を処理するものであって、被処理流動体のうちの第1の被処理流動体である第1流体を処理用面間に導入し、上記第1流体を導入した流路とは独立し、処理用面間に通じる開口部を備えた別の流路から被処理流動体のうちの第2の被処理流動体である第2流体を処理用面間に導入して処理用面間で上記第1流体と第2流体を混合・攪拌して処理を行う装置である。なお、図1においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示しているが、本願発明において上下前後左右は相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。図2(A)、図3(B)においてRは回転方向を示している。図3(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
この装置は、被処理流動体として少なくとも2種類の流体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の流体については被処理物を少なくとも1種類含むものであり、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面を備え、これらの処理用面の間で上記の各流体を合流させて薄膜流体とするものであり、当該薄膜流体中において上記の被処理物を処理する装置である。この装置は、上述のとおり、複数の被処理流動体を処理することができるが、単一の被処理流動体を処理することもできる。
この流体処理装置は、対向する第1及び第2の、2つの処理用部10,20を備え、少なくとも一方の処理用部が回転する。両処理用部10,20の対向する面が、夫々処理用面となる。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える。
両処理用面1,2は、被処理流動体の流路に接続され、被処理流動体の流路の一部を構成する。この両処理用面1,2間の間隔は、適宜変更して実施することができるが、通常は、1mm以下、例えば0.1μmから50μm程度の微小間隔に調整される。これによって、この両処理用面1,2間を通過する被処理流動体は、両処理用面1,2によって強制された強制薄膜流体となる。
この装置を用いて複数の被処理流動体を処理する場合、この装置は、第1の被処理流動体の流路に接続され、当該第1被処理流動体の流路の一部を形成すると共に、第1被処理流動体とは別の、第2被処理流動体の流路の一部を形成する。そして、この装置は、両流路を合流させて、処理用面1,2間において、両被処理流動体を混合し、反応させるなどの流体の処理を行なう。なお、ここで「処理」とは、被処理物が反応する形態に限らず、反応を伴わずに混合・分散のみがなされる形態も含む。
具体的に説明すると、上記の第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構と、回転駆動機構と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、流体圧付与機構pとを備える。
図2(A)へ示す通り、この実施の形態において、第1処理用部10は、環状体であり、より詳しくはリング状のディスクである。また、第2処理用部20もリング状のディスクである。第1、第2処理用部10、20の材質は、金属の他、カーボン、セラミック、焼結金属、耐磨耗鋼、サファイア、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用することができる。この実施の形態において、両処理用部10,20は、互いに対向する第1、第2の処理用面1、2の少なくとも一部が鏡面研磨されている。
この鏡面研磨の面粗度は、特に限定されないが、好ましくはRa0.01〜1.0μm、より好ましくはRa0.03〜0.3μmとする。
少なくとも一方のホルダは、電動機などの回転駆動機構(図示せず)にて、他方のホルダに対して相対的に回転することができる。図1の50は、回転駆動機構の回転軸を示しており、この例では、この回転軸50に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。また、この例では、第1、第2ホルダ11、21を固定しておき、この第1、第2ホルダ11、21に対して第1、第2処理用部10、20が回転するようにしてもよい。
第1処理用部10と第2処理用部20とは、少なくとも何れか一方が、少なくとも何れか他方に、接近・離反可能となっており、両処理用面1,2は、接近・離反できる。
この実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が接近・離反するもので、第2ホルダ21に設けられた収容部41に、第2処理用部20が出没可能に収容されている。但し、これとは、逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近・離反するものであってもよく、両処理用部10,20が互いに接近・離反するものであってもよい。
この収容部41は、第2処理用部20の、主として処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、平面視において、円を呈する、即ち環状に形成された、溝である。この収容部41は、第2処理用部20を回転させ得る十分なクリアランスを持って、第2処理用部20を収容する。なお、第2処理用部20は軸方向に平行移動のみが可能なように配置してもよいが、上記クリアランスを大きくすることにより、第2処理用部20は、収容部41に対して、処理用部20の中心線を、上記収容部41の軸方向と平行の関係を崩すように傾斜して変位できるようにしてもよく、さらに、第2処理用部20の中心線と収容部41の中心線とが半径方向にずれるように変位できるようにしてもよい。
このように、3次元的に変位可能に保持するフローティング機構によって、第2処理用部20を保持することが望ましい。
上記の被処理流動体は、各種のポンプや位置エネルギーなどによって構成される流体圧付与機構pによって圧力が付与された状態で、第1導入部d1と、第2導入部d2から両処理用面1、2間に導入される。この実施の形態において、第1導入部d1は、環状の第2ホルダ21の中央に設けられた通路であり、その一端が、環状の両処理用部10、20の内側から、両処理用面1、2間に導入される。第2導入部d2は、第1の被処理流動体と反応させる第2の被処理流動体を処理用面1,2へ供給する。この実施の形態において、第2導入部d2は、第2処理用部20の内部に設けられた通路であり、その一端が、第2処理用面2にて開口する。流体圧付与機構pにより加圧された第1の被処理流動体は、第1導入部d1から、両処理用部10,20の内側の空間に導入され、第1処理用面1と第2処理用面2との間を通り、両処理用部10,20の外側に通り抜けようとする。これらの処理用面1,2間において、第2導入部d2から流体圧付与機構pにより加圧された第2の被処理流動体が供給され、第1の被処理流動体と合流し、混合、攪拌、乳化、分散、反応、晶出、晶析、析出などの種々の流体処理がなされ、両処理用面1,2から、両処理用部10,20の外側に排出される。なお、減圧ポンプにより両処理用部10,20の外側の環境を負圧にすることもできる。
上記の接面圧付与機構は、第1処理用面1と第2処理用面2とを接近させる方向に作用させる力を、処理用部に付与する。この実施の形態では、接面圧付与機構は、第2ホルダ21に設けられ、第2処理用部20を第1処理用部10に向けて付勢する。
上記の接面圧付与機構は、第1処理用部10の第1処理用面1と第2処理用部20の第2処理用面2とが接近する方向に押す力(以下、接面圧力という)を発生させるための機構である。この接面圧力と、流体圧力などの両処理用面1、2間を離反させる力との均衡によって、nm単位ないしμm単位の微小な膜厚を有する薄膜流体を発生させる。言い換えれば、上記力の均衡によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保つ。
図1に示す実施の形態において、接面圧付与機構は、上記の収容部41と第2処理用部20との間に配位される。具体的には、第2処理用部20を第1処理用部10に近づく方向に付勢するスプリング43と、空気や油などの付勢用流体を導入する付勢用流体導入部44とにて構成され、スプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とによって、上記の接面圧力を付与する。このスプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とは、いずれか一方が付与されるものであればよく、磁力や重力などの他の力であってもよい。この接面圧付与機構の付勢に抗して、流体圧付与機構pにより加圧された被処理流動体の圧力や粘性などによって生じる離反力によって、第2処理用部20は、第1処理用部10から遠ざかり、両処理用面間に微小な間隔を開ける。このように、この接面圧力と離反力とのバランスによって、第1処理用面1と第2処理用面2とは、μm単位の精度で設定され、両処理用面1,2間の微小間隔の設定がなされる。上記離反力としては、被処理流動体の流体圧や粘性と、処理用部の回転による遠心力と、付勢用流体導入部44に負圧を掛けた場合の当該負圧、スプリング43を引っ張りスプリングとした場合のバネの力などを挙げることができる。この接面圧付与機構は、第2処理用部20ではなく、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。
上記の離反力について、具体的に説明すると、第2処理用部20は、上記の第2処理用面2と共に、第2処理用面2の内側(即ち、第1処理用面1と第2処理用面2との間への被処理流動体の進入口側)に位置して当該第2処理用面2に隣接する離反用調整面23を備える。この例では、離反用調整面23は、傾斜面として実施されているが、水平面であってもよい。被処理流動体の圧力が、離反用調整面23に作用して、第2処理用部20を第1処理用部10から離反させる方向への力を発生させる。従って、離反力を発生させるための受圧面は、第2処理用面2と離反用調整面23とになる。
さらに、この図1の例では、第2処理用部20に近接用調整面24が形成されている。この近接用調整面24は、離反用調整面23と軸方向において反対側の面(図1においては上方の面)であり、被処理流動体の圧力が作用して、第2処理用部20を第1処理用部10に接近させる方向への力を発生させる。
なお、第2処理用面2及び離反用調整面23に作用する被処理流動体の圧力、即ち流体圧は、メカニカルシールにおけるオープニングフォースを構成する力として理解される。処理用面1,2の接近・離反の方向、即ち第2処理用部20の出没方向(図1においては軸方向)と直交する仮想平面上に投影した近接用調整面24の投影面積A1と、当該仮想平面上に投影した第2処理用部20の第2処理用面2及び離反用調整面23との投影面積の合計面積A2との、面積比A1/A2は、バランス比Kと呼ばれ、上記オープニングフォースの調整に重要である。このオープニングフォースについては、上記バランスライン、即ち近接用調整面24の面積A1を変更することで、被処理流動体の圧力、即ち流体圧により調整できる。
摺動面の実面圧P、即ち、接面圧力のうち流体圧によるものは次式で計算される。
P=P1×(K−k)+Ps
ここでP1は、被処理流動体の圧力即ち流体圧を示し、Kは上記のバランス比を示し、kはオープニングフォース係数を示し、Psはスプリング及び背圧力を示す。
このバランスラインの調整により摺動面の実面圧Pを調整することで処理用面1,2間を所望の微小隙間量にし被処理流動体による流動体膜を形成させ、生成物などの処理された被処理物を微細とし、また、均一な反応処理を行うのである。
なお、図示は省略するが、近接用調整面24を離反用調整面23よりも広い面積を持ったものとして実施することも可能である。
被処理流動体は、上記の微小な隙間を保持する両処理用面1,2によって強制された薄膜流体となり、環状の両処理用面1、2の外側に移動しようとする。ところが、第1処理用部10は回転しているので、混合された被処理流動体は、環状の両処理用面1,2の内側から外側へ直線的に移動するのではなく、環状の半径方向への移動ベクトルと周方向への移動ベクトルとの合成ベクトルが被処理流動体に作用して、内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
なお、回転軸50は、鉛直に配置されたものに限定するものではなく、水平方向に配位されたものであってもよく、傾斜して配位されたものであってよい。被処理流動体は両処理用面1,2間の微細な間隔にて処理がなされるものであり、実質的に重力の影響を排除できるからである。また、この接面圧付与機構は、前述の第2処理用部20を変位可能に保持するフローティング機構と併用することによって、微振動や回転アライメントの緩衝機構としても機能する。
流体の運動において、慣性力と粘性力の比を表す無次元数をレイノルズ数と呼び、以下の式で表される。
レイノルズ数Re=慣性力/粘性力=ρVL/μ=VL/ν
ここで、ν=μ/ρは動粘度、Vは代表速度、Lは代表長さ、ρは密度、μは粘度を示す。
そして、流体の流れは、臨界レイノルズ数を境界とし、臨界レイノルズ数以下では層流、臨界レイノルズ数以上では乱流となる。
上記流体処理装置の両処理用面1,2間は微小間隔に調整されるため、両処理用面1,2間に保有される流体の量は極めて少ない。そのため、代表長さLが非常に小さくなり、両処理用面1,2間を通過する薄膜流体の遠心力は小さく、薄膜流体中は粘性力の影響が大きくなる。従って、上記のレイノルズ数は小さくなり、薄膜流体は層流となる。
遠心力は、回転運動における慣性力の一種であり、中心から外側に向かう力である。遠心力は、以下の式で表される。
遠心力F=ma=mv2/R
ここで、aは加速度、mは質量、vは速度、Rは半径を示す。
上述の通り、両処理用面1,2間に保有される流体の量は少ないため、流体の質量に対する速度の割合が非常に大きくなり、その質量は無視できるようになる。従って、両処理用面1,2間にできる薄膜流体中においては重力の影響を無視できる。そのため、本来微粒子として析出させることが難しい比重差のある2種以上の金属元素を含む合金や複合金属化合物などの微粒子においても、両処理用面1,2間にできる薄膜流体中で析出させることができる。
第1、第2処理用部10、20は、その少なくともいずれか一方を、冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよく、図1では、第1、第2処理用部10、20に温調機構(温度調整機構)J1,J2を設けた例を図示している。また、導入される被処理流動体を冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよい。これらの温度は、処理された被処理物の析出のために用いることもでき、また、第1、第2処理用面1、2間における被処理流動体にベナール対流若しくはマランゴニ対流を発生させるために設定してもよい。
図2に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1には、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、即ち径方向について伸びる溝状の凹部13を形成して実施してもよい。この凹部13の平面形状は、図2(B)へ示すように、第1処理用面1上をカーブして或いは渦巻き状に伸びるものや、図示はしないが、真っ直ぐ外方向に伸びるもの、L字状などに屈曲あるいは湾曲するもの、連続したもの、断続するもの、枝分かれするものであってもよい。また、この凹部13は、第2処理用面2に形成するものとしても実施可能であり、第1及び第2の処理用面1,2の双方に形成するものとしても実施可能である。この様な凹部13を形成することによりマイクロポンプ効果を得ることができ、被処理流動体を第1及び第2の処理用面1,2間に吸引することができる効果がある。
この凹部13の基端は第1処理用部10の内周に達することが望ましい。この凹部13の先端は、第1処理用部面1の外周面側に向けて伸びるもので、その深さ(横断面積)は、基端から先端に向かうにつれて、漸次減少するものとしている。
この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
前述の第2導入部d2の開口部d20を第2処理用面2に設ける場合は、対向する上記第1処理用面1の平坦面16と対向する位置に設けることが好ましい。
この開口部d20は、第1処理用面1の凹部13からよりも下流側(この例では外側)に設けることが望ましい。特に、マイクロポンプ効果によって導入される際の流れ方向が処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも外径側の平坦面16に対向する位置に設置することが望ましい。具体的には、図2(B)において、第1処理用面1に設けられた凹部13の最も外側の位置から、径方向への距離nを、約0.5mm以上とするのが好ましい。特に、流体中から微粒子を析出させる場合には、層流条件下にて複数の被処理流動体の混合と、微粒子の析出が行なわれることが望ましい。開口部d20の形状は、図2(B)や図3(B)に実線で示すように円形状であってもよく、図2(B)に点線で示すように、リング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であってもよい。円環形状の開口部d20を処理用面2の中央の開口取り巻く同心円状に設けなくてもよい。また、開口部を円環形状とした場合、その円環形状の開口部は連続していてもよいし、不連続であってもよい。
円環形状の開口部d20を処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状に設けた場合、処理用面1,2間に導入する第2流体を同一条件で導入することができるため、より均一な拡散・反応・析出等の流体処理を行うことができる。微粒子を量産する場合には、開口部を円環形状とすることが好ましい。
この第2導入部d2は方向性を持たせることができる。例えば、図3(A)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、第2処理用面2に対して所定の仰角(θ1)で傾斜している。この仰角(θ1)は、0度を超えて90度未満に設定されており、さらに反応速度が速い反応の場合には1度以上45度以下で設置されるのが好ましい。
また、図3(B)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、上記の第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有するものである。この第2流体の導入方向は、処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向である。言い換えると、開口部d20を通る半径方向であって外方向の線分を基準線gとして、この基準線gから回転方向Rへの所定の角度(θ2)を有するものである。この角度(θ2)についても、0度を超えて90度未満に設定されることが好ましい。
この角度(θ2)は、流体の種類、反応速度、粘度、処理用面の回転速度などの種々の条件に応じて、変更して実施することができる。また、第2導入部d2に方向性を全く持たせないこともできる。
上記の被処理流動体の種類とその流路の数は、図1の例では、2つとしたが、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。図1の例では、第2導入部d2から処理用面1,2間に第2流体を導入したが、この導入部は、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。また、一種類の被処理流動体に対して、複数の導入部を用意してもよい。また、各処理用部に設けられる導入用の開口部は、その形状や大きさや数は特に制限はなく適宜変更して実施し得る。また、上記第1及び第2の処理用面間1、2の直前或いはさらに上流側に導入用の開口部を設けてもよい。
なお、処理用面1,2間にて上記処理を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
上記流体処理装置においては、析出・沈殿または結晶化のような処理が、図1に示すように、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1、2の間で強制的に均一混合しながら起こる。処理された被処理物の粒子径や単分散度は処理用部10、20の回転数や流速、処理用面1,2間の距離や、被処理流動体の原料濃度、または被処理流動体の溶媒種等を適宜調整することにより、制御することができる。
以下、上記の装置を用いて行う金属微粒子の製造方法の具体的な態様について説明する。
上記の流体処理装置において、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転を行う処理用面1,2の間に形成される薄膜流体中で、金属流体と、還元剤流体とを混合させて、金属微粒子を析出させる。その際、金属流体と還元剤流体の少なくとも何れか一方の被処理流動体には、硫酸イオンを含み、処理用面1,2間に導入される金属流体中の金属に対する上記混合した被処理流動体中の硫酸イオンのモル比とを制御する。
上記の流体処理装置を用いて金属微粒子、特にニッケル微粒子を析出させる際には、金属流体には、硫酸イオンを含み、金属流体と、還元剤流体との、少なくともいずれか一方の被処理流動体には、ポリオールを含み、処理用面1,2間に導入される金属流体のpHと金属流体中の金属に対する硫酸イオンのモル比とを制御してもよい。また、金属流体には硫酸イオンを含み、金属流体と還元剤流体との少なくともいずれか一方の被処理流動体にはポリオールを含み、処理用面1,2間に導入される金属流体と還元剤流体との少なくともいずれか一方の被処理流動体中のポリオールの濃度と金属流体中の金属に対する硫酸イオンのモル比とを制御してもよい。
金属微粒子の析出は、本願の図1に示す装置の、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間の薄膜流体中で強制的に均一混合しながら起こる。
まず、一つの流路である第1導入部d1より、第1流体として還元剤流体を、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に導入して、この処理用面間に第1流体から構成された薄膜流体である第1流体膜を作る。
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として金属流体を、処理用面1,2間に作られた第1流体膜に直接導入する。
上記のように、被処理流動体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力との圧力バランスによって距離を固定された処理用面1,2間にて、第1流体と第2流体とが混合され、金属微粒子の析出を行うことができる。
上述のように、第1導入部d1、第2導入部d2以外に第3導入部d3を処理装置に設けることもできるが、この場合にあっては、例えば各導入部から、金属流体、還元剤流体、硫酸イオンを含む流体をそれぞれ別々に処理装置に導入することが可能である。そうすると、各流体の濃度や圧力を個々に管理することができ、析出反応及び微粒子の粒子径をより精密に制御することができる。なお、各導入部へ導入する被処理流動体(第1流体〜第3流体)の組み合わせは、任意に設定できる。第4以上の導入部を設けた場合も同様であって、このように処理装置へ導入する流体を細分化できる。
さらに、第1、第2流体等の被処理流動体の温度を制御したり、第1流体と第2流体等との温度差(即ち、供給する各被処理流動体の温度差)を制御することもできる。供給する各被処理流動体の温度や温度差を制御するために、各被処理流動体の温度(処理装置、より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前の温度)を測定し、処理用面1,2間に導入される各被処理流動体の加熱又は冷却を行う機構を付加して実施することも可能である。
(温度)
本願発明において、金属流体と還元剤流体とを混合する際の温度は、特に限定されない。金属や金属化合物の種類、還元剤の種類、流体のpHなどによって適切な温度で実施することが可能である。
(酸化物や水酸化物を含む場合)
また、本願発明における金属微粒子は、酸化物や水酸化物、酸化水酸化物などを一部含んでも実施できる。
以下に実施例を挙げて本願発明を詳細に説明するが、本願発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、「中央から」というのは、図1に示す処理装置の「第1導入部d1から」という意味であり、第1流体は、第1導入部d1から導入される、前述の第1被処理流動体を指し、第2流体は、図1に示す処理装置の第2導入部d2から導入される、前述の第2被処理流動体を指す。また、第2導入部d2の開口部d20として、図2(B)に点線で示すように、処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状のものを用いた。
(A)ニッケル微粒子の製造方法に係る実施例及び比較例は、実施例及び比較例の番号の前に「A」を付して、(B)銀微粒子の製造方法に係る実施例及び比較例は、実施例及び比較例の番号の前に「B」を付して、(C)銅微粒子の製造方法に係る実施例及び比較例は、実施例及び比較例の番号の前に「C」を付して、それぞれの実施例を特定する。但し、表1〜表56においては、「A」「B」「C」を省略する。
(A)ニッケル微粒子の製造方法
まず、ニッケル微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
(ニッケル微粒子の析出)
図1に示される流体処理装置を用いて、ニッケル化合物流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中でニッケル微粒子を析出させる。
具体的には、中央から第1流体としてニッケル化合物流体を供給圧力=0.50MPaGで送液する。第1流体は図1の処理用部10の処理用面1と処理用部20の処理用面2との間の密封された空間(処理用面間)に、送り込まれる。処理用部10の回転数は3600 rpmである。第1流体は処理用面1,2間において強制された薄膜流体を形成し、処理用部10,20の外周より吐出される。第2流体として還元剤流体を処理用面1,2間に形成された薄膜流体に直接導入する。微小間隔に調製された処理用面1,2間においてニッケル化合物流体と還元剤流体とを混合させ、ニッケル微粒子を析出させる。ニッケル微粒子を含むスラリー(ニッケル微粒子分散液)が、処理用面1,2間より吐出される。
(微粒子回収方法)
処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液を磁石の上に置き、ニッケル微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で大気圧にて乾燥し、ニッケル微粒子の乾燥粉体を作製した。
第1流体及び第2流体のpHや、得られたニッケル微粒子の乾燥粉体について下記分析を行った。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認されたニッケル微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られたニッケル微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶盤は、47.3℃に確認されるピークを使用し、得られたニッケル回折パターンの44.5°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
(ICP分析:不純物元素検出)
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)によるニッケル微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
ニッケル微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例A、比較例Aの全てにおいて、ニッケル元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
(実施例A1〜A17)
表1に示す処方のニッケル化合物流体と、表2に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表3の処理条件にて混合し、ニッケル微粒子を析出させた。得られたニッケル微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表4に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、実施例A1〜A17の全てにおいて、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、実施例A1〜A14においては、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pH及び硫酸イオン濃度を変更するために、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製し、実施例A15〜A17においては、ポリエチレングリコール600に変えてポリビニルピロリドン(k=30)を用いた以外は、実施例A1〜A14と同様に調製した。
また、表1から後述する表16までの表中における略記号は、NiSO・6HOは硫酸ニッケル六水和物、EGはエチレングリコール、PEG600はポリエチレングリコール600、PVP(k=30)はポリビニルピロリドン(k=30)、PWは純水、HMHはヒドラジン一水和物、KOHは水酸化カリウム、HSOは硫酸、(NHSOは硫酸アンモニウム、KSOは硫酸カリウム、HNOは硝酸、KNOは硝酸カリウム、CHCOOHは酢酸、CHCOOKは酢酸カリウム、SO 2−は硫酸イオン、CHCOO−3は酢酸イオンである。
表4より、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を制御することによって、析出させたニッケル微粒子の粒子径が大きくなることを制御しつつ、結晶子径が大きくなることを助長させることを確認できた。また、結晶子径が大きくなるとともに粒子径も大きくなることを抑制することを確認できた。よって、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を制御できることを確認できた。
実施例A1〜A17の第1流体のpHは4.1以下である。第1流体のpHが4.1以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.0を超えるように制御することによって、比率(d/D)が0.30以上であり、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子や結晶子径が30nm以上のニッケル微粒子は、熱処理後の収縮を抑制できることから、セラミックコンデンサ用途に適したニッケル微粒子を製造できることを確認できた。
また、実施例A1〜A14で用いたポリエチレングリコール600をポリビニルピロリドン(k=30)に変更して実施した実施例A15〜A18においても、実施例A1〜A14と同様の結果が得られた。
また、実施例A1〜A14において、第1流体のpHが同じ場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を高くすることで、比率(d/D)を大きくすることが可能であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を低くすることで、 比率(d/D)を小さくすることが可能であることを確認した。
(実施例A18〜A23)
ニッケル化合物流体の処方を表5とし、処理条件を表6とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表7に示す。また、実施例A15〜A23の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
表7より、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を制御することによって、析出させたニッケル微粒子の粒子径が大きくなることを抑制しつつ、結晶子径が大きくなることを助長させることを確認できた。また、結晶子径が大きくなるとともに粒子径も大きくなることを抑制することを確認できた。よって、ニッケル微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を制御できることを確認できた。
実施例A18〜A23の第1流体のpHは4.1を超えて4.7以下である。第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.2を超えるように制御することによって、比率(d/D)が0.30以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。また、第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下の場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.1を超えるように制御することによって、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子を製造することができることを確認した。
また、実施例A18〜A23において、第1流体のpHが同じ場合は、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を高くすることで、 比率(d/D)を大きくすることが可能であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を低くすることで、 比率(d/D)を小さくすることが可能であることを確認した。
(比較例A1〜A7)
ニッケル化合物流体の処方を表8とし、処理条件を表9とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表10に示す。また、比較例A1〜A7の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pHのみを変更するために、別途硝酸及び/または硝酸カリウムを添加して調製した。
表10より、第1流体のpHが4.1以下、かつ、その送液温度が135℃±2℃であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定にした比較例A1,2で得られたニッケル微粒子は、その結晶子径(d)は30nm以上となったが、粒子径(D)も同時に大きくなり、その比率(d/D)は0.30を大きく下回った。また、第1流体のpHが4.1以下、かつ、その送液温度が153℃±2℃であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定にした比較例A3〜A5で得られたニッケル微粒子は、結晶子径(d)は30nm未満となり、比率(d/D)も0.30未満となった。さらに、第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下、かつ、その送液温度が153℃±2℃であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定にした比較例A6,A7で得られたニッケル微粒子も、結晶子径(d)は30nm未満となり、比率(d/D)も0.30未満となった。また、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンと硝酸イオンの合計のモル比が1.20を超えても、比率(d/D)は0.30以上とはならなかった。
第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定とし、第1流体のpHを変化させただけでは、比率(d/D)を制御することができないことを確認した。
(比較例A8〜A12)
ニッケル化合物流体の処方を表11とし、処理条件を表12とした以外は、実施例A1〜A17の場合と同様に実施して、ニッケル微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表13に示す。また、比較例A8〜A12の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、pHのみを変更するために、別途酢酸及び/または酢酸カリウムを添加して調製した。
表13より、第1流体のpHが4.1以下、かつ、その送液温度が153℃±2℃であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定にした比較例A8,A9,A10で得られたニッケル微粒子は、その結晶子径(d)は30nm以上となったが、粒子径(D)も同時に大きくなり、その比率(d/D)は0.30を大きく下回った。また、第1流体のpHが4.1を超えて4.4以下、かつ、その送液温度が153℃±2℃であり、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定にした比較例A11,12で得られたニッケル微粒子は、結晶子径(d)は30nm未満となり、比率(d/D)も0.30未満となった。また、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンと酢酸イオンの合計のモル比が1.20を超えても、比率(d/D)は0.3以上とはならなかった。
第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)を1.00と一定とし、第1流体のpHを変化させただけでは、比率(d/D)を制御することができないことを確認した。
(実施例A24〜A31)
表14に示す処方のニッケル化合物流体と、表15に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表16の処理条件にて混合し、ニッケル微粒子を析出させた。得られたニッケル微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表17に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、実施例A24〜A31の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示した。
ニッケル化合物流体は、エチレングリコールとポリエチレングリコール600と純水とを混合した混合溶媒に硫酸ニッケル六水和物を溶解し、実施例A24〜A28においては別途硫酸を同量添加し、実施例A29〜A31においては硫酸を添加せずに調製した。実施例A24〜A28と実施例A29〜A31のそれぞれにおいて、ニッケル化合物流体中のポリエチレングリコール600の濃度を変化させた。
表17より、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.24である、実施例A25〜A27においては、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、ニッケル微粒子の結晶子径(d)は大きくなる傾向を示したが、その粒子径(D)はさほど大きくならなかった。析出させたニッケル微粒子の粒子径が大きくなることを抑制しつつ、結晶子径が大きくなることを助長する傾向を確認した。また、結晶子径が大きくなるとともに粒子径も大きくなることを抑制する傾向を確認した。よって、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、比率(d/D)が大きくなる傾向を示すことを確認した。また、実施例A24〜A28においては、比率(d/D)が0.30以上であり、結晶子径(d)が30nm以上のニッケル微粒子が得られた。
また、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.00である、実施例A29〜A31においては、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、ニッケル微粒子の結晶子径(d)とその粒子径(D)は小さくなる傾向を示した。よって、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、比率(d/D)が小さくなる傾向を示すことを確認した。また、実施例A29〜A30においては、結晶子径(d)は30nm以上のニッケル微粒子が得られたが、その比率(d/D)は0.30を大きく下回った。
よって、第1流体中のニッケルに対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ni)が1.00を超えたところでは、ポリエチレングリコール600の濃度を高くすることによって、比率(d/D)を大きくさせる可能性が示された。
(B)銀微粒子の製造方法
次に、銀微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
(銀微粒子の析出)
図1に示される流体処理装置を用いて、銀含有流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中で銀微粒子を析出させる。
具体的には、中央から第1流体として銀含有流体又は還元剤流体のうちの何れか一方を供給圧力=0.50MPaGで送液する。第1流体は、図1の処理用部10の処理用面1と処理用部20の処理用面2との間の密封された空間(処理用面間)に、送り込まれる。処理用部10の回転数は500 rpmである。第1流体は処理用面1,2間において強制された薄膜流体を形成し、処理用部10,20の外周より吐出される。第2流体として銀含有流体又は還元剤流体のうちの何れか他方を処理用面1,2間に形成された薄膜流体に直接導入する。微小間隔に調整された処理用面1,2間において銀含有流体と還元剤流体とを混合させ、銀微粒子を析出させる。銀微粒子を含むスラリー(銀微粒子分散液)が、処理用面1,2間より吐出される。
(微粒子回収方法)
処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液を静置し、銀微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で−0.10MPaGにて乾燥し、銀微粒子の乾燥粉体を作製した。
第1流体及び第2流体のpHや、得られた銀微粒子の乾燥粉体について下記測定・分析を行った。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認された銀微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られた銀微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶盤は、47.3°に確認されるピークを使用し、得られた銀微粒子の回折パターンにおける44.5°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
(ICP分析:不純物元素検出)
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)による銀微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
銀微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例B、比較例Bの全てにおいて、銀元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
(実施例B1〜B17)
表18に示す処方の還元剤流体と、表19に示す処方の銀含有流体とを、図1に示す流体処理装置にて表20の処理条件にて混合し、銀微粒子を析出させた。得られた銀微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表21に示す。なお、第1流体の供給圧力と処理用部10の回転数は、上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、実施例B1〜B17の全てにおいて、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、pHや硫酸イオン濃度を変更するために、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製した。
また、表18から後述する表30までの表中における略記号は、AgNOは硝酸銀、FeSO・7HOは硫酸鉄(II)七水和物、HSOは硫酸、(NHSOは硫酸アンモニウム、KSOは硫酸カリウム、HNOは硝酸、KNOは硝酸カリウム、CHCOOHは酢酸、CHCOOKは酢酸カリウム、PWは純水、SO 2−は硫酸イオン、NO は硝酸イオン、CHCOOは酢酸イオン、Agは銀である。また実施例B1,B4で作製した銀微粒子のSEM写真を図4,図5に示す。また、表21に得られた結果の内、実施例B1〜B13の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図6に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図7に示す。また、実施例B14〜B17では、第1流体である還元剤流体の流量を変更することで、混合された被処理流動体中における銀に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例B14〜B17の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図8に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図9に示す。
表21及び図6,図7より、第2流体中の銀に対する、第1流体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を制御することによって、析出させた銀微粒子の粒子径を制御しつつ、結晶子の成長を制御出来ることを確認できた。また、結晶子径が小さくなるとともに粒子径も小さくなることを抑制することを確認できた。よって、銀微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を制御できることを確認できた。また、図6、図7より、還元剤流体(第1流体)のpHが、酸性条件下で一定とした条件下では、銀含有流体中の銀に対する還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が小さくなる傾向を示すことがわかる。また、この傾向は、酸性条件下でpHの変化に関わらず、維持されるものであることがわかる。従って、上記のモル比と上記pHとの双方を制御することで、よりダイナミックなレンジでの上記の比率(d/D)の制御が可能となることがわかる。さらに、銀含有流体中の銀に対する還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が小さくなる傾向を示すことを確認した。
実施例B14〜B17による銀含有流体と還元剤流体との混合比を変化させた場合も、図8,図9より、実施例B1〜B13の場合と同様に、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が小さくなることがわかる。さらに、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が小さくなることを確認した。
(比較例B1〜B7)
還元剤流体の処方を表22とし、処理条件を表23とした以外は、実施例B1〜B17の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表24に示す。また、比較例B1〜B7の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、実施例B1〜B17で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途硝酸及び/又は硝酸カリウムの硝酸化合物を添加して調製した。また、表24にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図10に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図11に示す。
表24及び図10,図11より、第2流体中の銀に対する、第1流体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を一定として、別途、第1流体中に硝酸化合物を加えた場合、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計に対する、結晶子径及び粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
(比較例B8〜B14)
還元剤流体の処方を表25とし、処理条件を表26とした以外は、実施例B1〜B17の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表27に示す。また、比較例B8〜B14の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物を溶解し、実施例B1〜B17で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途酢酸及び/又は酢酸カリウムの酢酸化合物を添加して調製した。また、表27にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第一流体のpH毎にプロットしたグラフを図12に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図13に示す。
表27及び図12,図13より、第2流体中の銀に対する、第1流体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を一定として、別途、第1流体中に酢酸化合物を加えた場合、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンとのモル比の総計に対する、結晶子径並びに粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
(比較例B15〜B17)
実施例B7〜B9の比較として、バッチ式の試験を行った。還元剤流体である第1流体の処方を表28とした。第1流体と第2流体との混合は、表29に記載した量の第1流体をビーカー中で撹拌しながら、第2流体を表29に記載の流速にて1分間投入し、銀含有流体と還元剤流体とを混合させ、銀微粒子を析出させた。銀微粒子を含むスラリー(銀微粒子分散液)が得られた。第2流体の処方、粒子の回収方法並びに分析方法については、実施例B1〜B17と同様の方法にて行った。
表30より、バッチ式の試験においては、第2流体中の銀に対する、第1流体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を変化させても、粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)に大きな変化は見られなかった。特に、実施例B7〜B9と比べて、比較例B15〜B17で得られた銀微粒子の結晶子径(d)が小さくなった。
(実施例B18〜B30)
表31に示す処方の銀含有流体と、表32に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表33の処理条件にて混合し、銀微粒子を析出させた。得られた銀微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表34に示す。なお、第1流体の供給圧力は、上述の通りであり、処理用部10の回転数は1700rpmである。また、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、実施例B18〜B30の全てにおいて、酸性を示した。銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、別途硫酸化合物として、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムを添加して調製した。還元剤流体は、純水に硫酸鉄(II)七水和物及び硫酸を溶解して調製した。
また、表31から表40までの表中における略記号は、EGはエチレングリコール、PWは純水、AgSOは硫酸銀、FeSO・7HOは硫酸鉄(II)七水和物、HSOは硫酸、(NHSOは硫酸アンモニウム、KSOは硫酸カリウム、HNOは硝酸、KNOは硝酸カリウム、CHCOOHは酢酸、CHCOOKは酢酸カリウム、SO 2−は硫酸イオン、NO は硝酸イオン、CHCOOは酢酸イオン、Agは銀である。また、表34に得られた結果の内、実施例B18〜B26の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図14に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図15に示す。また、実施例B27〜B30では、第2流体である還元剤流体の流量を変更することで、混合された被処理流動体中における銀に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例B27〜B30の結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図16に、横軸に、銀に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図17に示す。
表34及び図14,図15より、第1流体中の銀に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を制御することによって、析出させた銀微粒子の粒子径を制御しつつ、結晶子の成長を制御出来ることを確認できた。また、結晶子径が大きくなるとともに粒子径も大きくなることを抑制することを確認できた。よって、銀微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を制御できることを確認できた。また、図14,図15より、銀含有流体(第1流体)のpHが、酸性条件下で一定となるとの条件を与え、銀含有流体中の銀に対する混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなる傾向を示すことがわかる。また、この傾向は、酸性条件下でpHの変化に関わらず、維持されるものであることがわかる。従って、上記のモル比率と上記pHとの双方を制御することで、よりダイナミックなレンジでの上記の比率(d/D)の制御が可能となることがわかる。さらに、銀含有流体中の銀に対する混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が大きくなる傾向を示すことを確認した。
図16、図17より、銀含有流体と還元剤流体との混合比を変化させた場合も、実施例B18〜B26場合と同様に、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなることがわかる。さらに、混合した被処理流動体中の銀に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銀微粒子の結晶子径(d)が大きくなることを確認した。
(比較例B18〜B26)
銀含有流体の処方を表35とし、処理条件を表36とした以外は、実施例B18〜B30の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表37に示す。また、比較例B18〜B26の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、実施例B18〜B30で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途硝酸及び/又は硝酸カリウムの硝酸化合物を添加して調製した。また、表37にて得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図18に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図19に示す。
表37及び図18,図19より、第1流体中の銀に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を一定として、別途、第1流体中に硝酸化合物を加えた場合、銀に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計に対する、結晶子径及び粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
(比較例B27〜B35)
銀含有流体の処方を表38とし、処理条件を表39とした以外は、実施例B18〜B30の場合と同様に実施して、銀微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表40に示す。また、比較例B27〜B35の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銀微粒子分散液は、酸性を示した。
銀含有流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銀を溶解し、実施例B18〜B30で加えた別途の硫酸化合物とは異なり、別途酢酸及び/又は酢酸カリウムの酢酸化合物を添加して調製した。また、表40に得られた結果について、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図20に、横軸に、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Ag)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図21に示す。
表40及び図20,図21より、第1流体中の銀に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Ag)を一定として、別途、第1流体中に酢酸化合物を加えた場合、銀に対する硫酸イオンと酢酸イオンとのモル比の総計に対する、結晶子径並びに粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
上記の実施例Bから明らかなように、本願発明においては、銀もしくは銀化合物の溶媒として、水のみを用いる場合には、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が小さくなるよう制御し、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を低くすることで上記の比率(d/D)が大きくなるよう制御することができる。
また、銀もしくは銀化合物の溶媒として、エチレングリコールなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒に代表される前述の有機溶媒などの非水溶媒を用いた場合、また、非水溶媒と水とを併用する場合には、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を低くすることで得られる銀微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が小さくなるよう制御し、銀含有流体中の銀に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなるよう制御することができるものである。
なお、これらの制御を行う流体の調製や混合等の操作は、室温にて行っても良いが、室温以外の環境で行っても良い。
(C)銅微粒子の製造方法
次に、銅微粒子の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
(銅微粒子の析出)
図1に示される流体処理装置を用いて、銅溶解流体と還元剤流体とを、対向して配設された、接近・離反可能な処理用面をもつ、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中で銅微粒子を析出させる。
具体的には、中央から第1流体として銅溶解流体又は還元剤流体のうちの何れか一方を供給圧力=0.50MPaGで送液する。第1流体は、図1の処理用部10の処理用面1と処理用部20の処理用面2との間の密封された空間(処理用面間)に、送り込まれる。処理用部10の回転数は1700 rpmである。第1流体は処理用面1,2間において強制された薄膜流体を形成し、処理用部10,20の外周より吐出される。第2流体として銅溶解流体又は還元剤流体のうちの何れか他方を処理用面1,2間に形成された薄膜流体に直接導入する。微小間隔に調整された処理用面1,2間において銅溶解流体と還元剤流体とを混合させ、銅微粒子を析出させる。銅微粒子を含むスラリー(銅微粒子分散液)が、処理用面1,2間より吐出される。
(微粒子回収方法)
処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液を静置し、銅微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃で−0.10MPaGにて乾燥し、銅微粒子の乾燥粉体を作製した。
第1流体及び第2流体のpHや、得られた銅微粒子の乾燥粉体について下記測定・分析を行った。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、粒子径については、SEM観察にて確認された銅微粒子100個の一次粒子径の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,0.016step/10sec、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)である。得られた銅微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。シリコン多結晶板は、47.3°に確認されるピークを使用し、得られた銅微粒子の回折パターンにおける43.0°付近のピークにScherrerの式を当てはめた。
(ICP分析:不純物元素検出)
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)による銅微粒子の乾燥粉体中に含まれる元素の定量には、島津製作所製のICPS−8100を用いた。
銅微粒子の乾燥粉体を硝酸に溶解させた溶液を測定した。実施例C、比較例Cの全てにおいて、銅元素以外の元素は全て検出範囲外であった。
(実施例C1〜C14)
表41に示す処方の銅溶解流体と、表42に示す処方の還元剤流体とを、図1に示す流体処理装置にて表43の処理条件にて混合し、銅微粒子を析出させた。得られた銅微粒子の乾燥粉体を分析した。結果を表44に示す。なお、第1流体の供給圧力及び処理用部10の回転数は上述の通りである。また、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、実施例C1〜C14の全てにおいて、酸性を示した。銅溶解流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銅五水和物を溶解し、硫酸化合物を添加して調製した。還元剤流体は、実施例C1〜C9においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解して調製し、実施例C10〜C14においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解し、硫酸を添加して調製した。
また、表41から後述する表56までの表中における略記号は、EGはエチレングリコール、PWは純水、CuSO・5HOは硫酸銅五水和物、Ascorbic AcidはL−アスコルビン酸、HSOは硫酸、(NHSOは硫酸アンモニウム、KSOは硫酸カリウム、HNOは硝酸、KNOは硝酸カリウム、CHCOOHは酢酸、CHCOOKは酢酸カリウム、SO 2−は硫酸イオン、NO は硝酸イオン、CHCOOは酢酸イオン、Cuは銅である。また、表44に得られた結果の内、実施例C1〜C9の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図22に、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図23に示す。また、実施例C10〜C12では、第1流体の処方は、実施例C7と同様とし、第2流体である還元剤流体中の硫酸の濃度を変更することで、混合された被処理流動体中における銅に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例C10〜C12の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図24に、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図25に示す。また、実施例C11、C13、C14では、第1流体である銅溶解流体の流量を変更し、銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変化させることで、混合された被処理流動体中における銅に対する硫酸イオンのモル比を変化させた。実施例C11,C13,C14の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図26に、横軸に、銅に対する硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図27に示す。また、実施例C7において得られた銅微粒子のSEM写真を図36に示す。
表44及び図22,図23より、第1流体中の銅に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)を制御することによって、析出させた銅微粒子の粒子径を制御しつつ、結晶子の成長を制御出来ることを確認できた。また、結晶子径が大きくなる度合いに比べて粒子径が大きくなる度合いを抑制できることを確認した。よって、銅微粒子の粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を制御できることを確認できた。また、図22,図23より、銅溶解流体(第1流体)のpHが、酸性条件下で一定となるとの条件を与え、銅溶解流体中の銅に対する混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比を高くなるようにすることで上記の比率(d/D)が大きくなる傾向を示すことがわかる。また、この傾向は、酸性条件下でpHの変化に関わらず、維持されるものであることがわかる。従って、上記のモル比率と上記pHとの双方を制御することで、よりダイナミックなレンジでの上記の比率(d/D)の制御が可能となることがわかる。さらに、銅溶解流体中の銅に対する混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比を高くなるようにすることで、析出させた銅微粒子の結晶子径(d)が大きくなる傾向を示すことを確認した。
図24、図25より、第2流体中の硫酸化合物である硫酸の濃度を変化させた場合も、実施例C1〜C9の場合と同様に、混合した被処理流動体中の銅に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなることがわかる。さらに、混合した被処理流動体中の銅に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで、析出させた銅微粒子の結晶子径(d)が大きくなることを確認した。
図26、図27より、銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変化させた場合も、実施例C1〜C9の場合と同様に、混合した被処理流動体中の銅に対する硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなることがわかる。
さらに、混合した被処理流動体中の硫酸イオンの濃度を高くすることで、析出させた銅微粒子の結晶子径(d)が大きくなることを確認した。
(比較例C1〜C12)
第1流体である銅溶解流体の処方を表45とし、第2流体である還元剤流体の処方を表46、処理条件を表47とした以外は、実施例C1〜C14の場合と同様に実施して、銅微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表48に示す。また、比較例C1〜C12の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、酸性を示した。
銅溶解流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銅五水和物を溶解し、実施例C1〜C14で加えた硫酸化合物とは異なり、別途硝酸及び/又は硝酸カリウムの硝酸化合物を添加して調製した。還元剤流体は、比較例C1〜C9においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解して調製し、比較例C10〜C12においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解し、硝酸を添加して調製した。また、表48に得られた結果のうち、比較例C1〜C9の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図28に、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図29に示す。また比較例C10〜C12では、第2流体である還元剤流体中に硝酸を溶解し、かつ、第2流体である還元剤流体の流量を変更して、銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変化させることで、混合された被処理流動体中における銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンとのモル比の総計を変化させた。比較例C10〜C12の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図30に、横軸に、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計(SO 2−+NO /Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図31に示す。
表48及び図28〜図31より、第1流体中の銅に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)を一定として、別途、第1流体又は第2流体中に硝酸化合物を加えた場合、銅に対する硫酸イオンと硝酸イオンのモル比の総計に対する、結晶子径及び粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
(比較例C13〜C24)
第1流体である銅溶解流体の処方を表49とし、第2流体である還元剤流体の処方を表50、処理条件を表51とした以外は、実施例C1〜C14の場合と同様に実施して、銅微粒子の乾燥粉体を得た。結果を表52に示す。また、比較例C13〜C24の全てにおいて、処理用面1,2間より吐出された銅微粒子分散液は、酸性を示した。
銅溶解流体は、エチレングリコールと純水に硫酸銅五水和物を溶解し、実施例C1〜C14で加えた硫酸化合物とは異なり、別途酢酸及び/又は酢酸カリウムの酢酸化合物を添加して調製した。還元剤流体は、比較例C13〜C21においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解して調製し、比較例C22〜C24においては、純水にL−アスコルビン酸を溶解し、酢酸を添加して調製した。また、表52に得られた結果のうち、比較例C13〜21の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図32に、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)を第1流体のpH毎にプロットしたグラフを図33に示す。また比較例C22〜C24では、第2流体である還元剤流体中に酢酸を溶解し、かつ、第2流体である還元剤流体の流量を変更して、銅溶解流体と還元剤流体との混合比を変化させることで、混合された被処理流動体中における銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンとのモル比の総計を変化させた。比較例C22〜C24の結果について、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計(SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、粒子径に対する結晶子径の比率(d/D)をプロットしたグラフを図34に、横軸に、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンのモル比の総計((SO 2−+CHCOO/Cu)、縦軸に、結晶子径(d)をプロットしたグラフを図35に示す。
表52及び図32〜図35より、第1流体中の銅に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)を一定として、別途、第1流体又は第2流体中に酢酸化合物を加えた場合、銅に対する硫酸イオンと酢酸イオンとのモル比の総計に対する、結晶子径並びに粒子径に対する結晶子径の関係性は見いだせず、上記の比率(d/D)を制御することは出来なかった。
(比較例C25〜C27)
実施例C7〜C9の比較として、バッチ式の試験を行った。第1流体である銅溶解流体の処方を表53とした。第2流体である還元剤流体の処方を表54とした。第1流体と第2流体との混合は、表55に記載した液量の第1流体をビーカー中で撹拌しながら、第2流体を表55に記載の送液流量にて1分間投入し、銅溶解流体と還元剤流体とを混合させ、銅微粒子を析出させた。銅微粒子を含むスラリー(銅微粒子分散液)が得られた。粒子の回収方法並びに分析方法については、実施例C1〜C14と同様の方法にて行った。
表56より、バッチ式の試験においては、第1流体中の銅に対する、混合された被処理流動体中の硫酸イオンのモル比(SO 2−/Cu)を変化させても、粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)に大きな変化は見られなかった。特に、実施例C7〜C9と比べて、比較例C25〜C27で得られた銅微粒子の結晶子径(d)が小さくなった。
上記の実施例Cから明らかなように、銅溶解流体の溶媒として、エチレングリコールなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒に代表される前述の有機溶媒などの非水溶媒と水とを併用した場合には、銅溶解流体中の銅に対する上記の混合した被処理流動体中の硫酸イオンのモル比を低くすることで得られる銅微粒子の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が小さくなるよう制御し、銅溶解流体中の銅に対する上記の混合した流体中の硫酸イオンのモル比を高くすることで上記の比率(d/D)が大きくなるよう制御することができるものである。
また、実施例Cには示していないが、銅溶解流体の溶媒として、上記の非水溶媒のみを用いた場合においても、同様の傾向が確認された。
なお、これらの制御を行う流体の調製や混合等の操作は、室温にて行っても良いが、室温以外の環境で行っても良い。
以上のように、3種の金属を用いた実施例を示したが、ニッケルはイオン化傾向が水素よりも大きく、銅はイオン化傾向が水素よりもやや小さく、銀はイオン化傾向が小さい金属である。また、銀と銅は周期表の第11属同族元素であるが、銀は第5周期の貴金属であるのに対して、銅は第4周期の卑金属である。また、ニッケルは、銅と同じく第4周期であるが、銅とは異なる鉄族元素である。従って、これらの3種の金属はそれぞれその特性が異なるにもかかわらず、上記の粒子径(D)に対する結晶子径(d)の比率(d/D)が可能となったものであり、本願発明の実施によって、これら3種以外の金属にあっても、同様な制御が可能であると考えられる。
また、(A)ニッケル微粒子の製造方法の実施例においては、金属流体であるニッケル化合物流体は酸性、還元剤流体は塩基性を示すものを用い、処理用面1,2間より吐出されたニッケル微粒子分散液は、塩基性を示すものとした。上記のpH条件については、銀や銅、その他の金属でも同様に実施することができる。
一方、(B)銀微粒子の製造方法と(C)銅微粒子の製造方法のそれぞれの実施例においては、金属流体である銀含有流体と銅溶解流体は酸性、還元剤流体は酸性を示すものを用い、処理用面1,2間より吐出された銀又は銅微粒子分散液は、酸性を示すものとした。上記のpH条件については、ニッケルやその他の金属でも同様に実施することができる。
1 第1処理用面
2 第2処理用面
10 第1処理用部
11 第1ホルダ
20 第2処理用部
21 第2ホルダ
d1 第1導入部
d2 第2導入部
d20 開口部

Claims (11)

  1. 少なくとも2種類の被処理流動体を用いるものであり、
    そのうちで少なくとも1種類の被処理流動体は、金属もしくは金属化合物を溶媒に溶解させた金属流体であり、
    上記以外の被処理流動体で少なくとも1種類の被処理流動体は、還元剤を含む還元剤流体であり、
    上記被処理流動体のうち少なくとも1種類の被処理流動体には、硫酸イオンを含むものであり、
    上記の被処理流動体を、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で混合し、上記金属流体中の金属若しくは金属化合物に由来する金属微粒子を析出させるものであり、
    上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比を制御することによって、上記金属微粒子の粒子径(D)に対する上記金属微粒子の結晶子径(d)の比率(d/D)を制御するものであることを特徴とする、金属微粒子の製造方法。
  2. 上記被処理流動体のうち少なくとも1種類の被処理流動体には、ポリオールを含むことを特徴とする、請求項1記載の金属微粒子の製造方法。
  3. 上記金属流体中の金属の濃度と、上記混合がなされる前の上記被処理流動体中の硫酸イオンの濃度と、上記混合がなされる上記被処理流動体の混合比とを制御することによって、上記の混合した被処理流動体中の金属と硫酸イオンとのモル比を制御することを特徴とする、請求項1または2に記載の金属微粒子の製造方法。
  4. 上記溶媒は、ポリオールを含有するポリオール溶媒であり、
    上記の混合した被処理流動体中の金属に対する硫酸イオンのモル比を高くなるように制御することで上記の比率(d/D)が大きくなるように制御することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の金属微粒子の製造方法。
  5. 上記制御に際して、上記の混合した被処理流動体のpHを制御することによって、上記金属微粒子の粒子径(D)に対する上記金属微粒子の結晶子径(d)の比率(d/D)を制御するものであることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の金属微粒子の製造方法。
  6. 上記の制御に際して、上記金属流体中の金属に対する、上記金属流体中及び/又は上記還元剤流体中の硫酸イオンのモル比を変化させることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の金属微粒子の製造方法。
  7. 上記制御に際して、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHを、酸性条件下で一定となるように制御することを特徴とする、請求項5に記載の金属微粒子の製造方法。
  8. 上記制御に際して、上記少なくとも2つの処理用面間に導入される上記金属流体及び/又は上記還元剤流体のpHを、酸性条件下で変化させることを特徴とする、請求項5に記載の金属微粒子の製造方法。
  9. 上記金属もしくは金属化合物は、ニッケル、銀、銅、ニッケル化合物、銀化合物、銅化合物から選ばれる少なくとも何れか1種であることを特徴とする、請求項1〜8に記載の金属微粒子の製造方法。
  10. 上記少なくとも2つの処理用面として、第1処理用面と第2処理用面とを備え、
    第1処理用面と第2処理用面との間に上記被処理流動体を導入し、
    この被処理流動体の圧力により第1処理用面と第2処理用面とを離反させる方向に移動させる力を発生させ、この力によって、第1処理用面と第2処理用面との間が微小間隔に保たれ、この微小間隔に保たれた第1処理用面と第2処理用面との間を通過する上記被処理流動体が上記薄膜流体を形成することを特徴とする、請求項1〜9の何れかに記載の金属微粒子の製造方法。
  11. 上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか一方の被処理流動体が、上記薄膜流体を形成しながら上記少なくとも2つの処理用面間を通過し、
    上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか一方の被処理流動体が流される流路とは独立した別途の導入路を備えており、
    上記少なくとも2つの処理用面の少なくとも何れか一方に上記別途の導入路に通じる開口部を少なくとも一つ備え、
    上記金属流体と上記還元剤流体のうちの何れか他方の被処理流動体を、上記開口部から上記少なくとも2つの処理用面間に導入して、上記金属流体と上記還元剤流体とを、上記薄膜流体中で混合することを特徴とする、請求項1〜10の何れかに記載の金属微粒子の製造方法。
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