実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における投写型画像表示装置10の構成を示す図である。図1に示す投写型画像表示装置10は、光を出射する照明光学系101と、照明光学系101から出射された光を受けて映像光を出射する表示デバイス3と、表示デバイス3から出射された映像光をスクリーン5に拡大投写(投影)する投写光学系100とを有している。
照明光学系101は、光源6と、光源6から出射された光の強度分布を光軸に直交する断面内で均一化する光均一化素子7と、光均一化素子7から出射された光を表示デバイス3に導く照明光学素子(リレー光学素子)8とを有している。
光源6は、例えば、超高圧水銀ランプ、LED(発光ダイオード)またはレーザー等で構成される。光均一化素子7は、例えば、角柱状のロッドインテグレーター、中空のライトパイプまたはフライアイインテグレーター等で構成される。照明光学素子8は、光均一化素子7により強度分布が均一化された光を、所定の角度と面積で表示デバイス3に照射するものであり、例えばレンズまたはミラー等で構成される。
表示デバイス3は、例えば、DLP(デジタル・ライト・プロセッシング)チップ、透過型液晶または反射型液晶等で構成される。
投写光学系100は、全体として正のパワーを有する第1レンズ群1と、全体として負のパワーを有する第2レンズ群2とを備えている。符号4は、投写光学系100の光軸を示している。この光軸4は、投写型画像表示装置10の全体の光軸を規定している。ここでは、投写光学系100は、表示デバイス3側に略テレセントリックに構成されている。
第1レンズ群1は、それぞれ正のパワーを有するレンズ11およびレンズ12を備えている。第2レンズ群2は、それぞれ負のパワーを有するレンズ21(第1レンズ)およびレンズ22(第2レンズ)を備えている。レンズ11とレンズ12の間には、瞳Pを有している。
第2群レンズ2のレンズ21およびレンズ22は、光軸方向(すなわち光軸4の方向)にそれぞれ移動可能に構成されている。なお、「移動可能」とは、レンズ21およびレンズ22が、それぞれ光軸方向に位置調節が可能であることを言う。レンズ21およびレンズ22は、後述するように、所望の像面を形成するようにそれぞれの位置が調整され、位置決めされる。
スクリーン5は、例えば、投写光学系100から投写された映像光を観測者の方向に偏向させるフレネルスクリーンと、例えば半円柱レンズを多数配列した視野角を広げるためのレンチキュラーレンズとを組み合わせたものである。なお、スクリーン5のサイズは、例えば10インチ(221mm×125mm)〜20インチ(443mm×249mm)が考えられるが、これに限定されるものではない。
光源6から出射された光は、光均一化素子7によって光強度分布が均一化されると共に、表示デバイス3の形状に合わせてビーム形状が整形された照明光となり、照明光学素子8を経て表示デバイス3に照射される。表示デバイス3に照射された光は、表示デバイス3で空間変調されることにより映像光となる。表示デバイス3によって生成された映像光は、投写光学系100により拡大投写され、スクリーン5に画像が表示される。
なお、表示デバイス3としてDLPチップを用いる場合には、表示デバイス3を照明する照明光と表示デバイス3で生成された映像光との光路を分離するために、表示デバイス3とレンズ11の間に全反射プリズムを配置してもよい。また、表示デバイス3として反射型液晶を用いる場合には、照明光と映像光の光路を分離するために、例えば、表示デバイス3とレンズ11の間に、偏光プリズムやワイヤーグリッド偏光板を配置してもよい。また、3つの表示デバイス3を用い、それぞれの表示デバイス3で生成した映像光をXプリズム(ダイクロイックプリズム)で合成する、3板式を採用することもできる。
投写型画像表示装置に用いられる投写光学系は、一般に、投写距離を短縮するため広画角が求められる。そこで、投写光学系100は、表示デバイス3側から順に、表示デバイス3からの映像光を収束させるための正のパワーを有する第1レンズ群1と、画角を拡大するための負のパワーを有する第2レンズ群2を配置している。
表示デバイス3で生成された映像光は、正のパワーを持つレンズ11により屈折・収束され、瞳Pが形成される。瞳Pから広がった光は、正のパワーを持つレンズ12により屈折・収束される。レンズ12からの光は、第2レンズ群2のレンズ21およびレンズ22により大きく拡大される。広角での歪曲収差を補正するために、光軸4からの光線高の大きいレンズ22を非球面形状とすることが望ましい。
図2は、投写光学系100の作用を説明するための図である。図2(a)は、表示デバイス3からの映像光を平面形状のスクリーン51に投影する場合を示す。図2(b)は、表示デバイス3からの映像光を、投写光学系100側に凹面形状のスクリーン52に投影する場合を示す。図2(c)は、表示デバイス3からの映像光を、投写光学系100側に凸面形状のスクリーン53に投影する場合を示す。
本実施の形態では、スクリーン5の形状(平面、凹面、凸面)に応じて、第2レンズ群2のレンズ21およびレンズ22のそれぞれの光軸方向の位置を調整する。そのため、図2(a)、図2(b)および図2(c)において、レンズ形状は全て同一であるが、レンズ12とレンズ21との距離(Aa,Ab,Ac)、および、レンズ21とレンズ22との距離(Ba,Bb,Bc)が変化している。
図2(a)において、表示デバイス3と光軸4との交点から出射した光(軸上光と称する)が、第1レンズ群1により屈折された後、第2レンズ群2のレンズ21に入射する際の広がり角をu1aとし、レンズ21から出射される際の広がり角(レンズ22に入射する際の広がり角に等しい)をu2aとする。さらに、レンズ22から出射される際の広がり角をu3aとする。
また、図2(a)において、表示デバイス3の周縁から出射した光(周縁光と称する)が、第1レンズ群1により屈折された後、レンズ21に入射する際の広がり角をv1aとし、レンズ21から出射される際の広がり角(レンズ22に入射する際の広がり角に等しい)をv2aとする。さらに、レンズ22から出射される際の広がり角をv3aとする。
なお、図から明らかなように、軸上光および周縁光は、第1レンズ群1を透過した後は、いずれも収束光となっている。収束光の「広がり角」とは、集光スポット側から見た広がり角を意味する。また、収束光の広がり角は、「収束角」と称する場合もある。
同様に、図2(b)において、軸上光がレンズ21に入射する際の広がり角をu1bとし、レンズ21から出射される際の広がり角をu2bとし、レンズ22から出射される際の広がり角をu3bとする。また、周縁光がレンズ21に入射する際の広がり角をv1bとし、レンズ21から出射される際の広がり角をv2bとし、レンズ22から出射される際の広がり角をv3bとする。
同様に、図2(c)において、軸上光がレンズ21に入射する際の広がり角をu1cとし、レンズ21から出射される際の広がり角をu2cとし、レンズ22から出射される際の広がり角をu3cとする。また、周縁光がレンズ21に入射する際の広がり角をv1cとし、レンズ21から出射される際の広がり角をv2cとし、レンズ22から出射される際の広がり角をv3cとする。
第1レンズ群1(レンズ11,12)は移動しないため、レンズ12からレンズ21に入射する光の広がり角は、図2(a),(b)および(c)とも同じ(すなわち、u1a=u1b=u1c、v1a=v1b=v1c)である。
図2(a)〜図2(c)において、レンズ12とレンズ21との距離Aa,Ab,Ac、および、レンズ21とレンズ22との距離Ba,Bb,Bcは、以下の式(1)および(2)を満足する。
Ac>Aa>Ab ・・・(1)
Bb>Ba>Bc ・・・(2)
また、軸上光の広がり角u1a,u1b,u1c,u2a,u2b,u2c,u3a,u3b,u3cおよび周縁光の広がり角v1a,v1b,v1c,v2a,v2b,v2c,v3a,v3b,v3cは、以下の式(3)〜(14)を満足する。
u1a=u1b=u1c ・・・(3)
u2c>u2a>u2b ・・・(4)
u3c>u3a>u3b ・・・(5)
v1a=v1b=v1c ・・・(6)
v2c>v2a>v2b ・・・(7)
v3c>v3a>v3b ・・・(8)
u1a−u2a>v1a−v2a ・・・(9)
u1b−u2b>v1b−v2b ・・・(10)
u1c−u2c>v1c−v2c ・・・(11)
(u1c−u2c)−(v1c−v2c)>(u1a−u2a)−(v1a−v2a)
>(u1b−u2b)−(v1b−v2b) ・・・(12)
(v2c−v3c)−(u2c−u3c)>(v2a−v3a)−(u2a−u3a)
>(v2b−v3b)−(u2b−u3b) ・・・(13)
(v1c−v3c)−(u1c−u3c)>(v1a−v3a)−(u1a−u3a)
>(v1b−v3b)−(u1b−u3b) ・・・(14)
平面形状のスクリーン51に映像光を投写する場合(図2(a))を基準とすると、凹面形状のスクリーン52に映像光を投写する場合(図2(b))には、レンズ21は、よりレンズ12に近い位置に配置される。逆に、凸面形状のスクリーン53に映像光を投写する場合(図2(c))には、レンズ21は、よりレンズ12から離れた位置に配置される(式(1))。
つまり、レンズ21は、図2(a)の状態から図2(b)の状態に変化する過程で、表示デバイス3側に移動し、図2(a)の状態から図2(c)の状態に変化する過程で、スクリーン5側に移動している。
また、レンズ22は、図2(a)を基準として、図2(b)では、よりレンズ21から離れた位置に配置される。逆に、図2(c)では、レンズ22は、よりレンズ21に近い位置に配置される(式(2))。
つまり、レンズ22は、図2(a)の状態から図2(b)の状態に変化する過程で、スクリーン5側に移動し、図2(a)の状態から図2(c)の状態に変化する過程で、表示デバイス3側に移動している。
図2(a)〜(c)において、軸上光および周縁光とも、負のパワーを有するレンズ21およびレンズ22を順に透過するにつれて、広がり角が次第に小さくなっている。これにより、画角を大きく拡大することができ、画面サイズに対する投写距離の比を小さくすることができる。
ここで、レンズに入射する光の広がり角と出射する光の広がり角との差を、当該レンズの発散パワーと定義する。レンズ21の発散パワーは、軸上光ほど大きく、周縁光ほど小さい(式(9)〜(11))。以下では、投写光学系100により形成される像面の形状について説明する。
まず、図2(a)では、レンズ21,22を透過した軸上光および周縁光は、平面形状のスクリーン51上に結像する。
図2(b)では、図2(a)と比較して、レンズ21が、よりレンズ12に近い位置にあるため、周縁光はより光軸4に近い位置でレンズ21に入射する。そのため、レンズ21の発散パワーは、図2(a)と比較して、軸上光よりも周縁光の方が相対的により大きくなる。その結果、図2(b)では、レンズ21の発散パワーの軸上光と周縁光との差は、図2(a)と比較して小さくなる(式(12))。さらに、図2(b)では、図2(a)と比較して、レンズ22が、よりレンズ21から離れた位置にあるため、周縁光はより光軸4から離れた位置でレンズ22に入射する。
レンズ22は、図2(a)と比較して、図2(b)の方が、周縁光の発散パワーが小さくなるような形状を有している。また、レンズ22の発散パワーは、軸上光の方が周縁光よりも小さいが、図2(a)と図2(b)との間ではほとんど差がない。従って、この図2(b)では、図2(a)と比較して、レンズ22の発散パワーの軸上光と周縁光との差が小さくなる(式(13))。
以上から、レンズ21およびレンズ22を合わせた発散パワーは、図2(a)よりも図2(b)の方が、軸上光と周縁光との差が小さくなる(式(14))。すなわち、図2(b)では、図2(a)と比較して、軸上光の焦点位置に対する周縁光の焦点位置が、レンズ22側(図中左側)にシフトする。その結果、表示デバイス3の投写光学系100による像面は、全体として、投写光学系100に対して凹面形状となる。
このように、レンズ21,22を図2(b)に示すように移動させることにより、投写光学系100によって形成される像面が、平面から凹面に変化する。言い換えると、投写光学系100から出射された映像光は、その周縁光の焦点位置が、軸上光の焦点位置よりも(光軸4上において)投写光学系100側に接近している。
なお、発散パワーが小さくなっても、レンズ22に入射する光のスポットサイズ(入射光のレンズ入射面での断面積)が大きくなれば、像面がレンズ22から離れた位置(図中右側)に形成されることも考えられる。しかしながら、図2(b)では、図2(a)よりもレンズ22がレンズ21から離れているため、レンズ21から出射されてレンズ22に入射する光のスポットサイズは、図2(b)の方が小さくなり、従って像面は、よりレンズ22の近く(図中左側)に形成される。
また、図2(c)では、図2(a)と比較して、レンズ21が、よりレンズ12から離れた位置にあるため、周縁光はより光軸4から離れた位置でレンズ21に入射する。そのため、レンズ21の発散パワーは、図2(a)と比較して、軸上光よりも周縁光の方が相対的により小さくなる。その結果、レンズ21の発散パワーの軸上光と周縁光との差は、図2(a)と比較して大きくなる(式(12))。さらに、図2(c)では、図2(a)と比較して、レンズ22が、よりレンズ21に近い位置にあるため、周縁光はより光軸4に近い位置でレンズ22に入射する。
レンズ22は、図2(a)と比較して、図2(c)の方が、周縁光の発散パワーが大きくなるような形状を有している。また、上述したように、レンズ22の発散パワーは、軸上光の方が周縁光よりも小さいが、図2(a)と図2(c)との間ではほとんど差がない。従って、この図2(c)では、図2(a)と比較して、レンズ22の発散パワーの軸上光と周縁光との差が大きくなる(式(13))。
以上から、レンズ21およびレンズ22を合わせた発散パワーは、図2(a)よりも図2(c)の方が、軸上光と周縁光との差が大きくなる(式(14))。すなわち、図2(c)では、図2(a)と比較して、軸上光の焦点位置に対する周縁光の焦点位置が、レンズ22から離れる側(図中右側)にシフトする。その結果、表示デバイス3の投写光学系100による像面は、全体として、投写光学系100に対して凸面形状となる。
このように、レンズ21,22を、図2(c)に示すように移動させることにより、投写光学系100によって形成される像面が、平面から凸面に変化する。言い換えると、投写光学系100から出射された映像光は、その軸上光の焦点位置が、周縁光の焦点位置よりも(光軸4上において)投写光学系100側に接近している。
以上のように構成されているため、レンズ21,22の光軸方向の位置を調整することにより、図2(a)〜(c)に示したように所望の曲率の像面を得ることができ、様々なスクリーン形状に対応することができる。
すなわち、投写型画像表示装置10が配置される周囲の形状等を考慮してスクリーン形状を決定し、当該スクリーン形状に対応した形状(曲率)の像面を形成するように、レンズ21,22の位置を調整し、レンズ21,22を位置決め(固定)することができる。これにより、要求されたスクリーン形状の変化にも臨機応変に対応することができ、汎用性が向上する。
なお、ここでは、レンズ21,22は、光軸4に沿ってそれぞれ位置調整が可能に構成されていると説明したが、レンズ21,22をそれぞれ光軸方向に移動させる駆動機構を設けてもよい。
また、ここでは、レンズ21,22は、それぞれ一枚のレンズで構成しているが、これに限らず、それぞれ複数のレンズで構成してもよい。その場合、当該複数のレンズには正のパワーを有するレンズが含まれていてもよい。また、レンズ21,22が複数のレンズで構成されている場合、レンズ21に入射してからレンズ21から出射されるまでの間、あるいはレンズ22に入射してからレンズ22から出射されるまでの間に、当該複数のレンズの作用により、軸上光あるいは周縁光が部分的に発散してもよい。
数値実施例.
以下、本実施の形態の投写光学系100の数値実施例について説明する。表1には、投写光学系100の光学データを示す。
表1に示した光学データにおける面番号Siの欄には、図2(a)に示した符号Siに対応させて、最も物体側(表示デバイス3側)にある構成要素の面を1番目として、像側に向かって順次増加するように符号を付したi番目(i=1〜9)の面の番号を示している。面番号Siの欄では、表示デバイス3をOBJとし、スクリーン5をIMAとする。また、面番号S3は、瞳Pを表わしている。
また、表1の曲率半径Riの欄には、物体側からi番目の面の曲率半径の値を示す。面間隔Diの欄には、物体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸上の間隔を示す。曲率半径Riおよび面間隔Diの値の単位はミリメートル(mm)である。Nd,νdの欄には、d線(587.6nm)に対する屈折率およびアッベ数の値をそれぞれ示す。
表1の(a)、(b)および(c)は、それぞれ図2(a)、(b)および(c)における光学データに相当する。
また、表1において、面番号の右上に付された記号「*」は、そのレンズ面が非球面形状であることを示す。ここでは、第1レンズ群1のレンズ11の両面(S1,S2)およびレンズ12の両面(S4,S5)、第2レンズ群2のレンズ22の両面(S8,S9)が非球面形状となっている。表2に、非球面データを示す。
表2に示す非球面データとしては、以下の式(15)によって表される非球面形状の式における各係数k,Aiの値を記す。Zは、光軸から半径r(mm)離れた位置での非球面サグ量(深さ:mm)である。
Z1(r)=C・r2/{1+(1−(1+k)・C2・r2)1/2}+ΣAi・ri
(i=1〜n)・・・(15)
但し、
k:コーニック係数
C:面頂点での曲率
Ai:i次の非球面係数
また、表2において、記号Eは、その次に続く数値が10を底としたべき指数であることを示す。例えば、「1.0E−03」は、「1.0×10−3」を示す。
なお、表1および表2に示した光学データは、本実施の形態における投写光学系100の機能を説明するためのものに過ぎない。例えば、ここでは非球面レンズを多用しているが、これを複数の球面レンズに置き換えることも可能である。また、単一の硝材を用いているのは、説明の便宜上単一波長を前提としているからであり、色収差等の諸収差を補正するために、屈折率やアッベ数の異なる種々の硝材を組み合わせてもよい。
表3は、表1および表2に示した投写光学系100において、図2(a)、図2(b)および図2(c)に示した状態でのレンズ21の入射光および出射光について、軸上光および周縁光の広がり角および発散パワーを示す。同様に、表4は、レンズ22の入射光および出射光について、軸上光および周縁光の広がり角および発散パワーを示す。
表3および表4には、図2(a)、図2(b)および図2(c)で用いた光束の広がり角の符号をカッコ書で示している。
なお、表3および表4には記載していないが、表示デバイス3から出射される際の軸上光の広がり角は、軸上光、周縁光とも8.6°である。この値は、図2(a)〜(c)に共通である。但し、前記の広がり角は、この値に限らず、光源の発散角や所望の輝度に合わせて設定することができる。また、表4の「両レンズ合わせた発散パワー」は、レンズ21およびレンズ22を合わせた発散パワーに相当する。
表3および表4から、上述した式(3)〜(14)が満足されていることが理解されるであろう。
以上説明したように、実施の形態1の投写光学系100は、レンズ21,22を移動させることにより、像面の曲率を変更する(すなわち、像面を、平面、凹面または凸面に変更する)ことができる。従って、所望のスクリーン形状に合った像面を得ることができる。また、このようにスクリーン形状に合った像面が得られるため、映像光の焦点ずれによる性能劣化を抑制することができる。
図3は、実施の形態1における投写型画像表示装置を、車載用の投写型画像表示装置に適用した例を示す。図3に示した例では、車両90のダッシュボード91の上部に、スクリーン5が配置されている。また、ダッシュボード91に設けた凹部92には、投写型画像表示装置10(図1に示した光源6、光均一化素子7、照明光学素子8、表示デバイス3および投写光学系100)が収容されている。運転席93に座った運転者(乗員)Dは、スクリーン5に表示された画像情報を視認することができる。
上記の通り、投写光学系100(図1〜図2)は、レンズ21,22の位置調整により、像面の曲率を変更することができるため、ダッシュボード91の形状に合うスクリーン形状を得ることができる。ここでは、ダッシュボード91の形状に合わせて、投写光学系100側に凹面となるスクリーン形状(図2(b)に示したスクリーン52の形状)が選択されている。
図3に示した例はあくまで一例であり、例えば、後部座席の乗員が観賞できるように、車室94の天井にスクリーン5を設置してもよいし、ヘッドアップディスプレイのようにフロントガラスに画像を投写してもよい。
また、上述した投写型画像表示装置を、車載用以外の投写型画像表示装置として用いてもよいことは言うまでもない。何れの場合も、投写光学系100のレンズ21,22の位置を調整して像面の曲率を変更することによって、様々なスクリーン形状に対応することができる。
なお、実施の形態1における投写光学系100は、表示デバイス3側に略テレセントリック(入射瞳が無限遠)に構成されているが、本発明は、このような投写光学系に限定されるものではない。例えば、表示デバイスに近いレンズ近傍に瞳が存在するノンテレセントリックな構成を採用してもよい。このように構成すれば、表示デバイスに近いレンズの外径を小さくすることができ、表示デバイス起因の回折光やその他の不要光が投写光学系に入射するのを防止し、コントラストを向上させることができる。
また、実施の形態1では、投写光学系100の第2レンズ群2に属する2つのレンズ、すなわちレンズ21,22を移動(位置調整)することにより、像面の曲率を変化させるように構成したが、3つ以上のレンズを移動するようにしてもよい。
また、実施の形態1では、表示デバイス3と投写光学系100の光軸との交点から出射された光を投写するものとしたが、このような構成に限らず、表示デバイスを、投写光学系の光軸との交点を有さない程度に大きくオフセットして配置してもよい。この場合には、表示デバイスから出射される光のうち、投写光学系の光軸に最も近い光を軸上光として、上述した実施の形態1と同様に考えることができる。
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2における投写型画像表示装置20の構成を示す図である。照明光学系(光源を含む)等は、実施の形態1(図1)と共通であるため、図示を省略する。図1に示した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付す。光路については、軸上光の光路と、周縁光の光路(すなわち、光軸4から最も距離の離れた表示デバイス3上の点を通り、投写画像の最周縁部に到達する光路)を示している。
投写型画像表示装置20は、投写光学系200を備える。投写光学系200は、表示デバイス側(以下、縮小側と称する)からスクリーン5側(以下、拡大側と称する)に向かって、順に、正のパワーを有する第1レンズ群1と、負のパワーを有する第2レンズ群2とを備える。第1レンズ群1は、縮小側から順に、正のパワーを有するサブレンズ群11と、正のパワーを有するサブレンズ群12とを備える。サブレンズ群11は、縮小側から順に、両凸レンズ201、両凸レンズ202、両凹レンズ203、両凸レンズ204、拡大側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ205、両凸レンズ206、および両凹レンズ207を備える。サブレンズ群12は、縮小側から順に、拡大側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ208、両凸レンズ209を備える。第2レンズ群2は、両凹レンズ210,211および非球面レンズ212を備える。なお、図4において、符号3は、表示デバイス(ここではDLPチップ)のカバーガラスの位置を示す。PSは、表示デバイス3とレンズ11との間に配置された全反射プリズムを示す。
図5は、投写光学系200の作用を説明するための図である。図5(a)は、表示デバイス3からの映像光を平面形状のスクリーン51に投影する場合を示す。図5(b)は、表示デバイス3からの映像光を、投写光学系200側に凹面形状のスクリーン52に投影する場合を示す。図5(c)は、表示デバイス3からの映像光を、投写光学系200側に凸面形状のスクリーン53に投影する場合を示す。
本実施の形態では、スクリーン5の形状(平面、凹面、凸面)に応じて、第2レンズ群2の光軸方向の位置を調整する。そのため、図5(a)、図5(b)および図5(c)において、レンズ形状は全て同一であるが、レンズ12と第2レンズ群2との距離(Ca,Cb,Cc)、および、第2レンズ群2とスクリーン51,52,53との距離(Da,Db,Dc)が変化している。
図6は、光軸上の像面位置の変化を説明する図である。図6において、第1レンズ群1のサブレンズ群12は、薄肉レンズとして模式的に表されている。2a,2b,2cは、図5(a)、図5(b)および図5(c)の位置にある第2レンズ群2を、薄肉レンズとして模式的に表したものである。u3a,u3b,u3cは、軸上光が第2レンズ群2a,2b,2cから出射される際のそれぞれの収束角である。Fa,Fb,Fcは、第2レンズ群2a,2b,2cから出射される軸上光のそれぞれの集光点(すなわち光軸上の像面位置)である。
サブレンズ群12と第2レンズ群2a,2b,2cとの距離Ca,Cb,Cc、第2レンズ群2a,2b,2cとスクリーン5との距離(すなわち第2レンズ群と軸上光の焦点との距離)Da,Db,Dc、軸上光の収束角u3a,u3b,u3cは、以下の式(16)〜(18)を満足する。
Cb<Ca<Cc・・・(16)
Dc<Da<Db・・・(17)
u3b<u3a<u3c・・・(18)
図5(b)のように像面が投写光学系200側に凹となる場合、図5(a)と比較して、第2レンズ群2bがサブレンズ群12に接近する方向に移動する(Cb<Ca)。その際、第2レンズ群2bに入射する軸上光は収束状態であるので、軸上光が第2レンズ群2bに入射する領域は、軸上光が第2レンズ群2aに入射する領域よりも大きくなる。第2レンズ群2は、軸上光の入射する領域が大きいほど、より強い負パワーで屈折される(軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い負パワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、図5(a)よりも強い負パワーで屈折される。その結果、軸上光の収束角はより小さくなり(u3b<u3a)、位置Faと比較して、より第2レンズ群2bから離間した位置Fbで集光する(Da<Db)。よって、図5(a)と比較して、光軸上の像面位置が第2レンズ群2bから離間する方向に移動する。
一方、図5(c)のように像面が投写光学系200側に凸となる場合、図5(a)と比較して、第2レンズ群2cがサブレンズ群12から離間する方向に移動する(Ca<Cc)。その際、第2レンズ群に入射する軸上光は収束状態であるので、軸上光が第2レンズ群2cに入射する領域は、軸上光が第2レンズ群2aに入射する領域よりも小さくなる。第2レンズ群2は、軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い負パワーで屈折される(軸上光の入射する領域が大きいほど、より強い負パワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、図5(a)よりも弱い負パワーで屈折される。その結果、軸上光の収束角はより大きくなり(u3a<u3c)、位置Faと比較して、より第2レンズ群2cに近い位置Fcで集光する(Dc<Da)。よって、図5(a)と比較して、光軸上の像面位置が第2レンズ群2cに接近する。
第2レンズ群2の横倍率は、縮小側から拡大側に向けて拡大倍率であり、近軸理論によると、縦倍率は横倍率の2乗に比例する。すなわち、第2レンズ群2の移動量に対して、像面位置の移動量は大きくなる。よって、光軸上の像面の位置は、縮小側から拡大側に向かってFc,Fa,Fbの順となる(Dc<Da<Db)。
図7は、画面周辺部の像面位置の変化を説明する図である。図6に示した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付している。v3a,v3b,v3cは、周縁光が第2レンズ群2a,2b,2cから出射される際のそれぞれの収束角である。Ga,Gb,Gcは、第2レンズ群2a,2b,2cから出射される周縁光のそれぞれの集光点(すなわち画面周辺部の像面位置)である。
第2レンズ群と周縁光の焦点との距離Ea,Eb,Ec、および、周縁光の収束角v3a,v3b,v3cは以下の式(19)および(20)を満足する。
Ec<Ea<Eb・・・(19)
v3b<v3a<v3c・・・(20)
図5(b)のように像面が投写光学系200側に凹となる場合、図5(a)と比較して、第2レンズ群2bがサブレンズ群12に接近する方向に移動する(Cb<Ca)。その際、第2レンズ群2bに入射する周縁光は収束状態であるので、周縁光が第2レンズ群2bに入射する領域は、周縁光が第2レンズ群2aに入射する領域よりも大きくなる。第2レンズ群2は、周縁光の入射する領域が大きいほど、より強い負パワーで屈折される(周縁光の入射する領域が小さいほど、より弱い負パワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、図5(a)よりも強い負パワーで屈折される。その結果、周縁光の収束角はより小さくなり(v3b<v3a)、位置Gaに対して、より第2レンズ群2bから離間した位置Gbで集光する(Ea<Eb)。よって、図5(a)と比較して、画面周辺部の像面位置が第2レンズ群2bから離間する。
一方、図5(c)のように像面が投写光学系200側に凸となる場合、図5(a)と比較して、第2レンズ群2cがサブレンズ群12から離間する方向に移動する(Ca<Cc)。その際、第2レンズ群2cに入射する光は収束状態であるので、周縁光が第2レンズ群2cに入射する領域は、周縁光が第2レンズ群2aに入射する領域よりも小さくなる。第2レンズ群2は、周縁光の入射する領域が小さいほど、より弱い負パワーで屈折される(周縁光の入射する領域が大きいほど、より強い負パワーで屈折される)よう構成されているので、周縁光は、図5(a)よりも弱い負パワーで屈折される。その結果、収束角はより大きくなり(v3a<v3c)、位置Gaに対して、より第2レンズ群2cに近い位置Gcで光軸と交わる(Ec<Ea)。よって、図5(a)と比較して、画面周辺部の像面位置が第2レンズ群2cに接近する。
光軸上の像面の場合と同様の理由により、画面周辺部の像面の位置は、縮小側から拡大側に向かってGc,Ga,Gbの順となる(Ec<Ea<Eb)。
上記をより詳細に説明する。図7において、第2レンズ群2から出射された光の光軸と、周縁光の上側光線とのなす角(上側光線の出射角)を、それぞれt3a,t3b,t3cとする。また、当該光軸と、周縁光の下側光線とのなす角(下側光線の出射角)を、それぞれs3a,s3b,s3cとする(v3a=t3a−s3a、v3b=t3b−s3b、v3c=t3c−s3c)。第2レンズ群2aに入射する周縁光の上側光線および下側光線の入射高(光軸から入射点での距離)をh3a,g3aとし、第2レンズ群2bに入射する周縁光の上側光線および下側光線の入射高をh3b,g3bとし、第2レンズ群2cに入射する周縁光の上側光線および下側光線の入射高をh3c,g3cとする。このとき、g3c<g3a<g3bおよびh3c<h3a<h3bの関係が成り立つ。
第2レンズ群2は、周縁光線の上側光線および下側光線それぞれについて、図5(a)を基準として、入射高が大きくなるほど強い負パワーで、入射高が小さくなるほど弱い負パワーで屈折されるよう構成されている。すなわち、上側光線は、第2レンズ群2cよりも第2レンズ群2aでより強い負パワーで屈折され、第2レンズ群2aよりも第2レンズ群2bでより強い負パワーで屈折される。下側光線は、第2レンズ群2bよりも第2レンズ群2aで、より強い負パワーで屈折され、第2レンズ群2aよりも第2レンズ群2cで、より強い負パワーで屈折される。よって、周縁光の上側光線の出射角については、t3c<t3a<t3b、周縁光の下側光線の出射角については、s3b<s3a<s3cを満足する。これにより、第2レンズ群2aと比較すると、第2レンズ群2bは、より第2レンズ群から離間した位置に周縁光を集光し(Ea<Eb)、第2レンズ群2cは、より第2レンズ群に近い位置に周縁光を集光する(Ec<Ea)。
さらに、第2レンズ群2a,2b,2cと軸上光の焦点との距離Da,Db,Dc、第2レンズ群2a,2b,2cと周縁光の焦点との距離Ea,Eb,Ec、軸上光の収束角u3a,u3b,u3c、および周縁光の収束角v3a,v3b,v3cは、以下の式(21)〜(24)を満足する。
Db−Da>Eb−Ea・・・(21)
Da−Dc>Ea−Ec・・・(22)
│u3b−u3a│>│v3b−v3a│・・・(23)
│u3c−u3a│>│v3c−v3a│・・・(24)
上述したように、第2レンズ群2は、軸上光の入射する領域が大きいほど、より強い負パワーで屈折される(軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い負パワーで屈折される)よう構成されている。また、第2レンズ群2は、周縁光の入射する領域が大きいほど、より強い負パワーで屈折される(周縁光の入射する領域が小さいほど、より弱い負パワーで屈折される)よう構成されている。
よって、図5(b)のように像面が投写光学系200側に凹となる場合には、図5(a)と比較すると、軸上光と周縁光はいずれも収束角は小さくなる。しかしながら、第2レンズ群2は、収束角の変化量が周縁光よりも軸上光において大きくなるように構成されている(│u3b−u3a│>│v3b−v3a│)。よって、第2レンズ群2と焦点との距離の変化量は、周縁光よりも軸上光において大きくなる(Db−Da>Eb−Ea)。
また、図5(c)のように像面が投写光学系200側に凸となる場合には、図5(a)と比較すると、軸上光と周縁光はいずれも収束角は大きくなる。しかしながら、第2レンズ群2は、収束角の変化量が周縁光よりも軸上光において大きくなるように構成されている(│u3c−u3a│>│v3c−v3a│)。よって、第2レンズ群2と焦点との距離の変化量は、周縁光よりも軸上光において大きくなる(Da−Dc>Ea−Ec)。
集光位置とスクリーン形状について説明する。図8(a)は、軸上光の集光点、許容錯乱円および焦点深度の関係を模式的に示す図である。焦点深度とは、集光点を中心に、良好な像が形成される範囲をいい、集光点をはさんで一方の許容錯乱円から他方の許容錯乱円までの光軸上の距離をいう。また、集光点を外れると物体上の1点の像はぼやけて円として結像するが、その円を錯乱円といい、許容錯乱円とは、像のぼやけが許容できる最大の錯乱円をいう。一般には、集光点にスクリーン面を設定すれば最も鮮鋭度の高い像が得られる。しかし、必ずしも集光点にスクリーン面が一致していなくても、焦点深度内にスクリーン面が設定されていれば良好な結像性能が得られる。許容錯乱円は、スクリーン上の1画素のサイズや、どれくらいのぼやけ量が許容できるかにより決まる。
図8(b)は、周縁光の集光点、許容錯乱円および焦点深度の関係を模式的に示す図である。ここでは、スクリーンを平面(光軸に垂直な平面)と仮定しており、焦点深度は、許容錯乱円間の光軸に対して平行に測った距離としている。そのため、図8(a)では、スクリーンは光束と垂直に交わるが、図8(b)では、スクリーンは光束と斜めに交わるため、集光点から同じ距離でも像のぼやけはより大きくなる。よって、図8(a)に対して図8(b)の方が焦点深度は浅くなる。主光線(レンズの開口絞りの中心を通る光)と光軸のなす角度が大きいほど、像のぼやけはより大きくなり、焦点深度が浅くなる。すなわち、投写光学系の画角が大きくなるほど焦点深度は浅くなる。
図9は、図8(b)と同様、周縁光の集光点、許容錯乱円および焦点深度の関係を模式的に示す図である。ただし、図9ではスクリーンは曲面であり、主光線とスクリーン面とは直角に交わっている。集光点から主光線に沿った距離で考えると、集光点からの距離に対する像のぼやけは、図8(a)とほぼ同等である。しかしながら、主光線が光軸に対して傾きを持つため、光軸に沿った距離で考えると、集光点から同じ距離でも像のぼやけは、図8(a)より大きい。よって、図8(a)に対して図9の方が焦点深度は浅くなる。
このように、スクリーンが光束と交わる角度の直角からのずれが大きいほど、すなわち、スクリーンが光束とより斜めに交わるほど、焦点深度は浅くなる。よって、画面周辺部ほど、スクリーン面形状に合わせて集光点の位置を正確に制御する必要がある。
上記の説明では、スクリーンを投写光学系と光軸が一致した球面(の一部)としたが、スクリーンの形状は球面に限定されない。上記理由により、スクリーン面が各像点の焦点深度内で光束と交わるのであれば、例えば、非球面や自由曲面とすることができる。
図10は、スクリーンを自由曲面形状とした例である。図10では、軸上光と周縁光に加えて、中間光(表示デバイス3上における軸上光の出射位置と周縁光の出射位置との間の位置から出射された光)の集光状態を示している。像面(集光点を連ねた面)は、図10に破線で示す。像面自体は、図5(b)で示すように投写光学系に対して凹面となっているが、スクリーン形状は、各像点の焦点深度内でスクリーン面が光束と交わるような自由曲面形状としている。像面自体は平面であっても、焦点深度内であればスクリーン面を曲面形状にできる。但し、画面周辺部での焦点深度は浅くなるため、画面周辺部でスクリーン形状の自由度は小さく、平面から大きく離れた曲面にすることはできない。一方、本実施の形態のように、像面自体をスクリーン面に合わせた曲面にすれば、スクリーンをより自由な形状にすることができる。
数値実施例.
以下、図4および図5に示した本実施の形態の投写光学系200の数値実施例について説明する。表5には、投写光学系200の光学データを示す。表5の表記は、表1に準ずる。面番号S16は、瞳Pを表している。表示デバイス3のサイズは、14.515mm×8.165mmである。縮小側のFナンバーは2.5であり、像面が平面である場合の投写画像サイズは対角15インチである。投影倍率は22.88倍であり、表示デバイスの1画素サイズを7.56μmとすると、スクリーン5に投影される1画素サイズは約0.17mmとなる。
表6に、非球面データを示す。表6の表記は、表2に準ずる。
表7に、本実施の形態における各パラメータを示す。表7から、上述した式(16)〜(24)が満足されていることが理解されるであろう。
図11A、図11Bおよび図11Cに、スクリーン5が平面形状である場合、投写光学系200に対して凹面形状である場合、および投写光学系200に対して凸面形状である場合のそれぞれについて、スクリーン上のスポットダイアグラムを示す。ここでは、波長630nmの赤色光、波長530nmの緑色光、および波長460nmの青色光を用いた。赤色光、緑色光および青色光の、スクリーン面での入射光量比は、3:6:1とした。
図11A、図11Bおよび図11Cにおいて、縦軸には、表示デバイス3の表示面上の物点の座標を示す。ここでは、表示デバイス3の表示面において、光軸(X=0,Y=0)から最大高さ(X=0,Y=−8.33mm)まで、Y方向に略等間隔で12の物点を示す。縦軸において、各物点の位置を表す4組の数値(座標)のうち、下段は絶対座標を表す。
例えば、“0.000,−8.33MM”は、X=0、Y=−8.33MM(最大高さ)であることを示す。これに対し、上段は相対座標を表す。相対座標は、最大高さ(−8.33MM)を1として正規化したものである。表示デバイス3の表示面上の各物点は、それぞれスクリーン上の物点に対応している。
また、図11A、図11Bおよび図11Cの右下に示すスケールは、0.500mmの長さを表している。なお、図11A、図11Bおよび図11Cは白黒で表記されているが、各スポットは、赤色光、緑色光および青色光が組み合わさって形成されている。
図11A、図11Bおよび図11Cから、スポットの広がりは、概ね1画素サイズ(0.17mm)以下となっており、スクリーン5が平面、凹面および凸面の何れの場合にも、良好な性能が得られていることが分かる。
図12は、本実施の形態と対比する参考例を示す図であり、図5(a)の投写光学系(像面が平面)に対して、図5(c)に示したように投写光学系に対して凸面形状のスクリーン53を配置した場合のスポットダイアグラムを示す。図12の表記は、図11に準ずる。図12より、光軸近傍から離れるほどスポットが極端に大きくなっており、所望の性能が得られないことが分かる。すなわち、本実施の形態のように、レンズの位置を調整することにより像面の曲率を変化させることで、同一の投写光学系を用いながら、平面のみならず曲面形状のスクリーン5に対しても良好な性能を持つ画像を表示することができる。
なお、本実施の形態では、像面の曲率半径を、凹面および凸面とも1000mmとして設計しているが、上述した通り、焦点深度内であればスクリーン5の曲率半径を任意に設定することができる。また、ここでは、レンズの位置調整によってスクリーン5を平面、凹面および凸面とする場合について示したが、それらの範囲内でレンズ位置を調整した場合には、像面の曲率半径の絶対値が1000mm〜∞の範囲で良好な性能が得られる。
以上説明したように、本発明の実施の形態2の投写光学系200は、第2レンズ群2を移動させることにより、像面の曲率を変更する(すなわち、像面を、平面、凹面または凸面に変更する)ことができる。従って、所望のスクリーン形状に合った像面を得ることができる。また、このようにスクリーン形状に合った像面が得られるため、映像光の焦点ずれによる性能劣化を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、第2レンズ群2の全体を移動させたが、これに限らず、第2レンズ群2を構成する一部のレンズあるいはレンズ群を移動させても良い。また、図6および図7で模式的に説明したとおり、全体として負のパワーを有する第2レンズ群2が移動すればよく、このことは、第2レンズ群2が、移動しないレンズあるいはレンズ群を含む場合を排除するものではない。
実施の形態3.
図13は、本発明の実施の形態3における投写型画像表示装置30の構成を示す図である。照明光学系(光源を含む)等は、実施の形態1(図1)と共通であるため、図示を省略する。図1に示した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付す。光路については、軸上光の光路と、周縁光の光路(すなわち、光軸4から最も距離の離れた表示デバイス3上の点を通り、投写画像の最周縁部に到達する光路)の光路を示している。
投写型画像表示装置30は、投写光学系300を備える。投写光学系300は、縮小側から拡大側に向かって順に、正のパワーを有する第1レンズ群1と、負のパワーを有する第2レンズ群2とを備える。第1レンズ群は、縮小側から順に、正のパワーを有するサブレンズ群11と、正のパワーを有するサブレンズ群12とを備える。サブレンズ群11は、縮小側から順に、両凸レンズ201、両凸レンズ202、両凹レンズ203、両凸レンズ204、拡大側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ205、両凸レンズ206、および、縮小側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ207を備える。サブレンズ群12は、縮小側から順に、拡大側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ208と、縮小側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ209とを備える。第2レンズ群2は、両凹レンズ210,211および非球面レンズ212を備える。
図14は、投写光学系300の作用を説明するための図である。図14(a)は、表示デバイス3からの映像光を平面形状のスクリーン51に投影する場合を示す。図14(b)は、表示デバイス3からの映像光を、投写光学系300側に凹面形状のスクリーン52に投影する場合を示す。図14(c)は、表示デバイス3からの映像光を、投写光学系300側に凸面形状のスクリーン53に投影する場合を示す。
本実施の形態では、スクリーン5の形状(平面、凹面、凸面)に応じて、第1レンズ群1の光軸方向の位置を調整する。そのため、図14(a)、図14(b)および図14(c)において、レンズ形状は全て同一であるが、プリズムPSと第1レンズ群1との距離、第1レンズ群1と第2レンズ群2との距離(Ba,Bb,Bc)、および、第2レンズ群2とスクリーン51,52,53との距離(Aa,Ab,Ac)が変化している。
図15は、光軸上の像面位置の変化を説明する図である。図15において、1a,1b,1cは、図14(a)、図14(b)、図14(c)に示した位置にある第1レンズ群1を、それぞれ薄肉レンズとして模試的に表したものである。第2レンズ群2も、薄肉レンズとして模式的に表わされている。u3a,u3b,u3cは、軸上光が第2レンズ群2から出射される際のそれぞれの収束角である。Fa,Fb,Fcは、第2レンズ群2から出射される軸上光のそれぞれの集光点(すなわち光軸上の像面位置)である。
第1レンズ群1(1a,1b,1c)と第2レンズ群2との距離Ba,Bb,Bc、および、第2レンズ群2とスクリーン5との距離(すなわち第2レンズ群2と軸上光の焦点との距離)Aa,Ab,Acは、以下の式(25)および(26)を満足する。
Bc<Ba<Bb・・・(25)
Ac<Aa<Ab・・・(26)
また、軸上光の収束角u3a,u3b,u3cは、前述の式(18)を満足する。
図14(b)のように像面が投写光学系300側に凹となる場合、図14(a)と比較して、第1レンズ群1bが第2レンズ群2から離間する方向に移動する(Ba<Bb)。第1レンズ群1bに入射する軸上光は発散状態であるので、軸上光が第1レンズ群1bに入射する領域は、軸上光が第1レンズ群1aに入射する領域よりも小さくなる。第1レンズ群は、軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される(軸上光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、図14(a)よりも弱い正パワーで第1レンズ群1bにより屈折される。これにより、軸上光が第2レンズ群2に入射する領域は、図14(a)よりも大きくなる。
第2レンズ群2は、軸上光の入射する領域が大きいほど、より強い負パワーで屈折される(軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い負パワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、図14(a)よりも強い負パワーで第2レンズ群2により屈折される。その結果、軸上光の収束角はより小さくなり(u3b<u3a)、位置Faと比較して、より第2レンズ群2から離間した位置Fbで集光する(Da<Db)。その結果、図14(a)と比較して、光軸上の像面位置が第2レンズ群2から離間する。
一方、図14(c)のように像面が投写光学系300側に凸となる場合、図14(a)と比較して、第1レンズ群1cが第2レンズ群2に接近する方向に移動する(Bc<Ba)。第1レンズ群1cに入射する軸上光は発散状態であるので、軸上光が第1レンズ群1cに入射する領域は、軸上光が第1レンズ群1aに入射する領域よりも大きくなる。第1レンズ群は、軸上光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される(軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、図14(a)よりも強い正パワーで第1レンズ群1cにより屈折される。これにより、軸上光が第2レンズ群2に入射する領域は、図14(a)よりも小さくなる。
第2レンズ群2は、軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い負パワーで屈折される(軸上光の入射する領域が大きいほど、より強い負パワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、図14(a)よりも弱い負パワーで第2レンズ群2により屈折される。その結果、軸上光の収束角はより大きくなり(u3a<u3c)、位置Faと比較して、より第2レンズ群2に近い位置Fcで集光する(Dc<Da)。よって、図14(a)と比較して、光軸上の像面位置が第2レンズ群2に接近する。よって、光軸上の像面の位置は、縮小側から拡大側に向かってFc,Fa,Fbの順となる(Dc<Da<Db)。
図16は、画面周辺部の像面位置の変化を説明する図である。図15に示した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付している。v3a,v3b,v3cは、周縁光が第2レンズ群2から出射される際のそれぞれの収束角である。Ga,Gb,Gcは、第2レンズ群2から出射される周縁光のそれぞれの集光点(すなわち画面周辺部の像面位置)である。
第2レンズ群2と周縁光の焦点の距離Ha,Hb、Hcは、以下の式(27)を満足する。
Hc<Ha<Hb・・・(27)
また、周縁光の収束角v3a,v3b,v3cは、上述した式(20)を満足する。
図14(b)のように像面が投写光学系300側に凹となる場合、図14(a)と比較して、第1レンズ群1bが第2レンズ群2から離間する方向に移動する(Ba<Bb)。その際、第1レンズ群1bに入射する周縁光は発散状態であるので、周縁光が第1レンズ群1bに入射する領域は、周縁光が第1レンズ群1aに入射する領域よりも小さくなる。第1レンズ群は、周縁光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される(周縁光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される)よう構成されているので、周縁光は、図14(a)よりも弱い正パワーで第1レンズ群1bにより屈折される。これにより、周縁光が第2レンズ群2に入射する領域は、図14(a)よりも大きくなる。第2レンズ群2は、周縁光の入射する領域が大きいほど、より強い負パワーで屈折される(周縁光の入射する領域が小さいほど、より弱い負パワーで屈折される)よう構成されているので、周縁光は、図14(a)よりも強い負パワーで第2レンズ群2により屈折される。その結果、周縁光の収束角はより小さくなり(v3b<v3a)、位置Gaと比較して、より第2レンズ群2から離間した位置Gbで集光する(Ha<Hb)。よって、図14(a)と比較して、画面周辺部の像面位置が第2レンズ群2から離間する。
一方、図14(c)のように像面が投写光学系300側に凸となる場合、図14(a)と比較して、第1レンズ群1cが第2レンズ群2に接近する方向に移動する(Bc<Ba)。その際、第1レンズ群1cに入射する周縁光は発散状態であるので、周縁光が第1レンズ群1cに入射する領域は、周縁光が第1レンズ群1aに入射する領域よりも大きくなる。第1レンズ群は、周縁光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される(周縁光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される)よう構成されているので、周縁光は、図14(a)よりも強い正パワーで第1レンズ群1cにより屈折される。これにより、周縁光が第2レンズ群2に入射する領域は、図14(a)よりも小さくなる。第2レンズ群2は、周縁光の入射する領域が小さいほど、より弱い負パワーで屈折される(周縁光の入射する領域が大きいほど、より強い負パワーで屈折される)よう構成されているので、周縁光は、図14(a)よりも弱い負パワーで第2レンズ群2により屈折される。その結果、周縁光の収束角はより大きくなり(v3a<v3c)、位置Gaと比較して、より第2レンズ群2に近い位置Gcで集光する(Hc<Ha)。よって、図5(a)と比較して、画面周辺部の像面位置が第2レンズ群2に接近する。よって、画面周辺部の像面の位置は、縮小側から拡大側に向かってGc,Ga,Gbの順となる(Hc<Ha<Hb)。
上記をより詳細に説明する。図16において、第2レンズ群2を出射した光の光軸と周縁光の上側光線とのなす角(上側光線の出射角)をそれぞれt3a,t3b,t3cとし、当該光軸と周縁光の下側光線とのなす角(下側光線の出射角)をそれぞれs3a,s3b,s3cとする(v3a=t3a−s3a、v3b=t3b−s3b、v3c=t3c−s3c)。図14(a)において、第2レンズ群2に入射する周縁光の上側光線および下側光線の入射高(光軸から入射点での距離)をh3a,g3aとする。図14(b)において、第2レンズ群2に入射する周縁光の上側光線および下側光線の入射高をh3b,g3bとする。図14(c)において、第2レンズ群2に入射する周縁光の上側光線および下側光線の入射高をh3c,g3cとする。このとき、g3c<g3a<g3bおよびh3c<h3a<h3bの関係が成り立つ。
第2レンズ群2は、周縁光線の上側光線および下側光線が、図14(a)を基準として、入射高が大きいほど強い負パワーで屈折され、入射高が小さいほど弱い負パワーで屈折されるよう構成されている。すなわち、上側光線は、図14(c)よりも図14(a)でより強い負パワーで屈折され、図14(a)よりも図14(b)でより強い負パワーで屈折される。また、下側光線は、図14(b)よりも図14(a)でより強い負パワーで屈折され、図14(a)よりも図14(c)でより強い負パワーで屈折される。
よって、周縁光の上側光線の出射角については、t3c<t3a<t3b、周縁光の下側光線の出射角については、s3b<s3a<s3cを満足する。これにより、図14(a)と比較し、図14(b)において、より第2レンズ群から離間した位置に周縁光が集光され(Ha<Hb)、図14(c)において、より第2レンズ群に近い位置に周縁光が集光される(Hc<Ha)。
さらに、第2レンズ群2と軸上光および周縁光の焦点との距離Aa,Ab,Ac、Ha,Hb,Hcは以下の式(28)および(29)を満足する。
Ab−Aa>Hb−Ha・・・(28)
Aa−Ac>Ha−Hc・・・(29)
図17に、図14(a)、図14(b)および図14(c)の結果を重ねて示す。上述した通り、第2レンズ群2は、軸上光の入射する領域が大きいほどより強い負パワーで屈折される(軸上光の入射する領域が小さいほどより弱い負パワーで屈折される)よう構成されている。また、第2レンズ群2は、周縁光の入射する領域が大きいほどより強い負パワーで屈折される(周縁光の入射する領域が小さいほどより弱い負パワーで屈折される)よう構成されている。
そのため、図14(b)のように像面が投写光学系300側に凹となる場合、図14(a)と比較すると、軸上光と周縁光はいずれも収束角は小さくなる。しかしながら、第2レンズ群2は、収束角の変化量が周縁光よりも軸上光において大きくなるように構成されている(│u3b−u3a│>│v3b−v3a│)。よって、第2レンズ群2と焦点の距離の変化量は周縁光よりも軸上光において大きくなる(Ab−Aa>Hb−Ha)。
また、図14(c)のように像面が投写光学系300側に凸となる場合、図14(a)と比較すると、軸上光と周縁光はいずれも収束角は大きくなる。しかしながら、第2レンズ群2は、収束角の変化量が周縁光よりも軸上光において大きくなるように構成されている(│u3c−u3a│>│v3c−v3a│)。よって、第2レンズ群2と焦点の距離の変化量は周縁光よりも軸上光において大きくなる(Aa−Ac>Ha−Hc)。
数値実施例.
以下、図13および図14に示した本実施の形態の投写光学系300の数値実施例について説明する。表8には、投写光学系300の光学データを示す。表6の表記は、表1に準ずる。面番号S16は、瞳Pを表している。表示デバイス3のサイズは、14.515mm×8.165mmであり。縮小側のFナンバーは2.5であり、像面が平面である場合の投写画像サイズは対角15インチである。投影倍率は22.88倍であり、表示デバイスの1画素サイズを7.56μmとすると、スクリーン5に投影される1画素サイズは約0.17mmとなる。
表9に、非球面データを示す。表9の表記は、表2に準ずる。
表10に、本実施の形態における各パラメータを示す。表10から、上述した式(25)〜(29)が満足されていることが理解されるであろう。
図18A、図18Bおよび図18Cに、スクリーン5が平面形状である場合、投写光学系300に対して凹面形状である場合、および投写光学系300に対して凸面形状である場合のそれぞれについて、スクリーン上のスポットダイアグラムを示す。ここでは、波長630nmの赤色光、波長530nmの緑色光、および長460nmの青色光を用いた。赤色光、緑色光および青色光の、スクリーン面での入射光量比は、3:6:1とした。
図18A、図18Bおよび図18Cから、スポットの広がりは、概ね1画素サイズ(0.17mm)程度以下となっており、スクリーン5が平面、凹面および凸面の何れの場合にも、良好な性能が得られていることが分かる。
なお、本実施の形態では、像面の曲率半径を、凹面および凸面とも1000mmとして設計しているが、上述した通り、焦点深度内であればスクリーン5の曲率半径を任意に設定することができる。また、ここでは、レンズの位置調整によってスクリーン5を平面、凹面および凸面とする場合について説明したが、それらの範囲内でレンズ位置を調整した場合には、像面の曲率半径の絶対値が1000mm〜∞の範囲で良好な性能が得られる。
以上説明したように、本発明の実施の形態3の投写光学系300は、第1レンズ群1を移動させることにより、像面の曲率を変更する(すなわち、像面を、平面、凹面または凸面に変更する)ことができる。従って、所望のスクリーン形状に合った像面を得ることができる。また、このようにスクリーン形状に合った像面が得られるため、映像光の焦点ずれによる性能劣化を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、第1レンズ群1の全体を移動させたが、これに限らず、第1レンズ群1を構成する一部のレンズあるいはレンズ群を移動させても良い。図15および図16で模式的に説明したとおり、全体として正のパワーを有する第1レンズ群1が移動すればよく、このことは、第1レンズ群1が、移動しないレンズあるいはレンズ群を含む場合を排除するものではない。
実施の形態4.
図19は、本発明の実施の形態4における投写型画像表示装置40の構成を示す図である。照明光学系(光源を含む)等は、実施の形態1(図1)と共通であるため、図示を省略する。図1に示した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付す。光路については、軸上光の光路と、周縁光の光路(すなわち、光軸4から最も距離の離れた表示デバイス3上の点を通り、投写画像の最周縁部に到達する光路)を示している。
投写型画像表示装置40は、投写光学系400を備える。投写光学系400は、縮小側から拡大側に向かって順に、正のパワーを有する第1レンズ群1と、負のパワーを有する第2レンズ群2とを備える。第1レンズ群は、縮小側から順に、正のパワーを有するサブレンズ群11と、正のパワーを有するサブレンズ群12とを備える。サブレンズ群11は、縮小側から順に、両凸レンズ201,202、両凹レンズ203、両凸レンズ204、拡大側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ205、両凸レンズ206、および両凹レンズ207を備える。サブレンズ群12は、縮小側から順に、拡大側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ208と、両凸レンズ209とを備える。第2レンズ群2は、両凹レンズ210と、縮小側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ211と、非球面レンズ212とを備える。
図20は、投写光学系400の作用を説明するための図である。図20(a)は、表示デバイス3からの映像光を平面形状のスクリーン51に投影する場合を示す。図20(b)は、表示デバイス3からの映像光を、投写光学系400側に凹面形状のスクリーン52に投影する場合を示す。図20(c)は、表示デバイス3からの映像光を、投写光学系400側に凸面形状のスクリーン53に投影する場合を示す。
本実施の形態では、スクリーン5の形状(平面、凹面、凸面)に応じて、第1レンズ群1および第2レンズ群2の光軸方向の位置を調整することを特徴とする。第1レンズ群1または第2レンズ群2のいずれかのみの位置を調整すると、図7または図16に示したとおり、第2レンズ群2とスクリーン5との距離が大きく変動するため、投写画像サイズも大きく変動する。
図21には、スクリーン5を平面形状(平面スクリーン)にした場合、投写光学系400側に凹面形状(凹面スクリーン)にした場合、および投写光学系400側に凸面形状(凸面スクリーン)にした場合のそれぞれについて、スクリーン5に投影される投写画像の輪郭を示す。スクリーン5を平面形状にした場合には、投写画像は、表示デバイス3の形状と相似形の矩形となる。しかしながら、スクリーン5を凹面形状にした場合には、第2レンズ群2とスクリーン5との距離が大きくなるため、スクリーン5の凹面形状による樽型歪曲が発生するとともに、画像サイズが大きくなる。また、スクリーン5を凸面形状にした場合には、第2レンズ群2とスクリーン5との距離が小さくなるため、スクリーン5の凸面形状による糸巻型歪曲が発生するとともに、画像サイズが小さくなる。
このように、第1レンズ群1または第2レンズ群2のいずれかのみの位置を調整した場合には、レンズ群の移動に伴って画像サイズが変動して、一定の画像サイズが得られない上、画像の輝度も変化する。さらに、スクリーン5を平面形状にした際に画像が投影される矩形の領域を基準とすると、スクリーン5を凹面形状にした場合には、画像が大きく投影されるので、全ての画像情報を表示するためには、信号処理によって表示コンテンツを前記矩形領域に収まるように縮小しなければならず、画像表示に使用できる有効画像が減少する。また、スクリーン5を凸面形状にした場合には、画像が小さく投影されるので、前記矩形領域の全面に画像を表示することができない。そこで、本実施の形態では、第1レンズ群1および第2レンズ群2の両方の位置を調整することにより、上記の現象(画像の輝度変化、有効画素の減少、および表示領域の減少)の低減を図っている。
図20(a)、図20(b)および図20(c)において、レンズ形状は全て同一であるが、プリズムPSと第1レンズ群1との距離、第1レンズ群1と第2レンズ群2との距離(Ia,Ib,Ic)、および、第2レンズ群2とスクリーン51,52,53との距離(Ja,Jb,Jc)が変化している。
本実施の形態においては、第2レンズ群2の位置を調整する点では実施の形態2と同様であり、その際の投写画像サイズの変動を第1レンズ群1の移動により防止していると考えることができる。
図22(a)は、図20(a)および図20(b)における光軸上の像面位置の変化を説明する図である。1a,1bは、図20(a)および図20(b)に示した位置にある第1レンズ群1を、それぞれ薄肉レンズとして表したものである。2a,2bは、図20(a)および図20(b)に示した位置にある第2レンズ群2を、それぞれ薄肉レンズとして模式的に表したものである。u3a,u4bは、図20(a)および図20(b)のそれぞれにおいて、軸上光が第2レンズ群2から出射される際の収束角である。Fa,F2bは、図20(a)および図20(b)のそれぞれにおいて、第2レンズ群2から出射される軸上光の集光点(すなわち光軸上の像面位置)である。また、比較のため、図22(b)に、図5(a)および図5(b)に示した、第1レンズ群1を移動させず、第2レンズ群2のみを移動させた場合の光軸上の像面位置の変化を示す。
図20(b)のように像面が投写光学系400側に凹となる場合、第2レンズ群2bが、2aの位置から第1レンズ群1に接近する方向に移動する。この状態では、図22(b)に示すように、光軸上の像面位置は、FaからFbに移動して第2レンズ群2bから大きく離間し、これにより画像サイズが変動する。そこで、図22(a)に示すように、第1レンズ群1bを、1aの位置から第2レンズ群2に接近する方向に移動する。すなわち第1レンズ群1と第2レンズ群2との距離を小さくする(Ib<Ia)。第1レンズ群1bに入射する軸上光は発散状態であるので、軸上光が第1レンズ群1bに入射する領域は、軸上光が第1レンズ群1aに入射する領域よりも大きくなる。第1レンズ群1は、軸上光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される(軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、図20(a)よりも(すなわち図22(b)よりも)、より強い正パワーで第1レンズ群1bにより屈折される。これにより、第2レンズ群2bに入射する軸上光の収束角が図20(a)よりも大きくなるので、収束角u4bは、収束角u3aに対して過小になることを防止できる。
すなわち、図22(b)のように第2レンズ群2のみを移動させる場合、第2レンズ群2の移動に伴って、収束角u3bは必然的に収束角u3aよりかなり小さくなるが、上記のように第2レンズ群2に加えて第1レンズ群1を移動させることにより、収束角を制御することが可能になり、収束角の変動を低減することができる。また、上記作用により、軸上光の集光点(すなわち軸上光の像面位置)は第2レンズ群2から離間する方向に移動するが(Ja<Jb)、収束角の変動を低減することにより、軸上光の像面位置の変動も低減することができる。
同様に、図23(a)は、図20(a)および図20(c)における光軸上の像面位置の変化を説明する図である。1a,1cは、図20(a)および図20(c)に示した位置にある第1レンズ群1を、それぞれ薄肉レンズとして模式的に表したものである。2a,2cは、図20(a)および図20(c)に示した位置にある第2レンズ群2を、それぞれ薄肉レンズとして模式的に表したものである。u3a,u4cは、図20(a)および図20(c)のそれぞれにおいて、軸上光が第2レンズ群2から出射される際の収束角である。Fa,F2cは、図20(a)および図20(c)のそれぞれにおいて、第2レンズ群2から出射される軸上光の集光点(すなわち光軸上の像面位置)である。また、図23(b)に、比較のため、図5(a)および図5(c)に示した、第1レンズ群1を移動させずに第2レンズ群2のみを移動させた場合の光軸上の像面位置の変化を示す。
図20(c)のように像面が投写光学系400側に凸となる場合、第2レンズ群2cが、2aの位置から第1レンズ群1から離間する方向に移動する。この状態では、図23(b)に示すように、光軸上の像面位置は、FaからFcに移動して第2レンズ群2cに大きく接近し、これにより画像サイズが変動する。そこで、第1レンズ群1cを、図23(a)に示すように、1aの位置を基準として、第2レンズ群2から離間する方向に移動する。すなわち第1レンズ群1と第2レンズ群2との距離を大きくする(Ia<Ic)。第1レンズ群1cに入射する軸上光は発散状態であるので、軸上光が第1レンズ群1cに入射する領域は、軸上光が第1レンズ群1aに入射する領域よりも小さくなる。第1レンズ群1は、軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される(軸上光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、図20(a)よりも(すなわち図23(b)よりも)、より弱い正パワーで第1レンズ群1cにより屈折される。これにより、第2レンズ群2cに入射する軸上光の収束角が図20(a)よりも小さくなるので、収束角u4cが収束角u3aに対して過大になることを防止できる。
すなわち、図23(b)のように第2レンズ群2のみを移動させる場合、第2レンズ群2の移動に伴って、収束角u3cは必然的に収束角u3aよりかなり大きくなるが、上記のように第2レンズ群2に加えて第1レンズ群1を移動させることにより、収束角を制御することが可能になり、収束角の変動を低減することができる。また、上記作用により、軸上光の集光点(すなわち軸上光の像面位置)は第2レンズ群2に接近する方向に移動するが(Jc<Ja)、収束角の変動を低減することにより、軸上光の像面位置の変動も低減することができる。
上記より、第1レンズ1と第2レンズ群2との距離Ia,Ib,Ic、および、第2レンズ群2とスクリーン5との距離(すなわち第2レンズ群と軸上光の焦点との距離)Ja,Jb,Jcは、以下の式(30)および(31)を満足する。
Ib<Ia<Ic・・・(30)
Jc<Ja<Jb・・・(31)
図24(a)は、図20(a)および図20(b)における周縁光すなわち画面周辺部の像面位置の変化を説明する図である。1a,1bは、図20(a)および図20(b)の位置にある第1レンズ群1を、それぞれ薄肉レンズとして模式的に表したものである。2a,2bは、図20(a)および図20(b)における第2レンズ群2を、それぞれ薄肉レンズとして模式的に表したものである。v3a,v4bは、図20(a)および図20(b)のそれぞれにおいて、軸上光が第2レンズ群から出射される際の収束角である。Ga,G2bは、図20(a)および図20(b)のそれぞれにおいて、第2レンズ群から出射される周縁光の集光点(すなわち画面周辺部の像面位置)である。また、図24(b)に、比較のため、図5(a)および図5(b)に示した、第1レンズ群1を移動させず、第2レンズ群2のみを移動させる場合における画面周辺部の像面位置の変化を示す。
図20(b)のように像面が投写光学系400側に凹となる場合には、第2レンズ群2bが、2aの位置から第1レンズ群に接近する方向に移動する。この状態では、図24(b)に示すように、画面周辺部の像面位置は、GaからGbに移動して第2レンズ群2bから大きく離間し、これにより画像サイズが大きくなる。そこで、図24(a)に示すように、第1レンズ群1bを、1aの位置から第2レンズ群2に接近する方向に移動する。すなわち、第1レンズ群1と第2レンズ群2との距離を小さくする(Ib<Ia)。第1レンズ1bに入射する周縁光は発散状態であるので、周縁光が第1レンズ群1bに入射する領域は、周縁光が第1レンズ群1aに入射する領域よりも大きくなる。第1レンズ群1は、周縁光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される(周縁光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される)よう構成されているので、周縁光は、図20(a)よりも(すなわち図24(b)よりも)、より強い正パワーで第1レンズ群1bにより屈折される。これにより、第2レンズ群2bに入射する周縁光の収束角が図20(a)よりも大きくなるので、収束角v4bは、収束角v3aに対して過小になることを防止できる。
この例では、光軸上の像面位置F2bは、Faに対して、第2レンズ群2と反対の側に移動するが、画面周辺部の像面位置G2bは、Gaに対して、第2レンズ群2と同じ側に移動させている。一般に、第2レンズ群2の位置の変動量に対して画面周辺部の像面位置の変動量の方が大きいので(Kb<Ka)、このようにすれば、収束角v4bを収束角v3aより大きくすることも可能である。
同様に、図25(a)は、図20(a)および図20(c)における画面周辺部の像面位置の変化を説明する図である。1a,1cは、図20(a)および図20(c)に示した位置にある第1レンズ群1を、それぞれ薄肉レンズとして模式的に表したものである。2a,2cは、図20(a)および(c)に示した位置にある第2レンズ群2を、それぞれ薄肉レンズとして模式的に表したものである。v3a,v4cは、図20(a)および図20(c)のそれぞれにおいて、周縁光が第2レンズ群2から出射される際の収束角である。Ga,G2cは、図20(a)および図20(c)のそれぞれにおいて、第2レンズ群2から出射される周縁光の集光点(すなわち画面周辺部の像面位置)である。なお、図25(b)に、比較のため、図5(a)および図5(c)に示したように第1レンズ群1を移動させずに第2レンズ群2のみを移動させた場合の画面周辺部の像面位置の変化を示す。
図20(c)のように像面が投写光学系400側に凸となる場合には、第2レンズ群2bが、2aの位置から第1レンズ群1から離間する方向に移動する。この状態では、図25(b)に示すように、画面周辺部の像面位置は、GaからGcに移動して第2レンズ群2cに大きく接近し、これにより画像サイズが小さくなる。そこで、図25(a)に示すように、第1レンズ群1cを、1aの位置を基準として、第2レンズ群2から離間する方向に移動する。すなわち第1レンズ群1と第2レンズ群2との距離を大きくする(Ia<Ic)。第1レンズ1cに入射する周縁光は発散状態であるので、周縁光が第1レンズ群1cに入射する領域は、周縁光が第1レンズ群1aに入射する領域よりも小さくなる。第1レンズ群1は、周縁光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される(周縁光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される)よう構成されているので、周縁光は、図20(a)よりも(すなわち図25(b)よりも)より弱い正パワーで第1レンズ群1cにより屈折される。これにより、第2レンズ群2cに入射する周縁光の収束角が図20(a)よりも小さくなるので、収束角v4cが収束角v3aに対して過大になることを防止できる。
この例では、光軸上の像面位置F2cは、Faに対して第2レンズ群2と同じ側に移動するが、画面周辺部の像面位置G2cは、Gaに対して第2レンズ群2と反対側に移動させている。一般に、第2レンズ群2の位置の変動量に対して画面周辺部の像面位置の変動量の方が大きいので(Ka<Kc)、このようにすれば、収束角v4cを収束角v3aより小さくすることも可能である。
上記より、第2レンズ群2と周縁光の焦点との距離Ka,Kb,Kcは、以下の式(32)を満足する。
Kb<Ka<Kc・・・(32)
図26に、図20(a)、図20(b)、図20(c)の結果を重ねて示す。実施の形態3で説明したように、本実施の形態においても、レンズの移動に伴う焦点位置の変動量は、周縁光よりも軸上光の方が大きい。よって、第2レンズ群2と軸上光の焦点との距離Ja,Jb,Jcと、第2レンズ群2と周縁光の焦点との距離Ka,Kb,Kcは、以下の式(33)および(34)を満足する。
│Jb−Ja│>│Kb−Ka│・・・(33)
│Jc−Ja│>│Kc−Ka│・・・(34)
図27に、本実施の形態において、スクリーン5を平面形状にした場合、投写光学系400側に凹面形状にした場合、および投写光学系400側に凸面形状にした場合のそれぞれについて、スクリーン5に投影される投写画像の輪郭を示す。スクリーン5を平面形状にした場合には、投写画像は、表示デバイス3の形状と相似形の矩形となる。スクリーン5を凹面形状にした場合には樽型歪曲が発生し、スクリーン5を凸面形状にした場合には糸巻型歪曲が発生するが、上述したように、第2レンズ群2および第1レンズ群1を移動させることで、光軸上および画面周辺部の像面位置を適切に制御できるため、投写画像サイズは大きく変動しない。これにより、画像の輝度変化、有効画素の減少、および表示領域の減少を低減することができる。
数値実施例.
以下、図19および図20に示した本実施の形態の投写光学系400の数値実施例について説明する。表11には、投写光学系400の光学データを示す。表11の表記は、表1に準ずる。面番号S17は、瞳Pを表している。表示デバイス3のサイズは、14.515mm×8.165mmである。縮小側のFナンバーは2.5であり、像面が平面である場合の投写画像サイズは、対角15インチである。投影倍率は22.88倍であり、表示デバイス3の1画素のサイズを7.56μmとすると、スクリーン5に投影される1画素のサイズは約0.17mmとなる。
表12に、非球面データを示す。表12の表記は、表2に準ずる。
表13に、本実施の形態における各パラメータを示す。表12から、上述した式(30)〜(34)が満足されていることが理解されるであろう。
図28A、図28Bおよび図28Cに、スクリーン5が平面形状である場合、投写光学系400に対して凹面形状である場合、および投写光学系400に対して凸面形状である場合のそれぞれについて、スクリーン上のスポットダイアグラムを示す。ここでは、波長630nmの赤色光、波長530nmの緑色光、および波長460nmの青色光を用いた。赤色光、緑色光および青色光の、スクリーン面での入射光量比は、3:6:1とした。
図28A、図28Bおよび図28Cから、スポットの広がりは、概ね1画素サイズ(0.17mm)程度以下となっており、スクリーン5が平面、凹面および凸面の何れの場合にも、良好な性能が得られていることが分かる。
なお、本実施の形態では、像面の曲率半径を、凹面、凸面とも1000mmとして設計しているが、上述した通り、焦点深度内であればスクリーン5の曲率半径は任意に設定することができる。また、ここでは、レンズの位置調整によってスクリーン5を平面、凹面および凸面とする場合について説明したが、それらの範囲内でレンズ位置を調整した場合には、像面の曲率半径の絶対値が1000mm〜∞の範囲で良好な性能が得られる。
以上説明したように、本発明の実施の形態4の投写光学系400は、第2レンズ群2および第1レンズ群1を移動させることにより、像面の曲率を変更する(すなわち、像面を、平面、凹面または凸面に変更する)とともに、その際の画像サイズの変動を低減することができる。従って、所望のスクリーン形状およびサイズに合った像面を得ることができる。また、このようにスクリーン形状およびサイズに合った像面が得られるため、映像光の焦点ずれによる性能劣化を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、第1レンズ群1の全体および第2レンズ群2の全体を移動させたが、これに限らず、各レンズ群1,2を構成する一部のレンズあるいはサブレンズ群を移動させても良い。図22〜図25を参照して説明した通り、全体として負のパワーを有する第2レンズ群2および全体として正のパワーを有する第1レンズ群1が移動すればよく、このことは、第1レンズ群1および第2レンズ群2が、移動しないレンズあるいはレンズ群を含む場合を排除するものではない。
実施の形態5.
図29は、本発明の実施の形態5における投写型画像表示装置50の構成を示す図である。照明光学系(光源を含む)等は、実施の形態1(図1)と共通であるため、図示を省略する。図1に示した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付す。光路については、軸上光の光路と、周縁光の光路(すなわち、光軸4から最も距離の離れた表示デバイス3上の点を通り、投写画像の最周縁部に到達する光路)を示している。
投写型画像表示装置50は、投写光学系500を備える。投写光学系500は、縮小側から拡大側に向かって順に、正のパワーを有する第1レンズ群1と、負のパワーを有する第2レンズ群2とを備える。第1レンズ群1は、縮小側から順に、正のパワーを有するサブレンズ群11と、正のパワーを有するサブレンズ群12とを備える。サブレンズ群11は、縮小側から順に、さらに正のパワーを有するサブレンズ群110と、負のパワーを有するサブレンズ群111と、正のパワーを有するサブレンズ群112とを備える。
サブレンズ群110は、縮小側から順に、両凸レンズ201,202を備える。サブレンズ群111は、縮小側から順に、両凹レンズ203、両凸レンズ204、拡大側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ205、両凸レンズ206、縮小側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ207、および両凹レンズ208を備える。サブレンズ群112は、縮小側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ209を備える。サブレンズ群12は、縮小側から順に、拡大側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ210、両凸レンズ211、および縮小側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ212を備える。第2レンズ群2は、両凹レンズ213、縮小側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ214、および非球面レンズ215を備える。
図30は、投写光学系500の作用を説明するための図である。図30(a)は、表示デバイス3からの映像光を平面形状のスクリーン51に投影する場合を示す。図30(b)は、表示デバイス3からの映像光を、投写光学系500側に凹面形状のスクリーン52に投影する場合を示す。図30(c)は、表示デバイス3からの映像光を、投写光学系500側に凸面形状のスクリーン53に投影する場合を示す。
本実施の形態では、スクリーン5の形状(平面、凹面、凸面)に応じて、サブレンズ群111およびサブレンズ群112の光軸方向の位置を調整することを特徴とする。上述したように、一つのレンズ群のみの位置を調整すると、図7または図16に示したとおり、第2レンズ群2とスクリーン5との距離が大きく変動するため、投写画像サイズも大きく変動する。そこで、実施の形態4で説明したように、本実施の形態でも2つのレンズ群111,112の位置を調整することにより、投写画像サイズの変動に伴う画像の輝度変化、有効画素の減少、および表示領域の減少の低減を図っている。
図30(a)、図30(b)および図30(c)において、レンズ形状は全て同一であるが、サブレンズ群110とサブレンズ群111との距離(Ma,Mb,Mc)、サブレンズ群111とサブレンズ群112との距離(Na,Nb,Nc)、および、第2レンズ群2とスクリーン51,52,53との距離(La,Lb,Lc)が変化している。投写光学系500内部に位置するサイズの小さいサブレンズ群111およびサブレンズ群112の位置を調整するため、レンズの移動が容易であり、レンズ全長が変化しないため投写光学系500の保持が容易であるなどのメリットがある。
図31(a)は、図30(a)および図30(b)における光軸上の像面位置の変化を説明する図である。111a,111bは、図30(a)および図30(b)に示した位置にあるサブレンズ群111を、それぞれ薄肉レンズとして模式的に表したものである。112a,112bは、図30(a)および図30(b)の位置にあるサブレンズ群112を、それぞれ薄肉レンズとして模式的に表したものである。他のレンズ群(サブレンズ群110,サブレンズ群12,第2レンズ群2)も、薄肉レンズとして模式的に表している。u3a,u5bは、図30(a)および図30(b)のそれぞれにおいて、軸上光が第2レンズ群2から出射される際の収束角である。Fa,F3bは、図30(a)および図30(b)のそれぞれにおいて、第2レンズ群2から出射される軸上光の集光点(すなわち光軸上の像面位置)である。
図31(b)は、図30(a)および図30(c)における光軸上の像面位置の変化を説明する図である。111a,111cは、図30(a)および図30(c)の位置にあるサブレンズ群111を、それぞれ薄肉レンズとして模式的に表したものである。112a,112cは、図30(a)および図30(c)の位置にあるサブレンズ群112を、それぞれ薄肉レンズとして模式的に表したものである。他のレンズ群(サブレンズ群110,サブレンズ群12,第2レンズ群2)も、薄肉レンズとして模式的に表している。u3a,u5cは、図30(a)および図30(c)のそれぞれにおいて、軸上光が第2レンズ群2から出射される際の収束角である。Fa,F3cは、図30(a)および図30(c)のそれぞれにおいて、第2レンズ群2から出射される軸上光の集光点(すなわち光軸上の像面位置)である。
サブレンズ群110とサブレンズ群111a,111b,111cとの距離Ma,Mb,Mc、サブレンズ群111a,111b,111cとサブレンズ群112a,112b,112cとの距離Na,Nb,Nc、および、第2レンズ群2とスクリーン5との距離(すなわち第2レンズ群2と軸上光の焦点との距離)La,Lb,Lcは、以下の式(35)〜(36)を満足する。
Mc<Ma<Mb・・・(35)
Nc<Na<Nb・・・(36)
図30(b)のように像面が投写光学系500側に凹面形状になる場合には、サブレンズ群111bが、111aの位置からサブレンズ群110から離間する方向に移動する(Ma<Mb)。サブレンズ群110から出射される軸上光は収束状態であるので、軸上光がサブレンズ群111bに入射する領域は、軸上光がサブレンズ群111aに入射する領域よりも小さくなる。サブレンズ群111は、軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される(軸上光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、図30(a)よりも弱い負パワーでサブレンズ群111bにより屈折される。もしこの状態でサブレンズ群112を移動させなければ、第2レンズ群2から出射される軸上光の収束角も過小となり、光軸上の像面位置が、Faに対して、大きく第2レンズ群2から離間する方向に移動する。
しかしながら、本実施の形態では、図31(a)に示すように、サブレンズ群111bをサブレンズ群110から離間する方向に移動させるのに合わせて、サブレンズ群112bを同じ方向に、より大きく移動させる。すなわち、サブレンズ群111bとサブレンズ群112との距離をより大きくする(Na<Nb)。このとき、サブレンズ群111bから出射される軸上光は発散状態であるので、軸上光がサブレンズ群112bに入射する領域は、サブレンズ群112を移動させない場合よりも大きくなる。サブレンズ群112は、軸上光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される(軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、サブレンズ群112を移動させない場合よりも、強い正パワーでサブレンズ群112bにより屈折される。これにより、サブレンズ群112を移動させない場合よりも、第2レンズ群から出射される軸上光の収束角u5bが、図30(a)における軸上光の収束角u3aに対して過小となることを防止し、また、軸上光の像面位置F3bが、図30(a)における軸上光の像面位置Faに対して、大きく第2レンズ群2に接近する方向に移動することを防止できる。
図30(c)のように像面が投写光学系500側に凸面形状になる場合には、サブレンズ群111cが、111aの位置からサブレンズ群110に接近する方向に移動する(Mc<Ma)。サブレンズ群110から出射される軸上光は収束状態であるので、軸上光がサブレンズ群111cに入射する領域は、軸上光がサブレンズ群111aに入射する領域よりも大きくなる。サブレンズ群111は、軸上光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される(軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、図30(a)よりも強い負パワーでサブレンズ群111cにより屈折される。もしこの状態でサブレンズ群112を移動させなければ、第2レンズ群から出射される軸上光の収束角が過大となり、光軸上の像面位置が、Faに対して、大きく第2レンズ群に接近する方向に移動する。
しかしながら、本実施の形態では、図31(b)に示すように、サブレンズ群111cをサブレンズ群110に接近する方向に移動させるのに合わせて、サブレンズ群112cを同じ方向に、より大きく移動させる。すなわち、サブレンズ群111とサブレンズ群112との距離はより小さくなる(Nc<Na)。このとき、サブレンズ群111cから出射される軸上光は発散状態であるので、軸上光がサブレンズ群112cに入射する領域は、サブレンズ群112を移動させない場合よりも小さくなる。サブレンズ群112は、軸上光の入射する領域が小さいほど、より弱い正パワーで屈折される(軸上光の入射する領域が大きいほど、より強いパワーで屈折される)よう構成されているので、軸上光は、サブレンズ群112を移動させない場合よりも、弱い正パワーでサブレンズ群112cにより屈折される。これにより、サブレンズ群112を移動させない場合よりも、第2レンズ群から出射される軸上光の収束角u5cが、図30(a)における軸上光の収束角u3aに対して過大となることを防止し、また、軸上光の像面位置F3cが、図30(a)における軸上光の像面位置Faに対して、大きく第2レンズ群に接近する方向に移動することを防止できる。
図32は、図30(a)、図30(b)および図30(c)における周縁光すなわち画面周辺部の像面位置の変化を説明する図である。図30(a)は、図30(b)のように像面が投写光学系500側に凹となる場合、図30(b)は、図30(c)のように像面が投写光学系500側に凸となる場合を示す。レンズの符号は図31と同様である。v5b,v5cは、図30(b)および図30(c)のそれぞれにおいて、周縁光が第2レンズ群2から出射される際の収束角である。G3b,G3cは、図30(b)および図30(c)のそれぞれにおいて、第2レンズ群2から出射される周縁光の集光点(すなわち画面周辺部の像面位置)である。
サブレンズ群110とサブレンズ群111a,111b,111cとの距離Ma,Mb,Mc、サブレンズ群111a,111b,111cとサブレンズ群112a,112b,112cとの距離Na,Nb,Nc、第2レンズ群2と軸上光の焦点との距離La,Lb,Lc、および第2レンズ群2と周縁光の焦点との距離Oa,Ob,Ocは、以下の式(37)〜(42)を満足する。
│Lb−La│>│Ob−Oa│・・・(37)
│Lc−La│<│Oc−Oa│・・・(38)
Mb−Ma<Ma−Mc・・・(39)
Nb−Na<Na−Nc・・・(40)
│Lc−La│<│Lb−La│・・・(41)
│Ob−Oa│<│Oc−Oa│・・・(42)
本実施の形態では、軸上光について、平面スクリーンの場合の集光位置を基準として、凹面スクリーンの場合の集光位置を、凸面スクリーンの場合の集光位置よりも大きく移動させている(式(37))。一方、周縁光については、平面スクリーンの場合の集光位置を基準として、凸面スクリーンの場合の集光位置を、凹面スクリーンの場合の集光位置よりも大きく移動させている(式(38))。そのため、平面スクリーンの場合を基準とした集光位置の変動量については、凹面スクリーンの場合には、周縁光よりも軸上光の方が大きく(式(37))、逆に、凸面スクリーンの場合には、軸上光よりも周縁光の方が大きい(式(38))。
図33には、スクリーン5を平面形状(平面スクリーン)にした場合、投写光学系500側に凹面形状(凹面スクリーン)にした場合、および投写光学系500側に凸面形状(凸面スクリーン)にした場合のそれぞれについて、スクリーン5に投影される投写画像の輪郭を示す。スクリーン5を平面形状にした場合には、投写画像は、表示デバイス3の形状と相似形の矩形となる。
一方、スクリーン5を投写光学系500側に凹面形状(凹面スクリーン)にした場合には、樽型歪曲が発生する。このとき、軸上光の集光位置を平面スクリーン時の集光位置から比較的大きく移動させて、周縁光(投写画面の4隅に相当)の像面位置を平面スクリーンの場合の投写画面(矩形)の4隅に略一致するようにする。
一方、スクリーン5を投写光学系500側に凸面形状(凸面スクリーン)にした場合には、糸巻型歪曲が発生する。投写光学系500から出射される映像光(主光線)は大きく広がっているので、スクリーン面の曲率が同一の場合、凹面スクリーンよりも凸面スクリーンの方が、スクリーン面に対する主光線の入射角(スクリーン面の法線と主光線とのなす角)が大きくなる。よって、凹面スクリーンよりも凸面スクリーンの方が、平面スクリーンからの位置が変動した場合の歪曲発生量が大きくなる。そこで、凸面スクリーンの場合には、軸上光の像面位置を平面スクリーンの場合から大きく移動させないようにし、周縁光(投写画像の4隅に相当)の像面位置が平面スクリーンの場合の投写画像(矩形)の4隅よりも外側となるようにし、なお且つ、投写画面の4辺の中央部が、平面スクリーンの場合の投写画像(矩形)に接するようにする。
すなわち、平面スクリーンの場合を基準とした軸上光の集光位置の変動量が、凸面スクリーンの場合よりも凹面スクリーンの場合の方が大きくなるようにする一方(式(41))、平面スクリーンの場合を基準とした周縁光の集光位置の変動量が、凹面スクリーンの場合よりも凸面スクリーンの場合の方が大きくなるようにしている(式(42))。
また、凹面スクリーンの場合よりも、凸面スクリーンの場合の方が、より高い像高まで(より光軸から離れた位置まで)結像しなければならず、平面スクリーンの場合を基準とした像高の変動が大きいことから、凸面スクリーンの場合において、サブレンズ群111,112の移動量を大きくする(式(39)および式(40))。このようにして、凹面スクリーンの場合および凸面スクリーンの場合の投写画像の輪郭が、平面スクリーンの場合の投写画像(矩形)に内接するように、第2レンズ群2とスクリーン5との距離および像面の曲率を決定している。これにより、矩形領域外に投写される光を最小限に抑えることができる。その結果、光損失を最小限に抑え、画像の輝度変化を最小にすることができる。また、画素を有効に利用することができるので、有効画素の減少を防ぐことができる。
上記の通り、図30(c)のように像面が投写光学系500側に凸となる場合には、軸上よりも画面周辺部において、像面が平面である場合と比較して、像面の乖離が大きくなる。よって、軸上光および周縁光の収束角u3a,u3c,v3a,v3cは、式(24)とは逆に、下記の式(43)を満足する。
│u3c−u3a│<│v3c−v3a│・・・(43)
なお、図30(b)のように像面が投写光学系500側に凹となる場合については、軸上光および周縁光の収束角u3a,u3b,v3a,v3bは、上述した式(23)を満足する。
数値実施例.
以下、図29および図30に示した本実施の形態の投写光学系500の数値実施例について説明する。表14には、投写光学系500の光学データを示す。表14の表記は、表1に準ずる。面番号S16は、瞳Pを表している。表示デバイス3のサイズは、14.515mm×6.509mmである。縮小側のFナンバーは2.5であり、像面が平面である場合の投写画像サイズは、対角12.5インチである。投影倍率は19.98倍であり、表示デバイス3の1画素サイズを7.56μmとすると、スクリーン5に投影される1画素サイズは約0.15mmとなる。
表15に、非球面データを示す。表15の表記は、表2に準ずる。
表16に、本実施の形態における各パラメータを示す。表16から、上述した式(35)〜(43)が満足されていることが理解されるであろう。
図35A、図35Bおよび図35Cに、スクリーン5が平面である場合、投写光学系500に対して凹面である場合、投写光学系500に対して凸面である場合のそれぞれについて、スクリーン5上のスポットダイアグラムを示す。ここでは、波長630nmの赤色光、波長530nmの緑色光、および波長460nmの青色光を用いた。赤色光、緑色光および青色光の、スクリーン面での入射光量比は、3:6:1とした。
図35A、図35Bおよび図35Cから、スポットの広がりは、概ね1画素サイズ(0.15mm)程度以下となっており、スクリーン5が平面、凹面、凸面の何れの場合にも、良好な性能が得られていることが分かる。
なお、本実施の形態では、像面の曲率半径を、凹面、凸面とも1000mmとして設計しているが、上述したように、焦点深度内であればスクリーン5の曲率半径は任意に設定することができる。また、ここでは、レンズの位置調整によってスクリーン5を平面、凹面および凸面とする場合について説明したが、それらの範囲内でレンズ位置を調整した場合には、像面の曲率半径の絶対値が1000mm〜∞の範囲で良好な性能が得られる。
また、本実施の形態では、第1レンズ群1内の、それぞれ負および正のパワーをもつ2つのサブレンズ群111,112を移動させたが、この場合と同一の作用を有する限り、第1レンズ群1内の異なるレンズを移動させてもよい。
以上説明したように、本発明の実施の形態5の投写光学系500は、サブレンズ群111およびサブレンズ群112を移動させることにより、像面の曲率を変更する(すなわち、像面を、平面、凹面または凸面に変更する)ことができる。さらに、凹面または凸面の場合に、スクリーン5の位置を適切に設定することにより、画像サイズの変動を低減することができる。従って、所望のスクリーン形状およびサイズに合った像面を得ることができる。また、このようにスクリーン形状およびサイズに合った像面が得られるため、映像光の焦点ずれによる性能劣化を抑制することができる。
以上の説明では、軸上光と周縁光について、タンジェンシャル(Tangential)面をもとに説明したが、中間光およびサジタル(Sagittal)面に対しても、上記と同様に考えることができる。このことは、先に説明した良好なスポットダイアグラムから明らかである。すなわち、投写光学系を構成する各レンズおよび各レンズ群の作用は、軸上光から周縁光にかけて連続的に変化し、第2レンズ群に対する中間光の集光位置は、軸上光と周縁光の間に存在する。これにより、像面はなめらかな凹面及び凸面にすることができる。
また、レンズおよびレンズ群が、軸上光、中間光および周縁光に対して上述した作用を発揮するためには、距離や収束角などに関する上記の式を適宜境界条件とし、レンズの厚みや面形状、面間隔などの光学パラメータを最適化すればよい。また、像面の形状や位置をより細やかに制御するためには、レンズ面形状を非球面にすることが有効である。
また、以上の説明では、像面は光軸上を含むこととしているが、これに限らず、表示デバイスを光軸からオフセットさせてスクリーンに斜めに投写するなど、光軸上を含まないように構成することも可能である。
また、以上の説明では、像面は球面であるとしたが、これに限らず、レンズパラメータの変更や自由曲面レンズの適用等によって、像面を非球面や自由曲面とすることも可能である。
また、上述したように、スクリーン形状は、球面には限定されない。スクリーン面が各像点の焦点深度内で光束と交わるのであれば、例えば、非球面や自由曲面であってもよい。
また、上記の実施の形態2〜5における投写光学系は、一例として、実施の形態1で説明した車載用の投写型画像表示装置(図3)に適用することができる。また、車載用以外の用途の投写型画像表示装置に適用することもできる。
本発明に係る投写型画像表示装置は、映像光を生成する表示デバイスと、表示デバイスによって生成された映像光をスクリーンに拡大投写する投写光学系とを備える。投写光学系は、全体として正のパワーを有する第1レンズ群と、全体として負のパワーを有する第2レンズ群とを備える。第2レンズ群は、表示デバイス側から順に、第1レンズおよび第2レンズを有し、第1レンズおよび第2レンズはいずれも負のパワーを有する。映像光のうち、表示デバイスと投写光学系の光軸との交点から出射された光を軸上光とし、表示デバイスの周縁から出射された光を周縁光とすると、像面が平面となるときの第1レンズおよび第2レンズの光軸方向の位置を基準として、第1レンズを表示デバイスに接近させ、第2レンズを表示デバイスから離間させることにより、周縁光の焦点位置が軸上光の焦点位置よりも光軸方向において投写光学系に接近して、像面が投写光学系側に凹となる。像面が平面となるときの第1レンズおよび第2レンズの光軸方向の位置を基準として、第1レンズを表示デバイスから離間させ、第2レンズを表示デバイスに接近させることにより、軸上光の焦点位置が周縁光の焦点位置よりも光軸方向において投写光学系に接近して、像面が投写光学系側に凸となることによる。これにより、投写光学系により形成される像面の曲率が変化する。像面が投写光学系側に凹となる場合に、第1レンズに入射する軸上光の収束角をu1b、第1レンズから出射される軸上光の収束角をu2b、第2レンズから出射される軸上光の収束角をu3bとし、さらに、第1レンズに入射する周縁光の収束角をv1b、第1レンズから出射される周縁光の収束角をv2b、第2レンズから出射される周縁光の収束角をv3bとし、像面が投写光学系側に凸となる場合に、第1レンズに入射する軸上光の収束角をu1c、第1レンズから出射される軸上光の収束角をu2c、第2レンズから出射される軸上光の収束角をu3cとし、さらに、第1レンズに入射する周縁光の収束角をv1c、第1レンズから出射される周縁光の収束角をv2c、第2レンズから出射される周縁光の収束角をv3cとしたときに、
u2c>u2b
u3c>u3b
v2c>v2b
v3c>v3b
u1b−u2b>v1b−v2b
u1c−u2c>v1c−v2c
(u1c−u2c)−(v1c−v2c)>(u1b−u2b)−(v1b−v2b)
(v2c−v3c)−(u2c−u3c)>(v2b−v3b)−(u2b−u3b)
を満足する。
本発明に係る投写型画像表示装置は、映像光を生成する表示デバイスと、表示デバイスによって生成された映像光をスクリーンに拡大投写する投写光学系とを備える。投写光学系は、1個以上のレンズを有し全体として正のパワーを有する第1レンズ群と、第1レンズ群に対してスクリーン側に配置され、1個以上のレンズを有し全体として負のパワーを有する第2レンズ群とから構成される。第2レンズ群は、表示デバイス側から順に、第1レンズおよび第2レンズを有し、第1レンズおよび第2レンズはいずれも負のパワーを有する。映像光のうち、表示デバイスと投写光学系の光軸との交点から出射された光を軸上光とし、表示デバイスの周縁から出射された光を周縁光とすると、像面が平面となるときの第1レンズおよび第2レンズの光軸方向の位置を基準として、第1レンズを表示デバイスに接近させ、第2レンズを表示デバイスから離間させることにより、周縁光の焦点位置が軸上光の焦点位置よりも光軸方向において投写光学系に接近して、像面が投写光学系側に凹となる。像面が平面となるときの第1レンズおよび第2レンズの光軸方向の位置を基準として、第1レンズを表示デバイスから離間させ、第2レンズを表示デバイスに接近させることにより、軸上光の焦点位置が周縁光の焦点位置よりも光軸方向において投写光学系に接近して、像面が投写光学系側に凸となる。これにより、投写光学系により形成される像面の曲率が変化する。像面が投写光学系側に凹となる場合に、第1レンズに入射する軸上光の収束角をu1b、第1レンズから出射される軸上光の収束角をu2b、第2レンズから出射される軸上光の収束角をu3bとし、さらに、第1レンズに入射する周縁光の収束角をv1b、第1レンズから出射される周縁光の収束角をv2b、第2レンズから出射される周縁光の収束角をv3bとし、像面が投写光学系側に凸となる場合に、第1レンズに入射する軸上光の収束角をu1c、第1レンズから出射される軸上光の収束角をu2c、第2レンズから出射される軸上光の収束角をu3cとし、さらに、第1レンズに入射する周縁光の収束角をv1c、第1レンズから出射される周縁光の収束角をv2c、第2レンズから出射される周縁光の収束角をv3cとしたときに、
u2c>u2b
u3c>u3b
v2c>v2b
v3c>v3b
u1b−u2b>v1b−v2b
u1c−u2c>v1c−v2c
(u1c−u2c)−(v1c−v2c)>(u1b−u2b)−(v1b−v2b)
(v2c−v3c)−(u2c−u3c)>(v2b−v3b)−(u2b−u3b)
を満足する。
本発明に係る投写型画像表示装置は、また、映像光を生成する表示デバイスと、表示デバイスによって生成された映像光を拡大投写する投写光学系と、拡大投写された映像光を表示する曲面形状を有するスクリーンとを備える。投写光学系は、1個以上のレンズを有し全体として正のパワーを有する第1レンズ群と、第1レンズ群に対してスクリーン側に配置され、1個以上のレンズを有し全体として負のパワーを有する第2レンズ群とから構成される。第1レンズ群および第2レンズ群を構成する各レンズのうち少なくとも1つのレンズの光軸方向の位置を調整することにより、投写光学系により形成される像面の曲率がスクリーンの曲面形状に対応して変化する。像面が投写光学系側に凹となる場合の軸上光の集光位置は、像面が平面である場合の軸上光の集光位置に対して、第2レンズと反対側に存在し、像面が投写光学系側に凸となる場合の軸上光の集光位置は、像面が平面である場合の軸上光の集光位置に対して、第2レンズと同じ側に存在する。表示デバイス上の各点から出射された光は、焦点深度内でスクリーン面と交わる。第1レンズ群は、表示デバイス側からスクリーン側に向かって順に、正のパワーを有する第1サブレンズ群と、負のパワーを有する第2サブレンズ群と、正のパワーを有する第3サブレンズ群とから構成される。像面が平面となる場合に、第2レンズ群と軸上光の焦点との距離をLa、第2レンズ群と周縁光の焦点との距離をOa、第1サブレンズ群と第2サブレンズ群との距離をMa、第2サブレンズ群と第3サブレンズ群との距離をNaとし、像面が凹面となる場合に、第2レンズ群と軸上光の焦点との距離をLb、第2レンズ群と周縁光の焦点との距離をOb、第1サブレンズ群と第2サブレンズ群との距離をMb、第2サブレンズ群と第3サブレンズ群との距離をNbとし、像面が凸面となる場合に、第2レンズ群と軸上光の焦点との距離をLc、第2レンズ群と周縁光の焦点との距離をOc、第1サブレンズ群と第2サブレンズ群との距離をMc、第2サブレンズ群と第3サブレンズ群との距離をNcとしたときに、
|Lb−La|>|Ob−Oa|
|Lc−La|<|Oc−Oa|
Mb−Ma<Ma−Mc
Nb−Na<Na−Nc
|Lc−La|<|Lb−La|
|Ob−Oa|<|Oc−Oa|
を満足する。
本発明に係る投写型画像表示装置は、また、映像光を生成する表示デバイスと、表示デバイスによって生成された映像光を拡大投写する投写光学系と、拡大投写された映像光を表示する曲面形状を有するスクリーンとを備える。投写光学系は、1個以上のレンズを有し全体として正のパワーを有する第1レンズ群と、第1レンズ群に対してスクリーン側に配置され、1個以上のレンズを有し全体として負のパワーを有する第2レンズ群とから構成される。第1レンズ群および第2レンズ群を構成する各レンズのうち少なくとも1つのレンズの光軸方向の位置を調整することにより、投写光学系により形成される像面の曲率がスクリーンの曲面形状に対応して変化する。像面が投写光学系側に凹となる場合の軸上光の集光位置は、像面が平面である場合の軸上光の集光位置に対して、第2レンズと反対側に存在し、像面が投写光学系側に凸となる場合の軸上光の集光位置は、像面が平面である場合の軸上光の集光位置に対して、第2レンズと同じ側に存在する。表示デバイス上の各点から出射された光は、焦点深度内でスクリーン面と交わる。表示デバイスによって矩形形状の映像光が生成された場合であって、像面が投写光学系側に凹および凸となる場合に、スクリーン上に投影される画像の輪郭形状がいずれも、像面が平面である場合にスクリーン上に投影された画像の輪郭形状に内接するように、第1レンズ群および第2レンズ群を構成する各レンズのうち少なくとも1つのレンズの光軸方向の位置を調整する。
本発明に係る投写型画像表示装置は、映像光を生成する表示デバイスと、表示デバイスによって生成された映像光をスクリーンに拡大投写する投写光学系とを備える。投写光学系は、1個以上のレンズを有し全体として正のパワーを有する第1レンズ群と、第1レンズ群のスクリーン側に、第1レンズ群との間に可変の空気間隔を隔てて配置され、1個以上のレンズを有し全体として負のパワーを有する第2レンズ群とから構成される。第1レンズ群は、投写光学系の光軸方向に移動しないレンズ群である。第2レンズ群は、表示デバイス側から順に、第1レンズおよび第2レンズを有する。第1レンズは第2レンズ群において最も表示デバイス側のレンズである。第1レンズおよび第2レンズはいずれも負のパワーを有する。映像光のうち、表示デバイスと投写光学系の光軸との交点から出射された光を軸上光とし、表示デバイスの周縁から出射された光を周縁光とする。投写光学系により形成される像面が平面となるときの第1レンズおよび第2レンズの光軸方向の位置を基準として、第1レンズを表示デバイスに接近させ、第2レンズを表示デバイスから離間させることにより、周縁光の焦点位置が軸上光の焦点位置よりも光軸方向において投写光学系に接近して、像面が投写光学系側に凹となる。像面が平面となるときの第1レンズおよび第2レンズの光軸方向の位置を基準として、第1レンズを表示デバイスから離間させ、第2レンズを表示デバイスに接近させることにより、軸上光の焦点位置が周縁光の焦点位置よりも光軸方向において投写光学系に接近して、像面が投写光学系側に凸となる。これにより、投写光学系により形成される像面の曲率が変化する。像面が投写光学系側に凹となる場合に、第1レンズに入射する軸上光の収束角をu1b、第1レンズから出射される軸上光の収束角をu2b、第2レンズから出射される軸上光の収束角をu3bとし、さらに、第1レンズに入射する周縁光の収束角をv1b、第1レンズから出射される周縁光の収束角をv2b、第2レンズから出射される周縁光の収束角をv3bとし、像面が投写光学系側に凸となる場合に、第1レンズに入射する軸上光の収束角をu1c、第1レンズから出射される軸上光の収束角をu2c、第2レンズから出射される軸上光の収束角をu3cとし、さらに、第1レンズに入射する周縁光の収束角をv1c、第1レンズから出射される周縁光の収束角をv2c、第2レンズから出射される周縁光の収束角をv3cとしたときに、
u2c>u2b
u3c>u3b
v2c>v2b
v3c>v3b
u1b−u2b>v1b−v2b
u1c−u2c>v1c−v2c
(u1c−u2c)−(v1c−v2c)>(u1b−u2b)−(v1b−v2b)
(v2c−v3c)−(u2c−u3c)>(v2b−v3b)−(u2b−u3b)
を満足する。
本発明に係る投写型画像表示装置は、また、映像光を生成する表示デバイスと、表示デバイスによって生成された映像光を拡大投写する投写光学系と、拡大投写された映像光を表示する曲面形状を有するスクリーンとを備える。投写光学系は、1個以上のレンズを有し全体として正のパワーを有する第1レンズ群と、第1レンズ群のスクリーン側に、投写光学系において最も大きな空気間隔を隔てて配置され、1個以上のレンズを有し全体として負のパワーを有する第2レンズ群とから構成される。第1レンズ群および第2レンズ群を構成する各レンズのうち少なくとも1つのレンズの光軸方向の位置を調整することにより、投写光学系により形成される像面の曲率がスクリーンの曲面形状に対応して変化する。像面が投写光学系側に凹となる場合の軸上光の集光位置は、像面が平面である場合の軸上光の集光位置に対して、第2レンズ群と反対側に存在し、像面が投写光学系側に凸となる場合の軸上光の集光位置は、像面が平面である場合の軸上光の集光位置に対して、第2レンズ群と同じ側に存在する。表示デバイス上の各点から出射された光は、焦点深度内でスクリーン面と交わる。第1レンズ群は、表示デバイス側からスクリーン側に向かって順に、正のパワーを有する第1サブレンズ群と、負のパワーを有する第2サブレンズ群と、正のパワーを有する第3サブレンズ群と、正のパワーを有するもう一つのサブレンズ群とから構成される。少なくとも第3サブレンズ群は、光軸方向の位置調整が可能である。像面が平面となる場合に、第2レンズ群と軸上光の焦点との距離をLa、第2レンズ群と周縁光の焦点との距離をOa、第1サブレンズ群と第2サブレンズ群との距離をMa、第2サブレンズ群と第3サブレンズ群との距離をNaとし、像面が凹面となる場合に、第2レンズ群と軸上光の焦点との距離をLb、第2レンズ群と周縁光の焦点との距離をOb、第1サブレンズ群と第2サブレンズ群との距離をMb、第2サブレンズ群と第3サブレンズ群との距離をNbとし、像面が凸面となる場合に、第2レンズ群と軸上光の焦点との距離をLc、第2レンズ群と周縁光の焦点との距離をOc、第1サブレンズ群と第2サブレンズ群との距離をMc、第2サブレンズ群と第3サブレンズ群との距離をNcとしたときに、
|Lb−La|>|Ob−Oa|
|Lc−La|<|Oc−Oa|
Mb−Ma<Ma−Mc
Nb−Na<Na−Nc
|Lc−La|<|Lb−La|
|Ob−Oa|<|Oc−Oa|
を満足する。