以下、本発明に係る投射装置、および投射システムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施の形態に係る投射装置は、画像表示素子に表示される画像を拡大投射する投射装置であり、軸対称に配置される複数のレンズからなるレンズ群を有する屈折光学系と、反射光学素子を有する反射光学系と、を備える。ここで、屈折光学系を構成するレンズ群は、遠距離側から近距離側へのフォーカシングに際し、最も拡大側のレンズが拡大側に移動する(繰り出す)。
ここで、レンズ群が共有する軸を軸A、レンズ群のうち最も拡大側のレンズを最も繰り出した状態において画像表示素子から屈折光学系の頂点までの軸A上の距離をLTとする。また、軸Aに垂直な方向に移動可能なレンズ群を有していて、最も拡大側のレンズを最も繰り出した状態において画像表示素子から前記移動可能なレンズ群の頂点までの軸A上の距離をLNとする。
このとき、本実施の形態に係る投射装置は、レンズのうち、下記式(1)を満たす負レンズを前記軸Aに垂直な方向に移動させる移動機構を有する。
0.5 < LN/LT (1)
本実施の形態に係る投射装置は、負レンズ1枚、もしくはそれを含んだレンズ群を光軸と垂直方向、特に最周辺画角の像面位置を効果的に移動させる。このようにすることで、本実施の形態に係る投射装置は、意図的に片ボケを引き起こし、曲面のスクリーン全体にフォーカスがあった状態にすることができる。
また、本実施の形態に係る投射装置によれば、条件式(1)を満たすことにより、負レンズの画角毎の光線通過位置の差が大きくなるため、像面位置を調整する効果が大きくすることができ、歪曲や画位置に与える影響も小さくすることができる。
また、本実施の形態に係る投射装置によれば、軸Aに対してスクリーンが傾いている場合においても、レンズを偏心することでスクリーン全体にフォーカスがあった状態にすることができる。
本実施の形態に係る投射装置は、以下の条件式(1’)を満たすことが望ましい。
0.75 < LN/LT (1’)
本実施の形態に係る投射装置は、画像表示素子の中心から出射され、絞りの中心を通る光線を含む面内の軸で、屈折光学系が共有する軸Aに垂直な軸をY軸としたときに、レンズ群がY軸に沿って移動するのが望ましい。
本実施の形態に係る投射装置によれば、レンズ群をY軸方向に移動させることにより、X軸方向にシリンドリカルな曲面に対してスクリーン全体にフォーカスがあった投射画像を投射することができる。
また、本実施の形態に係る投射装置は、Y軸方向のみ移動可能とするのが望ましい。本実施の形態に係る投射装置によれば、このように構成することにより、機構を簡略化することができ、コストの低減、製造誤差感度の低減を図ることができる。
本実施の形態に係る投射装置は、反射光学素子の最大有効径をDmax、負レンズの有効径をDN、としたとき、負レンズが、下記式(2)を満たすのが望ましい。
0.7 < DN/Dmax ≦ 1 (2)
ここで、有効径とは、光学素子を通る光線と光学素子の交点のうち、軸Aからの距離が最大となる距離のことをいう。
本実施の形態に係る投射装置によれば、式(2)を満たすことにより、像面湾曲の調整を効率的に行うことができる。
本実施の形態に係る投射装置は、屈折光学系内には、絞りが配置され、レンズ群は、絞りよりも反射光学素子側に配置されるのが望ましい。
本実施の形態に係る投射装置によれば、絞りよりも拡大側に曲面スクリーン用の調整機構を設けることにより、偏心収差の発生を抑えながら像面を調整することができる。
本実施の形態に係る投射装置は、反射光学素子が自由曲面を有する凹面ミラーであることが望ましい。
本実施の形態に係る投射装置によれば、凹面の自由曲面ミラーを用いることで、レンズ群の偏心収差を効果的に補正することができる。
また、本実施の形態に係る投射装置は、レンズ群を移動させる駆動機構を有するのが望ましい。
また、本実施の形態に係る投射装置は、レンズ群が、軸Aと垂直方向に移動することができるように、レンズ群の保持部の内径とレンズ群の外径との間に間隙を有するのが望ましい。
本実施の形態に係る投射装置によれば、複雑な機構を有さずに、画位置の調整をすることができる。
本実施の形態に係る投射装置は、屈折光学系が、ノンテレセントリック光学系であるのが望ましい。
本実施の形態に係る投射装置によれば、屈折光学系をノンテレセントリック光学系とすることで、小型化に有利となるだけでなく、レンズ群のパワーを小さくすることができる。つまり、本実施の形態に係る投射装置によれば、レンズ群の移動によって生じる歪曲等の偏心収差の発生と画位置の移動量を小さくすることができる。
本実施の形態に係る投射装置は、画像表示素子が、軸Aと交差しない位置に配置されているのが望ましい。
本実施の形態に係る投射装置によれば、レンズの片側のみを用いることで、片ボケを用いることになるため、X軸方向に曲面を有するシリンドリカル形状のスクリーンに対して良好に投射画像を投射することができる。
本実施の形態に係る投射システムは、画像表示素子に表示される画像を拡大投射する投射装置と、投射装置が拡大投射した画像を映すスクリーンと、を有してなる。
ここで、本実施の形態に係る投射システムにおいて、投射装置が、以上説明した投射装置であり、スクリーンが、凹面ミラーと前記軸Aとの交点から前記スクリーンまでの距離/スクリーン横幅をTRとしたとき、下記式(3)を満たす。
TR < 0.25 (3)
本実施の形態に係る投射装置によれば、上記式(3)を満たすことにより、投射距離の非常に短い投射装置を得ることができる。
また、本実施の形態に係る投射システムにおいて、軸Aと、画像表示素子の中心から出射され、絞りの中心を通る光線を含む面内の軸で、屈折光学系が共有する軸Aに垂直な軸であるY軸とに対して垂直な軸をX軸とする。
ここで、本実施の形態に係る投射システムは、スクリーンの曲率半径をR、投射画像が最大となるときの投射画像の対角長をImg、としたとき、スクリーンが、A−Y断面においては平面で、X軸方向に曲率1/Rを有し、下記式(4)を満たす。
|R|/Img > 1.4 (4)
本実施の形態に係る投射システムによれば、上記式(4)を満たすことにより、解像劣化なしに没入感を得る映像を投射することができる。
次に、本発明に係る投射装置と投射システムの実施例について説明する。
図1は、本発明に係る投射装置の実施例を示す光学配置図である。図1には、本発明に係る投射装置を有してなる画像表示装置100を示す。同図に示すように、画像表示装置100は、照明光学系LSからの光により照射された画像形成部LV上の拡大像を、投射光学系(屈折光学系)11でスクリーンSCに投射する。
なお、図1には、投射光学系11の自由曲面レンズが最も光の進行方向側に繰り出している、48インチの場合の画像表示装置100の光路図を示している。また、図1において、スクリーンSCは、下端部のごく一部のみが示されている。
図1に示すように、以下の説明において、画像形成部LVの法線方向であり、軸対称レンズが共有する軸である軸Aと平行な軸をZ軸、画像形成部LVの中心から出射され、絞りの中心を通る光線を含む面内の軸のうち、軸Aに垂直な軸をY軸とする。そして、以下の説明において、軸A、Y軸に垂直な軸をX軸とする。また、以下の説明において、時計回りの回転方向を+α方向とする。
画像表示装置100の画像形成部LVから出射される光の進行方向には、平行平板Fと、投射光学系11と、ミラー12と、凹面ミラー13とが、この順に配置されている。
また、投射光学系11内には、絞りSが配置されている。
画像形成部LVは、例えばDMD(Digital Micromirror Device)、透過型液晶パネル、反射型液晶パネル等の画像表示素子からなる。本実施の形態において、画像形成部LVは、自ら発光する機能を持たないDMDを想定している。画像形成部LVとして示している部分は、投射装置が投射すべき画像を形成する部分である。
画像形成部LVが自ら発光する機能を持たない場合には、照明光学系LSからの照明光により画像形成部LVが照射され、画像形成部LVに形成された画像情報が投射される。
なお、画像形成部LVは、上述のように自ら発光する機能を持たないものに限定されず、生成した画像を発光させる自己発光方式のものを利用することもできる。
照明光学系LSは、画像形成部LVを効率よく照射する機能を有するものが好ましい。ここで、照明光学系LSは、例えばロッドインテグレータやフライアイインテグレータを用いることで、配光を均一にすることができる。
なお、照明光学系LSの光源には、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、LED(Light Emitting Diode)などの白色光源、単色発光LEDや、LD(Laser Diode)などの単色光源を用いることができる。
画像情報に基づいて画像形成部LVにより2次元的に強度変調された光は、物体光としての投射光となる。つまり、画像形成部LVからの投射光は、投射光学系11、ミラー12、凹面ミラー13を通って結像光束となる。
平行平板Fは、画像形成部LVの近傍に配置される、画像形成部LVのカバーガラス(シールガラス)である。
また、画像表示装置100は、外装部Hを有する。
図2は、図1の投射装置による画像形成部LVの例を示す模式図である。投射光学系の各光学素子は、それぞれ光軸を共有している。そのため、画像形成部LVは、光軸(軸A)に対してY軸方向にシフトしている。ここで、画像形成部LVにおいて、画像が形成される面を画像形成面とする。
本実施の形態において、画像表示装置100は、投射光学系11と、ミラー12、一枚の凹面ミラー13を用いて系を構成している。
投射光学系11を通った光は、画像形成部LVに形成された画像情報に共役な中間像を、ミラー12よりも画像形成部LV側の位置に空間像として形成する。ここで、中間像は、平面像として結像する必要がないため、本実施の形態においては曲面像として形成している。
凹面ミラー13は、最も拡大側に配置された自由曲面ミラーである。凹面ミラー13は、中間像を拡大投射し、スクリーンSCに投射する。ここで、中間像は、像面湾曲や歪曲を持っているが、凹面ミラー13に自由曲面を用いることにより、像面湾曲や歪曲を補正することができる。
凹面ミラー13を自由曲面で構成することにより、画像表示装置100は、投射光学系11の収差補正の負担が減るため、投射装置や画像表示装置の設計の自由度が増し、装置構成の小型化を図ることができる。
ここで、自由曲面とは、任意のy軸方向の位置にてx軸方向の位置に応じたx軸方向の曲率が一定ではなく、任意のx軸方向の位置にてy軸方向の位置に応じたy軸方向の曲率が一定でないアナモフィック面のことをいう。ここで、x軸、y軸は、上述のX軸、Y軸とは一致しなくてもよい。
防塵ガラス14は、凹面ミラー13とスクリーンSCとの間に設置される。なお、防塵ガラス14は、平板ガラスであっても、曲率がついているガラスや、レンズなど屈折力を持った光学素子であってもよい。
また、画像表示装置100は、投射画像を曲面もしくは傾斜したスクリーンSCに投射する場合に発生する歪みを画像処理で補正する不図示の処理機構を有する。
●投射光学系の構成
次に、画像表示装置100の投射光学系の具体的な構成を説明する。
図3は、図1の投射装置の投射光学系11を示す光学配置図である。同図は、投射光学系11の光学配置とフォーカスの様子を示す。ここで、同図(a)は、投射光学系11が遠距離側(80インチ)にフォーカシングされた様子を示し、同図(b)は、投射光学系11が近距離側(48インチ)にフォーカシングされた様子を示す。
図3に示すように、投射光学系11は、画像形成部LV側から拡大側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群(I)と、正の屈折力を有する第2レンズ群(II)とを有する。また、投射光学系11は、負の屈折力を有する第3レンズ群(III)と、正の屈折力を有する第4レンズ群(IV)とを有する。投射光学系11の最も拡大側には、光の方向を変更する(折り曲げる)ミラー12と、凹面ミラー13が配置される(図1参照)。
図3(a)と(b)とを比較して、投射光学系11の投射距離の変動に対するフォーカシングを説明する。投射光学系11は、遠距離側から近距離側へのフォーカシングに際し、正の第2レンズ群(II)と負の第3レンズ群(III)が、画像形成部LV側に移動し、正の第4レンズ群(IV)が拡大側に移動する。
第1レンズ群(I)は、画像形成部LV側から順に、画像形成部LV側に強い凸面を向けた両面非球面両凸レンズと、画像形成部LV側に凸面を向けた負メニスカスレンズと、画像形成部LV側に凸面を向けた負メニスカスレンズおよび画像形成部LV側により強い凸面を向けた両凸レンズの接合レンズと、絞りSと、画像形成部LV側により強い凸面を向けた両面非球面両凸レンズと、画像形成部LV側に凸面を向けた負メニスカスレンズと、拡大側に凸面を向けた正メニスカスレンズおよび画像形成部LV側により強い凹面を有する両凹レンズの接合レンズと、拡大側に強い凸面を向けた両凸レンズからなる。
第2レンズ群(II)は、画像形成部側により強い凸面を向けた両凸レンズ一枚からなる。
また、第3レンズ群(III)は、2つの群に別れていて、拡大側に凸面を向けた負メニスカスレンズ(レンズ群D)と、もう一つのレンズ群である画像形成部LV側により強い凹面を有した両面非球面両凹レンズからなる。ここで、第3レンズ群(III)は、負メニスカスレンズのみがY軸方向すなわち軸Aに直交する方向に可動する。
第4レンズ群(IV)は、拡大側に凸面を向けた両面非球面正メニスカスレンズからなる。
画像表示装置100は、投射光学系11における、絞りSよりも拡大側、図1において最もスクリーンSC側のレンズから3番目に配置され、負のパワーを有した球面レンズ1枚からなるレンズ群Dを有している。レンズ群Dは、調整機構により軸Aに対してY軸方向に可動する。
なお、レンズ群Dは、調整機構により、X軸方向、もしくはXY方向に可動するようにしてもよい。
図4は、レンズ群Dの保持部材の例を示す模式図である。同図に示すように、レンズ群Dは、レンズ面の側面の外周を囲むように形成される保持部材1により、所定の間隙dを持って保持される。
図5は、レンズ群Dの調整機構の例を示す模式図である。同図に示すように、調整機構10は、保持部材1と、バネ2と、ネジ3とにより構成される。
保持部材1は、上述の通りレンズ群Dを所定の間隙dを持って保持する。保持部材1には、側面の外周から内周に向けて貫通するネジ穴が設けられている。
バネ2は、保持部材1の内周とレンズ群Dの外周との間の間隙、もしくは保持部材1とその内周の不図示の保持部材との間の間隙に介在する。ここで、バネ2は、レンズ群Dの中心に関して保持部材1のネジ穴の位置と対称な位置に設けられている。
ネジ3は、保持部材1のネジ穴に螺合し、保持部材1に対して締め込むことによってレンズ群Dをバネ2の反発力に抗して押し付け、保持部材1に対するレンズ群Dの位置をバネ2の方向に移動させる。ネジ3を緩めると、レンズ群Dは、バネ2の反発力によりネジ3の方向に移動する。
つまり、調整機構10は、ネジ3の締め込み度合いにより、ユーザーが容易にスクリーンSCに対してレンズ群Dの軸Aに直交する方向の位置を調整することができる。
また、レンズ群Dの調整機構としては、例えば外装部Hの不図示のレバーと、レバーに保持された不図示のギアと、レンズ群Dの保持部材1に取り付けられギアと嵌合する不図示のスクリューとにより構成される構造などが考えられる。
なお、調整機構10は、ネジ3のネジ頭に不図示のモーターの回転軸に連結して回転させることで、電動化することができる。
以下、表1〜表5に、レンズデータを示す。表中面番号に*が付いているものは非球面を示し、**がついているものは自由曲面を示す。また、表中面番号に※がついているレンズは、Y軸方向に移動可能なレンズである。
本実施の形態における記号の意味は以下の通りである。
f:全系の焦点距離
NA:開口数
ω:半画角(deg)
R:曲率半径(非球面にあっては近軸曲率半径)
D:面間隔
Nd:屈折率
νd:アッベ数
K:非球面の円錐定数
Ai:i次の非球面係数
Cj:自由曲面係数
本実施の形態において、非球面形状は、近軸曲率半径の逆数(近軸曲率)をC、光軸からの高さをH、円錐定数をKとして、上記各次数の非球面係数Aiを用い、光軸方向における非球面量をXとして、周知の式(5)で表されるものである。
(5)
つまり、非球面形状は、式(5)に近軸曲率Cと円錐定数K、非球面係数Aiを与えて形状を特定する。
また、本実施の形態において、自由曲面形状は、近軸曲率半径の逆数(近軸曲率)をC、光軸からの高さをH、円錐定数をK、上記自由曲面係数Cjを用い、光軸方向における自由曲面量をXとして、周知の式(6)で表されるものである。
(6)
ただし、jは、式(7)に示す通りである。
(7)
自由曲面形状は、式(6)に近軸曲率Cと円錐定数Kと自由曲面係数Cjを与えて形状を特定する。
表1
表2
表3
表4
表5
また、画像形成部LVであるDMDのサイズは、ドットサイズを10.8μm、横方向の長さを13.824mm、縦方向の長さを8.640mm、光軸から素子中心までの距離を5.62 mmとする。
図3に示すように、画像表示素子からレンズ群Dの拡大側の面と軸Aとの交点Bまでの距離をLN、画像表示素子から最も拡大側のレンズの48インチでの軸Aとの交点Cまでの距離をLTとすると、LNとLTとの関係は、以下の式(1−1)の通りである。
LN/LT = 0.80 (1−1)
また、投射光学系11を構成する光学素子の最大有効径をDmax、負レンズの有効径をDNとすると、負レンズが以下の式(2−1)を満たす。
DN/Dmax = 0.754 (2−1)
ここで、有効径とは、光学素子を通る光線と光学素子の交点のうち、軸Aからの距離が最大となる距離のことをいう。上記式(2−1)を満たすことにより、投射光学系11によれば、像面湾曲の調整を効率的に行うことができる。
最も反射面側に位置するレンズの投射画像が最大となる合焦状態での頂点からのミラー12、凹面ミラー13の位置座標を表6に示す。なお、表6において、回転に関しては面法線と光軸とのなす角度を示している。
表6
図6は、スクリーンの例を示す模式図である。同図において、F1〜F13は、スクリーン上の画像形成領域における任意の点を示す。
図7は、図6のスクリーンにおいて80インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図8は、図6のスクリーンにおいて60インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図9は、図6のスクリーンにおいて48インチに対応したスポットダイアグラムである。
図7〜9において、各スポットダイアグラムは、スクリーン面での結像特性(mm)を、波長625nm(赤)、550nm(緑)、425nm(青)について示している。
各画サイズでのWXGAにおける画素サイズは80インチ、60インチ、48インチがそれぞれ、1.35mm、1.0mm、0.8mmであるので、図7から図9によれば、投射光学系11が画像表示装置100として十分な性能を持っていることがわかる。
図10は、シリンドリカルスクリーンの例を示す模式図である。同図に示すように、画像表示装置100のスクリーンとして、例えばX軸方向の曲率半径が16200mm(|R|/Img=7.97)となるような曲面を有したシリンドリカル形状なスクリーンSC2を用いる場合を考える。
図11は、図10のスクリーンにおいて80インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図12は、図10のスクリーンにおいて60インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図13は、図10のスクリーンにおいて48インチに対応したスポットダイアグラムである。
図11〜13によれば、投射光学系11は、シリンドリカル形状のスクリーンSC2に投射した場合には、平面のスクリーンSCに投射した場合に比較して、スポットサイズが大きくなっていることがわかる。
図14は、図10のスクリーンにおいてレンズ群をY軸の負の方向に0.0141mmだけ偏心した場合の80インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図15は、図10のスクリーンにおいてレンズ群をY軸の負の方向に0.0141mmだけ偏心した場合の60インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図16は、図10のスクリーンにおいてレンズ群をY軸の負の方向に0.0141mmだけ偏心した場合の48インチに対応したスポットダイアグラムである。
図14〜16において、曲面スクリーンを用いた場合に、レンズ群DをY軸の負の方向、つまり図3の下方向に0.0141mmだけ偏心した場合の各画サイズにおけるスポットダイアグラムを示す。ここで、画位置の変化量はY軸の負の方向に0.73mmである。
従来の投射装置において、曲面のスクリーンに投射した場合には、特に最外角付近でのスポット径の広がりが大きくなり、解像劣化を起こす。
一方、図14〜16に示すように、レンズ群Dを偏心させることによって、曲面形状のスクリーンにおいても良好な解像を得ることができることがわかる。
図17は、図10のスクリーンにおいてスクリーンの曲率半径を3000mmとした場合の80インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図18は、図10のスクリーンにおいてスクリーンの曲率半径を3000mmとした場合の60インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図19は、図10のスクリーンにおいてスクリーンの曲率半径を3000mmとした場合の48インチに対応したスポットダイアグラムである。
図17〜19において、スクリーンの曲率半径を3000mm(|R|/Img=1.47)とした場合の各スポットダイアグラムを示す。
図17〜19に示すように、曲面スクリーンに投射した場合には、平面スクリーンに投射した場合に比較してスポットサイズがかなり大きくなっていることがわかる。
図20は、図10のスクリーンにおいてレンズ群をY軸の負の方向に0.0412mmだけ偏心した場合の80インチに対応したスポットダイアグラムである。図21は、図10のスクリーンにおいてレンズ群をY軸の負の方向に0.0412mmだけ偏心した場合の60インチに対応したスポットダイアグラムである。図22は、図10のスクリーンにおいてレンズ群をY軸の負の方向に0.0412mmだけ偏心した場合の48インチに対応したスポットダイアグラムである。
図20〜22において、曲面スクリーンを用いた場合において、レンズ群DをY軸の負の方向、つまり図3の下方向に0.0412mmだけ偏心した場合の各画サイズにおけるスポットダイアグラムを示す。
図20〜22に示すように、レンズ群Dを偏心させることによって、曲率の小さな曲面形状のスクリーンにおいても良好な解像を得ることができることがわかる。また、画位置の変化量はY軸の負の方向に1.1mmである。
なお、以上の説明においては、画像表示装置100により曲面スクリーンに投射した場合のみについて示したが、本発明に係る投射装置は、これらの構成には限定されない。例えば、本発明に係る投射装置において、スクリーンがX軸方向、Y軸方向に斜めになっている場合においても同様にレンズ群Dを偏心させることで良好な拡大像を得ることができる。
次に、本発明に係る投射装置の別の実施例について、先に説明した実施例との相違点を中心に説明する。
図23は、本発明に係る投射装置の別の実施例を示す光学配置図である。図23には、本発明に係る投射装置を有してなる画像表示装置200を示す。同図に示すように、画像表示装置200は、照明光学系LSからの光により照射された画像形成部LV上の拡大像を、投射光学系(屈折光学系)21でスクリーンSCに投射する。
なお、図23には、投射光学系21の自由曲面レンズが最も光の進行方向側に繰り出している、48インチの場合の画像表示装置200の光路図を示している。
画像表示装置200の画像形成部LVから出射される光の進行方向には、平行平板Fと、投射光学系21と、ミラー12と、凹面ミラー13とが、この順に配置されている。
本実施例において、画像表示装置200は、投射光学系21におけるレンズ群Dを構成するレンズの数と種類、つまり、調整機構により可動するレンズ群Dの構成が先に説明した実施例と相違する。
●投射光学系の構成
次に、画像表示装置200の投射光学系の具体的な構成を説明する。
図24は、図23の投射装置の投射光学系21を示す光学配置図である。同図は、投射光学系21の光学配置とフォーカスの様子を示す。ここで、同図(a)は、投射光学系21が遠距離側(80インチ)にフォーカシングされた様子を示し、同図(b)は、投射光学系21が近距離側(48インチ)にフォーカシングされた様子を示す。
図24に示すように、投射光学系21は、画像形成部LV側から拡大側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群(I)と、正の屈折力を有する第2レンズ群(II)とを有する。また、投射光学系21は、負の屈折力を有する第3レンズ群(III)と、正の屈折力を有する第4レンズ群(IV)とを有する。投射光学系21の最も拡大側には、光の方向を変更する(折り曲げる)ミラー12と、凹面ミラー13が配置される。
図24(a)と(b)とを比較して、投射光学系21の投射距離の変動に対するフォーカシングを説明する。投射光学系21は、遠距離側から近距離側へのフォーカシングに際し、正の第2レンズ群(II)と負の第3レンズ群(III)が、画像形成部LV側に移動し、正の第4レンズ群(IV)が拡大側に移動する。
ここで、投射光学系21は、レンズ群Dである第3レンズ群(III)の構成が、先に説明した投射光学系11と相違する。
すなわち、第3レンズ群(III)(レンズ群D)は、拡大側に凸面を向けた負メニスカスレンズと、画像形成部LV側により強い凹面を有した両面非球面両凹レンズからなる。ここで、第3レンズ群は、上記負メニスカスレンズと両面非球面両凹レンズが一体でY軸方向(軸Aに直交する方向)に可動する。
なお、レンズ群Dは、調整機構により、X軸方向、もしくはXY方向に可動するようにしてもよい。
また、レンズ群Dの位置を移動させる調整機構は、先に説明した構成と同様のものを用いることができる。
以下、表7〜表11に、レンズデータを示す。表中面番号に*が付いているものは非球面を示し、**がついているものは自由曲面を示す。また、表中面番号に※がついているレンズは、Y軸方向に移動可能なレンズである。
表7
表8
表9
表10
表11
また、画像形成部LVであるDMDのサイズは、ドットサイズを10.8um、横方向の長さを13.824mm、縦方向の長さを8.640mm、光軸から素子中心までの距離を5.62 mmとする。
図24に示すように、画像表示素子からレンズ群Dの拡大側の面と軸Aとの交点Bまでの距離をLN、画像表示素子から最も拡大側のレンズの48インチでの軸Aとの交点Cまでの距離をLTとすると、LNとLTとの関係は、以下の式(1−2)の通りである。
LN/LT = 0.83 (1−2)
また、投射光学系11を構成する光学素子の最大有効径をDmax、負レンズの有効径をDNとすると、負レンズが先に説明した式(2−1)を満たす。
最も反射面側に位置するレンズの投射画像が最大となる合焦状態での頂点からのミラー12、凹面ミラー13の位置座標を表12に示す。なお、表12において、回転に関しては面法線と光軸とのなす角度を示している。
表12
図25は、図6のスクリーンにおいて80インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図26は、図6のスクリーンにおいて60インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図27は、図6のスクリーンにおいて48インチに対応したスポットダイアグラムである。
図25〜27において、各スポットダイアグラムは、スクリーン面での結像特性(mm)を、波長625nm(赤)、550nm(緑)、425nm(青)について示している。
各画サイズでのWXGAにおける画素サイズは80インチ、60インチ、48インチがそれぞれ、1.35mm、1.0mm、0.8mmであるので、図25から図27によれば、投射光学系21が画像表示装置200として十分な性能を持っていることがわかる。
画像表示装置200のスクリーンとして、図10に示した例えばX軸方向の曲率半径が16200mm(|R|/Img=7.97)となるような曲面を有したシリンドリカル形状なスクリーンSC2を用いる場合を考える。
図28は、図10のスクリーンにおいて80インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図29は、図10のスクリーンにおいて60インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図30は、図10のスクリーンにおいて48インチに対応したスポットダイアグラムである。
図28〜30によれば、投射光学系21は、シリンドリカル形状のスクリーンSC2に投射した場合には、平面のスクリーンSCに投射した場合に比較して、スポットサイズが大きくなっていることがわかる。
図31は、図10のスクリーンにおいてレンズ群をY軸の負の方向に0.0573mmだけ偏心した場合の80インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図32は、図10のスクリーンにおいてレンズ群をY軸の負の方向に0.0573mmだけ偏心した場合の60インチに対応したスポットダイアグラムである。また、図33は、図10のスクリーンにおいてレンズ群をY軸の負の方向に0.0573mmだけ偏心した場合の48インチに対応したスポットダイアグラムである。
図31〜33において、曲面スクリーンを用いた場合に、レンズ群DをY軸の負の方向、つまり図3の下方向に0.0573mmだけ偏心した場合の各画サイズにおけるスポットダイアグラムを示す。ここで、画位置の変化量はY軸の負の方向に約5.4mmである。
従来の投射装置において、曲面のスクリーンに投射した場合には、特に最外角付近でのスポット径の広がりが大きくなり、解像劣化を起こす。
一方、図14〜16に示すように、レンズ群Dを偏心させることによって、曲面形状のスクリーンにおいても良好な解像を得ることができることがわかる。
なお、以上説明した各実施例では、本発明の好適な実施例を示したが、本発明はその内容に限定されない。
すなわち、実施例で示した各部の具体的形状および数値は、本発明を実施する際の一例であり、本実施形態で説明した内容に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することができる。
●実施例の効果●
以上説明したように、画像表示装置100,200によれば、投射光学系11,21を有することにより、投射距離が非常に短く、小型で画位置調整ができ、性能変化が少ない投射型映像表示装置を提供することができる。