JPWO2013038829A1 - 偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
光硬化性接着剤を使用した場合に、偏光板を構成するセルロースアシレートフィルムと偏光子との密着性を向上させ、偏光度の低下を緩和した偏光板を提供する。また、当該偏光板が具備された液晶表示装置を提供する。
偏光板は、アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるセルロースアシレートと、ガラス転移温度低下剤と、を含むセルロースアシレートフィルムを、光硬化性接着剤を用いて偏光子の一方の面に貼り合わせた偏光板であって、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、前記セルロースアシレートフィルムの貼合面の前記ガラス転移温度低下剤の検出値をdA、他方の面の検出値をdBとしたとき、下記式(1)により示されるr値が1.1以上であることを特徴とする。
式(1) r=dA/dB
偏光板は、アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるセルロースアシレートと、ガラス転移温度低下剤と、を含むセルロースアシレートフィルムを、光硬化性接着剤を用いて偏光子の一方の面に貼り合わせた偏光板であって、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、前記セルロースアシレートフィルムの貼合面の前記ガラス転移温度低下剤の検出値をdA、他方の面の検出値をdBとしたとき、下記式(1)により示されるr値が1.1以上であることを特徴とする。
式(1) r=dA/dB
Description
本発明は、セルロースアシレートを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
セルロースエステルのなかでも、セルロースアシレートは、アシル基置換度を変化させることにより、幅広いリターデーションを持つ光学フィルムに適用できることが知られている。一般的に、アセチル基置換度の高いトリアセチルセルロース(TAC)は、リターデーションが低いため、偏光板の保護フィルムに好適に用いられている。一方、トリアセチルセルロースを、VA型やTN型等各種の液晶モードの光学補償フィルムとして用いるにはリターデーションの発現が不足することから、リターデーション上昇剤を添加する必要があった(例えば、特許文献1参照)。
これに対し、アセチル基置換度の小さいジアセチルセルロース(DAC)は、リターデーションの発現性が高いため、リターデーション上昇剤を添加しなくても、光学補償フィルムとしての機能を発揮することができると期待されている。
アシル基置換度の小さいセルロースアシレートからなるフィルムが光学補償フィルムとして用いられる場合、偏光子と貼合され、偏光板が作製されるのが一般的である。そして、偏光板としての耐久性を考えた場合には、セルロースアシレートフィルムと偏光子との間の密着性は高いほど好ましい。
また、セルロースアシレートフィルムと偏光子とを貼合する際、セルロースアシレートフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とを厳密に平行又は直角に重ね合わせる工程が必要とされる。これら2つの軸がわずかでもずれ、軸ずれと呼ばれる現象が起こると、偏光板の偏光度が低下するからである。セルロースアシレートフィルムの位相差発現性能が高ければ高いほど、偏光度の低下は顕著に現れるため、軸ずれに起因する偏光度の低下を緩和し得る手段の開発が望まれている。
これまで、偏光子とセルロースアシレートからなる偏光板保護フィルムとの接着には、ポリビニルアルコール系接着剤が広く用いられてきた。その際、セルロースアシレートフィルムをあらかじめアルカリケン化液等で表面を親水化する必要があった。しかし、アシル基置換度の低いセルロースアシレートフィルムは、アルカリケン化工程において、フィルムの一部がアルカリケン化液に溶出し、工程を汚染するといった問題点があった。従って、アルカリケン化工程を必要としない接着剤が望まれていた。
近年、偏光子と偏光板保護フィルムを貼合する際の接着剤として、光硬化性接着剤が注目を集めている(例えば、特許文献2〜4参照)。光硬化性接着剤は、アルカリケン化工程を経なくても偏光子と接着できるので、アシル基置換度の小さなセルロースアシレートに適用されることが期待できる。
しかし、本発明者らはアシル基置換度の小さなセルロースアシレートからなる光学補償フィルムと偏光子とを、光硬化性接着剤を用いて接着した場合、偏光子との密着性が十分でなく、また偏光板の偏光度が大きく低下するという問題点を見出した。これは、光硬化性接着剤の硬化時の発熱や硬化収縮により、光学補償フィルムの微小な配向角のずれが生じ、軸ずれが発生することが原因と推定される。
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、光硬化性接着剤を使用した場合に、偏光板を構成するセルロースアシレートフィルムと偏光子との密着性を向上させ、さらに偏光度の低下を緩和した偏光板を提供することである。また、当該偏光板が具備された液晶表示装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、アシル基置換度が小さいセルロースアシレートとガラス転移温度低下剤を含むセルロースアシレートフィルムを採用することで、薄膜でありながら高いリターデーション値、高い位相差発現性が発揮されることを見出した。また、本発明者は光硬化性接着剤を用いて偏光子とセルロースアシレートフィルムを貼合する際、その貼合面のガラス転移温度低下剤の分布を他方の面より大きくすることにより、貼合面の密着性が向上し、偏光度の低下が抑制されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるセルロースアシレートと、ガラス転移温度低下剤と、を含むセルロースアシレートフィルムを、光硬化性接着剤を用いて偏光子の一方の面に貼り合わせた偏光板であって、
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、前記セルロースアシレートフィルムの貼合面の前記ガラス転移温度低下剤の検出値をdA、他方の面の検出値をdBとしたとき、下記式(1)により示されるr値が1.1以上であることを特徴とする偏光板。
式(1) r=dA/dB
2.前記セルロースアシレートは、アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるジアセチルセルロースであることを特徴とする前記第1項に記載の偏光板。
3.前記ガラス転移温度低下剤のガラス転移温度低下能が、3.5℃/質量部以上であることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の偏光板。
4.前記セルロースアシレートフィルムは、加水分解防止剤をさらに含み、
前記加水分解防止剤の平均logP値が、7.5以上であることを特徴とする前記第1項〜第3項のいずれか一項に記載の偏光板。
5.前記貼合面の算術平均粗さが、他方の面より大きいことを特徴とする前記第1項〜第4項のいずれか一項に記載の偏光板。
6.前記偏光板の偏光度が99.99%以上であることを特徴とする前記第1項〜第5項のいずれか一項に記載の偏光板。
7.前記第1項〜第6項のいずれか一項に記載の偏光板が、具備されていることを特徴とする液晶表示装置。
1.アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるセルロースアシレートと、ガラス転移温度低下剤と、を含むセルロースアシレートフィルムを、光硬化性接着剤を用いて偏光子の一方の面に貼り合わせた偏光板であって、
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、前記セルロースアシレートフィルムの貼合面の前記ガラス転移温度低下剤の検出値をdA、他方の面の検出値をdBとしたとき、下記式(1)により示されるr値が1.1以上であることを特徴とする偏光板。
式(1) r=dA/dB
2.前記セルロースアシレートは、アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるジアセチルセルロースであることを特徴とする前記第1項に記載の偏光板。
3.前記ガラス転移温度低下剤のガラス転移温度低下能が、3.5℃/質量部以上であることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の偏光板。
4.前記セルロースアシレートフィルムは、加水分解防止剤をさらに含み、
前記加水分解防止剤の平均logP値が、7.5以上であることを特徴とする前記第1項〜第3項のいずれか一項に記載の偏光板。
5.前記貼合面の算術平均粗さが、他方の面より大きいことを特徴とする前記第1項〜第4項のいずれか一項に記載の偏光板。
6.前記偏光板の偏光度が99.99%以上であることを特徴とする前記第1項〜第5項のいずれか一項に記載の偏光板。
7.前記第1項〜第6項のいずれか一項に記載の偏光板が、具備されていることを特徴とする液晶表示装置。
本発明の上記手段により、セルロースアシレートフィルムと偏光子との密着性を向上させ、偏光板の偏光度の低下を緩和することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構は明らかになっていないが、以下のように推察される。
すなわち、光硬化性接着剤を用いてセルロースアシレートフィルムを偏光子に貼り合せる際、ガラス転移温度低下剤が貼合面に豊富に存在することによって、貼合面が他方の面より微小な凹凸が多く荒れた表面構造を有する。この表面構造が偏光子との密着性の向上に寄与しているものと考えられる。
また、貼合面におけるガラス転移温度低下剤の存在量の増加に伴い、セルロースアシレートの存在量は減少する。そのため、貼合面近傍におけるセルロースアシレートフィルムのリターデーションの値は、セルロースアシレートフィルム全体の値と比較して小さくなっていると考えられる。セルロースアシレートフィルムのリターデーションの値が高いほど、貼合時の軸ずれによる偏光度の低下は顕著であることから、リターデーションが比較的小さい貼合面と偏光子を貼合することにより、偏光度の低下は緩和されると考えられる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構は明らかになっていないが、以下のように推察される。
すなわち、光硬化性接着剤を用いてセルロースアシレートフィルムを偏光子に貼り合せる際、ガラス転移温度低下剤が貼合面に豊富に存在することによって、貼合面が他方の面より微小な凹凸が多く荒れた表面構造を有する。この表面構造が偏光子との密着性の向上に寄与しているものと考えられる。
また、貼合面におけるガラス転移温度低下剤の存在量の増加に伴い、セルロースアシレートの存在量は減少する。そのため、貼合面近傍におけるセルロースアシレートフィルムのリターデーションの値は、セルロースアシレートフィルム全体の値と比較して小さくなっていると考えられる。セルロースアシレートフィルムのリターデーションの値が高いほど、貼合時の軸ずれによる偏光度の低下は顕著であることから、リターデーションが比較的小さい貼合面と偏光子を貼合することにより、偏光度の低下は緩和されると考えられる。
本発明の偏光板は、アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるセルロースアシレートと、ガラス転移温度低下剤と、を含むセルロースアシレートフィルムを、光硬化性接着剤を用いて偏光子の一方の面に貼り合わせた偏光板であって、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、前記セルロースアシレートフィルムの貼合面の前記ガラス転移温度低下剤の検出値をdA、他方の面の検出値をdBとしたとき、前記式(1)により示されるr値が1.1以上であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項7までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記セルロースアシレートは、アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるジアセチルセルロースであることが好ましい。また、前記ガラス転移温度低下剤のガラス転移温度低下能が、3.5℃/質量部以上であることが好ましい。また、前記セルロースアシレートフィルムは、加水分解防止剤をさらに含み、前記加水分解防止剤の平均logP値が、7.5以上であることが好ましい。また、前記貼合面の算術平均粗さが、他方の面より大きいことが好ましい。また、前記偏光板の偏光度が99.99%以上であることが好ましい。
本発明の偏光板は、液晶表示装置に好適に具備され得る。
本発明の偏光板は、液晶表示装置に好適に具備され得る。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」はその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
<偏光板>
本発明に係る偏光板は、アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるセルロースアシレートフィルムと、ガラス転移温度低下剤と、を含むセルロースアシレートフィルムを、光硬化性接着剤を用いて偏光子の一方の面に貼り合わせてなる。
本発明に係る偏光板は、アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるセルロースアシレートフィルムと、ガラス転移温度低下剤と、を含むセルロースアシレートフィルムを、光硬化性接着剤を用いて偏光子の一方の面に貼り合わせてなる。
<セルロースアシレートフィルム>
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムは、アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるセルロースアシレートを含む。このようにアシル基置換度が小さいセルロースアシレートを採用することで、高い位相差発現性が発揮され、位相差の高い位相差フィルムとする場合であっても薄膜化が可能となる。また、高い位相差を発現させる場合にも延伸倍率を低く抑えることができ、破断等の故障を回避できる等の利点が得られる。
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムは、アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるセルロースアシレートを含む。このようにアシル基置換度が小さいセルロースアシレートを採用することで、高い位相差発現性が発揮され、位相差の高い位相差フィルムとする場合であっても薄膜化が可能となる。また、高い位相差を発現させる場合にも延伸倍率を低く抑えることができ、破断等の故障を回避できる等の利点が得られる。
ここで、セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個のヒドロキシ基(水酸基)がある。この3個のヒドロキシ基にアシル基が誘導された数を、アシル基置換度という。例えば、ジアセチルセルロース(DAC)は、グルコースユニットの3個のヒドロキシ基のうち、平均して2.0〜2.5個のヒドロキシ基に、アセチル基が結合している。
本発明に用いられるセルロースアシレートとしては、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルが挙げられ、芳香族カルボン酸のエステルでもよいが、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。ヒドロキシ基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。さらに別の置換基が置換してもよい。炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。当該アシル基の炭素数は2〜4であることが好ましく、炭素数が2〜3であることがより好ましい。
例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
セルロースアシレートのアシル基置換度の測定は、ASTMのD−817−91に準じて実施することができ、好ましいアシル基置換度は、2.18〜2.45である。
セルロースアシレートのアシル基置換度が2.0以上である場合、ドープ粘度の上昇によるフィルム面品質の劣化、延伸張力の上昇によるヘイズアップ等の発生を防止できる。また、アシル基置換度が2.5以下である場合、必要な位相差が得られやすい。
セルロースアシレートのアシル基置換度が2.0以上である場合、ドープ粘度の上昇によるフィルム面品質の劣化、延伸張力の上昇によるヘイズアップ等の発生を防止できる。また、アシル基置換度が2.5以下である場合、必要な位相差が得られやすい。
セルロースアシレートの数平均分子量(Mn)は30000〜300000の範囲が、得られたセルロースアシレートフィルムの機械的強度が強く好ましい。さらに50000〜200000の数平均分子量のセルロースアシレートが好ましく用いられる。
セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値は、1.4〜3.0の範囲内であることが好ましい。
セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値は、1.4〜3.0の範囲内であることが好ましい。
セルロースアシレートの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。
測定条件は、以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
測定条件は、以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明に用いられるセルロースアシレートは、公知の方法により合成され得る。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
セルロースアシレートの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等が挙げられる。また、それらから得られたセルロースアシレートを、それぞれ任意の割合で混合して使用してもよい。
一方、セルロースアシレートの市販品を用いてもよい。セルロースアシレートの市販品としては、ダイセル社のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
セルロースアシレートの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等が挙げられる。また、それらから得られたセルロースアシレートを、それぞれ任意の割合で混合して使用してもよい。
一方、セルロースアシレートの市販品を用いてもよい。セルロースアシレートの市販品としては、ダイセル社のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
<ガラス転移温度低下剤>
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムは、ガラス転移温度低下剤(以下、Tg低下剤という。)を含む。このように、セルロースアシレートフィルムがTg低下剤を含むことにより、硬く脆い性質を有するセルロースアシレートのガラス転移温度Tgが低下し、その加工性や機械的物性が改善され得る。そしてその結果、薄膜でありながら高リターデーション値を有し、高倍率な延伸でも内部ヘイズの上昇が抑えられ、位相差ムラも小さく、しかも湿熱環境下でもヘイズの上昇が抑えられるセルロースアシレートフィルムが提供され得る。
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムは、ガラス転移温度低下剤(以下、Tg低下剤という。)を含む。このように、セルロースアシレートフィルムがTg低下剤を含むことにより、硬く脆い性質を有するセルロースアシレートのガラス転移温度Tgが低下し、その加工性や機械的物性が改善され得る。そしてその結果、薄膜でありながら高リターデーション値を有し、高倍率な延伸でも内部ヘイズの上昇が抑えられ、位相差ムラも小さく、しかも湿熱環境下でもヘイズの上昇が抑えられるセルロースアシレートフィルムが提供され得る。
本発明において用いられるTg低下剤とは、それを含まない、アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート単独でのガラス転移温度Tgの値が、それを添加することによって低下する添加剤を意味し、このような定義を満足する限り、いかなる物質がTg低下剤として用いられてもよい。
なお、セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgの値は、示差走査熱量測定法(DSC)により測定された値である。
なお、セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgの値は、示差走査熱量測定法(DSC)により測定された値である。
なお、アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートの種類に応じて、ある物質がTg低下剤の定義に該当する場合と該当しない場合とが生じる場合、当該物質は、Tg低下剤の定義に該当する場合におけるアシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートとの併用であれば、本発明においてTg低下剤として用いられ得る。
Tg低下剤のガラス転移温度低下能(以下、Tg低下能という。)についても、特に制限はないが、好ましくは3.5℃/質量部以上であり、より好ましくは3.8℃/質量部以上であり、さらに好ましくは4.0℃/質量部以上である。
ここで、Tg低下能とは、ある物質の単位質量あたりのガラス転移温度Tgを低下させる能力をいい、下記数式(3)により定義される。
〔式中、Xはセルロースアシレートを単独で製膜して得られたセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgを表し、Yは当該セルロースアシレート100質量部に対し、Tg低下剤を5質量部添加した後に同様に製膜して得られたセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgを表す。〕
ここで、Tg低下能とは、ある物質の単位質量あたりのガラス転移温度Tgを低下させる能力をいい、下記数式(3)により定義される。
Tg低下剤のTg低下能が、上記範囲内の値であると、少ない添加量でも優れたTg低下効果が発揮され得る。このため、添加剤を多量に添加せざるを得ない場合等に発生するブリードアウト等が防止され得る。一方、Tg低下能の上限値については特に制限はないが、実際には5.0℃/質量部以下程度である。
なお、Tg低下能についても、アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートの種類によっては、Tg低下剤として用いた物質が、上述したTg低下能の好ましい範囲に含まれる場合と、含まれない場合とが生じうる。このような場合、当該物質は、上述したTg低下能の好ましい範囲に含まれる場合におけるアシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートと併用される場合に限り、上述の好ましいTg低下能の範囲を満たすTg低下剤として解釈されるものとする。
本発明において用いられるTg低下剤の具体的な形態については、上述したTg低下剤の定義を満たす限り、好ましくはさらに上述したTg低下能の好ましい範囲を満たす限り、特に制限はない。Tg低下剤の一例としては、下記一般式(I)で表されるポリエステル化合物が挙げられる。
一般式(I) X−O−B−{O−C(=O)−A−C(=O)−O−B}n−O−X〔式中、Bは炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基、又は直鎖若しくは分岐のシクロアルキレン基を表す。Aは炭素数6〜14の芳香環、炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基、又は炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐のシクロアルキレン基を表す。Xは水素原子又は炭素数6〜14の芳香環を含むモノカルボン酸残基を表す。nは1以上の自然数を表す。〕
一般式(I) X−O−B−{O−C(=O)−A−C(=O)−O−B}n−O−X〔式中、Bは炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基、又は直鎖若しくは分岐のシクロアルキレン基を表す。Aは炭素数6〜14の芳香環、炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基、又は炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐のシクロアルキレン基を表す。Xは水素原子又は炭素数6〜14の芳香環を含むモノカルボン酸残基を表す。nは1以上の自然数を表す。〕
一般式(I)で表されるポリエステル化合物は、芳香環(炭素数6〜14)、直鎖若しくは分岐のアルキレン基、又は直鎖若しくは分岐のシクロアルキレン基(ともに炭素数2〜6)を有するジカルボン酸と、炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレンジオール又はシクロアルキレンジオールとの交互共重合により得られる交互共重合体である。
芳香族ジカルボン酸と、直鎖若しくは分岐のアルキレン基又はシクロアルキレン基を有するジカルボン酸とは、それぞれ単独で用いても、混合物として用いても構わないが、セルロースアシレートとの相溶性の点から、少なくとも芳香族ジカルボン酸が10%以上含まれることが好ましい。また、芳香環(炭素数6〜14)を有するモノカルボン酸で両末端を封止してもよい。
芳香族ジカルボン酸と、直鎖若しくは分岐のアルキレン基又はシクロアルキレン基を有するジカルボン酸とは、それぞれ単独で用いても、混合物として用いても構わないが、セルロースアシレートとの相溶性の点から、少なくとも芳香族ジカルボン酸が10%以上含まれることが好ましい。また、芳香環(炭素数6〜14)を有するモノカルボン酸で両末端を封止してもよい。
芳香環(炭素数6〜14)を有するジカルボン酸、つまり炭素数6〜16の芳香族ジカルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸、2,2′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、等が挙げられる。そのなかでも好ましくは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸である。
直鎖若しくは分岐のアルキレン基又はシクロアルキレン基(炭素数2〜6)を有するジカルボン酸としては、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。そのなかでも好ましくは、コハク酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
また、炭素数が2〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレンジオール又はシクロアルキレンジオールとしては、例えばエタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。そのなかでも、好ましくはエタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールである。
なかでも、Aが置換基を有していてもよいベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環であることが、Tg低下能に優れるという観点から好ましい。ここで、ベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環が有し得る置換基とは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。
ポリエステル化合物の両末端を封止する、芳香環(炭素数6〜14)を有するモノカルボン酸としては、例えば安息香酸、オルトトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸、ジメチル安息香酸、パラメトキシ安息香酸等が挙げられる。そのなかでも好ましくは安息香酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸である。
芳香族ポリエステル化合物は、常法により上述したジカルボン酸とアルキレンジオール又はシクロアルキレンジオールとのポリエステル化反応、エステル交換反応による熱溶融縮合法、又はこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によって容易に合成することができる。さらに、上述した芳香族モノカルボン酸を加えることにより、両末端が封止されたポリエステル化合物を合成することができる。
以上、Tg低下剤の具体例として、一般式(I)で表される芳香族ポリエステル化合物について詳細に説明したが、その他のTg低下剤が用いられてももちろんよい。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムにおいて、Tg低下剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムにおけるTg低下剤の添加量についても特に制限はないが、セルロースアシレート100質量%に対して、好ましくは1〜5質量%であり、より好ましくは1.5〜3.5質量%である。Tg低下剤の添加量が1質量%以上であれば、Tg低下剤の本来の目的であるTg低下性能が十分に発揮され得る。一方、Tg低下剤の添加量が5質量%以下であれば、T低下剤の添加量の増加に伴うセルロースアシレートフィルムの位相差発現性能の低下が防止され得る。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムにおいて、Tg低下剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムにおけるTg低下剤の添加量についても特に制限はないが、セルロースアシレート100質量%に対して、好ましくは1〜5質量%であり、より好ましくは1.5〜3.5質量%である。Tg低下剤の添加量が1質量%以上であれば、Tg低下剤の本来の目的であるTg低下性能が十分に発揮され得る。一方、Tg低下剤の添加量が5質量%以下であれば、T低下剤の添加量の増加に伴うセルロースアシレートフィルムの位相差発現性能の低下が防止され得る。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、偏光子との貼合面とその他の表面における飛行時間型二次イオン質量分析法(Time-Of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry:TOF−SIMS)によるTg低下剤の検出値に、ある程度の偏りがあるという特徴を有している。
これを定量的に表現すると、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて検出される、セルロースアシレートフィルムの偏光子との貼合面のTg低下剤の検出値をdA、他方の面の検出値をdBとしたとき、下記式(1)により示されるr値が1.1以上である。
式(1) r=dA/dB
これを定量的に表現すると、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて検出される、セルロースアシレートフィルムの偏光子との貼合面のTg低下剤の検出値をdA、他方の面の検出値をdBとしたとき、下記式(1)により示されるr値が1.1以上である。
式(1) r=dA/dB
ここで、飛行時間型二次イオン質量分析法とは、固体試料上の原子や分子の化学情報を一分子層以下の感度で測定でき、特定の原子や分子の分布を100nm以下の空間分解能で観察可能な質量分析法である。飛行時間型二次イオン質量分析法は、二次イオン質量分析法(SIMS)の1種であり、一次イオンビームを固体試料に照射し、その際に試料の最表面から放出されるイオン(二次イオン)を検出することによって、分析が行われる。質量分析計として飛行時間型質量分析計(TOF−MS)が用いられることから、TOF−SIMSと称される。
飛行時間型二次イオン質量分析法によれば、イオンビームをパルス的に試料に照射することによって、実質的に非破壊的な試料測定が可能であることから、現在では有機材料、高分子材料の分析にも広く応用されるに至っている。
飛行時間型二次イオン質量分析法によれば、イオンビームをパルス的に試料に照射することによって、実質的に非破壊的な試料測定が可能であることから、現在では有機材料、高分子材料の分析にも広く応用されるに至っている。
上記r値は1.1以上であればよいが、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.3以上であり、さらに好ましくは1.4以上である。一方、偏光板製造時において、カールの発生を抑えやすくなることから、通常は1.5以下であることが好ましい。
以上、本発明における必須の構成要件であるr値の定義及び好ましい形態について説明したが、本発明に係るセルロースアシレートフィルムの別の観点に基づく好ましい実施形態として、フィルムの厚さ方向に沿ってTg低下剤の濃度勾配が存在するという形態が挙げられる。例えば、最も簡単な例として、本発明に係るセルロースアシレートフィルムを、その厚さ方向に垂直な面で(フィルムの面方向に平行な面で)2等分されるように切断したときに、偏光子との貼合面を含む断片に存在するTg低下剤の量が、他方の断片(他方の表面を含む断片)に存在するTg低下剤の量よりも多い、という実施形態が好ましく例示される。これを一般化すると、本発明に係るセルロースアシレートフィルムを、その厚さ方向に垂直な面で(フィルムの面方向に平行な面で)k等分されるように切断したときに、各断片に存在するTg低下剤の量が、偏光子との貼合面を含む断片から他方の表面を含む断片に向かうに従って、徐々に減少するという実施形態もまた、好ましく例示される。当該実施形態において、k=2の場合については上記で別途説明したが、kは好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上であり、特に好ましくは20以上である。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムによれば、r値が1.1以上となるように構成されていることで、偏光板を構成する偏光子との密着性をより一層向上させることが可能となる。アシル基置換度の小さい、例えばDAC等のセルロースアシレートが、位相差フィルムだけでなく、視野角を拡大する光学補償フィルムとして用いられる場合には、偏光子と貼合されて偏光板を構成するのが一般的である。そして、偏光板としての耐久性を考えた場合、セルロースアシレートフィルムと偏光子との間の密着性は高いほど好ましい。
密着性を向上させるメカニズムについては完全には明らかではないが、本発明者の検討によれば、以下のメカニズムが推察されている。
後述するが、セルロースアシレートフィルムは、通常セルロースアシレート及び添加剤を含むドープを支持体上に流延して得られたフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を経て製造される。得られたセルロースアシレートフィルムのr値が1.1以上となるような製造手法を採用した場合、得られたセルロースアシレートフィルムの一方の表面が、他方の表面と比較して微小な凹凸が多く、荒れた表面構造を呈することが判明した。
これは、セルロースアシレートのガラス転移温度Tgを低下させるTg低下能を持つTg低下剤が、一方の表面にリッチに存在していることで、延伸の際にセルロースアシレートが柔軟に移動することができるようになった結果であろうと考えられている。そして、このような微小な凹凸を多数有する荒れた表面構造が、偏光子との密着性の向上に寄与しているものと考えられている。
後述するが、セルロースアシレートフィルムは、通常セルロースアシレート及び添加剤を含むドープを支持体上に流延して得られたフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を経て製造される。得られたセルロースアシレートフィルムのr値が1.1以上となるような製造手法を採用した場合、得られたセルロースアシレートフィルムの一方の表面が、他方の表面と比較して微小な凹凸が多く、荒れた表面構造を呈することが判明した。
これは、セルロースアシレートのガラス転移温度Tgを低下させるTg低下能を持つTg低下剤が、一方の表面にリッチに存在していることで、延伸の際にセルロースアシレートが柔軟に移動することができるようになった結果であろうと考えられている。そして、このような微小な凹凸を多数有する荒れた表面構造が、偏光子との密着性の向上に寄与しているものと考えられている。
なお、通常は偏光子とセルロースアシレートフィルムとの貼合時に、密着性の向上を目的として、セルロースアシレートフィルムの貼合面がアルカリケン化処理される。しかし、本発明により提供されるセルロースアシレートフィルムによれば、上述したようなメカニズムによって偏光子との間の密着性が向上することから、このようなアルカリケン化処理が不要となることも期待され、工数の削減によるコスト低減効果を図ることができる。
また、アルカリケン化処理を施すと、セルロースアシレートフィルムのケン化処理表面(貼合面)に存在するセルロースアシレートの一部が、加水分解されてしまう可能性があるが、密着性の向上によってアルカリケン化処理が不要となれば、アルカリケン化処理時のセルロースアシレートの加水分解の可能性もなくなり、非常に優位性の高い技術が提供されることになる。
また、アルカリケン化処理を施すと、セルロースアシレートフィルムのケン化処理表面(貼合面)に存在するセルロースアシレートの一部が、加水分解されてしまう可能性があるが、密着性の向上によってアルカリケン化処理が不要となれば、アルカリケン化処理時のセルロースアシレートの加水分解の可能性もなくなり、非常に優位性の高い技術が提供されることになる。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムの好ましい実施形態は、上述のメカニズムにより、偏光子との密着性の向上に寄与する微小な凹凸からなる表面構造の存在を定量的に表現したものである。すなわち、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムにおいては、フィルムの2つの表面のうち、偏光子との貼合面の、JIS B0601:2001によって測定される算術平均粗さRaの値が、他方の表面における値よりも大きいことが好ましい。この際、貼合面における算術平均粗さRaの値は、他方の表面における算術平均粗さRaの値の、好ましくは1.05倍以上であり、より好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上であり、特に好ましくは1.3倍以上、最も好ましくは1.4倍以上である。
また、従来、セルロースアシレートフィルムと偏光子とを貼合して偏光板を作製する際、位相差フィルムとしてのセルロースアシレートフィルムの遅相軸と、偏光子の吸収軸とを厳密に重ね合わせる工程が必要とされていた。貼合の際に、これら2つの軸がわずかでもずれ、いわゆる軸ずれが生じると、偏光板の偏光度が低下してしまうという問題があった。偏光板を構成するセルロースアシレートフィルムの位相差発現性能が高ければ高いほど、この偏光度の低下は顕著に現れることになるため、上述したような軸ずれに起因する偏光度の低下を緩和しうる手段の開発もまた、強く望まれていた。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、このような要望に対しても一定の解決をもたらす。すなわち、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムによれば、偏光子との貼合時にわずかな軸ずれが生じても、それに起因する偏光板の偏光度の低下が緩和され得る。そのメカニズムについては完全には明らかではないが、本発明者の検討によれば、以下のメカニズムが推定されている。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムに含まれるTg低下剤は、フィルム内部での存在量の増加に伴って、位相差発現に寄与するセルロースアシレートの相対的な存在量を減少させることになる。本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、偏光子との貼合面に、他方の表面よりも多くのTg低下剤が存在していることから、貼合面近傍について微視的に観察すれば、セルロースアシレートフィルムのリターデーション値Ro、Rthは、セルロースアシレートフィルム全体についての巨視的な値よりも小さくなっていると考えられる。逆に、他方の表面近傍について微視的に観察すれば、リターデーション値Ro、Rthは、セルロースアシレートフィルム全体についての巨視的な値よりも大きくなっていると考えられる。
このような場合であっても、フィルム全体に含まれるTg低下剤の量及びセルロースアシレートフィルムの厚さが一定であれば、フィルム全体としての位相差発現性能、つまりリターデーション値Ro、Rthは不変である。上述のように、セルロースアシレートフィルムの位相差フィルムとしての位相差発現性能、つまりリターデーション値Ro、Rthが高いほど、偏光子との軸ずれによる偏光度の低下が大きい。また、偏光子との貼合面において、接着剤の収縮及び硬化時の発熱といった外的要因により、セルロースアシレートフィルムの軸ずれが発生しやすい。よって、リターデーション値Ro、Rthが微視的に小さくなるように構成されている貼合面を偏光子と貼合する場合は、フィルム全体に均一にTg低下剤が存在する面を偏光子に貼合する場合と比較して、同程度の軸ずれが生じても、偏光板の偏光度の低下の度合いが小さくてすむ。結果として、軸ずれに起因する偏光板の偏光度の低下が緩和される。
従来、セルロースアシレートフィルムを構成するのに用いられる添加剤は、通常、フィルムの内部において可能な限り均一に分布するように種々の工夫がなされていた。つまり、セルロースアシレートフィルムへの各種の添加剤の添加を検討する当業者であれば、より均一な配合を念頭に置くことはあっても、添加剤の配合に分布を持たせようとすることはしないはずである。従って、このような技術常識の下で、あえてTg低下剤の配合に分布を持たせたことにより、上述したような優れた作用効果を発揮することができる本発明は、先行技術に対して極めて優位性の高い技術を提供するものであるといえる。
<その他の添加剤>
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、上述したTg低下剤に加えて、その他の添加剤を含有することができる。以下、本発明に用いられ得る添加剤について、説明する。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、上述したTg低下剤に加えて、その他の添加剤を含有することができる。以下、本発明に用いられ得る添加剤について、説明する。
(加水分解防止剤)
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、加水分解防止剤を含むことができる。このように、セルロースアシレートフィルムが加水分解防止剤を含むことで、セルロースアシレートの加水分解が防止されることから、セルロースアシレートフィルムの耐水性が向上し得る。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、加水分解防止剤を含むことができる。このように、セルロースアシレートフィルムが加水分解防止剤を含むことで、セルロースアシレートの加水分解が防止されることから、セルロースアシレートフィルムの耐水性が向上し得る。
本発明において用いられ得る加水分解防止剤とは、それを含まないアシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート単独での耐加水分解性が、それを添加することによって低下する添加剤を意味し、このような定義を満足する限り、いかなる物質が加水分解防止剤として用いられてもよい。
ある物質が加水分解防止剤の概念に含まれるか否かを判定するための、セルロースアシレートフィルムの耐加水分解性の指標としては、ケン化前後での質量変化率が用いられ得る。具体的には、フィルムを50℃の2.0MのKOH水溶液に90秒間浸漬して、その前後のフィルムの質量変化率を計算する。質量変化率によれば、アルカリ溶液中で、加水分解され、ケン化液中に溶け出したセルロースアシレートの割合を把握できる。セルロースアシレートのみで製膜したフィルムの質量変化率をd1%、セルロースアシレート100質量部に対して、添加剤5質量部添加したフィルムの質量変化率をd2%として、|d1|>|d2|を満たす場合に、当該添加剤はセルロースアシレートに対する加水分解防止剤であると判断することができる。
また、アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートの種類に応じて、ある物質が加水分解防止剤の定義に該当する場合と該当しない場合とが生じるときには、当該物質は加水分解防止剤の定義に該当する場合におけるアシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートとの併用であれば、本発明において加水分解防止剤として用いられ得る。
加水分解防止剤の加水分解防止能について特に制限はないが、加水分解防止剤の疎水性の指標である平均logP値によって表すことができる。平均logP値が高いほど、加水分解防止剤として好ましい性能を有しているといえる。
ここで、logP値は、オクタノール−水分配係数やlogPowとも称され、n−オクタノール及び水からなる二相溶媒系の各相へのある物質の分配濃度の比の値の常用対数として定義される。そして、平均logP値は、加水分解防止剤が複数種の化合物の混合物として用いられる場合を考慮し、混合物を構成する各化合物の固有のlogP値をまず求めた後、混合物における各化合物の混合比率(質量比)によって重み付けすることにより算出される。
logP値は、JIS Z−7260−107:2000に記載のフラスコ振盪法により測定された値である。また、logP値は、実測に代わって、計算化学的手法又は経験的方法により見積もられた値であってもよい。
logP値は、JIS Z−7260−107:2000に記載のフラスコ振盪法により測定された値である。また、logP値は、実測に代わって、計算化学的手法又は経験的方法により見積もられた値であってもよい。
計算化学的手法によってlogP値を求める場合、その計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27巻、p21(1987年))、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29巻、p163(1989年))、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.,19巻、p71(1984年))、CLogP法(参考文献Leo,A.,Jow,P.Y.C.,Silipo,C.,Hansch,C.,J.Med.Chem.,18,865 1975年)等が好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27巻、p21(1987年))が好ましい。ただし、上述したフラスコ振盪法による実測値と、計算化学的手法又は経験的方法によって見積もられた値とが有意に異なる場合、フラスコ振盪法による実測値が優先する。
本発明において用いられる加水分解防止剤の平均logP値は、好ましくは7.5以上であり、より好ましくは8.0以上であり、さらに好ましくは9.0以上であり、特に好ましくは9.5以上である。加水分解防止剤の平均logP値が、このような範囲内の値であると、少ない添加量でも優れた加水分解防止効果が発揮され得る。このため、添加剤を多量に添加せざるを得ない場合等に発生するブリードアウト等の発生が防止され得る。一方、加水分解防止剤の平均logP値の上限値について特に制限はないが、セルロースアシレートとの相溶性という観点から、通常は13.0以下程度であることが好ましい。
本発明において用いられ得る加水分解防止剤の具体的な形態については、上述した加水分解防止剤の定義を満たす限り、好ましくは上述したlogP値の好ましい範囲も満たす限り、特に制限はない。加水分解防止剤の一例としては、下記一般式(II)で表される糖エステル化合物が挙げられる。
一般式(II) (HO)m−G−(O−C(=O)−R2)l
〔式中、Gは単糖類又は二糖類の残基を表す。R2は脂肪族基又は芳香族基を表す。mは単糖類又は二糖類の残基に、直接結合しているヒドロキシ基の数の合計を表す。lは単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R2)基の数の合計を表し、3≦m+l≦8であり、l≠0である。〕
一般式(II) (HO)m−G−(O−C(=O)−R2)l
〔式中、Gは単糖類又は二糖類の残基を表す。R2は脂肪族基又は芳香族基を表す。mは単糖類又は二糖類の残基に、直接結合しているヒドロキシ基の数の合計を表す。lは単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R2)基の数の合計を表し、3≦m+l≦8であり、l≠0である。〕
一般式(II)で表される構造を有する化合物は、ヒドロキシ基の合計数m、−(O−C(=O)−R2)基の合計数lが固定された単一種の化合物として単離することは困難であり、式中のm、lの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。従って、ヒドロキシ基の数m、−(O−C(=O)−R2)基の数lが各々変化した混合物としての性能が重要である。
本発明のセルロースアシレートフィルムの場合、ヘイズ特性に対し、一般式(II)で表される構造を有し、かつm=0の成分と、m>0の成分との混合比率が45:55〜0:100の範囲内である化合物が好ましい。さらに性能的、コスト的により好ましくは、m=0の成分と、m>0の成分との混合比率が10:90〜0.1:99.9の範囲である。なお、上記m=0の成分とm>0の成分は、常法により高速液体クロマトグラフィによって測定することが可能である。
本発明のセルロースアシレートフィルムの場合、ヘイズ特性に対し、一般式(II)で表される構造を有し、かつm=0の成分と、m>0の成分との混合比率が45:55〜0:100の範囲内である化合物が好ましい。さらに性能的、コスト的により好ましくは、m=0の成分と、m>0の成分との混合比率が10:90〜0.1:99.9の範囲である。なお、上記m=0の成分とm>0の成分は、常法により高速液体クロマトグラフィによって測定することが可能である。
上記一般式(II)においてGが表す残基の単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース等が挙げられる。
また、Gが表す残基の二糖類の具体例としては、例えばトレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロース等が挙げられる。
以下に、一般式(II)で表される、二糖類残基を有する化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
以下に、一般式(II)で表される、二糖類残基を有する化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
一般式(II)において、R2が表す脂肪族基又は芳香族基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。
一般式(II)において、m、lは、3≦m+l≦8であることが必要であり、4≦m+l≦8であることが好ましい。また、l≠0である。なお、lが2以上である場合、−(O−C(=O)−R2)基は互いに同じでもよいし異なっていてもよい。
一般式(II)のR2の定義における脂肪族基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。脂肪族基の炭素数は、炭素数1〜25が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数2〜15がさらに好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシル等が挙げられる。
また、一般式(II)のR2の定義における芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。複素環の具体例としては、例えばフラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等が挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン、トリアジン、キノリンが特に好ましい。
以下、一般式(II)で表される化合物の合成例を示す。
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、下記例示化合物(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C−4)及び(C−5)の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、(C−1)が7質量%、(C−2)が58質量%、(C−3)が23質量%、(C−4)が9質量%、(C−5)が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%の(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C−4)及び(C−5)を得た。
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、下記例示化合物(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C−4)及び(C−5)の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、(C−1)が7質量%、(C−2)が58質量%、(C−3)が23質量%、(C−4)が9質量%、(C−5)が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%の(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C−4)及び(C−5)を得た。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムに添加され得る加水分解防止剤は、上述したようにフィルムに耐水性を付与するという作用効果を発揮する。従って、この加水分解防止剤は、上述したTg低下剤とは異なり、可能な限り、フィルム全体に均一に分布していることが好ましい。
このことを定量的に表現すれば、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて検出される、フィルムの両面における加水分解防止剤の検出値をそれぞれdC、dDとしたとき、下記数式(2)により示されるs値が、1.1未満であることが好ましい。
〔式中、max{dC,dD}はdC又はdDのうち大きい方を表し、min{dC,dD}はdC又はdDのうち大きくない方を表す。〕
Tg低下剤の検出値の偏りについて上述した説明から理解されるように、加水分解防止剤の検出値の偏りについてのこの好ましい実施形態は、要するに、セルロースアシレートフィルムの両面における、飛行時間型二次イオン質量分析法による加水分解防止剤の検出値にほとんど偏りがない、具体的にはその比が1.1未満となる程度しか偏りがない、ということを意味する。
なお、好ましい実施形態では、s値は理論上、1以上の実数である。s値は1.1未満であればよいが、s値は好ましくは1.05以下であり、より好ましくは1.03以下であり、さらに好ましくは1.02以下であり、特に好ましくは1.01以下であり、最も好ましくは1.005以下である。
(可塑剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、本発明の効果を得る上で、必要に応じて、従来公知の可塑剤を含有してもよい。上述した一般式(I)や一般式(II)で表される化合物は、可塑剤としても用いられるが、これら以外の可塑剤を含有することもできる。
他の可塑剤の具体的な形態は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。これらのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、本発明の効果を得る上で、必要に応じて、従来公知の可塑剤を含有してもよい。上述した一般式(I)や一般式(II)で表される化合物は、可塑剤としても用いられるが、これら以外の可塑剤を含有することもできる。
他の可塑剤の具体的な形態は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。これらのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルとからなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは、次の一般式(III)で表される。
一般式(III) R11−(OH)n
〔式中、R11はn価の有機基を表す。nは2以上の整数を表す。OH基はアルコール性及び/又はフェノール性ヒドロキシ基を表す。〕
一般式(III) R11−(OH)n
〔式中、R11はn価の有機基を表す。nは2以上の整数を表す。OH基はアルコール性及び/又はフェノール性ヒドロキシ基を表す。〕
好ましい多価アルコールとしては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等が挙げられる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアシレートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアシレートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基又はエトキシ基等のアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基又はエトキシ基等のアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがさらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアシレートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(IV)で表される。
一般式(IV) R12(COOH)m1(OH)n1
〔式中、R12は(m1+n1)価の有機基を表し、m1は2以上の整数を表し、n1は0以上の整数を表し、COOH基はカルボキシ基を表し、OH基はアルコール性及び/又はフェノール性ヒドロキシ基を表す。〕
一般式(IV) R12(COOH)m1(OH)n1
〔式中、R12は(m1+n1)価の有機基を表し、m1は2以上の整数を表し、n1は0以上の整数を表し、COOH基はカルボキシ基を表し、OH基はアルコール性及び/又はフェノール性ヒドロキシ基を表す。〕
好ましい多価カルボン酸の例としては、以下を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸等を好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上等の点で好ましい。
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸等を好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上等の点で好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく、公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
例えば炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪族飽和アルコール又は脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
例えば炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪族飽和アルコール又は脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール又はその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール等の芳香族アルコール又はその誘導体等も好ましく用いることができる。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性又はフェノール性のヒドロキシ基を、モノカルボン酸を用いてエステル化してもよい。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性又はフェノール性のヒドロキシ基を、モノカルボン酸を用いてエステル化してもよい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることがさらに好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースアシレートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は1種類でもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、リターデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は1種類でもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、リターデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価の値としては、JIS K0070に準拠して測定した値を採用するものとする。
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
(紫外線吸収剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することにより、セルロースアシレートフィルムの耐久性の向上を目的として添加される。セルロースアシレートフィルムにおける波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することにより、セルロースアシレートフィルムの耐久性の向上を目的として添加される。セルロースアシレートフィルムにおける波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤である。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒とセルロースアシレート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースアシレートフィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、フィルムの全質量に対して0.5〜10.0質量%が好ましく、0.6〜4.0質量%がさらに好ましい。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースアシレートフィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、フィルムの全質量に対して0.5〜10.0質量%が好ましく、0.6〜4.0質量%がさらに好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤とも称される。高湿高温の状態に液晶画像表示装置等が置かれた場合には、セルロースアシレートフィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、セルロースアシレートフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースアシレートフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、セルロースアシレートフィルム中に含有させることが好ましい。
酸化防止剤は劣化防止剤とも称される。高湿高温の状態に液晶画像表示装置等が置かれた場合には、セルロースアシレートフィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、セルロースアシレートフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースアシレートフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、セルロースアシレートフィルム中に含有させることが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロースアシレートフィルムに対して質量割合で1〜5000ppmが好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
これらの化合物の添加量は、セルロースアシレートフィルムに対して質量割合で1〜5000ppmが好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
(酸捕捉剤)
セルロースアシレートは高温下では酸によっても分解が促進されるため、本発明のセルロースアシレートフィルムに用いる場合においては酸捕捉剤を含有することが好ましい。
有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、なかでも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているエポキシ基を有する化合物が好ましい。
セルロースアシレートは高温下では酸によっても分解が促進されるため、本発明のセルロースアシレートフィルムに用いる場合においては酸捕捉剤を含有することが好ましい。
有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、なかでも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているエポキシ基を有する化合物が好ましい。
このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は、当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等がある。また、塩化ビニルポリマー組成物において、又は塩化ビニルポリマー組成物とともに、従来から利用されているような金属エポキシ化合物、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(すなわち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル等も挙げられる。エポキシ化不飽和脂肪酸エステルは、特に、炭素数2〜22の脂肪酸と、炭素数2〜4のアルコールとのエステルが好ましく、例えばブチルエポキシステアレート等が挙げられる。他にも、エポキシ化大豆油等のような種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等の組成物によって代表され、例示され得るエポキシ化植物油、他の不飽和天然油が含まれる。これら油脂は、エポキシ化天然グリセリド又は不飽和脂肪酸とも呼ばれ、これら油脂の脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815Cも好ましく用いることができる。
さらに上記以外に用いることが可能な酸捕捉剤としては、オキセタン化合物やオキサゾリン化合物、アルカリ土類金属の有機酸塩、アセチルアセトナート錯体、特開平5−194788号公報の段落0068〜0105に記載されている化合物が含まれる。
なお、酸捕捉剤は酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。
なお、酸捕捉剤は酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。
(微粒子)
本発明のセルロースアシレートフィルムには、取扱性を向上させるため、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子等のマット剤を含有させることが好ましい。なかでも二酸化ケイ素が、セルロースアシレートフィルムのヘイズを小さくできるため、好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、取扱性を向上させるため、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子等のマット剤を含有させることが好ましい。なかでも二酸化ケイ素が、セルロースアシレートフィルムのヘイズを小さくできるため、好ましい。
微粒子の1次平均粒径としては、20nm以下が好ましく、より好ましくは5〜16nmであり、特に好ましくは5〜12nmである。
これらの微粒子は、平均粒径が0.1〜5.0μmの2次粒子を形成してセルロースアシレートフィルムに含まれることが好ましく、より好ましい平均粒径は0.1〜2.0μmであり、さらに好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、セルロースアシレートフィルムの表面に、高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成することができ、凹凸によって表面に適切な滑り性を与えることができる。
これらの微粒子は、平均粒径が0.1〜5.0μmの2次粒子を形成してセルロースアシレートフィルムに含まれることが好ましく、より好ましい平均粒径は0.1〜2.0μmであり、さらに好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、セルロースアシレートフィルムの表面に、高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成することができ、凹凸によって表面に適切な滑り性を与えることができる。
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とする。
<セルロースアシレートフィルムの製造方法>
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムの製造方法は、ドープを金属支持体上に流延して得られたフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を含む。当該ドープは、アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート及びTg低下剤を必須に含むので、得られたセルロースアシレートフィルムの両表面におけるTg低下剤の存在量がある程度偏るように、上記工程を行う。
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムの製造方法は、ドープを金属支持体上に流延して得られたフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を含む。当該ドープは、アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート及びTg低下剤を必須に含むので、得られたセルロースアシレートフィルムの両表面におけるTg低下剤の存在量がある程度偏るように、上記工程を行う。
セルロースアシレートフィルムの製造方法は、溶液流延法による方法であってもよいし、溶融流延法による方法であってもよいが、好ましくは溶液流延法による方法である。
以下、溶液流延法によるセルロースアシレートフィルムの製造方法を例に挙げて説明するが、下記の形態には限定されない。
以下、溶液流延法によるセルロースアシレートフィルムの製造方法を例に挙げて説明するが、下記の形態には限定されない。
溶液流延法によるセルロースアシレートフィルムの製造は、例えばアシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート及びTg低下剤並びに必要に応じてその他の添加剤を溶媒に溶解させてドープを調製する工程、無限に移行する無端の金属支持体上にドープを流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程を経る。
まず、ドープを調製する工程について説明する。
ドープ中のセルロースアシレートの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できることから好ましいが、セルロースアシレートの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。また、Tg低下剤やその他の添加剤については、ドープ調製釜に規定量をバッチ添加することが好ましい。
ドープ中のセルロースアシレートの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できることから好ましいが、セルロースアシレートの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。また、Tg低下剤やその他の添加剤については、ドープ調製釜に規定量をバッチ添加することが好ましい。
ドープの調製に用いられる溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースアシレートの良溶媒と貧溶媒とを混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶媒が多い方がセルロースアシレートの溶解性の点で好ましい。
良溶媒と貧溶媒との混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶媒が2〜30質量%である。良溶媒、貧溶媒とは、使用するセルロースアシレートを単独で溶解する溶媒が良溶媒と定義され、単独で膨潤するか又は溶解しない溶媒が貧溶媒と定義される。そのため、セルロースアシレートのアシル基置換度によって、良溶媒、貧溶媒が変わる。
本発明に用いられる良溶媒は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中に0.01〜2.00質量%の水が含まれていることが好ましい。
セルロースアシレートの溶解に用いられた溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収することにより、再利用され得る。
回収溶媒中に、セルロースアシレートに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分等が微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
回収溶媒中に、セルロースアシレートに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分等が微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記ドープを調製する時の、セルロースアシレートの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
溶媒の常圧での沸点以上、かつ加圧下で、溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止することができ、好ましい。
溶媒の常圧での沸点以上、かつ加圧下で、溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止することができ、好ましい。
加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶媒を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースアシレートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
好ましい加熱温度の範囲は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70〜105℃がさらに好ましい。
加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶媒の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。圧力は設定温度で溶媒が沸騰しないように調整される。
溶媒を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースアシレートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
好ましい加熱温度の範囲は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70〜105℃がさらに好ましい。
加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶媒の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。圧力は設定温度で溶媒が沸騰しないように調整される。
また、セルロースアシレートの溶解方法として、セルロースアシレートを貧溶媒と混合して湿潤又は膨潤させた後、さらに良溶媒を添加して溶解させる方法も好ましく用いられる。
その他、冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチル等の溶媒にセルロースアシレートを溶解させることができる。
その他、冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチル等の溶媒にセルロースアシレートを溶解させることができる。
次に、このセルロースアシレート溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、濾過材の目詰まりの発生を抑える観点から、絶対濾過精度が0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が、繊維の脱落等がなく好ましい。
濾過により、原料のセルロースアシレートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
濾過により、原料のセルロースアシレートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことをいう。
径が0.01mm以上である輝点異物の数が200個/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは100個/cm2以下であり、さらに好ましくは50個/m2以下であり、特に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、径が0.01mm以下の輝点異物も少ない方が好ましい。
径が0.01mm以上である輝点異物の数が200個/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは100個/cm2以下であり、さらに好ましくは50個/m2以下であり、特に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、径が0.01mm以下の輝点異物も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶媒の常圧での沸点以上、かつ加圧下で、溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差の上昇が小さく、好ましい。
好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃がさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃がさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
ここで、上述したように、得られるセルロースアシレートフィルムの両表面におけるTg低下剤の存在量がある程度偏るように、一連の工程を行う。具体的には、製造されたセルロースアシレートフィルムの偏光子との貼合面と他方の面とにおけるTg低下剤の検出値dA、dBから定まるr値が、1.1以上となるように、上記の一連の工程を行う。
r値が1.1以上となるように上記工程を行う具体的な手法については特に制限がなく、種々の手法が採用され得る。以下、代表的な3つの実施形態(第1の形態〜第3の形態)について説明するが、このような形態に限定されない。
(第1の形態)
第1の形態は、ドープを調製する際の各種材料の選択により、上記工程の実施を可能とする。具体的には、ドープの必須成分として、セルロースアシレート、Tg低下剤及び溶媒の3成分があるが、これら3成分のそれぞれのハンセンの溶解度パラメーターの値が、所定の関係を満たすように材料を選択する。これにより、得られたセルロースアシレートフィルムにおいてTg低下剤の分布を厚さ方向に偏らせることができることが判明した。より詳細には、セルロースアシレート、Tg低下剤及び溶媒のそれぞれのハンセンの溶解度パラメーターの値を、この順に、HSPC、HSPG、HSPSとしたとき、下記数式(4)を満足するようにそれぞれの材料を選択すればよい。
数式(4) |HSPG−HSPC|>|HSPG−HSPS|
第1の形態は、ドープを調製する際の各種材料の選択により、上記工程の実施を可能とする。具体的には、ドープの必須成分として、セルロースアシレート、Tg低下剤及び溶媒の3成分があるが、これら3成分のそれぞれのハンセンの溶解度パラメーターの値が、所定の関係を満たすように材料を選択する。これにより、得られたセルロースアシレートフィルムにおいてTg低下剤の分布を厚さ方向に偏らせることができることが判明した。より詳細には、セルロースアシレート、Tg低下剤及び溶媒のそれぞれのハンセンの溶解度パラメーターの値を、この順に、HSPC、HSPG、HSPSとしたとき、下記数式(4)を満足するようにそれぞれの材料を選択すればよい。
数式(4) |HSPG−HSPC|>|HSPG−HSPS|
ハンセンの溶解度パラメーター(HSP)は、チャールズ・ハンセンによって開発された、物質の溶解性を示すためのパラメーターである。上記ハンセンの溶解度パラメーターHSPC、HSPG、HSPSの値として、Hansen, Charles (2007). Hansen Solubility Parameters: A user’s handbook, Second Editionに記載された方法により測定された値を採用する。なお、セルロースアシレート、Tg低下剤及び溶媒が、それぞれ2種以上の混合物となっている形態もあり得るが、そのような形態におけるHSPC、HSPG、HSPSの値としては、混合物として測定された値を採用する。
上記数式(4)の技術的意義について簡単に説明すると、|HSPG−HSPC|は、Tg低下剤の溶解度パラメーターの値HSPGとセルロースアシレートの溶解度パラメーターの値HSPCとの差の絶対値を意味する。一方、|HSPG−HSPS|は、Tg低下剤の溶解度パラメーターの値HSPGと溶媒の溶解度パラメーターの値HSPSとの差の絶対値を意味する。そして、数式(4)が成立するということは、前者が後者よりも大きい、すなわちTg低下剤の溶解度パラメーターの値HSPGが、セルロースアシレートの値HSPCよりも溶媒の値HSPSに近いことを意味する。
数式(4)を満たすように材料を選択したとき、得られたセルロースアシレートフィルムにおいて、Tg低下剤の分布がフィルムの厚さ方向に偏るメカニズムは完全には明らかではないが、溶解度パラメーターが近いほど溶解性(親和性)がより高いことを意味することから、以下のようなメカニズムが推定されている。すなわち、金属支持体上で乾燥させたときに、金属支持体に接していない面(空気との界面)から徐々に溶剤が揮発していくため、セルロースアシレートフィルムの厚さ方向で溶剤の濃度勾配が発生する。その際、Tg低下剤の溶剤に対する親和性が、セルロースアシレートに対する親和性よりも高ければ、より溶剤濃度の大きな金属支持体側に偏って存在することになると考えられる。
溶解度パラメーターの値HSPC、HSPG、HSPSが、上記数式(4)を満たす場合、|HSPG−HSPC|は、|HSPG−HSPS|の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、製造されたセルロースアシレートフィルムにおけるTg低下剤の厚さ方向の分布の偏りを確実に発現させることが可能となる。
続いて、ドープの流延(キャスト)について説明する。
流延(キャスト)工程に用いられる金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト又は鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
流延(キャスト)工程に用いられる金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト又は鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶媒の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましい。しかし、あまり温度が高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化したりする場合がある。
好ましい支持体温度の範囲は0〜55℃であり、25〜50℃がさらに好ましい。
また、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
好ましい支持体温度の範囲は0〜55℃であり、25〜50℃がさらに好ましい。
また、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短くなり好ましい。温風を用いる場合、目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
次に、流延によって得られたフィルムを乾燥し、剥離する。
ここで、セルロースアシレートフィルムにおいてTg低下剤の分布を厚さ方向に偏らせる第2の実施形態として、ドープを金属支持体上に流延した後のプロセス条件を制御する方法が挙げられる。
具体的には、フィルムを金属支持体から剥離する時点におけるフィルム中の残留溶媒量を少なめにする。すなわち、より過酷な条件下で乾燥することにより、得られたセルロースアシレートフィルムにおいてTg低下剤の分布が厚さ方向に偏ったものとすることが可能となることが判明した。
ここで、セルロースアシレートフィルムにおいてTg低下剤の分布を厚さ方向に偏らせる第2の実施形態として、ドープを金属支持体上に流延した後のプロセス条件を制御する方法が挙げられる。
具体的には、フィルムを金属支持体から剥離する時点におけるフィルム中の残留溶媒量を少なめにする。すなわち、より過酷な条件下で乾燥することにより、得られたセルロースアシレートフィルムにおいてTg低下剤の分布が厚さ方向に偏ったものとすることが可能となることが判明した。
より詳細には、金属支持体から剥離する時点におけるフィルム中の残留溶媒量が、90%以下となるようにプロセス条件を制御すればよい。なお、金属支持体から剥離する時点におけるフィルム中の残留溶媒量は、好ましくは85%以下であり、より好ましくは80%以下である。また、この第2の形態による制御と、上述した第1の形態(ドープ調製時の材料の選択)による制御とが併せて実施されてもよい。もちろん、いずれか一方のみの制御によっても、Tg低下剤の分布の偏りを有するセルロースアシレートフィルムを製造することが可能である。
残留溶媒量は、下記数式5で定義される。
数式(5) 残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
〔式中、Mはウェブ又はセルロースアシレートフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量を表し、Nは当該試料を115℃にて1時間加熱した後の質量を表す。〕
数式(5) 残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
〔式中、Mはウェブ又はセルロースアシレートフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量を表し、Nは当該試料を115℃にて1時間加熱した後の質量を表す。〕
残留溶媒量の値を所定の値以下とするために制御されるプロセス条件としては、金属支持体からフィルムを剥離する前の乾燥条件が挙げられる。金属支持体からのフィルム剥離前の乾燥条件の具体的な形態について特に制限はなく、剥離時点でのフィルムの残留溶媒量の値が所定の値以下となるように乾燥条件を制御することは、当業者であれば特段の困難性を伴うことなく実施することが可能である。乾燥条件の一例を挙げると、乾燥温度の範囲は、好ましくは25〜50℃程度であり、より好ましくは35〜45℃である。また、乾燥時間は、好ましくは15〜150秒間程度であり、より好ましくは25〜120秒間である。剥離時点でのフィルムの残留溶媒量の値が所定の値以下となるのであれば、これらの範囲を外れる条件が採用されてもよいことはもちろんである。
乾燥工程において採用される乾燥手段について特に制限はなく、公知の知見が適宜参照され得る。乾燥手段の具体例としては、熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等が挙げられるが、簡便さの観点から、熱風で行うことが好ましい。
次に、金属支持体から剥離されたフィルム(ウェブ)を延伸する。この際、剥離されたフィルム(ウェブ)の両端を、クリップ等で把持するテンター方式で幅方向(フィルムの面内で製膜方向に直交する方向)に延伸を行うことが特に好ましい。また、金属支持体からの剥離張力は、300N/m以下とすることが好ましい。
延伸処理時の条件を調節することによって、得られたセルロースアシレートフィルムの膜厚や、リターデーション値を制御することができる。
例えば、長手方向の張力を低く又は高くすることでリターデーションを変動させることが可能となる。また、フィルムの長手方向(製膜方向又は流延方向ともいう)と幅方向に対して、逐次又は同時に、2軸延伸又は1軸延伸することでリターデーションを変動させることができる。
例えば、長手方向の張力を低く又は高くすることでリターデーションを変動させることが可能となる。また、フィルムの長手方向(製膜方向又は流延方向ともいう)と幅方向に対して、逐次又は同時に、2軸延伸又は1軸延伸することでリターデーションを変動させることができる。
互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には長手方向に0.8〜1.5倍、幅方向に1.1〜2.0倍の範囲とすることが好ましく、長手方向に0.8〜1.1倍、幅方向に1.3〜1.7倍の範囲で行うことがより好ましく、幅方向に1.3〜1.5倍の範囲で行うことが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは延伸しやすく、またリターデーションが発現しやすいこともあり、破断等の工程故障に関して耐性が高い。
本発明のセルロースアシレートフィルムは延伸しやすく、またリターデーションが発現しやすいこともあり、破断等の工程故障に関して耐性が高い。
延伸時の温度範囲は120℃〜200℃が好ましく、より好ましくは130℃〜170℃であり、さらに好ましくは140℃を超えて160℃以下である。延伸処理の際のフィルム中の残留溶媒量の範囲は20〜0%が好ましく、より好ましくは15〜0%である。より詳細には、例えば温度155℃で残留溶媒量が11%で延伸するか、温度155℃で残留溶媒量が2%で延伸することが好ましい。或いは、温度160℃で残留溶媒量が11%で延伸するか、160℃で残留溶媒量が1%未満で延伸することが好ましい。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のローラーに周速差をつけ、その周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、又は縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法等が挙げられる。もちろんこれらの方法は、組み合わせて用いてもよい。
いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の可能性を減少できるので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持又は横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
製膜工程のこれらの幅保持又は横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
上述した延伸後に、さらに乾燥する工程を行い、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.10質量%以下であり、さらに好ましくは0.00〜0.01質量%以下である。
延伸後の乾燥温度としては、125℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。150℃を超えると、セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgに近づくことから、リターデーション値の低下や配向角のズレ等が生じる場合があり、好ましくない。
延伸後の乾燥温度としては、125℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。150℃を超えると、セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgに近づくことから、リターデーション値の低下や配向角のズレ等が生じる場合があり、好ましくない。
以上、溶液流延法による製造方法を例に挙げて説明したが、製造コストの観点から、溶融流延法によって製造してもよい。この場合には、上述した第2の形態による制御によって、所望のセルロースアシレートフィルムを得ることができる。
溶液流延法において用いられる溶媒(例えば塩化メチレン等)を用いずに、加熱溶融する溶融流延による成形法は、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。これらのなかで、機械的強度及び表面精度等に優れるセルロースアシレートフィルムを得るためには、溶融押出成形法が優れている。溶融流延法によってセルロースアシレートのウェブを得るための具体的な手法について特に制限はなく、公知の知見が適宜参照され得る。
溶液流延法、溶融流延法の他にも、共流延法によって厚さ方向にTg低下剤の分布が偏ったセルロースアシレートフィルムを製造することができる。
以下、セルロースアシレートフィルムにおけるTg低下剤の分布を厚さ方向に偏らせる第3の形態として、共流延法によるセルロースアシレートフィルムの製造方法を説明する。具体的には、第3の形態に係る製造方法は、Tg低下剤の濃度が異なる複数のドープを金属支持体上に共流延する工程、流延して得られたフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を含む。
以下、セルロースアシレートフィルムにおけるTg低下剤の分布を厚さ方向に偏らせる第3の形態として、共流延法によるセルロースアシレートフィルムの製造方法を説明する。具体的には、第3の形態に係る製造方法は、Tg低下剤の濃度が異なる複数のドープを金属支持体上に共流延する工程、流延して得られたフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を含む。
(第3の形態)
まず、セルロースアシレート、Tg低下剤、その他の添加剤を含む複数のドープを調製する。共流延するドープが2つの場合、Tg低下剤の濃度が低いドープAと、Tg低下剤の濃度が高いドープBとを調製し、ドープAが表面層側、ドープBが金属支持体層側となるように金属支持体上に共流延すればよい。Tg低下剤の濃度が異なる3つ以上のドープを共流延する場合、Tg低下剤の濃度が高くなる順に、表面層側から金属支持体層側に向かって各ドープを積層して共流延を行うという形態が好ましく挙げられる。なお、この第3の形態におけるドープ中のTg低下剤の濃度の具体的な値について特に制限はなく、得られるセルロースアシレートフィルム全体のリターデーション値を考慮して、適宜調節すればよい。
まず、セルロースアシレート、Tg低下剤、その他の添加剤を含む複数のドープを調製する。共流延するドープが2つの場合、Tg低下剤の濃度が低いドープAと、Tg低下剤の濃度が高いドープBとを調製し、ドープAが表面層側、ドープBが金属支持体層側となるように金属支持体上に共流延すればよい。Tg低下剤の濃度が異なる3つ以上のドープを共流延する場合、Tg低下剤の濃度が高くなる順に、表面層側から金属支持体層側に向かって各ドープを積層して共流延を行うという形態が好ましく挙げられる。なお、この第3の形態におけるドープ中のTg低下剤の濃度の具体的な値について特に制限はなく、得られるセルロースアシレートフィルム全体のリターデーション値を考慮して、適宜調節すればよい。
<セルロースアシレートフィルムの物性>
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムの膜厚は、薄膜であることが好ましく、10〜200μmの範囲が用いられ、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜60μmであり、さらに好ましくは20〜60μmである。
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムの幅は、1.0〜4.0mである。特に1.4〜4.0mの幅が好ましく、より好ましくは1.6〜3.0mである。幅が4.0m以下であると、搬送が容易である。
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムの膜厚は、薄膜であることが好ましく、10〜200μmの範囲が用いられ、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜60μmであり、さらに好ましくは20〜60μmである。
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムの幅は、1.0〜4.0mである。特に1.4〜4.0mの幅が好ましく、より好ましくは1.6〜3.0mである。幅が4.0m以下であると、搬送が容易である。
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムのリターデーション値Ro、Rthは、下記数式(6)、(7)により求められる。
数式(6) Ro=(nx−ny)×d [nm]
数式(7) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d [nm]
〔式中、nxはセルロースアシレートフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表す。nyはセルロースアシレートフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表す。nzはセルロースアシレートフィルムの厚さ方向の屈折率を表す。屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定した値である。dはセルロースアシレートフィルムの厚さ(nm)を表す。〕
数式(6) Ro=(nx−ny)×d [nm]
数式(7) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d [nm]
〔式中、nxはセルロースアシレートフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表す。nyはセルロースアシレートフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表す。nzはセルロースアシレートフィルムの厚さ方向の屈折率を表す。屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定した値である。dはセルロースアシレートフィルムの厚さ(nm)を表す。〕
上記リターデーション値Ro、Rthは、得られたセルロースアシレートフィルムから試料35mm×35mmを切り出し、25℃×55%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株)製)で、590nmにおける垂直方向から測定した値と、セルロースアシレートフィルム面を傾けながら同様に測定したリターデーション値の外挿値から算出することができる。
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムは、求められる光学補償効果によって必要とされる位相差は異なるものの、高い位相差発現性を活かす観点から、リターデーション値Ro、Rthが、下記範囲を満たすことが好ましい。
10 ≦Ro ≦ 100
70 ≦ Rth≦ 300
ここで、リターデーション値Roは、好ましくは30〜70であり、より好ましくは40〜60であり、さらに好ましくは45〜55である。
また、リターデーション値Rthは、好ましくは90〜230であり、より好ましくは100〜170であり、さらに好ましくは110〜160である。
10 ≦Ro ≦ 100
70 ≦ Rth≦ 300
ここで、リターデーション値Roは、好ましくは30〜70であり、より好ましくは40〜60であり、さらに好ましくは45〜55である。
また、リターデーション値Rthは、好ましくは90〜230であり、より好ましくは100〜170であり、さらに好ましくは110〜160である。
セルロースアシレートフィルムの遅相軸又は進相軸が、セルロースアシレートフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とすると、θ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記範囲を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制又は防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
セルロースアシレートフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで300〜1800g/m2・24hが好ましく、さらに400〜1500g/m2・24hが好ましく、400〜1300g/m2・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z0208に記載の方法に従い測定することができる。
セルロースアシレートフィルムの破断伸度の範囲は、10〜80%であることが好ましく、20〜50%であることがより好ましい。
セルロースアシレートフィルムの可視光透過率の範囲は、90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。
セルロースアシレートフィルムのヘイズは、1.0%未満であることが好ましく、0.0〜0.1%であることがより好ましい。
セルロースアシレートフィルムの可視光透過率の範囲は、90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。
セルロースアシレートフィルムのヘイズは、1.0%未満であることが好ましく、0.0〜0.1%であることがより好ましい。
<光硬化性接着剤>
偏光子とセルロースアシレートフィルムとを貼合するための光硬化性接着剤の好ましい例には、以下の(α)〜(δ)の各成分を含有する光硬化性接着剤組成物が含まれる。
偏光子とセルロースアシレートフィルムとを貼合するための光硬化性接着剤の好ましい例には、以下の(α)〜(δ)の各成分を含有する光硬化性接着剤組成物が含まれる。
(α)カチオン重合性化合物
(β)光カチオン重合開始剤
(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤
(δ)ナフタレン系光増感助剤
(β)光カチオン重合開始剤
(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤
(δ)ナフタレン系光増感助剤
(カチオン重合性化合物(α))
光硬化性接着剤組成物の主成分であり、重合硬化により接着力を与える成分となるカチオン重合性化合物(α)は、カチオン重合により硬化する化合物であればよいが、特に分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。エポキシ化合物には、分子内に芳香環を有する芳香族エポキシ化合物、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個が脂環式環に結合している脂環式エポキシ化合物、分子内に芳香環を有さず、エポキシ基とそれが結合する2個の炭素原子を含む環(通常はオキシラン環)の一方の炭素原子が別の脂肪族炭素原子に結合している脂肪族エポキシ化合物等がある。本発明に用いる光硬化性接着剤組成物は、カチオン重合性化合物(α)として、芳香環を含まないエポキシ樹脂、特に脂環式エポキシ化合物を主成分とするものが好ましい。脂環式エポキシ化合物を主成分とするカチオン重合性化合物を用いれば、貯蔵弾性率の高い硬化物を与え、その硬化物(接着剤層)を介してセルロースアシレートフィルムと偏光子が接着された偏光板において、偏光子が割れにくくなる。
光硬化性接着剤組成物の主成分であり、重合硬化により接着力を与える成分となるカチオン重合性化合物(α)は、カチオン重合により硬化する化合物であればよいが、特に分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。エポキシ化合物には、分子内に芳香環を有する芳香族エポキシ化合物、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個が脂環式環に結合している脂環式エポキシ化合物、分子内に芳香環を有さず、エポキシ基とそれが結合する2個の炭素原子を含む環(通常はオキシラン環)の一方の炭素原子が別の脂肪族炭素原子に結合している脂肪族エポキシ化合物等がある。本発明に用いる光硬化性接着剤組成物は、カチオン重合性化合物(α)として、芳香環を含まないエポキシ樹脂、特に脂環式エポキシ化合物を主成分とするものが好ましい。脂環式エポキシ化合物を主成分とするカチオン重合性化合物を用いれば、貯蔵弾性率の高い硬化物を与え、その硬化物(接着剤層)を介してセルロースアシレートフィルムと偏光子が接着された偏光板において、偏光子が割れにくくなる。
脂環式エポキシ化合物は上述のように、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個が脂環式環に結合しているものである。ここで、脂環式環に結合しているエポキシ基とは、次式(ep)に示すように、エポキシ基(−O−)の2本の結合手が脂環式環を構成する2個の炭素原子(通常は隣り合う炭素原子)にそれぞれ直接結合していることを意味する。下記一般式(ep)において、mは2〜5の整数を表す。
一般式(ep)における(CH2)m中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が、他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。脂環式環を構成する水素は、メチル基やエチル基のように、直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。なかでも、エポキシシクロペンタン環(上記一般式(ep)においてm=3のもの)や、エポキシシクロヘキサン環(上記一般式(ep)においてm=4のもの)を有する化合物が好ましい。
上記式中、R3〜R24は、各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R3〜R24がアルキル基の場合、脂環式環に結合する位置は1位〜6位の任意の数である。炭素原子数1〜6のアルキル基は、直鎖でもよく、分岐を有していてもよく、脂環式環を有していてもよい。Y8は、酸素原子又は炭素原子数1〜20のアルカンジイル基を表す。Y1〜Y7は、各々独立に直鎖でもよく、分岐を有していてもよく、脂環式環を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルカンジイル基を表す。n、p、q及びrは、各々独立に0〜20の数を表す。
上記式(ep−1)〜(ep−11)で表される化合物のうち、式(ep−2)で示される脂環式ジエポキシ化合物が、入手が容易なので好ましい。式(ep−2)の脂環式ジエポキシ化合物は、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール(そのシクロヘキサン環に炭素数1〜6のアルキル基が結合していてもよい)と、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸(そのシクロヘキサン環に炭素数1〜6のアルキル基が結合していてもよい)とのエステル化合物である。そのようなエステル化合物の具体例として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(式(ep−2)において、R5=R6=H、n=0である化合物)、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート(式(ep−2)において、R5=6−メチル、R6=6−メチル、n=0である化合物)等が挙げられる。
また、脂環式エポキシ化合物に、脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用することが有効である。脂環式エポキシ化合物を主成分とし、これに脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用したものを、カチオン重合性化合物とすれば、硬化物の高い貯蔵弾性率を保持しながら、偏光子とセルロースアシレートフィルムとの密着性を一層高めることができる。ここでいう脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂とは、分子内にエポキシ基とそれが結合する2個の炭素原子を含む環(通常はオキシラン環)の一方の炭素原子が別の脂肪族炭素原子に結合している化合物である。その例として、多価アルコール(フェノール)のポリグリシジルエーテルを挙げることができる。なかでも、入手が容易で偏光子とセルロースアシレートフィルムとの密着性を高める効果が大きいことから、下記一般式(ge)で示されるジグリシジルエーテル化合物が好ましい。
〔式中、Xは直接結合、メチレン基、炭素原子数1〜4のアルキリデン基、脂環式炭化水素基、O、S、SO2、SS、SO、CO、OCO又は下記式(ge−1)〜(ge−3)で表される3種の置換基からなる群から選ばれる置換基を表し、アルキリデン基はハロゲン原子で置換されていてもよい。〕
式(ge−1)において、R25及びR26は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルキル基又はアルコキシ基により置換されてもよいフェニル基あるいは炭素原子数1〜10のアルキル基又はアルコキシ基により置換されてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基を表し、R25及びR26は互いに連結して環を形成してもよい。
式(ge−2)において、A及びDは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基又はハロゲン原子を表し、当該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基中のメチレン基は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよい。aは0〜4の数を表し、dは0〜4の数を表す。
式(ge−2)において、A及びDは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基又はハロゲン原子を表し、当該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基中のメチレン基は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよい。aは0〜4の数を表し、dは0〜4の数を表す。
一般式(ge)のジグリシジルエーテル化合物としては、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ樹脂;脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;アルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられ、なかでも、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテルが、入手が容易なので好ましい。
上記の脂肪族多価アルコールとしては、例えば炭素数2〜20の範囲内のものを例示できる。より具体的には、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のポリオールが挙げられる。
脂環式エポキシ化合物と脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用する場合、両者の配合割合は、カチオン重合性化合物全体の量を基準に、脂環式エポキシ化合物を50〜95質量%、そして脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を5質量%以上とするのが好ましい。脂環式エポキシ化合物をカチオン重合性化合物全体中で50質量%以上配合することにより、硬化物の80℃における貯蔵弾性率が1,000MPa以上になり、このような硬化物(接着剤層)を介して偏光子とセルロースアシレートフィルムとが接着された偏光板において、偏光子が割れにくくなる。また、脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を、カチオン重合性化合物全体に対して5質量%以上配合することにより、偏光子とセルロースアシレートフィルムとの密着性が向上する。脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂の量は、カチオン重合性化合物が脂環式エポキシ化合物との二成分系である場合には、カチオン重合性化合物全体の量を基準に50質量%まで許容されるが、硬化物の貯蔵弾性率の低下を抑え、偏光子の割れを防止する観点から、カチオン重合性化合物全体の量を基準に45質量%以下とするのが好ましい。
光硬化性接着剤組成物を構成するカチオン重合性化合物(α)として、以上説明したような脂環式エポキシ化合物及び脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用する場合、それぞれが上述した量となる範囲において、これらに加えて、他のカチオン重合性化合物を含んでいてもよい。他のカチオン重合性化合物としては、式(ep−1)〜(ep−11)及び一般式(ge)以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。
式(ep−1)〜(ep−11)及び式(ge)以外のエポキシ化合物には、式(ep−1)〜(ep−11)以外の分子内に少なくとも1個の脂環式環に結合するエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物、式(ge)以外の脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有する脂肪族エポキシ化合物、分子内に芳香環とエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物における芳香環が水素化されている水素化エポキシ化合物等がある。
式(ep−1)〜(ep−11)以外の分子内に少なくとも1個の脂環式環に結合するエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物の例として、4−ビニルシクロヘキセンジエポキシドや1,2:8,9−ジエポキシリモネンのようなビニルシクロヘキセン類のジエポキシド等がある。
一般式(ge)以外の脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有する脂肪族エポキシ化合物の例として、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル等がある。
分子内に芳香環とエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物は、分子内に少なくとも2個のフェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物のグリシジルエーテルであることができ、その具体例として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル等がある。
芳香族エポキシ化合物における芳香環が水素化されている水素化エポキシ化合物は、上記の芳香族エポキシ化合物の原料である分子内に少なくとも2個のフェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物を、触媒の存在下、加圧下で選択的に水素化反応を行って、得られた水素化ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化して得ることができる。具体例として、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
これら式(ep−1)〜(ep−11)及び一般式(ge)以外のエポキシ化合物のうち、脂環式環に結合するエポキシ基を有し、先に定義した脂環式エポキシ化合物に分類される化合物を配合する場合は、式(ep−1)〜(ep−11)で示される脂環式エポキシ化合物との和が、カチオン重合性化合物の合計量を基準に95質量%を超えない範囲で用いられる。
また、任意のカチオン重合性化合物となりうるオキセタン化合物は、分子内に4員環エーテル(オキセタニル基)を有する化合物である。その具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート等が挙げられる。
カチオン重合性化合物全体の量を基準に、オキセタン化合物を30質量%以下の割合で配合することにより、エポキシ化合物だけをカチオン重合性化合物として用いた場合に比べ、硬化性が向上するといった効果が期待できることがある。
(光カチオン重合開始剤(β))
本発明では、以上のようなカチオン重合性化合物を、活性エネルギー線の照射によってカチオン重合させて硬化させ、接着剤層を形成することから、光硬化性接着剤組成物には、光カチオン重合開始剤(β)を配合することが好ましい。
本発明では、以上のようなカチオン重合性化合物を、活性エネルギー線の照射によってカチオン重合させて硬化させ、接着剤層を形成することから、光硬化性接着剤組成物には、光カチオン重合開始剤(β)を配合することが好ましい。
光カチオン重合開始剤(β)は、可視光線、紫外線、X線、電子線のような活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生させ、カチオン重合性化合物(α)の重合反応を開始するものである。光カチオン重合開始剤(β)は、光で触媒的に作用するため、カチオン重合性化合物(α)に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレン錯体等を挙げることができる。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えばベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボレート等が挙げられる。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
芳香族スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4′−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
鉄−アレン錯体としては、例えばキシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド等が挙げられる。
これらの光カチオン重合開始剤(β)は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができ、好ましく用いられる。
光カチオン重合開始剤(β)の配合量は、カチオン重合性化合物(α)全体100質量部に対して1〜10質量部とする。カチオン重合性化合物(α)100質量部あたり光カチオン重合開始剤(β)を1質量部以上配合することにより、カチオン重合性化合物(α)を十分に硬化させることができ、得られる偏光板に高い機械強度と接着強度を与える。一方、その量が多くなると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、偏光板の耐久性能を低下させる可能性があるため、光カチオン重合開始剤(β)の量は、カチオン重合性化合物(α)100質量部あたり10質量部以下とする。
光カチオン重合開始剤(β)の配合量は、カチオン重合性化合物(α)100質量部あたり2質量部以上とするのが好ましく、また6質量部以下とするのが好ましい。
光カチオン重合開始剤(β)の配合量は、カチオン重合性化合物(α)100質量部あたり2質量部以上とするのが好ましく、また6質量部以下とするのが好ましい。
(光増感剤(γ))
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物は、以上のようなエポキシ化合物を含むカチオン重合性化合物(α)及び光カチオン重合開始剤(β)に加えて、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(γ)を含有する。上記光カチオン重合開始剤(β)は、300nm付近又はそれより短い波長に極大吸収を示し、その付近の波長の光に感応して、カチオン種又はルイス酸を発生させ、カチオン重合性化合物(α)のカチオン重合を開始させるが、それよりも長い波長の光にも感応するように、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(γ)が配合される。
このような光増感剤(γ)としては、下記一般式(at)で示されるアントラセン系化合物が有利に用いられる。
〔式中、R5及びR6は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を表す。R7は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。〕
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物は、以上のようなエポキシ化合物を含むカチオン重合性化合物(α)及び光カチオン重合開始剤(β)に加えて、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(γ)を含有する。上記光カチオン重合開始剤(β)は、300nm付近又はそれより短い波長に極大吸収を示し、その付近の波長の光に感応して、カチオン種又はルイス酸を発生させ、カチオン重合性化合物(α)のカチオン重合を開始させるが、それよりも長い波長の光にも感応するように、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(γ)が配合される。
このような光増感剤(γ)としては、下記一般式(at)で示されるアントラセン系化合物が有利に用いられる。
一般式(at)で示されるアントラセン系化合物の具体例としては、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジイソプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジペンチルオキシアントラセン、9,10−ジヘキシルオキシアントラセン、9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−エトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ブトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジイソプロポキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジブトキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジペンチルオキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジヘキシルオキシアントラセン等が挙げられる。
光硬化性接着剤組成物に上記のような光増感剤(γ)を配合することにより、それを配合しない場合に比べて、光硬化性接着剤組成物の硬化性が向上する。光硬化性接着剤組成物を構成するカチオン重合性化合物(α)の100質量部に対する光増感剤(γ)の配合量を、0.1質量部以上とすることにより、硬化性が向上する効果が発現する。一方、低温保管時の析出を防ぐため、カチオン重合性化合物(α)100質量部に対して2質量部以下の配合量とする。偏光板のニュートラルグレーを維持する観点から、偏光子とセルロースアシレートフィルムとの接着性が適度に保たれる範囲で、光増感剤(γ)の配合量を少なくするほうが有利である。例えば、カチオン重合性化合物(α)100質量部に対し、光増感剤(γ)の量を0.1〜0.5質量部、さらには0.1〜0.3質量部の範囲とするのが好ましい。
(光増感助剤(δ))
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物は、上述したエポキシ化合物を含むカチオン重合性化合物(α)、光カチオン重合開始剤(β)及び光増感剤(γ)に加えて、下記一般式(nf)で示されるナフタレン系光増感助剤(δ)を含有する。
〔式中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数1〜6のアルキル基である。〕
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物は、上述したエポキシ化合物を含むカチオン重合性化合物(α)、光カチオン重合開始剤(β)及び光増感剤(γ)に加えて、下記一般式(nf)で示されるナフタレン系光増感助剤(δ)を含有する。
ナフタレン系光増感助剤(δ)の具体例としては、1,4−ジメトキシナフタレン、1−エトキシ−4−メトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジプロポキシナフタレン、1,4−ジブトキシナフタレン等が挙げられる。
光硬化性接着剤組成物にナフタレン系光増感助剤(δ)を配合することにより、それを配合しない場合に比べて、光硬化性接着剤組成物の硬化性が向上する。光硬化性接着剤組成物を構成するカチオン重合性化合物(α)の100質量部に対するナフタレン系光増感助剤(δ)の配合量を0.1質量部以上とすることにより、硬化性が向上する効果が発現する。一方、ナフタレン系光増感助剤(δ)の配合量は、低温保管時の析出を防ぐため、カチオン重合性化合物(α)100質量部に対して10質量部以下の配合量とする。好ましくは、カチオン重合性化合物(α)100質量部に対して5質量部以下の配合量である。
さらに、本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない限り、任意成分である他の成分として、添加剤成分を含有させることができる。添加剤成分としては、前述の光カチオン重合開始剤及び光増感剤(γ)の他、光増感剤(γ)以外の光増感剤、熱カチオン重合開始剤、ポリオール類、イオントラップ剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、色素、有機溶剤等を配合することができる。
添加剤成分を含有させる場合、添加剤成分の使用量は、前述のカチオン重合性化合物(α)の100質量部に対して1000質量部以下であることが好ましい。使用量が1000質量部以下である場合、本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物の必須成分であるカチオン重合性化合物(α)、光カチオン重合開始剤(β)、光増感剤(γ)及び光増感助剤(δ)の組合せによる、保存安定性の向上、変色防止、硬化速度の向上、良好な接着性の確保という効果を良好に発揮させることができる。
偏光子とセルロースアシレートフィルムとを貼合するための接着剤の好ましい他の例には、以下の(α1)、(α2)及び(β1)の3成分を必須に含有する光硬化性接着剤組成物が含まれる。
(α1)分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物
(α2)分子内に少なくとも1個のオキセタニル基を有するオキセタン化合物
(β1)光カチオン重合開始剤
(α1)分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物
(α2)分子内に少なくとも1個のオキセタニル基を有するオキセタン化合物
(β1)光カチオン重合開始剤
以下、上記(α1)のエポキシ化合物、上記(α2)のオキセタン化合物、上記(β1)の光カチオン重合開始剤を、それぞれ単に、エポキシ化合物(α1)、オキセタン化合物(α2)、光カチオン重合開始剤(β1)という。
エポキシ化合物(α1)とオキセタン化合物(α2)の質量比(エポキシ化合物(α1):オキセタン化合物(α2))は、90:10〜10:90程度となるようにすることが好ましい。また、光カチオン重合開始剤(β1)は、組成物中に約0.5〜20.0質量%の割合で配合することが好ましい。
この光硬化性接着剤は任意に、(ε)成分として分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物を含有することができる。このような不飽和化合物(ε)を含有する場合は、(ζ)成分として光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。さらにこの光硬化性接着剤は、(η)成分として重合性を有しない他の成分を含有することもできる。
上記(ε)成分の不飽和化合物、(ζ)成分としての光ラジカル重合開始剤、(η)成分としての重合性を有しない他の成分を、それぞれ単に、不飽和化合物(ε)、光ラジカル重合開始剤(ζ)、重合性を有しない他の成分(η)という。
(エポキシ化合物(α1))
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物において、エポキシ化合物(α1)は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物(α1)として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する芳香族系エポキシ化合物や、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている脂環式エポキシ化合物等が例として挙げられる。
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物において、エポキシ化合物(α1)は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物(α1)として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する芳香族系エポキシ化合物や、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている脂環式エポキシ化合物等が例として挙げられる。
上記芳香族系エポキシ化合物としては、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のようなノボラック型エポキシ樹脂;その他、ビフェニル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、スチレン−ブタジエン共重合体のエポキシ化物、スチレン−イソプレン共重合体のエポキシ化物、末端カルボン酸ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂の付加反応物等が例として挙げられる。
ここでのエポキシ樹脂とは、分子中に平均2個以上のエポキシ基を有し、反応により硬化する化合物又はポリマーをいう。この分野での慣例に従い、硬化性のエポキシ基を分子内に2個以上有するものであれば、モノマーであってもエポキシ樹脂ということがある。
上記脂環式エポキシ化合物としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、ジシクロペンタジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートのようなエポキシ化シクロヘキシル基を少なくとも1つ有する化合物等が例として挙げられる。
上記以外にも、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルのような脂肪族系エポキシ化合物;水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのような芳香環が水素化されているエポキシ化合物;両末端ヒドロキシ基のポリブタジエンの両末端がグリシジルエーテル化された化合物、ポリブタジエンの内部エポキシ化物、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合が一部エポキシ化された化合物(例えば、ダイセル化学工業(株)製のエポフレンド)、エチレン−ブチレン共重合体とポリイソプレンのブロックコポリマーのイソプレン単位が一部エポキシ化された化合物(例えば、KRATON社製のL−207)のようなポリマー系のエポキシ化合物等も、エポキシ化合物(α1)となり得る。
これらのなかでも、芳香族系エポキシ化合物が、偏光板に用いられたときの耐久性等に優れ、特に偏光子及びセルロースアシレートフィルムに対する接着性に優れることから好ましい。さらに、この芳香族系エポキシ化合物としては、芳香族化合物のグリシジルエーテル又は芳香族化合物のグリシジルエステル等が好ましい例として挙げられる。芳香族化合物のグリシジルエーテルの具体例として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のようなノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ヒドロキノンジグリシジルエーテル;レゾルシンジグリシジルエーテル等が好ましく挙げられる。また芳香族化合物のグリシジルエステルの具体例としては、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等が好ましく挙げられる。
なかでも、芳香族化合物のグリシジルエーテルが、偏光子とセルロースアシレートフィルム間の密着性や、偏光板に用いたときの耐久性においてより優れるため、特に好ましい。芳香族化合物のグリシジルエーテルのなかでも、とりわけ好ましい化合物として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ化合物(α1)は、1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。例えば、芳香族系エポキシ化合物を2種類以上混合して用いることもできるし、芳香族系エポキシ化合物を主体とし、脂環式エポキシ化合物を混合することもできる。
(オキセタン化合物(α2))
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤において、オキセタン化合物(α2)は、分子内に少なくとも1個のオキセタニル基を有するものであれば特に限定されず、やはりオキセタニル基を有する種々の化合物を用いることができる。オキセタン化合物(α2)として、分子内に1個のオキセタニル基を有する化合物(以下、単官能オキセタンという)、分子内に2個以上のオキセタニル基を有する化合物(以下、多官能オキセタンという)が好ましい例として挙げられる。
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤において、オキセタン化合物(α2)は、分子内に少なくとも1個のオキセタニル基を有するものであれば特に限定されず、やはりオキセタニル基を有する種々の化合物を用いることができる。オキセタン化合物(α2)として、分子内に1個のオキセタニル基を有する化合物(以下、単官能オキセタンという)、分子内に2個以上のオキセタニル基を有する化合物(以下、多官能オキセタンという)が好ましい例として挙げられる。
単官能オキセタンとしては、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンのようなアルコキシアルキル基含有単官能オキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタンのような芳香族基含有単官能オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのようなヒドロキシ基含有単官能オキセタン等が好ましい例として挙げられる。
多官能オキセタンとしては、例えば3−エチル−3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕オキセタン、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、1,2−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、4,4′−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、2,2′−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、2,7−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ナフタレン、ビス〔4−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕メタン、ビス〔2−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕プロパン、ノボラック型フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の3−クロロメチル−3−エチルオキセタンによるエーテル化変性物、3(4),8(9)−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、2,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ノルボルナン、1,1,1−トリス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕プロパン、1−ブトキシ−2,2−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ブタン、1,2−ビス〔{2−(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}エチルチオ〕エタン、ビス〔{4−(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルチオ}フェニル〕スルフィド、1,6−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシランの加水分解縮合物、テトラキス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル〕シリケートの縮合物等が挙げられる。
オキセタン化合物(α2)は、塗工性や、偏光板に用いたときのセルロースアシレートフィルムとの密着性の観点から、分子量500以下の室温で液状のものが好ましい。さらに、偏光板が優れた耐久性を持つ点で、単官能オキセタンであれば分子内に芳香環を有するもの又は多官能オキセタンが、より好ましい。このような好ましいオキセタン化合物の例として、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕オキセタン、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ベンゼン等が挙げられる。
オキセタン化合物(α2)も、1種類を単独で用いることができる他、2種類以上を混合して用いることもできる。
オキセタン化合物(α2)も、1種類を単独で用いることができる他、2種類以上を混合して用いることもできる。
エポキシ化合物(α1)とオキセタン化合物(α2)の質量比(エポキシ化合物(α1):オキセタン化合物(α2))は、90:10〜10:90とする。この質量比に過不足があると、本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物における重要な特性の1つである、短時間で硬化させるという効果が充分に発揮されない。好ましい質量比は、硬化前には低粘度で塗工性に優れ、硬化後に充分な密着性と可撓性を発現できることから、70:30〜20:80程度であり、より好ましくは60:40〜25:75程度である。
(光カチオン重合開始剤(β1))
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物は、硬化成分として上述のエポキシ化合物(α1)及びオキセタン化合物(α2)を含有し、これらはいずれもカチオン重合により硬化するものであることから、そのカチオン重合を開始させるため、光カチオン重合開始剤(β1)が配合される。光カチオン重合開始剤(β1)は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生させ、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始させる。
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物は、硬化成分として上述のエポキシ化合物(α1)及びオキセタン化合物(α2)を含有し、これらはいずれもカチオン重合により硬化するものであることから、そのカチオン重合を開始させるため、光カチオン重合開始剤(β1)が配合される。光カチオン重合開始剤(β1)は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生させ、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始させる。
光カチオン重合開始剤(β1)を配合することにより、常温での硬化が可能となり、偏光子の耐熱性や膨張又は収縮による歪みを考慮する必要性が小さく、セルロースアシレートフィルムを良好に接着することができる。また、光カチオン重合開始剤(β1)は、活性エネルギー線の照射で触媒的に作用するため、エポキシ化合物(α1)及びオキセタン化合物(α2)に混合しても、保存安定性や作業性に優れる。
このような活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じさせる光カチオン重合開始剤(β1)として、例えば芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄−アレン錯体等を挙げることができる。
このような活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じさせる光カチオン重合開始剤(β1)として、例えば芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄−アレン錯体等を挙げることができる。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えばベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボレート等が挙げられる。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
芳香族スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル〔4−(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル〔4−(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4′−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
鉄−アレン錯体としては、例えばキシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)−トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド等が挙げられる。
これらの光カチオン重合開始剤(β1)は、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
光カチオン重合開始剤(β1)は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、カヤラッドPCI−220、カヤラッドPCI−620(以上、日本化薬(株)製)、UVI−6992(ダウ・ケミカル社製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−170(以上、(株)ADEKA製)、CI−5102、CIT−1370、CIT−1682、CIP−1866S、CIP−2048S、CIP−2064S(以上、日本曹達(株)製)、DPI−101、DPI−102、DPI−103、DPI−105、MPI−103、MPI−105、BBI−101、BBI−102、BBI−103、BBI−105、TPS−101、TPS−102、TPS−103、TPS−105、MDS−103、MDS−105、DTS−102、DTS−103(以上、みどり化学(株)製)、PI−2074(ローディア社製)、イルガキュア250、イルガキュアPAG103、イルガキュアPAG108、イルガキュアPAG121、イルガキュアPAG203(以上、チバ社製)、CPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S(以上、サンアプロ(株)製)等が挙げられる。なかでも、ジフェニル〔4−(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムをカチオン成分として含む、UVI−6992、CPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210Sが好ましい。
光カチオン重合開始剤(β1)の配合割合は、光硬化性接着剤全体を基準として、0.5〜20.0質量%の範囲とする。配合割合が0.5質量%以上であると、光硬化性接着剤が十分に硬化し、機械強度や接着強度を維持できる。一方、配合割合が20質量%以下であると、硬化物中のイオン性物質の増加による硬化物の吸湿性の上昇を抑えて、耐久性の低下を防ぐことができる。
(不飽和化合物(ε))
光硬化性接着剤は、必要に応じて、分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物(ε)を含有することができる。
このような不飽和化合物(ε)の典型的な例として、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物を挙げることができる。
光硬化性接着剤は、必要に応じて、分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物(ε)を含有することができる。
このような不飽和化合物(ε)の典型的な例として、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物を挙げることができる。
(メタ)アクリル系化合物としては、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアルデヒド等が挙げられる。
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(以下、単官能(メタ)アクリレートという)としては、特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートのような脂環式単官能(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレートのような芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート類(ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等が挙げられる);2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレートのようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートのような二価アルコールのモノ(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレートのようなポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートのようなテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート類;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
また、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類としては、特に限定されないが、例えば、次のような化合物が挙げられる。
トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメチロールジ(メタ)アクリレート、水素添加ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートのような脂環式環を有するジ(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートを含むビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートのような芳香族環を有するジ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのようなアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;グリセリンのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンのジ又はトリ(メタ)アクリレートのようなグリセリン類のジ又はトリ(メタ)アクリレート類;グリセリン類のアルキレンオキサイド付加物のジ又はトリ(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートのようなビスフェノールアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのようなポリオールポリ(メタ)アクリレート類;これらポリオールのアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート類;イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のジ又はトリ(メタ)アクリレート類;1,3,5−トリ(メタ)アクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール−N−プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカアプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカアプトエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートのようなオリゴマーも、(メタ)アクリル系化合物として使用できる。
さらに、(メタ)アクリロイル基とともに、それ以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物も、(メタ)アクリル系化合物として使用できる。その具体例として、アリル(メタ)アクリレート、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
不飽和化合物(ε)としては、特に限定されず、以上の(メタ)アクリル系化合物以外にも、N−ビニル−2−ピロリドン、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニルのようなビニル化合物;トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン、テトラアリルピロメリテート、N,N,N′,N′−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、テトラアリルアンモニウム塩、アリルアミンのようなアリル化合物;マレイン酸及びイタコン酸のような不飽和カルボン酸等も使用することもできる。
これら不飽和化合物(ε)のなかでも、(メタ)アクリル系化合物が好ましい。さらに、それを含む接着剤を介して偏光子とセルロースアシレートフィルムとを接着し、偏光板を作製したとき、耐熱性等の耐久性を高める観点から、分子内に少なくとも1個の脂環式骨格又は芳香環骨格を有する(メタ)アクリル系化合物が、より好ましい。かかる分子内に少なくとも1個の脂環式骨格又は芳香環骨格を有する(メタ)アクリル系化合物の具体例としては、上述した脂環式単官能(メタ)アクリレート類、芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート類、脂環式環を有するジ(メタ)アクリレート類又は芳香族環を有するジ(メタ)アクリレート類が、好ましく挙げられる。これらのなかでもとりわけ、トリシクロデカン骨格を有するジ(メタ)アクリレートが好ましく、このような特に好ましい(メタ)アクリル系化合物の具体例としては、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
不飽和化合物(ε)は、硬化速度や、偏光子とセルロースアシレートフィルム間の密着性、接着層の弾性率、接着物の耐久性等を調節するために、使用することができる。不飽和化合物(ε)は、1種類を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
不飽和化合物(ε)を配合する場合、その配合割合は、組成物全体を基準として35質量%以下とするのが好ましい。これにより、偏光子とセルロースアシレートフィルム間の密着性が優れたものとなる。不飽和化合物(ε)の量が35質量%以下であると、偏光子との十分な接着強度が得られやすい。そこで、不飽和化合物(ε)の配合割合は、30質量%以下とすることがより好ましく、5〜25質量%程度、とりわけ10〜20質量%程度とするのがさらに好ましい。
(光ラジカル重合開始剤(ζ))
光硬化性接着剤が不飽和化合物(ε)を含む場合、そのラジカル重合性を促進し、硬化速度を十分なものとするために、光ラジカル重合開始剤(ζ)を配合することが好ましい。
光硬化性接着剤が不飽和化合物(ε)を含む場合、そのラジカル重合性を促進し、硬化速度を十分なものとするために、光ラジカル重合開始剤(ζ)を配合することが好ましい。
光ラジカル重合開始剤(ζ)の具体例としては、特に限定されないが、例えば4′−フェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン、4′−tert−ブチル−2,2−ジクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α,α−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンのようなアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルのようなベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンのようなチオキサントン系光重合開始剤;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドのようなアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオフェニル)〕−,2−(O−ベンゾイルオキシム)のようなオキシム・エステル系光重合開始剤;カンファーキノン等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤(ζ)は、1種類を単独で又は2種類以上を所望の性能に応じて配合し、用いることができる。光ラジカル重合開始剤(ζ)を配合する場合、十分な硬化と強度を得る観点から、その配合割合は、組成物全体を基準として、10質量%以下が好ましく、0.1〜3.0質量%程度がより好ましい。
(他の成分(η))
さらに、本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記(α1)〜(ζ)成分とは異なる他の成分を、任意に配合することができる。
このような他の成分に属する一つのタイプとして、エポキシ化合物(α1)やオキセタン化合物(α2)以外のカチオン重合性を有する化合物を挙げることができる。具体例としては、特に限定されないが、分子内に1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物等が挙げられる。また、他の成分に属する別のタイプとして、重合性を有しない他の成分(η)を挙げることができる。重合性を有しない他の成分(η)を配合する場合、その配合割合は、組成物全体を基準に10質量%以下程度とするのが好ましい。
さらに、本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記(α1)〜(ζ)成分とは異なる他の成分を、任意に配合することができる。
このような他の成分に属する一つのタイプとして、エポキシ化合物(α1)やオキセタン化合物(α2)以外のカチオン重合性を有する化合物を挙げることができる。具体例としては、特に限定されないが、分子内に1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物等が挙げられる。また、他の成分に属する別のタイプとして、重合性を有しない他の成分(η)を挙げることができる。重合性を有しない他の成分(η)を配合する場合、その配合割合は、組成物全体を基準に10質量%以下程度とするのが好ましい。
重合性を有しない他の成分(η)の例として、特に限定されないが、光増感剤を挙げられる。光増感剤を配合することにより、反応性が向上し、硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤としては、例えばカルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられる。
具体的な光増感剤としては、特に限定されず、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物、ハロゲン化合物等が挙げられる。
これらのなかには、上記光ラジカル重合開始剤(ζ)に該当する化合物もあるが、ここでいう光増感剤は、光カチオン重合開始剤(β1)に対する増感剤として機能するものであれば特に限定されない。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
光増感剤は、本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物中のカチオン重合性モノマー(上記エポキシ化合物(α1)とオキセタン化合物(α2)を含み、上述した他のカチオン重合性を有する化合物が配合されている場合はそれも含む)の総量を100質量部として、0.1〜20質量部の範囲で含有するのが好ましい。
また、重合性を有しない他の成分(η)として、熱カチオン重合開始剤を使用することもできる。熱カチオン重合開始剤として、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド等を挙げることができる。これらの開始剤は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、いずれも商品名で示して、アデカオプトンCP77及びアデカオプトンCP66(以上、(株)ADEKA製)、CI−2639、CI−2624(以上、日本曹達(株)製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L(以上、三新化学工業(株)製)等が挙げられる。
ポリオール類はカチオン重合を促進する性質を有するので、やはり重合性を有しない他の成分(η)として使用することができる。ポリオール類としては、フェノール性ヒドロキシ基以外の酸性基が存在しないものが好ましく、例えばヒドロキシ基以外の官能基を有しないポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物、フェノール性ヒドロキシ基を有するポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物等を挙げることができる。
さらに本発明の効果を損なわない限り、重合性を有しない他の成分(η)として、シランカップリング剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、増感剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、色素、有機溶剤等を配合することもできる。
重合性を有しない他の成分(η)として、セルロースアシレートフィルムとの密着性をさらに向上させる目的で、熱可塑性樹脂を配合することも有効である。熱可塑性樹脂としては、偏光子の耐久性を高める観点から、ガラス転移温度が70℃以上であるものが好ましく、特に好ましい例としてはメチルメタクリレート系ポリマー等が挙げられる。
重合性を有しない他の成分(η)として、セルロースアシレートフィルムとの密着性をさらに向上させる目的で、熱可塑性樹脂を配合することも有効である。熱可塑性樹脂としては、偏光子の耐久性を高める観点から、ガラス転移温度が70℃以上であるものが好ましく、特に好ましい例としてはメチルメタクリレート系ポリマー等が挙げられる。
<偏光子>
偏光板の主たる構成要素である偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光板の主たる構成要素である偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子としては、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行った偏光子が用いられ得る。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。なかでも、熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
<偏光板の製造方法>
偏光板は、光硬化性接着剤を用いて、偏光子の一方の面に、上述したアシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートと、Tg低下剤とを含むセルロースアシレートフィルムを貼り合せることにより製造することができる。貼合時、セルロースアシレートフィルムの両表面のうち、r値が1.1以上を満たす、dAが検出された表面を、偏光子に貼り合せる。すなわち、セルロースアシレートフィルムの両表面のうち、飛行時間型二次イオン質量分析法によるTg低下剤の検出値が大きい方の表面が、偏光子との貼合面とされる。
偏光板は、光硬化性接着剤を用いて、偏光子の一方の面に、上述したアシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートと、Tg低下剤とを含むセルロースアシレートフィルムを貼り合せることにより製造することができる。貼合時、セルロースアシレートフィルムの両表面のうち、r値が1.1以上を満たす、dAが検出された表面を、偏光子に貼り合せる。すなわち、セルロースアシレートフィルムの両表面のうち、飛行時間型二次イオン質量分析法によるTg低下剤の検出値が大きい方の表面が、偏光子との貼合面とされる。
なお、偏光板を構成する偏光子の他方の面には、本発明に係るセルロースアシレートフィルムを用いてもよいし、他の光学フィルムを貼合することも好ましい。このような他の光学フィルムとしては、例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。
以下、光硬化性接着剤を用いた偏光板の製造方法の一例を説明する。
偏光板は、セルロースアシレートフィルムの偏光子を接着する面を易接着処理する前処理工程と、偏光子とセルロースアシレートフィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、下記の光硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、接着剤層を介して偏光子とセルロースアシレートフィルムとを接着し、貼り合せる貼合工程と、接着剤層を介して偏光子とセルロースアシレートフィルムとが接着された状態で接着剤層を硬化させる硬化工程とを含む製造方法によって製造することができる。
偏光板は、セルロースアシレートフィルムの偏光子を接着する面を易接着処理する前処理工程と、偏光子とセルロースアシレートフィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、下記の光硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、接着剤層を介して偏光子とセルロースアシレートフィルムとを接着し、貼り合せる貼合工程と、接着剤層を介して偏光子とセルロースアシレートフィルムとが接着された状態で接着剤層を硬化させる硬化工程とを含む製造方法によって製造することができる。
(前処理工程)
前処理工程では、偏光子と接着するセルロースアシレートフィルムの表面が易接着処理される。偏光子の両面にそれぞれセルロースアシレートフィルムが接着される場合は、それぞれのセルロースアシレートフィルムに対し易接着処理が行われる。次の接着剤塗布工程では、易接着処理された表面が偏光子との貼合面として扱われるので、セルロースアシレートフィルムの両表面のうち、r値が1.1以上を満たす、dAが検出された表面を、易接着処理する。
前処理工程では、偏光子と接着するセルロースアシレートフィルムの表面が易接着処理される。偏光子の両面にそれぞれセルロースアシレートフィルムが接着される場合は、それぞれのセルロースアシレートフィルムに対し易接着処理が行われる。次の接着剤塗布工程では、易接着処理された表面が偏光子との貼合面として扱われるので、セルロースアシレートフィルムの両表面のうち、r値が1.1以上を満たす、dAが検出された表面を、易接着処理する。
(接着剤塗布工程)
接着剤塗布工程では、偏光子とセルロースアシレートフィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記光硬化性接着剤が塗布される。偏光子又はセルロースアシレートフィルムの表面に直接、光硬化性接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特別な限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子とセルロースアシレートフィルムの間に、光硬化性接着剤を流延させたのち、ローラー等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
接着剤塗布工程では、偏光子とセルロースアシレートフィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記光硬化性接着剤が塗布される。偏光子又はセルロースアシレートフィルムの表面に直接、光硬化性接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特別な限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子とセルロースアシレートフィルムの間に、光硬化性接着剤を流延させたのち、ローラー等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
(貼合工程)
こうして光硬化性接着剤を塗布した後は、貼合工程に供される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合、そこにセルロースアシレートフィルムが重ね合わされる。先の塗布工程でセルロースアシレートフィルムの表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子とセルロースアシレートフィルムの間に光硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子とセルロースアシレートフィルムとが重ね合わされる。偏光子の両面にセルロースアシレートフィルムを接着する場合であって、両面とも光硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、光硬化性接着剤を介してセルロースアシレートフィルムが重ね合わされる。そして通常は、この状態で両面(偏光子の片面にセルロースアシレートフィルムを重ね合わせた場合は偏光子側とセルロースアシレートフィルム側をいい、偏光子の両面にセルロースアシレートフィルムを重ね合わせた場合はその両面のセルロースアシレートフィルム側をいう)からローラー等で挟んで加圧することになる。ローラーの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるローラーは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
こうして光硬化性接着剤を塗布した後は、貼合工程に供される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合、そこにセルロースアシレートフィルムが重ね合わされる。先の塗布工程でセルロースアシレートフィルムの表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子とセルロースアシレートフィルムの間に光硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子とセルロースアシレートフィルムとが重ね合わされる。偏光子の両面にセルロースアシレートフィルムを接着する場合であって、両面とも光硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、光硬化性接着剤を介してセルロースアシレートフィルムが重ね合わされる。そして通常は、この状態で両面(偏光子の片面にセルロースアシレートフィルムを重ね合わせた場合は偏光子側とセルロースアシレートフィルム側をいい、偏光子の両面にセルロースアシレートフィルムを重ね合わせた場合はその両面のセルロースアシレートフィルム側をいう)からローラー等で挟んで加圧することになる。ローラーの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるローラーは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
(硬化工程)
硬化工程では、未硬化の光硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、エポキシ化合物やオキセタン化合物を含む接着剤層を硬化させ、光硬化性接着剤を介して重ね合わせた偏光子とセルロースアシレートフィルムとを接着させる。偏光子の片面にセルロースアシレートフィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又はセルロースアシレートフィルム側のいずれから照射してもよい。また、偏光子の両面にセルロースアシレートフィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ光硬化性接着剤を介してセルロースアシレートフィルムを重ね合わせた状態で、いずれか一方のセルロースアシレートフィルム側から活性エネルギー線を照射し、両面の光硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。ただし、いずれか一方のセルロースアシレートフィルムに紫外線吸収剤が配合されている場合であって、活性エネルギー線が紫外線である場合、通常、紫外線吸収剤が配合されていない他方のセルロースアシレートフィルム側から紫外線が照射される。
硬化工程では、未硬化の光硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、エポキシ化合物やオキセタン化合物を含む接着剤層を硬化させ、光硬化性接着剤を介して重ね合わせた偏光子とセルロースアシレートフィルムとを接着させる。偏光子の片面にセルロースアシレートフィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又はセルロースアシレートフィルム側のいずれから照射してもよい。また、偏光子の両面にセルロースアシレートフィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ光硬化性接着剤を介してセルロースアシレートフィルムを重ね合わせた状態で、いずれか一方のセルロースアシレートフィルム側から活性エネルギー線を照射し、両面の光硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。ただし、いずれか一方のセルロースアシレートフィルムに紫外線吸収剤が配合されている場合であって、活性エネルギー線が紫外線である場合、通常、紫外線吸収剤が配合されていない他方のセルロースアシレートフィルム側から紫外線が照射される。
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができるが、取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般には紫外線が好ましく用いられる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ等を用いることができる。
光硬化性接着剤への光照射強度は、目的とする組成物毎に決定されるものであって、やはり特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が、UV−B(280〜320nmの中波長域紫外線)として1〜3,000mW/cm2の範囲となるように調整することが好ましい。照射強度が1〜3,000mW/cm2の範囲内であれば、適当な反応時間で足り、ランプから輻射される熱及び光硬化性接着剤の重合時の発熱による光硬化性接着剤の黄変や偏光子の劣化を防止できる。
光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化する組成物毎に制御されるものであって、特に限定されないが、照射強度と照射時間の積で表される積算光量が10〜5000mJ/cm2の範囲となるように設定されることが好ましい。積算光量が10〜5000mJ/cm2の範囲内であれば、重合開始剤に由来する活性種が十分に発生し、接着剤層の硬化が十分となる。また、適当な照射時間で足り、生産性向上に適する。
活性エネルギー線を照射して光硬化性接着剤を硬化させるにあたっては、偏光子の偏光度、透過率、色相、セルロースアシレートフィルムの透明性といった、偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化させることが好ましい。
以上のようにして得られた偏光板において、接着剤層の厚さは、特に限定されないが、通常50μm以下であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
<液晶表示装置>
本発明に係る偏光板は、液晶表示装置に好適に用いることができる。本発明に係る偏光板が用いられた液晶表示装置は、優れた光学補償機能を有するセルロースアシレートフィルムが用いられていることから、視認性に優れている。また、このような液晶表示装置は、偏光子とセルロースアシレートフィルム間の密着性が高いことから、耐久性にも優れている。
本発明に係る偏光板は、液晶表示装置に好適に用いることができる。本発明に係る偏光板が用いられた液晶表示装置は、優れた光学補償機能を有するセルロースアシレートフィルムが用いられていることから、視認性に優れている。また、このような液晶表示装置は、偏光子とセルロースアシレートフィルム間の密着性が高いことから、耐久性にも優れている。
偏光板のセルロースアシレートフィルム側の表面と、液晶セルの少なくとも一方の表面との貼合は、公知の手法により行われ得る。場合によっては、接着層を介して貼合されてもよい。
液晶表示装置のモード(駆動方式)についても特に制限はなく、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCB等の各種駆動モードの液晶表示装置が用いられ得る。好ましくは、VA(MVA,PVA)型の液晶表示装置である。これらの液晶表示装置に、本発明に係る偏光板を用いることで、30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、環境変動が少なく、色味ムラ、正面コントラスト等の視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
液晶表示装置のモード(駆動方式)についても特に制限はなく、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCB等の各種駆動モードの液晶表示装置が用いられ得る。好ましくは、VA(MVA,PVA)型の液晶表示装置である。これらの液晶表示装置に、本発明に係る偏光板を用いることで、30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、環境変動が少なく、色味ムラ、正面コントラスト等の視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において用いられる「部」又は「%」は、特に断りがない限り、「質量部」又は「質量%」を表す。
〔実施例1〕
<セルロースアシレートフィルム101の作製>
(微粒子分散液1の調製)
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行って、微粒子分散液1を調製した。
<セルロースアシレートフィルム101の作製>
(微粒子分散液1の調製)
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行って、微粒子分散液1を調製した。
(微粒子添加液1の調製)
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。メチレンクロライドと微粒子分散液1の質量は、下記の通りである。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。メチレンクロライドと微粒子分散液1の質量は、下記の通りである。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
(主ドープ液の調製)
下記組成の主ドープ液を調製した。
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアシレート(アセチル置換度2.45、重量平均分子量Mw135000のセルロースアシレートと、アセチル置換度2.45、重量平均分子量Mw180000のセルロースアシレートとを、6:4の質量比で混合した混合物) 100質量部
加水分解防止剤(糖エステル化合物(a1)、(a2)、(a3)、(a4)を、1:14:35:40の質量比(a1:a2:a3:a4)で混合した混合物、平均logP値=8.7、Tg低下能=2.1℃/質量部) 8質量部
微粒子添加液1 1質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアシレート(アセチル置換度2.45、重量平均分子量Mw135000のセルロースアシレートと、アセチル置換度2.45、重量平均分子量Mw180000のセルロースアシレートとを、6:4の質量比で混合した混合物) 100質量部
加水分解防止剤(糖エステル化合物(a1)、(a2)、(a3)、(a4)を、1:14:35:40の質量比(a1:a2:a3:a4)で混合した混合物、平均logP値=8.7、Tg低下能=2.1℃/質量部) 8質量部
微粒子添加液1 1質量部
まず、加圧溶解タンクに上記組成のメチレンクロライドとエタノールを添加した。この溶剤の入った加圧溶解タンクに、アセチル置換度2.45、重量平均分子量Mw135000のセルロースアシレートと、アセチル置換度2.45、重量平均分子量Mw180000のセルロースアシレートとを、6:4の質量比で混合した上記組成のセルロースアシレートを、攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解させた後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。主ドープ液を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調整した。
(セルロースアシレートフィルムの作製)
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したセルロースアシレートフィルム中の残留溶媒量が88%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したセルロースアシレートフィルムを、160℃の熱を加えながらテンターを用いて幅方向に1.15倍延伸した。延伸開始時の残留溶媒量は10%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃、搬送張力は100N/mとした。
以上のようにして、乾燥膜厚45μm、長さ2000mのセルロースアシレートフィルム101を得た。
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したセルロースアシレートフィルム中の残留溶媒量が88%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したセルロースアシレートフィルムを、160℃の熱を加えながらテンターを用いて幅方向に1.15倍延伸した。延伸開始時の残留溶媒量は10%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃、搬送張力は100N/mとした。
以上のようにして、乾燥膜厚45μm、長さ2000mのセルロースアシレートフィルム101を得た。
<セルロースアシレートフィルム102〜118の作製>
ドープ液組成物及び製造条件を、下記表1に示すように変更した以外は、セルロースアシレートフィルム101と同様にして、セルロースアシレートフィルム102〜118を作製した。セルロースアシレートフィルム101の作製においてTg低下剤を添加しなかったが、Tg低下剤を添加する場合、主ドープ液の組成にTg低下剤を含む。
ドープ液組成物及び製造条件を、下記表1に示すように変更した以外は、セルロースアシレートフィルム101と同様にして、セルロースアシレートフィルム102〜118を作製した。セルロースアシレートフィルム101の作製においてTg低下剤を添加しなかったが、Tg低下剤を添加する場合、主ドープ液の組成にTg低下剤を含む。
表1には、各セルロースアシレートフィルム101〜118の主ドープ液組成物に含まれるTg低下剤の化合物、添加量、Tg低下能の値、加水分解防止剤として混合された化合物、化合物の混合比率、添加量、平均logP値、剥離時におけるセルロースアシレートフィルム中の残留溶媒量の値が記載されている。
<評価>
上記で得られたセルロースアシレートフィルム101〜118について、以下の測定方法により、両表面におけるTg低下剤の分布の比であるr値、加水分解防止剤の分布の比であるs値、算術平均粗さRaを測定した。測定結果は、下記表1に示される。表1においてQ1面はドープの流延時に金属支持体と接していた面とは反対側の面を表す。Q2面は、ドープの流延時に金属支持体と接していた面を表す。
上記で得られたセルロースアシレートフィルム101〜118について、以下の測定方法により、両表面におけるTg低下剤の分布の比であるr値、加水分解防止剤の分布の比であるs値、算術平均粗さRaを測定した。測定結果は、下記表1に示される。表1においてQ1面はドープの流延時に金属支持体と接していた面とは反対側の面を表す。Q2面は、ドープの流延時に金属支持体と接していた面を表す。
(r値及びs値の測定方法)
下記測定条件によって、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて、セルロースアシレートフィルム101〜118の各表面におけるTg低下剤の検出値を得た。
測定装置 :2100TRIFT2(Phisical Electronics社製)
測定モード:冷却測定(温度範囲−95〜−105℃)
一次イオン:Ga(15kV)
測定領域 :60μm角
積算時間 :2分
Tg低下剤(芳香族ポリエステル(ar−14))の場合の参照イオンm/Z:119
加水分解防止剤(糖エステル化合物(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の混合物)の場合の参照イオンm/Z:105
各表面のTg低下剤の検出値のうち、大きい方をdA、小さい方をdBとして、上述の数式(1)に従って、r値を算出した。
なお、Tg低下剤が添加されていないセルロースアシレートフィルム101、108を除き、セルロースアシレートフィルム102〜107、109〜118のいずれも、Q2面の方がQ1面よりもTg低下剤の検出値が大きかった。
下記測定条件によって、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて、セルロースアシレートフィルム101〜118の各表面におけるTg低下剤の検出値を得た。
測定装置 :2100TRIFT2(Phisical Electronics社製)
測定モード:冷却測定(温度範囲−95〜−105℃)
一次イオン:Ga(15kV)
測定領域 :60μm角
積算時間 :2分
Tg低下剤(芳香族ポリエステル(ar−14))の場合の参照イオンm/Z:119
加水分解防止剤(糖エステル化合物(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の混合物)の場合の参照イオンm/Z:105
各表面のTg低下剤の検出値のうち、大きい方をdA、小さい方をdBとして、上述の数式(1)に従って、r値を算出した。
なお、Tg低下剤が添加されていないセルロースアシレートフィルム101、108を除き、セルロースアシレートフィルム102〜107、109〜118のいずれも、Q2面の方がQ1面よりもTg低下剤の検出値が大きかった。
同様の測定条件により、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて、セルロースアシレートフィルム101〜118の各表面の加水分解防止剤の検出値を得た。各表面の加水分解防止剤の検出値のうち、大きい方をdC、小さい方をdDとして、上述の数式(2)に従ってs値を算出した。
(算術平均粗さRaの測定方法)
JIS B0601:2001に従って、光学干渉式表面粗さ計(RST/PLUS、WYKO社製)で算術平均粗さRaを測定した。
JIS B0601:2001に従って、光学干渉式表面粗さ計(RST/PLUS、WYKO社製)で算術平均粗さRaを測定した。
表1において、Tg低下剤の芳香族ポリエステル化合物は、先に例示された芳香族ポリエステル化合物(ar−5)、(ar−14)、(ar−16)又は(PES−7)を示している。
加水分解防止剤の化合物No.におけるa1〜a4は、糖エステル化合物(a1)、(a2)、(a3)、(a4)を示している。また、PETBはペンタエリスリトールテトラベンゾエートを表す。加水分解防止剤の化合物の比率は、化合物No.で示される化合物の混合比率を示している。
加水分解防止剤の化合物No.におけるa1〜a4は、糖エステル化合物(a1)、(a2)、(a3)、(a4)を示している。また、PETBはペンタエリスリトールテトラベンゾエートを表す。加水分解防止剤の化合物の比率は、化合物No.で示される化合物の混合比率を示している。
〔実施例2〕
<偏光板201〜221の作製>
(偏光子の作製)
厚さ70μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g及び水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、さらにヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5g及び水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
<偏光板201〜221の作製>
(偏光子の作製)
厚さ70μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g及び水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、さらにヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5g及び水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
(接着剤の調製)
下記の各成分を混合した後、脱泡して、光硬化性接着剤液を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、下記にはトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
下記の各成分を混合した後、脱泡して、光硬化性接着剤液を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、下記にはトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
(接着剤液組成)
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 45質量部
エポリードGT−301(ダイセル化学社製の脂環式エポキシ樹脂)40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート 2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン 0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン 2.0質量部
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 45質量部
エポリードGT−301(ダイセル化学社製の脂環式エポキシ樹脂)40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート 2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン 0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン 2.0質量部
(偏光板の作製)
セルロースアシレートフィルム101〜118をそれぞれ用いた偏光板を、下記のように作製した。
まず、KC6UY(コニカミノルタオプト(株)製)フィルムを準備し、その表面にコロナ放電処理を施した。なお、コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、当該フィルムのコロナ放電処理面に、上記調製した接着剤液を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工して接着剤層を形成した。得られた接着剤層に、前述のようにして作製したポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光子を貼合した。
セルロースアシレートフィルム101〜118をそれぞれ用いた偏光板を、下記のように作製した。
まず、KC6UY(コニカミノルタオプト(株)製)フィルムを準備し、その表面にコロナ放電処理を施した。なお、コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、当該フィルムのコロナ放電処理面に、上記調製した接着剤液を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工して接着剤層を形成した。得られた接着剤層に、前述のようにして作製したポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光子を貼合した。
同様にして、セルロースアシレートフィルム101〜118の表面に、コロナ放電処理を施した。コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、セルロースアシレートフィルム101〜118のコロナ放電処理面に、上記調製した接着剤液を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工して接着剤層を形成した。その際に、セルロースアシレートフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸が互いに直交になるように貼合した。
この接着剤層に、KC6UY(コニカミノルタオプト(株)製)フィルムが片面に貼合された偏光子の偏光子を貼合して、セルロースアシレートフィルム101〜118/偏光子/KC6UY(コニカミノルタオプト(株)製)フィルムの積層物を得た。この積層物のセルロースアシレートフィルム101〜118側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを使用)を用いて、積算光量が750mJ/cm2となるように紫外線を照射し、接着剤層を硬化させた。
この接着剤層に、KC6UY(コニカミノルタオプト(株)製)フィルムが片面に貼合された偏光子の偏光子を貼合して、セルロースアシレートフィルム101〜118/偏光子/KC6UY(コニカミノルタオプト(株)製)フィルムの積層物を得た。この積層物のセルロースアシレートフィルム101〜118側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを使用)を用いて、積算光量が750mJ/cm2となるように紫外線を照射し、接着剤層を硬化させた。
このようにして、セルロースアシレートフィルム101〜118のそれぞれを用いて、偏光子が2枚のフィルムで挟持された偏光板201〜221を作製した。
各偏光板201〜221の作製に用いたセルロースアシレートフィルム101〜118がいずれであるか、またその偏光子との貼合面がQ1面又はQ2面のいずれであるかは、下記表2に示す通りである。
すなわち、表2に示すように、偏光板201〜218は、セルロースアシレートフィルム101〜118のQ2面を偏光子との貼合面とし、偏光板219〜221は、それぞれセルロースアシレートフィルム102、104、109のQ1面を偏光子との貼合面とした。
各偏光板201〜221の作製に用いたセルロースアシレートフィルム101〜118がいずれであるか、またその偏光子との貼合面がQ1面又はQ2面のいずれであるかは、下記表2に示す通りである。
すなわち、表2に示すように、偏光板201〜218は、セルロースアシレートフィルム101〜118のQ2面を偏光子との貼合面とし、偏光板219〜221は、それぞれセルロースアシレートフィルム102、104、109のQ1面を偏光子との貼合面とした。
<偏光板の評価>
得られた偏光板201〜221について、以下の測定方法により、偏光子とセルロースアシレートフィルムとの密着性と、偏光板の偏光度を測定し、評価した。評価結果は、下記表2に示される。
得られた偏光板201〜221について、以下の測定方法により、偏光子とセルロースアシレートフィルムとの密着性と、偏光板の偏光度を測定し、評価した。評価結果は、下記表2に示される。
(偏光子とセルロースアシレートフィルムとの密着性の評価方法)
偏光板201〜221を、温度60℃、90%RHの湿熱条件下に500時間静置した。その後、偏光板201〜221を構成する偏光子とセルロースアシレートフィルムとを手で剥離することができるか否かにより、密着性を評価した。
評価基準は、以下の通りである。
○:手で剥離することができなかった。
×:手で剥離することができた。
偏光板201〜221を、温度60℃、90%RHの湿熱条件下に500時間静置した。その後、偏光板201〜221を構成する偏光子とセルロースアシレートフィルムとを手で剥離することができるか否かにより、密着性を評価した。
評価基準は、以下の通りである。
○:手で剥離することができなかった。
×:手で剥離することができた。
(偏光板の偏光度の評価方法)
偏光板201〜221の偏光度を、日本分光(株)製「V−7100」を用いて測定した。
具体的には、偏光板の平行透過率(H0)及び直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H0−H90)/(H0+H90)}1/2×100より偏光度を算出した。ここで、平行透過率(H0)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光板の透過率の値である。一方、直交透過率(H90)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光板の透過率の値である。これらの透過率は、JIS Z 8701(1982年版)の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
偏光度に対する評価基準は、以下の通りである。
○:偏光度が99.990以上
△:偏光度が99.980以上99.990未満
×:偏光度が99.980未満
偏光板201〜221の偏光度を、日本分光(株)製「V−7100」を用いて測定した。
具体的には、偏光板の平行透過率(H0)及び直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H0−H90)/(H0+H90)}1/2×100より偏光度を算出した。ここで、平行透過率(H0)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光板の透過率の値である。一方、直交透過率(H90)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光板の透過率の値である。これらの透過率は、JIS Z 8701(1982年版)の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
偏光度に対する評価基準は、以下の通りである。
○:偏光度が99.990以上
△:偏光度が99.980以上99.990未満
×:偏光度が99.980未満
評価の結果、本発明に係る偏光板は、いずれも偏光子との密着性に優れたものであり、しかも、偏光子との貼合時の軸ずれに起因する偏光板の偏光度の低下も抑制され得るものであることが示された。
一方、比較例のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は、いずれも偏光子との密着性が劣り、偏光板の偏光度の低下を満足のいくレベルで抑制できていない。
一方、比較例のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は、いずれも偏光子との密着性が劣り、偏光板の偏光度の低下を満足のいくレベルで抑制できていない。
液晶表示技術の分野において利用することが可能であり、セルロースアシレートを用いた偏光板及び液晶表示装置に適用することができる。
Claims (7)
- アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるセルロースアシレートと、ガラス転移温度低下剤と、を含むセルロースアシレートフィルムを、光硬化性接着剤を用いて偏光子の一方の面に貼り合わせた偏光板であって、
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、前記セルロースアシレートフィルムの貼合面の前記ガラス転移温度低下剤の検出値をdA、他方の面の検出値をdBとしたとき、下記式(1)により示されるr値が1.1以上であることを特徴とする偏光板。
式(1) r=dA/dB - 前記セルロースアシレートは、アシル基置換度が2.0〜2.5の範囲内にあるジアセチルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の偏光板。
- 前記ガラス転移温度低下剤のガラス転移温度低下能が、3.5℃/質量部以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光板。
- 前記セルロースアシレートフィルムは、加水分解防止剤をさらに含み、
前記加水分解防止剤の平均logP値が、7.5以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光板。 - 前記貼合面の算術平均粗さが、他方の面より大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の偏光板。
- 前記偏光板の偏光度が、99.99%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の偏光板。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の偏光板が、具備されていることを特徴とする液晶表示装置。
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