JP2014167494A - セルロースアシレートフィルムおよびその製造方法、並びにこれを用いた偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

セルロースアシレートフィルムおよびその製造方法、並びにこれを用いた偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】アシル基置換度の小さい(DAC等の)セルロースアシレートからなるセルロースアシレートフィルムにおいて、偏光板を構成する際の偏光子との密着性をより一層向上させ、かつ、偏光子との間での軸ずれに起因する偏光板の偏光度の低下を緩和することができる手段を提供する。
【解決手段】ガラス転移温度低下剤(Tg低下剤)をアシル基置換度の小さいセルロースアシレートとともに用いてセルロースアシレートフィルムを構成する際に、フィルムの両表面における当該Tg低下剤の存在量がある程度偏るようにする。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースアシレートフィルムおよびその製造方法、並びにこれを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
セルロースエステルの中でも、セルロースアシレートは、アシル基置換度を変化させることにより、幅広いレターデーションを持つ光学フィルムに適用できることが知られている。一般的に、アセチル基置換度の高いトリアセチルセルロース(TAC)は、レターデーションが低いため、偏光板の保護フィルムに好適に用いられている。一方、トリアセチルセルロースをVA型やTN型など各種の液晶モードの光学補償フィルムとして用いるにはレターデーションの発現が不足することから、レターデーション上昇剤を添加する必要があった(例えば、特許文献1を参照)。
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、レターデーション上昇剤のフィルムからのブリードアウトや、偏光板製造時のケン化工程で該レターデーション上昇剤がケン化液に溶出して工程汚染を引き起こす等の問題があった。
これに対し、アセチル基置換度の小さいジアセチルセルロース(DAC)は、レターデーションの発現性が高いため、レターデーション上昇剤を添加しなくても、光学補償フィルム(視野角拡大フィルム)としての機能を発揮することができるものと期待されている。
ただし、近年の液晶セルの多様化に伴い、光学補償フィルムに要求されるレターデーションの値はより高くなる傾向にある。また、液晶パネルの薄型化に対応するために、光学補償フィルムの薄膜化の必要性も高まっている。このため、高いレターデーションの発現を薄膜のフィルムで達成しようとすると、従来よりも高倍率の延伸処理を行う必要があり、ジアセチルセルロースを用いても湿熱条件下でヘイズが上昇したり、フィルム内でレターデーション上昇剤が局在化して位相差ムラが発生したりするといった問題が生じてしまう。
これらの問題に対し、セルロースアシレートにポリエステル化合物のような物性改質剤を添加して改善を図る試みが幅広く検討されている(例えば、特許文献2〜4を参照)。これらの文献に開示された物性改質剤は、従来用いられてきたリン酸エステル系可塑剤やフタル酸エステル系可塑剤よりも高温での飛散性が低く、またフィルムの物性改質剤としての性能にも優れていることが特徴である。
しかしながら、これらの化合物をアシル基置換度の小さいジアセチルセルロースとともに用いた場合であっても、薄膜化および高レターデーション発現を目的として例えば1.3倍以上という過酷な倍率で延伸を行うと、やはり内部ヘイズが上昇したり、位相差ムラが発現したり、湿熱環境下でヘイズが上昇したりするといった問題が発生してしまうことが判明し、早急な解決が望まれていた。
欧州特許第911656号明細書 特開2009−235377号公報 特開2009−98674号公報 特開2010−66348号公報
本発明者は、上述したような背景技術のもと、鋭意研究を重ねる過程で、特定構造を芳香族ジカルボン酸とアルキレンジオールとから合成された両末端が水酸基のポリエステル化合物をアシル基置換度の小さいジアセチルセルロースとともに用いることを試みた。そして、かような対処により、上述した問題の発生が防止されうることを見出した。つまり、上述した構成とすることで、薄膜でありながら高レターデーション値を有し、高倍率な延伸でも内部ヘイズの上昇が抑えられ、位相差ムラも小さく、しかも湿熱環境下でもヘイズの上昇が抑えられるセルロースアシレートフィルムが提供されうることを見出したのである。なお、本発明者の検討によれば、上記特定構造を有するポリエステル化合物は、硬脆い性質を有するセルロースアシレートのガラス転移温度(Tg)を低下させることでその加工性や機械的物性を改善し、その結果として上述したような効果をもたらしているものと推測されている。
しかしその一方で、新たな課題も見出された。すなわち、アシル基置換度の小さい(DAC等の)セルロースアシレートからなる位相差フィルムが光学補償フィルム(視野角拡大フィルム)として用いられる場合には、偏光子と貼合されて偏光板を構成するのが一般的である。そして、偏光板としての耐久性を考えた場合には、セルロースアシレートフィルムと偏光子との間の密着性は高いほど好ましい。しかしながら、従来提案されているセルロースアシレートフィルムの偏光子との密着性は必ずしも十分なものであるとは言えず、依然として改良の余地が存在する。
また、セルロースアシレートフィルムと偏光子とを貼合して偏光板を作製する際には、セルロースアシレートフィルム(位相差フィルム)の遅相軸と偏光子の吸収軸とを厳密に重ね合わせる工程が必要とされ、このときにこれら2つの軸がわずかでもずれてしまうと(軸ずれ)、偏光板の偏光度が低下してしまう。そして、偏光板を構成する位相差フィルムの位相差発現性能が高ければ高いほど、この偏光度の低下は顕著に発現することになる。したがって、上述したような軸ずれに起因する偏光度の低下を緩和しうる手段の開発もまた、強く望まれているのが現状である。
そこで本発明は、アシル基置換度の小さい(DAC等の)セルロースアシレートからなるセルロースアシレートフィルムにおいて、偏光板を構成する際の偏光子との密着性をより一層向上させ、かつ、偏光子との間での軸ずれに起因する偏光板の偏光度の低下を緩和することができる手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的に鑑み、鋭意研究を重ねた。その結果、上述した特定構造を有するポリエステル化合物のようなガラス転移温度低下剤(以下、「Tg低下剤」とも称する)をアシル基置換度の小さいセルロースアシレートとともに用いてセルロースアシレートフィルムを構成する際に、フィルムの両表面における当該Tg低下剤の存在量がある程度偏るようにすることで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートと、
Tg低下剤と、
を含む、セルロースアシレートフィルムであって、
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、フィルムの各表面における前記Tg低下剤の検出値をそれぞれdおよびdとしたとき、下記数式(1):
式中、max{d,d}は、dおよびdのうち小さくない方を表し、min{d,d}は、dおよびdのうち大きくない方を表す、
により定義されるr値が、1.1以上であることを特徴とする、セルロースアシレートフィルム;
2.前記Tg低下剤のガラス転移温度低下能が、3.5℃/質量部以上である、上記1に記載のセルロースアシレートフィルム;
3.前記Tg低下剤が、下記一般式(I):
式中、Bは、炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基を表し、Aは、炭素数6〜14の芳香環、または、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基を表し、Xは、水素原子または炭素数6〜14の芳香環を含むモノカルボン酸残基を表し、nは、1以上の自然数を表す、
で表されるポリエステル化合物である、上記1または2に記載のセルロースアシレートフィルム;
4.加水分解防止剤をさらに含み、
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、フィルムの各表面における前記加水分解防止剤の検出値をそれぞれdおよびdとしたとき、下記数式(2):
式中、max{d,d}は、dおよびdのうち小さくない方を表し、min{d,d}は、dおよびdのうち大きくない方を表す、
により定義されるs値が、1.1未満である、上記1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム;
5.前記加水分解防止剤の平均logP値が7.5以上である、上記4に記載のセルロースアシレートフィルム;
6.前記加水分解防止剤が、下記一般式(II):
式中、Gは、単糖類または二糖類の残基を表し、Rは、脂肪族基または芳香族基を表し、mは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している水酸基の数の合計であり、lは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計であり、3≦m+l≦8であり、l≠0である、
で表される糖エステル化合物である、上記4または5に記載のセルロースアシレートフィルム;
7.フィルムの2つの表面のうち、前記Tg低下剤の検出値がmax{D,D}を示す側の表面の、JIS B0601:2001によって測定される算術平均粗さ(Ra)の値が、他方の表面における値よりも大きい、上記1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム;
8.下記数式(3)および下記数式(4):
式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表し、nzはフィルム厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す;屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)
でそれぞれ表されるRoおよびRthが、
を満足する、上記1〜7のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム;
9.アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートと、Tg低下剤と、を含むドープを支持体上に流涎して得られるフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を含む、セルロースアシレートフィルムの製造方法であって、
製造されたセルロースアシレートフィルムについて、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、フィルムの各表面における前記Tg低下剤の検出値をそれぞれdおよびdとしたとき、下記数式(1):
式中、max{d,d}は、dおよびdのうち小さくない方を表し、min{d,d}は、dおよびdのうち大きくない方を表す、
により定義されるr値が1.1以上となるように上記工程を行うことを特徴とする、セルロースアシレートフィルムの製造方法;
10.前記流涎を、前記ドープが溶媒を含む溶液流涎によって行い、この際、前記セルロースアシレート、前記Tg低下剤、および前記溶媒のそれぞれのハンセンの溶解度パラメーターの値(この順に、HSP、HSP、およびHSPとする)が、下記数式(5):
を満足するように上記工程を行う、上記9に記載の製造方法;
11.前記流涎を、前記ドープが溶媒を含む溶液流涎によって行い、この際、前記支持体から剥離する時点における前記フィルム中の残留溶媒量が90%以下となるように上記工程を行う、上記9または10に記載の製造方法;
12.前記Tg低下剤の濃度が異なる複数のドープを前記支持体上に共流涎することを含む、上記9に記載の製造方法;
13.上記1〜8のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム、または、上記9〜12のいずれか1項に記載の製造方法により得られるセルロースアシレートフィルムの2つの表面のうち、前記Tg低下剤の検出値がmax{D,D}を示す側の表面と、偏光子の少なくとも一方の表面とが貼合されてなることを特徴とする、偏光板;
14.上記13に記載の偏光板のセルロースアシレートフィルム側の表面と、液晶セルの少なくとも一方の表面とが貼合されてなることを特徴とする、液晶表示装置。
本発明によれば、アシル基置換度の小さい(DAC等の)セルロースアシレートからなるセルロースアシレートフィルムにおいて、偏光板を構成する際の偏光子との密着性をより一層向上させ、かつ、偏光子との間での軸ずれに起因する偏光板の偏光度の低下を緩和することができる手段が提供されうる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の一形態は、アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートと、Tg低下剤とを含むセルロースアシレートフィルムに関する。そして、本発明の当該形態に係るセルロースアシレートフィルムは、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、フィルムの各表面における前記Tg低下剤の検出値をそれぞれdおよびdとしたとき、下記数式(1):
式中、max{d,d}は、dおよびdのうち小さくない方を表し、min{d,d}は、dおよびdのうち大きくない方を表す、
により定義されるr値が、1.1以上である点に特徴を有する。この特徴は、要するに、セルロースアシレートフィルムの両表面におけるTOF−SIMSによるTg低下剤の検出値にある程度(具体的には、その比が1.1以上となる程度)の偏りがある、ということを意味する。
<セルロースアシレート>
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートを含む。このようにアシル基置換度が小さいセルロースアシレートを採用することで、高い位相差発現性が発揮され、位相差の高い位相差フィルムとする場合であっても薄膜化が可能となる、高い位相差を発現させる場合にも延伸倍率を低く抑えることができ破断等の故障を回避できる、などの利点が得られる。
ここで、セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度という。例えば、ジアセチルセルロース(DAC)はグルコースユニットの3個の水酸基のうち、平均して2〜2.5個にアセチル基が結合している。
本発明に用いられるセルロースアシレートとしては、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルが挙げられ、芳香族カルボン酸のエステルでもよいが、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。さらに別の置換基が置換してもよい。同じ置換度である場合、前記炭素数が多いと複屈折性が低下するため、炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。当該アシル基の炭素数は2〜4であることが好ましく、炭素数が2〜3であることがより好ましい。
例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
なお、セルロースアシレートのアシル基置換度の測定は、ASTMのD−817−91に準じて実施することができ、好ましいアシル基置換度は、2.18〜2.45である。
セルロースアシレートのアシル基置換度が2.0を下回る場合には、ドープ粘度の上昇によるフィルム面品質の劣化、延伸張力の上昇によるヘイズアップなどが発生することがある。また、アシル基置換度が2.6より大きい場合は、必要な位相差が得られ難い。
セルロースアシレートの数平均分子量(Mn)は、30000〜300000の範囲が得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。さらに50000〜200000のものが好ましく用いられる。
セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値は、1.4〜3.0であることが好ましい。
なお、セルロースアシレートの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の値としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値を採用するものとする。この際、測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明に用いられるセルロースアシレートは、公知の方法により合成されうる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
セルロースアシレートの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等が挙げられる。また、それらから得られたセルロースアシレートをそれぞれ任意の割合で混合して使用してもよい。
一方、セルロースアシレートの市販品を用いてもよい。セルロースアシレートの市販品としては、ダイセル社のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
<Tg低下剤>
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、Tg低下剤を含む。このように、セルロースアシレートフィルムがTg低下剤を含むことで、硬脆い性質を有するセルロースアシレートのガラス転移温度(Tg)が低下し、その加工性や機械的物性が改善されうる。そしてその結果、薄膜でありながら高レターデーション値を有し、高倍率な延伸でも内部ヘイズの上昇が抑えられ、位相差ムラも小さく、しかも湿熱環境下でもヘイズの上昇が抑えられるセルロースアシレートフィルムが提供されうる
本発明において用いられる「Tg低下剤」とは、それを含まない「アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート」単独でのガラス転移温度(Tg)の値が、それを添加することによって低下する添加剤を意味し、かような定義を満足する限り、いかなる物質が「Tg低下剤」として用いられてもよい。なお、「アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート」の種類に応じて、ある物質がTg低下剤の定義に該当する場合と該当しない場合とが生じるときには、当該物質はTg低下剤の定義に該当する場合における「アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート」との併用であれば、本発明において「Tg低下剤」として用いられうる。
また、Tg低下剤のTg低下能についても特に制限はないが、好ましくは3.5℃/質量部以上であり、より好ましくは3.8℃/質量部以上であり、さらに好ましくは4.0℃/質量部以上である。Tg低下剤のTg低下能がかような範囲内の値であると、少ない添加量でも優れたTg低下効果が発揮されうる。このため、添加剤を多量に添加せざるを得ない場合などに発生するブリードアウト等の問題の発生が防止されうる。一方、Tg低下剤のTg低下能の上限値については特に制限はないが、実際には5.0℃/質量部以下程度である。ここで、「Tg低下能」とは、ある物質の単位質量あたりのTgを低下させる能力を意味する。そして、本明細書においては、ある物質のTg低下能は下記数式(6)により定義される。
式中、Xは、セルロースアシレートフィルムを構成するセルロースアシレートを単独で製膜して得られるフィルムのTgを表し、Yは、当該セルロースアシレート100質量部に対してある物質を5質量部添加した後に同様に製膜して得られるフィルムのTgを表す。
なお、Tg低下能についても、「アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート」の種類によっては、ある物質が上述したTg低下能の好ましい範囲に含まれる場合と含まれない場合とが生じうる。このようなときには、当該物質は、上述したTg低下能の好ましい範囲に含まれる場合における「アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート」と併用される場合に限り、上述のTg低下能の好ましい範囲を満たす「Tg低下剤」として解釈されるものとする。
また、セルロースエステルを含むフィルムのTgの値としては、示差走査熱量測定法(DSC)により測定される値を採用するものとする。
本発明において用いられるTg低下剤の具体的な形態については、上述したTg低下剤の定義(および好ましくは上述したTg低下能の好ましい範囲)を満たす限り、特に制限はない。Tg低下剤の一例としては、下記一般式(I):
で表されるポリエステル化合物が挙げられる。
一般式(I)において、Bは、炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基を表し、Aは、炭素数6〜14の芳香環、または、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基を表し、Xは、水素原子または炭素数6〜14の芳香環を含むモノカルボン酸残基を表し、nは、1以上の自然数を表す。
一般式(I)で表されるポリエステル化合物は、芳香環(炭素数6〜14)または直鎖もしくは分岐のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基(ともに炭素数2〜6)を有するジカルボン酸と、炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレンジオールまたはシクロアルキレンジオールとの交互共重合により得られる交互共重合体である。芳香族ジカルボン酸と、直鎖または分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基を有するジカルボン酸とは、それぞれ単独で用いても、混合物として用いても構わないが、セルロースアシレートとの相溶性の点から、少なくとも芳香族ジカルボン酸が10%以上含まれることが好ましい。また、芳香環(炭素数6〜14)を有するモノカルボン酸で両末端を封止してもよい。
芳香環(炭素数6〜14)を有するジカルボン酸、つまり、炭素数6〜16の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、等が挙げられる。その中でも好ましくは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸である。
直鎖または分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基(炭素数2〜6)を有するジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、等が挙げられる。その中でも好ましくは、コハク酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
また、炭素数が2〜6の直鎖または分岐のアルキレンジオールまたはシクロアルキレンジオールとしては、例えば、エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。その中でも、好ましくはエタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールである。
中でも、Aが置換基を有していてもよいベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環であることが、Tg低下能に優れるという観点から好ましい。ここで、ベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環が有しうる「置換基」とは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基である。
ポリエステル化合物の両末端を封止する、芳香環(炭素数6〜14)を有するモノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、オルトトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸、ジメチル安息香酸、パラメトキシ安息香酸が挙げられる。その中でも好ましくは安息香酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸である。
芳香族ポリエステル化合物は、常法により上述したジカルボン酸とアルキレンジオールまたはシクロアルキレンジオールとのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によって容易に合成することができる。さらに、上述した芳香族モノカルボン酸を加えることで、両末端が封止されたポリエステル化合物を合成することができる。
以下に、本発明において用いられうる芳香族ポリエステル化合物を例示する。
以上、Tg低下剤の具体例として、一般式(I)で表される芳香族ポリエステル化合物について詳細に説明したが、その他のTg低下剤が用いられてももちろんよい。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムにおいて、Tg低下剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムにおけるTg低下剤の添加量についても特に制限はないが、セルロースアシレート100質量%に対して、好ましくは1〜5質量%であり、より好ましくは1.5〜3.5質量%である。Tg低下剤の添加量が1質量%以上であれば、Tg低下剤の本来の目的であるTg低下性能が十分に発揮されうる。一方、Tg低下剤の添加量が5質量%以下であれば、T低下剤の添加量の増加に伴うセルロースアシレートフィルムの位相差発現性能の低下が防止されうる。
上述したように、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、フィルムの両表面における飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)によるTg低下剤の検出値に、ある程度の偏りがあるという特徴を有している。これを定量的に表現すると、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムにおいては、TOF−SIMSを用いて検出される、フィルムの各表面における前記Tg低下剤の検出値をそれぞれdおよびdとしたときに、下記数式(1):
式中、max{d,d}は、dおよびdのうち小さくない方を表し、min{d,d}は、dおよびdのうち大きくない方を表す、
により定義されるr値が、1.1以上となっている。
ここで、飛行時間型二次イオン質量分析計(Time-Of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry:TOF−SIMS)とは、固体試料上の原子や分子の化学情報を一分子層以下の感度で測定でき、特定の原子や分子の分布を100nm以下の空間分解能で観察可能な質量分析法である。TOF−SIMSは二次イオン質量分析法(SIMS)の1種であり、一次イオンビームを固体試料に照射し、その際に試料の最表面から放出されるイオン(二次イオン)を検出することで、分析が行われる。そして、質量分析計には飛行時間型質量分析計(TOF−MS)が用いられることから、TOF−SIMSと称されるのである。TOF−SIMSによれば、イオンビームをパルス的に試料に照射することによって、実質的に非破壊的な試料測定が可能であることから、現在では有機・高分子材料の分析にも広く応用されるに至っている。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムでは、TOF−SIMSによって検出されるフィルムの各表面におけるTg低下剤の検出値(d、d)を用いて数式(1)のように定義されるr値が、1.1以上となる。ここで、r値を定義する等式における右辺の分子にある「max{d,d}」は、dおよびdのうち小さくない方を表す。そして、r値を定義する等式における右辺の分母にある「min{d,d}」は、dおよびdのうち大きくない方を表す。言い換えると、セルロースアシレートフィルムの各表面におけるTg低下剤のTOF−SIMSによる検出値(d、d)が異なる場合には、dおよびdのうち大きい方が「max{d,d}」となり、小さい方が「min{d,d}」となる。よってこの場合、r値は1より大きい実数となる。一方、セルロースアシレートフィルムの各表面におけるTg低下剤のTOF−SIMSによる検出値が等しい(d=d)場合には、dおよびdがいずれも、他方に対して小さくもなく大きくもないため、max{d,d}=min{d,d}=d=dの関係が成立し、r値は1となる。
上述したように、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムでは、r値が1.1以上となることから、必ずmax{d,d}>min{d,d}の関係が成立する。よって、以下では、便宜上、セルロースアシレートフィルムの各表面のうち、Tg低下剤のTOF−SIMSによる検出値が「max{d,d}」を示す側の表面を「第1の表面」とも称することがあり、同様に、Tg低下剤のTOF−SIMSによる検出値が「min{d,d}」を示す側の表面を「第2の表面」とも称することがある。
本発明では、r値は1.1以上であればよいが、r値は好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.3以上であり、さらに好ましくは1.4以上である。一方、r値が1.5を超えると、偏光板製造時において、カールが発生しやすくなることから、通常は1.5以下であることが好ましい。
以上、本発明における必須の構成要件であるr値の定義および好ましい形態について説明したが、本発明に係るセルロースアシレートフィルムの別の観点に基づく好ましい実施形態として、「フィルムの厚み方向に沿ってTg低下剤の濃度勾配が存在する」という形態が挙げられる。例えば、最も簡単な例として、本発明に係るセルロースアシレートフィルムを、その厚み方向に垂直な面で(フィルムの面方向に平行な面で)2等分されるように切断したときに、第1の表面を含む断片に存在するTg低下剤の量が、他方の断片(第2の表面を含む断片)に存在するTg低下剤の量よりも多い、という実施形態が好ましく例示される。これを一般化すると、本発明に係るセルロースアシレートフィルムを、その厚み方向に垂直な面で(フィルムの面方向に平行な面で)k等分されるように切断したときに、各断片に存在するTg低下剤の量が、第1の表面を含む断片から第2の表面を含む断片に向かうに従って、徐々に減少するという実施形態もまた、好ましく例示される。当該実施形態において、k=2の場合については上記で別途説明したが、kは好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上であり、特に好ましくは20以上である。
上述したように、アシル基置換度の小さい(DAC等の)セルロースアシレートからなる位相差フィルムが光学補償フィルム(視野角拡大フィルム)として用いられる場合には、偏光子と貼合されて偏光板を構成するのが一般的である。そして、偏光板としての耐久性を考えた場合には、セルロースアシレートフィルムと偏光子との間の密着性は高いほど好ましい。しかしながら、従来提案されているセルロースアシレートフィルムの偏光子との密着性は必ずしも十分なものであるとは言えず、依然として改良の余地が存在していた。
これに対し、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムによれば、r値が1.1以上となるように構成されていることで、偏光板を構成する際の偏光子との密着性をより一層向上させることが可能となる。そのメカニズムについては完全には明らかではないが、本発明者の検討によれば、以下のメカニズムが推定されている。すなわち、セルロースアシレートフィルムは通常、後述するようにセルロースアシレートおよび添加剤を含むドープを支持体上に流涎して得られるフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を経て製造される。そして、得られたセルロースアシレートフィルムにおけるr値が1.1以上となるような製造手法を採用した場合には、得られたセルロースアシレートフィルムの第1の表面(Tg低下剤リッチな表面)が、第2の表面と比較して微小な凹凸が多く荒れた表面構造を呈することが判明した。これは、第1の表面にはセルロースアシレートのTgを低下させる能力を持つTg低下剤がリッチに存在していることで、延伸の際にセルロースアシレートが柔軟に移動することができるようになった結果であろうと考えられている。そして、このような微小な凹凸を多数有する荒れた表面構造が、偏光子との貼合により偏光板を構成する際の偏光子との密着性の向上に寄与しているものと考えられているのである。なお、通常は偏光子とセルロースアシレートフィルムとの貼合時に、密着性の向上を目的としてセルロースアシレートフィルムの貼合面をアルカリケン化処理するが、本発明により提供されるフィルムによれば、上述したようなメカニズムによって偏光子との間の密着性が向上することから、かようなアルカリケン化処理が不要となることも期待される。このようなアルカリケン化処理を施すと、セルロースアシレートフィルムのケン化処理表面(貼合面)に存在するセルロースアシレートの一部が加水分解されてしまう虞があるが、密着性の向上によってアルカリケン化処理が不要となれば、工数の削減によるコスト低減効果のみならず、アルカリケン化処理時のセルロースアシレートの加水分解の虞もなくなり、非常に優位性の高い技術が提供されることになる。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムの好ましい実施形態は、上述のメカニズムにより偏光子との密着性の向上に寄与する微小な凹凸からなる表面構造の存在を定量的に表現したものである。すなわち、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムにおいては、フィルムの2つの表面のうち、第1の表面の、JIS B0601:2001によって測定される算術平均粗さ(Ra)の値が、第2の表面における値よりも大きいことが好ましい。この際、第1の表面におけるRaの値は、第2の表面におけるRaの値の、好ましくは1.05倍以上であり、より好ましくは1.1倍以上であり、さらに好ましくは1.2倍以上であり、特に好ましくは1.3倍以上であり、最も好ましくは1.4倍以上である。
また、従来、セルロースアシレートフィルムと偏光子とを貼合して偏光板を作製する際には、セルロースアシレートフィルム(位相差フィルム)の遅相軸と偏光子の吸収軸とを厳密に重ね合わせる工程が必要とされていた。そして、貼合の際にこれら2つの軸がわずかでもずれてしまうと(軸ずれ)、偏光板の偏光度が低下してしまうという問題があった。偏光板を構成する位相差フィルムの位相差発現性能が高ければ高いほど、この偏光度の低下は顕著に発現することになるため、上述したような軸ずれに起因する偏光度の低下を緩和しうる手段の開発もまた、強く望まれていた。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、かような要望に対しても一定の解決をもたらすものである。すなわち、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムによれば、偏光子との貼合時にわずかな軸ずれが生じた場合であってもそれに起因する偏光板の偏光度の低下が緩和されうるのである。そのメカニズムについては完全には明らかではないが、本発明者の検討によれば、以下のメカニズムが推定されている。すなわち、本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムに含まれるTg低下剤は、その存在量の増加に伴って、位相差発現に寄与するセルロースアシレートの相対的な存在量を減少させることになる。そして、本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、第1の表面に第2の表面よりも多くのTg低下剤が存在していることから、第1の表面近傍について微視的に観察すれば、セルロースアシレートフィルムのレターデーション(後述するRo、Rth)の値は、フィルム全体についての巨視的な値よりも小さくなっていると考えられる。逆に、第2の表面近傍について微視的に観察すれば、Ro、Rthの値は、フィルム全体についての巨視的な値よりも大きくなっていると考えられる。なお、かような場合であっても、フィルム全体に含まれるTg低下剤の量およびフィルムの厚みが一定であれば、フィルム全体としての厚み方向の位相差発現性能(つまり、Ro、Rth)は不変である。ここで、上述したように、第1の表面近傍においては、フィルム全体に均一にTg低下剤が含まれる場合よりもRo、Rthの値が小さくなっている。そして、上述したようにセルロースアシレートフィルムの位相差フィルムとしての性能(位相差発現性能)が高いほど偏光子との軸ずれによる偏光度の低下が大きいことから、Ro、Rthの値が微視的に小さくなるように構成されている第1の表面を偏光子と貼合することで、軸ずれに起因する偏光板の偏光度の低下が緩和される。その結果、同程度の軸ずれが生じた場合であっても、フィルム全体に均一にTg低下剤が含まれる場合と比較して、偏光板の偏光度の低下の度合いが小さくてすむという利点があるのである。
従来、セルロースアシレートフィルムを構成するのに用いられる添加剤は、通常、フィルムの内部において可能な限り均一に分布するように種々の工夫がなされていた。つまり、セルロースアシレートフィルムへの各種の添加剤の添加を検討する当業者であれば、より均一な配合を念頭に置くことはあっても、添加剤の配合に分布を持たせようとすることはしないはずである。したがって、かような技術常識のもとであえてTg低下剤の配合に分布を持たせたことで上述したような優れた作用効果を発揮することができる本発明は、先行技術に対して極めて優位性の高い技術を提供するものであるといえる。
<その他の添加剤>
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、上述したTg低下剤に加えて、その他の添加剤をも含みうる。以下、本発明に用いられうる添加剤について、説明する。
(加水分解防止剤)
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムは、加水分解防止剤を含むことができる。このように、セルロースアシレートフィルムが加水分解防止剤を含むことで、セルロースアシレートの加水分解が防止されることから、フィルムの耐水性が向上しうる。また、偏光板を構成する際の偏光子との貼合時には、フィルム表面がケン化処理されるが、このケン化処理時におけるセルロースアシレートの加水分解とそれに伴うアルカリケン化液への溶出も防止されうる。
本発明において用いられうる「加水分解防止剤」とは、それを含まない「アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート」単独での耐加水分解性が、それを添加することによって低下する添加剤を意味し、かような定義を満足する限り、いかなる物質が「加水分解防止剤」として用いられてもよい。なお、ある物質が「加水分解防止剤」の概念に含まれるか否かを判定するための、セルロースアシレート(フィルム)の耐加水分解性の指標としては、ケン化前後での重量減少率が用いられうる。具体的には、例えば、フィルムを50℃の2.0MのKOH水溶液に90秒間浸漬して、その前後のフィルム重量変化率を計算する(アルカリ溶液中では、セルロースアシレートが加水分解され、ケン化液中に溶けだすため)。そして、セルロースアシレートのみで製膜したフィルムの重量減少率をA%、セルロースアシレート100重量部に対して、添加剤5重量部添加したフィルムの重量減少率をB%として、|A|>|B|を満たす場合に、当該添加剤はセルロースアシレートに対する「加水分解防止剤」であると判断することができる。また、「アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート」の種類に応じて、ある物質が加水分解防止剤の定義に該当する場合と該当しない場合とが生じるときには、当該物質は加水分解防止剤の定義に該当する場合における「アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレート」との併用であれば、本発明において「加水分解防止剤」として用いられうる。
加水分解防止剤の加水分解防止能について特に制限はないが、加水分解防止剤の疎水性の指標として、平均logP値による規定が有効である。すなわち、平均logP値が高いほど、加水分解防止剤として好ましい性能を有しているといえる。
ここで、「logP値」とは、「オクタノール−水分配係数」や「logPow」とも称され、n−オクタノールおよび水からなる二相溶媒系の各相へのある物質の分配濃度の比の値の常用対数として定義される。そして、「平均logP値」としたのは、加水分解防止剤が複数種の化合物の混合物として用いられる場合を考慮したものであり、かような場合において「平均logP値」は、混合物を構成する各化合物の固有のlogP値をまず求めた後、混合物における各化合物の混合比率(質量比)によって重みづけすることにより算出される。なお、本明細書において、logP値の値としては、JIS Z−7260−107:2000に記載のフラスコ振盪法により測定が可能である。また、logP値については、実測に代わって、計算化学的手法または経験的方法により見積もることも可能である。
計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))、Viswanadhan’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,29巻、p163(1989年))、Broto’s fragmentation法(“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p71(1984年))、CLogP法(参考文献Leo,A.,Jow,P.Y.C.,Silipo,C.,Hansch,C.,J.Med.Chem.,18,865 1975年)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))がより好ましい。ただし、上述したフラスコ振盪法による測定値と計算化学的手法または経験的方法によって見積もられた値とが有意に異なる場合には、フラスコ振盪法による測定値が優先するものとする。
本発明において用いられる加水分解防止剤のlogP値は、好ましくは7.5以上であり、より好ましくは8.0以上であり、さらに好ましくは9.0以上であり、特に好ましくは9.5以上である。加水分解防止剤のlogP値がかような範囲内の値であると、少ない添加量でも優れた加水分解防止効果が発揮されうる。このため、添加剤を多量に添加せざるを得ない場合などに発生するブリードアウト等の問題の発生が防止されうる。一方、加水分解防止剤のlogP値の上限値について特に制限はないが、セルロースアシレートとの相溶性という観点からは、通常は13.0以下程度であることが好ましい。
本発明において用いられうる加水分解防止剤の具体的な形態については、上述した加水分解防止剤の定義(および好ましくは上述したlogP値の好ましい範囲)を満たす限り、特に制限はない。加水分解防止剤の一例としては、下記一般式(II):
で表される糖エステル化合物が挙げられる。
一般式(II)において、Gは、単糖類または二糖類の残基を表し、Rは、脂肪族基または芳香族基を表し、mは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している水酸基の数の合計であり、lは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計であり、3≦m+l≦8であり、l≠0である。
一般式(II)で表される構造を有する化合物は、水酸基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(l)が固定された単一種の化合物として単離することは困難であり、式中のm、lの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。したがって、水酸基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(l)が各々変化した混合物としての性能が重要であり、本発明のセルロースアシレートフィルムの場合、ヘイズ特性に対し一般式(II)で表される構造を有し、かつm=0の成分とm>0の成分との混合比率が45:55〜0:100である化合物が好ましい。さらに性能的、コスト的により好ましくはm=0の成分とm>0の成分との混合比率が10:90〜0.1:99.9の範囲である。なお、上記のm=0の成分とm>0の成分は、常法により高速液体クロマトグラフィによって測定することが可能である。
上記一般式(II)において、Gは単糖類または二糖類の残基を表す。単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどが挙げられる。
以下に、一般式(II)で表される、単糖類残基を有する化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
二糖類の具体例としては、たとえば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロースなどが挙げられる。
以下に、一般式(II)で表される、二糖類残基を有する化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
一般式(II)において、Rは、脂肪族基または芳香族基を表す。ここで、脂肪族基および芳香族基はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい。
また、一般式(II)において、mは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している水酸基の数の合計であり、lは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計である。そして、3≦m+l≦8であることが必要であり、4≦m+l≦8であることが好ましい。また、l≠0である。なお、lが2以上である場合、−(O−C(=O)−R)基は互いに同じでもよいし異なっていてもよい。
の定義における脂肪族基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、1〜20のものがより好ましく、2〜15のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシルなどが挙げられる。
また、Rの定義における芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン、トリアジン、キノリンが特に好ましい。
次に、一般式(II)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
(合成例:一般式(II)で表される化合物の合成例)
撹拌装置、還流冷却器、温度計および窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×10Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×10Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4およびA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLCおよびLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4およびA−5を得た。
本発明の一形態に係るセルロースアシレートフィルムに添加されうる加水分解防止剤は、上述したようにフィルムに耐水性を付与するという作用効果を発揮するものである。したがって、この加水分解防止剤は、上述したTg低下剤とは異なり、可能な限り、フィルムの全体に均一に分布していることが好ましい。このことを定量的に表現すれば、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、フィルムの各表面における前記加水分解防止剤の検出値をそれぞれdおよびdとしたとき、下記数式(2):
式中、max{d,d}は、dおよびdのうち小さくない方を表し、min{d,d}は、dおよびdのうち大きくない方を表す、
により定義されるs値が、1.1未満であることが好ましい。Tg低下剤の検出値の偏りについての上記での説明から理解されるように、加水分解防止剤の検出値の偏りについてのこの好ましい実施形態は、要するに、セルロースアシレートフィルムの両表面におけるTOF−SIMSによる加水分解防止剤の検出値にほとんど(具体的には、その比が1.1未満となる程度しか)偏りがない、ということを意味する。
なお、当該好ましい実施形態では、s値は理論上、1以上の実数である。s値は1.1未満であればよいが、s値は好ましくは1.05以下であり、より好ましくは1.03以下であり、さらに好ましくは1.02以下であり、特に好ましくは1.01以下であり、最も好ましくは1.005以下である。
(可塑剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、本発明の効果を得る上で、必要に応じて、上述した一般式(I)や一般式(II)で表される化合物以外の可塑剤を含有してもよい。
このような可塑剤の具体的な形態は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤および多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。これらのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルとからなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
式中、R11はn価の有機基を表し、nは2以上の正の整数を表し、OH基はアルコール性および/またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアシレートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアシレートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(b)で表される。
式中、R12は(m1+n1)価の有機基を表し、m1は2以上の正の整数を表し、n1は0以上の整数を表し、COOH基はカルボキシ基を表し、OH基はアルコール性および/またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができる。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性またはフェノール性の水酸基を、モノカルボン酸を用いてエステル化しても良い。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることがさらに好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースアシレートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は1種類でもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、レターデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価の値としては、JIS K0070に準拠して測定した値を採用するものとする。
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
(紫外線吸収剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもチバ・ジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒とセルロースアシレート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースアシレートフィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、フィルムの全質量に対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%がさらに好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤とも称される。高湿高温の状態に液晶画像表示装置などが置かれた場合には、セルロースアシレートフィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、セルロースアシレートフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースアシレートフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記セルロースアシレートフィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
(酸捕捉剤)
セルロースアシレートは高温下では酸によっても分解が促進されるため、本発明のセルロースアシレートフィルムに用いる場合においては酸捕捉剤を含有することが好ましい。
有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているエポキシ基を有する化合物が好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、および種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油など)の組成物によって代表され例示されうるエポキシ化植物油および他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815Cも好ましく用いることができる。
さらに上記以外に用いることが可能な酸捕捉剤としては、オキセタン化合物やオキサゾリン化合物、またはアルカリ土類金属の有機酸塩やアセチルアセトナート錯体、特開平5−194788号公報の段落68〜105に記載されているものが含まれる。
なお酸捕捉剤は酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。
〈微粒子〉
本発明のセルロースアシレートフィルムには、取扱性を向上させるため、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるため、好ましい。
微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、さらに好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成してセルロースアシレートフィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、さらに好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とする。
<セルロースアシレートフィルムの製造方法>
本発明の他の形態によれば、セルロースアシレートフィルムの製造方法もまた、提供される。すなわち、本形態に係るセルロースアシレートフィルムの製造方法は、ドープを支持体上に流涎して得られるフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を含む、セルロースアシレートフィルムの製造方法である。ここで、当該ドープは、アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートおよびTg低下剤を必須に含むものである。そして、得られるフィルムの両表面におけるTg低下剤の存在量がある程度偏るように、上記工程を行う点に特徴を有する。
当該形態に係るセルロースアシレートフィルムの製造方法は、溶液流涎法によるものであってもよいし、溶融流涎法によるものであってもよいが、好ましくは溶液流涎法によるものである。よって、以下では、溶液流涎法によるセルロースアシレートフィルムの製造方法を例に挙げて説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには限定されない。
当該形態に係る製造方法における溶液流涎法によるセルロースアシレートフィルムの製造は、例えば、アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートおよびTg低下剤並びに必要に応じてその他の添加剤を溶媒に溶解させてドープを調製する工程;ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流涎する工程、流涎したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
まず、ドープを調製する工程について説明する。ドープ中のセルロースアシレートの濃度は、濃い方が金属支持体に流涎した後の乾燥負荷が低減できることから好ましいが、セルロースアシレートの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。また、Tg低下剤やその他の添加剤については、ドープ調製釜に規定量をバッチ添加することが好ましい。
ドープの調製に用いられる溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースアシレートの良溶媒と貧溶媒とを混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶媒が多い方がセルロースアシレートの溶解性の点で好ましい。
良溶媒と貧溶媒との混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶媒が2〜30質量%である。良溶媒、貧溶媒とは、使用するセルロースアシレートを単独で溶解するものが良溶媒と定義され、単独で膨潤するかまたは溶解しないものが貧溶媒と定義される。そのため、セルロースアシレートのアシル基置換度によって、良溶媒、貧溶媒が変わる。
本発明に用いられる良溶媒は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含まれていることが好ましい。
また、セルロースアシレートの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これは再利用されうる。
回収溶媒中に、セルロースアシレートに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースアシレートの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
溶媒の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
また、セルロースアシレートを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、さらに良溶媒を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶媒の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶媒を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースアシレートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70〜105℃がさらに好ましい。また、圧力は設定温度で溶媒が沸騰しないように調整される。
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースアシレートを溶解させることができる。
次に、このセルロースアシレート溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。
このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
濾過により、原料のセルロースアシレートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましく、より好ましくは100個/cm以下であり、さらに好ましくは50個/m以下であり、特に好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶媒の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。
好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
ここで、本発明の当該形態に係るセルロースアシレートフィルムの製造方法では、上述の通り、得られるフィルムの両表面におけるTg低下剤の存在量がある程度偏るように、一連の工程を行う。具体的には、製造されたセルロースアシレートフィルムについて、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、フィルムの各表面における前記ガラス転移温度低下剤の検出値をそれぞれdおよびdとしたとき、下記数式(1):
式中、max{d,d}は、dおよびdのうち小さくない方を表し、min{d,d}は、dおよびdのうち大きくない方を表す、
により定義されるr値が1.1以上となるように、上記の一連の工程を行う。ここで、r値の意義や、当該r値が1.1以上であることの意義などについては上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
本発明の当該形態に係るセルロースアシレートフィルムの製造方法において、得られるフィルムにおけるr値が1.1となるように上記工程を行う具体的な手法について特に制限はなく、種々の手法が採用されうる。本明細書においては、代表的な3つの実施形態(第1の形態〜第3の形態)について説明するが、本発明の技術的範囲はかような形態のみには限定されない。
まず、第1の形態として、ドープを調製する際の各種材料の選択により、上記工程の実施が可能である。具体的には、ドープの必須成分としてはセルロースアシレート、Tg低下剤、および溶媒の3つがあるが、これらのそれぞれのハンセンの溶解度パラメーターの値が所定の関係を満たすように材料を選択することで、上記工程の実施が可能となる、すなわち、得られるフィルムにおいてTg低下剤の分布が厚み方向に偏ったものとすることが可能となることが判明したのである。より詳細には、セルロースアシレート、Tg低下剤、および溶媒のそれぞれのハンセンの溶解度パラメーターの値を、この順に、HSP、HSP、およびHSPとしたときに、下記数式(5):
を満足するようにそれぞれの材料を選択すればよいのである。
ここで、ハンセンの溶解度パラメーター(HSP)は、チャールズ・ハンセンによって開発された、物質の溶解性の示すためのパラメーターである。本明細書において、HSPの値は、Hansen, Charles (2007). Hansen Solubility Parameters: A user’s handbook, Second Editionに記載された方法により測定された値を採用するものとする。なお、セルロースアシレート、Tg低下剤、および溶媒がそれぞれ2種以上の混合物となっている形態もありうるが、そのような形態におけるHSP値は、混合物として測定された値を採用するものとする。
上記数式(5)の技術的意義について簡単に説明すると、「|HSP−HSP|」は、Tg低下剤の溶解度パラメーターの値とセルロースアシレートの溶解度パラメーターの値との差の絶対値を意味する。一方、「|HSP−HSP|」は、Tg低下剤の溶解度パラメーターの値と溶媒の溶解度パラメーターの値との差の絶対値を意味する。そして、数式(5)が成立するということは、前者が後者よりも大きい、すなわち、Tg低下剤の溶解度パラメーターの値が、セルロースアシレートの値よりも溶媒の値に近いことを意味するのである。このように、数式(5)を満たすように材料を選択したときに、得られたフィルムにおいてTg低下剤の分布がフィルムの厚み方向に偏るメカニズムは完全には明らかではないが、溶解度パラメーターが近いほど溶解性(親和性)がより高いことを意味することから、以下のようなメカニズムが推定されている。すなわち、金属支持体上で乾燥させたときに、支持体に接していない面(空気との界面)から徐々に溶剤が揮発していくため、フィルムの厚み方向で溶剤の濃度勾配が発生する。その際に、Tg低下剤が樹脂よりも溶剤との親和性が高い場合は、より溶剤濃度の大きなベルト側に偏って存在することになると考えられるのである。
HSP、HSP、およびHSPが上記数式(5)を満たす場合、「|HSP−HSP|」は、「|HSP−HSP|」の、1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。かような形態とすることで、製造されたフィルムにおけるTg低下剤の厚み方向の分布の偏りを確実に発現させることが可能となる。
続いて、ドープの流涎(キャスト)について説明する。
流延(キャスト)工程に用いられる金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流涎工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶媒の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化したりする場合がある。
好ましい支持体温度は0〜55℃であり、25〜50℃がさらに好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
本形態に係るセルロースアシレートフィルムの製造方法は、ドープを支持体上に流涎して得られるフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を含む。そして、得られるフィルムにおいてTg低下剤の分布が厚み方向に偏ったものとする具体的な手法の第2は、ドープを支持体上に流涎した後のプロセス条件を制御するというものである。具体的には、フィルムを支持体から剥離する時点におけるフィルム中の残留溶媒量を少なめにする(すなわち、より過酷な条件下で乾燥する)ことで、得られるフィルムにおいてTg低下剤の分布が厚み方向に偏ったものとすることが可能となることが判明した。より詳細には、支持体から剥離する時点におけるフィルム中の残留溶媒量が90%以下となるようにプロセス条件を制御すればよいのである。なお、支持体から剥離する時点におけるフィルム中の残留溶媒量は、好ましくは85%以下であり、より好ましくは80%以下である。また、この第2の形態による制御と、上述した第1の形態(ドープ調製時の材料の選択)による制御とが併せて実施されてもよい。もちろん、いずれか一方のみの制御によっても、Tg低下剤の分布の偏りを有するセルロースアシレートフィルムを製造することが可能である。
ここで、残留溶媒量は下記数式(7)で定義される。
式中、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量を表し、Nは当該試料を115℃にて1時間加熱した後の質量である。
このように、残留溶媒量の値を所定の値以下とするために制御されるプロセス条件としては、支持体からフィルムを剥離する前の乾燥条件が挙げられる。支持体からのフィルム剥離前の乾燥条件の具体的な形態について特に制限はなく、剥離時点でのフィルムの残留溶媒量の値が所定の値以下となるように乾燥条件を制御することは、当業者であれば特段の困難性を伴うことなく実施することが可能である。乾燥条件の一例を挙げると、乾燥温度は好ましくは25〜50℃程度であり、より好ましくは35〜45℃である。また、乾燥時間は、好ましくは15〜150秒間程度であり、より好ましくは25〜120秒間である。剥離時点でのフィルムの残留溶媒量の値が所定の値以下となるのであれば、これらの範囲を外れる条件が採用されてもよいことはもちろんである。
乾燥工程において採用される乾燥手段について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。乾燥手段の具体例としては、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等が挙げられるが、簡便さの観点からは、熱風で行うことが好ましい。
セルロースアシレートフィルムを作製する際には、続いて、支持体から剥離されたフィルム(ウェブ)を延伸する。この際、剥離されたフィルム(ウェブ)の両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向(横方向)に延伸を行うことが特に好ましい。また、支持体からの剥離張力は300N/m以下とすることが好ましい。
延伸処理時の条件を調節することによって、得られるフィルムの膜厚や、レターデーション値を制御することができる。
例えば、長手方向の張力を低くまたは高くすることでレターデーションを変動させることが可能となる。また、フィルムの長手方向(製膜方向)およびそれとフィルム面内で直交する方向(すなわち、幅手方向)に対して、逐次または同時に2軸延伸もしくは1軸延伸することでレターデーションを変動させることができる。
互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に0.8〜1.5倍、幅方向に1.1〜2.0倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に0.8〜1.1倍、幅方向に1.3〜1.7倍の範囲で行うことがより好ましく、幅方向に1.3〜1.5倍の範囲で行うことが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは延伸し易く、またレターデーションが発現し易いこともあり、破断等の工程故障に関して耐性が高い。
延伸温度は120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは130℃〜170℃であり、さらに好ましくは140℃を超えて160℃以下で延伸するのが好ましい。延伸処理の際のフィルム中の残留溶媒量は、20〜0%が好ましく、さらに好ましくは15〜0%である。より詳細には、例えば、155℃で残留溶媒が11%で延伸するか、または155℃で残留溶媒が2%で延伸するのが好ましい。あるいは、160℃で残留溶媒が11%で延伸するのが好ましく、または160℃で残留溶媒が1%未満で延伸するのが好ましい。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれらの方法は、組み合わせて用いてもよい。
また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
また、上述した延伸後には、さらに乾燥する工程を行い、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。延伸後の乾燥温度としては、125℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。150℃を超えると、フィルムのTgに近づいてくることから、レターデーションの低下や配向角のズレ等が生じる虞があり、好ましくない。
以上、本発明に係るセルロースアシレートフィルムの製造方法が溶液流涎法によって行われる場合を例に挙げて説明したが、製造コストの観点から、溶融流涎法によって製造してもよい。この場合には、上述した第2の形態による制御によって、所望のセルロースアシレートフィルムを得ることができる。
溶液流涎法において用いられる溶媒(例えば塩化メチレン等)を用いずに、加熱溶融する溶融流涎による成形法は、さらに詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。これらの中で、機械的強度および表面精度等に優れるフィルムを得るためには、溶融押し出し法が優れている。溶融流涎法によってセルロースアシレートのウェブを得るための具体的な手法について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
また、以上では、本発明に係るセルロースアシレートフィルムを、溶液流涎法または溶融流涎法により単独で流涎することによりウェブを得て、これを乾燥後剥離し、延伸するという形態について説明したが、第3の形態では、共流涎法によって本発明に係るセルロースアシレートフィルムを製造する方法を提供する。具体的には、第3の形態に係るセルロースアシレートフィルムの製造方法は、ドープを支持体上に流涎して得られるフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を含み、ドープの流涎が、Tg低下剤の濃度が異なる複数のドープを支持体上に共流涎することを含む。
この際、まず、セルロースアシレートおよびTg低下剤並びにその他の添加剤を含む複数のドープを調製するが、ドープが2種の場合を例に挙げて説明すると、Tg低下剤の濃度が低いドープAと、Tg低下剤の濃度が高いドープBとを調製し、ドープAが表面層側、ドープBが金属支持体層側となるように支持体上に共流涎すればよい。Tg低下剤の濃度が異なる3つ以上のドープを用いる場合には、Tg低下剤の濃度が高くなる順に、表面層側から支持体層側に向かって各ドープを配置して共流涎を行うという形態が好ましく挙げられる。なお、この第3の形態におけるドープ中のTg低下剤の濃度の具体的な値について特に制限はなく、得られるセルロースアシレートフィルムのフィルム全体のレターデーション値を考慮して、適宜調節すればよい。
<セルロースアシレートフィルムの物性>
本発明により提供されるセルロースアシレートフィルムの膜厚は、薄膜であることが好ましく、10〜200μmの範囲が用いられ、10〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは10〜60μmであり、特に好ましくは20〜60μmである。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる虞がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、求められる光学補償効果によって必要とされる位相差は異なるものの、高い位相差発現性を活かす観点から、下記数式(3)および下記数式(4):
式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表し、nzはフィルム厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す;屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)
でそれぞれ表されるRoおよびRthが、
を満足することが好ましい。ここで、Roは、好ましくは30〜70であり、より好ましくは40〜60であり、さらに好ましくは45〜55である。また、Rthは、好ましくは90〜230であり、より好ましくは100〜170であり、さらに好ましくは110〜160である。なお、RoおよびRthの測定は、得られたフィルムから試料35mm×35mmを切り出し、25℃×55%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))で、590nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値から算出することができる。
セルロースアシレートフィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
セルロースアシレートフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで300〜1800g/m・24hが好ましく、さらに400〜1500g/m・24hが好ましく、40〜1300g/m・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z0208に記載の方法に従い測定することができる。
セルロースアシレートフィルムの破断伸度は10〜80%であることが好ましく、20〜50%であることがさらに好ましい。また、セルロースアシレートフィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。さらに、セルロースアシレートフィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく、0〜0.1%であることが特に好ましい。
<偏光板>
本発明により提供されるセルロースアシレートフィルムは、光学補償フィルム(位相差フィルム)として、偏光板、およびそれを用いた液晶表示装置に用いられうる。
本発明のさらに他の形態により提供される偏光板は、本発明により提供されるセルロースアシレートフィルムを、偏光子の少なくとも一方の面に貼合した偏光板である。この際、本発明により提供されるセルロースアシレートフィルムの2つの表面のうち、Tg低下剤の検出値がmax{D,D}を示す側の表面(つまり、第1の表面)と、偏光子の少なくとも一方の表面とが貼合される点に特徴がある。本発明に係るセルロースアシレートフィルムは、このようにTg低下剤リッチな表面で偏光子と貼合されることで、偏光板を構成する際のセルロースアシレートフィルムと偏光子との密着性が向上しうる。また、かような構成とすることで、偏光子とセルロースアシレートフィルムとの貼合時にわずかな軸ずれが生じた場合であっても、それに起因する偏光板の偏光度の低下が緩和されうる。
偏光板の主たる構成要素である偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられうる。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。中でも、熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能および耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。中でも、本発明に係るセルロースアシレートフィルムの偏光子側をアルカリケン化処理し、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。なお、上述したように、セルロースアシレートフィルムが加水分解防止剤を含む場合には、セルロースアシレートの加水分解が防止される結果、偏光子との貼合時におけるケン化処理の際のセルロースアシレートのアルカリケン化液への溶出が防止されうるという利点がある。
なお、偏光板を構成する偏光子の他方の面には、本発明に係るセルロースアシレートフィルムを用いてもよいし、他の光学フィルムを貼合することも好ましい。かような他の工学フィルムとしては、例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。
偏光子と、本発明に係るセルロースアシレートフィルムおよび必要に応じて他の工学フィルムとの貼合は、通常、接着剤を用いて行われる。この際に用いられうる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などが挙げられるが、中でもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
表示装置の表面側に用いられる偏光板の視認側保護フィルムには、防眩層あるいはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
<液晶表示装置>
上記形態により提供される偏光板は、液晶表示装置に用いることができる。すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、上記形態により提供される偏光板のセルロースアシレートフィルム側の表面と、液晶セルの少なくとも一方の表面とが貼合されてなることを特徴とする、液晶表示装置もまた、提供される。本形態に係る液晶表示装置は、本発明により提供される、優れた光学補償機能を有するセルロースアシレートフィルムを用いていることから、種々の視認性に優れたものである。また、当該液晶表示装置は、本発明により提供される、構成要素間の密着性の高い偏光板を用いていることから、耐久性にも優れたものである。
偏光板のセルロースアシレートフィルム側の表面と、液晶セルの少なくとも一方の表面との貼合は、従来公知の手法により行われうる。場合によっては、接着層を介して貼合されてもよい。
液晶表示装置のモード(駆動方式)についても特に制限はなく、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種モード(駆動方式)の液晶表示装置が用いられうる。好ましくは、VA(MVA,PVA)型液晶表示装置である。これらの液晶表示装置に本発明により提供されるセルロースアシレートフィルムを用いることで、特に30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、環境変動が少なく、色味むら、正面コントラストなど視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪実施例1≫
<セルロースアシレートフィルム101の作製>
〈微粒子分散液1の調製〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1の調製〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
〈主ドープ液の調製〉
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアシレート(アセチル基置換度2.45、Mw135000とMw180000のセルロースアシレートを6:4の質量比で混合)を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアシレート
(アセチル置換度2.45、Mw135000とMw180000の
セルロースアシレートを6:4の質量比で混合) 100質量部
一般式(II)で表される糖エステル化合物
(KMSB03;平均logP値=8.7、Tg低下能=2.1℃/質量部)
8質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。
〈ドープの流涎〜フィルムの作製〉
次いで、無端ベルト流涎装置を用い、ドープ液を温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流涎した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流涎(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が88%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したセルロースアシレートフィルムを、160℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に1.15倍延伸した。延伸開始時の残留溶媒は10%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
以上のようにして、乾燥膜厚45μm、2000m長のセルロースアシレートフィルム101を得た。
<セルロースアシレートフィルム102〜116の作製>
ドープ構成物および製造条件を下記の表1に示すように変更した以外は、セルロースアシレートフィルム101と同様にして、セルロースアシレートフィルム102〜116を作製した。なお、表1には、ドープ構成物としてのTg低下剤および加水分解防止剤のTg低下能の値、加水分解防止剤の平均logP値、並びに、フィルム剥離時のフィルム中の残留溶媒量の値を併せて記載する。また、本明細書においては、セルロースアシレートフィルム101等の作製に用いたアセチル基置換度2.45のセルロースアシレートを「DAC」とも称することがあり、同様にフィルム108等の作製に用いたアセチル基置換度1.56でプロピオニル基置換度0.84のセルロースアシレートを「SCAP」とも称することがある。
≪フィルムの評価≫
上記で得られたセルロースアシレートフィルム101〜116について、以下の測定方法により、各表面におけるTg低下剤および加水分解防止剤の分布の比(r値、s値)、並びに、各表面における表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))を測定した。結果を下記の表1に示す。なお、本明細書において、「A面」とは、フィルムの2つの面のうち、ドープの流涎時に支持体と接していた面とは反対側の面を指し、「B面」とは、ドープの流涎時に支持体と接していた面を指す。
<r値およびs値の測定方法>
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて、フィルムの各表面におけるTg低下剤の検出値をそれぞれdおよびdとして、r値を定義する上述の数式(1)に従って、r値を算出した。
同様に、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて、フィルムの各表面における加水分解防止剤の検出値をそれぞれdおよびdとして、s値を定義する上述の数式(2)に従って、s値を算出した。
<表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の測定方法>
JIS B0601:2001に従って、算術平均粗さ(Ra)を測定した。
≪実施例2≫
<偏光板201〜219の作製>
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、1軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)し、2000m長のPVAフィルムを得た。
これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥して、偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って、偏光子と、上記で作製したセルロースアシレートフィルム101〜116のいずれか、および、その裏面側にはコニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製セルロースエステルフィルム)を貼り合わせて、偏光板201〜219を作製した。なお、各偏光板の作製に用いたセルロースアシレートフィルムの種類、および、セルロースアシレートフィルムの偏光子と貼合した面(A面またはB面のいずれか)については、下記の表2に示す通りである。
工程1:45℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に45秒間浸漬し、次いで水洗し、乾燥して、偏光子と貼合する側をケン化したセルロースアシレートフィルム101〜116を得た。同様に、裏面側に貼合するKC4UYの貼合面にもケン化処理を行った。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースアシレートフィルム101〜116の上にのせて配置した。
工程4:工程3で積層したセルロースアシレートフィルム101〜116と偏光子と裏面側セルロースエステルフィルムとを圧力20〜30N/cm、搬送スピード約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中、工程4で作製した試料を2分間乾燥し、セルロースアシレートフィルム101〜116を用いたに対応する偏光板201〜219を作製した。なお、偏光板201〜216は、セルロースアシレートフィルム101〜116のB面を偏光子との貼合面としたものであり、偏光板217〜219は、それぞれセルロースアシレートフィルム102、104、109のA面を偏光子との貼合面としたものである。
≪偏光板の評価≫
上記で得られた偏光板201〜219について、以下の測定方法により、偏光子とセルロースアシレートフィルムとの密着性、および、偏光板の偏光度を測定した。結果を下記の表2に示す。
<偏光子とセルロースアシレートフィルムとの密着性の測定方法>
偏光板を60℃×90%RHの湿熱条件下に500時間静置した。その後、偏光子とセルロースアシレートフィルムとを手で剥離することができるか否かにより、密着性を判定した。表2に示す結果の判定基準は、以下の通りである。
○:手で剥離することができなかった。
×:手で剥離することができた。
<偏光板の偏光度の測定方法>
偏光板の偏光度については、日本分光(株)製「V−7100」を用いて測定した。具体的には、偏光板の平行透過率(H0)および直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H0−H90)/(H0+H90)}1/2×100より偏光度を算出した。ここで、平行透過率(H0)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光板の透過率の値である。一方、直交透過率(H90)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光板の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JIS Z 8701(1982年版)の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。表2に示す結果の判定基準は、以下の通りである。
○:偏光度99.990以上
△:偏光度99.980以上99.990未満
×:99.980未満
評価の結果、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は、いずれも偏光子との密着性に優れたものであり、しかも、偏光子との貼合時の軸ずれに起因する偏光板の偏光度の低下も抑制されうるものであることが示された。
一方、比較例のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は、いずれも偏光子との密着性が劣るものであり、かつ、偏光板の偏光度の低下を満足のいくレベルで抑制できたものもなかった。

Claims (14)

  1. アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートと、
    ガラス転移温度低下剤と、
    を含む、セルロースアシレートフィルムであって、
    飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、フィルムの各表面における前記ガラス転移温度低下剤の検出値をそれぞれdおよびdとしたとき、下記数式(1):
    式中、max{d,d}は、dおよびdのうち小さくない方を表し、min{d,d}は、dおよびdのうち大きくない方を表す、
    により定義されるr値が、1.1以上であることを特徴とする、セルロースアシレートフィルム。
  2. 前記ガラス転移温度低下剤のガラス転移温度低下能が、3.5℃/質量部以上である、請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
  3. 前記ガラス転移温度低下剤が、下記一般式(I):
    式中、Bは、炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基を表し、Aは、炭素数6〜14の芳香環、または、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基を表し、Xは、水素原子または炭素数6〜14の芳香環を含むモノカルボン酸残基を表し、nは、1以上の自然数を表す、
    で表される芳香族ポリエステル化合物である、請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
  4. 加水分解防止剤をさらに含み、
    飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、フィルムの各表面における前記加水分解防止剤の検出値をそれぞれdおよびdとしたとき、下記数式(2):
    式中、max{d,d}は、dおよびdのうち小さくない方を表し、min{d,d}は、dおよびdのうち大きくない方を表す、
    により定義されるs値が、1.1未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  5. 前記加水分解防止剤の平均logP値が7.5以上である、請求項4に記載のセルロースアシレートフィルム。
  6. 前記加水分解防止剤が、下記一般式(II):
    式中、Gは、単糖類または二糖類の残基を表し、Rは、脂肪族基または芳香族基を表し、mは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している水酸基の数の合計であり、lは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計であり、3≦m+l≦8であり、l≠0である、
    で表される糖エステル化合物である、請求項4または5に記載のセルロースアシレートフィルム。
  7. フィルムの2つの表面のうち、前記ガラス転移温度低下剤の検出値がmax{D,D}を示す側の表面の、JIS B0601:2001によって測定される算術平均粗さ(Ra)の値が、他方の表面における値よりも大きい、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  8. 下記数式(3)および下記数式(4):
    式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表し、nzはフィルム厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す;屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)
    でそれぞれ表されるRoおよびRthが、
    を満足する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  9. アシル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアシレートと、ガラス転移温度低下剤と、を含むドープを支持体上に流涎して得られるフィルムを乾燥し、剥離した後に延伸する工程を含む、セルロースアシレートフィルムの製造方法であって、
    製造されたセルロースアシレートフィルムについて、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて検出される、フィルムの各表面における前記ガラス転移温度低下剤の検出値をそれぞれdおよびdとしたとき、下記数式(1):
    式中、max{d,d}は、dおよびdのうち小さくない方を表し、min{d,d}は、dおよびdのうち大きくない方を表す、
    により定義されるr値が1.1以上となるように上記工程を行うことを特徴とする、セルロースアシレートフィルムの製造方法。
  10. 前記流涎を、前記ドープが溶媒を含む溶液流涎によって行い、この際、前記セルロースアシレート、前記ガラス転移温度低下剤、および前記溶媒のそれぞれのハンセンの溶解度パラメーターの値(この順に、HSP、HSP、およびHSPとする)が、下記数式(5):
    を満足するように上記工程を行う、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記流涎を、前記ドープが溶媒を含む溶液流涎によって行い、この際、前記支持体から剥離する時点における前記フィルム中の残留溶媒量が90%以下となるように上記工程を行う、請求項9または10に記載の製造方法。
  12. 前記ガラス転移温度低下剤の濃度が異なる複数のドープを前記支持体上に共流涎することを含む、請求項9に記載の製造方法。
  13. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム、または、請求項9〜12のいずれか1項に記載の製造方法により得られるセルロースアシレートフィルムの2つの表面のうち、前記ガラス転移温度低下剤の検出値がmax{D,D}を示す側の表面と、偏光子の少なくとも一方の表面とが貼合されてなることを特徴とする、偏光板。
  14. 請求項13に記載の偏光板のセルロースアシレートフィルム側の表面と、液晶セルの少なくとも一方の表面とが貼合されてなることを特徴とする、液晶表示装置。
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