以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、Ca2+イオンとのキレート安定度定数が2以上のキレート剤を含むことを特徴とする。この構成により、ヘイズ値が低く、コントラストが高いセルロースアシレートフィルムとすることができる。これはドープ生成時に金属イオンによる局所的なセルロースエスエルの架橋、凝集がおこることを防ぎ、ドープの相溶性、均一性が向上したためであると推定している。
以下、構成要素について詳細な説明をする。
<セルロースアシレート>
本発明のセルロースアシレートには特に限定はないが、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味している。ヒドロキシ基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。更に別の置換基が置換してもよい。
セルロースアシレートの合成反応において、セルロースを硫酸触媒の存在下でエステル化して3置換のセルロースアシレートを得た後、この一次セルロースアシレートを加水分解して、所望の置換度のセルロースアシレートを得るのが通常の合成反応である。従って本発明においては、セルロースアシレートが3置換のセルロースエステルよりも置換度の低いセルロースアシレートが好ましい。
また、セルロースアシレートフィルムとしては、同じ置換度である場合、前記炭素数が多いと複屈折性が低下するため、炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。
位相差発現性が高く、高い位相差を有する位相差フィルムとする場合であっても薄膜化可能であること、位相差を発現させるための延伸倍率を低く抑えることができるという観点から、アセチル基置換度が1.5〜2.5の範囲内にあるセルロースアセテートからなるフィルムが用いられることがより好ましい。
アセチル基置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。更に好ましいアセチル基置換度は、2.2〜2.45である。アセチル基置換度が2.4のジアセチルセルロースはリターデーション発現性も高く、また、ヘイズ改善効果も大きく特に好適である。
本発明に用いられるセルロースアシレートはアセチル基だけでなく、プロピオニル基やブチリル基等、他のアシル基で置換されていても良い。アシル基の総置換度は2.25〜2.8であることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースアシレートの数平均分子量と重量平均分子量の制限はないが、薄膜化可能である観点から、数平均分子量30000以上70000未満であることが好ましく、45000以上60000未満であることが特に好ましい。重量平均分子量120000以上250000未満であることが好ましく、150000以上200000未満であることが特に好ましい。
セルロースアシレートの数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
セルロースアシレートの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースアシレートはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
一般に、内部ヘイズの低いセルロースアセテートフィルムを得るためには、セルロース純度の高い綿花リンターを使用することが望ましい。市販されているジアセチルセルロースとしては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60S等が挙げられる。
本発明におけるセルロースアシレート中のアルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム)の含有量は、100ppm以下であることが望ましいく、30ppm以下であることがさらに好ましい。アルカリ土類金属の含有量がこれらの範囲より大きい場合、ドープ生成時の不均一性だけでなく、溶液流延時に金属支持体からの剥離力が強くなりすぎて、フィルムにスジや横段といった欠陥が生じる場合がある。
アルカリ土類金属(Ca,Mg)含有量の測定は、乾燥したセルロースエステルを完全に燃焼させた後、灰分を塩酸に溶解した前処理を行った上で原子吸光法により測定することができる。測定値は絶乾状態のセルロースエステル1g中の各アルカリ土類金属含有量としてppmを単位として得ることができる。
本発明では、原料パルプとして、カルシウム含量の少ないパルプを用いることが好ましい。カルシウム含量の少ないパルプを用いることにより、セルロースエステル中に含まれるカルシウム量を少なくすることができる。例えば好適なパルプのカルシウム含量は20ppm以下(例えば、0.01〜18ppm)であり、好ましくは10ppm以下である。
<セルロースアセテートの合成>
合成例1
クラフト法溶解パルプ(α−セルロース含有率93%)を水解砕後、アセトン置換し乾燥した。このパルプ100質量部に対し、500質量部の酢酸を均一に散布し40℃にて30分間混合し、前処理活性化した。
一方、無水酢酸250質量部、硫酸4.0質量部の混合物を添加し、常法によりエステル化を行った。内容物は、原料パルプが同伴する水と無水酢酸との反応及びセルロースと無水酢酸との反応により発熱するが、外部冷却により調整し、次に125質量部の有機溶媒を添加し、更に、保温したまま酢化反応を行わせた。
次いで、熱により反応溶液である有機溶媒を除去した後、35質量部の20%酢酸カルシウム水溶液を添加混合し、系内の硫酸を完全に中和し、且つ、酢酸カルシウム過剰とした(硫酸に対して、1.09倍等量)。
完全中和した反応混合物を150℃で50分間保持した後、反応混合物を大気下100℃とした。反応混合物は攪拌の下に、希酢酸水溶液を加え、フレーク状セルロースアセテートとして分離した後、充分水洗して取り出し乾燥した。得られたフレーク状セルロースアセテートAはアセチル基置換度2.4、数平均分子量は47500、重量平均分子量が166000であった。
〈キレート剤〉
本発明のセルロースアシレートフィルムは、Ca2+イオンとのキレート安定度定数が2以上のキレート剤を含む。キレート剤を含ませることにより、セルロースをアシル化する際一般的に用いられる酸触媒である硫酸が、セルロースエステルに硫酸基として取り込まれ、セルロースエステル中のこの硫酸基やヒドロキシ基などが、セルロースアシレートフィルム製造過程のドープ中で、2価のCaイオンや、Mgイオンを介して局所的に高分子化することが抑制されると推定している。このためフィルムの均一性が向上し、ヘイズ値を低くすることができ、コントラストを向上させると考えられる。
本発明において用いられるキレート剤は、Ca2+とのキレート安定度定数が2以上である。好ましくはキレート安定度定数が6以上であり、更に好ましくはキレート安定度定数が10以上である。上限は化合物入手の困難性などから、キレート安定度定数は12程度である。
Ca2+イオンとのキレート安定度定数が2以上であるキレート剤としては、有機カルボン酸キレート剤、有機リン酸キレート剤、無機リン酸キレート剤、ポリヒドロキシ化合物等が挙げられる。
具体的には、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシイミノ二酢酸、ニトリル三酢酸(以上キレスト(株))、イミノ二酢酸((株)同仁科学研究所)、エチレンジアミンプロピオン酸を挙げることができる。中でも、Ca2+とのキレート安定度定数が6以上のジエチレントリアミン五酢酸、ニトリル三酢酸が好ましく、特にジエチレントリアミン五酢酸が好ましい。
ここでいうキレート安定度定数とは、L.G.Sillen,A.E.Marttell著“Stability Constants of Metal−ion Complexes”The Chemical Society,London(1964)、S.Chaberek,A.E.Martell著“Organic Sequestering Agents” Wiley(1959)等により一般に知られた定数を意味する。
本発明に係るキレート剤を、セルロース全質量の0.0001質量%以上、0.2質量%以下含有させることが好ましい。より好ましくはセルロース全質量の0.001質量%以上、0.1質量%以下含有させることである。
キレート剤はセルロースを溶かしたドープに添加して用いることができる。溶液流延法や溶融流延法にも適用可能である。
溶媒に溶解してセルロースに加えることが好ましい。用いることのできる溶媒としては、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
〈パルプ中のカルシウム含量の測定方法〉
パルプ中のカルシウム含量の測定は原子吸光法で行う。具体的な測定の前処理手順としては以下の方法を用いる。
(1)洗浄した50ml容量の磁性坩堝を2N硝酸水溶液中に1晩浸漬する。
(2)2N硝酸に漬けておいた磁性坩堝を純水で洗浄した後、超純水ですすぎ、乾燥器中で乾燥させる。
(3)試料2gを磁性坩堝に精秤する。
(4)電熱器上で磁性坩堝中の試料を炭化させる。
(5)磁性坩堝を電気炉に入れ、500℃で約1時間、600℃で約1.5時間、灰化する。
(6)完全に白く灰化したら、電気炉を止め、そのまま炉中で放冷する。
(7)0.5N塩酸水溶液を磁性坩堝に10ml入れ、サンドバス上で加熱溶解する。
(8)溶液を放冷後、50mlのメスフラスコに洗浄済みのロートを用いて移し、磁性坩堝を超純水で洗いこみメスアップする(塩酸濃度:0.1Nとなる)。
(9)標準液として、1000ppm濃度のカルシウム標準液を0.1N塩酸水溶液で希釈し、0.1ppm、0.75ppm、1.5ppmの濃度で調製する。
(10)フレーム原子吸光にて測定する。
検量線は次の方法で作成した。検量線用の標準液は市販の原子吸光用標準液を0.1Nの塩酸水溶液にて、0.1、0.75、1.5ppm濃度に、希釈調製し使用できる。例えば原子吸光装置は、島津製作所(株)製、商品名「AA−680」で測定できる。
なお、本発明のセルロースアシレートフィルムには、本発明の効果を害しない限りにおいて、下記熱可塑性樹脂を併用することもできる。
熱可塑性樹脂としては、一般的汎用樹脂としては、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)等を用いることができる。
また、強度や壊れにくさを特に要求される場合、ポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、環状ポリオレフィン(COP)等を用いることができる。
さらに、高い熱変形温度と長期使用できる特性を要求される場合は、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等を用いることができる。
なお、本発明の用途にそって樹脂の種類、分子量の組み合わせを行うことが可能である。
<一般式(1)で表される化合物>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、熱可塑性樹脂として下記一般式(1)で表される構造を有し、かつm=0の成分とm>0の成分との混合比率が45:55〜0:100である化合物の少なくとも一種をセルロースアシレートに対し5〜15質量%含有することが望ましい。
(式中、Gは単糖類もしくは二糖類残基を表す。X1は−O−を示し、R1は、−CO−R2を示し、R2は脂肪族もしくは芳香族基を示す。mは単糖類もしくは二糖類残基に直接結合しているヒドロキシ基(水酸基)の数の合計、nは単糖類もしくは二糖類残基に直接結合しているOR1基の数の合計を表し、3≦m+n≦8であり、n≠0である。)
一般式(1)で表される構造を有する化合物は、ヒドロキシ基(水酸基)の数(m)、OR1基の数(n)が固定された単一種の化合物を合成することは困難であり、式中のm、nの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。従って、ヒドロキシ基の数(m)、OR1基の数(n)が各々変化した混合物としての性能を検討しなければならない。
一般式(1)で表される構造を有し、かつm=0の成分とm>0の成分との混合比率が45:55〜0:100である化合物である場合に本発明の効果が大きい。更に性能的、コスト的により好ましくはm=0の成分とm>0の成分との混合比率が30:70〜0.1:99.9の範囲である。
上記m=0の成分とm>0の成分は、常法により高速液体クロマトグラフィによって測定することが可能である。
上記一般式(1)において、Gは単糖類もしくは二糖類残基を表す。単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどが挙げられる。
以下に、一般式(1)で表される、単糖類残基をもつ化合物の構造例を示すが、これらの具体例に限定されるものではない。
二糖類の具体例としては、たとえば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロースなどが挙げられる。
以下に、一般式(1)で表される、二糖類残基をもつ化合物の構造例を示すが、これらの具体例に限定されるものではない。
前記一般式(1)で表される構造のX1は単結合、−O−を示し、R1は−CO−R2を示し、R2は脂肪族もしくは芳香族基を示す。脂肪族基及び芳香族基はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい。
mはヒドロキシ基(水酸基)の数、nはOR1基の数を表し、3≦m+n≦8である。4≦m+n≦8であることが好ましい。また、n≠0である。nが2以上の場合は−X1−R1は互いに同じでも異なっていてもよい。
以下に上記脂肪族基について説明する。脂肪族基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1乃至25のものが好ましく、1乃至20のものがより好ましく、2乃至15のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシルなどが挙げられる。
以下に上記芳香族基について説明する。芳香族基は芳香族炭化水素基でも芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6乃至24のものが好ましく、6乃至12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン、トリアジン、キノリンが特に好ましい。
次に、一般式(1)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、これらの具体例に限定されるものではない。
(合成例2:一般式(1)で表される化合物の合成)
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5を得た。
<オクタノール−水分配係数(logP)>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、一般式(1)で表される化合物であって、かつ平均logP値が7.5以上の化合物をセルロースアシレートに対し5質量%〜15質量%含有することが好ましい。
上記平均logP値を有する化合物は本発明に係るセルロースアシレートフィルムのアルカリケン化液への溶出を抑制する効果を有する。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS Z−7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法又は経験的方法により見積もることも可能である。
計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))、Viswanadhan’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,29巻、p163(1989年))、Broto’s fragmentation法(“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p71(1984年))、CLogP法(参考文献Leo,A.,Jow,P.Y.C.,Silipo,C.,Hansch,C.,J.Med.Chem.,18,865 1975年)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))がより好ましい。
<一般式(2)で表される化合物>
本発明のセルロースアシレートフィルムには、特に偏光板のむらの要因となる環境変化での寸法安定性の観点から、下記一般式(2)で表されるエステル化合物を可塑剤として含有することが好ましい。
一般式(2):B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基又はカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(2)において、炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用される。
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースアセテートとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
また、炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ一種又は二種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
一般式(2)で表されるエステル系化合物は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。
また、本発明に係るセルロースアシレートには、末端がヒドロキシ基(水酸基)のポリエステル系化合物が、相溶性の面で好ましい。
以下に、一般式(2)で表されるエステル化合物の具体的化合物を示すが、これに限定されない。
〈その他の添加剤〉
(可塑剤)
本発明の光学補償フィルムは、本発明の効果を得る上で必要に応じて一般式(2)で表される化合物以外の可塑剤を含有することができる。
可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及び多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
そのうち、可塑剤を二種以上用いる場合は、少なくとも一種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
一般式(a): R11−(OH)n
但し、R11はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/又はフェノール性ヒドロキシ基(水酸基)を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアセテートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(b)で表される。
一般式(b):R12(COOH)m1(OH)n1
式中、R12は(m1+n1)価の有機基、m1は2以上の正の整数、n1は0以上の整数、COOH基はカルボキシ基、OH基はアルコール性又はフェノール性ヒドロキシ基を表す。
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
例えば炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪族飽和アルコール又は脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール又はその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコール又はその誘導体なども好ましく用いることができる。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性又はフェノール性のヒドロキシ基(水酸基)を、モノカルボン酸を用いてエステル化しても良い。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、リターデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
(紫外線吸収剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは紫外線吸収剤を二種以上を含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアシレート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースアシレートフィルムを偏光板保護フィルムとして用いるとき、偏光板保護フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、偏光板保護フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合には、セルロースアシレートフィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、セルロースアシレートフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースアシレートフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記セルロースアシレートフィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロースアシレートに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
〈微粒子〉
本発明のセルロースアシレートフィルムには、取扱性を向上させるため、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。
微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成してセルロースアシレートフィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、更に好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とした。
〈光学補償フィルムの製造方法〉
本発明のセルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして製造する光学補償フィルムの製造方法として、セルロースアセテートフィルムを例にして説明する。当該製造方法においては、前記セルロースアセテートが、当該セルロースアセテートの合成において、アセチル化触媒として硫酸を用い、かつ当該硫酸を中和するために、当該硫酸に対して化学量論的に1.0〜1.1倍量の酢酸カルシウム又は酢酸マグネシウムを用いて合成されたセルロースアセテートであることが好ましい。さらに、フィルムの幅方向に25〜50%延伸する工程を有する態様の製造方法であることが好ましい。
本発明の光学補償フィルムは、溶液流延法で製造されたフィルムであっても溶融流延法で製造されたフィルムであっても好ましく用いることができる。
本発明の光学補償フィルムの溶液流延法での製造は、セルロースアセテート及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースアセテートの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースアセテートの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても二種以上を併用してもよいが、セルロースアセテートの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースアセテートの溶解性の点で好ましい。
良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースアセテートを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。
そのため、セルロースアセテートのアセチル基置換度によって良溶剤、貧溶剤が変わる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
また、セルロースアセテートの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。
回収溶剤中に、セルロースアセテートに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースアセテートの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
また、セルロースアセテートを貧溶剤と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースアセテートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースアセテートを溶解させることができる。
次に、このセルロースアセテート溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。
このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
濾過により、原料のセルロースアセテートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。
より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。
好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
好ましい支持体温度は0〜55℃であり、25〜50℃が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
セルロースアセテートフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースアセテートフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを作製するためには、ウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向(横方向)に延伸を行うことが特に好ましい。剥離張力は300N/m以下で剥離することが好ましい。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが用いられる。特に膜厚は10〜100μmであることが特に好ましい。更に好ましくは20〜60μmである。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
セルロースアセテート以外のセルロースアシレートフィルムの製造も同様な方法で製造することができる。
光学補償フィルムとして用いられる本発明のセルロースアシレートフィルムは、求められる光学補償効果によって必要とされる位相差は異なるものの、高い位相差発現性を生かす観点から、面内方向における式(I)で定義されるリターデーションRoが30nm以上であることが好ましく、30〜200nmの範囲であることがより好ましく、30〜90nmの範囲であることが更に好ましく、式(II)で定義される厚み方向のリターデーションRthは70nm以上であることが好ましく、70〜300nmの範囲であることがより好ましい。
式(I):Ro=(nx−ny)×d
式(II):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
正面コントラストなど視認性に優れ液晶表示装置を得ることができる。
〈リターデーションRo、Rthの測定〉
得られたフィルムから試料35mm×35mmを切り出し、25℃,55%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))で、590nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したリターデーション値の外挿値より算出する。
位相差の調整方法としては、特に制限はないが、延伸処理によって調整する方法が一般的である。
本発明で目標とするリターデーション値Ro、Rthを得るには、セルロースアセテートフィルムが本発明の構成をとり、更に搬送張力の制御、延伸操作により屈折率制御を行うことが好ましい。
例えば、長手方向の張力を低く又は高くすることでリターデーション値を変動させることが可能となる。
また、フィルムの長手方向(製膜方向)及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次又は同時に2軸延伸もしくは1軸延伸することでリターデーション値を変動させることができる。
互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に0.8〜1.5倍、幅方向に1.1〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に0.8〜1.0倍、幅方向に1.25〜2.5倍に範囲で行うことが好ましい。
延伸温度は120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは130℃〜180℃であり、さらに好ましくは140℃を超えて170℃以下で延伸するのが好ましい。
フィルム中の残留溶媒は15〜0%が好ましく、さらに好ましくは10〜0%で延伸するのが好ましい。
具体的には155℃で残留溶媒が11%で延伸する、あるいは155℃で残留溶媒が2%で延伸するのが好ましい。もしくは160℃で残留溶媒が11%で延伸するのが好ましく、あるいは160℃で残留溶媒が1%未満で延伸するのが好ましい。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。
また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸又は進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制又は防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
〈セルロースアシレートフィルムの物性〉
本発明のセルロースアシレートフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで300〜1800g/m2・24hが好ましく、更に400〜1500g/m2・24hが好ましく、40〜1300g/m2・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、破断伸度が10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムの内部ヘイズは1%未満であることが好ましく0〜0.1%であることが特に好ましく、0〜0.03%であることが最も好ましい。
〈偏光板〉
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板、それを用いた液晶表示装置に使用することができる。
偏光板は、前記本発明のセルロースアシレートフィルムを、光学補償フィルムとして偏光子の少なくとも一方の面に貼合した偏光板であることが特徴である。本発明の液晶表示装置は、少なくとも一方の液晶セル面に、本発明に係る偏光板が、粘着層を介して貼り合わされたものであることが特徴である。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の光学補償フィルムの偏光子側をアルカリケン化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面には当該セルロースアセテートフィルムを用いても、また他のフィルムを貼合することも好ましい。
例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。
表示装置の表面側に用いられる偏光板の視認側には、防眩層あるいはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。
中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
以上のようにして得られた偏光子は、通常、その両面又は片面に保護フィルムが貼合されて偏光板として使用される。貼合する際に用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
〈液晶表示装置〉
上記本発明のセルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして貼合した偏光板を液晶表示装置に用いることによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学補償フィルム、特に位相差フィルムとしての機能を併せ持つことが好ましく、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。
好ましくはVA(MVA,PVA)型液晶表示装置である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下にセルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして用いた実施例を挙げる。
実施例1
<光学補償フィルム1の作製>
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに合成例1で作製したセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアセテートA(合成例1で作製) 100質量部
キレート剤(DTPA) 0.003質量部
例示化合物2−14(一般式(2)で表される化合物) 4質量部
例示化合物A−4(一般式(1)で表される化合物) 8質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力180N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したセルロースアセテートフィルムを、148℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に延伸した。延伸倍率は、表2に記載の通りに変更した。延伸開始時の残留溶媒は7%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は140℃で、搬送張力は100N/mとした。
以上のようにして、乾燥膜厚40μmの光学補償フィルム1を得た。
Ca2+含有量を前述した原子吸光法で測定し、30ppmであった。
<光学補償フィルム2〜20の作製>
セルロースアアシレート種、総置換度、Ca含有量、キレート剤、キレート剤量を表1に示すように変更した以外は、セルロースアセテートフィルムと同様にして光学補償フィルムとしてセルロースアシレートフィルム2〜20を作製した。なお、Ca含有量は合成例1、セルロースアセテートAの合成において、中和用の酢酸カルシウムの量を適宜変えて表の値となるよう調整した。
《評価》
得られた各々のサンプルについて、以下の要領で各波長でのリターデーション値、内部ヘイズを測定した。
(リターデーションRo、Rthの測定)
得られたフィルムから試料35mm×35mmを切り出し、25℃,55%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))で、590nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したリターデーション値の外挿値より算出した。
(内部ヘイズの測定)
作製した各種光学補償フィルムを、23℃・55%RHの環境下にて8時間調湿した後、下記方法により内部ヘイズ値を評価した。なお、測定は、JIS K−7136に準じて行った。
〈内部ヘイズ測定装置〉
ヘイズメーター(濁度計):型式:NDH 2000、日本電色(株)製
光源は、5V9Wハロゲン球、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)を用いた。
内部ヘイズ測定は、以下手順に従って行った。
まず、フィルム以外の測定器具のブランクヘイズ1を測定する。
1.きれいにしたスライドガラスの上にグリセリンを一滴(0.05ml)たらす。このとき液滴に気泡が入らないように注意する。ガラスは見た目がきれいでも汚れていることがあるので必ず洗剤で洗浄したものを使用する。
2.その上にカバーガラスを乗せる。
3.ヘイズメーターにセットしブランクヘイズ1を測定する。
次いで、以下の手順で、試料を含めたヘイズ2を測定する。
4.スライドガラス上にグリセリン(0.05ml)を滴下する。
5.その上に測定する試料フィルムを気泡が入らないように乗せる。
6.試料フィルム上にグリセリン(0.05ml)を滴下する。
7.その上にカバーガラスを載せる。
8.上記のように作製した積層体(上から、カバーガラス/グリセリン/試料フィルム/グリセリン/スライドガラス)をヘイズメーターにセットしヘイズ2を測定する。
9.(ヘイズ2)−(ヘイズ1)=(本発明の光学補償フィルムの内部ヘイズ)を算出する。
表1ではこの値を内部ヘイズとして示した。内部ヘイズは0.04以下であることが好ましい。なお、上記ヘイズの測定は、すべて23℃・55%RHにて行われた。
また、上記測定にて使用したガラス、グリセリンは以下の通りである。
ガラス:MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMI
グリセリン: 関東化学製 鹿特級(純度>99.0%) 屈折率1.47
なお、上記光学補償フィルムの作製において用いた略号は以下の通りである。
DAC :二酢酸セルロース
CAP :セルロースアセテートプロピオネート
TAC :三酢酸セルロース
総置換度 :セルロースアシレートの総置換度
Pr置換度 :セルロースアシレートのプロピオニル基の置換度
DTPA :ジエチレントリアミン五酢酸
NTA :ニトリル三酢酸
HIDA :ヒドロキシイミノ二酢酸
IDA :イミノ二酢酸
EDDP :エチレンジアミンジプロピオン酸
更に、表中〜1は値が1以下であることを表す。
表1に示した結果から明らかなように、本発明のセルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして用いた光学補償フィルム1から13は、比較例に比べ、リターデーション発現性に優れかつ、内部ヘイズが低いことが分かる。特にキレート安定化定数が6以上のNTAやDTPAを用いたとき良好な結果が得られる。更に光学補償フィルム1と6と10の比較から、セルロースアシレートフィルムとしてDACを用いたとき、その効果の大きいことが分かる。
すなわち、本発明の上記手段により、リターデーション発現性に優れたジアセチルセルロースを用いた場合でも、内部ヘイズが低く、高コントラスト用途に適用できる光学補償フィルムとその製造方法を提供することができることが分かる。
実施例2
<偏光板1〜20の作製>
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。
これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と前記セルロースアシレートフィルム1〜20と、裏面側にはコニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製セルロースエステルフィルム)を貼り合わせて偏光板1〜20を作製した。
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側をケン化したセルロースアシレートフィルム1〜20を得た。同様に裏面側のKC4UYもケン化処理を行った。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースアセテートフィルム1〜20の上にのせて配置した。
工程4:工程3で積層したセルロースアセテートフィルム1〜20と偏光子と裏面側セルロースエステルフィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とセルロースアセテートフィルム1〜20とコニカミノルタタックKC4UYとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、それぞれ、セルロースアセテートフィルム1〜20に対応する偏光板1〜20を作製した。
<液晶表示装置1〜20の作製>
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
SONY製40型ディスプレイBRAVIA X1の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板1〜20をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、本発明の光学補償フィルムの面が、液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、それぞれ、偏光板1〜20に対応する液晶表示装置1〜20を各々作製した。
《評価》
この液晶表示装置について視野角及び、正面コントラストについて評価した。
(視野角の評価)
上記作製した各液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて極角が60°における上下左右方向で、コントラスト比(白透過率/黒透過率)の平均値求めた。○以上であることが好ましい。
◎:40〜50
○:20〜40未満
×:10〜20未満
(液晶表示装置の正面コントラスト)
液晶表示装置について、それぞれの正面コントラストを測定した。正面コントラストの測定は、ELDIM社製の正面コントラスト測定装置(EZ−contrast)により行い、白表示時と黒表示時の光量を測定した。測定結果を、正面コントラストの値によって、下記のように優劣を付けてランク付けを行った。△以上であることが好ましい。
◎:正面コントラスト比=3000:1以上
○:正面コントラスト比=2999:1〜2000:1
△:正面コントラスト比=1999:1〜1000:1
×:正面コントラスト比=999:1以下
得られた結果を表2に示す。
表2に示すように、本発明の光学補償フィルムを用いた偏光板を装着した液晶表示装置1〜13は、視野角が広く、かつコントラストが高く、視認性に優れた液晶表示装置であることが確認された。