JP5821849B2 - セルロースアセテートフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロースアセテートフィルムの製造方法に関する。
セルロースエステルの中でも、セルロースアセテートは、アセチル基置換度を変化させることにより、幅広いレターデーションを持つ光学フィルムに適用できることが知られている。一般的に、アセチル基置換度の高いトリアセチルセルロースは、レターデーションが低い為、偏光板の保護フィルムに好適に用いられている。しかし、VAやTNなど各種液晶モードの光学補償フィルムとして用いる場合はレターデーションの発現が不足している為、レターデーション上昇剤を添加する必要があった。(例えば特許文献1参照。)
しかしながら、レターデーション上昇剤のフィルムからのブリードアウトや、偏光板製造時のケン化工程で該レターデーション上昇剤がケン化液に溶出し工程汚染を引き起こす等の問題があった。
一方、アセチル基置換度の低いジアセチルセルロースは、レターデーションの発現性が高いため、レターデーション上昇剤を添加しなくても、光学補償フィルムとして用いることが期待されている。
しかし、近年の液晶セルの多様化に伴い、光学補償フィルムに要求されるレターデーションの値がより高くなる傾向にあり、また液晶パネルの薄型化に対応するために、光学補償フィルムの薄膜化の必要性も高まっている。その為、高レターデーションを薄膜のフィルムで達成しようとすると従来よりも高倍率の延伸処理を行う必要があり、ジアセチルセルロースを用いても湿熱条件下でのヘイズの上昇や、フィルム内でのレターデーション上昇剤の局在化による位相差ムラといった問題点が生じることが判明した。
これらの問題はセルロースアセテートにポリエステル化合物のような物性改質剤を添加して改善することが幅広く検討されている。(例えば、特許文献2〜4参照。)これらは、従来から用いられてきたリン酸エステル系可塑剤やフタル酸エステル系可塑剤よりも高温での飛散性が低く、またフィルムの物性改質剤としても優れていることが特徴である。
しかしながら、これらの化合物をアセチル基置換度の低いジアセチルセルロースと共に用いても、薄膜かつ高レターデーション付与の為に1.3倍以上という過酷な倍率で延伸を行うと、内部ヘイズの上昇、位相差ムラの発現や、湿熱環境下でヘイズの上昇等の問題が発生し早急な解決が望まれていた。
欧州特許第911656号明細書 特開2009−235377号公報 特開2009−98674号公報 特開2010−66348号公報
本発明者は上記課題について鋭意検討を重ねたところ、芳香族ジカルボン酸と、アルキレンジオールから合成された両末端が水酸基のポリエステル化合物と、アセチル基置換度の低いセルロースアセテートとを用いることで上記問題点が解決されることを見出し本発明に至った。
即ち本発明の目的は、薄膜でありながら高レターデーションを有し、高倍率な延伸でも内部ヘイズ上昇がなく、また位相差ムラが小さく、湿熱環境下でもヘイズ上昇のないセルロースアセテートフィルムの製造方法を提供することにある。
加えて、低アセチル基置換度のセルロースアセテートと相溶性の高いポリエステル化合物を含有するセルロースアセテートフィルムである為、高倍率の延伸処理を行っても平面性がよいことから、巻き癖に優れ貼合する際にシワが寄りにくく、液晶パネル製造において「ロールtoパネル製法」にも適したセルロースアセテートフィルム、偏光板を提供することにある。
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
1.セルロースアセテートフィルムの製造方法であって、少なくとも下記一般式(I)で表される両末端が水酸基である、数平均分子量224〜1122の範囲内のポリエステル化合物とアセチル基置換度2.0〜2.6のセルロースアセテートとを含むドープを支持体上に流延し剥離した後に、乾燥しながら、膜厚が58μm以下で、かつ、下記式で表されるレターデーション値Roが20〜100nm、Rthが70〜300nmとなるように、少なくとも幅手方向に1.35〜1.7倍の倍率で延伸処理を行い、前記ポリエステル化合物を、前記セルロースアセテート100質量部に対して、0.5〜5.5質量部の範囲内で添加することを特徴とするセルロースアセテートフィルムの製造方法。
(式中、Bは炭素数が2以上6以下の直鎖もしくは分岐のアルキレン、もしくはシクロアルキレン基を示し、Aはベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環を、nは1以上の自然数を表す。)
式(i)Ro=(nx−ny)×d
式(ii)Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
2.前記一般式(I)で表されるポリエステル化合物の式中、Aが置換基として、炭素数1以上6以下のアルキル基、アルケニル基又はアルコキシル基を有していてもよいナフタレン環もしくはビフェニル環であることを特徴とする前記1に記載のセルロースアセテートフィルムの製造方法
3.前記ポリエステル化合物の水酸基価が170〜400mgKOH/gであることを特徴とする前記1または2に記載のセルロースアセテートフィルムの製造方法。
4.前記ポリエステル化合物の水酸基価が250〜400mgKOH/gであることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアセテートフィルムの製造方法。
.加水分解防止剤として下記一般式(II)で表される糖エステル化合物を5質量%以上含有することを特徴とする前記1〜のいずれか項に記載のセルロースアセテートフィルムの製造方法
(式中、Gは単糖類もしくは二糖類残基を表す。Xは−O−を示し、Rは、−CO−Rを示し、Rは脂肪族もしくは芳香族基を示す。mは単糖類もしくは二糖類残基に直接結合している水酸基の数の合計、nは単糖類もしくは二糖類残基に直接結合しているOR基の数の合計を表し、3≦m+n≦8であり、n≠0である。
本発明によれば、薄膜でありながら高レターデーション値を有し、高倍率な延伸でも内部ヘイズ上昇がなく、また位相差ムラが小さく、湿熱環境下でもヘイズ上昇のないセルロースアセテートフィルム、該セルロースアセテートフィルムの製造方法、それを用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
加えて、低アセチル基置換度のセルロースアセテートと相溶性の高いポリエステル化合物を含有するセルロースアセテートフィルムである為、高倍率の延伸処理を行っても平面性がよいことから、巻き癖にも優れ貼合する際にシワが寄りにくく、液晶パネル製造において「ロールtoパネル製法」にも適したセルロースアセテートフィルム、偏光板を提供することができる。
ロールtoパネル製法を示す概念図である。 スライドガラス上にグリセリンを滴下した状態を示す模式図である。 グリセリン上に試料フィルムを置いた状態を示す模式図である。 試料フィルム上にグリセリンを滴下した状態を示す模式図である。 グリセリン上にカバーガラスを置いた状態を示す模式図である。
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のセルロースアセテートフィルムは、少なくとも前記一般式(I)で表される両末端が水酸基であるポリエステル化合物とアセチル基置換度2.0〜2.6のセルロースアセテートとを含むことを特徴とし、係る構成により薄膜でありながら高レターデーション値を有し、ヘイズ上昇やコントラストの低下のない光学補償機能を有するセルロースアセテートフィルムを提供するものである。
尚、上記アセチル基置換度2.0〜2.6とは、アセチル基置換度が2.0以上、2.6以下の意味である。
また、特許文献2〜4には末端水酸基のポリエステルの記載はあるが、いずれもアセチル基置換度の高いトリアセチルセルロースへの適用であったり、低レターデーション発現性を目的としたものであったりして、本発明の構成、及び目的を示唆するものではない。
以下、本発明を詳細に説明する。
<セルロースアセテート>
本発明のセルロースアセテートフィルムは、位相差発現性が高く、高い位相差を有する位相差フィルムとする場合であっても薄膜化可能であること、高い位相差を発現させても延伸倍率を低く抑えることができ破断等の故障を回避できる観点から、アセチル基置換度が2.0〜2.6であるセルロースアセテートからなるフィルムが用いられる。
アセチル基置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて実施することができ、好ましいアセチル基置換度は、2.2〜2.45である。
セルロースアセテートのアセチル基置換度が2.0を下回る場合には、ドープ粘度の上昇によるフィルム面品質の劣化、延伸張力の上昇によるヘイズアップなどが発生することがある。また、アセチル基置換度が2.6より大きい場合は、必要な位相差が得られ難い。
セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)は、30000〜300000の範囲が得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に50000〜200000のものが好ましく用いられる。
セルロースアシレート、セルロースアセテートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。
セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:2.6℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明に用いられるセルロースアセテートは公知の方法で合成することができる。
セルロースアセテートの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースアセテートはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。
本発明に係るセルロースアセテートは、公知の方法により製造することができる。具体的には特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
<一般式(I)で表される化合物>
本発明のポリエステル化合物は、下記一般式(I)で表される。
(式中、Bは炭素数が2以上6以下の直鎖もしくは分岐のアルキレン、もしくはシクロアルキレン基を示し、Aは炭素数が6以上14以下の芳香族環を、nは1以上の自然数を示す。)
上式で表される化合物は、芳香環を有するジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸ともいう)と、炭素数が2以上6以下の直鎖もしくは分岐のアルキレンもしくはシクロアルキレンジオールから得られ、両末端がモノカルボン酸で封止されていないことが特徴である。
炭素数6以上16以下の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、等が挙げられる。その中でも好ましくは、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸である。
炭素数が2以上6以下の直鎖もしくは分岐のアルキレンもしくはシクロアルキレンジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。その中でも、好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールである。
中でも、Aが置換基を有していてもよいナフタレン環もしくはビフェニル環であることが本発明の効果を得る上で好ましい。ここで置換基とは、炭素数1以上6以下のアルキル基、アルケニル機、アルコキシル基である。
本発明のポリエステル化合物の水酸基価(OH価)としては、100mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であることが望ましく、170mgKOH/g〜400mgKOH/gであることがさらに望ましい。水酸基価がこの範囲より大きくても小さくても、低アセチル基置換度のセルロースアセテートとの相溶性が低下する。
この範囲より大きい場合はポリエステル化合物の疎水性が大きくなる為、この範囲より小さい場合はポリエステル化合物同士の分子間相互作用(水素結合等)が強くなるため、フィルム中での析出が進行するためだと考えられる。
また水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K1557−1:2007に記載の無水酢酸法等を適用できる。
本発明のポリエステル化合物の数平均分子量(Mn)は、下記式から計算することができる。
Mn=(分子中の水酸基の数)×56110/(水酸基価)
=2×56110/(水酸基価)
本発明のポリエステル化合物は、常法により上記ジカルボン酸とジオールとのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成できる。
以下に、本発明におけるポリエステル化合物を例示する。
一般式(I)で表される化合物はセルロースアセテートに対し、1質量%以上5質量%未満添加することが好ましい。
<一般式(II)で表される化合物>
本発明のセルロースアセテートフィルムは、下記一般式(II)で表される化合物を加水分解防止剤として用いることが好ましい。
(式中、Gは単糖類もしくは二糖類残基を表す。Xは−O−を示し、Rは、−CO−Rを示し、Rは脂肪族もしくは芳香族基を示す。mは単糖類もしくは二糖類残基に直接結合している水酸基の数の合計、nは単糖類もしくは二糖類残基に直接結合しているOR基の数の合計を表し、3≦m+n≦8であり、n≠0である。)
一般式(II)で表される構造を有する化合物は、水酸基の数(m)、OR基の数(n)が固定された単一種の化合物を合成することは困難であり、式中のm、nの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。従って、水酸基の数(m)、OR基の数(n)が各々変化した混合物としての性能が重要であり、本発明のセルロースアセテートフィルムの場合、ヘイズ特性に対し一般式(II)で表される構造を有し、かつm=0の成分とm>0の成分との混合比率が45:55〜0:100である化合物が好ましい。更に性能的、コスト的により好ましくはm=0の成分とm>0の成分との混合比率が10:90〜0.1:99.9の範囲である。
上記m=0の成分とm>0の成分は、常法により高速液体クロマトグラフィによって測定することが可能である。
上記一般式(II)において、Gは単糖類もしくは二糖類残基を表す。単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどが挙げられる。
以下に、一般式(II)で表わされる、単糖類残基をもつ化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
二糖類の具体例としては、たとえば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロースなどが挙げられる。
以下に、一般式(II)で表わされる、二糖類残基をもつ化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
前記一般式(II)で表される構造のXは単結合、−O−を示し、Rは−CO−Rを示し、Rは脂肪族もしくは芳香族基を示す。脂肪族基および芳香族基はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい。
mは水酸基の数、nはOR基の数を表し、3≦m+n≦8であること必要であり、4≦m+n≦8であることが好ましい。また、n≠0である。nが2以上の場合は−X−Rは互いに同じでも異なっていてもよい。
以下に上記脂肪族基について説明する。脂肪族基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1乃至25のものが好ましく、1乃至20のものがより好ましく、2乃至15のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシルなどが挙げられる。
以下に上記芳香族基について説明する。芳香族基は芳香族炭化水素基でも芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6乃至24のものが好ましく、6乃至12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン、トリアジン、キノリンが特に好ましい。
次に、一般式(II)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
(合成例:一般式(II)で表される化合物の合成)
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×10Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×10Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5を得た。
(可塑剤)
本発明のセルロースアセテートフィルムは、本発明の効果を得る上で必要に応じて一般式(I)、(II)で表される化合物以外の可塑剤を含有することができる。
可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤および多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
一般式(a) R11−(OH)
但し、R11はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、および/またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアセテートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(b)で表される。
一般式(b)R12(COOH)m1(OH)n1
式中、R12は(m1+n1)価の有機基、m1は2以上の正の整数、n1は0以上の整数、COOH基はカルボキシル基、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができる。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性またはフェノール性の水酸基を、モノカルボン酸を用いてエステル化しても良い。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、レターデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
(紫外線吸収剤)
本発明のセルロースアセテートフィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、偏光板保護フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、偏光板保護フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合には、セルロースアセテートフィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、セルロースアセテートフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースアセテートフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記セルロースアセテートフィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(酸捕捉剤)
セルロースアセテートは高温下では酸によっても分解が促進されるため、本発明の保護フィルムに用いる場合においては酸捕捉剤を含有することが好ましい。
有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているエポキシ基を有する化合物が好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油など)の組成物によって代表され例示され得るエポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリド又は不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815Cも好ましく用いることができる。
更に上記以外に用いることが可能な酸捕捉剤としては、オキセタン化合物やオキサゾリン化合物、或いはアルカリ土類金属の有機酸塩やアセチルアセトナート錯体、特開平5−194788号公報の段落68〜105に記載されているものが含まれる。
なお酸捕捉剤は酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。
〈微粒子〉
本発明のセルロースアセテートフィルムには、取扱性を向上させる為、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。
微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成してセルロースアセテートフィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、更に好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とした。
〈セルロースアセテートフィルムの製造方法〉
次に、本発明のセルロースアセテートフィルムの製造方法について説明する。
本発明のセルロースアセテートフィルムは溶液流延法で製造されたフィルムであっても溶融流延法で製造されたフィルムであっても好ましく用いることができる。
本発明のセルロースアセテートフィルムの溶液流延法での製造は、少なくとも前記一般式(I)で表される化合物とセルロースアセテート、および必要に応じて添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースアセテートの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースアセテートの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
前記一般式(I)で表される化合物はドープ調製釜に規定量バッチ添加することが好ましい。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースアセテートの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースアセテートの溶解性の点で好ましい。
良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースアセテートを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。
そのため、セルロースアセテートのアセチル基置換度によって良溶剤、貧溶剤が変わる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
また、セルロースアセテートの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。
回収溶剤中に、セルロースアセテートに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースアセテートの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
また、セルロースアセテートを貧溶剤と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースアセテートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースアセテートを溶解させることができる。
次に、このセルロースアセテート溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。
このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
濾過により、原料のセルロースアセテートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。
より好ましくは100個/cm以下であり、更に好ましくは50個/m以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。
好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
好ましい支持体温度は0〜55℃であり、25〜50℃が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
セルロースアセテートフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースアセテートフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明のセルロースアセテートフィルムを作製するためには、ウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向(横方向)に延伸を行うことが特に好ましい。剥離張力は300N/m以下で剥離することが好ましい。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましい。
本発明のセルロースアセテートフィルムの膜厚は、薄膜であることが好ましく、10〜200μmの範囲が用いられ、10〜100μmであることが好ましく、更に好ましくは10〜60μmであり、特に好ましくは20〜60μmである。
本発明のセルロースアセテートフィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
本発明のセルロースアセテートフィルムは、求められる光学補償効果によって必要とされる位相差は異なるものの、高い位相差発現性を活かす観点から、面内方向における式(i)で定義されるレターデーションRoが20nm以上であることが好ましく、20〜200nmの範囲であることがより好ましく、20〜100nmの範囲であることが更に好ましく、式(ii)で定義される厚み方向のレターデーションRthは70nm以上であることが好ましく、70〜300nmの範囲であることがより好ましい。
式(i) Ro=(nx−ny)×d
式(ii) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
〈レターデーションRo、Rthの測定〉
得られたフィルムから試料35mm×35mmを切り出し、25℃,55%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))で、590nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値より算出する。
位相差の調整方法としては、特に制限はないが、延伸処理によって調整する方法が一般的である。
本発明で目標とするレターデーションRo、Rthを得るには、セルロースアセテートフィルムが本発明の構成をとり、更に搬送張力の制御、延伸操作により屈折率制御を行うことが好ましい。
例えば、長手方向の張力を低くまたは高くすることでレターデーションを変動させることが可能となる。
また、フィルムの長手方向(製膜方向)およびそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次または同時に2軸延伸もしくは1軸延伸することでレターデーションを変動させることができる。
互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に0.8〜1.5倍、幅方向に1.1〜2.0倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に0.8〜1.1倍、幅方向に1.3〜1.7倍の範囲で行うことがより好ましく、幅方向に1.3〜1.5倍の範囲で行うことが特に好ましい。
本発明のセルロースアセテートフィルムは延伸し易く、またレターデーションが発現し易いこともあり、破断等の工程故障に関して耐性が高い。
延伸温度は120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは150℃〜200℃であり、さらに好ましくは150℃を超えて190℃以下で延伸するのが好ましい。
フィルム中の残留溶媒は20〜0%が好ましく、さらに好ましくは15〜0%で延伸するのが好ましい。
具体的には155℃で残留溶媒が11%で延伸する、あるいは155℃で残留溶媒が2%で延伸するのが好ましい。もしくは160℃で残留溶媒が11%で延伸するのが好ましく、あるいは160℃で残留溶媒が1%未満で延伸するのが好ましい。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。
また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
本発明のセルロースアセテートフィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
〈セルロースアセテートフィルムの物性〉
本発明のセルロースアセテートフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで300〜1800g/m・24hが好ましく、更に400〜1500g/m・24hが好ましく、40〜1300g/m・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
本発明のセルロースアセテートフィルムは破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
本発明のセルロースアセテートフィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
本発明のセルロースアセテートフィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく0〜0.1%であることが特に好ましい。
〈偏光板〉
本発明のセルロースアセテートフィルムは光学補償フィルム(位相差フィルムともいう。)として、偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置に使用することができる。
偏光板は、前記本発明のセルロースアセテートフィルムを、偏光子の少なくとも一方の面に貼合した偏光板であることが特徴である。本発明の液晶表示装置は、少なくとも一方の液晶セル面に、本発明に係る偏光板が、粘着層を介して貼り合わされたものであることが特徴である。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明のセルロースアセテートフィルムの偏光子側をアルカリケン化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面には本発明のセルロースアセテートフィルムを用いても、また他の光学フィルムを貼合することも好ましい。
例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。
表示装置の表面側に用いられる偏光板の視認側保護フィルムには、防眩層あるいはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。
中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能および耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
以上のようにして得られた偏光子は、通常、その両面または片面に保護フィルムが貼合されて偏光板として使用される。貼合する際に用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
〈液晶表示装置〉
上記本発明のセルロースアセテートフィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に用いることによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。
本発明のセルロースアセテートフィルムは光学補償機能を有することから、偏光板の本発明のセルロースアセテートフィルム側を液晶セルの少なくとも一方の面に貼合して、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置を作製することが好ましい。
好ましくはVA(MVA,PVA)型液晶表示装置である。
本発明のセルロースアセテートフィルムを用いると、特に30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、環境変動が少なく、色味むら、正面コントラストなど視認性に優れた液晶表示装置を得ることができた。
また、最近では液晶表示装置の製造方法において、長尺ロール状偏光板を液晶パネルに連続的に貼合したのち、液晶パネルを所望のサイズにレーザーによってカットしながら製造する方法が採用され、生産性、歩留まりを向上する上で好ましい。
上記製造方法を「ロールtoパネル製法」と呼称されているが、該製法は、ロール状の長尺偏光板を液晶パネルサイズにあらかじめカットすることなく、直接ロールから偏光板を繰り出し、液晶パネルに貼合したのち、レーザーカッターなどで液晶パネルサイズにカットする製法である(図1参照)。この場合、液晶パネルに偏光板を貼合する際に貼合ロールが押しあてられるが、長尺偏光板であるため、貼合時に無理な力がかかりやすく偏光板にムラや皺が生じやすい。しかしながら、本発明のセルロースアセテートフィルムを貼合した長尺ロール状偏光板は、平面性が良好で有るため巻き癖などもなく、無駄な応力の発生が抑えられ、貼合故障もなく歩留まり向上が期待できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
<セルロースアセテートフィルム101の作製>
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテート(アセチル基置換度2.45、Mw135000とMw180000のセルロースアセテートを6:4の質量比で混合)を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアセテート
(アセチル基置換度2.45、Mw135000とMw180000の
セルロースアセテートを6:4の質量比で混合) 100質量部
一般式(I)で表される化合物:例示化合物PES−2
(水酸基価100mgKOH/g) 3.5質量部
一般式(II)で表される糖エステル化合物
(例示化合物a1/a2/a3/a4=25/20/22/33の質量比での混合物) 9質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したセルロースアセテートフィルムを、160℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に1.15倍延伸した。延伸開始時の残留溶媒は10%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
以上のようにして、乾燥膜厚45μm、2000m長のセルロースアセテートフィルム101を得た。
同様にして、乾燥膜厚が45μmとなるように流延膜厚を調整した上で、幅方向に1.25倍、1.35倍、1.45倍延伸処理したセルロースアセテートフィルムを各々作製した。
尚、一般式(I)で表されるポリエステル化合物の水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K1557−1:2007に記載の無水酢酸法を適用した。
<セルロースアセテートフィルム102〜123の作製>
ドープ構成物及び製造条件を表1に示すように変更した以外は、セルロースアセテートフィルム101と同様にしてセルロースアセテートフィルム102〜123を作製した。
同様に幅方向に延伸倍率1.15倍、1.25倍、1.35倍、1.45倍で延伸したセルロースアセテートフィルムを各々作製した。
表1中、
比較化合物1:特開2009−235377号公報記載の末端水酸基ポリエステル化合物(例示P−28)水酸基価220mgKOH/g、
比較化合物2:特開2009−098674号公報記載の末端水酸基ポリエステル化合物(実施例1例示A−12)水酸基価200mgKOH/g、
比較化合物3:下記構造式のトリアジン系化合物、
PETB:ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、を表す。
《評価》
得られた各々のサンプルについて、以下の要領でレターデーション値及びばらつき、内部ヘイズ、湿熱耐久性試験のヘイズを測定した。
(レターデーションRo、Rthの測定、及びRo幅手ムラの測定)
160℃1.35倍で延伸したサンプルフィルムから試料35mm×35mmを切り出し、25℃,55%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))で、590nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーションの外挿値より算出した。
同様にして1980mmの幅方向に13点の試料を採取し測定しその平均値を求めた。
また、13点の試料の(最大値−最小値)の値を以下の基準で評価した。
○:2nm未満
△:2nm以上4nm未満
×:4nm以上
(内部ヘイズ)
160℃で延伸したセルロースアセテートフィルムを130℃の乾燥ゾーンに20分間通過させた後、サンプリングして下記方法により内部ヘイズ値を評価した。
得られた内部ヘイズの値から、下記の評価尺度で評価した。
○:0.04未満
△:0.04以上0.08未満
×:0.08以上
〈内部ヘイズ測定装置〉
ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)
光源は、5V9Wハロゲン球、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)を用いた。
本発明のセルロースアセテートフィルムは、この装置にてフィルム屈折率±0.05の屈折率の溶剤をフィルム上に滴下した場合のフィルムのヘイズ測定において、その値が0.04未満であることが好ましい。測定はJIS K−7136に準じて測定した。
内部ヘイズ測定は以下のように行う。図2〜5を持って説明する。
まず、フィルム以外の測定器具のブランクヘイズ1を測定する。
1.きれいにしたスライドガラスの上にグリセリンを一滴(0.05ml)たらす。このとき液滴に気泡が入らないように注意する。ガラスは見た目がきれいでも汚れていることがあるので必ず洗剤で洗浄したものを使用する。(図2参照)
2.その上にカバーガラスを乗せる。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がる。
3.ヘイズメーターにセットしブランクヘイズ1を測定する。
次いで以下の手順で、試料を含めたヘイズ2を測定する。
4.スライドガラス上にグリセリンを滴下する。(0.05ml)
(図2参照)
5.その上に測定する試料フィルムを気泡が入らないように乗せる。
(図3参照)
6.試料フィルム上にグリセリンを滴下する。(0.05ml)
(図4参照)
7.その上にカバーガラスを載せる。(図5参照)
8.上記のように作成した積層体(上から、カバーガラス/グリセリン/試料フィルム/グリセリン/スライドガラス)をヘイズメーターにセットしヘイズ2を測定する。
9.(ヘイズ2)−(ヘイズ1)=(本発明のセルロースアセテートフィルムの内部ヘイズ)を算出する。
上記ヘイズの測定はすべて23℃55%RHにて行われた。
また、上記測定にて使用したガラス、グリセリンを以下の通りである。
ガラス:MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMI
グリセリン: 関東化学製 鹿特級(純度>99.0%) 屈折率1.47
(湿熱耐久性試験のヘイズ)
(60℃90%の条件で1000時間暴露した後の全ヘイズ)から(暴露前の全ヘイズ)の値の差を測定し、湿熱耐久性試験のヘイズ評価とした。ヘイズは、JIS K−7136に従って、ヘイズメーター(NDH2000型、日本電色工業(株)製)を使用して測定した。
○:差が0.0〜0.2未満
△:差が0.2〜0.5未満
×:差が0.5以上
以上の評価結果を表2に示す。
上表から、本発明のセルロースアセテートフィルムは、高倍率に延伸しても内部ヘイズ上昇もなく、十分なレターデーション及びばらつきのない安定なレターデーションを有し、湿熱耐久性試験のヘイズ上昇に優れたセルロースアセテートフィルムであることが分かる。
実施例2
<長尺ロール状偏光板101〜123の作製>
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)し、2000m長のPVAフィルムを得た。
これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と前記1.35倍に延伸したセルロースアセテートフィルム101〜123と、裏面側にはコニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製セルロースエステルフィルム)を貼り合わせて長尺ロール状偏光板101〜123を作製した。
工程1:45℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に45秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側をケン化したセルロースアセテートフィルム101〜123を得た。同様に裏面側のKC4UYもケン化処理を行った。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースアセテートフィルム101〜123の上にのせて配置した。
工程4:工程3で積層したセルロースアセテートフィルム101〜123と偏光子と裏面側セルロースエステルフィルムを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とセルロースアセテートフィルム101〜123とコニカミノルタタックKC4UYとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、それぞれ、セルロースアセテートフィルム101〜123に対応する偏光板101〜123を作製した。
次いで、下記組成の粘着性材料を調製し、セルロースアセテートフィルム101〜123側面上にナイフ式塗工機で塗布したのち、紫外線照射を行い90℃で1分間乾燥処理して粘着層を形成し、長尺ロール状偏光板101〜123を作製した。
(粘着層組成:N1と略す)
アクリル系共重合体:アクリル酸ブチル及びアクリル酸を、質量95:5の割合で用い、常法に従って重合してなる、重量平均分子量180万の共重合体 100質量部
多官能アクリレート系モノマー:トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成社製、商品名「アロニックスM−315」)
15質量部
光重合開始剤:イルガキュア500(BASFジャパン社製)
1.5質量部
イソシアネート系架橋剤:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製「コロネートL」) 1質量部
シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(信越学工業社製「KBM−403」) 0.2質量部
(プロテクトフィルム、セパレートフィルム)
更に、KC4UY上にPET系プロテクトフィルムを、粘着層上にPET系セパレートフィルムを貼合し、ロール状に巻き取った。
〔液晶表示パネルの作製〕
図1に示した「ロールtoパネル製法」によって、上記作製した長尺ロール状偏光板を繰り出して液晶パネル上に貼合し、レーザーカッターで所望のサイズに切断し、液晶表示パネルを作製した。
《評価》
(液晶表示パネル加工適性)
液晶表示パネル作製時における、偏光板と液晶パネルとの貼合時のシワやヨレの有無を目視で観察した。
◎:貼合時にシワやヨレがなく歩留まりがよい
○:貼合時にシワやヨレがややあるが、実用上歩留まりに問題がない
△:貼合時にシワやヨレがあり、歩留まりが低い
×:貼合時にシワやヨレが顕著に発生し、歩留まりが非常に低い
評価の結果、本発明のセルロースアセテートフィルムを用いた偏光板は、「◎:貼合時にシワやヨレがなく歩留まりがよい」という評価であり、平面性に優れた偏光板であることが分かった。
それに対し、比較例のセルロースアセテートフィルムを用いた偏光板は、×〜△の評価であり、歩留まりが低かった。
1 長尺ロール状偏光板
2 貼合ロール
3 液晶パネル

Claims (5)

  1. セルロースアセテートフィルムの製造方法であって、
    少なくとも下記一般式(I)で表される両末端が水酸基である、数平均分子量224〜1122の範囲内のポリエステル化合物とアセチル基置換度2.0〜2.6のセルロースアセテートとを含むドープを支持体上に流延し剥離した後に、乾燥しながら、膜厚が58μm以下で、かつ、下記式で表されるレターデーション値Roが20〜100nm、Rthが70〜300nmとなるように、少なくとも幅手方向に1.35〜1.7倍の倍率で延伸処理を行い、
    前記ポリエステル化合物を、前記セルロースアセテート100質量部に対して、0.5〜5.5質量部の範囲内で添加することを特徴とするセルロースアセテートフィルムの製造方法。
    (式中、Bは炭素数が2以上6以下の直鎖もしくは分岐のアルキレン、もしくはシクロアルキレン基を示し、Aはベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環を、nは1以上の自然数を表す。)
    式(i)Ro=(nx−ny)×d
    式(ii)Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
    (式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
  2. 前記一般式(I)で表されるポリエステル化合物の式中、Aが置換基として、炭素数1以上6以下のアルキル基、アルケニル基又はアルコキシル基を有していてもよいナフタレン環もしくはビフェニル環であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアセテートフィルムの製造方法
  3. 前記ポリエステル化合物の水酸基価が170〜400mgKOH/gであることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアセテートフィルムの製造方法。
  4. 前記ポリエステル化合物の水酸基価が250〜400mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアセテートフィルムの製造方法。
  5. 加水分解防止剤として下記一般式(II)で表される糖エステル化合物を5質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースアセテートフィルムの製造方法。
    (式中、Gは単糖類もしくは二糖類残基を表す。Xは−O−を示し、Rは、−CO−Rを示し、Rは脂肪族もしくは芳香族基を示す。mは単糖類もしくは二糖類残基に直接結合している水酸基の数の合計、nは単糖類もしくは二糖類残基に直接結合しているOR基の数の合計を表し、3≦m+n≦8であり、n≠0である。)
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