JPWO2013014753A1 - リチウム固体二次電池システム - Google Patents

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Abstract

本発明は、負極を劣化させることなく、リチウム固体二次電池の出力特性の低下を回復できるリチウム固体二次電池システムを提供することを主目的とする。本発明においては、リチウム固体二次電池と、過放電処理部と、を有し、上記リチウム固体二次電池の負極活物質層が、負極活物質と、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料とを含有し、上記負極集電体が金属から構成されることを特徴とするリチウム固体二次電池システムを提供することにより、上記課題を解決する。

Description

本発明は、負極を劣化させることなく、出力特性の低下を回復できるリチウム固体二次電池システムに関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム二次電池が注目を浴びている。
現在市販されているリチウム二次電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。これに対し、電解液を固体電解質層に変えて、電池を固体化したリチウム固体二次電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
また、二次電池は繰り返しの充放電が可能であるが、過放電により電池性能が低下することが知られている。そのため、通常の二次電池には、放電時に電池の電圧を測定し、所定の電圧で放電を終止する手段が設けられている。一方、特許文献1には、リチウム二次電池の過放電を防止する過放電保護手段を備えない電池モジュールが開示されており、特許文献2には、リチウム二次電池の過放電を防止する過放電保護手段を備えない伝導装置が開示されている。
特開2010−225581号公報 特開2010−225582号公報
固体二次電池は、充放電を繰り返すことにより内部抵抗が増加し、出力特性が低下するという問題がある。また、固体二次電池は、高温(例えば60℃程度)で保存すると、内部抵抗が増加し、出力特性が低下するという問題がある。さらに、一旦低下した出力特性を回復させることは通常困難である。
本発明者等は、上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、一旦低下した出力特性を回復させるためには、意外にも、積極的(意図的)に過放電を行うことが有効であるとの知見を得た。そこで上記知見を得た本発明者らは、固体二次電池の過放電を利用することにより出力特性の低下を回復できる固体二次電池システムのさらなる開発を試みた。
ところで、固体二次電池に用いられる固体電解質材料として、硫化物固体電解質材料が知られている。硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導性が高いため、電池の高出力化を図る上で有用であり、例えば、特許文献1においては、LiS−P系材料が開示されており、LiS−P系材料のなかでも、特にモル基準でLiS:P=70:30で混合し、さらに熱処理して得られる結晶材料(Li11)が好ましいことが開示されている。
しかしながら、負極活物質層の材料として上記硫化物固体電解質材料を用いたリチウム固体二次電池を上記固体二次電池システムに採用した場合は、過放電により負極が劣化してしまい、リチウム固体二次電池の使用ができなくなる場合があるという問題がある。
よって本発明は、負極を劣化させることなく、リチウム固体二次電池の出力特性の低下を回復できるリチウム固体二次電池システムを提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、リチウム固体二次電池の負極の劣化は、過放電を行うことにより負極電位が上昇し、その結果、負極活物質層に含有される硫化物固体電解質材料の硫黄成分と金属の負極集電体とが反応(硫化反応)することが原因であるとの知見を得た。また本発明者らは、種々の硫化物固体電解質材料と負極集電体に好適に用いられる金属との反応性について検討したところ、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料を負極活物質層の材料に用いた場合においては、リチウム固体二次電池を過放電した場合も、硫化反応が生じにくいとの知見を得た。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明においては、正極活物質層および正極集電体を有する正極、負極活物質層および負極集電体を有する負極、並びに、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層を有するリチウム固体二次電池と、上記リチウム固体二次電池のSOCが0%よりも低い状態になるまで放電する過放電処理部と、を有し、上記負極活物質層が、負極活物質と、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料とを含有し、上記負極集電体が金属から構成されることを特徴とするリチウム固体二次電池システムを提供する。
本発明によれば、リチウム固体二次電池の負極が、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料を含有する負極活物質層を有することから、リチウム固体二次電池に過放電を行った場合も、上述した硫化反応を好適に抑制することが可能となる。よって、硫化反応による負極集電体および負極活物質層の劣化を防止することが可能となる。したがって、本発明のリチウム固体二次電池システムは、過放電処理部によりリチウム固体二次電池に過放電を行うことで、負極を劣化させることなく内部抵抗を低減することができ、出力特性を回復させることができる。そのため、リチウム固体二次電池の長寿命化が図れる。
本発明は、正極活物質層および正極集電体を有する正極、負極活物質層および負極集電体を有する負極、並びに、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層を有するリチウム固体二次電池と、上記正極活物質層に含まれる正極活物質が金属イオンを放出する前の正極電位をEp(V)とした場合に、正極電位が上記Ep(V)よりも低い電位になるまで放電する過放電処理部と、を有し、上記負極活物質層が、負極活物質と、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料とを含有し、上記負極集電体が金属から構成されることを特徴とするリチウム固体二次電池システムを提供する。
本発明によれば、リチウム固体二次電池の負極が、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料を含有する負極活物質層を有することから、リチウム固体二次電池に過放電を行った場合も、上述した硫化反応を好適に抑制することが可能となる。よって、硫化反応による負極集電体および負極活物質層の劣化を防止することが可能となる。したがって、本発明のリチウム固体二次電池システムは、過放電処理部によりリチウム固体二次電池に過放電を行うことで、負極を劣化させることなく内部抵抗を低減することができ、出力特性を回復させることができる。そのため、リチウム固体二次電池の長寿命化が図れる。
本発明においては、Li電位に対して3V以上で電池反応を伴う活物質を含有する正極活物質層および正極集電体を有する正極、Li含有金属活物質またはカーボン活物質を含有する負極活物質層および負極集電体を有する負極、並びに、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層を有するリチウム固体二次電池と、上記リチウム固体二次電池の電圧を2.5V未満まで放電する過放電処理部と、を有し、上記負極活物質層が、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料を含有し、上記負極集電体が金属から構成されることを特徴とするリチウム固体二次電池システムを提供する。
本発明によれば、リチウム固体二次電池の負極が、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料を含有する負極活物質層を有することから、リチウム固体二次電池に過放電を行った場合も、上述した硫化反応を好適に抑制することが可能となる。よって、硫化反応による負極集電体および負極活物質層の劣化を防止することが可能となる。したがって、本発明のリチウム固体二次電池システムは、過放電処理部によりリチウム固体二次電池に過放電を行うことで、負極を劣化させることなく内部抵抗を低減することができ、出力特性を回復させることができる。そのため、リチウム固体二次電池の長寿命化が図れる。
本発明においては、上記硫化物固体電解質材料の上記AがPであることが好ましい。
本発明においては、上記過放電処理部が、上記リチウム固体二次電池を外部短絡させる外部短絡部であることが好ましい。
本発明においては、上記リチウム固体二次電池を複数有し、一部の上記リチウム固体二次電池のみに上記過放電処理部が機能するように選択制御する選択制御部を有することが好ましい。一部のリチウム固体二次電池に過放電処理を行いつつ、他の電池により電力を供給することができるからである。
本発明においては、上記正極活物質層、および上記固体電解質層の少なくとも一つが、硫化物固体電解質材料を含有することが好ましい。硫化物固体電解質材料は反応性が高いため、活物質(例えば酸化物活物質)等との界面で高抵抗な皮膜が生じやすく、本発明の効果を発揮しやすいからである。
本発明においては、上記正極活物質層が、イオン伝導性酸化物で被覆された正極活物質を含有することが好ましい。正極活物質と、他の材料(例えば固体電解質材料)との界面に、高抵抗な皮膜が形成されることを防止できるからである。
本発明のリチウム固体二次電池システムは、負極を劣化させることなく、出力特性の低下を回復できるという効果を奏する。
本発明におけるリチウム固体二次電池の一例を示す概略断面図である。 本発明のリチウム固体二次電池システムの一例を示す模式図である。 本発明のリチウム固体二次電池システムの他の例を示す模式図である。 本発明のリチウム固体二次電池システムの他の例を示す模式図である。 実施例および比較例で得られたサイクリックボルタンメトリーの測定結果である。 参考例1で得られたリチウム固体二次電池に対する抵抗率の結果である。 参考例2で得られたリチウム固体二次電池に対する抵抗率の結果である。
以下、本発明のリチウム固体二次電池システムについて説明する。本発明のリチウム固体二次電池システムは、リチウム固体二次電池と過放電処理部とを有し、負極活物質層が負極活物質と、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料とを含有し、負極集電体が金属から構成されることに特徴を有するものである
図1は、一般的なリチウム固体二次電池の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、リチウム固体二次電池10は、正極活物質層1aおよび正極集電体1bを有する正極1と、負極活物質層2aおよび負極集電体2bを有する負極2と、正極活物質層1aおよび負極活物質層2aの間に形成された固体電解質層3とを有する。
次に、上記構成を有するリチウム固体二次電池10に過放電を行った場合の各電極電位の変化について、具体例を挙げて説明する。例えば、過放電前(初期状態)の正極電位が約2.5VvsLi/Liであり、負極電位が約1.8VvsLi/Liである場合、過放電前の正極および負極の電位差は0.7VvsLi/Liである。リチウム固体二次電池10を過放電状態にした場合、上述した電位差は0.7VvsLi/Liから例えば0VvsLi/Liまで変化する。これは過放電により正極電位が過放電前の電位よりも降下し、負極電位が過放電前の電位よりも上昇することを要因とする。
上述したように、リチウム固体二次電池の硫化物固体電解質材料として、従来から好適に用いられているLi11に代表される硫化物固体電解質材料を含有する負極活物質層と、金属から構成される負極集電体とを有する負極を用いたリチウム固体二次電池においては、過放電を行うことにより負極が劣化するという問題がある。この理由については、次のように推測される。
すなわち、Li11に代表される硫化物固体電解質材料は、LiSとPとが反応してなるSP−S−PSユニット(Pユニット)の架橋硫黄を含む構成を有するものである。また、このような架橋硫黄は反応性が高いものである。
ここで、リチウム二次電池を過放電した場合は、上述したように、過放電後の負極電位は過放電前の負極電位よりも高くなる。負極集電体として例えば金属を用いた場合は、通常の電池の使用時での負極電位においては上述した架橋硫黄との反応は生じにくいものであるが、過放電により負極電位が上昇した場合には、上述した架橋硫黄との反応性が高くなり、硫化反応が促進されるものと推測される。
よって、Li11等の硫化物固体電解質材料を負極活物質層に用いたリチウム固体二次電池を過放電した場合は、硫化物固体電解質材料が反応性の高い架橋硫黄を含むこと、負極電位の上昇により硫化反応が促進されることの2つの条件がそろうことにより、負極集電体が硫化して延性、展性が低下したり、負極活物質層が劣化することから、負極が劣化することが考えられる。
一方、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料は、上述した架橋硫黄を実質的に含有しないものとすることが可能なものである。よって、リチウム固体二次電池を過放電することにより、負極電位が上昇して硫化反応が起こりやすい状態となった場合であっても、架橋硫黄を含有しないことから、実際に負極集電体と負極活物質層との間で硫化反応が生じないことが推測される。よって、負極の劣化を防止することが可能となるものと考えられる。
よって、本発明によれば、リチウム固体二次電池の負極が、上述したオルト組成を有する硫化物固体電解質材料を含有する負極活物質層を有することから、リチウム固体二次電池に過放電を行った場合も、上述した硫化反応を好適に抑制することが可能となる。よって、硫化反応による負極集電体および負極活物質層の劣化を防止することが可能となる。したがって、本発明のリチウム固体二次電池システムは、過放電処理部によりリチウム固体二次電池に過放電を行うことで、負極を劣化させることなく内部抵抗を低減することができ、出力特性を回復させることができる。そのため、リチウム固体二次電池の長寿命化が図れる。
以下、本発明のリチウム固体二次電池システムの詳細について説明する。なお、本発明のリチウム固体二次電池は、過放電処理部に対するいくつかの観点から、より明確に過放電処理部を特定することが可能であり、具体的には、3つの実施態様に大別される。以下、各実施態様について説明する。
I.第一実施態様
まず、第一実施態様のリチウム固体二次電池システムについて説明する。第一実施態様のリチウム固体二次電池システムは、正極活物質層および正極集電体を有する正極、負極活物質層および負極集電体を有する負極、並びに、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層を有するリチウム固体二次電池と、上記リチウム固体二次電池のSOCが0%よりも低い状態になるまで放電する過放電処理部と、を有し、上記負極活物質層が、負極活物質と、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料とを含有し、上記負極集電体が金属から構成されることを特徴とするものである。
第一実施態様のリチウム固体二次電池システムについて図を用いて説明する。
図2は、第一実施態様のリチウム固体二次電池システムの一例を示す模式図である。図2に示されるリチウム固体二次電池システム20は、リチウム固体二次電池10と、リチウム固体二次電池10のSOC(state of charge)が0%よりも低い状態になるまで放電する過放電処理部11とを有する。図2において、過放電処理部11はリチウム固体二次電池10を外部短絡させるものである。なお、外部短絡とは、正極活物質層および負極活物質層を外部回路を通じて短絡させることをいう。通常の放電時には、スイッチ部12aをON、スイッチ部12bをOFFとし、リチウム固体二次電池10の放電を行う。一方、過放電処理時には、スイッチ部12aをOFF、スイッチ部12bをONとし、リチウム固体二次電池10を外部短絡させる。なお、図示しないが、通常は電圧に応じてスイッチ部12a、12bを制御する制御部が設けられる。また、リチウム固体二次電池10の具体的な構成については、上述した図1に示されるリチウム固体二次電池10の構成と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
第一実施態様によれば、過放電処理部によりリチウム固体二次電池に過放電を行うことで、負極を劣化させることなく内部抵抗を低減することができ、出力特性を回復させることができる。そのため、リチウム固体二次電池の長寿命化が図れる。従来、過放電により電池性能が低下することが知られているため、通常のリチウム固体二次電池には、過放電を防止する過放電保護手段が設けられている。これに対して、第一実施態様においては、サイクル劣化したリチウム固体二次電池に対して、積極的に過放電処理を行うことで、内部抵抗を低減でき、出力特性を回復させることができる。
ところで、特許文献2の請求項2には、リチウム二次電池の過放電を防止するための過放電保護手段を備えない電動装置が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載された技術は、第一実施態様のように「積極的な過放電処理」を行うものではない。
ここで、特許文献2の[0005]段落には、「放電時の電圧測定にミスがあると、過放電や転極になり、リチウム二次電池の性能が劣化して使用不可能になると考えられていた。このため、上記技術では、放電時に電池の電圧を監視して過放電を防止するための保護回路を備えていた。この保護回路は高価であるので、リチウム二次電池の低価格化を阻む要因となっていた。また、保護回路を備える場合でも、構成を簡易にして、リチウム二次電池の低価格化に貢献できるようにすることが望まれていた。」と記載されている。また、[0008]段落には、「本発明の電動装置によれば、リチウム二次電池の電解質が無機固体電解質であるので、過放電や転極が起こったリチウム二次電池であっても、また充電することで、その後も正常に使用できる。」と記載されている。
この記載から、特許文献2に記載された発明が、あくまで通常の電圧範囲での電池の使用を前提とし、「積極的な過放電処理」を意図していないことは明らかである。すなわち、特許文献2では、何らかの異常(偶発的な事故等)により一時的に過放電が生じた場合であっても、電解液の代わりに無機固体電解質を用いることで、保護回路を簡易化できることを開示しているに過ぎず、「積極的な過放電処理」を意図したものではない。むしろ、特許文献2の請求項3に過放電保護手段を「備えた」電動装置が開示されていることを考慮すると、特許文献2が、過放電による弊害防止いう従来の技術思想に基づいたものであることがわかる。そのため、特許文献2に接した当業者が、従来の技術思想に反して、積極的に過放電処理を行う過放電処理部を採用することには阻害要因があると云える。なお、同様のことが特許文献1についても云える。また、第一実施態様の固体二次電池システムは、積極的に過放電処理を行うことにより内部抵抗を低減できるという優れた効果を有する。この効果は、特許文献1、2に記載されていない有利な効果(異質な効果)である。
また、第一実施態様において、過放電処理により内部抵抗が低減できるメカニズムは、以下のように推測される。すなわち、リチウム固体二次電池では、電池反応が固体/固体界面で起こるため、界面に新たな皮膜(SEI、Solid Electrolyte Interphase)が生じ、この皮膜の抵抗が大きいために、結果として内部抵抗の増加が生じる。これに対して、第一実施態様においては、過放電処理を行うことで、この皮膜を除去でき、内部抵抗を低減できると考えられる。また、この皮膜は、リチウム固体二次電池における任意の固体/固体界面で生じている可能性があるが、特に活物質と固体電解質材料との界面において多く生じていると考えられる。その理由は、活物質は、その表面で金属イオンの吸蔵放出というアクティブな反応を行い、固体電解質材料は、通常、活物質に接触する面積が大きいからである。中でも、活物質および固体電解質材料が、互いに異なる種類の化合物に由来する組み合わせである場合に、皮膜が生じやすい傾向にあると考えられる。一例を挙げると、酸化物活物質(酸化物に由来)と、硫化物固体電解質材料(硫化物に由来)とは、相対的に反応しやすく、皮膜が生成しやすいと考えられる。
以下、第一実施態様のリチウム固体二次電池システムについて、構成ごとに説明する。
1.リチウム固体二次電池
第一実施態様におけるリチウム固体二次電池について説明する。第一実施態様におけるリチウム固体二次電池は、正極活物質層および正極集電体を有する正極と、負極活物質層および負極集電体を有する負極と、正極活物質層および負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有するものである。
(1)負極
第一実施態様における負極について説明する。
(i)負極活物質層
第一実施態様における負極活物質層は、負極活物質層と、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物材料とを有するものである。
(a)硫化物固体電解質材料
第一実施態様における硫化物固体電解質材料について説明する。上記硫化物固体電解質材料は、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有するものである。
ここで、オルトとは、一般的に同じ酸化物を水和して得られるオキソ酸の中で、最も水和度が高いものをいう。第一実施態様では、硫化物で最もLiSが付加している組成をオルト組成という。例えば、LiS−P系ではLiPSがオルト組成に該当し、LiS−Al系ではLiAlSがオルト組成に該当し、LiS−B系ではLiBSがオルト組成に該当し、LiS−SiS系ではLiSiSがオルト組成に該当し、LiS−GeS系ではLiGeSがオルト組成に該当する。
また、第一実施態様において、「オルト組成を有する」とは、厳密なオルト組成のみならず、その近傍の組成をも含むものである。具体的には、オルト組成のアニオン構造(PS 3−構造、SiS 4−構造、GeS 4−構造、AlS 3−構造、BS 3−構造)を主体とすることをいう。オルト組成のアニオン構造の割合は、硫化物固体電解質材料の全アニオン構造に対して、60mol%以上であることが好ましく、70mol%以上であることがより好ましく、80mol%以上であることがさらに好ましく、90mol%以上であることが特に好ましい。なお、オルト組成のアニオン構造の割合は、ラマン分光法、NMR、XPS等により決定することができる。
第一実施態様における硫化物固体電解質材料は、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有するものであれば特に限定されないが、上記AがPであることがより好ましい。
第一実施態様における硫化物固体電解質材料は、LiSと、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)の硫化物とを用いたものであることが好ましい。
また原料組成物に含まれるLiSは、不純物が少ないことが好ましい。副反応を抑制することができるからである。LiSの合成方法としては、例えば特開平7−330312号公報に記載された方法等を挙げることができる。さらに、LiSは、WO2005/040039に記載された方法等を用いて精製されていることが好ましい。一方、原料組成物に含まれる上記Aの硫化物としては、例えば、P、P、SiS、GeS、Al、B等を挙げることができる。
また、上記硫化物固体電解質材料は、LiSを実質的に含有しないことが好ましい。
硫化水素発生量の少ない硫化物固体電解質材料とすることができるからである。LiSは水と反応することで、硫化水素が発生する。例えば、原料組成物に含まれるLiSの割合が大きいと、LiSが残存しやすい。「LiSを実質的に含有しない」ことは、X線回折により確認することができる。具体的には、LiSのピーク(2θ=27.0°、31.2°、44.8°、53.1°)を有しない場合は、LiSを実質的に含有しないと判断することができる。
また、上記硫化物固体電解質材料は、架橋硫黄を実質的に含有しないことが好ましい。
硫化水素発生量の少ない硫化物固体電解質材料とすることができるからである。「架橋硫黄」とは、LiSと上記Aの硫化物とが反応してなる化合物における架橋硫黄をいう。
例えば、LiSおよびPが反応してなるSP−S−PS構造の架橋硫黄が該当する。このような架橋硫黄は、負極集電体の金属と反応しやすく、負極集電体を硫化させやすい。また、このような架橋硫黄は水と反応しやすく、硫化水素が発生しやすい。さらに、「架橋硫黄を実質的に含有しない」ことは、ラマン分光スペクトルの測定により、確認することができる。例えば、LiS−P系の硫化物固体電解質材料の場合、SP−S−PS構造のピークが、通常402cm−1に表れる。そのため、このピークが検出されないことが好ましい。また、PS 3−構造のピークは、通常417cm−1に表れる。第一実施態様においては、402cm−1における強度I402が、417cm−1における強度I417よりも小さいことが好ましい。より具体的には、強度I417に対して、強度I402は、例えば70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましい。また、LiS−P系以外の硫化物固体電解質材料についても、架橋硫黄を含有するユニットを特定し、そのユニットのピークを測定することにより、架橋硫黄を実質的に含有していないことを判断することができる。
また、LiS−P系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびPの割合は、モル基準で、LiS:P=75:25である。LiS−Al系の硫化物固体電解質材料の場合、LiS−B系の硫化物固体電解質材料の場合も同様である。一方、LiS−SiS系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびSiSの割合は、モル基準で、LiS:SiS=66.7:33.3である。LiS−GeS系の硫化物固体電解質材料の場合も同様である。
上記原料組成物が、LiSおよびPを含有する場合、LiSおよびPの合計に対するLiSの割合は、71mol%〜79mol%の範囲内であることが好ましく、72mol%〜78mol%の範囲内であることがより好ましく、74mol%〜76mol%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、上記原料組成物が、LiSおよびAlを含有する場合、LiSおよびBを含有する場合も同様である。一方、上記原料組成物が、LiSおよびSiSを含有する場合、LiSおよびSiSの合計に対するLiSの割合は、62.5mol%〜70.9mol%の範囲内であることが好ましく、63mol%〜70mol%の範囲内であることがより好ましく、64mol%〜68mol%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、上記原料組成物が、LiSおよびGeSを含有する場合も同様である。
また、第一実施態様における硫化物固体電解質材料は、さらにX成分(Xは、ハロゲン元素である)を含有することが好ましい。Liイオン伝導性が高い硫化物固体電解質材料を得ることができるからである。中でも、上記硫化物固体電解質材料は、さらにLiX(Xは、ハロゲン元素である)成分を含有することが好ましい。なお、Xとしては、例えば、F、Cl、Br、I等を挙げることができ、Cl、Br、Iが好ましく、Iがより好ましい。LiXの割合は、例えば、1mol%〜60mol%の範囲内であることが好ましく、5mol%〜50mol%の範囲内であることがより好ましく、10mol%〜40mol%の範囲内であることがさらに好ましい。ここで、上記硫化物固体電解質材料がさらにLiX成分を含有する場合、硫化物固体電解質材料は、オルト組成を有する成分(イオン伝導体)と、LiX成分とを有することになる。本発明において、「オルト組成を有する硫化物固体電解質材料」とは、少なくともオルト組成を有する成分(イオン伝導体)を備えることをいう。そのため、硫化物固体電解質材料がLiX成分を有する場合であっても、少なくともオルト組成を有する成分を有していれば、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料であるといえる。このように、上記硫化物固体電解質材料は、Li、AおよびSのみを含有するものであっても良く、他の成分(例えばX)をさらに含有するものであっても良い。なお、硫化物固体電解質材料は、オルト組成を有する成分を主体とすることが好ましい。
第一実施態様における硫化物固体電解質材料の形状としては、例えば粒子状を挙げることができる。粒子状の硫化物固体電解質材料の平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、上記硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導性が高いことが好ましく、常温におけるLiイオン伝導度は、例えば1×10−4S/cm以上であることが好ましく、1×10−3S/cm以上であることがより好ましい。
また、硫化物固体電解質材料は、硫化物ガラスであっても良く、結晶化硫化物ガラスであっても良く、固相法により得られる結晶質材料であっても良い。なお、硫化物ガラスは、例えば原料組成物に対してメカニカルミリング(ボールミル等)を行うことにより得ることができる。また、結晶化硫化物ガラスは、例えば硫化物ガラスを結晶化温度以上の温度で熱処理を行うことにより得ることができる。
(b)負極活物質
次に、第一実施態様における負極活物質について説明する。第一実施態様における負極活物質の種類は、金属イオンを吸蔵放出できるものであれば特に限定されるものではない。負極活物質としては、例えば、カーボン活物質、酸化物活物質および金属活物質等を挙げることができる。カーボン活物質としては、炭素を含有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。酸化物活物質としては、例えばNb、LiTi12、SiO等を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。また、負極活物質として、Li含有金属活物質を用いても良い。Li含有金属活物質としては、少なくともLiを含有する活物質であれば特に限定されるものではなく、Li金属であっても良く、Li合金であっても良い。Li合金としては、例えば、Liと、In、Al、SiおよびSnの少なくとも一種とを含有する合金を挙げることができる。
負極活物質の形状としては、例えば粒子状、薄膜状等を挙げることができる。負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば1nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、10nm〜30μmの範囲内であることがより好ましい。また、負極活物質層における負極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば40重量%〜99重量%の範囲内であることが好ましい。
(c)負極活物質層
第一実施態様における負極活物質層は、上述した硫化物固体電解質材料および負極活物質を含有するものであれば特に限定されず、必要に応じて、上述した硫化物固体電解質材料以外の固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。なお、固体電解質材料については、後述する「(3)固体電解質層」に記載する。負極活物質層における固体電解質材料の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば10重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましい。
導電化材は、負極活物質層中に添加することにより、負極活物質層の電子伝導性を向上させることができるものである。導電化材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。また、結着材は、負極活物質層中に添加することにより、可撓性に優れた負極活物質層とすることができるものである。結着材としては、例えば、BR(ブタジエンラバー)、PTFE、PVDF等のフッ素含有結着材を挙げることができる。
負極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
(ii)負極集電体
第一実施態様における負極集電体は、金属からなるものである。負極集電体に用いられる金属としては、負極活物質層の集電を行うことが可能なものであれば特に限定されないが、金属硫化物がエネルギー的に安定であることが好ましい。または金属表面において金属酸化物と金属硫化物とのエネルギー差が小さいことが好ましい。この場合は、金属表面に形成された金属酸化物が金属硫化物に置換されやすいからである。また、このような金属としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス、バナジウム、マンガン、鉄、チタン、コバルト、亜鉛、銀等を挙げることができる。第一実施態様においては、なかでも銅、ニッケル、鉄、銀等であることが好ましい。これらの金属は硫黄と反応しやすく、硫化しやすい性質を有するからである。また、第一実施態様においては、特に負極集電体が銅であることが好ましい。銅は、導電性に優れ集電性に優れているからである。
ここで、上述したように、負極集電体として金属を用いた場合は、通常の電池の使用時での負極電位においては上述した架橋硫黄との反応は生じにくいものであるが、過放電により負極電位が上昇した場合には、上述した架橋硫黄との反応性が高くなり、硫化反応が促進されるものと推測される。また、この理由については以下のように推測される。
すなわち、負極集電体の硫化反応は、負極集電体の電位が所定の電位(以下、硫化電位)以上となることにより起こるものと推測される。そのため、過放電前の負極電位は上記硫化電位よりも小さいことから上記硫化反応は生じにくく、一方、過放電を行った場合は、負極電位が上昇し、上記硫化電位以上となることにより、上記硫化反応が促進されるものと考えられる。よって、負極集電体に用いられる金属としては、上記硫化電位の小さいものほど硫化反応が生じやすくなることが推測される。
そこで、第一実施態様においては、予め金属の硫化電位を測定し、得られた結果から第一実施態様のリチウム固体二次電池システムの用途に応じて集電体に用いられる金属を選択することも可能である。
なお、硫化電位は、例えば次のような測定方法により求めることができる。
まず、作用極に対象となる負極集電体材料、対極に金属Li箔を使用し、極間に硫化物固体電解質を挿入した評価用サンプルを作製し、次いで、一般的な電極測定装置を使用し、2電極法にて、25℃で上記評価用サンプルのサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を実施して、酸化電流ピークを生じる電位を確認する。本態様においては、上記酸化電流ピークを生じる電位を硫化する電位と定義する。
上記負極集電体の形状および厚さとしては、負極活物質層の集電を行うことが可能な程度であれば特に限定されず、第一実施態様のリチウム固体二次電池システムの用途等に応じて適宜選択することが好ましい。
(2)正極
第一実施態様における正極は、正極活物質層と、正極極集電体とを有するものである。
(i)正極活物質層
第一実施態様における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。正極活物質の種類は、リチウム固体二次電池の種類に応じて適宜選択され、例えば酸化物活物質、硫化物活物質等を挙げることができる。リチウム固体二次電池に用いられる正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiVO、LiCrO等の層状正極活物質、LiMn、Li(Ni0.25Mn0.75、LiCoMnO、LiNiMn等のスピネル型正極活物質、LiCoPO、LiMnPO、LiFePO等のオリビン型正極活物質、Li12等のNASICON型正極活物質等を挙げることができる。
正極活物質の形状としては、例えば粒子状、薄膜状等を挙げることができる。正極活物質の平均粒径(D50)は、例えば1nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、10nm〜30μmの範囲内であることがより好ましい。また、正極活物質層における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば40重量%〜99重量%の範囲内であることが好ましい。
正極活物質は、イオン伝導性酸化物で被覆されていることが好ましい。正極活物質と、他の材料(例えば固体電解質材料)との界面に、高抵抗な皮膜が形成されることを防止できるからである。Liイオン伝導性酸化物としては、例えば、一般式LiAO(ただし、Aは、B、C、Al、Si、P、S、Ti、Zr、Nb、Mo、TaまたはWであり、xおよびyは正の数である。)で表されるものを挙げることができる。具体的には、LiBO、LiBO、LiCO、LiAlO、LiSiO、LiSiO、LiPO、LiSO、LiTiO、LiTi12、LiTi、LiZrO、LiNbO、LiMoO、LiWO等を挙げることができる。また、Liイオン伝導性酸化物は、複合酸化物であっても良い。このような複合酸化物としては、上記の任意の組み合わせを採用できるが、具体的にはLiSiO−LiBO、LiSiO−LiPO等を挙げることができる。また、イオン伝導性酸化物は、正極活物質の少なくとも一部を被覆してれば良く、正極活物質全面を被覆していても良い。また、正極活物質を被覆するイオン伝導性酸化物の厚さは、例えば、0.1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜20nmの範囲内であることがより好ましい。なお、イオン伝導性酸化物の厚さの測定方法としては、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)等を挙げることができる。
正極活物質層は、固体電解質材料を含有していても良い。固体電解質材料を添加することにより、正極活物質層のイオン伝導性を向上させることができる。なお、固体電解質材料については、後述する「3.固体電解質層」に記載する。正極活物質層における固体電解質材料の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば10重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましい。なお、負極活物質層に用いられる導電化材および結着材については、上記「(i)正極活物質層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。正極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
(ii)正極集電体
第一実施態様における正極集電体としては、正極活物質層の集電を行うことが可能であれば特に限定されず、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができる。
(3)固体電解質層
第一実施態様における固体電解質層は、少なくとも固体電解質材料を含有する層である。固体電解質材料としては、Liイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料、窒化物固体電解質材料等の無機固体電解質材料を挙げることができる。硫化物固体電解質材料は、酸化物固体電解質材料に比べて、イオン伝導性が高い点で好ましく、酸化物固体電解質材料は、硫化物固体電解質材料に比べて、化学的安定性が高い点で好ましい。また、本発明における固体電解質材料は、ハロゲンを含有する無機固体電解質材料であっても良い。
第一実施態様においては、なかでも、硫化物固体電解質材料であることが好ましい。硫化物固体電解質材料は反応性が高いため、活物質(例えば酸化物活物質)等との界面で高抵抗な皮膜が生じやすく、本発明の効果を発揮しやすいからである。また、硫化物固体電解質材料としては、「(1)負極」の項で説明したオルト組成を有する硫化物固体電解質材料であることがより好ましい。硫化水素の発生を低減することが可能となるからである。
また、固体電解質層は結着材が添加されていてもよい。なお、結着材については、上述した「(1)負極」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
(4)その他の部材
第一実施態様におけるリチウム固体二次電池は、上述した正極と、負極と、固体電解質層とを有するものであれば特に限定されない。また、第一実施態様に用いられる電池ケースには、一般的なリチウム固体二次電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。
(5)リチウム固体二次電池
第一実施態様におけるリチウム固体二次電池は、繰り返し充放電できるため、例えば車載用電池として有用である。リチウム固体二次電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。また、リチウム固体二次電池の製造方法は、上述したリチウム固体二次電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なリチウム固体二次電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。例えば、プレス法、塗工法、蒸着法、スプレー法等を挙げることができる。
2.過放電処理部
第一実施態様における過放電処理部は、リチウム固体二次電池のSOCが0%よりも低い状態になるまで放電するものである。ここで、リチウム固体二次電池のSOCとは、電池の使用電圧を規定するものであり、安全性や性能劣化防止の観点から、電池毎に定められるものである。第一実施態様においては、SOCが0%よりも低い状態になることを過放電状態と定義する。過放電処理部は、SOCを−5%以下まで放電するものであることが好ましく、−10%以下まで放電するものであることがより好ましく、−15%以下まで放電するものであることがさらに好ましい。過放電処理部は、電池電圧を2.5V未満まで放電するものであることが好ましく、2.0V以下まで放電するものであることがより好ましく、1.5V以下まで放電するものであることがさらに好ましく、1V以下まで放電するものであることが特に好ましく、0.5V以下まで放電するものであることが最も好ましい。また、過放電処理部は、電池電圧を0Vまで放電するものであっても良く、電池が転極する(電池電圧が負になる)ように放電するものであっても良い。
第一実施態様における過放電処理部の一例としては、上記図2に示したように、リチウム固体二次電池10を外部短絡させる過放電処理部11を挙げることができる。この過放電処理部11は、少なくとも抵抗を有する回路であることが好ましい。また、過放電処理部の他の例としては、図3に示すように、通常の電池使用時には、所定の電圧で放電を終止させる放電制御部を有し、過放電処理時には、放電制御機能をOFFにする過放電処理部13を挙げることができる。上記放電制御部としては、例えば、リチウム固体二次電池の電圧を測定する電圧測定部からの信号を受けて、放電を終止させるスイッチ部を挙げることができる。
3.リチウム固体二次電池システム
第一実施態様のリチウム固体二次電池システムは、上述した過放電処理部およびリチウム固体二次電池を有するものであれば特に限定されるものではない。また、リチウム固体二次電池システムは、一つのリチウム固体二次電池を有するものであっても良く、複数のリチウム固体二次電池を有するものであっても良い。また、リチウム固体二次電池システムが複数のリチウム固体二次電池を有する場合、各リチウム固体二次電池は、直列に接続されていても良く、並列に接続されていても良く、その組み合わせであっても良い。
第一実施態様のリチウム固体二次電池システムは、複数のリチウム固体二次電池を有し、一部のリチウム固体二次電池のみに過放電処理部が機能するように選択制御する選択制御部を有することが好ましい。一部のリチウム固体二次電池に過放電処理を行いつつ、他の電池により電力を供給することができるからである。このようなリチウム固体二次電池システムとしては、図4に示すように、リチウム固体二次電池10a〜10cに過放電処理部11a〜11cがそれぞれ接続され、一部のリチウム固体二次電池のみに過放電処理部が機能するように選択制御する選択制御部14を有するものを挙げることができる。
II.第二実施態様
次に、第二実施態様のリチウム固体二次電池システムについて説明する。第二実施態様のリチウム固体二次電池システムは、正極活物質層および正極集電体を有する正極、負極活物質層および負極集電体を有する負極、並びに、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層を有するリチウム固体二次電池と、上記正極活物質層に含まれる正極活物質が金属イオンを放出する前の正極電位をEp(V)とした場合に、正極電位が上記Ep(V)よりも低い電位になるまで放電する過放電処理部と、を有し、上記負極活物質層が、負極活物質と、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料とを含有し、上記負極集電体が金属から構成されることを特徴とするものである。
第二実施態様によれば、過放電処理部によりリチウム固体二次電池に過放電を行うことで、負極を劣化させることなく内部抵抗を低減することができ、出力特性を回復させることができる。そのため、リチウム固体二次電池の長寿命化が図れる。
第二実施態様における過放電処理部は、正極活物質層に含まれる正極活物質が金属イオンを放出する前の正極電位をEp(V)とした場合に、正極電位が上記Ep(V)よりも低い電位になるまで放電するものである。第二実施態様においては、正極電位がEp(V)よりも低い電位になることを過放電状態と定義する。ここで、正極電位Ep(V)は、正極活物質の種類によって異なる。例えばリチウム固体二次電池に用いられる正極活物質の場合、LiNiO(3.55V)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(3.65V)、LiMn1.5Ni0.5(3.7V)、LiCoO(3.65V)となる。なお、いずれも括弧内がEpを示す。放電処理部は、正極電位をEp−0.5(V)以下まで放電するものであることが好ましく、Ep−1(V)以下まで放電するものであることがより好ましく、Ep−1.5(V)以下まで放電するものであることがさらに好ましく、Ep−2(V)以下まで放電するものであることが特に好ましい。正極電位は直接測定することも可能であり、電池構成および電池電圧から算出することも可能である。また、例えば本発明におけるリチウム固体二次電池がリチウム固体二次電池である場合、過放電処理部は、電池電圧を2.5V未満まで放電するものであることが好ましく、2.0V以下まで放電するものであることがより好ましく、1.5V以下まで放電するものであることがさらに好ましく、1V以下まで放電するものであることが特に好ましく、0.5V以下まで放電するものであることが最も好ましい。また、過放電処理部は、電池電圧を0Vまで放電するものであっても良く、電池が転極する(電圧が負になる)ように放電するものであっても良い。
第二実施態様のリチウム固体二次電池システムにおける他の事項については、上述した第一実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
III.第三実施態様
次に、第三実施態様のリチウム固体二次電池システムについて説明する。第三実施態様のリチウム固体二次電池システムは、Li電位に対して3V以上で電池反応を伴う活物質を含有する正極活物質層および正極集電体を有する正極、Li含有金属活物質またはカーボン活物質を含有する負極活物質層および負極集電体を有する負極、並びに、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層を有するリチウム固体二次電池と、上記リチウム固体二次電池の電圧を2.5V未満まで放電する過放電処理部と、を有し、上記負極活物質層が、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料を含有し、上記負極集電体が金属から構成されることを特徴とするものである。
第三実施態様によれば、過放電処理部によりリチウム固体二次電池に過放電を行うことで、負極を劣化させることなく内部抵抗を低減することができ、出力特性を回復させることができる。そのため、リチウム固体二次電池の長寿命化が図れる。
第三実施態様における正極活物質層は、Li電位に対して3V以上で電池反応を伴う活物質を含有する。このような活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiVO、LiCrO等の層状正極活物質、LiMn、Li(Ni0.25Mn0.75、LiCoMnO、LiNiMn等のスピネル型正極活物質、LiCoPO、LiMnPO、LiFePO等のオリビン型正極活物質、Li12等のNASICON型正極活物質等を挙げることができる。
第三実施態様における負極活物質層は、Li含有金属活物質またはカーボン活物質を含有する。Li含有金属活物質としては、少なくともLiを含有する活物質であれば特に限定されるものではなく、Li金属であっても良く、Li合金であっても良い。Li合金としては、例えば、Liと、In、Al、SiおよびSnの少なくとも一種とを含有する合金を挙げることができる。また、カーボン活物質としては、炭素を含有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。
第三実施態様における過放電処理部は、電池電圧を2.5V未満まで放電するものであり、2.0V以下まで放電するものであることが好ましく、1.5V以下まで放電するものであることがより好ましく、1V以下まで放電するものであることがさらに好ましく、0.5V以下まで放電するものであることが特に好ましい。また、過放電処理部は、電池電圧を0Vまで放電するものであっても良く、電池が転極する(電圧が負になる)ように放電するものであっても良い。
第三実施態様のリチウム固体二次電池システムにおける他の事項については、上述した第一実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例および比較例は硫化物固体電解質材料と負極集電体との反応性についての測定を行ったものであり、参考例1および参考例2はリチウム二次電池における過放電による出力特性の変化について測定を行ったものである。
[実施例]
(硫化物固体電解質材料の合成)
出発原料として、硫化リチウム(LiS、日本化学工業社製)および五硫化二リン(P、アルドリッチ社製)を用いた。次に、Ar雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、LiSおよびPを、75LiS・25Pのモル比(LiPS、オルト組成)となるように秤量した。この混合物2gを、メノウ乳鉢で5分間混合した。その後、得られた混合物2gを、遊星型ボールミルの容器(45cc、ZrO製)に投入し、脱水ヘプタン(水分量30ppm以下)4gを投入し、さらにZrOボール(φ=5mm)53gを投入し、容器を完全に密閉した(Ar雰囲気)。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数500rpmで、40時間メカニカルミリングを行った。その後、得られた試料を、ホットプレート上でヘプタンを除去するように乾燥させ、硫化物固体電解質材料(75LiS・25Pガラス)を得た。
(評価セルの作製)
上述した硫化物固体電解質材料を65mgを1cmの金型に添加し、4ton/cmの圧力でプレスすることにより、硫化物固体電解質材料層を形成した。作用極として厚さ15μmの金属銅箔を上記金型に入れ、対極として金属Liを入れ、1ton/cmの圧力でプレスすることにより評価セルを作製した。
[比較例]
LiSおよびPを、70LiS・30Pのモル比(Li11)となるように秤量し、実施例と同様にメカニカルミリングを行い、硫化物ガラスを得た。その後、得られた硫化物ガラスを、アルゴン中で加熱し、結晶化させた。加熱条件は、室温から10℃/分で260℃まで昇温し、その後、室温まで冷却する条件とした。これにより、70LiS−30Pの組成を有する結晶化硫化物ガラス(硫化物固体電解質材料)を得た。なお得られた硫化物固体電解質材料は、P 4−構造を有していた。
上記硫化物固体電解質材料を用いて、実施例1と同様に評価セルを作製した。
[評価]
実施例および比較例の評価セルに対し、自然電位から5V(vsLi/Li)まで、10mV/secにて5サイクルのサイクリックボルタンメトリー測定を行った。結果を図5に示す。図5に示すように、実施例においては、硫化反応に由来する電流密度の変化は観察されなかった。一方、比較例においては1サイクル目と2〜5サイクル目との間に硫化反応に由来する電流密度の低下が観察された。
[参考例1]
(硫化物固体電解質材料の合成)
実施例1と同様の合成方法により、硫化物固体電解質材料(75LiS・25Pガラス)を得た。
(固体二次電池の作製)
LiNi1/3Co1/3Mn1/3(正極活物質、日亜化学社製)を12.03mg、VGCF(気相成長炭素繊維、導電化材、昭和電工社製)を0.51mg、上記の硫化物固体電解質材料を5.03mg秤量し、これらを混合することで正極合材を得た。
また、グラファイト(負極活物質、三菱化学社製)を9.06mg、上記の硫化物固体電解質材料を8.24mg秤量し、これらを混合することで負極合材を得た。
次に、上記の硫化物固体電解質材料18mgを、1cmの金型に添加し、1ton/cmの圧力でプレスすることにより、固体電解質層を形成した。得られた固体電解質層の一方の表面側に、上記の正極合材を17.57mg添加し、1ton/cmの圧力でプレスすることにより、正極活物質層を形成した。次に、固体電解質層の他方の表面側に、上記の負極合材を17.3mg添加し、4ton/cmの圧力でプレスすることにより、発電要素を得た。得られた発電要素の両面に、SUS304(正極集電体、負極集電体)を配置し、固体二次電池を得た。
(初期抵抗の測定)
得られた固体二次電池に対して、0.3mAで4.2VまでCC充電し、その後、0.3mAで2.5VまでCC放電を行った。次に、3.6Vに充電して電圧を調整し、インピーダンスアナライザ(ソーラトロン社製)でインピーダンス解析を行い、抵抗(初期)を求めた。
(保存試験および過放電処理)
初期抵抗測定後、4.2VまでCV充電し、60℃で30日保存した。保存後、上記と同様の方法により、抵抗(30日後)を求めた。次に、1.5mAで0VまでCC放電し、0Vで10時間CV放電を行った。その後、開回路電圧が0.5V以下であることを確認して、25℃で24時間保持した。保持後、上記と同様の方法により、抵抗(30日後、過放電処理)を求めた。
(抵抗率)
抵抗(初期)を基準として、抵抗(30日後)および抵抗(30日後、過放電処理)の抵抗率を算出した。その結果を図6に示す。図6に示すように、抵抗(30日後)は、抵抗(初期)に対して大きくなったが、抵抗(30日後、過放電処理)は、抵抗(初期)とほぼ同等にまで回復した。すなわち、過放電処理を行うことにより、内部抵抗が低下し、出力特性が向上することが確認された。
[参考例2]
(固体二次電池の作製)
正極集電体としてAl箔(日本製箔社製)を用い、負極集電体としてCu箔(日本製箔社製)を用いたこと以外は、参考例1と同様にして固体二次電池を得た。
(初期抵抗の測定)
参考例1と同様にして、抵抗(初期)を求めた。
(サイクル試験および過放電処理)
初期抵抗測定後、60℃にて、6mAでCC充放電(2.5V−4.2V)を300サイクルおよび500サイクル行った。この充放電後、上記と同様の方法により、抵抗(300サイクル後)、抵抗(500サイクル後)を求めた。次に、1.5mAで0VまでCC放電し、0Vで10時間CV放電を行った。その後、開回路電圧が0.5V以下であることを確認して、25℃で24時間保持した。保持後、上記と同様の方法により、抵抗(500サイクル後、過放電処理)を求めた。
(抵抗率)
抵抗(初期)を基準として、抵抗(300サイクル後)、抵抗(500サイクル後)および抵抗(500サイクル後、過放電処理)の抵抗率を算出した。その結果を図7に示す。図7に示すように、抵抗(300サイクル後)および抵抗(500サイクル後)は、抵抗(初期)に対して大きくなったが、抵抗(500サイクル後、過放電処理)は、抵抗(300サイクル後)よりも低くなるまで回復した。すなわち、過放電処理を行うことにより、内部抵抗が低下し、出力特性が向上することが確認された。
1 … 正極
1a … 正極活物質層
1b … 正極集電体
2 … 負極
2a … 負極活物質層
2b … 負極集電体
3 … 固体電解質層
10 … リチウム固体二次電池
11 … 過放電処理部
12a、12b … スイッチ部
13 … 過放電処理部
14 … 選択制御部
20 … リチウム固体二次電池システム

Claims (8)

  1. 正極活物質層および正極集電体を有する正極、負極活物質層および負極集電体を有する負極、並びに、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層を有するリチウム固体二次電池と、
    前記リチウム固体二次電池のSOCが0%よりも低い状態になるまで放電する過放電処理部と、を有し、
    前記負極活物質層が、負極活物質と、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料とを含有し、
    前記負極集電体が金属から構成されることを特徴とするリチウム固体二次電池システム。
  2. 正極活物質層および正極集電体を有する正極、負極活物質層および負極集電体を有する負極、並びに、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層を有するリチウム固体二次電池と、
    前記正極活物質層に含まれる正極活物質が金属イオンを放出する前の正極電位をEp(V)とした場合に、正極電位が前記Ep(V)よりも低い電位になるまで放電する過放電処理部と、を有し、
    前記負極活物質層が、負極活物質と、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料とを含有し、
    前記負極集電体が金属から構成されることを特徴とするリチウム固体二次電池システム。
  3. Li電位に対して3V以上で電池反応を伴う活物質を含有する正極活物質層および正極集電体を有する正極、Li含有金属活物質またはカーボン活物質を含有する負極活物質層および負極集電体を有する負極、並びに、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層を有するリチウム固体二次電池と、
    前記リチウム固体二次電池の電圧を2.5V未満まで放電する過放電処理部と、を有し、
    前記負極活物質層が、Li、A(AはP、S、Ge、Al、およびBの少なくとも一種である)、Sを含有し、オルト組成を有する硫化物固体電解質材料を含有し、
    前記負極集電体が金属から構成されることを特徴とするリチウム固体二次電池システム。
  4. 前記硫化物固体電解質材料の前記AがPであることを特徴とする請求の範囲第1項から第3項までのいずれかに記載のリチウム固体二次電池システム。
  5. 前記過放電処理部が、前記固体二次電池を外部短絡させる外部短絡部であることを特徴とする請求の範囲第1項から第4項までのいずれかに記載のリチウム固体二次電池システム。
  6. 前記固体二次電池を複数有し、
    一部の前記固体二次電池のみに前記過放電処理部が機能するように選択制御する選択制御部を有することを特徴とする請求の範囲第1項から第5項までのいずれかに記載のリチウム固体二次電池システム。
  7. 前記正極活物質層、および前記固体電解質層の少なくとも一つが、硫化物固体電解質材料を含有することを特徴とする請求の範囲第1項から第6項までのいずれかに記載のリチウム固体二次電池システム。
  8. 前記正極活物質層が、イオン伝導性酸化物で被覆された正極活物質を含有することを特徴とする請求の範囲第1項から第7項までのいずれかに記載のリチウム固体二次電池システム。
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