実施の形態1.
図1〜図9は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示すものであって、ビルトイン(組込)型の誘導加熱調理器の例を示している。
図1は本発明の実施の形態1に係るビルトイン型の誘導加熱調理器全体の基本構成を示すブロック図である。
図2は本発明の実施の形態1に係るビルトイン型の誘導加熱調理器本体の平面図である。
図3は本発明の実施の形態1に係るビルトイン型の誘導加熱調理器本体の誘導加熱コイルの平面図である。
図4は本発明の実施の形態1に係るビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの加熱動作説明図1である。
図5は本発明の実施の形態1に係るビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの通電説明図1である。
図6は本発明の実施の形態1に係るビルトイン型の誘導加熱調理器全体の基本的な加熱動作を示す制御ステップ説明図である。
図7は本発明の実施の形態1に係るビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの変形例を示す平面図である。
図8は本発明の実施の形態1に係るビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの通電説明図2である。
図9は本発明の実施の形態1に係るビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの通電説明図3である。
図10は本発明の実施の形態1に係るビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの加熱動作説明図2である。
図11は本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの加熱動作説明図2である。なお、各図において同じ部分又は相当する部分には同じ符号を付している。
本発明の実施の形態において用いられる用語をそれぞれ定義する。
加熱手段Dの「動作条件」とは、加熱するための電気的、物理的な条件を言い、通電時間、通電量(火力)、加熱温度、通電パターン(連続通電、断続通電等)等を総称したものである。つまり加熱手段Dの通電条件をいうものである。
「表示」とは、文字や記号、イラスト、色彩や発光有無や発光輝度等の変化により、使用者に調理器の動作条件や調理に参考となる関連情報(異常使用を注意する目的や異常運転状態の発生を知らせる目的のものを含む。以下、単に「調理関連情報」という)を視覚的に知らせる動作をいう。但し、後述する「広域発光部」や「個別発光部」が発光、点灯して表示する場合及び「第1の表示」、「第2の表示」という場合の「表示」とは、単に発光、点灯して所定の色の光を出すことを言い、光の色や、明るさ、連続点灯と点滅状態のように点灯形態や視覚効果を変えた場合は表示を「変更する」又は「切り替える」などと表現する場合がある。また「発光」と「点灯」とは同じ意味であるが、発光ダイオードなどの発光素子自体が光を発する場合を発光、ランプが光を発する場合を点灯と呼ぶことが多いので、以下の説明ではこのように併記する場合がある。なお、電気的又は物理的には発光又は点灯していても、使用者が目視で確認できない程度の弱い光しか使用者に到達しない場合は、使用者が「発光」または「点灯」の結果を確認できないので、特に明記しない限り、「発光」または「点灯」という用語に該当しない。例えば後述するトッププレートは一般的に無色透明ではなく表面に塗装などをする前からその素材自体に薄い色があるので、可視光線の透過率は100%ではないから、例えば発光ダイオードの光が弱いとトッププレートの上からはその光が視認できないことが起こる。
表示部の「表示手段」としては、特に明示のない限り、液晶(LCD)や各種発光素子(半導体発光素子の一例としてはLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)、LD(Laser Diode)の2種類がある)、有機電界発光(Electro Luminescence:EL)素子などを含む。このため表示手段には、液晶画面やEL画面等の表示画面を含んでいる。但し、後述する「広域発光部」や「個別発光部」の表示手段は、単なるランプやLEDなどの発光手段でも良い。
「報知」とは、表示又は電気的音声(電気的に作成又は合成された音声をいう)により、制御手段の動作条件や調理関連情報を使用者に認識させる目的で知らせる動作をいう。
「報知手段」とは、特に明示のない限り、ブザーやスピーカー等の可聴音による報知手段と、文字や記号、イラスト、アニメーションあるいは可視光による報知手段とを含んでいる。
「協同加熱」とは、誘導加熱源となる2つ以上の加熱コイルにそれぞれ電力を供給して、同一の被加熱物を誘導加熱する動作をいう。
以下、図1〜図10を参照しながら、本発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態1について詳細に説明する。
図1および図2において、本発明の誘導加熱調理器は、平面視で横長矩形(横長方形ともいう)の本体部Aを備えている。この本体部Aは、本体部Aの上面全体をトッププレート21で覆った天板部Bと、本体部Aの上面以外の周囲(外郭)を構成する筐体部C(図示せず)と、鍋や食品等を電気的エネルギー等で加熱する加熱手段D(後述する左側誘導加熱源6Lなど)と、使用者により操作される操作手段Eと、操作手段からの信号を受けて加熱手段を制御する制御手段Fと、加熱手段の動作条件を表示する表示手段Gと、をそれぞれ備えている。
また、加熱手段Dの一部として、実施の形態1では使用していないが、グリル庫(グリル加熱室)又はロースターと称される電気加熱手段を備えたものもある。図1においてE1は本体部Aの上面前方部に設けた操作手段Eに、静電容量変化を用いて入力有無を検知するタッチ式のキーや機械式電気接点を有する押圧式キー等によって入力操作される第1の選択部、同じくE2は第2の選択部、E3は同じく第3の選択部であり、使用者がこれら選択部を操作することにより後述する各種調理メニューが選択できる。各選択部E1〜E3の機能の特徴については後で詳しく述べる。
図1および図2において、MCは左側誘導加熱源の主加熱コイルであり、被加熱物Nを載せるトッププレート(図示せず)の下方に接近して配置されている。図中、破線の円で示したのが鍋等の被加熱物Nの外形である。なお、前記左側誘導加熱源は、この発明でいう「第1の誘導加熱部」に相当する。
またこの主加熱コイルは、渦巻状に0.1mm〜0.3mm程度の細い線を19本又はこの2倍又は4倍の本数を束にして、この束(以下、集合線という)を1本又は複数本撚りながら巻き、中心点X1を基点として外形形状が円形になるようにして最終的に円盤形に成形されている。主加熱コイルMCの直径(最大外径寸法)は図3に示すように128mm程度であり、半径R1は約64mmである。なお、以下の説明で述べる寸法は一例であり、またおおよその数値である。またこの実施の形態1ではこの主加熱コイルMCは、最大消費電力(最大火力)1500Wの能力を備えている。
SC1〜SC4は、4個の細長形状の副加熱コイル(「側部コイル」ともいう)であり、前記主加熱コイルMCの中心点X1を基点として前後・左右に、かつ等間隔にそれぞれ対称的に配置されており、中心点X1から放射状に見た場合の横断寸法、つまり「短径」(「厚み」又は「横幅寸法」ともいう)WAは、前記主加熱コイルMCの半径R1より小さい。
第1の寸法例
図1、図2の例ではWAは30mmに設定されたものが使われている。また長径MWは短径の4倍程度になっている。つまり120mm程度である(長径120mmで短径30mmの場合、その両者の比は4:1になる)。
主加熱コイルMCの最も外側の部分と側部コイルSC1〜SC4との対向間隔GP1は10mmである。なお、コイル幅は15mmである。
第2の寸法例
WAは40mm。長径MWは短径の3.5倍程度である。つまり150mm程度である(長径、短径の比は3.5:1)。主加熱コイルMCの最も外側の部分と側部コイルSC1〜SC4との対向間隔GP1は7mmである。なお、コイル幅は15mmである。
なお、図3〜図10において各構成部分の寸法関係を説明する場合、第1の寸法例を基準として説明する。
また、主加熱コイルMCの「側方」とは、特に他の説明と矛盾がない場合、図2で言えば右側、左側は勿論、上側と下側(手前側)を含んでおり、「両側」とは左右両方をいうことは勿論、前後及び斜め方向も意味している。
4個の副加熱コイルSC1〜SC4は、前記主加熱コイルMCの外周面に所定の空間271を保って配置されている。この空間271は図3のGP1と同じである。副加熱コイルSC1〜SC4の相互は略等間隔(相互に空間273を保って)になっている。この副加熱コイルSC1〜SC4も、集合線を1本又は複数本撚りながら巻き、外形形状が長円形や小判形になるように集合線が所定の方向に巻かれ、その後形状を保つために部分的に結束具で拘束され、又は全体が耐熱性樹脂などで固められることで形成されている。4つの副加熱コイルSC1〜SC4は平面的形状が同じで、縦・横・高さ(厚さ)寸法も全て同一寸法である。従って1つの副加熱コイルを4個製造し、それを4箇所に配置している。
これら4つの副加熱コイルSC1〜SC4は図3に示すように、中心点X1から半径R1の主コイルMCの周囲において、その接線方向が丁度各副加熱コイルSC1〜SC4の長手方向の中心線と一致している。言い換えると長径方向と一致している。
副加熱コイルSC1〜SC4は、それぞれの集合線が長円形に湾曲しながら伸びて電気的に一本の閉回路を構成している。また主加熱コイルMCの垂直方向寸法(高さ寸法、厚さともいう)と各副加熱コイルSC1〜SC4の垂直方向寸法は同じであり、しかもそれら上面と前記トッププレートの下面との対向間隔は同一寸法になるように水平に設置、固定されている。
図3においてDWは、左側誘導加熱源によって誘導加熱できる金属製の鍋等の被加熱物Nの最大外径寸法を示す。前記したような主加熱コイルMCの直径や副加熱コイルSC1〜SC4の厚みWAから、この図3の例では、底部の外形寸法DWが250mm程度の被加熱物Nを誘導加熱できる。この最大外径寸法は図3(A)に示した円PCの直径よりも40〜50mm程度大きい。
図1は、誘導加熱調理器1に内蔵された電源装置の回路ブロック図である。本願発明に係る電源装置は、概略、三相交流電源を直流電流に変換するコンバーター(例えばダイオードブリッジ回路、または整流ブリッジ回路ともいう)と、コンバーターの出力端に接続された平滑用コンデンサー、この平滑用コンデンサーに並列に接続された主加熱コイルMCのための主インバーター回路(電源回路部)MIVと、同様に平滑用コンデンサーに並列に接続された各副加熱コイルSC1〜SC4のための副インバーター回路(電源回路部)SIV1〜SIV4とを備える。なお、この図には後述する右側誘導加熱源6Rと輻射式中央電気加熱源7は記載していない。
主インバーター回路MCと副インバーター回路SIV1〜SIV4は、前記コンバーターからの直流電流を高周波電流に変換し、それぞれ主加熱コイルMCおよび副加熱コイルSC1〜SC4に高周波電流を(互いに)独立して供給するものである。
一般に、誘導加熱コイルのインピーダンスは、誘導加熱コイルの上方に載置された被加熱物Nの有無および大きさ(面積)に依存して変化するから、これに伴って前記主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に流れる電流量も変化する。本発明の電源装置では、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる、それぞれの電流量を検出するための電流検出部(検出手段)280を有する。この電流検出部は、後述する被加熱物載置判断部の一種である。
本発明によれば、電流検出部280を用いて、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量を検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かを推定し、その推定結果を制御部(以下、「通電制御回路」という)200に伝達するので、被加熱物Nの載置状態について精度よく検出することができる。
なお、被加熱物Nの載置状態を検出するものとして、主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に流れる電流量を検出する電流検出部280を用いたが、これに限定されるものではなく、機械式センサー、光学的センサーなどの他の任意のセンサーを用いて被加熱物Nの載置状態を検知してもよい。
本発明の電源装置の通電制御回路200は、図示のように、電流検出部280に接続されており、被加熱物Nの載置状態に応じて、主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に制御信号を与えるものである。すなわち、通電制御回路200は、電流検出部280で検出された主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量に関する信号(被加熱物Nの載置状態を示すデータ)を受け、被加熱物Nが載置されていないか、あるいは被加熱物Nの直径が所定値(例えば120mm)より小さいと判断した場合には、それら主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4への高周波電流の供給を禁止又は(既に供給開始されている場合はそれを)停止するように主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4を選択的に制御する。
本発明によれば、通電制御回路200は、被加熱物Nの載置状態に応じた制御信号を主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に供給することにより、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4への給電を互いに独立して制御することができる。また、中央にある主加熱コイルMCを駆動せず(OFF状態とし)、かつ、すべての副加熱コイルSC1〜SC4を駆動する(ON状態とする)ことにより、フライパンなどの鍋肌(鍋の側面)だけを余熱するといった調理方法も実現可能となる。
なお、操作手段Eには、第1の選択部E1、第2の選択部E2及び第3の選択部E3を設けているが、左側誘導加熱源6Lの協同加熱動作、すなわち主加熱コイルMCと副加熱コイルSCとの同時加熱を使用者が任意で禁止するスイッチを更に備えても良い。このようにすれば、明らかに直径の小さい鍋を左側誘導加熱源6Lで加熱する場合、使用者が協同加熱ではなく、主加熱コイルMC単独での加熱を選択できる。つまり、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量を、電流検出部280によって検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値よりも大きいか否かを通電制御回路200が推定・処理する必要はなくなる。
次に右側誘導加熱源6Rと左側誘導加熱源6L及び輻射式中央電気加熱源7によって加熱調理する場合の加熱量を決める「火力」について説明する。
前記通電制御回路200によって以下の通り火力の調節範囲が決定されており、使用者は前記操作手段Eによって任意でこれらの火力値の中から所望の火力を選択できる。
左側誘導加熱源6L:定格最大火力3000W、定格最小火力150W。
火力値は、150W、300W、500W、750W、1000W、1500W、2000W、2500W、3000Wの9段階。
右側誘導加熱源6R:定格最大火力3000W、定格最小火力150W。
火力値は、150W、300W、500W、750W、1000W、1500W、2000W、2500W、3000Wの9段階。
輻射式中央電気加熱源7:定格最大火力1500W、定格最小火力200W。
火力値は200Wから100W毎に1500Wまで合計14段階。
図2において、
(本体部A)
本体部Aは図2に示すように、上面全体を後述する天板部Bで覆われたものであり、この本体部Aは、外形形状が流し台等の厨房家具(図示せず)に形成した設置口を覆う大きさ、スペースに合わせて、略正方形に形成されている。
本体部Aの外郭を形成する金属製薄板から形成された本体ケース2の上部は、内側寸法で横幅W3が540mm、奥行DP2が402mmの箱形に設計されている。この本体ケースの内部に前記左側誘導加熱部6Lが設置されている。6Rは右側の誘導加熱部であり、平らな円板状に巻かれた誘導加熱コイル6RCを備えている。
図2に示すように、本体ケース2の上面開口の後端部、右端部及び左端部の三個所には、それぞれ外側へL字形に一体に折り曲げて形成したフランジを有しており、後方のフランジ3B、左側のフランジ3L、右側のフランジ3Rと前部フランジ板2Bが厨房家具の設置部上面に載置され、加熱調理器の荷重を支えるようになっている。
本体ケース2は、日本の流し台の標準規格では、横幅W1が75cmと60cmの2種類あるが、75cmのタイプの場合、横幅W1は約750mm、奥行DP1が508mm〜510mmに設計されている。
本体ケース2の天面を覆うようにトッププレート21が設置されており、このトッププレート上に磁性を有する、例えば金属から成る鍋等の被加熱物N(以下、単に鍋と称する場合有り)が置かれて、その下方に設置された誘導加熱源6L、6Rによって加熱される構成になっている。トッププレート21を構成する耐熱性の強化ガラス板は、図2に示すように横幅W2が728mm、奥行寸法はほぼ前記奥行DP2に匹敵するDP3の大きさである。図2においてFH1〜FH3は、本体ケース2を上方から見た場合、そのトッププレート21の周囲に残る平面部の幅を示しており、FH1、FH2は10mm程度、FH3は50〜80mm程度である。天板部Bにはトッププレート21の周囲に所定の平幅の平面部FH3、FH4があるが、これら平面部の幅はそれぞれ約10mmである。
7は輻射式中央電気加熱源であり、トッププレート21の左右中心線CL1上で、かつ、トッププレート21の後部寄りの位置に配置されている。輻射式中央電気加熱源7は、輻射によって加熱するタイプの電気ヒーター(例えばニクロム線やハロゲンヒーター、ラジエントヒーター)が使用され、トッププレート21を通してその下方から鍋等の被加熱物Nを加熱するものである。
輻射式中央電気加熱源7は上面全体が開口した円形容器形状を有しており、その最大外径寸法が約130mmで、高さ(厚さ)が15mmになっている。この中央電気加熱源7と前記左側誘導加熱源6Lの側部コイルSC3との対向間隔W12は45〜50mm程度、右誘導加熱源6Rの加熱コイルとの対向間隔W11は40mm程度に設定されている。
本体ケース2の内部には、左右の誘導加熱源6L、6R及び中央電気加熱源7の各調理条件を制御する後記する制御手段Fが内蔵され、該制御手段に前記調理条件を入力する後述する操作手段Eは本体ケース2の手前の上面に配置されている。
Gは前記操作手段により入力された調理条件、例えば火力や加熱時間等を表示する表示手段、例えば液晶表示画面であり、トッププレート21の上面から透視できるようにその下方に設置されている。
前記本体ケース2の内部には、図示していないが、誘導加熱源6L、6Rに高周波電力を供給するインバーター回路基板や、誘導加熱源6L、6Rを構成する加熱コイルを冷却するための送風機を内蔵している。
右側の誘導加熱源6Rの加熱コイル6RCは前述した通り、外形が円形を呈しており、その半径R2は約90mm、つまり外径は約180mmである。なお、その最大外径を200mmに変更しても良い。そしてこの加熱コイル6RCの中心は、前記直線CL4と、それに直交する直線CL3の交点(中心点X2)にある。
交点X1とX2の間隔W4は300mmから350mmの中から適当な間隔に設定されている。
左側誘導加熱源6Lと右側誘導加熱源6Rがトッププレート21の下方で隣接した状態にあるが、それら両者の間隔W5は誘導加熱時に相互に悪影響を受けないように所定寸法が確保されている。所定寸法としては少なくとも8〜9cm以上が望ましい。
なお、この間隔W5は4つの側部コイルSC1〜SC4を包含する、中心点がX1にある真円の外周と、加熱コイル6RCの左端面との間隔である。また4つの側部コイルSC1〜SC4を包含する、中心点がX1にある真円PCの半径R3は約104mmである。
10は、平面形状が長方形の部品収納室であり、本体ケース2を構成する前壁10F、右壁10R、左壁10L及び後ろ壁10Bの4面によって囲まれて本体ケース2の内部に形成されている。なお、左右の壁10R、10Lの間隔は前記したW3であり、前壁10Fと右壁10Rによって形成される部品収納室10の奥行寸法は前記したDP2である。
なお、図3においてCW1は、向かい合う2つの側部コイル、例えば側部コイルSC1とSC4の、横幅中心点同士の間隔寸法を示している。図3の例では、約178mmである。この寸法は「CW1=R1+R1+GP1+GP1+15mm+15mm=64mm+64mm+10mm+15mm+10mm+15mm」の計算から求められる。
次に本発明の特徴的な左側誘導加熱源6Lの具体的な動作について説明するが、その前に本発明でいう制御手段Fの中核を構成している通電制御回路200で実行可能な主な調理メニューについて説明する。
高速加熱モード(加熱速度を優先させた調理メニューで、第1の選択部E1で選択)被加熱物Nに加える火力を手動で設定できる。
主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力は、前述したように150W〜3.0KWまでの範囲で、9段階の中から使用者が1段階選定する。
主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の火力比(以下、「主副火力比」という)は、使用者が選定した上記合計火力を超えない限度で、かつ所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。
主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4は同時に駆動されるが、この場合、両者の隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。
揚げ物モード(自動)(加熱速度と保温機能を要求される調理メニューで、第3の選択部E3で選択)
揚げ物油を入れた被加熱物N(天ぷら鍋等)を所定の温度まで加熱し(第1工程)、その後被加熱物Nの温度を所定範囲に維持するように、通電制御回路200が火力を自動的に調節(第2工程)する。
第1工程:所定の温度(例えば180℃)まで急速に加熱する。
主加熱コイル火力は2.5KW
第2工程:ここで揚げ物が実施され、天ぷらの具材等が投入される。最大30分間運転。この工程では、火力設定部による(任意の)火力設定は禁止される。30分経過後に自動的に加熱動作終了(延長指令も可能)。
主副火力比は、第1工程、第2工程とも所定範囲内になるように自動的に決定され、使用者が主加熱コイルと副加熱コイルの火力比を任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで自動的に変化する。
主・副加熱コイルは、第1工程では同時駆動され、互いの隣接する領域でのコイルの高周波電流の流れが一致。これは、所定温度まで急速に加熱するため。第2工程でも、同様に同時駆動され、電流の流れは一致させる。但し、揚げ物途中で温度の変化が少ない状態が継続すると、電流の向きを反対にし、加熱の均一化を図る。
予熱モード(加熱の均一性を優先させた調理メニュー。第2の選択部E2で選択)火力設定や変更を禁止して、予め決められた火力で被加熱物Nを加熱する第1予熱工程を行い、第1予熱工程終了後は(温度センサーからの検出温度信号を利用して)被加熱物Nを所定温度範囲に維持する保温工程を行う。
予熱工程:
主加熱コイル1000W(固定)
副加熱コイル1500W(固定)
保温工程:最大5分間。この間に(任意の)火力設定が行われない場合、5分経過後に自動的に加熱動作終了。
主加熱コイル300W〜100W(使用者には設定不可能)
副加熱コイル300W〜100W(使用者には設定不可能)
任意の火力設定を保温工程期間中した場合、高速加熱と同じになる。
任意の火力設定は、主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力が、前述したように150W〜3000Wまでの範囲で、9段階の中から使用者が1段階を選定できる。
この場合、主副火力比は、所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。
主・副加熱コイルは、予熱工程では同時に駆動されるが、その際互いに隣接する領域での高周波電流の流れが正反対方向。これは、隣接領域では双方の加熱コイルから発生させた磁束を干渉させ、加熱強度を均一化させることを重視するため。保温工程でも同時駆動されが、互いに隣接する領域での高周波電流の向きは反対である。これは全体の温度分布均一化のためである。
なお、保温工程では、また沸騰以降では、使用者の指令に基づいて対流促進制御が開始される。この対流促進制御については後述する。
湯沸しモード(加熱速度を優先させた調理メニューで、第1の選択部E1で選択)
被加熱物N内の水を、使用者が任意の火力で加熱開始し、水が沸騰(温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化等の情報から通電制御回路200が沸騰状態と判定した際に、表示手段Gによって使用者にその旨を知らせる。その後火力は自動的に設定され、そのまま2分間だけ沸騰状態維持する。
湯沸し工程:
主加熱コイルと副加熱コイル合計の火力が150W〜3000KW(火力1〜火力9まで9段階の中から任意設定。デフォルト設定値は火力7=2000W)。
主副火力比は、使用者が選定した上記合計火力を超えない限度で、所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。
保温工程:最大2分間。2分経過後に自動的に加熱動作終了。
主加熱コイル1000W以下(使用者には設定不可能)
副加熱コイル1500W以下(使用者には設定不可能)
この期間中に、使用者が任意の火力を設定した場合、高速加熱と同じになる。火力も150W〜3000Wの範囲で、9段階の中から任意に一つ選択可能。
沸騰までは、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4は同時駆動され、その際に互いに隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。沸騰後は電流の向きは反対になる。
炊飯モード(加熱の均一性を優先させた調理メニュー。第2の選択部E2で選択)使用者が米飯と水を適当量入れた被加熱物Nとなる容器をセットし、その容器を所定の炊飯プログラム(吸水工程・加熱工程・沸騰工程・蒸らし工程などの一連のプログラム)に従って加熱し、自動で炊飯を行う。
吸水工程及び炊飯工程:
主加熱コイル600W以下(使用者には設定不可能。工程の進行に応じて自動的に変化)
副加熱コイル700W以下(使用者には設定不可能。工程の進行に応じて自動的に変化)
蒸らし工程:5分間
主コイル 加熱ゼロ(火力 0W)
保温工程:最大5分間。
主加熱コイル200W以下(使用者には設定不可能)
副加熱コイル200W以下(使用者には設定不可能)
主・副加熱コイルは同時に駆動されるが、その互いに隣接する領域での高周波の電流の流れが反対方向となるように制御される。これは、隣接領域で双方の加熱コイルから発生させる磁束を互いに干渉させ、加熱強度を均一化させることを重視するためである。
なお、炊飯工程終了後、被加熱物Nが主・副加熱コイルの上に置かれていないことが検知回路部(被加熱物載置検知部)280によって検知された場合、または蒸らし工程や保温工程の何れかにおいて、同様に被加熱物Nが主・副加熱コイルの上に同時に置かれていないことが被加熱物載置検知部によって検知された場合、主・副加熱コイルは、加熱動作を直ちに中止する。
茹でモード(加熱速度を優先させた調理メニューで、第1の選択部E1で選択)
加熱工程(沸騰まで):
被加熱物Nに加える火力を手動で設定できる。
主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力は、150W〜3000Wまでの範囲で、9段階の中から使用者が1段階選定する。
デフォルト値は2000W(使用者が火力を選択しない場合、2000Wで加熱開始)
主副火力比は、所定の火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。
沸騰以後:
水が沸騰(温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化等の情報から制御部は沸騰状態と推定)した際に、使用者にその旨を知らせる。
その後連続30分間(延長可能)、沸騰状態を維持するようにデフォルト値(600W)で自動的に加熱動作を継続するが、使用者が沸騰以後の火力を任意に選んでも良い。
沸騰までの加熱工程全域に亘り、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4は同時駆動され、互いに隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。また沸騰以降は使用者の操作に基づいて対流促進制御が開始される。この対流促進制御については後述する。
湯沸し+保温モード(加熱速度と均一性を優先させた調理メニューで、第3の選択部E3で選択)
被加熱物N内の水を、使用者が任意の火力で加熱開始し、水が沸騰(温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化等の情報から制御部は沸騰状態と推定)した際に、使用者には表示部Gよってその旨を知らせる。その後火力は自動的に設定され、そのまま2分間だけ沸騰状態維持する。
湯沸し工程:
主加熱コイルと副加熱コイル合計の火力が150W〜3000W(火力1〜火力9まで9段階の中から任意設定。デフォルト設定値は火力7=2000W)。
主副火力比は、使用者が選定した上記合計火力を超えない限度で、所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。
保温工程:最大10分間。10分経過後に自動的に加熱動作終了。
主加熱コイル1000W以下(使用者には設定不可能)
副加熱コイル1500W以下(使用者には設定不可能)
沸騰までは、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。沸騰後は電流の向きは反対になる。また沸騰以降は使用者の操作に基づいて対流促進制御が開始される。この対流促進制御については後述する。
以下、図6を参照しながら、本発明に係る誘導加熱調理器の基本動作について説明する。まず主電源を投入して加熱準備動作を使用者が操作部(図示せず)で指令した場合、前記電流検出部280を用いて、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量を検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かを判定し、この結果を制御部である通電制御回路200に伝達する(ステップMS1)。
適合鍋であった場合、通電制御回路200は操作部E又はその近傍に設置されている表示手段Gの、例えば液晶表示画面に対し、希望する調理メニューを選択するように促す表示をする(MS2)。適合しない変形鍋(底面が凹んだもの等)や異常に小さい鍋等の場合は、加熱禁止処理がされる(MS6)。
使用者が調理メニューや火力、調理時間などを操作部で選択、入力した場合、本格的に加熱動作が開始される(MS4)。
表示手段Gに表示される調理メニューとしては、上記した「高速加熱モード」、「揚げ物モード」、「湯沸しモード」、「予熱モード」、「炊飯モード」、「茹でモード」、「湯沸し+保温モード」という7つである。以下の説明ではモードという記述を省略し、例えば「高速加熱モード」は「高速加熱」と記載する場合がある。
使用者がこれら7つの調理メニューの中から任意の一つを選択した場合、それらメニューに対応した制御モードが、通電制御回路200の内蔵プログラムによって自動的に選択され、主加熱コイルMCや副加熱コイルSC1〜SC4のそれぞれの通電可否や通電量(火力)、通電時間などが設定される。調理メニューによっては使用者に任意の火力や通電時間等を設定するように促す表示が表示部にて行われる(MS5)。
なお、前記第1、第2、第3の選択部E1、E2、E3は合計3つであるのに対し、前記表示手段Gに表示される調理メニューは合計で7つあるが、実際には例えばE1の中に、「高速加熱」と「湯沸し」、「茹で」の3つを選択できるキーがある。同様に選択部E2の中に「予熱」と「炊飯」の2つが、また選択部E3の中に「湯沸し+保温」と「揚げ物」の2つのキーがある。
(対流促進制御)
次に、本発明の左側誘導加熱源6Lにおいて、加熱形態の特徴である対流促進制御について説明する。対流促進制御は大きく分けて3種類ある。なお、沸騰以降又は沸騰直前、例えば98℃まで被加熱物Nの温度が上昇したことを温度センサーが検知した場合、または調理開始からの経過時間から沸騰状態に近いと通電制御回路200が判定した場合等においては、それ以降において使用者の任意に指令した時期、例えば操作直後に、対流促進制御が開始されるようにしておくことが望ましいが、特定の調理メニューの場合、沸騰状態になったら使用者が禁止したり、途中で加熱停止したりしない限り、自動的に対流促進制御に移行するようにしても良い。この対流促進制御については後述する。
(第1の対流促進制御)
この制御は、主加熱コイルMCの駆動しない期間中において、副加熱コイルSC1〜SC4によって被加熱物Nを加熱するものである。
図3の(A)は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4に同時に高周波電流が各インバーター回路SIV1〜SIV4より供給されている状態を示す。
同じく図3の(B)は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4には高周波電流を供給せず、加熱動作停止しており、一方、主加熱コイルMCのみ主インバーター回路MIVからの高周波電流が供給され、加熱駆動されている状態を示す。なお、主加熱コイルMCにハッチングが施されている場合は、通電されている状態を示す。また4つの副加熱コイルSC1〜SC4が黒く表示されている場合も通電されている状態を示す。但し、後述する第2の対流制御と第3の対流制御では、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の通電状態を、ハッチングや着色によって表示していない場合がある。
図4の(A)は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の内、互いに隣り合う2つの副加熱コイルSC1,SC3の組(以下、「グループ」ともいう)に対して各インバーター回路SIV1、SIV3より高周波電流が個別に、しかも同時に供給されている状態を示す。この場合、被加熱物Nの発熱部は隣り合う2つの副加熱コイルSC1,SC3の真上とその両者の間に亘る帯状の部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された被調理物、例えば味噌汁やシチュー等は2つの副加熱コイルSC1,SC3の真上とその両者の間に亘る帯状の部分で加熱され、上昇流が発生する。従ってこの状態を継続すると図4(A)に矢印YCで示したように、副加熱コイルSC1,SC3から最も遠い反対側に向かう長い対流を発生させることができる。反対側で下降流となり、被調理物の底部を横に流れて再び副加熱コイルSC1,SC3の方に戻るという還流が発生しやすくなる。
言い換えると温度が上昇して自然に上昇する液体被調理物が再び温度が下がって戻ってくる一連の経路(循環路、あるいは対流ループともいう)の長さを大きくできる。
RL1は上昇した被調理物の液体が反対側に向かって移動し、下降流に変わるまでの長い対流経路の長さを示す。RL1の始点は副加熱コイルSC1〜SC4の中心点XSである。またRL2は一つの副加熱コイルSC1から被加熱物Nである鍋等の反対側の壁面までの長さを示す。図4(A)から分かるようにRL1とRL2は同じである(RL1=RL2)。
次に図4の(B)に示すように、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の内、互いに隣り合う2つの副加熱コイルSC1,SC2に対して、高周波電流IBが各インバーター回路SIV1、SIV2より個別に、同時に供給されている状態を示す。副加熱コイルSC1,SC2流れる電流IBの向きは互いに反対方向である。この場合、被加熱物Nの発熱部は隣り合う2つの副加熱コイルSC1,SC2の真上とその両者の間に亘る帯状の部分になるから、発生する対流の向きは図4(B)に矢印YCで示したようになる。
同様に、図4の(C)に示すように、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の内、互いに隣り合う2つの副加熱コイルSC2,SC4の組に対して同時に高周波電流IBが各インバーター回路SIV2、SIV4より個別に供給されている状態を示す。この場合、被加熱物Nの発熱部は隣り合う2つの副加熱コイルSC2,SC4の真上とその両者の間に亘る帯状の部分になるから、発生する対流の向きは図4(C)に矢印YCで示したように、図4(A)で示した状態とは正反対の方向なる。
以上の実施に形態の説明のように、第1の対流促進制御は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の内、隣り合う2つの副加熱コイルの組によって主要な加熱をする方式である。言い換えると、4つの副加熱コイルの内の、半数以上で全数未満の副加熱コイルを同時に駆動する方式である。この第1の対流促進制御は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4だけの場合に実現するものではなく、例えば6個の副加熱コイルを用いる場合は、3個又は4個の副加熱コイルを同時駆動すれば良い。つまり3個又は4個の副加熱コイルを一つの組にして、その組単位で加熱駆動することである。
この第1の対流促進制御によれば、鍋の横幅全体に亘り、その一方の側方から対向する反対側へ、また逆に反対側からその一方の側方に戻るように、対流を促進する流れを誘発することができる。また対流が起こらなくとも、鍋は副加熱コイルSC1〜SC4で加熱される位置が、主加熱コイルMCの外周側において変化するので、特にとろみのある粘性の高い調理液体の加熱時、一箇所だけに熱が集中することで水分が蒸発し局部的に焦げるということも抑止できる。
図4の(A)から(B)、(C)と順次切り替わるための好ましいタイミングは、被調理物によって一様ではないが、少なくとも被調理物の温度が沸騰したあと、又は沸騰直前の100℃近い状態から開始され、以後は例えば10〜15秒間隔で切り替えが行われる。
あるいは、30分間の煮込み調理が設定されていた場合、調理が終了する前の5分前から開始され、終了までの5分間に亘り実施されるものでも良い。また、野菜や肉類等の具材にダシ汁が吸収されやすくするため、例えば30秒ずつ数回繰り返し行うということでも良い。実際に同じ副加熱コイルを同じ火力で加熱駆動しても、発生する対流の強さは被調理物の液体の粘性に大きく影響受けるので、色々な調理の実験結果から4つの副加熱コイルSC1〜SC4の火力や通電間隔、順番などを選定することが望ましい。
この第1の対流促進制御によれば、被加熱物Nの周縁部に対応する(同一円周上に所定間隔で配置した)4つの副加熱コイルSC1〜SC4を駆動する(ON状態とする)ことにより、フライパンなどの鍋肌(鍋の側面)だけを余熱するといった調理方法(加熱方法)も実現可能となる。
図5は、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流のタイミングを示した説明図であり、加熱駆動される高周波電流が印加されているON状態を「ON」、印加されていないOFF状態を「OFF」と表示している。
この図5では破線に示すように、主加熱コイルMCは通電されていないが、その非通電期間中に、半数以上、全数未満、この実例では隣り合う2個の副加熱コイルによって構成された1組の副加熱コイル群によって誘導加熱される。
この図5から明らかなように、所定の時間間隔で構成される複数個の区間(以下、単に「区間」という)において、その最初の区間T1では、副加熱コイルSC1、SC2がONであり、次の区間T2では、副加熱コイルSC1はOFFになり、SC2がON継続する。SC3がONになる。
次の区間T3では、副加熱コイルSC1はOFF継続し、SC2がOFFとなる。SC3がON継続し、新たにSC4がONとなる。次の区間T4では、SC3がOFFとなる。SC4がON継続し、新たにSC1がONとなる。この図で示す区間T1〜T8は前記したように10〜15秒程度で良い。以後このように所定の間隔で副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流がON、OFFされる。
(副加熱コイルの組の変形例)
なお、この実施の形態では、一つの区間(T1、T2、T3等)毎に、一つの組を構成する副加熱コイルの構成が変化したが、変化させずに固定化しても良い。例えば常にSC1、SC2の組と、SC3、SC4の組に分け、一方の組がONしている期間中は、他方の組はOFFになるというように、2つの組を交互に通電することでも良い。また変化させる場合も、図5に示すように前記した通電する区間T1からT4で、加熱駆動される第1の組が一周する際、通電順序を変化させても良い。例えば、区間T1での第1の組が、図4(B)に示すように副加熱コイルSC1,SC2であり、区間T2での組み合わせが図4(C)に示すようにSC2,SC4であり、区間T5での組み合わせが再び図4(B)に示すように副加熱コイルSC1,SC2の組み合わせになる場合、加熱駆動される第1の組は時計周りに順次変移したことになるが、これを反時計周りにしても良い。その場合、通電区間T1〜T4、更にT5〜T8の2回転は図4に示したように時計周りに駆動対象副加熱コイルを変化させ、区間T4から3周目に入った段階から逆に反時計周りになるようにしても良い。副加熱コイルによる加熱部分を移動させる速度、即ち通電の切り替え間隔(前記した通電区間T1、T2、T3〜T8など)も周回を重ねる毎に変化させても良い。このような変化形態は後述する第2、第3の対流促進制御にも適用できる。
(副加熱コイルの変形例)
図7に示したように4つの副加熱コイルSC1〜SC4を2個にしても良い。すなわち、図7に示した右側の副加熱コイルSCRは、図1〜図4に示した2つの副加熱コイルSC1、SC2を連結したようなものであり、主加熱コイルMCの右側外周縁の略全体に沿うよう、全体が湾曲している。左側副加熱コイルSCLは、主加熱コイルMCの左側外周縁の略全体に沿うよう、全体が湾曲した形状になっており、主加熱コイルMCの中心点X1を挟んで左右対称形状になっている。
右側副加熱コイルSCR、左側副加熱コイルSCLは全く同一のものであり、向きを変えて設置するだけで共用できる。また2つの副加熱コイルSCR、SCLは、その横幅は主加熱コイルMCの半径の半分程度であり、主加熱コイルMCが直径180〜200mm程度である場合、副加熱コイルSCR、SCLの横幅WAは、それぞれ30〜50mm程度となる。偏平度を上げて更に細長い形状にするには集合線の巻き方など色々技術的制約がある。
この変形では、右側の副加熱コイルSCRと左側副加熱コイルSCにそれぞれインバーター回路から交互に所定間隔(一定間隔ではなくとも良い)で高周波電流を印加すれば、被加熱物Nはその右側外周縁部と左側外周縁部が交互に集中して誘導加熱されるので、被調理物の中に左右から交互に対流が生まれる。この場合も、右側と左側の副加熱コイルSCR,SCLを同時にON状態にして誘導加熱する場合の最大火力時における、右側の副加熱コイルSCRの火力、左側副加熱コイルSCLの火力よりも、対流促進モードにおける右側の副加熱コイルSCR単独加熱時の火力、あるいは左側副加熱コイルSCL単独加熱時の火力を大きくすると効果的である。なお、主加熱コイルMCに矢印IAで示したものは主加熱コイルMCの駆動時にそれに流れる高周波電流IAの向きを示す。
主加熱コイルMCと、右側副加熱コイルSCR又は左側の副加熱コイルSCLの何れか一方あるいは双方を同時に加熱駆動する場合、主加熱コイルMCに流れる高周波電流IAと左右の副加熱コイルSCR、SCLにそれぞれ流れる高周波電流IBの向きは、図7に実線の矢印で示すように、隣接する側において同じ向きとなることが加熱効率の観点から好ましい(図7では主加熱コイルMCにおいて時計回り、左右の副加熱コイルSCR、SCLは反時計回りの場合を示す)。これは、このように2個の独立したコイルの隣接する領域において、同一方向に電流が流れる場合、その電流で発生する磁束は互いに強め合い、被加熱物Nを鎖交する磁束密度を増大させ、被加熱物底面に渦電流を多く生成して効率良く誘導加熱できるからである。
右側副加熱コイルSCRと左側副加熱コイルSCLと主加熱コイルMCの3者で同時に一つの鍋を加熱している場合の火力が3000Wであり、その場合、右側副加熱コイルSCRは1KW、左側副加熱コイルSCLも1000W、主加熱コイルMCも1000Wで加熱している場合、上記した対流促進モードでは、例えば右側副加熱コイルSCRは1500W、左側副加熱コイルSCLも1500Wで交互にON状態にする。なお、このように副加熱コイルを2つだけにした場合、駆動するインバーター回路の数を減らすことができ、回路構成の減少によるコストダウンや回路基板の面積減少による小型化などのメリットが期待できる。
図7の変形例から明らかなように第1の対流促進制御には、被調理物を入れる鍋などの被加熱物を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下方に配置された円環状の主加熱コイルMCと、前記主加熱コイルの両側に近接して配置され、主加熱コイルの半径より小さな横幅寸法を有する扁平形状の第1副加熱コイルSCR及び第2副加熱コイルSCLと、前記主加熱コイルMC及び第1、第2副加熱コイルSCR、SCLにそれぞれ誘導加熱電力を供給するインバーター回路と、前記インバーター回路の出力を制御する制御部と、前記制御部に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部と、を有し、前記制御部は、前記第1副加熱コイルに誘導加熱電力を供給しない期間を設け、この期間中に前記第2副加熱コイルに前記インバーター回路から誘導加熱電力を供給し、この後前記第2副加熱コイルへの誘導加熱電力供給を停止した期間を設け、この期間中に前記第1副加熱コイルに前記インバーター回路から誘導加熱電力を供給し、前記制御部は第1、第2副加熱コイルに対する前記通電切り替え動作を複数回繰り返すものが含まれている。
以上説明したように、本実施の形態1によれば、加熱条件を表示する表示手段Eには、前記第1、第2、第3の選択部の選択用キーE1、E2、E3が使用者によって選択操作可能な状態に、静電容量式スイッチのキー等の形態で表示されるから、目的とする調理メニューを容易に選択できる。その選択によって適合する加熱駆動パターンが制御部により自動的に決定されるから、加熱時間重視や温度均一性重視などの使用者の目的、希望に応じた加熱コイルの駆動形態で加熱調理が実行できる。このように調理メニューの選択キーが表示部で操作できることにより使用者の誤使用解消や精神的な負担の軽減等もできるという利点がある。
この変形例の応用として、中心部の主加熱コイルMCの通電と、右側副加熱コイルSCRと左側副加熱コイルSCLの通電時期を交互にすると、別の対流経路を発生させることができる。例えば最初に右側副加熱コイルSCRを1KWの火力で15秒間駆動し、次に左側副加熱コイルSCLを1KWの火力で15秒間駆動し、これを2回繰り返したあと、主加熱コイルMCだけを1KWで15秒間駆動する。こうすることで主加熱コイルMCの真上から上昇し、次に鍋の外周縁側に放射状に広がる対流を作ることができる。これによって左右の副加熱コイルSCR,SCLによる鍋底外周部からの加熱による、経路の長い対流と合わせて、2種類の対流が形成され、鍋内部の被調理物全体の攪拌効果や温度均一化、吹き零れ抑止などの効果が期待できる。
(第2の対流促進制御)
この制御は、主加熱コイルMCを駆動しない期間中において、副加熱コイルSC1〜SC4の内、隣り合う複数個以上の副加熱コイルの組(グループともいう)によって被加熱物Nを加熱するが、副加熱コイルの組の間で駆動電力に差を付けるものである。つまり、第1組の副加熱コイル群に供給している誘導加熱電力より大きな電力を第2組の副加熱コイル群に供給し、次に第1組の副加熱コイル群に供給している誘導加熱電力を小さくし、この電力より大きな電力を第2組の副加熱コイル群に対して供給し、これら動作を複数回繰り返すことを特徴とするものである。言い換えると、4つの副加熱コイルの内の、半数以上で全数未満の副加熱コイルからなる組を同時に駆動する方式で、残りの副加熱コイル単体又はその組の間で駆動電力に差を付け、半数以上で全数未満の副加熱コイルからなる組の火力総和の方を、残りの副加熱コイル単体又はその組の火力操作より大きくするものである。
以下具体的に説明する。
図4の(B)に示すように4つの副加熱コイルSC1〜SC4の内、隣り合う2つの副加熱コイルSC1、SC2に同時に高周波電流を各インバーター回路SIV1、SIV2から供給する。この場合、2つの副加熱コイルSC1、SC2には、それぞれ1.0KWずつの火力(第2の火力)が設定される。この場合、2つの副加熱コイルSC1、SC2と中心点X1を挟んで対称的位置にある2つの副加熱コイルSC4、SC3はそれぞれが火力500W(第1の火力)で駆動される。
次に同じく図4の(C)に示すように、前記した2つの副加熱コイルSC1、SC2の内、SC1の火力は半減させて500W(第1の火力)にし、SC2はそのままの火力を維持させた状態において、SC2と隣接する副加熱コイルSC4を1000W(第2の火力)で駆動する。SC3は500W(第1の火力)のままとする。
次に同じく図4の(D)に示すように、前記した2つの副加熱コイルSC2、SC4の内、SC2の火力は半減させて500Wにし、SC4はそのままの火力を維持させた状態において、SC4と隣接する副加熱コイルSC3を1000Wで駆動する。SC1は500Wのままとする。
以上の説明から明らかなように、隣接する2つの副加熱コイルのグループを大火力で、残りの2つの副加熱コイルのグループをそれより小さい火力で駆動し、この大火力グループと小火力グループを切り替えることで強く加熱する部分を位置的に変化させることに特徴がある。
この制御によれば、フライパンなどの中心部を加熱しながらも、鍋肌(鍋の側面)を効果的に余熱するといった調理方法、加熱方法も実現可能となる。また鍋は副加熱コイルSC1〜SC4で加熱される中心部位が、主加熱コイルMCの周囲において変化するので、特にとろみのある粘性の高い調理液体の加熱時、局部的に焦げるということも抑止できる。
このように第2の対流促進制御は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の内、隣り合う2つの副加熱コイルの組によって主要な加熱をする方式である。言い換えると、4つの副加熱コイルの内の、半数以上で全数未満の副加熱コイルを同時に駆動し、残りの1つ又は複数個の副加熱コイルの組との間に駆動火力の差を付ける方式である。この第2の対流促進制御は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4だけの場合に実現するものではなく、例えば6個の副加熱コイルを用いる場合は、3個又は4個の副加熱コイルを同時駆動すれば良い。なお、第2の火力は、第1の火力の2倍以上が望ましいが、1.5倍以上でも良い。また4個以上の副加熱コイルを、隣り合う2つの副加熱コイルの第1組と他の組(第2組)に分けて駆動する方式においては、前記第1組の副加熱コイルの第2の火力総和は、第2の火力総和の2倍以上が望ましいが、1.5倍以上でも良い。
また、副加熱コイルの変形例として図7に示したように4つの副加熱コイルSC1〜SC4を2個にしたものを前述したが、その変形例はこの第2の対流促進制御にも適用できる。すなわち、調理物を入れる鍋などの被加熱物を載置するトッププレートと、このトッププレートの下方に配置された円環状の主加熱コイルMCと、この主加熱コイルの両側に近接して配置され、主加熱コイルの半径より小さな横幅寸法を有する扁平形状の第1副加熱コイルSCR及び第2副加熱コイルSCLと、主加熱コイルMC及び第1、第2副加熱コイルSCR、SCLにそれぞれ誘導加熱電力を供給するインバーター回路と、このインバーター回路の出力を制御する制御部と、この制御部に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部と、を有し、前記制御部は、前記インバーター回路から前記第1副加熱コイルSCRに供給している誘導加熱電力より大きな電力を前記第2副加熱コイルSCLに供給し、この後前記前記第2副加熱コイSCLルに供給している誘導加熱電力を小さくし、この電力より大きな電力を前記インバーター回路から前記第1副加熱コイルSCRに対して供給し、前記制御部は第1、第2副加熱コイルSCR、SCLに対する前記通電切り替え動作を複数回繰り返すという構成で実現できる。
(第3の対流促進制御)
この制御は、主加熱コイルMCを駆動しながら、その駆動期間と同時に、あるいは駆動休止している期間において、副加熱コイルSC1〜SC4によって被加熱物Nを加熱するものである。つまり、主加熱コイルの両側に配置された、主加熱コイルの半径より小さな横幅を有する扁平形状の複数個の副加熱コイルを、第1の組と第2の組に分け、それら組を主加熱コイルの両側にそれぞれ配置し、前記主加熱コイルに第1の火力で誘導加熱電力を連続して又は断続的に供給している期間中において、前記第1の組への誘導加熱電力を停止している状態で、前記第2の組に前記インバーター回路から前記第1の火力より大きい第2の火力を供給し、次に前記第1の組への誘導加熱電力を停止し、前記第2の組に前記インバーター回路から前記第1の火力より大きい第3の火力を供給し、これら動作を複数回繰り返すことで前記被加熱物内の被調理物に長い経路の対流を発生させることを特徴とするものである。これにより対流が発生しない場合でも、鍋は副加熱コイルSC1〜SC4で加熱される中心部位が、主加熱コイルよりも外側において変化するので、特にとろみのある粘性の高い調理液体の加熱時、局部的に焦げるということも抑止できる。
図8は、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流のタイミングを示した図であり、加熱駆動される高周波電流が印加されているON状態を「ON」、印加されていないOFF状態を「OFF」と表示している。
この図8に破線に示すように、主加熱コイルMCは最初の区間T1〜T4までは連続して通電されているが、次の4区間は非通電期間となる。この通電及び非通電期間中に、半数以上、全数未満(この例では2個)の副加熱コイルの組によって誘導加熱される。この誘導加熱時の火力の総和は、「非対流促進制御用の駆動時」の主加熱コイルの火力(第1の火力)よりも大きい火力にしたことが特徴である。
ここで、「非対流促進制御用の駆動時」とは、次に掲げる2つのケース、それぞれをいう。但し、制御を行う場合、下記の2つのケース双方を満足させる条件で第1の火力を決定せず、どちらか一方のケースで第1の火力を設定しても良い。
(1)主加熱コイルMCと全ての副加熱コイルを同時に駆動し、最大加熱量を発揮させるような通常運転をして調理するとき。例えば主加熱コイルMCと全ての副加熱コイルを同時に駆動し、最大火力設定は3KWであり、その3KW加熱時、主加熱コイルに配分される火力割合は1KWである場合、この1KWが「非対流促進制御用の駆動時」の主加熱コイルの火力になる。
(2)主加熱コイルMCを単独で普通に加熱駆動して調理する場合、最も大きな火力設定で運転をするとき。例えば主加熱コイルMC単体での最大火力は1.2KWである場合、この1.2KWが「非対流促進制御用の駆動時」の主加熱コイルの火力になる。
図8から明らかなように、全ての区間に亘り、半数以上、全数未満の副加熱コイルの組(第1の組)は副加熱コイルSC1、SC2の2者で構成し、第2の組はSC3、SC4の2者で構成している。最初の区間T1では第1の組がONであり、第2の組はOFFである。次の区間T2では、第1の組はOFFになり、第2の組がONする。
次の区間T3では、第1の組は再びONになり、第2の組はOFFとなる。この図で示す区間T1〜T4は例えば10〜15秒程度で良い。以後このように所定の間隔で第1の組と第2の組の副加熱コイル群に流れる電流が交互にON、OFFされる。
(第3の対流促進制御の変形例)
図9は、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流のタイミングを示した図であり、加熱駆動される高周波電流が印加されているON状態を「ON」、印加されていないOFF状態を「OFF」と表示している。副加熱コイルは、その半数以上、全数未満で副加熱コイルの組(第1の組)を構成しており、副加熱コイルSC1、SC2の2者で構成されている。一方、第2の組は残りのSC3、SC4の2者で構成している。この組の構成は加熱調理中、変更されず、第1組は常に副加熱コイルSC1、SC2の2者となるように固定されている。
この図9に破線に示すように、主加熱コイルMCは最初の区間T1〜T2までは連続して(第1の火力で)通電されているが、次の4区間(T3〜T6)は非通電期間となる。この最初の2区間における主コイルMCの(第1の火力での)誘導加熱期間中には、4つの副加熱コイルSC1〜SC4は全て駆動休止している。
次に区間T3になると主加熱コイルMCの通電は休止する。代わりにこの区間T3に入ると、副加熱コイルの第1の組が、誘導加熱される。この誘導加熱時の火力の総和は、前記主加熱コイルの第1の火力(例えば1000W)よりも大きい(第2の)火力(例えば1500W又は2000W)である。副加熱コイルの第2の組は加熱駆動されない。
次に区間T4になると主加熱コイルMCの通電は休止したままであるが、この区間T4では副加熱コイルの第1の組が、加熱休止される。代わりに第2の組の副加熱コイルSC3、SC4が加熱駆動される。この誘導加熱時の火力の総和は、前記主加熱コイルの第1火力(1000W)よりも大きい(第3の)火力(例えば1500W又は2000W)である。なお、第3の火力と第2の火力は同じ火力であるが、第1の火力(1000W)よりも大きければ、同じでなくとも良い。
次に区間T5になると主加熱コイルMCの通電は休止したままであるが、この区間T5では再び副加熱コイルの第1の組が、加熱駆動される。この場合の2つの副加熱コイルSC1、SC2の駆動火力の総和は第1の火力より大きい前記第2の火力(例えば1500W又は2000W)である。この区間Vでは第2の組の副加熱コイルSC3、SC4は加熱休止される。
次に区間T6になると主加熱コイルMCの通電は休止したままであるが、この区間T6では再び副加熱コイルの第1の組が、加熱休止し、代わりに第2の組が加熱駆動される。この場合の第2の組の2つの副加熱コイルSC3、SC4の駆動火力の総和は第1の火力より大きい第3の火力である。
次に区間T7になると主加熱コイルMCの通電は再開される。その時の火力は第1の火力である。またこの区間T7では再び副加熱コイルの第1の組が、加熱駆動され、この場合の第1の組の2つの副加熱コイルSC1、SC2の駆動火力の総和は第1の火力より大きい火力2である。第2の組は加熱休止する。
次に区間T8になると主加熱コイルMCの通電は火力1で維持されたままであるが、副加熱コイルの第1の組のSC1、SC2が加熱休止される。代わりに再び副加熱コイルの第2の組が加熱駆動され、この場合の火力レベルは第3の火力である。
以上のように、主加熱コイルMCは2つの区間で加熱駆動され、4つの区間で加熱休止する。以後この繰り返しである。一方、副加熱コイルの第1、第2の組は、4つの区間で加熱休止したのち、一区間毎に交互に加熱駆動されるというパターンである。なお、図9の区間T1に(A)、区間T3に(B)、区間T4に(C)、区間T7に(D)という符号を付けたが、この(A)、(B),(C)、(D)の区間は、図10の(A)、(B)、(C)、(D)と対応しており、図10で駆動時期が順次切り替わる様子が理解される。このようにして通電パターンは合計5種類ある。
なお、通電の切り替えの好ましいタイミング、つまり各区間(T1〜T9等)は、被調理物によって一様ではないが、少なくとも被調理物の温度が沸騰したあと、又は沸騰直前の100℃近い状態から開始され、以後は例えば10〜15秒間隔で切り替えが行われる。あるいは、30分間の煮込み調理が設定されていた場合、調理が終了する前の5分前から開始され、終了までの5分間に亘り実施されるものでも良い。
実際に主加熱コイルMCと副加熱コイルを第1、第2の火力で加熱駆動しても、第1、第2、第3の火力の差や、第1、2、3の火力の各絶対値によって発生する対流の強さは被調理物の液体の粘性に大きく影響受けるので、色々な調理の実験結果から火力値や通電間隔、順番などを選定することが望ましい。
以下、実際の調理メニューに適用された場合の具体例で説明する。
例えば2000Wで「茹で」の調理メニューを行った場合について説明する。
最初に、図示していない火力設定部で最初2000Wを入力しなくとも上述したようにデフォルト値は2000Wであるので、最初から2000Wで加熱開始される。この場合、主副火力比は自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定しなくとも良く、例えば主加熱コイルMCの火力は800W、副加熱コイル4つの内の合計火力は(前記「第1の火力」より大きな)1200Wに設定される。
そして2000Wで加熱され、水が沸騰(温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化等の情報から制御部は沸騰状態と推定)した際に、通電制御回路200は報知信号を出し、加熱手段の動作条件を表示する表示手段Gにて文字や光で表示し、使用者にその旨を知らせる。このときに、火力を再度設定しない場合は、自動的に火力を下げる旨報知する。
使用者が何の操作もしない場合、沸騰状態になると通電制御回路200は火力を下げる指令信号を主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に出力し、例えば主加熱コイルMCの火力は300W、副加熱コイル4つの合計火力は300Wに設定される。
この状態は最長で30分間継続し、その間に何の操作も行われないと自動的に全ての誘導加熱源は駆動停止する。この沸騰までの工程では、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。
一方、沸騰後において使用者が再度火力を設定した場合、自動的に第3の対流促進制御が実施される。
例えば、沸騰後にデフォルト値(600W)のままではなく、使用者が火力を2000Wに上げた場合、通電制御回路200は主加熱コイルMCの火力(第1の火力)を500W(第1の火力)、互いに隣接する二つの副加熱コイルの合計火力を1500Wと、もう一つの副加熱コイルの組の合計火力(第3の火力)を1500Wに設定する。
主加熱コイルMCを500Wで連続駆動している期間中、隣接する4つの副加熱コイルを、例えばSC1、SC2の2個の組と、SC3、SC4の2個の組に分け、これら2つのグループを交互に15秒ずつ、それぞれ合計1500Wずつで加熱駆動する(一つの副加熱コイルは750Wの火力が投入される)。
また使用者が沸騰直後に、火力を2000Wではなく、最大火力である3000Wに上げた場合、通電制御回路200は主加熱コイルMCの火力(第1の火力)を1000W(第1の火力)、互いに隣接する二つの副加熱コイルの合計火力を2000Wと、もう一つの副加熱コイルの組の口径火力(第3の火力)を2000Wに設定する。
前記沸騰工程までは、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の隣接する領域での高周波電流の向きは一致させ、強い火力が出るよう制御されていたが、沸騰後は電流の向きは反対に切換えられ、例えば主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1との隣接領域及び、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC2との隣接領域では高周波電流が反対向きとなるように流す。
なお、上記説明では、沸騰後火力を2000Wにした場合、主加熱コイルMCを500Wで間欠的に駆動する方式であったが、連続的に駆動しても良い。何れにしても、少なくとも隣接する2個の副加熱コイルによってより多くの対流を発生させるものである。つまり、被加熱物Nの周縁部にできるだけ近い場所で2組の副加熱コイル群によって交互に誘導加熱されるから、被調理物の外周縁部では比重が軽くなり、被調理物の中に自然に上昇する流れが作られる。なお本発明は、上記したような主加熱コイルMCの火力と副加熱コイル側の合計火力の例には何ら限定されない。
また、対流促進効果を上げるため、被加熱物Nの外周縁部での加熱を、中心部より強くすることが望ましいので、仮に前記主加熱コイルMCに第1の火力として1500W、副加熱コイルSC1〜SC4の中の隣接する複数個の副加熱コイル合計で(第2の火力として)1.5KWにした場合でも、主加熱コイルMCを常に通電率制御し、例えば沸騰以後の時間における通電率を50%にすれば実質750W相当の火力になるので、このようなものでも本発明の対流促進効果が得られる。
図4に示したような副加熱コイルSC1〜SC4の「時間選択的」な通電切替え制御は、煮物や茹で物をする場合の吹き零れの抑制にもなる。すなわち、前記した「湯沸し+保温モード」のように、加熱速度と均一性を優先させた調理メニューで沸騰後の茹での段階になった際、図4に示したような副加熱コイルSC1〜SC4の通電切替制御を行えば、鍋の中央や特定の一箇所だけが強く加熱されるという状態を回避でき、鍋の底部に対する誘導加熱部を順次移動させるような形になる。
通電している副加熱コイル部では鍋を加熱し、一方それと離れた個所にある非通電状態の副加熱コイル部分の鍋底では加熱を行わないものの、加熱部からの熱が鍋を伝わり予熱されている形になり、これらによって鍋内部の非調理物全体に熱を均一に行き渡らせる効果が期待できる。ここで「時間選択的」という意味は、一定の周期(例えば30秒ごと)とうだけではなく。同じ調理メニューの中で最初と次の切替え周期を変化させたり、あるいは調理メニューや被調理物の種類によって周期と繰り返し回数を変えたりしても良いという意味である。
このように第3の対流促進制御は、主加熱コイルによって中心部を加熱しながら、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の内、隣り合う2つの副加熱コイルの組によって周辺部の加熱をする方式である。言い換えると、4つの副加熱コイルの内の、半数以上で全数未満の副加熱コイルを同時に駆動し、残りの1つ又は複数個の副加熱コイルの組との間に駆動火力の差を付ける方式である。この第2の対流促進制御は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4だけの場合に実現するものではなく、例えば6個の副加熱コイルを用いる場合は、3個又は4個の副加熱コイルを同時駆動すれば良い。
(副加熱コイルの組の変形例)
なお、この実施の形態では、全ての区間(T1、T2、T3等)を通じて副加熱コイルの組を構成する副加熱コイルを固定化し、SC1、SC2の組と、SC3、SC4の組に分けたが、これを所定時間間隔で変化させても良い。例えば図5に示したように、区間毎に変化させても良い。
また、副加熱コイルの変形例として、第1の対流促進制御において、4つの副加熱コイルSC1〜SC4を2個に統合したものを示した(図6参照)が、この変形例は、この第3の対流促進制御にも適用できる。
すなわち、第1、第2副加熱コイルSCR、SCLを用いた場合の第3の対流促進制御は、被調理物を入れる鍋などの被加熱物Nと、この被加熱物を載置するトッププレートと、このトッププレートの下方に配置された円環状の主加熱コイルMCと、この主加熱コイルの片側にそれぞれ近接して配置され、主加熱コイルの半径より小さな横幅を有する扁平形状の第1副加熱コイルSCR及び第2副加熱コイルSCLと、主加熱コイルMC及び前記第1、第2副加熱コイルSCR、SCLにそれぞれ誘導加熱電力を供給するインバーター回路と、前記インバーター回路の出力を制御する制御部と、前記制御部に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部と、を有し、前記制御部は、前記主加熱コイルMCを第1の火力(例えば800W)で誘導加熱電力を供給している期間中において、前記第1副加熱コイルSCRに前記インバーター回路から前記第1の火力より大きい第2の火力(例えば1.2KW)で誘導加熱電力を供給し、その後前記第1副加熱コイルSCRへの誘導加熱電力を停止し、前記第2副加熱コイルSCLに前記インバーター回路から前記第1の火力より大きい第3の火力(例えば1200W)で誘導加熱電力を供給し、前記制御部が、第1、第2副加熱コイルSCR、SCLに対する前記通電切り替え動作を複数回繰り返す、という構成で実現できる。
また、主加熱コイルMCと、右側副加熱コイルSCR又は左側の副加熱コイルSCLとが同時に加熱駆動される期間において、主加熱コイルMCに流れる高周波電流IAと左右の副加熱コイルSCR、SCLにそれぞれ流れる高周波電流IBの向きは、図7に実線の矢印で示すように、隣接する側において同じ向きにすると加熱効率の観点から好ましいことは前に述べた通りである。従って対流促進モードにおいては、このように2個の独立したコイルの隣接する領域において、同一方向に電流を流すように制御すれば、その電流で発生する磁束は互いに強め合い、被加熱物Nを鎖交する磁束密度を増大させ、被加熱物底面に渦電流を多く生成して効率良く誘導加熱できるため、対流を発生させるための加熱を効果的に行うことができる。
以上説明した通り、実施の形態1に係る誘導加熱調理器は、第1の発明の構成を備えている。すなわち、実施の形態1に係る誘導加熱調理器は、被調理物を入れる鍋などの被加熱物Nが載置されるトッププレート21を上面に備えた本体部Aと、前記トッププレート21の下方に隣接して配置された第1の誘導加熱源6L及び第2の誘導加熱源6R、これらの加熱源の各誘導加熱コイル6RC、6LCに誘導加熱電力を供給するインバーター回路と、このインバーター回路の出力を制御する通電制御回路200と、この通電制御回路200に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部Eと、を有し、前記トッププレート21下方の前記本体部Aの内部には前記第1、第2の誘導加熱源6L、6Rの各誘導加熱コイルを収容する横長方形の収納空間10を備え、前記第1の誘導加熱源6Lは円形な中央コイル(主加熱コイル)MCと、この周囲に配置した細長形状の複数個の側部コイルSC1〜SC4とを備え、前記第2の誘導加熱源6Rには前記側部コイルを包含する円の直径(R3の2倍。208mm)より小さく、かつその中央コイルMCの外径(R1の2倍。128mm)よりも大径(R2の2倍。約180mm又は200mm)な円形コイル6RCを具備し、前記第1の誘導加熱源6Lは、中央コイルMC単独での誘導加熱と、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱とを被加熱物Nの大きさに応じて自動的に又は手動にて切り替え可能な構成にしたものである。これにより限られた面積のトッププレート21の上で、中央コイルMC単独、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱及び第2の誘導加熱源6R単独加熱、という3つの加熱手段を選択でき、単に2種類の円形加熱コイルを有する従来の2口タイプの調理器よりも幅広い大きさの被加熱部に対応することができ、使い勝手を向上させることができる。
実施の形態2.
図11〜37は本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器を示すものである。
図11は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器全体を一部分解して示す斜視図である。
図12は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の天板部を取り外した状態での本体部全体を示す斜視図である。
図13は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の本体部全体の平面図である。
図14は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の上下仕切り板などの主要な構成部品を取り外した状態の分解斜視図である。
図15は、図11のD1−D1線縦断面図である。
図16は、図11のD2−D2線縦断面図である。
図17は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の部品ケースと冷却ダクトの一部を破断して示す主要部斜視図である。
図18は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の加熱コイルの配置説明用平面図である。
図19は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の左側の誘導加熱源を示す平面図である。
図20は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の左側の誘導加熱源の主加熱コイルの配線説明図である。
図21は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の左側の誘導加熱源を拡大して示す部分平面図である。
図22は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の左側の誘導加熱源の主加熱コイル用コイル支持体の平面図である。
図23は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の制御回路全体図である。
図24は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の制御回路主要部となるフル・ブリッジ方式回路図である。
図25は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の制御回路主要部となるフル・ブリッジ方式回路の簡略図である。
図26は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の左側誘導加熱源上方に大径鍋を置いて加熱動作している場合の縦断面図である。
図27は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の左側誘導加熱源部分を示す縦断面図である。
図28は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の統合表示手段を示す平面図である。
図29は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の左IH加熱源のみを使用している場合の統合表示手段の表示画面例を示す平面図である。
図30は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の左IH加熱源のみを使用している場合の統合表示手段の表示画面例を示す平面図である
図31は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の左IH加熱源で高速加熱調理をしている場合の統合表示手段の表示画面例を示す平面図である
図32は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器全体の基本的な加熱動作を示す制御ステップ説明図である。
図33は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の制御動作のフローチャート1である。
図34は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の制御動作のフローチャート2である。
図35は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器の火力変更する場合の制御動作を示すフローチャート3である。
図36は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器で、火力3000と1500Wの場合の主加熱コイルと副加熱コイル火力値(加熱電力)の値を示す図である。
図37は、本発明の実施の形態2に係るビルトイン型の誘導加熱調理器で、火力500Wの場合の主加熱コイルMCと副加熱コイル火力値(加熱電力)の値を示す図である。
なお、前記実施の形態1の構成と同一又は相当部分には同一符号を付している。また特に明示しない限り、実施の形態1において用いられた用語は、本実施の形態2でも同じ意味で使用する。
(加熱調理器本体)
この実施の形態2における加熱調理器も、1つの矩形の本体部Aと、本体部Aの上面を構成する天板部Bと、本体部Aの上面以外の周囲(外郭)を構成する筐体部Cと、鍋や食品等を電気的エネルギー等で加熱する加熱手段Dと、使用者により操作される操作手段Eと、操作手段からの信号を受けて加熱手段を制御する制御手段Fと、加熱手段の動作条件を表示する表示手段Gとをそれぞれ備えている。また、加熱手段Dの一部として、以下に説明するように、グリル庫(グリル加熱室)又はロースターと称される電気加熱手段を備えている。
この実施の形態2における誘導加熱調理器の特徴は、通常の大きさの鍋等は従前からの主加熱コイルMCで加熱し、通常の鍋よりも遥かに直径の大きい円形鍋や長方形の大形鍋(大径鍋ともいう)などが誘導加熱部上に置かれた場合、その置かれた位置に近い(主加熱コイルMCの周囲に設けた複数個の)副加熱コイルSC1〜SC4と主加熱コイルとの連携によって協同加熱を行われるようにしたものであり、そのような協同加熱動作を実行中の副加熱コイルSCを特定できるように当該副加熱コイルSCの外側位置に対応してトッププレートの下方にある個別発光部だけを発光、点灯させるようにしたものである。
また主加熱コイルMCと全ての副加熱コイルSC1〜SC4の協同加熱を可能とする広域加熱部を囲むように、その広域加熱域の境界を示す広域発行部をトッププレートの下方に配置した点が前述した実施の形態1と大きく異なっている。また実施の形態1で具備していた輻射式電気加熱源7に変えて3つ目の誘導加熱源6Mを具備している。
(本体部A)
本体部Aは図11に示すように、上面全体を後述する天板部Bで覆われたものであり、この本体部Aは、外形形状が流し台等の厨房家具KTに形成した設置口K1を覆う大きさ、スペースに合わせている所定の大きさで、略正方形又は長方形に形成されている。
図12に示す本体ケース2はこの筐体部Cの外郭面を形成するものであり、1枚の平板状の金属板をプレス成形機械で複数回折り曲げ加工して形成した胴部2Aと、この胴部の端部に、溶接又はリベット、ネジ等の固定手段で継ぎ合わせた金属板製の前部フランジ板2Bとから構成されており、これら前部フランジ板2Bと胴部2Aとを固定手段で結合した状態では、上面が開放した箱形になる。その箱形の胴部2Aの背面部下部が傾斜部2Sで、これより上方が垂直な背面壁2Uになっている。
本体ケース2の上面開口の後端部、右端部及び左端部の三個所には、それぞれ外側へL字形に一体に折り曲げて形成したフランジを有しており、後方のフランジ3B、左側のフランジ3L、右側のフランジ3Rと前部フランジ板2Bが厨房家具KTの設置部上面に載置され、加熱調理器の荷重を支えるようになっている。
そして、加熱調理器が厨房家具KTの設置口K1に完全に収容された状態では、厨房家具の前方に形成した開口部KTKから加熱調理器の前面部が露出するようになり、厨房家具の前面側から加熱調理器の前面(左右)操作部60(図12参照)が操作可能となる。
傾斜部2Sは、胴部2Aの背面と底面を結ぶものであり(図12、図16参照)、加熱調理器を厨房家具KTに嵌め込んで設置する場合には、厨房家具の設置口K1後縁部に衝突したり干渉したりしないようにカットしてある。つまり、この種の加熱調理器は厨房家具KTに嵌め込んで設置する際、加熱調理器の本体部Aの手前側が下になるように傾け、その状態で手前側から先に厨房家具KTの設置口K1に落とし込む。その後に遅れて後ろ側を、弧を描くようにして設置口K1に落とし込む。このような設置方法のために、前部フランジ板2Bは、加熱調理器を厨房家具に設置する際に、厨房家具の設置口K1の設置口前縁部(図16参照)との間に十分なスペースSPが確保されるような大きさになっている。
本体ケース2の内部には、3つの誘導加熱源6L、6R、6Mと、該加熱手段の調理条件を制御する後記する制御手段Fと、該制御手段に前記調理条件を入力する操作手段Eと、該操作手段により入力された加熱手段の動作条件を表示する表示手段Gとを備えている。以下、それぞれについて詳細に説明する。
なお、この実施の形態2では、被加熱物Nの鍋としては、直径が12cm以上の鍋の使用を想定したものであり、鍋(片手鍋、両手鍋など)では直径が16cm、18cm、20cm、24cm、フライパンとして直径20cm、天ぷら鍋として直径22cm、中華鍋として直径29cm等、各種のものを使用可能である。
筐体部Cの内部は、図11に示すように大きく分けて前後方向に長く伸びた右側冷却室8R、同じく前後方向に長く伸びた左側冷却室8L、箱形のグリル(又はロースター)加熱室9、上部部品室10(前記実施の形態1でいう「部品収納室」と同じ)、後部排気室12が区画形成されているが、各部屋は互いに完全に隔絶されている訳ではない。例えば右側冷却室8R及び左側冷却室8Lは、後部排気室12に対し、それぞれ上部部品室10を経由して連通している。
グリル加熱室9は、その前面開口9A部が後述するドア13が閉じられた状態では、略独立した密閉空間になっているが、排気ダクト14を介して筐体部Cの外部空間、つまり台所などの室内空間に連通している(図16参照)。
(天板部B)
天板部Bは以下述べるように、上枠(枠体ともいう)20とトッププレート(上板、トップガラス、天板とも称する)21の2つの大きな部品から構成されている。上枠20は、全体が非磁性ステンレス板又はアルミ板などの金属製板から額縁状に形成され、本体ケース2の上面開口を塞ぐような大きさを有している(図11、図13、図15参照)。
トッププレート21は、額縁形状の上枠20の中央に設けられた大きな開口部を隙間無く完全に覆うような横幅寸法W2を有し(図18参照)、本体ケース2上方に重ね合わせて設置されている。このトッププレート21は、赤外線及びLEDからの可視光線を透過させ、全体が耐熱強化ガラスや結晶化ガラス等のような透明又は半透明な材料から構成されている。そして上枠20の開口部の形状に合わせて長方形又は正方形に形成されている。なお、トッププレート21が透明な場合、その上方から使用者に加熱コイル等の内蔵部品が全て見えてしまい、見栄えを損なうことがあるので、トッププレート21の表面や裏面には遮蔽用の塗装を施したり、あるいは細かい斑点状や格子上に可視光線を通さない部分を印刷したり、塗装したりすることがある。
さらにトッププレート21の前後左右側縁は、上枠20の開口部との間にゴム製パッキンやシール材(図示せず)を介在させて水密状態に固定されている。したがって、トッププレート21の上面から水滴などが上枠20とトッププレート21との対面部分に形成される間隙を通じて本体部Aの内部に侵入しないようにしてある。
図11において、右通風口20Bは、上枠20の形成時にプレス機械で同時に打ち抜き形成されたものであり、後述する送風機30の吸気通路となる。中央通風口20Cは同じく上枠20の形成時に打ち抜き形成されたものであり、左通風口20Dは同じく上枠20の形成時に打ち抜き形成されたものである。なお、図11では上枠20の後部部分しか示していないが、上方から見た場合、本体ケース2の上面全体を額縁状に覆っている。
トッププレート21は、実際の調理の段階では後で詳しく述べる右側誘導加熱源6R、左側誘導加熱源6Lによって誘導加熱され、高温になった鍋等の被加熱物Nからの熱を受けて300度以上にもなることがある。
トッププレート21の上面には、図10及び図12に示すように後記する右側誘導加熱源6R、左側誘導加熱源6L、中央誘導加熱源6Mのおおまかな設置位置を示す円形の案内マーク6RM、6LM、7MMが、それぞれ印刷などの方法で表示されている。左右案内マーク6RM、6LMの直径は、各加熱コイルの外径寸法に対し、それぞれプラス40mmである(但し、コイルの外径に対し変化するから、40mmは一例である)。この案内マークは被加熱物Nを置く位置の目安にすることが本来の目的である。
(加熱手段D)
この発明の実施の形態2では加熱手段Dとして、本体部Aの上部右側位置にある右側誘導加熱源6R、反対に左側にある左側誘導加熱源6L、本体部Aの左右中心線上で後部寄りにある中央誘導加熱源6M及びグリル加熱室9の内部にロースター用の上下1対の輻射式電気加熱源22、23を備えている。これら加熱源は制御手段Fにより互いに独立して通電が制御されるように構成されているが、詳細は後で図面を参照しながら述べる。
(右側誘導加熱源)
右側誘導加熱源6Rは、本体ケース2の内部に区画形成された前記上部部品室10内部に設置されている。そして前記トッププレート21の右側の下面側に、加熱コイル6RCを配置している。このコイル6RCの上端部がトッププレート21の下面に微小間隙を置いて近接しており、誘導加熱源となる。この実施の形態では例えば、最大消費電力(最大火力)3kWの能力を備えたものが使用されている。右IH加熱コイル6RCは、渦巻状に0.1mm〜0.3mm程度の細い線を20本又は30本程度の束にして、この束(集合線)を1本又は複数本撚りながら巻き、図18に示すように中心点X2を基点として外形形状が円形になるようにして最終的に中空円盤形(ドーナッツ状ともいう)に成形されている。図13で右側の破線の円が、大体右側の加熱コイル6RCの最外周位置を示す。加熱コイル6RCの直径(最大外径寸法)は約180mm程度である。
(左側誘導加熱源)
左側誘導加熱源6Lは、本体部Aの左右中心線CL1(図18参照)を挟んで右側誘導加熱源6Rと略線対称な位置に設置されている。この実施の形態では例えば、最大消費電力(最大火力)3000Wの能力を備えたものが使用されている。
左側誘導加熱源6Lの加熱コイル6LCは、図18、図19に示すように中心点X1を基点として半径R1とする環状の外形形状を有している。後述する外側コイル6LC1と内側6LC2の内、その外側コイル6LC1の最大外径寸法は約130mmである。図19ではDAに相当する。後述する副コイルSCとの差異を示すため、左側加熱コイル6LCを構成する外側コイル6LC1と内側コイル6LC2の両者を「主加熱コイルMC」と称する(図20参照)。
この左側誘導加熱源6Lの加熱コイル6LCは、図18に示すように、前記右側誘導加熱源6Rの加熱コイル6RCとの対向間隔W5は100mm以上を確保するように配置している。これは左右誘導加熱源6Lによって一つの被加熱物Nを加熱しているときに、その速報にある右側誘導加熱源6Rで別の被加熱物Nを加熱するような「同時使用」の場合に、お互いが磁気的に干渉して不快な異音を発するなどの問題を回避するための工夫である。加熱コイル6LCの最大外径DBは約200mmである(図19参照)。なお、加熱コイル6LCの最大外径DBとは、特に明記しない限り、後述する副コイルSCを包含した円形の範囲の直径をいう。
(中央誘導加熱源)
中央誘導加熱源6Mは、前記右側誘導加熱源6Rと同様な構成であるが、大きさや最大火力等が異なっている。すなわち、中央誘導加熱源6Mは、本体ケース2の内部に区画形成された前記上部部品室10内部の後部位置に設置されている。そしてこの誘導加熱源には前記トッププレート21に、微小間隙を置いて近接する平らな環状の加熱コイル6MCを配置している。この実施の形態2では中央誘導加熱源6Mは、例えば最大消費電力(最大火力)が1500Wの能力を備えたものが使用されている。この中央の加熱コイル6MCは、渦巻状に0.1mm〜0.3mm程度の細い線を20本又は30本程度の束にして、この束(集合線)を1本又は複数本撚りながら円形になるように巻いて、最終的に中空円盤形(ドーナッツ状ともいう)に成形されている。図13で破線の円が、大体中央加熱コイル6MCの最外周位置を示す。その加熱コイル6MCの直径(最大外径寸法)は約130mm程度である。
この中央電気加熱源6Mは、前記左側誘導加熱源6Lの側部コイルSC3との対向間隔W12を50mm程度、右誘導加熱源6Rの加熱コイルとの対向間隔W11を60mm程度確保する位置に設置されている。
ここで、前記3つの加熱コイル6RL、6RC、6MCの相互位置関係と、長方形の上部収納室(部品収納室ともいうが、以下の説明では「部品収納室」に統一する)10との位置関係について説明する。
図18に示すように、本体ケース2を構成する前壁10Fと、後述する上部部品室10と後部排気室12とを仕切る後部仕切り板28と、鉛直に設置されている(図12、図14参照)右側の上下仕切り板24Rと、同じく左側の上下仕切り板24Lとの4部品によって囲まれているのが部品収納室10である。
図18において、W5は、隣接する2つの左右加熱コイル6RC、6RCの間隔を示し、前記したように約100mmである。言い換えると、半径R3の円形加熱域を有する左側誘導加熱部と、半径R2の円形加熱域を有する右側誘導加熱部6Rとの対向間隔である。
W6:部品収納室10の左側内側面から左側誘導加熱部6Lの中心点X1までの距離をいい、180mm。
W7:部品収納室10の前側内側面から左側誘導加熱部6Lの最も前端部までの距離をいい、50mm以下。望ましくは44mm。
W8:部品収納室10の左側内側面と左側誘導加熱部6Lの最も左端部までの距離をいい、30mm以下。望ましくは22mm。
W9:部品収納室10の前側内側面から右側誘導加熱部6Rの最も前端部までの距離をいい、80mm以下。望ましくは47mm。
W10:部品収納室10の右側内側面(右側の上下仕切り板24Rの左側面)と右側誘導加熱部6Rの最も左端部までの距離をいい、30mm以下。望ましくは17mm。
W11:右側誘導加熱部6Rの加熱コイル6RCと中央誘導加熱部6Mの加熱コイル6MCとの最短距離をいい、50mm以下。望ましくは40mm。
W12:左側誘導加熱部6Rの副加熱コイルと中央誘導加熱部6Mの加熱コイル6MCとの最短距離をいい、40mm程度。
W21:中央誘導加熱部6Mの加熱コイル6RMと部品収納室10の後部内側面(後部仕切り板28の前面)との最短距離で、30mm
W20は前記したように、冷却ユニットCUを設置する空間で、少なくとも50mmである。しかしこの空間は狭い方が良い。部品収納室10の有効面積が増え、複数の誘導加熱コイルの設置に制約が少なくなるからである。この横幅W20の実際の上限寸法は100mmであるが、冷却ユニットCUを左右で可能な限り共通化する観点では、左右で同じ寸法にすることが望ましい。
なお、各種寸法W5〜W21はあくまでも一例であり、加熱調理器の機能確保する上で絶対的なものではないため、これら寸法を適宜変更することは可能である。
トッププレート21に表示された円形の案内マークEMは後述する主加熱コイルMCと、その前後左右位置に略等間隔に配置された全ての副加熱コイルSC(合計4個)を包含する広い円形のエリア(以下、「協同加熱エリアマーク」という)を示すものである。またこの協同加熱エリアマークEMの位置は、前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの協同加熱時における好ましい被加熱物載置場所の外側限界を、前記トッププレート21の下から光を放射して示すための、後述する「広域発光部」の位置と大体一致している。
左側加熱コイル6LCの内側空間には赤外線式の温度検出素子(以下、赤外線センサーという)31Lが設置されている(図19、図26、図27参照)。この詳細は後で詳しく述べる。
前記左側誘導加熱源6L6の加熱コイル6LCは、半径方向に2分割された外側コイル6LC1と内側コイル6LC2で構成されている。この2つのコイルは図20に示すように、直列に接続された一連のものである。なお、2つのコイルにすることなく、全体が単一のコイルであっても良い。
左右加熱コイル6LC、6RCの下面(裏面)には、図22、図27に示すように、それら加熱コイルからの磁束漏洩防止材73として、高透磁材料、例えばフェライトで形成された断面方形の棒が配置されている。例えば左側の加熱コイル6LCでは、その中心点X1から放射状に4本、6本又は8本配置してある(必ずしも偶数本である必要はない)。
つまり、磁束漏洩防止材73は、左右加熱コイル6LC、6RCの下面全体を覆う必要はなく、断面が例えば正方形又は長方形等で棒状に成形した磁束漏洩防止材73を右側加熱コイル6RCのコイル線と交差するように所定間隔で複数個設ければ良い。従ってこの実施の形態2では左側加熱コイルの中心点X1から放射状に複数個設けている。このような磁束漏洩防止材73により、加熱コイルから発生する磁力線をトッププレート21上の被加熱物Nに集中させることができる。
前記右側加熱コイル6RCと左側加熱コイル6LCは、独立して通電されるように複数部分に分けたものでもよい。例えば内側に渦巻き状に加熱コイルを巻き、その加熱コイルの外周側にはそれと同心円上でかつ略同一平面上に別の大径の渦巻き状に加熱コイルを置き、内側の加熱コイル通電、外側の加熱コイル通電、及び内側と外側の加熱コイル共に通電、という3つの通電パターンで被加熱物Nを加熱するようにしても良い。
このように2個の加熱コイルに流す高周波電力の出力レベル、デューティ比、出力時間間隔の少なくとも一つ又はこれらを組み合わせることにより、小型から大形(大径寸法)の被加熱物(鍋)Nまで効率良く加熱するようにしても良い(このような独立通電できる複数の加熱コイルを使用した技術文献として代表的なものとしては、特許第2978069号公報が知られている)。
温度検出素子31Rは、右側加熱コイル6RCの中央部に設けた空間内部に設置された赤外線式の温度検出素子であり、上端部にある赤外線受光部をトッププレート5の下面に向けている(図26参照)。
また、左側加熱コイル6LCにも同様に、その中央部に設けた空間内部には赤外線式の温度検出素子31Lが設置されている(図19、図27参照)が、あとで詳しく説明する。
赤外線式の温度検出素子31R、31L(以下、赤外線センサーという)は、鍋等の被加熱物Nから放射される赤外線の量を検知して温度を測定できるフォトダイオード等から構成されている。なお、前記温度検出素子31R(温度検出素子31Lも同様であるため、以下では双方に共通な場合には、温度検出素子31Rのみを代表させて説明する)は伝熱式の検知素子、例えばサーミスタ式温度センサーでも良い。
このように被加熱物からその温度に応じて発せられる赤外線を、赤外線センサーによってトッププレート5の下方から迅速に検出することは例えば特開2004−953144号公報(特許第3975865号公報)、特開2006−310115号公報や特開2007−18787号公報等により知られている。
温度検出素子31Rが赤外線センサーである場合は、被加熱物Nから放射された赤外線を集約させ、かつリアルタイムで(時間差が殆んどなく)受信してその赤外線量から温度を検知できることで(サーミスタ式よりも)優れている。この温度センサーは、被加熱物Nの手前にある耐熱ガラスやセラミックス製等のトッププレート21の温度と被加熱物Nとの温度が同じでなくても、またトッププレート21の温度に拘わらず、被加熱物Nの温度を検出できる。すなわち、被加熱物Nから放射される赤外線がトッププレート21に吸収されたり遮断されたりしないように工夫しているためである。
例えばトッププレート21は4.0μm又は2.5μm以下の波長域の赤外線を透過させる素材が選択されており、一方、温度センサー31Rは4.0μm又は2.5μm以下の波長域の赤外線を検出するものが選択されている。
一方、温度検出素子31Rが、サーミスタ等の伝熱式のものである場合には、前記した赤外線式温度センサーと比較すると急激な温度変化をリアルタイムで捕捉することでは劣るが、トッププレート21や被加熱物Nからの輻射熱を受け、被加熱物Nの底部やその直下にあるトッププレート21の温度を確実に検出できる。また被加熱物Nが無い場合でもトッププレート21の温度を検出できるものである。
なお、温度検出素子がサーミスタ等の伝熱式の場合には、その温度感知部をトッププレート21の下面に直接接触させ、あるいは伝熱性樹脂等のような部材を介在させて、トッププレート21自身の温度を出来るだけ正確に把握させるようにしても良い。温度感知部とトッププレート21の下面との間に空隙があると、温度の伝達に遅れが生ずるからである。
以下の説明において、左右に共通に配置された部材について共有する内容については、名称における「左、右」および符号における「L、R」の記載を省略する場合がある。
(冷却室)
右側の上下仕切り板24Rは、鉛直に設置されており(図12、図14参照)、筐体部Cの内部で右側冷却室8Rとグリル加熱室9間を隔絶している仕切り壁の役割を果たしている。左側の上下仕切り板24Lは、同じく鉛直に設置されており(図12参照)、筐体部Cの内部で左側冷却室8Lとグリル加熱室9間を隔絶している仕切り壁の役割を果たしている。なお、上下仕切り板24R、24Lは、本体ケース2左右側壁面との間に前記した間隔W20を保つように設置されている。
水平仕切り板25(図12、図15参照)は、左右の上下仕切り板24L、24Rの間全体を上下2つの空間に区画する大きさを有しており、この仕切り板25の上方が前記上部部品室10である。またこの水平仕切り板25はグリル加熱室9の天井面と数mmから10mm程度の所定の空隙116(図16参照)を持って設置されている。
切欠き部24Aは左右の上下仕切り板24L、24Rにそれぞれ形成され、後述する冷却ダクト42を水平に設置する際にそれと衝突しないように設けている(図12参照)。
矩形箱状に形成されたグリル加熱室9は、ステンレスや鋼板等の金属板により左右、上下及び背面側の壁面が形成され、上部天井付近および底部付近には輻射式の電気ヒーター、例えばシーズヒーターによる上下1対の輻射式電気加熱源22、23(図16参照)が略水平に広がるように設置されている。ここで「広がる」とは、シーズヒーターの途中が水平面において複数回屈曲して、できるだけ平面的に広い範囲の面積を占めるように蛇行している状態をいい、平面形状がW字形になっているものが代表的な例である。
この上下二つの輻射式電気加熱源22、23を同時又は個別に通電してロースト調理(例えば焼き魚)、グリル調理(例えばピザやグラタン)やグリル加熱室9内の雰囲気温度を設定して調理するオーブン調理(例えば、ケーキや焼き野菜)が行えるようになっている。例えば、グリル加熱室9の上部天井付近の輻射式電気加熱源22は最大消費電力(最大火力)1200W、底部付近の輻射式電気加熱源23は最大消費電力800Wのものが使用されている。
空隙26(図16参照)は、水平仕切り板25とグリル加熱室9の外枠9Dとの間に形成された間隙で(前記した空隙116と同じものである)、これは最終的に後部排気室12と連通しており、空隙26内の空気が後部排気室12を通じて本体部Aの外に誘引されて排出されるようになっている。
図12において、後部仕切り板28は上部部品室10と後部排気室12とを仕切るものであり、下端部は前記水平仕切り板25に、また上端部は上枠20に達する高さ寸法を有している。排気口28Aは後部仕切り板28に2箇所形成されており、上部部品室10に入った冷却風を排気するためのものである。
(冷却用送風機)
この実施の形態でいう送風機30は、遠心型多翼式送風機(代表的なものとしてシロッコファンがある)を使用しており(図14、図15参照)、駆動モータ300の回転軸32の先端に翼部30Fを固定したものを用いている。また送風機30は、前記右側冷却室8Rと左側冷却室8Lのそれぞれに設置され、左右の左IH加熱コイル6LC、6RC用の回路基板とそれら加熱コイル自体を冷却するようになっており、詳しくは以下で説明する。
冷却ユニットCUは、図14、図15に示す通り、前記冷却室8R、8Lに上方から挿入されて固定され、インバーター回路を構成する回路基板41を収容した部品ケース34と、この部品ケース34に結合され内部に送風機30の送風室39を形成しているファンケース37とを備えている。
前記送風機30は、その駆動用モータ300の回転軸32が水平になっている、いわゆる横軸型であり、右側冷却室8Rの中に設置されたファンケース37の内部に収容されている。その送風機30の多数の翼30Fを囲むようにファンケース37内部には円形の送風空間が形成され送風室39が形成されている。ファンケース37の吸い込み筒37Aの最上位には吸い込み口37Bが形成されている。排気口(出口)37Cはファンケース37の一端部に形成されている。
ファンケース37は、2つのプラスチック製ケース37D、37Eを組み合わせてネジ等の固定具で結合されることで一体構造物として形成されている。この結合状態で冷却空間8R、8Lにその上方から挿入され、適当な固定手段で移動しないように固定される。
前記部品ケース34は、前記ファンケース37の空気吐き出し用の排気口37Cから排出される冷却風が導入されるように、前記ファンケース37に密着状態に接続されており、全体が横長長方形形状を有しているとともに、排気口37Cに連通する導入口(図示せず)、後述する第1の排気口34A及び第2の排気口34Bの3箇所の部分だけを除いた他の部分全体が密閉されている。
プリント配線基板(以下、回路基板という)41は、前記右側誘導加熱源6R、左側誘導加熱源6L、中央誘導加熱源6Mのそれぞれに対し、所定の高周波電力を供給するインバーター回路(210R、210L、210M)が実装されたものであり、部品ケース34の内部空間形状にほぼ匹敵する外形寸法を有し、部品ケース34の中においてグリル加熱室9から遠い側、逆にいうと本体部Aの外郭を構成する本体ケース2に、わずか数mm以下の近くまで接近して設置されている。なお、この回路基板41には、インバーター回路の部分と離して前記送風機30の駆動モータ300駆動用の電源及び制御回路部を一緒に実装している。
この回路基板41でいうインバーター回路210R、210L、210Mとは、図23に示した、商用電源の母線に入力側が接続された整流ブリッジ回路221を除き(含めても良いが)、その直流側出力端子に接続されたコイル222及び平滑化コンデンサー223からなる直流回路と、共振コンデンサー224と、スイッチング手段となる電力制御用半導体であるIGBT225と、駆動回路228と、フライホイールダイオード226とを具備した回路をいい、機械的構造物である加熱コイル6RC、6LC、6MCは含んではいない。
前記部品ケース34の上面部には、送風機30からの冷却風の流れる方向に沿って前記第1の排気口34Aと第2の排気口34Bを2個、離して形成している。第2の排気口34Bは、部品ケース34において冷却風の流れの最も下流側位置にあり、また第1の排気口34Aよりも数倍大きな開口面積を有している。なお、図15においてY1〜Y5は送風機30により吸い込まれる空気と排出される空気の流れを示すものであり、Y1、Y2、・・Y5と順次冷却風は流れていく。
冷却ダクト42は全体がプラスチックで成型されたものであり、プラスチックの一体成形品である上ケース42Aと、同じくプラスチックの一体成形品である平板状の蓋(以下、「下ケース」という)42Bとを重ねてネジで固定することで、その両者の間の内部に後述する3つの通風空間42F、42G、42Hが形成される(図15参照)。
噴き出し孔42Cは上ケース42Aの上面の全体に亘りその壁面を貫通するよう多数形成されており、送風機30からの冷却風を噴き出すためのものであり、各噴き出し孔42Cの口径は同じにしてある。
仕切り壁42Dは、上ケース42Aの中に一体成型で直線又は曲線状に形成したリブ(凸条)形状であり、これにより部品ケース34の第1の排気口34Aに一端が連通した通風空間42Fが区画形成される(図15参照)。
仕切り壁42Eは、同様に上ケース42Aの中に一体に形成した平面形状がコ字状凸条形状であり、これにより部品ケース34の第2の排気口34Bに一端が連通した通風空間42Hが区画形成される。この通風空間42Hは仕切り壁42Eの一側部(図14では部品ケース34に近い側)に形成した連通口(穴)42J(図17参照)を介して最も広い通風空間42Gに連通している(図15参照)。
さらに通風空間42Hの一側部(図14では部品ケース34に近い側)は、前記部品ケース34の第2の排気口34Bの真上になるように冷却ダクト42が設置される。これにより部品ケース34から吐き出される冷却風は、冷却ダクト42の通風空間42Hに入り、ここから通風空間42Gに展開して各噴き出し孔42Cから噴出される。通風口42Kは上ケース42Aの通風空間42Hに対応して形成した四角形の通風口で、これは後述する液晶表示画面45R、45Lを冷却する風を出すものである。
図15において、43A、43Bはアルミ製の放熱フィンである。この放熱フィンは、前記右側誘導加熱源6R、左側誘導加熱源6L、中央誘導加熱源6M用のインバーター回路(図23で詳しく述べる)210R、210L、210Mが実装された回路基板41の中にあるIGBT225などの電力制御用半導体スイッチング素子やその他発熱性部品が取り付けられており、全体に亘り多数の薄いフィンが規則正しく並べて形成されている。
なお、図15に示す2つの放熱フィン43A、43Bは、本体ケース2内部の右側の冷却室8Rに設置された部品ケース34用のものである。つまり、右側誘導加熱源6R用のインバーター回路210Rと、中央誘導加熱源6M用のインバーター回路210M用のものである。左側誘導加熱源6L用のインバーター回路210Lは、本体ケース2内部の左側の冷却室8Lに設置された部品ケース34内部に配置され、その部品ケースには、前記放熱フィン43A、43Bと同様な放熱フィン(図示せず)が設置されている。
この放熱フィン43A、43B、図15に示すように部品ケース34の中で底部よりも天井部に近い側に設置され、下方は十分な空間を確保し、その空間内を冷却風Y4が流れるようになっている。つまり送風機30の特性上、吐き出し能力(吹出し能力)が吐き出し口(排気口37C)の全域に亘り均一ではなく、吐き出し能力の最高部分はその排気口37Cの上下中心点より下方にあるが、この位置の延長線上の位置とならないよう、前記放熱フィン43A、43Bの位置を上方へ設定している。また回路基板41の表面に実装された各種の小型電子部品や印刷配線パターン部分に向けて冷却風が吹きつけられることはない。
左側誘導加熱源6L用のインバーター回路210Lは、主加熱コイルMCを駆動する専用のインバーター回路MIVと、複数の副加熱コイルSCを個別に駆動する専用のインバーター回路SIV1〜SIV4から構成されている(図25参照)。
グリル加熱室9は、本体部Aの左右誘導加熱源6L、6Rの下方に内蔵されるとともに、本体Aの内側後壁面との間に所定の空間SX(図16参照)が形成されている。つまりグリル加熱室9は、後述する排気ダクト14を設置するため及び排気室12を形成するため、本体ケース2の胴部背面壁2Uとの間に10cm以上の前記空間SXが形成されている。
前記2つの独立した冷却ユニットCUは、前記冷却室8R、8Lに上方から挿入されて固定された状態では、図15に示すファンケース37の一部で横幅の大きな部分が前記空間SX(図16参照)に一部突出し、また回路基板41を収容した部品ケース34は、グリル加熱室9の左右側壁面と所定の空隙が形成される。なお、ここでいう空隙とは、グリル加熱室9の左右の外壁面と部品ケース34との間の空隙を意味しており、この実施の形態でいう左右の上下仕切り板24L、24Rと部品ケース34の外側表面との間の対向間隙をいうものではない。
このように冷却ユニットCUのファンケース37の部分は、グリル加熱室9があってもその空間SXに配置され、前方から投影した形で見た場合、冷却ユニットCUのファンケース37の部分がグリル加熱室9と一部重なる状態になっていることで、本体部Aの横幅寸法を増大させることを防止できている。
(操作手段E)
この実施の形態2における加熱調理器の操作手段Eは、前面操作部60と上面操作部61とからなっている(図11〜図13参照)。
(前面操作部)
本体ケース2の左右両側の前面にプラスチック製の前面操作枠62R、62Lが取り付けられており、この操作枠前面が前面操作部60となっている。この前面操作部60には、左側誘導加熱源6L、右側誘導加熱源6R、中央誘導加熱源6M及びグリル加熱室9の輻射式電気加熱源22、23の全ての電源を一斉に投入・遮断する主電源スイッチ63の操作ボタン63A(図12参照)と、右側誘導加熱源6Rの通電とその通電量(火力)を制御する右電源スイッチ(図示せず)の電気接点を開閉する右操作ダイアル64Rと、同じく左IH加熱源6Lの通電とその通電量(火力)を制御する左制御スイッチ(図示せず)の左操作ダイアル64Lと、がそれぞれ設けられている。主電源スイッチ63を経由して図23に示す全ての電気回路構成部品へ電源が供給される。
前面操作部60には、左操作ダイアル64Lによって左IH加熱源6Lに通電が行われている状態でのみ点灯する左表示灯66Lと、右操作ダイアル64Rによって右IH加熱源6Rに通電が行われている状態でのみ点灯する右表示灯66Rとが設けられている。
なお、左操作ダイアル64Lと右操作ダイアル64Rは、使用しない状態では、図11に示されるように、前面操作部60の前方表面から突出しないように内側へ押し込まれており、使用する場合には、使用者が指で一度押してから指を離すと、前面操作枠62に内蔵しているバネ(図示せず)の力によって突出し(図12参照)、使用者が周囲を掴んで回せる状態になるものである。そして、この段階で1段階右か左に回せば、初めて左側誘導加熱源6Lおよび右側誘導加熱源6Rにはそれぞれ(最小設定火力150Wでの)通電が開始される。
そこで、突出している左操作ダイアル64L、右操作ダイアル64Rの何れかをさらに同じ方向に回せば、その回動の量に応じて内蔵したロータリエンコーダー(図示せず)より発生する所定の電気的パルスを前記制御手段Fが読み取り、当該加熱源の通電量が決まり、火力設定が行えるようになっている。なお、左操作ダイアル64L、右操作ダイアル64Rの何れも、初期の状態であるか途中で左右に回した状態であるかに関係なく、使用者が指で一度押して前面操作部10の前方表面から突出しないような所定の位置に押し込む(押し戻すと、その位置で保持され、かつ左側誘導加熱源6L、右側誘導加熱源6Rの何れも通電を瞬時に停止できる(例えば、調理中であっても、右操作ダイアル64Rを押し込めば、右側誘導加熱源6Rは直ちに通電停止される)。
なお、前記主電源スイッチ63(図11参照)の操作ボタン63Aを開成操作すれば、それ以後、右操作ダイアル64Rおよび左操作ダイアル64Lの操作は一斉に無効となる。同様に中央誘導加熱源6Mとグリル加熱室9に設置された輻射式電気加熱源22、23の通電も全て遮断される。
また、前面操作枠62の前面下部には、図示していないが3つの独立したタイマーダイアルが設けられている。これらタイマーダイアルは、それぞれ左側誘導加熱源6L、右側誘導加熱源6R、中央誘導加熱源6Mを通電開始から所望の時間(タイマーセット時間)だけ通電し、その設定時間を経過した後は自動的に電源を切るタイマースイッチ(タイマーカウンターともいう。図示せず)を操作するためのものである。
(上面操作部)
上面操作部61は、図13に示すように右火力設定用操作部70、左火力設定用操作部71及び中央操作部72とからなっている。すなわちトッププレート21の上面前部において、本体部Aの左右中心線を挟んで、右側には右側誘導加熱源6Rの右火力設定用操作部70が、中央部には中央誘導加熱源6M及びグリル加熱室9に設置された輻射式電気加熱源22、23の中央操作部72が、左側には左側誘導加熱源6Lの左火力設定用操作部71が、それぞれ配置されている。なお、右火力設定用操作部70を「右操作部」、左火力設定用操作部71を「左操作部」、中央操作部72を「中央操作部」と呼ぶ場合もある。
この上面操作部には、ステンレス製又は鉄製の調理容器(図示せず)を使用する場合の各種キーが設けてあり、その中にはパン専用キー250が設けてある。なお特定の調理(例えばパン)の専用キーではなく、調理容器使用のための専用の共通キーを1個設け、それを押すたびに、後述する統合表示装置100の中に所望の調理名(例えばパン)が表示された操作可能なキー(後述する入力キー141〜145など)を表示させ、当該キーのエリアを使用者が指で触れてその所望の調理開始指令を入力するような形態にしても良い。なお、前記調理容器は、グリル加熱室9の内部にその前面開口9Aから挿入され、焼き網109の上に置かれても使用可能である。
さらに上面操作部61には、前記調理容器を誘導加熱源6R、6L、6Mと輻射式電気加熱源22、23の両方で使用して調理する場合(以下、「複合加熱調理」又は「複合調理」という)のための複合調理キー251が設けてある。この実施の形態1では右側誘導加熱源6Rとグリル加熱室9の輻射式電気加熱源22、23との複合加熱ができるようにしたものであり、前記複合調理キー251は、後述する右火力設定用操作部70寄りに設けてある(図13参照)。
なお前記複合調理キー251は、固定式のキーやボタン、摘み等ではなく、後述する統合表示手段100の表示画面(液晶画面など)の中に所望のキーを表示させ、当該キーのエリアを使用者が指で触れることで、複合調理の入力を可能にする形態であっても良い。つまり統合表示手段100の表示画面中にソフトウエアによって適時に入力可能なキー形状を表示し、それをタッチして入力操作する方法でも良い。
(右火力設定用操作部)
図13、図28において、右火力設定用操作部70には、使用者が1度押圧するだけで右側誘導加熱源6Rの火力を簡単に設定することができる各火力のワンタッチ設定用キー部90が設けられている。具体的には弱火力キー91、中火力キー92、および強火力キー93の3つのワンタッチキーを備えており、弱火力キー91は右側誘導加熱源6Rの火力を300Wに設定し、中火力キー92は750Wに設定し、強火力キー93は2500Wに設定する。さらに、右ワンタッチキー部の右端部に最強火力キー94が設けられ、右側誘導加熱源6Rの火力を3000Wにしたい場合には、これを押圧操作する。
(左火力設定用操作部)
同様に左側誘導加熱源6Lの火力設定のための左火力設定用操作部71にも右火力設定用操作部70と同様なワンタッチキー群が設置されている。
(中央操作部)
図13及び図28において、中央操作部72には、グリル(ロースト)調理およびオーブン調理に用いられるグリル加熱室9の輻射式電気加熱源22、23の通電を開始する操作スイッチの操作ボタン95と、その通電を停止する操作スイッチの操作ボタン96が並べて設けられている。
中央操作部72には、輻射式電気加熱源22、23によるグリル調理や中央誘導加熱源6Mによる電磁調理における制御温度を、1度ずつ加算的又は減算的に設定する温度調節スイッチの操作ボタン97A、97Bが横一列に設けられている。また、中央誘導加熱源6M7の電源入り・切りスイッチボタン98及び火力を1段階ずつ加算的又は減算的に設定する設定スイッチ99A、99Bもここに設けてある。
さらに図28に示すように、中央操作部72には便利メニューキー130が設けられている。それを操作すると揚げ物調理(左側誘導加熱源6Lか右側加熱源6Rを使用)、揚げ物予熱状態表示(左側誘導加熱源6Lか右側加熱源6Rを使用し、油を所定の予熱温度まで加熱)、タイマー調理(左側誘導加熱源6L、右側加熱源6R、中央誘導加熱源6M又はグリル加熱室9の内部に設けた輻射式電気加熱源22、23を、タイマースイッチにて設定した時間中だけ通電して調理)を設定する際に押圧すれば、後述する統合表示手段100に所望の入力画面や状態表示画面を簡単に読み出せる。
パン専用キー250の右側には、ハードボタンからなる右IH便利メニューボタン131Rが設けられており、これは右側誘導加熱源6Rについての各種の設定をするための設定ボタンである。同様な設定ボタンは左側誘導加熱源6Lについても設けられている(図示省略)。
左側又は右側の導加熱源6R、6Lを使用すべく、前記したタイマーカウンター(図示せず)を操作・スタートさせるスタートスイッチを操作すると、前記した液晶表示画面45R、45Lに、そのスタート時点からの経過時間が計測されて数字で表示される。なお、液晶表示画面45R、45Lの表示光はトッププレート21を透過し、経過時間が「分」と「秒」単位で明瞭に使用者に表示される。
左側の左火力設定用操作部71にも、右火力設定用操作部70と同様に、左タイマースイッチ(図示せず)と、左液晶表示部45Lが設けられ、これらは本体1の左右中心線CL1を挟んで左右対象的位置に設けられている。
(火力表示ランプ)
トッププレート21の右前側で、右側誘導加熱源6Rと右火力設定用操作部70との間の位置に、右側誘導加熱源6Rの火力の大きさを表示する右火力表示ランプ101Rが設けられている。右火力表示ランプ101Rはトッププレート21を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つようにトッププレート21の下面近傍に設けられている。
同様に、左側誘導加熱源6Lの火力の大きさを表示する左火力表示ランプ101Lが、トッププレート21の左前側で、左側誘導加熱源6Lと左火力設定用操作部71との間の位置に設けられ、トッププレート21を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つようにトッププレート21の下面近傍に設けられている。なお、これら表示ランプ101R、101Lは図23の回路構成図には表示を省略している。
(表示手段G)
この実施の形態における加熱調理器の表示手段Gは、統合表示手段100からなっている。
図12、図13、図18及び図28に示すように、統合表示手段100が、トッププレート21の左右方向の中央部で、前後方向の前側に設けられている。この統合表示手段100は液晶表示パネルを主体に構成され、トッププレート21を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つようにトッププレート21の下面近傍に設けられている。
統合表示手段100は、左側誘導加熱源6L、右側誘導加熱源6R、中央誘導加熱源6M及びグリル加熱室9の輻射式電気加熱源22、23等の通電状態(火力や時間等)を入力したり、確認したりすることができるものである。すなわち、
(1)左右誘導加熱源6L、6Rの機能(調理動作中であるかどうか等)
(2)中央誘導加熱源6Mの機能(調理動作中であるかどうか等)
(3)グリル加熱室9での調理の場合には、その加熱調理を行う場合の操作手順や機能( 例えば、現在ロースター、グリル、オーブンの調理の何れが行われているかどうか)の3つの場面に対応して、動作状況や火力等の加熱条件が、文字やイラスト、グラフなどによって明瞭に表示されるものである。
この統合表示手段100で使用されている液晶画面は、周知のドットマトリックス型液晶画面である。また高精細(320×240ピクセルの解像度を備えているQVGAや640×480ドット、16色の表示が可能なVGA相当)の画面を実現でき、文字を表示する場合でも多数の文字を表示することができる。液晶画面は1層だけではなく、表示情報を増やすために上下2層以上で表示するものを使用しても良い。液晶画面の表示領域の大きさは縦(前後方向)約4cm、横約10cmとなっている長方形である。
また情報を表示する画面区域を加熱源毎に複数個に分割している(図28参照)。例えば画面を合計10個のエリアに割り当ててあり、次のように定義されている。
(1)左側誘導加熱源6Lの対応エリア100L(火力用100L1と時間及び調理メニュー用100L2の計2個)。
(2)中央誘導加熱源6Mの対応エリア100M(火力用100M1と時間用100M2の計2個)。
(3)右側誘導加熱源6Rの対応エリア100R(火力用100R1と時間用100R2の計2個)。
(4)グリル加熱室9の調理用エリア100G。
(5)各種調理における参考情報を随時又は使用者の操作で表示するとともに、異常運転検知時又は不適正操作使用時に使用者に報知するガイドエリア(100GD)。
(6)各種調理条件等を直接入力可能な機能を有する、互いに独立した6つの入力キー141、142、143、144、145、146を表示するキー表示エリア100Fと、
(7)一つの任意表示エリア100Nと、
をそれぞれ備えている。
図28と図29に示したように、左側誘導加熱源6Lの対応エリア100L、具体的には時間及び調理メニュー用100L2には、調理メニュー選択用として、高速加熱用の選択キーE1A、湯沸し用選択キーE1B、茹で選択キーE1C、予熱用選択キーE2A、炊飯選択キーE2B、揚げ物選択キーE3A、湯沸し+保温の選択キーE3Bの7つのキーがある場面で一斉に(一覧状態に)表示される。図29がその状態を示す図である。
図31は高速加熱を選択した場合を示すものである。前記選択キーE1Aはそのまま表示が残り、他の選択キーは全て消えることで、E1Aの意味する「高速加熱」という調理メニューが選択され、現在加熱動作実行中であることを表示する。
被加熱物Nの底部直径が通常鍋程度であって、主加熱コイルMCの上方にはその被加熱物があり、しかも4つの副加熱コイルSC1〜SC4の上にも跨るような大きさではないと被加熱物載置判断部280で判断された場合、調理メニュー選択用の7つのキーE1A、E1B、E1C、E2A、E2B、E3A、キーE3Bは表示されない。つまり副加熱コイルSC1〜SC4の何れの上にも跨るような大きな被加熱物Nの場合に初めて調理メニュー選択用の7つのキーE1A、E1B、E1C、E2A、E2B、E3A、キーE3Bを選択できる。
任意表示エリアのキー100Nを押せば、調理に役立つ詳しい情報などを文字で統合表示手段100のガイドエリア100GDに表示させることができるものである。
また前記表示エリアの背景色は、通常では全体が統一された色彩(例えば白)で表示されるようになっているが、表示エリア100Rと100Gは、前記した「複合調理」の場合は、同じ色でしかも他の加熱源の表示エリア100L、100Mとは異なる色(例えば黄色や青色など)に変化するようになっている。このような色変化は表示画面が液晶の場合は、そのバックライトの動作切り替えで可能になるが、詳細な説明は省略する。
上記の合計10個の各エリア(表示領域)は、統合表示手段100の液晶画面の上に実現されたものではあるが、画面自体に物理的に個別に形成され、又は区画されているものではない。すなわち、画面表示のソフトウエア(マイコンのプログラム)により確立されたものであるので、そのソフトウエアによりその都度面積や形、位置を変えることは可能であるが、使用者の使い勝手を考え、左側誘導加熱源6L、中央誘導加熱源6M、右側誘導加熱源6Rなど各加熱源の左右の並び順序に合わせて常に同じ並び順序にしている。
つまり、画面上では左側に左側誘導加熱源6L、真中に中央誘導加熱源7、右側に右側誘導加熱源6Rについての情報が表示される。またグリル加熱室9の調理用表示エリア100Gは、必ず上記対応エリア100L、100M、100Rよりも手前側に表示される。さらに入力キーの表示エリア100Fがいかなる場面でも必ず最も手前に表示される。
また前記入力キー141〜146は、使用者が指などを触れることで静電容量が変化する接触式キーを採用しており、使用者がキー表面に対応した位置の、統合表示手段100の上面を覆うガラス板の上面に軽く触れることで通電制御回路200に対する有効な入力信号が発生するものである。
前記入力キー141〜146の部分(区域)を構成する前記ガラス板上には、キーの入力機能を示す文字や図形、記号(図28のキー143、145の矢印を含む)を印刷や刻印等で何ら表示していないが、これらキーの下方の液晶画面(キー表示エリアF)には、それら入力キーの操作場面毎にキーの入力機能を示す文字や図形、記号を表示する構成になっている。
全ての入力キー141〜146が常に同時に表示されている訳ではない。操作しても無効なキー(操作する必要が無い入力キー)については、図28の入力キー144のように、入力機能文字や図形を液晶画面上で表示しないようにして、非アクティブ状態にしている。アクティブ状態の入力キー141〜146が操作されれば、通電制御回路200の動作を定める制御プログラムに対し、有効な操作指令信号になることになる。
また入力キー146は、調理条件を決定したい場合及び調理をスタートしたい場合に操作されるためのキーである。これを一度操作して調理動作がスタートすると、「停止」という表示の入力キーに変更される(図28、図29参照)。その他の入力キー141〜145も、その都度入力命令が変化することがあり、有効な入力機能はその都度表示される文字や図形、記号などで用意に識別できる。
なお、複数の加熱源を使用中に特定の加熱源を停止したい場合は、例えば図28の場面において入力キー143を押すと、中央誘導加熱源6Mの対応エリア100Mから、左側誘導加熱源6Lの対応エリア100L、右側誘導加熱源6Rの対応エリア100Rの順に、各対応エリア全体が色変化又は点滅して選択されていることを表示するので、その所望の対応エリアを呼び出して(選択して)おいて停止キー146を押せば良い。逆に入力キー145を押すと、逆方向回りで選択でき、中央誘導加熱源7の対応エリア100Mから、対応エリア100R、対応エリア100Lへと順次選択でき、その所望の対応エリアを呼び出しておいて停止キー146を押せば良い。
AMは加熱調理動作を実行中の加熱源の名称の横に表示されるアクティブマークで、これが表示されている場合、その加熱源がその時点で駆動されていることを意味し、このアクティブマークの表示の有無で使用者は加熱源の動作を認識できる。
(グリル加熱室9)
グリル加熱室9の前面開口9Aは、図11と図16に示すように、ドア13によって開閉自在に覆われ、ドア13は使用者の操作によって前後方向に移動自在になるよう前記グリル加熱室9にレール、コロ等の支持機構(図示せず)によって保持されている。また、ドア13の中央開口部13Aには耐熱ガラス製の窓板が設置され、グリル加熱室9の内部が外側から視認できるようになっている。13Bはドア13を開閉操作するために前方に突出した取っ手である。なお、グリル加熱室9は、前述したように本体の内側後壁面との間に所定の空間SX(図16参照)が形成され、この空間を利用して後述する排気ダクト14が設置され、また排気室12が形成されている。
ドア13には加熱室9の左右両側位置で前後に延びる金属製レールの前端部が連結されており、油の多い調理をする場合は通常そのレールの上に、金属製の受皿108(図16参照)を載せる。受皿108の上には金属製の焼き網109が置かれて使用される。これによりドアを前方に水平に引き出した場合、その引出し動作に伴って受皿108(焼網109が載っている場合はその焼網)も一緒にグリル加熱室9の前方へ水平に引き出される。なお、受皿108は、金属製レールの上に左右両端部を単に載せることで支持させているだけであるため、受皿108をレールの上から単独で取り外すことが出来るようになっている。
また焼網109の形状と受皿108の位置、形状等は、受皿108を前方に引き出す際に下部のヒーター23に当たって引き出せないことがないように工夫してある。このようにこのグリル加熱室9では、焼網109の上に肉や魚、その他食品を載せて輻射式電気加熱源22、23を(同時又は時分割等で)通電すれば、それら食品を上下両面から加熱する「両面焼き機能」を有するものである。またこのグリル加熱室9には、この室内温度を検出する庫内温度センサー242(図23参照)が設けられており、庫内温度を所望の温度に維持させて調理をすることも可能になっている。
グリル加熱室9は、図16に示すように、後方(背面)側全体に開口9Bを有し、前方側に開口9Aを有した筒状の金属製内枠9Cと、この内枠の外側全体を所定の(下方)間隙113、(上方)間隙114および左右両側方間隙(115。図示せず)を保って覆う外枠9Dとから構成されている。なお、図16において、307はグリル加熱室9の外枠9Dと本体ケース2の底壁面との間に形成された空隙である。
外枠9Dは、左右両側壁面、上面、底面及び背面の5つの面を有し、全体が鋼板などで形成されている。これら内枠9Cと外枠9Dの内側表面は、ホーロー等の清掃性の良い被覆を形成するか又は耐熱塗装膜を塗ったり、あるいは赤外線放射皮膜を形成したりしている。赤外線放射皮膜を形成した場合、食品などの被加熱物Nに対する赤外線放射量を増大させ、加熱効率を高め、また焼きむらの改善にもなる。9Eは外枠9Dの背壁面上部に形成した排気口である。
金属製排気ダクト14はその排気口9Eの外側に連続するように設置したものであり、この金属製排気ダクト14の流路断面は正方形又は長方形であり、図16に示すように途中から下流側に行くに従って斜め上方に傾斜し、その後垂直方向に曲がり、最終的には上端部開口14Aが上枠20に形成した中央通風口20C近傍まで連通している。
121は排気ダクト14の内部で、排気口9Eの下流側位置に設置された脱臭用触媒で、触媒用電気ヒーター(121H)により加熱されることで活性化し、排気ダクト14を通るグリル加熱室9内部の熱い排気から臭気成分を除去する働きをする。
(排気構造・吸気構造)
前記した通り、上枠20の後部には横に長く右通風口(吸気口になる)20B、中央通風口(排気口になる)20C、左通風口20Dがそれぞれ形成されている。これら3つの後部通風口の上には、上方全体を覆うように全体に亘り無数の小さな連通孔が形成された金属製平板状のカバー132(図11参照)が着脱自在に載せられている。カバー132は金属板に連通孔用の小孔をプレス加工で形成したもの(パンチングメタルとも言う)の他に、金網や細かい格子状のものでも良い。何れにしても上方から使用者の指や異物等が各通風口20B、20C、20Dに入らないようなものであれば良い。
前記ファンケース37の吸い込み筒37A最上位にある吸い込み口37Bは、前記カバー132の右端部の直下に臨んでおり、カバー132の連通孔を通して台所などの外部の室内空気を本体部Aの中の左右冷却室8R、8Lに導入できるようになっている。
前記後部排気室12の中には図12に示すように、前記排気ダクト14の上端部が位置した状態である。言い換えると排気ダクト14の左右両側には、前記グリル加熱室9の周囲に形成されている空隙116(図16参照)と連通している後部排気室12が確保されている。グリル加熱室9は、前記した水平仕切り板25との間に所定の空隙116を持って設置されているが(図16参照)、この空隙116は最終的には後部排気室12に連通している。前記したように後部仕切り板28に形成した1対の排気口28Aを通じて上部部品室10の内部は後部排気室12と連通しているから、上部部品室10の中を流れる冷却風(図15の矢印Y5)が本体1の外部へ図12の矢印Y9のように排出されるが、この際、これに誘引されて前記空隙116内部の空気も一緒に排出される。
(補助冷却構造)
図14、図15において、前部部品ケース46は前記上面操作部61の各種電気・電子部品57や誘導加熱調理時の火力を光で表示する発光素子(LED)などを取り付けて固定した取付基板56を内部に収容するものであり、上面が開放した透明プラスチック製の下ダクト46Aと、この下ダクト46Aの上面開口を塞ぐように密閉する蓋となる透明プラスチック製の上ダクト46Bとから構成されている。下ダクト46Aの右端部と左端部にはそれぞれ通風口46R、46Lが開口しており、また中央の後部には通風を許容する切欠き46Cが形成されている。
上ダクト46Bの天井面には、中央に前記統合表示手段100が、また左右には液晶表示画面45R、45Lがそれぞれ設置されている(図15参照)。前記送風機30の冷却風は、前記部品ケース34の第2の排気口34Bから冷却ダクト42の通風空間42Hに入り、ここから通風空間42Hに対応して形成した通風口42Kを通して液晶表示画面45R、45Lの下方から前部部品ケース46に入り、切欠き46Cから上部部品室10に排出されるものである。これにより液晶表示画面45R、45L、統合表示手段100はそれぞれ常に送風機30からの冷却風で冷却される。
特にこの部品ケース34の第2の排気口34Bからの冷却風は、誘導加熱動作時に高温になる左右IH加熱コイル6LC、6RCを冷却した風でないから、その温度は低く、液晶表示画面45R、45L及び統合表示手段100ともに、冷却風の風量が少ないながらも効果的に温度上昇が抑制される。特に、冷却風の流れ(図15の矢印Y5)で下流側になる左右IH加熱コイル6LC、6RCの後部位置が冷えにくいため、この実施の形態では、通風空間42Fに第1の排気口34Aからの低温の風が直接供給されて、この風で当該部分を冷やすようにしている。
(補助排気構造)
図16に示すように、排気ダクト14の脱臭用触媒121より下流側に、一段階下方へ凹ませた形状の筒状底部14Bが形成されている。通気孔14Cはこの筒状底部14Bに形成されている。送風機106はこの通気孔14Cに臨ませた補助排気用の軸流形送風機で、106Aはその回転翼、106Bはその回転翼106Aを回転させる駆動モータであり、排気ダクト14に支持されている。グリル加熱室9で調理中、そのグリル加熱室9は高温になるから自然と内部気圧が上昇し、それに伴って高温の雰囲気が排出され、排気ダクト14を上昇してくるが、その送風機106を運転して矢印Y7で示すように本体部Aの内部の空気を排気ダクト14に取り入れることにより、その新鮮な空気にグリル加熱室9の高温空気は誘引され、温度が下がりながら排気ダクト14の上端部開口14Aから矢印Y8で示すように排気される。
補助排気用の軸流形送風機106は、調理器の運転中に常に運転されている訳ではなく、運転されるのはグリル加熱室9で加熱調理が行われる場合である。この場合にはグリル加熱室9から排気ダクト14に高温の熱気が排出されるからである。また、この図16におけるY7、Y8の空気の流れと、図15におけるY1〜Y5の空気の流れとは全く関連しておらず、また連続した流れでもない。
(制御手段F)
この実施の形態における加熱調理器の制御手段(制御部)Fは、通電制御回路200を主体に構成されている。
図23は加熱調理器の制御回路全体を示す構成要素図であり、該制御回路は、1つ又は複数のマイクロコンピュータを内蔵して構成されている通電制御回路200によって形成されている。通電制御回路200は、入力部201と、出力部202と、記憶部203と、演算制御部(CPU)204と、の4つの部分から構成され、定電圧回路(図示せず)を介して直流電源が供給されて、全ての加熱源と表示手段Gを制御する中心的な制御手段の役目を果たすものである。図23において、100V又は200V電圧の商用電源に対し、整流回路(整流ブリッジ回路ともいう)221を介して右IH加熱源6R用のインバーター回路210Rが接続されている。
同様に、この右側誘導加熱源6R用のインバーター回路210Rと並列に、図23に示した右側加熱コイル6RC(誘導加熱コイル)の基本構成と同様な左側誘導加熱源6L用のインバーター回路210Lが、前記整流ブリッジ回路221を介して前記商用電源に接続されている。つまり、左側加熱コイル6LCは、商用電源の母線に入力側が接続された整流ブリッジ回路221と、この直流側出力端子に接続されたコイル222及び平滑化コンデンサー223からなる直流回路と、コイル222と平滑化コンデンサー223の接続点に1端が接続された右側の加熱コイル6RC及び共振コンデンサー224の並列回路からなる共振回路と、この共振回路の他端にコレクタ側が接続されたスイッチング手段となるIGBT225とを備えている。
左側誘導加熱源6L用のインバーター回路210Lが右側誘導加熱源6R用のインバーター回路210Rと大きく異なるところは、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCを有するところである。このため、左側誘導加熱源6L用のインバーター回路210Lは、内側コイルLC2と外側コイルLC1の両者、すなわち主加熱コイルMCに対して電力を供給する主加熱コイル用のインバーター回路MIVと、後述する4つの独立した副加熱コイルSC1〜SC4に対してそれぞれ個別に電力を供給する副加熱コイル用のインバーター回路SIV1〜SIV4とから構成されている。そして4つの副加熱コイルSC1〜SC4の通電タイミングや通電量は全て通電制御回路200によって決定されるようになっている。
主加熱コイル用のインバーター回路MIVは、可変周波数出力制御方式を採用しているため、その周波数を変化させることでインバーター電力、すなわち得られる火力を可変とすることができる。インバーター回路MIVの駆動周波数を高く設定していくと、インバーター電力は低下していき、スイッチング手段(IGBT)225や共振コンデンサー224等の回路構成電気・電子素子の損失が増加し、発熱量も多くなって好ましくないので、所定の上限周波数を決め、それ以下で変化させるように制御している。上限周波数で連続的に制御できるときの電力が最低電力となるが、これ未満の電力を投入する場合は通電を断続的に行う、通電率制御を併用して最終的な小火力を得ることができる。副加熱コイル用のインバーター回路SIV1〜SIV4も同様にして火力制御できる。
またインバーター回路MIVの駆動に用いる駆動周波数は、副加熱コイル用のインバーター回路SIV1〜SIV4の駆動周波数と基本的に同じにしている。変える場合は、両者の駆動周波数の差が可聴周波数域とならないよう、駆動周波数の差が15〜20kHzの範囲から外れるように通電制御回路200が制御する。これは2つ以上の誘導加熱コイルを同時に駆動した場合、その周波数の差によってビート音又は干渉音と呼ばれるような、不快な音の原因になるからである。
なお、主インバーター回路MIVと、副加熱コイル用のインバーター回路SIV1〜SIV4とは、常に同時に駆動する必要はなく、例えば、通電制御回路200が指令する火力によっては、短い時間間隔で交互に加熱動作を行うように切り替えても良い。ここで「同時」とは、通電開始のタイミングと通電休止のタイミングが全く同時である場合をいう。
212はグリル加熱室9の庫内加熱用輻射式電気加熱源22を駆動するヒーター駆動回路、213は同じくグリル加熱室9の庫内加熱用輻射式電気加熱源23を駆動するヒーター駆動回路、214は前記排気ダクト14の途中に設けた触媒ヒーター121Hを駆動するヒーター駆動回路、215は統合表示手段100の液晶画面を駆動する駆動回路である。
前記IGBT225のエミッタは、平滑化コンデンサー223と整流ブリッジ回路221の共通接続点に接続されている。フライホイールダイオード226のアノードがエミッタ側になるようIGBT225のエミッタとコレクタ間に接続されている。
電流検出センサー227は右側加熱コイル6RCと共振コンデンサー224Rの並列回路からなる共振回路に流れる電流を検出する。電流検出センサー227の検出出力は後述する被加熱物載置判断部280に入力され、これを介して通電制御回路200の入力部に被加熱物Nがあるかどうかという判定情報が供給され、被加熱物Nの存在判定が行われる。また誘導加熱に不適当な鍋(被加熱物N)などが用いられた場合や、何らかの事故などによって正規の電流値に比較して所定値以上の差の過少電流や過大電流が検出された場合は、通電制御回路200により駆動回路228を介してIGBT225が制御され、瞬時に誘導加熱コイル220の通電を停止するようになっている。
同様に主加熱コイル用のインバーター回路MIVと、4つの独立した副加熱コイルSC1〜SC4に対してそれぞれ個別に電力を供給する副加熱コイル用のインバーター回路SIV1〜SIV4は、右側誘導加熱源6Rのインバーター回路210Rと同等の回路構成であるので説明は省略するが、それらの共通的な回路構成を纏めて図23では左側誘導加熱源6Lのインバーター回路210Lとして示している。
図23において、6LCは左側加熱コイル、224Lは共振コンデンサーである。主加熱コイルMCのインバーター回路MIVでも、前記した整流ブリッジ回路221、コイル222と平滑化コンデンサー223とからなる直流回路、コイル222と平滑化コンデンサー223の接続点に1端が接続された主加熱コイルMC及び共振コンデンサー224の並列回路からなる共振回路と、この共振回路の他端にコレクタ側が接続されたスイッチング手段となるIGBT225などが接続されている。
電流検出センサー227は、図示していないが、左側誘導加熱源6Lと中央誘導加熱源6Mのインバーター回路210L、210Mにも同様に設けられている。なお電流検出センサー227としては抵抗器を用いて電流を計測する分流器や、カレントトランスを用いて構成する方法がある。
駆動回路260は前記主加熱コイル用インバーター回路MIVを駆動するものであり、前記駆動回路228と同様な役目を果たす。同じく駆動回路261〜264は、前記副加熱コイル用インバーター回路SIV1〜SIV4をそれぞれ駆動するものである。
電流検出センサー266は前記主加熱コイルMCと共振コンデンサー(図示せず)の並列回路からなる共振回路に流れる電流を検出するものであり、同じく電流検出センサー267A、267B、267C(図示せず)、267D(図示せず)は副加熱コイルSCと共振コンデンサー(図示せず)の並列回路からなる共振回路に流れる電流を検出するものである。これらの電流センサー266、267A、267B、267C及び267Dは前記電流検出センサー227と同様な役割を果たす。なお上記のような共振回路側の電流センサーは出力側電流センサーと呼ばれるが、これに対し後述する直流電源部80の整流回路76より商用電源(交流電源)75側に、入力側電流センサーと呼ぶ電流センサーを設けており、これら入力側と出力側双方の電流センサーによって電流値を監視し、共振回路の動作や異常状態監視をしている。
本発明のような誘導加熱方式で被加熱物Nを加熱する加熱調理器においては、左右の誘導加熱源6L、6Rと中央誘導加熱源6Mに高周波電力を流すための電力制御回路は、いわゆる共振型インバーターと呼ばれている。被加熱物N(金属物)を含めた左右の加熱コイル6LC、6RC、6MCのインダクタンスと、共振コンデンサー(図23の224L、224R)を接続した回路に、スイッチング回路素子(IGBT、図23の225)を20〜40KHz程度の駆動周波数でオン・オフ制御する構成である。なお、中央誘導加熱源6MCのインバーター回路210Mは、右側誘導加熱源6Rのインバーター回路210Rと同様な構成である。すなわち、中央誘導加熱源6Mのインバーター回路210Mは、前記右側誘導加熱源6R用のインバーター回路210Rと並列に、前記整流ブリッジ回路221と同様な整流ブリッジ回路(図示せず)を介して前記商用電源に接続されている。
また共振型インバーターには、200V電源に適すると言われている電流共振型と、100V電源に適すると言われている電圧共振型とがある。このような共振型インバーター回路の構成には、左右の加熱コイル6LC、6RCと共振コンデンサー224L、224Rの接続先をリレー回路でどのように切り替えるかによって、いわゆるハーフ・ブリッジ回路とフル・ブリッジ回路と呼ばれる方式に分かれる。
共振型インバーター回路を使用して被加熱物を誘導加熱する場合、被加熱物Nが鉄や磁性ステンレス等の磁性材である場合は加熱に寄与する抵抗分(等価抵抗)が大きく、電力が投入しやすいから加熱しやすいが、被加熱物Nがアルミ等の被磁性材の場合は等価抵抗が小さくなるため被加熱物Nに誘起される渦電流がジュ-ル熱に変わりにくい。このため被加熱物Nの材質が磁性材であると判定されると自動的にインバーター回路構成をハーフ・ブリッジ方式に変え、また磁性体が使用された被加熱物Nの場合は、フル・ブリッジ方式に切り替えるという制御を行うことが知られている(例えば、特開平5−251172、特開平9−185986、特開2007−80751号公報)。本発明は特に明示しない限り、インバーター回路210R、210Lは、ハーフ・ブリッジ回路でもフル・ブリッジ回路で構成しても良い。
図23は説明を簡単にするために、ハーフ・ブリッジ共振型のインバーター回路を用いていたが、本発明を実際に実施するには図24、図25のようなフル・ブリッジ回路のものが望ましい。
図24、図25を参照して更に具体的に説明すると、加熱調理器は、電源部(電源回路)74を有する。電源部74は、直流電源部80と、主インバーター回路MIV、4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4を有する。なお、図24では主インバーター回路MIVと、副インバーター回路SIV1の2つしか記載していないが、接続点CP1、CP2を有したインバーター回路SIVと同様構成の、3つの副インバーター回路SIV2〜SIV4が、図25に示すように通電制御回路200に対してそれぞれ並列に接続されている。つまり副インバーター回路SIV1と同様に、他の3つの副インバーター回路SIV2、SIV3、SIV4の両端部になる接続点CP3,CP4、CP5,CP6、CP7が、それぞれ接続点CP1、CP2の回路に接続されている。なお、3つの副インバーター回路SIV2〜SIV4には、図24に示している駆動回路228,228Bと同様な機能を有する駆動回路を接続してある。駆動回路228A,228Bについては後で詳しく述べる。
以上の説明から明らかなように、4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4は、直流電源部80と通電制御回路200に対してそれぞれ並列に接続された構成になっている。
直流電源部80は、交流電源75に接続されている。交流電源75は、単相又は三相の商用交流電源である。交流電源75は、この交流電源75から出力される交流電流を全波整流する整流回路76に接続されている。整流回路76は、この整流回路で全波整流された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサー86に接続されている。
主インバーター回路MIVと、4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4は、交流を直流に変換したのち、更にこの直流を高周波の交流に変換する、フルブリッジインバータである。各インバー回路MIV、SIV1〜SIV4は、電源部74の直流電源部80に接続されている。
主インバーター回路MIVと、副インバーター回路SIV1はそれぞれ、2組のスイッチング素子の対(ペア、組ともいう)77A,78A、77B、78Bを有する。図示するように、主インバーター回路MCのスイッチング素子の対77Aと78Aはそれぞれ、直列接続された2つのスイッチング素子79A,81Aと88A、89Aを有する。副インバーター回路SIV1のスイッチング素子の対77Bと78Bはそれぞれ、直列接続された2つのスイッチング素子102B,103Bと104B,105Bを有する。図示していないが、図25に示す副インバーター回路SIV2、SIV3、SIV4にも、前記したような2組のスイッチング素子をそれぞれ備えている。なお、主インバーター回路MIVの2組のスイッチング素子の対77A,78Aの駆動タイミングを、駆動回路228、228Bで制御し、位相差を制御することで主加熱コイルMCに流れる電流の量を調節できる。
そして、スイッチング素子79A,81Aの出力点間とスイッチング素子88A,89Aの出力点間に、主加熱コイルMCと、共振コンデンサー110Aを含む直列共振回路とが接続されている。また、スイッチング素子102B、103Bの出力点間とスイッチング素子104B,105Bの出力点間に、副加熱コイルSC1と共振コンデンサー110Bを含む直列共振回路とが接続されている。同様に図示していないが、他の3つの副インバーター回路SIV2、SIV3、SIV4にも、それぞれ同様に副加熱コイルSC2〜SC4と共振コンデンサー(図示せず)110Aを含む直列共振回路が接続されている。
主インバーター回路MIVの2組のスイッチング素子の対77A,78Aには、それぞれ駆動回路228A、228Bが接続されている。副インバーター回路1の2組のスイッチング素子の対77B、78Bには、駆動回路228C,228Dが接続されている。残りの3つの副インバーター回路SIV2〜SIV4にも、それぞれ駆動回路228E、228F、228G、228H、228I、228J(いずれも図示せず)が1個ずつ接続されている。そして、これら全ての駆動回路228A〜228Jが通電制御回路200を介して被加熱物載置判断部280に接続されている。
この実施の形態では各種スイッチング回路素子、例えば図23に示すIGBT225、図24に示すスイッチング素子77A,81A,88A,89A、102B,103B,104B,105Bを珪素によって形成されたものを示したが、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体によって形成してもよい。ワイドバンドギャップ半導体としては、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、ダイヤモンド、ガリウムナイトライド(GaN)などがある。このようなワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子やダイオード素子は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、スイッチング素子やダイオード素子の小型化が可能であり、これら小型化されたスイッチング素子やダイオード素子を用いることにより、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化が可能となる。
また耐熱性も高いため、ヒートシンクの放熱フィンの小型化や、水冷部の空冷化が可能であるので、半導体モジュールの一層の小型化が可能になる。
更に電力損失が低いため、スイッチング素子やダイオード素子の高効率化が可能であり、延いては半導体モジュールの高効率化が可能になる。
図15に示したように、本体ケース2内部の右側の冷却室8Rに設置された一つの部品ケース34内部に、右側誘導加熱源6R用のインバーター回路210Rと、中央誘導加熱源6M用のインバーター回路210Mを実装した回路基板41を設置しているが、これは前記したように、ワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子やダイオード素子を用いることで従来よりも簡単に実現できる。すなわち、ワイドバンドギャップ半導体は耐熱性も高いため、前記放熱フィン43A、43Bの小型化が可能となり、結果として回路基板41の設置空間も小さくでき、本体ケース2の一方の冷却室8Rに右側の冷却ユニットCUを設置できることになる。仮に、右側誘導加熱源6R用のインバーター回路210Rと、中央誘導加熱源6M用のインバーター回路210Mを、一枚の回路基板41に実装できず、二枚の回路基板41で構成することになったとしても、それら回路基板を収納する部品ケース34を大きくしなくて済むから、冷却室6Rの空間を大きくする必要がなく、結果として上部部品室(部品収納室)10のスペースを確保でき、左側誘導加熱源6Lのような大きな外径の加熱コイルを含む、複数個の誘導加熱コイルを並べて設置することが可能になる。
なお、スイッチング素子及びダイオード素子の両方がワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることが望ましいが、いずれか一方の素子がワイドバンドギャップ半導体よって形成されていてもよく、上記したような効果を得ることができる。
通電制御回路200は、主インバーター回路MIVと全ての副インバーター回路SIV1〜SIV4に出力するスイッチ駆動信号の周波数を同一にする機能を有する。
以上の構成であるので、使用者が前面操作部60を通じて主電源を投入したあと、上面操作部61や前面操作部60を通じて通電制御回路200に加熱駆動開始を指令すると、交流電源75の出力が直流電源部80で直流に変換された後、通電制御回路200から出される指令信号(スイッチ駆動信号)に基き、各駆動回路228A、228B、228C、228C(この他の駆動回路の動作説明は省略する)から駆動信号が出される。するとスイッチング素子79A,89Aと81A、88A、スイッチング素子102B,105Bと103B、104Bがそれぞれ交互にオン・オフして、前記直流が高周波の交流に再び変換され、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1に高周波電流が印加される。これにより誘導加熱動作が開始される。なお、通電制御回路200から主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1に出力される前記スイッチ駆動信号の周波数は等しくなるように自動的に設定されている。
以上の構成であるので、通電制御回路200は、主加熱コイルMCに時計回り方向の高周波電流を流す場合、互いに隣接する領域(主加熱コイルの外周領域)において、4つの副加熱コイルSC1〜SC4に印加された高周波電流IBと、主コイルMCに流れる高周波電流IAとが同一方向(反時計回り方向)に流れるよう主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4を制御する機能を有する。
逆に、主加熱コイルMCに反時計回り方向の高周波電流IAを流す場合、副加熱コイルSC1〜SC4に印加された高周波電流IBが、互いの隣接領域において同一方向(時計回り方向)に流れるよう、主インバーター回路MIVと全ての副インバーター回路SIV1〜SIV4を制御するものである。 これは前記したように周波数の差に起因する異音の発生を抑止できる。
上記したように被加熱物Nを左右の加熱コイル6LC、6RCの通電により誘導加熱する際、被加熱物Nが鉄等の磁性材料で作られている場合は、加熱コイル6LC、6RCにそれぞれ共振コンデンサー(図23では224L、224R、図24では110Aと110B)を接続した共振回路に、スイッチング回路素子(IGBT、図23では225。図24ではスイッチング素子77A,81A,88A,89A、102B,103B,104B,105B)を20〜40kHz程度の駆動周波数でオン・オフ制御して、20〜40kHz程度の周波数の電流を流せば良い。
一方、被加熱物Nがアルミや銅などの高電気導電率の材料で作られている場合には、所望の加熱出力を得るために左右のIH加熱コイル6LC、6RCに大電流を流して被加熱物Nの底面に大きな電流を誘起させる必要がある。そのため高電気導電率の材料で作られている被加熱物Nの場合は、60〜70kHzの駆動周波数でオン・オフ制御している。
図23において、モータ駆動回路33は、図11の本体部Aの内部空間を一定の温度範囲に保つための前記送風機30の駆動モータ300の駆動回路であり、モータ駆動回路231は排気ダクト14に設置した送風機106の駆動モータ106Bの駆動回路である。
(温度検出回路)
図23において、温度検出回路240には以下の各温度検出素子からの温度検出情報が入力される。
(1)右側の加熱コイル6RCの略中央に設けた温度検出素子31R。
(2)左側の加熱コイル6LCの中央部に設けた温度検出素子31L。
(3)中央の誘導加熱源6Mの加熱コイル近傍に設けた温度検出素子241。
(4)グリル加熱室9の庫内温度検出用の温度検出素子242。
(5)統合表示手段100の近傍に設置した温度検出素子243。
(6)部品ケース34の内部の2つの放熱フィン43A、43Bに密着して取り付けられ、それら2つの放熱フィンの温度を個別に検出する温度検出素子244、245。
なお、温度検出素子を温度検出対象物に対して2箇所以上設けても良い。例えば右側誘導加熱源6Rの温度センサー31Rを、その加熱コイル6RCの中央部と、外周部分に設け、より正確に温度制御を実現しようとするものでも良い。また温度検出素子を異なる原理を利用したもので構成しても良い。例えば右側の加熱コイル6RCの中央部の温度検出素子は赤外線方式で、外周部分に設けたものはサーミスタ式としても良い。
制御回路200は、温度検出回路240からの温度測定状況に応じ、それぞれの温度測定部分が所定温度以上高温にならないように常に送風機30の駆動モータ300のモータ駆動回路33を制御して送風機30を運転させることで、風で冷却する。
前記左側加熱コイル6LCの中央部に設けた前記温度検出素子31Lは、5つの温度検出素子31L1〜31L5から構成されているが、これについては後で詳しく述べる。
(副加熱コイル)
図19及び図21において、左側加熱コイル6LCの外側コイル6LC1は中心点X1を有した最大外径がDA(=半径R1の2倍)の環状のコイルであり、内側コイル6LC2は外側コイル6LC1の内側に空間270を置いて環状に巻かれたコイルであり、同じ中心点X1を有している。このような同心円上にある二つの環状コイルから主加熱コイルMCを構成している。
4個の副加熱コイルSC1〜SC4は、前記主加熱コイルMCの外周面に所定の空間271を保って配置され、図21に示すように前記中心点X1を中心とする半径R2の同一円周上に沿って湾曲し、かつ相互が略等間隔に点在するように配置されており、その外形形状は図19、図21に示すように湾曲した長円形もしくは小判型である。この副加熱コイルSC1〜SC4も、集合線を1本又は複数本撚りながら巻き、外形形状が長円形や小判形になるように、部分的に絶縁性テープなどの結束具で拘束され、又は全体が耐熱性樹脂などで固められることで所定の形状を維持するように形成されている。
図21に示すように、中心点X1から半径RYの円周線が各副加熱コイルSC1〜SC4の長手方向の中心線と一致している。言い換えると、一つの閉回路を構成している環状の主加熱コイルMCの周囲には、その主加熱コイルMCの中心点X1から半径RXで描く円弧が内側(主加熱コイルMCの外周と対面する側)に形成されるように、副加熱コイルSC1〜SC4が4個配置されている。各副加熱コイルSC1〜SC4は、曲率半径RXで湾曲し、電気的に閉回路を構成している。なお、半径RYの2倍(円の直径)は、図3に示した実施の形態1における寸法CW1に相当する。
主加熱コイルMCの高さ寸法(厚さ)と各副加熱コイルSC1〜SC4の高さ寸法(厚さ)は同じであり、しかもそれら上面と前記トッププレート21の下面との対向間隔は同一寸法になるように後述するコイル支持体290の上に水平に設置、固定されている。
図19に示した直線Q1は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の、内側の湾曲縁、言い換えると湾曲した円弧の一方の端RA(言い換えると、始点)と中心点X1を結ぶ直線である。同じく、直線Q2は、副加熱コイルSC1〜SC4の、円弧の他方の端RB(言い換えると、終点)と中心点X1を結ぶ直線である。この2つの端RAと端RBの間(始点と終点の間)の長さ、つまり主加熱コイルMCの外周面に沿って半径RXで湾曲する(副加熱コイルSCの)円弧の長さが大きいことが加熱効率の観点から望ましい。それは後述するように、主加熱コイルMCの外周縁と、副加熱コイルSC1〜SC4との間で、高周波電流が同じ向きで流れ、磁気的干渉を低減するように工夫しているからである。
しかしながら現実的には、隣り合う2つの副加熱コイルSC1〜SC4の間では高周波電流の向きが反対になるため、これによる影響が問題になる。この影響を抑制するため、一定距離(後述する空間273)を離している。このため、円弧の長さには一定の限界がある。
次に図19、図21に示した左側誘導加熱源6Lの加熱コイル6LCの寸法関係を説明する。
主加熱コイルMCの外径DA(R1の2倍):約130mm
主加熱コイルMCの半径R1:約65mm
副加熱コイルSCの内側の曲率半径RX:約50mm
空間271の幅:5mm
空間272の幅:10mm
副加熱コイルSCの外側の集合線全体の平均的横幅W31:10mm
円の半径RX:70mm
加熱コイル6LCの最大外径DB:約200mm
空間273の幅:15(空間271が10mmの場合は、30mm)
具体的には図19、図21に示したものにおいて、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4との間の電気絶縁距離となる空間271が仮に5mmであった場合、次の寸法が計算で求められる。
主加熱コイルMCの外径DA:約130mm(R1の2倍相当)
RXの円周の長さ:約440mm(=RX×円周率3.14)
従って副加熱コイルSC1〜SC4が4個均等に(角度90度ずつ)配置されている場合、前記円周の4分の1の長さは約110mmになる。
図20で示すQ1とQ2で構成される角度は90度ではなく、例えば60度〜75度である。そこで70度の場合は、前記約110mmは、70度÷90度の比率(約0.778)×110mmの式から約86mmになる。つまり、各副加熱コイルSC1〜SC4の最も内側の円弧の長さは約86mmである。
この実施の形態2のように副加熱コイルSCが4個の場合、主加熱コイルMCの周囲360度の内、280度(=前記した70度の4倍)の範囲が主加熱コイルMCの外周面に沿って(曲率半径RXで)湾曲した(副加熱コイルSCの)円弧であるから、約77.8%(=280度÷360度)(この率を、以下の説明で「合致率」という)の範囲において主加熱コイルMC外周縁と、副加熱コイルSC1〜SC4内周縁の向きが合致(並行)していると言える。これは主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4との間で、高周波電流IA,IBを同じ向きに流すことが可能となる度合いが大きいことを意味し、磁気的干渉を低減して被加熱物Nに対する磁束密度高め、加熱効率を高める上で貢献している。
図19、図21は説明を分かり易くするため、主加熱コイルMCや副加熱コイルSC1〜SC4など各構成部分の大きさを比例尺で描いていない。合致率が大きい程、高周波電流が同じ向きに流れて、2つの加熱コイルの隣接する領域で磁束密度高め合う長さが大きく加熱効率の観点で望ましいが、実際には前記空間273を確保するため限界があり、合致率は100%にはできない。
なお、図21において、中心点X1を中心とし、かつ前記4つの副加熱コイルSCの中央を通る真円の半径RYは、RXとW31と空間272の幅から求められ、約85mmである。この場合、4つの副加熱コイル4個SC1〜SC4を包含する円の直径、言い換えると左側誘導加熱源6Lの加熱コイル6LCの最大外径DBは約200mmになる。
空間271は前記した最小寸法の5mmではなく、例えば10mmでも良い。この場合RYは約90mmになる。
空間271は、別のインバーター回路からそれぞれ高周波電流が供給される主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4という二つの物体間の絶縁性を保つために必要な絶縁空間であるが、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の間を遮るように、磁器や耐熱性プラスチック等の電気絶縁物を例えば薄い板状にして介在させれば、空間271の電気絶縁性が向上し、空間271の寸法を更に小さくすることができる。
各副加熱コイルSC1〜SC4は、真円形でないため製造を容易にするには例えば上下2層に分けること、つまり渦巻状に0.1mm〜0.3mm程度の直径を有する細い線(素線)を20本〜30本程束にした集合線を1本又は複数本撚りながら、全く平面形状が同じ形で2個を巻いて長円形や小判形に巻き、それを結線して直列に接続し、電気的には単一のコイルとするようにしても良い。なお、主コイルMCよりも同じ単位平面積あたりの磁気駆動力を向上させ、平面積が小さくとも高い出力を出すため主加熱コイルMCの素線よりも、一段と細い素線を用いても良い。
空間(空洞)272は副加熱コイルSC1〜SC4を形成したときに自然とできるものである。つまり集合線を一方方向に巻いていくと必然的に形成される。この空間272は、副加熱コイルSC1〜SC4自体を空冷する場合に利用され、前記送風機30から供給された空冷用空気がこの空間272を通って上昇する。コイル支持体290は耐熱性プラスチック等のような非金属材で一体に成形されたものであり、中心点X1から放射状に8本の腕290Bが伸び、また最外周縁部290Cが連結された円形形状になっている。
赤外線センサー31L1〜31L5をそれぞれ保持させる場合、5個の支持部290D1〜290D5を腕290Bの上面又は側面に一体又は別部品にして取り付ける(図22参照)。支持用突起部290Aは放射状に伸びた8本の腕290Bの内、副加熱コイルSC1〜SC4の中央部分に対面することになる4本の腕290Bに一体に形成されるものであり、4箇所において3個ずつ点在するように設けられており、その内の1個は前記副加熱コイルSC1〜SC4の空間272の中に入り、残りの2個の内一方は副加熱コイルSC1〜SC4より中心点X1寄りに、また他方は逆に外側に配置されている。
支持舌部290Eは副加熱コイルSC1〜SC4の両端部に対面することになる4本の腕290Bに、2個ずつ一体に形成されたものであり、この上に副加熱コイルSC1〜SC4の両端部が載せられ、また他の2本の腕290Bの上面に副加熱コイルSC1〜SC4の中央部が載せられている。
円柱状固定部290Fは、前記した支持舌部290Eの全ての上面に1個ずつ一体に突出形成されたものであり、この固定部290Fは副加熱コイルSC1〜SC4を設置したとき、その空間272の両端位置に対応した位置に位置付けられる。この固定部290Fと前記支持用突起部290Aにより、副加熱コイルSC1〜SC4は、その中心部の空間272と内側及び外側位置の3箇所が位置規制されるから、不用意な横移動や加熱に伴う膨張の力(代表的なものとして、図22に一点鎖線で示す矢印FUとFI)などによって変形しない。
なお、支持用突起部290Aと固定部290Fによって、副加熱コイルSC1〜SC4の内側と周囲に部分的に当接させて位置を規制し、そのコイルの全周に亘って囲むような壁(リブともいう)を形成していないのは、副加熱コイルSC1〜SC4の内側や周囲を出来るだけ開放し、冷却用空気の通路となるようにしたためである。
コイル支持体290は、図22と図27に示すように冷却ダクト42の上ケース42Aの上面に載置されており、冷却ダクト42の噴き出し孔42Cから上方へ噴き出される冷却風によって冷却され、その上方にある主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4が発熱によって異常に高温度にならないように冷却される。そのため、前記コイル支持体290はその略全体が通気性を確保できる格子状(図22参照)になっており、中心点X1から放射状に配置された前記磁束漏洩防止材73がその風の通路を部分的に横切る形になっている。また副加熱コイルSC1〜SC4の底面も腕290Bや支持舌部290Eの対向部分という一部分を除き、露出した状態であるので、その露出部分の存在によって放熱効果が向上している。
前記磁束漏洩防止材73は、前記中心点X1から放射状になるように前記コイル支持体290の下面に取り付けられている。空間273は図21に示すように隣り合う副加熱コイルSC1〜SC4同士が同時に通電されたとき、それに流れる高周波電流IBが同じ方向であった場合、隣り合う副加熱コイルSC1〜SC4の端部同士が磁気的に干渉しないために設けられている。すなわち、環状の主加熱コイルMCに対して、例えば上面から見て反時計回り方向に駆動電流を流したとき、副加熱コイルSC1〜SC4に対して時計回り方向に駆動電流を流すと、主加熱コイルMCを流れる高周波電流IAの向きと、副加熱コイルSC1〜SC4の主加熱コイルMCに近い側、つまり隣接する側を流れる電流IBの向きは図20に示すように同じになるが、副加熱コイルSC1〜SC4の内、隣り合う同士の端部間では高周波電流IBの向きが互いに反対になるため、これによる磁気的干渉を低減するようにした工夫である。
なお、主加熱コイルMCに対して、例えば上面から見て時計回り方向に駆動電流を流している期間中、副加熱コイルSC1〜SC4に対して反時計回り方向に駆動電流を流し、その後時計回りに駆動電流を流すというように、所定時間間隔で交互に、反対方向に電流の方向を切り替えても良い。
この副加熱コイルSC1〜SC4の端部相互間の空間273の寸法は、前記空間271よりも大きくすることが望ましい。前記副加熱コイルSC1〜SC4における空間(空洞)272の、中心点X1を通る直線上の横断寸法、すなわち図21に矢印で示すような横幅寸法は、前記空間271よりも大きくすることが望ましい。それは副加熱コイルSC1〜SC4を流れる電流同士が互いに反対向きになるため、それで生ずる磁気的干渉を少なくするためである。これに比較して空間271は磁気的結合をさせて協同加熱させるため、間隔が狭くても良い。なお、この実施の形態では空間273と空間271との大きさの比は、3:1に設定してある。従って空間271が前述したように5mmの場合、空間273は15mmである。
(個別発光部)
図19、図21、図22及び図27において個別発光部276は、前記主加熱コイルMCと同じ同心円上に点在するように4箇所設置された発光体である。この個別発光部276は、電球や有機EL、LED(発光ダイオード)などを用いた光源(図示せず)と、この光源から入射した光を導光する導光体とを備えており、図23に示す駆動回路278によって駆動される。
導光体としてはアクリル樹脂、ポリカーボネイト、ポリアミド、ポリイミドなどの合成樹脂、またはガラスなどの透明な材料で良い。導光体の上端面は図27に示すように、トッププレート21の下面に向けられており、導光体の上端面から図27に一点鎖線で示すように光源からの光が放射される。なお、このような上方向に対して線条に発光させる発光体については、例えば特許第3941812号により提案されている。この個別発光部276が発光、点灯することによって前記副加熱コイルSC1〜SC4が誘導加熱動作をしているかどうかを知ることができる。
(広域発光部)
再び図19、図21、図22及び図27において、広域発光部277は前記個別発光部276と同心円上に存在するように、個別発光部276の外側を所定の空間275を置いて囲んでおり、最大外径寸法がDCである環状の発光体である。この広域発光部277は、前記個別発光部276と同様に光源(図示せず)と、この光源から入射した光を導光する導光体とを備えており、図23に示すように駆動回路278によって駆動される。
この広域発光部277の導光体上端面は図27に示すように、トッププレート21の下面に向けられており、導光体の上端面から図27に一点鎖線で示すように光源からの光が放射されるので、この広域発光部277が発光、点灯することによって前記副加熱コイルSC1〜SC4と主加熱コイルMCとのグループ外縁部が判別できる。
トッププレート21に表示された円である案内マーク6LMの位置と、前記個別発光部276の位置とは一致しているものではない。
案内マーク6LMの位置は主加熱コイルMCの外径寸法DAに略対応しているが、個別発光部276は副加熱コイルSC1〜SC4の外側を一定の余裕寸法(例えば20mm)を持って包囲するような大きさであるからである。
また、トッププレート21に表示された円形の協同加熱エリアマークEMの位置と、広域発光部277の位置とは大体一致しているが、協同加熱エリアマークEMは通常印刷等によってトッププレート21の上面に形成されるので、その印刷や塗装の皮膜(可視光線を殆ど透過しない材質が用いられている)を考慮し、その僅か数mm程度外側位置に、広域発光部277の上端面が近接対向するように設定されている。なお、協同加熱エリアマークEMの透光性が確保されれば、完全に一致させても良い。例えば、前記右側誘導加熱部6Rの加熱コイル6RCの外径が240mmであった場合、前記した防磁リング291の外径は、244mm程度、協同加熱エリアマークEMの位置は直径280mm〜290mm程度の円の上になる。
(赤外線センサー配置)
前記赤外線センサー31Lは、図19に示すように31L1〜31L5の5個から構成されており、この内、赤外線センサー31L1の感熱部は前記空間270に設置されている。この温度センサー31L1は主加熱コイルMCの上に置かれる鍋等の被加熱物Nの温度を検知するものである。この主加熱コイルMCの外側には、各副加熱コイルSC1〜SC4のための赤外線センサー31L2〜31L5の感熱部がそれぞれ配置され、これら赤外線センサーは全て前記コイル支持体290に形成された突起状の支持用突起部290Aの中に設置されている。
なお、被加熱物載置判断部280の機能、すなわち被加熱物Nが載置されているかどうかを判定する機能を発揮するために前記した赤外線センサー31L2〜31L5を使用しないことも可能であり、代わりの手段として光検出部(光センサー)がある。これはトッププレート21の上方から室内の照明の光や太陽光線などの自然界の光が届くかどうかを判別できるからである。被加熱物Nが置かれていない場合、その被加熱物Nの下方にある光検出部は、室内照明等の外乱光を検出するから鍋等の物体が載置されていないという判断情報にできる。
各温度センサー31R、31L、241、242、244、245からの温度データは、温度検出回路240を経由して通電制御回路200に送られるが、加熱コイル6RC、6LCに関する赤外線センサー(31L1〜31L5の5つ全てを指す)の温度検出データは、前記被加熱物載置判断部280に入力される。
金属製防磁リング291(図27参照)はコイル支持体290の最も外側に取り付けられて設置されたリング状のものである。この防磁リング291は、3つの誘導加熱源6R、6M、6Lの各加熱コイル6RC、6LC、6MCにそれぞれ設置されており、各加熱コイル6RC、6LC、6MCの外径寸法よりも4〜5mm大きな直径を有している。またそれを上方から見た場合の幅は1mm程度である。つまり各加熱コイル6RC、6LC、6MCの最外周縁から外側に1mm程度離れている。例えば図27において、左側加熱コイル6LCの最大外径DBが約200mmの場合、それを囲む防磁リング291の内径は202mm、外径は204mm程度である。
図22に示すスピーカー316は音声合成装置315からの信号で駆動される。この音声合成装置315は、前記統合表示手段100に表示される各種情報を音声でも報知するものであり、火力や加熱動作を実行中の加熱源の名称(例えば、左IH加熱源6L)、調理開始からの経過時間、タイマーで設定した残り時間、各種の検出温度、ガイドエリア(100GD)に表示される、各種調理における参考情報、異常運転検知したこと及び不適正操作が使用時によって行われたこと等の情報を報知でき、各種調理をできるだけ好ましい状態や加熱位置(被加熱物Nの位置含む)で行えるような情報も含まれる。後述する主加熱コイルMCや副加熱コイルSCのどれが実際に加熱動作を実行しているのかという情報も含まれている。
(加熱調理器の動作)
次に、上記の構成からなる加熱調理器の動作の概要を、図23を中心に説明する。
電源投入から調理準備開始までの基本動作プログラムが、通電制御回路200の内部にある記憶部203(図23参照)に格納されている。
使用者は、まず電源プラグを200Vの商用電源に接続し、主電源スイッチ63の操作ボタン63A(図12参照)を押して電源を投入する。
すると定電圧回路(図示せず)を介して所定の低い電源電圧が通電制御回路200に供給され、通電制御回路200は起動される。通電制御回路200自身の制御プログラムにより自己診断し、異常がない場合には送風機30の駆動モータ300を駆動するためのモータ駆動回路33が予備駆動される。また、左IH加熱源6Lおよび右IH加熱源6R、統合表示手段100の液晶表示部の駆動回路215もそれぞれ予備起動する。
図23の温度検出回路240は各温度検出素子(温度センサー)31R,31L(特に明示しない限り、以下説明では、31L1〜31L5の5つ全てを含んだものを指す)、温度検出素子241、242、244、245によって検出された温度データを読み込み、そのデータを通電制御回路200に送る。
以上のようにして通電制御回路200には、主要な構成部分の回路電流や電圧、温度などのデータが集まるので、通電制御回路200は、調理前の異常監視制御として、異常加熱判定を行う。例えば、統合表示手段100の液晶基板周辺の温度がその液晶表示基板の耐熱温度(例えば70℃)よりも高い場合、通電制御回路200は異常高温と判定する。
また図23の電流検出センサー227は、右側加熱コイル6RCと共振コンデンサー224の並列回路からなる共振回路225に流れる電流を検出し、この検出出力は通電制御回路200の入力部201に供給される。通電制御回路200は、取得した電流検出センサーの検出電流を記憶部203に記憶されている判定基準データの正規の電流値と比較して、過少電流や過大電流が検出された場合には、通電制御回路200は何らかの事故や導通不良などによる異常と判定する。
以上の自己診断ステップによって異常判定が無かった場合は「調理開始準備完了」となる。しかし、異常判定が行われた場合には、所定の異常時処理が行われ、調理開始ができないようになる(左側加熱コイル6LCでも同様に異常検知が行われる)。
異常判定がなかった場合、統合表示手段100の各加熱源対応エリア100L1、100L2、100M1、100M2、100R1、100R2、100Gには加熱動作できる旨の表示が出て、希望の加熱源を選択し、誘導加熱の場合は、鍋等の被加熱物Nをトッププレート21に描かれた希望の加熱源の案内マーク6LM、6RM、7Mの上に置くように表示される(統合表示手段100と連動するよう音声合成装置315は、同時に音声でそのような操作を使用者に促がす)。また同時に、全ての個別発光部276と広域発光部277も所定の色(例えば黄色。以下「形態1」という)の光で発光、点灯するように通電制御回路200で指令される。
次に上記のように異常判定が完了して加熱調理準備完了するまでの全体の主要な制御動作について図32を参照しながら説明する。
まず主電源を投入して加熱準備動作を使用者が操作部(図示せず)で指令した場合、前記被加熱物載置判断部280によって、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かが推定され、この推定結果が制御部である通電制御回路200に伝達され、大径鍋に適する加熱処理にするか通常鍋に適する加熱処理にするか等が決定される(ステップMS11)。
適合鍋であるが通常サイズの鍋や小鍋、あるいは加熱不適合等の場合は、大径鍋とは別の処理になる。
通電制御回路200は操作部E近傍に設置されている統合表示手段100の液晶表示画面に対し、希望する調理メニューを選択するように促す表示をする(MS12)。
使用者が調理メニューや火力、調理時間などを操作部で選択、入力した場合(MS13)、本格的に誘導加熱動作が開始される(MS14)。
表示手段Gに表示される調理メニューとしては、実施の形態1と同様に「高速加熱」、「揚げ物」、「湯沸し」、「予熱」、「炊飯」、「茹で」、「湯沸し+保温」という7つである。
使用者がこれら7つの調理メニューの中の何れか一つを選択した場合、それらメニューに対応した制御モードが通電制御回路200の内蔵プログラムによって自動的に選択され、主加熱コイルMCや副加熱コイルSC1〜SC4のそれぞれの通電可否や通電量(火力)、通電時間などが設定される。調理メニューによっては使用者に任意の火力や通電時間等を設定するように促す表示を表示部に行う(MS15)。
以上によって大径鍋を対象にした調理工程に移行する準備完了となり、調理メニュー選択後、速やかに誘導加熱動作が開始される。なお、「通常鍋」や「小型鍋」の場合も基本的には上記ステップMS12〜MS15と同様である。「通常鍋」や「小型鍋」の場合も調理メニューとして図28のような7つの調理メニューが統合表示手段100に表示されるが、「通常鍋」や「小型鍋」の場合は、この実施の形態2では中心部の主加熱コイルMCだけでしか加熱しないので、制御内容(火力や通電パターンなど)は大きくことなる。当然、副加熱コイルSC1〜SC4の全部やその一部だけを個別に加熱駆動できないので、副加熱コイルSC1〜SC4を利用した加熱パターンはない。すなわち、副加熱コイルSC1〜SC4を利用した対流促進制御は実施されない。
(調理工程)
次に、調理工程に移行した場合について、右側誘導加熱源6Rを「通常鍋や小型鍋」で使用した場合を例にして説明する。なお小型鍋とはこの実施の形態2では直径10cm未満のものをいう。
右側誘導加熱源6Rを使用する方法には、前面操作部60を使用する場合と、上面操作部61を使用する場合の2つがある。
(前面操作部での調理開始)
まず、前面操作部60を使用する場合について説明する。
使用者は、最初に前面操作部60の右操作ダイアル64Rを右か左へ回す(回した量に応じて火力が設定される)。
前面操作部60の前面操作枠62の前面下部には、図示していないが3つの独立したタイマーダイアルが設けられているため、使用者は、その中の右側誘導加熱源6Rのタイマーを所定時間にセットする。これにより、このような操作信号が通電制御回路200に入力され、通電制御回路200によって火力レベルや加熱時間などの調理条件が設定される。
次に、通電制御回路200が駆動回路228を駆動し、右側加熱源回路210Rを駆動する(図23参照)。また統合表示手段100が駆動回路215によって駆動されるので、その表示エリアには火力や調理時間などの調理条件が表示される。駆動回路228はIGBT225のゲートに駆動電圧を印加するので、右IH加熱コイル6RCに高周波電流が流れる。但し、最初から高火力通電加熱はせず、鍋等の被加熱物Nの適否検知が以下のように行われる。
電流検出センサー227は、右IH加熱コイル6RCと共振コンデンサー224の並列回路からなる共振回路に流れる電流を検出し、検出出力は通電制御回路200の入力部に供給される。そして、何らかの事故や導通不良などによって正規の電流値に比較して過少電流や過大電流が検出された場合は、通電制御回路200は異常と判定する。通電制御回路200は上記のような種類の異常判定機能に加え、使用される鍋(被加熱物N)の大きさが適当かどうか判定する機能を有している。
具体的には、共振回路225に、最初の数秒間は使用者が設定した火力(電力)ではなく、所定電力(例えば1000W)を流し、その時の入力電流値を電流検出センサー227で検出するように構成している。
すなわち、通電制御回路200が所定の電力により同じ導通比率で駆動信号を出してスイッチング手段となるIGBT225を駆動した際、右側加熱コイル6RCの面積に比べて小さい直径の鍋(被加熱物N)がトッププレート21上に載置されていると、電流検出センサー227の部分を流れる電流は、加熱コイル220(6RC)の面積に比べて大きな直径の鍋(被加熱物N)がトッププレート21上に載置されている場合に電流検出センサー227の部分を流れる電流とに比較して、小さくなることが既に知られている。
従って、事前に実験結果などから過剰に小さい鍋(被加熱物N)を載置した場合の電流検出センサー227の部分を流れる電流の値を判定基準データとして用意しておく。そうすると、電流検出センサー227において小さ過ぎる電流が検出された時は、異常な使用形態であることが通電制御回路200側で推定できるため、異常処理の処理ルートに移行する。
なお、スイッチング手段225に対する通電率を通電制御回路200が自ら変更し、例えば使用者が設定した火力でも、導通比率を許容範囲まで下げることで正常な加熱状態を維持確保できる場合は、自動的に電力適応制御処理が実行されるものであり、小さい電流値が検出された場合、全て一律で無条件に異常処理に行くのではないようになっている。
上記のような鍋(被加熱物N)の判定を行っている状態では、右側誘導加熱源6Rの表示エリア100R2には最初に「鍋適否判定中」との文字が表示される。そして、数秒後には上記異常電流検出監視処理の判定結果により、小さ過ぎる鍋(被加熱物N)の場合は表示エリア100R2には「使用する鍋が小さすぎます」、「もっと大きな鍋(直径10cm以上)を使用して下さい」というような注意喚起文字が表示される。
この鍋適否判定結果が出された場合、右側誘導加熱源6Rの表示エリア100R1、100R2は、その面積が図27の状態から数倍大きく拡大され、その表示エリアに鍋(被加熱物N)が適当ではないことが表示される。左側誘導加熱源6Lと中央誘導加熱源6Mの両方とも使用されていない場合は、例えば図28に示すように、右側誘導加熱源6Rの表示エリア100R1、100R2は、それら左側誘導加熱源6Lと中央誘導加熱源6Mの表示エリア100L1、100L2、100M1、100M2を包含するほどの大きさまで拡大される。なお、図28は右側誘導加熱源6Rと中央誘導加熱源6Mが使用されておらず、左側誘導加熱源6Lだけが使用されている場合である。
その後、鍋(被加熱物N)の交換などの措置を使用者が行わなかった場合、通電制御回路200を停止せずに、表示エリアEに鍋(被加熱物N)が小さすぎると表示した時点から一定時間後に、一旦右IH加熱源6Rによる加熱動作を自動停止する。
使用者が鍋(被加熱物N)を大きいものに変更し、再度調理開始の操作を行えば再度調理を再開することができる。前記したように直径10cm未満の小型鍋は、鍋適否判定処理によって不適合な鍋として検知され、その使用が禁止される。
以上のような鍋(被加熱物N)検知動作を行って、適合する鍋(被加熱物N)であると判定された場合、通電制御回路200は右IH加熱源6Rが本来の設定火力を発揮するように、自動的に適応する通電制御処理を実行する。これにより右側の加熱コイル6RCからの高周波磁束により鍋等の被加熱物Nが高温になり、電磁誘導加熱調理動作(調理モード)に入る。
整流ブリッジ回路221と平滑化コンデンサー223によって得られた直流電流はスイッチング素子であるIGBT225のコレクタに入力される。IGBT225のベースには駆動回路228からの駆動信号が入力されることでIGBT225のオン・オフ制御を行う。IGBT225のオン・オフ制御と共振コンデンサー224を組み合わせることで右側の加熱コイル6RCに高周波電流を発生させ、この高周波電流がもたらす電磁誘導作用により右側の加熱コイル6RC上方のトッププレート21上に載置された鍋等の被加熱物Nに渦電流が発生する。こうして、被加熱物Nに生じた渦電流はジュール熱となって被加熱物Nが発熱し、調理に用いることが可能となる。
駆動回路228は発振回路を有しており、この発振回路が発生する駆動信号がIGBT225のベースに供給されてIGBT225をオン・オフ制御する。駆動回路228の発振回路の発振周波数や発振タイミングを調整することで、右側加熱コイル6RCの導通比や導通タイミング、電流周波数等が調整されて、右側加熱コイル6RCの火力調節が可能となる。なお、主加熱コイルMCの駆動回路にフル・ブリッジ回路を用いた場合は、図23に示した各駆動回路228A,228Bが前記駆動回路228と同様の働きをする。
なお、右側誘導加熱源6Rの通電停止指令が出された場合には、その加熱源6Rの通電は停止されるが、送風機30は、前記通電停止後も2分間〜5分間運転継続する。これにより、送風機30からの送風停止直後から右側誘導加熱源6Rの右側加熱コイル6RC周辺に熱気が滞留したままになり、温度が急激に上昇するというオーバーシュート問題も未然に防ぐことができる。また、統合表示手段100の温度が高くなるという弊害も防ぐことができる。この運転継続時間は、通電停止までの温度上昇の様子や室内気温、加熱源の運転火力大小等の条件に対応して通電制御回路200が予め決められた算式や数値テーブルから決定する。
但し、送風機30からの異常電流が検出される等、冷却用ファン自体の故障であることが判明した場合(例えば、冷却フィン43A、43Bの温度だけが上昇している場合)は、その送風機30への通電も同時に停止する。
統合表示手段100の液晶表示基板は、左右誘導加熱源6L、6Rの加熱調理時に加熱された被加熱物Nの底部からの反射熱やトッププレート21からの輻射熱で加熱される。
また、使用した高温のてんぷら用鍋(被加熱物N)がそのままトッププレート21の中央部上に置かれている場合もその高温(200℃近くある)の鍋(被加熱物N)からの熱を受ける。
そこで、この実施の形態1では、統合表示手段100の温度上昇を抑制するため送風機30により左右両側から空冷している。
このように正常な運転環境下で送風機30が駆動された場合には、本体1の外部の空気が図15、図17に示すように、ファンケース37の吸い込み筒37Aの吸い込み口37Bからファンケース37の内部に吸引される。吸引された空気はファンケース37の内部で高速回転している翼部30Fにより排気口(出口)37Cから水平方向で前方に吐き出される。
排気口37Cの前方位置にはファンケース37に密着状態に接続される部品ケース34があり、空気導入口をその排気口37Cに密着状態で連通させているから、排気口37Cから部品ケース34の内部は、その内部気圧(静圧)を上昇させるように送風機30から空気が送り込まれる。その送り込まれた冷却風の一部は、部品ケース34の上面部で排気口37Cに近い側にある第1の排気口34Aから空気が放出される。
この放出された空気の温度は、途中で高温の発熱体や発熱性電気部品などを冷却していないから、排気口37Cから出た直後の温度と殆ど同じであり、新鮮な空気のままである。
そして第1の排気口34Aから冷却ダクトの通風空間42Fに送りこまれた冷却用空気は、噴き出し孔42Cから図15、図17の矢印Y3で示すように上方へ噴出し、真上にある右側加熱コイル6RCの下面に衝突してそのコイルを効果的に冷却する。なお、右側加熱コイル6RCの形状が、上記のような空冷用空気を一部で貫通させる空隙を有している場合はその空隙にも第1の排気口34Aからの冷却風が貫通するように流れて冷却する。
一方、部品ケース34の内部に送風機30から圧力を持って送り込まれた冷却風は、回路基板41の表面に向けられず、また表面近くを流れる訳ではない。冷却風は回路基板41の表面(一側面)に突出した構造物となっている放熱フィン43A、43Bの部分を中心に多数の熱交換フィン素子間を通るから、放熱フィン43A、43Bが主に冷却される。
さらに、排気口37Cから押し込まれた冷却風(図15の矢印Y2)の中で、最も速度が速い部分である本流は、矢印Y4で示すように排気口37Cから前方に一直線状に流れ、部品ケース34において冷却風の流れの最も下流側位置にある第2の排気口34Bから噴出される。この第2の排気口34Bは第1の排気口34Aよりも数倍大きな開口面積を有しているため、排気口37Cから部品ケース34に押し込まれた冷却風の大部分は、この第2の排気口34Bから噴出するものである。また冷却風が矢印Y4で示すように第2の排気口34Bから部品ケース34の外部に噴出される前に、放熱フィン43A、43Bを主に冷却するから、放熱フィン43A、43Bに取り付けられた2つのインバーター回路210R、210Mの電力制御用スイッチング素子などの発熱部品が冷却される。
そして噴出した冷却風は冷却ダクト42の通風空間42G、42Hの中に案内され、その大部分の冷却風は上ケース42Aの上面に多数形成した噴き出し孔42Cから図17に矢印Y4、Y5で示すように噴き出し、その真上にある右側加熱コイル6RCの下面に衝突してそのコイルを効果的に冷却する。
冷却ダクト42の通風空間42Hの中に案内された冷却風の一部は、各種電気・電子部品56や誘導加熱調理時の火力を光で表示する、右火力表示ランプ101Rと左火力表示ランプ101Lのそれぞれの発光素子(LED)などが収容された前部部品ケース46の中に導かれる。具体的には、前記送風機30の冷却風は、前記部品ケース34の第2の排気口34Bから冷却ダクト42の通風空間42Hに入り、ここから通風空間42Hに対応して形成した冷却ダクト42の通風口42Kを通り、その通風口42Kの真上に密着するように位置している下ダクト46Aの通風口46R、46L(図15参照)に入る。
これにより前部部品ケース46に入った冷却風でまず液晶表示画面45R、45Lが下方から冷却されるとともに、その後前部部品ケース46内を流れて最後に切欠き46Cから上部部品室10に排出される過程で、順次内蔵部品等を冷却して行くことにより液晶表示画面45R、45L、統合表示手段100、各種電気・電子部品を搭載する取付基板56や誘導加熱調理時の火力を光で表示する右火力表示ランプ101Rと左火力表示ランプ101L用の発光素子等は順次冷却風で冷却される。
特に、この前部部品ケース46の中に案内された冷却風は、誘導加熱動作時に高温になる左右の加熱コイル6LC、6RCを冷却した風でないから、その温度は低く、液晶表示画面45R、45L及び統合表示手段100などは、冷却風の風量が少ないながらも効果的に温度上昇が抑制されるように冷却され続ける。
冷却ダクト42の多数の噴き出し孔42Cから噴出された冷却風は、図12、図15及び図16に示すように、上部部品室10を後方に向かって矢印Y5、Y6のように流れる。この冷却風の流れに、切欠き46Cから上部部品室10に排出された冷却風も合流し、本体部Aで外部に開放している後部排気室12に流れることで最終的に後部排気室12から矢印Y9のように排出される(図12参照)。
(上面操作部での調理開始)
次に、上面操作部61(図13参照)を使用する場合について説明する。
既に通電制御回路200は起動され、統合表示手段100の液晶表示部の駆動回路215(図23参照)も予備起動されているから、統合表示手段100の液晶表示部には全ての加熱源を選択する入力キーが表示されている。そこで、その中の右側誘導加熱源6Rを選択する入力キー(図28に示す143〜145の何れかが当該キーになる)を押せば、液晶表示部の右側誘導加熱源6Rの対応エリア100R(火力用100R1と時間用100R2の計2個)の面積が自動的に拡大され、さらにその状態で各入力キー142〜145は場面毎に入力機能が切り替えられて表示されるので、その表示された入力キーを次々に操作すれば、調理の種類(調理メニューとも言う。例えば、湯沸し、煮込み、保温など)と、火力レベルや加熱時間などの調理条件が設定される。
そして所望の調理条件が設定できた段階では、図28に示すように入力キー146は「決定」という文字が表示されるので、これに触れれば調理条件の入力が確定する。なお、図27は右側誘導加熱源6Rを選択した場合である。
そして次に前記したように通電制御回路200は鍋適否判定処理を実施し、適合する鍋(被加熱物N)であると判定した場合、通電制御回路200は右側誘導加熱源6Rに、使用者が設定した所定の設定火力を発揮するように、自動的に適応する通電制御処理を実行する。これにより右側加熱コイル6RCからの高周波磁束により被加熱物Nの鍋が高温になり、電磁誘導加熱調理動作(調理工程)に入る。
(ワンタッチ設定調理)
右火力設定用操作部70には、使用者が1度押圧するだけで右側誘導加熱源6Rの火力を簡単に設定することができる各火力のワンタッチ設定用キー部90が設けられており、弱火力キー91、中火力キー92、および強火力キー93の3つのワンタッチキーを備えているから、前記統合表示手段100の入力キー操作による少なくとも1つのメニュー画面を経由することなく、弱火力キー91、中火力キー92、強火力キー93または3kW用キー94を押せば、その1回の操作で火力を入力できる。なお、左IH加熱源6Lを使用した調理も以上と同じ操作で開始できる。
(グリル加熱室での調理開始)
次に、グリル加熱室9の輻射式電気加熱源22、23(図16参照)に通電した場合について説明する。この調理は右側誘導加熱源6Rや左側誘導加熱源6L、中央誘導加熱源6Mの加熱調理中にも行えるが、所定の定格最大電力量を超えた使用は同時に行えないようにインターロック機能を組み込んだ制限プログラムが通電制御回路200に内蔵されており、調理器全体の定格電力の制限を超えないようになっている。
グリル加熱室9内部で各種調理を開始する方法には、上面操作部61の中で統合表示手段100の液晶表示部に表示される入力キーを使う方法と、輻射式電気加熱源22、23用操作ボタン95(図28参照)を押す方法の2つがある。
これら何れの方法でも、輻射式電気加熱源22、23を同時又は個別に通電することでグリル加熱室9内部において各種調理ができる。通電制御回路200は、温度センサー242、温度制御回路240からの情報を受けて、グリル加熱室9の内部雰囲気温度が予め通電制御回路200で設定している目標温度になるように、前記輻射式電気加熱源22、23の通電を制御し、調理開始から所定時間を経過した段階でその旨を報知し(統合表示手段100による表示や音声合成装置315による報知もある)、調理は終了する。
輻射式電気加熱源22、23による加熱調理に伴ってグリル加熱室9の内部には高温の熱気が発生する。このためグリル加熱室9の内部圧力は自然と高まり、後部の排気口9Eから排気ダクト14の中を自然と上昇していく。その過程で駆動用ヒーター駆動回路214により触媒用電気ヒーター121Hに通電され高温になっている脱臭用触媒121によって排気中の臭い成分が分解される。
一方、排気ダクト14の途中には補助排気用の軸流形送風機106が設けてあるため、排気ダクト14を上昇してくる熱気に対し、その送風機106を運転して矢印Y7(図16参照)で示すように本体部Aの内部の空気を排気ダクト14に取り入れることにより、その新鮮な空気にグリル加熱室9の高温空気は誘引され、温度が下がりながら排気ダクト14の上端部開口14Aから矢印Y8で示すように排気される。
このように排気ダクト14の上端部開口14A(図16参照)からの排気流により、その上端部開口14Aと隣り合っている後部排気室12の中の空気も誘引されて外部へ排出される。つまり、本体内部のグリル加熱室9と水平仕切り板25との間の空隙26の空気や上部部品室10内部の空気も一緒に後部排気室12を経由して排出される。
次に、左側誘導加熱源6Lを用いた加熱調理を行う場合の動作について説明する。なお、左側誘導加熱源6Rも右側誘導加熱源6Rと同様に調理前異常監視処理を終えた後に調理モードに移行し、また左側誘導加熱源6Lを使用する方法には、前面操作部60(図12参照)を使用する場合と、上面操作部61(図13参照)を使用する場合の2つがあるが、以下の説明では大径鍋が被加熱物Nとして使用された場合において、左側加熱コイル6LCに通電が開始されて調理開始された段階から説明する。
鍋底径が主加熱コイルMCの最大外径DA(図19参照)よりも遥かに大きな1つの楕円形や長方形の鍋(被加熱物N)を使用する場合、本実施の形態2の加熱調理器では、その楕円状の被加熱物Nを主加熱コイルMCで加熱するとともに、副加熱コイルSC1〜SC4で協同加熱することができることが出来るというメリットがある。
例えば、主加熱コイルMCと、その右側にある1つの副加熱コイルSC1の双方の上に跨るような楕円状の鍋(被加熱物N)であった場合を想定する。
そのような楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されて加熱調理が開始されると、楕円状の鍋(被加熱物N)が温度上昇していくが、主加熱コイルMCの赤外線センサー31L1(図19参照)と、副加熱コイルSC1の赤外線センサー31L2の双方は、他の赤外線センサー31L3、31L4、31L5の受光量との比較では外乱光(室内照明の光や太陽光など)の入力が少なく、温度上昇傾向にあるという現象を示すので、このような情報を基にして前記被加熱物載置判断部280が、楕円状の鍋(被加熱物N)が存在しているという判定を行う。
また、主加熱コイルMCの電流センサー227と副加熱コイルSC1〜SC4の各電流センサー267A〜267D(図23参照)によっても、上方に同一の被加熱物Nが載置されているか否かを判断する基礎情報が前記被加熱物載置判断部280(図23、図26参照)に入力される。電流変化を検出することで、前記被加熱物載置判断部280は主加熱コイルMCと副加熱コイルSCのインピーダンスの変化を検出し、楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されている主加熱コイルMCのインバーター回路MIV及び副加熱コイルSC1〜SC4の各インバーター回路SIV1〜SIV4を駆動し、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の内、楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されているもの(少なくとも1つ)に高周波電流を流し、楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されていない他の副加熱コイルに対しては、高周波電流を抑制又は停止するように前記通電制御回路200が指令信号を発する。
例えば、被加熱物載置判断部280が主加熱コイルMCと、1つの副加熱コイルSC1の上方に同一の楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されていると判断したときに、通電制御回路200は、主加熱コイルMCと特定の副加熱コイルSC1だけを連動して動作させ、予め定めた火力割合によってそれら二つの加熱コイルにそれぞれのインバーター回路MIV、SIV1によって高周波電力を供給する(この火力配分については、後で詳しく説明する)。
ここで「火力割合」とは、例えば使用者が左IH加熱源6Lで3000Wの火力で調理しようと調理開始している場合、通電制御回路200が、主加熱コイルMCを2400W、副加熱コイルSC1を600Wというように配分した場合、その2.4KWと600Wの比のことをいう。この例の場合では4:1である。また、その副加熱コイルSC1の外側位置にある個別発光部276(図19、図27参照)だけが黄色の発光状態(形態1)から赤色発光状態(以下、「形態2」という)に変化する、駆動回路278(図23参照)が個別発光部276を駆動し、個別発光部276にある所定の光源(赤色ランプやLED等)が発光、点灯し、ここまで発光、点灯していた黄色用光源は消灯する。従って実行中の副加熱コイルSC1だけが赤い光の帯でトッププレート21の上方から視認できるように表示される。他の副加熱コイルに対応した個別発光部276は発光を停止する。
この副加熱コイルSC1単体を駆動して誘導加熱調理することはできず、また他の3つの副加熱コイルSC2、SC3、SC4の各単体及びそれらを組み合わせても誘導加熱調理することはできないようになっている。言い換えると主加熱コイルMCが駆動される場合に初めてその周辺にある4つの副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の何れか1つ又は複数が同時に加熱駆動されることが特徴である。但し、4つの副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の全ての上方を覆うような大きな外径の被加熱物Nが置かれた場合、対流促進のモードを実施する場合には、次のように4つの副加熱コイルが駆動される制御パターンが、通電制御回路200の制御プログラムの中に用意されている。
主加熱コイルMCが加熱駆動されている場合に、同時に副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の全部又は一部が、所定の順序や火力で加熱駆動される。
主加熱コイルMCが加熱駆動している期間中、副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の全部又は一部が、所定の順序や火力で加熱駆動される。
主加熱コイルMCの加熱駆動が(例えば調理の終盤で)終了する前の所定時間、副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の全部又は一部が、所定の順序や火力で加熱駆動される。
また、このような協同加熱が行われている場合、通電制御回路200は、主加熱コイルMCと特定の副加熱コイルSC1だけに、予め定めた火力割合によってそれら二つの加熱コイルを専用のインバーター回路MIV、SIV1によって高周波電力を供給して加熱動作を実行しているから、この情報に基づいて通電制御回路200は、駆動回路278(図23参照)に駆動指令を発し、また個別発光部276は、前記したように協同加熱動作の開始時点から、実行中の副加熱コイルSC1を特定できるように発光する。
また、協同加熱を表示する一手段として、本実施の形態2では個別発光部276が発光、点灯して表示している。すなわち、個別発光部276が、最初の黄色の発光状態(形態1)から赤色発光状態(「形態2」)に変化した段階で協同加熱状態に入ったことが使用者には認識できる。
尚、このような表示形態ではなく、統合表示手段100の液晶表示画面にて文字で直接表示するものでも良い。
なお、広域発光部277(図19、図21、図27参照)は、使用者が主電源スイッチ63の操作ボタン63A(図12参照)を押して電源を投入し、異常判定が済んだ段階から駆動回路278(図23参照)によって駆動され、最初は黄色に発光、点灯しているので、楕円状の鍋(被加熱物N)を左IH加熱源6Lの上方に置く段階から、その載置場所を使用者に案内することができる。主加熱コイルMCに加熱用高周波電力が供給されて加熱動作が開始された段階で、通電制御回路200は広域発光部277の発光色を変更(例えば黄色であったものを赤色に)する。例えば広域発光部277にある黄色光源(ランプやLED等)の発光、点灯を止め、代わりにその光源の隣に設置している赤色光源(ランプやLED等)の発光、点灯を開始するようにしても良いし、多色光源(3色発光LED等)を使用し発光色を変更するようにしても良い。
また、所定の時間t(数秒〜10秒程度)楕円状の鍋(被加熱物N)を一時的に持ち上げたままにしたり、左右に移動したりしても、通電制御回路200は加熱動作を維持するとともに、この広域発光部277の発光、点灯状態を変化させず、使用者に対して楕円状の鍋(被加熱物N)を載置するのに好ましい場所を表示し続ける。ここで、前記所定の時間tを超えて楕円状の鍋(被加熱物N)を持ち上げたままにすると、楕円状の鍋(被加熱物N)が無いという判定を被加熱物載置判断部280が行い、通電制御回路200にその旨を出力する。通電制御回路200は、被加熱物載置判断部280からの判別情報に基づいて再度楕円状の鍋(被加熱物N)が置かれるまでの期間、一時的に誘導加熱の火力を下げたり、停止したりする指令を発する。この場合、使用者に対して楕円状の鍋(被加熱物N)を載置するのに好ましい場所の表示はそのまま維持するが、広域発光部277の発光、点灯状態(点灯色など)を火力の状態に合わせて変更しても良い。例えば火力が下がった状態では、オレンジ色に発光、点灯させたり火力が停止したら黄色に発光、点灯させたりすると、載置するのに好ましい場所の表示と併せて火力の状態を使用者に報知することが可能となる。
さらに、楕円状の鍋(被加熱物N)を例えば左に移動させると、被加熱物載置判断部280が主加熱コイルMCと、左側の副加熱コイルSC2の上方に同一の楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されていると判断し、通電制御回路200は、被加熱物載置判断部280からの判別情報に基づいて主加熱コイルMC及びその左側にある特定の副加熱コイルSC2の2者だけを連動して動作させ、予め定めた火力割合によってそれら二つの加熱コイルに対してそれぞれのインバーター回路MIV、SIV2から高周波電力を供給する。そして左側の副加熱コイルSC2への通電は停止され、既に実行中の「火力」(例えば3KW)と所定の火力配分(例えば、左IH加熱源6Lで3000Wの火力で調理しようと調理している場合、主加熱コイルMCは2.4KW、副加熱コイルSC1は600Wであるから、4:1)が維持されてそのまま調理が継続される。この3000Wという火力はそのまま統合表示装置100によって数字と文字で表示され続ける。
また、副加熱コイルSC1が協同加熱に寄与しなくなり、代わりに別の副加熱コイルSC2が協同加熱動作に加わったことで専用のインバーターSIV2に高周波電力が供給される。即ち、通電制御回路200は、被加熱物載置判断部280からの判別情報に基づいて副加熱コイルがSC1からSC2へ切り替えられたことを検知すると、駆動回路278に駆動指令を発し、個別発光部276が協同加熱動作を実行中の副加熱コイルSC2を特定できるように指令する。つまり、通電制御回路200は、その副加熱コイルSC2の外側(図19では左側)位置にある個別発光部276だけが発光、点灯するように駆動回路278が個別発光部276を駆動する。そのため、個別発光部276にある所定の光源(赤色ランプやLED等)が(形態2で)発光、点灯し、ここまで副加熱コイルSC2に近接した位置で発光、点灯していた赤色の光源は消える。
なお、主加熱コイルMCに流れる高周波電流IAと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる高周波電流IBの向きは、図21に実線の矢印で示すように、隣接する側において同じ向きとなることが加熱効率の観点から好ましい(図21では主加熱コイルMCにおいて反時計回り、4個の副加熱コイルSC1〜4は時計回りで一致している場合を示す)。これは、このように2個の独立したコイルの隣接する領域において、同一方向に電流が流れる場合、その電流で発生する磁束は互いに強め合い、被加熱物Nを鎖交する磁束密度を増大させ、被加熱物底面に渦電流を多く生成して効率良く誘導加熱できるからである。図22に破線で示すループは、図21で示した高周波電流IA、IBの流れる方向と逆の方向でそれら高周波電流を流した場合における磁束ループを示す。
この磁束ループで被加熱物Nの底壁面には、前記高周波電流とは逆の向きに流れる渦電流が生成され、ジュール熱を発生させる。主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4が接近して設置されている場合で電流が互いに逆方向に流れると、両者にて生成される交流磁場がその近接しているある領域範囲において干渉しあい、結果的にそれら主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4にて生成される鍋電流(被加熱物Nに流れる電流)を大きくできず、この鍋電流の二乗に比例して大きくなる発熱量を大きくできない。しかしながら、このことは逆に別の利点を生む。すなわち、前記したような磁束密度が高くなる隣接領域で、磁束密度が低く抑えられるため、主加熱コイルMCと、協同加熱動作する一つ又は複数個の副加熱コイルSC1〜SC4とを平面的に包含するような広い領域においては、被加熱物Nを鎖交する磁束の分布を平均化、つまり均一化でき、そのような広い加熱領域で調理をする場合に温度分布を平均化できるという利点がある。
従ってこの実施の形態では、加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4との隣接する領域において、互いに同一方向に電流を流すという方式を特定の調理メニューの場合には採用し、別の調理メニューによっては電流の向きを逆に反対方向にするという切り替え動作を採用している。なお、図27に示したような磁気ループは、加熱コイルに流れる高周波電流IA、IBの方向に応じて、生成される方向が決まる。
次に、図32〜図35に示すものは本発明の実施の形態2における加熱調理動作のフローチャートである。
このフローチャートの制御プログラムは、通電制御回路200の内部にある記憶部203(図23参照)に格納されている。
図32は前に説明したので、図33を説明する。まず調理を開始する場合、まず図11に示す調理器本体部Aの前面操作部60に設けた主電源スイッチ63の操作ボタンを押してONにする(ステップ1。以下、ステップは「ST」と省略する)。すると通電制御回路200には所定の電圧の電源が供給され、通電制御回路200は自ら調理器全体の異常有無チェックを実行する(ST2)。通電制御回路200自身の制御プログラムにより自己診断し、異常がない場合には送風機30の駆動モータ300を駆動するためのモータ駆動回路33(図22参照)が予備駆動される。また、左IH加熱源6L、統合表示手段100の液晶表示部の駆動回路215もそれぞれ予備起動する(ST3)。
そして異常があるかどうかは判定処理(ST2)の結果、異常が発見されなかった場合はST3に進む。一方、異常が発見された場合は所定の異常処理に進み、最終的には通電回路200自身が自ら電源を切って停止する。
ST3に進むと、通電回路200は、駆動回路278を制御して、全ての個別発光部276と広域発光部277を一斉に発光、点灯させる(黄色の光、形態1)。なお、個別発光部276又は広域発光部277の何れかが先に1つずつ発光、点灯し、次に別の発光部が発光、点灯し、次第に発光部の数が増えるという方法で全ての個別発光部276と広域発光部277が発光、点灯をすることでも良い。そしてこのように全ての個別発光部276と広域発光部277が(形態1で)発光、点灯したままの状態で使用者からの次の指令を待つ状態になる。なお、ここで全ての個別発光部276と広域発光部277は、例えば黄色の光を連続的に発している状態である(ST3A)。
次に前記したように左右誘導加熱源6L、6R(図12参照)があるから、そのどちらかを使用者が前面操作部60や上面操作部61で選択する(ST4)。ここで左側誘導加熱源6Lを選択すると、この選択結果は統合表示手段100における対応エリア100L1に表示される。図30に示すように、対応エリア100L1、100L2の面積は自動的に拡大され、その面積が一定時間維持される(右側誘導加熱源6Rなどの他の加熱源が運転されていない場合は、調理完了まで、この拡大された100L1、100L2の面積がそのまま維持される)。そして選択された加熱コイル6LCの上に鍋(被加熱物N)があるかどうかが検知される。この検知は被加熱物載置判断部280によって行われる。
通電制御回路200は、被加熱物載置判断部280からの検知情報に基づいて鍋(被加熱物N)が置いてあると判定すると(ST5)、その鍋(被加熱物N)が誘導加熱に適するものかどうかを判定する(ST6)。この判定は被加熱物載置判断部280からの判別情報によって行われる。被加熱物載置判断部280は、直径が数cm等のように余りにも小さい鍋(被加熱物N)や底面が大きく変形、湾曲等しているような鍋(被加熱物N)は電気的特性の違いで被加熱物Nを判別し、判別結果を判別情報として出力する。
そして、通電制御回路200は、被加熱物載置判断部280からの判別情報に基づいて鍋(被加熱物N)が適正であるかどうかの判定処理をST6で行い、適正であると判定した場合は加熱動作開始のステップST7に進む。統合表示手段100における左側誘導加熱源6Lの対応エリア100L1に、設定された火力(例えば、最小火力の「火力1」の150W〜「火力8」の2500W。「最大火力」の3000Wの9段階の何れか一つ)が表示される。例えば1000Wである。なお、最初に火力が所定の火力、例えば中火(例えば火力5で、1000W)にデフォルト設定されていて、使用者が火力設定を行わずともその初期設定火力で調理開始できるようにしたものでも良い。
また不適正であった場合、前記した統合表示手段100のような表示手段がこの段階で既に動作しているので、通電制御回路200は、その統合表示手段100に鍋(被加熱物N)が不適当である旨を表示させ、また同時に音声合成装置315にその旨のメッセージ情報を出力してスピーカー316より音声で報知出力させる。
このように左右誘導加熱源6L、6Rの何れかを選択した場合、予め定められた火力(前記したように例えば1000W)に基づいて自動的に調理開始を行うので、新たに調理開始指令を入力キーやダイアル、操作ボタンなどで行わなくて良い。もちろん、使用者は誘導加熱開始後に随時火力を任意に変更できる。
ST7Aで左側誘導加熱源6Lにて誘導加熱動作が開始されると、その加熱源を構成する主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4による誘導加熱が行われるが、ST5において鍋(被加熱物N)が主加熱コイルMCだけの上にあるのか、又はそれに加えてどの副加熱コイルSC1〜SC4の上にあるのかが検知されているので、主加熱コイルMCだけの上にある場合は、その主加熱コイルMC単独での誘導加熱になり、また少なくとも1つの副加熱コイルSCの上にも同じ鍋(被加熱物N)が置かれている場合は、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCによる協同加熱になる。ST8ではこのような判定処理が行われる。
協同加熱の場合、それに関与する副加熱コイルSC1〜SC4と主加熱コイルMCに対し、通電制御回路200の制御の下に、インバーター回路MIV、SIV1〜SIV4から高周波電流がそれぞれ供給され、協同加熱が開始される(ST9)。そして通電制御回路200からの制御指令により広域発光部277は黄色の発光、点灯状態(形態1)から赤色の発光、点灯状態(形態2)に発光形態を変化させる(ST10)。なおST3Aと同じ黄色を発光、点灯させたまま、発光、点灯を間欠的にして使用者には点滅しているように見えるようにすること、又は発光、点灯の明るさを増すことなどの変化にしても良く、何れもこの発明でいう形態の変化、切り替えになる。
また、通電制御回路200は、統合表示手段100に対して、例えば主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1による協同加熱動作中である旨の情報を火力情報と共に出力する。これにより、加熱動作開始している副加熱コイルがSC1であることが前記統合表示手段100の対応エリア100L1やL2に文字や図形などで表示される。図30では「主コイルと左側の副コイル同時加熱中」という文字での表示例を示す。なお、その表示部分は、対応エリアL1の中であるため、火力情報「火力:3KW」という表示と隣接している。つまり火力表示と協同加熱動作を示す情報の表示の位置は隣接している。ここでCMは、協同加熱動作であることを示す情報に該当するものである。また、通電制御回路200は、同様側の副コイルも加熱しています」等という音声情報を作成してスピーカー316に出力し、スピーカー316から上記メッセージが表示と同時に音声で報知される。
なお、広域発光部277の発光、点灯状態継続とは別に、協同加熱に関与している副加熱コイルSC1〜SC4を使用者が視覚的に特定できるように、例えば図21に示したように、副加熱コイルSC1〜SC4毎に設けた個別発光部276を同時に発光、点灯させても良い。
そして使用者からの加熱調理停止指令が来るまでST8〜ST10の処理が数秒間隔の短い周期で繰り返される。一旦、右側の副加熱コイルSC1が協同加熱に関与していたとしても、使用者が調理の途中で鍋(被加熱物N)を無意識に、又は意識して前後左右に少し移動させる場合があるため、その移動後には鍋(被加熱物N)の載置場所が変わってしまう。そこで、常に協同加熱の判断ステップST8では、前記被加熱物載置判断部280の情報を音声合成装置315にも出力する。これにより、音声合成装置315では、被加熱物載置判断部280や温度センサー31L1〜31L5の情報から通電制御回路200加熱駆動すべき副加熱コイルSC1〜SC4を特定した処理を行った場合、その結果をリアルタイムで報知する。
一方、ST8で協同加熱ではないとの判断がされた場合(図32でいうステップMS11に相当する)、通電制御回路200が主インバーター回路MIVを制御して主加熱コイルMCのみを駆動させる。これにより、主加熱コイルMCに対し、インバーター回路MIVから高周波電流が供給され、個別加熱が開始される(ST11)。そしてその個別加熱に関与している主加熱コイルMCに対応してその加熱域の外周縁部に光を放射する個別発光部276を、黄色の発光、点灯状態(形態1)から赤色の発光、点灯状態(形態2)に発光形態を変化させる(ST12)。
なお、ST3と同じ色を発光、点灯させたまま、発光、点灯を間欠的にして使用者には点滅しているように見えるようにすること、又は発光の明るさを増すことなどの変化にしても良く、何れも形態の変化、切り替えの一種である。なお、個別発光部276の発光、点灯状態継続とは別に、広域発光部277の発光、点灯をそのまま継続しても良いが、消灯しても良い。そしてステップ13に進む。
そして使用者からの加熱調理停止指令が来た場合、あるいはタイマー調理を行っていて所定の設定時間が経過した(タイムアップ)ことが通電制御回路200で判定された場合、通電制御回路200は主インバーター回路MIVと、副インバーター回路SIV1〜SIV4を制御して、主加熱コイルMCと、その時点で加熱駆動されていた全ての副加熱コイルSC1〜SC4の通電を停止させる。また通電制御回路200はトッププレート21の温度が高温であるという注意喚起を行うため、全ての広域発光部277と個別発光部276を赤色で点滅させる等の方法で高温報知動作を開始させる(ST14)。
高温報知動作は、主加熱コイルMCと、全ての副加熱コイルSC1〜SC4の通電が停止されてから予め定められていた所定時間(例えば20分間)経過するまで、または温度検出回路240からの温度検出データによってトッププレート21の温度が例えば50℃に下がるまで(自然放熱のため通常20分間以上要する)継続する。このような温度低下又は時間経過の判断がST15で行われ、高温報知条件を満たした場合、通電制御回路200は高温報知を終了させ、加熱調理器の動作を終了する(この後、自動的に電源スイッチもOFFになる。即ち、電源スイッチがONされたときに、図示しない電源スイッチON保持用のリレーへの電源供給が絶たれることにより、このリレーがOFFすることで、電源スイッチも自動的にOFFになる。)。
なお、通電制御回路200は、高温報知動作開始ST14と同期して、前記統合表示手段100の液晶画面に「トッププレートがまだ高温であるから手を触れないように」という注意文やそのようなことが分かる図形などを表示する。なお統合表示手段100の周囲でその近傍に、LEDによって「高温注意」という文字がトッププレート21の上に浮かび上がって表示されるような表示部を別に設けてそれで高温報知を更にしても良い。
以上のような構成であるから、この実施の形態2においては、従来加熱できなかったような大径の鍋も誘導加熱でき、しかも加熱コイルに通電が開始されて実質的な誘導加熱動作が始まる前に、全ての加熱領域を個別発光部276と広域発光部277の発光、点灯によって使用者に知らせることができる。その上で使用者が加熱源を選択して加熱動作が開始された後で、個別発光部276と広域発光部277の発光、点灯状態が使用者には視認できるから、鍋(被加熱物N)を置く前の準備段階でも鍋(被加熱物N)を載置する最適な場所が分かり、使用者には使い勝手が良い。
また高温報知もその個別発光部276と広域発光部277を利用して行うので、部品点数を増やすことなく、安全性の高い調理器を提供できる。
次に、広域発光部277が、黄色の発光、点灯状態(形態1)から赤色の発光、点灯状態(形態2)に発光形態が変化(ST10)した後、協同加熱動作をする副加熱コイルがSC1からSC2へ切り替わった場合の動作について図34用いて説明する。
前記したように、使用者が楕円状の鍋(被加熱物N)をトッププレート21上で例えば左に移動させると、被加熱物載置判断部280が主加熱コイルMCと、左側の副加熱コイルSC2の上方に同一の楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されていると判断し、この旨の判別情報を通電制御回路200に出力する。
図34において、通電制御回路200は、被加熱物載置判断部280からの判別情報に基づいてこのことを検知すると(ST10A)、副加熱コイルSC1に対応する副インバーター回路SIV1の制御を停止して、主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV2を制御して、主加熱コイルMCとその左側にある特定の副加熱コイルSC2だけを連動して動作させる。これにより、予め定めた火力割合によってそれら二つの加熱コイルMCとSC2に対してそれぞれのインバーター回路MIV、SIV2から高周波電力が供給される。そして右側の副加熱コイルSC1への通電は停止され、既に実行中の「火力」(例えば3000W)と所定の火力配分(例えば、左IH加熱源6Lで3KWの火力で調理しようと調理している場合、主加熱コイルMCは2.4kW、副加熱コイルSC1は600Wであるから、4:1)が維持されてそのまま調理が継続される。この3000Wという火力はそのまま統合表示装置100によって数字と文字で表示され続ける(ST10B)。
さらに加熱動作している副加熱コイルがSC1からSC2へ切り替わったことが前記統合表示手段100の対応エリア100L1に文字や図形などで表示される。なお対応エリア100L2に表示しても良い。
そして次のステップST10Cで使用者が火力設定を変えない限り、使用者からの加熱調理停止指令が来るまでST8〜ST10の処理が繰り返され、使用者からの加熱調理停止指令が来た場合、あるいはタイマー調理を行っていて所定の設定時間が経過した(タイムアップ)ことが通電制御回路200で判定された場合、図33のST14へ飛び、通電制御回路200は主加熱コイルMCと、その時点で加熱駆動されていた全ての副加熱コイルSC1〜SC4の通電を停止し処理を終了する(ST14〜ST16)。
この加熱動作終了が前記統合表示手段100の対応エリア100L1に表示される。また使用者が音声合成装置315をスイッチ(図示せず)で切っていない限り、ST10と同様に、音声でも同時に運転終了が報知される。なお、図32〜図35では、制御プログラムを一連のフローチャートで説明したが、異常があるかどうかの判定処理(ST2)や、鍋の載置有無判定処理(ST5)、鍋適正判定処理(ST6)などはサブルーチンとして用意されている。そして加熱制御動作を決めるメインルーチンに対して適宜のタイミングでサブルーチンが割り込み処理されるようになっており、実際の誘導加熱調理実行中には、異常検知や鍋有無検知などが何度も実行されている。
一方、ステップST10Cで使用者が「大径鍋」加熱時の火力設定を変えた場合について説明する。
この実施の形態2に係る誘導加熱調理器は、トッププレート21上に載置された被加熱物Nを加熱する主加熱コイルMCと、この主加熱コイルの外側にそれぞれ隣接して設置された複数個の副加熱コイルSC1〜SC4からなる副加熱コイル群SCと、主加熱コイルMCに高周波電流を供給する主インバーター回路MIVと、副加熱コイル群の個々の副加熱コイルにそれぞれ高周波電流を独立して供給する副インバーター回路群SIV1〜SIV4と、主加熱コイルと第1及び又は副加熱コイル上に同じ被加熱物Nが載置されているか否かを判断する被加熱物載置判断部280、使用者によって操作される誘導加熱時の火力を設定する入力部64R、64L、70、71,72、90、94、142〜145と、この入力部の設定情報が表示される統合表示手段100と、前記入力部の設定情報に基づき前記主インバーター回路MIVと、副インバーター回路群SIV1〜SIV4の出力を独立して制御するとともに前記統合表示手段100を制御する通電制御回路200と、を備え、通電制御回路200は、前記被加熱物載置判断部280からの情報に基き前記主加熱コイルMCと副加熱コイル群SCとによる協同加熱動作が開始された場合、使用者の設定した所定火力となるように、主インバーター回路MIVの出力と副インバーター回路群SIV1〜SIV4の出力とを所定の配分に制御し、その後協同加熱動作する副加熱コイルSCの数が増加、減少、又は他の副加熱コイルに切り替わった状態では、変化前の出力配分を維持し、前記表示手段100は、前記協同加熱動作中における副加熱コイルの数の増加、減少又は他の副加熱コイルへの切り替えに拘らず、前記所定の火力が目視できる表示をする構成にしてある。
図34のST10Cにおいて、火力の変更指令があったと判断された場合は、図35のST17に進む。ST17ではその変更後の火力が所定の火力レベル(例えば501W)よりも大きいか小さいかの判断がされ、所定火力よりも大きい火力に変更される場合はST18に進み、通電制御回路200の制御によって所定の火力配分が維持される。つまり、前記した3000Wの例では、実行中の火力が3000Wの場合、所定の火力配分とは、主加熱コイルMCは2400W、副加熱コイルSC2は600Wで、4:1であったので、この配分が維持される。そして通電制御回路200によって変更後の設定火力が統合表示手段100の対応エリア100L1に「火力中 1KW」のように表示される。
一方、所定の火力レベル(501W)より小さい火力(150W、300Wと500Wの3つがある)に変更される場合、ステップ17の処理でステップ19に進むようになり、別の火力配分になるように通電制御回路200が制御指令信号を主インバーター回路MIVと、副インバーター回路群SIV1〜SIV4に出力する。このため、協同加熱する副加熱コイルSCが1つの場合でも2個以上の場合でも、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCとの火力の差は一定の率に維持される。またこの変更後の火力は、そして変更後の設定火力が統合表示手段100の対応エリア100L1に「火力:小 500W」のように表示される。
具体的に代表的な火力と主副火力比の例を、図36と図37に示す。
図36(A)は、最大火力3KWの場合の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力値(W)で、主加熱コイルと副加熱コイル全体の火力比4:1固定の場合である。
図36(B)は、火力6(1.5KW)の場合の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力値(W)を示し、主加熱コイルと副加熱コイル全体の火力比4:1固定の場合である。
図37(A)は火力3(500W)の場合の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力値(W)を示し、主加熱コイルと副加熱コイル全体の火力比3:2に変化した場合である。
一方、所定の火力レベル(501W)より小さい火力(150W、300Wと500Wの3つ)に変更される場合、火力比が4:1では、副加熱コイルSCの最小駆動火力を50W以下で駆動することになり、問題である。例えば図37(B)に示すように、500Wの火力を、火力比4:1で得ようとすると、副加熱コイルSCを25Wや33Wという小火力にて駆動することになるからである。
すなわち、現実の製品では被加熱物Nとなる金属鍋の個々のインピーダンスが異なるため、所定値以上の大きさ高周波電力を印加しても鍋に投入され熱に変換される割合は一定ではないことから、本実施の形態で説明したように電流検出センサー227で、左IH加熱コイル6LCと共振コンデンサー224Lの並列回路からなる共振回路に流れる電流を検出し、被加熱物Nがあるかどうかという判定や誘導加熱に不適当な鍋(被加熱物N)であるかどうかの判定、さらには正規の電流値に比較して所定値以上の差の過少電流や過大電流が検出されていないかどうか等の判定に利用している。これにより指定された火力を発揮するように誘導加熱コイルに印加する電流を細かく制御している。従って、火力設定を小さくした場合、流れる電流も微小で、その検知が正確にできなくなる問題が生ずる。言い換えると、火力が大きい場合は共振回路に流れる電流成分の検知が比較的容易であるが、火力が小さい場合は、電流センサーの感度上げるなどの対策を実施しない限り火力変化に正確に対応できないことがあり、目的とするような正確な火力制限動作を実行できないからである。
図示していないが、前述したように、実際にはインバーター回路MIV、SIV1〜SIV4に対する電源の入力電流値も検知する入力側の電流センサーを設けているので、この電流値と、前記した(出力側の)電流センサーによるコイルの出力側の電流値の両方を併用して適切な制御をするものでも良い。
なお、副加熱コイルSCも、左IH加熱コイル6LCの主加熱コイルと同様に、渦巻状に0.1mm〜0.3mm程度の細い線からなる集合線で形成されているが、誘導加熱を生じさせる電流が流れる断面積自体が小さいから、主加熱コイルMCに比較して大きな駆動電力を投入できず、最大加熱能力も相対的に小さい。但し、前記したようにコイル単体の細い線の線径を更に細くし、かつより多く巻いてコイル導線の表面積を増やせば、インバーター回路SIV1〜SIV4の駆動周波数を上昇させても表皮抵抗を減らすことができ、損失を抑制して温度上昇も抑制しながら更に小さな火力を連続的に制御できる。
図37(B)は、火力3(500W)の場合の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力値(W)を示し、主加熱コイルと副加熱コイル全体の火力比4:1固定の場合である。
そこで、この実施の形態2では火力配分を3:2に変更する制御を行っている。
なお、火力120Wや300Wの場合、火力配分3:2でも最小駆動火力50W以上が維持できない場合があるので、その場合は、統合表示手段100の対応エリア100L1に「設定された火力が小さすぎて加熱調理できません。火力を500W以上に設定して下さい」のように火力変更を促す表示がされるか、または主加熱コイルMCだけの加熱に制限するなどの制御が行われる。実際に主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの両方に跨るような大きな鍋を120Wや300Wで加熱する場面は想定しにくいので、上記のような制御をしても実際の使い勝手を損なう懸念はない。
協同加熱動作時に、主加熱コイルMCと副加熱コイル群SC1〜SC4の火力比、すなわち主副火力比が略一定の範囲となるように、それぞれに供給する電力量を通電制御回路200にて制御しているが、上記したように小さな火力設定の場合に印加する電力量を低く抑えることが難しいから、実際の電力供給時間を制限することによって単位時間当たりの電力量を下げるような制御にしても良い。例えば副インバーター回路SIV1〜SIV4から各副加熱コイルSC1〜SC4に対して電力印加時間を通電率制御によって例えば50%に減らせば、実際に加熱に寄与する単位時間あたりの電力量を50%にすることが可能である。つまり印加する電力の周波数を制限するだけでは火力を減らすことが困難な場合は、通電率制御により電力を供給する時間と供給しない時間との割合を減らすことで更に実質的に作用する電力を、より小さな値まで絞ることができるので、このような制御を採用しても良い。
なお、この発明の実態形態2において協同加熱時に、主加熱コイルMCと副加熱コイル群SC1〜SC4との火力比を略一定に維持するとしているが、協同加熱中のあらゆる場面において常に火力比を「所定の比」に維持することが保証されたものではない。例えば、加熱駆動中には常にインバーター回路の入力側と出力側に流れる電流との差を検知し、その結果を通電制御回路200にフィードバックする制御が行なわれているため、火力設定を使用者が変えた場合に、その変更直後は過渡的に制御が安定しない場合があり、目標とする火力比から一時的に外れることがある。
また鍋を協同加熱中に横に移動させたり、短時間だけ持ち上げたりした場合、そのような挙動を電流センサー227、267A〜267Dが検知して誤った使用方法でないかどうか等を識別することが必要であり、適当な制御方法を選択する時間が必要となる。
この識別や適応制御の実行が確定するまでの間、目標とする火力比から一時的に外れることがあっても良い。使用者は瞬間的な印加電流の変化などを知るよりも、自分が設定した火力が意図に反して変更されていないことを確認できれば、調理の過程で不安感を抱くことがない。
なお、火力設定を使用者が変えない場合であっても、別の調理を使用者が選択した場合、主加熱コイルMCと副加熱コイル群SC1〜SC4との火力比は変わる場合がある。例えば外形が長方形の大型のフライパンを用い、それを前後方向に長くなるように、かつ中心点X1より少し左側位置でトッププレート21の上に置いてハンバーグを数個焼いている場合は、図19に示した主加熱コイルMC並びに左斜め前の第2の副加熱コイルSC2と左斜め後部の第4の副加熱コイルSC4で加熱することになる。
そのフライパン底面全体が平均的に温度上昇するよう、例えば火力1.5KW又は2KWが推奨され、所定の火力比で主加熱コイルMCと副加熱コイルSC2、SC4に対する供給電力量の制御目標値が設定されるが、同じ位置に同じフライパンを置いて2KW又は1.5KWで今度は数個以上の卵を使った卵焼きをする場合、フライパン底面全体に調理の具材(卵を溶いたもの)が薄く広がるので、フライパンの底面中央部より周辺部の温度上昇を早め、周辺部の火力を少し強めた方が調理の出来映えが良い場合がある。
そこでこのような調理の場合は、2つの副加熱コイルSC2、SC4全体の火力の方を、主加熱コイルMCの火力よりも大きくする。このように実際の調理内容によっては、主加熱コイルMCと副加熱コイル群SC1〜SC4との火力比を(同じ火力レベルであっても)変えることが望ましい。
また実施の形態1でも説明したように、このような温度均一性が重視される調理メニューの場合、例えば加熱開始から所定時間の間は、中央にある主加熱コイルMCを最終火力で駆動しておき、同時に協同加熱に参加する副加熱コイルSC1〜SC4をそれよりも大きな火力で駆動する(ON状態とする)ことにより、フライパンなどの鍋肌(鍋の側面)だけを余熱するといった調理が実現できる。
なお、この実施の形態2では、主加熱コイルMC側の方が副加熱コイル群SC1〜SC4全体の火力よりも大きな火力を発揮するように設定されているが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。主加熱コイルMC側と個々の副加熱コイルSC1〜SC4の構造や大きさ、あるいは副加熱コイルSCの設置数などの条件によって、色々な変更が可能であり、例えば、副加熱コイル群SC1〜SC4全体の火力の方を主加熱コイルMCの火力よりも大きくしたり、両者を同じにしたりしても良い。
但し、一般家庭での使用を考えた場合、通常は円形の普通サイズの鍋、例えば直径20cm〜24cm程度の鍋を使用する頻度が高いので、そのような一般的な鍋を使用した場合、主加熱コイルMC単独で誘導加熱することになるから、このような調理に必要な最低火力を発揮できる配慮をすることが望ましい。一般家庭で使用される場合は通常サイズの鍋の使用頻度が大きく、大径鍋の使用頻度は小さいと考え、それを前提にすれば、一般家庭で使用されるのは主に主加熱コイルであると考え、中央の加熱コイルを主加熱コイルMCと呼んでいる。
また協同加熱時、つまりある時間内において2つ以上の独立した誘導加熱コイルを共に駆動して磁気的に連携させる場合は、主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4の動作タイミングを合わせることが安定した確実な制御の観点から望ましい。例えば、主インバーター回路MIVと第1の副インバーター回路SIV1による加熱の開始タイミング、加熱の停止タイミング、火力の変更タイミングの少なくとも何れか1つを合わせることが望ましい。この一例としては、主インバーター回路MIVと第1の副インバーター回路SIVIが同時に動作している状態から、第2の副インバーター回路SIV2に動作が切り替わる際、主インバーター回路MIVと第1の副インバーター回路SIVIの動作を同期させて停止し、その後、主インバーター回路MIVと第2の副インバーター回路SIV2の2つを同時に駆動開始させるようにすることが考えられる。
なお、主インバーター回路MIVと各副インバーター回路SIVは、駆動直後の所定時間(例えば10秒間)だけは所定の低火力に制限され、この所定時間内に実施の形態1において図33で示したような、異常があるかどうかの判定処理(ST2)や、鍋の載置有無判定処理(ST5)、鍋適正判定処理(ST6)などの一部又は全部を割り込み処理し、問題なければ、その後自動的に使用者が設定されている火力まで増加させて調理続行するという制御にしても良い。
なお、上記の例では、加熱コイルと共振コンデンサーの並列回路から成る共振回路を例に挙げて説明したが、加熱コイルと共振コンデンサーの直列回路から成る共振回路を用いても良い。
また、この実施の形態2では、左側加熱コイル6LCが誘導加熱中である場合には左冷却室8Lの送風機30のみを運転し、右冷却室8Rの送風機30は運転しない、という前提で説明したが、加熱調理器の使用状態(例えば左右の加熱コイル6LC、6RCを同時に駆動して直前まで別の調理をしていたとか、あるいは中央誘導加熱源6Mやグリル加熱室9を使用するとかのケースをいう)や、上部部品収納室10の温度等の環境によっては、左右の冷却室8L、8Rの各送風機30を同時に運転しても良く、また左右それぞれの送風機30の運転速度(送風能力)は常に同じではなく、一方又は両方を調理装置使用状態に応じて適宜変化させるようにしても良い。
また、左右の冷却ユニットCUの外形寸法は必ずしも同じでなくともよく、送風機30や回転する翼部30F、モータ300、ファンケース37、部品ケース34の各部寸法も、冷却される対象物(誘導加熱コイル等)の発熱量や大きさ等に応じて適宜変更できるが、左右の誘導加熱源6L、6Rの最大火力が同等の場合には、2つの冷却ユニットCUの構成部品の寸法や仕様を可能な限り共通化し、生産コスト低減や組立性向上を図ることが望ましい。冷却ユニットCUを左右何れか片側に設置することなど変更することは本発明の趣旨とは何ら関係しない。
また、以上の実施の形態2では、統合表示手段100は、左側誘導加熱源6L、右側誘導加熱源6R、中央誘導加熱源6M、輻射式電気加熱源(ヒーター)22、23の4つの熱源の動作条件を個別又は複数同時に表示できる上、入力キー141〜145をタッチ操作することで加熱動作の開始や停止を指令し、また通電条件を設定することが出来たが、このような通電制御回路200に対する入力機能を備えず、単なる表示機能だけに限定したものであっても良い。
さらに前記主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の上方に同一の鍋(被加熱物N)が載置されているか否かを判断する被加熱物載置判断部280は、上記実施の形態で説明した赤外線センサー31のように温度を検出するものや、電流検出センサー227のように加熱コイルに流れる電流を検出するものの他に、センサーの上方に鍋(被加熱物N)があるかどうかを光学的に検知する手段を用いても良い。例えば、トッププレート21の上方に鍋(被加熱物N)がある場合は、台所の天井の照明器具や太陽光などが入射されないが、鍋(被加熱物N)が無い場合はそれら照明光や太陽光などの外乱光が入射するので、これらの変化を検知するものであっても良い。
また加熱コイルに流れる電流とインバーター回路に流れる入力電流とに基づいて鍋(被加熱物N)の材質を判定する方法以外としては、例えば加熱コイルに流れる電圧とインバーター回路に流れる入力電流とに基づいて鍋(被加熱物N)の材質を判定する方法など、他の電気的特性を利用する方法が考えられる。例えば、特開2007−294439号公報には、そのようにインバーター回路への入力電流値と加熱コイルに流れる電流値とに基づいて被加熱体の材質と大きさを判別する技術が紹介されている。
なお、この発明の実態形態2で、主加熱コイルMCと1つ以上の副加熱コイルSC1〜SC4の上に、同一の鍋(被加熱物N)が載っていることを被加熱物載置判断部280が「判断する」と説明しているが、実際に鍋が1つであること自体は判断していない。つまり現実に置かれた鍋の数をカウントする処理は採用していない。この種の誘導加熱調理器においては、一つの誘導加熱コイルの上に複数個の被加熱物Nが同時に載せられた状態で調理されるということは想定しにくいので、本発明者らは、前記した電流センサー227、267A〜267Dによって主加熱コイルMCと1つ以上の副加熱コイルSC1〜SC4のインピーダンスの大きさを検知し、そのインピーダンスに大きな差がない場合を「同一の鍋(被加熱物N)が載っていること」とみなすことにしたものである。
言い換えると、被加熱物載置判断部280は図23に示すように、主加熱コイルMCと1つ以上の副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流の大きさが分かるから、それぞれのインピーダンスの大きさが分かる。そこでこのインピーダンスの値が所定の範囲に入っている場合には、同一の鍋(被加熱物N)が載っているという判断信号を通電制御回路200に送信する。同じように赤外線センサー31で温度を検知する場合も、複数個の加熱コイルに対応した各赤外線センサー31の検出温度が同等であるかどうかという比較結果から同一の鍋(被加熱物N)が載っていると被加熱物載置判断部280が判断するものであり、前記した鍋の有無によって受光量が変化することを利用した光センサーという手段を用いる場合も、光の受光量の大小比較から主加熱コイルMCと1つ以上の副加熱コイルSC1〜SC4の上に鍋が載っていると処理することが現実的である。
前記したように、被加熱物載置判断部280が、主加熱コイルMCの上方とその周辺にある4つの副加熱コイルSC1〜SC4の上にも跨るような大きさの被加熱物Nが載置されていると判断した場合、誘導加熱を開始する前の最初の段階(異常検知処理を終えたあと)、図30に示すように、統合表示手段100には、選択できる調理メニューとしては、実施の形態1と同様に「高速加熱」、「揚げ物」、「湯沸し」、「予熱」、「炊飯」、「茹で」、「湯沸し+保温」という7つが表示される。
そこでこれら調理メニュー選択用の7つのキーE1A、E1B、E1C、E2A、E2B、E3A、キーE3Bの部分の内、例えば高速加熱のキー部分にタッチすると、図26に示すように、高速加熱の調理メニューが選択され、「高速加熱」が選択されたことが文字で表示される。図30では選択キーE1A自体がそのまま表示され続けることで高速加熱の実行を示している。
この実施の形態2においても、この高速加熱を選定した場合、被加熱物Nに加える火力を手動で設定でき、主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力は、実施の形態1と同様に120W〜3000Wまでの範囲での中から使用者が任意で選定できる。
主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の主副火力比は、使用者が選定した上記合計火力を超えない限度で、かつ所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。また主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。
また、調理メニュー選択用の7つのキーの内、「茹で」の選択キーE1Cをタッチすれば、 「茹で」の調理メニューを行なえる。例えば主にパスタを茹でる目的で使用される大径で深い「パスタ鍋」という深鍋を用いる場合でも、この実施の形態2では高速度で湯を沸かし、茹で調理に移行できる。
例えば火力のフォルト値は2000Wであるが、使用者は最初から火力を3000Wに設定して加熱開始すると良い。この場合、主副火力比は自動的に制御部100で決定され、使用者が任意に設定しなくとも良く、例えば主加熱コイルMCの火力は1000W、副加熱コイル4つの内の合計火力は2000Wに設定される。水が沸騰した際に、通電制御回路200は報知信号を出し、統合表示手段100の所定のガイドエリア100GDに、パスタや麺の投入を促す表示を行い、同時に音声合成装置315で使用者にその旨報知する。このときに、火力を再度設定しない場合は、自動的に火力を下げる旨報知する。
使用者が何の操作もしない場合、実施の形態1のように、沸騰状態になると通電制御回路200は火力を下げる指令信号を主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に出力する。使用者が再度火力を設定した場合、あるいは統合表示手段100の所定の表示エリア100L2に現れる「茹で開始」という入力キーをタッチすると、再度3000W加熱が開始されが、この場合、隣接する4つの副加熱コイルを、例えばSC1、SC2の2個の組と、SC3、SC4の2個の組に分け、これら2つの組を交互に15秒ずつ、それぞれの組の火力総和は1500Wずつに設定されて加熱駆動する。
このようにして沸騰以後はお湯の対流を促進する制御が自動的に行われる。なお、また使用者が沸騰直後に、火力を3.0KW未満、例えば2。0KWや1.0KWに下げても、その火力量の総和を超えない範囲で、同様な対流促進制御による加熱動作が実行される。
以上のように、本実施の形態2においては、加熱条件を表示する統合表示手段100には前記した7つの調理メニューE1A、E1B、E1C、E2A、E2B、E3A、キーE3B選択用キーが、使用者によって選択操作可能な状態に表示される。このため、目的とする調理メニューの選択によって適合する加熱駆動パターンが制御部により自動的に決定されるから、加熱時間重視や温度均一性重視などの使用者の目的、希望に応じた加熱コイルの駆動形態になることに加え、その調理メニューの選択キーが表示部で操作できることにより使用者の誤使用解消や精神的な負担の軽減等ができるという利点がある。
以上説明した通り、実施の形態2に係る誘導加熱調理器は、第1の発明の構成を備えている。すなわち、実施の形態1に係る誘導加熱調理器は、被調理物を入れる鍋などの被加熱物Nが載置されるトッププレート21を上面に備えた本体部Aと、前記トッププレート21の下方に隣接して配置された第1の誘導加熱源6L及び第2の誘導加熱源6R、これらの加熱源の各誘導加熱コイル6RC、6LCに誘導加熱電力を供給するインバーター回路と、このインバーター回路の出力を制御する通電制御回路200と、この通電制御回路200に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部Eと、を有し、前記トッププレート21下方の前記本体部Aの内部には前記第1、第2の誘導加熱源6L、6Rの各誘導加熱コイルを収容する平面視が横長方形の収納空間10を備え、前記第1の誘導加熱源6Lは円形な中央コイル(主加熱コイル)MCと、この周囲に配置した細長形状の複数個の側部コイルSC1〜SC4とを備え、前記第2の誘導加熱源6Rの円形加熱コイル6RCは、前記側部コイルを包含する円の直径(R3の2倍。DB:約200mm)より小さく、かつその中央コイルMCの外径(R1の2倍。約130mm)よりも大径(R2の2倍。約180mm)であり、前記第1の誘導加熱源6Lは、中央コイルMC単独での誘導加熱と、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱とを被加熱物Nの大きさに応じて自動的に又は手動にて切り替え可能な構成にしたものである。これにより限られた面積のトッププレート21の上で、中央コイルMC単独加熱、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱及び第2の誘導加熱源6R単独加熱、という3つの加熱手段を選択でき、単に2種類の円形加熱コイルを有する従来の2口タイプの調理器よりも幅広い大きさの被加熱物Nに対応することができ、使い勝手を向上させることができる。
また、実施の形態2に係る誘導加熱調理器は、第2の発明の構成を備えている。すなわち、実施の形態2に係る誘導加熱調理器は、被調理物を入れる鍋などの被加熱物Nが載置されるトッププレート21を上面に備えた本体部Aと、前記トッププレート21の下方に隣接して配置された第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R及び第3の誘導加熱部6Mと、これらの加熱部の各誘導加熱コイルに誘導加熱電力を供給するインバーター回路と、このインバーター回路の出力を制御する制御部200と、この制御部に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部と、を有し、前記トッププレート21下方の前記本体部Aの内部には前記第1、第2、第3の加熱部6L、6R、6Mの各誘導加熱コイルを収容する平面視が横長方形の収納空間10を備え、前記第1の誘導加熱部6Rは円形な中央コイルMCと、この周囲に配置した細長形状の複数個の側部コイルSC1〜SC4とを備え、前記第2の加熱部6Rの円形加熱コイル6RCは、前記第1の誘導加熱部6Lの直径(R3の2倍。DB:約200mm)より小さく、かつ前記中央コイル6MCの外径(約130mm)よりも大径(180mm)であり、前記第3の加熱部には前記第2の加熱部6Rの加熱コイル6RCの外径(180mm)よりも小径(約130mm)な円形コイル6MCを具備し、前記第1の誘導加熱部6Rは、中央コイルMC単独での誘導加熱と、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱とを被加熱物Nの大きさに応じて自動的に又は手動にて切り替え可能な構成にしたものである。これにより限られた面積のトッププレート21の上で、第1の誘導加熱部6Lの中央コイルMC単独加熱、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱、第2の加熱部6R単独加熱及び第3の加熱部6M単独加熱、という4つの加熱手段を選択でき、単に3種類の円形加熱コイルを有する従来の2口タイプの調理器よりも幅広い大きさの被加熱物Nに対応することができ、使い勝手を向上させることができる。
また、実施の形態2に係る誘導加熱調理器は、第3の発明の構成を備えている。すなわち、実施の形態3に係る誘導加熱調理器は、被調理物を入れる鍋などの被加熱物Nが載置されるトッププレート21を上面に備えた本体部Aと、前記トッププレート21の下方に横方向に並べて隣接して配置された第1の誘導加熱部6L及び第2の誘導加熱部6R、これらの加熱部の各誘導加熱コイルに誘導加熱電力を供給するインバーター回路と、このインバーター回路の出力を制御する制御部200と、この制御部に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部と、を有し、前記トッププレート21下方の前記本体部Aの内部には前記第1、第2の加熱部6L、6Rの各誘導加熱コイル6RL、6RMを収容する平面視が横長方形の収納空間10を備え、前記第1の誘導加熱部6Rは、円形な中央コイルMCと、この周囲に配置した細長形状の複数個の側部コイルSC1〜SC4とを備え、前記第2の加熱部6Rの円形加熱コイル6RCは、前記前記第1の誘導加熱部6Rの直径(R3の2倍。DB:約200mm)より小さく、かつ前記中央コイルMCの外径(約130mm)よりも大径(約180mm)であり、前記第1の誘導加熱部6Rは、中央コイルMC単独での誘導加熱と、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱とを被加熱物Nの大きさに応じて自動的に又は手動にて切り替え可能な構成にし、前記収納空間10の左右両壁面と前記第1及び第2の加熱部の各加熱コイルとの対向間隔W8(30mm以下。望ましくは22mm)、W10(30mm)に比較して、第1及び第2の対向間隔W5(100mm)を大きくしたものである。これにより限られた面積のトッププレート21の上で、中央コイルMC単独加熱、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱及び第2の加熱部6R単独加熱、という3つの加熱手段を選択でき、単に2種類の円形加熱コイルを有する従来の2口タイプの調理器よりも幅広い大きさの被加熱物Nに対応することができ、使い勝手を向上させることができる。また第1、第2の加熱部を同時に駆動した場合でも、両加熱部の間の空間距離を大きくしているため干渉音が発生することを抑制することが期待できる。
また、実施の形態2に係る誘導加熱調理器は、第4の発明の構成を備えている。すなわち、実施の形態2に係る誘導加熱調理器は、被調理物を入れる鍋などの被加熱物Nが載置されるトッププレート21を上面に備えた本体部Aと、前記トッププレート21の下方に隣接して配置された第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R及び第3の誘導加熱部6Mと、これらの加熱部の各誘導加熱コイル6LC,6RC、6MCに誘導加熱電力を供給するインバーター回路と、このインバーター回路の出力を制御する制御部200と、この制御部に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部と、を有し、前記トッププレート21下方の前記本体の内部には前記第1、第2、第3の誘導加熱部の各誘導加熱コイルを収容する平面視が横長方形の収納空間10を備え、前記第1の加熱部6Rは円形な中央コイルMCと、この周囲に配置した細長形状の複数個の側部コイルSC1〜SC4とを備え、前記第2の加熱部6Rの加熱コイル6RCは、前記第1の誘導加熱部6Rの直径(約200mm)より小さく、かつ前記中央コイルMCの外径(約130mm)よりも大径(180mm)であり、前記第3の加熱部6Mには前記第2の誘導加熱部6Rの加熱コイル6RCの外径(180mm)よりも小径(約130mm)な円形コイル6MCを具備し、前記第1の誘導加熱部6Rは、中央コイルMC単独での誘導加熱と、中央コイルと側部コイルの協同加熱とを被加熱物Nの大きさに応じて自動的に又は手動にて切り替え可能な構成にし、前記第3の加熱部6Mの最大火力)を前記第1及び第2の誘導加熱部6L、6Rの最大火力(3000W)よりも小さく、1500Wに設定し、この第3の誘導加熱部6Mの加熱コイル6MCと前記第1及び第2の誘導加熱部の加熱コイルとの対向間隔W11,W12よりも、前記第1及び第2の誘導加熱部の加熱コイル相互間の間隔W5を大きくしたものである。これにより限られた面積のトッププレートの上で、中央コイル単独、中央コイルと側部コイルの協同加熱、第2の加熱部単独及び第3の加熱部単独の4つの加熱を選択でき、単に3種類の円形加熱コイルを有する従来の2口タイプの調理器よりも幅広い大きさの被加熱物Nに対応することができ、使い勝手を向上させることができる。また第3の誘導加熱部に比較して大きな火力が第1、第2の誘導加熱部に投入されて同時に加熱駆動された場合でも、第1、第2の誘導加熱部の間の空間距離を大きくしているため干渉音が発生することを抑制することが期待できる。
また、実施の形態2に係る誘導加熱調理器は、第5の発明の構成を備えている。すなわち、実施の形態2に係る誘導加熱調理器は、被調理物を入れる鍋などの被加熱物Nが載置される所定の横幅寸法W2を有するトッププレート21を上面に備えた本体部Aと、前記トッププレート21の下方に隣接して配置された第1の誘導加熱部6L及び第2の誘導加熱部6R、これらの加熱部の各誘導加熱コイルに誘導加熱電力を供給するインバーター回路と、このインバーター回路の出力を制御する制御部200と、この制御部に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部と、を有し、前記トッププレート21下方の前記本体部Aの内部には前記第1、第2の誘導加熱部6L、6Rの各誘導加熱コイル6LC、6RCを収容する平面視が横長方形の収納空間10を備え、前記第1の誘導加熱部は円形な中央コイルと、この周囲に配置した細長形状の複数個の側部コイルとを備え、前記第2の誘導加熱部6Rの円形加熱コイルは、前記第1の誘導加熱部の直径(約200mm)より小さく、かつ前記中央コイルMCの外径(約130mm)よりも大径であり、前記第1の誘導加熱部6Rは、中央コイルMC単独での誘導加熱と、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱とを被加熱物Nの大きさに応じて自動的に又は手動にて切り替え可能な構成にし、前記収納空間10は、前記トッププレート21の横幅寸法W2を前記収納空間10の最大横幅寸法W3より大きく設定し左右に張り出す形状にしたものである。これにより限られた横幅寸法W3の収納空間でありながら、それよりも左右両側に大きく張り出したトッププレート21の上で、中央コイルMC単独、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱及び第2の誘導加熱部6R単独の3つの加熱を選択でき、単に2種類の円形加熱コイルを有する従来の2口タイプの調理器よりも幅広い大きさの被加熱物Nに対応することができ、使い勝手を向上させることができる。
実施の形態3
図38〜42は、本発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器を示すものであり、図38は、トッププレート21の下方にある誘導加熱源6L、6R、6Mの位置と大きさが分るように、透視状態で記載した平面図である。
図39は、トッププレート21を取り外し、誘導加熱源6L、6R、6Mが収容された部品収納室10全体を記載した平面図である。
図40は、図38のD3ーD3線断面図である。図41は、本体部Aの左側誘導加熱源6Lの加熱コイル6LCを示す寸法説明図であり、図42はその側部加熱コイル(副加熱コイル)SCの拡大寸法説明図である。
この実施の形態3の特徴点は、第2の誘導加熱部に相当する右側誘導加熱源6Rの設置位置を前記実施の形態1,2に比較して手前側に移動させ、真横に並ばないようにした点にある。
また、本体部Aの左右両側に冷却ユニットCUをそれぞれ収納せず、右側にのみに設置した点にある。
調理器の外殻を構成している金属板製の本体ケース2は、その上面開口全体がトッププレート21で塞がれている。2Rは本体ケース2の上端部を右に水平に折り曲げて形成した平坦なフランジ部である。20はトッププレート21の周囲を覆う額縁形状の枠体で、トッププレート21を本体ケース2に固定している。
本体ケース2の内部は、金属製の水平仕切り板25によって上下に区画されており、水平仕切り板25とトッププレート21との間を部品収納室10にしている。水平仕切り板25の下方には、金属製の箱状グリル加熱室9が設置されている。133はグリル庫9と水平仕切り板25との間を遮るように設置された断熱性の仕切り板である。
本体ケース2の内部は、仕切り板133の右側が冷却空間134になっている。この冷却空間は図12に示す右側冷却室8Rに相当するものである。CUはこの冷却空間に上方から挿入して設置された冷却ユニットである。
冷却ユニットCUは、図38に示すように縦断面形状が長方形又は正方形を有する筒状の部品ケース34と、このケースの後方開口部に収納された送風機30(図示せず)とを備えている。このケース34の前方開口部は閉鎖されている。
冷却ユニットCUは、本体部Aの外部から室内の冷たい空気を前記送風機30で吸引し、その空気によって、前記右側誘導加熱源6Rの加熱コイル6RC、左側の誘導加熱源6Lの加熱コイル6LC、及び中央誘導加熱源6Mの加熱コイル6MCを冷却するものである。
前記水平仕切り板25には、右側誘導加熱源6Rの加熱コイル6RCの真下に、通気口135が形成されている。また部品ケース34の天井面には、前記通気口135に対応した位置に排気口34Aが形成されている。この通気口は図17の第1の排気口34Aに相当しているなお、排気口34Aから通気口135からまで間の風路には、空気が途中で外部へ漏れないようにパッキン(図示せず)が設けてある。
41A、41B、41Cは、前記部品ケース34の内部に互いに所定の間隔を置いて縦に設置された3枚の回路基板であり、左側の誘導加熱源6Lのインバーター回路210L専用、右側誘導加熱源6Rのインバーター回路210R専用、中央誘導加熱源6Mのインバーター回路210M専用として、それぞれ設けてある。
前記3つの回路基板41A、41B、41Cの表面には、インバーター回路を構成する電力用半導体スイッチング素子等の発熱性電子部品・電気部品類を取り付けた放熱フィン43A、43B、43Cがそれぞれ取り付けてある。これらの放熱フィンは、部品ケース34の中から前記排気口34Aに向かって流れる冷却風によって冷却される。
290は、右側誘導加熱源6Rの加熱コイル6RCを取り付けた耐熱樹脂製の円形支持体(コイル支持体)である。この支持体は、加熱コイル6RCの下面が所々で露出するように多数の通気孔が形成されており、全体が所定の通気性を有するように、格子状に形成されている。
加熱コイル6RCの最外周面と本体ケース2の部品収納室10の右側面との間には、30mm以上の空間W10が確保されている。この空間は、加熱コイル6LCと本体ケース2との間の電気絶縁性確保や、本体ケース2が異常加熱されないためのものである。
図40は、右側誘導加熱源6Rの加熱コイル6RCの上方に、使用できる最も大きな被加熱物Nを置いた状態を示している。DR1は加熱コイル6RCの外形寸法を示し、DR2は被加熱物Nとなる金属鍋の平坦な底の直径寸法、DR3はその同じく金属鍋の胴部の直径寸法である。前記加熱コイル6RCの直径寸法DR1が例えば180mmである場合、金属鍋の平坦な底の直径寸法DR2は220mm以下が望ましい。
図40は、底面の直径寸法DR2が220mm、胴部の直径寸法DR3が240mmの金属鍋が使用されている状態であり、これがこの加熱調理器では、誘導加熱時に適正に使用できる最も大きな被加熱物Nであると想定している。前記トッププレート21の上面には、実施の形態2で説明したような、案内マーク6RMが各加熱コイル6RCと同心円状に表示されている。右側の加熱コイル6RCは外径寸法DR1が180mmであるので、案内マーク6RMの直径は前記胴部の直径寸法DR3と大体同じで、240mmになっている。
このような最も大きな被加熱物Nを使用した場合でも、枠体20まで所定の距離W22が確保されるように、前記トッププレート21は前記フランジ2Rの上方で右側に張り出している。言い換えると、部品収納室10の右壁よりも右側方向に90〜95mm程度、前記トッププレート21が広がっているので、最も大きな被加熱物Nを使用した場合でも、その被加熱物Nが枠体20の上に乗り上げることはない。仮に、高温の被加熱物Nが枠体20の上に乗り上げ、又はそれに近接した状態になると、例えば被加熱物Nが高温のてんぷら油を入れた鍋であった場合、被加熱物Nが枠体20を高温度に加熱し、その下方にある流し台等の厨房家具(図示せず)を過度に加熱し、その変形を招くなどの不具合を誘発する懸念がある。
なお、冷却ユニットCUから、加熱コイル6RCに向かった冷却風の一部はそのコイル6RCの手前で分岐して左側の誘導加熱源6Lにダクト(図示せず)によって案内される構成になっている。また中央の誘導加熱源6Mの加熱コイル6MCには、右側誘導加熱源6Rの加熱コイル6RCを通った風が別のダクト(図示せず)によって案内され、加熱コイル6MCも冷却される構成になっている。
このように部品収納室10の下方に冷却ユニットCUを配置した場合、前記第2の実施の形態(特に図18参照)のように部品収納室10の左右空間が、冷却ユニットCUの設置によって狭められることがないという利点がある。つまり部品収納室10の左右両側面近くまで左右誘導加熱源6L、6Rの加熱コイルを設置できるため、前記実施の形態2に比較して左側誘導加熱源6Rの加熱コイル6LCの直径を大きくすることができる。
また加熱コイル6LCの直径を大きくしなくとも、部品収納室10の大きさが第2の実施の形態と同じであった場合を想定すると、他の加熱コイル6MC、6RCとの対向間隔W12、W5や、あるいは部品収納室10の壁面との対向間隔W7、W8、W9、W10をさらに大きく確保することができる。仮にこのような対抗間隔を確保しておかないと、加熱コイル6LC、6MC、6RCによって本体部Aを構成する金属部分が不用意に加熱され、又は一方の加熱コイルが他の加熱コイルの動作に悪影響を及ぼす懸念がある。
なお、実際の製品では加熱コイル6LC、6MC、6RCの最外周縁部分には、実施の形態2に示したような防磁リング(図27参照)が設置されたり、広域発光部277が設置されたりするので、加熱コイル6LC、6MC、6RCと部品収納室10の壁面との対向間隔W7、W8、W9、W10を大きく確保することができることは調理器の設計上で余裕ができる利点となる。
部品収納室10の小型化については、ワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子やダイオード素子を用いることで従来よりも簡単に実現できる。すなわち、ワイドバンドギャップ半導体は耐熱性も高いため、前記放熱フィン43A、43B、43Cの小型化が可能となり、結果として3枚の回路基板41A、41B、41Cの設置空間も小さくでき、本体ケース2の冷却空間134に冷却ユニットCUを設置できることになる。
なお、回路基板41A、41B、41Cの中で、各種の半導体スイッチング素子及びダイオード素子の両方がワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることが望ましいが、いずれか一方の素子がワイドバンドギャップ半導体よって形成されていてもよく、上記したような効果を得ることができる。
図38、39においてKAは、中央誘導加熱源6Mの中心点と左側誘導加熱源6Lの中心点X1とを結ぶ直線と、前後方向の中心線CL2との角度を示し、約55度である。
KBは、右側誘導加熱源6Rの中心点X2と左側誘導加熱源6Lの中心点X1とを結ぶ直線と、前後方向の中心線CL2との角度を示し、約85度である。KC1は、左側誘導加熱源6Lの副加熱コイルSC2の配置角度を示し、左右中心線CL4を基準に45度になっている。KC2は同じくSC4の配置角度であり、45度である。他の2つの副加熱コイルSC1、SC3も左右中心線CL4から45度ずつ離れた位置にあり、4つの副加熱コイルSC1〜SC4は90度間隔で主加熱コイルMCの周囲に配置されている。
W32は中央誘導加熱部6Mの中心点から右側誘導加熱源6Rの中心点X2までの間隔であり、約193mmである。
W33は中央誘導加熱源6Mの中心点から左側誘導加熱源6Lの中心点X1までの間隔であり、約227〜230mmの範囲から選択されている。なお、中央誘導加熱部6Mの加熱コイル6MCの直径は128mm〜130mmの範囲から1つの直径が選択されている。
左側誘導加熱源6Lの4つの副加熱コイルSC1〜SC4は、図40に示す通り、横幅WAは48mmであり、長径MWの寸法は130mmである。つまり長径と短径の比は2.7:1である。なおコイル幅W31は15mm、その中の空間部272の幅は18mmである。また左側誘導加熱コイル6LCの主加熱コイル半径R1は64mmであるから、その外径DAは128mm、空間271の幅は10mm、最大外径DBは244mmである(図40、41参照)
この実施の形態3の誘導加熱調理器においても第1の発明〜第4の発明に係る構成を備えている。このため実施の形態2の効果と同様の効果を奏することができる。さらに、この実施の形態3においては、部品収納室10の下方に冷却ユニットCUを配置しているので、部品収納室10の空間全体を加熱コイル6LC、6MC、6RCの設置空間として最大限利用することができる。
実施の形態4
図43〜44は、本発明の実施の形態4に係る誘導加熱調理器を示すものであり、図43は、トッププレート21を取り外した状態における本体部Aの平面図、図44は右誘導加熱源6Rの加熱コイル6RCとインバーター回路の関係を示す説明図である。
この実施の形態4の特徴点は、第1の誘導加熱部に相当する左側誘導加熱源6Lの副加熱コイルSCの配置角度を変化させたものであり、実施の形態1〜3の配置よりも時計回りに45度移動させたものになっている。このため副加熱コイルSC3は、図42に示すように中心点X1から真っ直ぐ右位置になり、右側誘導加熱源6Rの左側面に向き合う位置になる。
またこの実施の形態4の特徴点は、第2の誘導加熱部に相当する右側誘導加熱源6Rの加熱コイル6RCを、主加熱コイルのように内側の環状コイル6RC1と、この外側を囲む外側の環状コイル6RC2との2つの部分から構成したことにある。但し、この加熱コイル6RCは、実施の形態1〜3の主加熱コイルMCと異なり、2つの環状コイル6RC1、6RC2にはそれぞれ専用のインバーター回路210R1,210R2がそれぞれ接続され、2つの環状コイル6RC1、6RC2は互いに独立して加熱駆動される。このため、例えば内側の環状コイル6RC1だけを駆動して、小径(例えば80mm〜120mm程度)の被加熱物Nを誘導加熱することができる。
なお図示していないが、この実施の形態では、部品収納室10の横幅W3は540mm程度、トッププレート21の横幅W2は730mm程度である。このため、部品収納室10の上方をトッププレート21が覆った状態では、部品収納室10の左右に前記トッププレート21がそれぞれ95mm程度張り出す。
以下具体的に説明すると、右側の加熱コイル6RCの最大外形DGは、実施の形態3と同じく180mmであり、これは外側の環状コイル6RC2の外径である。
内側の環状コイル6RC1の最大外形DFは約100mmである。この内側の環状コイル6RCのコイル幅は約10mmである。左側誘導加熱源6Lにおいて、その加熱コイル6LCの主加熱コイル半径R1は65mmであるから、その外径DAは130mm、主加熱コイルMCとその周囲の4つの副加熱コイルSC1〜SC4との間の空間271の幅は10mm、最大外径DBは約246mmである。
31Rは、実施の形態2で説明したような温度検出用の赤外線センサーであり、内側の環状コイル6RC1だけの上方を覆うような小径の被加熱物Nを誘導加熱する場合はもちろん、外側の環状コイル6RC2の上方までも覆うような大きな径の被加熱物Nを誘導加熱する場合でもそれら被加熱物Nの底部温度を検知し、温度検出データを温度検知回路(図示せず)に送る。このため赤外線センサー31Rの温度検知データは、誘導加熱時の火力増減や停止などの制御動作に利用される。
この実施の形態4では、左側誘導加熱源6Lの構成や大きさは実施の形態3と同じであり、また3つの誘導加熱源6L、6R、6Mの相互間隔や部品収納室10内部での位置についても実施の形態3と大体同じにしてある。
中央誘導加熱源6Mの加熱コイル6MCの最大外径は130mmであり、これは主加熱コイルMCの最大外径130mmと同じである。またその加熱コイル6MCを構成する集合線の本数や太さ等も主加熱コイルMCと同じにしてある。
このように中央誘導加熱源6Mの加熱コイル6MCと、主加熱コイルMCの大きさや素材、構成などを同じにした場合、製造コストや管理の面で有利であるという利点がある。
100は統合表示手段であり、3つの誘導加熱源6L、6R、6Mの動作や使用者に設定された調理条件あるいは異常発生時の異常内容などが文字や記号、簡単な記号などで表示される液晶画面を備えている。その液晶画面は前後方向(縦)の幅と横幅の比が、42mm:80mm、44mm:122mmの何れかである。このような比較的大きな画面を設置するため、左右の誘導加熱源6L、6Rの相互の間隔W5を最低でも100mm以上確保した。さらに、左右の加熱コイル6LC、6RCの最も外側には防磁リング等の付属物があることを考慮し、液晶画面は、左右の加熱コイル6LC、6RCの間で、しかも手前側(上面操作部72)に近い位置にある空間に設置した。
なお、液晶画面の後端は、前記左右の加熱コイル6LC、6RCの前端同士を結ぶ直線よりも後方にある。図42に示すように液晶画面の大体半分から後ろの部分が、左右の加熱コイル6LC、6RCの前端同士を結ぶ直線よりも後方に入っている。
従ってこの実施の形態4では、統合表示手段100の大きな液晶画面を、2つの誘導加熱源6L、6Rの間でかつ手前側位置に配置し、使用者が上面操作部70,71,72を操作する場合に、調理条件や異常内容などを視覚で確認しやすいという効果がある。
122はトッププレート21の温度が所定温度以上であることをLEDなどの複数個の発光素子で表示する高温報知部、123は実施の形態2における前部部品ケース46と同じようなプラスチック製の部品支持板であり、この支持板の上に前記統合表示手段100の液晶画面と前記高温報知部122の発光素子等の電子部品類が取り付けられている。
3R、3Lは実施の形態1(図2)と実施の形態2(図12)で示したように、本体部Aの外殻を構成する本体ケース2のフランジ部で、左右にそれぞれ数センチメートルずつ大きく張り出して、この部分で調理器の本体部Aを厨房家具KTに支えている。
この実施の形態4の誘導加熱調理器においても第1の発明〜第4の発明に係る構成を備えている。このため実施の形態2、3の効果と同様の効果を奏することができる。
また、この実施の形態4の誘導加熱調理器は、第5の発明に係る構成を備えている。すなわち、この実施の形態4の誘導加熱調理器、被調理物を入れる鍋などの被加熱物Nが載置される所定の横幅寸法W2を有するトッププレート21を上面に備えた本体部Aと、前記トッププレート21の下方に隣接して配置された第1の誘導加熱部6L及び第2の誘導加熱部6R、これらの加熱部の各誘導加熱コイル6LC,6RCに誘導加熱電力を供給するインバーター回路210L、210Rと、このインバーター回路の出力を制御する制御部200と、この制御部に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部E、61と、を有し、前記トッププレート21下方の前記本体部Aの内部には前記第1、第2の加熱部6L、6Rの各誘導加熱コイル6LC、6RCを収容する平面視が横長方形の収納空間10を備え、前記第1の加熱部6Lは円形な中央(主加熱)コイルMCと、この周囲に配置した細長形状の複数個の側部(副加熱)コイルSC1〜SC4とを備え、前記第2の加熱部6Rには前記第1の加熱部6Lの直径DB(200mm)より小さく、かつ前記中央コイルの外径(130mm)よりも大径(180mm)な円形コイル6RC2を具備し、前記第1の加熱部6Lは、中央(主加熱)コイル単独での誘導加熱と、中央(主加熱)コイルと側部(副加熱)コイルの協同加熱とを被加熱物Nの大きさに応じて自動的に又は手動にて切り替え可能な構成にし、前記収納空間10の横幅寸法よりも左右方向に(約95mm)張り出すように前記トッププレート21の横幅寸法W2を前記収納空間の最大横幅寸法W3より大きく設定したものである。これにより限られた横幅寸法の収納空間10でありながら、それよりも左右両側に張り出したトッププレート21の上で、中央コイル単独、中央コイルと側部コイルの協同加熱及び第2の加熱部単独の3つの加熱を選択でき、単に2種類の円形加熱コイルを有する従来の2口タイプの調理器よりも幅広い大きさの被加熱部に対応することができ、使い勝手を向上させることができる。
さらに、この実施の形態4の誘導加熱調理器は、第6の発明に係る構成を備えている。すなわち、被調理物を入れる鍋などの被加熱物Nが載置されるトッププレート1を上面に備えた本体部Aと、前記トッププレート21の下方に隣接して配置された第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R及び第3の誘導加熱部6Mと、これらの加熱部の各誘導加熱コイルに誘導加熱電力を供給するインバーター回路210L、210R、210Mと、このインバーター回路の出力を制御する制御部200と、この制御部に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部E、61と、を有し、前記トッププレート下方の前記本体部Aの内部には前記第1、第2、第3の加熱部の各誘導加熱コイル6LC、6RC、6MCを収容する平面視が横長方形の収納空間10を備え、前記第1の加熱部6Rは円形な中央コイル(主加熱コイル)MCと、この周囲に配置した細長形状の複数個の側部(副加熱)コイルSC1〜SC4とを備え、前記第2の加熱部6Rには前記第1の加熱部6Lの直径DB(約200mm)より小さく、かつ前記中央コイルの外径DA(130mm)よりも大径(DG:180mm)な円形コイル6RC2を具備し、前記第3の加熱部の加熱コイル6MCは前記第1の加熱部の中央コイルMCと外径寸法が(130mmでDAと)同等であり、その加熱コイル6MCは、前記第2の加熱部の加熱コイルの外径DG(180mm)よりも小径(130mm)であり、前記第1の加熱部6Lは、中央コイルMC単独での誘導加熱と、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱とを被加熱物Nの大きさに応じて自動的に又は手動にて切り替え可能な構成にしたものである。これにより限られた面積のトッププレート21の上で、中央コイルMC単独、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱、第2の誘導加熱部6R単独及び第3の誘導加熱部6M単独の4つの加熱を選択でき、単に3種類の円形加熱コイルを有する従来の2口タイプの調理器よりも幅広い大きさの被加熱部に対応することができ、使い勝手を向上させることができる。また前記第3の加熱部6Mの加熱コイル6MCの大きさ(直径)を、前記第1の加熱部6Rの中央コイルMCと同等の130mmにしてあるので、外径の異なるコイルを徒に増やす必要がなく、製造コストや管理の面で有利であり、製造コストを抑制できるという利点がある。
また、この実施の形態4によれば、第2の誘導加熱部に相当する右側誘導加熱源6Rの加熱コイル6RCを、外径100mmの内側環状コイル6RC1と、この外側を囲む外径180mmの外側環状コイル6RC2との2つの部分から構成し、かつ、この加熱コイル6RCには、それぞれ個別にインバーター回路210R1,210R2から高周波電流が供給され、2つの環状コイル6RC1、6RC2は互いに独立して加熱駆動される。このため、例えば内側の環状コイル6RC1だけを駆動して、小径(例えば80mm〜120mm程度)の被加熱物Nを誘導加熱することができる一方、外側環状コイル6RC2と内側環状コイル6RC1を同時に駆動して(又は短時間に交互通電して)、より大きな直径、例えば200mm程度のものも加熱できる。
さらに、左側誘導加熱源6Rでは、その主加熱コイルMC単独と、主加熱コイルMCと4つの副加熱コイルSC1〜SC4の何れか一部又は全部との協同加熱によって、誘導加熱でき、しかも左側誘導加熱源6Lは前記右側加熱コイル6RCの外側環状コイル6RC2よりも大きな最大外径を有しているので、左側誘導加熱源6Rでは、右側加熱コイル6RCでは対応できないような大きな直径(例えば240mm)の被加熱物Nにも対応でき、直径が異なる二つ以上の被加熱物Nを加熱できることから、左側誘導加熱源6Rと右側誘導加熱源6Rの選択的使用により、直径や形状が異なる多種類の鍋に対応する誘導加熱調理器を提供できる。
実施の形態5
図45〜49は、本発明の実施の形態5に係る誘導加熱調理器を示すものであり、「アイランド型キッチン」とも呼ばれるタイプの調理器に関する。
図45は、調理器全体の簡略的透視図、図46はトッププレート全体を上方向から見た平面図である。
図47は誘導加熱動作例を示す平面図である。
図48は別の誘導加熱動作例を示す平面図である。
図49は操作部と表示部の変形例を示すもので、トッププレート全体を上方向から見た平面図である。なお、アイランド型キッチンの中には、蛇口を備えた流し台などの厨房家具を併設したタイプもあるが、この実施の形態5では誘導加熱調理器だけ具備した例を示している。
この実施の形態5の特徴点は、第1の誘導加熱部に相当する左側誘導加熱源6Lのように、他の誘導加熱部も隣接した二つ以上の加熱コイルを協同加熱駆動できるようにしたものである。
図46〜48において明らかなように、この実施の形態5においては、アイランド型のキッチンとも呼ばれる誘導加熱調理器であり、誘導加熱部は全部で5個所あり、5口の誘導加熱調理器である。
この種のタイプの調理器は、台所の中央などに文字通り「島」のように独立して設置され、調理器の手前側だけでなく反対の側面からもトッププレート21に臨めるような調理器であり、その本体ケース2は実施の形態1〜4に示したようなビルトイン式に比較的して更に横に長いので、3口以上の加熱部を設置できる。本体ケース2の横幅は700mm〜800mm、前後の幅(奥行)は500mm程度あるが、トップテーブル21の幅を大きくし、鍋などを一時的に置くスペースを確保する目的でもっと奥行寸法を大きくしても良い。
図46〜48において、21は本体ケース2の上面全体を覆っているトッププレートであり、その下方には左側から右へ順次直径が小さくなるように5つの誘導加熱源6L、6ML、6MR、6RB、6RFを備えている。5つの誘導加熱源の加熱コイルは、最も左側の誘導加熱源6Lの加熱コイル6LC、この加熱コイルの外径より小さな外径の2つの中型加熱コイル6MLCと6MRC、これら2つの加熱コイルの外径より更に小さな外径の2つの小型加熱コイル6RBCと6RFCである。
左側誘導加熱源6Lは、主加熱コイルMC単独と、この主加熱コイルMCの周囲に所定間隔に配置された4つの副加熱コイルSC1〜SC4とを備えており、主加熱コイルMC単独加熱と協同加熱とができる。
図45でW40は、左側誘導加熱源6Lとその右隣りにある中型加熱コイル6MLの対向間隔である。
2つの中型加熱コイル6MLC、6MRCは、互いに独立して加熱駆動できるとともに、1つの被加熱物Nを同時に協同加熱できる構成になっている。そのためこれら2つの加熱コイル6MLC、6MRCはできるだけ接近した位置に並んでいる。図46でW41は2つの加熱コイル6MLC、6MRCの対向間隔である。
また最も右側にある2つの誘導加熱源6Rの小型加熱コイル6RBC、6RFCも、互いに独立して加熱駆動できるとともに、1つの被加熱物Nを同時に協同加熱できる構成になっている。そのためこれら2つの加熱コイル6RBC、6RFCはできるだけ接近した位置に並んでいる。図46でW42は2つの加熱コイル6RBC、6RFCの対向間隔である。
各加熱コイルの直径と対向間隔は次の通り。
左側誘導加熱源6Lの加熱コイル6LCの直径DB:260mm
主加熱コイルMCの直径DA:150mm
中央左側の誘導加熱部6MLの中型加熱コイル6MLCの直径DC1:180mm
中央右側の誘導加熱部6MRの中型加熱コイル6MRCの直径DC2:180mm
手前側の誘導加熱部6RFの小型加熱コイル6RFCの直径DD1:100mm
奥側の誘導加熱部6RBの小型加熱コイル6MBCの直径DD2:100mm
W40:100mm
W41:30mm
W42:20mm
63は主電源スイッチ、70,71,72は上面操作部で、70Fは右側誘導加熱コイル6RCFの操作部、70Bは右側誘導加熱コイル6RCBの操作部(右操作部)、71は左側誘導加熱コイル6LCの操作部(左操作部)、72Lは中型加熱コイル6MLCの操作部(中央操作部)、72Rは中型加熱コイル6MRCの操作部(中央操作部)である。
124は、右側誘導加熱コイル6RFCの操作部70Bと70F共用の表示部で、液晶画面で構成されている。
125は、左側誘導加熱コイル6LCの操作部71用の表示部で、液晶画面で構成されている。126Lは中型加熱コイル6MLCの操作部72L用の表示部で、液晶画面で構成されている。126Rは中型加熱コイル6MRCの操作部72R用の表示部で、液晶画面で構成されている。
127は本体ケース2の右側面に設けた吸気口、128はトッププレート21の左端部に設けた排気口である、本体ケース2の内部空間には、前記吸気口127から室内の空気を導入する送風機(図示せず)が設置されており、導入された空気によって5つの誘導加熱源6L、6ML、6MR、6RB、6RF及びそれらのインバーター回路基板を冷却して前記排気口から排出するようになっている。
このような構成の誘導加熱調理器であるため、図46〜48に示すように誘導加熱原6L、6ML、6MR、6RB、6RFの何れかを使用するため、最初に主電源スイッチ63をONにすると、全ての操作部70B,70F、71、72R,72Lがトッププレート21の下方にある光源(図示せず)によって照らされ、操作キー群が表示される。そこで所望の操作キーをタッチ操作すると、その操作によってその特定の操作キーに隣接した位置にある表示部124、125、126R、126Lの中の何れか1つがバックライトに照らされて表示動作が開始される。例えば操作部72Rを操作すると、表示部126のバックライトだけが点灯する。そこで更に操作を続けると、その操作結果がそのつど表示部に表示され、必要な情報を表示する。そして加熱開始の指令を使用者が与えると、通電制御回路200が特定の誘導加熱源を加熱駆動する。なお、図46〜48においてハッチングを施した部分が加熱駆動、又は表示動作を行っている状態を示している。表示部124、125、126R、126Lは、対応する加熱源が加熱駆動されない場合は、最初にバックライトが点灯してから一定の時間を経過すると自動的に消灯し、何も表示しない状態に自動的に戻る。
また底部の形状が長方径や楕円形などの鍋(被加熱物)Nが大きなものであった場合は、実施の形態1〜4に示した誘導加熱部6Lと同様、この実施の形態5においても左側の誘導加熱部6Lにおいて、主加熱コイルMCと1つ又は複数個の副加熱コイルSC1〜SC4を組み合わせ、それらの協同加熱によって加熱調理できる。
さらにこの実施の形態5では、図48に示したように、左側の誘導加熱部6Lの直径よりも大きな異形の被加熱物Nの場合は、隣接する2つの中型加熱コイル6MLC、6MRCを協同加熱駆動することで対応できる。逆に主加熱コイルMCの直径よりも小さな外径の被加熱物Nを使用する場合には、隣接する2つの小型加熱コイル6RBC、6RFCを協同加熱駆動することで対応できる。もちろん、底面が円形の被加熱物Nであれば、その大きさによって2つの中型加熱コイル6MLC、6MRCの何れかを単独で加熱駆動することで対応できるし、2つの小型加熱コイル6RBC、6RFCの何れかを単独で加熱駆動することで対応できる。
つまりこの実施の形態5においては、前記した実施の形態1〜4に比較して更に多種の大きさ、形状の被加熱物Nにも対応して加熱調理でき、利便性が更に向上したものである。
図49は、本発明の実施の形態5に係る誘導加熱調理器の操作部と表示部の変形例を示すものである。この図49においては上面操作部を、手前側の上面操作部61Fと、反対側(背後側)の上面操作部61Bから構成している。またそのような操作部は全体が可視光線を通さないガラス板(トッププレート21自体でも良い)で表面を覆っており、その表面に静電容量式のタッチ式入力キーを複数個配置している。使用者が主電源スイッチ63をONにしたあと、所望の誘導加熱源の手前をタッチすると、その近傍に次の入力操作に必要な入力キーが光によって照らされ目視できる形で表示される。これと同時にその近傍に液晶表示画面100Bも現れる。これにより使用する場合に最初から入力キーの位置を確かめて操作するという感覚は不要になり、より気軽に操作できることになる。また反対側にも同様の操作部と表示部が現れるので、アイランドタイプの調理器として更に利便性が向上する。
なお、液晶表示画面100Bは、縦50mm横100mm〜120mm程度のものが上面操作部61Fと後方の上面操作部61Bに横に4個直列状態に所定間隔で並んでいる。これは同じ仕様の液晶画面を4個使用していることであり、4個の液晶画面を共通化、モジュール化することでコスト低減を図っている。
なお、図49の変形例においては、小型の加熱コイルを4個設置し、被加熱物Nを横長において協同加熱する場合(図49に示したもの)や、縦長において協同加熱すること、さらには4つを同時に加熱駆動して1つの鍋等を加熱することができるように構成している。
以上のように、この実施の形態5の誘導加熱調理器においても、第1の発明に係る構成を備えている。このため実施の形態1の効果と同様の効果を奏することができる。さらに、この実施の形態5においては、更に多種の大きさ、形状の被加熱物Nにも対応して加熱調理でき、利便性を更に向上させることができる。
また上述した実施の形態1〜5においては、副加熱コイル群SC1〜SC4を構成する副加熱コイルの総数と、それらに対して高周波電流を供給する副インバーター回路SIV1〜SIV4の総数は共に4個で、同数であったが、本発明はこれに限定されたものではない。
また、第1の副インバーター回路SIV1は、第1の加熱コイルSC1と第4の副加熱コイルSC4を駆動するようにし、また第2の副インバーター回路SIV2は、第3の加熱コイルSC3と第2の副加熱コイルSC2を駆動するようにしても良い。
この場合、第1の副インバーター回路SIV1は、第1の加熱コイルSC1と第4の副加熱コイルSC4を同時に駆動するのではなく、どちらか一方のみを駆動するようにし、また第2の副インバーター回路SIV2も、第3の加熱コイルSC3と第2の副加熱コイルSC2を同時に駆動するのではなく、どちらか一方のみを駆動するようにすることが不要な磁気漏洩を減らし、加熱効率を高める観点で好ましい。
このような構成によれば高価なインバーター回路の数を減らせることからコストを低減でき、また回路基板設置容積を小さくできるという効果がある。実際に図19の例のように4個の副加熱コイルSC1〜SC4を配置した場合、使用者が長円形や楕円形などの非円形鍋を使用して調理する場合には、手前に横長に置けば中心点X1を境にして、その前方側にある第1の加熱コイルSC1と第2の副加熱コイルSC2を駆動することで対応でき、また中心点X1から左側に前後方向に長くなるように置かれた場合は、第2の加熱コイルSC2と後方の第4の副加熱コイルSC4を駆動することで対応でき、中心点X1から右側に前後方向に長くなるように置かれた場合は、第1の加熱コイルSC1と第3の副加熱コイルSC3を駆動することで対応できるから、これら3つのパターンの何れでも一つの副インバーター回路を切り替え、1組(2個)の副加熱コイルの内、何れか一方だけを選択して使用することで何ら支障はない。
なおこのように一つの共通の副インバーター回路で二つの副加熱コイルを切り替えて使用する場合、一つの共通の副インバーター回路を時間的条件、例えば短時間間隔で一つの副加熱コイルと他方の副加熱コイルに交互に接続を切り替えれば、結果的に二つの副加熱コイルを駆動することができ、例えば、二つの副インバーター回路で副加熱コイル各2個ずつ駆動すれば合計4個の副加熱コイルを加熱調理に利用できる。従って4個を超える数の副加熱コイルを設ける場合もこの考え方で副インバーター回路の数を最小限度に抑制できる。
このように一つの共通の副インバーター回路で二つの副加熱コイルを同時に兼用して使用する場合、例えばフル・ブリッジ回路では図24に示したように、副加熱コイルSC1と共振コンデンサー110Bとの直列共振回路内に、副加熱コイルSC3を(SC1と直列又は並列に)接続すれば良い。こうすれば、SC1とSC3とが同時に駆動されても、駆動周波数には実質的な差が発生しないので、うなり音が発生しない。
また一つの共通の副インバーター回路を時間的条件、例えば短時間間隔で一つの副加熱コイルと他方の副加熱コイルに交互に接続を切り替えれば、結果的に二つの副加熱コイルを駆動することができ、例えば、二つの副インバーター回路で副加熱コイル各2個ずつ駆動すれば合計4個の副加熱コイルを加熱調理に利用できる。従って4個を超える数の副加熱コイルを設ける場合もこの考え方で副インバーター回路の数を最小限度に抑制できる。
さらに、実施の形態1で詳しく説明したように、隣接する二つの副加熱コイルを同時に加熱駆動するという制御方法は、上記したように隣り合わない二つの副加熱コイルを一つのインバーター回路で駆動する方式にしても実現できる。つまり実施の形態1で示した対流促進モードも実行できる。
また前記第1の副加熱コイルや第2副の加熱コイルに対する通電を順次切替えたり、間欠的に駆動したりするという制御を実施した場合、使用者にはどのような誘導加熱が行われているのか分からず、使用時に不安感を抱く可能性もあるので、上記したような対流促進機能が発揮されている場合、前記したような統合表示手段100や液晶表示画面45R、45Lなどに、文字や記号等によってリアルタイムで表示すると更に良い。
さらに、上記実施の形態2においては高速加熱用の選択キーE1A、湯沸し用選択キーE1B、茹で選択キーE1C、予熱用選択キーE2A、炊飯選択キーE2B等、7つの調理メニューキーを設けたが、それら調理メニューキーを選択しても、適当なタイミングで自動的に対流促進制御が実施されるとは限らない場合が想定される。そこで対流促進制御が必要となる調理レシピの選択キーを用意しておき、そのキーを使用者に選択してもらうことが良い。例えば、調理レシピの一つとしてカレーのキーでは、とろみのある液体のため対流が起こりにくく、鍋底で焦げ付きやすかった。そしてカレーのルーは野菜が十分に煮えてから加えるようにし、カレールーを入れた後は誘導加熱を止めるか、誘導加熱コイルを最小火力で駆動して煮込むという方法で従来は調理されていた。
そこで「カレー」という選択キーを使用者が調理の開始前や開始直後、あるいは途中で操作した場合、カレーのルーを入れる時に本発明の対流促進制御を実施するように使用者に報知することが望ましい。具体的には実施の形態2の図28に示したように、各種調理における参考情報を随時使用者に報知する統合表示手段100のガイドエリア100GDを利用し、対流促進制御選択スイッチ350を押すように促す表示をしたり、音声合成装置315でアナウンスしたりするという方法が考えられる。対流促進制御選択スイッチ350が選択されれば、副加熱コイルSCや主加熱コイルMCに対する通電条件の変更などが通電制御回路200で自動的に行われ、沸騰後などの適当なタイミングであるかどうかの判断が通電制御回路200で自動的に行われ、適当なタイミングである場合、引き続き対流促進の加熱が行われる。
なお、実施の形態1で説明した加熱調理器では、左側誘導加熱源6Lと右側誘導加熱源6Rの定格最小火力は、ともに150Wであったが、このように誘導加熱源が複数ある場合、最小火力を揃えておくことは調理器の使い勝手を向上させる上でメリットがある。例えば、左側誘導加熱源6Lと右側誘導加熱源6Rの双方とも、定格最大火力を実施の形態1のように3000Wにした場合、湯沸し等を迅速にでき、煮物なども沸騰させるまで短時間で済むというメリットがあるが、調理液の中に野菜や肉等の具材があって、じっくりと煮込んだ方が美味しい調理になる場合、火力を下げて長時間加熱をするが、その場合、その加熱部にそのまま鍋を置いておくと次の調理に支障がある場合、隣の誘導加熱部に鍋を移動させることが必要になる。この場合、移動した先の加熱部で火加減が変わってしまうと、結局期待した調理ができない場合があるので、実施の形態1のように火力を複数段階に設定できる場合にはその火力の段階を二つの加熱源で同じにし、更に望ましくは最小火力を同等にしておくと使用者が鍋を移動した後で火力設定に困らないというメリットがある。
本発明に係る誘導加熱調理器は、トップレートの下方空間に、第1の誘導加熱部と第2の誘導加熱部とを並べて配置した複数加熱部を有する調理器において、3つ以上の直径の異なる鍋を加熱できるものであり、据置型やビルトイン型、その他タイプの誘導加熱式加熱源専用調理器及び他の輻射式加熱源との複合型誘導加熱調理器等に広く利用することができる。