以下、本発明の参考例及び実施の形態を図面に基づいて説明する。
参考例1.
図1は、本発明の参考例1に係る誘導加熱調理器100の概略構成を示す分解斜視図である。また、図2は、誘導加熱調理器100を構成部品に分解した状態を示す分解斜視図である。この誘導加熱調理器100は、誘導加熱による調理鍋載置部を左右に二口、ラジエントヒータ(RH)加熱による調理鍋載置部を奥中央に一口設けた、ビルトイン型(システムキッチン一体型)IHクッキングヒータである場合を例に説明するものとする。図1及び図2に基づいて、誘導加熱調理器100の構成及び動作について説明する。
図1に示すように、誘導加熱調理器100は、筐体10内にコイルベース12と、ダクト13と、ファン14と、ラジエントヒータ20と、インバータ基板15(電源基板)とが設けられている。ここでは、筐体(ユニットケース)10の前面及び背面に、空気を吸排気する通気孔17が形成されている場合を例に示しているが、これに限定するものではない。たとえば、筐体10の前面及び背面を開口させて吸排気を行なってもよい。また、通気孔17の個数や大きさを特に限定するものではない。
コイルベース12には、鍋やフライパン等の被加熱物を加熱するための誘導加熱コイル11が載置されるようになっている。また、コイルベース12の下側には、誘導加熱コイル11を下側から冷却するためのダクト13が設けられている。このダクト13には、空気の吸入口にファン14が接続されている。さらに、インバータ基板15は、誘導加熱コイル11に高周波電源を供給するための高周波電源部と、誘導加熱コイル11やラジエントヒータ20、ファン14を駆動させる図示省略の駆動モータを制御する制御部とで構成されている。この高周波電源部は、スイッチング素子等の発熱部品で形成された回路と、その回路に接続されている1または2以上のコンデンサとで構成されている。
参考例1では、誘導加熱コイル11に個数に応じてダクト13、ファン14及びインバータ基板15が設けられている。つまり、図1に示すように、二口の誘導加熱コイル11に対応してダクト13、ファン14及びインバータ基板15が各二組設けられているのである。このように、1つの誘導加熱コイル11に対して、ダクト13、ファン14及びインバータ基板15も各1つ備えられるようになっているので、筐体10内に設けられる誘導加熱コイル11の全部を均一に効率よく冷却することが可能になっている。
また、筐体10の内部に配置される誘導加熱コイル11やダクト13、ファン14、インバータ基板15等の構成部品の修理や交換等のメンテナンスを構成部品ごとにすることができる。さらに、これらの構成部品を独立にメンテナンスできるために、誘導加熱調理器100の組み立て性が向上する。なお、インバータ基板15には、このインバータ基板15に設置されている高周波電源部を効果的に冷却するためのフィン16が設けられている。
また、参考例1では、高周波電源部を構成する1または2以上のコンデンサをコンデンサ部18としてインバータ基板15とは別に筐体10の内部に配置している。一般的に、インバータ基板等の電源基板には、誘導加熱コイル11に高周波電流を流すための高周波電源部が設けられている。この高周波電源部は、大容量のコンデンサを構成部品として備えている。また、この電源基板には、その大容量のコンデンサの他にも複数のコンデンサが配置されており、電源基板の上方を流れる空気を遮ってしまい、風路を狭くしていた。つまり、電源基板上に配置されるコンデンサが電源基板の容積を大きくしてしまい、圧力損失を増加させ、電源基板の上方を流れる空気の風路を十分に確保できないことになっていた。
そこで、参考例1では、インバータ基板15に1または2以上のコンデンサを載置せず、インバータ基板15とは別に筐体10内に配置するようにしている。こうすることによって、インバータ基板15に載置される大型部品が減り、その上方を流れる空気の風路を確保することができる。また、風路が確保できるので、インバータ基板15に設けられているフィン16にもスムーズに空気を流すことができる。なお、ここでは、コンデンサ部18がインバータ基板15とダクト13との間に配置されている場合を例に示しているが、これに限定するものではない。たとえば、コンデンサ部18は、筐体10内部の空いているスペースであればどこに配置してもよい。
さらに、参考例1では、筐体10の前面側に2口の誘導加熱コイル11を配置し、背面側に誘導加熱コイル11とは別の加熱手段であるラジエントヒータ20を配置している。そして、この誘導加熱コイル11の後方でラジエントヒータ20の両側にインバータ基板15を配置している。したがって、筐体10内の空いているスペースを有効に活用し、インバータ基板15の面積を確保するとともに、筐体10の小型化を実現している。すなわち、インバータ基板15と誘導加熱コイル11とを積層配置するような構造ではなく、平面的に配置する構造であるために、筐体10の小型化が実現可能になっている。
コイルベース12に載置される誘導加熱コイル11は、電流によって発生する磁力線によって、誘導加熱コイル11の上方に載置される被加熱物に渦電流が生じ、被加熱物自体を発熱させるようになっている。コイルベース12は、誘導加熱コイル11を載置して保持する役目を果たす。なお、コイルベース12には、誘導加熱コイル11から発生した磁力線が下方に流れるのを防止するためのフェライトや、被加熱物の温度状態を検出するための温度センサを設けておくのが好ましい。
ファン14は、誘導加熱コイル11を冷却する空気を送風するものである。この参考例1では、ファン14が軸流ファンである場合を例に示しているが、これに限定するものではない。たとえば、ファン14をシロッコファンに代表される遠心ファン等で構成してもよい。このファン14は、ダクト13の吸入口15に接続されており、誘導加熱コイル11を冷却するための空気をダクト13内に送り込むようになっている。
ダクト13には、上面に吐出穴が形成されており、その吐出穴から空気を噴き出させて誘導加熱コイル11を下側から冷却するようになっている。また、ダクト13の内部には、ファン14から送り込まれた冷却空気の風路が形成されており、上面に形成した吐出穴から均一に冷却空気が噴き出されるようになっている。なお、この吐出穴の個数や大きさを特に限定するものではない。また、ダクト13の形状を特に限定するものではなく、コイルベース12を載置でき、誘導加熱コイル11の下側から空気を送風できるようになっていればよい。
ラジエントヒータ20は、通常の商用周波数の交流電力が供給され、ヒータ自体が発熱することにより、その輻射熱で被加熱物を加熱するようになっている。参考例1では、誘導加熱コイル11とは別の加熱手段がラジエントヒータ20である場合を例に示しているが、これに限定するものではない。なお、コイルベース12は、図示省略の支持部材で下方から支持されており、図示省略のトッププレートに密着するように押し付けられるようになっている。また、この支持部材は、コイルベース12を支持できるものであればよく、種類及び個数を特に限定するものでない。
なお、筐体10の前面には、ユーザからの指示を受け付けるための図示省略の操作パネルが設けられている。つまり、操作パネルを介してユーザから指示があると、インバータ基板15に載置されている制御部は、その指示内容に基づいて誘導加熱コイル11やラジエントヒータ20、ファン14の駆動モータ等を制御するようになっている。また、制御部は、図示省略の温度センサからの検出温度に基づいて、誘導加熱コイル11及びラジエントヒータ20の火加減を制御するようになっている。
ここでは、筐体10の前面及び背面に複数の通気孔が形成されている場合を例に示しているが、これに限定するものではない。たとえば、前面の通気孔がなくてもよく、前面及び背面の通気孔をなくして図示省略のトッププレートの後部に通気孔を形成してもよい。また、通気孔でなくてもよく、前面及び背面を開口させて吸排気を行なってもよい。なお、このトッププレートは、絶縁体で形成されているものであればよく、たとえば、耐熱ガラスで構成するとよい。
次に、誘導加熱コイル11及びインバータ基板15の冷却について簡単に説明する。
まず、ファン14は、筐体10の背面の通気孔17から空気を吸い込む。そのとき、空気はフィン16を経由してインバータ基板15を冷却する。フィン16は、空気から熱を奪いインバータ基板15を冷却するようになっている。それから、この空気がダクト13に送り込まれ、誘導加熱コイル11を冷却する。なお、誘導加熱コイル11を冷却した空気でラジエントヒータ20を冷却するような風路を筐体10内に形成しておくとよい。
ダクト13に送り込まれた空気は、吐出穴から噴き出されてコイルベース12の下面に衝突して誘導加熱コイル11を冷却する。筐体10内に設けられている誘導加熱コイル11の個数に応じて、各構成部品も設けられているので、均一に効率よく誘導加熱コイル11を冷却することができる。誘導加熱コイル11を冷却した空気は、ラジエントヒータ20を冷却し、筐体10の外部に排出される。
参考例2.
図3は、本発明の参考例2に係る誘導加熱調理器200に収納される制御ユニット30の一例を示す概略構成図である。図3に基づいて、参考例2の特徴部分で制御ユニット30について説明する。なお、参考例2では、参考例1との相違点を中心に説明し、参考例1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。
制御ユニット30は、インバータ基板15aが載置される基板ベース31に、基板ベース蓋32が装着されて構成される。また、制御ユニット30には、側壁が設けられており、制御ユニット30内に取り込んだ空気が漏洩しないようになっている。この側壁で囲まれた内部に、ファン14aとコンデンサ部18aが配置されるようになっている。なお、インバータ基板15aには、フィン16aが設けられている。こうすることにより、制御ユニット30の状態で筐体10内に組み込むことができ、制御ユニット30を容易に交換できる。したがって、制御ユニット30内部の部品のメンテナンスを容易に実行することができるとともに、組み立て性が更に向上する。
基板ベース31と基板ベース蓋32とを組み合わせ、側面を側壁で囲むことによって、制御ユニット30ができあがり、その内部にインバータ基板15を冷却するための空気の風路が形成されるようになっている。そして、インバータ基板15aには、高周波電源部を構成する1または2以上のコンデンサを配置しないようになっているので、制御ユニット30を薄くすることができる。
そして、一番高い構成部品よりも低い位置にファン14aを配置するようにすれば、ファン14aの上部にできる空間を利用して空気を取り込むことができる。そこで、参考例2では、ファン14aに遠心ファン(シロッコファン)を使用している場合を例に示している。また、遠心ファンを使用すれば、制御ユニット30内にできた空間を利用して空気をファン14aの上側から取り込み、水平に空気を噴き出すことができるので、圧力損失の少ないスムーズな空気の流れを形成することができる。
参考例2では、制御ユニット30の内部にインバータ基板15aを配置するようになっているので、制御ユニット30から空気の漏洩がなく、インバータ基板15aを効率よく冷却することができる。そして、インバータ基板15aを冷却した空気は、ファン14aの上側から取り込まれ、その空気をコイルベース12の下側に水平に噴き出すので、コイルベース12に載置された誘導加熱コイル11を効率よく冷却することができる。
また、制御ユニット30は、筐体10内に設けられる誘導加熱コイル11の個数に応じて設けられるために、インバータ基板15a及び誘導加熱コイル11を更に効率よく冷却することができる。したがって、インバータ基板15a及び誘導加熱コイル11を冷却する空気を筐体10内で循環させるような複雑な風路を形成することなく、インバータ基板15a及び誘導加熱コイル11を効率よく冷却することができる。
参考例3.
図4は、本発明の参考例3に係る誘導加熱調理器300の一部を拡大した状態を示す拡大斜視図である。図4に基づいて、参考例3の特徴部分であるヒートパイプ40を筐体10内に配置した場合について説明する。なお、参考例3では、参考例1及び参考例2との相違点を中心に説明し、参考例1及び参考例2と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。
ヒートパイプ40とは、離れた場所に高速で熱を伝える熱伝達素子のことである。このヒートパイプ40は、その内壁に毛細管構造を備えたパイプであり、内部が真空構造になっている。そして、その内部に少量の水や代替フロン等の冷媒が封入されている。このヒートパイプ40の一端を加熱すると、内部の液体が蒸発して気化する。このとき、熱が気化熱(潜熱)として内部に取り込まれる。次に、この熱が低温部へ高速に移動し、冷やされる。そうすると、気化された冷媒は液体に戻る。このとき、取り込まれていた熱を放出する。
この参考例3では、このヒートパイプ40の性質を利用してインバータ基板15b及び誘導加熱コイル11を効率よく冷却するようになっている。インバータ基板15b及び誘導加熱コイル11を冷却する順番は、インバータ基板15b及び誘導加熱コイル11の耐熱温度を考慮して決定されている。一般的に、インバータ基板15bの耐熱温度の方が、誘導加熱コイル11の耐熱温度よりも低いため、インバータ基板15bを冷却してから誘導加熱コイル11を冷却するようになっている。
しかしながら、誘導加熱調理器300の小型化を実現するために、インバータ基板15b及び誘導加熱コイル11を冷却する空気の通気孔や吸気口が制限されてしまうことがある。つまり、インバータ基板15bを冷却させ、その後に誘導加熱コイル11を冷却させるという風路が筐体10内に形成できないことがある。そこで、参考例3では、筐体10内にヒートパイプ40を設け、インバータ基板15b及び誘導加熱コイル11を効率よく冷却するようになっている。
ここでは、筐体10の前面側に形成した通気孔45の近傍にヒートパイプ40の一端(放熱部41)を配置し、インバータ基板15bの上側にヒートパイプ40の他端(受熱部42)を配置して、通気孔45から取り込まれる空気と放熱部41にある冷媒とで熱交換を行い、ヒートパイプ40内に冷たい熱を取り込み、受熱部42側に熱輸送し、受熱部42にある冷媒とインバータ基板15b付近にある空気とで熱交換してインバータ基板15bを冷却するようになっている。
参考例1及び参考例2では、筐体10の背面側にインバータ基板15及びインバータ基板15aを配置し、筐体10の背面側から空気を取り込み、インバータ基板15及びインバータ基板15aと冷却してから、誘導加熱コイル11を冷却する場合を例に示したが、参考例3では、筐体10の背面側にインバータ基板15bを配置しているものの筐体10の背面側から空気を取り込めないような場合(たとえば、筐体10の前面側から空気を取り込むような場合)を想定している。
図4に示すように、筐体10の背面側にインバータ基板15bを配置しているが、筐体10の前面側から空気を取り込むようになっている場合、まず誘導加熱コイル11が冷却され、その後にインバータ基板15bが冷却される順番になってしまう。そうすると、誘導加熱コイル11を冷却することはできるものの、インバータ基板15bを効率よく冷却することができない。そこで、参考例3では、ヒートパイプ40を設け、その性質を利用してインバータ基板15bを効率よく冷却するようにしている。
ここでは、インバータ基板15b及び誘導加熱コイル11を冷却する空気を筐体10の前面側に形成された通気孔45から取り入れた場合を例に示したが、これに限定するものではない。たとえば、インバータ基板15b及び誘導加熱コイル11を冷却する空気を取り入れる通気孔を筐体10の側面側に形成してもよい。換言すると、インバータ基板15b及び誘導加熱コイル11を冷却する空気を取り入れる場所に、ヒートパイプ40の一端(放熱部41)を配置すればよい。そして、この放熱部41を通気孔45の近傍で筐体10内の空いているスペースに配置すれば、インバータ基板15b及び誘導加熱コイル11を効率的に冷却しつつ、筐体10の容積を十分に確保することができる。
図5は、1本のヒートパイプ40aで左右に配置されたインバータ基板15bを冷却するようにした誘導加熱調理器300aの概略構成を示す分解斜視図である。また、図6は、誘導加熱調理器300aを上から見た平面図である。図5及び図6に基づいて、参考例3の特徴部分であるヒートパイプ40aを筐体10内に配置した場合について説明する。なお、誘導加熱調理器300aの基本的な構成については、誘導加熱調理器300と同様なので説明を省略する。
誘導加熱調理器300では、筐体10内に設けるインバータ基板15b及び誘導加熱コイル11に応じた個数のヒートパイプ40、放熱部41及び受熱部42を備えた場合を例に示している。このようにすると、筐体10内に設ける誘導加熱コイル11の個数によっては、誘導加熱調理器300の小型化を実現することが困難な場合が生じる。誘導加熱コイル11を収納する筐体10のスペースには限界があり、誘導加熱コイル11及びインバータ基板15bを冷却するために必要な容積を確保するためには、筐体10内に収納される構成部品を少なくすることが好ましい。
そこで、図5及び図6に示す誘導加熱調理器300aでは、1本のヒートパイプ40aで2つのインバータ基板15bを冷却するようになっている。この誘導加熱調理器300aは、筐体10内の前面側に形成された通気孔45aの中央近傍に放熱部41aを配置して、そこから左右のインバータ基板15bの上側に配置された受熱部42aに熱輸送するようになっている。つまり、ヒートパイプ40aの両端に受熱部42aを配置し、ヒートパイプ40aの途中に放熱部41aを配置して、1本のヒートパイプ40aで2つのインバータ基板15bを冷却するようになっている。
こうすることによって、複数の放熱部41aを筐体10内に配置しなくて済み、筐体10内のスペースを有効活用することができる。同様に、1本のヒートパイプ40aで2つのインバータ基板15bを冷却するので、効率のよい冷却ができるとともに、小型化を実現することができ、更にコストを低減することができる。なお、2つのインバータ基板15bを冷却する場合を例に説明したが、これに限定するものではない。たとえば、3以上のインバータ基板15bが筐体10内に配置されていてもよい。
参考例3では、筐体10内に配置されるファン14bが軸流ファンである場合を例に示しているが、これに限定するものではない。たとえば、シロッコファン等の遠心ファンを配置してもよい。遠心ファンを配置する場合、参考例1で示したダクト13も併せて設けるとよい。また、参考例2で説明した制御ユニット30を誘導加熱調理器300及び誘導加熱調理器300aに適用してもよい。さらに、上記各参考例では、誘導加熱調理器をビルトイン型(システムキッチン一体型)IHクッキングヒータに用いた場合を例に説明したが、これに限定するものではなく、据え置き型や卓上型のIHクッキングヒータに用いても同様の作用効果を有することは言うまでもない。
参考例4.
図7は、本発明の参考例4に係る誘導加熱調理器400の縦断面を示す縦断面図である。図8は、誘導加熱調理器400に収納されるコイルユニット54の一例を示す概略構成図である。図7及び図8に基づいて、参考例4の特徴部分であるコイルユニット54について説明する。なお、参考例4では、参考例1〜参考例3との相違点を中心に説明し、参考例1〜参考例3と同一部分には同一符号を付して説明を省略するものとする。
図7に示すように、ダクト13(冷却ダクト)の上面には、誘導加熱コイル11を下方より冷却するための噴流口50が形成されている。つまり、このダクト13は、誘導加熱コイル11を下方より冷却せしめる冷却風を吐き出すようになっている。また、ダクト13の上面または外周面には、ダクト爪部51が形成されており、コイルベース12を係止せしめるようになっている。すなわち、このダクト爪部51がコイルベース12の外周面に設けられた係止部52に係止することによってコイルベース12は保持されるようになっているのである。さらに、コイルバネ53は、コイルベース12とダクト13との間に介在し、コイルベース12を押し上げる方向に付勢されている。
コイルユニット54は、複数のコイルバネ53と、誘導加熱コイル11が載置されたコイルベース12と、ダクト13とで構成されている。この参考例4では、コイルユニット54の最も外周面であるダクト13の側面と筐体10との間には隙間70を持たせるようにして、このコイルユニット54を筐体の10の内側にたとえばねじ等(図示省略)で固定せしめる構成としている。つまり、コイルユニット54と筐体10の側方内壁面との間に隙間70を設けてコイルユニット54を筐体10の内側に固定するようになっているのである。
また、図8に示すように、コイルユニット54の底面部分を構成しているダクト13に前後方向に厚みを持たせたスリット状の凹部であるスリット部55を形成し、ダクト13の下側に配置された筐体10の底面には長手方向が左右方向となるリブであるフランジ部56を形成し、スリット部55にフランジ部56が摺動自在に嵌合(係合)された構成とするとよい。なお、このフランジ部56を筐体10の底面に形成した場合を例に示しているが、これに限定するものではない。たとえば、フランジ部56は、筐体10の内部に設けられた水平面であればいずれに形成してもよい。したがって、コイルユニット54は、フランジ部56に沿って筐体10の左右方向に対して平行移動させることが可能になっている。
なお、フランジ部56は筐体10の底面に切り起こしを形成したものに限定するものではない。たとえば、L字状のフランジを溶接等で固着させたものであってもよい。また、図7では、片側(左側)のみのコイルユニット54を示したものであるが、右側にもコイルユニット54が設けられている。つまり、コイルユニット54は、左右対称に設けられ、構成されているものとする。
このように構成することにより、筐体10内の左右位置に設けられているコイルユニット54がそれぞれ筐体10の左右方向に対して平行移動させることができる。したがって、左右のコイルユニット54間の距離を任意に変更することができるようになる。IHクッキングヒータは、配置されるキッチンの形状により異なる大きさのガラスを用いた機種が存在する。このようなガラスの大きさが変わる機種では、ガラスに描かれたコイル同士の距離も変わってくる。
そこで、この参考例4では、ガラスに描かれたコイル間の距離に合わせて内部のコイルユニット54間の距離を任意に変更することができるため、ガラスの異なる機種ごとに部品を作る必要がなく、コイルユニット54の共有化できるため、製造コストを低く抑えることができる。さらに、筐体10内で前後方向へのズレを抑止し、左右方向にのみ平行移動できるようにガイド(スリット部55及びフランジ部56)を設けることで、組立時にコイルのピッチの急な変更が行われた場合にも、前後位置をずらすことなく正しくユニット移動を容易に行うことができる。
また、図8において、フランジ部56とスリット部55とを勘合させ、筐体10内でのコイルユニット54の前後方向へのズレを抑止し、左右方向にのみ平行移動できるようなガイド形状とすることにより、組立時にコイルのピッチの急な変更が行われた場合にも、前後位置をずらすことなく正しくユニット移動を容易に行うことができる。したがって、誘導加熱調理器400の組み立て性が向上する。
参考例5.
図9は、本発明の参考例5に係る誘導加熱調理器500に収納されるコイルユニットの一例を示す概略構成図である。図9に基づいて、参考例5の特徴部分であるコイルベースの保持方法について説明する。なお、参考例5では、参考例1〜参考例4との相違点を中心に説明し、参考例1〜参考例4と同一部分には同一符号を付して説明を省略するものとする。
図9において、誘導加熱コイル11が載置されたコイルベース12は、コイルベース12の底面または側面に設けられた複数のコイルベース保持部57にコイルバネ53が係合することにより保持されている。また、コイルバネ53は、その下方に設けられたバネ係止部58a〜58cに係合することにより位置決めされている。つまり、このバネ係止部58a〜58cは、コイルバネ53を支持する支持部として機能しているのである。さらに、バネ係止部58a〜58cは、予め筐体10の底面等に図示省略のねじ等により固着されているか、もしくは筐体10の底面を切り起こすことにより形成されている。
加えて、筐体10の内部には、コイルベース12に設けられたコイルベース支持部57の個数よりも少なくとも1つ以上多くなるよう、たとえば図8に示すようにバネ係止部58dを設けている。すなわち、バネ係止部58a〜58dを選択的に使用することで、コイルベース12の支持位置を変更することができるようになっているのである。そのため、異なる印刷を施したガラス面や、異なる大きさのガラス面に対しても、それに合わせたコイルベース12の配置が可能となる。また、コイルベース12の支持位置を変更可能なので、部品を共有化でき製造コストを低く抑えられることができる。
実施の形態1.
図10は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器600に収納されるコイルユニットの一例を示す概略構成図である。図11は、コイルユニットを分解した状態を示す分解斜視図である。図10及び図11に基づいて、実施の形態1の特徴部分であるコイルユニットの組み立て構成について説明する。なお、実施の形態1では、参考例1〜参考例5との相違点を中心に説明し、参考例1〜参考例5と同一部分には同一符号を付して説明を省略するものとする。
図10に示すように、ユニットベース59は、誘導加熱コイル11が載置されたコイルベース12とコイルベース12の下方に配置されているダクト13(冷却ダクト)とが載置可能になっている。また、このユニットベース59は、ファン14及びインバータ基板15も載置可能な構成となっている。また、コイルベース12とダクト13とが一体構成となるように係合させたコイルユニットを形成している。そして、ユニットベース59上に、コイルユニットと、インバータ基板15と、ファン14とが載置されているのである。なお、図10では、誘導加熱調理器600の片側(左側)のみの構成を示したものであるが、実際は左右対称として両側双方で構成されているものとする。
組み立て時には、筐体11に組み込む前に、ユニットベース59上にダクト13、ファン14及びインバータ基板15を予め配置させておく。そして、ユニットベース59に設けられたバネ係止部58に図示省略のコイルバネ等の弾性体を挿入し、同じくユニットベース59に設けられたユニットベース爪部(図示省略)に係止部(図示省略)を係止させ、コイルベース12を保持させるようになっている。その後、ユニットベース59に配設されたダクト13、ファン14、インバータ基板15及びコイルベース12をユニットベース単位で筐体10に組み込むものとする。こうすることにより、サブアセンブリ化が可能となり、並列して組み立てることが可能であるため、生産効率を向上させることができる。
コイルベース12は、調理面を構成するトッププレートの組み立て時には、トッププレートとコイルベース12との距離を均一に保つためトッププレートの裏面に接触する方向に付勢されている。したがって、従来は、コイルベース12が複数のコイルバネ53のみによる支持される構造であったが、組み立て時にはコイルバネ53とコイルベース12が外れてしまう等の組み立て性が悪いという問題があった。しかしながら、上記のような構成とすることで、本体組み込み時にもコイルベース12がユニットベース59に保持されているため、組み立て性が向上する。
すなわち、インバータ基板15を支持するユニットベース59とコイルベース12とが係合するとともに、その間に弾性体(ここでは、コイルバネ53)を設けるようにすることで、ユニットベース59にコイルベース12を取り付ける時にも係合部分に力がかかった状態で係合されるため、組み立て途中にコイルベース12が外れてしまうことがなく、組み立て性が向上するのである。
実施の形態2.
図12は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器700の内部構造の一例を示す斜視図である。図13は、誘導加熱調理器700の断面構成を側面から見た縦断面図である。図12及び図13に基づいて、実施の形態2の特徴部分である中位平面板61及び中位平面板61上の配置構成について説明する。なお、実施の形態2では、参考例1〜参考例5、実施の形態1との相違点を中心に説明し、参考例1〜参考例5、実施の形態1と同一部分には同一符号を付して説明を省略するものとする。
図12に示すように、誘導加熱調理器700は、中位平面板61によって筐体10が上下に分離するように構成されている。この中位平面板61は、ロースター60の上側となるように配置されている。つまり、一対の誘導加熱コイル11、一対のインバータ基板15及び一対のファン14が中位平面板61上に配置され、ロースター60が中位平面板61の下側に配置されるようになっているのである。ロースター60は、魚等を焼くための機能を有している。このロースター60は、筐体10の手前側に引出されるようになっている。ここでは、中位平面板61の下側にロースター60を配置した場合を例に示しているが、これに限定するものではなく、ロースター60以外の用途(たとえば、炊飯器等)にも利用することができる。
また、各誘導加熱コイル11は、後方の配置されているインバータ基板15と結線されている。さらに、誘導加熱コイル11、インバータ基板15、ファン14及びラジエントヒータ20のそれぞれを平面的に、つまり重なり合わないように中位平面板61に配置されている。なお、誘導加熱コイル11、インバータ基板15、ファン14及びラジエントヒータ20のそれぞれを中位平面板61で重なり合わないように配置できればよく、それぞれの筐体10内における設置個数を特に限定するものではない。
誘導加熱調理器700が誘導加熱動作を行なっているとき、インバータ基板15と結線されている誘導加熱コイル11のコイル線自体が発熱する。また、インバータ基板15を構成する図示省略のスイッチング素子も発熱する。これらの発熱部品をファン14によって効率よく冷却することが望ましい。そこで、誘導加熱調理器700では、ファン14をインバータ基板15と誘導加熱コイル11との間に配置することで、インバータ基板15及び誘導加熱コイル11の双方を効率よく冷却するようにしている。
誘導加熱調理器700の中位平面板61には、ファン14及びインバータ基板15に電力を供給するために電源基板71が配置されている。この電源基板71は、筐体10内の前方左右に設けられた誘導加熱コイル11の間に配置されるようになっている。このような位置に電源基板71を配置することによって、誘導加熱コイル11と同様に筐体10内の左右にそれぞれ設けられたファン14及びインバータ基板15への電力の供給線を均等化することができる。したがって、筐体10内における配線を容易にし、誘導加熱調理器700の組立性を向上できる。
この実施の形態2では、中位平面板61を設けて、筐体10を上下に分離した場合を例に説明したが、これに限定するものではない。すなわち、ロースター60を設けずに、誘導加熱コイル11、インバータ基板15、ファン14及びラジエントヒータ20のそれぞれを平面的に、つまり重なり合わないように筐体10の底面側に配置してもよいのである。また、このように構成した筐体10を、ロースター60の上側に載置するようにしてもよい。さらに、筐体10の上面を開口形成しているので、誘導加熱コイル11、インバータ基板15、ファン14及びラジエントヒータ20の設置が容易になり、組立性を向上させることができる。
図13に示す基板部分の斜線部は、それぞれ実装部品を含む基板の体積を示している。また、図13では、筐体10の上面側に配置されるトッププレート90を併せて図示している。通常、誘導加熱調理器では、入力電力のノイズを除去するフィルター基板や、誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ基板、操作スイッチや各種情報を表示する表示部等で構成された表示基板、ファンやインバータ基板に駆動用電源を供給する電源基板、インバータ基板を制御するためのマイコン等を配置したマイコン基板等を内部に収容している。
このうち、インバータ基板には、スイッチング素子にフィンが設けられた構成の部品が実装され、フィルター基板には、大型のチョークコイルが実装されるために、インバータ基板及びフィルター基板自体が大型化してしまう傾向にある。一方、電源基板や表示基板は、実装部品の高さを比較的低くする構成とすることができる。また、表示基板には、液晶や表示用LED等が実装されており、これらの実装部品はいずれもトッププレートに近い位置に配置することが一般的である。したがって、液晶や表示用LED等が実装された表示基板もトッププレートに近い位置に配置することが望ましい。
このために、誘導加熱調理器700は、実装部品の高さを低くできる表示基板72を上方(トッププレート90に近い位置)に配置し、その下側に実装部品の高さを低くできる電源基板71(又はマイコン基板73)を設けた構成となっている。すなわち、実装部品の高さを低くできる基板を上下に配置することによって、各基板の基板面積を十分に確保できるようにしているのである。その分、筐体10内にはスペースができ、大型化してしまう基板の基板面積を確保することにもなっている。
実施の形態3.
図14は、本発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器800を上から見た平面図である。図14に基づいて、実施の形態3の特徴部分である冷却風の流れについて説明する。なお、実施の形態3では、参考例1〜参考例5、実施の形態1、実施の形態2との相違点を中心に説明し、参考例1〜参考例5、実施の形態1、実施の形態2と同一部分には同一符号を付して説明を省略するものとする。また、誘導加熱調理器800に実施の形態2に係る中位平面板61を設けた場合を例に説明するものとする。
誘導加熱調理器800では、中位平面板61によって仕切られている筐体10の上部分の背面左右のそれぞれに吸気口65が形成されている。また、誘導加熱調理器800は、各吸気口65の前側に、インバータ基板15、ファン14及び誘導加熱コイル11を配置するようになっている。さらに、誘導加熱コイル11の前側には空気の流れを偏向する偏向板66が設けられている。そして、ファン14によって吸気口65から取り込まれた空気(冷却風)は、筐体10の背面側から前側に向かって流れ、インバータ基板15、誘導加熱コイル11の順に冷却する。
つまり、インバータ基板15を通過した空気は、その前側に設けられているファン14によって誘導加熱コイル11側に吐き出され、誘導加熱コイル11の前側に設けられた偏向板66によって、風路が偏向されて筐体10の中央部に集中されるのである。そして、筐体10の中央部に集中した空気は、筐体10の背面中央部に形成されている排気口67から外部に排出される。なお、偏向板66を誘導加熱コイル11の前方に設けた場合を例に示したが、これに限定するものではなく、偏向板66を誘導加熱コイル11の下側に設けるようにしてもよい。
このように誘導加熱調理器800を構成することで、筐体10内の左右位置に配置されている誘導加熱コイル11をそれぞれ個別に駆動させるとともに、駆動させた方のファン14のみを駆動させることができるために、ファン14を余分に駆動させなくて済む。つまり、一方の誘導加熱コイル11のみが動作している場合には、その誘導加熱コイル11に対応したファン14のみが駆動することになり、騒音及び消費電力の低減を図ることができる。また、誘導加熱コイル11を冷却した後の空気は、筐体10内の中央部に集中させるために、いずれかのファン14が動作していれば、誘導加熱調理器800の起動と共に常時通電されている電源基板71を冷却することができる。
さらに、ファン14をシロッコファンやブロアファン等の遠心ファンで構成するようにしたので、中位平面板61からトッププレート90までの距離が小さくても、ファン14を水平方向に設置することができ、中位平面板61からトッププレート90までの距離よりも大きな直径を有するものを配置することが可能になる。したがって、高い静圧を得ることが可能になる。また、筐体10の左右に設けられる各ファン14を対称形状とすることで、筐体10内部の風路構成も対称とすることができる。したがって、誘導加熱調理器800の組立性が向上する。
なお、ファン14のみならず、インバータ基板15も対称形状とすれば、筐体10内部の配線が容易になり、更に組立性を向上できる。また、偏向板66を誘導加熱コイル11の下側に配置する場合には、この偏向板66を誘導加熱コイル11を下側から冷却するように上面を開口形成した、略U字状の送風ダクトとしてもよい。さらに、誘導加熱調理器800に中位平面板61を設けた場合を例に説明したが、これに限定するものではなく、誘導加熱調理器800に中位平面板61を設けなくても同様な構成とすることが可能である。
図15は、インバータ基板15を収容するインバータ基板ケース64を透視して示した透視斜視図である。図15に基づいて、インバータ基板ケース64の構成について説明する。このインバータ基板ケース64には、インバータ基板15と、図示省略のスイッチング素子と、このスイッチング素子を冷却するための図示省略のフィンと、このフィンに風を送るファン14とが収容されている。このインバータ基板ケース64は、少なくとも一対の略対向面を有する直方体形状となっている。
そして、インバータ基板ケース64の一面(背面)には、インバータ基板ケース64内部に空気を取り込むためのケース吸気口64aが形成されている。また、ケース吸気口64aが形成されている面と相対する面の少なくとも一部には、ファン14の吹き出し口の大きさに合わせたケース排気口64bが形成されている。このようにインバータ基板ケース64を構成することで、ファン14の吸気口と排気口とをつなぐ流線上にインバータ基板ケースの壁面(前面)が配置されることになる。そして、誘導加熱調理器800が誘導加熱動作を行なっているとき、ケース排気口64bから空気が吹き出される。この空気は、インバータ基板ケース64の壁面により、分離されるため、ショートサイクルの発生を防止できる。したがって、常に新鮮な空気をケース吸気口64aから取り込むことができる。
各参考例、各実施の形態で説明した誘導加熱調理器100〜誘導加熱調理器800は、図1〜図15に示した場合に限定するものではなく、 各参考例、各実施の形態を組み合わせて誘導加熱調理器を構成するようにしてもよい。たとえば、実施の形態3に係るインバータ基板ケース64を参考例1〜参考例5に係わる誘導加熱調理器に設けるようにしてもよい。また、いずれの誘導加熱調理器にもトッププレート90及びこのトッププレートを保持するためのトップフレームが存在するが、筐体10の内部構造を詳細に示すために図示していない場合がある。
各参考例、各実施の形態では、誘導加熱調理器に誘導加熱コイル11が2つ備えられている場合を例に説明したが、これに限定するものではない。たとえば、誘導加熱コイルを1つ備えた誘導加熱調理器でもよく、誘導加熱コイルを3つ以上備えた誘導加熱調理器でもよい。また、ラジエントヒータ20の代わりに誘導加熱コイル11を設けるようにしてもよい。さらに、各参考例、各実施の形態では、誘導加熱調理器をビルトイン型(システムキッチン一体型)IHクッキングヒータに用いた場合を例に説明したが、これに限定するものではなく、据え置き型や卓上型のIHクッキングヒータに用いても同様の作用効果を有することは言うまでもない。