JPWO2012128183A1 - アルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤 - Google Patents
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Abstract
Description
炭酸飲料は、炭酸独特の爽快感を付与するだけでなく、炭酸の刺激により飲料の味を引きたたせることで、さらに美味しく飲むことが出来る。このような爽快感や風味は、含有する炭酸の量に影響され、炭酸飲料中の炭酸が減少するとその爽快感が感じにくくなり、飲料の味を引き立てる効果が減少してしまう。
例えば、缶等の容器に充填されているアルコール含有炭酸飲料をカップ等に注いで飲む場合に、注いだ直後は炭酸による爽快感が得られるものの早い段階で炭酸が喪失し、爽快感が感じにくくなり、美味しく飲めなくなる問題がある。
また、混成酒にサポニン成分および炭酸ガスを含有させることにより、ビール状の泡立ちを付与する技術(特許文献2)や、ビール様発泡アルコール飲料の起泡、泡持ち向上物質としてエンドウタンパクを使用する技術が開示されている(特許文献3)。しかし、特許文献2では、サポニンの苦味の問題があり、また、特許文献3では、タンパク質の起泡剤がビール様発泡アルコール飲料に対して0.5%も使用されており、いずれも風味への影響が懸念され、より風味の向上した技術が望まれている。
すなわち、本発明は、
(1)水溶性大豆多糖類を含有することを特徴とする、アルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤であって、該アルコール含有炭酸飲料は、アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないものである、アルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤。
(2)アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないアルコール含有炭酸飲料の製造において、水溶性大豆多糖類を添加することを特徴とする、アルコール含有炭酸飲料の炭酸保持方法。
(3)アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないアルコール含有炭酸飲料の製造において、水溶性大豆多糖類を添加することを特徴とする、アルコール含有炭酸飲料の製造方法。
(4)水溶性大豆多糖類の、アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないアルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤としての使用。
(5)アルコール含有炭酸飲料に果実,果汁,野菜汁または茶抽出物が添加されている、(1)記載のアルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤。
(6)アルコール含有炭酸飲料に果実,果汁,野菜汁または茶抽出物が添加されている、(2)記載のアルコール含有炭酸飲料の炭酸保持剤方法。
(7)アルコール含有炭酸飲料に果実,果汁,野菜汁または茶抽出物が添加されている、(3)記載のアルコール含有炭酸飲料の製造方法。
(8)水溶性大豆多糖類の添加量がアルコール含有炭酸飲料に対して0.005〜0.5重量%である、(2)記載のアルコール含有炭酸飲料の炭酸保持方法。
(9)水溶性大豆多糖類の添加量がアルコール含有炭酸飲料に対して0.005〜0.5重量%である、(3)記載のアルコール含有炭酸飲料の製造方法。
である。
水溶性大豆多糖類とは、大豆に由来する多糖類であって、水に可溶なものである。例えば以下に挙げた製造方法により得ることができる。
本発明の炭酸保持剤に含有される水溶性大豆多糖類は、その原料として、大豆の子葉由来のものが好ましく、豆腐や分離大豆蛋白などを産生する場合に副生されるおからを利用することが出来る。含脂おからを使用する場合に、含有される油分の加熱による酸化に起因する風味劣化が起こる場合がある点から、脱脂大豆から得られたおからを使用するのが好ましく、分離大豆蛋白を製造する工程で副生するおからを使用することが最も好ましい。
水溶性大豆多糖類は、例えば、分離大豆蛋白を製造する工程で副生する、おからに加水した後、100℃を超える温度で加熱抽出したスラリーを遠心分離機で固液分離し、上清を精製し、乾燥することにより得られる。
得られた水溶性大豆多糖類は、必要に応じて、製造時に殺菌するのが望ましい。殺菌はいずれの方法によっても可能であり、UHTのような高温殺菌、レトルト殺菌、電磁波殺菌、高温真空殺菌、オゾン殺菌、電界水殺菌、間接加熱殺菌などが例示できる。
得られた水溶性大豆多糖類は必要に応じて乾燥するのが望ましい。乾燥方法として、公知の方法を用いることができ、凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、流動層乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法などが例示できる。乾燥後の水分は、保存性の観点から10重量%以下が望ましい。
本発明における、原料アルコールの由来が蒸留酒のみで醸造酒を含まず、また、乳蛋白質素材を含まない、アルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤とは、当該アルコール含有炭酸飲料の開封後における、経時的な炭酸の抜けを抑制し、飲用する際の口当たりを含む風味の変化を抑えることができるものをいう。
すなわち、炭酸の刺激感が高いほど、炭酸の刺激感の持続性が長いほど、アルコール含有炭酸飲料の炭酸感、炭酸持続感を保持していることとなり、良好となる。
本発明における、原料アルコールの由来が蒸留酒のみで醸造酒を含まず、また、乳蛋白質素材を含まない、アルコール含有炭酸飲料について説明する。まず、原料アルコールが由来する蒸留酒とは、甲類焼酎,乙類焼酎,ウイスキー,ブランデー,ウオッカ,ラム,テキーラや、リキュール,スピリッツ等々の、蒸留工程を経た酒のことである。すなわち、醸造工程を経た不揮発成分が蒸留で除かれ、これらが殆ど混入していないものである。
本発明は上記蒸留酒をアルコール源に用いたアルコール含有炭酸飲料について、効果的に使用できる。そして、蒸留酒には種々の非発酵成分を添加することが可能である。一例を挙げれば、果実,果汁,野菜汁,茶抽出物などの植物に由来する物質や抽出物、砂糖,黒糖,果糖ぶどう糖液,麦芽糖などの糖類、各種ビタミン類,色素,香料等である。蒸留酒自体は発泡性を有しないので、これらを発泡性を持つ他の飲料で希釈するか、カーボネーション処理を行う必要がある。
本発明に使用できる果汁としては、例えば原料果実から圧搾した搾汁液を用いることができる。果汁には濃縮果汁とストレート果汁がある。濃縮果汁の中では、カットバックとフレーバー還元とを併用した濃縮果汁が、原料果汁として最も風味の優れたものである。ストレート果汁には、無殺菌果汁、殺菌果汁、殺菌冷凍果汁等がある。果汁の含有量として特に限定はないが、例えば0.1から50重量%である。
果汁の由来となる原料果実の種類には特に限定はなく、例えば、レモン、グレープフルーツ、ライム、オレンジ、温州みかん、マンダリン、タンジェリン等の柑橘類果実、リンゴ、モモ、ウメ、メロン、イチゴ、バナナ、ブドウ、パイナップル、マンゴー、パパイヤ、パッションフルーツ、グアバ、アセロラ、ナシ、アンズ、ライチ、カシス、西洋ナシ、スモモ等が使用でき、これらのうち、1種又は2種以上のものが使用できる。
醸造酒とは、ビール,ワイン,日本酒,老酒、麦芽含量の低い発泡酒や第3のビール等の、蒸留操作を経ない酒のことである。これらの酒は、醸造工程で発生する様々な発酵産物を含んでおり、発酵産物には様々な不揮発成分が含まれている。本発明に於いては、醸造工程に由来する発酵産物の混入によりその効果が低減することが判っているが、その要因は、後述するように、発酵産物に含まれる不揮発成分であると考えられる。従って、本発明に於いては、醸造酒を含まないことが重要である。
尚、シェリー,ポートワイン,第4のビール等の、醸造酒と蒸留酒を混合した酒類は、上記の醸造工程に由来する発酵産物が混入してしまい、本発明の効果を得ることはできない。
以上のような、原料アルコールの由来が蒸留酒のみで醸造酒を含まず、また、乳蛋白質素材を含まない、アルコール含有炭酸飲料として、焼酎を果汁や茶抽出物で割ったチューハイ,ハイボール,コークハイ等が例示できる。
本発明の炭酸保持剤を含有させる炭酸飲料を得る方法については、通常、実施されている方法が使用できる。例えば、缶入りチューハイの場合、所定量の蒸留酒、水、炭酸保持剤、果汁、糖類等を調合した後、カーボネーターによるカーボネーションを行って炭酸ガスを含有させ容器に充填、密封後に加熱殺菌することにより製造することができる。炭酸保持剤の添加は製造工程のどのタイミングで行っても良く、カーボネーション後に添加しても良い。また、上記原料液を濃厚な状態で作成した後に、炭酸水を添加することもできる。尚、コークハイは、ウイスキーに対して、別途調製した炭酸水を添加するか、ウイスキーを水で希釈した後にカーボネーション処理することで調製できる。
上記のような方法で調製されたアルコール含有炭酸飲料を、カップなどの容器に注いだ場合、少なくとも60分間、炭酸感と炭酸持続感が良好であり、口当たりが良いものとなる。
これらが液中の炭酸と相まって、クリーム状の泡となり、飲料の上面に泡の層が形成されるが、水溶性大豆多糖類はこの泡の安定化に寄与するため、その分、水溶性大豆多糖類の有する炭酸飲料中の炭酸の気泡を保持する効果が低下してしまうためと考えられる。また、第4のビール等の、醸造酒を混合した蒸留酒についても、醸造工程を経た不揮発成分の影響が大きく、同様に、水溶性大豆多糖類の効果が低下するものと考えられる。
これに対して、醸造酒を用いないチューハイのような炭酸飲料の場合、醸造工程を経た蛋白質やホップ由来物質等が存在せず、飲料の上面に泡の層をほとんど形成することがない。従って、醸造酒を含む飲料のように、水溶性大豆多糖類が飲料の上面の泡の安定に寄与することはなく、炭酸飲料中の気泡保持効果が得られるものと考えられる。
本発明により得られるアルコール含有炭酸飲料の経時的な炭酸の抜けを抑制する効果については、官能評価により評価する。この官能評価は、炭酸感と炭酸持続感を総合的に評価することにより行う。
官能評価は、具体的には、本発明の炭酸保持剤を添加して調製した炭酸飲料の調製直後(0分)及び、炭酸飲料をカップにゆっくり注いだものを20℃で60分保存したものについて、炭酸飲料の炭酸感及び炭酸持続感を評価することにより行う。調製直後(0分)の無添加の炭酸飲料の炭酸感と炭酸持続感を5点として、各炭酸飲料の調製直後(0分)及び60分保存した炭酸飲料について、パネラー4名で、1〜5点で評価し、その平均を算出する。炭酸感が強いものほど、炭酸感が長く持続するものほど、点数が高くなる。次に、60分保存した炭酸飲料の値と調製直後(0分)の値の差を算出する。炭酸感及び炭酸持続感それぞれで算出した差の合計を官能評価とする。すなわち、
官能評価(点)=(調製後60分の炭酸感の平均値−調製直後(0分)の炭酸感の平均値)+(調製後60分の炭酸持続感の平均値−調製直後(0分)の炭酸持続感の平均値)
の式により算出する。
この官能評価点が、−3.5点以上であれば、炭酸飲料の炭酸感、炭酸持続感を保持できるものであり、合格とする。
分離大豆蛋白を製造する工程で副生するおから1部に水2部を加水したスラリーを、塩酸でpHを5.0に調整し、加圧釜で120℃、1.5時間加熱した。加熱後のスラリーを遠心分離機で遠心分離し(5000×g)、上清を得た。上清を精製後、凍結乾燥により水溶性大豆多糖類Aを得た。
(実施例1)
市販の缶入りのアルコール含有炭酸飲料(麒麟麦酒株式会社製:商品名 キリン氷結 レモン)350gから、65gを除去し、代わりに水溶性大豆多糖類Aの1%水溶液を15g添加して300gとし、ゆっくりと缶を動かして全体を均一にし、本発明の炭酸保持剤を含有する炭酸飲料を得た。
実施例1において、水溶性大豆多糖類水溶液の代わりに水を15g添加する以外は同様にした。
(実施例2)
市販の缶入りのアルコール含有炭酸飲料(サントリー株式会社製:商品名 ストロングゼロ ダブルグレープフルーツ)350gから、65gを除去し、代わりに水溶性大豆多糖類Aの1%水溶液を15g添加して300gとし、ゆっくりと缶を動かして全体を均一にし、本発明の炭酸保持剤を含有する炭酸飲料を得た。
実施例1、2のように水溶性大豆多糖類を添加することにより、カップに注いだ後の炭酸飲料の炭酸感と炭酸持続感を保持することができ、経時的な炭酸の抜けを抑制することで爽快感のある炭酸飲料を調製することができた。
(比較例3)
市販の缶入りのアルコール含有炭酸飲料(サントリー株式会社製:商品名 金麦)350gから、65gを除去し、代わりに水溶性大豆多糖類Aの1%水溶液を15g添加して300gとし、ゆっくりと缶を動かして全体を均一にし、炭酸飲料を得た。
比較例3において、水溶性大豆多糖類水溶液の代わりに水を15g添加する以外は同様にした。
(比較例5)
市販の缶入りのアルコール含有炭酸飲料(サッポロビール株式会社製:商品名 エビスビール)350gから、65gを除去し、代わりに水溶性大豆多糖類Aの1%水溶液を15g添加して300gとし、ゆっくりと缶を動かして全体を均一にし、炭酸飲料を得た。
比較例5において、水溶性大豆多糖類水溶液の代わりに水を15g添加する以外は同様にした。
(比較例7)
市販の缶入りのアルコール含有炭酸飲料(株式会社日本サンガリア ベバレッジカンパニー製:商品名 ヨーグルサワー)350gから、65gを除去し、代わりに水溶性大豆多糖類Aの1%水溶液を15g添加して300gとし、ゆっくりと缶を動かして全体を均一にし、炭酸飲料を得た。
比較例7において、水溶性大豆多糖類水溶液の代わりに水を15g添加する以外は同様にした。
Claims (9)
- 水溶性大豆多糖類を含有することを特徴とする、アルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤であって、該アルコール含有炭酸飲料は、アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないものである、アルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤。
- アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないアルコール含有炭酸飲料の製造において、水溶性大豆多糖類を添加することを特徴とする、アルコール含有炭酸飲料の炭酸保持方法。
- アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないアルコール含有炭酸飲料の製造において、水溶性大豆多糖類を添加することを特徴とする、アルコール含有炭酸飲料の製造方法。
- 水溶性大豆多糖類の、アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないアルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤としての使用。
- アルコール含有炭酸飲料に果実,果汁,野菜汁または茶抽出物が添加されている、請求項1記載のアルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤。
- アルコール含有炭酸飲料に果実,果汁,野菜汁または茶抽出物が添加されている、請求項2記載のアルコール含有炭酸飲料の炭酸保持剤方法。
- アルコール含有炭酸飲料に果実,果汁,野菜汁または茶抽出物が添加されている、請求項3記載のアルコール含有炭酸飲料の製造方法。
- 水溶性大豆多糖類の添加量がアルコール含有炭酸飲料に対して0.005〜0.5重量%である、請求項2記載のアルコール含有炭酸飲料の炭酸保持方法。
- 水溶性大豆多糖類の添加量がアルコール含有炭酸飲料に対して0.005〜0.5重量%である、請求項3記載のアルコール含有炭酸飲料の製造方法。
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