JPWO2012057060A1 - スチレン系樹脂押出発泡体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
スチレン系樹脂押出発泡体に適した難燃剤のもう一つの必要特性としては、スチレン系樹脂の分解前に、効率良く難燃剤が分解することである。ポリスチレンは300℃付近から分解することが知られている。そのため、300℃付近よりも低い温度において難燃剤が効率よく分解しないと、JIS A9511記載の燃焼性規格を満たさない恐れがある、若しくは、必要な難燃性能を得るために、結果として難燃剤の添加部数を多くしなければならず、製品コストアップや、得られる発泡体の成形性悪化等の悪影響を及ぼす傾向にある。
一方、HBCDは難分解性で生態に対して高蓄積性の化合物であることから、環境衛生上好ましいものではなく、HBCD使用量の削減、およびHBCDに代わる難燃剤の開発が望まれている。
テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)は、HBCDとほぼ同等レベルの難燃性能を有するものの、熱安定性に問題があり、安定剤の添加が必要となる。
これに対して、特許文献1に示されるように、高級脂肪酸の金属塩を安定剤として使用することにより、熱安定性が改善される技術が開示されている。しかしながら、該技術では、難燃性が低下し、本来、該難燃剤が有する高度な難燃性能が発揮できていないという問題がある。また、スチレン系樹脂への適応例として、特許文献2では、有機溶媒溶液で添加する技術が提案されているが、使用された溶媒は製品中に残らずに系外に気散しており、環境上良い方法とはいえない。
しかしながら、アリルエーテル化合物を併用した場合、求める難燃性を発現するのに必要な量のアリルエーテル化合物を配合した際には、熱安定性が極端に悪くなり、種々の安定剤を添加しても十分には改良されない。
また、トリフェニルホスフェートに代表されるようなリン酸エステルとの併用により、高度な難燃性を付与することが試みられている(特許文献5参照)。しかしながら、トリフェニルホスフェートのようなリン酸エステル系難燃剤は、融点が低く、可塑化作用のため、発泡体の熱安定性を低下させる恐れがあり、且つ、その分解温度が発泡体を製造する場合の押出温度条件よりも低いために、加工時に分解してしまうといった恐れがある。
更に、5重量%分解温度が240〜320℃で、融点が120℃以上、リン含有率が7重量%以上であるリン系難燃剤を0.1〜3重量部含有し、かつ、
上記混合臭素系難燃剤が、
(A)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)からなる混合臭素系難燃剤、または、
(B)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートからなり、
かつ、該混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が、該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、25重量%〜75重量%とすることにより、スチレン系樹脂の難燃性、熱安定性、断熱性などの発泡体としての諸特性を満たし得ることを見出し、本発明に至った。
[1] スチレン系樹脂および発泡剤を用いて押出発泡して得られるスチレン系樹脂発泡体であって、
スチレン系樹脂100重量部に対して、混合臭素系難燃剤を1〜6重量部含有し、
更に、5重量%分解温度が240〜320℃で、融点が120℃以上、リン含有率が7重量%以上であるリン系難燃剤を0.1〜3重量部含有し、かつ、
上記混合臭素系難燃剤が、
(A)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)からなる混合臭素系難燃剤、または、
(B)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートからなる混合臭素系難燃剤であり、
かつ、該混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が、該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、25重量%〜75重量%であることを特徴とする、スチレン系樹脂押出発泡体、
[2] 混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が、該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、35重量%〜65重量部%であることを特徴とする、[1]に記載のスチレン系樹脂押出発泡体、
[3] 5重量%分解温度が240〜320℃で、融点が120℃以上、リン含有率が7重量%以上であるリン系難燃剤がトリフェニルホスフィンオキシドまたは2−ジフェニルホスフォニルヒドロキノンであることを特徴とする、[1]または[2]に記載のスチレン系樹脂押出発泡体、
[4] さらに、リン系安定剤および/またはヒンダードアミン系安定剤を含むことを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体、
[5] リン系安定剤がトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトまたはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトであり、ヒンダードアミン系安定剤が4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、または、4−ヒドロキシ−1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピレリジンの脂肪族または芳香族カルボン酸エステルであることを特徴とする、[4]に記載のスチレン系樹脂押出発泡体、
[6] 発泡剤が、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種、および/または、他の発泡剤からなることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体、
[7] 他の発泡剤が、水、二酸化炭素、窒素、炭素数が2〜5のアルコール類、ジメチルエーテル、塩化メチルおよび塩化エチルよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、[6]に記載のスチレン系樹脂発泡体、
[8] 他の発泡剤が、水を含むことを特徴とする、[6]または[7]に記載のスチレン系樹脂発泡体、
[9] 発泡体を形成する気泡径が、気泡径0.2mm以下の気泡と気泡径0.2mm超1mm以下の気泡より構成されることを特徴とする、[8]に記載のスチレン系樹脂発泡体、
[10] 発泡体を形成する気泡の内、気泡径0.2mm以下の気泡が発泡体断面積あたり、5〜95%の占有面積率を有することを特徴とする、[9]に記載のスチレン系樹脂発泡体、および
[11] スチレン系樹脂および発泡剤を用いて押出発泡して得られるスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、
スチレン系樹脂100重量部に対して、混合臭素系難燃剤を1〜6重量部含有し、
更に、5重量%分解温度が240〜320℃で、融点が120℃以上、リン含有率が7重量%以上であるリン系難燃剤を0.1〜3重量部含有し、かつ、
上記混合臭素系難燃剤が
(A)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)からなる混合臭素系難燃剤、または、
(B)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートからなる混合臭素系難燃剤であり、
かつ、該混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が、該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、25重量%〜75重量%であることを特徴とする、スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法
に関する。
(A)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)からなる混合臭素系難燃剤、または、
(B)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートからなる混合臭素系難燃剤であり、
かつ、該混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が、該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、25重量%〜75重量%とすることによって、難燃性および熱安定性が改善されたスチレン系樹脂押出発泡体である。
なお、スチレン系樹脂内での難燃剤の分散・バラツキを考慮して、安定的により高い難燃性およびより高い熱安定性を得ようとする際には、テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテルの含有率は35〜65重量%の範囲であることが好ましい。
混合臭素系難燃剤の含有量が1重量部未満では、難燃性などの発泡体としての良好な諸特性が得られがたい傾向があり、6重量部を超えると、発泡体製造時の安定性、表面性などを損なう場合がある。
リン系難燃剤の5重量%分解温度が240℃未満であると、押出機内で分解しやすく、押出運転性、発泡体の熱安定性が損なわれる傾向にある。また、5重量%分解温度が320℃を超える化合物であると、難燃性向上効果が小さくなる傾向がある。
なお、5重量%分解開始温度は、TG−DTA分析装置[(株)島津製作所製、DTG−60A]を用いて、試料5mg、昇温速度10℃/min、空気雰囲気下にて測定した時の温度と定義する。
リン系難燃剤中のリン含有率が7重量%未満であると、得られる発泡体の難燃性能が十分でなく、高度な難燃性能を確保するために、添加部数を増やすと、結果として得られる発泡体の熱安定性の低下を引き起こす傾向にある。
これらの炭素数3〜5の飽和炭化水素のなかでは、発泡性の点から、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、あるいは、これらの混合物が好ましい。また、発泡体の断熱性能の点から、n−ブタン、i−ブタン、あるいは、これらの混合物が好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
発泡剤を添加または注入する際の圧力は、特に制限するものではなく、押出機などの内圧力よりも高い圧力であればよい。
加熱温度は、使用するスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、難燃剤などの影響も含め、樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば150〜250℃程度が好ましい。
溶融混練時間は、単位時間当たりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので一概には決定することができないが、スチレン系樹脂と発泡剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。
溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュー形状については、低剪断タイプのスクリューを用いる方が好ましい。
(A)スチレン系樹脂[PSジャパン(株)製、G9401]
(B)臭素系難燃剤
・テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピル)エーテル[第一工業製薬(株)製、ピロガードSR−130]
・テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル[第一工業製薬(株)製、ピロガードSR−720]
・トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート[日本化成(株)製、TAIC−6B]
(C)リン系難燃剤
・トリフェニルホスフィンオキシド[ケイ・アイ化成(株)製、PP−560、融点=156℃、5%重量分解温度=254℃、リン含有率=11.13%]
・2−ジフェニルホスフォフィニルヒドロキノン[北興産業(株)製、PPQ、融点=214℃、5%重量分解温度=304℃、リン含有率=9.98%]
・トリフェニルホスフェート[味の素ファインテクノ(株)製、レオフィスTPP、融点=50℃、5%重量分解温度=224℃、リン含有率=9.49%]
・トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート[大八化学(株)製、CR900、融点=180℃、5%重量分解温度=308℃、リン含有率=3.04%]
・1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)[大八化学(株)製、PX−200、融点=92℃、5%重量分解温度=334℃、リン含有率=9.95%]
・9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド[三光(株)製、HCA、融点=116℃、5%重量分解温度=232℃、リン含有率=14.33%]
・ポリリン酸メラミン[(株)三和ケミカル製、M−PPB、5%重量分解温度=350℃]
(D)発泡剤
・イソブタン[三井化学株式会社製]
・ノルマルブタン[岩谷産業株式会社製]
・水[水道水]
・ジメチルエーテル[三井化学株式会社製]
・二酸化炭素[岩谷産業株式会社製]
(E)その他添加剤
・タルク[林化成(株)製、タルカンパウダーPK−Z]
・ベントナイト[ウィルバーエリス(株)製、ゲルホワイトH]
・アエロジル[日本アエロジル(株)製、AEROSIL]
・ゼオライト[日東粉化工業(株)製、ゼオライトsp2300]
・ステアリン酸カルシウム[堺化学(株)製、SC−P]
・リン系安定剤
ビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト[(株)ADEKA製、アデカスタブPEP−36]
・ ヒンダートアミン系安定剤
テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート[(株)ADEKA製、アデカスタブLA−57]
実施例および比較例にて実施した評価方法は、次の通りである。
発泡体密度は、発泡体密度(g/cm3)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm3)に基づいて求め、単位を(kg/m3)に換算して示した。
押出発泡体について、気泡径0.2mm以下の気泡の発泡体断面積あたりの占有面積比を、以下のようにして求めた。ここで、気泡径0.2mm以下の気泡とは、円相当直径が0.2mm以下の気泡とする。
a)走査型電子顕微鏡[ (株)日立製作所製、品番:S−450 ] にて30倍に拡大して発泡体の縦断面を写真撮影する。
b)撮影した写真の上にOHPシートを置き、その上に厚さ方向の径が6.0mmよりも大きい気泡(実寸法が0.2mmより大きい気泡に相当する)に対応する部分を黒インキで塗りつぶして写しとる( 一次処理) 。
c)画像処理装置[(株)ピアス製、品番: PIAS−II] に一次処理画像を取り込み、濃色部分と淡色部分を、すなわち黒インキで塗られた部分か否かを識別する。
d)濃色部分のうち、直径6.0mm以下の円の面積に相当する部分、即ち、厚さ方向の径は長いが、面積的には直径6.0mm以下の円の面積にしかならない部分を淡色化して、濃色部分の補正を行う。
e)画像解析計算機能中の「FRACTAREA(面積率)」を用い、画像全体に占める気泡径6.0mm以下(濃淡で分割した淡色部分)の面積比を次式により求める。
小気泡占有面積比(%)= (1−濃色部分の面積/ 画像全体の面積)×100
押出発泡体について、気泡径1.0mm以下の気泡の発泡体断面積あたりの占有面積比を、以下のようにして求めた。ここで、気泡径1.0mm以下の気泡とは、円相当直径が1.0mm以下の気泡とする。
a)走査型電子顕微鏡[ (株)日立製作所製、品番:S−450 ] にて30倍に拡大して発泡体の縦断面を写真撮影する。
b)撮影した写真の上に、別のOHPシートを置き、その上に厚さ方向の径が30mmよりも大きい気泡(実寸法が1mmより大きい気泡に相当する)に対応する部分を黒インキで塗りつぶして写しとる( 一次処理) 。
c)画像処理装置[(株)ピアス製、品番: PIAS−II] に一次処理画像を取り込み、濃色部分と淡色部分を、すなわち黒インキで塗られた部分か否かを識別する。なお、補正に関しては、(2)と同様の操作を行った。
d)画像解析計算機能中の「FRACTAREA(面積率)」を用い、画像全体に占める気泡径30mm以下(濃淡で分割した淡色部分)の面積比を次式により求める。
大気泡および小気泡の占有面積比(%)= (1−濃色部分の面積/ 画像全体の面積)×100
JIS A9511に準じて、厚さ10mm×長さ200mm×幅25mmの試験片を用い、以下の基準で評価した。測定は、製造後、前記寸法に切削した後、7日経過した発泡体について行った。
燃焼時間
◎:消炎時間が5本すべて3秒以内となる 。
○:消炎時間が5本の内、少なくとも1本が3秒を越えるが、残りの3本以上は3秒以内となる 。
△:消炎時間が5本の内、少なくとも3本が3秒を越えるが、残りの1本以上は3秒以内となる。
×:消炎時間が5本すべて3秒を超える。
燃焼距離
◎:5本全てで、限界線以内に停止する。
○:5本の内、少なくとも1本は燃焼が限界線を越えるが、残りの3本以上は限界線以内で燃焼が停止する。
△:5本の内、少なくとも3本は燃焼が限界線を越えるが、残りの1本以上は限界線以内で燃焼が停止する。
×:5本全てで燃焼が限界線を越える。
燃焼状況
◎:発泡剤の燃焼が全く見られない。
○:発泡剤の燃焼が若干見られる。
△:発泡剤の燃焼が見られるが、全焼には至らない。
×:発泡剤の燃焼も見られ、全焼する。
押出機内での熱履歴に伴う樹脂劣化の程度を評価する為に、発泡体の比粘度低下率を、以下の手順により求めた。
a)押出発泡体約1gを共栓付き試験管内で約30mLのメチルエチルケトンに溶解させ、試験管に栓をして6時間以上静置する。静置後、試験管中の上澄み液をビーカーに取り出し、エタノールを添加して樹脂分を再沈させ、70℃雰囲気のオーブン中にて溶剤を完全に揮発させる。
b)得られた樹脂分250mgをトルエン25mLに溶解させ、得られたトルエン溶液10mLに対して、ウベローデ粘度管を用いて、30℃におけるトルエンに対する比粘度を測定する。比粘度は以下の式にて算出する。
発泡体の比粘度(ηsp-foam)=(試料トルエン溶液の通過時間)/(トルエンの通過時間)−1
c)使用樹脂比粘度(ηsp−resin)に対する発泡体の比粘度(ηsp−foam)の低下率を、以下の式にて算出する。
発泡体の比粘度低下率=発泡体の比粘度(ηsp−foam)/使用樹脂比粘度(ηsp−resin)
得られた値に対し、以下の基準で判断した。
◎:発泡体の比粘度低下率が0.9以上である。
○:発泡体の比粘度低下率が0.8以上、0.9未満である。
△:発泡体の比粘度低下率が0.7以上、0.8未満である。
×:発泡体の比粘度低下率が0.7未満である。
得られた発泡体サンプルを長さ150mm×幅10mm×厚み10mmにカットしたものを、内温60℃のオーブンにて1週間加熱養生したサンプルを、JIS K7201−2に準拠して、酸素指数濃度を測定した。
得られた値に対し、以下の基準で判断した。
○:発泡体の酸素指数が28%以上である。
△:発泡体の酸素指数が26%以上、28%未満である。
×:発泡体の酸素指数が26%未満である。
発泡体の熱安定性の指標として、ガラス転移温度を測定する。ガラス転移温度は、TG分析装置[DSC−60A、(株)島津製作所製]を用いて、試料5mg、昇温速度10℃/min、窒素雰囲気下の条件にて測定した。
得られた値に対し、以下の基準で判断した。
○:発泡体のガラス転移温度が100℃以上である。
△:発泡体のガラス転移温度が98℃以上、100℃未満である。
×:発泡体のガラス転移温度が98℃未満である。
スチレン系樹脂(G9401)100部に対して、難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)1.5部、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)2.5部、トリフェニルホスフィンオキシド0.1部、ステアリン酸カルシウム0.2部、タルク0.5部、ベントナイト1.0部およびアエロジル0.1部からなる樹脂混合物をドライブレンドした。
得られた樹脂混合物を口径65mmの単軸押出機(第一押出機)と口径90mmの単軸押出機(第一押出機)を直列に連結したタンデム型二段押出機へ、約50kg/hrの割合で供給した。
第一押出機に供給した樹脂混合物を、樹脂温度230℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、以下に示す発泡剤を第一押出機の先端付近で樹脂中に圧入した。その後、第一押出機に連結された第二押出機中にて、樹脂温度を120℃に冷却し、第二押出機の先端に設けた厚さ2mm×幅50mmの長方形断面の口金より大気中へ押出発泡させた後、口金に密着させて設置した成形金型とその下流側に設置した成形ロールにより、厚さ50mm×幅150mmである断面形状の押出発泡板を得た。
なお、発泡剤としては、スチレン系樹脂100重量部に対して、水(水道水)0.7重量部、イソブタン4重量部およびジメチルエーテル2重量部を用いた。
得られた発泡体の特性を、表1に示す。
表1に示すように、発泡剤の種類・使用量、難燃剤の種類・使用量、他の配合剤の種類・添加量を変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。
表2に示すように、発泡剤の種類・使用量、難燃剤の種類・使用量、他の配合剤の種類・添加量を変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡体を得た。
押出発泡成形安定性および、得られた発泡体の特性を表2に示す。
表3に示すように、発泡剤の種類・使用量、難燃剤の種類・使用量、他の配合剤の種類・添加量を変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表3に示す。
混合臭素系難燃剤として、
(A)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)及びテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)からなる混合臭素系難燃剤、または、
(B)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)及びトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートからなる混合臭素系難燃剤であり、かつ、
該混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、25重量%〜75重量%とすることによって、難燃性および熱安定性が改善された押出発泡体を安定して得られることが判る。
[1] スチレン系樹脂および発泡剤を用いて押出発泡して得られるスチレン系樹脂発泡体であって、
スチレン系樹脂100重量部に対して、混合臭素系難燃剤を1〜6重量部含有し、
更に、5重量%分解温度が240〜320℃で、融点が120℃以上、リン含有率が7重量%以上であるリン系難燃剤を0.1〜3重量部含有し、かつ、
上記混合臭素系難燃剤が、
(A)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)からなる混合臭素系難燃剤、または、
(B)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートからなる混合臭素系難燃剤であり、
かつ、該混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が、該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、25重量%〜75重量%であることを特徴とする、スチレン系樹脂押出発泡体、
[2] 混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が、該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、35重量%〜65重量%であることを特徴とする、[1]に記載のスチレン系樹脂押出発泡体、
[3] 5重量%分解温度が240〜320℃で、融点が120℃以上、リン含有率が7重量%以上であるリン系難燃剤がトリフェニルホスフィンオキシドまたは2−ジフェニルホスフォニルヒドロキノンであることを特徴とする、[1]または[2]に記載のスチレン系樹脂押出発泡体、
[4] さらに、リン系安定剤および/またはヒンダードアミン系安定剤を含むことを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体、
[5] リン系安定剤がトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトまたはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトであり、ヒンダードアミン系安定剤が4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、または、4−ヒドロキシ−1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピレリジンの脂肪族または芳香族カルボン酸エステルであることを特徴とする、[4]に記載のスチレン系樹脂押出発泡体、
[6] 発泡剤が、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種、および/または、他の発泡剤からなることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体、
[7] 他の発泡剤が、水、二酸化炭素、窒素、炭素数が2〜5のアルコール類、ジメチルエーテル、塩化メチルおよび塩化エチルよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、[6]に記載のスチレン系樹脂発泡体、
[8] 他の発泡剤が、水を含むことを特徴とする、[6]または[7]に記載のスチレン系樹脂発泡体、
[9] 発泡体を形成する気泡径が、気泡径0.2mm以下の気泡と気泡径0.2mm超1mm以下の気泡より構成されることを特徴とする、[8]に記載のスチレン系樹脂発泡体、
[10] 発泡体を形成する気泡の内、気泡径0.2mm以下の気泡が発泡体断面積あたり、5〜95%の占有面積率を有することを特徴とする、[9]に記載のスチレン系樹脂発泡体、および
[11] スチレン系樹脂および発泡剤を用いて押出発泡して得られるスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、
スチレン系樹脂100重量部に対して、混合臭素系難燃剤を1〜6重量部含有し、
更に、5重量%分解温度が240〜320℃で、融点が120℃以上、リン含有率が7重量%以上であるリン系難燃剤を0.1〜3重量部含有し、かつ、
上記混合臭素系難燃剤が
(A)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)からなる混合臭素系難燃剤、または、
(B)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートからなる混合臭素系難燃剤であり、
かつ、該混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が、該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、25重量%〜75重量%であることを特徴とする、スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法
に関する。
Claims (11)
- スチレン系樹脂および発泡剤を用いて押出発泡して得られるスチレン系樹脂発泡体であって、
スチレン系樹脂100重量部に対して、混合臭素系難燃剤を1〜6重量部含有し、
更に、5重量%分解温度が240〜320℃で、融点が120℃以上、リン含有率が7重量%以上であるリン系難燃剤を0.1〜3重量部含有し、かつ、
上記混合臭素系難燃剤が、
(A)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)からなる混合臭素系難燃剤、または、
(B)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートからなる混合臭素系難燃剤であり、
かつ、該混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が、該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、25重量%〜75重量%であることを特徴とする、スチレン系樹脂押出発泡体。 - 混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が、該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、35重量%〜65重量部%であることを特徴とする、請求項1に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
- 5重量%分解温度が240〜320℃で、融点が120℃以上、リン含有率が7重量%以上であるリン系難燃剤がトリフェニルホスフィンオキシドまたは2−ジフェニルホスフォニルヒドロキノンであることを特徴とする、請求項1または2に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
- さらに、リン系安定剤および/またはヒンダードアミン系安定剤を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
- リン系安定剤が、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトまたはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトであり、
ヒンダードアミン系安定剤が、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、または、4−ヒドロキシ−1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピレリジンの脂肪族または芳香族カルボン酸エステルであることを特徴とする、請求項4に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。 - 発泡剤が、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種、および/または、他の発泡剤からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 他の発泡剤が、水、二酸化炭素、窒素、炭素数が2〜5のアルコール類、ジメチルエーテル、塩化メチルおよび塩化エチルよりなる群から選ばれる少なくとも一種以上含むことを特徴とする、請求項6に記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 他の発泡剤が、水を含むことを特徴とする、請求項6または7に記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 発泡体を形成する気泡径が、気泡径0.2mm以下の気泡と気泡径0.2mm超1mm以下の気泡より構成されることを特徴とする、請求項8に記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 発泡体を形成する気泡の内、気泡径0.2mm以下の気泡が、発泡体断面積あたり5〜95%の占有面積率を有することを特徴とする、請求項9に記載のスチレン系樹脂発泡体。
- スチレン系樹脂および発泡剤を用いて押出発泡して得られるスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、
スチレン系樹脂100重量部に対して、混合臭素系難燃剤を1〜6重量部含有し、
更に、5重量%分解温度が240〜320℃で、融点が120℃以上、リン含有率が7重量%以上であるリン系難燃剤を0.1〜3重量部含有し、かつ、
上記混合臭素系難燃剤が
(A)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)からなる混合臭素系難燃剤、または、
(B)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートからなる混合臭素系難燃剤であり、
かつ、該混合臭素系難燃剤中のテトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)の含有率が、該混合臭素系難燃剤全体を100重量%とした場合、25重量%〜75重量%であることを特徴とする、スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
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